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迷子でぷにっと蜘蛛退治

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「やぁやぁ諸君、迷宮は好きかね。アルダワ魔法学園への出張だ」
 集まるものらにひらりと手を振って軽く呼び寄せてから、グリモア猟兵であるエンティ・シェア(欠片・f00526)はお気楽な調子で話し始める。
 此度の仕事の最終的な目標は迷宮の奥に存在する巨大な機械蜘蛛の討伐である。
 ――機械蜘蛛『らしい』という話なので、これの詳細は現地で確認し臨機応変に対応する必要があった。
 そしてその過程で入り組んだ迷路をたどり、当然のように立ちふさがる災魔の群れを蹴散らすのも仕事の内だ。
「目的地までは少々長めの迷路があるようだ。敵らしい敵は居ないようだが、苦手な者は難儀するだろうね」
 ちなみに私は苦手だ、と意味もなく挟み、手元のメモをぱらりとめくる。チラリと見たのは、迷路を抜けた先のフロアに蒸れる災魔の情報だ。
 見たほうが早いね、と見せた参照画像は、カラフルでぷにぷになスライムの群れ。
「密ぷにと呼ばれる花の蜜で出来たスライムなんだがね、力はたいして無いのだが数が多い。合体したりもするらしい」
 ぽよぽよのぷにぷにが寄り集まって大きな個体になるさまはある意味浪漫に溢れているとは思うがね、などと微笑ましいものを見るような顔で告げて、その視線はメモへと戻った。
 どうやらこのフロアには魔法学園の誰かが休憩所として利用した痕跡があるらしく、フロアの端に簡易の屋根付きベンチが備えられているらしい。
「密ぷにを軽く蹴散らして獲得した甘い蜜で、先の大物との戦闘に備えるのもいいだろう。あぁ勿論、群れに群れている密ぷにをひたすら狩り続けてもいい。なんなら蜜集めに勤しんでもいい」
 最終的な討伐目標さえ片付けてくれれば過程は何だっていい。
 そう、何だっていいのだ。
 繰り返して、エンティは朗らかに笑う。
「迷路とは言え遊戯施設の持ち物ではないんだ。それに通路が入り組んでいる分柱になる壁も多い。多少の破壊活動が崩壊に繋がることも無いだろう」
 正攻法も、堅実な攻略も、力技も、なんでも使っていけばいい。
 どれも一つの選択肢だとの言葉で締めくくり、アルダワ魔法学園への道を開くのであった。


里音
 アルダワ魔法学園でのお仕事です。
 迷路と密ぷにを楽しんでから、ボス戦に臨むという流れになります。
 わいわいしてわちゃわちゃしてガチの殴り合いへ。

 第二章、第三章開始時点での状況を冒頭文章で投稿予定です。
 プレイングの参考にどうぞ。

 皆様のプレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『迷宮大迷路』

POW   :    力ずくで全てを踏破。進み方は好きにしろ!

SPD   :    技術を駆使して出口の場所を推測だ!

WIZ   :    魔法や知識で出口を探し出すぞ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アウグスタ・ヴァイマール
これぞ冒険!大迷宮!ですわね

ふふ、古くからアルダワを守護する我がヴァイマール家にとって迷宮攻略はお手の物
この迷宮の出口の位置は……

行けばわかる!

ですわね

兵は神速を尊ぶ、すなわち即断!即決!インスピレーション!
誉れある武門たるヴァイマールの家訓にうじうじちまちま考えるというものはありませんわ!

さあ、そうと決まれば行きますわよ

空中舞踏による高速立体機動を駆使してどんどんと進んでいきますわ
旋回、加速、急停止
閉鎖空間での行動は私の独断場ですわ

進む方向は勘、と言いたいところですけれど
大体は風の流れで意識せずとも分かってしまうものですわね


スピレイル・ナトゥア
機械でできた蜘蛛さんですか
どんな蜘蛛さんなのか楽しみです!

それはそうと、迷宮の壁を壊して進むのって一回やってみたかったんですよ
壁を壊すのにピッタリな新技も習得したことですし、ここは壁を壊して進むとしましょう
土の精霊の力を宿した拳で地面を殴って、地面を隆起させて迷宮の壁を破壊します
アルダワ魔法学園の迷路にはいい思い出がなかったのですが、それも今日で終わりです
機械の蜘蛛さんと戦うときには、やはり雷の精霊さんを呼ぶべきでしょうか
そういえば、いまさらですが迷路の壁が土でなかった場合も土の精霊さんで破壊することができるのでしょうか
もし破壊できなかった場合、土以外の壁が出てきたときに困ってしまいますね……




 広い迷路を目の前にして、アウグスタ・ヴァイマール(魔法学園のエリートお嬢様・f02614)は瞳を輝かせていた。
「これぞ冒険! 大迷宮! ですわね」
 古くからアルダワを守護するヴァイマール家にとって、迷宮攻略など朝飯前。日常の一環ですらある。
 つまりはその一員であり次期後継者でもあるアウグスタにとっても容易なものなのだ。
「この迷宮の出口の位置は……」
 ひたりと壁に触れ、なぞり、左右に伸びる道をそれぞれ見てから、うん、とアウグスタは大きく頷く。
「行けばわかる! ですわね」
 ……容易なものなのだ。多分。
 兵は神速を尊ぶものである。すなわち即断こそが重要。
 即決! インスピレーション!
 どれもこれも聞こえのいい単語であるが、要するに勘なのでは? と突っ込まれれば、にこりと微笑むしか無い気もする。
 それでも、アウグスタに迷いはない。何故ならば。
「誉れある武門たるヴァイマールの家訓にうじうじちまちま考えるというものはありませんわ!」
 ひとえに、自らの家と、そしてその出自を持つ己に誇りを持っているがゆえ。
 だからこそ、アウグスタは駆ける。数歩駆けて、その勢いに身を乗せて跳んだ。
 とん、と足をつけた壁を力強く蹴り、同時に鎖を射出する。きゅるる、と勢いよく鎖の巻き取られる音と共に急接近した壁へは、身を翻して軽やかに着地。アウグスタの前では、上下の概念は無くなっているかのようだ。
 高い天井を持ち、時折狭く、また広くもなる入り組んだ道を、壁や天井までを足場にして、次々と跳んでいく。
 誰かが見ていればその華麗なさまに感嘆したかもしれない。誰も居ないのが惜しいくらいである。
 そうやって、迷いなく次々と鎖を打ち込んでは移動していくアウグスタだが、ふと、感じていた風の流れが変わったように感じて、一度足を止めた。
 勘任せの適当進行に見せかけて、実はちゃんと風の流れを辿って方向を決めていたいたのだが、それが変わったのであればきちんと把握せねばなるまい。さて何事かと視線を巡らせたアウグスタが見つけたのは。
「……綺麗な穴ですわね」
 豪快に突き破られた壁。
 それも一枚ではない。壁の穴を覗き込めば、前にも後ろにも穴が続いている。

 ――さて、時は少し遡る。
 アウグスタが縦横無尽に迷宮を飛び回っている間に、新たに迷宮に足を踏み入れたスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)は、アウグスタとは別の意味で瞳を輝かせていた。
「迷宮の壁を壊して進むのって一回やってみたかったんですよ」
 壊しても大丈夫というお墨付きをもらったのだから、試みない訳にはいかない。
 そのために、破壊に適したユーベルコードも持ってきたのだ。
 手始めに入り口から一番近い壁の前に立つと、すぅ、はぁ。集中するように深呼吸をして。
「グラウンドバースト!」
 力強く叫ぶと共に、土の精霊の力を宿した拳を地面に突き立てる。
 刹那、迷宮の地面が隆起し、ボコボコと音を立てて鋭利なやりのような形状へと変化した。
 地面から生えた槍は、壁を貫き崩す。真っ直ぐ前へと放たれた技は、目の前の一枚にとどまらず、およそ五枚分の壁をぶち抜いたのだ。
 がらがら、ぱらり。土壁の崩れる音の余韻がやんだ頃には、スピレイルの視界から真っ直ぐ二十メートルあまりが随分とすっきりとした。
 それを見て、スピレイルは嬉しそうに笑う。
「アルダワ魔法学園の迷路にはいい思い出がなかったのですが、それも今日で終わりです」
 自信たっぷりに作り上げた穴を突き進んでいくスピレイル。
 目の前に壁が立ち塞がれば、また土の槍で貫いていく。爽快だ。とても爽快だ。
「この迷路の奥には機械でできた蜘蛛さんですか……どんな蜘蛛さんなのか楽しみです!」
 あまりに爽快に迷路を進めるものだから、気分もどんどん上がっていく。
 機械の蜘蛛ならば、対峙した時にはやはり雷の精霊を呼ぶべきだろうか、なんて思案は、いっそわくわくとした心地で展開される。
 と、順調に進行していたスピレイルだが、何度めかの破壊活動の途中で、ガキィン! と鋭い金属音が聞こえて、はたと顔を上げた。
 壁の穴を抜けて音の出処へと向かえば、そこには金属の壁。
「周囲もほとんど金属、ですか……」
 これは困った。とスピレイルは眉を下げる。今しがたこの壁の前で土の槍が負けてしまったのを認識してしまったのだ。
 何箇所か土壁が残っていた部分が崩れてはいるが、隙間が狭くて抜けられそうにない。
「仕方がないですね。土の部分まで少し移動しましょうか……」
 折角爽快だったのに、と肩を落としたスピレイルだったが、ふと、自分が散々発してきた豪快な破壊音とは違う音が急速に接近しているのに気がつく。
 
 邂逅は、一瞬の後に。
 大穴の続く壁に行くども遭遇しながらも、最終的な風の抜け道となる場所を目指して高速移動を繰り返していたアウグスタは、眼下に佇む小柄な人影に数度瞳を瞬かせて、すたん、と彼女の付近に降り立った。
 振り返って見つめれば、見上げる視線と目が合って。
「さっきからの穴は貴方の仕業でしたのね!」
 上げたのは、感嘆の声。
「これほど勢いよく壁を突き抜けて来たのはきっと貴方が初めてですわ。……あら、でもどうしたのかしら。困ったような顔をしていますのね」
 ぱち、ぱち、と。アウグスタの勢いに圧されるように数度瞳を瞬かせたスピレイルは、えっと、と思案げな間を挟んで後、金属の壁にひたりと触れて。
「私の力では、この壁は崩せないようで……」
「まぁ! それは残念ですわね。出口まで真っ直ぐ突き抜けてみせて欲しかったのに」
「私も残念ですが……仕方がありませんから、土壁のある道を探そうかと」
 先程見たアウグスタの素早さにはとてもついていけそうにはないから、どうぞお先に、とスピレイルが微笑めば、アウグスタもまた、にこりと笑みを返した。
「それなら、また張り合えますわね。私の独擅場になるかと思ってましたのに、もっと早く抜けられるかと思ってましたのよ!」
 どちらが早くぬけられるかしら、と挑戦的な顔をして、アウグスタは再び高速移動にて迷路を進んでいく。
 見送って、スピレイルは嵐のような邂逅にまた数度瞳を瞬かせたが、はにかむように微笑んだ。
「これは……負けてられませんね」
 金属は避け、土壁を狙って。真っ直ぐ出口へ。
 こうなれば、目指すは一番乗りとばかりに、再び勢いよく壁を壊していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ランヴェルト・フォスター
まさお(f10724)と

●POW
うおお、すげーわくわくすんな!
別にはしゃいでなんかねーけどよ!?

迷路だろーが何だろーが
[勇気]出して進めば何とかなんだよ
俺様についてこい!とずんずん進む

そろそろ着いてもいーんじゃねーか?
あからさまにイライラ
落ちてる石ころ蹴っ飛ばし

到着した分かれ道
こっちだ!と示すも
まさおとは逆
あぁ?テメェはごちゃごちゃ考え過ぎなんだよ
こういうのは直感が大事だろーが!

歌えと言われ首を傾げるも
そこまで言うならやってやんよ
愛用のサウンドウェポン(マイクとベース)を構え
お気に入りの曲を[パフォーマンス]

イイ感じにノッてきたぜ…って、おい、まさお!
置いてくんじゃねーよ!感想くらい聞かせろ!


神月・雅臣
【ランさん(f10728)】と

はいはいはしゃがないでくださいね
これ、歴としたお仕事ですから
…まぁ迷宮に心躍るのは同じだけど

…ていうかまさおって呼ぶの止めてください
俺は雅臣だって何度言ったら分かるんですか?

ひたすら出口を目指し進み
差し掛かった分かれ道
選び指し示した道は彼とは真逆
ランさん、直感も大事ですけど少しは考えてみては…?

…あ、そうだ
ちょっと音出して貰えます?
歌でも楽器でもいいです。軽くで構いませんので

神経を研ぎ澄まし、
音の反響や空気の流れを確認して進むべき道を導き出す

答えが分かればすたすたと正解の道へ
何やってんですかランさん、置いてきますよ
…直感に負けたのが心底悔しいとかそんなことないです




「うおお、すげーわくわくすんな!」
「はいはいはしゃがないでくださいね。これ、歴としたお仕事ですから」
「別にはしゃいでなんかねーけどよ!?」
 巨大な迷路フロアを前に、これから始まる冒険に瞳を輝かせるランヴェルト・フォスター(Re:birstart・f10728)は、嗜める神月・雅臣(原初の星・f10724)のお小言に、よく通る声で噛み付いた。
 全く、浪漫というものがわからないのだろうか。とか言いたげな顔をしているランヴェルトに呆れた態度をして見せつつも、雅臣とて迷宮探索に心を踊らせていたりする。
 そんな雅臣の昂揚は知ってか知らずか、ランヴェルトはそうそうに迷宮へと踏み出しずんずんと進んでいくと、ちらりと肩越しに振り返って。
「慎重派も結構だけど、迷路だろーが何だろーが勇気出して進めば何とかなんだよ。俺様についてこい、まさお!」
 自信たっぷりに笑んで見せ、促した。
 清々しいほどのその態度に、雅臣はまた、呆れたような顔をしてみせて。
「……ていうかまさおって呼ぶの止めてください。俺は雅臣だって何度言ったら分かるんですか?」
 先をゆくランヴェルトに並びつつも、口をついて出たのは、やっぱり文句じみたお小言だった。

 右へ曲がり、左へ曲がり、時折円形に膨らんだような通路を経由して、天井が霞むほどに高い通路を見上げて、また曲がって。
 敵対する者が居なければ罠らしいものもなく、黙々と道を選んで進むだけの道程は、最早単調作業じみてしまって、ランヴェルトは当初のわくわく感などとうに消えてしまっていた。
「そろそろ着いてもいーんじゃねーか?」
「まだそんなに進んでませんよ」
「はー、ったく、無駄に長い道つくりやがって!」
 あからさまにイライラした態度で足元の石ころを蹴飛ばすランヴェルトだが、傍らの雅臣が同意するでもなくスルーするものだから、かん、かん、と何度か大きく跳ねた石の残響が虚しく響いて聞こえた。
 静かになったところで、今度は雅臣の方が数歩先に進んだ状態でちらりとランヴェルトを見やり、
「進展するには迷路を抜けなければいけないんです。今のところは順調そうなんですから頑張ってくださいよ」
 励ましのような、そうでもないような、曖昧な台詞を残して、すたすたと進んでいった。
 焦れるでもなく平静に進む背中に、ランヴェルトはほんの一瞬だけ唇をへの字にしたが、大股で進み並ぶと、ふん、と胸を張って鼻を鳴らした。
「言われなくても……」
 わかってるっつーの、と言いかけた語尾が少しすぼむ。緩やかなカーブを描いた土壁を抜けた先には、左右に伸びる分かれ道。
 どちらもすぐにまた曲がっているようで、先を見通すようなことも出来ない。これまでにも通ってきた分岐と似たようなものだった。
 となればまず頼るべくは――。
「こっちだ!」
 直感だ。とばかりに、びしっ、とランヴェルトが示したのは右の道。
 しかし、隣で思案げに道を見比べていた雅臣が示したのは、左の道だった。
 真逆の道を指し示し、顔を見合わせた二人。
 右の道と、ランヴェルトと、左の道とを順々に眺めて、雅臣は最後にまたランヴェルトを見て、首を傾げた。
「ランさん、直感も大事ですけど少しは考えてみては……?」
 左の方が比較的綺麗だ。おそらく過去に別の誰かが通ったのだろう。それも、何度も。
 それにこれまで歩いてきた道のりを考えるに、自分たちの所在地はフロアの右寄りなのだからここでも右へ向かえば壁……つまり行き止まりに突き当たる可能性が高い。
 などなど、幾つも理由を上げる雅臣の話は一応聞くが、ランヴェルトの意見が変わるわけではない。
「あぁ? テメェはごちゃごちゃ考え過ぎなんだよ」
 これまでも頼りにしてきた直感は確かなものだ。行って駄目なら戻ればいいと主張するランヴェルトに、それでどうせまた苛つくんでしょう、と反論する雅臣も譲る気がない。
 一瞬のにらみ合い。あわや喧嘩か、と思われたが、ふと、思いついたような顔へと表情を緩めた雅臣によって、険悪な雰囲気は霧散する。
「……あ、そうだ。ちょっと音出して貰えます?」
 歌でも楽器でも何でもいいから、と促す雅臣の提案は唐突で、ランヴェルトは思い切り首を傾げた。頭上に疑問符が浮かんでいるのがありありと見える。
 何を思ってそんなことを言い出したのかはさっぱりだが、まぁきっと何か考えがあるのだろうとは思うし、何より歌を求められるのはランヴェルトにとって悪い気はしない。
「そこまで言うならやってやんよ」
 にっ、と笑って、愛用のマイクとベースを構えると、すぅ、と息を吸う。
 次に吐き出されたその息は、澄んだ高音の歌声となって迷宮に響き渡った。
 ランヴェルトの声は、よく、通る。音だけに集中すべく瞳を伏せて、雅臣はその音の反響と振動する空気の流れをゆっくりゆっくり確かめて。丁度、ワンコーラス終わる頃に目を開けて、右の道を見やった。
 見て、少しだけ腑に落ちない顔をしてから、すたすたと進みだした。
 一方で、いい気分で歌っていたランヴェルトは、続きを歌いだそうとしたところで雅臣が自分を横切って進んでいくものだから、ぽかんとしたように間の抜けた顔で彼を見た。
 数メートル進んだところで、雅臣は足を止め、物凄く不本意だと言いたげな顔でランヴェルトを振り返る。
「何やってんですかランさん、置いてきますよ」
 言うだけ言って、また進みだす。その姿が曲がり角へ差し掛かろうという頃になって、ランヴェルトは慌てて後を追った。
「おい、まさお! 置いてくんじゃねーよ! 感想くらい聞かせろ!」
「良かったですよ」
「雑すぎだろ!」
 歌声と同じくよく通る声が喚くように訴えれば、その音は反響し、そのまま、抜けていく。
 出口まで、そう遠くなかったようだ。広い空間へたどり着く道がわかってしまったのは、そのお陰ではある、が。
(……直感に負けた……)
 きちんと分析して出したはずの雅臣の答えは、ランヴェルトの直感に覆されてしまったのだ。それが、悔しいだなんてそんな事は言わないけれど。
「なあ、おい!」
「うるさいですよ」
 不貞腐れた顔のままでは、暫く振り返ることができそうになかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アウグスタ・ヴァイマール
空中舞踏で進行しつつ、考えるのは先ほどの邂逅

なるほど壁を壊して進むという発想はありませんでしたわ

このまま進んでも負ける気はしませんけれど、必要に応じてショートカット……というのも面白そうですわね

出口が壁の向こうの方向にありそうと判断した時には壁を空中舞踏からの蹴りで破壊してみますわ
私の蹴りは重いですわよ?

出口の先にはたくさんの蜜ぷにがいるそうですわね
彼らの蜜は大変美味
花蜜集め、今から楽しみですわ




 たんっ、と力強く壁を蹴り、重力を感じさせない動きで中空を横切りながら、アウグスタは思案する。
 先程の、同じ迷宮の探索者との邂逅が彼女の胸を躍らせていた。
「なるほど壁を壊して進むという発想はありませんでしたわ」
 射出された鎖が壁に突き刺さることは認識していたが、あくまでこれは足場と道を作るため、あるいは簡易な目印くらいにはなっているかもしれない。
 ともかく、迷路を解き進むための補助であって、迷路を突き崩す手段では、なかった。
 新しい発想は、アウグスタの好奇心を大いにくすぐり、踊らせる。
「このまま進んでも負ける気はしませんけれど……」
 いつもどおり順調に進んでいる。速さは十分だ。高低差故か時折空気の巻き上げられる感覚に行き当たることもあるため、風の流れが正確ではない事もあったが、道もほぼ間違ってはいない。
 先程勢いよく宣戦布告をした相手に負ける、ということは無いだろうけど。
「――必要に応じてショートカット……というのも面白そうですわね」
 思いついてしまったものを、試さずに終わるのはもったいないではないか!
 折よく、高い天井を持つ通路がアウグスタの目の前に現れた。道幅も十分。
 たん、たん、と小気味よく壁を蹴りながら上昇し、出口の方向と思われる壁を見据えると、くるり、身を翻す。
「私の蹴りは重いですわよ?」
 鎖の巻き取られる勢いに乗って繰り出されるのは高速の蹴り。
 それは、鎖を突き立てた箇所に正確に突き刺さり、出来ていた罅を一瞬で広げ、崩した。
 反動により高く飛び上がり、宙返りをして軽やかに着地を決めたアウグスタは、がらがらと土煙を上げながら崩れた壁を見て、満足げに頷いた。
「これもなかなか爽快ですわね」
 出来た穴をくぐり、再び高速で移動しながら、アウグスタはまた、楽しげに思案する。
 出口の先にはたくさんの蜜ぷにが居るらしい。その蜜が大変美味であることは、迷宮の守護者たるアウグスタは当然知っていた。
「花蜜集め、今から楽しみですわ」
 ゴールを示すらしい、心持ち豪奢に飾られた門をくぐり抜けたアウグスタは、そんな期待を抱きながら、次のフロアへと続く一本道を降りていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『蜜ぷに』

POW   :    イザ、ボクラノラクエンヘ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【勇者ぷに 】と【戦士ぷに】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    ボクダッテヤレルプニ
【賢者ぷに 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    ミンナキテクレタプニ
レベル×1体の、【額 】に1と刻印された戦闘用【友情パワーぷに】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ぷにぷにぷにぷに。
 ぽよぽよぽよぽよ。
 広々としたフロアには、色とりどりのスライムが戯れていた。
 ぴょんぴょんと跳ねては色違いのぷにに突撃してみたり、壁の部分に登攀チャレンジをしては落ちて潰れているものも居る。まぁ多少潰れてもぽよぽよと元に戻るのだが。
 聞いたとおり、フロアの端には簡易の休憩所が設けられていた。訪れた者の遊び心か、お礼かなにかのつもりか、初めは張りだしただけの木の板だっただろう屋根部分に、色んな装飾が取り付けられている様子は、さながら神社のおみくじを結んだもののよう。
 殲滅が目的ではない。だが、これだけの数が地上に一気に押し寄せれば、被害が出るかもしれない。ここで戦意を喪失させる程度には間引かねばなるまい。
 ……そんな使命感を持って挑んでもいい。
 もっと単純に、花の蜜を乱獲してもいい。
 程々に休んでぷにぷにと戯れても、いい。
 最終的な目的、機械蜘蛛の退治のためには、過程はなんだって良いのだと、グリモア猟兵も言っていたのだから。
アウグスタ・ヴァイマール
蜜ぷに、いつ見てもぷにぷにぽよぽよと愛らし……

――ハッ

アルダワの守護者として、災魔である以上倒さなければなりませんわ
ま、まあ他の生徒たちもここは利用しているようですし?彼らの為にもぷには必要な分だけ狩る事にした方がよいですわね、ええ
というわけで、必要な分だけ狩っての花蜜集めですわ

アウグスト、フィリップ、ヨハネス、ベルンハルト、やりますわよ

蜜が変質しないよう、適度な電撃でまとめて倒してしまいますわ
細かな調整はかなり難しいのですけれど、ここは腕の見せ所というものですわね
これでも私、学園での成績は優秀でしてよ


スピレイル・ナトゥア
「散々壊してしまったせいで迷路を進んでいる実感はなかったのですが、無事に辿り着くことができて良かったです」

蜜ぷにさんが召喚した凄い数の友情パワーぷにさんたちに目を見張ります
「なんのひねりもないアイデアですが、やはり数には数で対抗するのが一番でしょうか?」
土の精霊を宿した複数のゴーレムさんたちを召喚して、友情パワーぷにさんたちに対抗します
ゴーレムさんたちの性能を【鼓舞】で上昇させつつ、私自身は精霊の突撃銃で【援護射撃】をします
「はじめて見る敵ですが、確か甘い蜜が取れるのだったでしょうか?」
どの程度の余裕を作ることができるかはわかりませんが、余裕があれば味わってみるというのも悪くないかもしれません




 ぷにぷにぽよぽよと賑やかな光景に、アウグスタは思わずといった風に表情を緩めて眺めていた。
「蜜ぷに、いつ見てもぷにぷにぽよぽよと愛らし……」
「ふぅ……!」
 と、ぽよぽよ空間の入り口付近で和みに和んでいたアウグスタの背後から、清々しい声。
 はっとして振り返れば、先程迷路で会ったスピレイルがそこにいた。
「散々壊してしまったせいで迷路を進んでいる実感はなかったのですが、無事に辿り着くことができて良かったです」
 あの後も壊せない壁に何度か遭遇したりもしたが、迷うこと無くたどり着けたのは作戦勝ちと言えよう。
 とても満足げなスピレイルの無事の踏破も、アルダワの守護者として先に迷路を抜けられたことは喜ばしく思うアウグスタだが、先程の緩みきった顔を見られてはいまいかと、一度片手でそっと顔を隠して。
 こほん、と小さく咳払いをして、気持ちと表情を引き締めた。
「可愛らしい見目ですけど、災魔である以上倒さなかればなりませんわ」
 決して蜜ぷにと戯れに来たのではないのだと己を鼓舞しつつ、も。
「ま、まあ他の生徒たちもここは利用しているようですし? 彼らの為にもぷには必要な分だけ狩る事にした方がよいですわね」
 愛くるしい眼差しで跳ねている内は、愛玩用のペットかなにかにしか見えないぷに達を殲滅することなど、アウグスタには出来なかった。
「花蜜もしっかり集めませんとね」
「はじめて見る敵ですが、確か甘い蜜が取れるのだったでしょうか?」
「ええ、そうですわ。とっても美味しい蜜ですのよ!」
 首を傾げたスピレイルの疑問に返答する瞬間だけは、瞳のキラキラを抑えることが出来なかったが、それはそれ。
 群れる蜜ぷにたちの前につかつかと進み出ると、アウグスタは帯びていた杖を元の姿に戻した。
 それは宝石を核とした人工精霊たち。火、水、地、風と各々に属性を持つ精霊達を伴って、アウグスタは臨戦態勢を取り始めた蜜ぷにたちと対峙する。
 ぷきゅ、ぷきゅ、と鳴き声に似た音を発しながら激しくぽよぽよし始めた蜜ぷには、その周囲に新たなぷにを召喚し始めた。
「あら」
 ぽよぽよぽよぽよ。
「まぁ!」
 ぷにぷにぷにぷに。
 瞬く間に対峙した数の数倍に膨れ上がった友情パワーぷにに、スピレイルは目を見張る。
 その額に記された「1」という数字が、何体かでくっついては数を増していくのを目に留めて、アウグスタは素早く数字の増えたぷにへと電撃を飛ばす。
「この数で合体されると厄介ですわ。少し減らしてしまいませんと」
 人工精霊たちの手も含め、ぽよんぽよんと跳ねるぷに達を潰していくアウグスタに、なるほど、とスピレイルは頷いて。
「なんのひねりもないアイデアですが、やはり数には数で対抗するのが一番でしょうか?」
 こんこん、と伺いを立てるように足元を小突き、囁きかけるように唱えたのは、召喚の言。
「土の精霊さん。お願いしたいことがあるんだけど……」
 声に応えるように、もこもこと地面が盛り上がり、小型の土人形が次々と現れた。
 数だけで言うならば、蜜ぷにと同じくらいだ。一撃貰えば消滅する点だけは不安といえば不安だが、そもそも物量で押し勝てば、攻撃される危険も、減る。
「突撃です」
 一斉に突撃するゴーレム達を、圧巻だと言わんばかりに見送ったアウグスタだが、負けてはいられないと攻撃を続ければ、また一体、蜜ぷにが弾けた。
 残った蜜は、人工精霊たちが交代しながらせっせと集めている。
(あまり強い雷では蜜が変質してしまうかもしれませんわね)
 美味しくない蜜を集めても意味がない。しかし数の多い敵だ、手数ばかり増えるような弱い攻撃でも意味がない。
 ここはアウグスタの腕の見せ所。微妙な調整によって、適度な強さの電撃を次々と放っていく。
「これでも私、学園での成績は優秀でしてよ」
 能力に裏付けされた主の自信に応えるように、人工精霊たちもばりばりと働いていた。
 手際よく蜜を集めつつ掃討していくアウグスタを横目に、スピレイルもまた、精霊の力を宿した突撃銃を構えて蜜ぷにたちを見渡す。
 額の数が増えたものから優先的に狙うよう、炎の弾丸で当たりをつければ、ゴーレム達の一部がわーっとそちらへ群がる。
 数が数だけに、結構大変な戦闘のはずなのだが、蜜ぷにのファンシーさやゴーレムのサイズ感から、どうにもおもちゃの国の大戦争といった微笑ましさが滲んだりもしてしまう。
 そんな程度には、スピレイルには余裕があった。
 ゆえに。
(……ちょっと味見して見るくらいは、できそうですね)
 足元に転がっている蜜ぷにをひょいと拾い上げて、こぼれてしまっている蜜の部分を指先ですくい上げると、ぺろり。
(甘い……!)
 自然由来の蜜ゆえか、しつこい甘ったるさもなく、飲み物にもお菓子にも何にでも合いそうだ。
 なるほどこれはおやつになるのも分かる。この場から綺麗さっぱり消えてしまうのは忍びない。
 そんなスピレイルの思考が届いたのか、ふと気がつけば、すっかり数を減らした蜜ぷにたちは、フロアの隅っこに退避してぷるぷると震えていた。
 数が元通りになるまでは、当分、戦意喪失しているだろう。
 アウグスタもその様子を確認して、ホッとしたように人工精霊たちを自分の元へ戻した。
「今回のところは、これくらいで十分……でしょうか」
「そのようですわね」
 ぷるぷる震えながら、わるい蜜ぷにじゃないよと言わんばかりの瞳を、二人はちょっぴり苦笑して見つめ返すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ランヴェルト・フォスター
まさお(f10724)と

んだぁ?コイツら
聞いてた以上にぷにぷにぽよぽよしてやがんな

取り敢えず蹴散らしてやりゃいーんだろ?
まだ歌い足りなかったしな
俺様にかかればあっという間だぜ!
意気揚々とマイクを構えるも
ぷに?と自分を見つめる澄んだ目のヤツ
怯えてぷるぷる震えるヤツ

うっ…………

ちくしょー!こんにゃろー!
テメェら呑気にぷにぷにしやがって!
罵倒?しながら気の済むまでぷにぷに

って、おいこらまさお!待ちやがれ!
テメェには血も涙もねーのかよ!?
ひしっとぷにっと蜜ぷに抱いて

くそぉ…仕方ねー
せめて安らかに眠りやがれ…!
いつもよりもややスローテンポで魂ノ声ヲ聴ケ!
骨くらいは拾ってや…骨…??だー!なんでもねー!


神月・雅臣
【ランさん(f10728)】と

何だこの異様に気が抜ける光景…
…俺達蜘蛛退治に来たんですよね
冒険と云う名のピクニックに来た訳じゃないですよね…?

…いけない
思わず雰囲気に呑まれかけてしまった
今迄以上に気を引き締めないとな

軽く身体慣らしも兼ねて、
近くにいる蜜ぷにから容赦無く妖刀でぐさり
折角だから花蜜もちゃっかり集めつつ
君等に恨みは無いけど仕事なんで
大人しく散って…

…はぁ、これだからランさんは
可愛かろうが何だろうが、それは俺達の敵です
友達にはなれないんですよ?

大体、情が移ればしんどいのは貴方の方でしょう
…後で面倒みる俺の苦労も考えて欲しいもんだ

響く魂の声に溜め息一つ零しつつ
さて、もう一息頑張りますかね




 ランヴェルトと雅臣が迷宮を抜けて蜜ぷに達がいるフロアにたどり着けば、新たな来訪者の登場に一部の蜜ぷに達がぽよぽよと壁際へと移動していく。また、逆に二人の前に立ちはだかるようにその場でぽよんぽよん跳ねているものもいる。
 いずれにせよ、その光景には可愛らしい跳躍音が付与されるわけで。
「んだぁ? コイツら。聞いてた以上にぷにぷにぽよぽよしてやがんな」
 おーおー、よく跳ねる、というような表情で、どこか興味深げにまじまじと見やっているランヴェルトに対し、雅臣はなにかの葛藤を表したような顔になっていた。
「何だこの異様に気が抜ける光景……俺達蜘蛛退治に来たんですよね、冒険と云う名のピクニックに来た訳じゃないですよね……?」
 ぷにぷにぷにぷに。
 跳ねる度に伸びたり縮んだりする不思議生物をじっと見つめていると、なんだかふわふわと軽い気持ちになるような……。
「……いけない」
 これはいけない。
 任務への使命感的なものがふわっと曖昧にされてしまうような感覚に陥り、雅臣は表情を引き締め気持ちもきゅっと締めた。
 可愛さの蔓延る雰囲気に呑まれかかっていた雅臣をよそに、ランヴェルトはとりあえず蹴散らせば良いのだろうとマイクを取り出し、ふふん、と威勢よく跳ねている集団の前に立った。
「まだ歌い足りなかったしな、俺様にかかればあっという間だぜ!」
 喜べ、ワンマンライブを最前列で聞けるんだ、と言わんばかりにマイクを構え、ベースを掻き鳴らそうと軽く手を翳したところで、ふと、飛び跳ねている内の一体と目が合った。
 それはまるで、怖くなんて無いんだからと己を奮い立たせるような眼差し。
 元からぷるぷるの体躯を一層震わせて果敢に立ち向かおうとするぷにぷにの、汚れなく澄んだ瞳。
 そういえば、フロアに立ち入った時、彼らの一部は壁へ向かった。
 それはまるで逃げるようではなかったか。もしかして自分たちが来る前に、よほど恐ろしい目に遭ったのではないか。それでも彼らはこのフロアを楽園と思って懸命に守ろうとしているのではないか……?
「うっ……」
 いたいけなぷに(想像)に、ランヴェルトは思わず足元の一体を掴み上げた。
「ちくしょー! こんにゃろー! テメェら呑気にぷにぷにしやがって!」
 ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに。
 可愛い奴め、可愛い奴め! 罵倒しているようでしきれていない。
 ランヴェルトが手の中でもにもにと形を変えている蜜ぷにを思う存分ぷにぷにしていると、ひゅん、と軽やかに空を切る音と共に、すぐ近くで跳ねていた蜜ぷにが儚く散った。
「ふむ、脆い……」
「って、おいこらまさお! 待ちやがれ!」
 これが噂の花蜜か、とちゃっかり回収しながら、冷静に蜜ぷにの戦力を分析していた雅臣に、ランヴェルトがくわっと噛み付いた。
 何なんですか、という台詞が書いてあるような顔で一度ランヴェルトを振り返った雅臣だが、手の中のぷにと咎めるような表情に、色々と察してそっと視線を外す。
「君等に恨みは無いけど仕事なんで。大人しく散って……」
「だから待てって! テメェには血も涙もねーのかよ!?」
 妖刀を振りかざす雅臣の前で、まな板の鯉同然にぷるぷると震えるばかりだった蜜ぷに。
 どっちが悪者っぽいかと言うとどう見ても雅臣。
 味方であるはずのランヴェルトすら、蜜ぷにをひしっと抱きしめて雅臣を責めていた。
 はたから見れば随分愉快な状況だが、雅臣は大きくため息をついて、一旦下ろした妖刀を構え直し、ランヴェルトを再び振り返る。
「これだからランさんは」
 言うや、これ幸いと逃げ出そうとしていたぷにを切り伏せた。
「可愛かろうが何だろうが、それは俺達の敵です。友達にはなれないんですよ?」
 ランヴェルトの腕の中にぴったりと収まっている蜜ぷにを見下ろして、諌めるような視線でランヴェルトを見つめる。
「大体、情が移ればしんどいのは貴方の方でしょう」
 この災魔が人の営みを害して完全排除を言い渡されでもしたら、どうするつもりだと。真剣な表情と言葉に気圧されて、ぐっ、と一度唸ったランヴェルトは、抱えていた蜜ぷにをそっと手放して、唇を噛み締めた。
「くそぉ……」
 無力な自分を責めるような、悔しさのにじむ声を零して。しかし拳を握りしめると、がばっと立ち上がり、再びマイクを構える。
「仕方ねー、せめて安らかに眠りやがれ……!」
 魂を震わせる全身全霊の熱いシャウトが、迸る。
 それはいつもよりややスローテンポに、しっかりと聞かせる手向けの歌。
「骨くらいは拾ってや……骨……??」
 感動を滲ませそうな台詞だったが、その対象は液体の塊で骨らしいものはない。
 蜜はあるが。
「だー! なんでもねー!」
 流れたのは、しょっぱい涙ではなくて甘い蜜。
 フロア中にガンガンに響く魂の声に、雅臣はまた、溜息を一つ零して。
(……後で面倒みる俺の苦労も考えて欲しいもんだ)
 感情的で絆されやすい友人のアフターケアに回るのは、今に始まったことではないけれど。
 せめて残る痛みがはじめから少なければ、いい。
「さて、もう一息頑張りますかね」
 甘い蜜で気分転換でもしてもらおうと思案しながら、雅臣もまた蜜ぷにを駆逐していく。
 召喚技を駆使しながらもどんどん数を減らしていった蜜ぷには、気がつけばフロアの隅へ隅へと散ってしまったようで、彼らの視界からは完全に消えてしまった。
 その光景に少しの寂しさを覚えつつも、ランヴェルトは決して振り返らずに、フロアを後にした。
 ぽん、と肩を叩く雅臣の手に、慰められるようにして。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『兵器蜘蛛』

POW   :    蹂躙
【長大な八脚から繰り出される足踏み】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    蜘蛛の糸
【腹部の後端から放つ鋭い鋼線】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に鋼線 による蜘蛛の巣を形成し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    子蜘蛛
レベル×5体の、小型の戦闘用【子蜘蛛ロボット】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は世良柄野・奈琴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 そのフロアにたどり着けば、猟兵達は今までと明らかに違う空気を感じることだろう。
 踏破した迷路には敵はおらず、蜜ぷにとは半分戯れているばかりだった。
 そんな彼らに突き刺さる明確な敵意は、同時に殺意でもあった。
 これ以上己の領域に踏み込むならば贄としてくれよう。そんな声の変わりに、ギチギチと耳障りな機械音が響く。
 関節部を鳴らし、胴体から駆動音を吐き出しながら、それは幾重にも張り巡らされた銅線による巣の上を悠々と歩む。
 機械が放つ熱気と共に、小さな蜘蛛が幾つも湧いて出る。
 巨大な親と這い回る子供達。彼れが共に持つ赤く光る瞳。それが映すのは、対峙する猟兵たちに他ならない。
 誰も忘れてなどいない。これを、倒すことが、目的だということを。
スピレイル・ナトゥア
どうやらアウグスタさんが絶好調みたいなので、私はアウグスタさんの支援に回るとしましょう
と、その前に指先がベタベタしていると戦闘に支障が出そうなので、指先を舐めて蜜ぷにのベタベタを取っておくことにします

「思った以上に蜘蛛さんな外見をした機械蜘蛛さんでしたね……」
蜘蛛さんだから気持ち悪い外見をしているのは当たり前なのに、実際に会うまでそれに気づかなかったのは迂闊でした
周囲の味方の機械を強化しながら、稲妻の矢で子蜘蛛ロボットさんたちを蹴散らしながら機械蜘蛛さんを攻撃して、みんなが機械蜘蛛さんのもとまでたどり着くための道を作ります!
機械蜘蛛さんの弱点が雷かどうか、いまこそ検証させてもらうとしましょう!


アウグスタ・ヴァイマール
現れましたわね
ヴァイマール家の名にかけて、災魔は倒させてもらいますわ
とはいえ、あまり近寄りたくない相手ですわね

アウグスト、ヨハネス、フィリップ、ベルンハルト、全力でいきますわよ
赤青黄緑に淡く光る人工精霊が魔法力を生み出せば準備は完了

魔導蒸気銃で私自身は宙へ飛び上がり退避すると同時に【全力魔法】の強烈な雷による【属性攻撃】をお見舞いしますわ

雷撃は鋼線の巣を伝い、敵を纏めて凪ぎ払うはず

私にかかれば小蜘蛛なんてものの数ではありませんわ


ランヴェルト・フォスター
まさお(f10724)と
 
へん、親玉のご登場かよ
子連れとか超余裕じゃねーか
言っとくけどよう
今の俺様はスッゲェ機嫌悪いかんな?
覚悟しとけよ蜘蛛野郎!
 
アイツらみてーに情が移る前にさっさと、だぁ?
はッ。だからテメェはまさおなんだよ
コイツらの目には光が無ぇ
俺様だってそんくらい分かんぜばーか!
 
他の猟兵もいんなら連携を意識だ
つーか俺様の歌広めるチャンスだろ!
 
んじゃぁまずはアンコール、魂ノ声ヲ聴ケ!
範囲攻撃・衝撃波増しで圧倒的存在感見せつけてやる
小せぇの蹴散らして道開いてやんよ
…悔しいが接近戦はまさおのが強ぇしな
 
おら、サウンドオブパワーで攻撃力増してやる
ココがサビだぜ、まさお!決めてやれ!


神月・雅臣
【ランさん(f10728)】と
はいはい
親子共々仲良くさっさと片付けましょうね
長引くと面倒そうですから

…目に光だ情が移るだそこまで言ってませんが
これだからランさんはランさんなんだ…
兎にも角にも――後ろは任せましたよ?

他の猟兵達と協力を心がけつつ
深呼吸の後、妖剣解放を使用
一気に親蜘蛛との間合いを詰め、
足や腹を狙い妖刀での二回攻撃を見舞う
出し惜しみはしませんよ

敵からの攻撃は見切りや武器受けでいなし、
鋼線や子蜘蛛の群れは衝撃波で切り伏せて

聞こえる歌声には思わず笑みが零れ
強敵と対峙し戦うこの瞬間が
何よりもこの心を昂ぶらせる

―えぇ、言われなくとも
戦いは初めから最後まで
本気でいかなきゃ楽しくないですからね!




 そのフロアへ至る直前、スピレイルは己の指先についた甘い蜜をぺろりと舐め取りながら、同じ道を進むアウグスタを見やる。
 どうやら今日の彼女は絶好調らしい。となれば、地下迷宮の事情にも詳しい彼女の支援に回ることでより効果的に敵を倒せるのではなかろうか。
 舌先に感じる甘みは、思考の一助となる。戦闘の支障にならない程度には綺麗になったことを確かめていると、スピレイルはその音を聞く。
「現れましたわね」
 ギチギチと、まるで鳴き声のように機械の関節を鳴らしながら銅線の上を這い進むその災魔に、それが向けてくる敵意に、アウグスタは同じ意識を湛えた視線を向ける。
 対し、スピレイルはかすかに眉をひそめ、ほんの少しだけ嫌悪を示すように身を引いた。
「思った以上に蜘蛛さんな外見をした機械蜘蛛さんでしたね……」
 呟きは、己にのみ聞こえる程度の、小さな物。
 深く考えずにグリモア猟兵の依頼に応じたわけだが、実際に相対するまで蜘蛛の外見が如何なものかを想定していなかったのは、迂闊だった。
 好きなものは好きなのかもしれないが、スピレイルにとっては気持ち悪い外見でしかない。
 そして、どうやらアウグスタにとっても、好ましいと感じるものではないらしくて。蜜ぷにのフロアでも活躍していた人工精霊達を傍らに備えさせ、機械蜘蛛の所作を警戒するように見やっていた。
 ――と、そこへ、後方より増える足音。
 それはそう間を置かずに、彼女らと同じ場所へたどり着いた。
「っと……親玉のご登場みたいだな」
 フロア全体に満ちる雰囲気と、対峙する二人の姿を見つけ、それが魔法学園の一生徒ではないと瞬時に理解したランヴェルトは、一度だけ振り返った彼女らと視線を交わしてから、ゆらり、高い糸を悠々進む機械蜘蛛を見上げた。
「子連れとか超余裕じゃねーか」
 ぐるり、本体の周りを徘徊する子蜘蛛も等しく見渡して呟く声は、普段よりもやや、低い。
「言っとくけどよう、今の俺様はスッゲェ機嫌悪いかんな? 覚悟しとけよ蜘蛛野郎!」
 可愛らしいぷにぷにをしばき倒すはめになったのも、こいつが地上を目指そうなどと目論んだせいだと八つ当たり気味の感情をぶつけるランヴェルトに、同時に駆けつけた雅臣はほんの少しだけ溜息をついてから、淡々と戦闘態勢に移る。
「はいはい、親子共々仲良くさっさと片付けましょうね」
 漆黒の妖刀を確かめるように握り、一度軽く慣らすように空を切って構えて。
「あなた達も、それで、宜しいですか?」
「――ええ、勿論よ」
 初めて顔を合わせる者同士とて、作戦のすり合わせなど、一言で十分だった。
「アウグスト、ヨハネス、フィリップ、ベルンハルト」
 アウグスタの声に応じて、透き通った音が、かすかに響く。
 それは言葉を語ることのない精霊達の応答のようで。共鳴しあうように、彼らは己の持つ魔力を高めていく。
「全力で行きますわよ」
 臨戦態勢に反応してか、機械蜘蛛が蠢くのを見留め、雅臣は一度深く深呼吸をすると、後方支援に徹するスピレイルを追い抜き、素早く機械蜘蛛へ接敵する。
 張り詰めた銅線を一つ踏みつけ、その反動に跳躍を混ぜて、怨念を纏った妖刀を素早く振り抜いた。
 その剣戟は二度閃き、機械蜘蛛の細かい金属部品を撒き散らしながら傷を与える。代償に、雅臣はその寿命を削られるが、些細なものだ。
 それよりも、親蜘蛛を傷つけられてかさかさと素早く群がってくる子蜘蛛の方が面倒で厄介である。
 舌打ち一つ残して飛び退れば、入れ違うように、二種類の電撃が迸った。
 一つは蜘蛛の巣よりも高い位置へと飛び上がったアウグスタが放ったもの。赤、青、黄、緑とそれぞれの宝石を輝かせる人工精霊達が生み出した魔力を収束させ、全力で放った雷属性の魔法は、銅線ごと子蜘蛛を焼き払う。
「雷の精霊さん。任せました!」
 同じ属性の、こちらは無数の矢を繰り出したのはスピレイル。その多くは子蜘蛛を狙うが、アウグスタの放った一撃が蹴散らしたため、大多数が親蜘蛛へと狙いを改めることが出来ていた。
 銅線の上を器用に這い進み、幾つかは躱したようだが、それでも、機械の身に突き刺さる雷の矢は、バチバチとけたたましい音を立てて機械の体躯を焼いた。
「弱点……とまでは言い切れないかもしれませんが、やはり機械には雷、ですね」
 ばちり、と電撃の名残を残してぎこちなく足を曲げ伸ばしする機械蜘蛛の動作を見やり、スピレイルは小さく呟く。
 ひゅぅ、と感嘆するように唇を鳴らしたランヴェルトは、負けじとベースを掻き鳴らす。
 その隣に、一旦退いた雅臣が降り立ち、ちらりと窺うようにランヴェルトを見て、潜めるような声で告げる。
「長引くと面倒そうですよ」
「アイツらみたいに情が移るってか?」
 親を守らんとする微笑ましい子蜘蛛とでも言うのかと、ランヴェルトは、はん、と鼻で笑って、よく見ろよ、と機械蜘蛛を指し示す。
「コイツらの目には光が無ぇ。俺様だってそんくらい分かんぜばーか!」
 言い放ち、先程のアンコールだと言わんばかりに声を張った。
 一瞬でフロアを包んだその歌声は、振りかざされる八本の足を震わせ、唸るような駆動音さえも掻き消し響く。
「……目に光だ情が移るだそこまで言ってませんが。これだからランさんはランさんなんだ……」
 呆れたような物言いも、信頼ゆえに。
 聞き慣れたベースに歌声が肌を震わせるからこそ、雅臣は安心して前線へ出られる。
 再び駆け出す背を見送り、ランヴェルトは、ニィ、と口角を上げて笑う。その自信に満ちた表情が、歌声にも自信と力を与えた。
「俺様の声で魂震わせてやんよ!」
 ひれ伏せと言わんばかりの声量。だが、それに抗うように、機械蜘蛛は八本の長大な足を大きく振り上げ、力強く地面へと叩きつけた。
 それが放つ衝撃は、機械蜘蛛を見上げる形となる猟兵達を襲う。
 寿命の削られる感覚と重なってか、雅臣はきつく眉を寄せ、ぐ、とランヴェルトは息を呑む。
 その隙に、機械蜘蛛は更に新たな銅線を射出し、一人上空へと逃れていたアウグスタを狙う。魔導蒸気銃により、空中移動を可能にしているアウグスタだが、移動の射線を狙われては――。
「させません!」
 だが、他の猟兵たちより一歩下がり、全体を見ていたスピレイルが、再び放った稲妻の矢で機械蜘蛛を攻撃し、その軌道を逸らした。
「助かりましたわ」
 微笑み、逸れた軌道の先で突き刺さる銅線を足掛かりに再び中空へ戻ったアウグスタは、地上より見上げてくるランヴェルトへと視線を向けて。
「もう一度、震えさせてさしあげて?」
「言われなくても!」
 パフォーマンスを中途半端に邪魔されて不完全燃焼なのだ。しかし、再び深く息を吸ったランヴェルトが紡いだのは、先程のシャウトではなく、味方の戦力を高めるとっておき。
 歌声に、心地よさげに踊る人工精霊達から魔力を譲り受け、アウグスタは再びの全力魔法を唱える。
 スピレイルもまた、幾度も放ってきた稲妻の矢を形成し、八本の足を牽制するように射掛けて。最早、機械蜘蛛には子蜘蛛を喚び出す隙さえ与えまいとするかのようだった。
 その結果、綺麗に開けた道を前に、雅臣はもう一度、深く息を吸う。
 聞こえる歌声を最も心地よく感じているのは、誰でもない。彼だった。
「ココがサビだぜ、まさお! 決めてやれ!」
 思わずこぼれた笑みは、背を押す声と、強大な敵と対峙する昂揚とが混ざりあうゆえに。
「――えぇ、言われなくとも」
 傷を追うことも、寿命を削ることも、雅臣にとっては些事だ。
 戦いは、最初から最後まで、本気でなければ楽しくない。
 地を蹴るその見は軽やかに。機械蜘蛛の懐へと滑り込んで、一閃。
 幾度も雷に焼かれ、鮮烈なハイトーンに穿たれた機械仕掛けの胴体は、ぎちり、噛み合わない歯車が歪みの音をたてると同時、刻まれた切り口からバラバラと砕けて、散った。


 本体であった機械蜘蛛を仕留め、妖刀を収めた雅臣に、ランヴェルトは大股で歩み寄って肩を組む。
 接近戦では彼には敵わないことを重々承知していることは、少しの悔しさもあるけれど、期待通りに仕留めてくれた手腕には、やはり、喜びが勝るのだ。
 邪険にすることはしないながらも応えることもしない雅臣とのやり取りに、スピレイルは微笑ましげに笑んで、地上に戻ってきたアウグスタを迎えた。
「後は帰るだけ、ですね」
「ぷに達は当分向かってこないでしょうし、迷路は貴方が開けた穴がありますし、早々に戻れますわね」
「穴?」
 帰路の憂いもないと労い合っている彼女らに、不思議そうな声。
「穴なんて……開いてませんでしたよね、ランさん」
「あれば気づくだろうしな」
 雅臣の言葉に同意するランヴェルトに、アウグスタとスピレイルは顔を見合わせた。
「まさかの、自己再生……?」
「いえ、道が違った可能性も……」
 全容解明には至らない地下迷宮の不思議な事象か、否か。真実は定かではないが、どうやら帰路も長くなりそうだということだけは察する一同であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月14日


挿絵イラスト