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徒花の下には常に死の影が踊る

#サクラミラージュ #逢魔が辻 #姉妹桜

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#逢魔が辻
#姉妹桜


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●徒花の姉桜
 ――逢魔が辻と化した、荒れ果てた庭園の中、一際に異彩を放つ艶やかな紅桜が朧な輝きに照らされていた。
 ぽぉん、ぽぉんと手鞠が弾み、吸い寄せられるように数多の影朧がざわめく中に、女は艶やかに笑う。

 いらっしゃい。
 あなたも、あなたも、そこのあなたもいらっしゃい。
 怖がることは、ありません。悲しむことも、ありません。
 共に遊んで、共に休んで、私が癒しを与えましょう。
 来世の幸せを祈りましょう、あなたの幸せを祈りましょう、安らかに、安らかに……。

 ――数多の影朧と戯れ柔らかな光を振り撒くも、それは浄化の光に非ず。
 もう戻ることはできない、在りし日の甘い幻を見せながらも、悍ましき化生を引き寄せる哀しき光……。

●実り無きモノ
「確率は限りなく低い、しかし零とそうでないものには大きな差がある。とはいうがね」
 グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは、椅子に座ったまま脚を組み、額を抑えながら天を仰いだ。
「ただ、零と気付かぬまま踊るのは……悲しいとは、思うけども」
 物憂げに銀灰色の瞳を曇らせ、溜息を一つ吐きながら彼女は重く立ち上がり語り出した。

「さぁ語ろうか。舞台は幻の桜舞い散る花の都、サクラミラージュ。君達には逢魔が辻に住まう影朧を倒しに行って貰いたい」

 グリモアが映し出す逢魔が辻は、最早完全に取り壊された、帝都の外れにある屋敷と荒れ果てた、背の高い草が並ぶ庭――そこには逢魔が辻の影響か、朧に戦場を照らす石灯篭が立ち並ぶ光景だった。
「元はさる資産家の別荘だったらしいがね。使う者がいなくなって取り壊しになる……筈だったんだが、逢魔が辻と化してしまっていてね」
 取り壊しに行った業者や、幽霊屋敷の噂を聞きつけ興味本位でやってきた者達、果ては退治にやってきた帝都桜學府の者達にも既に犠牲が数多く出ており、この地を支配する影朧の影響か、次々と他の影朧が引き寄せられているのだという。

「だから君達には、その廃屋敷に赴いて影朧を退治して貰いたいんだ」
 そういってスフィーエは、今回退治することとなる影朧の姿をグリモアで映し出した。
 これまでの犠牲者に寄生し咲く花のような姿の影朧と、逢魔が辻を支配する影朧に引き寄せられた哀しい叫びを挙げる桜の精のような姿の影朧。
 逢魔が辻に入れば生命の気配を求めて前者が襲いかかり、それを退けても、後者は支配者を守らんと襲い掛かってくるのだという。
「気を付けて欲しいのは、第二波の影朧は第一波での戦闘を学習している。例えば、草に隠れて奇襲していれば第二波はそれを使ってくる可能性もある」
 だが逆をいえば、それを想定して対処することでより優位に戦えるということでもある、とスフィーエは語った。

「そして然る後、逢魔が辻を支配する影朧を倒して欲しい」
 彼女が映し出すは艶やかな赤い髪を靡かせた着物姿の女――桜の精と思わしき、とても穏やかな微笑みを浮かべた存在を映し出した。
「……元々はどこかの幻朧桜で、二本の姉妹桜だったらしい。詳細は分からないが、ある時、片割れと別れることとなってしまってね」
 二人仲良く影朧達に癒しを与え転生させてきたらしいが、妹桜と不幸な事件で分かれ、絶望の果てに影朧として蘇ってしまったらしい。
 今は妹桜との再会を夢見て、嘗てのように影朧を集め癒しを与えようとしているのだが――。
「悲しいかな。もう、癒しを行うことは叶わない」
 影朧となり果てた今となっては、それも叶わずにただ、沢山の影朧を集めてしまっているだけの害悪でしかない。
 それでも今も、妹桜との再会――決して叶わぬが――を夢見て、狂ったように影朧を周りに集めているのだという。

「何というかな、何をやっても報われない、そしてそれに気付いていない……のかは、分からないが」
 逢魔が辻を支配するどこか悲しい桜の精であった影朧の存在に、物憂げに溜息を吐きスフィーエはやりきれない、といった風に肩を竦めつつ。
 改めて羽根ペン型のグリモアが逢魔が辻へ往く道を作り出しながら、最後にこう締めた。
「だがこれ以上の不幸を齎すのも本意ではないはずだ。どうか、自分を見失ってしまった桜の木を止めて欲しい……頼んだよ」


裏山薬草
 どうも、裏山薬草です。
 ワンチャン期待は結構ですが、どこかで引き際を見極めないといけませんね。
 エヘ!

 というわけで今回は、逢魔が辻となってしまった廃屋敷に赴き、影朧を退治して頂く内容となっております。

 第一章・二章ともに集団戦となっております。
 一章は草ぼうぼうの廃屋敷という地形を上手く利用すれば。
 二章では一章での戦いに応じて敵が対策を取ってきますので、それを逆用したりすれば、プレイングボォナスとなります。

 第三章ではボス戦となっております。
 説得の有無については皆様にお任せします。
 桜の精の方がいらっしゃれば、希望があれば最後に癒しを与える描写を入れます。
 ただし説得が皆無か、失敗していれば入れることは出来ないのでご了承を。

 最後に逢魔が辻の特徴を軽く説明しておきます。良かったら参考にしてください。

 帝都の外れにある、とある資産家の別荘。
 時間帯は夜。
 逢魔が辻となった影響か、放置された石灯篭には勝手に火が灯り、戦闘に支障がない明るさはある。
 屋敷は経年劣化で崩れ入ることは出来ないので、庭が舞台となる。
 当然、手入れがされてない為、雑草が生い茂り、場所によっては隠れることも可能。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
 裏山薬草でした。
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第1章 集団戦 『死に添う華』

POW   :    こんくらべ
【死を連想する呪い】を籠めた【根】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【生命力】のみを攻撃する。
SPD   :    はなうた
自身の【寄生対象から奪った生命力】を代償に、【自身の宿主】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉体本来の得意とする手段】で戦う。
WIZ   :    くさむすび
召喚したレベル×1体の【急速に成長する苗】に【花弁】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
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 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

四季乃・瑠璃
緋瑪「悪意を持たないのなら、なるべく苦しまずに送ってあげる」
瑠璃「悪意を以て襲ってくるなら容赦はしないよ」

緋瑪「この花は桜の精と違って足を踏み入れた犠牲者目当ての影朧みたいだね」
瑠璃「寄生された人達の為にも速やかに片づけよう、緋瑪」

【チェイン】で分身
生い茂った草むらを利用し、【範囲攻撃、早業、蹂躙、爆撃】感知式ボムを草むらの各所に設置して接近してきた敵を爆破。
ついでに敵をボムの方に誘き寄せる為の簡単な仕掛け【罠使い】等も設置してボムの方へ誘導。
まとめて吹き飛ばし、生き残りは大鎌で一気に(寄生対象ごと)刈り取るよ

緋瑪「結構多くの人が取り込まれてるみたいだね」
瑠璃「助けられれば良かったけどね」



●死花
 石灯篭に幻の灯火光る真夜中の逢魔が辻――かつての栄華も見る影なく、生い茂る高草の中、新たに現れた生命の気配に毒花が嬉々としてその姿を現した。
 背の高い草の林を割り、命を求めて跳ねたそれの足元より、電子音の高い音が一瞬響けば――立ち上る火柱が毒花を吐き尽し、迸る熱風が草草を揺らす。
「悪意を持たないのなら、なるべく苦しまずに送ってあげるけど」
「悪意を以て襲ってくるなら容赦はしないよ」
 尤も、今しがた襲ってきたそれは悪意というよりは、獣の持つ捕食衝動にも似たモノかもしれないが。
 一つの身体に宿る二つの魂、それを改めて二つの身体に分けた四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)と緋瑪の二人が、その存在を露わにしながら草むらに隠れた影朧に戦意を示す。
 新鮮な二つの生命の気配は、影朧にとって魅力的なのか、草草を分けながら――かつての帝国の戦士の依り代を以て駆け抜けても。
 抜けた先に仕掛けられた爆弾は、ある種の因果の応報を示すように火柱立ち上らせ影朧と寄生された者諸共灰と帰していく。
 なればと爆弾に注意を払おうとも――草草の中、仕込まれた罠は巧みに影朧を誘導し、死<爆弾>の下へと導かせ。
「この花は桜の精と違って、犠牲者目当ての影朧みたいだね」
「寄生された人達の為にも速やかに片づけよう、緋瑪」
 生死を問わず、生命あるモノに取りつき寄生し、その身体を自在に操る地獄花。
 誘導されるがままに灰と化していくそれを見ながら、瑠璃と緋瑪は言葉を交わし。
「結構多くの人が取り込まれてるみたいだね」
「助けられれば良かったけどね」
 歪んだ影朧が影朧を引き寄せ、それがまた死を呼び、その死に寄生する影朧を引き寄せる悪循環。
 さりとて悔やんでも致し方なし、出来ることは――。
「せめて死後の尊厳は守ってあげるよ」
「後のことは私達に任せて」
 残った影朧を、正に死神の鎌の如く――仕込まれた炸薬の勢い強かに、草刈鎌のように、地獄花を刈っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
本人は癒してあげてるつもりでそれが逆効果になってしまっている…悲しいわね…。
救ってあげたいところだけど、やはり難しいでしょうね…。

【ブラッディ・フォール】で「魂喰らいの森と紅炎の姫」の「紅炎の姫」の炎冠石の杖を装備しドレス姿へ変化。
周囲の草むらという地形を利用し、群がって来た華達を【降り注げ神罰の火矢】で一気に地形ごと焼き払い焼却。
地形も利用した広域攻撃型のUCで一気に殲滅するわ。
生き残りは【往け紅炎の下僕たち】で焼却。
一応、無駄に被害が広がらない様に【念動力】で壁を作って自身や他の猟兵の元まで燃え広がらない様に制御しておくわ

引き寄せられた人達を食い物にするだけの寄生花に用は無いわ。



●焼却処分
 遠目に淡く輝く桜の下、歪んだ黒い桜の精が次々と引き寄せられながら哀しい舞を踊る。
 その中央で無邪気に微笑むこの逢魔が辻の頭に、鮮血色の眼を微かに伏せた。
(本人は癒してあげているつもりでしょうけれど、見事に逆効果になっているわね……)
 フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は悪意なくも作り出された惨状に頭を抱えながら、荒れ果てた草草の騒めきの中、新鮮な生命の気配を求めやってきた、その“逆効果”の象徴へ油断なく鋭く眼差しを向けた。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 胸に手を宛て身に刻まれた戦の記憶より力を引き出し、その身に纏う。
 それは薔薇の如き真紅の貴婦人めいた装束、竜と幻想の世界に住まう魔女の力、火炎を司る姫君の力――炎揺らめく結晶のような赤き儀礼用短剣を掲げると。
 夜空を鮮やかに赤く照らし、その直後――叢を分け、飛び掛かってきた毒花の影朧へと注ぐ紅蓮の熱針。
 天の裁きを思わせる火炎の豪雨は、影朧に無数の風穴を一瞬開けたと思えば次の瞬間、その身体を余す所なき炎に包み灰と為し。
 影朧の隠れる為の草草すらも焼き払い、潜む毒花を次々と露わにしていきながら、次の瞬間には灰と還していく。
「引き寄せられた人達を食い物にするだけの寄生花に用は無いわ」
 笑みは冷たく、攻撃は熱く。
 嗾けられる燃え盛る条の如き火炎、正に竜の化身が如く這うそれが残る徒花達の足に噛み付き、その身体を燃やしていき。
 急速に育つ苗木を以て飛び逃げようとしても、天より注がす神罰の熱き雨がその身体を貫き、業火の中へ包み込む。
 周囲で戦う猟兵へ悪影響を与えることなきように、不可視の壁で過剰な延焼を防ぎながら、フレミアはふと遠くの姉桜に想いを馳せた。
(……本当に逆効果だわ。だからこそ、哀しいものね)
 本音を言えば救ってあげたいけれど――赤い照り返しの中、無自覚な毒花と化してしまった逢魔が辻の主を憐れみながら、フレミアはまた一つと寄生花を焼き尽くすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
悔やんだって時は戻せないからね
ボクたちに出来るのは「それでも前に進むこと」だけ
行こう、ウィーリィくん

草むらに身を隠して【罠使い】+【ロープワーク】でスネアトラップを仕掛けて敵をまとめて絡め取って、寄生している影朧だけを狙って【スナイパー】+【クイックドロウ】で撃ち抜いていく

もちろん寄生された人はもう助からない
それでも、せめて
ここの影朧を退治したらこの人たちを弔ってあげたいから


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
…悲しいよな。
けど、ここで終わらせなくちゃいけないんだ。
誰かの悲しみも、あいつの悲しみも。

その前に、まずは襲い来る影朧達を片付けないとな。
【地形の利用】と【物を隠す】でシャーリーと一緒に草むらに身を隠し、生命の気配に釣られて近づいてきた奴らが仕掛けた罠に引っかかったところで【シーブズ・ギャンビット】の早業で炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【部位破壊】で影朧を狙い出来るだけ宿主を傷つけない形で倒していく。
救うには遅すぎるけど、せめてもの手向けだ。



●釣船草に在れと
 朧な石灯篭の灯火に草叢の騒めきは、夜風の齎す例え難い冷たさを無情に際立たせる。
 耳を澄ませば荒れ果てた草草を分け、命を求めて走る奇々怪々な影朧と、遠くに控えし紅桜のどこかもの悲しい囁きが入ってくる。
「……悲しいよな」
「悔やんだって、時間は戻せないよ」
 ウィーリィ・チゥシャン(鉄鍋のウィーリィ・f04298)の溜息と共に漏らされた言葉に、シャーリー・ネィド(宇宙海賊シャークトルネード・f02673)はそれでも――微かに下唇に歯先を沈ませながら答えた。
「そうだな。けど、ここで色々と終わらせなきゃいけないんだ」
 控える姉桜の狂気も、草叢を分ける音強かに迫る生命を求めて走る影朧の退治と、それに取り込まれてしまった者達の解放も――ウィーリィは隣にいるシャーリーの掌を軽く握り。
 互いの目を合わせ、少年と少女は頷き合い――。
「行こう、ウィーリィくん」
「ああ、シャーリー」
 握りの強まった掌を介し伝わる、微かな温もりに決意を固め――離された掌を皮切りに、彼らは草叢へと潜んでいく。
「……」
 草叢の中、殊更に高い草草の並ぶこの場所は少年と少女の体格である彼らの姿を紛れ差すに容易く、草草のくすんだ緑と枯草色混じる中、時折鮮やかな赤と中に揺らめく金の二括り輝く。
 同じくして草草に紛れるに相応しき、相対せし影朧は苗床とされた死骸に花咲く植物の姿――片や培われた技術、片や生来の姿。
 より新鮮にして濃厚な生命の気配を求め、影朧達は草草を乱雑に割りながらウィーリィとシャーリーを求め駆け抜ける。
 だが彼らもまた、草草の中に姿を埋もれさせながら、鬼ごっこを演じるかのように死の影から身を逃れさせていく。
 ――それが、影朧達が死への階段を上っていく始りだとは知らずに。
 最初に影朧達が寄生した苗床に感じた違和感は足元からだった。
 生命の匂いを露わに、誘うように駆けてきた彼らの足が「何か」に引っ掛かったその瞬間――影朧達の身体が、次々と不意に引っ掛かった何かの所為で縛り上げられていく。
「掛かった!」
 声を張り上げるシャーリー、影朧達の足を引っ掛け締め付けるのは、草叢を巡る中で彼女が仕掛けた括り罠(スネア・トラップ)
 寄生された人型と、毒花の根をも巻き込み縛り上げながら動きを拘束し――最早、人型の力を活かすことも叶わずに。
「救うには遅すぎたけど――でも」
 間髪入れずに夜空の下、鮮やかに赤く輝く疾風が毒花の根を斬り裂いた。
 夜空に上着と背負った大鍋を放り、駆け抜ける為の重みを脱ぎ捨てたウィーリィが、括り罠に拘束された影朧の、本体である花の部位を根から斬り落としていく。
 振るう大包丁に、悪しき毒花を焼き払う業火を纏い、狙いは冷静に、されど振るわれる大包丁の鉄刃は熱く。
 最早助からぬ死体、されど寄生された者達の最後の尊厳だけは傷つけず、それを死に導いた毒花の軛を断つように。
 擦れ違う鉄火の刃は、次々と夜空に寄生する影朧の花達を舞い上げていき――それでも、その根をうねらせ、悪あがきのように新たな生命<ウィーリィとシャーリー>へその根を伸ばしても。
 その根が届くことは無く――根がうねったその瞬間、地より流れ星が天へ上るかのように、熱き閃光が迸っていた。
 シャーリーのサイバーアイ越しに付けられた狙いへと、迸る熱線は瞬き一つに満たぬ時に、八十を超える莫大な熱線の群れとなりて。
 貫かれた影朧達の本体は、過ぎ去った熱の閃きにその身体を灰と化されて地面へ落されて往きながら――それでも。
 草叢に潜み、シャーリーのその背へ根を伸ばす――しかし。
「……」
 無言で駆け抜けたウィーリィの、燃え盛る大包丁が最後の望みすらも断ち斬る勢いで、影朧を両断していた。

「……前に、進まなきゃ」
「ああ」
 横たわる影朧に捕らわれた者達――既に影朧の犠牲となって久しく生命の新たな時間を刻むことはない――を見、シャーリーがマスケット銃を収め。
 答えるように前髪で陰りを作りながら、ウィーリィはシャーリーと共に歩みを進めていく。
(全て、終わったら――)
 改めて、犠牲者を弔いに――せめて守り抜いた尊厳を背に、彼らは逢魔が辻を進んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

浅間・墨
ロベルタ(f22361)さんと。
植物は凍ると細胞が壊れると聞いたことがあります。
丁度相手は植物のようですからこれを利用しようと。
通常の植物のようにはいかない可能性もありますけれども。
視界を覆う茂る草も枯れると思うので一石二鳥…ですかね?
ロベルタさんに説明し協力をお願いしますね。
私は【雪駆】を使用します。
(早業、破魔、属性攻撃、2回攻撃、多重詠唱、鎧砕き)
周囲の植物ごと影朧を一刀のもとに斬ります。
視界が悪いのでロベルタさんと背中合わせで移動し厳重警戒。
ロベルタさんと合わせ技で攻めてもいいですし個人でも可です。
状況に応じてロベルタさんと連携や協力をします。
「…ロ…ルタ…ん…行…ま…!」


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨(f19200)ねーと戦う。
「おー…。この草、僕よりも高いよ! すっごいじぇ♪」
背伸びしても届かない草が邪魔だね。しかも凄く多い。
これじゃあ奇襲とか急襲とか怖いから墨ねーと厳重警戒だ。
「なるほどね~。じゃあ、僕も同じ属性の技を使うじょ!」
【雪の女王】を使うね。敵ごと草もぴっき~ん…と凍らせる。
(早業、破魔、属性攻撃、2回攻撃、限界突破)
墨ねーと背中合わせで移動。違和感を感じたら墨ねーに報告だね。
技は合わせた方がより効果的な気がするから連携技で撃破するよ。
僕が墨ねーの攻撃に合わせる感じで連携するじぇ~。うぇーい♪
「いくじぇ、墨ねー! 二人連携…『冬の嵐』~♪」



●氷花咲く弔いの煌めき
 朧な灯火が照らす夜の中、草草の騒めきは何処となく郷愁を誘い、そよぐ風が奪う熱はこれから起こる戦いに向けて思考を冷たく研ぎ澄ます。
 逢魔が辻に訪れた少女二人の片割れは、その手を大きく伸ばし己の背と草草の背を比べていた。
「おー……この草、僕よりも高いよ! すっごいじぇ♪」
 片割れことロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は思う――確かにメートルを多少超える程度の自分より高き草草生い茂るこの地、花で構成された怪物が潜むに相応しきと。
 もう片方――浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)はロベルタと背を合わせながら、逢魔が辻を歩き揺れる草叢を見やる。
「……」
 揺れる草草の騒めきの中、自然の揺れとは違う草の騒めきの音色。
 生ある者を苗床として咲く地獄花――それが迫る気配と、草草に紛れて身を隠す姿を前に、墨はロベルタに耳打ちを始めた。
「ん? どったの? うん、ふんふん……」
 背中合わせに、黒と白銀が擦れ合うほどに近く、互いの死角を補い合う距離は蚊の鳴くが如き墨の声も聞き取るに易く。
 墨は語る――植物は凍らせれば細胞を破壊される。であれば、討伐すべき影朧もまた多少の効果はあるのではないかと。
 その上で、見通しを塞ぐ草草を枯らし駆除する――炎と比べ、延焼というリスクを冒すことも無ければ猶更に、と。
「なるほどね~。じゃあ、僕も同じ属性の技を使うじょ!」
「……」
 微かに指で鍔を押し上げ、墨の覗かせた刀の煌めきに感じる凍てつく気配を察し、ロベルタが墨の狙いに頷けば。
 油断なく、背中を合わせたまま彼女達は逢魔が辻の草叢を往く――蒸し暑い初夏の夜の中、大気に纏わりつく湿り気と、草叢に潜む地獄花の殺気は否応なしに不快感を煽って行く。
 されど油断なく、冷静に――どちらが目立つか、といえば墨とロベルタの方なのだから、僅かなりとも気が緩めば奇襲がやってくる。
 そうして片時も気の抜けぬ、実に嫌な膠着は如何ほどに続いただろうか。
 わらわらと集まってくる気配を感じたロベルタが、背中合わせとする墨にその気配を示す。
「墨ねー」
「……」
 艶やかな唇が紡ぐ言葉は【わかっています】だった。
 扇形に押し包まんとする影朧達の進軍の気配を色濃く感じながら、墨はたどたどしくも言葉を発した。
「……ロ……ルタ……ん……行……ま……!」
「ほいキタ! いくじぇ、墨ねー! 二人連携……『冬の嵐』~♪」
 ――ロベルタさん、行きます。
 紡がれた言葉に熱き意志を宿しながら、携えた刀へと束ねた凍気はどこまでも冷たく、そして鋭く。
 同様にしてロベルタの手にも握られたショートソードと、その幾重にも重なった魔術式は墨の束ねし冷気に劣らぬそれを集める。
 背中合わせに立つ二人の視線が重なり合えば、それを皮切りに。
 墨の刀と、ロベルタの剣が袈裟と逆袈裟に交差するように走り、逢魔が辻の草叢に文字通りの冷たい斬撃が走った。
 正に全てを凍てつかせる雪の女王が駆けるが如く、翔け抜けていく斬撃は魂すらも氷の中に閉じ込める冷気を備え、地獄花の影朧達を斬り飛ばしていき。
 宿主から離され、揺らいだ姿のままに凍てつき慄く影朧は、走る斬撃が更に氷の中に閉じ込め、青白とその身を変えながら無残な粉雪と化していく。
 無論、斬撃の及ばぬ草草すらも伴っていた冷気は蒼白の霜の中に包み、枯死という道へ導く――。
 そうして隠れる蓑を無くした地獄花達が自棄気味に墨とロベルタに、その根を伸ばしても彼女達の斬撃は変わらずに。
 神速の居合を放つ墨が、その邪悪な根を断ち斬りながら、ロベルタの嵐招くが如き薙ぎ払いが地獄花を氷塵と還していき――地獄花を滅するは、それからすぐのことであった。

「やったじぇ墨ねー! 狙い通りだじょ!」
「……」
 飛び跳ねるロベルタの姿に、墨の唇の両端が釣り上がり。
 蒸し暑さすらも感じる水無月の下旬、真夏の夜の差し掛かり――極凍の刃が齎した、草草の枯死する冷たい中に。
 逢魔が辻の第一波を斬り抜けた猟兵達は先を急ぐのであった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『夢散り・夢見草の娘』

POW   :    私達ハ幸せモ夢モ破れサッタ…!
【レベル×1の失意や無念の中、死した娘】の霊を召喚する。これは【己の運命を嘆き悲しむ叫び声】や【生前の覚えた呪詛属性の踊りや歌や特技等】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    私ハ憐れナンカジャナイ…!
【自身への哀れみ】を向けた対象に、【変色し散り尽くした呪詛を纏った桜の花びら】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ミテ…私ノ踊りヲ…ミテ…!
【黒く尖った呪詛の足で繰り出す踊り】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●嘆きの桜花
 逢魔が辻に挑んだ哀れな犠牲者を取り込み、寄生してきた地獄花を退けた猟兵達。
 されど逢魔が辻を制さねば、また新たな犠牲者が出てしまう――その元凶たる徒花を目掛けて歩を進めた猟兵達だったが。
「邪魔をしないで……」
「あの方の邪魔をしないで」
「お願い、私達は癒されたいの……!」
 立ちはだかるは、かつて桜の精であったであろう哀しき影朧達――理由様々なれど嘆きの表情を浮かべる姿。
 逢魔が辻の哀しき主が齎す仮初の癒しを求めてやってきたのだろうが、それが仮初であることすらも分からぬ程に、理性を喪失している。
 このまま徒花の癒しを受けたとしても何も救われはしないだろう――唯一にして辛うじての手段は、この場にて彼女達を倒す他にない。
 逢魔が辻の主へ辿り着く為に、嘆きの精達を退ける為の戦いが始まった……。
四季乃・瑠璃
緋瑪「確か、第二波は前の戦闘を学習してるんだっけ?」
瑠璃「なら、草むらを利用して罠とか仕掛けてきそうだね」

【破壊の姫君】で分身

飛翔翼で飛行し、空中から全体を俯瞰。
逆に敵や罠が潜んでそうな深い茂みを特定し、【属性攻撃、範囲攻撃、爆撃、蹂躙】焼夷式ボム(ナパーム)と通常の広域接触ボムで敵も罠も全て爆破・延焼して焼き払い、吹き飛ばしていくよ。
空中まで飛び出して来た敵は【属性攻撃】魔術で焔を纏わせた大鎌で斬り裂き、迎撃。
追撃のボムや銃弾に魔術付与したK100による銃撃で爆砕・追撃して仕留めるよ

緋瑪「貴女達に安息をあげるよ。永遠のね」
瑠璃「だから、ゆっくりおやすみ…」



●一思い
 騒めく草草の中に、悲痛なかつて桜の精であった者の嘆きが響く。
 瑠璃と緋瑪は魔導の翼で空を飛びながら、逢魔が辻を俯瞰していた。
「確か、第二波は前の戦闘を学習してるんだっけ?」
「なら、草むらを利用して罠とか仕掛けてきそうだね」
 暗き草に紛れるように駆ける姿に、相対する影朧達が油断なき存在であることを知りながら。
 それでも瑠璃と緋瑪の光らせる眼は、猟兵を逆に捕らえんとする影朧の強かを決して逃すことはない。
 赤と青の異な瞳が捉えるは、草陰の色濃きその場所。
「――丁度、この辺りとか」
「ビンゴ」
 落とされた爆弾が一つ爆ぜれば、解き放たれた衝撃と熱は枯れかけた草草と息を潜めていた影朧の存在を焼き払い、仕掛けられた企み諸共吹き飛ばしていく。
 それを皮切りに、空爆さながらに落とされていく爆弾は、影朧を追い立てていくように熱と衝撃の中に、容易くその存在を消し去っていきつつ。
 爆ぜる業火の照り返しは、冷徹なまでに殺しを遂げんとする殺人姫達の姿を煌々と映す。
「ウ、ァアァア……ミテ……ワタシ、ワタ、シ」
 その姿を見上げ、生き残った影朧達が文字通り踊りながら跳ぶと、杭の如く尖った足を空に待ち受ける瑠璃と緋瑪目掛けて突き出せば。
 瑠璃と緋瑪はそれぞれ大鎌を取り出すと、背中合わせになりながら彼女たちへ向かう影朧へ大鎌の刃を閃かせた。
 そこに纏う業火が逢魔が辻の夜空に赤き残影を浮かばせ、迸る熱と刃の軌跡が飛来した影朧を迎撃する。
「とても苦しそうに見えるけれど」
「ごめんね、私達も倒されてあげるわけにはいかないから」
 ――苦しみを癒すことは出来ないが、止めることは出来る。
 ばら撒く爆弾が齎す熱と衝撃の風が、大型拳銃から放たれる魔力を乗せた鉛玉が。
 熱傷と貫通の衝撃は一瞬、これ以上の嘆きも呻きも与えることもなく、熱風は影朧を灰と為し、銃弾は胸を貫く。
「貴女達に安息をあげるよ。永遠のね」
「だから、ゆっくりおやすみ……」
 ――その声へは銃弾に胸を貫かれ伏した影朧の、とても安らかな顔が彼女達の手に掛けた影朧を代弁していたようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
ボクたちに出来るのは「それでも前に進むこと」
だからここで止まる訳にはいかないんだよ
行くよ、ウィーリィくん

ウィーリィくんが炎を放った隙に【エクストリームミッション】発動
嘆きの精の注意が炎に向いている隙に側面から回り込んで熱線銃の【援護射撃】+【乱れ撃ち】でウィーリィくんの接近をサポート
「同じ手で来ると思った?残念でした!」
その後は二人で協力して嘆きの精達を倒していく
周囲を飛び回りながら【スナイパー】+【クイックドロウ】で素早く正確に、その哀しみを眠らせていく

いつか、ここで綺麗に咲きほこれるように


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
救う、ってのもおこがましいけどさ。
俺達は全ての悲しみを終わらせるって誓ったんだ。
だから、あんた達の悲しみも終わらせる。

さっきと同じように草むらに身を隠す……様に見せかけて【神火の竈】で火を放って周囲を炎に包み、火勢を制御して俺とシャーリーが巻き込まれないようにしながら【物を隠す】で炎に紛れて敵本体に接近し、炎の【属性攻撃】を付与した大包丁の【二回攻撃】で敵を斬り伏せていく。
嘆きも、無念も、俺が受け止める。
だからせめて安らかに眠ってくれ。



●火葬する者達
 草草の騒めきの中に絶え間なく聞こえる、呻くような嘆きの声。
 夢破れ影朧と化した桜の精であった者の声と、近づく程に聞こえる逢魔が辻の主の叶わぬ癒しの戯れ。
 微かにそよぐ風の中、僅かに震える大包丁の柄を支えるように握りながら、ウィーリィは後頭部を掻いた。
「別に刃が鈍るっていうか、そういうのじゃないけどさ」
「ボクたちにできるのは、【前に進むこと】だけだよ」
 先は影朧自体に同情の余地は無かったが、今回は違う――苦しみの果てに影朧と化し、分散してしまったが故に転生の余地も無き者達。
 それでも倒す他にない相手に感情を押し込めながら、シャーリーはウィーリィの言葉に返した。
 ここで立ち止まる訳にはいかない、立ち止まれば待ち受けるのは……。
「行くよ」
「ああ」
 マスケット銃を両手に持ち、決意を固めたシャーリーに呼応するようにウィーリィは大包丁の柄を確かに握った。
 ここまでも油断なく、草叢の中に潜み機を伺っていた影朧達の気配を察しながら、隠密には隠密を――二人は草草の中に身を隠しに行く。
「救う……というのはおこがましいかもしれないけど」
 その最中、ウィーリィは草叢にその身を飛び込ませるかと思いきや、その寸前で立ち止まる。そして握った大包丁を強く天へ突き出して。
「人類で最初に火を手にした人間はこう叫んだ! 我こそは、料理人なりィィイイイーーーッッ!!」
 刹那、大包丁より迸る強火のうねり。
 程よく水分の抜けている草草は迸る業火の導火線となり、逢魔が辻の草草に移り燃え広がっていく。
 無論、延焼した分も――大包丁を手繰り操るは正に火炎を制する料理人、煽る炎は影朧の隠れ潜む為の草叢を焼き払いながら、立ち込める炎の存在そのものを逆に彼ら二人の隠れ蓑であり、影朧の侵攻を阻む防壁と為す。
「史上最大の凶暴すぎる竜巻、戦う覚悟はある?」
 その炎の隠れ蓑に存在を紛れさせながら、シャーリーは固めた決意をそのまま鎧として纏う。
 宇宙バイクを解き纏う鮫が如き姿。うねる火炎の奔流が海とするなら、それを豪快に泳ぐ鮫を超えた鮫か。
 ウィーリィの精緻に手繰る火炎は彼女を巻き込むことなく、バーニアの気流を噴き上げ翔る彼女の姿を影朧から隠しつつ、側面へと回らせると。
「同じ手で来ると思った? 残念でした!!」
 弾かれるように指を踊らせ、マスケット銃から放たれる熱の閃光が、影朧とそれが呼び出した怨霊をも貫いて。
 その隙に、変わらずに業火を操りながらウィーリィ自身も炎の紛れながら影朧に迫ると――重厚な鉄の刃を赤熱させて、それを強かに薙ぎ払う。
 走る高熱と重く鋭き刃の一撃は、絶えず響いていた嘆きの声を一時で終わらせながら。
 また別の影朧が、嘆きの声と悲痛な金切り声を響かせる怨霊を嗾けても、空を舞いながら降り注ぐシャーリーよりの熱線がそれを滅していきながら。
 左目のサイバーアイに導かれるままに、決意衰えること無き狙いは正確に影朧の脳天を撃ち抜き、その生命を終わらせていく。
 更にまた別の嗾けられた怨霊がウィーリィを背後から害さんと襲い掛かろうとも、彼は大包丁で炎を手繰り、炎で壁を作るようにしてそれを制しながら振り返り。
「嘆きも、無念も、俺が受け止める。だから、せめて安らかに眠ってくれ」
 ――全ての悲しみを終わらせる。
 決して本当の意味で救うことは出来なくとも、影朧としての今生の苦しみからだけは解き放てる。
 振り返り様に走った赤熱した鉄刃の一閃が、迫ってきた影朧の身体を焼き払いながら切断し。
 更に天を翔けたシャーリーは残った影朧達に、真っ直ぐに銃口を突き付けながら。
「いつか、ここで綺麗に咲いてね」
 ――かつて桜の精であった者に向ける言葉。
 躊躇わずに引かれた引鉄が銃口より新たな光を迸らせれば、残った影朧の額を貫いて。
 この荒れ果てた逢魔が辻の地が、いつか桜咲き乱れる場所になったその時に――その祈りが伝わったかのように、倒れ伏す影朧の口元の緩みを彼らは目に焼き付けて。
 彼らは徒花の待ち受ける逢魔が辻の中心へと、歩を急ぐのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
悪いわね…貴女達を救う為にも、ここで貴女達を眠らせてあげる…。

【ブラッディ・フォール】で「魔薬の見せる幸福な悪夢」の「調薬師・エーブル」の力を使用(エーブルの服装と瓶を持った姿)。
【ユーフォリアドラッグメーカー】や【ゴートリック・セラピー】で幸せな夢や望みが叶った幻覚や在りし日の記憶等に包み、せめて少しでも幸せを感じさせ、感覚を断ってから(急所を魔槍で突く等して)解放して眠らせるわ…。

本当はこの力、元の使い手の関係(行った所業等)で好きじゃないのだけどね…。今回は彼女達の為、特別よ…
さぁ、幸せな幻想の中でゆっくりおやすみなさい…。
次の生は幸せになれるよう、祈ってるわ。



●法の慈悲か
 草草を分けて駆け抜け、呪われた影響か槍のように尖った足が幾つも飛び交い、目立つ派手な紅き吸血姫を襲う。
 それを只、柳のようにしなやかに流して躱しつつ、フレミアは微かに眼を伏せた。
「悪いわね……貴女達を本当に癒すことはできないけど、救う為にも、ここで貴女達を眠らせてあげる……」
 ――群れを為して現れる影朧に転生の望みは殆どない。
 それを考えれば――額を僅かに圧迫するように指で押し、そこを起点に心を研ぎ澄まし過去の戦を彼女は辿る。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にて、その力を顕現せよ!!」
 過去の記憶より引き出す異形の力は、夜闇の世に民を苦しめた毒<薬>の使い手。
 限りなき悪意と害意の下、偽りの幸福を以て民を支配せんとした悪鬼――巨大な薬瓶より妖しい煙を立たす、際どい黒装束の魔女。
(あれの所業を考えれば、あんまり使いたい力じゃないんだけど……)
 されど力は使いよう、亡霊の所業を考えれば度し難きモノも多々ある以上、ある種今更か。
 決意と共に力を抜くと、次々に突き刺さる蹴りの刺突を一瞬、身体に吸い込ませると――
「――特別よ。ゆっくりと、幸せの中で安らかに……」
 それを弾くように、体中から立ち込める薬煙が影朧達を吹き飛ばす。
 フレミア自身の身体には傷一つなく、ただ立ち込める燻煙の香は数多の影朧達より力を奪っていく。
(紙一重よね……)
 尚も薬瓶よりくゆらせる香の中、影朧達は力を失い膝を着いて立ち尽くしていた。
 隠れた眼から表情を詳しくは窺い知ること叶わねど、恍惚と頬を染め、口の端から涎輝かし――目隠しの下より零れる雫は。
 この影朧達の、在りし日の幸せな光景を見せているのかもしれない――そしてそれは、逢魔が辻の姉桜の齎す、偽りの癒しと紙一重なのかもしれないと自嘲しながらも。
 陶酔の中、“紙一重”を超える為に強く握りしめた槍は微かに震え――幸福の中に立ち尽くす影朧達へと。
「……おやすみなさい。来世の幸せを、祈っているわ」
 突き立てられる慈悲の刃は、苦痛を微塵も与えずに与えられるべき救いを齎していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタ(f22361)さんと。
「…ぅ…」
癒しや救いを求めている気持ちがひしひし伝わってきます。
困りました。何とかしてあげたいですが私には難しそう。
ならば。
「…ロベ…タ…さん、背後…頼み…す…」
【黄泉送り『彼岸花』】と国綱でせめてあちらの世界へ。
(早業、破魔、2回攻撃、鎧砕き、限界突破)
まあ。『あちらの世界』もあるかどうかわかりませんが。

ロベルタさんに背中を任せて私は主さんの元へ直進します。
極力苦しまないように斬り捨てて。攻撃は見切って回避です。
多勢なのでフェイントや残像も用います。勿論連携と協力も。

手助けやきっかけを私もできればいいのですが…。
それも難しいのは巫女としてはどうなのでしょう…。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
うー…。
ちゃんとあるべきもの…ってものに戻さないとね。

「う! わかったじょ、墨ねー」
墨ねーについて行きながら銃でサポートするよ。
死角から来た相手に【六つの牙】を撃ち込むじぇ。
(早業、破魔、クイックドロー、鎧砕き、第六感、視力)
狙うのは頭…がいいかな。少し不憫だけど…仕方がない。
相手が多いから一人に全弾を打ち込むことは控えるよ。
…大体一人につき二つか三つくらいかな~。撃ち込むの。
残弾はなるべく覚えておいて残り一つを撃ったらすぐ再装填。
それから相手の足を止めるのにも使うよ。
…牽制って効果あるかな。この状態で。
墨ねーの安全は僕が護る!安心して進んで欲しいじぇ。うぇ~い♪



●美しく断つ
 ――儚くも敗れ去った夢。希望は挫折の門を抜け、果て無き絶望と化し、影朧となった身は癒しではなく滅びを振り撒く。
 癒す筈の存在であった彼女らが、怨霊を呼び絶え間ない怨嗟の声で草草を悍ましく揺らしていく。
「……ぅ」
 何と悲しき光景だろうか。
 見るからに絶望に苦しみ、絶え間ない嘆きの声を挙げる――呪詛を籠めていない只の声すらもそれを聞く墨の肌に嫌な感覚を張らせた。
 これでは仮初といえど、癒しを求めて逢魔が辻の主を求めたとしても何らおかしくはない――
「うわ、うわ……」
 墨の隣に立つロベルタもまた、その光景を見て若干の息苦しさを感じていた。
 報われなかった生前の嘆きが嘆きを呼び、絶望が絶望を齎す怨霊の悪循環、百鬼夜行の光景を見ながらも、少女は回転式拳銃を取り出して墨と向き合い頷く。
「……ロベ…タ…さん、背後…頼み…す……」
「う! わかったじょ、墨ねー」
 ――あるべきものを、あるべき場所へ。
 切り揃えられた前髪の隙間から、決意の輝きを覗かせて、大刀をその手に逢魔が辻を駆け抜けていく墨の背を見送ると。
「……」
 駆ける墨の狙いに気付いたか、影朧達が呼んだ怨霊達が何処までも悍ましい、全てを呪うような金切り声を響かせた。
 だが墨はその手に持つ大刀に与える――想像を砥石とし、乱れ文の刃に。万物を、形無きモノすらも斬り伏せ、現世を別つ切味を。
 金を切る声の呪いすらも斬り伏せるように、森羅万象を断ち斬る国綱の刃が朧げな灯の中に走り、嗾けられた怨霊と嘆きに踊る影朧を斬り伏せていく。
 されど影朧も必死か、仮初の癒しを守らんと草叢を駆ける墨を阻みに飛び込んでいくが。
「Finché c' è vita, c' è speranza!」
 飛び込んできた三体の影朧の脳天は、一瞬の内に風穴を通された。
 名の通りに正しく六つの牙、刹那の早業で放たれたロベルタからの銃弾が、墨に迫った影朧達の脳天を貫き、その命を断っていたのだ。
(少し不憫……だけど、仕方ない)
 咄嗟に頭を射抜き命を終わらせた影朧には僅かに憐憫を抱きつつも。
 それでも、影朧達は百鬼夜行の怨霊を嗾け続けながら、時に自らが身体を張り数の利によって強引に墨を押し潰さんとするが。
 回転式弾倉に残った三つの弾丸を、また瞬きも許さぬ程に刹那の時で、通り過ぎる弾丸が影朧達の身体を射抜き、その動きを制する。
 そうして僅かに硬直した影朧を、右足を軸に一瞬、独楽のように激しく一回りしながら放つ墨の剣閃が影朧の命脈を断つ。
(っと、余裕を持ってリロードリロード!)
 乱戦の中、一度に何発も撃てるとなると、ついつい銃弾を籠めることを忘れがちになってしまう。
 その点、ロベルタの心掛けは善く、残りの一発を撃つや否や、回転式弾倉より即座に空の薬莢を落とし、新たな弾を装填する。
「……」
 僅かな再装填の隙間にて、ロベルタを厄介に思った影朧が跳躍せんとしても、それを補うように墨が同じように跳躍しながらそれを両断し。
 再装填を終えたロベルタが、着地の一瞬の隙を目掛け墨に尖った足を向けて飛び掛かる影朧へと、間髪を入れぬ銃撃で制する。
 一度の銃撃で全てを撃たない――余裕を持って、新手に対処できるように半分かそれ以上を残しつつ。
「うぇ~い♪」
「……」
 墨に肉薄した影朧の足を、一瞬で三つの風穴を開けることで制したロベルタが、離れたその場所から墨に向けて笑いかけてみせれば。
 墨も遠くにて口元を僅かに釣り上げて返し――そして、足を撃ち抜かれた影朧を擦れ違い抜けながら、万物を別つ刃を抜けさせて。
 ロベルタが残しておいた三つの弾丸を、また新たに迫った影朧達の脳天へ抜けさせて往き。
「墨ねーの安全は僕が護る! 安心して進んで欲しいじぇ」
 真に頼もしきロベルタの声が、突き進む墨の背を柔らかな風のように後押して。
(彼女達の手助けが出来ないのは、巫女として如何なものかとは思いますが……)
 せめて、まだ救いの余地がある徒花の紅桜へと――巫女としての矜持確かに、影朧を擦れ違いながら斬り伏せていきつつ逢魔が辻を進んで往くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『姉桜』紅桜華』

POW   :    紅桜抽出
【対象一人の罪や後悔を抽出した桜茶】を給仕している間、戦場にいる対象一人の罪や後悔を抽出した桜茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD   :    紅桜手鞠
小さな【紅桜でできた球体】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【罪と記憶を浄化する揺り篭】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    相枝相遭
【対象の罪を吸い開花する紅桜の枝】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【罪の意識】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●姉桜の遠き夢
 昔々のことでした。
 あるところにそれはそれは美しい紅色の桜と、それに負けず劣らず美しい白の桜がありました。
 二本の桜からはやがて対となる優しい桜の精が生まれました。

 紅い桜はお姉さん、白い桜は妹として。
 仲良く影朧を許し、癒して生まれ変わらせていきました。
 大変なことも沢山ありましたが、姉妹桜は二人仲良く支え合い、桜の精として多くの影朧を癒していったのです。

 ある時、白桜の妹は遠い遠いところへ行ってしまいました。
 お姉さんは深く深く悲しみました。
 悲しみ悲しみ、お姉さんは癒すことを忘れ失意の内に枯れて逝きました。

 ――しかしお姉さんはまた咲きました。
 自分が癒し導く筈の影朧となっても、それを知らずに。

 だから紅い桜のお姉さんは今も優しく光ります。優しく光って、哀しい影朧を引き寄せます。
 けれど影朧となってしまったお姉さんには、影朧を癒す力はありません。生まれ変わらせることもできません。
 けれどいつの日か、影朧を癒し続けている自分を知って、妹が会いに来てくれるように。
 使命を忘れていないよと、お姉さん桜は災いを引き寄せ続けているのです。

●狂った姉桜
「……ああ、なんてこと。あの子たちを、殺すなんて」
 影朧を倒し、逢魔が辻の中心にやってきた猟兵達を、その主である姉桜は悲しそうな瞳で見つめた。
 転生の望みは薄き存在、増してこの姉桜に転生の力は無く――それでも、歪んだ心で僅かな望みに賭けていたのだろうか。
 しかし姉桜は何処か悲し気に、そして猟兵達を憐れむように微笑むと、その両腕を広げて甘く声を響かせた。
「いらっしゃい。あなたも、あなたも、そこのあなたもいらっしゃい。他の誰が許さなくとも、私があなたを許します。私があなたを癒します。可哀想な可哀想な、愛しい影朧たち」
 ……猟兵達を新たに寄ってきた影朧と解釈したのだろうか。
 艶やかな手毬を弾ませながら微笑む姿と、それと同じくして匂い立つ影朧としての本能<敵意>
「私と一緒に遊びましょう。私と一緒に踊りましょう。あなた達が癒され生まれ変われるその時まで」
 ――真に癒し、生まれ変わらせるべき相手を止めるために。
 逢魔が辻の脅威を払う最後の戦いが始まった……!
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
説得する墨ねーの隣にいて周囲を警戒。墨ねーを護る。
説得とか効果がなかったら僕は違った手で攻撃するよ。
他の影朧達は僕たちの対策をとってきたからね。
この姉櫻のねーちゃんだけ対策とってこないわけないよ。
で。墨ねーは斬撃だから僕は蹴り技の【禁じ手】だ。
(早業、破魔、属性攻撃、鎧砕き、2回攻撃、多重詠唱)

連携と協力で攻める。連携や協力が墨ねーだけとは限らないよ。
顔とか腹とか蹴るのは抵抗あるから腕とか脚かな。あと手毬。
記憶がない僕に後悔とか罪とかの攻撃は薄いとは思うけど…。
こーゆー対応はとった方がいいから狂気耐性とオーラ防御。
転生ってゆーのができるかわからないけど白い炎で還って!


浅間・墨
ロベルタ(f22361)さんと。
妹への想いが再起を促したのかもしれませんが。
心苦しいですが彼女に…紅桜華さんにお伝えします。
貴女が桜の精でなく影朧になってしまっていることを。
初めは信じないでしょうが噛んで含ませるように言います。
説得するのに武器を所持していては意味がないので素手で。
ロベルタさんに預けます。
「…貴女で…もう救え…いんで…す。影朧…から…」
…言葉では難しいかもしれません…。

「…ごめ…なさ…」
今回も前回と同じく国綱を用いて【逆波】を使います。
(早業、破魔、2回攻撃、鎧砕き、限界突破)
ロベルタさん達の攻撃から相手の技を観察し攻めます。
勿論連携や協力は必須でロベルタさん以外とも可です。



●実に繋げぬ徒花へ
 姉桜の周りに艶やかな紅色の桜花がひらり、ひらりと舞い続ける。
 その主は対峙する猟兵達へ柔らかく、されど何処か狂気を孕んだ笑みで迎え、手毬を弾ませ続けている。
 前髪の陰りに眼へ浮かぶ悲しみを隠し、墨は鞘に納めたままの大刀をロベルタに差し出した。
「……あ……って…だ……」
「気を付けてね、墨ねー」
「お……し…す」
 幻の桜舞う朧な灯の中を、着物姿の美女が相対し合う――絵巻の中の光景が如き中、敢て刃を預けた墨の背をロベルタは見守る。
 万一があれば、すぐさま助けられるように――少女は小さく、草草の騒めきに隠すように詠唱を紡ぎ始めた。
「Non puoi scappare! È rimasto solo il risultato della combustione……」
 その詠唱を何処か送り出す激励の掌の如く、背中に感じながら、墨は微笑む姉桜のその目の前に歩を進めていく。
「……」
 掲げた両掌は無手であることを、一先ずに戦う意志の無きことを示し。
 感じられぬ戦意と、伺う悲痛の空気に姉桜は相も変らぬ笑みのまま、墨へその手を差し出した。
「いらっしゃい。怖がることはありません。私と一緒に遊びましょう。一緒に遊んで、心を癒しなさい……」
 弾ませ続けた手毬をその手に、されど投げることもなく――微笑む姉桜に静かに、墨はその眼を向ける。
「…なた、は……」
 それを言うのは堪らなく辛い。
 されど言わなければ、自覚させなければ彼女は本当の意味で救われることは無いだろうから。
「も、う……影朧、です……」
「……」
 ――後戻りはできない。
 その言葉を言われてもなお、姉桜は微笑みを変えないまま、ただ黙って墨を見つめていた。
(墨ねー……)
 それを背後から、絶えずに詠唱を紡ぎ続けているロベルタは心配そうに見遣る。
 ――逆上させてしまう可能性は大いにある。万一暴走でもして手に掛けられようものなら、それは止めなければならない。
 冷静に動向を見守るロベルタの視線の下、墨は諭すように姉桜へ目掛けて決定的な言葉を放つ。
「……貴女で…もう救え…いんで…す。影朧…から……」
 ――突き付けてしまった。
 影朧である以上、桜の精として影朧を癒し救う特性は最早無い――それどころか、仮初の許しと癒しを求めた影朧を引き寄せてしまう。
 墨の言葉に姉桜は僅かに身体を震わせると、狂気を孕んだ悲痛の叫びを挙げた。
「だとしても……万一が、万一があるかもしれないっ……!」
 分かっていて振舞って、それで尚止められない――それでも、突き付けられた自覚すべき現実は姉桜を確かに揺さぶり。
 涙交じりに叩きつけられんとする、桜の手毬が墨に向かえば――
「!! 墨ねー、あぶない!!」
 白く盛る炎を纏った神速の蹴りが、紅桜の手毬諸共、姉桜に突き刺さり吹き飛ばして行く。
 続けられた詠唱によって極限まで高まったそれは、決して少なくない衝撃を姉桜に与え――蹴りの最中、ロベルタは預かっていた刀を墨へ投げ渡す。
 ……その時、舞い散る白き火炎の弁に、どこか懐かしさを覚えながらも、姉桜は止まらず。
「可哀想な影朧達。この手毬の中で遊びなさい。ゆっくり遊んで……」
 身を焦がしながらも立ち上がり、姉桜は狂気を孕んで微笑みながら。
 子供と戯れるかのように、彼女はロベルタへ目掛けて手毬を放つ。
 一応、狂気への耐性はつけておいたが抵抗の意志あらば無力化されるそれは、ロベルタを飲み込むことなく、虚しく転がっていく。
 尤も、吸い込まれたとて記憶なき彼女には、過去の罪過は牙向くことは無かったかもしれないが……。
「……」
 それでも弾ませ転がされる手毬の軌道を、ロベルタに向けられた投擲から見切った墨はそれを巧みに躱しつつ、姉桜へと肉薄し。
 その唇に謝罪の意を込めて動かした後に――その身体を、静かに刃で斬り伏せて。
「転生ってゆーのができるかわからないけど白い炎で還って!」
 崩れた体勢の姉桜を、ロベルタの繰り出す蹴りが齎した、白き火炎が再度爆ぜて行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
癒す事ができない貴女の行為は妹を悲しませる行為でしかないわ。…貴女も解ってるのでしょう?

【創造支配の紅い霧】を発動。
紅い霧と【念動力】で彼女を包み、拘束。
彼女を【吸血】して血から彼女の「本来の力」(桜の精としての癒しの力)を【情報収集】し解析。

この空間ではわたしが法則さえも全てを支配し、あらゆる事象を具現化する…。
先程収集した情報から彼女の癒しの力を疑似的に再現・具現化して癒し、浄化して彼女を転生へと導くわ。

貴女の力で貴女を癒す…ここに居たって妹には会えないわ。もう、お休みなさい…


本当は妹さんを一時的に蘇生や具現化できれば良いのだけど…流石に面識もなく、姿も知らない者だと難しいわね…。
なんとか



●紅の癒し
 ――仮初の慰めであったとしても、そこには確かに一時の安らぎを得た影朧もいるのだろう。
 されど、救いを与えられぬ仮初は所詮は仮初、ただ影朧を矢鱈に引き寄せ報われぬ一時を与え続けるのは――
「貴女も、それは分かっているのでしょう?」
「やめてっ……! 私は、救いたい、救いたいのっ……!」
 そんなものは影朧にも、何よりも妹にとってもそれを悲しませる行為でしかない。
 フレミアの言葉に姉桜は頭を抱え、嘆きの声を挙げながら桜の枝を取り出し振るう。
 艶やかに咲く姉桜自身の如き紅桜を咲かす罪は、フレミアのそれか、或いは姉桜自身のそれか。
 ただ哀しきその光景を瞳を伏せながら見据えると、フレミアは鮮血色の霧を以てこの場を包み込む。
「全てを満たせ、紅い霧……夢も現実も、全てはわたしの思うまま……――ようこそ、わたしの世界へ」
 立ち込める赤い霧は蛇のように、そしてフレミア自身の放つ不可視の掌は姉桜を押さえ付ける。
「離して! 影朧を、早く、早く……!」
 振り乱される枝と、其処に咲く紅桜の花弁が涙の代わりに舞い散る。
 その中を静かに、徒花の足掻きを見せる姉桜の背後に回ると、彼女を柔らかく抱き締めて――フレミアは、その首筋に軽く牙を突き立てた。
「……ああっ!!」
 仄かに香る桜の甘きと、血に籠められた識より感ずるは、影朧となり果てるまでの姉桜の記憶。
 桜の精として生まれたが故の癒しと転生の力――彼女に似た白き桜と共に、影朧と戯れ赦し、癒しを与え転生させてきた在りし日の光景を見ると。
「……貴女自身を癒しなさい。他ならぬ貴女の力で」
 口を離し、紅い霧の中、全ての事象を操れる中でフレミアは与える。
 罪を吸い咲く紅桜の花弁と香を持ち、罪を癒し転生に導く力を――他ならぬ己が力によって、姉桜の顔に安らかなものが浮かぶ。
 本来ならば妹桜との再会を与えるが筋であったのかもしれないが……。
「難しいわね。妹さんに面識も無いし……」
 それでも与えられた癒しがせめて彼女の救いとなるようにと――フレミアは静かに祈るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四季乃・瑠璃
緋瑪「妹との別れかぁ…お互い大事に思ってたんだろうね。凄くよく解るなぁ」
瑠璃「私達みたいにね。でも、だからこそ止めてあげないと」
緋瑪「妹桜はきっと、姉桜にこれ以上罪を重ねて欲しいとは思ってないだろうしね」
瑠璃「始めよう。救う為の殺しを」

【チェイン】で分身

緋瑪「救う力を失った貴女は陽朧を惑わせるだけ!それは誰の為にもならないし、妹さんだって喜ばないよ!」
瑠璃「貴女達が優しい桜だったのはよく解る。でも、だからこそ、妹さんがそんな事喜ばないのは貴女が一番良く知ってるはずだよ!」

瑠璃が接触式ボムによる爆風やK100による銃撃で鞠を迎撃し、緋瑪が大鎌で直接攻撃。

非常に苦々しい感じで追い詰め…終わらせるよ



●別たれた魂
 それでも尚、姉桜は微笑み、猟兵達に向けて両腕を広げた。
 彼女の放つ柔らかな癒しの気配は、触れれば確かに安らぎを齎すのかもしれないが――それが仮初にしかならぬことを知っている緋瑪は目を微かに伏せながら呟いた。
「妹との別れかぁ……お互い大事に思ってたんだろうね。凄くよく解るなぁ」
「私達みたいにね。でも、だからこそ止めてあげないと」
 二つの魂を二つの身体に分け、主人格の瑠璃が転がってくる手毬を爆弾で吹き飛ばし。
 広がる桜の香の中、引き寄せられるような感覚が襲い来るも、気を確りと持ち踏み止まりながら、改めて緋瑪が瑠璃に大鎌を握り締めながら決意を示した。
「妹桜はきっと、姉桜にこれ以上罪を重ねて欲しいとは思ってないだろうしね」
「始めよう。救う為の殺しを」
 ――出来るのは、自覚無き罪をこれ以上重ねないようにするだけ。
 例えそれが罪だとしても、それが彼女達の、二人で一人の殺人姫達の突き進む決意であり覚悟。
 晴れた爆風の先に見える、桜花の弁を集め手毬を作る姉桜を彼女達のオッドアイが見据えると。
「……」
 手毬を弾ませながら、どこか虚ろに笑う姉桜の姿に胸が痛む。
 手毬を形作る紅桜の花弁の、鮮やかな色と仄かに香る甘さは在りし日の安らぎを誘う――のかもしれないが。
 次々と弾んでいく手毬を、大型拳銃で瑠璃が撃ち落しながら、緋瑪が大鎌に仕込まれた火薬を爆ぜさせ、その勢いを以て姉桜の下へと斬り込む。
「救う力を失った貴女は影朧を惑わせるだけ! それは誰の為にもならないし、妹さんだって喜ばないよ!」
「貴女達が優しい桜だったのはよく解る。でも、だからこそ、妹さんがそんな事喜ばないのは貴女が一番良く知ってるはずだよ!」
 ――緋瑪の言葉に瑠璃が続ければ、頭を抱えながら嘆く姉桜の姿に、多重人格者の胸は悲しく痛む。
 でも、それでも。
 これ以上の罪を重ねないように、本当の意味で姉桜が妹桜に会える、その日の為に――殺人姫は、苦々しくも躊躇わぬ決意の刃を振り下ろすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャーリー・ネィド
【かまぼこ】
彼女が妹さんと別離れたのはいつの事かはわからない
どのくらい長い間彼女が悲しみぬいたのか想像もつかない
でも、悔やんだって時は戻せない
悲しみに囚われてたって前には進めない
だからボクたちが手を貸すよ
…なんの【慰め】にもならなくても、せめて

【乱れ撃ち】+【援護射撃】で彼女を退けながらウィーリィくんの傍に駆け寄り【手をつなぐ】事で【鼓舞】して罪や後悔から立ち直る【勇気】を分け与える
「行くよ、ウィーリィくん」
手鞠を【スナイパー】で撃ち抜きながら【クイックドロウ】で彼女の孤独と悲しみを終わらせるために

大丈夫
妹さんとの思い出が、きっとあなたを正しい場所へと導いてくれるよ


ウィーリィ・チゥシャン
【かまぼこ】
手土産に持参した桜餅をお供に、彼女の淹れた桜茶を敢えて飲み干し、「ごちそうさま」を言った上で彼女に告げる。
「あんたは今まで多くの影朧を癒し、許してきた」
「だけど、俺にはあんたの癒しも許しも要らない。憎んでくれてもかまわない」
「それでも、俺達はあんたの悲しみを止めたい。あんた自身が目を背けている悲しみを」
俺を苛む罪や後悔を【気合い】で堪え、彼女に道を指し示す。
「あんたはあんた自身の使命は忘れちゃいない」
「だからもう一度あんたが生まれ変わり、やり直せば妹さんと会えるかもしれない」
もちろん、妹と再会できる保証はない。
それでも祈りを込めて【神火の竈】で彼女とその罪と過ちを焼き払う。



●終いに向けて
「なあ、良かったら、これ食べないか?」
 白き煙を噴き上げ、呆然と立ち尽くす姉桜の耳に、快活な声が響いた。
 目を向けて見れば、薄紅の鮮やかな煌めきを桜の葉が包む餅――桜餅をその手に、姉桜にウィーリィが声を掛けた。
 異様と思えば異様と思える光景に、姉桜は暫し目を瞬かせてみると、彼女はその手に仄かに紅が差す茶を生み出すと、湯呑と共にウィーリィに差し出した。
「……いただきましょう。代わりにあなたはこれをお飲みなさい」
「ありがとな」
 受け取った桜茶を躊躇いもなく飲むウィーリィと、彼から差し出された桜餅を細々と食していく姉桜。
 やや離れたところでそれを見つめるシャーリーの存在に気付いたか、姉桜は穏やかな微笑みをシャーリーへと向けた。
「あなたは?」
「あっ、ボクは……いいよ」
 否定をすれば姉桜は執着することも無く、少年と共に一時の茶会に興じていく。
 その様子を眺めるシャーリーは、不安そうに眉を眉間へと寄せた。
(ウィーリィくん……)
 情報が正しければ、彼が飲んでいる桜茶は罪や後悔の意識を抽出し、飲めばその力が心を蝕むもの。
 今だってウィーリィは耐えているように見えるが、水面下では必死に耐えているのだろう――そして、顔色一つ変えず、桜餅を食べ続ける姉桜もそれに気付いているのだとも。
「結構な御手前です」
「あんたもな。ごちそうさま」
 桜餅と桜茶を交換し、互いの妙を称え合う。
 紅桜舞い散る中、茶の余韻を身体を蝕む罪悪感と後悔に塗り潰されそうになりながら、ウィーリィは言葉を発した。
「なあ」
「はい」
「あんたは今まで多くの影朧を癒し、許してきた」
「ええ。それはあなたも例外でありません。さぁ、あなたも」
 ――この誘いは受け入れてはいけないし、言わなければならない。
「だけど、俺にはあんたの癒しも許しも要らない。憎んでくれてもかまわない」
 ――この悲しみに顔を歪める姉桜を、今生で救う為には。
「それでも、俺達はあんたの悲しみを止めたい。あんた自身が目を背けている悲しみを」
「……」
 胸が内側から千々に引き裂かれそうな罪悪感を堪え、真っ直ぐにウィーリィが見つめていると。
 やがては耐え切れなくなった姉桜が、全てを飲み込む紅桜の手毬を産み出し始めた。
 その姿を見、シャーリーはマスケット銃を構え狙いを研ぎ澄ましながら思う。
 ――このお姉さんは、一体どれだけ長い間、妹さんと別離していたんだろう。
 どれだけの長い間、苦しみに苦しみ抜いてきたんだろう――影朧として蘇ってもう出来ることがない癒しを振り撒き続けて……。
「ウィーリィくん! もうっ……!」
 頭を抱えながら、影朧の本来の世界への敵意のままに、姉桜は半狂乱に手毬を作り出し嗾ける。
 それを咄嗟に、マスケット銃から放つ熱線を以て牽制しながら、シャーリーはウィーリィを引き寄せるように近くへと赴く。
「行くよ、ウィーリィくん」
「……ああ」
 救いの道はただ一つ――震える互いの手を制し合うように、シャーリーは彼の手を強く握っては離し。
 マスケット銃を片手に半狂乱に悶え、叫ぶ姉桜に向けて言葉を語る。
「あなたがどれだけ悩んで苦しかったのかボクたちには分からない。けど……せめて」
 過去はどう足掻いたところで変えることは叶わない。
 ならば出来ることは――この悲しみを、終わらせること。
 シャーリーの静かな声と共に放たれた閃きが一つ、姉桜の胸を貫き、最後の抵抗を奪い去る。
「……分かってた。分かってたけど、でも」
「あんたはあんた自身の使命は忘れちゃいない」
 やり方はきっと多くを間違えていたのかもしれない。
 齎された結果をみれば、諸々を考えたとしても災い以外の何物でもないのかもしれないが――それでも。
「だからもう一度あんたが生まれ変わり、やり直せば妹さんと会えるかもしれない」
 慚愧から救い出してくれたシャーリーの温もり残るその手に、その熱を盛らせるようにウィーリィは傷つき、もう長くなき姉桜への引導の火炎を渡す。
 炎に包まれ、それでも微笑む姉桜へと、せめてもの言葉をシャーリーは贈る。
「大丈夫。妹さんとの思い出が、きっとあなたを正しい場所へと導いてくれるよ」
 ――最後の最後に救われた姉桜は、炎に焼かれながらも何処までも穏やかに微笑んでいた。

●徒花の散る時
 逢魔が辻を覆っていた不穏な気配が晴れていき、夏の身を焦がすような熱が肌に触れていく。
 ここに、逢魔が辻の主は、哀しき徒花は倒されたのだ。
 これでこの地に集っていた全ての影朧も、そしてそれの犠牲になった者達も浮かばれるだろう。

 全ては終わったのだ。
 徒花で終わるものでしかないと分かっていても、自らの執着を止められなかった過去。
 それが仮初でしかないと分かっていながら、求めてしまった過去も。
 ――その過去を討つために訪れた勇士を始めとする無力な民を食い物とした、救いようのない過去も。

 結果として毒花となってしまった姉桜が救われる道は、倒す以外に他なかったかもしれない。
 だが猟兵達は、形は違えど姉桜に寄り添い、彼女を諭していった。
 故にあの姉桜は最期に救われたのだと思いたい。
 来世で、恐らくは妹桜と再会し、今度こそ使命を違わずに生きていくことを……祈らずにいられない。

 そして猟兵達は行く。
 そのまま日常へと帰っていくもの、死した者達の弔いを行う者、姉桜の幸福な来世を祈る者……その形は多々あれど。
 今はただ、この地を一つ払った猟兵達は、各々の心の赴くままに戦の後へと行く。

 ――その彼らに通り過ぎる一つの爽やかな風があった。その風の中、仄かな紅桜の香り潜む中に、紅白の花が仲良く戯れ笑う声が聞こえたような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月14日


挿絵イラスト