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全て忘れる物語

#ダークセイヴァー #同族殺し

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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 ――忘却は救いだ、と。誰かが言った。

 キライよ。キライ。ダイキライ……。
 抑揚のない少女の呟きが無感情に淡々と繰り返される。
 華奢な身体に不釣り合いな紫薔薇の大剣が、人馬一体の亡者を薙いだ。
 捨て落とされた影は他の亡者に喚ばれて、切られても潰されても何度でも甦る。
 少女は邪魔な亡者を切って道を作りながら、真直ぐに古びた洋館を目指した。
 邪悪なオーラが絡みついた悪魔の結界門。これを破ればアイツがいるはずだ。
 『   』を対価に、紫薔薇の真の力を解放された。
 死色に咲き誇る宝石剣が結界を噛み砕く。少女は破壊した門の中へと歩を進めた。

 ……あれ、でも……ワタシ、何の為にココに来たんだっけ?
 ……まあ、いいや。胸がざらつくの……消えて?

 『忘却のモーラ』。
 彼女は悪魔の力も打ち砕く秘剣を、自身の記憶を対価に使用するオブリビオンだ。
 力を使う度に記憶を失くし心を失くし、目的を失くしたまま彷徨い続ける。
 今となってはその時々の気まぐれな感情のみで動く、壊れた機械人形のような少女。

 そんな彼女が、古の大悪魔の血を引く吸血鬼が眠る、山奥の洋館に襲撃を仕掛けた。
 吸血鬼『愁魔』は酷く引き籠りがちなオブリビオンで、自らが積極的に人間を襲うことは殆どない。しかし、害虫が視界に入らないように、と。配下『シャドウライダー』を大量に生み出し、洋館の周囲一帯に入る生き物を殲滅させていたのだ。
 配下一体一体は大した強さではないが、集団で行動する上に、命を落とした仲間を操る能力を持つ為、一度戦闘となれば数を減らすことが中々に難しい敵となる。
 じわじわと山奥から人里へ殲滅領域を広げていくシャドウライダーは、早々に倒さなければならないオブリビオンであるはずだ。しかし、その主となる愁魔の洋館は、非常に強固な結界門の中に隠されていたので、今まで発見出来なかったのだろう。

 忘却のモーラが、何故愁魔の洋館を襲うに至ったのか……それは不明なままだ。
 彼女自身も、その理由をもう忘れてしまっているのだから。
 それでも彼女は邪魔者を排除しながら襲撃を続ける。
 配下、館の主、そして記憶喪失の少女。
 大量のオブリビオンを一掃出来るこのチャンスを逃すわけにはいかない。

 ――全て忘れる。忘れさせられる。何も残らない物語。
 記憶を奪う剣を猟兵にも振るう少女の姿を、最後に映して。
 グリモア猟兵は予知夢から目覚めた。


「今回見た予知はそんな感じだよ。同族殺し……の一種なんだろね」
 グリモア猟兵メリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は、改めて依頼の流れを説明する。今回はオブリビオンが大量に出てくるけれど、順番を間違えると詰んでしまうので、気を付けて欲しいを前置きをした。

「転送出来るのは、配下が群がっている領域外の山の入り口までだよ。『忘却のモーラ』が山へ侵入するタイミングに合わせて、こちらも突撃するんだ。まず大量の『シャドウライダー』を倒しながら、山奥の洋館を目指しておくれ。その時、絶対モーラを追い抜かないよーに!」
 洋館の結界を破れるのはモーラだけなのだ。よって、モーラに攻撃を仕掛けて先に倒そうとする策も禁止とする。メリーは小さな指でバッテンマークを作った。

「で、洋館に侵入したら『『愁魔』メルスィン・ヘレル』がいる。先にこいつから倒すよ。三つ巴の戦いだけどさ、愁魔はなかなかの強敵だ。ボス級のオブリビオンを二体同時に相手にすることなんてないだろ? モーラのヘイトは愁魔に向かうようだから、一緒に倒しちまった方が効率的ってね。ちなみにこいつを倒せば残った配下も消滅する筈さ」
 だから、ここでもモーラに攻撃するのは禁止だ、と二度目のバッテン。

「最後に愁魔を倒し終わった後なんだが……ほら、モーラは強力な攻撃をする時に、自分の記憶を対価にするだろう? 愁魔を倒した後には、また空っぽになっちまうのさ」
 全てを忘れた彼女は、何も分からなくても猟兵たちへ剣を構えるだろう。
 その剣は、他人の記憶も奪おうとする。
 猟兵の記憶も奪って、全てを忘れて忘れられて、また独り彷徨うつもりなのだ。

「この時点で、モーラはかなり消耗してるはずさ。速やかに退治するもよし、伝えたい言葉があるなら説得してみるのもよし……まあ、どちらにせよ骸の海には還ってもらうことになるけどね」
 その辺りは現場の猟兵にお任せする、と。メリーは説明を締めくくった。
「この忘れんぼうの物語はどんな結末迎えるんだろうねぇ……それじゃあ頼んだよ。よろしゅうにー!」


葉桜
 OPをご覧いただきありがとうございます。葉桜です。
 忘れることは自己防衛反応とも言いますが。
 程度を超した忘却は、狂気にも凶器にもなるようです。

 第1章。集団戦『シャドウライダー』。
 第2章。ボス戦『『愁魔』メルスィン・ヘレル』。
 第3章。ボス戦『忘却のモーラ』。

 ルールはOPで説明した通りです。
 第1・2章でモーラに攻撃するのは絶対ダメです。
(程度によっては苦戦・失敗判定になるので、採用を見送るかもしれません)
 第3章は、戦闘でも説得でもお任せ致します。

 ユーベルコードは指定した一種類のみの使用となります。
 プレイングはOP公開から募集開始です。
 必要最低限の青丸が集まりましたら、締切の日時をマスターページにてご連絡致します。それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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第1章 集団戦 『シャドウライダー』

POW   :    戦力補充
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【シャドウライダー】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
SPD   :    人馬一体
自身に【世界に蔓延する絶望】をまとい、高速移動と【その移動により発生する衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    代弁者
【鞭を振るい、死した人々】の霊を召喚する。これは【怨嗟】や【現世への未練】が転じた【呪い】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クラリス・シドルヴァニス
ここがダークセイヴァー…噂に聞いたとおり、肌寒くて薄暗いわね。
何が原因かは分からないけど、オブリビオンさえも正気を保てなくなるなんて、怖い世界ね。

あれが敵の騎兵ね…私も、新しく手に入れた力を試してみるわ。魔法のペンダントに〈祈り〉を込めて、聖なる獣ユニコーンを召喚するわ。そしてその背中に〈騎乗〉し、【ユニコーンチャージ】で突撃よ。私が先陣を切って突入し、敵の隊列を崩しながら押し込んでいきましょう。手綱を操りながら〈動物と話す〉技能で語りかけ、心を通わせあって技を強化して戦うわ。近くに仲間がいれば、うまく連携して敵を効率よく仕留めていきたいわね。

※アドリブなんでもおーけー


夜桜・雪風
アドリブ歓迎
共闘歓迎

敵がたくさんいて幸せです。
狩りの時間と行きましょう。
命の駆け引きは大好きなんですよね。

私はあまり敵と近接しないように後方に位置取りします。
シャドウライダーの集団に対して高速詠唱してUCで範囲攻撃します。
シャドウライダーから攻撃が来るようでしたらオーラで防御して反撃しますね。

せっかくのバトルですし派手に行きましょう。
一つ一つの戦いを素敵な思い出にしたいですからね。
お互い恨みっこなしですよ。
本気でぶつかり合う刹那の楽しさは何物にも代えがたいです。




「ここがダークセイヴァー……噂に聞いたとおり、肌寒くて薄暗いわね」
 クラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)は氷色が美しい切れ長の瞳で、木々の合間の曇天を見上げていた。このオブリビオンに支配された世界には、オブリビオンさえも正気が保てなくなる狂気が潜んでいるらしい。
「何が原因かは分からないけど、怖い世界ね」
「どんな世界だろうと、誰が敵だろうと。私たちのやるべき事に変わりはありませんわ」
 夜桜・雪風(まったりデイズ・f00936)はゆったりとした口調で、けれどきっかりと。穏やかな笑顔で言い切った。その胸の中には、戦いに飢える心を秘めている。
 コントロールの効かない狂気ではなく、戦う事こそ生きる真の意味だと信じて疑わない自分の生き様を貫いて、雪風は今日も戦場に身を投じるのだ。
 さあ、行きましょう。美しい銀髪と金髪の並ぶ影が山の奥へと消えて行った。

 随分と先の方で木が倒される音が派手に響いた。恐らく『忘却のモーラ』と『シャドウライダー』の戦闘が始まったのだろう。戦闘音を聞きつけたシャドウライダーの群れが、次々と木陰から姿を現して加勢へ向かおうとしている。
「敵がたくさんいて幸せです。狩りの時間と行きましょう」
「あれが敵の騎兵……モーラの邪魔をさせないように、この辺りで一掃した方が良さそうね。新しく手に入れた力を試してみるわ」
 戦闘開始の合図に目を輝かせる雪風は後衛を担う為一旦下がり、魔法のペンダントを握りしめたクラリスが前へ出る。
「いでよ、我が眷属よ」
 祈りを捧げたペンダントから召喚されたのは聖なる獣、ユニコーンだ。
「まずは敵の隊列を崩すわ。行きましょう」
 聖騎士クラリスはユニコーンに騎乗して、背中を向けていたシャドウライダーへ【ユニコーンチャージ】による全力突進――鋭い角で貫いて、馬も騎手も宙へと放り投げた。
 先陣を切ったクラリスに、一瞬で亡者が群がる。
「そのまま直進。後ろは無視して」
 手綱を引いて軽く指示を告げるだけで、クラリスの意図はユニコーンに伝わった。前方の敵だけに集中して角で薙ぎ、亡者を引き連れながら前進する。
「いいですね、せっかくのバトルですし派手に行きましょう」
 前衛が信じていたのは、後衛からの援護射撃だ。
 後ろに控えていた雪風は嬉々として【鈴蘭の風】を喚んだ。クラリスを狙うシャドウライダーの集団を、荒れ狂う暴風に乗った花びらが纏めて飲み込んで行く。

 薙ぎ倒される影の群れ――しかし、一人でも仲間が残っていれば、倒された者を何度でも甦らせて戦力補充するのが、この敵の厄介なところだ。地に伏した影がもう一度立ち上がり、鞭を振るう。死霊も喚び寄せて更に手数を増やしていく。
「ああ、また敵を増えて……ありがとうございます。命の駆け引きは大好きなんですよね」
 うっとりと礼を告げる雪風に亡霊の怨嗟を宿す手が伸びるが、それも暴風が弾き、花びらに切り刻まれた。こうして一匹一匹手折るのもいいけれど、
「こっちよ! そんな鈍間な馬で、私の眷属に勝てると思ってるの?」
 クラリスが挑発によって敵を集めてくれている。進路を邪魔する敵は角で貫き、復活して這い寄る影は蹄で蹴飛ばし。ユニコーンの騎士様は実に気高く美しく戦っていらっしゃる。この絵に鈴蘭の花びらが舞ったら、さぞかし素敵な思い出となるだろう。
「お互い恨みっこなしですよ。全力をお届けします!」
 高速詠唱で練りに練り込んだ魔力を込めて、鈴蘭の嵐が今一度舞う。
 集められた敵を一匹残らず仕留めるように、雪風は指揮者のように花びらを操った。
 
「この辺りは片付いたわね。次に行きましょうか」
「ええ。次も楽しみです。本気でぶつかり合う刹那の楽しさは何物にも代えがたいですから」
 ユニコーンの首を撫でるクラリスの横で、雪風は幸せそうな笑みを浮かべていた。
 二人はその後も道中の敵を撃破しながら、モーラを追いかけていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

同族狩りってどうして現れるんだろうな。
でもちょうどいい時に来てくれた。

モーらには攻撃しないように気を付ける。
基本存在感を消し目立たない様に立ち回る。UC炎陽に破魔の力を乗せシャドウライダー・召喚された霊問わず、可能な限り複数相手に、できなければ確実に倒せるよう炎を集中させるように相手に放つ。
接近されたら直接武器で攻撃なり防御なりの対処。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。回避しきれないものは黒鵺で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛・呪詛耐性、オーラ防御で耐える。




 死の臭いが強い山奥の木陰。
 気配を消した黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)の前では、同族殺し『忘却のモーラ』が『シャドウライダー』と戦闘していた。
「消えて……邪魔」
 身の丈程の大剣を軽やかに振るう少女は、馬も騎手も復活した亡霊も、見境無しに薙いでいく。それは機械的な作業をただ繰り返しているようにしか見えなくて、モーラの意思は欠片も感じられなかった。
(同族狩りってどうして現れるんだろうな)
 オブリビオンを狩るオブリビオン。同じ過去から染み出た化物でも、ヒトが一人一人異なるように全く同じ存在ではないのだから、争いが起きてもおかしくはないのか。
 理由は不明だが、調度いいタイミングで登場してくれたのは確かだ。

 瑞樹はモーラの視界には入らないように立ち位置に気を付けながら、彼女の背後に残ったシャドウライダーを殲滅することにする。
「炎よすべてをなぎ払え!」
 喚び起こしたのは、金谷子神及び三宝荒神の清めの炎。モーラが倒した影から甦った亡者も、召喚された亡霊も、侵入者を倒すべく集合してくる新たな影も。
 全て、【炎陽】で灼き尽くしてしまえばいい。

 なるべく撃ち逃がしの無いように狙いを定めたつもりだが、この死の影は中々にしぶといようで。積み重なる焼死体に隠れていた一体のシャドウライダーが、鞭を振るって死霊を喚ぶ。現世への未練でドロドロになった呪いが具現化して瑞樹に襲い掛かった。
「いい加減眠れ」
 暗殺者の瞳には鈍間に感じる攻撃を避け、具現化した黒い影を左手の黒鵺で切り裂いた。瑞樹の本体でもある大ナイフは、その辺の呪いには飲み込まれない神力が添わっている。
 そしてその足で残るシャドウライダーまで跳躍すると、右手の胡が閃く。
 破魔の力を込められた一刀が、人馬一体の影を真っ二つに切り分けた。

 戦闘を終えた瑞樹が視線を前方へ移すと、モーラの銀の瞳と目が合った。
 一瞬息を飲むが――モーラは何事も無かったかのように進行を続ける。どうやら彼女を攻撃したり襲撃の邪魔をしようとしなければ、敵とは見做されないようだ。
(今のところは、だけどな)
 再び気配を消して、瑞樹はモーラの後を追い続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シエル・マリアージュ
記憶を対価に力を得る……私とは真逆の存在。
私は自由になったとき、それまでの血と罪に染まった過去を抱きながら贖罪のために生きると誓ったから。
そんな想いを胸にモーラの動きを観察、彼女の後を追うようにこちらも侵攻開始、戦闘知識で戦況を見極めてモーラより先に進まないように戦う。
「葬焔の胡蝶」で召喚した蝶たちに破魔の力を付与してシャドウライダーが召喚する霊に放って道を切り開き、2回攻撃で今度は合体で強化した葬焔の胡蝶をシャドウライダーに向けて放つ。
敵が多いので残像やフェイントなどで敵の狙いを狂わせながら、念のためオーラ防御で守りを固め、時には敵を盾にしながら敵に包囲されないように立ち回る。


シェーラ・ミレディ
オブリビオンが潰し合うのは歓迎するところだが、襲う側が理由を失念しているのは気にかかる。
見れば、どうも少女のようだし……悪い想像ばかり、できてしまうなぁ。何かしら、推察できるような材料があれば良いのだが。

手始めに『落花流水』。
精霊に呪いを防いでもらい、僕自身は4丁の精霊銃で敵を蹂躙していこう。
弾丸には破魔の力を持たせ、敵が纏まっているのを狙って制圧射撃。
先へと進みながらオブリビオンの少女を援護し、時間を稼いで結界を解いてもらうぞ。

生憎だが、影の騎手よ。貴様ら如きに止められる戦力ではない!
さっさと主を連れ出してくるがいい!

※アドリブ&絡み歓迎




 『忘却のモーラ』が洋館潜む山奥へ侵入するタイミングに合わせて、シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)とシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は、一定の距離を空けて追跡を行っていた。
「記憶を対価に力を得る……私とは真逆の存在」
 シエルはとある教団の処刑人として育てられた過去を持つ。教団が壊滅して自由になった時、彼女はそれまでの記憶を捨てる事は選ばなかった。
(血と罪に染まった過去を抱きながら贖罪のために生きると誓ったから)
 それでは、記憶を失い続ける少女は何のために生きているのだろうか。
「オブリビオンが潰し合うのは歓迎するところだが、襲う側が理由を失念しているのは気にかかる。見れば、どうも少女のようだし……悪い想像ばかり、できてしまうなぁ」
 シェーラの眼前では、調度モーラが『シャドウライダー』と会敵したところだった。

「キライ……アナタも覚えがないんでしょ、ワタシと同じ。
 ……ドレか分からない。なら、ゼンブいらない……消えて」

 大剣が唸り敵を喰らう轟音が響く中、シェーラとシエルは思わず顔を見合わせる。
 今、変わった……。先程から「キライ、キライ」と、壊れたオーディオのように繰り返されていた独り言の台詞が、確かに変わったのだ。
 モーラはこの戦いの中で更に記憶を失っていく。失われた記憶は元には戻らない。
 このまま物語を進めれば、彼女の真実は何も分からないまま、終わりを迎えるのかもしれない。全て忘れて忘れさせる。それが彼女の願いのようだから。
 けれど、こうして彼女の物語に介入していけば、見つけられるものがあるのではないだろうか。隠された真実に繋がる微かなヒントも逃さぬように、シェーラはその紫電の瞳を光らせ続ける。

 モーラの周囲には、戦闘を察知したシャドウライダーが次々と集合してきた。
「増援を止めましょう。結界へ辿り着くまでの進行が遅れるし、この段階で彼女が消耗し過ぎるのも良くないはずです」
「それに、彼女が記憶を失う大技を連発するのは避けたい」
 シエルが冷静に戦況を分析すると、シェーラは頷いて見目麗しい精霊を召喚する。精霊の光に包まれた彼は、極彩色の舞台衣装へと瞬く間に変身を遂げた。
「一曲お相手願おうか!」
 【彩色銃技・落花流水】、宝石のような四丁の精霊銃が宙を舞う。
 シャドウライダーの集団に落とされる七色の弾丸の制圧射撃。破魔の力を宿した光は、シャドウライダーだけでなく、彼らが呼び覚ました死霊をも浄化していく。
「灰は灰に、葬送の焔は万物を灰燼に帰す」
 続けて別の部隊へ放たれたのは、シエルの【葬焔の胡蝶】だ。
 万物を灰にする浄化の炎を放つ青い蝶々は、モーラが討ち逃がした亡霊を灼いて、彼女を取り巻く怨嗟を祓う。絶望の世界を舞う蝶は可憐で苛烈、命の燃やして煌めく灯。
 そうして炎を振り撒きながら集まった青は、やがて大きな蝶を模り、眩い耀炎でシャドウライダーを灼き尽くした。

 精霊銃と胡蝶は、実に美しく敵を狩る。
 その観客は強いて言えばモーラひとりなのだが、彼女は猟兵達の戦闘を一瞥すると、興味が無さそうにそのまま進行を続けた。
「自分に害が無いと判断した者には、手は出さないのでしょうか。それなら援護しやすいですね」
「もっと派手にやってもいいなら、殲滅速度も上げて進めるな。……影の騎手よ! 貴様ら如きに止められる戦力ではない! さっさと主を連れ出してくるがいい!」
 シェーラは周囲の影を挑発すると、精霊銃を駆使して艶やかな戦舞を繰り広げる。
「こちらへどうぞ」
 胡蝶を纏って敵を誘うシエルは、炎で生んだ陽炎の幻。敵の目を欺き、自分とシェーラが囲まれないように立ち位置をコントロールしながら、残る亡者を浄化した。
 色鮮やかな追跡者の戦いは続いていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春霞・遙
前に進めなくなるような記憶を封じるならともかく、自分の優先する事柄をも忘れて戦い続けなければいけないなんて、可哀想なオブリビオンですね。
目的が一致している間は共闘させていただきましょう。

「目立たない」ように「闇に紛れ」て、戦闘は他の方の補助をメインに行動します。
シャドウライダーに対して拳銃での「援護射撃」「だまし討ち」で攻撃。死者の霊に対しては安らかに眠れるよう【生まれながらの光】で癒して、「祈り」ます。


レン・デイドリーム
オブリビオンが記憶を対価にする、か
なんだか不思議な感じだけれど……とりあえず今は様子見しとこうか
やるべき事をまずはやろう

相手は霊や呪いを使ってくるのか
それなら僕も同じものを使おう
【呪詛】を籠めてサモニング・ガイストを
彼らの未練を断ち切ろう

呪いは【オーラ防御】と【呪詛耐性】で防ぐ
僕もシャーマンで死霊術士だからね、こういうのは専門家だよ
そしてお手本も見せてあげよう

戦士さんにはどんどん炎で攻めてもらう
でもモーラには触れないように
彼女にはやりたい事をやらせてあげよう
でも【情報収集】で観察くらいはしておきたい

僕もぼうっと見てないで戦おう
【衝撃波】で敵を怯ませつつ【呪詛】返しだ
骸の海に帰るんだよ




 『忘却のモーラ』の進撃は続く。
 モーラは侵入者を察知して次々と現れる『シャドウライダー』を薙ぎ倒しながら道を作っていた。それは彼女にとって作業に過ぎないのか、少女の銀色の瞳には一切の感情の色が消えているように見える。
「前に進めなくなるような記憶を封じるならともかく、自分の優先する事柄をも忘れて戦い続けなければいけないなんて、可哀想なオブリビオンですね」
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)は心を喰らう触手を身を宿しており、過去の耐え難い事件の記憶を全て触手の腹の中へ封じ込めている。それは遙が前に進む為に必要な忘却で、確かに救いだった。でも、少女のそれは違うのではないだろうか。
 戦うごとに記憶を失くし、心を失くしていく少女の……どこに救いがあるというのか。

「オブリビオンが記憶を対価にする、か。なんだか不思議な感じだけれど……とりあえず今は様子見しとこうか」
 遙と共にモーラを追っていたレン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)も風変わりなオブリビオンについて思うところはあるが、先にやるべき事を優先させる。
「まずはモーラの邪魔をする敵を減らしてあげよう」
「そうですね、目的が一致している間は共闘させていただきましょう。私は援護に回ります」
 そう告げると、遙は気配を消して闇に溶けていく。
 レンもまた戦闘態勢に入り、【サモニング・ガイスト】で古代の戦士の霊を召喚した。

「相手が霊や呪いを使ってくるなら、僕も同じものを使おう」
 レンが召喚した戦士の霊は、モーラに群がるシャドウライダーを呪詛の炎で灼いていく。炎に飲み込まれてぐずぐずと燃え落ちる影もあれば、生き残って鞭を振るい死霊を喚ぶ影もあった。死霊は怨嗟や現世への未練を転じた呪いをレンに差し向ける。しかし、
「僕もシャーマンで死霊術士だからね、こういうのは専門家だよ」
 死者蘇生の研究をしていた錬金術師に作られたミレナリィドールは、死者を使役する魔術に関しては、その辺りの人間やオブリビオンよりも長けている自信があった。
「お手本を見せてあげよう」
 球体関節が覗く手を姿形の無い呪いに差し出すと、パァンと弾いて影へと返す――呪詛返しだ。返された呪いを受けて藻掻き苦しむシャドウライダーには衝撃波を放って、素早くとどめを刺してやった。
「骸の海に帰るんだよ。それと……彼らの未練も断ち切ろう」
 残された人々の霊も、戦士に道案内させるように炎で送る。
 起こしてごめんね、と。その時ばかりはあたたかな光で。

 シャドウライダーを大剣で薙ぎ倒すモーラ。炎と呪詛で灼き払うレン。次々と山に響くオブリビオンの断末魔の合間には、時折銃声が聞こえていた。
 闇に紛れた遥も、群れを成さずに忍び寄る影を、一匹一匹拳銃で仕留めていたのだ。騎手と馬、両方の頭を的確に。攻撃を受けたと認識する前に、不意打ちの一発で命を断てば未練すらも残らないはずだ。
 シャドウライダーによって無理矢理呼び起こされた人々の死霊は、レンの炎が送ってくれていた。自分の【生まれながらの光】は生者を回復させるだけで、死者に効果があるものかは分からないけれど。
「せめて、安らかに眠れますように……」
 遥の祈りもまた、巻き込まれてしまった霊の未練を癒やす光となったことだろう。

 戦闘中はモーラの邪魔はせず、彼女のやりたい事をやらせてあげるように距離を置いていた二人だったが、その間も情報収集として彼女の観察を続けていた。
 そして意外にも、彼女も時折此方を観察するように視線を向ける事があると気付いたのだ。自分の進路を塞がなければ、特に手出しはしないようだが……。
「今のは……死霊を送る光を見ていたのかな?」
「私にもそのように見えました。何が気になったのでしょうか……」
 光が消えると、すぐに二人に興味を失ったモーラは視線を戻して歩き出す。
 その意味は今は分からないが、レンと遥はその情報を忘れないようしっかりと記憶に残して、少女の後を追いかけたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セシリア・サヴェージ
呪剣に記憶を捧げてでも成し遂げたい事が彼女にはあったのでしょうか。
……それももう知る由は無いのかもしれませんが。

【視力】と【見切り】により高速で動く敵の動きを捉え、こちらに接近してくるのに合わせて【カウンター】を叩き込みます。
相手の衝撃波を受ける事になっても、攻撃が成功さえすれば【生命力吸収】で傷は癒せます。痛みも【激痛耐性】で耐えましょう。
そしてUC【闇の猟人】の効果で敵の習性を把握。動きを先読みして次は無傷で倒しましょう。

……彼女の事は、他人事だとは思えないのです。
自分が何故戦うのか、誰の為に戦うのか。代償で全てを失う事になっても、戦う意味だけは失くしたくはないものです。


幻武・極
へぇ、記憶を代償とした能力か。
それだけに強力ってことかな。
この先の愁魔と戦う為にはキミの力が必要ってことだね。
まあ、短い間だけだけどよろしくたのむよ。

さて、シャドウライダー達をどうするかな。
彼らは亡者だし、何度も何度も蘇られても面倒だからアンデッド対策でいくかな。
トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化し、炎の魔力による炎の属性攻撃でしっかり火葬していくよ。




 『忘却のモーラ』と『シャドウライダー』が交戦する戦場に、青い影が紛れ込む。羅刹の少女、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)が前線へ飛び出したのだ。
「へぇ、記憶を代償とした能力か。それだけに強力ってことかな。この先の愁魔と戦う為にはキミの力が必要ってことだね。まあ、短い間だけだけどよろしくたのむよ」
 極が敵意を向けたのは、あくまでもシャドウライダーに対してだ。モーラには軽く共闘の挨拶を投げかけただけのつもりだったのだが……、極を一瞥したモーラは、シャドウライダーへ振るう一閃で極ごと薙ぎ払おうとする!
「おおっと、随分と荒いご挨拶だね」
 巨大な刃をひらりと躱して彼女と距離を置いた極は、びっくりしたと目を丸くする。モーラは攻撃のついでに極を追い払っただけで、追撃するつもりはないらしい。その後は行動を決められた機械のように、淡々とシャドウライダーを倒していった。

「反応無し、か。彼女と話すのは難しいのかな」
「現時点でも、ここまで意思の疎通が図れませんか。そんな姿になってまで、呪剣に記憶を捧げてでも成し遂げたい事が彼女にはあったのでしょうか。……それももう知る由は無いのかもしれませんが」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、彼女の事を他人事だとは思えなかった。セシリアは黒き鎧に宿る『暗黒』を操る騎士だ。暗黒の力の代償に蝕まれるのは、己の生命と精神。記憶を代償に剣を振るう彼女と自分を、どうしても重ねてしまう。
 もしかしたら、自分もいつか……。
「自分が何故戦うのか、誰の為に戦うのか。代償で全てを失う事になっても、戦う意味だけは失くしたくはないものです」

 モーラには断られてしまったが、洋館を目指す彼女を邪魔するシャドウライダーはかなりの数となるだろう。
「なら、勝手に手伝うことにしようか。さて、どうするかな。シャドウライダーは亡者だし、何度も何度も蘇られても面倒だからアンデッド対策でいくかな」
 極は腰を落として丹田に魔力を練り、魔法拳の構えを取る。【トリニティ・エンハンス】を発動した炎の魔力は、極の腕に巻き付くように渦を作った。
「ボクの武術を見せてあげるよ! しっかり火葬していくよ!」
 一本下駄で地を蹴ると、シャドウライダーの頭上から炎の拳でシャドウライダーの騎手をいきなり殴りつけた。暴れる馬の蹴りを柳のように受け流し、その胴体へ深々と拳をめり込ませる。闇と同化しそうな影の人馬を包む魔法の炎は、その身体を焼き尽くし灰にするまで決して消える事は無い。
「これならもう操りようがないからね。この調子で倒していこう!」

 一方で、モーラを狙うシャドウライダーの進路を塞ぐように、暗黒剣で敵を薙ぎ倒していたセシリアだったが、その中で他の集団とは素早さが段違いの異形な影を見つけた。世界に蔓延する絶望を背負った人馬一体の影は、恐ろしいスピードで此方へ接近して来る。
 迫り来る影、向かい討つは闇。
 世界に『光』を取り戻す。胸に灯る志を抱いて、セシリアは今日も暗黒を解き放つ。
「この世界を脅かす者は全て斬る!」
 【闇の猟人】は獲物を狙って、まず一撃――お互い浅く相手を抉った。
 方向転換した影は、傷を厭わず第二撃を狙う。セシリアも衝撃波を受けた傷を生命吸収で癒やしながら次の構えへ。
 ただひとつ異なったのは……セシリアの本命はこのニ撃目だと言う事。
 暗黒剣は獲物の味を忘れない。その速さも、攻撃方法も捉えた。後はより鋭く、的確に、残忍に――人馬まとめて喰らってやるだけだ。
 闇と影は再び交差し、影はバラバラになった。人馬どちらの欠片か分からぬ肉片は、戦力補充することも不可能だろう。
 シャドウライダーの数を減らして、モーラを追跡する。それが猟兵に託された仕事だ。二人はモーラに異変はないか、状況を確認しながら山の奥へと進んで行く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…キライね。一体、何がそんなに疎ましいのかしら?

…少し危険かもしれないけど、直接聞いてみる価値はある…かな?

…例え全てを忘れていたとしても、
胸の内に残るものがあるはず…だから

グリモア猟兵の忠告を自身の戦闘知識に加えUCを発動
吸血鬼化した右眼で敵味方の魂や能力の情報を収集して、
敵の殺気や気合いの残像を暗視して先制攻撃を見切り、
大鎌をなぎ払う早業のカウンターで迎撃した後、
敵の全身を覆う絶望のオーラ防御を大鎌に吸収し魔力を溜める

…お前達に用はない。邪魔をしないで

…何故、貴女は力を振るう?何の為に闘っているの?

…この館の先に、貴女が忘れてしまった何かがある?

第六感や右眼が危険を捉えたら無理せず離脱する




 猟兵達の活躍により、洋館周囲を徘徊するかなりの数のシャドウライダーを減らせたようだ。モーラが結界門へ辿り着くまで、あと僅かだ。
 まずは邪魔者を排除しながらモーラを追跡する。それだけでよいはず。
「……キライね。一体、何がそんなに疎ましいのかしら?」
 しかし、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はモーラの呟きの意味、そして彼女がこのような行動を起こした真意が気になっていた。大技で記憶を更に失う前に……今、彼女とコンタクトを取った方が良いのではないだろうか。
「……少し危険かもしれないけど、直接聞いてみる価値はある……かな?」
 例え全てを忘れていたとしても、胸の内に残るものがあるはず。
 その可能性にかけてみるとしよう。

「……限定解放。光を灯せ、血の赫眼」
 リーヴァルディは吸血化により、右眼だけを真紅に染めた。グリモアベースで耳にした情報を自身の戦闘知識に加えて、様々な情報を視覚化する魔眼で戦場を『視る』。
 リーヴァルディの思惑など知らずに、モーラは邪魔なシャドウライダーを斬りながら歩き続けている。それは敵を一匹も残さず潰していくような丁寧な戦闘方法ではなかった為、彼女の進んだ道には甦って戦力補充された影がうようよと浮き上がっていた。
「……お前達に用はない。邪魔をしないで」
 赫眼は全てを見通している。操られているだけの空っぽの人形の動きは見切るのも容易く、騎手の首も馬の首も軽く刎ねて。尚も蠢く骸はそのままに、狙うは一点。
「貴方ね、操っているのは」
 仲間を操っているシャドウライダーの生き残りに大鎌の刃を深々と埋め、魂をも切り刻む。再び操られないよう残された影の想念は全て吸収し、自身の魔力に変えてやった。

 影は消え去り、リーヴァルディの前には背を向けて佇むモーラ、ただひとり。
 瞳を真紅に染めたまま、リーヴァルディは少しずつ距離を詰めていく。
「……何故、貴女は力を振るう? 何の為に闘っているの?」
 ゆ、らり。揺らいで見える感情の波。
「……わりにするため」
 掠れた少女の声が返って来た。リーヴァルディは目を逸らさずに、再び問う。
「……この館の先に、貴女が忘れてしまった何かがある?」
「ない。……もう、なんにも、ない……」
 ヒュンッ――風圧がリーヴァルディの前髪を揺らした。
 目の前にはモーラの大剣の切っ先――これ以上は駄目、か。
 モーラと目が合ったのは一瞬のこと。彼女は剣を下ろして結界門へ向かってしまった。
「紫と、赤 ……?」
 彼女の瞳の奥から覗けた感情は、その二色に占められていた。
 はらはらと散るように視えた色は、何を意味しているのか。意味があるものなのか。
 リーヴァルディにはまだ分からない。けれど、今得た情報は忘れないように洋館まで持って行くとしよう。――彼女の代わりに。
 結界門を壊せば、彼女はこれまでの事をまた忘れてしまうのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『愁魔』メルスィン・ヘレル』

POW   :    はあ面倒……害虫が視界に入ったら潰すしかないもの
単純で重い【『悪魔の脚』による上空からの踏みつけ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    しっしっ……寄らないでよ汚いなあ、消えて?
【自在に伸縮し鞭のように撓る『悪魔の尻尾』】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    殺した後に汚れを落とすのが一番面倒なんだよね……
【飛翔し、一瞬で敵に接近して『悪魔の爪』】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピオネルスカヤ・リャザノフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 洋館の門に辿り着いたモーラは、大剣の真の力を解放して結界を砕いた。
 直後、不思議そうに辺りを見渡したが、そのまま中へ侵入していく。
 館内にもある程度残っていたシャドウライダーも、モーラに斬られて消滅した。
 そして広間に着くと、心底憂鬱そうな悪魔の声が響く。

「ああ、面倒……何てことしてくれるの……君は誰? 私に何か用?」
「ダレ……わからない。……あれ、でも……ワタシ、何の為にココに来たんだっけ?」
「はあ? どういうこと?? ……なんでそんな面倒くさい子が来ちゃったの……害虫払いのシャドウライダーも、殆ど倒してくれちゃってさあ」
 盛大に溜息を吐く『『愁魔』メルスィン・ヘレル』もモーラに覚えはないようだ。
 モーラも勿論、愁魔なんて知らないけれど。先程と同じく淡々と剣を構える。
「……まあ、いいや。胸がざらつくの……消えて?」
「……それはこっちの台詞だよねえ。ここは私の家だよ。邪魔する虫は、消えて」
 古の大悪魔の血を引く吸血鬼、憂魔の怒りは洋館を震わせる。
 巨大な力が、今ぶつかり合う――。


 モーラの後を追っていた猟兵達は、愁魔との戦闘が始まるタイミングを見計らって広間に突撃する。モーラは基本的に愁魔を狙うが、愁魔は同じ侵入者である猟兵達もモーラと同等に倒そうとするはずだ。また、モーラは猟兵達を避けて戦おうとはしないので、彼女の攻撃に巻き込まれないように注意する必要があるだろう。

 これから三つ巴の戦いが始まるが、その前に。
 彼女を追跡する中で、猟兵達の間で行われた情報交換の内容をここに記しておく。

 その一、モーラがシャドウライダーへ向けた台詞。
「キライ……アナタも覚えがないんでしょ、ワタシと同じ。
 ……ドレか分からない。なら、ゼンブいらない……消えて」

 そのニ、戦闘中のモーラに関する証言。
 『死した人々の霊を送る光』に反応を示した。

 その三、モーラへ直接行った質問と観察。
 何故力を振るうのか。何の為に戦うのか。
「……わりにするため」
 この館の先に、貴女が忘れてしまった何かがあるのか。
「ない。……もう、なんにも、ない……」
 その時の彼女の感情は、『紫と赤がはらはら散るように』視えた。

 これまでの情報で彼女の物語を読み解くのは難しいだろう。
 全て忘れて忘れさせようとする、誰も知らない彼女の物語。
 この物語を探す事は、依頼に含まれていない。
 だが、オブリビオンを骸の海に還せるのなら、猟兵達の行動は自由だ。
 猟兵達の戦いも、第二幕が上がる。
春霞・遙
そう......大切にしていることは他にあるんですね。
それなら一番大切なことが我々と敵対するものかどうかは気になるところですが、よそ見している余裕はなさそうですね。

基本は補助という戦闘姿勢は変えずに遠距離からの「スナイパー」やります。
猟兵・メルスィン・モーラの攻撃が入り乱れることになりそうですから、戦場全体を俯瞰して「情報収集」と「第六感」で状況の把握をしつつ「援護射撃」で自身と味方の回避を援護します。
また、状況に応じて「零距離射撃」【葬送花】での攻撃や視野を遮って敵の攻撃の邪魔をしたりなどします。


クラリス・シドルヴァニス
あれがこの地方の領主ね。突然襲撃を受けたのは不運だったろうけど…彼も災いをもたらすオブリビオンなら、ここで滅ぼさないとね。

モーラとの共闘は期待できそうにないわね。受け答えがいまいち要領を得ないし、周囲の被害にも無頓着そうだから。
大剣を抜き、接近戦を挑むわ。剣に光を宿し〈オーラ防御〉、〈武器受け〉で攻撃を弾いて反撃。【デュエリスト・ロウ】でルールを宣告、「すべての敵と戦ってもらう」わ。モーラと私たち、両方を相手取ってね。攻撃時は剣に〈破魔〉の力込め、〈重量攻撃〉を打ち込むわ。モーラの戦いかた、私と似ているわね…。あなたは何を為そうとしたの?

※アドリブ・連携歓迎




 強い力がぶつかり合う衝撃破を合図に、まずはクラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)が広間に入った。そして彼女の背に隠れるように、もうひとつの影も密やかな潜入に成功する。
 数多のシャドウライダーを薙ぎ倒してきたモーラの大剣。決して軽くはないはずのその剣撃を、愁魔は悪魔の尻尾を鞭のようにしならせて軽くいなした。
 華奢な身体に終始面倒臭そうな態度を絶やさない悪魔吸血鬼。しかし、その強さは確かなもので、先程までの影の僕とは格が違う。モーラと猟兵、両方の力が必要だと言われるのも頷ける脅威的な存在だ。

「あれがこの地方の領主ね。突然襲撃を受けたのは不運だったろうけど……彼も災いをもたらすオブリビオンなら、ここで滅ぼさないとね」
 とはいっても、肝心のモーラとの共闘は期待出来そうにない。モーラは猟兵が乱入してきても見向きもせずに、愁魔に剣を振るい続けていた。
「はあ今日は来訪者が多いなぁ。こいつに用があるなら引き取ってよ邪魔くさい……」
「いいえ、まずはあなたに用があるの」
 愁魔に返答しながら、クラリスはクロスクレイモアを抜いて距離を詰める。モーラの攻撃を受けないように、また彼女を巻き込ないように。愁魔だけを狙って、光輝く一撃を振り落とした。
 その太刀筋も愁魔に見破られ、モーラと同じように受け止められてしまうだろう――しかし、それでいいのだ。クラリスは剣を引くと同時に、接近戦に持ち込んだ相手へ手袋を投げ付けた。本命のユーベルコード、【デュエリスト・ロウ】発動!
「ルールを宣告、『すべての敵と戦ってもらう』わ」
 ――モーラと私『たち』、両方を相手取ってね。
「ああ面倒事を次々と……わかったよ皆まとめて潰れちゃえ」
 クラリスの台詞を全て聞く前に、苛立ちを隠せないでいる愁魔は、足で地面を踏み躙る仕草をしてみせる。
 すると、モーラとクラリスの上部に召喚した巨大な『悪魔の脚』が落とされ――。

 ――なかった。
 悪魔の脚は、どこからか放たれたスナイパーライフルの破魔の弾丸を受けて霧散する。クラリスと共に入室し、ずっと身を潜めていた春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)による援護射撃だ。
 そしてそれは、遙の存在に気付けなかった愁魔が『すべての敵』を狙えなかった事も意味し、ルール破りの罰が下された。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ!!」
 愁魔の胸で弾ける裁きの雷光。悶絶する愁魔へ冷めた表情のまま剣を振るうモーラに合わせて、クラリスも破魔の力を宿した剣を振りかぶる。
「ぐ、ぐっ……ふざけるな人間風情があ!!」
 咆哮する愁魔の長い悪魔の爪が二人を狙うが、常時戦場全体を俯瞰していた遙は、その行動も見通して先手を打っていた。
「風に舞う薄紅の嬰児よ惑う命の導きと成れ」
 木の杖から溢れる光は数多の花吹雪を生む。ひらひら舞う【葬送花】の花びらは、交戦直前の愁魔の視界を桜色一色に覆い尽くし、動きを一瞬鈍らせる。
 二人にはその一瞬で十分だ。クロスしたモーラとクラリスの剣が、漸く愁魔に届いた。

 無理矢理な連携も束の間。巻き添えを喰らっては困るので、クラリスは速やかにモーラから距離を取った。別れ際に一言、疑問を落として。
「あなたの戦いかた、私と似ているわね……。あなたは何を為そうとしたの?」
「なにも……はやく、終わればいいのに……」
 何やらモーラの様子が少しおかしい。要領を得ない回答は変わらないが……。
 その視線は、戦場に舞った『花びら』に奪われているようだった。
 それは先程のシャドウライダーとの戦いで『死した人々の霊を送る光』を目にした時とよく似ている、と遥は考える。もしかしたら『はらはら散るようにみえた紫と赤』も花びらなのだろうか。確証はないが、それらが記憶を失くした少女の心に近づく鍵になるのかもしれない。

 いつの間にか、モーラは再び愁魔に向かって剣を構えている。彼女が忘れてしまった何かは、もうこの先にはないと分かっていても。彼女は歩みを止めようとしない。
「そう......大切にしていることは他にあったんですね。それなら一番大切なことが我々と敵対するものかどうかは気になるところですが、よそ見している余裕はなさそうですね」
 渾身の連撃を受けてダメージは負ったものの、憎々し気な視線を猟兵に送る愁魔の体力はまだまだ尽きそうにない。まずはこのオブリビオンを倒す事が先決だろう。
 猟兵達はモーラの力も上手く利用しながら、戦闘を優位に進めて行く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

モーラは忘れたい記憶も忘れちゃいけない記憶も何もかも忘れてしまったんだろうか?
…いやそれは後にしよう。今はまず愁魔を先に倒さないと。
それに多分、いくら考えても今の俺にはわからないだろう。

引き続きモーラに攻撃しないように、また彼女の攻撃に巻き込まれないように気を付ける。
変わらず存在感を消し目立たない様に立ち回る。隙をみてマヒ攻撃を乗せたUC剣刃一閃で愁魔へ斬りかかる。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りの全力回避。回避しきれないもので受け流せそうなものは、黒鵺で武器受けしカウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛・呪詛耐性、オーラ防御で耐える。




「モーラは忘れたい記憶も忘れちゃいけない記憶も、何もかも忘れてしまったんだろうか?」
 存在感を消して広間に潜入した黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)の口から、そんな呟きが零れた。そう、彼女は初めからずっと『何かを忘れたがっている』ように見えるのだ。
 忘れたくない何かを犠牲にしてでも忘れたいもの。
 そしてつい先程聞こえて来たモーラの台詞。『はやく、終わればいいのに』。
 もしかしたら、彼女は『  たがっている』のでは……?

「ああもう面倒だなあ。そんな攻撃効かないっていい加減分からないの」
 愁魔に剣を躱されたモーラが、反撃を受けて壁に叩き付けられた。
 瑞樹は一瞬頭に浮かんだ憶測の検討をひとまず後回しにする。
(今はまず愁魔を先に倒さないと)
 モーラを仕留める為に、愁魔は悪魔の爪を伸ばして飛翔する。
 その分かり切った軌道に割り込んで、突如姿を現した瑞樹は【剣刃一閃】を放つ!
「ぐぁっ、……っ、次々と邪魔しに来ないでよ害虫が」
 麻痺の乗った胡の一撃をまともに喰らった愁魔は蹌踉めくが、体勢を整えるように踏み締めた一歩で、悪魔の脚を瑞樹の上部に召喚させる。
「これは三つ巴の戦いだ。注意すべきは目の前の相手だけじゃない」
 愁魔の攻撃にも焦らずに、瑞樹はタイミングを計ってギリギリで横へ転がるように回避した。瑞樹が直前までいた位置に落とされた悪魔の脚は、背後から跳んできたモーラの剣に斬られ、床を抉る事無く闇へと還される。

「なっ!?」
「ほら、今度は俺を見失ってる」
 悪魔の脚を斬り捨てたモーラは、スピードを緩めずに愁魔の懐へ。
 同時に、愁魔の背後から聞こえる瑞樹の声。
 気配を消した隠密行動で狙うべき敵を挟み撃ちにする。
 戦場の動きを完璧に読み取った瑞樹は、凶悪な悪魔吸血鬼の思惑も打ち砕き、その背に深い刀傷を負わせたのだった。

 愁魔の背中越しに見る、無感情な人形のような少女の顔。
 攻撃の行動パターンは読めても、その心を見通すのは不可能に近い。
(……多分、いくら考えても今の俺にはわからないだろう)
 今はただ、同じ敵を倒す事に集中して。瑞樹は黒鵺と胡を握り直した。

成功 🔵​🔵​🔴​

レン・デイドリーム
モーラが何を為そうとしているのかはまだ分からないな……
とにかく目の前の問題から解決していこうか

先程の戦闘と同じく古代戦士の霊さんと一緒に行動
相手の爪は強力だけど「飛翔する」という動作を挟む必要があるのなら、そこで隙が生じるはずだ
相手が飛び上がったタイミングで戦士の霊にお願いしよう
僕の周囲に炎を展開して
相手が炎を飛び越えたとしても、その揺らめきはしっかり観察
そちらの方向に【オーラ防御】をしっかり展開だ

多少のダメージは受け入れよう
そのまま戦士さんには槍で攻撃をお願い
僕も【呪詛】でカウンターを狙おう

ところで愁魔さんはいつからこの領土にいるの?
君が来るより前は誰が住んでた?
攻撃しつつ聞いてみようかな?


セシリア・サヴェージ
往々にして加害者は被害者の事など気にかけないもの。特に吸血鬼はその傾向が強いと思われます。
『愁魔』よ、あなたはどうですか?単に彼女の事を『記憶』していないだけでは?

どのような返答でも構いません。質問の意図は別にあります。
先の質問の前にUC【闇の戦士】を発動。問答で【時間稼ぎ】を行い『愁魔』が繰り出す『悪魔の脚』の【見切り】の成功率を高めます。
攻撃を避けると同時に【カウンター】を行い、可能ならば【部位破壊】で脚を斬り落とします。

切断には至らずとも、暗黒剣を一太刀受ければただでは済まないでしょう。
これでモーラが有利になったはず。後はあなたの好きにするといい。
それであなたの気が済むのならですが……。




 一般的な人間が相手だって、目に見えない心を探る事は難解だ。
 それが記憶を失い会話も儘ならない相手なら、猶更難易度が上がってしまう。
「モーラが何を為そうとしているのかはまだ分からないな……」
 幾ら考えても正解と思われる答えを導き出せないレン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)は、一旦解読を諦めて目の前の問題から解決していく事にする。
 【サモニング・ガイスト】の古代戦士の霊を再び召喚して、レンはモーラや仲間の猟兵とどのように連携を取ればよいか思考を巡らせた。

 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)はまず何よりも先に【闇の戦士】を発動させていた。これは普段のように発動と共に暗黒の力を爆発させるのではなく、徐々に高める暗黒のオーラに比例して自身の能力を上昇させる特殊な技だ。
「往々にして加害者は被害者の事など気にかけないもの。特に吸血鬼はその傾向が強いと思われます」
 セシリアはモーラの剣を面倒臭そうに払い除ける愁魔に向かって、質問を投げかけた。
「愁魔よ、あなたはどうですか? 単に彼女の事を『記憶』していないだけでは?」
「はあ? 知らないよこんな子。私はこの洋館の引き籠りなんだから」
 ――外の見回りは全部私の下僕のシャドウライダーに任せっぱなし。
 ――あいつらが何をしていたかまでは知らないけどね?

 それが愁魔の返答だった。答えに期待をして投げかけた問いではなかったのだが、思わぬ収穫になったかもしれない。もしモーラが他のオブリビオンに何かをされたと仮定するならば、それは愁魔ではなシャドウライダーの可能性が高まったのだ。
 モーラより随分とハッキリと答えてくれる愁魔に、レンも質問を投げかけてみる。
 それは質問の内容が知りたいという目的が半分。
 もう半分はセシリアと同じ。彼女のパワーアップに必要な時間稼ぎの手伝いだ。
「ところで愁魔さんはいつからこの領土にいるの? 君が来るより前は誰が住んでた?」
 質問と一緒に、戦士の火球が愁魔へ飛んで行く。モーラと交戦しながら、虫を払うように翼で火球を消す余裕ぶりだ。苦虫を噛み潰したような表情で愁魔は答える。
「この世界に来てからずうっと引き籠りだっての。廃館だったのを自分で住めるようにしたんだから文句を言われる筋合いはないよ面倒臭い」
 投げ捨てる様な乱暴な回答だったが、嘘を付いているような気配はない。どうやら、この洋館とモーラの過去の関連は無さそうだ。

「ああもういいよね。納得したなら消えてよ」
 広がる翼。悪魔の瞳にレンの姿が映される。同時に、レンは戦士に指示を出す。
 一瞬で詰められるレンと愁魔の距離。
 ――しかし、愁魔を迎えたのはレンの周囲に展開された業火だった!
「ぐっ! 小癪な真似してこんな炎で私を焼けると思ってるの」
 炎に飛び込む破目になった愁魔はすぐに方向転換をするが、レンは愁魔が羽ばたく時に生じる風による炎の揺らめきを見逃さず、その方向を追うように指をさす。
「思っていないよ。だから何重にも仕掛けを重ねるんだ」
 レンに伸ばされた爪には呪詛のカウンターを。翼には戦士の炎の槍を。
 全てはレンの思惑通りに、二つの刃が悪魔を捕らえた。

 そろそろ大丈夫そうかな? レンから投げかけられた目配せにセシリアは頷いた。
「ああもう面倒だ面倒だもう嫌だ。みんなまとめて潰れて消えて!」
 子どもの癇癪のように暴れる愁魔は空を飛び、悪魔の脚で踏みつけようとする。
 大悪魔の力を解放した愁魔の一撃は、広間全体を潰すだろう。
「させません。たとえこの姿が人々に怖れられようとも……それでも、私が護ってみせる!」
 極限まで暗黒のオーラを溜め込んだセシリアは、禍々しい闇色に包まれていた。
 それは悪魔から仲間を護る為の力。
 湧き上がる暗黒の力を剣に込めて、迫り来る悪を断ち切り捻じ伏せる。
「ぎゃあ゛あ゛あ゛!!」
 斬り落とされた悪魔の脚首を確認するよりも先に、セシリアはモーラに道を開けた。
「後はあなたの好きにするといい。それであなたの気が済むのならですが……」
 セシリアの後ろには、床に転がる愁魔に剣先を向けるモーラの姿があった。
 仮に何かをしたのがシャドウライダーだとしても、彼らを生み出したのはこの愁魔だ。
 未だにその空白の記憶は不明だが、例え覚えていなくても、彼女には愁魔に剣を突き立てる理由があるのだろう。セシリアは彼女の背中を暫く見つめていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シェーラ・ミレディ
早いな、もうぶつかり合ったか。絵解きは後回しにした方が良さそうだ。

少女の振るう大剣に巻き込まれないよう注意し、『寵愛一身』で精霊を呼び出す。
空中から瞬く間に肉薄してくる敵を出迎え、危機を演出してカウンターだ!
迫りくる敵を見据え、声援によって強化された銃を抜いて零距離射撃。撃ち続けて敵の動きを止める。
これだけの隙を作り出せば──他のもの、特に大剣の少女が黙っていないはずだ。
謎を解明する前に記憶を失わせるのは、心苦しいが。このあとやり合わなければならないのだし、弱らせるという意味はあるだろう。
全く、考えることが多いな……!

※アドリブ&絡み歓迎


幻武・極
ふう、やっとたどり着いたようだね。
味方という訳ではないけど、見境なしに攻撃してくるからちょっと大変だったよ。

さて、まずは愁魔を倒さないとね。
うかつに飛び込んだら巻添えにされそうだから、カウンターにしておくかな。

愁魔の攻撃をオーラ防御で防ぎ、オーラに紛れ込ませた水珠抱擁の水のオーラで愁魔を捕縛するよ。
さて、あとはキミに任せるから強力な一撃を頼むよ。




 足首を斬り落とされ床に転がる愁魔に、モーラが剣を突き立てようとする。
 ラストシーンにも思えた場面は、愁魔が爆発させた大悪魔のオーラで覆された。
 広間に弾ける魔力の暴風。直撃を受けたモーラは吹き飛び、愁魔は怒りで紅く塗り替わった悪魔の瞳でモーラを睨み付ける。
 しかし、モーラの後を追ってきた猟兵達は、この流れを放置するわけにはいかない。愁魔が次の行動へ移る前に、二人の間に立ち塞がった。
「やっとたどり着いたようだね。苦戦してるみたいだけど」
 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は魔法拳の型を構えながら、後方で倒れるモーラに声をかけた。ひたすらに何処かを目指していた彼女の終着点は、此処で合っていたのだろうか。話しかけただけで見境なしに攻撃してくるキミを送り届けるのは、ちょっと大変だった、と。道中のシャドウライダー戦を思い出して極は苦笑いを零す。

「このあとやり合わなければならないのだし、弱らせる必要もあるだろうが。吸血鬼退治が先だからね。絵解きも後回しにした方が良さそうだ。全く、今回は考えることが多いな……!」
 シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は一旦モーラを背に庇うが、味方ではない彼女から斬り付けられる可能性にも警戒しながら、【彩色銃技・口寄せ・寵愛一身】で精霊を召喚した。鮮やかな妖精と共に、精霊銃も宙に舞う。
「害虫共にこれ程汚されるなんて初めてだよ。刻んで潰して消してやる……」
 翼を翻し、――刹那の飛翔。愁魔は一瞬でシェーラとの距離を詰め、その間に宙に浮かべた精霊銃も悪魔の爪で弾き飛ばしていた。
 紛れもないピンチ。しかしそれはシェーラに誘導された演出のひとつに過ぎない。
(危機からの華麗なる反撃、見たいだろう?)
 勝利を司る精霊は、美しい戦いを魅せてくれようとするシェーラに微笑んだ。
 精霊の寵愛を受けたシェーラは、強化された精霊銃の銃口を愁魔に向ける。
 至近距離から連射される弾丸の嵐に、愁魔はそれ以上悪魔の爪を振り下ろせない。

「今なら捕らえられるね。キミが願った平和を作るために、水珠姫キミの力を借りるよ」
 極は【水珠抱擁】で、魂を沈める水のオーラを放つ。水疱に愁魔を閉じ込めると、それまで悪魔の翼や爪を包んでいた禍々しい魔力が、強制的に消滅させられた。
「これだけの隙を作り出せば──」
「さて、あとはキミに任せるから強力な一撃を頼むよ」
 シェーラと極が予想していた通り、先程まで倒れていたモーラが背後から大剣を振りかざして飛び出してくる。巻き添えを喰らわないように彼女の道を開けながら、極はその剣が愁魔に届くギリギリまで水疱の術を解かない。
「放せ! 寄るな! ……害虫がああ!!」
「そんなに蔑ろにするなよ。彼女はきっと、キミに一撃喰らわせる為に、此処まで来たんだからさ」
「謎を解明する前に記憶を失わせるのは、心苦しいが……」
 彼女の過去に何があって、今回の襲撃に繋がったのか。
 少しずつ彼女の行動から推測は立てられているが、未だ真相には辿り着いてはいない。
 それでも彼女が同じ敵を討とうとするなら、今は利用させてもらうまでだ。
 弾ける水疱、閃く剣技。愁魔に再び鮮血の花が咲いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…何が起きたかは分からないけど、
彼女が何か大切なもの…恐らくは人を…失った?ならば…

左眼の聖痕に魔力を溜めモーラの周囲の霊魂を対象にUCを発動
敵の攻撃を全身を覆う呪詛のオーラで防御しつつ、
“葬送の耳飾り”に耳を傾け情報収集を試みる

…私は声無き声、音無き嘆きを聞き届ける者
何か、彼女の事で伝えたい言葉があるのなら、私の声に応えて…!

今までの戦闘知識から敵味方の行動を暗視して攻撃を見切り、
限界突破した大鎌で切り込む早業のカウンターを行い、
敵の行動を妨害してモーラを援護するよう立ち回る

…出会って早々で恐縮だけどお前に関わっている暇はない

…だから、引きこもるのは骸の海でお願いするわ。永遠に…ね




 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、真紅の瞳と他の猟兵が得た情報からひとつの解を導き出していた。
「……何が起きたかは分からないけど、彼女が何か大切なもの……恐らくは……」

 ――大切な人を……失った?

 当事者であるモーラが記憶を失っている以上、それを肯定出来る者も否定出来る者も、この世には誰もいない。
「ならば……この世にいない者に聞いてみるしかない」
 愁魔とモーラが激突する傍らで、リーヴァルディは左眼の聖痕に魔力を溜めて、モーラを……否、モーラの周囲の霊魂を【代行者の羈束・断末魔の瞳】で視る。
「……私は声無き声、音無き嘆きを聞き届ける者。何か、彼女の事で伝えたい言葉があるのなら、私の声に応えて……!」
 モーラが屠ったシャドウライダーは骸の海へ、其れらに呼び起こされた人々の魂は天上へと既に送り還されている。
 では、未だに残されているこの『小さき死霊』は、一体誰なのか。

 ――わすれていいよ。くるしまなくていいよ。

 葬送の耳飾りで死者の思念に耳を傾けると、モーラと同じくらいの少女の、今にも消えそうな呟きが聞こえてきた気がした。

 モーラの剣を受けた愁魔は血飛沫を撒き散らしながらも、悪魔の爪と脚をがむしゃらに振り回し、モーラも家具も壁も床も見境なく破壊する。その姿は、悪魔の血が暴走する狂戦士のようだった。
「消えて消えて消えて……害虫は全部いなくなれ!!」
「……出会って早々で恐縮だけどお前に関わっている暇はない」
 リーヴァルディにも迫り来る悪魔の脚は、霊魂との精神同調率を高めて限界突破した大鎌が払い除けた。湾曲の刃で愁魔の身体を引っかけるように斬り付け、そのままモーラへと送りつける。
「……だから、引き籠るのは骸の海でお願いするわ。永遠に……ね」
 モーラに死者からの伝言を告げるのは、後で構わない。
 この霊魂と彼女の関係は分からないけれど。
 愁魔に剣を振り下ろすモーラを見て、霊魂と同調しているリーヴァルディの胸はチリチリと痛んだ。
 ――ごめんね。むらさきのばら、あかくしちゃった。
 ――あなたのせいじゃないよ。あなたはまもってくれただけ。
 ――きこえないかな。わすれちゃうかな。それなら、どうか……ぜんぶわすれて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエル・マリアージュ
身に纏ったコートの光学迷彩で姿を隠して洋館へ入り、屋敷内の柱などの地形を利用して目立たないように闇に紛れながら広間へ侵入、姿を隠したまま戦いの行方を見極めながら最良の一瞬を見極める。
モーラや猟兵に追い詰められた愁魔が反撃を仕掛けるその隙に「死は闇より来たれり」で愁魔の影から不意打ちを仕掛ける。反撃を受ける前に素早い二連撃に私の身体に染みついた殺しの技の全てをかけて愁魔を仕留めにかかる。

「貴方は、その剣で誰を殺したの?」
教団が私を暗殺の道具として育てたように、モーラの剣は彼女に誰かを殺させるために何者かが与えたのかもしれない。人を道具として使うなら記憶や感情なんてむしろ不要だから。




 数多の刀傷を受けて虫の息の愁魔だが、狂戦士状態は収まらない。
 最期の力を振り絞った飛翔により、モーラの喉元に悪魔の爪が突き立てられたその時。
 【死は闇より来たれり】。
 愁魔の影から飛び出した何かが、蜃気楼のように揺らめいた死が、刃を落とす。

 シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)は光学迷彩仕様のケープコートを纏い、洋館に忍び込み広間へ侵入するまでの間、ずっと闇に紛れて身を隠していた。愁魔、モーラ、猟兵。各々の動きや思惑を視界の盤上に収めて、最良の一瞬を見極める。
「罪人に相応しきは、慈悲の刃」
 そして見つけた、絶好のタイミング。モーラに愁魔の爪が届く直前、その不意打ちは仕掛けられた。影から飛び出したシエルは、断罪のサンクトゥスを愁魔の肩に落とす。
 肩関節から斬り落とされる腕。絶叫と反撃が飛ぶ前に、翼と爪も剥いでやった。
 シエルは教団の処刑人として仕込まれた殺しの技の全てをかけて、愁魔の命を削ぎ落していく。泡立つ唾液と共に害虫害虫と吐く残りの身体の痙攣も、やがて止まり――静寂が訪れた。

 動かなくなった肉塊を、モーラは糸の切れた人形のようにぼんやりと見つめている。
 隠密活動をしながら彼女の過去について考えていたシエルは、ひとつの可能性を思いついていた。一定の距離を保ったまま、シエルは質問を投げかける。

「貴方は、その剣で誰を殺したの?」

 嵐が過ぎ去ったように荒れた室内を、シエルの小さな声が凍らせた。
 シエルは自分が暗殺者の道具として育てられたように、モーラの剣は彼女に誰かを殺させるために何者かが与えたのかもしれないと考えたのだ。
「人を道具として使うなら、記憶や感情なんてむしろ不要だから」
 その問いに対して、モーラは無表情のまま小さく小さく、首を振り続ける。
「分からない、分からない……覚えてない。私じゃ、な……」
 モーラは剣の薔薇を紫に咲かせて、床の肉塊に叩き付けて爆散させた。
 忘れたい記憶を、捨て去るように。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『忘却のモーラ』

POW   :    アナタがキライ、ソレもすぐに忘れるけれど
【自身の記憶】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    アナタも仲間になればイイ
【嫌悪】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【沸き立つ黒い血のかたまり】から、高命中力の【大切な記憶を失う刃】を飛ばす。
WIZ   :    アナタはだあれ? どんなヒト?
対象への質問と共に、【自身の武器】から【記憶を貪る黒い薔薇】を召喚する。満足な答えを得るまで、記憶を貪る黒い薔薇は対象を【黒い花弁】で攻撃する。
👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は藍崎・ネネです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ボロボロの部屋の中。ここはどこ? ワタシは……また忘れたのね。
 部屋には自分以外にも人がいる。こちらを見ている。
「……アナタはナニを知ってるの?」
 ワタシが忘れた記憶を知っている人がいる。
 こんなになにもないのに。どうしてまだ、胸がざらつくの。
 キライ。ダイキライ。いらない。
 忘れたんだから。捨てたんだから。アナタも忘れて。捨てて。
 拒絶の言葉を繰り返し、死色の剣から黒薔薇が咲く。花びらから黒い血が流れる。
 記憶も命も何もかも消して。真っ黒に塗り潰して……。
 そうして、少女は再び大剣を振るう。
 連戦で傷ついた痛みも忘れて。ただ目の前の者を消すために。
 彼女の物語が終わるまで、繰り返される。


 以下、猟兵達が得た情報。

 愁魔とモーラは今回が初めての接触。この洋館とモーラの過去に関連はない。
 もしモーラが他のオブリビオンに何かをされたと仮定するならば、それは愁魔ではなシャドウライダーの可能性が高い。
 シャドウライダー戦時のモーラの台詞。
「キライ……アナタも覚えがないんでしょ、ワタシと同じ。
 ……ドレか分からない。なら、ゼンブいらない……消えて」

 舞い散る『花びら』を見た時、『死した人々の霊を送る光』を見た時と同じ反応をした。
 彼女の感情を覗いた時に視えた『はらはら散るようにみえた紫と赤』も花びら?

 モーラは『大切な人を失った』?
 モーラの傍に残っていた『小さき死霊』から聞こえた声。
「わすれていいよ。くるしまなくていいよ。
 ごめんね。むらさきのばら、あかくしちゃった。
 あなたのせいじゃないよ。あなたはまもってくれただけ。
 きこえないかな。わすれちゃうかな。それなら、どうか……ぜんぶわすれて」

「あなたは何を為そうとしたの?」
「なにも……はやく、終わればいいのに……」
 モーラは『何かを忘れたがっている』?

「貴方は、その剣で誰を殺したの?」
「分からない、分からない……覚えてない。私じゃ、な……」
 忘れたい記憶を捨て去るように、モーラは剣を振るってまた忘れる。


 どんな結末でも構わない。
 『忘却のモーラ』の物語に幕を下ろそう。
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

忘れたくないのに忘れなきゃならないって事?
忘れたくても忘れられないのとどっちがつらいか、なんて比べるのはおかしな話か。

真の姿に。
いつも通り存在感を消し目立たない事で攻撃を仕掛けたいが。
UCの炎を身に纏うようにすることで、なるべく薔薇の花弁を焼き、喰らわないように気を付ける。
質問には俺は人でありたいと願うただの武器、としか今は答えられん。
元より境の上の存在なのだし。

敵の攻撃は基本第六感で感知、見切りの全力回避。回避しきれないもので受け流せそうなものは、黒鵺で武器受けしカウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛・呪詛耐性、オーラ防御で耐える。




 月色の瞳の視線がモーラに注がれている。
 黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は真の姿を解放していた。いつも通り己の存在感を消して暗躍したいところだが、目の前で咲く黒薔薇に記憶を奪われるわけにはいかない。
「緋き炎よ!」
 金谷子神の錬鉄の炎を生み出した瑞樹は、その【炎陽】を自身に纏った。
 炎を従えてゆらりゆらりと近づくその姿は、神が降りてきたようだ。

「アナタはだあれ? どんなヒト?」
 それは特に答えを求めているわけではない、淡々とした口調で。唯、術を発動させる為のキーワードとしての台詞をモーラは瑞樹に投げかけた。
「俺は人でありたいと願うただの武器、としか今は答えられん。元より境の上の存在なのだし」
「何を言っているのか、分からない……」
 相手を理解しようという気もないモーラは、剣を振るって黒薔薇を瑞樹に放った。黒い花弁は瑞樹の記憶に喰らい付こうとするが、彼の身体に届く前に炎で焼かれてしまう。
 黒の花弁はより黒く焼け焦げて床に落ちていく。
 彼女に忘れて捨てられた記憶のように、儚く。

「忘れたくないのに忘れなきゃならないって事?」
「忘れたくないなんて、言ってない……忘れたいの、捨てたいの」
 頑なに否定して、モーラは瑞樹に接近戦を持ちかける。薔薇が届かず記憶が消せないのなら、命から絶つつもりなのだろう。
(そうかな……)
 瑞樹は彼女の言葉に疑問を抱く。彼女の本心は彼女自身も忘れていて曖昧なのだろう。
(まあいい。どちらにせよ、忘れたくても忘れられないのとどっちがつらいなんて比べるのはおかしな話か)
 忘れたくても忘れたくなくても。本来記憶なんて儘ならなくて。
 忘れても忘れなくても。それが起こったという事実が変わるわけでもない。

 今までの戦いで散々目にした彼女の太刀筋を読んで躱す。
 全てを見透かす月色の瞳に苛立つように突き立てられた黒の剣先は、同じ黒にあしらわれ――流れるように、黒鵺の刃は少女の華奢な身体を斬り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クラリス・シドルヴァニス
さあ、これで邪魔者は居なくなったわね。もういいでしょう…
欠落した記憶、埋められない心の空白…
もう気に病む必要は無いわ。ここで貴女を滅する。

紫の薔薇を、赤く…赤とは、血かしら。穏やかでないわね。
今の彼女を構成する要素が、幸せな記憶でないことは確かね。

大剣を構え、モーラと真っ向から斬り合うわ。
【聖戦の印】を発動。モーラは強敵だから、
命中率を上げてこちらの攻撃を確実に当てていきたいわね。
相手の打ち込みは<武器受け>でしっかりガード。
剣に<破魔>と<神罰>の光を纏わせ、
<重量攻撃>を叩きつけるわ。

…貴女は、何かを守りたかった?
ごめんなさい、私は霊媒師じゃないから、
貴女を呼ぶ誰かの声は聞こえないわ…。




 オブリビオンは、あとひとり。
 時にその背を追い、時に隣で同じ敵を討った少女と、今は向かい合わせの位置に立つ。
 クラリス・シドルヴァニス(人間のパラディン・f27359)と忘却のモーラの剣と剣は、互いに向けられていた。

「さあ、これで邪魔者は居なくなったわね。もういいでしょう……」
 他の猟兵が聞いたという、彼女が守りたかったらしい小さき亡霊の言葉を思い出す。紫の薔薇を赤く……赤で連想出来るのは血、だろうか。
 最期の言葉のような台詞。血。それを意味するのは……穏やかな話ではないはずだ。
 欠落した記憶、埋められない心の空白。
 失くしたものを掘り返したとしても、元には戻せない散り終えた赤色が待つだけ。
「もう気に病む必要は無いわ。ここで貴女を滅する」
 今の彼女を構成する要素が、幸せな記憶でないのなら。
 今の生を終えて――望み通りに、全て忘れるといい。

 クラリスのクロスクレイモアに刻まれた紋章から聖なる光が放たれる。
 【聖戦の印】が輝く両手剣が、モーラの死色の宝石剣と噛み合った。
「キライよ……そんな眼で、ワタシを見ないで……アナタも忘れて」
 殺戮捕食形態となった剣は、モーラの記憶を無遠慮に喰い散らかしながらクラリスに襲いかかるが、クラリスの剣に神々しく宿るは破魔と神罰を与える光。
 記憶喰らいの呪いが何度頭蓋や心臓や喉元に振り下ろされようと、何度でも確実に打ち払い、その勢いを殺していく。

 こんなに間近でモーラと向き合っても、クラリスには彼女の傍らにいるはずの亡霊は見えない。もしも、その声が彼女へ届けられたら――物語は分岐したのだろうか。
「ごめんなさい、私は霊媒師じゃないから、貴女を呼ぶ誰かの声は聞こえないわ」
 だからせめて、彼女が安らかな眠りにつけるよう祈りを込めて。
「この剣にかけて、あなたを討つ」
 聖騎士は胸の内で十字を切り、光刃で死色の刃を弾き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

レン・デイドリーム
どういう結末が正しいかは分からないけど
やれるだけやってみよう

花弁は【オーラ防御】や【呪詛耐性】で防御
暴れるならUCで手の動きは封じる

僕はレン
こっちはシュエ
君に会いに来た猟兵だよ
質問には答えるけど、僕らの話で彼女の記憶を圧迫したくはないかな

君はその剣で誰かを守ろうとしたんだろう
でも記憶を失ったことがきっかけだったのか
大切な人は死んでしまった
……もしかしたら君が手にかけたのかも

でも、その人はまだ君の側にいる
君が苦しまない事を願っている
剣を振るうのは止めて
その人の事を思い出せないかな
【呪詛】を死霊術として使って傍らにいる霊の声を届かせられないか試してみたい
思い出せないなら、何かきっかけをあげたいんだ




 全てを忘れたいと剣を振るう少女の物語。
 猟兵達はこれまでの戦いで彼女の記憶の欠片を見つけて来た。忘却のモーラはオブリビオンだ。必ず骸の海へ還らせる。
 それでも、彼女に真実を思い出させることに意味はあるのだろうか。
「どういう結末が正しいかは分からないけど、やれるだけやってみよう」
 レン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)【白影召喚・枷】で自身に宿るUDC『シュエ』の触手を広げた。
「シュエ、あいつが鬼だ。捕まえてしまおう」
「アナタはだあれ? どんなヒト?」
 淡々と尋ねて黒い薔薇を放つモーラに、レンは最低限の返答だけを口にする。
「僕はレン、こっちはシュエ。君に会いに来た猟兵だよ」
 シュエが呪詛耐性で黒い薔薇を弾いてくれたおかげで、こちらの記憶は守れた。
 君の記憶を圧迫したくはないから、僕らの話はこれだけだ。後は君の話をしよう。

「君はその剣で誰かを守ろうとしたんだろう。でも記憶を失ったことがきっかけだったのか……大切な人は死んでしまった」
 ――もしかしたら君が手にかけたのかも。
 レンの台詞を遮るように、モーラの大剣が降り落とされる。しかし、黒い刃の軌跡はシュエの半透明で出来た枷に取り押さえられ、そのままモーラの四肢も拘束する。長くは持たないだろうが、彼女へ言葉を届けるなら今しかない。

 その言葉は、レンが告げられるものではなかった。
「死んでしまったその人はまだ君の側にいる。君が苦しまない事を願っている。剣を振るうのは止めて、その人の事を思い出せないかな」
 レンは掌に溜めた呪詛の力を死霊術に利用する。動きを封じられているモーラの耳元へそれを寄せた。彼女の傍にいるという小さき死霊よ、届けたい言葉があるなら――。

 あなた、だあれ? どうしてこんなところでねてるの?
 きれいなバラだよね。ここのはなばたけ、わたしのおきにいりなの。
 なんて、ほかにいくばしょないからなんだけど。あなたも?

 そっか、ぜんぶわすれてるし、わすれちゃうのか。
 それってちょっと、さみしいね。

 ……なに、あれ。どうしよう。にげなきゃ。あなたも、はやく!
 ……バラはもういいよっ、ねぇ!……っ、あぶない!!

 ぷつり。通信が切れるように、音が途絶えた。
 今の音声は……亡霊が命を落とす前にモーラと交わした会話だろうか。
「何か、思い出せた?」
 レンの言葉に、モーラは呆然と佇みながら……首を振る。
 失った記憶は元には戻らない。けれど、今聞こえた声は、彼女に記憶された。

成功 🔵​🔵​🔴​

幻武・極
さて、愁魔を倒すことができたけど、キミは目的を果たすことができたのかな?
その目的自体も忘れてしまったのかな?
まあいいや、今度はボクが相手をするよ。

ユーベルコードを使われる前に先制攻撃で告死武装で強化した攻撃を剣に打ち込んでいくよ。
剣に封印を解く攻撃を打ち込み、代償を支払う前に封印を解いたらどうなるのかな?
さて、なんだかんだ言っても、ボクもお節介やきの猟兵のひとりだったってことかな。


シェーラ・ミレディ
てっきり、仇討ちが襲撃の理由だと思っていたのだが。
綺麗な思い出を汚さないように、なのだろうか。
……答え合わせは、できそうにないな。

『相思相愛』で、黒薔薇を撃ち落としながら問いかけに応える。
「僕は君を終わらせるものだ」
生憎と、忘れたい記憶を都合よく消せるような心得はないが。ならば強敵として立ち塞がり、大剣に彼女の記憶喰らわせよう。
過去はやり直せず、時間は消費され、骸の海へと流れていく。
彼女の安息を願うのなら──心残りはないほうが良いだろう?

黒薔薇を撃ち落とすことだけに注力し、攻撃を当てず、戦闘をできるだけ長引かせれば、それだけ記憶も消えていくだろう。
願わくば、少女に安らぎを。

※アドリブ&絡み歓迎




「さて、愁魔を倒すことができたけど、キミは目的を果たすことができたのかな? その目的自体も忘れてしまったのかな?」
「てっきり、仇討ちが襲撃の理由だと思っていたのだが。綺麗な思い出を汚さないように、なのだろうか。……答え合わせは、できそうにないな」
 今は亡き者の証言までも交えた絵解きは難航していた。
 モーラの過去に何が起こったのかはぼんやりと見えて来ても、彼女が何故襲撃を行ったのか、その目的は分からず終いだ。
 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は疑問だらけだと両手を上げて、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は、やはりこれは読者に答えを示さないタイプの物語なのだと結論付けた。

 そんな猟兵達が臨戦態勢で囲う中央で。
 先程、亡霊の言葉を届けられたモーラは困惑していた。
「そんな記憶……知らない、覚えてない」
 モーラの剣に喰われた記憶はどうやら再生しないらしい。
 力を得る代償として使用されたなら、それも致し方無い定めか。

「まあいいや、今度はボクが相手をするよ」
 先手必勝。【告死武装】で強化した真の姿で、極は魔法拳をモーラの剣に打ち込んだ。
 ――ほんの少しばかり。あるかどうかも分からない希望に繋げる魔法を込めて。
 手に直接伝わる衝撃に我に返ったモーラは、反射的に剣を振るった。既に咲き誇っている死色の薔薇を確認して、薄い笑みを浮かべた極は軽やかな体術で剣を躱して後退する。

「……アナタは、だあれ」
「僕は君を終わらせるものだ」
 自分を観測する者の記憶を奪う黒薔薇が撒かれると、極と入れ替わって鮮やかな精霊銃で武装したシェーラが前に出た。
「そんなものが、僕に通用するとでも?」
 【彩色銃技・相思相愛】。呪いの薔薇とて、触れられなければ唯の薔薇だ。色とりどりの弾丸は黒き花の一輪一輪へ吸い込まれるように貫き、床に散らしていく。
 しかし、弾丸の雨が穿つのは花と剣のみ。一発もモーラの身体には届かない。
 シェーラはモーラの前に強敵として立ち塞がり、大剣に可能な限りの記憶を喰わせようとしているのだ。
 彼女が己の過去を知ったとしても、やり直す事は不可能だ。
 時間は消費され、骸の海へと流れていく。
「彼女の安息を願うのなら──心残りはないほうが良いだろう?」
 忘れたい記憶を都合よく消してやれるような心得はないから。自らの手で、その記憶を葬り去ればいい。繰り返される「忘れたい」……彼女自身も、望んでいるのだから。

 しかし、ここでシェーラもモーラも予想だにしない事態が起こる。
「なんで……どうして、忘れられないの……あの声が、消えないの……?」
 殺戮捕食態の大剣を何度振るっても、モーラの記憶から亡者の声は消えないらしい。
 どういう事だと訝しむシェーラに、極が答えを告げた。
「ごめんね、その手はボクが封じてしまったんだ」
 極がモーラの剣に初手に放った魔法拳。それは剣が彼女の記憶を代償として奪う前に、封印を解く一撃として打ち込まれていたのだ。
 強制的に封印を解かれた剣は、これ以上彼女の記憶を奪う事は出来ない。

「どうせ骸の海へ還る時には忘れてしまうんだろうけどさ。これで自分からは記憶を捨てられなくなったよ」
 さて、困ったね。キミは自分の記憶と向き合うしかなくなってしまった。
 まるでゲームの隠し面を探し当てた子供のようだ。極は挑戦的な笑みを浮かべて、この物語に挑んで行く。どんな結末でも構わないのなら、可能性を広げてみてもいいだろう。

 これだけの猟兵が集まれば、様々な思惑が混在してもおかしくはない。
 それでも、自分と正反対の手を打つ者と肩を並べて戦うとは思わなかった。
 シェーラの策とは外れたが、最終的に願う結末に進める道を再度願う事にする。
「それが彼女の為になると、君は考えるんだね」
「さあ、それは分からないよ。でも、なんだかんだ言っても、ボクもお節介やきの猟兵のひとりだったってことかな」
 猟兵達の様々な想いと行動が積み重なって、物語は終わりへ近付いて行く。

 ――願わくば、少女に安らぎを。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…何者か、と問われたならば答えましょう
私はリーヴァルディ・カーライル
猟兵であり、吸血鬼狩りであり、この世界の闇を晴らす者

だけど今は…貴女が忘れてしまった物を届けに来た運び屋よ

前章で視したモーラの事を知る霊魂を暗視してUCを発動
魂を浄化のオーラで防御して魔力を溜め存在感を増幅して精霊化

…彼女に伝えたい言葉があったんでしょう?

道は私が切り開く。貴女は彼女との対話に集中して

自身や精霊に向かう精神属性攻撃の黒花は、
大鎌を武器改造した双剣を乱れ撃つ早業で切り払い、
“調律の呪詛”の狂気耐性と気合いで耐えるわ

…元より、私の言葉が届くとは思っていない

だけど、死してなお彼女の事を想っていた者の言葉ならきっと…




 忘却のモーラへ、過去の記憶の欠片が届けられた。
 その記憶を代償として奪う可能性のある、大剣の能力を封じた。
 猟兵達が繋いだバトンを受け取ったリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は自分が為すべきだと思う行動に移る。――今なら、届けられるはずだ。

 モーラは新しく植え付けられた記憶から逃れられず、忘れられないという初めての感覚に戸惑いながらも、機械的に動くしかない。
 過去から迎えに来た美しい死神のような女性に対して、モーラは尋ねた。
「……アナタはだあれ」
「私はリーヴァルディ・カーライル。猟兵であり、吸血鬼狩りであり、この世界の闇を晴らす者」
 リーヴァルディは今も尚彼女の隣に漂う霊魂を暗視して、【限定解放・血の煉獄】を発動させた。彷徨える魂をあたたかな光で包み込み、自身の魔力を与える。すると、一時的に存在感を増した霊魂は、今この時だけ精霊として存在を許されたのだ。
「だけど今は……貴女が忘れてしまった物を届けに来た運び屋よ」
 白髪に白服。モーラと対照的な姿で浮かび上がった精霊に、リーヴァルディは囁く。
「……彼女に伝えたい言葉があったんでしょう?」
 行きなさい。道は私が切り開く。
 精霊がモーラとの対話に集中出来るように、リーヴァルディは駆け出した。

 死色の剣が撒き散らす黒薔薇は、記憶という養分を求めてリーヴァルディと精霊に絡みつこうとする。しかし、リーヴァルディは過去を刻み未来を閉ざす魂喰いの武具の使い手。大鎌を双剣に形態変化させて縦横無尽に走らせる刃は、黒い花弁を床に散らしていく。じわりと漏れる記憶喰いの呪詛さえも、予めかけていた調律の呪詛で浸蝕を防いだ。
 大剣と双剣が喰い合う中、白い影が横切る。
 精霊は色の無いモーラの瞳を覗いて、笑った。

『あなたは、すべてをわすれてしまうひと。
 いいよ、ぜんぶわすれて。かわりに、わたしがもっていくから。
 くろいうまから、わたしとバラをまもろうとしてくれて、ありがとう』

 二人の出会いは、記憶喪失の過去の化身が束の間に見た泡沫の夢。
 初めから忘れられることが決まっていた、誰も知らない物語。
 オブリビオンとオブリビオンの戦いに巻き込まれて亡くなった、名も無き少女の物語。

(……元より、私の言葉が届くとは思っていない。だけど、死してなお彼女の事を想っていた者の言葉ならきっと……)
 最期の言葉を遺して、精霊は消える。
 大剣を弾いて距離を取ったリーヴァルディは、モーラの瞳にかなしみの色を視た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
誰かを守れなかった?誰かを手にかけてしまった?本人が忘れたものを手繰るのは困難ですね。
様々な記憶を失ってきたのは私も同じ。
彼女に対する同情の念は捨てましょう。別のところで遭った時に引き金を引くのを躊躇ってしまいそうだから。
せめて何度目かの甦りのうちに、いずれ大切な人と再会できると良いですね。

彼女に対して抱いた感情を糧に異形の触手の群れを呼び出して黒い花弁と喰らい合わせる。
モーラを骸の海に返す為に「零距離射撃」も「だまし討ち」も取り混ぜて只管攻撃を試みます。
相手の攻撃も敢えて受け、「カウンター」。癒されないのなら全ての記憶を、思い出せたのならその命のみを喰らい尽くせ。

共闘アドリブお任せ


セシリア・サヴェージ
全ての記憶を捨て去り、人々からも忘れ去られたのならば……それは『存在しなかったもの』とされてしまう。
ならば私があなたという存在を……モーラという少女は確かにいて、そして何かを成したと記憶しましょう。

UC【漆黒の呪剣】を発動して彼女が持つ秘剣に対抗します。
私はこの剣を手に取った理由を、願いを決して忘れたりはしません。たとえこの命尽きようとも、必ず成し遂げてみせる。
故に嫌悪します。その剣は大切なものを踏みにじるもの。同じ呪いの剣であっても暗黒剣とは相容れません。

放たれる刃を【武器受け】で防ぎながら【切り込み】、接近戦に持ち込みます。
私の全てを籠めた【重量攻撃】で忘却の剣と共に骸の海へ還しましょう。


シエル・マリアージュ
「私はシエル・マリアージュ、その名が重ねた罪と想いを力に未来を切り開く」
たとえ弱った相手でも油断や手加減はしない。貴方の事を忘れないためにも、私の全てをかけて貴方を骸の海に還そう。
「還りなさい。骸の海へ」
モーラが放つ黒い花をUC「葬焔の胡蝶」で焼き払い、素早い2回攻撃で今度は合体させた葬焔の胡蝶を放ちながらモーラへと迫る。
たとえモーラが反撃してきても残像を残してカウンターを仕掛ける。
「貴方が忘れても、私は忘れない」




 亡霊はモーラに過去を伝えた。言葉を届けた。記憶喰らいの剣は強制的に封印を解除されたままで、モーラの記憶を奪えない。失った記憶は元には戻らないが、新たに刻まれた記憶だけがモーラの脳内にリフレインする。
「忘れていいって、ありがとうって……なんで、そんなこと言えたの……?」
 死んでしまったのに。
 黒い馬に襲われて? ワタシが我を忘れて? ……ワタシを、庇って……?

「本人が忘れたものを手繰るのは困難ですね」
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が呟くように、彼女の過去を完全に解き明かす事は不可能だろう。情報の断片を拾って、恐らくこうだろうと想像するしかない。
 亡霊の少女の命が奪われる瞬間。その記憶だけは少女は語らずに、持って逝ってしまったのだから。
「それは、あなたが彼女を守ろうとしたからでしょう。彼女はあなたを恨んでなどいない。最期にそう伝えてくれたのです。ならば私があなたという存在を……モーラという少女は確かにいて、白き少女と出会って、そして何かを成したと記憶しましょう」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は亡霊の代わりにモーラの問いに答えた。モーラの最期に立ち会う者として、己の記憶を失くさないと誓う。
 全ての記憶を捨て去り、人々からも忘れ去られたのならば……それは『存在しなかったもの』とされてしまうのだから。

「こんなにかなしいのに……なんで、忘れさせて、くれないの……」
「その哀しみも苦しみもあなたのものだからです。私はどんなに辛くても、この剣を手に取った理由を、願いを決して忘れたりはしません。たとえこの命尽きようとも、必ず成し遂げてみせる!」
 セシリアの嫌悪の感情は、モーラではなく彼女の剣に向けられていた。忘却は必ずしも救いになるとは限らない。その剣は大切なものを踏みにじるもの。同じ呪いの剣であっても、セシリアの暗黒剣とは相容れない存在だ。
 暗黒剣は、セシリアの命を喰らってその力を解放した。黒き血も、死色の刃も、【漆黒の呪剣】となった真の暗黒に防がれて先へ進めない。

「忘れる事に慣れたあなたは、その気持ちを捨てたくて剣を振るい……もしかしたら、死して全てを無に帰するつもりだったのかもしれませんね」
 シャドウライダーを駆逐して愁魔の館を襲撃したのは、少女を殺した可能性のある黒き馬も自分も殺して、『全てを終わりにするため』。
 そんな風にも考えられる、と遥は推察した。同じ記憶を代償とするものとして、その心の機微に覚えがあったのかもしれない。
 遙もこれまでに様々な記憶を失ってきた。彼女と自分を重ね合わせる同情の念は此処で捨てて行かなければならない。
「別のところで遭った時に、引き金を引くのを躊躇ってしまいそうですから……」
 今抱く感情を糧にして、遙は【心を喰らう触手の群れ】をモーラに放った。
「存分に……いえ、その命のみを喰らいなさい」
 彼女が癒されないのであれば、彼女の持つ全ての記憶を喰らうつもりだった。しかし、他の猟兵達が繋いで届けた亡霊の言葉までは、奪う気になれなかったのだ。
 おびただしい数の触手が死色の剣に絡みつき、解こうと意識が剣に向けられた所で背後からモーラを捕らえる。骸の海へ連れて行こうとする貪欲な触手を見守りながら、遙は願った。
「せめて何度目かの甦りのうちに、いずれ大切な人と再会できると良いですね」
 限りなく可能性が低い、慰めの言葉を紡ぎながら。
 いつか彼女にも安らぎが訪れるようにと。

 心が疲弊し、命を吸われ続けるモーラは、朦朧と呟く。
「……ワタシを終わりにしてくれる……アナタ達は、だあれ?」
「私達は、猟兵。私はシエル・マリアージュ、その名が重ねた罪と想いを力に未来を切り開く」
 愁魔に立ち向かった時と同じように身を潜めていた、シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)が迷彩と解いて飛び出した。
 死色の剣は持ち主の死に抗うように、今までにない程の黒い薔薇の束を広間に撒き散らす。部屋中に落ちてくる花弁に少しでも触れれば、猟兵もモーラの物語を奪われてしまうだろう。
 しかし、シエルは冷静に【葬焔の胡蝶】を喚び寄せた。小さな青い蝶は黒薔薇に飛び込んで焼き払って行く。自身と仲間の猟兵の身体に触れそうな薔薇から順々に、全神経を集中させて、繊細な操作で蝶を操る。シエルの碧眼は蝶と同じ色に輝き、自分の全てをかけて必ずモーラを送り出すという、決意の炎が揺れていた。
 暗黒剣も触手も協力して薔薇を散らし、自分達の記憶を――モーラの記憶を守る。
 彼女の事を忘れないために。

「還りなさい。骸の海へ」
「忘却の剣と共に!」
 シエルが合体させた蒼玉の胡蝶は、万物を灰燼に帰す葬送の焔を放つ。
 セシリアの全身全霊の力を込めて振り抜かれた暗黒剣が死色の剣を砕き、無防備になったモーラの全身は蒼炎に包まれた。

 モーラは最期、身体を灰に変えながら天井を見つめていた。
 彼女に何が見えていたのかは分からない。
 骸の海へ還れば、ここで起きた何もかも忘れてしまうはずだ。
「貴女が忘れても、私は忘れない」
 虚空を掴むように掌を握って、シエルは延焼を消した。
 彼女も剣も残りの灰も全てが在るべき場所へと還り、その場には何も残らなかった。

 けれど。
 忘却のモーラが全て忘れた物語は、猟兵達の記憶の中に残された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月05日


挿絵イラスト