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希望から続く道~命の糧を得るために

#アポカリプスヘル #希望 #希望へと続く道 #ロージスシティ

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#アポカリプスヘル
#希望
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#ロージスシティ


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● アポカリプスヘル ロージスシティにて
 アポカリプスヘルの一角に、規模の大きな拠点があった。
 かつて物流倉庫だった場所に構えられた拠点の周囲はかつてオブリビオン・ストーム多発地帯と呼ばれていたが、今ではそれも消えて他所との交流が始まっていた。
 拠点の人口を支えるには倉庫からの物資だけでは足りず、この街の周囲では以前から農業が行われていた。
 この農地を大きくしよう。少しでも収穫を増やせば備蓄ができる。他所の街での物々交換にも使える。
 荒れ地にトラクターを走らせては大きな石を取り除いていた農夫達は、拠点の方から近づいてくる少女に慌ててトラクターから降りた。
「こ、こりゃあ天使様!」
「こんな町外れにお出ましなんて、いけねぇよ!」
「こんにちは。メルにもお手伝い、させてもらっても、いいかな……?」
 天使と呼ばれた少女ーーメルは、農夫達の返事を待たずに転がっていた岩を拾い上げた。華奢で小柄なメルは一抱えほどの岩を持ち上げようとするが、すぐにふらついて尻もちをついてしまう。
 その場に平伏した農夫達は、慌ててメルを助け起こすと困ったようにため息をついた。
「ああ、大丈夫だからもうお帰りくだせぇ!」
「貴女様はこの街をオブリビオンからお守りくださる大切な天使様なんだから!」
「天使様は来たるべき時に、お力をお使いくだせぇ。それが街の人間の望みでさぁ」
 へつらうような媚びるような、縋るような目の光に、メルは足元に転がる石の数を数える。いつもそうだ。みんなそうだ。メルを「天使」と呼ぶばかりで、メル自身を見てくれない。
「メルにそんな力、無いよ」
「いやいやいやいや」
「天使様は、天使様だ」
「今まで通りどうか、お守りくださいませ!」
 再びひれ伏し拝む農夫達を、メルは悲しそうに見下ろす。何か言おうと口を開いた時、遠くに現れた黒い姿に目を見開いた。

 オブリビオンだ。ついに来たのだ。

 宙に浮いた黒い人影は足元の岩砂漠を汚泥に変えながら、ゆっくりと近づいてくる。荒れた闇を纏い、目だけが異様に輝いている少女と目が合ったメルは、唇を噛むと一歩下がった。
「あの子も……フラスコチャイルドだ……」
「ひ、ひえぇぇ! オブリビオンだ!」
「お助けください天使様!」
 縋り付く農夫たちに、メルは一歩も動けない。周囲にゾンビバルーンを漂わせた黒い少女は、メル達の姿に口角を上げた。

● グリモアベースにて
「仕事だよアンタ達」
 集まった猟兵に語り掛けたパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は、アポカリプスヘルの地図を広げると一つの拠点を指差した。
「アンタ達が守ってくれた拠点の一つに、ロージスシティって場所がある。ここは以前から壁の外側で農業をしていたようだが、街の外に吹き荒れていたオブリビオン・ストーム多発地帯が無くなったのを機に農地を広げようとしている。ここにオブリビオンの襲撃が予知されたんだ。これを退けておくれ」
 現れるのは、『『フラスコより溢れし災厄』実験体参拾五式』と呼ばれるオブリビオン。試作型万能細胞で世界を浄化するために生み出されたが、失敗。自らの体内に取り込んだ汚染物質で世界を汚泥に沈める存在になってしまったのだ。
 汚泥のガスを取り込んだゾンビバルーンが周囲を漂っていて、まずはこれを倒す必要がある。
「残念だが、これ以上の情報は無いよ。何か目的があるのか、それとも通りすがっただけなのか。何にせよ、ここで倒さなけりゃ拠点が一つ腐海に沈む」
 オブリビオンの進行方向に、「天使」と呼ばれる少女と農夫たちがいる。彼らの避難も必要だろう。
「あの滅びに瀕した世界でも生きようとする連中の歩みを、こんなところで止めさせるわけにはいかないからね。アンタ達の働きに期待してるよ」
 頷く猟兵達を見渡したパラスは、グリモアを発動させた。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございました。
 新世界も興味津々ですが、敢えてのアポカリプスヘルです。
 今回は下記三部作の舞台になった場所での事件になりますが、読まなくても何も問題ありません。

 希望へと続く道~危険地帯踏破行( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=21023 )
 希望へと続く道~取捨選択の狂躁曲( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=22075 )
 希望へと続く道~自由と尊厳のために( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=22787 )

 過去作にご参加くださった方々は、何かございましたら思うままにプレイングをおかけ下さい。
 三部作には、リプレイ以上の設定等はほぼ何も無いです。
 なのでもし「こうなんじゃないかな?」的なことがありましたら、プレイングで推理していただくと今後のリプレイ等で当たるかも知れません。当たらないかも知れません。
 第三部は日常です。この章のみお声がけがあればパラスが登場します。

 プレイングは6/25(木)朝8:31より27日(土)午前中くらいまででお願いします。その後はロスタイムです。
 執筆は週末になると思います。締切は追ってご連絡させていただきます。
 それでは。プレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ゾンビバルーン』

POW   :    腐れた風船
【腐った肉の塊】が命中した対象を爆破し、更に互いを【腐敗しつつも、高い強度を持つ糸状の繊維】で繋ぐ。
SPD   :    ゾンビ一番搾り
【腐敗した体液】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    クローンデザイアン
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【自分自身として増殖し、身体】から排出する。失敗すると被害は2倍。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※断章の追加予定はありません。
オープニング直後から開始予定です。
ビスマス・テルマール
環境改善の為のシステムが暴走してその逆に性質を

何処かのアニメで聞く話

クロガさんの風貌……何となく違和感無いですね

『ドウかしたのか?……マスター』

●POW
前哨戦の敵も厄介そうですし……ここはあの人の力を借りましょうか

『早業』でUC発動し生成したのを食べ白金竜装態に変身

『オーラ防御』と『属性攻撃(ミント)』込めた【アジのなめろうの絶対超硬剣】で『範囲攻撃』の『弾幕』を『念動力』で操作し

一般人を護る様に敵に面制圧しつつ

【クロガ】さんに『属性攻撃(ミント)』込めた魔導『砲撃』と【ディメンション・なめろうブレイカー】の『一斉発射』で一掃

※クロガさんは
帝竜戦役⑩〜インテリジェンス・ウェポン~魔法の杖参照


東雲・一朗
▷アドリブ歓迎です

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。

▷撃滅
そこに守るべき民がいて、そこに倒すべき敵がいる…なれば我ら第十七大隊の成すべきは1つ。
「眼前の敵を撃滅し、背後にいる全ての民を守る…総員構え!」
豊富な【戦闘知識】に裏打ちされた【団体行動】指揮による【集団戦術】を用いた【大隊指揮戦術『壱』】の【制圧射撃】で敵を撃滅する。
私自身は最前線に立ち、二刀を構えて桜花の霊気【オーラ防御】と【武器受け】にて我が大隊を敵の攻撃から守り切る。
「果てなき荒野に帝都軍の規律と強さを示す、この戦場に桜花の輝きを見せつけよ!」


リカルド・マスケラス
連系アドリブ等OKっす

「せっかくの農地をやらせはしないっすよ!」
そんな感じで登場する宇宙バイクに乗ったお面

「いくっすよ、アルタイル!」
【牽牛星覚醒】でパワーを上げた宇宙バイク搭載のビーム砲で【なぎ払い】、ミサイルランチャーの【一斉発射】で吹き飛ばすの【2回攻撃】。接敵される前に遠距離から数を減らしていきたい。
敵の攻撃はバイクの【操縦】技術で回避するっすけど、攻撃を受けてしまったら、繊維を鎖鎌を【念動力】で動かし、【破魔】の力を乗っけて切り離す。
「アルタイルはパワーと頑丈さが売りなんす! そのくらいの攻撃で倒せると思ったら大間違いっすよ」
接近戦になったらガスの誘爆を警戒して鎖鎌を振るって戦うっす



● ビスマスさんとクロガさん
 呆れるくらい晴れ渡った青い空と、嫌になるほど茶色い地平線。
 それらが出会う場所より滲み出た黒い少女の姿を視認したビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、腕を組むと深く唸った。
「環境改善の為のシステムが暴走してその逆に性質を。何処かのアニメで聞く話ですね」
 予知にあった『『フラスコより溢れし災厄』実験体参拾五式』の来歴を思い出す。狙いとは逆の性質を植え付けられ、暴走したフラスコチャイルド。彼女が何を考え、どんな目的があってここにいるのかは分からない。
 だが、どんな理由があっても拠点を腐海に沈めるわけにはいかない。ビスマスは黒水晶杖型魔導武器『クロガ』を握り締めると、迫るゾンビバルーンに向けた。
「前哨戦の敵も厄介そうですし……ここはあの人の力を借りましょうか」
『マズはあのバルーンが相手カ?』
 詠唱を開始しようとしたビスマスに、杖先がグラサンハリネズミなクロガが問いかける。一旦詠唱を中断したビスマスは、その口調に笑みを浮かべた。
「クロガさんの風貌……何となく違和感無いですね」
『ドウかしたのか? ……マスター』
「なんでもありません。……来ます!」
 鋭い声を上げたビスマスは、迫るゾンビバルーンの腐った肉の塊に大きく飛び退いた。黒い少女を覆い隠すように飛来する無数のゾンビバルーンが、一斉にビスマス達へと襲いかかる。意思というものをまるで感じられない攻撃の回避を試みるが、避けきれずに腐った肉の塊が腕に絡みつく。
「しまっ……!」
 爆発を覚悟し身構えたビスマスは、後方より迫るバイクの爆音に顔を上げた。

● 制圧と足止め
「仲間をやらせたりはしないっす!」
 勇ましい声と同時に躍り出た宇宙バイクが、無人のままビスマスを繋ぐ繊維に体当たりを仕掛けた。
 高速回転するバイクの前輪は宇宙バイクを弾き返そうと強くしなるが、やがて根負けしたようにちぎれ飛ぶ。
 爆発の衝撃をいなすビスマスの前に躍り出た宇宙バイクは、背中で庇うビスマスやメル達に前輪を巡らせた。
「大丈夫っすか?」
「ありがとう。あなたは……」
「自分っすか? ヒーローマスクのリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)っす! 今はこの宇宙バイク『アルタイル』の力を借りてるっす!」
 胸を張るようにエンジンをひと吹かししたリカルドは、迫りくるゾンビバルーンの第一波に向き合った。
 車輪の下で感じるのは、耕された荒れ地。今はまだ荒れ地だが、ここはやがて肥沃な農地に変わるだろう。この土地を、腐海に沈める訳にはいかない。
「せっかくの農地をやらせはしないっすよ!」
「無論だ。食は民の生命を守る全ての源。帝都第十七大隊の名にかけて、この地を汚泥に沈ませはしない」
 リカルドの体当たりの直前に飛び降りた東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)は、腰に履いた影切を軽く叩くとビスマスに向き合った。
「私は帝都第十七大隊を預かる東雲一朗……階級は少佐だ」
「ビスマス・テルマールです。敢えて名乗るなら、通りすがりのご当地ヒーローです」
「それは心強い」
 ビスマスの名乗りに、一朗は深く頷く。頷きを返したビスマスは、迫るゾンビバルーンの群れに向き合った。
「あの数はちょっと厄介ですね」
「ふむ。ならば帝都第十七大隊を召喚しよう。だが詠唱に時間がかかる。ーーリカルド殿」
「手筈通りっすね!」
 軽快にエンジン音を鳴らしたリカルドは、飛来する腐敗した肉塊にアルタイルの銃口を向けた。
「いくっすよ、アルタイル!」
 宇宙バイクに搭載されたビーム砲が、ゾンビバルーンをなぎ払う。覚醒したリカルドが放つビーム砲【ミルキーウェイ】が、目前に迫ったゾンビバルーン達を天の川へと変えていく。
 なぎ払われ、破裂したゾンビバルーンが無数の星へと変わる。同時に構えたミサイルランチャー『リベルタス』が、白く変じた視界へと一斉に放たれた。だが敵は数が多い。最前線のゾンビバルーンを盾に後衛が攻撃をやり過ごす。生き残った後衛が一斉にアルタイルに腐敗液を吐きかけるのと同時に、ミサイルがゾンビバルーンに突き刺さる。爆発するゾンビバルーンの爆炎をやり過ごしたリカルドは、腐敗液で変色したタイヤにエンジンを噴かせた。
「アルタイルはパワーと頑丈さが売りなんす! そのくらいの攻撃で倒せると思ったら大間違いっすよ」
 強大なパワーを手に入れたリカルドの攻撃は、ゾンビバルーンの大群を押し止める。だが、次から次へと現れるゾンビバルーンの群れを、一人で抑えきることはさすがにできない。
 大きくジャンプし、腐れた風船の射程内に入ったリカルドに向けて腐った肉の塊が放たれる。吐き気を催すような臭いと粘液を纏った繊維がリカルドとゾンビバルーンを繋ぐ。
 爆発が来る直前、鎖鎌がひらめいた。念動力で操作された鎖鎌は破魔の力を宿し、高い強度を持つ繊維質の糸を切り離さんと刃を突き立てる。
 そこへ、別のゾンビバルーンが腐れた風船を放とうと大きく膨らむ。ダメージを覚悟したリカルドが防御姿勢を取った時、アジのなめろうの絶対超硬剣がゾンビバルーンに突き刺さった。

● 桜吹雪となめろう乱舞
「生成開始(ビルド・オン)っ! 絶対超硬剣・秋刀魚のなめろう(蜂蜜味噌)味っ! 此処はプラチナさんの力と、足りない分はわたしの力で」
 早業でユーベルコードを高速生成させたビスマスが、リカルドに迫るゾンビバルーンをアジのなめろうの絶対超硬剣で貫いた。
 白金竜形態に変化し、プラチナの鎧を纏ったビスマスが宙を舞う。最高時速8100km/hで飛翔できるようになったビスマスにとって、ゾンビバルーンが放つ腐った肉の塊など止まっているのと同じこと。次々に放たれる腐った肉の塊を高速移動で回避したビスマスは、場のゾンビバルーン全体に向けて秋刀魚のなめろう(蜂蜜味噌味)を解き放った。
 制圧するように上空から放たれる絶対超硬剣が、ゾンビバルーンの動きを止める。抗菌効果があるミントの香りが秋刀魚のなめろうから漂い、吐き気を催すような腐臭を和らげていく。倒すには至らない攻撃にゾンビバルーンが動きを止めた時、号令が響いた。
「そこに守るべき民がいて、そこに倒すべき敵がいる。なれば我ら第十七大隊の成すべきは一つ。眼前の敵を撃滅し、背後にいる全ての民を守る……総員構え!」
 十分な時間稼ぎに第十七大隊を最良の状態で展開させた一朗は、影切を抜き放つとゾンビバルーンの群れへと突きつけた。
「果てなき荒野に帝都軍の規律と強さを示す、この戦場に桜花の輝きを見せつけよ! 目標、ゾンビバルーン! 第十七大隊構え……撃て!」
 一朗の号令の許、一斉に軽機関銃が放たれた。無数の弾丸が銃声とともにゾンビバルーンに風穴を開け、不快な臭いと共に打ち倒していく。
 散会したゾンビバルーンが弾幕から逃れようと行動を開始するが、老練な一朗の視線はその動きを見逃さない。
 豊富な戦闘知識に裏打ちされた一朗の作戦指揮は、的確に敵の退路を絶ち攻撃の隙を与えず、ゾンビバルーンをただの腐った肉塊へと変えていく。
 注意深く戦場に視線を巡らせていた一朗は、察知した異変に眉を顰めた。今までは臭いガスを放って消えていたゾンビバルーンだったが、黒いガスを吐くようになったのだ。
 目くらましか。直感で悟った一朗は、その場の指揮を任せると鋭く駆け出した。
 黒い煙を吐いて消えるゾンビバルーンのガスを隠れ蓑に、死角より第十七大隊に迫る一団がある。いくら優秀な大隊とはいえ、背後から奇襲されてはひとたまりもない。一団に迫った一朗は、影切と旧式退魔刀を抜き放つとゾンビバルーンに斬りかかった。
「ここは通さん!」
 大隊に腐った肉の塊を放とうと膨らんだゾンビバルーンを、桜花の霊気を纏った双刀で切り払う。次々に迫るゾンビバルーンから大隊を守るように戦う一朗は、抑えきれないゾンビバルーンの数の多さに舌打ちした。
 大隊に向かったゾンビバルーンの動きが、ふいに鈍った。一朗の動きに別働隊を悟ったビスマスが、攻撃の範囲を広げたのだ。
 一朗がゾンビバルーンを切り払った時、バイクのエンジン音に顔を上げた。
「助太刀するっす!」
 一旦下がったリカルドが、ビーム砲とミサイルランチャーで残りのゾンビバルーンを撃ち倒す。
 後方からの攻撃を打ち倒した時、場にいた全てのゾンビバルーンが沈黙した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アストラ・テレスコープ
せっくこれからどんどん発展していきそうなのに滅ぼされちゃったら嫌だよね!

「星間尋矢(スターダストストライク)」で迎撃して敵を足止めするよ!

その間に避難が必要な人達のところに駆けつけて
腰のミニロケットを噴射して「空中浮遊」!
一人ずつ持って運ぶよ~
誰から連れてけばいい?


桜雨・カイ
お久しぶりですメルさん。?…どうしましたか?
何か色々あるようですが…まずは現状の打破を

農夫の方は戻って拠点はの守りの強化を
メルさんは…私の退治中、すり抜けて拠点へ向かうゾンビがいないか周囲を見張ってくれますか?
拠点を守る為に力を貸して下さい

私ができる事をやりますから、あなたたち(農夫)のできる事メルさんにできる事、まずはそこから手をつけましょう、ね。

【想撚糸】発動、編んだ結界大きく広げて壁をつくる
向こうが糸で繋ぐのなら好都合。多く絡みついたバルーンを結界で小さく丸めて包み込み、腐敗を周囲に広げずに倒しまましょう
繋がれた分重みはありますが、頑張って結界は広げます
できる事をやると約束しましたからね


ユディト・イェシュア
この世界は未だに物資が不足しているのですね
俺の故郷も豊かに作物が実る土地ではありませんでした
力になれるのなら協力したいです

まずは敵に対処しなければ
せっかく耕した農地やそこを守る皆さんを失うわけにはいきません

俺は逃げ遅れた農夫の方たちを守ることを中心に動きます
天使と呼ばれているお嬢さんは彼らにとっても大切な人のようですね

辺りが農地なら安全な場所…というのもあまりないかもしれません
攻撃は他の方に任せますが敵が近づいてきたら彼らを守りながら戦います
攻撃で牽制しきれない時はUC使用

あなたたちの仕事はこの世界に生きる人々の命を繋いでいるのです
俺たちにその手助けをさせてください

必ず彼らを守り抜いてみせます


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

へーぇ…
苦労して広げた農園を潰す気なんだろうか、オブリビオンどもは
オブリビオン・ストームに潰されるよりましかもしれねえが
農夫たちにしてみれば、どっちになってもたまったもんじゃねえよ

農夫たちの反応も気になるがよ
問い詰めるのは目の前のこいつらを一掃してからだな…!

完全に脱力状態になればはね返される
なら、そうさせなければいいだけだろ
「闇に紛れる、迷彩」で気配を殺しながら接近しつつ「魔力溜め」
群れの中心に近づいたら「高速詠唱」から【悪魔召喚「スパーダ」】でスパーダ召喚
ゾンビバルーンが脱力するより早く、奴らに「破魔」つきの紅の短剣の雨を降らせてやらあ
まとめて浄化されやがれ!



● 生きるための土地を
 全滅したゾンビバルーンに、戦場が不気味に沈黙する。
 身を寄せ合って攻撃をやり過ごしていた農夫たちが立ち上がり、喜びの声を上げた。手を取り合った農夫たちは、足元で踏み固められた農地にため息をついた。
「せっかくここまで耕したのに……」
「なぁに、また耕せばいいだけだ」
「あぁ、そうだな」
 口々に励まし合う農夫たちに、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は周囲を見渡した。見渡す限り広がる大地は荒涼としているが、オブリビオン・ストームが荒れ狂う前は農地だったのだろう。よく見れば格子状に整備された道がところどこど残っている。
「この世界は未だに物資が不足しているのですね」
「あぁ。今でかつかつ。オブリビオン・ストーム多発地帯が無くなって、ようやく農地が広げられるんだ」
「俺の故郷も豊かに作物が実る土地ではありませんでした。力になれるのなら協力したいです」
 真摯なユディトの言葉に、農夫たちは嬉しそうに微笑む。
「それはありがてぇ!」
「アンタ達はきっと、天使様が呼んでくださったに違いねぇ! さすがはおら達の守り神様だ!」
 嬉しそうな農夫たちは、俯く少女ーーメルを崇敬の目で見つめる。視線を受けたメルはしかし、俯いたまま何も言わない。
「天使と呼ばれているお嬢さんは、皆さんにとっても大切な人のようですね」
「あぁ。なにせこの街をオブリビオンから守ってくれる生き神様だ」
「オブリビオン・ストームよけが無くなっちまったのは怖いが、なに。これからも守ってくださるに違いねぇ」
「へぇ。生き神様ねぇ。難儀なことだな」
 皮肉そうな笑みを浮かべた森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は、俯く少女をチラリと見る。俯いた少女は俯いたまま何も言わない。気に入らないなら何か言えばいいのに、何も言わない。そんな姿に口を開きかけた時、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)がメルに歩み寄った。

● それぞれができること
「お久しぶりですメルさん」
「カイさん!」
 しゃがんで視線を合わせたカイの姿に、メルは花のような笑顔を向けた。嬉しそうに駆け寄ったメルは、期待に満ちた農夫たちの視線に気づくと足を止めた。
 笑顔が曇ったのを見たカイは、静かに首を傾げた。
「? ……どうしましたか? 何か色々あるようですが……」
「あのね……」
 顔を上げたメルの言葉を遮って、農夫の一人がぽつんと残ったオブリビオンを指差した。
「み、見ろ!」
 叫び声に敵を見たカイは、再び現れたゾンビバルーンの大群に目を見張った。黒い霧のようにも見えるゾンビバルーンの群れに、猟兵達は一斉に身構える。
 だが、ゾンビバルーンはまっすぐ向かっては来なかった。羽を広げるように大きく二手に分かれたゾンビバルーンは、戦場を迂回するように拠点へと迫る。第一波を凌いだ猟兵達が一群に向かうのを見たカイは、もう一群を倒すべく念糸を繰った。
「まずは現状の打破が先のようですね」
カイが臨戦態勢に入った時、背後から明るい声が響いた。
「たくさん降り注げっ!」
 駆けつけたアストラ・テレスコープ(夢望む天体望遠鏡・f27241)の詠唱に応え、キラキラと光る小さな星屑のような矢弾がゾンビバルーン達を包囲する。複雑な幾何学模様を描きながら飛翔する矢弾は、ユディト達の方へと突き進むゾンビバルーン達の行く手を阻んだ。
 それを確認したアストラは、満足そうに腰に手をやると黙った農夫たちを振り返った。
「よし! じゃあ撤退しよう! せっくこれからどんどん発展していきそうなのに滅ぼされちゃったら嫌だよね!」
「て、撤退ってどこへ……」
「ここは農地の端っこだ。拠点まで走って逃げるには時間が……」
「もちろん、考えがあるんだ」
 農夫たちの懸念に、アストラはロケットベルトを噴射させた。腰のミニロケットは小気味よい噴射音を立てると、アストラの姿をふわりと浮かべる。軽やかに宙に浮かんだアストラは、空中浮遊すると農夫たちに手を差し出した。
「一人ずつ持って運ぶよ~。誰から連れてけばいい?」
 アストラの問に、農夫たちはハッとなにかに気付いたような表情で顔を見合わせる。あんなに怯えていたのに、頷き合うとメルを振り返った。
「もちろん天使様を……」
「農夫のおじちゃん達から、運んであげて」
 顔を上げたメルは、きっぱりとした口調でアストラへ訴えた。強い意志を込めたメルの表情に、農夫たちはうろたえる。
「それはいけねえ! まずは天使様から……」
「おじちゃん達は、作物を作れる。作物があったら、みんな飢えなくて済むの。それは……メルには、できないから。だから、先に逃げて」
「ダメです! まずは天使様から……」
 押し問答が始まりそうな雰囲気に、カイは農夫たちと向き合った。詳しい経緯は分からないが、予知でメルは「自分にできることはなにもない」と悩んでいるようだった。そんなことはないよと、教えてあげたい。
「農夫の方は戻って拠点の守りの強化を。メルさんは……」
「分かってる。おとなしくしてる……」
「私の退治中、すり抜けて拠点へ向かうゾンビがいないか周囲を見張ってくれますか?」
「えっ……?」
 カイの言葉に、メルは目を見開き顔を上げる。言われたことがよほど意外だったのだろう。すっかり守られるだけの態勢に入っていたメルに、カイは微笑んだ。
「見張りはとても大切な仕事です。拠点を守る為に力を貸して下さい。私ができる事をやりますから、あなたたち(農夫)のできる事メルさんにできる事、まずはそこから手をつけましょう、ね」
「……っ、うん!」
 目を輝かせたメルは、生き生きとした表情になると大きく頷く。メルの答えに、農夫たちはパニックを起こしたように頭を抱えた。
「そんな! お逃げ下さい天使様!」
「俺たちなんかより天使様の……」
「あなたたちの仕事はこの世界に生きる人々の命を繋いでいるのです。俺たちにその手助けをさせてください。メルさんもあなたたちも、必ず守り抜いてみせます」
 決意を込めたユディトの声が、農夫たちの背中を押す。納得したように頷いた農夫の手を取ったアストラは、そのまま宙に舞い上がった。
「そうと決まれば急ぐよ! 足止めもそんなに長く続かないんだから」
「う、うひゃぁぁぁ!」
 突然手を取られ、拠点へと移動する農夫の声が遠ざかる。それを確認したユディトは、残った農夫とメルに向き合った。
「せっかく耕した農地やそこを守る皆さんを失うわけにはいきません。あなた達は俺たちが守ります。ですから早く拠点まで移動しましょう」
「あ、ああ!」
 頷いた農夫たちが、拠点に向けて移動を開始する。
 足の遅い農夫たちを守りながらの撤退戦が始まった。

● 漆黒と紅の悪魔
 時は少し遡る。
 足止めされ、ダメージを蓄積させながらも着実にこちらへ進軍してくるゾンビバルーンの群れを前にした陽太は、両手に持った濃紺と淡紅のアリスランスを構え注意深く距離を取った。
 執拗に襲い来るゾンビバルーンの姿には、撤退の二文字はない。そもそも意思などないのだろうが、そうなると奴らを操っているオブリビオンの本気度が伺えるというものだ。
「へーぇ……。苦労して広げた農園を潰す気なんだろうか、オブリビオンどもは」
 大地を腐海に沈めながら進軍する黒い少女の姿はまだ遠く、その声は届かない。大地を朽ちさせる力がどれほどのものかは分からないが、そこから生まれたゾンビバルーンを見れば大方の察しはつく。
 オブリビオン・ストームに潰されるよりましかもしれないが、農夫たちにしてみればどっちになってもたまったものではないだろう。
 背後で繰り広げられる会話を背中で聞いた陽太は、一つため息をつくとユーベルコードの詠唱を開始した。まだもう少し、時間を稼がなければならないようだ。
「農夫たちの反応も気になるがよ。問い詰めるのは目の前のこいつらを一掃してからだな……!」
 ゆっくりと進軍する悪魔たちは、その数を増やしながら着実に進軍してくる。ユーベルコードを無効化したゾンビバルーンの一部は、着実に陽太達を射程に収めに来る。先手を打って地面を蹴った陽太の姿がふいに消えた。
 姿を消した陽太のことを気に止めた様子もなく。ゾンビバルーンが再び脱力状態に入る直前、ふいに陽太の声が響いた。
「紅き剣を司りし悪魔の剣士よ、我が声に応え顕現せよ。そして己が紅き剣を無数の雨として解き放て!」
 気配を殺し、息を顰めながら猫のような素早い身のこなしだった。暗殺者として鍛えられた隠密行動を遺憾なく発揮した陽太は、ゾンビバルーンがその存在に気付いた時には詠唱を終えていた。
 完全に脱力状態になれば増殖される。なら、そうさせなければいいだけだ。
 陽太の召喚に応じて現れた悪魔「スパーダ」の周囲に、紅き短剣が浮かび上がる。悪魔の得物である短剣は切っ先を下にすると、陽太の指示を待つように刃先を煌めかせる。
「まとめて浄化されやがれ!」
 陽太の声と同時に、紅き短剣が一斉にゾンビバルーンに降り注ぐ。場を制圧するように放たれる破魔を帯びた短剣は、ゾンビバルーンを貫いていく。後続のゾンビバルーンは、中に溜まったガスを吐き出しながら潰れるゾンビバルーン達を飛び越えるように、上空高く舞い上がった。

● バルーンアタック
 撤退を開始していたメルは、ふいに空を見上げると上空を指差した。
「カイさん! あれ……!」
 メルが指差した時、ワンテンポ遅れてゾンビバルーンが急降下してくる。陽太の攻撃範囲を大きく迂回したゾンビバルーン達が、メル達めがけて腐った肉の塊を放つ。
 腐臭と共に放たれる肉の塊にメル達が身構えた時、細い糸が放たれた。
「この糸は想いが紡ぐ糸。――痛みも記憶も、過去を全て抱えてその先へ進みます!」
 詠唱と同時に放たれた糸は複雑に絡み合い、籠目を描くと網となりメル達の前に展開する。【想撚糸】に絡め取られた肉塊は、網に絡み取られてもなおメル達に向かって突き進んだ。
 メルや農夫達を守るために広げた網は大きい。そこへ放たれる腐敗した肉の塊は、網を突き破らんとものすごい勢いで圧を強めてくる。
 一人で支えるには荷が重い。網は自然と中央の一点に重心が集まり、さすがのカイも思わずよろけてしまう。
「カイさん!」
 メルの切なる声が、カイの耳を打つ。ここでカイが負けてしまっては、メル達に大きな被害が及んでしまう。一般人である彼らは、ゾンビバルーンが吐き出す腐敗した吐息でさえ致命傷になりかねない。
 彼らを守らなければ。想いを強くしたカイは、メルを振り返ると安心させるように微笑んだ。
「できる事をやると約束しましたからね。これが今、私にできることです……!」
 腐敗した糸で繋がれた腐った肉の塊を網で包み込んだカイは、ひと塊になった肉塊をゾンビバルーンに向けて投げ放った。
 こちらへ向かってくる勢いを逸し、勢いを集中させるために自然と集まっていたゾンビバルーンの塊に向けて投げつける。糸で繋がれていたのが好都合と言えた。
 その時、腐った肉の塊が爆発した。
 自身の爆発力で自身を攻撃することになったゾンビバルーン達は、腐った肉塊を弾丸のように飛び散らせる。絡んだ肉塊をほどくためにユーベルコードを解除していたカイは、雨のように降り注ぐ肉にメル達を振り返った。
「危ない!」
 カイがメル達に駆け寄ろうとした時、ユディトが動いた。
 降り注ぐ肉塊からメル達を庇うように大きく腕を広げ、一箇所に固まっていたメル達に降り注ぐ肉塊を一身に浴びる。あれでは大ダメージは免れないだろう。カイはユディトに駆け寄った。
「ユディトさん! 大丈夫ですか?」
「メルさん達は大丈夫です。誰も怪我はしていません」
「いえそうではなく、あなたがです」
 心配そうなカイの声に自分が心配されていることにようやく気付いたユディトは、カイを安心させるように微笑むとユーベルコードを解除した。
「僕も大丈夫です。【無敵城塞】で守りましたから」
 そう言って立ち上がるユディトは、確かに傷一つ無い。安心したカイは、ホッと息を吐くとメルに微笑んだ。
「メルさんのお陰で助かりました。ありがとうございます」
「……うん! カイさんもお兄さんもおじちゃん達も、ありがとう!」
 微笑みながら礼を言うメルに、カイは安心したように笑みを返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月水・輝命
アド・連携〇
WIZ
メルさん、お久しぶりですわね。
悠長にしている場合ではありませんが……元気そうで何よりだと、安心しますわね。
ここはわたくし達に任せてくださいな。メルさんや、他の皆様は落ち着いて避難してくださいませ。
笑顔を向けて、避難できるように、そっと「祈り」を込めて背中を押しましょう。

……さて。
やれることをやりましょうか。
五鈴鏡の複製を持ち、「浄化・破魔」をもってUC発動。
光の刃を映し出し、周囲ごと浄化させていただきますわよ。
攻撃は、「残像・見切り」で対処、難しいようなら、「オーラ防御」で守りを固めましょう。
ここから先へは、通しませんわ。メルさん達や、ここにいる皆様の為にも。


影見・輪
久しぶりだね、メル
外の世界での生活はどう?

元気そうで何より……と言いたいところだけど、そうでもないみたいだね?
(メルの様子を気にしつつも)

まぁ、今はそんなのんびりとした挨拶もしてられないか
大丈夫だよ、思うところあるなら話は聞くし、皆だってそのつもりだろうしね
ともあれ、今はこの場を切り抜けることに専念しようか

基本はメルの守りを中心に
メルへの攻撃は[見切り、かばう]で可能な限り防ぐ
必要かつ可能なら【鏡映しの闇】発動の上攻撃しよう

あとは他の仲間がUC発動させた際に
敵のクローンデザイアンの発動が失敗するよう工夫をしてみる
「誘」使用した[援護射撃、催眠術]で、敵を脱力状態にさせないよう妨害仕掛けてみるよ



● 守るべきもの
 第二波を凌ぎきった猟兵達は、途切れた攻撃に農夫達の避難を加速させた。ピストン輸送で拠点に送り届けていたアストラからの報告で、街の守備隊がジープを出して迎えに来てくれることになり、この場で撤退を休止することになった。
 ゾンビバルーンを生み出しているオブリビオンは未だ健在。射程外で不気味な沈黙を守っているが、これ以上拠点に近づけさせる訳にもいかない。
 遠くに見える黒い染みを見遣った月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)は、視線を外すとメルに向き合った。
「メルさん、お久しぶりですわね。悠長にしている場合ではありませんが……元気そうで何よりだと、安心しますわね」
「輝命さん。ありがとう。メルは元気」
 輝命の微笑みに、メルは明るく微笑む。笑いながらもどこか影のある様子を目ざとく悟った影見・輪(玻璃鏡・f13299)は、首を傾げるとメルを覗き込んだ。
「そうなの? 見たところ、そうでもないみたいだけど?」
 無理を悟られたと悟ったのか。メルは慌てて両手を振るとまた頑張って微笑んだ。
「大丈夫。メルは元気。どこも痛くないよ」
「そう。ならいいんだけど。……外の世界での生活はどう?」
「皆良くしてくれるの。「天使様、天使様」って」
「そっか。……大丈夫だよ、思うところあるなら話は聞くし、皆だってそのつもりだろうしね」
 メルの笑顔から真意を読み取った輪に、メルは驚いたように目を見開く。ちょっとだけ泣きそうになったメルは、頑張って頷いた。
「うん。ありがとう。……輪さん、輝命さん! あれ!」
 鋭くメルが指差した先に、第三波が放たれた。怒涛の如く猟兵達に襲いかかってくるゾンビバルーンの群れに、農夫たちを全員乗せたジープの運転手がメルに手を伸ばした。
「天使様、お早く!」
「う、うん」
 メルが駆け出そうとするが、慌てて足をもつれさせて転んでしまう。その間に距離を詰めたゾンビバルーン達が、攻撃態勢に入る。メルを待っていては間に合わない。輝命はジープの運転手に声を掛けた。
「ここはわたくし達に任せて、先に行ってくださいな。メルさんは必ずお守りします」
「し、しかし!」
「今はそんなのんびりと押し問答してられないんだ。行って!」
「メルさんは必ずお守りします。他の皆様は落ち着いて避難してくださいませ」
 すぐに避難できるようにそっと「祈り」を込めて笑顔を向けた輝命と、玻璃鏡を手に防衛体制に入る輪の姿に背中を押されたジープが急発進する。
「ここから先へは、通しませんわ。メルさん達や、ここにいる皆様の為にも」
 遠ざかるジープを背中で守った輝命は、五鈴鏡の複製の複製を構えた。

● 鏡の二人
「風の如く舞い、風の如く流れる力を、ここに」
 詠唱と同時に光の刃を作り出した輝命は、浄化と破魔の力を乗せてゾンビバルーンに放った。複雑な幾何学模様を描きながら飛ぶ光の刃は周囲の空間ごと浄化させながら、迫るゾンビバルーン達を切り裂いていく。
 メルへ攻撃を仕掛けようとするゾンビバルーンに光の刃が向かった時、ふいにゾンビバルーンが力を抜いた。
 脱力したゾンビバルーンに、光の刃が向かう。それを見遣った輪は、小型の光線銃を構えた。
「させないよ!」
 光の刃がゾンビバルーンに吸い込まれるよりも早く貫いた輪の誘が放つ光線が、ゾンビバルーンを貫く。その衝撃に身体を硬直させたゾンビバルーンは、脱力状態を解除させる。そこに光の刃が突き刺さった。
 増殖させることなく一撃で破裂したゾンビバルーンの向こう側から、別のゾンビバルーンが現れる。無効化を無効化させながら着実に数を減らしていった輪は、メルに向けて溶解液を放とうと身体を膨らませたゾンビバルーンに駆け寄った。
 メルを庇って割って入った輪は、襲う激痛に眉をしかめる。【鏡写しの闇】は敵のユーベルコードを防御して発動する。ゾンビバルーン達は現在、猟兵達のユーベルコードを回避するよう動いている。通常攻撃では発動しない【鏡写しの闇】に、輪はシニカルな笑みを浮かべた。
「そううまくはいかないか。でも、この場は必ず切り抜ける」
「輪さん!」
「大丈夫。このくらい痛くもないよ」
 ヒラリと手を振った輪は、誘を手にするとゾンビバルーンに狙いを定める。脱力し、増殖しようとするゾンビバルーンを優先的に狙い、防御失敗により起こる被害増加で着実に数を減らしていく。
 敵のユーベルコードの性質をうまく利用して敵を倒していく輪は、輝命と共にメルの防御に専念した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジフテリア・クレステッド
私たちの選択の結果、オブリビオンに襲われるようになってしまったんだし、その責任を―――いや、違う。外道極まりないチートをやめさせたことに罪悪感なんてない。こんな街の人間どものことなんて知ったことかよ。
私はただ…あの子の助けになりたいだけ。

どっちが汚いか勝負しようよ、ゾンビ風船。
これから66秒、私の能力は6倍になる…!
増えるよりも速く私の毒弾【※毒使い】の【乱れ撃ち】で風船どもを全部割ってあげるよ。能力が6倍になることで視力と【第六感】も6倍になり乱れ撃ち全弾の精度が【スナイパー】の狙撃並に向上…してるといいな。

さて…今回も嫌な戦場になりそうだ。
まったく…あの子をもう少し休ませてやれって話だよ。


九十九・白斗
【アドリブ歓迎】

パーン
と銃声が響く
メルを襲うオブリビオンを炸裂焼夷弾が襲う

「ああいう肉の塊みたいなやつには炸裂焼夷弾が良い仕事するぜ」


次弾を装填しながら白斗が呟く
弾丸にもいろいろな種類がある
状況によって弾丸を使い分けるのは戦の基本だ

戦車やロボット系のオブリビオンには徹甲弾を使う
生物にはホローポイント弾が有効的だ

こういうキショク悪い部類の肉の塊には炸裂焼夷弾で吹き飛ばしてやるのが一番だろう

にしてもさすがアポカリポスヘルって言ったところだな
厄介ごとの種には事欠かないか
前回助けたフラスコチャイルドの娘にいきなり死なれちゃ目覚めが悪いし、乗り掛かった舟だ
最後まで面倒見てやるとしようじゃないか



● ジフテリアの矜持
 襲い来るゾンビバルーンの群れから逃げ出すように、農夫たちを乗せたジープが走り出す。
 今まさにジープを襲いかかろうとしたゾンビバルーンに、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)はジュニアスナイパーライフルを構えた。
 銃声一発。確実にゾンビバルーンを仕留めたジフテリアは、ジープに次々に襲いかかるゾンビバルーンの姿に思わず舌打ちをこぼした。
 続く銃弾でゾンビバルーンを仕留めた時、銃声が響いた。
 ジフテリアの放つライフルではない銃声の直後、ジープを襲っていたゾンビバルーンが炎に包まれた。
「ああいう肉の塊みたいなやつには、炸裂焼夷弾が良い仕事するぜ」
 次弾を装填しながら呟く九十九・白斗(傭兵・f02173)の声に振り返ったジフテリアは、見知った傭兵の姿に眉を上げた。
 狙いを定め、焼夷弾が放たれる。回避したゾンビバルーンを着実に始末したジフテリアは、無事に逃げ切ったジープから視線を外すとメルを振り返った。
 ジープに乗りそこねたのは知っている。今は別の猟兵達に守られて無事でいるが、あちらは少々火力が足りない。援護に駆けるジフテリアの隣で、白斗が少しおかしそうに笑った。
「ジフテリアがメルよりジープを守るとは、正直意外だったぜ」
「……私たちの選択の結果、オブリビオンに襲われるようになってしまったんだし、その責任を―――」
「ほう?」
 おかしそうな白斗の視線に、ジフテリアは大きく首を横に振る。ジープを守ったのはあくまで猟兵としての仕事の一環であって、それ以外の感情なんてない。
「いや、違う。外道極まりないチートをやめさせたことに罪悪感なんてない。こんな街の人間どものことなんて知ったことかよ。私はただ……あの子の助けになりたいだけ」
「前回助けたフラスコチャイルドの娘にいきなり死なれちゃ目覚めが悪いし、乗り掛かった船だ。最後まで面倒見てやるとしようじゃないか」
「そうだね」
 走りながら弾を装填する白斗に頷いたジフテリアは、メルに群がるゾンビバルーンに指を突きつけた。
「どっちが汚いか勝負しようよ、ゾンビ風船。これから66秒、私の能力は6倍になる……!」
 閉じた目を見開いたジフテリアの目は、全てのゾンビバルーンの姿を正確に捉える。脳の演算速度が一時的に増強されたジフテリアは、ジュニアスナイパーライフルを構えると断続的に弾丸を放った。
 毒を纏った銃弾が乱舞する。背後からの奇襲に気付いたゾンビバルーン達が増殖するよりも早く、弾丸はゾンビバルーンを次々に割っていく。
 群がるゾンビバルーンの数が減っていく。猟兵に守られて怪我が無さそうなメルの姿を視認して微笑んだジフテリアは、油断なく引き金を引きながら遠くに見えるオブリビオンの姿をチラリと見た。
 増強されたジフテリアの視力は、遠くにいる『フラスコより溢れし災厄』実験体参拾五式』の姿を捉える。黒いドレスを纏ったオブリビオンは何を思っているのか。
 動きを止めたかの敵はかつての同胞。それはメルも分かっているようだ。
 何か理由があって襲っているのか。まだ分からないが、執拗にメルを襲うことを見ても無関係ではないかも知れない。今回も嫌な戦場になりそうだ。
「まったく……あの子をもう少し休ませてやれって話だよ」
 呟いたジフテリアは、ユーベルコードの代償に襲う眠気に意識を失った。

● 焼夷弾の射手
 突然倒れるジフテリアを受け止めて地面に寝かせた白斗は、収まった弾幕に宙に浮くゾンビバルーンの姿に装填した焼夷弾の銃口を向けた。
 弾丸にもいろいろな種類がある。状況によって弾丸を使い分けるのは戦の基本だ。
 戦車やロボット系のオブリビオンには徹甲弾を使う。生物にはホローポイント弾が効果的だ。なら。
「こういうキショク悪い部類の肉の塊は、炸裂焼夷弾で吹き飛ばしてやるのが一番だろう」
 最適な弾丸を選択した白斗は、【狙撃】すると静かにアンチマテリアルライフルの引き金を引いた。
 狙い違わず放たれる焼夷弾が、ゾンビバルーンを焼き尽くす。淡々と敵を仕留める白斗の攻撃を回避したゾンビバルーンが、身体を勢いよくねじり込んだ。
 直後に放たれるゾンビの体液が、全方位無差別に撒かれる。腐敗した体液は吐き気をもよおすような臭いを放ちながら白斗や猟兵、そしてメルへと放たれる。
 攻撃の手を止めてジフテリアを庇った白斗は、猟兵達に庇われたメルの姿に安堵の息をつく。再び銃弾を装填した白斗は、鼻につく腐敗液とそれがもたらす痛みを無視しながらスコープの照準を合わせた。
「にしてもさすがアポカリポスヘルって言ったところだな。厄介ごとの種には事欠かないか」
 数の少なくなったゾンビバルーンに、白斗のアンチマテリアルライフルが火を吹く。
 最後のゾンビバルーンの沈黙を確認した白斗は、響く声に視線を向けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『『フラスコより溢れし災厄』実験体参拾五式』

POW   :    世界ノ全テヲ幸福デ満タシマショウ
【物質・非物質を問わず強制同化する汚泥】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をレベルm/分の速さで侵食する腐海と化し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    大丈夫、分カリ合エナイ筈ガアリマセン
命中した【対象と強制結合し、再生力にも秀でた性質】の【レベルの二乗本の不定形で悍ましい触手】が【生命体・非生命体を問わず洗脳する肉塊】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ   :    如何シテ私ニ酷イ事ヲスルンデスカ?
【自身のレベルm半径内を満たす腐海の汚泥】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、自身のレベルm半径内を満たす腐海の汚泥から何度でも発動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● 災厄の少女
 ゾンビバルーンに紛れ、ゆっくりと近づいてきた災厄の少女は、警戒する猟兵達の前で立ち止まると口の端を上げた。

『……MR-U237S』

 掛けられる声に、メルは弾かれたように顔を上げた。青い顔で身体を竦めるメルに、災厄の少女は手を差し伸べた。
『オ迎エニ 来マシタ』
「えっ……」
 突然の声に戸惑うメルに、災厄の少女は微笑んだ。引き裂いた闇のドレスがざわりと揺れ、足元の汚泥がボゴリと泡立つ。
 災厄の少女の視線を受けたメルは、怯えたように一歩下がる。メルを庇う猟兵達を睨んだ災厄の少女は、優しい声でメルに語りかけた。

『アナタハ私ノ 希望ダッタ。アナタハ私ノ 理想ダッタ。私ハ世界ヲ 浄化スルタメニ 人々ヲ守ルタメニ 生ミ出サレタ。デモ私ハ失敗シテ 世界ヲ汚泥ニ沈メル 存在ニ ナッタ。デモ アナタハ違ウ』

 微笑む災厄の少女の足元から汚泥が広がる。侵食する汚泥は戦場全体に広がり、猟兵達の足首までを満たしていく。
 笑みに嫉妬を混ぜた表情の災厄の少女は、猟兵達に守られるメルの目を覗き込むと言葉をつなげた。

『アナタハ成功シタ。アナタハ生キテ オブリビオンヨケノ結界トイウ 望ム成果ト価値ヲ 生ミ出シタ。ナノニ!』

 汚泥の髪をざわつかせた災厄の少女は、怒りに満ちた声を上げた。隙を突き放たれた汚泥が、メルのしていた大きなヘッドホンを貫く。歌が流れるヘッドホンを慌てて拾い上げようとするが、すぐに汚泥に飲まれて消えてしまう。

「だめ! うたがないと、メルは……!」
『アナタハ ソレヲ捨テタ。オブリビオン ニモナレズ 貴重ナ成功作ノ 天使像ヲ破壊シテ タダノ無能デ無力ナ 小娘ニ成リ下ガッタ。今ノ アナタガ生キテイテ 何ノ役ニ立ツト イウノ? 何モデキナイ上ニ 生命維持ニ 拠点ノリソースヲ 食イツブシテ……』
「やめて!」
『アナタガ イルベキハ 拠点ジャナイ。帰リマショウ MR-U237S。研究所ニ帰ッテ フラスコニ戻ッテ 皆ノ 世界ノ 役ニ立チマショウ。アナタノ存在ハ 世界ノ人々ヲ 守ルデショウ』
「メルの、せいなの? メルがあなたを呼んだの? 大事な土地をこんなにしたの?」
 耳を押さえたメルが、汚泥に膝をつく。青い顔で震えるメルに、不定形で悍ましい触手が迫った。
 
※ プレイングは7/2 朝8:31から7/4 午前中までにお願いします。その後はロスタイムとなります。
月水・輝命
アド・連携〇
WIZ
使用武器は複製の五鈴鏡。
UCを適宜発動。
メルさんのせいではありませんし、役に立たないわけがありませんわ!
思い出して下さい、メルさん。様々な方々から言われた事を。
あなたは、もう自分の力で立てるのです。成功作など、関係ありませんわ。
あなた自身が、どうしたいのか。選択し、歩み続けることに大きな意味があるのです!

触手にメルさんを貫かせません。身を呈してでも護りますわ。
洗脳を受けた場合、自身に浄化を施します。光属性のナイフで、無理やり我に返るのも厭いません。
オーラ防御、浄化と破魔、光属性攻撃で無数の粒子バリアを展開するが如く範囲攻撃。
これでなんとか、泥の影響を最小限に出来るはずです。


影見・輪
引き続きメルの守りを中心に

[見切り、かばう、激痛耐性、狂気耐性]で
できる限りこちらに攻撃を引きつける

攻撃は【ブラッド・ガイスト】使用
[捨て身の一撃、傷口をえぐる、生命力吸収]を併用

何かに対して勝手に希望や理想を見出すのは自由だ
けれど、対象にそれを押し付けてどうこうしようっていうのは気に入らない

誰かの役に立たなければ存在価値がないなんてことはないよ
たとえ存在そのものが呪いだと言われようともね

誰かのためにとかどうでもいいんだ
縛られる必要なんてない
居心地のよい場所を見つけて、自分の好きに生きていれば
価値なんてそのうち生まれるし、ないなら作ればいい

メルだけじゃない
君も、自分への呪いから開放されるといい



● 誰のためでなくても良くて
 おぞましい触手が、膝をつくメルに迫る。
 目を閉じて耳を塞いで膝をつくメルを引きずり込もうと忍び寄る触手の壁の前に、銀色の光が飛び込んだ。
「メルさん!」
 動かないメルを突き飛ばした直後、輝命の姿が闇に呑まれる。突き飛ばされた衝撃に目を開けたメルは、触手に呑まれ球形の闇のようになってしまった月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)の姿に叫んだ。
「輝命さん!」
「危ない!」
 跳ね飛ばされたメルに再度襲う闇の触手の前に、影見・輪(玻璃鏡・f13299)が立ちはだかる。鮮血桜で強化した腕に巻き付く汚泥は神経を灼くように輪の腕に絡みつき、脳に突き刺さるような痛みに眉を潜める。
「輪さん!」
 駆け寄ろうとする腕を掴んだ輪が自分の後ろに庇った直後、メルがいた場所に触手が貫く。
 傷つきながらも庇ってくれる二人の姿に、メルは叫んだ。
「もういいの! おねがい、二人を解放してあげて! メルなんかのために、怪我することなんて、ない!」
『ソウ。イイ子ネ。アナタハ 研究所ニ イテコソ 輝クノ。アナタハ アナタノ 役割ヲ 果タシマショウ』
「誰かの役に立たなければ存在価値がない、なんてことはないよ。たとえ存在そのものが呪いだと言われようともね」
 メルを行かせまいとメルの行く手を塞ぐように立った輪は、溢れ出る血を握り締めると鮮血桜に喰わせた。桜色から鮮紅色に変わった刻印が刻まれた右手を差し出した時、掌が異形に変じる。
 五指が桜の花弁のように変わる。殺戮捕食形態に変化した腕はメルに向かった触手を飲み込み、食らい尽くしながら災厄の少女に向かった。
 捨て身の勢いで迫る刻印を闇で受け止め受け流した災厄の少女は、真剣な目の輪に向かって叫んだ。
『アナタハ コノ世界ガ ドウナッテモ イイトイウノ? アノ子ガイレバ、世界ガ救ワレル 糸口ニ ナルカモ 知レナイノニ!』
「誰かのために、とかどうでもいいんだ」
 吐き捨てるように言った輪は、怯えるメルの目を覗き込むと諭すように告げた。
「縛られる必要なんてない。居心地のよい場所を見つけて、自分の好きに生きていれば、価値なんてそのうち生まれるし、ないなら作ればいい」
『ソンナモノハ ナイ! 成功シタ アノ子ハ 私ノ希望ナノ。希望ヲ タクサン 作リ出セバ、イツカ 闇モ 払エルハズ』
 叫んだ災厄の少女は、輪に向けて汚泥を放つ。物質・非物質を問わず強制同化する汚泥からメルを守った輪を襲う汚泥の痛みに、歯を食いしばって耐える。
「何かに対して勝手に希望や理想を見出すのは自由だ。けれど、対象にそれを押し付けてどうこうしようっていうのは気に入らない」
 災厄の少女に向かって語りかける輪は、自分に押し付けられていた感情を思い出し唇を噛む。覗く相手の姿を映すのが鏡というものだが、その感情は映し出した本人のものであって映された鏡像に押し付けるべきものじゃない。
「メルだけじゃない。君も、自分への呪いから開放されるといい」
「その通りですわ」
 輪の声に、輝命の声が応えて響く。直後、まるでゾンビバルーンのようになってしまっていた触手の隙間から光が漏れた。

● できることから ひとつずつ
 時は少し遡る。
 輝命を洗脳する触手の攻撃に意識を飛ばしかけた時に聞こえてきた、輪の声。意思の強い凛とした声に励まされた輝命は、皮膚の下に潜り込む触手を切開するようにナイフを突き立てる。痛みに眉をしかめながらも、輝命は同時に浄化と破魔を乗せた光を放った。
 輝命が持つ五鈴鏡から放たれる無数の光の粒子が、自身を包む闇の触手を消し去っていった。災厄の少女のユーベルコードから逃れた輝命は、襲う痛みに思わず膝をつく。心配そうに駆け寄ったメルは、輝命の傷に悔やむように目を伏せた。
「ごめん、なさい。メルは、なんにもしてあげられない。怪我させるばっかりで……」
「メルさんのせいではありませんし、役に立たないわけがありませんわ」
 口を衝いて出る輝命の声に、メルは思わず黙り込む。その顔を覗き込んだ輝命は、華奢な少女に微笑んだ。
 最後に会った時よりも顔色は良い。少なくとも食事はできているのだろう。メルを助けるときにも色々なことがあった。たくさんの人々の助けを借りて、今ここにいる。
「思い出して下さい、メルさん。様々な方々から言われた事を。あなたは、もう自分の力で立てるのです。成功作など、関係ありませんわ」
「でも、みんなが言うの。メルはオブリビオンを避けてくれるはずだって……」
「皆の声は関係ありません」
 きっぱりと言い切る輝命に、メルは驚いたように顔を上げた。何も言えないメルに微笑んだ輝命は、メルの肩を軽く叩く。
「あなた自身が、どうしたいのか。選択し、歩み続けることに大きな意味があるのです!」
「メル自身が、どうしたいのか……。……わから、ない」
 首を振るメルに、輝命は頷いた。
「今までずっと眠っていたのです。分からないのは当然ですわ。考え続けることが大切ですの。ではまずは、好きな事から始めましょう」
 迷いの消えないメルの目を覗き込んだ輝命は、口を開くと歌を歌った。
「~♪」
 琴の音の旋律が、戦場に響く。心を清め想いを届ける歌声は輝命を、メルを包み込むように響いた。かつての戦いでも、メルを救ったのは歌だった。今もヘッドホンで歌を聞いていた。ならば、今のメルに届くのは言葉よりも歌かも知れない。
 聞こえてくるうたに、メルが顔を上げる。輝命が歌う歌はメルの心をゆっくりと癒やし、荒んだ気持ちがなだらかになっていく。
「うただ……」
「いい歌だね……」
 呟いた輪は、響く歌声に共感して口元に笑みを浮かべた。歌声は高く低く響き渡り、負った傷を癒やしていく。
『コノ歌……! 不愉快デス、ヤメナサイ!』
 叫ぶ災厄の少女が、耳を押さえる。足元の汚泥を使ってこの歌をコピーしたところで、災厄の少女には共感ができない。やるだけ無駄だと判断したのだろう。苦しそうな表情を浮かべた災厄の少女は、再びメルに向かって汚泥を放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

へーぇ…そういうことか
農夫たちはメルを天使様としか見ていねえが
てめえも成功作とやらしか見ていねえじゃねえか

どいつもこいつも勝手にメルの役割と価値を決めつけて押し付けやがって
ったく、反吐が出るぜ

序盤はアスモデウスの獄炎を封じたデビルカードを「投擲、属性攻撃」し牽制

機を見て「高速詠唱」から【悪魔召喚「ボティス」】
能力ブースト後「ジャンプ」で頭上を取り
「ランスチャージ、串刺し、暗殺、破魔」でアリスランスごと落下し体当たり
妄執を抱えたまま汚泥に沈め!

メル
俺は昔のあんたを知らねえ
だが、俺が見ているあんたは「天使様」でも「MR-U237S」でもねえ
…うたが大好きな「メル」だろ


ユディト・イェシュア
フラスコチャイルド…何かの使命をもって生み出された命
皆さんがメルさんを助け出したんですね

人為的に作られた命だとしても
どう生きるかはその人次第でしょう
けれど多くの場合は選択肢すら与えられず
他の生き方を知ることもなく生かされている…

道具のように扱われた過去が俺にもあります
そのせいで今でも生に対する実感や執着がないのかもしれません
ただ苦しんでいる人は放っておけません
メルさんがどうするかは自分で決めること
そして彼女を助けたいと思った皆さんの気持ちが今のメルさんの姿です
彼女の存在こそがこの街の希望

実験体として役目を果たせなかったあなたのやるせなさはわかります
あなたも世界もこれ以上汚泥まみれにはさせません



● 悪魔の手札
 メルに迫る汚泥の触手が、ふいに燃え尽きた。
 アスモデウスの獄炎に巻かれて焼け落ちた触手に、森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は続けざまにデビルカードを放った。
 次々に襲いくる触手が、炎に包まれ焼け落ちる。嫌な臭いをさせながら汚泥に沈む触手をチラリと見た陽太は、頬に跳ねた汚泥を手の甲で拭うとニヤリと笑みを浮かべた。
「へーぇ……。そういうことか」
 ゾンビバルーン戦の時から、メルが何かに悩んでいるのは分かっていた。その正体が明らかになり、災厄の少女はメルの悩みに一つの解を与えているかに見えた。
 だが、本質的なところでは同じなのだ。農夫たちも、災厄の少女も。
「農夫たちはメルを天使様としか見ていねえが、てめえも成功作とやらしか見ていねえじゃねえか」
『貴重ナ 天使像ハ 失ワレタ ケレド、ソノ子ハマダ 多クノ 情報ヲ 持ッテルワ。世界ヲ 浄化スルノハ、アナタダッテ 望ムコトノ ハズ』
「後半はその通りだよ。だが前半はいただけねぇな!」
 吐き捨てた陽太は、デビルカードを構えると注意深く息を潜める。執拗にメルを狙う攻撃を撃ち落としながら、陽太はメルを庇い続けた。
「どいつもこいつも勝手にメルの役割と価値を決めつけて押し付けやがって。ったく、反吐が出るぜ」
『ソコヲドイテ』
「どくかよ!」
 決意も新たにデビルカードを花田陽太は、迫る触手を撃ち落とした。爆煙に紛れて迫る触手が、メルに迫る。
 間に合わない迎撃に舌打ちした時、メイスが触手を叩き落とした。
「助太刀します!」
「悪ぃ! 助かるぜ!」
 払暁の戦棍を握ったユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)の姿に、陽太は大きく頷いた。

● かつてと今を違えるために
 戦棍を手に戦線に加わったユディトは、陽太が撃ち漏らした触手を的確に倒していった。
 投擲と打撃。2つの攻撃ならば、数に勝る触手に対抗することができる。だが、相手は無尽蔵とも言える手数を持っている。このままではいずれこちらが倒される。起死回生の一手を探るため、ユディトはユーベルコードを詠唱した。
「俺には視えます……あなたの強さも弱さも」
 詠唱と同時に視える、災厄の少女のオーラ。どす黒く染まった彼女のオーラは全身の細胞から瘴気を放ち、世界を汚泥に沈めようと強い意思を持っているかのようだった。
 瘴気の奥から弱点が見え隠れするが、あまりにも濃くて見ることができない。その業に、ユディトはためいきをついた。
(「フラスコチャイルド……。何かの使命をもって生み出された命」)
 フラスコチャイルドは遺伝子操作によって造られた、超能力を操るクローン人間だ。メルもまた役割を持って、人為的に作られたのだという。
 フラスコに封じられ、オブリビオンを避ける結界を生み出す天使像の生体部品として眠ることを強要されていたメルと同じように、彼女は汚染された世界を浄化するために作られたのだ。
 払暁の戦棍を振るい、カードを逃れた触手を叩き落としながら弱点を探る。探っても探っても見えてこない弱点に、ユディトは眉をひそめた。
(「人為的に作られた命だとしても、どう生きるかはその人次第でしょう。けれど多くの場合は選択肢すら与えられず、他の生き方を知ることもなく生かされている……」)
 そんな生き方に、ユディトは心当たりがあった。道具のように扱われた過去が、ユディトにもあった。そのせいで今でも、生に対する実感や執着がないのかも知れない。
 他ならぬユディト自身が背負った、辛い過去。人がまとうオーラが色彩を伴って視えるという能力を持ってしまったがために、実の両親から道具のように扱われ、そして。
 続くおぞましい記憶を、ユディトは頭を振って追い払う。あれはもう過去の話だ。あの地獄から救い出されたのだ。感情を失っていたユディトは、今は笑うこともできる。だからメルだって、笑って生きていける。
 二人の連携に、災厄の少女は苛立ったように叫んだ。
『ソコヲドイテ! アノ子ガ 研究所ニ 戻レバ、世界ヲ 浄化スル 希望ニ ナレルノニ!』
「メルさんがどうするかは自分で決めること。そして彼女を助けたいと思った皆さんの気持ちが今のメルさんの姿です。彼女の存在こそがこの街の希望」
『アノ子ノ 成功要因ガ 分カレバ、世界ガ 浄化サレル。ドウシテ 分カッテ クレナイノ!』
「実験体として役目を果たせなかったあなたのやるせなさはわかります。あなたも世界もこれ以上汚泥まみれにはさせません!」
『デキモシナイコトヲ言ワナイデ!』
 叫ぶ災厄の少女の触手が、ユディトを強かに打ち付ける。腕に感じる激痛に半身を返したユディトは、響くメルの声に目を見開いた。

「「もし、世界が浄化されたら。あなたはなにをしたい?」」

 戦場に響くメル達の問に、災厄の少女が明らかに動揺する。
 自分の両手を見た災厄の少女は、汚泥に塗れた両手を握ると空を仰いだ。
『世界ナンテ、浄化サレル ワケガナイ。ダッテ私ガ、汚染シテ イルンダカラ……!』
 災厄の少女の目が絶望に染まる。全身を震わせた災厄の少女は、青い空を見上げながら頭を抱えた。その瞬間見えた弱点に、ユディトは叫んだ。
「陽太さん! 彼女の弱点は心臓です! 胸元の汚泥が少ない所からなら貫けます!」
「ありがとよ! そろそろカードゲームにも飽きたところだぜ!」
 口元に笑みを浮かべた陽太は、アリスランスを両手に持つと高速詠唱を開始した。
「過去・現在・未来の知識持てしボティスよ、我の声に応え、その権能を一時の間我に与えよ」
 詠唱を終えた陽太の姿が、ふいに消える。小さな蛇の姿をした悪魔を肩に乗せた陽太は、全ての能力を6倍に加速させると汚泥を蹴った。
 次の瞬間災厄の少女の頭上に現れた陽太は、濃紺と淡紅、2本のアリスランスを手に突進を仕掛けた。
「妄執を抱えたまま汚泥に沈め!」
 迎え撃つように放たれる汚泥の攻撃をオーラ防御で軽減しながらランスチャージ。位置エネルギーも加速に使った陽太の双槍が、災厄の少女の心臓を貫いた。
『イヤアアアァァァァァァァァッ!』
 災厄の少女の叫びが、戦場に響き渡る。心臓を鷲掴みにするような叫びを上げた災厄の少女は、今までとは比べ物にならないくらいの汚泥を世界に撒き散らす。
 大波のような攻撃を回避した陽太は、問いを発したメルの隣に着地するとその目を覗き込んだ。
「メル。俺は昔のあんたを知らねえ。だが、俺が見ているあんたは「天使様」でも「MR-U237S」でもねえ。……うたが大好きな「メル」だろ」
 陽太の問に、メルが大きく頷く。その表情を見た陽太は、安心したように意識を失う。
「陽太さん!」
 代償の昏睡に陥った陽太を、ユディトが支える。陽太の身体を担ぎ上げたユディトは、溢れ出す汚泥の奔流から逃れるように駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
……メルさんの能力については他の人におまかせするとして、
まず最初に伝えたいこと

役に立たなくても、いいんです
天使でなくても、いいんです

かぞくの為にフラスコを壊してまで外へ出て
農夫の人達の身を案じて
助けてくれた人にありがとうと言える
そんな、人に優しくしようとするあなたで充分なんです

役に立ちたいとか、力について考えるのはそれからです
できないことがあるのなら、私も力を貸します
ひとりで全部背負わなくていいんですよ。

【援の腕】発動
同じ目的で生み出されたのなら、彼女も「かぞく」です。
以前と同様に浄化の力をつかいます
メルさんは、彼女に何と問いたいですか?
(少女を傷つける事は言わないと信じている)



● あなたがあなたであるだけで
 時は少し遡る。
 猟兵達の戦いを歌いながら見守っていたメルに、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は駆け寄った。
「メルさん、大丈夫ですか?」
「カイさん……。メルはまた、みんなに怪我、させちゃったね」
 猟兵の癒やし歌を真似て歌っていたメルは、歌をやめるとカイを見上げる。目の前で続く戦闘を、メルはじっと見つめている。傷つきながらも決して引かない猟兵達の姿に、メルは口を開いた。
「前も、そうだったね。みんなはメルのために戦ってくれて。今もそう。なのに、メルはなんにもできなくて。何の役にも、立たなくて……」
「役に立たなくても、いいんです。天使でなくても、いいんです」
 メルの目を覗き込みながらまっすぐ伝えるカイの言葉に、メルは目を見開いた。信じられない、というように首を横に振ったメルは、なおも言い募った。
「でも。フラスコの中にいた時は、メルは拠点のみんなを守れたの。でも今は、そんな力ない。メルは誰より分かってるの。なのにメルは生きるために、皆よりたくさんの物が必要で。だから皆は農地を広げようとして。オブリビオンが襲ってきても、やっぱり何も、できなくて!」
 目から大粒の涙を溢れさせたメルの声が、戦場に響く。今までずっと堪えてきた感情が堰を切ったように溢れ出してメルの喉を衝いて出る。誰に縋ることもなく、一人立って泣きじゃくるメルを、カイはそっと抱きしめた。
「かぞくの為にフラスコを壊してまで外へ出て。農夫の人達の身を案じて、助けてくれた人にありがとうと言える。そんな、人に優しくしようとするあなたで充分なんです」
「でも……!」
「役に立ちたいとか、力について考えるのはそれからです。できないことがあるのなら、私も力を貸します。ひとりで全部背負わなくていいんですよ」
 泣きじゃくるメルの背中を、カイは優しく撫でる。ひとしきり泣いたメルは、真っ赤な目でカイを見つめた。
「……でも、やっぱりメルも誰かの役に、立ちたい。メルだってここにいていいんだって、思いたいの」
 初めて口に出されるメルの意思に、カイは頷いた。メルは誰かに必要とされたがっている。ならば、カイはメルに助けを求めることができた。
「同じ目的で生み出されたのなら、彼女も「かぞく」です。以前と同様に浄化の力をつかいます。……メルさんは、彼女に何と問いたいですか?」
「あの子に、メルが聞きたいこと……」
 涙を拭いたメルは、災厄の少女をじっと見つめる。やがて胸に湧き上がる言葉を聞いたカイは、両腕を災厄の少女に差し伸べた。

「「もし、世界が浄化されたら。あなたはなにをしたい?」」

 二人の声が、戦場に響く。
 カイの両腕から溢れ出した浄化の光が災厄の少女を包み込み、纏っていた腐海のオーラを薄めていく。
 自分の両手を見た災厄の少女は、汚泥に塗れた両手を握ると空を仰いだ。
『世界ナンテ、浄化サレル ワケガナイ。ダッテ私ガ、汚染シテ イルンダカラ……!』
 災厄の少女の目が絶望に染まる。全身を震わせた災厄の少女は、青い空を見上げながら頭を抱えた。
 弱点を見抜いた猟兵の声。直後に槍が災厄の少女の心臓を貫く。
『イヤアアアァァァァァァァァッ!』
 魂を裂くような叫び声が、戦場に響いた。
 その直後、膨大な量の汚泥が溢れ出す。津波のように迫る汚泥の奔流に、カイは手を差し伸べた。
「メルさん、こっちです!」
「うん!」
 メルを抱き上げたカイは、安全な場所まで急いで駆け抜けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

東雲・一朗
▷アドリブ歓迎です

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。

▷救い
「この世界にも救えない痛みを抱えた影朧…いや、オブリビオンがいるのか」
敵の動きを【見切り】、メル殿を守るべく【破魔】の力宿す二刀にて触手を断ち切る。
「立つのだ。
貴殿は必要とされている、生きる意味には十分過ぎる程だろう…彼女の事は任せてくれ」
転生は無く、目の前のオブリビオンを救う事は出来ない…しかしその心に巣食う負の感情を斬り捨てて救う事は出来るはずだ。
「その心に潜んだ悪意を断ち切る!」
泥を防ぐ桜花の霊気【オーラ防御】を纏い【切り込み】、すれ違い様に【強制改心刀】を叩き込み【浄化】する。


ジフテリア・クレステッド
無能で無力な小娘の、何が悪い!!
この世界に生きる小娘の大半はそうだよ!
私たちフラスコチャイルドばかり人間どもの犠牲になる役割を強いられる筋合いなんてない!
あなただってそうだ!失敗作なんてレッテルを貼り付けられて!それなのにオブリビオンになってまでも人間に押し付けられた役割に縛られて…!

メル…ごめん。私はまたあなたの同胞を傷つける。

でも…!見てられないんだよ…!ああいう純粋すぎる子…!殺してでも楽にしてやる…!

私だって腐ってもフラスコチャイルド。なけなしの【環境・毒耐性】で汚泥と腐海を突っ切って術式を執行する…!
あなたのその汚泥、私が全部まとめて消し飛ばす!
……せめて綺麗な身体で消えるといいよ。


九十九・白斗
【アドリブ歓迎】
見知った顔が何人かいるな
声をかけておくかな
(軽く挨拶を済ませておく)

さて、高価な炸裂焼夷弾も打ち切ったし、次はこいつを使うとするか
九十九が背中にタンクを背負う
そこから伸びたホースが銃部につながっている
火炎放射器だ
普通の戦場でまず使うことはないのだが、銃弾や刃物では完全な抹殺が難しい病原体や怪物を相手にすることが増えたので用意した

特殊な薬品を使っているので消火も簡単だ

「全部焼き払ってやるぜ」

派手に炎がまき散らされる
実に目立つ武器だ
戦場で、棒立ちでこの火炎放射器を使っていたらいい的になるだろう
使えない武器だと九十九が行ったのも納得できる
ただ、腐海を焼き払うには良い武器だと言える


リカルド・マスケラス
とりあえずメルに語り掛け
「詳しい事情は知らないっすけど……メルはどうしたいっすか?」
みんなを守りたい、戦いたいというなら、自分を被ってもらい、一緒に戦う。そうでなければ下がってもらう
彼女へのダメージはブラックコートの効果で【かばう】

バイクの【操縦】で翻弄し、鎖鎌で攻撃する間に、秘密裏に鎖分銅を伸長して【念動力】で地表や汚泥の中を巡らせ、魔法陣を描いてゆく
「完成っすよ!」
【森羅穣霊陣】の【破魔】【属性攻撃】で敵を攻撃。敵に単にコピーされても、浄化の力だから汚泥が浄化されて自滅。自己流アレンジで汚染をばらまくなら、その様子を覚えておく
「その力、フラスコチャイルドの今後の為に利用させてもらうっす!」



● 魂を救うため
 災厄の少女の叫び声が、戦場に響く。
 迫る汚泥の津波から逃れた東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)は、汚泥を吐き出し続ける災厄の少女の泣き声に眉をひそめた。
 弱点である心臓を貫かれ、災厄の少女は息絶えようとしている。津波のような奔流は収まったが、災厄の少女は心臓から未だに汚泥を吐き出し続けている。
 立ちすくみ空を見上げる少女の姿を遠目に見た一朗は、やるせなさそうな溜め息をついた。
「この世界にも救えない痛みを抱えた影朧……いや、オブリビオンがいるのか」
「まあ、戦場なんてそんなもんだ。ーーここで会うとは奇遇じゃねえか少佐」
 軽く手を上げて挨拶した九十九・白斗(傭兵・f02173)に、一朗は挨拶を返した。
「貴殿か。このまま放置しても倒れるだろうが、土地の侵食が酷い。何より……」
 言いかけた一朗の声を遮るように、ひときわ大きな絶叫が響いた。誰も寄せ付けないように汚泥を吐き出し続ける災厄の少女の膝が崩れる。自らが吐き出した汚泥に呑まれるように消えていこうとする姿に、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は手を握りしめた。
「無能で無力な小娘の、何が悪い!! この世界に生きる小娘の大半はそうだよ! 私たちフラスコチャイルドばかり人間どもの犠牲になる役割を強いられる筋合いなんてない!」
 魂から吐き出すような声を上げたジフテリアは、遠くで崩れ去ろうとする災厄の少女に指を突きつけた。彼女も元は、希望を持って生まれたフラスコチャイルド。ジフテリアの同胞の一人なのだ。

「「もし、世界が浄化されたら。あなたはなにをしたい?」」
『世界ナンテ、浄化サレル ワケガナイ。ダッテ私ガ、汚染シテ イルンダカラ……!』

 戦場に響いた声が、耳の奥に響く。二人のフラスコチャイルドの心からの声に、ジフテリアは悔しそうに涙を浮かべた。
「あなただってそうだ! 失敗作なんてレッテルを貼り付けられて! それなのにオブリビオンになってまでも人間に押し付けられた役割に縛られて……!」
「落ち着けジフテリア」
 肩で息をしながら感情を吐き出すジフテリアを、白斗が宥める。一目置いている男の声に辛うじて興奮を収めたジフテリアは、それでも胸に残る気持ちに頭を振った。
「でも……! 見てられないんだよ……! ああいう純粋すぎる子……! 殺してでも楽にしてやる…! あの子の汚泥、私が全部まとめて消し飛ばす!」
「転生は無く、目の前のオブリビオンを救う事は出来ない。……しかしその心に巣食う負の感情を斬り捨てて、救う事は出来るはずだ」
 冷静沈着な一朗の声に、ジフテリアは弾かれたように顔を上げる。目を見開き呼吸を整え、冷静さを取り戻すジフテリアに、一朗は一つ頷く。
 やるべきことを自覚したジフテリアは、じっと見つめるメルと視線を合わせた。
「メル……ごめん。私はまたあなたの同胞を傷つける」
「カイさんに手伝って貰って、あの子に声を掛けたのはメルだよ。メルも連れて行って。ジフテリアさんだけに、皆だけに、背負わせたくない……!」
 必死に懇願するメルに、一朗はゆっくり首を横に振った。
「メル。貴殿は必要とされている、生きる意味には十分過ぎる程だろう。……戦場に立つことだけが、役に立つことではない。彼女の事は任せてくれ」
「でも……!」
「詳しい事情は知らないっすけど……メルはみんなを守りたい、戦いたいっすね?」
 黙ってやりとりを聞いていたリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)の問いかけに、メルははっきりと頷く。
「なんにもできないけど、なにかはできるはず、だから……!」
「なら、自分を被るっす。自分はヒーローマスクっすからね。メルがその気なら、自分と一緒に戦えるっす」
「一緒に行く。被らせて、もらえる?」
 即答するメルに、ジフテリアは大きく首を横に振った。
「メル、危ないから。ここは任せて……」
「大丈夫っすよ。メルは自分がブラックコートの効果で【かばう】っすから。彼女には傷をつけないって約束するっす」
 力強く請け負うリカルドに、ジフテリアは少しためらい小さく頷く。ジフテリアの同意に、それまで黙って聞いていた白斗は口を開いた。
「決まりだな。なら俺とリカルドは二人の露払いだ。このクソッタレな汚泥を焼き払って道をつけてやるから、二人は止めを頼んだぜ」
 背中にタンクを背負った白斗に、四人は頷いた。

● 大地の浄化の一歩目を
 燃料タンクを背負った白斗は、伸びるチューブの先に付いている銃部を手にすると腐海に銃口を向けた。
「さて、高価な炸裂焼夷弾も打ち切ったし、次はこいつを使うとするか」
 白斗が使用するのは、火炎放射器だ。普通の戦場でまず使うことはないのだが、銃弾や刃物では完全な抹殺が難しい病原体や怪物を相手にすることが増えたので用意したのだ。
「科学薬品を使った高火力の火炎放射器だ。全部焼き払ってやるぜ」
 特殊な化学薬品を使っているので消火も簡単なので、延焼を気にする必要もない優れものだ。
 腐海に足を踏み入れた白斗が手にした火炎放射器から、派手に炎が撒き散らされた。
 宣言通り、腐海を焼き払っていく。炎に包まれた腐海は嫌な臭いと音を立てながら固着し、蒸発するように消えていく。
 白斗が銃口を左右に振る度に、道ができていく。
 火炎を吐き出しながらの進軍は、腐海の中でも実に目立った。戦場で、棒立ちでこの火炎放射器を使っていたら、いい的になるだろう。
 使えない武器だと彼が言ったのも納得できる。ただ、腐海を焼き払うには良い武器だと言えた。
 白斗とは少し離れたところで、リカルドは宇宙バイク『アルタイル』を起動させていた。ヘルメットを被り、ヒーローコスチューム『ブラックコート』を纏ったメルが緊張した様子でハンドルを握っている。
「操縦は自分がやるっす。メルさんは振り落とされなければいいっすからね!」
「う、うん!」
「じゃあ、行くっすよ!」
 エンジンを吹かして腐海の中へと駆け込んだリカルドは、腐海の中に鎖分銅を伸長させた。念動力で操作して、地表や汚泥の中を巡らせて魔法陣を描いていく。バイクの車輪が汚泥に取られてバランスを崩しかけることもあったが、メルは辛うじてくらいついてくれている。汚泥のダメージは全てリカルドに来るが、かすり傷だ。
「完成っすよ!」
 やがて魔法陣を完成させたリカルドは、魔法陣に向かい詠唱を開始した。
「ここに悪しきを払い、恵みをもたらせ!」
 同時に腐海が輝きを放ち、汚泥が浄化されていく。豊穣の大地にまではならないが、魔法陣の上は人が歩ける程には回復していた。汚泥から回復する情報は、全て記録してある。火炎で焼き払えるという情報と共に、今後必ず役に立つだろう。
「その力、フラスコチャイルドの今後の為に利用させてもらうっす!」
「すごい……!」
 運転席に座ったメルが、目を丸くする。得意げに言ったリカルドの脇を、一陣の風が駆け抜けた。

● 浄化の連撃
 軍服を纏った老兵が、戦場を駆ける。
 焼き払われ、熱を帯びた大地を駆けた一朗は、腰に帯刀した影切と旧式退魔刀を抜刀すると災厄の少女に向けて風のように駆け抜けた。
 足元に残った泥が、桜花のオーラに防がれる。鋭い視線で災厄の少女を見据えた一朗は、浄化の力を乗せた双刀を構えた。
 同時に、一人のフラスコチャイルドが駆け抜ける。
 リカルドに浄化された土地を駆け抜けたジフテリアの足裏を、しつこく残る腐海の毒素が侵食する。
 その痛みをなけなしの環境耐性と毒耐性で無視したジフテリアは、偽神兵器を変身させたメスとパイルバンカーを手に災厄の少女に迫った。
 腐海を焼き払い、また浄化する二人の猟兵の攻撃に、災厄の少女は何の反応も示さない。もはや抵抗する力も残されていないのか。浄化を狙うならば急がねば。
「……せめて綺麗な身体で消えるといいよ」
「その心に潜んだ悪意を断ち切る!」
 ジフテリアのメスと、一朗の双刀と。
 肉体を傷つけずに魂のみを攻撃するユーベルコードを同時に受けた災厄の少女は、白く変色した胴体に目を見開いた。
『モシ、世界ガ浄化サレタラ。私ハ……』
 胴から広がる白が、災厄の少女を固着させる。青い空に手を伸ばした災厄の少女は、猟兵達を見るとゆるりと微笑んだ。
『……ピクニックガ、シタイナァ』
 災厄の少女がそう言った瞬間、彼女を包み込む優しい浄化の光が消え去る。満足のいく答えが得られたのだ。
 空に焦がれるように伸ばされた指先が、白く変化する。
 全身を石膏像のように変化させた少女は、吹き抜ける風に砕け散ると花びらのように消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『アポカリプスで農業を』

POW   :    力仕事を担当する

SPD   :    丁寧な仕事を心掛ける

WIZ   :    技術指導などを行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


● 汚泥と腐海のほとりで
 脅威は去った。
 オブリビオンが退けられ、拠点が腐海に沈むのは回避されたが、その代償は大きかった。
 見渡す限りの荒野は汚泥に沈み、ところどころは腐海に変わり瘴気を放っている。
 このままではこの先何十年も、農作物はおろか通行さえできない死の土地と成り果ててしまう。また瘴気はオブリビオンを呼び寄せてしまいかねない。
「あぁ、農地が……」
「おや、あそこはどうして泥じゃないんだ?」
 呆然と膝をつく農夫たちは、戦闘で浄化した土地を指差すとその一帯へと近づいた。
 焼き払われ、また浄化された土地は汚泥が払われ、元の土地が見えてきている。
 汚泥や腐海には太刀打ちできない農夫たちも、ここまで回復したら自力で何とか戻せそうだ。
 農夫たちから話を聞いたメルは、猟兵達に向き合った。
「あのね。この土地を浄化するお手伝いを、おねがいしてもいい? この土地をこのままにはしておけないの。おねがいします」
 頭を下げたメルに、猟兵達は頷く。
 汚泥に沈んだ土地を見渡した猟兵達は、それぞれの手段で土地を浄化していった。


 第三章は、汚泥に沈んだ土地の浄化をお願いします。
 破魔などの技能やユーベルコードの他にも、高温で焼き払うのも有効です。
 また、農地はここだけではありません。無事だった農地では普通に農業指導の需要もありますので、そちらを手伝っていただいても構いません。
 また他に何かやりたいことがありましたら、自由にプレイングをおかけ下さい。
 公序良俗に反するプレイングはマスタリングされます。
 お声掛けがありましたら、パラスやメルが登場します。無ければ登場しません。

 オープニングの補足で記入させていただいた「もし「こうなんじゃないかな?」的なこと」ですが、プレイングでは難しいと思いましたのでスレッドを立てさせていただきました。
 もし何かありましたら、こちらにお寄せ下さい。
 採用のお約束はできませんが、参考にさせていただきます。

【事後行動スレ】シナリオの続きを推理するスレ
https://tw6.jp/club/thread?thread_id=47716&mode=last50

 プレイングは7月9日(木)朝8:31以降お寄せ下さい。
 この章のみの参加も歓迎します。システム的に閉まるまでは受付させていただく予定です。
睦沢・文音(サポート)
『聴こえますか?私の歌が!』
年齢 14歳 女
外見 147.1cm 黒い瞳 黒髪 色白の肌
特徴 いつも笑顔 柔和な表情 胸が大きい お尻が大きい ネットが好き
口調 清楚(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません

他の猟兵のサポートに回り、事件の解決にあたります
日常パートならば飲食や歌をうたうことをメインに行動します

他の参加者様との連携リプレイ歓迎です
最大の目的は、事件を解決に導くことです
その為なら、ある程度の怪我や些細な失敗はやむを得ないものとします


東雲・一朗
▷アドリブ歓迎です

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。

▷浄化
「土地の浄化…なるほど、ならば我ら第十七大隊が力になろう」
我らの刀、そして銃はただ敵を討つのみにあらず。
「総員、霊装弾を装填し霊気を解放せよ。
目標は前方の土地、面制圧射撃による浄化作戦を敢行する」
【大隊指揮戦術『壱』】により呼び出した総員に【破魔】の力を封じた霊装弾を装填させ、精密な【団体行動】【集団戦術】指揮にて面【制圧射撃】を地面へ行い【浄化】する。
私自身は二刀を地に突き立て、直接広範囲に桜花の霊気を浸透させ土地を浄化し土地の命を守る。
「新たな夜明け、その魁となる事こそ誉れである」



● 汚泥に咲く桜花歌
 青い空に遮られるまで続く大地は、黒い汚泥に埋め尽くされていた。
「あぁ、土地が……」
「触るとビリビリするわ。これじゃここを通ることもできないわね」
 黒く広がる大地を前に呆然とする人々の隣に、東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)が立った。
 帝都軍人の軍服を隙なく着こなし、双刀を履いた老兵はその年令を感じさせない精悍さで地平線を見渡すと、絶望に膝をつくこの地の民を振り返った。
「土地の浄化……。なるほど、ならば我ら第十七大隊が力になろう」
「第十七大隊、って。軍人さんがこの汚泥を掻き出してくれるってのかい?」
「ムリムリ。大体、掻き出した泥はどこに捨てるんだ? もうこの土地は諦めて、他を当たるしか……」
 不安から言い募る農夫達の言葉に、一朗は静かに首を横に振る。彼の大隊の武器は銃剣だけではないのだ。
「いや。この土地そのものを浄化する。我らの刀、そして銃はただ敵を討つのみにあらず」
「なら、私にもお手伝いをさせてください!」
 明るい声で申し出た睦沢・文音(フォーチュンシュネルギア・f16631)は、力を込めて手を握ると汚泥に染まる地平線を見渡した。
「美味しいご飯を作ってくれる土地を、こんなにしてはおけませんからね」
「貴殿は?」
「私は睦沢・文音です。私は歌で皆さんを鼓舞させてもらいますね」
「それはいい。頼むとしよう。ーー総員、霊装弾を装填し霊気を解放せよ。目標は前方の土地、面制圧射撃による浄化作戦を敢行する」
 一朗の号令に、第十七大隊の識別章を付けた帝都軍服に身を包む男女が現れる。ぎょっとする農夫を尻目に銃を構えた隊員たちは、攻撃の姿勢を整えると一朗の発声を待った。
 緊張した空間に、文音の歌声が響いた。
「聴こえますか? 私の歌が!」
 文音の歌が、風に乗り響き渡る。文音の全身から発せられるような歌声は高く低く響き渡り、一朗を、第十七大隊を、農夫たちを鼓舞していく。
 一朗は場の空間に満ち渡る【殲術再生歌(リヴァイブソング)】に、心の底から力が湧いてくるのを感じた。俯いていた農夫たちも顔を上げ、その表情に生気が蘇ってくる。
 沸き立つ心のままに、腰から双刀を抜き放ち土地へと突き立てる。柄を握りしめた一朗は、桜花の霊気を愛刀達に流し込んだ。
 影切と旧式退魔刀から浸透した桜花の霊気が、広範囲の土地を浄化していく。今もなおじわじわと深く侵食する汚泥を食い止めた一朗は、最高潮に達する場の共感に声を発した。
「総員、撃て!」
 号令一下。一斉に軽機関銃から銃弾が放たれた。破魔の力を封じた霊装弾が、一朗が支える土地に次々に着弾する。無数の銃弾一つひとつが桜花の霊力と呼応し、桜の花びらとなり汚泥の海を浄化していく。
 文音の歌声が響く。銃声を伴奏に歌い上げる文音の声に導かれるように放たれる霊装弾は、まるで桜吹雪のように汚泥の海を桜色に染め上げ、浄化しては消えていく。
 その美しい光景に、誰もが息を呑み見入っていた。
 第十七大隊が攻撃を終えた時、浄化された汚泥の海は元の荒れた土地へと戻っていた。
 大きな拍手を送る農夫たちの目に、先程までの絶望はない。優しさを込めた祈りの歌は農夫たちの心を慰め、生きる力を与えたのだ。
 目の前に広がるのは、汚泥の海ではない。浄化された土地は肥沃な大地となったわけではなく、まだ作物は育たない。だが、土地を耕せる。耕せばやがて作物は芽吹き実りを齎し、人々が生きる糧となるだろう。
「ありがとう! ありがとう! これでまた、開墾を頑張れるよ!」
「新たな夜明け、その魁となる事こそ誉れである」
「お役に立てて嬉しいです」
 口々に礼を言う農夫たちに、一朗と文音は大きく頷いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

富井・亮平(サポート)
【解説】
オブリビオンと戦うという設定のヒーローマスク。
マスクを被るとボディの人格が変わるような感じ。

謎のオブリビオン文明の話とか、地球侵略を狙うオブリビオン星人の話とか、適当な事を言いながら頑張る。
関係なくてもオブリビオンのせいにして行動する。

行動そのものはマトモ。

【行動】
ヒーローっぽい行動であれば何でもします。
戦闘は主に魔法剣士スタイルですが、機械も扱えます。
ガジェット形状は固定していません、必要に応じ自由に変なメカを使わせて下さい。

UCを使うと「黒幕が出てきて敵を改造する」「謎のお助けキャラが登場する」などのヒーローっぽいイベントも発生させられます。

「このイェーガーレッドに任せておけッ!」


木元・祭莉(サポート)
「おいら、一人前の猟兵になるんだー♪」

グラップラー×サウンドソルジャー、12歳の人狼少年です。
前衛肉弾派で、積極的に行動します。
マイペースなアホの子です。

いつも深く考えず、場合に応じてテキトーに、楽しそうにテンション高く対応します。
どどーん、ばばーん、ひゅいーんなど、擬態語やおのまとぺを多用します。

ユーベルコードは、地味な使い方をすることが多いです。
アイテムも地味ですが、時に妙な使い道を閃きます。

いつも笑顔で、後先考えず。でもちょっとビビリ。
鳥類全般がちょっとコワイのは、飼い雌鶏のたまこのせい。

年寄りにはすぐ懐き、綺麗なお姉さんにはモジモジ。
ハッピーエンドが大好きです。

あとはおまかせ!



● できることを できる限り 力いっぱいやればいい
 汚泥の海を目の前にした木元・祭莉(CCまつりん・f16554)は、難しい顔で腕を組んだ。オブリビオンの襲撃で、広範囲の土地が汚泥に汚染されてしまったのだ。この土地を再生させなければならない。のだが。
「何とかするには、破魔や浄化でじゅわっと清めるか、炎でぼぉぉぉっと燃やすかかぁ」
 空を見上げた祭莉は、グリモア猟兵から伝えられた情報を元に対策を考える。浄化や破魔といった系統の技能は得意じゃないし、派手に炎を出せるユーベルコードやアイテムを持ってもいない。
 さてどうしようか。頭をひねって考える祭莉の耳に、堂々たる声が響いた。
「お困りのようだね少年! さあ、このイェーガーレッドに話してみたまえ!」
 赤いヒーローコスチュームに身を包み、赤いマスクを被ったイェーガーレッドこと富井・亮平(イェーガーレッド・f12712)は、吹き抜ける風に黄色いマフラーをなびかせながら祭莉に歩み寄った。
 ニチアサもかくやというカッコいい姿に目を輝かせた祭莉は、岩砂漠の上を跳ねながら亮平を迎えて駆け寄った。
「すごい! ヒーローレッドだ! ヒーローはこの汚泥の海を燃やすか清めるかできるの?」
「もちろん! 人々の暮らしを脅かす汚泥なんかに、負けるヒーローじゃない! こいッ! エェレメンタルッ!! レェギオンッッ!!!」
 詠唱と共に手を振り上げた亮平は、召喚した戦闘用の精霊を背に胸を張った。現れた380体の炎の精霊たちは、亮平の背後で謎爆発を起こしながら空に舞い上がる。
「すごいやレッド! ……でもおいらは、浄化も燃やすのもできないんだ」
「大丈夫だ祭莉! ヒーローは皆の応援が無ければ、力が発揮できない生き物なんだ!」
 拳を握る亮平に、祭莉は顔を上げて目を輝かせた。確かに、戦隊ヒーロー達はちびっこの応援で真の力を発揮できる。そして、祭莉は火は吹けないが歌って励ますことならできるのだ!
「そ、そうか! おいら、応援ならできるや!」
「それは心強い! 祭莉の応援があれば百人力だ!」
 振り上げた拳の親指を立ててマスクをキラン! と輝かせる亮平に、祭莉も笑顔で親指を立て返し拳をコツン。男と男の友情である。

● 猟兵戦隊 バーニンジャーのテーマ
「ジャン! ダダダダン! ドゥルルルルルジャーン!」
 祭莉の隣でエアギターをする亮平は、ボイスパーカッションで前奏を奏でる。
 力強い伴奏に、ワクワクしながら大きく息を吸い込んだ祭莉の歌が荒野に響いた。
「♪ゆけ! ゆけ! ヒーロー! 燃える魂、見せるんだ! 僕らのヒーロー……」
「(セリフ)行けぇっ! エェレメンタルッ!! レェギオンッッ!!!」
 亮平の号令一下。一斉に汚泥の海へ飛び出した炎の精霊達が、汚泥に向けて攻撃を放つ。祭莉の応援に力を得た炎の精霊達は、反撃しない汚泥に炎を放ち続けた。
「負ぁけるなぁヒーローぅ! 世界のぉ平和をぉ守るぅたぁめ~♪」
「ぐぅわんばれヒーローぇ! 近所のぅ平和をぅ守るぅたぁめ~♪」
「「バーニンバーニンバーニンソウルっ! 炎の魂 燃やすのだぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
 歌に加わった亮平とのユニゾンが、汚泥の海にこだまする。
 荒涼とした汚泥の海を、正義の歌を背負った精霊たちが焼き払っていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

影見・輪
WIZ
可能ならメルと

浄化とは割と程遠いところにいる上に
非力なもんでそれこそお役に立てるかは怪しいとこだけど

ひとまず無事な農地の農業指導の手伝いはできそうかな
主食にしやすい大豆やサツマイモあたりは痩せた土地でも育つから
その辺から植えると良さそうだよね

あとは雑用とか、人手が必要そうなところの手伝いをするね

メルはもう大丈夫だね?
できること、できないことは色々あるだろうけど
自分のできることに胸を張ってやってけばこの先も大丈夫だよ

そうだ
メルも歌上手だよね?
よい作物はよい音楽で育つとも聞くから
種をまいたり苗を植えたあとは
頻繁に顔を出して君の歌を聞かせてあげるといいんじゃないかな
作物だけじゃなくて、人にもね


ユディト・イェシュア
汚染された土地も浄化することができる…
災厄の少女のためにもこの土地を作物の実る大地にしましょう

破魔の力で土地の浄化を行います
他の方が効率よくしているようなら
農地のお手伝いに行きましょう

俺の故郷は砂漠で農業に適してはいません
けれどその土地にあった作物を育てることはできました
上手く実らないときはその土地に適した強い作物を作り出すことも必要です
ストームが発生するためこの世界によそから大量の物資は持ち込めませんが
作物改良の技術や実った食材を美味しくいただくレシピなんかは持ち込めそうですね

生きていくのに食べるものは大切
そして希望も
メルさんも自分のやり方で
みなさんと一緒にこの土地を守っていってくださいね



● 必需品と嗜好品
 猟兵が大規模な浄化作戦を計画していることを知ったユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、そっと猟兵の輪を離れた。
 汚染された土地の浄化はユディトにもできる。だがそう広範囲を一気に浄化するには向いていない。無事だった土地への農業指導の方がいいだろう。
 農夫たちへと繋いでもらおうとメルを探す背中を軽く叩く手に、ユディトは振り返った。
「やあユディトさん。どうしたの? キョロキョロしてるけど」
「輪さん」
 ニコニコしながら声を掛けてくれる影見・輪(玻璃鏡・f13299)の姿に、ユディトは首を傾げた。
「輪さんはメルさんを見ませんでしたか? せっかくですので農夫の方と繋いでもらおうと思ったのですが……」
「メル? メルならさっき高台の農地に行くって。農業指導?」
「はい。浄化の方は手が足りているようですので」
「ちょうどいいや。一緒に行こう。僕も浄化とは割と程遠いところにいるからね。農業指導に行こうと思ったんだ。まあ非力なもんで、それこそお役に立てるかは怪しいとこだけど」
「そんなことは。では一緒に行きましょう」
 首を振って否定したユディトは、輪と一緒に農地へ向けて歩き出した。
 メルの姿を見つけたユディトは、農夫たちにさかんに声を掛けられて困っているメルに手を上げた。
「メルさん。……どうしたんですか?」
「なに? 困りごと?」
「ユディトさん! 輪さん!」
 明らかにホッとしたように農夫の輪を抜け出したメルが、二人の許へと駆け寄る。メルと視線を合わせたユディトに、メルは訴えた。
「あのね。この土地に何を植えたらいいと思う?」
「この土地に?」
 首を傾げる輪に、農夫たちが割って入った。
「天使様。まだお返事を貰ってないですよ」
「そうそう。俺たちには嗜好品が必要なんだ」
「天使様がいいとおっしゃれば、組合の連中も……」
「待って。何の話?」
 慌てて止める輪に、メルは困ったように言った。
「皆はね、ここにタバコを植えたいんだって。倉庫の奥から種が見つかったからって。植えていいと思う?」
「タバコ、ですか」
 メルの口から出てきた思いがけない農作物に、ユディトは思わず面食らう。同じことを思ったのだろう。輪は軽く手を振った。
「いや、この土地のことは何も言えないけど。まだ食料が行き渡らないなら、主食にしやすい大豆やサツマイモあたりが先じゃないかな? 痩せた土地でも育つし、その辺から植えると良さそうだと思うよ?」
「俺もそう思います」
 輪の提案に、ユディトも頷く。痛いところを突かれたのだろう。農夫たちは一瞬黙ると一斉にまくし立てた。
「タバコだって必要な作物だぜ?」
「そうそう。高値で売れるし、他所との交易にも使えるし……」
「ここに何を植えるかは、この街の皆さんで話し合ってくださいね。でもメルさんに「いいよ」と言わせるのは間違っています」
 ユディトの正論に、農夫たちは渋々頷いた。
「ぐっ……。で、でもよ。この土地は痩せていて、ろくな作物ができねえんだよな」
「そうそう。だったら他所から旨いもの買ったほうがいいし、俺たちもタバコ吸い放題だし」
「そうですね……」
 腕を組んだユディトは、農作物について想いを巡らせた。思い出されるのはユディトの故郷。砂が続く灼熱の大地は、ここよりも農業に適してはいない。だがそれだけに、その土地に合うように品種改良を重ねる技術はあった。
「上手く実らないときは、その土地に適した強い作物を作り出すことも必要です。俺の故郷も砂漠でした。ですがそこでも作物を育てています。よろしければ、作物改良の技術や実った食材を美味しくいただくレシピはお教えしますよ」
「しかし……」
「最終的に何を植えるのかは、街の皆さんで決めて下さい。……汚染された土地も浄化することができるのです。この土地を作物の実る大地にしましょう」
 災厄の少女のためにも。その言葉は飲み込んでにっこり微笑むユディトに、農夫たちは顔を見合わせると頷いた。

● 希望の歌声
 メルの後ろ盾を欲しがった農夫たちから距離を置くようにその場を離れた三人は、腐海を見下ろす岩の上に腰を下ろした。
「さすがユディトさん。あの場を収めるなんてすごいね」
「俺は俺の知る技術を教える約束をしただけですよ。ストームが発生するため、この世界によそから大量の物資は持ち込めないのが残念ですが」
 照れて頭を掻くユディトに、メルも嬉しそうに手を叩く。
「ありがとうユディトさん」
 微笑むメルの姿に、輪は目を細めた。この世界に来た最初の頃は、自分の意思というものが強く持てずにどこかオドオドしていた。
 何もできないと悩んでいたようだったが、たくさんの出来事を通じて少し吹っ切れたようだ。
「メルはもう大丈夫だね? できること、できないことは色々あるだろうけど、自分のできることに胸を張ってやってけばこの先も大丈夫だよ」
「うん。ありがとう……うただ」
 素直に頷くメルに微笑んだ輪は、ふと顔を上げるメルに遠くを見つめた。
 汚泥の海で、猟兵達が浄化を行っているのだ。猟兵を鼓舞すべく歌われる歌声は心地よく、聞いていると心から力が湧き上がってくる。
 隣から聞こえてくる歌声に視線を隣に移すと、メルが歌っていた。遠くから聞こえる歌に合わせて、輪も歌を口ずさむ。
 微笑んだユディトも、歌を口ずさむ。流れる歌声に合わせた三人の歌声が、高台の農地にいる農夫達の心もなめらかにしていった。
 やがて響く銃声。真っ黒だった汚泥の海が桜色に染まり、淡く輝き透明になり消える様は、遠目にも美しい光景だった。
 別所では、汚泥の上で炎の精霊が踊っている。歌によって鼓舞されたユーベルコードは、通常の何倍もの力を出しているように見えた。
 終わる歌に、輪はメルに向き合った。
「そうだ。メルも歌上手だよね? よい作物はよい音楽で育つとも聞くから、種をまいたり苗を植えたあとは頻繁に顔を出して、君の歌を聞かせてあげるといいんじゃないかな」
「歌を……?」
「そう。きっといい影響があると思うよ。作物だけじゃなくて、人にもね」
 メルが頻繁に出向いて歌を歌えば、人の心は安らぐ。人の心が安定すれば、何かあっても正しい判断ができるだろう。
 輪の提案に、ユディトも頷いた。
「それはいいですね。生きていくのに食べるものは大切。そして希望も。メルさんも自分のやり方で、みなさんと一緒にこの土地を守っていってくださいね」
「……うん。メル、うたうよ。うたがメルを助けてくれたみたいに、皆を助けられるかも知れないから」
「その意気だよ。……さて雑用とか、人手が必要そうなところの手伝いをしようかな」
「メルも行く」
「俺も手伝いますね」
 輪と共に立ち上がったメルと手を繋ぐ。
 再び響く猟兵の歌声に耳を傾けた三人は、歌いながら汚泥の海へと歩いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リカルド・マスケラス
メルは生まれ的に浄化や結界といったことに対して素質はあると思う。彼女に教えれば、ある程度技能としてモノにできる気はする。だからメルに問いたい
「メルはどうしたいっすか?力を、技術を得たいっすか?」
メルに【破魔】などの力を教えれば、住人はメルに更に盲目的に頼ってきたり。力しか見てくれなくなるかもしれない

メルが力を得ることを望むなら、自分を装着してもらい、UC使用を通じて【破魔】や【属性攻撃】の使い方を学んでもらう
「幸い、練習台はいっぱいっす。その点では彼女に感謝っすかね」
ついでに汚泥を囲む魔法陣は住人をこき使って書いてもらう。その位はしてもらわんと

望まないなら、適当な住人の体を借りてUCを使い除染


ジフテリア・クレステッド
環境整備とか苦手分野もいいとこなんだけど…闇医者になって手に入れたこの力なら…?

【念動力】で瘴気から身を守って【毒・環境耐性】で耐えながら汚泥と腐海を私の毒で殺していくよ。※【毒使い】
無茶苦茶な理屈なのは分かってるけど、UCってそういうものだしね、うん。

あっ、メル。私のこの新衣装はどうかな?眼鏡をかけることで頭がよく見えるでしょ?(バカの発言)

あー、その…また、面倒事が襲って来るかもだけど、さ…メルは、何も悪くないよ。
優しいメルに甘えて勝手な理屈を並べてくる奴らなんて殴り飛ばしちゃえ。
『私たち』は、被造物である前に、『私たち』なんだからさ…。

ごめん、自分でも何言ってるかよく分かってないかも…。



● 代償を楽しむ勇気
 広範囲を浄化する猟兵を遠くに見たメルは、目を細めるとぽつりと呟いた。
「すごいなぁ……」
 その羨望の声を聞いたリカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)は、白い狐の面のままメルの隣にふわりと浮いた。
「メルはどうしたいっすか? 力を、技術を得たいっすか?」
「えっ……?」
 驚いた表情で見上げたメルの視線に、リカルドはくるりと旋回しメルの真正面に向かい合った。
 かつてオブリビオン・ストーム避けの天使像の中で眠りながら結界を張り続けたメルには、生まれ的に浄化や結界といったことに対して素質はあると思われた。
 メルに教えれば、ある程度技能としてモノにできる気はするのだ。
 だが、それにはデメリットも存在する。それを教えなければフェアじゃない。リカルドはメルに静かに問いかけた。
「自分はメルに、【破魔】や【属性攻撃】なんかを教えることができるっす。ものにできるかはメル次第っすけど」
「そうなの?」
「でも、もしかしたら拠点の住人はメルに更に盲目的に頼ってきたり、力しか見てくれなくなるかもしれないっす。その覚悟はあるっすか?」
「メルは……」
 農夫たちを振り返ったメルは、土地を浄化した猟兵達の姿に称賛の声を上げる彼らの声に一歩だけ下がる。彼らに悪気は無いのだろうが、猟兵に掛ける称賛はメルをもてはやし、崇めていた時の響きも含まれていて。
 唇を噛んで怖気づくメルに気付いたのか、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は明るくメルに話しかけた。
「あっ、メル。私のこの新衣装はどうかな? 眼鏡をかけることで頭がよく見えるでしょ?」
「ジフテリアさん!」
 メルに駆け寄ったジフテリアは、自慢気に微笑むと眼鏡のつるをクイッと上げる。その仕草に思わず頬を緩めたメルは、白いドレス姿のジフテリアに大きく頷いた。
 赤いハーフリムの眼鏡はジフテリアの紫色の目と相まって違和感なく溶け込み、ガスマスクに覆われた顔に絶妙なアクセントを与えていた。
 視力を代償に戦うこともあるジフテリアには、いずれ必要となるものだろう。以前の戦いでもジフテリアは視力を犠牲にしたが、そんなことはおくびにも出さない。
 自慢げなジフテリアに、メルは嬉しそうに頷いた。
「すごく、素敵。よく似合ってる。白いドレスもとっても綺麗」
「ありがと! ……それにしても」
 嬉しそうに頷いたジフテリアは、広がる汚泥の海にため息をついた。猟兵達が浄化を続けているが、未だ全ての汚泥を取り払えてはいない。ジフテリアも手伝いたかったが、あんなに広範囲な浄化はできる気がしない。
「環境整備とか苦手分野もいいとこなんだけど……」
「ジフテリアさんも、苦手なことってあるの?」
「そりゃね。でもさ、ダメだ苦手だなんて言い続ける訳にもいかないし。土地を浄化するためには、できることはしていかないと。たとえ無茶苦茶な理屈でもね」
「できることは、していかないと……」
 ジフテリアの言葉に目を見開いたメルは、大きく頷くとリカルドに向かい合った。決意を湛えた目でリカルドと視線を合わせ、生まれた決意を口にする。
「リカルドさん。メルに、【破魔】を教えて下さい」
「決意、できたんっすか? 今後、もっともっと「天使様」になって、皆と仲良くはなれないかも知れないっすよ?」
「いいの。メルも、できることをしたいの」
「どうしたの?」
 首を傾げるジフテリアに、リカルドは【破魔】や【属性攻撃】を教える話をする。その欠点も含めて伝えられる言葉に、ジフテリアは頭を掻いた。
「なるほど。技能を得るのはいいと思う。でも、あー、その……また、面倒事が襲って来るかもだけど、さ……メルは、何も悪くないよ」
「ジフテリアさん……」
「優しいメルに甘えて勝手な理屈を並べてくる奴らなんて殴り飛ばしちゃえ。『私たち』は、被造物である前に、『私たち』なんだからさ……」
 どこかさみしげに遠くを見るジフテリアを、メルはじっと見つめる。その視線に照れたように肩を竦めたジフテリアは、苦笑いをこぼした。
「ごめん、自分でも何言ってるかよく分かってないかも……」
「ううん。大丈夫。ちゃんと伝わったよ? メルも頑張る。『私たち』に何か言ってきたら、えいってやるの」
「それはいいっすね! 【破魔】でえいってやってやったらいいっす」
 拳を振り上げて叩く真似をするメルに、リカルドは楽しそうな声を上げる。
 笑いあった三人は、汚泥の海へと向かい合った。

● 自分たちの土地は自分たちの手で
 決意を新たにしたメルに、リカルドは【破魔】を教える。メルは歌うことが好きだからと、歌に乗せることにしたのだ。元々歌と【破魔】は相性がいい。熱心な生徒に教えるのは、リカルドとしてもやり甲斐があり自然と力が入った。
 リカルドの読み通り、メルには素質があった。リカルドの講義にしっかりついてきて、短時間で【破魔】と【属性攻撃】の技能を会得していった。
「幸い、練習台はいっぱいっす。その点では彼女に感謝っすかね」
 頷いたリカルドが技能を教えている間に、農夫たちが汚泥の中に魔法陣を描くことになった。だがそのまま汚泥の中に入るのはさすがにまずいと、ジフテリアは渋々といった具合に汚泥の中に足を踏み入れていた。
 念動力で汚泥すれすれに自分を浮かせたジフテリアは、立ち上る瘴気を耐性で耐えながら土地に凝った毒にジフテリアの毒を放った。
「あなたの命を脅かすものをぶっ殺すね」
 メスとパイルバンカーの攻撃が、土地に放たれる。凝った毒素のみを殺す毒は薬となり、人体に大きな影響を及ぼす毒素を殺していった。
 致命的な影響が消え、物理的な汚泥だけが残される。その中に入った農夫たちは、道具を使い図案に目を凝らしながら、土地に複雑な絵を描いていった。
 メルに教えながらも、リカルドは時折マスク姿で舞い上がる。上空から指示を出し、細かい修正を加えさせて。
「くそ! 泥に足を取られて……!」
「一気に浄化してくれないかなぁ」
 土地から毒素を抜いていったジフテリアは、泥の中で右往左往しながらも都合のいいことを言う農夫たちに指を突きつけた。
「自分たちの土地は、自分たちで守るの。メルに丸投げなんてしたら承知しないよ!」
「わ、分かりましたぁっ!」
「くそ! これだけ苦労したんだ。絶対いい農地にしてやる!」
「その意気っすよ!」
 リカルドを装着し、【破魔】や【属性攻撃】を習ったメルが汚泥の縁に立った。
 メルと共に視線を上げたリカルドは、及第点な魔法陣の前に立つと詠唱を開始した。
「ここに悪しきを払い、恵みをもたらせ!」
 詠唱と同時に汚泥の中に描かれた魔法陣が光を放つ。豊穣を与える力は汚泥を完全に浄化し、毒の土地を柔らかな大地へと変えていく。
 リカルドを装着したメルも、破魔の力をユーベルコードに添える。
 汚泥の海に、メルの歌声が響き渡る。己の身体として使われる破魔の力を必死に学ぶメルの手から放たれる力もまた、土地を浄化する一助となる。
 やがて浄化が終わった土地に、農夫たちは大歓声を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月水・輝命
アド・連携〇
広範囲に渡って、浄化せねばならぬだろうが、私の手がいるかの?
幼子の頼みであれば、仕方あるまい。輝命はとりあえず休養じゃ。
(問答無用で寝かせる為に真の姿化)

UCと、わずかだが浄化と破魔をもって一帯を焼き払う炎の蛇っぽいものでも作り出すかの。おー、よう焼けるのぅ♪
炎で他にやって欲しい事があれば協力するのじゃ♪

して、幼子……メルか。メルは何か、あれから選択出来たかの?
生きるとは、選択の連続。苦も幸も、選択してから後から分かるものじゃ。
……1つ、悩んだ先に選択が出来るようになったなら、次はその今の選択に自信を持つのじゃ。
それが、お主の1つの強さとなるだろう。


森宮・陽太
【一応WIZ】
アドリブ、他者との絡み大歓迎
パラス同行希望

あー、一気に汚泥を燃やして浄化となると
俺のアスモデウスはまさにうってつけの存在だな
じゃ、俺は浄化側に回るぜ
農業指導とメルへの対応は任せた

「高速詠唱、言いくるめ」から【悪魔召喚「アスモデウス」】
「破魔、浄化」つきの獄炎を「属性攻撃、範囲攻撃」で広範囲の地面に浴びせて一気に浄化
アスモデウス、この地に生きる人のために一肌脱いでくれ
これ以上希望を踏み躙らせんためにも、な

頃合い見てパラスと話をしたい
全く、無理してんじゃねえよ

一方的に天使扱いされるメル、って何者だ?
役割を押し付けられるのはたまらんだろ
…知らず知らずのうちに押し付けられるよりはマシだが


桜雨・カイ
【エレメンタルー】で精霊達を呼び出します。
メルさんに精霊見えるかな…かわいい子ですよ、頑張って浄化してくれます
水と地の精霊に周囲の様子をみてもらいつつ、火と風に汚泥を焼き払ってもらいます

…農夫の人達にお願いです。彼女を「天使様」ではなくて「メル」と呼んで上げて下さい。
彼女も役に立とうと頑張ってます。でも植物も一気に実はつかないですよね…まだこの世界に生まれたばかりなんです、少しづつ成長するのを
ゆっくり見守ってあげて下さい。
そしてメルさんも、一度に大きな岩を抱えようとしたそうですね。それはみんな心配しますよ。できる事からやりましょう、ね。

そしていつか落ち着いたらみんなでピクニックに行きましょう



● 選択こそが人生と
 猟兵達の活躍で、汚泥の海は次々に浄化されていく。
 汚泥の浄化は順調に進んでいるかに見えた。だが、徐々に侵食を深めていく土地はある地点を通過すると一筋縄では浄化されなくなっていた。
 災厄の少女が立ちすくんでいた一帯だ。拠点から離れているものの、長時間その場に立っていたために侵食が酷くなっていたのだ。
 その縁に立った月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)は、ふらつく意識を叱咤しながら腐海へ向けて手を掲げた。
 災厄の少女からメルを守る時に、無茶をしすぎた。続く戦闘に、癒やしきれない負傷と疲労が積み重なっている。すぐにゆっくり休みたいという身体の叫びに、輝命は首を横に振った。輝命にはまだ、やるべきことがある。こんなところで休んでいる訳にはいかないのだ。
「この土地を癒やさなければなりません。まだ眠る訳には……」
『広範囲に渡って、浄化せねばならぬようじゃな。私の手がいるかの?』
 魂の裡から聞こえてくる声に、輝命は顔を上げた。輝命の中に眠り、時に助けてくれるお狐様の言葉に一瞬目を輝かせるが、いけないというように首を横に振る。
「ありがとうございます、お狐様。大変嬉しいですが、ここはわたくしが……」
『そうか嬉しいか。なら輝命はとりあえず休養じゃ。代わるがよい』
 後半の強がりは敢えて無視したお狐様が、問答無用で現れる。強引に輝命を眠らせて真の姿になった輝命に、隣にいたメルが目を丸くした。興味津々、という表情のメルに、お狐様は神焔扇で口元を隠すと目を細めた。
「姿が変わっちゃった……」
「して、幼子……メルか。メルは何か、あれから選択出来たかの?」
「うん。メルは、歌に【破魔】を乗せる方法を教わったの。皆にもっと「天使様」って呼ばれちゃうかも知れないけど、でも何もできないよりも、いいから」
 予想以上にはっきりとした答えに、お狐様は目を見開く。やがて細めたお狐様は、どこか嬉しそうに言った。
「そうか。それは重畳。生きるとは、選択の連続。苦も幸も、選択してから後から分かるものじゃ」
 神焔扇越しにメルを見たお狐様は、ふと遠くを見つめる。交代するなり眠りについてしまった輝命に思いを馳せながら、メルに向けて言葉を預ける。
「……1つ、悩んだ先に選択が出来るようになったなら、次はその今の選択に自信を持つのじゃ。それが、お主の1つの強さとなるだろう」
「うん。ありがとう……なんだろう、この子」
 お狐様に微笑んだメルは、じゃれるように現れた姿に驚きの声を上げた。
「大丈夫ですか? 風の精霊です。驚かせてしまいましたね」
 【エレメンタル・ファンタジア】を詠唱した桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は、呼びかけに応じて現れた精霊たちに手を差し伸べた。
 召喚されたのは、火と風の精霊。カイの周囲を旋回する精霊たちは、ワクワクした様子でカイを覗き込んではくるりと回る。
 その様子に目を見開くメルに微笑みかけたカイは、自慢気に胸を張る火の精霊を掌の上に乗せたまましゃがみ込んだ。
 メルと視線を合わせたカイは、掌の上に視線が釘付けになっているメルに語りかけた。
「メルさん、精霊が見えるんですね。……かわいい子ですよ、頑張って浄化してくれます」
「うん。かわいいね。触ってもいい?」
「いけません。やけどをしてしまいます。……メルさんは、破魔の歌を歌えるようになったんですね?」
 カイの問いかけに、メルは大きく頷く。猟兵から【破魔】の乗せ方を教わったメルは、大好きな歌に乗せて【破魔の歌】とすることを覚えたのだ。
「リカルドさんに、教えてもらったの。カイさんの精霊さんたちも、応援するね?」
「それは心強いですね。よろしくお願いします」
「準備できたか? じゃ、始めるぜ」
 ぶっきらぼうに言った森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は、頷き立ち上がるカイに頷きを返す。
「【破魔の歌】、期待してるぜ」
「うん!」
「良い返事だ」
 元気な返事に頷いた陽太は、詠唱の準備に入った。

● 悪魔と大蛇と精霊と
 陽太の周囲に、オーラが渦巻いた。
 目の前に広がるのは、深い汚泥の海。これだけ広範囲の汚泥を焼き払うのであれば、陽太の召喚する悪魔「アスモデウス」は正にうってつけと言えた。
 ダイモンデバイスを介して現れた悪魔アスモデウスに語りかける。汚泥の海を指差した陽太は、指先が示す海に顔を向けたアスモデウスに指示を出した。
「アスモデウス、この地に生きる人のために一肌脱いでくれ。これ以上希望を踏み躙らせんためにも、な」
 渋面を作りながらも元の世界に帰らないアスモデウスに、陽太は口の端を歪ませた。
「それによ、今回は無礼講だぜ。汚泥の海の上なら火力調整も範囲の絞りもしなくていい。思う存分、地獄の業火を見せつけてやれ!」
 手を握りしめて力説する陽太に、アスモデウスは大きく頷く。
 直後、地獄の業火が放たれた。
 他とは深さの違う汚泥の海に、容赦ない業火が浴びせられる。破魔と浄化の力を乗せたアスモデウスの炎は汚泥と腐海を焼き払い、元の大地の姿を晒しだしていった。
 その業火の中を、炎の蛇が大きくうねった。
 お狐様が具現化させた狐火の蛇はアスモデウスの炎と呼応し、汚泥の深部に、腐海の瘴気に次々と絡みつく。
 その炎に圧倒されながらも、メルの【破魔】を帯びた歌声が土地の浄化を促進していった。
「おー、よう焼けるのぅ♪」
「火の精霊よ、風の精霊と共に炎の強風となり汚泥を焼き払え!」
 詠唱と同時に、カイの周囲に漂っていた精霊たちが一斉に汚泥の海へと向かう。火と風が合わさり、陸風のように汚泥の海をなぎ払っていく。
 カイが纏わせた風の精霊に、アスモデウスの炎と狐火の炎が勢いを増す。仲間を得て嬉しそうな火の精霊は、踊るようにくるりと回ると炎の範囲を広げていった。
 巻き上がる炎に、広範囲の汚泥の海が浄化されていく。氷が溶けるように浄められる汚泥の海は、ついに腐海にまで到達した。
 ゾンビバルーンを生み出していた腐海は、瘴気を放ち渦を巻く。範囲こそ広くはないが、災厄の少女が長時間佇んでいた場所だけあって、相当深くまで瘴気を生み出す腐海と化している。
 そこまで前進した猟兵達は、顔を見合わせた。
「炎でまとめて焼いてしまおうぞ♪」
「あの深い腐海だな。……って、冗談で言ったんじゃねえぞ!」
「腐海が深いのは事実です」
 生真面目なカイに、陽太はバツが悪そうに頭を掻く。気を取り直した陽太は、悪魔に指示を出した。
「行け、アスモデウス! 仕上げはあそこへの集中業火だ!」
「蛇よ! あの腐海に集え!」
「炎の竜巻となり、あの腐海の深部まで焼き払ってください!」
 陽太の声に呼応したアスモデウスが、業火を集中させて火柱と化す。
 楽しそうなお狐様が腕を払うと、八岐大蛇の如き蛇が大きくうねりのたうつ。
 そこへ、巨大な炎の竜巻が巨大な柱のようにそびえ立つ。
 大爆発を起こして消滅した腐海に、三人は拳を合わせた。

● 天使なんかじゃない
 腐海を焼き払い、拠点としていたタープまで戻った猟兵達を、農夫は大きな拍手で出迎えた。
 見渡す限り広がっていた腐海は消滅した。肥沃な大地になった訳ではないが、少なくとも農夫達が開墾し、農地に変えることができる。
「ありがとうございます、皆さん!」
「さすがは天使様だ!」
「天使様の歌声、俺たちも……」
「ちょっと待ってください!」
 メルを褒めそやす声を止めたカイは、メルの隣に立つとその肩に手を置いた。
「……農夫の人達にお願いです。彼女を「天使様」ではなくて「メル」と呼んで上げて下さい」
「え、でも天使様は天使様……」
「確かに彼女は天使像の中にいました。でも、一人のフラスコチャイルドです」
 カイの言葉に、沸き立っていた場がしんと静まる。集中する視線に、カイは続けた。
「彼女も役に立とうと頑張ってます。でも植物も一気に実はつかないですよね。……まだこの世界に生まれたばかりなんです、少しづつ成長するのをゆっくり見守ってあげて下さい」
「あ、ああそうだな」
「天使像の力が凄かったから、ついな」
 ざわざわと会議を始める農夫たちの声を聞いていたメルの目を覗き込む。幼い妹を叱るように指を立てたカイは、言い含めるようにメルに言った。
「そしてメルさんも、一度に大きな岩を抱えようとしたそうですね。それはみんな心配しますよ。できる事からやりましょう、ね」
「うん。メル、もう大丈夫。できることとできないこと、ちゃんと分かったの」
「いい子ですね。……そしていつか落ち着いたら、みんなでピクニックに行きましょう」
 カイの提案に、メルは目を輝かせた。
「うん! この土地で採れたもので、お弁当を作るね!」
「それは楽しみですね」
 小指を差し出すメルに、自分の小指を絡ませる。
 汚泥に沈んだ大地が浄化され、新しい実りをつけて、お弁当として平和に食される。
 災厄の少女が望んだ風景は再現されるだろう。いつか、きっと。

● 立場と役割
 メル達の姿を見守っていたパラスの姿に気付いた陽太は、そっと近づくと隣に座った。
 さっきまでの戦闘は、グリモアを維持しながら立っていた。脅威が去った今は、農夫たちが張った休憩用タープの下に用意された椅子に座って見守っている。それだけの差だが、己について多くを語らぬ老兵の出した小さなサインのように思えてならなかった。
「全く、無理してんじゃねえよ」
「だがお陰で、拠点とメルは守られた。それでいいじゃないか」
「……ま、そういうことにしといてやるよ」
 否定をしないパラスから視線を外した陽太は、カイと何やら話をするメルの姿を遠くに見つめた。農夫たちとの間に入って何か語るカイの姿に、小さなため息が出る。
「一方的に天使扱いされるメル、って何者だ?」
「あの子はオブリビオン・ストーム避けの天使像の生体部品として、組み込まれていたフラスコチャイルドさ。その機構は叩き壊して救出したんだがね、街の連中にしてみれば、未だに「オブリビオンを避けてくれる天使様」なのさ」
「へえ。役割を押し付けられるのはたまらんだろうな」
「そうだね。しんどいモンさ」
 小さく呟く声を耳聡く聞き取った陽太は、パラスの横顔を見る。表情を変えずに猟兵達を見守る無愛想な顔に肩をすくめた。
「……知らず知らずのうちに押し付けられるよりはマシだが」
「何か言ったかい?」
「いや、何も」
 そう嘯いた陽太は、屋根に落ちる大粒の雨に顔を上げる。
 猟兵達の炎が生んだ上昇気流が生んだ雨は、乾いだ大地を潤すように降り続いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九十九・白斗
メルか、元気にやっているみたいだな
まあ、任せておきな
腐海なんてすぐに焼き払ってやるよ
(メルの頭を撫でてから、再び火炎放射器を背負い、豪快に腐海を焼き払っていく)

よし、後は農民に任せるか
メル、またな
(一仕事終わるとタバコに火をつけ、軽くメルに声をかけてグリモアベースに帰る)

今回は前回に比べたら楽なもんだったぜ
ややこしい事情に振り回される事もなかったからな
(紫煙を吐きながら、グリモアベースにいるパラスに話かける)

とはいえあのくそ暑いアポカリプスヘルで火炎放射器を使い続けたから喉が渇いて仕方ねえ

キンキンに冷えたビールが欲しいな
どうだ帰りに一杯飲んで行かねえか


髪塚・鍬丸(サポート)
「御下命如何にしても果たすべし
死して屍拾う者無し」

【人物】
時代劇に出て来る遊び人の兄さん風の、飄々とした言動の人物です。
正体は抜け忍です。基本的には任務の為なら手段を選びませんが、そういう殺伐とした生き方を嫌って逃亡した為、残虐非道な行動だけは避けます。

【行動】
情報収集時は、出来るだけ状況を楽しみつつ、忍者時代の技術を活かして行動。
戦闘時は、忍装束を纏い忍者として気を引き締めて戦います。
【早業】の技能を活かし、手持ちのユーベルコードから、適切な能力で行動します。
連携、アドリブ感激です。


クネウス・ウィギンシティ(サポート)
※アドリブ&絡み歓迎

●特徴
サイボーグ(四肢機械化済み)の技術者&狙撃手。SSW出身の鎧装騎兵。
民間人互助や義侠心に厚い。
年齢 27歳 男
口調 通常(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
装備例:アームドフォート、飛行サーチドローン、ホバー戦車

●台詞例
『これなら、なんとか出来そうですね
『計画は立案済み、後は手を動かすだけです』
『出来ることがあるなら、やりましょう』


●行動
技術者として『(技術)支援』がメイン。
日常の困りごとやより便利にしたいものを技術者らしく物作りや修理等でサポートします。

主な技能:メカニック・武器改造・防具改造



● 見えるものが全てじゃなくて
 時は少し遡る。
 破魔の力で広範囲が浄化されていく光景をベースとなるタープの下で見ていた九十九・白斗(傭兵・f02173)に、メルが歩み寄った。
「白斗さん!」
「メルか、元気にやっているみたいだな」
「うん。皆のおかげだよ! ……あのね」
 言い出そうか言い出すまいか迷ったメルが、顔を上げると白斗を見上げる。言いにくそうにするメルの頭を、白斗は撫でた。
「なんだ? いいから言ってみろ」
「うん。あのね、なんだか嫌な感じがするの」
「嫌な感じ?」
 頷くメルは、遠くを見つめる。浄化された大地は荒涼と広がり、乾いた風が吹き抜ける。白斗には代わり映えのしない景色だが、メルにはそうではないらしい。
「あそこのね、腐海になってるところだけじゃないの。なんだか、まだ嫌な感じがする。うまく言えないんだけど……」
「そうか。なら、焼きに行かねぇとな」
 あっさり頷く白斗に、メルは驚いたように顔を上げた。
「いいの? 何が嫌なのかもわかんないのに……」
「メルは【破魔】を使えるようになったんだろ。勘が鋭くなったんじゃねえのか? それに、取りこぼしがないか調べるのは悪くない」
「そうですね。勘というのは時に演算よりも優れていることがありますから」
 隣で話を聞いていたクネウス・ウィギンシティ(鋼鉄の機構士・f02209)もまた、同意を示す。サイボーグとなり強化された視界で広範囲の土地を簡易スキャンしていくが、ベースから視認できる範囲には大きな取りこぼしはなさそうだった。
「簡易スキャン結果は良好。精密な調査をしなければなりませんが……」
「なら、俺が調査しよう。どのみち最後は焼き払うなら、それができる二人は体力温存しといた方がいい」
 飄々とした声で二人に声を掛けた髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は、気配も感じさせずに突然現れると書き込みのされた地図を広げた。
「現状、この範囲が浄化が終わってる。災厄の少女が出てきたのがここ。この周囲は腐海に呑まれてるから、別班が動くらしい」
 鍬丸が広げる地図を前に、クネウスが眉を顰める。改めて景色をスキャンすると、地図上に指を走らせた。
「……この地図には高低差が書き込まれていませんね。こちらに向けて土地が低くなっています」
「低い土地か。嫌な予感しかしねえな。死角にもなるし、何より水ってのは高いところから低いところに流れるもんだ」
「じゃあ俺が先行して偵察してくる」
 鍬丸の声に、二人が頷く。おどおどとしたように三人を見上げたメルは、不安そうに言った。
「こんな遠いところまで行くの、大変だよ。何かあるって決まった訳じゃないのに……」
「それを俺が調査するんだよ」
「そうですね。計画は立案済み、後は手を動かすだけです」
 胸を張る鍬丸に、クネウスが深く頷く。無駄足を恐れるメルに、白斗は笑みを浮かべた。
「まあ、任せておきな。腐海なんてすぐに焼き払ってやるよ」
「……うん。ありがとう」
 顔を上げて笑みを浮かべるメルに、三人は頷いた。

● 隠れていた汚泥
 地図を手にした鍬丸が地を駆け、先行調査に向かう。待つことしばし。やがて駆け戻ってきた鍬丸は、腐海から右に逸れた地点を指差した。
「あの丘の下に、汚泥溜まりができてる。その先には川が流れてて、合流されるとヤバそうな感じだ」
「そうか。じゃあ行くか」
「PHANTOMを出します。サイドカーを使えば3人乗りが可能ですから」
 クネウスの提案に、二人は頷く。ヒーローカーに乗り込んで走り出してしばし。辿り着いた腐海を前に、白斗は眉を顰めた。
 地形の都合で見えなかったが、相当広い範囲が汚泥に沈んでいる。丘の下の土地は更に低くなり、流れる川まであと少しと迫っている。
 白斗は【火炎放射器】を背負うと、無造作に歩み寄った。
「化学薬品を使った高火力の火炎放射器で、きれいに焼き尽くしてやるぜ」
 汚泥に銃口を向けた白斗が引き金を引くと、炎が放たれた。化学薬品の炎は汚泥の海に触れると勢いよく燃え上がり、溶けるように消えていく。
 手前に広がる汚泥を豪快に焼き払う白斗の耳に、冷静な声が響いた。
「CODE:CERBERUS」
 クネウスのARMED FORT「リア・ファル」から放たれたミサイルが、着弾地点を蒼炎で包み込む。川に最も近い地点に迂回させた炎は、今にも汚染されそうな川を救った。
 次々に焼き払うユーベルコードに、八方手裏剣が放たれた。
「よし、覚えた」
 自身の装備でユーベルコードを受け止めた鍬丸は、同じ力を使い次々に焼き払っていく。
 丘の下にこぼれた汚泥を焼き払うのに、それほど時間はかからなかった。

● 帰還
 ベースに戻った三人を、パラスとメルが出迎えた。
「おかえり。作戦は無事終了して、他の連中は帰した。後はアンタ達だけだよ」
「そうか。……今回は前回に比べたら楽なもんだったぜ。ややこしい事情に振り回される事もなかったからな」
「それは良かった」
 PHANTOMから降りた白斗は、吹き出す汗を大きく拭った。ただでさえ暑いアポカリプスヘルで火炎放射器を使い続けた。すぐ近くで炎のユーベルコードが使われたこともあり、既に喉はカラカラだ。
「それにしても、喉が渇いて仕方ねえ。キンキンに冷えたビールが欲しいな。どうだ帰りに一杯飲んで行かねえか」
「アンタもタフだね」
 苦笑いを浮かべたパラスが、帰還を促す。ゲートを潜り振り返った先で、メルが猟兵達に手を振り続けていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月15日
宿敵 『『フラスコより溢れし災厄』実験体参拾五式』 を撃破!


挿絵イラスト