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光がなくても

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章

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#辺境伯の紋章


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 その村は、暗がりにあった。
 夜と闇の世界であるダークセイヴァー。その中でも、そこは殊更に暗い。
 周りを崖に囲まれた場所だ。円状に削られて窪んだ立地は、俯瞰すると真っ暗な闇の底というイメージを持たせる。
 だが、だからこそ、人の営みが可能でもある。
 ヴァンパイアの目が届かず、届いたとしても態々優先して攻める程活発でもない。
 それに、住む人々は、常に怯えていた。
 明かりは最小限にし、家の中だけ蝋燭を灯す。
 必要な物資は週に一度、荷車を二台走らせての調達で済ませる。
 非常に狭いコミュニティだ。
 だから、もしかしたら、村人は安心していたのかもしれない。
 ここなら誰にも襲われず、誰かを襲うこともせず、産まれてから死ぬまでを安穏と過ごせるのだと。
「汝等、救世を与えん」
 奴が狙いをつけるまでは。


 グリモアベースに、ミサキはいる。
 いつもの様に背もたれを無くした椅子にちょこんと腰掛け、猟兵が揃うのを待っていた。
 そうして、しばらく。集まってきたのを確認した少女は椅子から降りて、微笑みを浮かべ、言葉を作る。
「こんにちは、みんな。ここに来たってことは、手伝ってくれるんだよね。うんうん、わかってるわかってる」
 ぱん、と手を合わせて、返事も聞かない内から続ける。
「ダークセイヴァーで事件が起きるよ。ヴァンパイアの支配から逃れた地──人類砦が、辺境伯に壊滅させられる」
 ここ最近現れた強力なオブリビオン。辺境伯の紋章と名前を付けられた、寄生虫型オブリビオンを体に宿した謎の敵、それを総じて辺境伯とカテゴライズしている。
 それが、ある村を襲うというのだ。
「幸いな事に、発生までは時間があるよ。現地で準備する猶予がある。迎撃するとか、相手の様子を探るとか、村の人を逃がすとか、うん、色々ね」
 その結果で、未来は変わるだろう。
 だから。
「だから、みんなの思うように動いていい。きっと悪いことにはならないさ、ああ。きっとね」
 そう言って、ミサキはグリモアを取り出して、猟兵たちを送り出した。


ぴょんぴょん跳び鯉丸
 ダークセイヴァー依頼をしたいなって思ったので出しました。

 冒険→集団戦→ボス戦となります。

 冒険で行った事が主に集団戦で活きてくる感じだと思っててください。狙って変なことしない限りは全部プラスに働くと思います。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『辺境伯迎撃準備』

POW   :    襲撃を行うポイントに移動し、攻撃の為の準備を整える

SPD   :    進軍する辺境伯の偵察を行い、事前に可能な限り情報を得る

WIZ   :    進路上の村の村びとなど、戦場に巻き込まれそうな一般人の避難を行う

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の前には、道がある。
 幅員としては5、6メートルくらいの、左右が崖に挟まれた道だ。
 そこからさき、しばらく歩けば、件の村に到着するだろう。
 行動するなら、ここからだ。
セフィリカ・ランブレイ
寄生虫型の敵なぁ、私苦手……
自分の体を食い破って潜り込んでくる想像とか、うわーやだやだ!
『そも、私らに寄生するかすらわからない。セリカ、何かを解き明かすの好きでしょ。前向きな気持ちでやりなさい』
と、シェル姉……相棒の魔剣が慰めてくれる

相手の情報を知るため、偵察に出るよ

戦いになりそうな場所の地形の把握、罠を置けそうな場所を共有するためにメモ
敵は遠くから相手の様子を確認するのを優先、敵の規模や種類、進行速度から見てどの程度の猶予があるか等情報収集
相手が反応するようなら、【虚影の燐虫】を使って注意を引いて、敵軍のほんの数体だけでもおびき寄せたいね

少しでも実際に戦ってみれば分かる事も多いだろうし


蛭間・マリア
寄生虫型オブリビオン…そんなものが現れていたのね。
興味を惹かれるけれど、まずは村の人達を守らないと。

WIZで判定を。

避難経路を検討するためには、敵の情報を味方が持ち帰るのを待つ必要がありそうね。
それまでの間は、村人たちが支障なく避難を開始できるように準備していましょう。
具体的には、"医術"で怪我人や病人の手当てをして少しでも動きやすくしたりするわ。
ここで少しでも信頼を得られていれば、避難誘導にも素直に従ってくれそうだものね。

あと、敵との戦いが終わればまた村に戻れる、ということを強調しておかないと。
行く宛のない逃避行ではないのだと示して、少しでも安心してもらいたいわね。


シャルロット・リシュフォー
辺境伯……どんな存在なんでしょうか……
何れにせよ、強大で危険な相手なのは間違いないみたいです、です!

敵が来る前に準備です?
それなら避難のお手伝いをするです!
「必ずまたここに戻ってこれるように頑張りますから!今は隠れていてほしいですぅ」
「大規模な戦いになりそうなので、万が一にも巻き込まれない所まで……一時的にでも身を隠せそうな場所はないです?」
同じ方針の猟兵さんと協力できればスムーズに避難が進みますです?です?

途中までは(開戦に間に合う時間までは)避難民について移動を護衛しますです
道中危険がありそうなら、透明化して先行偵察も出来るです!

何れにせよ、敵が来るまでには確実村に戻らないといけませんね


橘・焔
〇心情
いつ来ても辛気臭いね、この世界は
そんな世界の片隅だって、静かに暮らす自由があっても良いじゃない
守ってみせるよ、今度もきっと…

〇行動
「辺境伯。レポートでは知ってたけど実物は初めてだ」
愛機・インフェルノの快速を活かしてミサキちが示してくれた辺境伯の侵攻ルートに先回り
廃屋(出来れば櫓や塔など高台から見通せる場所)の物陰に隠れつつ陣取り、遠目からスコープで偵察
「孫子に曰く『彼を知り己を知れば百戦殆からず』、まずは敵を知って第一歩、ってね~」
侵攻速度、武装、個体の特徴…
今後の戦いを有利に運べるそうな、目視で確認できる限りの情報を抑えてスマホのメモ&写メ機能で記録

うーん、この辺境伯…かなりヤバみ?


アルマニア・シングリッド
SPD

やれやれ
村の人達も災難ですね

ただでさえ、生きにくい環境なのに厄介な者に目を付けられたようですから

村の人達が全員、無事で居られるためにも
全力でサポートしましょう

我ハ古キ書ノ一篇ナリを3千枚(武器改造)用意し
迷彩・目立たない・物を隠すで
すべてを透明化

村の周囲に広範囲で放って
UC使って情報収集をしましょう


敵の規模やその首魁、それらがやって来る方向
村の周囲の地形で防衛線に向き不向きの箇所をチェック

地図も複数枚描いて
他の猟兵の方々に情報共有しましょう

これで迎撃準備と避難誘導が楽に動けるようになればいいのですが


とにかく、最後まで気を抜かず
UCで情報収集と共有をしていきましょう


アドリブ・連携歓迎


響・夜姫
・POW

辺境伯。
貴族の爵位の一つで、上の方。……ふむー。(本をパタンと閉じる)
「私が、王だー」
響・夜姫王。つまり辺境伯より偉い。
「ぺんぎんさん。今回はこーゆー設定で」

準備として、襲撃ポイントや進路に罠を設置。
超機動要塞とか聖なる竜の城とか、作りたかったけど。流石に無理だった。
【ロープワーク/地破壊工作】でロープを邪魔になるように張ったり、サバーニャを地面に設置して地雷風にしたり崖を崩しやすくしたり。
あいあむ【罠使い】。
「私は火力型だけど。搦め手が有効なら、自分でも使う」

罠の設置に一晩くらいかかった気がするし、リスポーンが12回くらい発動した気がする。
……気がするだけ。たぶん。きっと。めいびー。


クロス・シュバルツ
連携、アドリブ可

仕方ないとは思いますが、怯えて隠れて暮らしている……というのに少々思う所はありますが
ただ、今はそれよりも襲い来る脅威を退ける事を優先しましょう

崖に挟まれた道……となれば、よくある戦い方だとは思いますが、岩を落として妨害しましょうか

村人には、終わったらちゃんと片付けて邪魔にならないようにする、と念の為伝えておいて
【闇夜の翼】で飛翔して、崖の上に降り立つ
『鎧無視攻撃』の要領で脆い所を狙って鎖で『串刺し』にして岩を崩し、道に落として障害物にする

村人が手伝ってくれるなら、戦闘中に上から岩を落としてもらえると撹乱になるけど。危険なのは確かだろうし、強制はしない
後は上空から敵の接近を監視


リーヴァルディ・カーライル
…段々と大物が動くようになってきたわね
少しずつ、吸血鬼の支配が綻びをみせている証だけど…

…だからこそ、今まで以上に気を引き締めないといけない
少しでも有利に戦えるように情報を集める事にするわ

“精霊石の宝石飾り”に魔力を溜め、
周囲の精霊達に祈りを捧げ情報を集める

…風の精霊、この谷に向かっている軍勢の居場所を教えて…?

…そして、姿を隠す悪戯好きの風の衣を此処に…

敵の位置が分かれば全身を風のオーラで防御して覆い、
臭いや音を遮断して残像のように存在感を隠し闇に紛れ偵察する

今までの戦闘知識やUCから敵の能力を暗視して見切り、
第六感が危険を感じたら無理せずに撤退する

…ここまでね。気付かれる前に離脱するわ



「寄生虫型の敵、なぁ……」
 柔らかな肉を食い破って体内に侵入してくる。そんな様子を想像して、ゾワワッと鳥肌の浮かぶ体を抱いたセフィリカは呟く。
「うわーやだやだ、私の苦手な奴だ」
『……そも、私らに寄生するかもわからないでしょ。セリカ、前向きな気持ちで取り組みなさい、謎の解明とか好きでしょう?』
 げっそり気分を慰めるのは、腰の魔剣だ。
 そう言うものかなぁ、とは思うものの、まあそう言うものでしょう、という位の気分にはなる。
「いつもいつでも辛気臭い世界だけど、敵の使ってくる手段まで悪趣味になってまあ……って感じだね」
 と、不意に、セフィリカの隣にバイクが付けられた。
「焔ちゃん」
 名を呼ぶ声に片手で応えた焔は、ゴーグルを首下にして視線を遠くへ飛ばす。
 取り出したスコープを右目に当てて、見るのはこちらへと向かってくるオブリビオンの集団だ。
 視界の範囲内では、敵のボスは認められない。
「あ、そうだ、これ」
 思い出した様に言った焔は、ポケットに畳んで入れた紙をセフィリカに手渡す。
「ん? なになに、これは──図面?」
 長方形の紙面。描かれているのは村の特徴的な高低差と入り口の通路、それから周囲数kmまでを落とし込んだ縮尺の地図だ。
 簡易的、しかし解りやすい。感心するセフィリカに頷いた焔は、自分の地図に敵の位置や見える範囲の物量等を書き込んで。
「孫子に曰く、"彼を知り 己を知れば 百戦殆からず"。敵を知って第一歩ってね。まあ地図は、あの人の発案だけどさ」
「なるほどなー! それじゃあ私も、知る為の動き、取っちゃおうかな!」

 息の詰まる空気だと、アルマニアは思う。
 今、自分は村へ通じる通路、その崖上に立っていて、ヤドリガミである自身の一部を大量に放って状況の把握を行っている。
 村の形に沿って円状に、外へと拡げていく感覚だ。
 そうして解るのは、この村がどれだけ閉塞的だったのかと言う事と、相手の物量が結構多いという事だった。
「やれやれ、災難ですね」
 ここまで引き込もっていても、厄介な相手に目を付けられると言うのは、なんというか不幸だ。
 ふぅ、と大きめに吐いた溜め息で肺の空気を入れ替える。
「それだけ……吸血鬼の支配か綻び始めた証……ね」
 不意に風が纏わり付く。
 それは自然的な物ではなく、しかし人為的でもない風だ。
「大物が出張って来た……気を引き締めないと」
 それは、やって来たリーヴァルディを起点としている。
 彼女が握った飾りから起こっているようにも見え、そしてそれはどちらも間違いではない。
 目を閉じて、集中する先からそれは来る。
 風だ。
 集まってきて、離れていき、そしてまた集う。
 そこには彼女しか解らない意識があり、情報を運ぶ精霊との会話があって。
「行くのですか?」
「……ん。少し……見てくる」
 アルマニアの声にこくんと頷いた少女は、空気へ溶け込む様にして崖から消え降りる。
 そして、入れ替わりに急な斜面をバイクで駆け上がって来た焔とセフィリカが、
「ただいま。あの辺境伯、割とヤバみあったよ」
 と、静かな声で言った。


「…………はい、これでいいですよ」
 暗い中でも視界は確保される。完全な闇の世界ではない村の底は、空に上がる星明かりから多少の陰影を着けてくれるし、目が慣れてくればおおまかな物の配置を把握することは難しくない。
 後は頼り無い蝋燭に火を灯し、極小範囲を照らせば最低限の活動は可能だ。
「とはいえ、大変ですね」
 村人との接触が成功したマリアは溜め息を吐き出した。
 今彼女がしているのは、村人への診察と治療だ。
 長い間を暗闇と共生してきた代償として、彼等は強い光への免疫が無いと言うのが解った。それから、視覚が劣る分、知覚の鋭さが優れているとも。
 空気、雰囲気の変化、塵の微細にも気付くだろう。しかし閉ざされたコミュニティでは、外にある筈の技術に触れる機会は無く、多少以上の病気や怪我には難儀する。
 だからマリアは、まずそれらの手当てに動いた。
 本当なら直ぐにでも避難をさせるべきだろうが、急に来た自分達に従うかは微妙だったし、信頼を得るという観点から見ての判断だ。
 それに、体調を万全にしておかないと、それはそれで逃げが遅れそうでもあった。
「辺境伯……どんな存在なんでしょうか……」
 ドサッと治療ボックスを地面に置いたシャルロットが疑問を口に出す。
 マリアの手伝いをこなして、一心地着いた頃合いだ。
 そうねぇ、と顎に手を当てて考えるマリアを見て、シャルロットはぐっと拳をにぎる。
「いずれにせよ、強大で危険な敵であるのは間違いないみたいです、です! ね!」
 万全を期して行かねば。
 自然と入る気合いは力強い。
「寄生虫型オブリビオン……どういう仕組みなのかしら……」
 マリアに至っては興味の方が強めではあったが。
 ……どうでしょうか。
 未知の相手をするのは怖くもある。だが今回の動きで、少なくても目に見える範囲の人たちが助かるだろう。
 そう思えば、シャルロットとしては立ち向かう理由としては十分過ぎるものだ。しかし情報が少なく頼りが無いのも事実。
「やはり私も先行偵察を──」
 と、行動すべきかと思い至った時、丁度良くエンジンの音が近付いてきた。
 入り口の方から来る焔のインフェルノと、その後ろに座ったアルマニアの姿がある。
「へい、お待ち」
「これ、どうぞ参考に」
 渡された紙は地図。ただし、偵察した情報でアップグレードされた物だ。
 村から見てどの方角に敵が居て、どういう進路でこちらに向かってきているのかが一目で解るようになっている。
「なるほど。順当に真正面から、という感じですか」
 蝋燭を掲げて見るマリアは頷く。
 円の村は、実は出入り口が多い。最初に着いた通路が一番広く安定している道で、その他、人が一人ずつなら通れる箇所が方々にある構図だ。
 そして、敵は軍勢で、一気に攻め込める広い道を目指している事が解る。
「つまり、反対側の細道を使えば敵に出会すこと無く、避難が可能と言うわけです!」
 結論に頷きを得たシャルロットは、地図を片手に行く。
「皆さん、お願いがあります、です」
 治療を終えた村人の元だ。
 傾聴しているのを確認して彼女は言う。
「必ずまた、ここで暮らせるように……! 今は、指示する方向へと避難をして欲しいですぅ」
「決して、行く宛の無い逃避行にはさせないと、約束しましょう」
 マリアも加えた言葉に、村人達は顔を見合せ、そして頷いた。


 辺境伯。
 言葉の元は、ある地方における貴族の称号である。
 激戦必須に値する地方に設置された指揮官が主にその名を頂くらしい。
 とは、本で得た知識。
「ふむー」
 パタンと閉じた情報の源を仕舞い、夜姫は足下のペンギンを見下ろす。
「ふむ」
 徐にしゃがんで目線を合わせ、いい? と人差し指を立てて見せる。
「私が、王だ」
 は? とでも言い出しそうなペンギンの表情を全く汲み取らずに夜姫は続ける。
「響 夜姫王。つまり辺境伯より、偉い。おーけー? おーけー。ペンギンさん、今回はこーゆー設定でいく」
 好きにしたら?
 とでも以下略を置いておいて、夜姫は見上げる。
 そこは村の入り口だ。
 道幅は広い。そして敵はこの道を目指して来ていると情報の共有があった。
「来るって解ってて、なにもしないほど、甘くはない。ないぞー」
 とはいえ大掛かりなものは無理だ。特に一晩かける余裕なんて特に無理。
 とはいえ、作業は一人でやるものでもない。
「どうするのかな」
 見上げた先。
 崖の上には人影がある。
 身体を、蝕む様に這いずる闇に覆われたクロスの姿だ。

 クロスは、眼下を見ていた。
 敵が通る道は、ずいぶんと自由が効く様に思う。
 道を狭めてやれば、通り辛いに加え、一度に進行する量も減る筈だ。
 奇襲するにしても、迎え撃つにしても、戦闘の流れを掴み易くなる。
「少々、思うところが無い訳ではありませんが」
 怯え、隠れ、日々を過ごす。
 村の人に関する事だ。しかし今は、脅威への対処が最優先だと解っている。
 故に、実行に移す。
 手を裂いて血を流し、黒剣に吸わせて長剣へと変じさせる。
 崖の際に立って、軽く端を歩く。そして入り口から、村の方へ少し進んだ辺りで立ち止まり、一歩、二歩──五歩程を下がって。
「よくある、定石の戦い方をしますか」
 足下に剣を突き立てる。
 根本まで深く、強く差し込んで、蝕みのオーラを流し込んでからゆっくり引き抜き、
「……!」
 強めに地面を蹴った。
 衝撃に、崖を形作る岩の一部が引き剥がされ、地響きと共に落下。
「さて、後は」
 再度見る眼下に、小さな影が走る。

 崩れ落ちた岩に、ロープを結んだ楔を打ち込む。
 その先を、暗がりの地面に這わせて逆サイドの壁面に打ち込んで簡易トラップを。
 続けて、崩されていない崖に装備の一部を設置。
「火力型ぢけど、搦め手が有効なら、それも使う」
 即席の仕掛けを終え、夜姫はふん、と鼻を鳴らす。
 時間が許せば、もっと仕掛けも出来たのにと思わなくもないが、しかし。
「お待たせ……!」
「……敵、見えてくる」
 襲来を告げるセフィリカとリーヴァルディの帰還によって、猟兵達は再集結した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『異端の神を崇拝する教徒』

POW   :    未来を捨てよ。さすれば力を与えられん。
自身の【正気を捨て、血に濡れた短剣】が輝く間、【狂気を含まれる短剣】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    命を捨てよ。異端の神々は我らを救うであろう。
【攻撃、そして死を受け入れ】【死こそ神に近づけるという】【教団の教えを信じ込む事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    崇めよ。讃えよ。吸血鬼すらも屠るは神々の力のみ。
【狂った信仰】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 粛々として、奴等は来る。

 黒の衣服に、カンテラをそれぞれに持って、真っ直ぐに来る。

 その数は多い。

 まともに相手にするのも疲れる程で、数えるのもバカらしくなるような量だ。

 それらが真っ直ぐに来る。

 待ち構えられているとも知らずに。



【実績】
 敵のユーベルコード三種を猟兵は知っています。

 通路は一部、狭くなっている所があります。

 狭くなっている通路には、足を引っ掻けるロープが張ってあります。

 通路の一部分に、起爆箇所があり、任意で破壊して岩を落とせます。

 村人達の避難は完了しています。

 ボスの辺境伯はここにはまだ到着していません。
リーヴァルディ・カーライル
…お前達のような狂信の輩はよく知っている

…こんな世界だもの。狂おしい信仰に身をやつす事を責めはしないわ

…だけど、お前達をここから先には行かせない
この先には今を必死に生きる人達がいるもの

お前達は、信仰を抱いたまま骸の海に消えるがいい…!


他の猟兵と連携して狭い通路で敵陣を止める前衛役を担う
足元のロープには常に注意をしておき適時利用する

倒すよりも足止めと体力の温存を重視してUCを使用
事前の情報収集の結果を自身の戦闘知識に加え、
魔力を溜めた両眼で敵の気合いや殺気の残像を暗視して攻撃を見切り、
呪詛を纏う大鎌のカウンターで迎撃し生命力を吸収していき、
第六感が危険を感じたら全身をオーラで防御しつつ離脱する


蛭間・マリア
どうにか避難は間に合ったわね。
辺境伯もまだ来ていないし、なかなかいい状態に持ち込めたみたい。
後は、どれだけ消耗を抑えて教徒を処理できるか…。

教徒一人一人は大した事無さそうでも、集団で強化しあうところが厄介ね。
効果的に潰すには…喉を狙って、信仰の言葉を吐かせないことかしら。

"投擲"技能を活かして、投げメスで教徒たちを牽制して仲間をサポートするわ。
信仰の言葉を吐こうとする教徒がいたら、"部位破壊"で喉を狙って阻止する。
罠の扱いは得意な人に任せましょう。

この教徒たち、心から従っているのか、操られているのか…その辺りが分かれば、辺境伯の力の一端を明らかにできるかしら。


シャルロット・リシュフォー
予想通りとはいえ、数が多いですぅ……
皆さん目つきがギラギラして割と正気でなさそうですし……

「こういうタイプは歌も効きづらいんですよねー。常時頭の中で歌以外のものがフルコーラスしてるようなものなので」
なので、迎撃は物理でやりますぅ!

【双翼舞華】で手持ちの双剣を分解
細片にして射出して信徒たちを攻撃していきますです!
先頭から順番に倒していけば負傷者で敵の動きも……あまり鈍らなさそうです
ともあれ近づけるわけには行きません
前衛の猟兵さんを支援できるよう、彼らの手の届かない範囲の信徒を優先して攻撃です!です!
「死を受け入れても、傷つかない訳じゃないですぅ。負傷が溜まれば動けなくなりますよ」



 軍団を前にした緊張感の中に、彼らはいる。
 近付いてくる数の圧というのは、それなりに鼓動を焦らせるものだった。
 とはいえ。
「どうにか、避難は間に合ったわね」
 憂いの部分はないと、マリアは思う。
 厄介な相手である辺境伯の姿がここにない、という情報も、嬉しい一因だ。
「なかなかいい状態に持ち込めた、ということね。とはいえ」
 しかし、とはいえ、だ。
「予想通りとはいえ……数が多いですぅ」
 シャルロットが「うぇぇ」という顔をするように、差というのは大きな問題になる。
 加えて言えば、こちら──というか村を目指す目は、闇の中にあってもギラついていて。
「ああいうタイプ、歌と効きづらいんですよねー」
 彼女は知っている。あれらは常に、脳内で意味をもたない思考と狂気のフルコーラスがエンドレスで流れていると言うことを。
 ただまあ、それならそれなりのやり方を取れば良いだけだ。
「前に」
 だから、二人の間を抜けて、リーヴァルディは先頭に立つ。
 狭い通路の入口、そこから少し中へ入った位置だ。
 後ろにはロープと、頭上に罠があることを念頭に入れ、彼女は短く息を吐く。
「神の聖心です」「沿いなさい」「識りなさい」「理解りなさい」「おどきなさい?」「神の為に」
 耳障りな合唱に一瞥し、空を薙いだ大鎌の柄を腋に挟んで自然に構えた。
「……お前達のような狂信の輩は、よく知っている……こんな世界だもの、狂おしい信仰に、身をやつす事を責めはしないわ」
 それから、左の足で一歩を踏み出す。
 半身を切った構えにして、左手を軽く浮かせて前へ。
「命」「生」「魂を」
「捧げなさい」
 勝手な言葉を吐きながら駆けてくる敵に、彼女は。
「……ダメね」
 まず一人、ナイフを突き立てる腕を左で掴み、斜め下方へ引きながら足を引っ掻ける。その動きの延長として前へ重心を傾け、出した足を基点にして身体を回す。
 狭い通路、長柄物が掛からないよう、すくい上げの動きで、
「──!」
 大鎌を袈裟の軌道になぞらせて二人目を両断した。
「……ここから先には行かせない。今を必死に生きている人達から何も奪わせない」
 刃の血を払って残心したリーヴァルディは、柄を両手に握る。
「お前達は、信仰を抱いたまま、骸の海に消えるがいい……!」

「否」
 信仰は断定する。
「消滅は終わりではない」「終焉こそ始まり」「私達が神に成るの!」
「おお おお おお!」
 口々に言う声は、言うなれば暗示と同じだ。
 自分達の行いは良いものであるという言葉は、活力となって伝播する。
 それらは一斉に、リーヴァルディへと殺到していき。
「アストライア展開形態」
 凛となる音に迎えられる。
 シャルロットのモノだ。
 瞬間、巻き起こる嵐の様な煌めきは、彼女の放つ金銀の花弁──剣の刃を宝石へと変えた、無数の斬撃。
 それらが、強化された上から叩き付けられる。
「死を受け入れても、傷付かないわけじゃないですぅ」
 一撃一撃は耐えられても、それが連続すればその限りではない。彼らは無敵でも無ければ不死でも無い、ただの信者なのだ。
「怖れなど──!」
 それでも止まらない。
 繰り返す暗示の声は、さらに彼等を強くするだろう。
 その筈だった。
「あら、ごめんなさい」
 声が出せればの話だ。
 力というのは、発動するのに条件がある。
 信者で言えば言葉を聞くというプロセスを経て、だ。
 だからマリアは、生み出した鋭いメスを投げつけ、彼等の喉を切り裂いて行く。
「声帯を切除したら音は出ないでしょう?」
 オブリビオンであろうが無かろうが、人の形である以上、そこに構造の違いは無い。
 強化を失った群れの先頭は、リーヴァルディの大鎌の一閃で刈り取られた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

響・夜姫
・WIZ

「私が響・夜姫神」

大規模破壊向けなので。
狭い場所で集団戦は、実はちょっと向いてない。
主戦場の少し後ろを防衛ラインの拠点と定め、【拠点防御】と他の猟兵への【援護射撃】をメインに動く。

他の猟兵と連携を取りつつ、罠に回したサバーニャ起動し崖崩れを起こして敵の足並みを乱れさせる。
ロープは少しでも邪魔できればおっけー。
「神(ワタシ)は汝らの望みを叶えよう。しぬがよい」
そのまま【先制攻撃】でめんちの滅びの吐息。
「神の恵みをうけとれー」
ちなみに【範囲攻撃/誘導弾/鎧無視攻撃】で滅び属性の【属性攻撃】だったりする。
流石野生のどらごん。おやつは奮発しよう。

時々大きい一発をおかわりでぶち込んだりもする。


クロス・シュバルツ
連携、アドリブ可

事前に準備を済ませたとはいえ、流石にこれだけの人数は容易くない相手です。……しかし、いったい何処からこれだけの数が集まったものか、少々感心しますね

UC【祟り呪いし邪眼の主】でバジリスクの特性を得る(ベースはヒト型のままで眼と舌が蛇のようになり、後は臨機応変に姿を変える)

崩れた岩やロープは蛇の特性を活かして潜り抜け、『目立たない』ように素早く接近
仲間を巻き込まない位置を取ったら毒で纏めて攻撃
他の猟兵が近付いてきたら巻き込まないように毒は止める
石化の魔眼で敵を阻害しつつ、鎖による『範囲攻撃』で纏めて『串刺し』にして攻撃する

敵の攻撃は原則回避。直撃は『オーラ防御』で防ぐ


橘・焔
〇心情
信仰は諸刃の刃と私は思うけどね
結局自身が強くなるしかないんだ、心も体もね

〇行動【SPD】
アドリブ・共闘可
「狂信者連中、個々は強くなくても一点集中されると嫌だね…」
うん、陽動だ
町の外、侵攻する狂信者の群れにインフェルノで接近して挑発
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ~」
低速走行しながらお尻ペンペン
町への出入口が複数ある事を逆手に取り、誘いに乗った一部を連れて別の狭い入口の方へ誘導する
敵にも個体差があり、足が速い奴もいれば遅い奴もいる
ある程度逃げれば群れがばらけ、走りながら各個撃破も可能になる
そして追ってきた先は人一人通れるレベルの細い通路
「残念、キミ達の命運はココまで…ってね」
さぁ、裁きの時間だ


セフィリカ・ランブレイ
皆頼もしいね、連携して頑張っていこうか!
『自分勝手自分最高のセリカも、そういう事を言う歳になったのね』

相棒の魔剣…シェル姉ったら、ちょっとひどいのでは?
私だって成長してるんだから!
でも、皆のおかげで有利な条件はそろってる。生かしていこう!
道が狭くなってるポイントが襲撃所だね

【黄槍の飛竜】を呼び出し、飛行形態へと変形させて飛び乗る
その横っ面を攻撃させてもらうよ! 高速突撃のヒット&アウェイで一人づつ確実に落としていく感じかな
相手は捨て身で来るみたいだね。身を守らないで攻撃に専念してくれるなら、逆に隙を突く機会だってある

死ぬ気で強くはなれるもんでもないよ!生きる意思のほうが何倍も強いんだ!


アルマニア・シングリッド
WIZ

やれやれ
何を信仰するかは自由ですが
それで誰かに危害を加えるのは好ましくないですね


高速・多重・無酸素詠唱と早業で
UCの先制攻撃
空想するは弾が当たった対象の戦闘能力の減衰
強化されるなら、その分以上に動きなどを鈍らせればいい

スナイパー・学習力・2回攻撃などで確実に当てにいきます

魔力溜めとクイックドロウと詠唱系で
絶え間なくUCを使用
継戦能力には自信がありますので
必要なら他の方の援護射撃も行います

属性・全力魔法や衝撃波などで相手の能力減衰と共にダメージも奪います

情報収集で敵団体と仕掛けた罠の位置関係の確認も忘れずに

必要とあらば
味方に合図や声掛けをして
罠の発動を行いましょう


アドリブ・連携歓迎



 滑り込む。
 敵の群れ、その先陣を抉った結果出来た隙間だ。
 狭く、複雑な道筋を、しかしクロスは抜けた。
 ……流石に容易くない、か。
 思うのは、今ではない。事前準備をしてもなお、溢れかえる敵の密度にだ。
 どこからこれだけ這い出て来たのかと、感心する気持ちもあるくらいだった。
 とはいえ。
「まあ、とはいえ、それだけでしょう」
 問題はない。そう判断したからこそ彼は敵のど真ん中に入り込み、そして動き始める。
「!」
 教徒達の短剣が、生温く滑った飛沫を弾かせながら振るわれる。
 それを、糸を縫い通す様にして群れを進んで回避。
 密集した中での凶刃は、例えクロスを狙ったものだとしても、仲間であるはずの個体に浅くない傷を付けていく。
 だが、敵はそれでも構わなかった。
 明日よりも今、この時、神の意思に応える事こそを一番に考えているからだ。
「愚かですね」
 自分以外の血が、飛び散って降り落ちる中、クロスは呟いて足を止める。
 そこに飛び込んでくる教徒の男をただ見下ろして、
「邪魔です」
 睨み付ける事でその動きを封じた。
「なに を し」
 それは、ただの威圧ではない。
 身体を端から、石へと変えてしまう力が伴ったものだ。
 縦に開いた瞳孔がねめつけた相手を石にする。バジリスクという怪物の能力だった。
 次いで、横合いから突き出された身を落とす事で躱し、そっと触れる動きで手を相手の腹へ。
「貫きます」
 そうして起こすのは、腕輪にしていた鎖の解放。肉をぶち抜き自由自在に走り回る、鋭い曲線の放出だった。
 クロスの意志で、教徒達を繋ぐ様に刺していくそれを、自分を基点に螺旋の様に内から外へと広げて。
「終わりですよ」
 無造作に横へ払い、多くの五体を損壊させた。


「んー皆頼もしいね、これは連携して頑張っていくのが良さそう!」
『自分勝手自分最高のセリカからそんな台詞が吐かれるなんて……そうい事を言う歳になったのね……』
「おやおやシェル姉ってば酷い言い種! わたしだって? もう二十歳間近ですし? 成長してる!」
 それならいいのだけど、という相棒の言葉は置いておいて、セフィリカは下を見た。
 現在地は上空、入口通路の外側に当たる部分だ。
 誘い込まれて狭まった道での戦いが良く見える位置であり、それから。
「ほらほらのろまさん、こっちこっち」
 溢れて押し合いしている群れへと、バイクの突撃をかます焔の姿が見えている。
 僅かな段差に前輪を弾かせ、ウィリー走行し、回転するタイヤを教徒の顔面にブチコんでは退き、また突撃しては轢き、そうして少しずつ切り崩された群れは焔へと集中していく。
「顔は痛そう」
 南無。合掌。
 それはまた置いておいて。
『サボってないで、やることやりなさい』
「オッケー、七虹最速を見せて上げる!」
 眼下を見る。
 自身がいる上空、その足場にしていた飛竜型のゴーレムに、片手を付く形で姿勢を下ろす。
 そして。
「じゃあ、GO!」
 急降下で行った。
 翼を後ろへ引き、頭を真下に向けた加速の姿勢を取らせる。
 あわや激突、大破となる寸前に脚部を下、頭を上げる様に体勢を変えて、勢いのままに敵を踏みつけては翼を起こして打ち下ろし、空へと急浮上。
 Vの字を描いた軌道での強襲だ。
「確実に、行くよ!」
 行った。
 さっきと同じ、今来た軌跡を辿る様にゴーレムを落として上げる。
 それを二度、三度と繰り返しては踏み潰す。
「怖れなどない、我らにあるのは未来ではなく、神の末席に至る結果である」
「捨てよ」「命」「受け入れよ」「その残虐を」「だから」「逝け!」
 そして何度目かの上空、セフィリカに向かって教徒は飛んだ。
 土台にしたのは数々の屍だ。その頂きに立つ男が発射台となり、助走を付けて駆ける女の足を手に受けて、思い切り投げ飛ばす形で空へと送り出していた。
 そうして、振り上げた刃はセフィリカに届く。
「捨て身で来るんだね」
 だから彼女は、剣を薙いだ。
 翼も無く、死を重ねて出来た飛翔を切り捨てる。
「でもさ、死ぬ気で強くなれるもんでもないんだよ。生きたいって意思の方が、何倍も強いんだから!」


 焔の描いた絵は、至極単純なものだ。
 引き剥がして、散り散りにして、一つずつ潰していく。
「個々が強くないのはわかったしね」
 幾度のヒット&アウェイを経て解ったのは、教徒達の戦闘能力と耐久力についてだ。
 大体、普通に三回くらい轢いたら、敵は倒せる。
 実証が出来てしまえば後は流れを作るだけだ。
 群れの尻を追い込みながら叩き、引きながら攻める動きを繰り返しながら少しずつ、少しずつ入口から離れていく。
「おお……!」
 異変が生じたのは、入口から大分離れた位置に来たときだ。
 それまではバイクの速度に追い付けもしなかった教徒達の中から、次第に、迫ってくる個体が増えはじめた。
「これが信仰での強化ってやつ?」
 車体を寝かせながらの急ブレーキで、飛び掛かってきた教徒の真下をスライディング。拳を握って地面を叩き、反動を付けて無理やり起こして走行を再開させる。
「でも諸刃の刃でしょ、それ。結局さ、自分自身が強くなるしかないと思うんだ──なんて、あんたらに言ってもわからないだろうけど」
 ブレーキを掛けて後輪を滑らせ、敵の群れに対して横向きの構えを取った焔は一息を吐く。
 それから、ぶおん、ぶおぉん、とアクセルを遊ばせ、
「鬼さんこちら 手の鳴る方へ~」
 まあ排気の音なんだけど。
 そう思いつつ、クラックの様な細い道へとバイクを通す。
 しかしそこは、村の人でも通ろうとしない程の狭さの道だ。
 やがてバイクの幅も無くなり、戻るしかなくなる。
 だが背後には敵がいて、
「残念」
 振り返った焔はそれを見て笑う。
 手には、光で象られた短い剣を現す。
「これでサシ。キミ達の命運はここまでだ」
 そして、前へ一歩、踏み出すと同時に光剣を投げつけ、即座に二本目を精製して突き立てる。
 狭さに回避も出来ない教徒は、投げられた剣を弾くの手一杯で、迫った二撃目に胸を貫かれて絶命するしかなかった。
「さあ、裁きの時間だ。信じる神サマじゃなくて悪いけど、拒否は出来ないからね?」


 崩れ落ちた岩の上に、アルマニアは立っていた。
 視界にあるのは、変わらない神様への信心を秘めた教徒達の姿だ。
 疑いも迷いも無い、ただそうあるべしとして、それらは神の意向を口にし、神の威光を信じて全身をしてくる。
「やれやれ……」
 自然と息が漏れ出た。
 かなりの迷惑集団ですねと、そう思う。
「信仰は自由ですが、それで危害を加えるというのは、好ましくないです」
 とばっちりもいいところである。
 まあ指摘したところで止まるわけでもなく、まして信仰が揺らぐ事もないだろう。
 だから、彼女は両の腕を徐に開いた。
 体の内側にある魔力、それを外へ放つイメージに加えて、周囲に留まらせる。
 それから、出した分を均等に分け、弾丸を想像して創造し、
「サモン」
 間髪入れずに射撃した。
「!?」
 横殴りの豪雨となった弾丸は、敵を余すこと無く濡らして膝を付かせた。
 だが。
「……神の前で小細工など、意味を成さないと知りなさい」
 彼らは何事もなかったように立ち上がった。
 やはり神の信徒である自分達は、不信心な者達には挫けない。
 と、その様な事を思い、不敵に笑って、その信仰により強くなった身体能力で殺到しようとして、気付く。
「……なんだ、どうなっている」
 体が重いのだ。
 いや、重いというより、普段と変わらないといった方が近い。
 強化された筈の力が今、発揮できないでいる。
「私の空想は、信仰にも効くようですよ?」
 ……手の内は教えませんけど。
 胸中で付け加えて、アルマニアは弾丸を生み出す。
 彼女の考えは至ってシンプルな物だ。強くなってしまった戦闘能力は、その分、鈍らせてしまえばいい。
 空想という曖昧な力は、それだけ力の幅も広い。
 合致すれば、相手のユーベルコードを上書きで無為にしてしまえるほどに。
「終わりにしましょう」
 射撃する。
 今度は先程とは違い、能力を劣化させるのではなく、直接的な破壊の力を込めた弾丸の雨だ。
 だが、教徒達はそれでも前進する。
「前へ」「神の言葉に従え」「前へ」「先へ」
「……おお!」
 絶命した仲間の肉を盾に、アルマニアへと距離を詰めていく。
 そして、その手が彼女へと届く。
「もういいですよ」
 その時、合図の声を上げた。


「おーきーどーきー」
 合図の声を聞いた。
 夜姫は、壁に嵌め込んだサバーニャを起動させる。
 炸裂するような砲声をあげ、崩れ落ちた岩が押し寄せていた教徒達の頭上に降り注ぐ。
 そして岩雪崩が落ち着いた頃、少女はその岩を上り、頂から残存する教徒達を見下ろして言う。
「私が響 夜姫神」
 背後でペンギンが「王じゃなかった?」という呆れた視線を送っているが、少女はそれを完全に無視。
 細かい事を気にしてはいけないと思う。
 ただまあ、大規模な破壊特化の身からしたら、この手狭な戦場は自分にとても不向きだということを、夜姫は自覚している。
 だから待ったし、タイミングを合わせて突撃を完全に封じ込めもした。
 後は各個の撃破に動けばいいだけという段階で、つまり力で殲滅をすればいいという、分かりやすい状況に持ち込めたということだ。
 なので少女は、ドラゴンを呼んだ。
 名をめんちと言う。
 岩を崩すのに使ったサバーニャを手元に戻し、乱雑に射撃しながら、夜姫は平坦な声で粛々と告げる。
「神は汝らの望みを叶えよう」
 神、つまり夜姫なのだが。
「──しぬがよい」
 おふざけの様な死刑宣告。それに応えためんちの、冗談ではすまないドラゴンブレスが放たれる。
 溢れる様に落ちて、地上を拡がり大勢の教徒を撫でるように焼く。
「神の恵みをうけとれー」
 余波が過ぎ去った後、残るのは死に体間近の教徒達だけだ。
 虫の息を懸命に整え、神を騙る夜姫を睨み上げる。
「認めないぞ、おまえのようなものが神だなどと……!」
「?」
 え、だって死ぬ事が神様に近付くって言ってたじゃん?
 とは夜姫の思考だが、難しい事はどうでもいいのだ。
 信仰者のこだわりはよくわからない。
 よくわからないので。
「めんち、おかわりだって」
 止めのドラゴンブレスが残りの全てを灰に変えた。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『預言者ムガヴィー』

POW   :    神聖伝道
【不信者達を平伏させ、神の真理を広めたい】という願いを【神授のオーブを通じて世界中の信者達】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD   :    汝、救済を求める者なりや?
対象への質問と共に、【対象の体内】から【不信者を喰らう神の幼獣】を召喚する。満足な答えを得るまで、不信者を喰らう神の幼獣は対象を【内臓を食い破る拷問】で攻撃する。
WIZ   :    最後の審判
【不信者のみに落ちる神の雷】を降らせる事で、戦場全体が【信徒だけが救われる審判の日】と同じ環境に変化する。[信徒だけが救われる審判の日]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナギ・ヌドゥーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「役にたたんなぁ」
 その老人は、幾人かの信徒を引き連れてその場に現れた。
 大群とも言える教徒達が残らず消え去った跡を眺めては、白く伸びた髭を撫でて喉を鳴らす。
「まあ、神でも吸血鬼でもない、願うだけの木偶共ではこの程度、か」
 それから、それを成し遂げた猟兵達の存在に歯を剥き出して笑う。
「我が言葉は絶対だ。逆らう事は、神すら出来ぬ」


─────預言者ムガヴィーの身体には【辺境伯の紋章】というブローチ程度の寄生虫オブリビオンがどこかにいます。どこにあるかは一目ではわかりませんが、あります。辺境伯が死ねば紋章は活動を停止し、捕獲も可能となります。─────
 
橘・焔
〇心情
何が「役に立たんなぁ」だ
こちとら異神を司る一族と吸血鬼の合いの子だ
存分に逆らってやろうじゃないか

〇行動【POW】
裏門でひと暴れした後、バイクで正門側へ駆けつける
「ふーん、奴が今回の首魁か。意外と小物感」
…とはいえ感じる力は本物、気を引き締めよう

インフェルノの機動力で敵を翻弄しつつ“光の刃”を撃って様子見
預言者の言う「神の真理」とやらを否定しつつ、一気に距離を詰める
「一つ教えてあげるよ、神は人を責めもしなければ救いもしない」
呪われた血の力を解放し、虹色の虹彩を発現させる
「これが裁きの光だ、『時よ止まれ、汝はいかにも美しい』!」
少なくとも、神は私の家族や一族を救ってはくれなかったから…


シャルロット・リシュフォー
あなたが神をも従えるのなら、わたし達は神も魔王も等しく殺す猟兵ですぅ
ここを守る為に……そして、何よりオブリビオンを倒す為に!相手になりますです!
(そう。過去に属するものなら、それが神でも倒さなければならないのが猟兵です)

雷なら、ポンチョでちょっとは耐えられますぅ
【シャイニング・ロンド】で更に防御力をアップして相手からのダメージを最小化しつつ
属性魔法をエンチャントした双剣で攻撃です!
効きそうな属性は……普通に炎で良さそうですのね
「願いや祈りは、力なきものじゃないですぅ。正しく持てば、前に進むための力になるんです!」
だからどうか、この邪悪を払う力を此処に


響・夜姫
「逆らう必要もない。私は、神を超えた王。私が、ルールだー」

・WIZ

「予言者なのか辺境伯なのかハゲなのか。はっきりするべき」
あと。信徒だけが救われる審判の日なら。
「お前は信徒じゃない。だから救われない。ここで終わり。QED、ふぁいやー」
【存在感/精神攻撃/傷口をえぐる】とかで煽り、銃とサバーニャによる【2回攻撃/一斉発射/乱れ撃ち】でよひめぱんち。
キックは銃から出る。
雷については【武器受け/オーラ防御/拠点防御】でサバーニャを頭上を含む周囲に展開して避雷針代わりにする。
倒れなかったらもう一発。
ぺんぎんさんとめんちは【援護射撃】ごー。

……しまった。捕獲の事、考えてなかった。
「……まぁ、いっかー」


蛭間・マリア
願うだけの木偶、ね…紋章の傀儡と五十歩百歩だと思うけれど、自覚はあるのかしら。

目には目を、歯には歯を。そして、神には神を。
"蛭間の血液製剤"でドーピングしてから、嵐王の影法師を呼び出して戦わせるわ。
一度呼び出してしまえば、アレは私の状態に関わらず戦闘と続ける。
それこそ、平伏しようが昏倒しようが。
貴方が信じる神の真理、遠い異境の神にも通じるといいわね。


言葉を介して力を発動する辺り、紋章は上半身…胸より上かしら?
できるだけ完全な状態で捕獲したいけれど、嵐王に手加減は期待できない。
今回は断片だけでも良しとしましょう。
(戦闘後は大メスとノコギリを携えて紋章を探します)


クロス・シュバルツ
連携、アドリブ可

信者が信者なら、その上に立つ者もそれ相応ですね
この村にお前達の言う救済を求める人などいやしない
それでも進もうというなら、相手をします

紋章が何処にあるか分からないし、まずは素直に体力を削っていく

黒剣を長剣状態にして接近戦闘。時折、鎖で『フェイント』を混ぜてたり、足を『串刺し』にして敵の『耐性を崩す』
隙を作った所で『第六感』に導かれるまま『捨て身の一撃』で一気に攻撃

敵の攻撃は『オーラ防御』とUC効果のダメージ軽減で防ぎ、環境変化は白い闇を放って効果を弱めてやる

紋章はこの世界を本当の意味で救う為に貰っていこう
お前もある意味で世界を救う助けになったんだ。安心して骸の海に沈むと良い


セフィリカ・ランブレイ
アレが辺境伯?
威厳よりは狡猾さで土地を治める感じ、私よく似たタイプ知ってる
(軍部の人、ああいうの多いんだよなぁ)

シェル姉、例の寄生虫型、場所、わかる?
『なんとも、ね。まずはあの預言者、黙らせる方が早いわ』
引っこ抜くのは無理か。うまい事捕獲したいね

【神薙ノ導】でいく!

相手を知り、上回れる部分で有利を取って勝つ
そんな見に徹した剣だよ。単純だけどまあ、やらしいんだね

救済を求めるものか、って尋ねられても
求めてはいるけど、あなたに救ってもらう気はミリもないんだよね!

襲い掛かってる獣のやり口は、何手かぶつかればわかる
内臓狙いでくるみたい。
相手の狙いが判るんなら、それはそれでやりやすいってもの!



「なにが、役に立たんなぁ、だ、クソ食らえ」
 インフェルノで入口へと戻った焔は、敵の言葉に苛立ちを覚えた。
「預言者なのか辺境伯なのか。ハッキリするべきハゲ」
 夜姫は、敵の姿を見て首を傾げ、どの呼び名を使うべきかを考える。
「……あなたが、神をも従える力があるとしても。わたし達は、神も魔王も等しく殺す猟兵ですぅ」
 神を信じると嘯き、実質それを超えた傲慢にシャルロットは自分達の存在を明言した。
「願うだけの木偶……ね。紋章の傀儡と五十歩百歩だと思うのだけれど、自覚、あるのかしら」
 マリアから見たら、預言者と信者、辺境伯と預言者の関係は大差無いのだろうと、そういう評価になる。
 ただ。
「ふぅん」
 預言者──ムガヴィーは、手の平に感じるオーブの重みを確かめながら喉を鳴らす。
 その態度は自身を囲む四人を意に介していない様に見えて、しかしその実、意識は間違いなく猟兵を捉えているだろう。
 そういう気配があると、四人は油断無く構え、しかし唐突に事は動く。
 ムガヴィーの動きだ。
 オーブを持った右腕をダラリと下ろし、左手で髭を撫でながら周りを見回して、言う。
「おう、汝ら不敬」
 瞬間、闇が支配する世界に光が満ちた。
 まず空が、刹那の明滅を現す。直後に発生する目映さは白く、大地へ降り落ちる。
「が、ぁ……!」
 雷だ。
 遅れる音が豪快に鳴り、打ち付けられた痺れに四人は、足元をふらつかせる。
 だが、問題はダメージではない。
 というより、電撃を受けた生理的反応で怯みはするが、見た目程の威力ではないと言える。
 ならばなにが問題なのか。
「……これは、仲間を強化しましたか……!」
 灰色のポンチョコートで絶縁させ、いち速く復帰したシャルロットがムガヴィーを見る。その周りには、数えられる程度の信者の姿だ。
 先程殲滅したのと同じ姿をしたそれらが、今は先程とは全く異質の強さと圧を感じさせている。
「役に立つ様にしただけの事、汝らは信心が無いゆえに、なぁ?」
 お前こそ無いだろう、という言葉は意味を持たないだろう。ニヤけたムガヴィーの顔が、それを物語っている。
 辺境伯の力に加え、能力の高い側近が控えたそいつは、確かに申し分の無い実力があるのだから。
「信者が信者なら、その上もまた相応の器ですね」
 ただ、じゃあ対抗出来ないのかと言われると、そうでもない。
 雷から逃れたクロスは、白光を纏いながらムガヴィーへと肉薄を狙う。
 遮る様に立ちはだかる信者には、全身から吹き出させた波動の力で弾き飛ばす。
「ほぉ、汝、使えるな?」
「お前は使えないけどな」
 それは、神に従う者に絶大な力を与える、ムガヴィーのユーベルコード効果を払う、闇の衝撃だ。
 文字通りの露払いとされた壁を越え、握った剣を橫薙ぎに一閃させる。
 だがそれを、敵は軽々とした動作で跳び、回避した。
「無駄に速い……」
 見た目通りではないのがオブリビオンと言うものだが、些か以上に動けるモノだと、そう思う。
「これが、辺境伯……?」
 セフィリカが行った。
 その姿は跳んだムガヴィーの真後ろ、空中にある。
 相棒の刃を振り上げて、完璧とも言えるタイミングの強襲だ。
 当てられるし、両断出来る。
 そう思い、実行しようとして、しかし。
「汝は、救済を求める者、なりや?」
 問われた瞬間、腹部に異質な気持ち悪さを感じて動きが鈍る。
 一拍、一瞬の淀みを逃さずにムガヴィーはセフィリカを蹴り跳ばして脱し、何事も無かった様に着地した。
「っ……悪趣味……!」
 反して尻から落ちたセフィリカは、違和感の残る腹を押さえて立ち上がる。
 その前には、預言者でも、信者でも無い存在が産まれている。
「口を慎め、神の遣いぞ?」
 獣だ。四足で地を掴み、鋭い牙を涎で濡らした怪物がそこにいた。
 セフィリカの体内から召還されたそれは、向かい合うことで前進を阻止している。
「お腹は痛めたけど、私はママじゃあないぞ!」
『バカ言ってないで、来るわよ』
「わかってるっ!」
 肉を食らうべく、獣は地を蹴った。
「おお、流石、神の僕よ」
 それを横目に見たムガヴィーは、徐に一歩を後ろへ下がる。
 その足元に、光で形作られた剣が突き立った。
「──!」
 続けて、振り上げられた二刀が叩き付けに来る。
 だが遮るのは信者の身体だ。
 ムガヴィーを守る為、正面から刃を身体にめり込ませて止める。
 が。
「はぁ!」
 両断した。
 というより、焼いて無理矢理落としたと言う方が正しい。
「やれやれ、これだから神をも恐れぬ蛮族は」
「野蛮で上等、こちとら神や鬼やらの合の子だ」
 光の刃が、ムガヴィーの眼前で止まる。信者が止めたのだ。
 それを力で押しながら、焔は正面から行く。さらに横手には、壁になろうとする信者を焼き斬って進むシャルロットの姿だ。
「本当に野蛮……力で捩じ込むつもりとはなぁ!」
 圧が凄いと、預言者は後ずさった。
「神の威を知らぬ者め、これだから信徒にならぬ愚か者は嫌いなんじゃ、大体──」
「願いや祈りは、力無き者じゃないですぅ」
 炎が舞う。二振りの刃は縦横無尽の軌跡を焼いて、後退する預言者を生い立てていく。
「正しく持てば、前へ進む力になる……そんな、誰かを勝手な考えで裁く様なものじゃありません!」
「何も知らんガキが知ったような口を──」
「お前はうるさい」
 ぶおんと風切り音を鳴らした夜姫の拳が空を切る。
 ムガヴィーの顔面狙いだった一撃だが、紙一重で避けられたのだ。
 しかし止まらず、思い切り振り抜いた身体は勢いのままに距離を開ける。
「神を利用するお前も信徒じゃない、だから救われないし、救えない、ここで終わり」
 小さな身体は弾み、構えた二丁拳銃の銃口が敵を捉えた。そして。
「ごーれつよひめぱーんち」
 射撃した。
「頭の可笑しい小娘が、言動くらい一致させ──!?」
 その思考は命取りと言える。
 自分本位なオブリビオンと言えど、ある一定の常識を身に付けていたのが災いだ。
 夜姫が使うユーベルコードは正に、そういう普通の感性を刺激してこそ発動出来るのだから。
 だから。
「召還、かんりょ」
 無数の大型砲が宙に並んだ。
 ……退避を……!
 即座に逃げを選ぶ敵は、しかしそれを許されることはない。
 何度目か解らない後ろへの一歩を、掬われる感覚で彼は体勢を崩した。
 ふわりと吹いた強い圧の風が、倒れそうな背中を前へと押し出す。
「目には目、歯には歯、と言うでしょう?」
 それは、マリアが代償を支払って呼び出す嵐の王、その操る暴風の力。
 容易く空間ごと吹き飛ばしそうな勢いは、まさしく神の領域だろう。
 為す術無く拐われそうな身体は宙に投げられ、
「何処へ行くのですか?」
 両脚に巻き付いた鎖が引き戻してあげる。
 綺麗に重ねた足裏が大地と接した瞬間に、クロスは斜めの角度で剣を両脚、脛の辺りを通して差し込んで地面に縫い付け固定。
「貴様……!」
 雷を。
 そう思い掲げたオーブを持った腕は、シャルロットが肩から焼き落とす。
 抵抗手段を失ったムガヴィーは、自分を見つめる沢山の空洞を見た。
「ふぁいあ」
 そして、一斉に瞬く砲火は、ただ一点を目指して放たれた。
「……やったか」
「あら、フラグ」
 閃光、衝撃、爆煙の残り香。
 それらが晴れた先、しかし、ムガヴィーは生存している。
 残っていた信者をかき集め、肉の壁とすることで自分への致命を防いだのだ。
「まだ」
 生きている。
 ならばまだ、神はここにいる。
「まだ終わらん!」
 だからありったけの力で、ありったけの裁きを下そう。
 神たる力を得た神も恐れる神の使徒として、不信心に見せつけてやろう。
 それでこそ救いなのだから。
「感動のとこ悪いけど、救ってもらう気は一ミリも無いんだよね」
 聞こえた気配に、ムガヴィーは信者から奪い持っていた短剣を無意識に構えた。
 そこへ、セフィリカの鋭い一閃が叩き込まれる。
 甲高い金属の音を響かせ、強烈な火花の向こうに彼女は居る。
「貴様の意思など必要ない! これは神の意思! 逆らうならば死だ!」
 不意の一撃を防げた事実が、哀れにも彼を誤解させてしまった。
 このタイミングならば、反撃の一撃でセフィリカを倒せるだなんて。
 なんて甘い思惑だろう。
 故に、見えた彼女の顔が憐れみか呆れの表情になっていることにも気付かないまま、
「二式」
 刹那で翻って走る青閃に身体が開かれる。
「…………は?」
 胴から切り離された上体は地に落ち、真っ暗闇の空を見上げる。
 いや、そこにあるのは闇だけではない。
 眩く天を染める輝きが舞っていた。
「おお……おお……! あれは、あれこそ、神の──」
「裁きの光だよ」
 無慈悲に見下ろす虹の瞳が見限る中、愚かにも神を軽んじる預言者は死んだ。

●小噺
 辺境伯の紋章という物体がある。
 それはブローチの様な、宝石の様な形をしていて、蠢く触手を根のように寄生主に張って張り付いている存在だ。
 宿主の生命活動が止まると同時に活動を停止するそれは、しかし消え去ることはない。
 だから。
『……気色悪い』
「シェル姉ってばそれは箇所かな? それとも見た目カナ?」
 半身を消されたムガヴィーの下半身、その腿の付け根にそれはあった。
 セフィリカの問いにノーコメントを貫いた魔剣は置いておき、メスとノコギリで根を切除したマリアが慎重に紋章を取り上げる。
 と、同時に、残っていた下半身は塵へとなって。
「お前も、ある意味世界を救う助けになったんだ。安心して骸の海に沈んで逝くといい」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月30日


挿絵イラスト