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かにふぇす・ふぉーえばー

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#アックス&ウィザーズ
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#戦後


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 アックス&ウィザーズ世界、とある小さな村。
 決して立派とは言えない建物や植物が並ぶその地では、『祭り』の準備が行われていた。

 皆が力を合わせて、綺麗な石を繋いだり、大きな道具を運んだり。
 ぱん、と手を叩く音が聞こえたかと思えば、小さな子供が古めかしい口調で指示を送り、顔に皺を刻んだ大男が溌剌とした笑顔と敬語でそれに応える。
 また少し離れた場所では大人びた女性が躓いて丸太の山を盛大に崩し、見ていた少年が慌てて魔法でそれを積み直す。
 それは一瞬目を疑いそうな光景であったが、様々な種族が集まるこの村ではそう珍しくないことであった。

 そうして村のあちこちで準備が進められる中、元気な少年たちが何かを持って駆けてくる。
 彼らが持っていたのは――数匹の小蟹が詰められた網であった。



「皆集まってくれて有難う。さて、戦争の終わったアックス&ウィザーズだけれど、群竜大陸以外の場所では未だオブリビオンがうようよしている。今回皆にはそれの退治に向かってもらいたいんだ」
 ネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)はそう告げて、透明な箱を取り出しながら話を続ける。
「討伐対象のオブリビオンは帝竜こそが神の遣いと信じる者の集団だ。予知の通りなら彼等はとある村を襲い、そこで行われる『祭り』を滅茶苦茶にしてしまう。彼等が何故そんなことを企んだかと言うと――」
 話が途切れると共に、透明な箱がちゃぷ、と小さな水音を立てる。よく見れば中には、彼女の親指程の大きさをした蟹がわしゃわしゃと泳いでいた。

「これは今回向かってもらう村の近くに流れる『レトラ川』に生息する蟹の幼体だ。大人になると一メートルあるかないかくらいの大きさになるらしい。名前は通称『フシカニモドキ』と呼ばれているのだけれど……この響きに何か思い出す人もいるだろうか」

 そう言ってふわり、と片手でグリモアを浮かべ、光の中に映し出したのは――帝竜戦役にて猟兵に無音無臭の戦いを強いた、巨大な『不死蟹』達。その小蟹の殻は煮れば芳醇な出汁が永久に出続け、ひとつでも金貨七百五十枚以上の価値があるとされていた筈だ。

 ネルウェザはその『もどき』と呼ばれる手元の蟹を指差して続けた。
「村の祭りというのは、この『フシカニモドキ』を沢山食べて長生きしよう、という――いわば蟹パーティーというやつかな。当然この蟹は売っても全然金銭価値は無いし、長生きするという科学的な根拠もない」
 しかし、とネルウェザがグリモアの光を動かす。
 浮かび上がるのは小さな村の光景――人間やエルフ、妖精や獣人など、様々な者たちが仲睦まじく暮らす映像だった。
「この祭りは異なる種族が暮らす村で、各々の寿命を乗り越え暮らそうというおまじないとしてずっと続いてきた。オブリビオンはこれを神への冒涜と解釈し、今回の襲撃を企んだんだ」

 祭りを続けるため、そして村を守るために、オブリビオンを退治して欲しい。
 ネルウェザはそう告げると、グリモアをくるくると回して転送の準備を始めた。
「さて、まずは皆をレトラ川へ送るよ。村は今年、祭りの蟹を捕まえる人手が足りないようでね……皆で沢山蟹を捕って祭りを盛り上げ、オブリビオンが確実に村を狙うようサポートして欲しい」

 グリモアの光を強めて猟兵を送り出しながら、ネルウェザは更に言葉を付け加える。
「十分に蟹を持ち込み、その上オブリビオンも退治すれば……きっと祭りにも招待されることだろう。任務が終わったら是非楽しんできてくれ」



 のどかな地に流れる大きな川。
 澄んだ水はきらきらと日の光を返し、静かな音を立てて揺れていた。
 猟兵がふと周りを見渡せば、水辺には『フシカニモドキ』がわさわさと蠢いている。周囲の動物や水の音を気にしていない辺り、どうやら本当にただの『もどき』のようで、群竜大陸の『不死蟹』のように音や臭いに敏感なわけではないらしい。
 問題は――大きさだ。
 不死蟹のような巨大さはなくとも、彼等は一メートル程の体躯を持っている。正面から襲いかかって暴れられたり、水中で格闘することになったりすれば、少し面倒なことになるかもしれない。
 蟹達の不意を打って彼等を捕獲し、村へ向かおう。


みかろっと
 こんにちは、みかろっとと申します。
 今回は戦後のアックス&ウィザーズでの任務です。
 不死蟹……に似た蟹のお祭りをする村を救ってください。

 第一章は蟹漁です。蟹はそこそこ大きいので、水のないところに打ち上げる、気づかれないように仕留める等工夫して捕獲してください。
 第二章は村でのお祭りを襲いに来たオブリビオンとの戦闘です。
 見事討伐できれば第三章、長生きのおまじないとして蟹を食べ、お祭りを楽しんでいってください。この章のみの参加も歓迎です。

 それではご参加お待ちしております!
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第1章 冒険 『二つ名持ちの蟹を捕まえよう!』

POW   :    特性を見極め、肉体や気合で捕獲する

SPD   :    特性を見極め、速さや技量で捕獲する

WIZ   :    特性を見極め、魔法や知識で捕獲する

イラスト:ミムミリ

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朱酉・逢真
1メートルかぁ。けっこデカイな。たくさんのヒトが腹を満たせそうさ。
俺の武器って毒と病ばっかだかンなぁ。食えなくしちまったら意味がねえし…ああ、そうだ。
カニの足元を神技で裂いて、カニを落とす。直接切りに行かなくても切れるさ。そのあたりを指でなぞる感じでやればいい。
小路の先は空の高いとこにつながっているのさ。地面に叩きつけられりゃ、毒も病もなく殺せるだろう。甲羅も砕けるしなぁ。
あんまし高くすっと飛び散っちまうからなぁ。高すぎたら途中でまた小路開いて、途中省略するさ。



 川の縁を呑気に歩いていく蟹を見遣って、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)はひとり考え込む。
 フシカニモドキの体躯は逢真の背丈の半分程。あれの中に詰まった肉を調理すれば沢山の人々が腹を満たせそうなものだが、しかし。
 逢真が主に武器とするのは毒と病。強力なそれを使えば生物の息の根を止めることなど造作も無いが、蝕まれた肉は同じ『毒』や『病』となって口にした者を襲うことになる。
「デカくても食えなくしちまったら意味がねえしなぁ……」
 毒も病も使わずに、あの蟹を仕留める方法。
 それを導き出すべく彼はあれこれと思考を巡らせ――ふと。
「ああ、そうだ」
 ぽつり呟き、逢真は改めて向こうの蟹へと視線を定めた。

 狙うは数メートル先にいる群れの、一番大きなフシカニモドキ。
 徐に右手をふわと上げ、人差し指を静かに伸ばして。其の先に纏わせるのは、毒でも病でもなく――神技にて『境界』をつくるユーベルコードの力。
「さァて、この辺りか」
 のんびり水辺を歩く蟹、その足下。逢真の視界のなかで白指がすうっと横切れば――神技がそれをなぞるようにすっぱりと地を裂いた。

 直後、地に立っていた筈の蟹は吸い込まれるようにすとんと真下へ落ちていく。群れのボスだったのか、はたまた一番身体が大きい故か。周りにいた蟹達はすぐにそれに気づき、そして大蟹を呑み込んだ地面の裂け目をおそるおそる覗き込んだ。
「……!?」
「!!?」
 穴の向こうに在るのは川の水でも、湿った土でもなく――空。
 混乱した蟹達が不思議そうに穴を見つめる中、逢真は真上を見上げていた。
 彼の目に映るのは、薄雲の中で米粒の如く小さく小さく見える茶色の物体――『境界の小路』を通って遥か上空へと落とされた、先程の大きなフシカニモドキ。

 落下の衝撃を利用すれば毒も病も使うこと無く仕留められ、更には甲羅も砕けて食べやすく一石二鳥だ。そう逢真は蟹が落ちてくるのを待つ――が、上空の影はなかなか近づいてこない。
「……高すぎるか?」
 一メートルあった蟹があの大きさに見える距離だ。このままでは地面に叩きつけられた瞬間、蟹は身ごと粉々に砕け散ってしまうだろう。
 安全に食べられるよう考えた作戦で、肉が甲羅の破片と混じって粉微塵になってしまえば元も子もない。逢真は空を見上げたままもう一度ユーベルコードを起動し、蟹の居る少し下の空をぱっと裂いた。
 加速を続けていた蟹はまた『境界の小路』へと呑み込まれる。

 通り抜けた小路の先は――地面からほんの僅かに浮いた場所。
 直後、ガシャッ!!!!! と大きな衝撃音が上がる。蟹は逢真の思惑通り甲羅に深い亀裂を刻み、ぴくりとも動かなくなってしまった。

 蟹の身体はかなり重く、割れた甲羅の隙間からは肉がぎっちりと詰まっているのが見える。新鮮なうちにと逢真はそれを肩に担いで、村のある方へと歩き出していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオン・リエーブル
寿命の違う種族が仲良く暮らすなんて素敵じゃない!
こんな村なかなかないよ
おにーさんもエルフだからさ
この村を守るためにおにーさん頑張るぞっと!

この蟹って二つ名持ってるのかな?
あるなら【ギョロ目の歌姫】を狙うね
無ければ普通のフシガニモドキを

5匹の蟹型ゴーレムにド派手な格好させて
蟹の目の前に落とすよ
ボーカル、ベース、ギター、ドラム、キーボードで構成した
フシガニモドキの姿をしたバンドが大音量でその場に釘付け
対抗してきたらしめたもの
対バンで意識と視線をバンドゴーレムで引いたら
背後に向かわせたバチ持ったドラムゴーレムで攻撃
甲羅に衝撃を与えて気絶させて捕まえるよ

たくさん捕まえて村人に献上
楽しいお祭にしようね!



 川沿いを歩けば大蟹の群れ、そしてそれを捕まえようと動き回る少年達の姿。
 人間やエルフ、獣人――種族は違えど小言ひとつなく協力し合う彼等を見るに、やはり村の人々の仲は良いのだろう。リオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)はそんな光景を眺めて、思わず顔を綻ばせていた。
 皆幼く見えるが、おそらく彼等の中には既に何十年も生きている者、逆に数年しか生きていない者もいる。
 エルフであるリオンが五百年以上生き――永遠の二十二歳を自称しているように。
 それでも彼等は互いを対等に扱い、自分達の身の丈程もある蟹を捕らえようと身を挺して戦っているのだ。種族が違うというだけでいがみ合う者達も存在するというのに、その光景のなんと素敵なことか。

「よし、この村を守るためにおにーさん頑張るぞっと!」
 気合を入れ、リオンは蟹のいる方へと向かっていく。
 ふと目が合った少年にひらひらと手を振り、声を掛けようと口を動かした――瞬間。
「お、お兄さん、そっちそっち!」
 慌てた顔で少年がレトラ川の水面を指差す。
 リオンがくるりとそちらへ視線を移すと同時。
 ざばぁぁっ!!! と勢いよく水飛沫を上げ、深い茶色の影が飛び出してきた。

 周りにいる蟹よりも大きな、二メートル程はありそうな身体。当然と言うべきか両手の鋏もかなり大きい――が、大きいだけでなく何やらぽつぽつと穴が開いている。
 甲羅の上に伸びる目玉は奇妙にぎょろりと見開かれ、近くに居たリオンをじいっと見つめていた。
「出た……『ギョロ目の歌姫』だ!!」
 驚いた顔で狼耳の少年がそう叫ぶ。他の少年達も手を止めて騒いでいるあたり、村でも有名な個体ということだろうか。
 姿を見られ二つ名を付けられても尚、狩られる事無くあの大きさまで成長しているのならば――きっと、手強い。

「なら、あれを捕まえればお祭りも盛り上がるよね!」
 少年以上に好奇心を含んだ笑みで、リオンは五本の試験管を手に蟹へと向き直る。
 ふわりとそれを放り投げ、リオンはユーベルコード『ゴーレムメイカー』を発動させた。
「さあ、出ておいで! 仮初の命をあげるよ」
 その力が地面へと伝われば。

「――」
 ごごご、と震えた土は蟹の形をつくり、生き物のように動き出す。
 試験管の数と同じく五体、ずらりと並んだカニゴーレムは一斉に『ギョロ目の歌姫』へと――襲いかかる事無く、ジャアアン!! と胸の奥を揺らすような重低音を響かせた。
「なんだあれ……!?」
「楽器……?」
 見ていた少年達が戸惑いの声を上げる中、真ん中のカニゴーレムが片手でマイクを持ち、もう片手の鋏を振り回す。そのリズムに合わせるように後方、ドラムセットを構えたカニゴーレムがバチを四つ鳴らせば。
「――!! ――!!!!」
 或るカニはベースやギターを掻き鳴らし、また或るカニはキーボードを巧みに操って。

 ギョロ目の歌姫と呼ばれる大蟹の前で、カニバンドのゲリラライブが始まった。

 何だかノッてきた少年たちがリオンと共に合いの手を入れ始め、バンドのサウンドが激しさを増していく。
 最初は何が何やら、といった様子でそれを見ていたギョロ目の歌姫だったが、ボーカルのカニゴーレムが煽るように前に進み、空いた鋏をくいくいと動かした瞬間。
「……!!!」
 ギョロ目の歌姫は自分の鋏を口元へと当てる。ぽつぽつと開いている穴にもうひとつの鋏を重ね、ぐうっと身体を屈めた直後――オカリナのような音が辺りに響き渡った。

 その高い音に合わせ、カニゴーレム達もメロディを変えていく。ギターやベースが音を緩め、キーボードがコーラスのように歌姫の音を支え、ボーカルが盛り上げるように鋏を振り回す。
 ギョロ目の歌姫が演奏に集中し、一番伸びやかな音を鳴り響かせたその時。
 ドンッ!!! と歌姫の背で重い衝撃音が上がった。

 オカリナのような音がぱたりと止まり、ギョロ目の歌姫が倒れる。
 歌姫の後ろに居たのは、いつの間にかフェードアウトしていたドラムのカニゴーレムであった。

 わああっと少年たちが歓喜の声を上げる。ギョロ目の歌姫を倒した喜びは勿論、それを上回るような激しいビートによる興奮。既にテンションが最高潮へと達している彼等と共に、リオンは気絶したギョロ目の歌姫を村へと運び始めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
蟹パーティーですって!?なんて甘美な響きなの(ダー)
一匹1メートルもあれば沢山採れば私でも食べ放題じゃない!
「骨身を削る」を手の甲から伸ばして銛がわりにして突き刺して「捕縛」しましょうか。
一匹一匹なんてまどろっこしいから両手から一度に複数の骨刃を伸ばして纏めて突き刺して水上に持ち上げるわ。
そして即座にUCで強化した【生命力吸収】でなるべくカニの身体を傷つけずに迅速に弱らせてから網の中に放り込む。以後コレの繰り返し。

正直捕まえたらすぐにでもこの口で噛み砕いてしまいたいけど…
生で貪り食うよりあの村のパーティーで調理してもらった方が絶対に美味しいに決まってるものね
でも1つくらいなら…いや我慢我慢



 祭り――もとい、蟹パーティー。その甘美な響きに惹かれアックス&ウィザーズを訪れた猟兵メフィス・フェイスレス(継ぎ接ぎされた者達・f27547)は、浅瀬で群れをつくる件の蟹達を見つめて目を輝かせていた。
 あの甲羅を思い切り噛み砕き、採れたての新鮮な蟹肉をこの口でかぶりついたなら――そんな考えが過ぎり、メフィスの口の端から小さく涎が垂れる。しかし生で貪り喰うより、これから村で開かれるという祭りで調理されたものの方が絶対に美味しい筈だ。
 それに、個体差はあれど蟹達の大きさは一メートル前後。沢山採ればかなりの量の肉が期待出来ることだろう。
 だからこそ、今は我慢。メフィスは蟹達に向き直ると、彼等が水底へ戻ってしまう前にと早速両手をくいと動かした。
「一匹一匹なんてまどろこっしいもの、纏めて一気に捕獲よ!」
 金の瞳が日の光を返すと同時、彼女の両手が鋭い刃を生やす。巨大な銛のように伸びた骨刃を構え、メフィスは大きく一歩踏み出した。

 そのまま、呑気に水面を揺らす蟹達の元へ駆け寄る。一箇所に纏まっている五匹に狙いを定め、その全てを捕らえるべく両手を広げて。
 メフィスが一撃、強く踏み込むと同時に両腕を突き出す。
 刃は見事硬い甲羅を五つ捉え――思い切り貫いた。

 そして蟹を刺した刃ごとメフィスが腕を高く振り上げれば、ざばぁぁっ!! と水飛沫と共に蟹の身体が持ち上がった。
「――!!」
 刃に捕らわれた蟹達は激しく泡を吹き、じたばたと長い脚を動かし抵抗する。
 しかしその鋏や爪は空気ばかりを掻くのみで、自分達を刺したメフィスに反撃することは叶わなかった。

 てらてらと煌めく甲羅、甲羅のヒビから覗く肉。
 視界を覆ったそれにぐぅと腹を鳴らし、メフィスは再び目を輝かせて。
「ああ、やっぱり美味しそう……喰べてしまいたい!」
 その眼が、口が捕食者のものへと変われば――彼女のユーベルコードが起動する。

「――!! ――!!」
 直後、じたばたと暴れていた蟹は魂を吸われたようにだらりと脚を地に垂らし、ぴくりとも動かなくなってしまった。
 メフィスは予め用意していた網の中へとそれを放ると、また別の群れを狙って駆け出していく。

 出来るだけ傷つかぬよう迅速に、かつ正確に。骨刃とユーベルコードを駆使した蟹漁を続けるうち、彼女の網はいつの間にか蟹でいっぱいになっていた。

「これなら私でも食べ放題だわ……!」
 大小様々な蟹がみっしりと詰まった網を見下ろし、メフィスはこの後開かれる蟹パーティーへの期待を膨らませる。茹でても美味しいだろうし、焼いてもきっと美味しい。伝統的な祭りならば、村でひっそりと続く珍しい料理なんかもあるかもしれない。
 そう思考を巡らせていたメフィスの手が――無意識に動く。
「一つくらいなら……」
 緩んだ口がそう呟いた瞬間、メフィスははっとしてその手を引っ込めた。
「……いや我慢我慢。これから素敵な蟹パーティーだもの」
 自分に言い聞かせるように言って、蟹に伸びかけていた手を網の結び目へと動かす。

 少し乱れた外套を羽織り直し、蟹でぱんぱんの網を背に担いで。
 彼女は腹の虫をぐうぐうと鳴かせつつ、祭りが開かれる村へと歩き出すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
乗り越えたい「寿命の違い」、それは勿論――
おっと、「奴」は今ちょっと都合がつかなくてね
祭りまでには合流してくれるって言ってたし、気合入れてきますか

【バンダースナッチの影】で黒い炎に姿を変える
魔力の炎だから水辺もへっちゃらさ
影になるところがあればそこに紛れるように、足音や気配を消して移動
至近距離まで近づいたら炎の姿のまま蟹に抱きついてコンガリさ
ここで火ィ通すのマズかったら、腕だけ実体化して握ったナイフでグサリするぜ

異種族が共に暮らす村
願わずにはいられねえくらい、多くの別れがあったんだろうな
その祭り、絶対護るぜ



 穏やかな川の見える木陰で、赤い尾がふらりと揺れる。
 乗り越えたい『寿命の違い』。それを考えれば勿論、或る男の顔と名が思い浮かんだ。
 それは自分が『いつまでも傍に居たい』と想うひとだから――否、寿命の違いがいつかこの日々に終わりを告げることが判っているからだ。
 だからこそ、この祭りに二人で参加したい。そう願うジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)の隣には――ふっ、と静かな風が吹き抜けていた。

 無言で尾を揺らし俯くジャスパー。しかし手元の小さな端末に指を数度触れ、表示された数行の文字を見れば、彼の口角が僅かに上がる。
「……んじゃ、気合入れてきますか」
 呟き、浅瀬に蠢く蟹の群れを視界に捉えて。
 そっと息を吸い込んだジャスパーの躰が、黒く揺らめいた。

 ――燻り狂えるバンダースナッチとジャスパードゥルジーに近寄ってはならない。
 ただ一言、そう釘を刺すように響く言葉が彼を黒炎の姿へと変える。
 木陰から岩陰へ、音ひとつ立てずに伸びていく『バンダースナッチの影』。
 黒く燃え上がるそれは『魔力の炎』でありジャスパー自身、故に――草や小石までを灼くことは無く、更には蟹のいる水の中にまでするりと潜り込んで見せた。
 だが唯一、隠しきれない焦げたような匂いがしゅうしゅうと蟹の周りを漂う。

 しかし、彼等は不死蟹と違ってその匂いに反応して暴れ出すことは無い。
 つまりは、ただの蟹なのだ。群竜大陸にいた彼等とはまるで違う反応に、それを何となく思い知らされる。
 抜け殻に生命の書片のような価値も無ければ、食べたところで寿命などこれっぽちも伸びやしない、ただの不死蟹『もどき』。

 村の人々も、きっとそれは十分に解っている。それでも祭りが続いているということは、つまり――願わずにはいられない程、多くの別れがあったのだろう。
 手を取り合ったひと、誓い合ったひと、愛し合ったひと。
 そのそばに、ずっとずっと居たい。
 彼等の願いは、痛い程よく理解出来た。
「その祭り、絶対護るぜ」

 誰にも聞こえぬ声で呟き、彼は水も構わず突き進んで行く。
 ほんの数秒のうちに蟹の足下へと辿り着いた魔炎が大きく広がり――蟹の群れを一気に包み込んだ。
「――!?」
 驚いた蟹が、反撃のつもりか慌ててぶくぶくと泡を吐く。
 毒ですら無いそれを瞬時に焼き消しながら、魔炎は激しく轟いた。

 ほんの少し干上がった川に、こんがりと焼けた蟹が四匹並ぶ。深い茶色だった甲羅は鮮やかな赤に変わり、食欲を唆る温かな湯気を立たせていた。
 黒い魔炎は白く痩せた躰へと戻り、その手で焼き立てほかほかの蟹をひょいと持ち上げる。
 これから始まる祭りに、そしてこれから合流するであろう彼との時間に胸を踊らせつつ、ジャスパーは村のある方へと歩いて行くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『神龍教派のクレリック』

POW   :    信仰心の証明
自身の【神龍教への信仰心】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    神罰の吐息
【天から降り注ぐ聖属性の突風】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に神龍教徒のみに及ぼす加護が満ち溢れ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    神龍降臨の儀
無敵の【神龍】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。

イラスト:善治郎

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「今年は、皆で食べられないかもねぇ……」
「だって漁をする人が、今年は……」
「にいちゃん怪我してるんだ、無理はさせられないよ」
 そんな残念そうな声で村人達が見つめるのは、網に数匹詰められた小さな蟹。
 これから漁に行った男子達が数匹を持ち帰ってくるとしても、村人全員が食べるにはどうも足りない。

 ――だが。
「おーい、皆、見てこれ!!」
 蟹を捕りに出ていった少年の声。村人がそれに気づいて振り向けば、少年達に混じる見慣れぬ人々――猟兵の姿に気づく。
 そして、彼等はその『荷物』に皆目を瞬いた。
「……えっ、あんなに採れたの!?」
「これなら村の皆どころか、隣村の人達も呼べるんじゃ……」
 驚きながらも、村人はだんだんと状況を理解して目を輝かせる。

 早速準備を、と蟹を運ぼうと村人が集まってきた、その時だった。

「……あら、どうして蟹が採れているのでしょう」
「祭りは出来ないよう、人は減らした筈ですが」
「そうまでして、この村は神の決められた運命に抗うのですか」

 現れたのは十数人の少女――オブリビオン『神龍教派のクレリック』。
 彼女等は声に苛立ちを含めつつ、貼り付けたような笑みで一歩村人達へ近づいた。
「悪いことは言いません、今すぐその祭りをやめるのです」

 勿論、村人達は祭りをやめるつもりはない。黙ったままその意思を目で伝える彼等に、クレリックの集団はふっと小さく嗤った。
「ならば、村ごと潰します」
「この村自体が、神への冒涜です」
 そう告げた少女達の目が、すっと光を消した。
朱酉・逢真
どォも、かみさまです。てめぇらの神じゃねえがね。神なんざどこにだっているありふれたもんさ。龍や人間や野良猫や新聞に挟まるビラと大差ねえ。
てめぇらの神が許さんっつってんなら、俺という神が赦すだけさ。
それに…《運命》は俺の敵だ。

眷属《獣・鳥・虫》をばらまいて向かわせる。やつらにゃ耐性がある。毒をまとわせて教徒サンへ突撃さ。いうて野生動物だかンな。そこまで強かねえが、毛も血も肉も爪もぜんぶ猛毒だぜ。
んで、そいつらの影を渡って、死角から飛び出て《恙》で攻撃。また影に沈むを繰り返す。
毒や病はな、弱者の武器さ。強者を殺すのは剣じゃなく、忍び寄る毒牙だ。



 教徒の少女達は祈り始める。神の運命を否定する者へ罰を、神を信じる私達へ加護を――そう両の手を組み、狂気を混ぜた声で呟いて。
 ぐるり、ぐるりと村に重い風が回り始める中、息を呑む村人達の前へ朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が歩み出た。
「どォも、かみさまです。てめぇらの神じゃねえがね」
 その言葉に反応してか少女の一人が声を止め、逢真の顔を見る。
「……この世界に、神は私達の信じる神龍様以外に有り得ません。運命を決め、汎ゆるものに裁きを下すのはただひとり……神龍様のみです」
「へえ」
 笑みを零し、逢真は少女に言葉を返す。
「神なんざどこにだっているありふれたもんさ。龍や人間や野良猫や新聞に挟まるビラと大差ねえ」
 彼女等の云う『神龍様』とやらも、此処に立つ『病毒に戯ぶ神』も、その中の一つに過ぎない。村人達が言葉ひとつ紡げぬ中、彼がけらりとそう言ってのければ、祈りを続けていた少女達も一斉にぎろりと逢真を睨んだ。
「貴方も神龍様を冒涜するのですか。この村だけでも邪魔だというのに……」
 逢真を睨みつけたまま、声だけがくすくすと笑みを含んでいく。風がびゅるりと勢いを増し、少女達が手を空へ掲げたその時。

 ――輝きを帯びた風が降り注ぐ。
 少女達は恍惚とした顔で『神龍様』を讃え、再び祈りを捧げ始めていた。
「ひぃっ……!」
 村人達がぎゅっと目を瞑り縮こまる中――ぶわり、と無数の影が彼等を覆う。暗転した視界に死を覚悟した村人達が、衝撃も痛みもないことにゆっくりと目を開ければ。
 無数の虫に鳥――逢真の眷属達がその躰を広げ、輝く風を弾き返すように飛び回っていた。

「……神罰を、あんなもので退けるのですか……!?」
「ああ、何て……何てこと! 」
 少女達が口々に憤りを言葉にする中。
 たんっ、と軽い足音を立てた『獣』達が、細く白い彼女等の脚へと噛み付いた。

 彼等も逢真の――神の眷属。
 その牙は毒を纏い、少女の身体をじわりじわりと蝕んでいく。
「きゃあっ!?」
 甲高い悲鳴を上げ、少女は慌てて獣を蹴り飛ばそうとする。
 しかし獣は強く噛み付いたままその顎を緩めない。更には空を飛び回っていた『虫』や『鳥』までもが少女達の頭や腕へ纏わりつき、獣と同じく神の猛毒を以て襲いかかった。
「嫌ッ……! 離れなさい!!」
「神龍様を信じる私達を……こんな……!!」
 虫への嫌悪、毒の痛み。ぶるぶると震える少女の周りへ、いつの間にか姿を消していた逢真の声が響く。
「てめぇらの神が許さんっつってんなら、俺という神が赦すだけさ。それに……」
 一体どこから、と少女が虫や鳥の隙間から目を凝らす中。

 ふらり。一頭の獣の影から、『恙』を手にした逢真が飛び出す。
「《運命》は俺の敵だ」
「――、ぐっ……!!」
 死角からの一撃を喰らった少女が、遂にばたりとその場に倒れ伏した。
 逢真は再び獣や鳥の影へと潜み、また次の少女の背を襲っていく。

 ――毒や病は弱者の武器だ。しかしそれを侮る強者こそ、強靭な剣や拳ではなく忍び寄る毒牙に命を奪われる。神の加護を受け、神罰を味方に付けたと傲っていた少女達は正に、影から襲いかかる其れに抵抗する術もなく貫かれていった。

 猛毒と病に侵され息絶えた姿は、神の救いや幸せなどとは程遠く――それこそ、神を冒涜し祟られた者の末路のようだ。
 村人達は周囲を飛び回る虫や鳥、そして『かみさま』と名乗りそれらを操っていた逢真に僅かな畏怖を抱きつつも、自分達を救ってくれた彼等を讃え、礼を述べるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リオン・リエーブル
自分たちだけに都合がいい世界がお望みなら
教団員だけで傷を舐め合う閉じた世界でも作ってればいいよ
どこぞのエルフの森みたいにさ!

という訳で多様性を重んじる村を守るために頑張ろう!
さっきの蟹ゴーレムは続投
蟹対龍の頂上決戦といこうじゃないか
ドラムはバチで、キーボードは鍵盤飛ばして、ベースは弦を鋼糸みたいにしてギターはギター本体で殴り掛かり!
ボーカルは歌でバフを掛けるよ
おにーさんはスモークが出る試験管で援護
全力魔法、鎧無視攻撃、2回攻撃で派手に演出
お祭りの前祝いだ!
最後は金銀のテープを放ってフィニッシュ!

君たちが何しようと
村人もおにーさん達も祭りをやる気満々なんだ
マナーのなってないお客様はお還り願おうね



 村人に近づき、少女は狂気を含んだ笑みで手を差し伸べる。
「今からでも遅くありません。神龍様を信じ、私達と共に祈れば、死した後も皆楽園で幸せに過ごせるのですよ」
 その言葉に村人は首を横に振った。
 死後も、つまり永遠に大切な人と共にいられるというのなら。それなら神龍様とやらに祈るほうが、何の効力もない蟹を必死に捕まえて食べるより何倍も簡単で救いがあるかもしれない――が。
「あんたらみたいに、信じない人を邪魔だって攻撃しなきゃならんのなら無理だね」
「儂らが何を信じようと自由じゃ。そのやり方はこの村に合わん」

 そうですか、と少女がひとり低い声で呟き、そっと両の手を組む。彼女等の小さな口が祈りの言葉を紡ごうと動き出した瞬間、ずんっ、と地面に重い衝撃が伝った。
「自分たちだけに都合がいい世界がお望みなら、教団員だけで傷を舐め合う閉じた世界でも作ってればいいよ……どこぞのエルフの森みたいにさ!」
 何だ何だと村人が目を見開く中、縮こまっていた少年が何か思い出したようにあっと声を上げる。彼等の前に立っていたのは五匹の蟹――『ギョロ目の歌姫』と対峙した蟹ゴーレム達だった。
 ――ならば、彼等の中心に立つ緑髪のエルフは。

「さあ、蟹対龍の頂上決戦といこうじゃないか」
 蟹と共に歌姫を狩った猟兵、リオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)。彼は後ろでぶんぶんと尻尾を振り応援する狼耳の少年に小さく頷いて、懐から数本の試験管を取り出し構えた。

「蟹如きが、神龍様と対等だとでも?」
 祈りを止めた少女が苛立ったような、蔑むような目でリオンと蟹ゴーレム達を睨む。
 ああ、なんて罰当たりな。そう鼻で笑うように呟いた少女達は天を見上げ、そして小さな手を真上へと伸ばした。
「神龍様、この愚か者共へ罰を!」
 その声が響いた瞬間、空がぐるりと渦巻くように突風を吹かせる。
 リオンは周囲の蟹ゴーレムに指示を送り、自らも手元の試験管を高く放り投げた。
「君たちが何しようと、村人もおにーさん達も祭りをやる気満々なんだ。マナーのなってないお客様はお還り願おうね!」

「ほざいていられるのも今のうちです……!」
 風が輝きを纏い、リオンや蟹達目掛けて勢いよく降り注ぐ。しかし蟹達はドラムのバチやギターを振り回してそれを弾き返し、更にはキーボードの鍵盤を飛ばして少女達本体へと襲いかかった。
「お祭りの前祝いだ、盛り上げていくよ!」
 ドンッ!! と色とりどりのスモークを放ち、リオンはボーカルの蟹に呼びかける。蟹は鋏でしっかりとマイクを掴むと、他のメンバーを支えるように力強く歌い出した。
 すると少女達の祈りが妨げられたか、風が段々と勢いを弱めていく。体勢を立て直そうとする少女達の周囲へ、すかさずベースの弦が鋼糸のようにひゅんひゅんと駆け巡った。
「小癪なっ……!!」
 祈りどころか回避の余裕すら奪われていく彼女達へ、神罰を防ぎきったギターやドラムの蟹が直接襲いかかる。一メートルの蟹が繰り出す打撃は当然重く、少女を守る神の加護諸共その身を地面へと叩きつけた。

 その一撃一撃に合わせ、リオンは試験管からのスモークで蟹を援護しつつ戦闘を盛り上げていく。
 ――後方の村人が歓声を上げ、まるでヒーローショーのような雰囲気へと変わってきた頃。
 劣勢の少女達目掛けて蟹が楽器を振り上げた直後を狙い、リオンは手元の試験管を素早く持ち替えた。

 ――ズガァァンッ!!!!
 蟹の打撃が少女達へクリーンヒットし、その息の根を止めると同時。
 きらきらと輝く金銀のテープがスモークを縫うように高く広がり、村人達の目を奪う。
 蟹達の歌声や楽器の音色、そしてそれまでの盛り上がりもあってか、村人たちは立ち上がって声を上げ、そして割れんばかりの拍手を響かせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
めんッどくせえ奴が来なさったな、全く!!
その神とやらのありがた~~い教えをご教授願いたいもんだぜ
鼻で笑ってやるからよ

九死殺戮刃で手にしたナイフを増やす
刃のうちの一本は俺自身を傷付ける
限りある命は大事に使わないとネ??
過去からうまれた奴に云っても無駄かも知れねえが

あんたの攻撃は外しても効果があるのかい?
んじゃ「外させねえ」
もし共闘してくれる奴がいたら尚更だ
手を広げて突風を受け切ってやるぜ
俺の【激痛耐性】舐めんじゃねェぞ

受け切ったらもっと深い傷を八つの刃で刻んでやる
俺ァ神の教えにありがちな死後の世界なんて微塵も信じてねーんでなァ
現世で幸せにならねえと意味がねーんだよ



 未だ首を縦に振らない村人達に、教徒の少女達が怒りを露わにする。しかし、その中心に立つ少女は何やら恍惚として口を動かしていた。
「ああ、何て、何て愚かな人々でしょう……! きっと彼等のような者達の消滅を、神龍様も望んでおられますね!」
 だから一刻も早く、彼等を神の為に殺さなくては。狂ったような声でそうぶつぶつと呟き、少女は周囲の教徒を率いて村人の方へと歩き出していく。

 丸腰の村人に向かって魔術を起動しようとする少女達の前へ――すたん、と。
「めんッどくせえ奴が来なさったな、全く!!」
 彼女等が神と信じる竜の如く、そして神とは対極にある悪魔の如く、尖る赤角を生やした男がひとり溜め息混じりに躍り出る。
 少女の目を奪うように赤く透ける翼を広げ、ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は挑発するように嗤って告げた。
「その神とやらのありがた~~い教えをご教授願いたいもんだぜ」
 皮肉めいた言葉にギリ、と歯を軋らせ、教徒の少女は皆揃ってジャスパーを睨む。
 神罰を、神罰をと口々に繰り返し始める彼女等の目には最早、怯え縮こまる村人達の姿はない。その視線と矛先を独り占めしたジャスパーはくるりとナイフを取り出し、ユーベルコード『九死殺戮刃』を発動させた。

 ばらり、彼の手元から分かれるように刃の数が増える。
 輝く瞳に笑みを含ませ、鋭い歯を覗かせた彼は――右手に握ったままのナイフで、自らの左腕を掻っ捌いた。
「!?」
「限りある命は大事に使わないとネ?? 過去からうまれた奴に云っても無駄かも知れねえが」
 それは――根拠も無い祭りに縋ってでも伸ばしたい寿命、その限られた時間をユーベルコードに侵されぬよう抑える為の傷。そうとは知らぬ少女達はジャスパーの言葉の意味を理解するより早く、混乱と驚愕で思考を染める。
「一体、何を……!?」
 その言葉と同時、少女の祈りが、神を讃える声が、止まった。

 直後、空で渦巻く風がジャスパーに狙いを定める前に、勢いよく降下を始める。
「しまっ……」
「いえ、これで良いのです。これで神龍様の加護は私達に!!」
「――んじゃ『外させねえ』」
 地面へとただ降り注ごうとした突風目掛け、瞬時にジャスパーが駆ける。その行動と言葉に少女達が視線を動かす前に、彼は風の吹く地点の中心へと立ち両手を広げていた。
「まさか、その身ですべて抑え込む気ですか? ……なんと愚かな!」
 そう嘲り笑う少女の表情は、みるみる内に凍りついた。

 輝き轟く『神罰』の風を正面から受けた躰に、凄まじい痛みが奔る。
 だが、その光が身を灼こうとすればする程。自ら抉った左腕の傷が痛みを増す程に。
「ッ、はっ……俺の耐性舐めんじゃねェぞ」
 身体の芯まで響くような痛みに僅かに頬を染めて、ジャスパーは風を受け切る。
 村人のひとりすら巻き込まず、神龍の加護も発動させずに虚しく散った風。その漂う残滓に少女達が呆然とする中、彼はナイフを握り直して駆け出した。

 増えた残り八つの刃を携え、きらりとニ色の混じる瞳を光らせて。
「俺ァ、神の教えにありがちな死後の世界なんて微塵も信じてねーんでなァ」
「何と勿体無い。信じれば、楽園へ行けると言うのに」
 そう憐れむように呟かれた教徒の言葉を――悪魔は小さく鼻で笑う。

「現世で幸せにならねえと意味がねーんだよ」
 ひゅ、と甲高く少女の息が鳴ると同時。
 鮮血を舞わせた教徒の少女達は、静かに祈りを捧げながら骸の海へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
ふーん、前菜がノコノコやってきた訳
食事の直前に水差されるのが一番ムカつくのよね
しかも人減らし?辛気くさそうな奴がいると食事も不味くなるわ
穏やかに団欒も出来なくなるじゃない

背後から気配を殺して忍び寄って指定UCを使いながら奇襲攻撃を仕掛けるわ
手の内をすっぱ抜くついでに私も神龍の加護とやらの恩恵にあやからせてもらおうかしら
(忍び足/串刺し/生命力吸収/吸血/暗殺)
敵を認識してから行動できなければ信仰の為もクソもないでしょ?
心理的な動揺を与える事で対応を遅らせて連携を乱す事を狙うわ
(恐怖を与える)

卑怯?喰い合いに卑怯もなにもないわよ
先に姑息なマネでこの村の人達を傷物にしたのはアンタらでしょ?



「ふーん、前菜がノコノコやってきた訳」
 村人達に入信を迫る教徒の少女達を視界に捉え、メフィス・フェイスレス(継ぎ接ぎされた者達・f27547)は身を潜めたまま呟く。
 これから楽しい蟹パーティーだというのに。大量に捕らえた蟹を我慢し、つまみ食いの一口すら堪え、調理された蟹肉で腹を満たす瞬間を待ち侘びていたというのに。
「食事の直前に水差されるのが一番ムカつくのよね」
 眉を顰め、メフィスはじっと教徒のいる方を睨む。目を凝らせば彼女等に対峙する村人達の中に数人、ぐるぐると包帯を巻いて杖をつく若い男の姿があった。
 ――祭りは出来ないよう、人は減らした筈ですが。
 教徒のひとりが発していた言葉を思い出せば、メフィスは更に表情を険しくして。
「辛気くさそうな奴がいると食事も不味くなるわ。穏やかに団欒も出来なくなるじゃない」
 これ以上、折角の蟹パーティーを台無しにされる訳にはいかない。もし彼女等を野放しにして死人など出そうものなら、祭りを行う空気になどならないだろう。
 じりじりと村人達へ迫っていく教徒に狙いを定めつつ、メフィスはユーベルコードを発動してそっと前へ踏み出した。

「……さあ、もう一度問います。神龍様を信じ、私達と共に来る気はありませんか?」
 狂気的な笑みを浮かべ、手を差し伸べる教徒の少女達。静かに首を振る村人にあらあら、と残念そうな声を漏らすと、彼女等は溜め息をついてその手を己の胸の前ですっと組んだ。
「それでは貴方達は幸せになれません。残念ですが、来世で幸せにおなりなさい」
 そう言って教徒達はくすくすと笑い、村人に向かって魔術詠唱を始める。歪な光が周囲を駆け巡り、村人達に襲いかかろうとした瞬間――呪文を紡いでいた少女のひとりが、突如その声をぴたりと止めた。

「なっ、……?」
 少女はそのまま、生気を失って倒れてしまう。術式が崩れたことで異変に気づいた他の教徒が周りを見渡す中、その死角へと潜り込んでいたメフィスが更に別の少女へと一撃を叩き込んだ。
「ああ、神龍様、私達をお守りください!!」
「早く反撃を……っ!!」
 無我夢中で祈り始める者、焦りを露わにして抵抗を試みる者。そんな教徒達の間をメフィスは音も無く駆け、骨刃や自身の牙で的確に急所を抉り抜いていく。
 屍と化した少女の血の色と匂いに、『喰べてしまいたい』――そんな感情を膨らせ、小さく腹を鳴らして。彼女はかぶりを振って其れを振り払いつつ、刃を構え直した。

 訳も分からぬまま次々に仲間が斃れていくその中心で、残る少女がひとり息を荒げて叫ぶ。
「ど、どこです……どこに居るのです!! 姿を現しなさい、卑怯者!!」
「卑怯? 喰い合いに卑怯もなにもないわよ」
 その声に少女が振り向く前に、メフィスは素早く骨刃で喉を貫いた。

「先に姑息なマネでこの村の人達を傷物にしたのはアンタらでしょ?」
 メフィスは最後のひとりを骸の海へと還すと、ぐうと再び腹を鳴らして息をつく。
 村人達の拍手喝采を浴びながら、彼女は来たる蟹パーティーに胸を踊らせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『夜市にて』

POW   :    店を見て回り、買い物をする

SPD   :    料理や酒、甘味など食事を楽しむ

WIZ   :    ゆったり静かに星空や景観を愛でる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 すっかり日の落ちた空が深い藍に染まる。
 月明かりだけがぼんやりと白く照らす筈の村は今日、色とりどりの光で彩られていた。

 暖かな色に囲まれた台の上で、人間、エルフ、そして獣人の男が声を上げる。
「さあ皆、ようやく祭りだ!」
「蟹が捕れなかったり、変な奴らが来たり……まあ色々あったが、無事に開催出来た」
「村を、この祭りを救ってくれた人々に感謝を!」
 おおー、と村人が応えれば、更に竜人と妖精の女性が台ヘ立って。
「それではこれより、不死蟹祭りを始める!」
「不死蟹じゃあなくたって、少しでも元気になって、永く皆で生きよう!」

 竜人の女性が息を大きく吸った直後、一瞬だけ空気が張り詰める。
「――これまでを生きた者へ、これからを生きる者へ、皆等しく祝福を!」
 彼女はそう告げて大きな蟹の殻を掲げ、乾杯! と澄んだ声を響かせた。
 村人達が各々のグラスやジョッキ、料理の器を掲げて繰り返し、同時に見事な花火が上がれば。

 ――皆が待ちに待った祭りが、始まった。



 食べたり飲んだり、踊ったり歌ったり。
 村はあちこちで香ばしい湯気や楽しげな音を立てながら、次第に賑やかさを増していく。
 串焼きや謎の蟹型の菓子、更には蟹のお面や蟹はさみを模した風船といった『祭り』らしい出店もあるようだ。どうやら隣村や交流のある村の人も呼んだらしく、出店の中には独特な料理やグッズも売られている。
 一番目を引くのは――先程乾杯の行われた台の上、ぐつぐつと煮える大鍋。
 蟹肉と殻をこれでもかと入れたそれは芳醇な出汁の香りを漂わせ、次々器に盛られて大きな台へ並べられていく。ふくよかなエルフの女性達は通る人々を見かけるや否や、その蟹鍋を差し出して『食べていきな!』と声をかけた。

 祭りはまだまだ始まったばかり。猟兵も村を回り、祭りを楽しもう。
リオン・リエーブル
さあお楽しみのお祭りだ!
せっかくだから蟹ゴーレムさんは続投
特設舞台作ってBGM係と洒落込もう!
村人たちと一緒に歌って踊って盛り上げるよ!
一通り盛上げたら他の人にバトンタッチ
蟹ゴーレムさんは置いてくから好きな曲リクエストしてね!

お次はグルメ
まずは蟹鍋!
歌姫の目玉はシュールだね
後はこの村の名物を一通り
お土産も色々買って経済を回しとこう
狼耳の少年ともお喋り
この村は好き?なら良かった
この村を本当に守るのはおにーさん達じゃなくて君たちだからね
頑張ってね

蟹ゴーレムはこの村に進呈
年に一回の起動なら50年は保つよ
バトルしたら寿命は短くなるけど
いざという時は使ってね
いらなかったら山の中に放置しといて
土に還るから



 ようやく始まった村祭り。
 人々は蟹料理を味わいながら、村のあちこちに並ぶ屋台や催し物を楽しもうと賑やかに行き交う。
 それを盛り上げるべく響く音は、伝統的な楽器の音――だけではない。簡素な笛や太鼓で構成されていた祭り囃子は今、重厚にして刺激的なバンドサウンドを加えて盛大に奏でられていた。
 村に設けられた舞台の上、演奏するのはリオン・リエーブル(おとぼけ錬金術師・f21392)がユーベルコードによって喚び出した蟹ゴーレム達。
 蟹狩りから曲者退治、更には祭りの盛り上げ役までこなすその万能さに、始めに出会った漁の少年達が憧れの視線を向けていた。
 今までとは段違いの激しさだが、その旋律は村に伝わる伝統的なものから殆ど変わっていない。それにここは異種族が共に暮らす村だ。他者に害をなさない限り、新しいものや文化には寛容なのだろう。故に蟹の演奏を止める者、苦言を呈すものは誰一人として現れなかった。

 盛り上がった人々が合いの手を入れ、それぞれの姿形に合った楽器を持ち出して加わっていく中、リオンは蟹達を彼等に預けて舞台からひらりと降りる。
 丁度祭り囃子も一区切りしたタイミングで、彼は舞台に残る人々に向けて笑顔で手を振った。
「蟹ゴーレムさんは置いてくから、好きな曲リクエストしてね!」
 そう告げれば、数秒の静寂の後。
 あれを聞いてみたい、あれを演奏してみたい――簡素な楽器では中々奏でられなかったであろう楽譜を村人たちが次々に取り出し、蟹達の前に掲げてみせる。
 蟹は頷くように各々の楽器を一度鳴らすと、村人達のリクエストに応えて様々な曲を奏でていった。



 舞台から離れたリオンは村の中心、ぐつぐつと煮える大きな蟹鍋の元へと歩いていく。
 興味深そうに彼が鍋へ近づけば、鍋をかき混ぜていたドワーフの女性がにっと笑って声を掛ける。
「そこの兄さん、食べていきなよ!」
 ずい、と彼女が差し出したのはたっぷりの蟹鍋――に黒く大きな目玉が乗った、ある意味ボリューム満点の一皿。
 一メートル程の体躯といえど、この目玉はフシカニモドキのものにしてはかなり大きい。しかしリオンはその目玉、もといその目玉を持っていたであろう生物に心当たりがあった。
「歌姫の目玉かな? シュールだね」
「その通り! まあ冗談はさておき、村にずーっと伝わる料理なんだ。是非食べてって」
 そう言ってドワーフの女性は目玉入りの皿を下げ、手頃な器に丁度良い量が乗ったものをリオンへ差し出す。ぽちゃんと鍋へ戻された目玉は煮える汁の中で踊り、これまた何ともシュールな姿を見せていた。

 甘じょっぱそうな香りの湯気を吸い込みつつ、リオンはそれを受け取って礼を述べる。
 道の端で立ち止まり鍋料理を味わいながら、彼は道に並ぶ出店を見遣った。
 店先で灯りに照らされているのは子供が喜びそうなお面、蟹を模した菓子やパン、この土地で取れる作物や鉱物など。隣村の人も訪れているからだろうか、蟹をモチーフにした飾りや置物など土産になりそうなものも多く売られていた。
 鍋を食べ終えたリオンは器を近くのごみ箱へ落とすと、出店へ近づきそっと財布を取り出す。
 村人のおすすめや名物を訊いて一通りの品物を買い揃え、彼は一旦店の並ぶ道から外れた。

「あっ、蟹使いのお兄さん!」
 ふいにそんな不思議なあだ名でリオンに呼びかけ近づいてきたのは、見覚えのある狼耳の少年。ギョロ目の歌姫を狩ったとき、そしてオブリビオンが現れたときにも顔を合わせた彼だ。
「お、また会ったね」
 尻尾をぶんぶん振って笑う少年にリオンも笑顔で返す。

 向こうでお面を見せ合う他の人間やエルフの少年達にもちらと目を向けつつ、リオンは目線を合わせるようにぐっと屈んで問いかけた。
「ねえ、この村は好き?」
「もちろん!」
「うん、それなら良かった」
 元気な即答に頷き、リオンはぽんと少年の肩に手を置いて。
「この村を本当に守るのは、おにーさん達じゃなくて君たちだからね」
「……うん。お兄さんやあの蟹さんたちみたいに、ぼくも強くなって村を守るよ!」
「頑張ってね」
 威勢よく言い切った少年に目を合わせて言葉を掛け、リオンはゆっくりと姿勢を正す。

 そして彼は遠くで演奏を終えようとしている蟹ゴーレム達の方を指し、近くにいた少年達を集めて話し始めた。
「あの蟹さん達は村にあげるね。年に一回起こすくらいなら五十年は保つよ」
 バトルしたら寿命は短くなるけど、と付け加えて。それでも数十年は村の盛り上げ役、そしていざという時村を守る助けになるのだと理解すれば、少年達の間でおおー、と歓声が上がる。
「もしいらなかったら山の中に放置しといて。土に還るから」
 そうリオンが説明を終えると、狼耳の少年は小さく首を振って口を開いた。
「きっといらなくならないよ。蟹さんも獣人もドラゴンも、お兄さんとおなじエルフも、助け合ったらみんな村の仲間だから。絶対に、皆で大切にするよ」
 少年がまっすぐに言い切れば、周囲の少年達もこくこくと頷き同意を示す。

 遠くで激しい旋律が止まり、様々な声や拍手が揃う中。
 リオンは柔らかな笑顔を浮かべながら、彼等に別れを告げて帰路へつくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
余計な横槍が入りはしたけど、これでようやく食事にありつけるわね!
食事会場に直行!あとは食べ物系の出店があるなら見て回りたいわ
食い倒れ上等!もてはやしてサービスなさい!

蟹鍋!焼き蟹!蟹グラタン!蟹雑炊!カニコロッケ!
あと郷土料理があるならぜひ食べさせて貰いましょう!

さすがモドキとはいえ不死蟹、殻やハサミにまで旨味がしみこんでて美味いわ(バリバリバリ)

みんなが笑っている。一点の曇りもない星空の下で
この世界の空は夜でもこんなに綺麗なのねぇ
いつかきっと、私のいた世界でも、こんな……ちょっと辛気くさくなったわ
笑って喰わなきゃみんなで食卓を囲む食事は楽しめないものね

おかわりよ!じゃんじゃん持ってきなさい!



「余計な横槍が入りはしたけど、これでようやく食事にありつけるわね!」
 祭りの開催宣言と同時、蟹鍋の前でぐぅうと大きく腹の虫を鳴かせて。
 メフィス・フェイスレス(継ぎ接ぎされた者達・f27547)は真っ先に会場の中心へと辿り着くと、村人達が用意した料理の数々に目を輝かせていた。
「ああ、どれも美味しそう……!」
 甘じょっぱい香りをもんわりと漂わせる大きな蟹鍋、熱され真っ赤になった甲羅の中でじゅわじゅわとエキスが煮立つ焼き蟹。これでもかという量の蟹肉や村の野菜が混ぜられた雑炊も、温かな湯気を立たせて空っぽの胃を刺激する。
 蟹の甲羅の中にたっぷりと具材を詰め込んだ蟹グラタン、大きな鋏ごと揚げた蟹コロッケ、更には嗅ぎ慣れない不思議な香りの鍋などもあり、同じ『蟹料理』でもかなりのバリエーションがあるようだった。

 そんな料理の数々を端から端まで味わっていくメフィスの食べっぷりに、それを差し出す村人達の気分も高揚していく。器に倍の量をこんもりと盛ってみたり、貴重な部位を山のように積み上げてみたり――彼女が蟹漁やオブリビオン退治で活躍したこともあってか、料理はサービスたっぷりの仕様で次々にメフィスの元へ運ばれてきた。
「大丈夫? お腹がはち切れても責任取れないよー?」
 食事を運びながらそうからかうように告げた妖精に、メフィスは食事を続けながら胸を張って。
「食い倒れ上等! まだまだ食べるわよ!!」
 威勢良く言い切って大きな蟹肉を頬張れば、その調子だ、いいぞいいぞと村人達が笑顔を見せて声を上げる。
 メフィスのいる場所が催し物のひとつのように観客を集め始める中、その人混みをかき分けて歩いてくる大男の姿があった。
「おっ、来た来た!」
「やっぱあれ食べないとな!」
 村人達が何やら頷き合っていると、大男は一メートルはありそうな大皿をずどんとメフィスの前へ置く。
「こちら、この村伝統の料理っす。折角ですし丸ごとどうぞ」
「ええ、ぜひ食べさせて貰うわ!」
 そう言ってメフィスが手を伸ばすのは、フシカニモドキを丸ごと煮込んだ豪快な料理。村の人々はそれを切り分けて食べているようだが――メフィスは言われた通り、丸ごと食べる勢いで口を開けた。
「……えっ」

 大男が目を瞬くと同時――バリッ!! と思い切り甲羅を噛み砕き、メフィスは甲羅ごと蟹肉を口の中へ収める。
「さすがモドキとはいえ不死蟹、殻やハサミにまで旨味が染み込んでて美味いわ」
 煮込まれているとはいえ硬い甲羅をまるで揚げ物の衣のようにそのまま喰らうメフィス。村人たちは一瞬ざわっと驚いた様子であったが、更に一口、二口と食べ進めていく彼女の姿を見るうちに再び盛り上がってきたようだった。

 何せ、不死蟹を食べて長く生きようという祭りだ。
 蟹を豪快かつ大量に食べる彼女の姿は、この祭りに於いて最大の縁起物なのだろう。
「俺たちも挑戦してみるか?」
「いやいや、口怪我しちゃうっすよ」
「あのくらい食べればもっと長生き出来るのかねぇ」
「よし、私達ももっと食べよー!」
 村人達はそう言ってまた料理を運び、けらけらと冗談を交わしていた。

 ――みんなが笑っている。一点の曇りもない星空の下で。
「この世界の空は夜でもこんなに綺麗なのねぇ」
 メフィスがふと手を止めて見上げれば、暖色の灯りや祭り囃子、騒ぐ村人達の声が思考からすうっと退けていく。
 澄んだ藍の空の静けさに思わず、ぽつりと言葉が溢れた。
「いつかきっと、私のいた世界でも、こんな……」
 そう、目を細めかけた瞬間。

「そら、次のメニューは蟹パフェじゃぞー!!」
 どん、かちゃん、と食器の置かれる音でメフィスの思考が祭りへと引き戻される。たっぷりの蟹肉に真っ白なクリームがどんと乗った謎のメニューで村人たちが笑う中、メフィスはスプーンを勢いよく掴んで息を吸い込んだ。
「笑って喰わなきゃみんなで食卓を囲む食事は楽しめないものね」
 意気込んで一口、メフィスは蟹パフェを頬張る。生クリームのように見えたそれはマヨネーズに似た味で、パフェというよりはシーフードサラダに近い料理であった。

 あっという間にそれも食べきると、メフィスは更に村人を呼び止めて。
「おかわりよ! じゃんじゃん持ってきなさい!」
 そう言って空になった器を見せれば、村人達は未だ衰えない彼女の食欲に応えるべく料理の量や種類を増やしていく。
 メフィスは運ばれてくる蟹料理を隅から隅まで一つ残らず平らげ、村祭り――もとい蟹パーティーを心ゆくまで堪能するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
祝福を。これまでを生きた者へ。これからを生きる者へ。
生まれ落ち生きる、すべての命へ。
死して再び生の時を待つ、すべての魂へ。
心からの愛と祝福を!

いい祭りだ。俺は病毒の塊だから此岸のメシぁ食えねえし、酒も飲めなきゃ、村のやつらと肩組むこともできねえが。
それでも心の底から、この祭りを祝っているぜ。鳥に乗って空の上から瓢箪でカンパイさ。毒酒だからひとりで飲むよ。
そうさなァ、ひとつ宴会芸でも。
幻影属性の雨だ。水のかわりに虹色のきらきらした光を空から注ごう。とおりすがりのかみさまから、ちょいとしたお祝いさ。
この祭りがずぅっと続くようにカンパイ! もしかしたら今日の夢で懐かしいヒトに会えるかもしれねえぜ。



 賑やかな祭りの会場、その上空。
 村人や猟兵達が様々な蟹料理を楽しみ、歌い踊って笑う中。

 朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は鳥の背でひとり夜風に当たりながら、賑やかな地上を静かに見下ろしていた。
「いい祭りだ」
 そう呟くも、しかし彼はあの暖色の灯りの下へ向かわない。
 彼は病毒の塊であるが故に、皆が心待ちにしていた蟹料理――此岸の食事を口にすることも、皆が次々に注いでいる酒を呑むことも、村人達と肩を組むことも出来ないのだ。
 その手に持った瓢箪の中身も、彼等と共には呑めない毒酒。真下で響いた乾杯の音頭に合わせ、逢真はゆらりと其れを持ち上げ傾けた。

 ――それでも心の底から、この祭りを祝っているぜ。
 彼が心で呟けば、その思いが通じたか否か。
 村人達は祭り囃子の間に僅かな羽音を捉え、ふと暗い夜空を見上げる。
 彼等が見たのは、星々の瞬く藍の中をすうっと飛んでいく大きな鳥の姿だった。
「何だ、あの鳥。ここらじゃ見ないな」
「祭りを見に来たのかねぇ」
 その背の人影が――そこに居るのが病毒の塊であることも、病と毒を以てかのオブリビオンを退けた者であることにも気づかぬまま、彼等はまるで吉兆の印でも見たかのように笑顔で手を振りだす。そうして彼等の間で話が広がれば、恐れる者も怯える者も現れないまま村人の視線は段々と逢真の方へと向いていった。

 翼の間からそれを眺め、逢真はもう一度瓢箪を傾けて。
「そうさなァ、ひとつ宴会芸でも」
 空いた手を掲げ、逢真は冷えた空気へ指先を触れる。
 そしてくるり、鳥が翼を傾けてゆっくりと村の上を回りだせば。

 ――祝福を。
 これまでを生きた者へ。これからを生きる者へ。
 生まれ落ち生きる、すべての命へ。
 死して再び生の時を待つ、すべての魂へ。
 心からの愛と祝福を!

 つうっと彼の指先が描いた弧から、きらきらとした虹色の光が浮かぶ。
 光は風にのって煌めきながら、村のあちこちへと降り注いだ。
「とおりすがりのかみさまから、ちょいとしたお祝いさ」
 それはひとを蝕み滅ぼす毒ではなく、ひとの心を震わせ癒やす幻影の雨。
 この祭りを祝うかみさまからの、ささやかな贈り物だった。

「すごい! きれい!!」
「あれ、火じゃない……?」
 流星のように夜空を彩り、そして目の前に落ちては弾けて輝く光。一瞬村人達の一部は攻撃かと身構えたようだが、熱も衝撃もなくぱっと消えるそれに目を瞬いて安堵の息を漏らしていた。
 子供達は目を輝かせて触ろう、捕まえようと駆け回り、大人びて見える者や長く生きているであろう人々も思わずそれを目で追っていく。

 不漁やオブリビオンの襲撃といった苦難を乗り越え、皆が存分に腹を満たし、こんな幻想的な光景にまで出逢えたこの夜を――嗚呼、あのひとと一緒に過ごせていたら。
 歓声の上がる中でそんな事を思い浮かべた村人達はふと、その潤んだ視界に懐かしい影を見ていた。
 ――姿形や歩む時が違えど、この村で出会い、共に歩もうと決めたひとの姿を。
「……!!」
 皆が子供達と同じように手を伸ばすも、それは光と共に空へ溶けて消えてしまう。
 しかし村人達はその一瞬の幻に穏やかな笑顔を浮かべると、薄く浮かんだ涙を拭い改めて空を見上げた。

 ――そして。
「この祭りがずぅっと続くように、カンパイ!」
 逢真は光を一斉に放ち、瓢箪を高く掲げてそう告げる。
 一際大きく、大輪の花が咲うように光が舞えば、人々の視線は揃って空へと向いた。
 村人達はその光景を目に焼き付けるように眺めながら、上空の彼へと感謝を込めて料理や酒の入った器を掲げる。そして『乾杯!』と盛大に声を上げ、希望に満ちた目で鳥の影を見送るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【邪蛸】
あはは、パウル見ろよ蟹型の菓子パンが売ってるぜ
蟹のお面までお揃いで買ってガキみたいにはしゃぐ
買い食いしたって大丈夫、めいっぱい働いたし(ふふん
俺が獲ってきた蟹もある筈だぜ、いっぱい食べような

鍋の器を貰ったら二人でゆっくり食べれる場所を探してぇな
フシカニモドキなんて名前に思い出すのは…
なあ、パウル
あの時寿命の差が直接悲劇に通じるわけじゃないって、云ってくれたよな
あれすげえ嬉しかった
きっと俺
あの言葉があったから、諦めずに済んだんだ

なァんてしんみりは折角の祭りにゃ似合わねェな
ほらいっぱい食えよ
おかわりも貰いにいこーぜ

手を引きつつ
この手の温かさに恥じねえように
これからも共に歩んで行けたらと思う


パウル・ブラフマン
【邪蛸】
Glanzを駐車後、ジャスパーと合流するよ☆
オシゴトお疲れ様!
ボーダーレスな雰囲気で、とっても素敵な村だね♪

ねぇジャスパー、手…繋いでもイイかな?
蟹のお面もお揃いで付けちゃお☆
蟹の形のお菓子パン?エイツアの皆にお土産にできそだね♪
うんっ、ジャスパーがGETした蟹食べた~い!

鍋の器を手に、ふたりでまったり出来る場所へ。

…憶えててくれたの?嬉しいな。
キミが頑張って手に入れた蟹は
オレにとっては『モドキ』じゃない。
不死の妙薬じゃなくていい。
この一杯の温かさに
価値を見出す人生をキミと歩みたいんだ。

あっ…夢中で食べてたら
あっという間になくなっちゃったね。
ジャスパーと幸せのおかわり、甘えても…いい?



 祭りで賑わう村の端にて、エンジンの音が低く唸る。
 暗がりに映える蒼の光に通りすがりの村人が思わず目を止める中、そのバイクに跨っていた男は向かってくる人影に気づいてぱっと顔を上げた。
「ジャスパー、オシゴトお疲れ様!」
 慣れた動作で『Glanz』を木陰に停め、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)が手を振りながらそう呼び掛ける。
 その視線の先の人影――愛する彼との合流を待ち侘びていたジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は右手をひらひらと振り返し、早足で歩いてくるパウルを笑顔で迎えた。
「行こう、パウル。出てる料理の中に俺が獲ってきた蟹もある筈だぜ」
「うんっ、ジャスパーがGETした蟹食べた~い!」
 うねうねと触手を動かし答えるパウルに『いっぱい食べような』と頷いて。
 ジャスパーが村の中心へと足を向けたその時、パウルは一歩距離を縮め、こてりと首を傾げ言った。

「ねぇジャスパー、手……繋いでもイイかな?」
 当然、答えはイエスだ。心地よく冷えた夜風の中、ジャスパーは温かな手でパウルの指先をそっと包む。そして思わず笑みが溢れるのを誤魔化すように、二人は遠くからでも見える祭りのメイン――フシカニモドキが煮込まれた大鍋を目指して踏み出した。



「あはは、パウル見ろよ蟹型の菓子パンが売ってるぜ」
「ホントだ〜! エイツアの皆にお土産にできそだね♪」 
 店先に並ぶ蟹モチーフの品々を見て回り、そんな会話を交わして。お揃いで買った蟹のお面を額につけて、ジャスパーとパウルは子供のようにはしゃいで出店の前を歩いていた。

 どんどん会場の奥へと進めば、もわっと温かな料理の湯気が漂ってくる。
 めいっぱい働いたし、と胸を張るジャスパーの寄り道と買い食いを挟みつつ、二人は村の中心でぐつぐつと煮える大鍋の前へと辿り着いた。
「そこのおふたりさん、食べてきなー!」
 ドワーフの女性が指差すのは、既に料理を取り分けた器が並ぶ大きな配膳台。何匹もの蟹が混ぜられ煮込まれたそれをざっと見て、ジャスパーは端の方にある器に目を止める。

 煮込み料理にしては火で炙られたように少し焦げた甲羅。
 蟹を鍋に入れる前――捕獲と同時に蟹に火を通して村へ持ち込んだのは、ジャスパーひとりだけだ。
 つまりこれがジャスパーが自身で燃やして獲った蟹。それを確信して彼が器に手を伸ばそうとすれば。
 ほぼ同時に、パウルの手もそちらへ伸びた。
「あっ、ジャスパーもコレ?」
 じゃあ、と隣の器へ移りかけたパウルの手を引き留めて、ジャスパーは偶然に目を瞬きながらも自分が取ろうとしていた器を彼に差し出す。
 そしてもう一つ、少し離れた場所で同じ焦げ目の付いた蟹の器を手にとって、ジャスパーはパウルと共に村の外れへと歩いていった。



 ほかほかと二つ、夜空へ湯気が昇っていく。
 祭り囃子も人の声も遠く微かに聞こえるだけの、静かで星の見える場所。ここならゆっくり出来ると腰を下ろし、ジャスパーとパウルは肩を寄せて蟹鍋を味わっていた。

 ――『フシカニモドキ』。
 その名を聞いて浮かぶ記憶を脳裏に過ぎらせつつ、ジャスパーは徐に箸を止める。
「なあ、パウル」
 真剣、それでいてどこか明るい声色。
 きっと怖い話や悲しい話ではないと穏やかに耳を傾け、パウルも静かに箸を置く。

 僅かな間を置いて、ジャスパーは小さく息を吸い込んだ。
「あの時、寿命の差が直接悲劇に通じるわけじゃないって、云ってくれたよな。あれすげえ嬉しかった」
「……憶えててくれたの?」
 一瞬見開かれたパウルの目が、緩く弧を描いて笑みを見せる。
 嬉しいな、と言葉を溢したパウルに、ジャスパーはそっと目を合わせて続けた。
「きっと俺、あの言葉があったから、諦めずに済んだんだ」
 それは薄く翳ったような声と、微かに揺れる瞳。
 パウルは小さく頷きつつも、持ったままの器――そこにたっぷりと盛られた焦げ目つきの蟹を見つめて目を細めた。

 生まれ、成長し、老いるまでの時間の違い。種族の間にそれが確かに存在し、沢山の別れがあったからこそ、あの村の人々は『限られた時間を少しでも伸ばしたい』と願って祭りを続けている。
 それを無駄だとは言わない。不確かなモノに縋ってでも、少しでも長く大切なヒトと共に居たいと思うのはきっと当然のことだ。
 しかし――限られた時間、だからこそ。
 パウルは顔を上げ、改めてジャスパーの目を見て云った。
「キミが頑張って手に入れた蟹は、オレにとっては『モドキ』じゃない。不死の妙薬じゃなくていい。この一杯の温かさに、価値を見出す人生をキミと歩みたいんだ」

 その言葉の意味を考え、すぐに理解して。
 ジャスパーは動きを止めたまま、しかしゆっくりと口元を緩めて微笑む。
 そしてこくりと頷き――重い空気を振り払うように、ぱっと明るい笑顔を浮かべた。
「……なァんてしんみりは折角の祭りにゃ似合わねェな。ほらいっぱい食えよ、おかわりも貰いにいこーぜ」
 ジャスパーが再び箸を動かし始めれば、うん、とパウルも器の上に置いていた箸を手に取り、少し冷めた蟹鍋を一口一口丁寧に味わう。味や蟹の食感に話を膨らませながら食べ進めれば、小さな器はみるみる内に軽くなっていった。

「あっ……あっという間になくなっちゃったね。ジャスパーと幸せのおかわり、甘えても……いい?」
 蟹の甲羅だけが残った器に視線を落としつつ、パウルが囁くように問えば。
 ジャスパーも同じく空になった器をひょいと見せて、先程料理を貰った鍋の元へ向かうべくすっと立ち上がる。
 そして確りとパウルの手を握り、引きながら、ジャスパーは一歩踏み出した。
 ――この手の温かさに恥じねえように、これからも共に歩んで行けたら。
 そう誓うように心の中で呟いて、やや狭めた歩幅で前へ進んでいく。

「ほら、好きなだけもってけー!」
 大鍋の近くで小さなエルフが差し出したお玉を受け取り、ジャスパーとパウルは早速鍋のおかわりをこんもりと互いの器に盛り合う。
 そして温かな湯気をふたつ並べ、また村の外れへと戻って。
 澄んだ星空の下、彼等は二人きりの時間を心ゆくまで堪能するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月26日


挿絵イラスト