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金脈筋

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●たからもの
 たとえ金色に実った麦畑が広がっていなくても、魚が掴み獲れる川がなくとも、「この村は豊かだ」とマルクゥは胸を張って言える。
 だって、ほかのどこにもない宝があるから!
 わずかの食べ物と引き換えに、無料で診てくれる腕のよいお医者さまが――数々の薬草に通じた、マルクゥの大の自慢のお師匠さまがいるから!
 マルクゥは意気揚々と庭の薬草畑に鍬を入れる。土をひっくりかえせば、ごろごろと根っこが転がり出てくる。これを煎じれば、喉の痛みをやわらげる薬になるのだ。
 きょうの仕事はこれと、別の薬草の新芽をつむのと、家畜のための干し草をひっくり返す、あとは……。
 マルクゥはタタタと庭の端まで駆け、爪先立ちで柵を掴んで、すきまから村へ続く道を見下ろした。
 山の中腹にあるこの家から見ると、村は小さな積み木でこしらえたようだ。
「お師匠さま、いつごろ戻るかなあ」
 人と、ついでに家畜の様子まで診るので、いちど村を訪れると山ほどの診療を引き受けてしまう。夜遅くの帰宅も度々だった。
 しばらく村を眺めていたマルクゥは、やがてきょうの自分の仕事を思いだし、またスタタと庭に駆け戻る。

 ……結局その日、夜になっても、そしてその夜が明けても、お師匠さまは帰ってこなかった。

●A&W
 グリモアベースの小部屋にて。
 ローズ・バイアリス(アリスが半分色を塗った薔薇・f02848)はどうにも信じがたい、という面持ちで説明を始めた。
「アックス&ウィザーズの案件だ。
 村の医者がひとり、行方不明になっている。なんでも代価を求めることなく、誰でも分け隔てなく診てくれる医者なんだとか。しかも腕がよいというので、当然信望を集めている。
 そんな医者が行方不明だというから、村人たちも弟子も、いま探すのに必死だ。
 今回の依頼はこの……医者を、無事に連れ帰って……ほしい……」
 数秒の沈黙をはさんで、ローズは頭痛を覚えたように眉間に指をあてた。
「いや、信じがたいですね。どこにも裏がない。ダークセイヴァーとの温度差で風邪をひきそうです」
 何度か首を振り、気を取り直したように説明を続ける。
「村にも、医者の家のある山にも、これまでモンスターが出たという話はない。
 だがおそらくはモンスターだ。しかも数が多い。このまま放っておくと医者だけでなく、村人や弟子も危ない。まとめて対処をお願いする。
 ……たぶんだが……こういう裏のない話には、真っ正直にあたるのが良い……と、どこかで聞いたことがある」
 自分には縁のない話のように付け加えて、ローズはかすかに口元を笑みの形に歪めて「よろしく頼む」と頭を下げた。


コブシ
 OPを読んでくださってありがとうございます。コブシです。
 以下は補足となります。

●フラグメントについて
 第1章【冒険】、
 第2章【集団戦】、
 第3章【ボス戦】、
 の予定です。

●行動の指針のようなもの
 ・村人はだいたい善人といってよいでしょう。
 「お金が無いなら働けばいいじゃない」的な考えが主流です。
 ・お師匠さまとマルクゥの家は山の中腹にあります。村は山のふもとに位置しています。
 ・山の頂上には滅多に人が近づくことはありません。
 ・頂上周辺にはとても効能のある薬草が生えているという話です(お師匠さまも元々はそれが目的でこの近辺に家を構えました)。
 ・山頂には樹木はなく、岩山です。足元には穴が開いていて、また急峻な崖もあります。

 第1章の時点では以上です。
 皆様のプレイング、楽しみにお待ちしております!
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第1章 冒険 『薬草を守れ』

POW   :    体を張って助ける

SPD   :    罠や地形を利用する

WIZ   :    アイテムやユーベルコードを活用

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カーニンヒェン・ボーゲン
実直で誠実。真の恵みを持つものは、稲穂のように深く頭を垂れるもの。
と、私の友が申しておりましたが。実に稀有なお方のようだ。
無事の帰還を祈っておりますぞ。

防衛戦ですな。
まずは規模と地形を把握しませんと。
『情報収集』を行い、『世界知識』と照らし合わせて『地形を利用』した対抗策を思案。
…崖下に放り出せれば時間が稼げましょうか?

最終的には【UC:手足達】を喚び出し散開させ、敵の襲来告知と防衛にあたらせます。
人型にトランスフォームさせ、敵の強さによって数字を重ねるように。
くれぐれも踏み荒らさず、遠ざけるよう努めなさい。

出現した数と方向は記憶していき、敵がどこから来るのかを特定できれば、比重を変えます。


玖・珂
いい人間ほど、長生きするべきだ
帰りを待つ者が居るのなら尚更に

まだ村人や弟子が探していない場所を主に視てみようか
山頂も気になるな

素晴らしい医者がいると聴き、訪ねてみれば行方知れず
私も探すのを手伝おう
と弟子に申し出て、家を出た時の様子を尋ねるぞ

何処へ行く、必要な物・足りない物がある、気になる事がある等
行方の切欠となりそうな事は言っていなかったか
どの方向を歩いて行ったか情報を収集

モンスターの懸念もあったな
見馴れぬ足跡や声は無かったかも訊いてみよう
あればそれを追うぞ

岩山では必要とあらば糸雨や黒爪を支えに使い移動しよう
……お前は飛べて良いな、羽雲
先行して医者やモンスターの姿は無いか見てくれ




 ……庭の生け垣はいくつか花をつけ、飼い犬がこちらを見つけて吠えようか尻尾を振ろうか考えている。
 蜜蜂がこちらの予想以上に近くまで飛んでくる。風が心地よい。
 玖・珂(モノトーン・f07438)は意識して息を吸った。
 村の雰囲気を胸いっぱいに吸って、吐く。
 空気には、平穏のなかに幾つか不安の小石が混じっているようだった。
 村人たちが道で出会い、立ち話をして、そして来た道とは別の道を行く。
 誰かを探しているのだ。村人総出で。
(「いい人間ほど、長生きするべきだ。帰りを待つ者が居るのなら尚更に」)
 山を登る道を行く。しっかりと踏みならされた道だ。日に何度も往来があるのだろう。
 やがて、山道沿いに緑の茂みに覆われた石垣があらわれて、そこから人の声が幾つか聞こえてきた。
 ここだな、と見当をつけて珂は蔦に覆われたアーチ門の中をのぞきこむ。
 村人の女性数人と、10歳くらいの子供がひとり。会話が途絶えたらしいのを見計らって、珂は声を掛けた。 
「素晴らしい医者がいると聴き、訪ねてみれば行方知れず……」
 初めて耳にする声に、子供はぱっと顔をあげた。
 蔦の葉陰に、緑の照り返しを受けた白い人影がひとつ。
「私も探すのを手伝おう」
「――ありがとうございます!」
 駆け寄ってきて手を握る、その子供の警戒心のなさに、珂は少し心配になった。


 村人たちは総出で人探しだが、出たくとも出られない者もいる。
 白髭もみごとなその老人は、ひと月ほど前に足を悪くしたのだと、長椅子に放り出した自分の右足をカーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)に示した。
「医者の先生が来てくれてな。おとなしくしておれば治るが無理をすれば歩けなくなるぞ、と脅しなさった。ちゃんと言いつけを守っておったのに、ご本人が行方知れずとはどういうことじゃ」
 愛情からの文句付けだ。自分より二回りは年上であろう老人の繰りごとに、カーニンヒェンは微笑した。情報収集の一環として、村一番の年寄りに話を聞いたのだが、人の良い話好きな相手で助かる。
 医者の評判、外見、人となり。裏も含みもない話がつぎつぎと語られる。
 カーニンヒェンは相槌を打った。
「実直で誠実。真の恵みを持つものは、稲穂のように深く頭を垂れるもの。……と、私の友が申しておりましたが」
「ご友人は、まことに正しい」
 老人はふがふがと笑った。
「先生はいつも、気安く頭を下げなさる。『えへん』と偉ぶる心を、母君のおなかの中に忘れてきなすったに違いない」
「実に稀有なお方のようだ」
 頃合いとみて、別れの挨拶代わりに帽子を少し傾ける。
「そのお方の無事の帰還を祈っておりますぞ」
 長椅子の端から立ち上がって一歩、二歩。そこでカーニンヒェンはつと立ち止まった。
 見上げれば山の頂までまっすぐに目に入ってくる。
 この世界の知識と、この地形と。おのずと導き出される答えがあった。
 カーニンヒェンは振り向いた。
「……ご老人。ひとつ伺いたい」
「何かね」
「山頂付近の様子。……あれは、自然のものではありますまい」
 右足をさすりながら、老人は何かを思い出すようだった。


 同じころに、珂も山を見上げていた。
 子供……医者の弟子のマルクゥ……に、医者が家を出た時の様子を尋ねたのだが。
「まったくいつもと変わりなかったんです……」
 申し訳なさそうにそう答えてくる。
 何処へ行くのか、必要な物・足りない物があるのか、気になる事があるのか。行方の切欠となりそうなことを言っていなかったか。すべてに対する答えは「いつもと同じ」。
 医者の最後の足取りも、最後に診てもらった村人いわく「家への帰り道」だという。
 これは医者に原因があるのではない、と思ったところで、珂は思い出した。
「モンスターの懸念もあったな」
「モンスター!」
 びっくり眼のマルクゥも、村人たちもそろって首を振るので、本当にこの村は平和なのだなと珂はまた思った。
 見馴れぬ足跡や声が無かったかも尋ねたが、それにも心当たりがないという。
「まだ村人が探していない場所はあるか?」
「……山の、てっぺん?」
 ならば、と珂は片手を上げた。
 ――飛来した真白の猛禽が、珂の腕先にふわりと留まる。マルクゥは目を輝かせ、口をおおきく開けたが声は出ない。
「先行して医者やモンスターの姿が無いか見てくれ」
 一度大きく羽ばたいて、白い猛禽姿の精霊は空を翔けていく。
「……お前は飛べて良いな、羽雲」
 珂の呟きに、マルクゥは不思議そうに首を傾げた。
 ……珂さんだって、白くてきれいな鳥みたいなのにな。……飛んでいけてしまいそうなのにな。
 その感想はしかし口に出されることはなく、山頂へ向かう白い人影をマルクゥは手を振って見送った。


「昔々の話じゃ。太古の昔、とは言わぬが、わしが子供のころの寝物語に聞いたくらいだ。相当昔のことよ。ここにも魚が掴み獲れるようなきれいな川があって、そこの水を引いて畑も金色に実ったそうな。
 ……じゃがあるとき、この村に見知らぬ者どもがやってきて、『あの山に財宝がある』と言ったんじゃ」
 大勢でやってきたよそ者たちは、村人たちを山から遠ざけ、土を掘り返し、川を汚した。
「しばらくは村にとってつらい季節が続いた。だが、崖崩れが起きた。よそ者たちは皆いなくなり……きれいな川は戻らなかったが、ほどほどの川が出来て、こうして居心地のよい村になった。よい医者もいるしな。あれこそ宝だよ」
 足をさすって言う。
「最初は例の財宝めあてかと思ったんじゃが。心配したのが馬鹿馬鹿しいくらい、金には無頓着での。『街の施療院で働いていたが人間関係に疲れてしまった』とか言うんで、村の衆で空き家を補修して、そこに住んでもらうことにした」
 いい医者を逃がす手はあるまい、と人を食ったように老人は笑った。
「空き家というのは……」
「山の中腹にある、いつ誰が建てたのかもわからん家じゃ。石積みで、基礎がしっかりしておったんで流用したんじゃ」
 聞きながら、カーニンヒェンは彼のユーベルコード……【手足達】……手記『従順なる手足獲得の私的考察』が携えてきた情報を精査する。
 仮説はすぐに立った。
(「おそらく。敵は村の外からではなく、内側からやってくるのでございましょうな……」)


 つづら折りの道を行くことしばらく。
 露出してきた岩肌に、珂は違和感を覚えた。否、既視感だ。
 立ち止まり、手を付く。予感を胸に、道を外れ、起伏の激しい場所へ出る。
 影に入ればより確かだ。
 鉱山に馴染んだ珂にはわかる。
 地中に煌めくのは石英。周囲に散る星屑は銀。ほかにも、貴重な鉱物が埋まっている。
 しかしそこで最も強く、激しく、魅惑的に光を返してくるのは。
「金鉱脈……」
 珂の頭上に、戻ってきた羽雲の翼の影が落ちる……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァルダ・イシルドゥア
【POW】
岩場で滑らぬよう、滑り止めの付いた靴と革手袋を

依頼人、そして村のひとびと
彼らの姿を見れば、そのひとがどれほど素晴らしい人格者なのかが伝わって来る
きっと多くのいのちを支え、救ってきたのでしょう
……ええ、ええ
必ず、必ず先生をお連れいたします
私たちはそのために、ここに居るのですから

マルクゥさん、そして村の人々に
先生の赴きそうな場所と先生の背格好を予め聞いておきましょう

恐らくは難病を患うひとを救う為に山頂に向かわれたのかと
そこで何らかの……、……急がなくては!

アナリオンを槍に変え、飛竜翔にて山頂を目指す
ひとを襲う、薬草を荒らさんとする魔の姿があれば
直ぐに戦えるように
この身を以って庇えるように




 村の家々の壁は低く、中までよく見えた。家畜や犬猫、鶏小屋に井戸。植え込みには可愛らしい花。どの家も、こちらを招き入れてくれるような、開け放しの善意で満ちている。
 ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)はそれらに安堵の眼差しを向ける。人里に下りてきたのは、ヒトガタのおともだちがつくりたかったから。そしておともだちには、例えばこういう穏やかな場所が似合うと思う。
 本当に、あけすけな村だった。
 「自分たちも行方不明の医者を探すのを手伝いたい」と申し出ると、感謝され、旧来のともだちであるかのように輪の中に招きよせてくれる。
(「依頼人、そして村のひとびと。彼らの姿を見れば、そのひとがどれほど素晴らしい人格者なのかが伝わって来る……」)
 きっと多くのいのちを支え、救ってきたのだろう。
 唇をぎゅっと噛みしめている子供は、医者の家に住み込んでいる弟子だという。
「こんなにたくさんの人に探してもらって、他所からの皆さんにも手伝っていただいて。本当にお世話になります。……どうか、どうかお師匠さまを見つけてやってください!」
 一所懸命に言ってぺこりと頭をさげるのに、ヴァルダも心を込めて応える。
「……ええ、ええ。大丈夫ですよマルクゥさん。必ず、必ず先生をお連れいたします。私たちはそのために、ここに居るのですから」
 村人たちの顔にてらいのない感謝の表情が浮かぶ。行方不明の医者は、この村人たちにほぼ無償で医療を施したという。その気持ちがわかる気がした。
 ……ヴァルダの脳裏に、山頂に向かう人影が思い浮かぶ。
(「恐らくは難病を患うひとを救う為に山頂に向かわれたのかと。そこで何らかの……」)
「……急がなくては!」
 ヴァルダの携えた槍はアナリオンの名を持つ竜。いま本来の姿を取り戻すときだ。
『アイナノア、太陽の君。今こそ来れ、我を炎の頂へと導かん!』
 召喚された蒼焔の飛竜にひらりとまたがり、ヴァルダはひととびに山頂を目指す。
 ――風を切る音がした。
 すでにヴァルダは村のすべてを見下ろせる位置にいる。
 屋根瓦はすべて明るい色調で、幾何学模様のモザイク絵画のよう。
 煙突から吐き出される煙は青く細くたなびいて、空へとすいこまれていく。
 これがヒトがつくった風景。
 対する山頂の風景は、いったいどういうことだろう?
 すり鉢状の大きな穴があき、その周囲には小さな垂直の穴があいている。朽ちた木の幹が無数に転がって、骨が晒されているようだ。
 惨い。
 ヴァルダの瞳の憂いは深くなる。
 軽やかなヴァルダだからこそ、竜から降りても危なげなく足場を確保して進むことができたのだろう。
 大小の穴は、それぞれが地底の国への入り口のようだった。
 そして。
「あれは……?」
 荒廃した風景に、場違いなほど鮮やかな色が目に入る。
 青い蝶だ。群れ集い、舞って、宙に柱を建てている。
 ヴァルダは用心しながら近づいた。
 蝶たちはある小さな穴の中に出入りしているようだ。ヴァルダは蝶たちが目指す闇の先をのぞきこむ。湿った空気が吹き上がり、甘いにおいを届けた。
 ……深い。日の光で見える範囲には、苔しか見えない。
 いや、遠くでなにか、動くものが?
『やあ、金色だ』
 こだましすぎて輪郭もあいまいな言葉が穴の奥から上がってくる。ヒトだ。誰かがこの下にいる。
『空を横切るものにふさわしい色だね……』
 続く『助かった……』は、独白のような響きを帯びていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
裏の無い話は好きだ
頑張って妙な理屈をこねずに済むよ
アドバイス通り素直にいこう

偶々立ち寄った冒険者として
【コミュ力/優しさ】を使い村で聞きこみ
誰か探しているんですか?
医者がいなくなった時の服装や特徴、詳しい状況を聞く
マルクゥさんに会ったら励ます
大丈夫、きっと見つかるからね

情報を頼りにUC【相対性理論】で山を空から探す
崖等に誰か落ちていないかや魔物の影が無いか観察
鴉達にも手伝ってもらい
【失せ物探し】で医者の落とし物や服の切れ端等の痕跡を捜索
適宜仲間とも協力
もし魔物に襲われていたら急降下し攻撃

と言いつつ
何となく嫌な感じもする
万一怪しい人がいたら【ヘンペルのカラス】で軽く問質す構え
必要がない事を祈ろう


ユキ・スノーバー
行方不明は不味いんだよ…
早く見つけて無事に保護してあげないとだね!

村の人に、どの辺りを探したのかを確認してから、未だ探していない所を中心に
小さいのを生かして、隙間に入り込んだりして埋もれたりしてないかとか
頂上目指して登りつつ、痕跡が残ってないか確認して探してみるよー。
夢中になって帰るのを忘れてただけとかなら、早く離脱出来るように薬草確保を手伝うけども
モンスターの気配が近くて動けないとかだったら、猟兵にお任せだよ!と、安心させたいな。
怪我してたら、生まれながらの光で回復させてから、安全な所まで避難させるね。
村の人も、弟子さんも心配してたんだよ?見つかって良かった

アドリブや他の猟兵さんとの絡み歓迎


ブク・リョウ
こういう仕事ならドーンと任せてよ!

まずは村の人やお弟子さんに
当日のお医者さんの様子とか
お天気とか色々聞いてみよう
情報は足で稼ぐのさ

頂上付近に着いたら
大きい声で呼びかけてみるのさ
「お山の中にお医者さまはいらっしゃいますかーっ!」
反応が無ければ場所を少し移動して
また呼びかけるよ
崖とか穴とかに落ちないように、
あと薬草を踏まないように気を付けつつ
何か物が落ちてないかどうかも要チェックなのさ

お医者さんを見つけたら
見つけたよーって他の猟兵さんにお知らせ

モンスターに捕まったりしてるなら
いよいよおれたちの出番なのさ
さぁ、村の宝物を取り戻すのさ!


エン・ギフター
医者が消えるってな穏やかじゃねえな
命懸け預けてる病人も危険に晒されてるようなもんだ
早めに見付けねえと

正直者の住む村ってなら
医者泊めてますって連絡ぐらいは入れるだろうし
ダンマリ決め込んでる奴がいねえなら実際目撃されてないんだろな

つう訳で山頂まで山登りだ
高所から発見できるモンもあるかもしらん
見晴らしいい場所に出る度に、周囲見回してみる
穴があったら覗くのも忘れず
聞き耳も常に立てとくな
SOSのサインだのモンスターの気配だのをメインに探すわ

すれ違う誰か居りゃ
センセ見なかったかってのとか
日常じゃ見ないもの聞かないものか無かったか聞いとく

無駄足になるならなるで、こっちには居なかったって情報にはなんじゃね?




 村人たちに会えば人の輪が出来る。輪の中には、既に幾人かの猟兵も混じっている。顔つきあわせて医者の行方についてああでもないこうでもないと言いあっている。
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)はここぞとばかり相槌を打った。弟子のマルクゥにも、「大丈夫、きっと見つかるからね」と励ましの言葉をかける。
 ――章は、「まずは情報収集」ということでこの輪の中に滑り込んでいる。
 章のコミュ力ならば大抵『偶々立ち寄った冒険者』で上手くいく。ましてやこの警戒心の薄い村では、「誰か探しているんですか?」「いなくなったのはお医者さまなんですか?」の二語だけですんだ。
(「裏の無い話は好きだ。頑張って妙な理屈をこねずに済むよ」)
 今も、ほぼ成り行きに任せるだけで欲しい情報が勝手に手の中に転がり落ちてくる。
「いつものようにひとりで帰って行ったんだけどねえ」
 最後に医者を見たという宿屋の女将は、首を傾げた。
「夜遅いとはいえ、慣れた道だから心配はしなかったよ」
 村から山の中腹へ、上りの道をえっちらとゆく背を見送ったのだ、と。
 ユキ・スノーバー(しろくま・f06201)は低い位置からアイスピックを振って声をあげた。
「探したのはどの辺りなのかな?」
「先生の家までの道、が中心かねえ」
 村人たちにとっては、そこまでが『村』の範疇なのだろう。
「山のてっぺんはまだ、なんだね」
 ユキは村人たちの頷きをひとつひとつ確認していく。
「『薬草さがしに夢中になって、帰るのを忘れてた』とかかも。それなら、早く離脱出来るように薬草確保を手伝うけども」
 ユキの提案に、「『帰るの忘れてた』、なるほど!」「先生やりそうだな!」と、村人たちが騒ぎ出す。
 そういう人なのか、と猟兵たちは了解した。
 マルクゥも「ご本読むのに夢中になってご飯忘れる、は、何度かあったです……」とちいさく言い添える。
 その流れで気づいたのか、マルクゥは女将に尋ねた。
「お師匠さま、きのうの晩御飯、おかみさんのところで頂いたですか?」
「いいや。でもお礼にいっぱい食べ物を持たせたからねえ。瓶入りの蜂蜜、りんご酒とりんごジュース、堅く焼きしめたパンに、鳥一匹まるまるのハム……」
「ハム!」
 思わず叫んだマルクゥは、すぐに両手で自分の口をふさぐ。女将は笑って「いいんだよ」と手を振った。
「育ち盛りだもんね。知ってる? 先生ね、昔は食べ物さえ受け取らなかったんだ。マルクゥが来てからようやく、食べ物なら持ち帰ってくれるようになったんだよ」
 え、と口をもごもごさせるマルクゥを、ブク・リョウ(廃品回収者・f08681)が無表情に、しかしどこか楽しげにユラユラと体を揺らしながら眺めていた。
「食べ物も飲み物も持っているなら、何かで帰ってこれないけれどピンピンしているに違いないのさ」
 とん、とマルクゥの背中を叩いて励まして、ブクは自分の胸を大きく叩いた。
「こういう仕事ならドーンと任せてよ!」
 感謝の眼差しをうけて、ブクは、猟兵たちは思案する。相談しなくても考えていることは一緒だ。
 山頂があやしい。
 章は己の手足となるものを召喚する。速く、黒い翼もつもの。自分の身の丈の倍はあるハヤブサ≪相対性理論≫を。
 聞いた人物、手掛かりになりそうな持ち物などを、鴉達にも手伝ってもらいながら、自らも空から探すのだ。
 ブク、ユキは山頂へと、自分たちの足を向ける。
 よ、とエン・ギフター(手渡しの明日・f06076)はもたれていた宿屋の壁から背中をはなした。
(「正直者の住む村ってなら医者泊めてますって連絡ぐらいは入れるだろうし。ダンマリ決め込んでる奴がいねえなら実際目撃されてないんだろな」)
 村から医者が消える。それはひとりの人間の生死の問題以上に、村にとっての死活問題だ。
 命を預けている病人や、不意の怪我人も危険に晒されてるようなものだから。早めに見つけるに限る。
「つう訳で山登りだ。高所から発見できるモンもあるかもしらん」
 ばさりと羽ばたきの音を残し――身軽なエンの姿は、もうその場にはない。



 長靴でとてとて、と。
 山頂へ向かうユキの足取りは弾むようだった。
 小さい体を生かして、茂みや岩の隙間、地面に開いた穴にまで入り込んで、もしや埋もれた人でもいやしないかと探し回る。愛用のアイスピックは、今日は探索用の杖としてご活躍だ。
 頂上への道には特に何も痕跡が無い。
「ここではない?」
 しかし、穴の多い山肌だった。自然に出来たとは思えない。
 ……ほどなく、何もない山頂へと辿り着く。
 樹も草もなく、あるのは頭上に広がる空と足元にあいた無数の穴だけ。大きいのも小さいのも、深くて底が見えない。
 ブクはおもいきり大きい声で呼びかけてみる。
「お山の中にお医者さまはいらっしゃいますかーっ!」
 その声に何の反応も無……くは、なかった。
 先行する猟兵がみつけていた、青い蝶の群れとぶ穴。
 そこから、声が響いている。
「お医者さま見つけたよーっ」
 ひとこえユキに知らせて、ブクはよっこらと足元に気を付けながら近づく。子供の腕なら入るかどうかというくらいの穴だ。
 覗くと、中は一面の苔。
 ユキは少し手を入れてみた。入り組んでいて、ユキの小さな手でもつっかえてしまう。
「でも、見つかってよかった。村の人も、弟子さんも心配してたんだよ?」
『悪いことをしたなあ……』
 でも、落ちるとは思わなかったんだ、と地下の声は苦笑したようだ。ブクは首を傾げる。
「ここからは落ちたくとも落ちるのは難しいのさ」
『そう、落ちたのは別の場所なんだ。そこは頂上なのかい?』
 地下の声曰く。
 家のそばで穴に落ちた。そこは石の床があり、階段がある空間だった。暗闇のなかを、一晩中出口をもとめて探し回り、階段をのぼった。幸い食べ物には困らなかったが、ここまで来てどうも足を痛めたらしい。自分は医者なので致命傷などではないことはわかったが、回復するのに時間がかかりそうだ……と。
「この穴を広げたらすぐに出られそうなのさ」
『いや……それは避けたい。ここに生えた苔は、とても効能のある薬草なんだよ』
 甘い香りで蝶を誘う不思議な苔。これがあるから治せた傷も多い、と慌てたように言う。
 ユキはピコーン!と跳ねた。
「動けないとかだったら、猟兵にお任せだよ!」
 穴を覗き込むように寝そべる。と、ほわん、とユキの身体が光を放ち始める。
「穴の真下にいてね。これから、僕の『生まれながらの光』がいくからね」
 対象はちらちらと動く点のようで、上手くいくかわからないけれど、やってみて損はないとユキは判断した。
 ユキの腕先からほわほわとした光が零れ落ち、ゆっくりと暗く曲がりくねった穴を照らしていく。光そのものが見えなくなっても、照り返しで光がどこか広い場所に出たことがわかった。
『これは……すごいな。医者なんていらないよ』
 笑い声。上手く患部に光は届いたようだ。
『腫れもひいた。うん、歩ける。ありがとう』
 治癒の光を使ったせいでややぐんにゃりのユキは、それでも「よかった」と笑った。
『とりあえず来た道を戻るよ。蜂蜜で目印をつけたから、迷いはしないだろう』
「それじゃおれたちはユーが落ちた穴の前で待ってるのさ」
 ちいさなユキの身体を助け起こし、ブクは医者の家を目指して山を下る。


 エンはとん、と岩の上で片膝をついた。黒い翼を休める鳥のようだ。
 このあたりにはまだ樹木が残っていた。もうすこし上ると本格的に緑の色が消える。
 見晴らしのよい場所だった。エンは周囲を見回した。岩場にはたまに穴があいていて、それを覗いて確認するのも忘れない。
 と、エンの敏い耳が、何かの音を捉えた。
 音。もしくは振動。
「何だ……? SOSのサインか?」
 それともモンスターか。
 エンは岩場を滑り、自らの感覚に従ってつるりとした岩壁に耳を当てる。
 大きな空洞の気配がした。
 何が響いている? 太鼓の音?
 出所不明の不吉な重低音は、山全体を微かにゆらすようだ。
 エンは踵を返し、これを知らせるべく医者の家へと急いだ。


 鴉達は、さすがの野生で痕跡を見つける。それが痕跡だと、ヒトにはなかなか気づくことが出来ない。
 大きなネズミが何匹か走る、それに鴉が反応したので章はその先に視線を走らせた。
 医者の家の庭先だ。
 鳥のハム?をくわえたネズミがいる。ほとんど食い尽くしたあとで、持ち運べるくらい軽くなったからこうやって移動させているのだろう。
 ネズミのしっぽが家の壁の下にあいた穴の中に消える。
「ネズミの巣穴にしては大きいね」
 だがヒトが落ちるには小さい。情報としてどうかな、と思いつつ、章は医者の家の表側にまわる。
 章が家にネズミが、と告げるとマルクゥは眉を吊り上げた。食べ物を狙う害獣に情け無用、といった体だ。すぐに食糧庫に向かおうとして、マルクゥは、「そういえば」と立ち止まった。
「さっき、庭に穴が開いて、柵が消えちゃったんです。一箇所だけですけど」
「ああ、それのせいかね」
 家に集まっていた村人の輪の中から、宿屋の女将が声をあげた。
「先生が珍しく、『空からお金が落ちてこないかなあ』なんて馬鹿みたいなこと言ってたのは。柵の補修ならいくらでもやってあげるのに」
「いや、きっとマルクゥの学費のことじゃないか」
 背後から、別の村人の声がかかる。
 マルクゥは「え?」とびっくりしたように振り返った。
「街でちゃんとした教育を受けさせてやりたいとかなんとか……」
 マルクゥはショックを受けたようだった。
「やだ―――!!!」
 叫んで、その場から走り出す。
 猟兵の何人かがそれを追っていく。章はそれを遠目に、ゆっくり歩いて後を追う。 
 マルクゥは家の扉の前に、しょんぼりと座りこんでいた。
「……勉強はきらいかな?」
 章の問いかけに、マルクゥは首を振った。
「じゃあ学校がきらいかな? そこではたくさんのヒトが集まって、同じコトを学ぶんだ。楽しかったり、そうじゃなかったり。きみは何が『やだ』?」
「……お師匠さまといっしょに居られないのがやです」
 子供は顔を上げ、訴える。
「だってお師匠さま、シチューのお肉いっぱい入ったほうのお皿くれるしっ。目玉焼きはんぶんこ、って言っても黄身のほとんどこっち側で、何度おかわりしても怒らないしっ」
 章は「ふむふむ」とあいづちを打つ。
「食べることばかりだね」
 ヒトのこころはよくわからない章だが、推測はできる。食べ物の形をした、それは確かな愛情の証なのだ。
 ブクはマルクゥの背中を軽くたたいて元気づけた。
「さぁ、お医者さまが戻ってくる。村の宝物が帰ってくる! 待ち構えていてあげるのさ」
 医者が落ちたという穴は、庭に続く斜面にあった。ネズミが散って行くのは、医者が落とした食べ物を漁っていたのだろうか。
「お師匠さま、近道しようとしたんだ……」
「それが逆にこんなに帰りが遅くなってるんだから、仕方ない人だね」
 村人たちも集まって、好き勝手なお喋りが始まる。
 ……地を蹴り空を駆け、庭へと降り立ったエンが目にしたのはそんなのんきな光景だった。「この差はどーよ?」と言いたくもなる。
 だが悪いがのどかな集まりにはご退場して頂くしかない。
 今なら『聞き耳』を立てなくても聞こえる。
 不気味な重低音が、この場でも。
「来るぜ!」
「何がです?」
 不思議そうにエンを見上げたマルクゥは、背後にその音を聞いた。
 他の猟兵たちも、村人たちも聞いた。
 エンは叫ぶ。
「モンスターだ! ……無駄足になっちまったかもしれねぇが、とにかく猟兵以外は下がってくれ!」
 村人たちもマルクゥも避難させ、猟兵たちは庭の斜面に開いた穴に対して構えを取る。

 ド……ン!
 ドッ……ン!!

 それは岩が崩れる音。
 太鼓のような地響き。
 皆がそれを聞いた。
 封印されていた邪悪なものたちが、地表に這い出てこようとする音だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『レッサーデーモン』

POW   :    悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


====================
 ここまで読んでくださってありがとうございます。コブシです。
 以下は第2章『集団戦』についての補足となります。

・戦闘開始時点で、猟兵は庭にあいた穴から地下に突入します。
・階段でつながった迷路のような空間です。
・壁には金や銀や水晶がきらめいています。苔がその上にこんもりと生えています。
・レッサーデーモンは魔法陣から無限に湧いて出てきます。岩に描かれた魔法陣を消したり、削ったりすれば無限湧きは止まります。既に出てきた分は消えません。
・レッサーデーモンの翼は飾りです。飛びません。
・レッサーデーモンは見た目と違ってそんなに強くありません。
・家から山頂まで、ある程度距離があります。もし戦闘中に山頂まで行こうとすると、特別な移動手段が必要になります。
・お師匠さまがもといた地点は魔法陣の近くです。お師匠さまはこちらに向かって走っています。
・お師匠さまマジやばい。
・ごちゃごちゃしてますが、「斬って斬って斬りまくる!」といったプレイングも大歓迎です。

 以上です。
 皆様のプレイング、楽しみにお待ちしております!
====================
鵜飼・章
まずお師匠様を止めよう
UC【三千世界】で呼んだ鴉に照明を持たせ
彼を探し敵の来ない所へ誘導するよう言う
この子は小回りが利くし
大体の居場所が判れば追跡できるかも
助けに行く人の標にもなれば

魔法陣には有効な手段が無いから
対処は任せ攻撃に専念
【挑発】で敵を引きつけ
山頂側に行かせぬよう尽力

ほらおいで
飛べないの
鴉は飛べるのにな
攻撃を【見切り】つつ
【2回攻撃】で鴉に敵をつつかせ庭側のほうへ誘導
下手な【楽器演奏】が反響して余計腹立つだろう
大人げのなさは僕の短所だけど役立てば幸い

しかしヒトの良心を疑ってごめんという気持ちだ
マルクゥさん
僕もきみに学んだよ

悪魔も動物の一種だ
悪魔のように操ってみせる
すべて心ある人の為に


玖・珂
此処まで坑道が延びているのか
庭に穴があったとは、灯台下暗しとはこの事だな

片目に藍色の花を咲かせ
ダッシュやジャンプ、地形を利用して
先ずは人命の保護を目指すぞ

鉱石や苔はなるべく削らぬよう留意するが
村一番の宝はあの医者なのだろう
多少は大目に見てくれ

敵と医者の間に割って入り、早業で糸雨の防御網を展開
呪詛耐性なくして柩の守り人が務まろうか
無事に退避するまではかばい続けるぞ

既に救助済みならば、糸雨で敵の三叉槍を絡め取り投擲
穂先で魔方陣が削れぬか試してみよう

棲みついたレッサーデーモンが魔方陣を描いたのか
そうでなければ……賊でも入り込んだか

山頂は気懸かりだが、此奴等を地表へ出す訳にはゆかぬ
眼前の敵を片付けよう


ヴァルダ・イシルドゥア
今、そちらにまいります!

蝶、そして声を頼りに
飛竜に騎乗したまま岩山の頂へ

薬の材料足り得るもの、鉱石を極力傷付けぬように
魔法陣を発見次第、陣だけを削り無力化を試みる

潜れそうな穴から地下へ
お医者さまを発見出来たら
飛竜の背に乗せ、マルクゥさんのもとまでお連れします

湧き出づる魔の存在を確認したなら
お医者さまの安全を最優先、背に庇い乍ら戦う

ドラゴニック・エンドを主軸に
残HPの低い個体を優先して攻撃、各個撃破を目指す
他の猟兵たちに自分の存在を知らしめるため声を上げ
合流出来るまで出来る限り時間を稼ぐ

我が名はヴァルダ、月に従いしもの
人々の営みを守らんとするもの

数多のいのちに指一本、触れること叶わぬと知り給え!


ブク・リョウ
お医者さーん!すぐ助けに行くから
慌てず騒がず走ってねーっ!

蜂蜜を手掛かりに穴の中を進むのさ。
敵に遭うまでは【絡繰の見た夢】で全速前進。
(相棒の絡繰はキックボードみたいな感じに変形)
敵を見つけても、お医者さんと合流するまでは
極力戦闘は避けたいな。
止む無く戦わなきゃいけない時は
バラックスクラップで応戦。
なる早で倒して進みたいのさ。

壁にある鉱石は気になるけど
効能のある薬草だってお医者さんも言ってたからね。
できるだけ苔を剥がさないようにしなきゃなのさ。

魔法陣を見つけたら急いで無力化。
他の猟兵さんが見つけた場合は
敵の数を削ることに専念。

お医者さんと合流して敵を倒して
穴から抜け出るまでが戦いなのさ!


ユキ・スノーバー
爺(f05393)と連携するよ!
ぼくは圧倒的にスピード足りないんだ…
でね、爺はバイク出せるって聞いたから
良いなぁって言ってたら乗せてくれるって!
「わーいっ!」
操縦宜しくなんだよっ!(敬礼)
魔方陣サクッと消しちゃうぞー!
ついでに敵もサクッと消しちゃうぞー!(武器もバイクもぶんぶん)
困った時はユーベルジャック!やり返すんだよ覚悟ーっ!
せんせー、ここは何とかするから、早く逃げてにげてー!
ぼく、色んな世界に行くからいつも回復してあげられる訳じゃないし、さっきのあれだけでへろへろ~ってなってたから
やっぱり先生凄いって思うんだ!
皆に元気な姿を見せる所までが、先生のお仕事なんだよー。
ねっ、じぃー(ウインク)


エン・ギフター
迷路?んなモンもう勘で突破しか考えねえ
迷う暇がある位なら、階段一段でも多く駆け抜けて医者探す
余裕が持てる状況なら耳澄ませて
医者の声や走る足音拾えないか試してみるわ

おーいセンセ!モンスター湧いてんぞ全力で逃げろよー!
合流できそうならするが、敵の気配するなら声掛けもなし
魔方陣見付けたら、医者保護の次にそれ削るの優先する

会敵したら倒すってよりは、とにかく無力化狙いで
持ってった得物で敵の腱だの関節だの狙って
武器使えねえようにしてやる
うっかり金縛り掛けられちまった時は
黒嵐で羽根飛ばして応戦するな

あれちょっとあのモンスター俺と見た目似てね?
実は親戚だったりしねえか?
まあ親近感はちっとも湧かんがな!


カーニンヒェン・ボーゲン
居合わせたユキどの(f06201)と共闘です。

危惧は
・医者どのの安全
・空洞の崩落
ですが、先立って魔方陣を消すべく動きましょう。
【UC:手足達】を使用。

一体はサイドカーに。ユキどの乗ってください。
操縦手は人型をとらせバイクと連結。速度と戦力を維持せよ。
階段が不可なら大型にして試みます。無理なら肩車を。

お任せください。(敬礼)
ジジイめはユキどのを振り落とさぬように、繊細かつ大胆に『操縦』して疾走しましょうぞ。
私共は蜜蝋の目印を追い、戦闘で詰まる地点で応戦して数を減らします。
その間に他の手足らに『目立たぬよう』周囲のルートを探らせ、或は囮として敵を分散させて、魔方陣へ。

皆、待っておりますぞ。(頷き)




 地が裂けて、闇が口を開けて待っている。
 のどかな日差しの降る村から断絶された光景。
 コホッ、コホゥ、と獣じみた声が底から上ってくる。獣臭さを予測したとすれば間違いで、清らかささえ含んだ甘い香りが広がった。
 穴の底は深く、石畳が小さく見えた。

 は、とヴァルダ・イシルドゥアは振り向いた。……まだ医者は山頂に近いはずだ!
「今、そちらにまいります!」
 竜巻に身を任せるように飛竜に騎乗し、一目散に岩山の頂へ向かう。
 ――それもこの場で猟兵が取りうる手のひとつだ。
 玖・珂は地底への距離を目算で測った。
「此処まで坑道が延びているのか……」
 家が、庭が崩れる心配もあったが、地下の造りは意外としっかりしている。
 そして地下には魔のものどもがいた。レッサーデーモンが2体。
 早い息遣い、獣の感情の見えない目つき。いや、獣の方がまだ意を通わせられる、か?
「灯台下暗しとはこの事だな」
 呟いて、珂は暗闇の中へ身を投じる。
 唸り声と共に放たれた三叉槍を、まだ入り口の端にいたカーニンヒェン・ボーゲンは軽く身を引いて避けた。
「このジジイに見極めることが叶うくらいのものですな」
 ユキ・スノーバーのアサルトウェポンが火を噴く。
「敵はサクっと消しちゃうぞー!」
 意表を突かれたのか、まともに食らったデーモンの一体の上半身が千切れて消し飛ぶ。あと一体は後方に下がり、ぱっと遁走の姿勢に入った。
 猟兵たちは階段のない垂直にちかい斜面を一斉に滑り降りた。
 例えるならば玄関ホールといった趣の空間だ。そこから上がって行く石の階段が4つほど。
 エン・ギフターの耳は階段のうちの一つから逃げて行くデーモンの足音を聞き分けている。しかし。
「これ、どれ行くのが正解だ?」
 なにより優先すべきは医者の保護。しかし彼を探そうにも、ここはまるで地下迷宮だ。
 エンは毒づいた。
「……んなモンもう勘で突破しかねえ!」
 迷う暇がある位なら一段でも多くの階段を駆け抜ける。その気で一歩踏み出そうとしたエンを、ブクの大きな声が引き止める。
「蜂蜜なのさ!」
 ブク・リョウのシャーマンズゴーストならではの指先が、階段の入り口そばを指す。そこに、とろりとした蜂蜜で矢印と数字が描かれていた。
 思い出す。……『とりあえず来た道を戻るよ。蜂蜜で目印をつけたから、迷いはしないだろう』と。医者はそう言っていた。
「蜂蜜を手掛かりに進むのさ」
「それがわかれば」
 鵜飼・章はとるものもとりあえず召喚に着手する。
 ユーベルコード【三千世界】、召喚に応じた鴉はとても人馴れし、驚くほど賢くこちらの意を酌んでくれる。
 鋭い嘴に照明のカンテラを咥えさせ、章は鴉に指示するのと周囲への説明を同時に行う。
「まずお師匠様を止めよう。彼を探し、敵の来ない所へ誘導するんだ」
 章が手を掲げると、鴉は蜂蜜の目印の付いた階段の上へと羽ばたいていく。行く先でふらふらと灯りが揺れるのは重みでバランスを崩しているのか。
「あの子は小回りが利くし、大体の居場所が判れば追跡できるかも」
「ならば」
 カーニンヒェンは己の【手足達】を喚ぶ。変形と合体が可能な機械……トランスフォームユニオン型バイク。操縦手は人型をとらせてバイクと連結させる。多くを合体させればより性能が増すのだ。
 ユキは思わず「良いなぁ」と羨望の声を発していた。
「ぼくは圧倒的にスピード足りないんだ……」
 カーニンヒェンは自分用の一機、そしてもう一機、サイドカーを造り上げると、ユキに向かって笑顔で頷いた。
「ユキどの、乗ってください」
「わーいっ!」
 サイドカーにちょこんと飛び乗って、ユキはピッと敬礼する。
「操縦宜しくなんだよっ!」
「お任せください」
 こちらは折り目正しい敬礼で応じた
 フォン!という鋭い機械音が上がる。カーニンヒェンはユキを振り落とさないよう繊細かつ大胆に『操縦』し、先行する灯りを追って階段を駆け上がる。
 ブクもまた、移動の足を造り上げている。
「お医者さーん! すぐ助けに行くから慌てず騒がず走ってねーっ!」
 絡繰の見た夢(カラクリドリーム)、相棒のからくり人形が変じたのは、キックボードのような細長く愛嬌のある乗り物だ。
『――♪』
 出発を告げるベルのような音をたて、ブクも階段をひた走る。
 エンの羽ばたきが続き、章も視界を鴉と同期させたまま慎重に階段を上る。
 珂もそれに続こうとして……ぬう、と姿を現した影に気付く。
 先ほど逃げたはずのレッサーデーモンが引き返してきたのだ。
「医者も気懸りだが、此奴達を地表へ出す訳にはゆかぬ」
 ほんの一瞬目を閉じて、のどかであけすけな村の様子を思い描いて――次に見開いた珂の片目には藍の花が咲いている。
『――さようなら』
 空気を軽く裂くような音。珂の手元から放たれたそれは、またすぐに同じ場所へ戻ってくる。
 レッサーデーモンの身体に、赤い横線がいくつか入る。その線に沿ってぼたぼたと、デーモンの身体だったものが落ちていく。デーモンを横に分断したのは鋼の糸――糸雨。
 片目に藍の花咲くとき、珂の糸雨は凄まじい斬撃を可能とする。……ただし、毎秒寿命を削るのと引き換えだ。
 藍色の可憐さを片方の目に留めたまま、珂は常ならぬ速さで階上へと急ぐ。


 竜に乗って、またたくまに山頂にたどり着いたヴァルダは、なんとか潜れそうな穴を探していた。青い蝶の導きも、蝶ならざる身のヴァルダにとっては助けにならない。蝶が出入りできる穴は、人には小さすぎる。
 声をかけつつ、ヴァルダは必死でひとつひとつの穴を確かめる。

 章の放った鴉は、迷宮の奥深くへと入り込んでいた。
 カンテラを咥えているので目立つ上にバランスも崩しがちだが、とにかく急ぐのだ。蜂蜜を見分け、医者の足取りを辿る。
 と、階段の闇に終わりが来て、開けた場所に出た。
「……!」
 地下にこのような空間を作り出すのはいったいどのような力だろう?
 どのような想いだろう?
 これが人為のものであると知るカーニンヒェンは思いを馳せる。
 頭上の円蓋に煌めく水晶や銀は銀河のよう。金脈の太い筋は神の雷か。
 感慨を打ち壊すのはやはりデーモンだ。わらわらと、煌めく光を塗りつぶす無粋な毛皮と羽。
 エンはふと思いついてしまった、という風に呟いた。
「あれちょっとあのモンスター、俺と見た目似てね? 実は親戚だったりしねえか?」
 確かに、デーモンの羽は黒い。
 章は何事もないように答える。
「鴉は飛べるし、賢いよ」
 エンは「はっ、」と吐息とも笑いともつかぬ一声を吐きだした。その手元の刃はきらきらと、頭上の光を思わせる。
「――まあ、あれに親近感はちっとも湧かんがな!」
 エンの得物はカトラリー、その用途を裏切らぬ鮮やかさで敵の腱を・肉を・関節を削ぎ・切断し・切り分けてやる。
 飾りの羽もきちんと小分けにして揃えて、一丁上がり、とエンは次の敵を仕上げにかかる。
 章はあえて【挑発】して敵を引きつけ、山頂側に行かせぬよう尽力していた。
「ほらおいで。飛べないの? 鴉は飛べるのにな」
 突き出される三叉槍を見切り、がら空きの後頭部を鴉に突かせる。まったく鴉というのは、とても賢い生きものだった。

 ヴァルダがようやく見つけた侵入経路は、苔はなく、表面がつるりとした斜めの穴だった。竜はとてもではないがここからは無理だろう。
 意を決し、ヴァルダは自らの身一つをすべりこませる。何度か肌を擦ったが、幸運にもすぐに足先は確かな石畳をとらえた。
 這い出て、周囲を見回す。ほんのりと甘い香りと、淡い光は鉱石の照り返しか。
 きちんと道として整えられた地下道を、医者を探し求めてヴァルダは彷徨う。
「お医者さま、どちらにおいでですか!」
 声が反響する。
 と。道の隙間に、確かに動きがあった。
「お医者さま!?」
「……ああ、やっぱり。さっきの金色は、きみだね」
 ヴァルダの短めの金の髪に目をやって、医者は笑う。
 顔半分だけの、分厚い岩盤に隔たれての邂逅だった。
「助けに参りました」
「え? さっき足を治してもらったから、今からそちらに行こうと……」
 言い終わる前に、「あだっ!」という声をあげて医者の顔が下に消える。
 ――何もない隙間の向こうに向けて、ヴァルダは槍を放つ!
 直線を描いた槍は、医者の背後から彼に襲いかかろうとしていたレッサーデーモンの喉元を貫いていた。
 あだだ、と医者は鴉につつかれた頭をさする。みごと標的を探し当てた章の鴉は、医者の肩にとまって「さがっていろ」とばかりに咥えたカンテラを振っている。
 まだ、デーモンに息があるのだ。
 しかし鴉の(同期した章の)心配は杞憂だった。
 『ドラゴニック・エンド』、ヴァルダの槍が貫いた敵を、召喚に応じたドラゴンが追撃する。巨体がうねり、みっしりと地下空間に満ちた。
 なんとか出入りできる場所を求め、分厚い岩盤をまわりこんだヴァルダは、ようやく医者そのひとと対面した。
 頭をさすって苦笑する、30代後半くらいの男性だ。「ありがとう」と礼を言う声は、確かにあの青い蝶が導いた先から聞こえたものだ。
 鴉が鋭く鳴く。まだ安心するのは早いと言いたいのだろう。ここはどうやらレッサーデーモンがそこらじゅうを徘徊するポイントのようだ。
 今も敵の一体が、自分たち以外の動くものを発見して近づいてくる。
 医者を背に、ヴァルダは名乗りをあげた。
「我が名はヴァルダ、月に従いしもの……人々の営みを守らんとするもの」
 仔竜の変じた槍の穂先を敵に定める。
「数多のいのちに指一本、触れること叶わぬと知り給え!」


 階段の端から下へと瀕死のデーモンを追いおとし、章は安堵の息を吐いた。同期した鴉の視界に、無事の医者と護りについた猟兵の姿が入ったのだ。
 章は仲間たちにその報を伝え、自らも戦いに専念する。
 ぽー、ぽぺー!と、すっとんきょうな音がして、タイミングを狂わされたデーモンが一体たたらを踏む。……これ以上ないくらい見事な一刀両断を見ることが出来るタイミング。
 カーニンヒェンの切れ味鋭い刀が縦にデーモンを切り分けている。
 奇妙な音は章の獣奏器、民芸品の黒いオカリナだ。演奏技術が拙いので、吹くと大抵皆がっかりすること請け合いの一品であるが、実際オカリナには罪はない。
「大人げのなさは僕の短所だけど、役立てば幸い」
(「悪魔も動物の一種だ。悪魔のように操ってみせる」)
 すべて心ある人の為に。章は再度オカリナを口元に運んだ。
 彼らが陣取ったそこは、階段の踊り場のような一枚岩の上だった。敵は弱いが、どんどん数が多くなっていく。デーモンが湧き出る泉があるとすれば、そこが近いのだろう。
 カーニンヒェンは他の手足らに『目立たぬよう』周囲のルートを探らせた。下だ。ここまで階段を上ってきたが、下る道もあるらしい。
 巨大な空間に渡された階段から、下を覗きこもうとして――カーニンヒェンは慌てて身を逸らす。三叉槍が身をかすめて飛んでいく。
 終着点は階段上のユキだった。
 しっかりと槍を捉え、テレビウムである証の頭部テレビ画面に映しだす。実は狙っていた、と言えば言いすぎになるかもしれない。しかし今度は下向きに投擲された三叉槍は、もとの持ち主のもとへ帰り、二度と離れることはないくらいしっかりと相手を刺し貫いていた。
 進むにつれ、敵の数はどんどん増えてくる。
 数体を叩き落とした珂は、新たに眼前に立ったデーモンがこちらを睨み、手で複雑な印を結ぶのを見た。デーモンの耳障りな吐息に、まだ聞いたことのない石をすりつぶすような音が混じった。
 これがこのデーモンの声、デーモンの【呪いの言葉】。
 しかし珂の動きは止まらない。金縛りなどもってのほか!
「呪詛耐性なくして柩の守り人が務まろうか」
 素早く間合いをとって退け、「タタッ、」と反転して踏み込む。白い残像が翻る。糸雨がデーモンをからめ捕り、スライスにした。
 そこで珂は、階下の小さな踊り場に目を留めた。
 そこにも金が煌めいている。だがその光を濁らせるものがあった。遠目にもわかる、干からびた灰緑色の粉で描かれた紋様。
 珂はさきほど叩き落とした敵の得物……三叉槍を糸雨で絡め取った。そのまま投擲する。狙いは階下の異質な紋様。
(「鉱石や苔はなるべく削らぬよう留意するが……村一番の宝はあの医者なのだろう? 多少は大目に見てくれ」)
 狙いは確かに。穿たれた一枚岩の表面はひび割れて、紋様は大きくかき乱された。
 ドン!と、庭先で聞いた重低音が響いた。
「山頂は気懸かりだが……此奴等を地表へ出す訳にはゆかぬ」
 眼前の敵を片付けるべく、珂はつま先を前へと向けた。


 魔法陣が砕かれ、レッサーデーモンがこれ以上増えることは無くなった。
 医者の無事も判明している。
 しかし合流するまでは極力戦闘を避け、ブクは先を急いだ。長い階段を駆け上がり、と思えば次には駆け降りる。法則性などないようだ。
 細く長い階段をくだるうち、目の前に3体のレッサーデーモンが並んで上ってくるのが見えて、ブクの脳裏にひらめくものがあった。一瞬背後をみて、ひとつ頷いてから、キックボードで大きくジャンプする!
 ゴン、ドン、グキ!と続けざまにキックボードの車輪がデーモンの頭部を踏みつけた。正面からの衝撃だ、デーモンの顔は上向きになった。
 その仰向けの顔の上をユキとカーニンヒェンのサイドカーが通過していく。
 ばかな、と言いたげなデーモンらが、衝撃に空中で縦に一回転したところでその後頭部をエンの足の鉤爪に握りつぶされていく。
 表情など窺えないはずのデーモンの目に、確かに「信じられない……」という色を認めながら、デーモンの首に掛かりやすい位置に珂は強くしなやかな鋼糸を張る。
 ごろごろごろ、と3つの首が転がって、一連の動きの愉快さに章は思わず拍手したい気分だった。
 敵の数が減ってきて、エンはいくつかの方向に耳を澄ませてみた。
 ……剣戟の響き。この場で、自分たち以外にそれを鳴らすものは限られている。
「おーいセンセ! 無事かー!」
 音を拾って先導するエンに皆が続く。巨大な空間を後にして、細い通路を何度も曲がる。
 目にしたのは(見たくもなかったが)、デーモンの尻だ。
 ブクは自分オリジナルの武器・バラックスクラップを遠慮なく突き刺した。デーモンは苦鳴とともに倒れ伏す。デーモンの斃れた先に、槍を構えたヴァルダと、章の鴉を肩にとめた男の姿が見える。……これが、村の宝、マルクゥのお師匠さまだろう。
 猟兵たちは笑顔で動かないデーモンの骸を乗り越え邂逅を喜ぶ。ブクだけが、自分の武器を骸から引き抜くとき、なんとなく嫌そうだった。


 ユキは小さな手をぶんぶんと振った。
「せんせー、ここは何とかするから、村に戻って戻ってー!」
 珂は医者の全身を検める。
「どこか怪我はないか? 痛むところは」
 医師はすこし考えて、「鴉に突かれた頭、かな……」と笑った。
 章の笑顔にやましいところは微塵もない。
 しげしげと医者を見る。思えば、最初は彼や村人のことを疑ってもいたのだ。ごめん、と章は少し心の中で謝った。
(「マルクゥさん。僕もきみに学んだよ」)
 猟兵たちの喜びの声があがり、その中のユキの声を聴いた医者は、それが自分を癒してくれた相手だとすぐにわかった。
「ありがとう。きみのおかげで移動できた。あのままだと、もっとはやくデーモンに遭遇してしまっていたんじゃないかな」
 すごい技だねえ、とのほほんとした医者に、ユキは懸命に訴える。
「あのねせんせー、ぼく、色んな世界に行くからいつも回復してあげられる訳じゃないし、さっきのあれだけでへろへろ~ってなってたから、やっぱり先生凄いって思うんだ!」
 カーニンヒェンが何度も頷く。
「村の人々は皆『あの先生は村の宝だ』と口を揃えておりました」
「皆に元気な姿を見せる所までが、先生のお仕事なんだよー」
 ねっ、と医者をじぃーと見て、ユキの画面はウインクを映し出す。
「皆、待っておりますぞ」
 と。カーニンヒェンの手足達が最新の報告をあげてきた。
『崖崩れの跡あり』
 重低音が響いてくる。
 太鼓のような音。
 ブクは、武器を構えなおした。
「穴から抜け出るまでが戦いなのさ!」
 医者を守るように陣取って、猟兵たちは体勢を整える。
 カーニンヒェンは村の昔話を思い出す。黄金を求めてやってきたよそ者は、崖崩れを機に姿を消した。崖崩れ。それはどこで、何故起こった? よそ者はどこへ?
 ドン!
 ……ドン!
 重低音が響いてくる……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『呪飾獣カツィカ』

POW   :    呪獣の一撃
単純で重い【呪詛を纏った爪 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    呪飾解放
自身に【金山羊の呪詛 】をまとい、高速移動と【呪いの咆哮】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    カツィカ・カタラ
【両掌 】から【呪詛】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナミル・タグイールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※プレイングの受付は2月23日からとさせていただきます。それ以前に送信済みのプレイングは、申し訳ありませんが23日以降に再送してくださるようお願いします。

 それは「むかし、むかしあるところに」から始まるお話だった。
 


 その村は豊かな村だった。
 山頂から湧きだす水は清い流れとなり、麓で川となって、きれいな魚が掴み獲れるほど泳いでいる。
 飲み水としても、作物をうるおす水としても、ゆるやかな川はとても気前よく実りをもたらしてくれた。川は、村の生活の中心だった。
 ……たまたまそこを通りがかった行商人が、水際ではしゃぐ子どもたちが指でつまんでいるきらきらしたものを見つけるまでは。
 それは子どもの小指の爪ほど、豆粒ほどの、金の粒だった。


 むかしむかし、あるところに、獣がいた。
 目がふたつ、口と鼻はひとつ。手足は2本ずつ。言葉を喋る。そんな獣だ。
 獣は金がすきですきでたまらなかった。
 いつからつけているのか忘れてしまったが、獣は金で出来た飾りをいくつもつけていた。しゃらしゃらと鳴る金の飾り。獣は金がとてもすきだった。
 獣のすむところには、金がたくさん埋まっていて、獣はすこしずつそれを掘っては集め、掘っては集め、じぶんで飾りをこしらえることもした。獣はとても働きもので、大きな空洞とたくさんの金の飾りでいっぱいの部屋ができた。
 金いっぱいの部屋でひとり、獣はとてもしあわせだった。


 金をみつけた行商人が大勢のよそ者たちを引き連れてやってきて、豊かな村につらい季節が訪れた。
 よそ者たちは山の中腹に家をこしらえ、そこを根城にしてせっせと山を削り川を汚していく。魚も実りもなくなって、村の宝は失われた。
 しかし、万事順調に、勢いよく金を掘って行ったよそ者たちに、あるとき転機がおとずれた。
 つるはしの切っ先が振り下ろされた先に、自分たち以外があけた穴があったのだ。


 獣は驚愕した。
 自分とおなじように目がふたつ、口と鼻はひとつ。手足は2本ずつ。言葉を喋る。そんな獣がたくさんいる。
 じぶんがつくった金の飾りを、歓声をあげながらつぎつぎとっている。
 獣は憤った。
 金はすべてじぶんのもの。じぶん以外が金を得ているのはがまんがならない。
 岩場を壊して逃げようとする獣たちをすべて引きずりおろし、ひとりずつ動きを止めていく。
 だれひとり動かなくなってようやく安心できたが、これからまたこんなことがおこるとこまる。
 獣は用心の仕掛けをこしらえた。
 動くものを感知して、魔のものを吐き出す魔法陣。ひとまず、これでなんとかなるだろう。
 それでもだめなら……。
 じぶんの爪で、じぶんの呪いで、やってきた獣を壊すのだ。


 岩場が崩れる。
 太鼓のような重低音は、獣の爪が呪いを込めて大地を砕くときに響く音。
 砕かれた足元からまばゆい金色の光がさす。細工された金、むきだしの毛羽立ったかたちをした金、まるい卵のような金。
 金色だけの部屋が見える。
 その中央で、獣が呪うようにこちらを見上げていた。

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 ここまで読んでくださってありがとうございます。コブシです。
 以下は第3章『ボス戦』についての補足となります。

・戦闘開始時点で、猟兵は「ボス敵より一段上の岩場の上」にいます。
・敵の攻撃は効果が薄いですが、こちらからの遠距離攻撃は効果があります。
・敵は、足場となっている岩場を崩しにかかります。
・敵のこの攻撃が積み重なると、山頂にある苔むす穴や、中腹にあるマルクゥたちの家も崩れます。
・苔むす穴や家の壊れ具合によって、マルクゥやお師匠さま、そして村の未来が微妙に変わります。

 以上です。皆様のプレイング、楽しみにお待ちしております!
====================
ヴァルダ・イシルドゥア
耳に、身体に響く音
現れた巨体
背筋にはしる痺れ

これは、恐怖

『死』と云う概念を、その身に纏わり付かせたもの
けれど――

この背には守るべきものが在る
仲間たち、お医者さま
お医者さまと結ばれた、村のひとびと

父さま、母さま……どうか、ヴァルダにちからをお貸しください

参りましょう、アナリオン
月の御名において
我、災厄を打ち砕かん!

竜槍を振るい前衛にて戦う
仮面の奥に隠れた貌に怯まぬよう
出来るだけみなの盾になろう
槍で受け流し、時に攻撃を交えて
自分を含め体力が半分以下の仲間が居る時は生まれながらの光で回復を優先

みなの笑顔を守りきることができたなら
かたちもたぬもの
その、なんと尊いことか

ええ、ええ
うれしいです、……とても


玖・珂
金に魅入られたか
欲深いのは人も獣も同じ……業なことだ

足場の崩落は元より、地上の陥没は避けねばならん
通ってきた地形、鉱物の含有具合などから戦場の情報を収集
皆の攻撃が通る且つ最も地盤が硬いと目する場所があれば移動しよう

――羽雲よ、獣の大事な金を攫うてこい
岩場を攻撃させぬよう此方へ気を引いてみるぞ

お主も爪を使うか
攻撃がくるのは覚悟の上
黒爪を広げ怪力をもって獣の爪と組み合おう
地形破壊の衝撃を幾らか緩和できれば重畳

獣の足や腕の腱を断つように攻撃を重ねよう

見事な金細工たちだ
事が済んだなら、この部屋は蓋をした方が良いかもしれぬな
碌なモノを呼びこまぬ

地上へ出た後、何か手伝える事があれば協力しよう


鵜飼・章
あの金色の子…すごく哀しそう
でも譲れないな

鴉はまだお師匠様と一緒かな?
仲間の様子次第だけど僕達は足場に残り
護衛をしつつ【早業】の【投擲】で遠距離攻撃を行う
展翅テープで壁に貼りつけて
自由を奪い仲間の行動を補助
他、金を極力傷つけずに攻撃

足場が崩れる速度を落とす為
UC【現在完了】で威力減衰を狙う
呪詛を操る知能を封じたいから
優先順は蜘蛛>蜂>蠍
仲間や僕の攻撃に紛れさせて順に放ち
【スナイパー】で目立たせずに刺す

『嫌な感じ』これだったのかな
人間が住処を荒らして本当にごめんね
僕らは獰猛で欲深くてよく間違う動物だ
学費の話が頭を過る
けど…

僕は村の人を信じる
きみの宝物はきみのもの
もう誰も奪わないから
骸の海にお帰り


ブク・リョウ
あわわ
このままじゃお山がエライコッチャなのさ
おれ、岩場の下に降りて金を拾ったりして敵の注意を引くよ
いくよ相棒、しゅっぱーつ![絡繰りの見た夢]

※下降希望の猟兵さんが3人位いるなら
おれは降りずに遠距離攻撃で戦うよ
その場合は[鉄屑の舞踏]で
敵だけに鉄花が踊るようにするね

もしかしなくてもこの空間の主さんですか
すみませんお邪魔してますのさ
理由あって魔法陣も壊しました、すみません
もうお邪魔せずにお暇しますので
矛を収めてもらえない?

相棒に乗って移動しつつ敵に声掛け
話が通じなさそうなら応戦、速さで勝負なのさ
バラックスクラップでザックザクいくよ
尻に攻撃はおれにダメージが入るのでNG

村の宝物と未来、守れたかなぁ




 黄金の光に何を見出すかは人それぞれだ。
 ヴァルダにとって、それは色。
 目の前に現れた巨体の背後にひろがる禍々しき鬱金。
 色の次にやってきたのは音だ。
 彼女の耳に、身体に、低く重く、響く音。
 ヴァルダの背筋に痺れがはしる。その正体もわかっていた。
(「これは、恐怖」)
 我が身に感じたものに名を与え、目を背けることなく、あえてヴァルダは目を凝らす。
 ソレは、敵は『死』と云う概念を、その身に纏わり付かせたものだ。
(「けれど――」)
 振り向かずともヴァルダは感じることができる。この背には守るべきものが在る。浮かんだ名を確かめる。
 仲間たち、お医者さま。お医者さまと結ばれた、村のひとびと。
(「父さま、母さま……どうか、ヴァルダにちからをお貸しください」)
「参りましょう、アナリオン。月の御名において、我、災厄を打ち砕かん!」
 鬱金の闇、口をあけた裂け目にヴァルダは身を投じる。
 轟音が続き、ブクは「あわわ、」と慌てたように足踏みをした。まだこの岩場は無事だが、どこかで崩落の気配がする。
「このままじゃお山がエライコッチャなのさ」
 意を決し、ブクもまた獣の待つ岩場の下に降りるべく、ひょい、と穴へと飛び込んだ。
 珂は金の光を目に留めて、ほんの一瞬だけ感慨に浸った。
「金に魅入られたか。欲深いのは人も獣も同じ……業なことだ」
 すぐに視線を走らせる。足場の崩落は元より、地上の陥没はなんとしても避けなければならない。
 珂は脳裏に、通ってきた地形、鉱物の含有具合などを浮かび上がらせる。これを戦場の情報として代入する。
(「皆の攻撃が通る、且つ最も地盤が硬いと目する場所……」)
 獣をそこまで誘導するには、接敵するのがよさそうだった。
 珂の身もまた、ひらりと裂け目へと消える。
 章は裂け目の向こうに垣間見た獣の姿を思い出していた。
「あの金色の子……すごく哀しそう」
 何故そう感じたのか、はまだ説明できない。そして。
「でも、譲れないな」
 章は背後の医者を肩越しに見やる。彼は緊張した面持ちで裂け目の向こうをみつめていた。章の鴉は、まだ彼の肩にとまっている。
 ……足元がびりびりと小刻みに揺れる。
 下に向かった仲間を信じ、章は医者と共に岩場に残ることに決めた。


 床の黄金に足をつけ、ヴァルダは真っ先に獣のもとに走った。
 竜槍を振るい、いままさに大きな岩の柱に叩きつけられようとしていた獣の爪を弾く。
 ――重い。
 槍を持つ手にびりびりと嫌な振動が伝わってくる。
 獣はのそりと首だけ回してヴァルダのほうを向いた。
 仮面の奥、隠れた貌。
 のぞくのは、憎しみと恨みに満ちた目。
 獣のようで、そしてヒトのようで、ヴァルダはそれに怯まぬようあえて前に出る。
 皆の盾となるために。
「キ、キ、き、きん」
 獣は口を開き、言葉のようなものを吐きだした。じりじりと槍が押し戻される。
「きんは、オれの、オレだけノものダ!!」
 ガキン!とヴァルダの槍が弾かれる。体ごと持って行かれそうになり、いったん下がりつつも、再びヴァルダは槍を構えて獣に向かう――と。
 ひゅ、と空気をかすめる音がして、ヴァルダに爪を叩きつけようとした獣の足元に何かが落ちた。――否、落ちたのではなく狙って投擲されたのだ。
 岩場から、章が素早く投げつけたそれは展翅テープ。
 標本に昆虫をとめるための道具は、いま自在に大きさを変えて相手を絡め捕る。獣をとどめ続けるのは無理でも、次の一歩を止めることは出来る。
 ……そしてその間には、例えばこんなことも可能だ。
 章のユーベルコード【現在完了】。意識障害を招く毒蜘蛛を、章は獣の背中に向けて放っていた。足元に注意が散っている獣は気づかぬままだ。
 蜘蛛に望むのは、まず呪詛を操る獣の知能を封じること。
 効果が表れるにはもう少し時間が必要か。そう思った時。
『―――♪』
 場違いなほどご機嫌なベルの音がした。
 獣の視線が音源をもとめて動く。
 音の源は変形したブクのからくり人形。
 そしていまはキックボードとなったからくり人形に騎乗するブクは、大きな金の卵をよく見えるよう掲げ、体ごとユラユラ揺れている。そんなものを目にしたのだから獣が怒りの声をあげるのは当然だった。
「ガアアァッ!」
 岩場も槍も忘れてブクに襲いかかる!
 首尾よく敵の注意を引いたブクは前を向いて一声。
「いくよ相棒、しゅっぱーつ!」
 金の部屋を、縫うように走る。
 すぐ後ろに、ブン!とものすごい勢いで何かが振り下ろされた気配がして、さすがにブクもひいた。尻に攻撃はダメージがでかい、そしてこの獣、足が速い!
「もしかしなくてもこの空間の主さんですか。すみませんお邪魔してますのさ」
 背後に向けて語りかける。
 返ってきたのは、至近距離で炸裂する重低音。
 相棒の後輪が空転する。黄金の床が大きくへこんで接地面が消えたのだ。
「理由あって魔法陣も壊しました、すみません」
 バランスを崩した相棒は横滑りして、黄金の壁に行き当たって止まる。そんな相棒とブクに向け、獣は大きく両手を拡げた。掌に、不吉な力が宿っている。呪いが放たれる!
 ブクの全身は金縛りにあったように動けない。
「……もうお邪魔せずにお暇しますので、矛を収めてもらえない?」
 口だけは動いたからそう言った。ブクは至ってまじめだ。
 獣はそれに耳を貸すことはなく大きな爪を振り上げて……。
「――羽雲よ、獣の大事な金を攫うてこい」
 涼やかに声がして、珂の意に従う白い猛禽がブクの手元から転げ落ちた金の卵を鋭い爪で捉えて持ち去る。
「お、オレノ、きんガ!!」
 獣の巨体がぐらりと傾いで、体重の載った重い爪が羽雲を狙うのに、珂の爪が逆方向からがっきと噛み合い、相殺する。
「お主も爪を使うか」
 口の端に微かな笑みを。片目には緋色の花を。
 鮮やかに咲かせて、珂は黒爪を振るう。
 爆発的に増大した戦闘能力は、一秒ごとの寿命を代価とする。それを承知の上、覚悟の上で、珂は怪力をもって黒鐵の爪をなめらかに振るう。
 互いの血で黄金の部屋に朱の色を刷く。
 血の色の下で、章の蜘蛛の毒は獣の体内を巡っている。もとから統一感のない動きが、より手当たり次第の、前後を考えないものになる。
 獣は突然頭部を抱え込んだ。
 頭部。黄金の山羊の形をした仮面。もはやそれが本当の顔だといわんばかりに顔全体を被いつくした――仮面。
 猟兵がその下の全貌に思いを馳せたとき、獣は、黄金山羊は咆哮した。
「――オ・オオ・ゴヴォオ」
 珂の爪から、ヴァルダの槍から飛び退る。吼える。咆哮は呪いの礫となり周囲に飛び散った。
 黄金の壁に、床に、天井に。いくつも傷がつき、穴があき、そして岩の亀裂は章や医者が佇む岩場まで迫ってきた。
「! 速さで勝負なのさ!」
 狂乱の獣に、ブクは手にしたバラックスクラップを横合いから突き刺す。呪いの礫がブクの肩を穿つ。……それは医者のいる岩場に向かうはずだったもの。村の宝物を守ったのだから、まあ帳尻はあうのさ、とブクは心の中でごちた。
「ア、あ、ァ」
 獣の咆哮には、まだ言葉の名残りがあった。
「きん、おレがみつケテ、オレがツクッタ、きん」
 トるな、と、意識の混濁した獣はかつての盗人への呪詛を吐く。
(「『嫌な感じ』これだったのかな」)
 背に医者をかばいながら、章は判別した獣の言葉を聴く。
「人間が住処を荒らして本当にごめんね。僕らは獰猛で欲深くて、よく間違う動物だ」
 ふと、村で聞いたマルクゥの学費の話が頭を過って、章は振り向いて医者の貌を見た。
 きょとんとした顔。
 黄金を欲する理由を彼は、村人たちは既に持っている。
(「けど……」)
 前に向き直り、章は己の思考を戦場へと戻した。
 獣はまた巨大な爪を叩きつけ、岩場を、山全体を揺るがしていた。
 その手足の半分ほどは血の色に染まっている。
 珂も同じく。常は白と黒のみ纏う身を、片目に咲いた緋色と、半身に散った赤に分け与えている。
 と。珂の身体を淡い光が押し包む。
 ……ヴァルダの、生まれながらの光。戦いの中で盾となり、傷ついた仲間を癒すのは彼女の望みとするところ。
 とはいえ、激戦の中で癒しの力を用いたためにヴァルダは片膝をついてしまう。
 それでも槍を手に、獣の動きを封じに動く。
 岩場の上で、章は終わりが近いことを察していた。
 獣が哀しげに見えるのは、人間に近いからだ。
 『ほかの人間に酷い目にあわされた人間』に近いからだ。
 だがわかる。獣はオブリビオン、過去そのものの漏出。永遠に変わることなく過去のままであろうとする。
(「僕は村の人を信じる。きみの宝物はきみのもの。もう誰も奪わないから」)
「……骸の海にお帰り」
 呟きは、ほぼ同時。
 珂の黒爪が、獣の頭部の金羊を真正面からゆっくりと握り潰し――金はやわらかく形を変え、獣を守ることはなく――。
『――さようなら』
 その言葉に送られるように、獣はゆっくりと倒れていく。
 ……金の細工物がしゃらんと鳴った。

 不思議な静けさが辺りに満ちた。
 猟兵の幾人かが岩場から降りて接敵での速攻を狙ったのがよかったのか、周囲の崩壊の度合いも激しくない。……いや、山頂はどうなっているのかはここからはわからないが。
 珂は視線を上から下に戻した。
 細かなレースのような細工物や、花開いたような首飾り。椅子も剣も、すべて黄金。
「……見事な金細工たちだ」
 目を離して、珂は提案する。
「事が済んだなら、この部屋は蓋をした方が良いかもしれぬな。碌なモノを呼びこまぬ」
 同意の頷きが全員から返ってきた。
 ブクは適当に転がっている金の塊をつんつんとつついた。これが金だと思わなければ、道端に転がっている石と変わりはない。村人たちがこれをどうこうする姿が思い浮かばなかった。
「たぶん、魔法陣に触れるものがなければ、ずっとこのままだったに違いないのさ」
 触れるもの、と呟いて、医者が肩を落とす。
「つまり……わたしが全部悪かったんだね……」
「ユーは近道したかっただけなのさ」
 医者は天を仰ぐ。
「考え事をしていて、遅くなったんだ」
 『考え事』の中身を、猟兵たちはさまざまに推察しながら黄金の瓦礫の部屋を後にして、懐かしい地上への道を急いだ。


 なにごともなく建つ家のアーチ門は、蔦の緑陰も鮮やかに美しい。
 ブクはあらためて実感した。
「この家が壊れたらエライこっちゃだったのさ」
 庭に開いた穴から姿を現した猟兵たちと、その背後の医者を目にして、村人たちはいっせいに歓声をあげた。
「先生、ご無事で!」
「遅いお帰りでしたな!」
 拍手さえ起って、そして医者を囲む村人たちの足元からはい出るように小さなマルクゥが飛び出してきた。
「お師匠さまあ!」
 いったん医者の腰回りにぎゅうっと抱き着いて、そしてぱっと身をはなす。猟兵たちひとりひとりに、ぺこりぺこりと頭をさげる。
「お師匠さまを助けてくださって、ありがとうございました!」 
 ちいさくて熱い両手で手を握られて、ヴァルダの頬にも熱が灯るようだった。
 いっせいに咲く笑顔。村人たちの笑顔。
(「みなの笑顔を守りきることができたなら。かたちもたぬもの。その、なんと尊いことか」)
「お師匠さまも村も無事で、ほんとうに嬉しいです!」
「ええ、ええ。私もうれしいです。うれしいです、……とても」
 ヴァルダが護ったものは、こんなにもあたたかい。
 村人たちにばんばん背中をたたかれながら、ブクは思う。おそらくこういう雰囲気が村の宝物で、未来なのだ。
「宝物と未来。……たぶん、守れた、かなぁ?」
 珂は、無事を祝う段階を終え、マルクゥや村人にたしなめられる段階にはいったらしい医者にむけて、自ら申し出てみた。「何か手伝える事があれば、協力しよう」と。
「……それなら」
 庭の穴を塞ぎ、柵を直して。
 それから山頂に行って、苔を採取したいと医者は言った。
「ある程度量を採って……薬を精製したいなと」
「お薬つくるですか?」
 見上げるマルクゥの頭を撫でて、医者は微笑む。
「目途がたってね。お薬をつくって、街に行って……まあ高くはないが安くもない程度の値段で売れたらいいなと……そうしたら、お前を学校に行かせてやれる」
「やだ――!!」
 そう叫ぶマルクゥに、医者は驚いたようだった。
 マルクゥは章やブクの背後に隠れて、そこから訴える。
「ここで先生に教えてもらうんじゃダメ?」
「新しいことも学ばないと。わたしも村のために、街から本を取り寄せている。あたらしい病気も、薬も、次々出てくるよ。……お前には、わたしの跡を継いで、この村の立派な医者になってもらわないと」
 それは未来の話だった。
 珂は透き通った空と、その下に続く山への道を見晴るかす。村人たちは、医者は、あの山が崩れて苔がなくなっていれば黄金を手にしただろうか?
 章はむくれるマルクゥの顔つきで、どうやら彼が折れつつあるのを察した。切っ掛けはたぶん、『跡継ぎ』だ。それも確かな愛情の証。
 それでもまだ不満げな彼を、ブクは高く肩車した。わ、と驚きと笑いの混じった顔をしたマルクゥを、ブクは村人たちに掲げてみせる。
「まだ軽い、けれど、これは未来の宝物の重さなのさ!」
 「その通りじゃ」「たくさんごはん食べようね!」と村人たちの合いの手が入る。
 また歓声が起こる。その賑わいにヴァルダは全身を浸し、心は歓喜に満ちていった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月27日


挿絵イラスト