堕神浄穢譚(作者 波多蜜花
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●強欲は全てを欲す
 それは欲望のままに哀しみを、嘆きを欲した。それが何よりのご馳走だったから。
「もっと、もっとちょうだい」
 歌うように、囁くように、彼女たちは彼女たちが邪神と呼ぶ堕ちた女神に乞い願う。
「嗚呼、嗚呼、どこ、あの人はどこにいるの」
 この地に縛り付けられ、神性をとうに喪った嘆きの女神が悲痛な声を響かせた。
「帰りたい、あの人の元へ、帰りたい……」
 叶わぬ願いを口にすればするほど、女神の正気は失われ、哀しみと嘆きの感情を糧とする強欲の鳥人形たちが羽ばたき、囀ずる。
「素敵、素敵ね。もっと、もっと欲しいわ」
 どれだけ喰らっても足りぬ強欲と、尽きることのない嘆き。
 それはいずれこの場を訪れた者達を、同じ狂気に沈めてしまうほどの闇であった。

●グリモアベースにて
「ちょいと山間部にある湖に行って、堕ちた女神を救ってきてくれないか」
 買い物でも頼むような気軽さで、深山・鴇(黒花鳥・f22925)が猟兵達に声を掛けた。
 とある地方の山間部には、古くより人々の善き縁を結んできた、夫婦神の片割れである姫神の伝説があった。
 けれど、過疎化が進むうちに、姫神への信仰は次第に薄れてゆき今は古く朽ちた社が残るのみ。
「そこを拠点として利用され、邪神として召喚されたみたいでな」
 人が訪れることの少ない場所であったが、社のすぐ近くにある湖が最近ネットで隠れた名所としてピックアップされたことにより、観光客が少しずつ増えてきているのだという。
「その湖は人の手が入っていない澄んだ水質ということもあって、昼間に見ても鏡面のように空を映して美しい、更に今の時期は蛍が見られる……というのがネットの評判だな」
 大々的に観光名所にしようという動きにより、簡易的な桟橋と二人乗りのボートなどが整備されつつあるという。小規模ながら湖までの道を整備する工事が行っている為、今は一般人の出入りを禁止している。それのお陰もあって、一般人への被害はまだ起きていないのだが――。
「明日にも規制が解かれるらしくてな。急で悪いんだが今日中に向かうのがベストなんだ」
 女神を守るように、正確に言えば嘆きの感情を搾取する為に女神を守っているのは強欲の傀儡と呼ばれる烏人形。彼女達が欲するのは嘆きの感情で、相対する者の嘆きを引き摺りだす。
「引き出されるものは人によって違うだろうが、悲しい、辛い、そんな感情を無理やりに引き摺りだして糧とするんだ」
 それは相手が猟兵であっても同じこと。鳥人形と相対すれば、必ずその感情を引き摺りだされるだろう。そしてそれを鳥人形が取り込んでしまえば、鳥人形の力が増して、倒すのに少々骨が折れることとなる。
「その感情に振り回されることなく――まあ、多少引き摺られたりはするだろうが、抑え込むなり別の方法でなんとかするかして、鳥人形を倒して欲しい」
 そうすれば、嘆きの感情を引き摺りだされるままに狂気に堕ちている女神を、少しは正気に戻すことができるはず。
「それでも、女神の嘆きは深いだろう。多少の会話は可能だと思うが、猟兵であるお前さん方を襲って来るはずだ。彼女の身を解放する為にも」
 倒してやって欲しい、と鴇が言った。
「倒した後は、満月の湖と蛍をゆっくり眺めていくといい」
 折しも今夜は満月、女神を救った後に蛍が舞い遊ぶ幻想的な景色を楽しむのもいいだろう。
 それじゃあ、あとは頼んだぜ、と鴇は話を締め括り、転送ゲートを開くのだった。


波多蜜花
 閲覧ありがとうございます、波多蜜花です。
 今回はUDCアースで堕ちてしまった女神を救っていただき、その後で湖に蛍、満月と満天のお星さまなんかを楽しむんで貰えたらと思います。
 一章だけのご参加も、お一人様でもグループでも歓迎しております。

●第一章:集団戦『強欲の傀儡『烏人形』』
 到着時刻は陽が落ちる前。
 参加される人数の数だけおります、お一人様につき一体の鳥人形がお相手となります。
 悲しい、辛いといった嘆きの感情を無理やり引き摺りだされますので、それに対抗しつつ鳥人形を倒さなくてはなりません。
 どのような嘆きの感情を引き摺りだされるのか、その際にあなたはどうなってしまうのか、そしてどのように対抗するのかをプレイングにお書き添えくださいませ。
 断章は挟みませんが、受付期間はMSページを参照くださいませ。

●第二章:ボス戦『???』
 鳥人形を倒すと、囚われていた女神が姿を現します。
 鳥人形が倒されたことにより、多少の正気を取り戻しているので会話は可能です。ですが、長続きはしないのですぐに嘆きに呑まれて攻撃を仕掛けてくるでしょう。
 救う術は倒すことのみです、どうか嘆きに沈む女神を還してくださいますようお願いいたします。
 プレイング受付前に断章を挟みます、締切などはMSページをご覧ください。

●第三章:日常『月光の下で』
 穏やかな満月の夜です。湖には多くの蛍が生息しているので、湖のほとりで楽しんだり、ボートを借りて湖に出たり、水上歩行で水面を歩いたり、空から楽しんだり、できそうなことはしていただいて構いません。
 ただし、公共良俗に反するような内容を含んだプレイングなどは採用自体が見送りとなります、恐れ入りますがご了承くださいませ。

●同行者がいる場合について
 同行者がいらっしゃる場合は複数の場合【共通のグループ名か旅団名+人数】でお願いします。例:【湖3】同行者の人数制限は特にありません。
 プレイングの送信日を統一してください、送信日が同じであれば送信時刻は問いません。

 それでは、皆様の物語をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『強欲の傀儡『烏人形』』

POW ●欲しがることの、何が悪いの?
対象への質問と共に、【自身の黒い翼】から【強欲なカラス】を召喚する。満足な答えを得るまで、強欲なカラスは対象を【貪欲な嘴】で攻撃する。
SPD ●足りないわ。
戦闘中に食べた【自分が奪ったもの】の量と質に応じて【足りない、もっと欲しいという狂気が増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ ●あなたも我慢しなくていいのに。
【欲望を肯定し、暴走させる呪詛】を籠めた【鋭い鉤爪】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【欲望を抑え込む理性】のみを攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


黒鵺・瑞樹


悲しい事つらい事は人の為になれない事。
俺は誰かの為に生まれた道具なのだから、役に立てないのであればそもそも存在する意味がない。
それは人の身を得た今でも変わらないし、きっとこれからもずっとそれは変わらないだろうな。
為せないのならば、在る事すべてが無意味で、無気力に苛まれるだろうな。

UC月華と呪詛耐性で感情の引き摺り出されるのに抵抗。
戦い方は基本存在感を消し目立たない様に死角に回り、可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺攻撃を。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは黒鵺で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性、オーラ防御で耐える。


●誰かの為の
 朽ちた社から見える湖はその透明な湖面に暮れかけた空を映していて、なるほど美しいなと黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)が目の端に留めて思う。
「美しい場所に、お前達は不似合いだな」
 黒い翼を羽ばたかせ、強欲の傀儡『烏人形』が口元に笑みを浮かべて瑞樹を誘う。
『我慢なんて必要ないの、嘆きの感情を解き放って』
 そして私に食べさせて。
 ギャア、ギャア、と鳥人形が甲高い声で鳴いた。
「……っ」
 ぐ、と眉間に皺を寄せ、瑞樹が目を細めながら黒鵺を構える。
『さぁ、悲しいこと、辛いこと、私が食べてあげる』
 食べてあげるから、ねぇ。
 瑞樹の心の中から、何かが引き摺りだされるような、ぞわりとした感覚が臓腑を撫でていく。それはそのまま、瑞樹の声帯まで駆け上がり――。
「悲しいこと……辛い、のは、人の為になれない事、だ」
 ヤドリガミである瑞樹は、誰かの為に生まれた道具。ならば、誰の役にも立てないのであれば、存在する意味がない。死蔵されることなく、かつての主に愛用されてきた瑞樹だからこその嘆きだ。
『素敵、素敵な嘆きね』
 ああ、と鳥人形が笑みを深める。
「人の身を得た今でも、それは変わらない」
 これからも、きっと、ずっと、瑞樹が瑞樹であり続ける限り、それは変わらないだろう。
 そして、それが為せないのであれば。
「在る事すべてが無意味で、無気力に苛まれる……だろう、う、ああ」
 ずるり、と引き摺りだされた独白に、瑞樹が黒い刃の大振りなナイフ、自身の本体でもある黒鵺を無意識に握り締めた。
 しっくりと手に馴染む感覚に、意識が戻される。なるほど、これが……知らぬうちに引き摺りだされた感情を抑え込む為、取るべき手段は一つだと鳥人形をしっかりと視界に捉えて目を開いた。
「あまり使いたくないんだがな」
 だが、背に腹は変えられぬ。
 息を一つ落とし、瑞樹が爪先で地を蹴る。舞うように鳥人形の翼を躱し、黒鵺を構えた。
 シャン――! 鈴を鳴らすような音が遠くから響いている、そんな感覚に身を委ねて瞬き一つ。次に目を開くその刹那の間に、自身に月読尊の分霊を降ろした瑞樹の姿が変わる。そして、胡と刀に形を変えた黒鵺を構えて鳥人形に斬り掛かった。
『我慢しなくていいの、嘆きを、ちょうだい!』
 鳥人形の鋭い鉤爪を黒鵺で弾き、麻痺の力を乗せた胡を叩き込む。幾度となく鉤爪の先が瑞樹を襲うけれど、その爪は瑞樹の何物をも傷付けることはできない。
「これで最後です」
 鳥人形の背後を取った瑞樹の刃が、その胸を貫いて――。
大成功 🔵🔵🔵

アパラ・ルッサタイン
こんなうつくしい所なら自然と畏敬の念は生まれそうなものだが
そのヒトがそも居なければ、か

ずうっと焦がれている灯がある
あたしの奥底まで照らし、けして消えることが無い。今も
あの人のようなランプが作りたい

けれど足りない
技術も
イメージも
何もかも

浮かぶものを模り、一歩近づけたと思っても未だ遠く
いつかは手に届くのか
胸には焦りが燻っている
この己に対する嘆きが解るかい?

でも、だからこそ
もっと欲しがりたい
技術も
うつくしいものを識る事も
この燻りが昇火されるまで
諦める道は無いもの

君も欲しがっていい
それは悪ではない
あたしにその嘴を向ければ本当に求むるものが手に入るのならね
さあおいで

後は何方の欲が通るか
ぶつかり合うだけさ


比良坂・逢瀬(サポート)
基本的には誰に対しても丁寧で礼儀正しい所作と言葉遣いで接します。

日頃から理性的で、常に穏やかな微笑を絶やさずに、平常心を持って一切の事を為します。

冷静に状況を見極めてから行動し、僅かでも勝機が存在するのであれば自身が傷つくことを厭いません。

新陰流を修めた剣士であり、二尺三寸の太刀、三池典太を愛刀にしています。
敵の攻撃を<見切り>、そして<ダッシュ>と<ジャンプ>を駆使した高い機動力で相手を翻弄する戦法を好みます。
得意技は影を斬る事で相手の実体を斬る異能の剣術です。

アレンジやアドリブ等は歓迎致します。


キア・レイス(サポート)
大得意 隠密・潜入・暗殺・遠距離攻撃・籠絡
得意 偵察・探索・支援・制圧・集団戦・時間稼ぎ
不得意 目立つ・コミュニケーション・ボディタッチ・格闘戦
特技(アイテム装備時)ピアノ演奏・歌唱・二輪車操縦

幼い頃から吸血鬼に飼われていた奴隷
吸血鬼の魔力を少量ながら持ち一部UCはそれを元に発動している
現代火器による戦闘と斥候・諜報・盗賊行為が得意な他、色香を使った誘惑が得意技
反面普通の人と関わったことが少なく踏み込んだ会話が苦手、他に不用意に身体を触られると不快感を覚え一瞬身体が動かなくなる

アドリブ歓迎
UCや装備品の説明文は読んで頂くと書きやすいと思います
また一部UC使用時の口調は覚醒時を使用してください


●焦がれた先に灯すもの
 黄昏の湖面はまるで燃える空を写し取ったようで、こんなにうつくしいならば自然と畏敬への念はうまれそうなものだが、と考えてアパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)は首を横に振った。
「そのヒトが、そも居なければ……うまれるものも、うまれない、か」
 そして、生まれなくてもよいものばかりが生まれ来る、と黒い翼を怪鳥の如く羽ばたかせる傀儡を見遣った。
『欲しいわ、あなたの嘆き。見せて、ねぇ、ねぇ』
 そして私にちょうだい? 幼子が無邪気に強請るように、鳥人形が囁く。
 ぐらりと傾きそうになった身体を抱き締め、アパラが足先から身体の内側を引っ掻くような不快な感覚に目を伏せる。
 伏せた先に見えたのは、アパラがずっと焦がれている灯りだった。
 アパラの奥底まで照らし、宝石の身体を温めてくれるような、決して消えることの無い灯り。
 それは今だって――。
「あの人のようなランプが作りたい」
 けれど、足りないのだ。技術もイメージも経験も、何もかもが、あの人には届かない。
 それは正しく彼女の嘆きで、鳥人形の口角がニィ、と持ち上がる。
「浮かぶものを模り、一歩近づけたと思っても未だ遠く……」
 ああ、いつかは手に届くのだろうか。
 アパラの身体に走るプレシャスオパールのように、この胸には焦りが燻っているのだ。
「君に、この己に対する嘆きが解るかい?」
 アパラの瞳が、蠱惑的なオパールのように輝く。
『解るわ、嘆きの深さを感じるもの』
 ほう、と息を吐くように鳥人形が笑う。
「君が感じているのは、嘆きというだけの感情だ。その嘆きを糧にして、前へ進もうとする気持ちはわからない」
 鳥人形は口元に笑みを張り付け、首を傾げる。
「あたしは、もっと欲しがりたい。技術も、うつくしいものを識る事も」
 この胸を焦がす炎が昇火されるまで、諦める道は無いとアパラが笑んだ。
『欲しいわ、ねえ、もっと嘆いて? 欲しがることの、何が悪いの?』
 アパラの嘆きが弱くなっている、それでは困るのだと言わんばかりに鳥人形が黒い翼からカラスを召喚する。それはアパラ目掛けて急降下していく。
「君も欲しがっていい、それは悪ではない」
 それがこの怪異の本質なれば、悪意をもって求めているのではない。生きる為に欲しいのだ、それが際限のないものでも。
 アパラの胸元から斜めに走る裂け目から、地獄の炎が噴き出す。それはカラスを狙って迸るけれど、炎を掻い潜り、執拗にアパラを狙う。
「助太刀致しましょう」
 己と対峙していた鳥人形を一刀の下に斬り伏せた、比良坂・逢瀬(影斬の剣豪・f18129)が穏やかな笑みを浮かべて二尺三寸の太刀、彼女が愛用する三池典太を構えてアパラの隣に並び立つ。
「嘆きが深ければ深い程力を増す類の怪異……厄介なことです」
 それ程に、アパラが焦がれる先の灯りは遠いのかもしれない。けれど、必ず自分の物にして見せると、アパラが瞳を強く輝かせる。
「あなたの嘆きも、あのお人形に?」
「ええ、誰にでも嘆く感情はあるものです」
 その深さは人それぞれ、誰の嘆きが深く、誰の嘆きが浅いなどはないと逢瀬は思う。
「全く、厄介なことだな」
 オーソドックスな拳銃を構えたキア・レイス(所有者から逃げだしたお人形・f02604)が溜息交じりに、つい今しがた倒した鳥人形の消えゆく屍を踏み越えて二人に合流する。
 身の内に燻る嘆きを引き摺りだされ、愁いを帯びたような表情でキアが乱れた髪を掻き上げて言った。
「後方支援でよければ」
 他人との接触や会話を得意としない彼女の短いその言葉に、アパラと逢瀬が頷く。
「助かるわ、ありがとう」
「構わない、猟兵として当たり前のことだ」
 そっけないように聞こえる言葉だけれど、キアには周囲を助けようとするだけの心があるのだろうと、アパラがふんわりと微笑んだ。
『ふふ、ふふ、嘆きを持つ人たちがいっぱいね、素敵、ちょうだい、もっと、もっと!』
 あなたたちの嘆きは、心地いいわ。だから、我慢しないで? そう笑う鳥人形が鉤爪を振るう。それを避け、キアの弾丸が放たれると逢瀬の白刃が鳥人形の黒い翼を狙って一閃の煌きをみせた。
『ひどい、ひどいわ。欲しいだけよ、くれたっていいでしょう?』
 羽をもがれた鳥人形が、それでも欲望のままに三人へ迫る。
「それで君の本当に求むるものが手に入るならね」
 悲しみや苦しみを失くせば、それはきっと楽になるだろう。それで救われる者も、確かにいるだろう。
「お生憎様ね、あたしは存外欲深いみたいだわ」
 嘆きすら糧にして、望むものを手に入れる。アパラの胸元から、再び噴出した地獄の炎が今度こそ鳥人形を捉えて、鮮やかなファイアオパールの如く、それを燃やし尽くした。
「助かったよ、お陰で倒せたようなものさ」
「余計な手出しでなかったなら、良かったです」
 すっと会釈をした逢瀬の横で、キアも小さく頷く。二人に向かってふわりと微笑み、アパラが湖面に視線を向ける。
 湖面は一層燃え盛るかのように、空の朱を映していた。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

新山・陽
 保護される以前、かつて誘拐され脳をイタズラされてから、民間人を殺害した凶器が手の中に生じる『悪意ある助力』を得ました。脳は変異し、今と大差ない精神性となり、子どもという時期は消えました。
 辛いとは、宿敵の生存と繋がりを痛感しながら生きる、今日この日の今現在で間違っておりません。
 『鍵をかける力』で精神を律し、呪詛に対して【破魔】により【浄化】します。UC『凍えた液鋼』を発動し、【援護射撃】と【集団戦術】を用いて敵に鋼球をぶつけようとします。

 「それでも、今日を良しとする者はおります」
 この現在に至るまで練磨した忍耐の年季が違います。行き場のない想いをつつくだけの輩は、どうぞお引き取りを。


●鍵を掛けて、凍らせて
 一目で高級品だとわかるような仕立ての良いスーツを纏った、それこそ高層ビルのオフィスが似合う……そんな女性の影が、朽ちた神社の境内に落ちる。
『あなたの嘆きも、ちょうだい? きっと、きっと素敵だわ』
 鳥人形がクスクスと耳障りな声で笑うと、新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)が踏み出し掛けた足を止めた。
 足の爪先から脳天迄をザリザりとした鑢で擦られるような、不快な感覚に思わず閉じてしまいそうになる瞼を押し止めて陽が鳥人形を鋭い目つきで見据える。
『あなたの、嘆きを。ねえ?』
 我慢しなくていいの。一瞬の瞬き、その筈なのにまるで深い奈落に落ちたような――。
 そうして、つらつらと陽の頭の中に保護される以前の記憶が走る。
 誘拐され、脳を弄り回された、記憶。そう、それからだ。民間人を殺害した凶器が手の中に生じる、『悪意ある助力』を得たのは。それは簡易な、何処にでもありふれている武器。武器と呼べるようなものではないのに、武器として使うとなればそれなりの殺傷力を持つ物から、人を殺す為の道具まで。
 使い方が、解ってしまう。そう、陽が息を吐く。けれど、使い方は自分次第だと闇の中で呟いた。
 子ども時代と呼べるようなものはない、そんな時期は早々に終了せざるを得なかったからだ。
「今と大差ない精神性であれば、わざわざ子どもの振りなんてする必要もないですから」
 別段、辛いと思うような事ではなかった、と陽は思う。それよりも、そう、辛いと思うのは――。
「辛いとは、宿敵の生存と繋がりを痛感しながら生きる、今日この日の今現在で間違っておりません」
 そう言いきってしまえば、己が立っている場所は硬い石畳の上であると知覚できた。
 鳥人形が何かを仕掛けて来る前に、陽が動く。鍵を掛ける力によって自身の精神を律する、これ以上心を搔き乱されぬように。
 破魔の力を張り巡らせて鳥人形の呪詛を浄化すると、香木の香りが陽の鼻孔を擽る。
「……落ち着くものですね」
 ふ、と表情を緩ませて、陽が黒い翼を羽ばたかせ鉤爪を剥き出しにして迫りくる鳥人形に、腕輪の嵌まった手を突き出した。
「各個体は速やかに、これを解決せよ」
 陽の身体を庇い、更に壁となる程の冷気を纏う鋼球が現れる。陽の指示通り、鋼球が一斉に鳥人形へと襲い掛かる。避ける術もなく、鳥人形が跡形もなく姿を失くし――黒い羽根だけが冷たい石畳に散らばっていた。
大成功 🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『禍罪・擬結』

POW ●藍
【悲痛な叫びと共に大量の水】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD ●愛
【血のように赤い糸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●哀
【悲哀に満ちた歌】を披露した指定の全対象に【戦意を喪失する程の寂しさや悲しみの】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は榛・琴莉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●嘆きの女神
 無数の黒い羽根が散らばった境内に、この季節には不似合いな木枯らしを思わせるような強い風が吹いた。
 吹き荒れる砂塵に思わず目を庇う。肌を刺すような冷たさのそれは、黒い羽根をどこかへ吹き飛ばし、目を開けた時には――。
 女が一人、そこに在った。
 艶やかな黒髪は乱れ、白無垢と窺える着物の裾からは魚の骨と尾びれであろう下半身を覗かせている。何よりも、目を引くのは白無垢の上から刺さる杭に留められた札。恐らくは、この地に縛り付ける為に施された何かしらの名残だろう。
 白い布面によって表情はわからないけれど、その唇からは悲し気な声が漏れていた。
『嗚呼、どこに、どこにいるの』
 帰りたいと嘆く声。
 利用されただけなのだろうと、誰かが呟く。けれど、そうであったとしても、彼女が振り撒いてしまう嘆きは狂気を呼ぶだろう。
 今ここで、女神の望む通りに還してやらなければならない。
 太陽が、もうすぐ落ちようとしていた。

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 受付期間はMSページを参照ください。
 受付期間前に送られたプレイングはタイミングが悪いとお返しすることになってしまいますので、恐れ入りますがご確認くださいませ。
新山・陽
wiz 歌には『鍵をかける力』を用います。
 帰りたい場所を望む事もすでにない私には、戦おうという気すら実はなくて。
 「貴女様の望みはそもそも、人を害するものではありません」
 在り方が負に寄ったなら、私はその在り方に働きかけましょう。
 UC『真価の片鱗』を発動し女神の動きを封じます。
 杭を抜いて、傷口には『浄水』をつかい【落ち着き】を与え【浄化】し、神性が少しでもとり戻るよう【救助活動】を試みます。

 「私は、貴女様がこちらを離れるお手伝いに参りました。貴女様が、貴女様の片割れと、良き縁を結びなおせますように」

 【狂気耐性】や【呪詛耐性】で耐えつつ【礼儀作法】に適う態度で優しく接しようとします。


●浄化の片羽
 その嘆きは、女神の意図によらず場を満たす。帰りたい、帰りたい、帰りたい、あの人の元に帰りたい、と。
「なるほど、確かにこれは……」
 怪異と化した女神には人を傷付けようという意思はないのだろう。ただ純粋に、対なる男神の元へ帰りたいという願いのままに嘆いているだけなのだ。
 けれど、それは人の身には毒となるほどの瘴気を生んでいる。
「変質してしまっている……そういうことですか」
 そう、新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)が小さく呟く。迷子が帰りたいと泣くのと同じことなのだ、と陽は思う。
「でも、そう……私は」
 帰りたい場所など既になく、望むこともない私には――。
 戦うという行為は、少し違うのではないか。陽がそっと警戒を解き、瞬きを一つすると女神に向かい話し掛けた。
「貴女様の望みはそもそも、人を害するものではありません」
 元は人の縁を繋ぐ良い女神であったのならば、鳥人形達の嘆きを望む声に引き摺られ在り方が負に寄ってしまっただけ――。
「ならば、私はその在り方に働きかけましょう」
 倒さなくてはならないのだとしても、せめてもの慰めになれば。
「……凍結へ誘え」
 陽の言葉は、周辺に現れた空間の歪みから暗号の幻覚を引き出して女神へと放つ。それは思考の停滞を引き起こし、情報凍結により対象の動きを一時的に封じる力。
「嗚呼、嗚呼、私は――」
 悲哀に満ちた旋律が、女神の唇から零れる。動きは確かに止まっているのに、それでも嘆きを零さんとする女神に陽が近付いた。
 女神の歌が与える寂しさや悲しさの感情には『鍵をかける力』を使い、最低限動けるだけの力を確保する。彼女に戦意はなく、ただ女神を救わんとする気持ちだけがあった。
 少し重く感じる身体を動かし、女神の前に立つ。いくら動きを留めているとはいえ、その圧は陽の表皮を突き刺すかのようであったが、苦痛の色は見せずに陽が女神の身体を刺す杭に手を掛ける。
「私は、貴女様がこちらを離れるお手伝いに参りました。貴女様が、貴女様の片割れと、良き縁を結びなおせますように」
『嗚呼、嗚呼、あの人は、どこ……?』
 その答えは、陽にも出すことはできない。ただゆっくりと、痛みを感じぬように杭を抜いてその痛々しい傷痕に浄水を注ぐ。僅かでも神性を取り戻すことができたなら、それは自分の後に女神を救わんとし、戦う人の助けにもなる筈だ。
『嗚呼、嗚呼……』
 歌声から響く圧が少しだけ軽くなった気がして、陽はただ女神の望みが叶うことだけを願った。
大成功 🔵🔵🔵

黒鵺・瑞樹
◎右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

夫婦神の片割れって事前に聞いてたが…あれじゃ、あの白無垢はまるで。
妻という名の神への人身御供のようじゃないか。
…連れ合いは本当に初めからいたのか?

引き続きUC月華で相手の攻撃、歌に抵抗を。同時に呪詛耐性で耐える。
先ほどと同じように、存在感を消し目立たない様に立ち回る。
探し人を求める相手には少し申し訳ない気持ちはあるが…。
可能な限りマヒを乗せた攻撃をし、動きの制限を狙う。
敵の物理攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは黒鵺で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性、オーラ防御で耐える。


●半神を求むるは
 鳥人形を相手にした時のまま、右手に胡、左手に黒鵺を構えた黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)が女神を前にして目を細める。
「夫婦神の片割れって事前に聞いてたが……」
 あの白無垢は、まるで――。妻という名の神への人身御供のようにも思えて、瑞樹は僅かに眉を顰めた。
 痛々しい杭は何本かを猟兵の手によって外されていたけれど、まだその身に多く突き刺さったままだ。生贄のようなその痛々しさに、瑞樹が思わず唇から言葉を零す。
「……連れ合いは本当に初めからいたのか?」
 瑞樹がそう疑いたくなるほどに、女神は神性を失い怪異に身を堕としているのだ。
『嗚呼、嗚呼……愛しいあの方はどこにいるの……? 嗚呼……っ!』
 芯から凍るような嘆きに、瑞樹の皮膚がぞわりと粟立つ。悲しみが、哀しみが、寂しさが、瑞樹の心を侵食していく。
「これほどの嘆きを抱えて……!」
 愛する人の元へ帰りたいと嘆く心に共鳴してしまう前に、瑞樹が再び月読尊の分霊を降ろし、真の姿へとその身を変える。幾分か軽減された嘆きの歌に抵抗しながら、瑞樹が胡と黒鵺を振るう。
 女神の死角を狙い、己の存在を出来る限り知覚されぬように立ち回れば、元より感覚のみで嘆きを振り撒いていた女神に攻撃を当てるのは瑞樹にとって難しいことではなかった。
 それでも、纏わりつくような悲しみは深く、愛する男神の元へ帰りたいという気持ちが痛いほどに瑞樹の心をじわじわと蝕んでいく。
「ええ、連れ合いが本当にいたのかという疑問は取り消しましょう」
 これほどの嘆きが嘘偽りであるはずがないと、瑞樹は刃に麻痺の力を乗せて斬り付ける。動きが鈍った隙を突き、女神に刺さった杭を狙って叩き落した。
「優しくできなくて、申し訳ないのですが」
 この身は苦しまずに殺める手練しかなく、と瑞樹がすまなそうに呟く。
『嗚呼、嗚呼……帰りたい……私は、帰りたいのです……』
「ええ、あなたの嘆きは痛いほど私の心に伝わっています」
 軽減されてこれなのだ、まともに喰らえば戦意を喪失して動けなくなってしまっていたかもしれない。対抗する術を駆使しながら、瑞樹が女神の体力を削るように刃を繰り出す。それはまるで、女神を浄化せんとする剣舞のようでもあった。
大成功 🔵🔵🔵

バジル・サラザール(サポート)
『毒を盛って毒で制す、なんてね』
『大丈夫!?』
『あまり無理はしないでね』

年齢 32歳 女 7月25日生まれ
外見 167.6cm 青い瞳 緑髪 普通の肌
特徴 手足が長い 長髪 面倒見がいい 爬虫類が好き 胸が小さい
口調 女性的 私、相手の名前+ちゃん、ね、よ、なの、かしら?

下半身が蛇とのキマイラな闇医者×UDCエージェント
いわゆるラミア
バジリスク型UDCを宿しているらしい
表の顔は薬剤師、本人曰く薬剤師が本業
その割には大抵変な薬を作っている
毒の扱いに長け、毒を扱う戦闘を得意とする
医術の心得で簡単な治療も可能
マッドサイエンティストだが、怪我した人をほおっておけない一面も

アドリブ、連携歓迎


●ギフト
 堕ちた女神を目にしたバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は、思わず青い瞳を瞬かせる。
「少しだけれど……狂気が薄まっているのかしら」
 UDCエージェントでもあるバジルにとって、UDCの狂気はある程度見慣れているものだ。
 その中でも、随分と……そう考えながら女神を観察するように見れば、白無垢ごと突き刺さる杭が数本抜けているのが見て取れた。
「……そう、浄化を受け入れようとしているのかしら」
 浄化は一時凌ぎのようなものかもしれないけれど、今この場で骸の海に還すのであれば有効だとバジルは思う。
 そうであるならば、バジルにできることは一つだ。
「私はあなたを浄化することはできないけれど」
 この身に宿した毒で、あなたを還す助けはできる。それは彼女からの最大のギフト。
「薬も過ぎれば毒となる。元々毒だけど、その身を弱らせるには丁度いい量よ」
 バジリスク型と己が呼んでいるUDCを宿したバジルが、即座に毒の属性を持つ魔法の槍を無数に生み出すと、躊躇うことなく女神へと放つ。それは女神の歌声によって幾分か効力を落としていたけれど、女神の身体を確実に蝕んでいく。
「……っ、これがあなたの悲しみと寂しさなのね」
 じわり、と心へ浸食するそれは、まるで自分が使う毒のようだとバジルは唇の端を小さく歪める。
「嘆きも過ぎれば毒、ということかしらね」
 このまま放っておけば、いずれこの場は狂気で満たされて一般の人間に害が及ぶのは間違いない。そう思えば、制御の効かない毒のような物かもしれないと、女神の歌に抵抗しながらバジルが女神の攻撃を避けた。
『嗚呼、嗚呼……どうして、帰りたいだけなの、帰りたい……』
「もう少しだけ、我慢してね」
 悲しみに呑まれぬよう、バジルが心を律しながら再び毒を帯びた魔法の槍を放った。
成功 🔵🔵🔴

アパラ・ルッサタイン
あなたに伝えたい事はこれだけ
今までよく頑張ったね
いいとも、安心おし
帰してあげる

だが、あなたの愛しひとが何処にいるのかは分かりかねる
代わりにあたしに出来る最大限の事をしよう

旋律が聞こえる極力前、高速詠唱にて『秘色』
水の友を喚ぶ
あのひとを還す手伝いをしておくれ

歌がとどく
嗚呼……これが、あなたの悲しみか
石くれの胸がふるえる
ふふ、ふ
涙なんて流したのは何年振りだ
この身が砕けてしまいそうな哀しみは
なんという激情だろう!

故に立ち止っているだけでは居られない
これは君の望みの強さだ

友よ、この涙で彼女の戒めを打ち払っておくれ
なるべく苦しまぬよう速やかに撃ちぬいておくれ
愛し人の元にゆくのなら綺麗な方がいいだろう?


●清らなる水に流れよ
 目の前の女神はどこか儚げにも見え、アパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)は一度目を閉じ、決意を宿した瞳を開く。
「今までよく頑張ったね」
『嗚呼、嗚呼……帰りたい、帰りたいのです、嗚呼』
 アパラの声は届いているのかはわからなかったけれど、最初に姿を目にした時よりも正気に戻ってきているようにも見えた。
 あと一押し、そんな予感がすると、アパラが唇を開く。
「いいとも、安心おし。帰してあげる」
 けれど、女神が愛しく想い焦がれるひとが、何処にいるのかはわからない。
 だからこそ、今自分にできる最大限のことを――。
『嗚呼、嗚呼……!』
 身の内に猛る嘆きを旋律に載せて女神が放つ。それと同時、否、幾何か早く高速詠唱を以てしてアパラが水の友と呼ぶ悪魔を召喚する。
「内緒の友人をご紹介しよう。ご覧あれ」
 アパラの招きに応じ、アパラが作ったランプより姿を現したのは、あらゆる水の魔術を操る悪魔アプサラス。
「あのひとを還す手伝いをしておくれ」
 アパラの願いに是と答え、アプサラスが宙を舞った。
 それと同時に響く女神の歌声は、アパラの心の奥へと入り込む。悲しい、寂しい、会いたい、逢いたい、帰りたい――。
「嗚呼……これが、君の悲しみか」
 アパラの胸を走るプレシャスオパールが、キィンと悲し気な音を立てて煌く。石くれであるはずの、自分の胸がふるえるのを感じてアパラがその身を掻き抱いた。
「ふふ、ふ」
 オパールに輝く瞳が水色に潤み、ぽた、ぽたりと水滴が零れる。
「涙なんて流したのは何年振りかな」
 前に泣いたのは、どんな理由だっただろうか? アパラの口元が笑みを形作る。
 この身を砕こうとするほどの哀しみが、アパラの胸から爪先へと走っていく。嗚呼、これはなんて、なんて深い激情なのだろう。アクアマリンのような涙を零し、アパラが女神を見遣る。
「これほどの激情を持ちながら、この場に留まり続けるというのはどれほどの苦しみなのだろうね」
 嘆きに背を押されるように、アパラが一歩前へと踏みだす。立ち止まってなど居られない、この激情は女神の望みの強さだ。
 そしてアパラは、帰してあげると言ったのだから。
「友よ、この涙で彼女の戒めを打ち払っておくれ、なるべく苦しまぬよう速やかに撃ちぬいておくれ」
 愛しい人の元にゆくのなら、綺麗な方がいいだろう? そう囁き、歌うようにアパラがアプサラスへ命じる。その望みを叶えるように、アプサラスはアパラが零した涙をアクアマリンの宝石を弾くかの如く撃ち放つ。
 そうして、全ての杭は払われ、嘆きばかりを口にしていた女神が喜びを言の葉にのせた。
『嗚呼、嗚呼、これで帰れるのね、あの人の元へ――』
 すっかり沈んでしまった湖の上、満月が浮かんでいる。
 ゆらりと空へ舞う女神は月の光をその身に受け、やがて消えていった。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 日常 『月光の下で』

POW大地から景色を眺める
SPD舟を漕ぎ湖へ
WIZ樹上から星達へ手を伸ばす
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●満月が浮かぶ湖にて
『ありがとう』
 その場にいた猟兵達は、確かにそう聞いた気がして夜の帳が下りた空を見上げる。
 そこにはもう女神の姿はなく、ただ満月だけが煌々と輝いているばかりであったけれど、還れたのだと誰もが感じ取っていた。

 朽ちた社からすぐの湖は、夜空を映す鏡のように美しく、蛍が舞い飛ぶのが見える。
 女神を救ったご褒美のようなその光景に、思わず溜息が零れた。
 さて、どんな風にこの景色を楽しもうか――。

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 POW/SPD/WIZに拘らず、自由に楽しんでいただければと思います。受付期間はMSページを参照ください。
新山・陽
 『浄水』を容器に満たし、月光の下に置いて満月水をつくります。
 完成を待つ間、落ち着きを取り戻した自然風景を眺め、月光浴がてら蛍の光について思索します。

(恋し帰ると泣く神よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす……なんてね)

 今日光る蛍の中には、深い嘆きに満ちた昨夜を越えたものもいることでしょう。穢れや毒気に当てられることなく、限られた僅かな命をもって、縁を求め続ける蛍の光……自然の逞しさに感心します。

 満月水を飲みながら、湖面の満月を愛でて散策を楽しんだ後は、夫婦神のその後が良きものとなるよう、天に献じるように水を掲げ、大地と湖に水を返し、目立たぬよう静かにその場を去ります。


●満月の夜に光る
 手にした容器を満月に向け、軽く振る。中に入っているキューブがかろん、ころん、と音を立てて転がると、瞬く間に容器に水が満ちた。
 新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)が謎のキューブと呼ぶそれは、どういう構造なのか携帯用の容器の中で一振りすれば浄水を作り出す。それを容器ごと月の光の下に置き、陽が時計を確認する。
「今から二時間ほどですね」
 満月水と呼ばれる、月の力を取り込んだ水を作るのだ。澄んだ空気の中で作るそれは、陽に様々な効果をもたらすだろう。
「私も月光浴といきましょう」
 湖のほとりは少し寒いくらい空気が冴えていて、陽がスーツの前ボタンを閉めると浄水の横へ腰掛けた。
 目の前に広がる湖は夜空の瞬きを映して、風で揺れる湖面がきらきらと煌いている。そして、柔らかな軌道を描いて明滅する蛍の光が、息をのむほどに美しい。
 ああ、と陽が小さく息を吐く。
 恋し帰ると泣く神よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす……なんてね、と蝉と蛍の恋を唄う都都逸と掛けて、陽が口元に笑みを浮かべる。ふわり、ふわりと舞い飛ぶ蛍の光を眺め、もう少し私達が来るのが遅れていれば、こんなに美しい景色は見られなかったかもしれないと陽は思う。
「今日光る蛍の中には、深い嘆きに満ちた昨夜を越えたものもいることでしょう」
 穢れや毒気に当てられることなく、限られた僅かな命をもって円を求め続ける蛍の光……それはなんて逞しいのだろうか。
「だからこそ、余計に美しいと思うのかもしれませんね」
 蛍は鳴くことはないけれど、その発光によって愛を囁くのだ。
 ふわ、ふわりと、一匹の蛍が陽の膝へと止まる。
「ふふ、他にもっと素敵なお相手がいるでしょう?」
 優しく、ふうっと息を吹きかけると、蛍は何度か明滅を繰り返してから水辺の草のある場所へと飛んでいく。恋のお相手が見つかるといいと願い、陽は月を見上げた。
 丸くて大きな月から降り注ぐ光に、澱みを浄化していくような力を感じる。目を閉じて心ゆくまでその感覚を享受すると、隣に置いていたボトルを手に取った。
「そろそろ良さそうです」
 キャップを外し、一口、二口と飲んで立ち上がる。湖面に浮かぶ満月もまた美しく、散策がてらゆっくりと湖に向かって歩く。
「今頃、夫婦神は会えた頃でしょうか」
 もう二度と離れることのないようにと願い、湖と大地の際に立つと月の光を受けた水をまるで杯のように月へと掲げた。
「献杯としましょう」
 ふっと微笑みを浮かべ、ボトルに残った水を大地と湖に向けて返す。月の光を受けた浄水が、煌きながら吸い込まれるように消えていく。ボトルが空になったのを確認すると、再びキャップを閉めて仕舞いこみ、湖面に浮かぶ満月に向けて軽く会釈する。
「それでは、お邪魔しました」
 優雅な仕草で踵を返すと、静かに、それでいて颯爽とした足取りで陽は湖を後にした。
大成功 🔵🔵🔵

アパラ・ルッサタイン
還る事が出来たのだな、よかった
もう分かたれる事の、ありませんよう

さて折角の絶景、楽しまねばソンだね
舟にのり湖の真中へ向かおう
……向かいたいんだけどね?おや?何故やたらと左に曲がるのだろう??

どうにかこうにか漕ぎ進み周りを見渡せば
ああ、……なんて美しいんだ!
水面にも天にも月と星空が瞬いて、狭間を蛍が舞っている
こんな素晴らしい空間に包まれているなんて

そばを飛ぶ蛍に指を伸ばせば爪先が灯る
へえ、本当に熱くないのだね
こんなにも儚くてまばゆいというのに

視界が滲む
水面が波紋を描く
あれ、もう女神の嘆きは聞こえない筈なのになあ

うん
帰ったらランプを作りたいな
今の感動を
少しでも形に出来たなら


●湖面に灯る
 女神の声を確かに受け取ったと、アパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)が静かに微笑む。
「還る事が出来たのだな、よかった」
 もう二度と分かたれることのないように、と祈るような気持ちを籠めて月を見上げた。
 澄んだ山の空気は、月の光を遮ることなくアパラの身に降り注ぐ。胸に光るプレシャスオパールが、その光を反射してきらきらと輝く。心地良い空気と光を浴びて、アパラは桟橋へと向かって歩いた。
「折角の絶景、楽しまねばソンだね」
 どうせなら湖へと漕ぎ出してみようかと、ご自由にお使いくださいと立て看板に書いてある小舟を拝借する。そっと足を船底に付け、船尾に近い方に腰掛けた。
「二人乗りの船か……まあ、一人でも大丈夫だろうさ」
 備え付けられているオールを手に、アパラが慣れぬ手付きで月の浮かぶ湖へと後ろ向きに漕ぎ出す。
「さあ、湖の真中へ……」
 向かいたいのだけれど。
「……何故やたらと左に曲がるのだろう??」
 左右対称に動かせていないのだろうけれど、アパラにその違いはよくわからない。試行錯誤し、なんとか真っ直ぐ漕げるようになると、周囲を見渡す余裕も出てくるというもの。
「ああ……なんて美しいんだ!」
 空にある月が、すぐそばの水面にも見える。それどころか、星々さえも湖面を鏡にしたようにその姿を映している。更に、その星の狭間を縫うように蛍が舞っているのだ。
 波を立てると消えてしまうその輝きに、ここで漕ぐのを止めてしまおうかとも考えたけれど、やはり中央からこの景色を眺めたい。そう考えて、アパラはゆっくりと真中へと向かって小舟を進ませた。
 湖の真ん中までやってくるとオールを動かすのを止めて、空を見上げる。
「ああ、やっぱり素晴らしい……こんな空間に包まれているなんて、贅沢が過ぎるね」
 身体の力を少し抜いて、空と湖面を交互に見る。どちらも美しく、まるで空と大地が繋がっているかのような錯覚に陥りそうになり、ほぅ、と溜息を零す。ふわりと近付いてきた光りに、思わず指先を伸ばしてみれば爪先に小さな月が灯ったよう。
「へぇ、本当に熱くないのだね。こんなにも儚くまばゆいというのに」
 蛍は発光する物質を持ち、それを体内の酵素と反応させて光る。知識として知ってはいても、やはり目の前で光るそれは神秘的だ。
 熱を伴わぬ光はアパラの心を揺らし、まばゆい光りがぼんやりと滲んだ。
 頬からぽたりと落ちた雫は波紋を描き、湖に混ざって消えていく。
「あれ、もう女神の嘆きは聞こえない筈なのになあ」
 ああ、でも。これはきっと哀しみの涙ではなく。
「帰ったらランプを作りたいな」
 今の感動を、心を揺さぶるこの感情を少しでも形に出来たなら。あの人に一歩、近付けるかもしれない――。
大成功 🔵🔵🔵

黒鵺・瑞樹
ユヴェン(f01669)と

月明かりに蛍が負けるんじゃないかと思ってたけど、まったくそんなことはないな。
そういやそうだな、命の次代を繋ぐための光だもんな。

月見蛍見で一杯と思ってたが、この景色は酔うのはもったいない気がする。
この景色なら何時間でも眺めていられる気がするが、せっかく誘ったのにそれだけなのももったいないな。
蛍にまつわる話とかは少し聞いてるが。
和歌や物語で、身体から離れた魂に見立てたり、恋の燃える思いに例えたりとかな。
そうそう。蛍が群がって刃こぼれを直したって刀の話もある。また別に欠けた刃が蛍のように飛んできて刃こぼれを直したって逸話もあるな。
……。
すまん、つい話し込んでしまった。


ユヴェン・ポシェット
黒鵺(f17491)と共に

見事だな。月は見る時によって、全く違って見えるからいつ見ても特別なものに感じるが、満月の明るさは格別だと思う。

命の次代を繋ぐための光、か。そうだな。だから蛍の見ると感動するのか。…静かな空間の中で、灯りの主を目で追うだけで優しい気持ちになれる気がする。
この景色なら酒も美味いだろうな。…本当に、ずっと見ていられるな。

ほう、蛍にまつわる話か。
魂とか思いというのは、蛍の光のイメージが人の捉えるそれと似ているからなのだろうか…
刀の刃こぼれを直す話も興味深いな。それに黒鵺から刀に関する話を聞くのも…何か良いな。
いや、アンタの話を聞くのは愉しい。もっと聞きたいくらいだよ。


●月と蛍と、君と
 見上げた月があまりにも見事で、黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は思わず言葉を失う。隣に立っているユヴェン・ポシェット(opaalikivi・f01669)も同じように月を見上げ、小さく溜息を零した。
「……見事だな。月は見る時によって、全く違って見えるからいつ見ても特別なものに感じるが、満月の明るさは格別だと思う」
 低く響いたその声に、瑞樹がハッとして頷く。
「ああ、本当に。それに……」
 湖面に浮かぶ月の光、そして蛍の放つ光が、どこまでも美しく感じる。
「月明かりに蛍が負けるんじゃないかと思ってたけど、まったくそんなことはないな」
 月の光に霞むどころか、その中にあってもなお力強く輝く蛍の光に、瑞樹が引き込まれるようだと呟いた。
「そうだな、どうしてか心を惹かれるものがある……と感じるな」
 ユヴェンがそう言うと、瑞樹が何度か瞬きを繰り返し、そうか、と納得がいったように笑みを浮かべる。
「命の次代を繋ぐための光だもんな、蛍の光は求愛の灯火だ」
 短い命の中で、精一杯の表現があの光りなのだとしたら、それに心惹かれるのは当然なのかもしれないと瑞樹が頷く。
「命の次代を繋ぐための光、か。そうだな、だから蛍を見ると感動するのか」
 言葉にされるとすとんとそれは胸に落ち、ユヴェンがゆっくりと唇の端を持ち上げて笑った。
 ふわ、ふわ、ひらり、と明滅しながら飛び交う蛍の光りを目で追うだけで、どこか優しい気持ちになれる気がしてユヴェンがそっと指先を蛍に向ける。
「わ、すごいな」
 ユヴェンの指先に誘われるように、ふわりと止まった蛍を見て、瑞樹がそう声を上げる。ユヴェンも止まるとは思っていなかったのか、少し驚いたような表情で指先の光りを眺めた。
「月見蛍見で一杯と思ってたが、なんだかもったいない気がしてきた」
 酒は持参しているのだが、どうにもこの美しい景色の下で酔ってしまっては、もったいないような……。ううん、と悩むように瑞樹が唸ると、ユヴェンが小さく笑った。
「この景色なら、酒も美味いだろうけどな」
 本当に、ずっと見ていられるとユヴェンが目を細めると、恋の相手を求めるように蛍がまた違う方向へと飛んでいく。
「何時間でも眺めていられる気がするが、せっかく誘ったのにそれだけなのももったいない……気がするな?」
「やはり酒でも飲むか?」
「ううん、それは帰ってから……良かったら付き合ってくれると嬉しいな」
 この光景を思い出しながら月見酒も悪くないんじゃないか? と瑞樹が提案すると、ユヴェンも素直に頷く。
「蛍にまつわる話でよければ、できるんだが」
「ほう、蛍にまつわる話か。ぜひ、聞かせてくれないか」
 自分の知らぬ話を聞くのは楽しいものだとユヴェンが促すと、瑞樹が頷いて話し始めた。
「俺が知っているのは、和歌や物語で身体から離れた魂を蛍に見立てたり、恋の燃える思いに例えたりとかだな」
「魂を?」
 首を傾げたユヴェンに、瑞樹が笑って一つ詠んでみせる。
「もの思へば沢の蛍もわが身より、あくがれいづる魂かとぞみる」
 恋に悩み、もの思いに耽っていると沢のほとりでかすかな光を放って飛ぶ蛍でさえも、自分の体から恋焦がれて離れでる魂ではないかと思ってしまう――そんな意味を込めた歌だと言うと、ユヴェンが情熱的な歌なのだなと感心したように目を瞬かせた。
「他には……そうだな、刃毀れした刀を蛍が群がって直した話や、それとは別に欠けた刃が蛍のように飛んできて刃こぼれを直したって逸話なんかも――」
「どうした?」
「いや、すまん。喋りすぎたかと思って」
 恥ずかし気に頬を掻いた瑞樹に、ユヴェンが首を傾げる。
「聞きたいと言ったのは俺だし、刀の刃こぼれを直す話も興味深かった」
 それに黒鵺から刀に関する話を聞くのも、何か良いなとユヴェンが小さく微笑む。
「俺はアンタの話を聞くのは愉しい。もっと聞きたいくらいだよ」
 じゃあ、続きは酒を飲みながらにでもしようか? と瑞樹が言うと、もう少し共にこの景色を眺めてから、そうしようかとユヴェンが頷いた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年07月03日
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵