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花と星屑

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●flowers
 その花畑めいた草叢は、森の中にぽっかりと空いた空間だった。
 本来ならば冬の寒さに有るまじき華やかさは、其処を根城にする竜の好みであったのか。
 瑞々しさを失わない四季の香りを揺らすのは足音。羽撃き。
 淡い緑の体に薄桃の羽を生やす一頭の竜が、一番近い集落を見つめ、吼えた。

●overture
「おふとんみたいなお花が、咲いてました」
 それは語彙が無さすぎるにも程がある一言から始まった。
 アックス&ウィザーズに住まう息吹の竜『グラスアボラス』。本来は温和な気性のドラゴンだが、昨今は少し事情が異なる。上乗せされた凶暴性で近くの村を襲う、そういう光景が見えたのだ。
 特に花や植物を強化させる事ができるグラスアボラスと、彼と共生関係にあるアルラウネの群れ。どちらにも対処が必要だと、ユハナ・ハルヴァリは頷いた。
「最初は、アルラウネから。後回しにすると、囲まれます」
 数が多い上、幼生であるマンドラゴラを多数召喚する事も出来る。猟兵ならば幼生くらいは一撃で仕留められるだろうけれど、数で押してくる相手にはそれなりに注意が必要だろう。
「彼の縄張りに、入っていますので。グラスアボラスは、自分から出てくると思います」
 微かに瞼を伏せる。この猟兵の口からは、倒してほしい、という言葉は出難かった。代わりに、頑張ってください、と、そんな言葉が吐き出された。
 ひとつ、ふたつ、瞬いて顔を上げると、海色の双眸に憂いは無く。そういえば、と話が続いた。
「その日、星が流れます。流星雨……と、言うのでしたか」
 全部終わったら、見に行きませんか。ユハナの平坦な声が、微かに嬉しげに言った。
「グラスアボラスが育てた、花畑、みたいなものが。森の奥の、ひらけたところにあります。お花は結構大きくて、真上には星の天蓋があって。寝転がったら、ちょうどいいと思うんです」
 彼が育てた花は少し特殊だ。
 色とりどりに香る花たちはどれも、大の大人が寝そべっていられる程。
 花弁に埋もれて星を見るのは、まるで御伽噺のそれのようだ。
「お花、結構丈夫なので。尖った人でも、大丈夫ですよ」
 つまりウォーマシンのひとたちでも問題ないと言いたいらしい。
 ユハナの掌で六花が躍った。
 星の瞬くように煌いて、ぴしりと真ん中に亀裂が入る。ふたつに別たれた雪の結晶が、それを蝶の翅に似た羽撃きで閃かせた。
「……あのね。一緒に星を、見ましょうね」
 無事に戻ってほしいと、置き換えた言葉。
 微かに緩めた目元を一度伏せて、淡く光を放つ六花の蝶をふわり、空に浮かせた。


七宝
七宝です。
新人です。
よろしくお願いいたします。

ユハナがご案内するアックス&ウィザーズ、
どうかお付き合いください。

1.vsアルラウネ
2.vs息吹の竜『グラスアボラス』
こちらはどうぞかっこよく戦ってください。

3.流星雨
寝転がるお花の種類にご希望があれば、プレイングへ。
寒いのであったかくしてご覧ください。
飲食はご遠慮くださいませ。
お呼びがあればユハナがご一緒致します。
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第1章 集団戦 『アルラウネ』

POW   :    ルナティック・クライ
【聞く者を狂わせるおぞましい叫び声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    スクリーミング・レギオン
レベル×5体の、小型の戦闘用【マンドレイク(アルラウネの幼生) 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    リパルシブ・シャウト
対象のユーベルコードに対し【それを吹き飛ばす程の大音声 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

芦屋・晴久
【WIZ】アドリブ⚫
アルラウネですか……
早く済ませるのなら炎にて焦土を狙う所ですがユハナ君、彼はそれを望みそうにありませんねぇ。
ならば、花粉を氷の槍に、流れる風に乗せて……アルラウネを凍らせ砕き貫く刃としましょう。

既にグラスアボラスの縄張りに入り込んでいます。
出来るのなら水舞転身環で姿を隠し、花粉で臭いを紛らわせ奴の視界から消えて置きたい所ですね。

念の為、回復の手筈を整えておきましょう。




「手早く済ませるのであれば、炎にて焦土を狙う所ですが」
 態とらしく顎に手を遣り考える仕草。
 かの森に足を踏み入れ幾許もしない内、気配を察知したアルラウネ達が赤目を夜闇に浸しながら姿を現したからだ。
 彼らの足の位置にあるのはいくつにも分かれる根。歩くより余程器用に這い出てくるその数は、数える前から飽きる程だった。
 口元には軽薄な笑みを携えて、けれども内心に過ぎる懸念は何処か真摯に。芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)は、今は無い煙草を蒸す様に息を吐いた。
 ──彼、其れを望みそうにないんですよねぇ。
送り出した猟兵の言葉を思い返すに、どうにもそう思えてならなかった。
 で、あれば。やり方を変えよう。
「君たちを凍らせ砕き貫く、刃としましょう」
 被った黒帽を軽く片手で抑え、サングラス越しの黒眼を鍔から覗かせる。
 その視線の先で夜が凍った。
 巻き上がる風が氷を尖らせ、梢を嬲り、星の如くに森へと散る。
『kii──』
 アルラウネに叫ぶ時間は残されていなかった。
 氷の鏃はその声が晴久に届く前に彼らを凍らせ貫き、地へと伏せさせる。
 はさり、はさり、緑の骸が重なり土を隠す。
 けれど未だ、森の奥から覗く赤目は途切れる事なく、晴久を睨みつけていた。
「……仕方ないですよねぇ」
 どうやら、森を傷付けずに済みそうなので。
 そんな言い訳を自分に用意して、黒の革靴がざりざりと氷の破片を踏み歩く。
 途中、失敬しますよ、と声を掛けて、アルラウネの花粉を摘み取った。これと姿を消す『水転転身環』があれば、グラスアボラスの目を紛れさせるのに使えるかもしれない。
「さあ、さあ、次のお相手は何方でしょう?」
 口角を上げる。
 他の猟兵たちも別方向で戦っている事だろう。医師らしく回復の算段を立てながら、潜む赤目を等しくねめつけ、黒硝子を隔てた向こうで夜色の眼光が尾を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

赫・絲
叫ばれるのはしんどいなー。
効果はないかもしれないけど、普段首に提げてるヘッドフォンをしていくね
これで少しは耳に痛くなくなるといいんだけど

声は防ぎにくいから、こっちのダメージが増える前に、【先制攻撃】を使って仕留めたいな
見つけ次第即座に仕掛けるよ
周囲に糸を放って、捉えられるだけその糸に捕らえるね
他の猟兵のためにも叫ばれるのを防ぎたいから喉元を狙うけど、外れてもどこかを捕らえられれば十分
【全力魔法】で増幅した雷で一気に痺れさせる
煩い口は、悪いけど縫い止めさせてもらうね

仕留め損ねた敵は様子をしっかり【見切り】、叫ぶ予兆が見られたらその敵のみを狙って即座に雷縫
ほら、お前も静かにしてて?


浮世・綾華
丁度こないだ縁があったユハナが予知したって聞いて手伝いにきたぜ
彼の優しさに触れたから言葉を選ぶ案内からもそれを読み取った

穏やかなままでいてくれたら良かったのにな
植物を育て、愛でる竜なんて
きっと美しい光景だったろうから

使う技は菊花の舞
これならアルラウネにも幼生にも降らせられんだろ
目には目を。植物には植物をってワケ
リパルシブ・シャウトに備え最初は少量、取り囲むように
そして相殺後の隙を狙う
これだけだと、思った?と不敵に笑んで
視界も儘ならないくらいの花の雨を捧ごう

ちょっと可愛いけど、お前と遊んでる暇はねーの
ごめんな?






 鈍い金色のヘッドフォンを耳に掛ける。
 普段は首に提げているものだけど、少しでもこの耳を塞いでおきたかった。
「叫ばれるのはしんどいからなー」
 効果の程は定かでないが、耳が痛むのは御免被る。
 紫色の瞳をすいと細めた赫・絲(赤い糸・f00433)は、動き出そうとしていたアルラウネの一匹に先駆けて土を蹴った。赤いリボンが編み込まれた黒髪の一房が空を流れる。放つ鋼糸が一本、二本と彼らに突き刺さり、幾つかは確実にその喉を潰していく。
 彼女の背を押す様に、菊の花弁がゆらりと通り過ぎた。古金の鍵を鳴らして解けた白菊は、羽撃きに似た音で舞い上がっては緑の精を取り囲む。
 唐紅に菊花の羽織を翻して、浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)が懐こい笑みを浮かべた。
「はいどーぞ、お姉さん」
「ありがと!」
 振り向かない侭、絲の瞳は只狙いを定めていた。花弁に気を削がれたアルラウネの喉は、この上なく無防備に晒されている。
 鋼糸の刺突は正確無比。貫いて、追い討ちを掛ける紫電が糸を伝い落ちる。
 雷鳴の無い稲妻がそうして緑を灼き崩し、取り囲む白菊が矢の様に切っ先を揃えた、その時。
『Aaa,a,aa──!!!』
 木立の向こうで叫声が上がる。
 吠え猛ると言うよりは突き刺すような音が森さえ震わせた様だった。
 茂みの暗がりに赤目の揃い。戦いの様子を見ていたその一匹が叫び、白菊が端からぼろぼろと零れ落ちる。
 ぞろり、這い出てきたアルラウネ達は足元に幼生を連れ、絲と綾華を囲むように動き出す。けれど。
「……こんなもんだと、思った?」
 綾華が笑った。
 酷く愉しげに、無邪気な程。
 その手に残る金鍵は、凡てを花弁と化してはいなかった。未だ、未だ、未だ、白は降る。羽撃く音は数を増し、絲と綾華、二人の黒髪を撫でて散った花の雨。
 それは彼の降らす白雪の如くに。
「美しく、狂おしく。さあ」
 ──花の香で埋め尽くしてあげよう。


 白花を鍵へと編み戻す。夜風は静穏な葬いの香り。
 二揃いの靴音は、森の奥へと踏み込んでいく。
 きっと美しい光景だろう、と男は思った。
 花を愛で育てる竜が、穏やかな侭であったなら。
 この光景を予知した猟兵は、縁あって共に仕事をこなした相手だった。その時一度触れた優しさは、言葉を選んだ案内からも読み取れたから。だから、手伝いに来たのだ。
 ざくり、と、草を踏む音が二人同時。
 鋭い鋼糸が一本。
 白の花弁がひとひら。
 それぞれに散った一閃が、彼らの両端に潜んでいた緑の精を穿った。
 ──お前も、静かにしていて?
 ──遊んでる暇はねーの。ごめんな?
 互い聞こえぬ声音は唇だけの其れ。
 命の消えた身体が軽い音を立てて地へ落ちる。横目に躯を見届けた娘は漸く、その耳からヘッドフォンを外した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ
アリア(f09479)と供に

わたくし、星空が好きですけれども
花も好きよ。ねぇアリア
見に行きましょう
そう、狩りも兼ねて

先ずはあのアルラウネの群れ
まあ、根っこも連れてわらわらと
アリア、この数が来たら迷子になりそう
手を繋いで欲しいのと楽しげに
優雅に笑って、もう一つの手には黒い星夜の剣
わたくしの流星群、メテオリオを魅せて差し上げますわ
黒薔薇の星から姿を見せるのは、アリアの竜だなんて
この先思えば御誂え向き

粗方片したかしら
残りはこの大剣で屠って差し上げますわ
名残惜しいけれども、手を離してふわりと着地
さあその耳障りな叫び声ごと、斬り伏せましょう
おやすみなさい


アルトニア・スカディアナ
オリオ(f00428)と伴に。

わたくし、流星雨?は初めてでしてよ。
兼ねて、花畑なんて!
楽しみでありまし~!

ワクワクとは裏腹に、槍でマンドレイクを弾き白い外套をひらり。
ーえぇ、わらわの半身。
オリオの提案にわらわも想った所、と手繋ぎ【空中戦】で飛ぶように上空より追撃に参りまし。
ダルファを竜に変えては炎で燃え散らせ、
槍に変えてはアウラウネも弾かせまし。

伴に蹴散らせば、数も減りましょう。
ダルファの槍先で裂いた先へ。
ドラゴニック・エンドを送りませう。
大きな翼竜と化した召喚ドラゴンへ繋いだ手をそのままに二人で乗ってひとっ飛び!
直前でふんわり降りて、二人の合わせ技、美味しくありまして?
着地後はオリオの元へ。




「オリオ。わたくし、流星雨は初めてでしてよ」
 兼ねて、花畑だなんて!
 白き女が歌うように笑えば、
「ええ、ええ。見に行きましょう、アリア」
 わたくし、星空が好きですけれど、花も好きよ。
 黒き女が穏やかに告げる。
 ふたりを見つけたアルラウネ達がぞろぞろと這い出、根より分かたれた幼生がその数を増す。
 白の外套をひらり翻し、牙槍へと変じた赤竜ダルファで幼生を弾いた片割れ、アルトニア・スカディアナ(隻眼よりあまねく白夜・f09479)に向く黒の瞳。オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)は楽しげに、けれど優雅に。
「まぁ、根っこも連れて。この数が来たら迷子になりそう。ねぇ、」
 ──手を繋いで欲しいの。
「えぇ、わらわの半身。ちょうど、そう思ったところ」
 答えるアルトニアの隻眼もまた、弾んだような白の色。
 手に手を添えて歩く脚は、同じ歩幅で土を踏む。
 赤竜ダルファの吐く焔で燃え散らし、かと思えば牙槍へと変えては刺し貫く。変幻の槍の隣は闇を裂く黒の大剣、緑の精を一刀の元に斬り伏せて細腕はしなる。
 その切っ先が、ぼろぼろと崩れた。
 女の笑みは揺るがない。
「お往きなさい、わたくしの星達」
 闇夜に星の煌めきが躍るように。解けたオリオの大剣は、星を抱く黒薔薇の花弁となって風の中で渦を巻く。
 その合間を縫うように。牙槍が穿つ緑の精は、あえかな声も出せぬまま。
 ただ、竜の瞳の照準と成る。
 アルトニアの喚び起こした翼竜は猛々しく吼え、星の黒薔薇から姿を現わす。
「さぁ、オリオ」
 白が黒の手を引いて、黒白のふたりは竜の背までも飛び上がった。
 轟咆。飛翔。
 黒薔薇を伴に星を散らして、竜は緑を噛み砕く。叫声など届く間も無く。
 廻り巡るは星屑の嵐。竜の爪牙届かぬ場所ならば、花弁はいとも容易く入り込む。葉が散り根が散り、枯れ征くまで。



 ――通り過ぎた後の静けさに、ふたつの足音。
 名残惜しそうに手を離して舞い降りる黒白は、寄り添うように並び立つ。
「二人の合わせ技、美味しくありまして?」
 緑の躯に恭しく礼をしてから、アルトニアは笑うのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

パーム・アンテルシオ


なんだかロマンチックなお誘いだね。
ほら、有名なセリフで…月が綺麗ですね、だったっけ。そういうの、あったよね?
でも、今回は星だったね。ふふふ、残念。

さて…最初はアルラウネの相手だったね。
こういう植物の魔物は…そう、マンドラゴラ、だっけ。
叫び声での攻撃なんかが、お約束だよね。

それじゃあ…ユーベルコード、茉莉歌。
ふふふ。声を、音を、ウリにしているのは、あなたたちだけじゃないんだよ。
音を音で相殺…なんて、上手く行くとは思わないけれど。
あなたが音で傷つけるのなら。私は音で、みんなを癒してみせる。
奏でる曲は…行進曲。ちょっと軍隊っぽい感じ、っていうのかな。
かっこよく、重厚に。猟兵の行進…開始。なんてね?


ヴォルフガング・ディーツェ
【SPD重視】

…頑張って、か
効率的に殺す事ばかり考えて生きて来たオレに、何処まで応えられるかは分からないけれど…
ユハナには、優しい心のキミには憂いなく星を見て欲しいと思うから、自分なりに頑張ってみるよ


叫ばれる前になるべく多くの相手を倒しておこう
【ブラックドッグ】を召喚、騎乗して一気に距離を詰めよう
氷の【属性攻撃】を上乗せした鞭の【範囲攻撃】【2回攻撃】で多くの敵を捉え、凍て付かせるよ
近接まで接近されたら鉤爪型ガジェットに鞭と同様の技巧を上乗せして薙ぎ払うよ


常に移動し、死角からの攻撃や相手に攻撃を定めさせない様にも立ち回ろう
敏捷性での攪乱を狙うけれど、効果が薄い様なら力技で押し切る事も視野に




 ──ロマンチックなお誘いね。
 桃色の少女は微笑った。
「ほら、有名な台詞あったよね。あれ、月が綺麗ですね……だったっけ?」
 ふふふ、残念。パーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)は背中でふわり膨らむ尾を揺らめかせる。
 その後ろで靴音がひとつ。森の胎から出づる夜の爪音が、もうひとつ。
 ぞろり。影色の泥を集めた其れは四つ脚を現し、月さえ呑み込むブラックドッグ。巨きな黒の丘へ墓標を建てる様に、ヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)はその背へと軽々飛び乗った。
「星も綺麗ですよ、って。返すといいんじゃない」
 そんな風に答える声は高きより降る。黒犬の爪が一際鋭く地を削り、危なげなくパームの頭上を飛び越えていく。
 疾駆は戦陣を裂いた。
 根も葉もなく散る緑を追うこともしない赤眼が、氷を纏った邪鞭の行先を睨む。
 その答えと足音に機嫌を良くしたみたいに狐は笑んだ。
「ふふふ、それじゃあかっこよく、重厚に。猟兵の行進……開始。なんてね?」
 悪戯に細める桃色の瞳。奏でる歌は行進曲、跳ねる音は陽気にみっつの尾を揺らす。
「……うん。イイね」
 しなる鞭の音、蹴散らす爪の音。縦横無尽に駆ける黒犬の背で、ヴォルフガングがフードをはためかせて頷く。
 邪鞭を振るう度散る氷の欠片が、まだ見ぬ流星のようだった。
 狭間から流れ出る花の香りが満ち満ちて、黒狼の鼻を擽る。空を仰げば、木の葉の隙間に星屑ひとつ。過るのは冬のエルフの姿。
(「優しい心のキミには、憂いなく星を見てほしいと、そう思うから」)
 頑張って、と彼は言った。それなら、自分なりにその言葉へ応えよう。
「……頑張って、みるよ」
 考えるのは効率的に殺す術。無意識でも、そうでなくても。だけれどそれは時に、疾く効率的に味方を守る術にもなる。
 高く高く跳んだ黒犬の背中から、真逆に長い尾を駆け下りたヴォルフガングが更に跳ぶ。主人は敵の只中へ、そして黒犬は──パームの傍へ。
 桃色の少女へと迫らんとしていた幼生を散らし吼えるブラックドッグを背に、ヴォルフガングは黒の狼尾を後ろへ靡かせ指を鳴らす。
 瀟洒な腕輪は擬態の魔爪。鉤爪のガジェットに長く鋭く氷を重ね、冷えた夜の空ごと緑の精を切り裂いた。
 歌声は一度たりとも止まない。パームの矜持は柔くはないから。
(「あなたが音で傷つけるのなら。私は音で、癒してみせるよ」)
 戦の音が消えるまで、何度だって。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラスベルト・ロスローリエン
森に抱かれた秘密の花園とその主か。
例えば旅の最中に偶然訪れただけなら……例えば花園の主が竜でないのなら。
一体どれだけ心弾んだ事だろう。

◇WIZ 自由描写・連携共に●◇
植妖の金切声は些か耳に響くからね。
混声合唱で狂し耳を捩じ切る前に手早く数を減らしたい。
『その狂おしき叫びすら飲み込む白き花嵐に抱かれ――眠るが良い』
“永久の白緑”に宿る友を【高速詠唱】で喚び覚まし【全力魔法】の《落命花》を花咲かせる。
幼体も余さず舞い散る範囲に捉え甘き死の花弁で覆い尽くそう。
咲き乱れる白花の奔流で植妖を分断すれば仲間の各個撃破も援護出来るだろうか。

花園の主を迎える前にパイプを燻らせる暇くらいあると良いが……さて。


ルイーネ・フェアドラク
グリモアの力も、惨いことをする
あのこどもがこれから、一体どれほどの悪夢を見ることになるのか
……
いや、今はことを治めることに集中しよう
あの子と星を見るために

おいでなさい。醜悪なる我が臓腑の子
解放した悍ましき黒き触手で薙ぎ払い、突き刺し、アルラウネの一掃を
もちろん、肉の盾としても
共闘する者がいるのなら、そのフォローにも回りましょう

UDCの持つ負の力が、どれだけあの声を防ぐか
……少しばかり、賭けですね
さあ、いい加減その叫び声は聞き飽きました

※絡み、アドリブ歓迎します




 嘆息は誰にも届かない。
 梢の向こうの星空にさえ。
「……惨いことをする」
 グリモアの力が、あのこどもにこの先どれほどの悪夢を見せるか。
 ──いや、今はことを治めるのが先決。
 眼鏡のブリッジを中指で押し、銀の眼をひらくルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)の刻印が、悍ましき黒の触手を解き放った。
「おいでなさい。醜悪なる我が臓腑の子」
 蠢くそれが夜を浸し育つ。
『kii──!!』
 警戒音に似た響きがアルラウネ達から発せられ、ルイーネは眉目を顰めた。
 そんなもので。そんなものに。
「その狂おしき叫びすら飲み込む白き花嵐に抱かれ──眠るが良い」
 割り入るような声と白。
 呼び覚ました『友』が咲かせる名もなき白花は、緑を枯らし花を風に散らせ行く落命花。白の花弁はゆっくりと風に漂い、それに触れた緑の精は一匹、また一匹と枯れ果て倒れていく。
 灰色の三角帽子の下で緑眼を巡らせるラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)が、緑柱玉煌くトネリコのワンドを手に辺りを見回す。
 一瞬の交錯。
 言葉も首肯すらもなく、錆びた赤毛の狐は前へ出た。
 黒き触手で薙ぎ払い、突き刺し、叫ぶアルラウネを圧倒する。
 森の闇に覗く赤眼は少しずつ数を減らし、やがて満ち満ちた甘き死の香りを連れた灰の魔法使いが動いた。
「――大地に再び命芽吹くその時まで、落ちよ墜ちよ儚き命」
 落命の時は成った。
 ラスベルトを中点とした真円に舞い上がり降り注ぐ白の花は、幼生に至るまでもその命を喰らい尽くす。
 枯れ尽きるは植妖のみ。
 ひらり降り積む白の花弁は瑞々しい侭、弔う様にその身を重ねる。
 死の花から辛うじて逃れた一匹が、枯れ倒れる仲間に埋もれながら慄く口を開けた。
「……いい加減、その叫び声は聞き飽きました」
 己の腹を貫く悍ましき触手を、其れは見たろうか。
 背中に立ったルイーネには知る由もないけれど。



 静寂。
 その中に在って、ラスベルトは長パイプを手に取った。
 森の奥に抱かれた、秘密の花園とその主。
 例えば、旅の最中に偶然訪れただけなら。
 例えば花園の主が竜でないのなら。
 一体どれだけ、心弾んだ事だろう。
 息を吐き、パイプを咥えようとしたその刹那に、手を揺らしたのは遥かな轟き。
 花園の主の凶しき声。
「……一服する間もないのかい」
 肩を竦めて飄々と、ちっとも残念じゃなさそうに、彼は呟いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『息吹の竜『グラスアボラス』』

POW   :    フラワリングブレス
【吐き出された息吹 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【咲き乱れるフラワーカッター】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ガーデン・オブ・ゲンティアナ
自身の装備武器を無数の【竜胆 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    フラワーフィールド
【吐き出された息吹 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を花畑で埋め】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 花の咲く地は彼の生きる場所だった。
 植物を主とする種族とは共に生きる事ができたし、森から出る必要もなかった。
 息吹の竜は花園の主。
 ただ、それだけだった。

 ──それももう過ぎた話。
 今、彼は花園を出ようと足を踏み出していて。
 今、枯れ千切れ地に伏した緑の精たちを胡乱な眼で見下ろしている。
 その眼を悲しげだと見た者もいる。
 疲れ果てたようだと見た者もいる。
 竜は吼えて、吼えて、吼えて、眼前に立つ猟兵の足を揺さぶった。
 息吹の竜は花園の主。
 緑の精の亡骸を、己の息吹で芽吹かせた花々で覆い尽くした。
 ただ静かに蔦が這い、蕾が膨らみ、花弁が夜へと花開く。
 揺れて揺れて、手を振るように。
芦屋・晴久
戦闘も大詰め、行くとしましょう。
ここまでは順調……ではありますねぇ、お目当ての標的も出てきました。

行く先々のアルラウネの亡骸達と咲かした花々で地面が覆われている、これは好都合ですね。
姿を消しての細工は完了です。
少々特殊ですが亡骸と花々を触媒にし、【辰子鏡姫】にて魔力が通った花弁の式神を作り出しましょう。
亡骸に魔、花に器、得物は蔦の槍、複数体作成したが故、一体一体の力は弱いです。
しかして竜の足止めをするぐらいにはなるかと

さぁ往くとしましょう。囮と牽制は受け持ちます、皆さん存分に力を奮い下さいませ。

全力で吼えなさい、その抗いを徹底的に叩き潰して差し上げます。
卑怯な人間のせめてもの手向けの花としてね


赫・絲


このまま森の中にいてくれたなら
誰かを襲おうとなんてせずにいてくれたなら
きっとこんな風に相対することもなかっただろうね
……たらればの話をしても仕方ないか

元々あった花はできるだけ傷つけないようにしたいところだけど
グラスアボラスがどんどん強くなってっちゃうのは困るねー
花畑の外に誘導して戦いたいところ

【見切り】で攻撃はしっかり避けつつ、手元の糸には雷を纏わせて常に【属性攻撃】
息吹を妨害できるように口元を狙って糸を放つ
口を縛れれば上々、そうじゃなくても身体のどこかを糸で捉えて
そこに【全力魔法】で更に増幅させた雷を流し込む
足止め程度でもになれば、味方がそのチャンスをきっと活かしてくれるはず


ラスベルト・ロスローリエン
君に咎の有りや無しや。
そんな思索に耽るは傲慢というものだね。
故に言い訳の言葉もまた零すまいよ。
『花園に命散らすは竜かそれとも猟兵か――決するとしよう』

◇WIZ 自由描写・連携共に●◇
パイプを懐に収め代わりに月桂樹の大弓“弓張月”を構える。
【高速詠唱】と【全力魔法】で渾身の《晨明一条》を放ち花の息吹紡がんとする竜の顎を射抜く。
『宵の明星を矢につがえるには相応しい夜だ』
夜天に瞬く星が絶えぬようにこの弓につがえる星光が尽きる事はない。
花の息吹を広げぬ為にも頭部を中心に明星の矢を射続ける。
仲間が技を放つ時や危急の時は【援護射撃】で注意をこちらに逸らす。

鎮魂は……いや。この花園が何よりの墳墓となるか。




 彼の望みが何だったか、知る者はいない。
 共生の伴ですら知る由もなかった。
 もしかしたら、彼自身にさえも。
 けれども。けれども。
 戦端は既に開かれた。
 彼が足を踏み出した、その時に。


 咆哮を聞いた。花の芽吹くのを見た。
 枯らした竜の徒たちは蔦と花のその下に。
(「君に、咎の有りや無しや。……そんな思索も、傲慢というものだね」)
 耽るのを止めて、ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)は長パイプを懐へ仕舞い込んだ。
 故に言い訳の言葉もまた零すまい。空いたその手に透いた枝葉が這い育ち、やがて実体を以って大弓『弓張月』を成す。
「いと高き望みの星、希望の導き手たる明星の輝きを此処に齎さん――」
 構えた月桂樹の弓から放たれる一の光条。
 淡緑の鱗の隙間、グラスアボラスの鋭い爪が咲かせたばかりの花を幾輪散らした。彼の育てた花園はその背に広がり、風に戦ぐ。
 そこから更に一歩、もう一歩、花の咲く大地から遠ざけようとしたのは赫・絲(赤い糸・f00433)。彼の花園は傷付けたくないし、花の上は彼の領域だ。少しでも離しておきたかった。
 追い立てるように視難の鋼糸を放ち、紫電が竜の背に疾る。
(「このまま森の中にいてくれたなら、……誰かを襲おうなんて、せずにいてくれたら」)
 そうしたらこんな風にまみえる事もなかったのに。
 けれどもそれを詮のないこととわかっている彼女だから、感傷めいたものは心の裡だけに、紫の視線に宿す願いはただひとつ。この争いの終わりだけ。
 ぐるりと戦場を見渡す視線。その中にひとつ、花弁が揺れる。
 否。それはヒトガタ。彼の咲かせた花弁と、緑の精の亡骸で人の形を成したもの。
 弔った筈の徒の匂いが夜に満ちて、竜が哭いた。か細く凪いた。
 巨きな身体に見合わぬ幽かな聲は己の足音で掻き消える。足が急いて、走る。
 誘われる様に竜が花の域から抜け出たその瞬間を、待っていた男がいた。
「さぁ──往くとしましょう」
 亡骸に魔、花に器、得物は蔦の槍。
 徒の香の槍先が横薙げば、竜の眉間が切り裂かれる。
 何もせずとも射程内とは何と易いことか。花の式神の主、夜の陰に紛れて立つ芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)が口元を歪めた。
 自らを卑怯と云って憚らない彼はサングラスの奥の視線を、竜に追い縋って走る娘──絲へと向けた。彼女からは小さな頷きひとつ返るだけ。けれども、充分過ぎる。
「囮と牽制は、お任せください」
 花の式神が竜の眼前で再び蔦槍を構える。側面へ回り込んでいた絲は、竜の気が香りへと逸れているのを見て取って迷いなく鋼糸を振り放った。
 息吹を警戒して顎を中心に穿たれた糸先へと全霊の雷撃が伝う。夜の中で眩いほど。
 そうして完全に竜の動きが止まった時、もうひとつ燈る光は竜を挟んだ向かいから溢れた。
「宵の明星を矢につがえるには、相応しい夜だ」
 晨明一条。よくよく引き絞った大弓の弦に架かる宵星の光は、夜天に瞬く星に似て絶える事がない。
 流星が冴えた空気を裂いた。
 ひとつ、みっつ、むっつ。
 竜のあぎとを貫く星は次々地へ消えても、未だ。
 グラスアボラスは光条に吼えた。
 嘆くようだった。目が覚めたようだった。
「全力で吼えなさい。その抗いを徹底的に叩き潰して差し上げます」
 それがせめてもの手向け。晴久の眼の先、花の式神が振り下ろす蔦槍が、竜の牙を折った。
「またね、はないよ。お前は此処で、お終い。終わりなんだよ」
 動かぬ身体で振り上げようとした竜の爪を、絲の鋼糸が遮る。
 またひとつ、戦星が流れた。
 その往く先を追いながら、
「鎮魂は、……いや」
 ラスベルトは首を振る。この花園を何よりの墳墓とするために、弓を握り直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリオ・イェラキ

アリア(f09479)と供に

あれが、
…。さあアリア、行きましょう

ご機嫌よう
御覧になったかしら
花園の外へ出た光景を
猟兵が居る限り、暴走する貴方はこれ以上進めない

共生の亡骸を花で隠しても尚
外へ行きたいというの?
まだ、貴方の楽園に帰ることが出来るわ

…そう
進むのならば、止めるだけ
極夜に更けるわたくしは、貴方が観る最期の夜
放つメテオリオに凶暴な気を少しでも削げるよう、祈りを込めて
最中でも、足を止めてくれるなら
いつでも手を止め森への帰還を見送るのに

空から白夜が、地よりは極夜が参りましょう
安心なさい
花は傷つけませんわ
この大剣で、狙うは獲物のみ
かの息吹ごと一思いに斬り裂いて
せめて終いは、安らかでありますよ


アルトニア・スカディアナ

オリオ(f00428)と伴に

貴方は今、何を視ていらっしゃる?
グラスアボラスの様子を伺いに
参りましょう、オリオ。

ーご機嫌麗しゅう、
芽吹く息吹の咆哮が主の竜よ。
わたくし達に怒りを向けているのかしら…
それとも、この花園にいられない原因がおありでして?

揺れる花弁に優しさが見えて。
怒りはミレナリオ・リフレクションで相殺して受けとめまし。
冷静さが必要ならば闘いにて興奮を鎮めましょう。

原因が解決できなければ、
花園に留まれないなら、
真なる姿の白き翼が夜を撫でましょう。

【空中戦】よりダルファを槍と変え交えまし。
芽吹く花弁を風で凪ぎ伏せて
夜に沈むなら、
園に戻るなら、
ただ静かに見過ごしましょう。


パーム・アンテルシオ


花園、か…
…戦いの中、こんな事を気にしてる場合じゃないのかもしれないけど。
炎は、使いたくないよね。こんな場所じゃ。

ユーベルコード…月歌美人。
今回の歌は、バラードを。
しっとりと、ゆっくりと。
ここは花園。あの竜の、領域なんだ。
静かな、荘厳な、この領域の威厳を、台無しにしちゃいけない。

私たちは、ヒトだから。
ヒトに害をなすあなたを、放ってはおけないけど。
それでも、私はヒトだから。
あなたの領域を、この花園を、壊したくはない。
それが出来ないのなら…せめて。最後まで、彩って、送りたい。

鎮魂歌、なんて大層なものじゃないけれど。
これが、仲間を取って。あなた達の今を捨てて、あなた達の最後を取った。
私の選択だよ。




 もし、彼が夜に沈むなら。
 もしその足が園へ戻るのなら。
 静かに見過ごそうと、思っていた。
 戦星に、徒の香に、紫電の糸に、吼え猛る息吹の竜が目前にいる。
 これ以上、あなたは先には進めない。進ませない。猟兵が此処にいるのだから。
「……まだ、貴方の楽園に帰ることが出来るわ」
 けれどそれは叶いそうになかったから、それが解るから、黒の女は惺に瞼を伏せた。隣に添い立つ女のましろの手をそっと握れば、同じくらいの温度が返る。
「芽吹く息吹の咆哮が主よ。この花園にいられない原因がおありでして?」
 白の女の問いに答えるものは足音。鋭い爪が大地を削る音。ぼろぼろと鱗は毀れ、牙は折れ、星矢の貫いた顎から血が流れているのに、歩みは止まることがない。
 噫──女は片目の奥で嘆いた。彼を突き動かすのは怒りではないのだと。
 喩えるならば、かえりたいと泣く子供のような。
「どこに、帰りたいの?」
 桃色の少女が云った。
 薄緑の竜は、何も言わなかった。
「……うん」
 ならば、届け送ろう。
 少女──パーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)は深く息を吸う。
 歌い紡ぐのは荘厳なるバラード。ユーベルコード・月歌美人。
 炎は、使いたくないな。彼女は思った。周りを見れば、この静かな竜の領域を炎に巻こうとする者はひとりもいなかった。意図的にでも、そうでなくとも。
「……そう。進むのならば、止めるだけ」
 赤竜ダルファを槍と化し構えた白き女、アルトニア・スカディアナ(隻眼よりあまねく白夜・f09479)が、とんと軽い足音立てて地を蹴る。
 闇夜の中から裂く大剣を手に退げる黒き女、オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)は竜を真っ直ぐに見て足を踏み出す。
 ふたりの手がするり、離れた。
「さあ、アリア」
「参りましょう、オリオ」
 空からは白夜が、地よりは極夜が。
 ふたつの色の夜はパームの歌に乗り、同じ速度で翔ける。駆ける。
 星屑散らした黒薔薇の花弁が舞い上がり、梢を揺らして竜へと向かう。白き女は真なる姿──白き翼をはためかせ、羽撃きと共に降る。
 それは竜が見る最期の夜に違いなく。
 グラスアボラスの吐く息吹が戦慄いて、花を生む。とりどりの四季を、柔らかな花弁を、ひとつも惜まず彼女たちへ向ける。
 当たれば次が。避ければ花が芽吹き敵の戦力が増大する二極に於いて、アルトニアは狙い澄ましたように花の息吹を真似た。一瞬の相剋の果て千々に散ったのは、森を嬲る只の風。
 その風に乗った星の黒薔薇がかの領域を覆い、グラスアボラスの巨体を刻む小の剣と成る。
(「私たちは、ヒトだから。ヒトに害をなすあなたを、放ってはおけないけど。……それでも、私はヒトだから。あなたの領域を、この花園を、壊したくはないよ」)
 攻防を見守ったパームの奏でるそれは、狭間より漂う旋律は、仲間を鼓舞する月の歌。
 少女の選択の形。
 仲間を取って。花の竜達の今を捨てて、その最後を取った、決意の形。
 鎮魂歌にはなれなくとも、叶うならどうか穏やかに。
 パームは胸の前で両手を組み、祈るように歌い続けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルイーネ・フェアドラク
本来は穏やかに自然と共生する竜種なんでしょうね
このような形に歪められて蘇ることを、彼ら自身は望むのかどうか
憶測すら烏滸がましいことではありますが…
せめて、海の中で静かな眠りを

触手を振い、戦いましょう
その蠢く肉を盾としながら、隙を窺います
機があれば愛用のハンドガン、GB-10にてグラスアボラスの身を穿つ
重力の楔が、その身の動きを縛るでしょう
一瞬だ、その一瞬があれば
触手の矛が屠るのにも、ほかの猟兵の牙が届くのにも、きっと十分だ

※絡み、アドリブ歓迎します


浮世・綾華
きれーだネ、お前は
でも、倒させてもらうぜ
だって俺は猟兵だからさ

淡く色づく鴇色の鱗がきらきらと光って美しい
白群に染まる身体も
まるで植物に祝福されているようにさえ感じる

菊花を綻ばせなかったのは
同じ技じゃ芸がないから、なんて理由じゃない
最初は攻撃をさけることに留意し
竜のフィールドを発生させる
(なあ、その祝福を受けるのは、お前だけじゃないよ)
花びらに身を隠すように埋もれて
今だ――と放つは巫覡載霊の舞
神霊体を身軽に跳ねさせれば
その上がった戦闘力も意味をなさないだろう
奮うなぎなたは覆う花びらをひらひらと舞い上がらせて
美しい目くらましとなればいい

ほおら、お前に見合った最後だろ?
花と眠れ、穏やかに






 花が散る。
 咲いて、咲いて、また散って。
 鴇色の鱗も白群に染まる身体も、傷付き尽きようとしていた。
 それでさえ浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)には、この上なく美しいものに見える。
「キレーだね、お前は。でも倒させてもらうぜ」
 ──だって俺は、猟兵だからさ。
 その一言だけで全てが断絶される。
 過去から染み出したものと、過去を骸へ還すもの。
 隔たりは幾つもの夜を越えようとも、埋まる事など有り得ない。
 背の刻印から黒き触手を喚び起こしながら、ルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)は花園の主を見つめた。
「本来なら穏やかに自然と共生する竜種なのでしょうね。この様な形に歪められて甦るとは」
 それを彼らが望むかどうか、などと、憶測すら烏滸がましい。けれど思ってしまうのだ。考え、追ってしまう。研究に身を置く者の性、探究心。それとも──。
 首を振る。目をひらく。見据えるは花園の主。
 悍ましい触手を拡げ、拡げて、盾と成す。
 折れた牙の生える口唇で吐いたグラスアボラスの息吹をその肉の壁で受け流せば、咲き乱れる芳しい花。
 極彩色の真中で吼える竜を見、銀の眼が隙を窺う。
(「なあ、その祝福を受けるのは、お前だけじゃないよ」)
 揺れる花の中、綾華は笑んだ。
 酷く残念そうに肩を落として眉を下げ、笑っていた。
 だってわかっていたから。それが、本当に最後だと。
 夜に舞い遊ぶ花弁に埋もれるように力を抜くと、『御神体』に彼は変ずる。ゆらり、ゆらり、風に揺れる花々と同じ速度で首を擡げる。そうしてふわり、鹿のように身軽に跳ねたその先で、グラスアボラスの攻撃は彼にとっては赤児の戯れと変わらぬ程。放たれた花咲く息吹も春の微風に違いない。
 花園の主は柔く花を蹴る。鴇色の翼を羽撃かせて、夜へとゆらり、巨きな花弁のように舞い上がる。
 考えるより先にホルスターから愛銃GB-10を抜いたルイーネが、細めた双眸で標準を絞った。
 飛ばれるのは何かと厄介だ。
「世界の楔、世界の歪みを、君に。──花園へお戻りなさい」
 撃ち込むのは一発のみ。思うより静かに放たれたその精霊弾は重力に干渉する特殊力場を形成する。違いなく肢へと穿つ弾の威力は、それそのものより重力干渉の方に重きがある。
 ぐん、と巨体の重量を遥かに増して枷となる楔に引っ張られ、浮力と拮抗。息吹の竜はその一瞬だけ、地上から僅かに足を浮かべた状態で固定された。
 欲しかったのは、刹那。
「花と眠れ、穏やかに」
 柔い男の声。揺れる金鍵の音。
 振るわれる薙刀はそれに纏う花弁を撒いて、斬撃隠す目眩しになる。
 痛みから目を覆い隠す掌に、なる。
 閃きは弓月の様に弧を描いて、ふつりと竜の首を裂いた。飛んだ鮮血は僅か。砕けた淡緑の鱗は、首の傷は、折れた角は──弾けるように色とりどりの花弁に分たれていく。
 雨音に似た音色で瞬きの間に夜へと散った竜の最後の眼差しを、二人は見た。
 静穏に伏せられる瞼、安堵に揺れてただ一度亡き徒を追った視線。そこに凶しき様相など有りはしなかった。まるで元通りの、穏やかな気性の侭の。
「──君は……」
 ルイーネは言いかけた言葉を、閉じた眼鏡の奥の銀瞳に仕舞い込んだ。彼は海へ還った、それだけの事。
「お前に見合った最後だな」
 やっぱり、綺麗だ。元は花園の主だった花弁を一枚拾い上げた綾華が、それを星に翳して微笑んだ。
 白の天竺牡丹、ひとひら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『幻想夜景』

POW   :    キャンプファイアーをしたりバーベキューをしたり、盛り上がって過ごす

SPD   :    夜の森や原っぱを駆け回ったり星空を飛んだり、満喫して過ごす

WIZ   :    虫や動物の声を聞いたり星占いをしたり、静かに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 主の去った秘密の花園。
 大輪の花が揺れる森の奥。
 さわりと風に揺れる彼らは成る程、予知に見たその姿。
 大人がひとりかふたりくらいは花一輪に寝転ぶことができるだろう。
 花園の真中には、ぽっかりと空いた隙間がある。
 そこには丸く花の咲かない、草も枝葉もぺたりと寝ている空間。
 花園の主の寝床だったんだろう、と、誰かは言った。

 花の香に満ちて、その夜は広く開かれた。

 天蓋を流れる星の雨は、もうじき。
 見るのなら花の寝台がうってつけ、花園の探検もいいけれど静かにお願い。
 案内人はそんな風に付け加えた。
ラスベルト・ロスローリエン
……嗚呼、いけないね。折角務めを果たした後だというのに。
どうにも一服する気にはなれない。

◇WIZ 自由描写●◇
三角帽子を脱ぎ花の竜の寝床跡にごろんと寝転びながら星月夜をぼんやり見上げよう。
成る程。こうして身を横たえてみれば実に贅沢な寝床じゃないか。
地には千紫万紅。空には星河一天……全く言う事なしだ。
あの竜も花の香気に包まれながら時に夜天を見上げ星辰の彼方に思い馳せていたのだろうか?

そう言えば竜を象った星座があったね。
星が流れるまでの束の間、北天に竜の幻影を探し求める。

やがて流星雨が儚き光の軌跡を描き始める様を眺めるうちにふと夢想してしまう。
あの流れ落ちる星の一滴こそ竜の涙雨ではないか、と。




 嗚呼、いけないね、と小さな声。
 務めを果たした後だというのに、パイプを蒸す気分になれない。
 懐に其れを仕舞い込んだ侭、ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)は三角帽子を脱いで寝転んだ。
 其処は龍の寝床。いつか彼が安息の夢を見ただろう場所。
 さやと揺れる筈の草木は地に伏して、耳を擽りもしない。
 見つめる先、遮るものは何もない天に座す星々は流れ出すその時を待っている。
「成る程、これは実に贅沢な寝床じゃないか」
 なあ、花の竜。
 地には千紫万紅。空には星河一天──全く言うこと無しだ。
 あの竜も花の香気に包まれながら時に夜天を見上げ、星辰の彼方に思い馳せていたのだろうか。
 或いは賑やかな植妖達と、共に天を眺めたろうか。
 もはや追うことも叶わないが、代わりに星でもなぞろうかと、ラスベルトは人差し指の先で夜空の中の星屑を繋ぐ。
「そういえば、竜を象った星座があったね」
 さてあれは何処に行ったか。星の雨降る時までの束の間、竜の幻影を探し求める。
 やがてその指の先が、星の竜の尾にかかったとき。
 空に一条の光が流れて消えた。
 瞬きの間に落ちた星の名残は、瞼の裏にある光条の記憶。
 伸ばした指を折って丸めて、自分の頭の下へと仕舞い込む。
 この流れ落ちる星の滴が、竜の涙雨であったなら。
 ──何と大粒の。止め処ない。尽きる時まで溢れ続ける、やがて過去となる粒子。
 人の手に余る。
 此の手になら尚のこと。
 君に、罪の有りや無しや。
 けれど何方であろうとも、
(「……忘れやしないさ、花の竜」)
 憂いを見つめた竜が、喩えそれを知らなくても。

大成功 🔵​🔵​🔵​

芦屋・晴久
【WIZ】⚫

他の方とは少し離れた所でタバコを吹かしています。

何気なく空を見上げて星を詠んでいる男はその飄々とした姿に似合わず今は亡きここの主を思っているでしょう。

何気無く呟くのは四神創奏の詩、流れていく声は周りの花達を鼓舞する物か、又は竜へ向けた物なのか。

(ユハナさんと絡められるならお願いします。)




 男は一人佇んでいた。
 待ち人が居るわけでもなく、何処かへ向かうわけでもなく。
 蒸した煙草はじりじりと燃え縮まり、赤い蛍の火を灯す。
 その花園へ集う猟兵達とは一線を画して、ひと気のない外縁の木陰に寄り掛かって彼は立っていた。芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)。
 そこからでも星も夜空も眺めるに不足ない。花の香が少し、遠いだけ。
「──其は四神の陰堕とし奉る、共振の言霊──」
 流星雨が、降り出していた。
 何処かぼんやりとした表情で晴久は詩を奏でる。黒眼はサングラスの向こう。窺い見ることは出来ない。
 さくり、と草を踏む軽い音が夜闇から星の下へ。
 ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)が彼の様子を見に来たのだ。
 少しの間、佇む彼の横顔を見てから、エルフは同じ木に寄りかかり、根元に腰掛けた。
 聞こえるのは詩。抑揚の少ない、歌ではないうたいかた。だけれどそれは鎮魂のような、葬いのようなものにユハナには聴こえた。
 大輪の花が揺れている、雪の様な霞草がゆらゆらと夜に掌を拡げる。
 ──やがて晴久の詩が流れ終えた時に、ほんの少しの間を置いて、同じ詩が紡がれ出した。
 隣に座る、エルフのこどもの声だった。
 聴いて覚えた言の葉に音律を乗せる。普段の喋りは平坦なくせに、そのこどもは抑揚のない『詩』は巧くなかった。だから同じ音の繋がりでも、晴久のものとは随分と違う。
 幾度か瞬きをしたサングラス越しの双眸はユハナの頭を見下ろして、それから星へと向けられる。
「……ありがとうございます。森を、傷付けないでいてくれて」
 詩を奏で終えたあと。こどもはぽつりと呟いた。
「礼を言われることなんて、してませんよ」
 じりじりと灰ばかり長くなった煙草を指に挟んで、男は応える。
 吊り上げた口角は、この森に入る前と少しも変わらないものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
オズ(f01136)と

馴染んだ友を引き連れて
主の置き土産である花園をくるり
さてと探す花一輪

以前好きな花が知りたいと言われたから
そうかと断ることもなく

漸くみつけた
あった、と一言
指す蒲公英
こいつでい?

折り重なる花弁は案外心地良く
こないだのピヨすけとどっちがふかふかかな

はしゃぐ声と流れる光の筋が重なれば
眩しさを感じて目を細めた
ん、すげ
願いごと、俺はどうしようか
(生まれ変わったらあの竜と
友達になれるようにとか、かネ)
オズはと尋ねようと思ったが
横目にも楽しげな様子に
どうでも良くなって

それが特別好きな花でもなかったことは秘密
選んだ理由はひとつ
ささやかな暖かさやふわふわと綻ぶ様子が
お前に似合うと思ったからだ


オズ・ケストナー
綾華(f01194)と

きれい
きょろきょろ後をついて
アヤカの好きな花、どれかな
おっきなたんぽぽを前に尋ねられたら大きく頷く
もちろんっ

てのひらが
体が
少し沈むのがたのしい
ぽふぽふ確かめるように

おふとんみたいにふかふかだね
ふふ、どっちかな
おんなじくらいかな

ながれぼしっ
あ、また
アヤカアヤカっ
空を指さして

願いごと考えておくように言われてたけど
結局決まってないや
隣で目を細めるアヤカを見て

(これからもたくさんアヤカの笑顔が見られたらいいなあ)

願いごとが決まったらもっとたのしくなって
また空を見る

こんなにおっきなたんぽぽだもの
空から見たらおほしさまみたいに見えるんじゃないかな
わたしもたんぽぽ、大好きになっちゃった




 からからり、静かな鍵音。
 ぱたぱたり、楽しげな靴音。
 二つが縺れるように歩く花園は、四季折々の香りに溢れている。先を歩く浮世・綾華(❂美しき晴天❂・f01194)は後ろからついてくる馴染んだ友、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の様子を時折眺めながら花戦ぐ視界を見渡した。くるりと廻って探した先は、いつかの問いの答え。
 ──どんな花が好きなのか、と。
「あった。こいつでい?」
 示されたのは蒲公英。鮮やかな黄色。大輪のそれはまるで、ふわふわのクッションのようだった。
「もちろんっ」
 オズは目を輝かせて頷き、うんしょよいしょと蒲公英の花弁に上っていく。その度に掌が、体が、少し沈んでは浮かぶのが楽しくて、ぽふぽふと確かめるように遊びながら花の真ん中辺りまで辿り着いた。
「おふとんみたいにふかふか! ふふ、どっちかな。おんなじくらいかな」
「さてねぇ。……ああ本当だ、随分とやわっこいこと」
 先日出会ったピヨすけとどちらがふかふかだろうか、などと考えながら綾華も蒲公英に上り詰める。
「──ながれぼし!」
 指差す先に声と光条が重なる。くるくると表情も興味の先も変わるそれが、何とも子供っぽくて眩しくて、綾華は目を細める。
「あっまた。アヤカアヤカっ、ほら」
「ん、すげ」
 流れる星は雨の数ほど。提げる願いは。
(「……願いごと。考えておくように言われてたけど、結局きまってないや」)
 オズがそっと隣を見れば、つり目がちな目元を少し緩めて星を眺める綾華の姿。
(「これからもたくさん、アヤカの笑顔が見られたらいいなあ」)
 心からそう思って。願い事が決まればもっと楽しくなって、また天を仰ぐ。
「……願い事」
 俺はどうしようか。その隣で綾華は少し考える。
(「生まれ変わったらあの竜と、友達になれるようにとか、かネ」)
 そうだな、そうしよう。
 ところでオズは、と尋ねようとしたところで、楽しげに足をぱたぱた動かしながら夜空を見る仔猫色の眼が視界に入る。
(「……ま、いいか」)
 なんだかどうでもよくなってしまった。
 細かいこと、難しいことを考えるのは、今は止めだ。
「ねえアヤカ。こんなにおっきなたんぽぽだもの、空からみたら、おほしさまみたいにみえるかも!」
「……噫、そうかもな」
「わたしもたんぽぽ、だいすきになっちゃった」
 そう言って破顔するオズに、──全くほんとうに、なにもかも、どうでもよくなって。
 本当は、蒲公英が特別好きなわけでも何でもないこととか。
 その細やかなあたたかさとふわふわ綻ぶ様子が、お前に似合うと思ったこととか。
 柔らかな声の前には些事も些事。
 ただ彼が、たのしげに笑うので。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・ディーツェ
【WIZ】
【アドリブ・他参加者様との絡み歓迎】

犬科の身としては、動き回って探検…も心惹かれなくはないんだけど、今日は趣を変えてみようか

凪いだ草花に彼の竜の、木霊達の面影を想う
命なんて重すぎるモノ、オレには背負えないけれど…あの星々の様に穏やかな時間も、あったのかも、ね

ユハナも星を見ると言っていたから、見つけたらそそいと寄っていく
ユハナ、予知お疲れ様と…ありがとう

君が早く見つけてくれたから、彼等は罪を犯さなかった
…俺の生まれ故郷では、魂は星となって天に還り、また巡るものだって教えがあるんだ

だからきっと、竜も精霊達も、次は優しい未来があると思う
今度も家族として一緒にいられるんじゃないかな、なんて




 黒狼はひとり歩く。
 さくさくと草を踏み、大輪の花の香りに黒い尾を揺らしながら。
 動き回って探検、──という訳ではない。それには心惹かれないでもなかったが、今宵は少し、趣を変えて。
 さぁ、と流れた風の先で視界が開ける。舞う花弁と夜の匂い、天を流れた星の滴が空の端で消える。
 其処は竜の寝床。まあるくぽっかり穴の空いた空白。
 凪いだ草花に彼の竜の、木霊達の面影を想うヴォルフガング・ディーツェ(咎狼・f09192)は、ひとつ、ふたつ、瞼を伏せる。
(「……命なんて重すぎるモノ、オレには背負えないけれど」)
 それでも忘れ得ぬものはある。彼らにもあの星々の様に穏やかな時間があったのかもしれないと、思う心は、在る。
 凪いだ草木からふと視線を上げれば、歩いていく見覚えある姿が赤眼に映った。
「──ユハナ」
「ヴォルフ。ありがとうございます、手伝ってくれて」
 そそいと寄っていく黒狼と、見知った顔にぱたぱた駆け寄る白のエルフ。ちょうど互いの真ん中の、カンパニュラの花の下で足が止まる
「こちらこそ。ありがとう、ユハナ。お疲れ様」
「? 僕は、お礼を言われること、してないです」
 目を丸く見開くユハナに、ヴォルフガングは首を振った。
「いいや、君が早く見つけてくれたから、彼等は罪を犯さなかった。この花園もこの通り、綺麗なまんまだ」
 もし竜を止められなければ死は確実に蔓延っていたし、憎しみの炎は燃え広がり、この森だって無事では済まなかったかもしれない。
「だから、ありがとうでいいんだよ」
「そう、……そうですか。じゃあ」
 ──どういたしまして。
 謝辞を飲み込みそう返すと、視界の端に星が流れて、二人は空を見上げた。
 星の降る夜。
 時折はあっても、こうまで雨の様に降る日は珍しいもの。並んで眺めて、口を開いたのはヴォルフガングの方だった。
「……俺の生まれ故郷では、魂は星となって天に還り、また巡るものだって教えがあるんだ」
「たましいが、星に?」
「そ。生まれ変わり、輪廻転生。いのちが巡り巡るって、そういう話」
 白い息を吐いて、夜の最中、黒狼の手は胎を撫でる。
 面影は双子の妹。ずっとずっと、信じている。だからきっと、今宵のことだって。
「だからきっと、竜もあの精霊達も、次は優しい未来があると思うんだ。今度も家族として一緒にいられるんじゃないかな、──なんて」
 ぱちりと目を瞬くユハナは、それから目元を少し緩める。
「……うん。星になれたら、いいですね」
 それはきっと素敵なこと。
 優しいいつかが生まれる事を二人願って、星の雨を見上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトニア・スカディアナ
オリオ(f00428)と伴に。

園の主の残り香かしら?
花の息吹にダルファが自由に浮かんでいまし。

花の寝台へふんわり…寝転がって。
ゆるり観上げる花びらと星空。あの主は見上げつくしたろうか…ーー綺麗。

えぇ、わたくしも。
オリオと観れて…

嬉しい。

思いは、
この身に星を降り震える程。
秘めて夜の調べに淑やかに。
唄を奏で聴きましょう。

オリオに紡がれる、
わたくしの、前の、わたくし。
かつての知らない、
生れた時から知っている、わたくしの事。

オリオが馳せた想いを横目に。
目を細め思い重ねて首を振りまし。

ー謝らないで、愛しいオリオ。
わらわは、いつでも傍にいましてよ。

手に、手を重ねて。
ーいつか、また。
星を観に参りましょう。


オリオ・イェラキ
アリア【f09479】と供に

素敵ね
本当に、楽園に来たみたい
行きましょう今一度手を繋いで
そう、あの花が二人で居れそうね

ゆっくり横になって…あぁ
それだけしか言葉にならない
花弁と星が、共に降り注ぐなんて
…ふふ。ダルファも、嬉しそう

ねぇ
わたくし、アリアとこの空を観ることが出来て幸せ
花の香りと眼前の星空に
少しだけ、ほんの少しだけ
昔を思い出す

かつての日に居たのは、最初の『アリア』
わたくしの片割れだった、あの子
そう、あの子ともこんな夜空を一緒に眺めたのよ
寄り添って

…ごめんなさい
こんな話をするべきではないのに
あぁ、優しいアリア
ありがとう、もう少し
傍に寄っても良いかしら

ええ。勿論よ
約束の証に、再び手を重ねて




 夜に互いを伴って。
 オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)とアルトニア・スカディアナ(隻眼よりあまねく白夜・f09479)は、離れぬように手を繋ぎ花園を歩く。
「素敵ね。本当に、楽園に来たみたい」
「ええ、オリオ。──ふふ、ダルファも嬉しそう」
 此処の主の残り香だろうか。小さな赤竜ダルファがふわり、主人の周りで浮かんでいる。
 星屑の下、きょろきょろと辺りを見回すオリオの目に入ったのは、赤のゼラニウム。小柄な花の重なる様は、どうにもふわふわと柔らかげで。
「どうかしら。あの花なら二人で居られそう」
 白と黒はその花に添い、互いに添い、さわりと揺れた赤の上にゆっくりと寝転んだ。
「……ああ、」
 そうすれば目の前には散り流れる星ばかり。幾筋もの光が夜の中へと落ちていく。
 天の光は遥か古に瞬いた星。流れる星は直ぐに過去となる今の光。交じる今と彼方に息を吐いた。
「……綺麗」
 アルトニアは囁く。楽園の主も、いつかこれを見尽くしたのだろうか。
「ねぇ、わたくし。アリアと、この空を観ることが出来て、幸せ」
「えぇ、わたくしも。オリオと観れて……嬉しい」
 その声に秘めた想いは幾許かの星の光に綴じ込めて。今はただ夜の唄を、調べを聴く。
 ──幸せなのだと、黒き女が云う。その眼は星を見つめる。星の向こうのいつかをほんの少しだけ思い出し見る。
 花の香、揺れる星、夜の匂い、隣には。
「──『アリア』」
 嘗ての日わたくしの隣にいたのは、今いるこの子ではない『アリア』。もう失われた最初の片割れ。
「そう、あの子とも、こんな風に星を見たのよ。寄り添って」
 黒き女が語るのは、白き女が知らない、生まれた時から知っている、『自分』の話。
 紡がれるアリアの前の『アリア』のこと。
 熱に浮かされるように話した後で、オリオはゆるゆる首を振った。
「……ごめんなさい。こんな話を、するべきではないのに」
「──謝らないで、愛しいオリオ。わらわは、いつでも傍にいましてよ」
 これまでも、これからも、変わらずに。
 アルトニアは隻眼で笑う。いつものように、極夜へと。
「ありがとう、優しいアリア。もう少し、傍に寄っても良いかしら」
「ええ」
 或いはそれは、互いにとってその上なく嬉しいこと。
 ぴたり寄り添い手に手を重ねる。
「いつか、また。星を観に参りましょう、オリオ」
「ええ、勿論よ」
 約束の証はその手のぬくもりと、流れる星のひとしずく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルイーネ・フェアドラク
ああ、綺麗な夜ですね
おいで、ユハナ。一緒に星を見ましょうか
初めての予知だったでしょう、お疲れ様です

こどもにひと時付き合ってもらい、花の寝台で星見を
普段UDCアースにいると、こうした雄大な景色には圧倒されますね
こんな花も、咲きませんし
本当にあの竜は、植物と共に生きていたんですね
オブリビオンではない、本来のドラゴンたちに会ってみたいですねえ
叶いようのない、夢ですが

流星雨を見るのは、初めてです
放射点を中心に星が流れていく様子は、まさに雨のようで
感嘆の面持ちでしばらく眺め
こどもが嬉しそうであれば、それもまた喜ばしい

尾はこどもの枕にでも提供し
こどもを呼ばう声がほかにもあれば、ではまた、と




 綺麗な夜だ。白い息を吐くルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)は、冷えた風の中にそれを見つける。
「おいで、ユハナ。一緒に星を見ましょうか」
 呼ばれて振り向く冬のエルフは目を瞬いて、ぱたぱたと軽い足音が花の最中を駆け抜けていく。
「ルイーネ、ルイーネ。怪我はありませんか」
「ええ。大丈夫ですよ」
 飛びつく程の勢いで傍へ来たものだから、ついふと笑ってしまって。この子と星を見るために、戦った甲斐もあったものだ。
「君も、初めての予知だったでしょう。お疲れ様です」
「いいえ。待っていただけです」
「大人しく待っていられただけ、偉いと言うべきでしょうかね。君の場合は」
 そんな話をしながら、何方ともなく手を繋いで歩く幻想の庭。大きな手を引くのはユハナの方だ。足取りは楽しげで、どこか落ち着かない様子。
 忙しく周りを見渡した海色の瞳を見守っていれば、「あった」と跳ねた声が上がる。見つけた花は──紫のアネモネ。
 二人揃って登る花の寝台に、ふさりと横切る錆びた赤色。狐のしっぽ。枕にどうぞとルイーネが微笑み、寝転ぶユハナはふわふわの毛並みに頬を埋めたが、その表情乏しい眼は何処か微かに恨めしげ。
「……ねむりそうです」
「おや。きちんと私達を送り帰してくださいね?」
 膝を立てて隣に座るルイーネは、見上げた天に流れる星を見つけた。普段はUDCアースに居るから余計に、この世界の景色に圧倒される。満天にさんざめく様な星屑も、夢物語のような大輪の花にも。
 ふと見下ろせば竜の寝床。丸く凪いだ草木の痕。あれも時が経てば、埋もれ消えゆくものだ。この森と、植物たちと共に生きた彼の竜と同じように。
「オブリビオンではない、本来のドラゴン達に会ってみたいものですねぇ。……叶いようのない、夢ですが」
「そうでしょうか。いつか会えるかも、しれません」
 ──だって遠い未来のことは、グリモアにもその透いた眼鏡にも、映らないのだから。
 放射点は天頂を少し下った辺り。流れ流れる星の隙間に見知った星座はひとつも無く、映る凡てが真新しい。
「……流星雨を見るのは、初めてです」
「おんなじ。僕もです」
 暫く互いに声なく雨を眺めた後に、こどもが言った。
「ルイーネ。お願い事は、しましたか」
「願い?」
「流れ星に願い事、というのは。UDCアースで、よく聞きます」
 その海の瞳は楽しげな色を映すから、喜ばしいと狐は笑んだ。
「そんな君は何か願ったんですか、ユハナ?」
 ゆらり躱したそれさえ気付かずに、こどもはほんの少し、口元を綻ばせる。
 彼がくれた祈りを忘れたことはないから。
 だから今度希うなら、祈るならば。
「″あなたが倖せでありますように″」
 それ以外には、ないのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ


素敵な夜だね。
綺麗な自然に囲まれて、優しい花に囲まれて。
こんなにロマンチックなシチュエーション、恋人同士の憩いの場とか。告白の場にしたりするのかな。
なんて、ね。

…そういえば、ユハナも来られるのかな。
見に行きませんか、って言ってたし…来るよね?きっと。

●WIZ
私は…そうだね。せっかくいいものがあるんだし、お花のベッドで寝転がりながら、流星雨を眺めようかな。
手を伸ばせば掴めそう…なんて、そこまで夢見がちでは無いんだけれど。

そこまで知った仲でもないから、ユハナとは、少し離れて行動するつもりだけど…
彼がどういう人なのか、私はまだ、よく知らないから。
彼が何を見て、何を感じ取る人なのか。
眺めてみたいな。




 桃色狐が寝転ぶ花は、ピンクのアスター。
 星の雨に甘い香。
 花弁に埋もれて眺める夜。
 話に聞いた通りの甘やかな花園だった。
 パーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)は、ほうと白い息を夜に吐いた。
(「綺麗な自然と、優しい花に囲まれて。こんなにロマンチックなシチュエーション、恋人同士の憩いの場とか。告白の場にしたりするのかな。……なんてね」)
 彼女自身は言うほど夢見がちではなく、寧ろ年頃の割に現実をきちんと見つめて堅実に生きているのだけれど。
 少しくらいは、考えなくもない。だって年頃の少女であるから。
 流れる星を数えて、数えて、眺めながら。
 手を伸ばして掴んでみようか、なんて夢を見るような事を考える。そのくらいには、現を忘れる夜だった。
 そういえば彼は来ているのかな、と思い至る。此処へ案内したグリモア猟兵。白いエルフ。
(「ユハナも来られるのかな……来るよね、きっと」)
 一緒に星を、と言ったのは、彼なのだから。
 少し話をしたくらいで深く知った仲でもないから、積極的に話しかけるつもりはパームにはなかった。
 ただ少し、眺めてみようと思ったのだ。
 花園の中でユハナの姿を見つけるのは然程難しくはない。けれど、容易いとも言い切れない。
 最初に見つけたのは、大輪の花の陰から頭が覗いた時。
 ああやっぱり来ていたんだ、なんて思って、その視界の端に流れた星を一筋追って視線を戻すともう居なかった。
 桃色の眼を瞬き探すと、また見つける。今度は誰かと話をしているらしい。
 共に星を眺め、花を愛でては手を振って。
 そんな事を何回か繰り返していた。
 ぼんやりした表情の割には、彼はくるくるとよく動く。感情の薄い表情は、けれども花と星を眺める時には目元が緩み、人といる時には微かに楽しげで。
(「……ふぅん」)
 少し離れた方が、見えやすいものもあるのかもしれない。
 星の雨に向き直りながら、彼女もまた、星月夜に揺蕩って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸リル(f10762)と一緒
アドリブ等歓迎

見て、リル!
星に花咲く秘密の花園
素敵よね、と微笑んで
風に尾鰭を揺蕩わせる人魚をみる

さ、リル!お空の女子会よ
星に手は届かなくても
星空を游ぐことは出来るわ
飛べる?と穹游ぐ人魚に手を差し伸べ
美しい空、満喫しなきゃ損よ!
広げるのは枝垂れ桜の翼
星と桜の花弁と地上の花と
とっても綺麗でしょ
リル、もちろんあなたも

花の寝台
ルクリアはあるかしら?

いい香りがして可愛い花なの
リルにぴったりよね
嬉しげなリルを見て微笑む
彼が眠ってしまったならば打掛けをそっとかける

星に願いを
ならあたしは
この人魚がたくさんの世界や倖せに出逢えることを願うわ
においたつ未来が優しいものでありますように


リル・ルリ
■櫻宵(f02768)と
(アドリブ等歓迎

「――綺麗」
櫻宵に連れられた秘密の花園
唇から零れたのはその言葉
髪を撫でる風も心地よい
瞳を瞬かせ

「星は手を伸ばしても届かないのに、届くと錯覚してしまいそうだ。え、穹を君と一緒に?」
女子がいないのにお空の女子会はよくわからないけれど
桜の竜と星空を游ぐ
それはとても素敵
手をとり穹へ舞えば
風に星に花の香りに――桜の君の
少し早い春の香り

ひと泳ぎして寝転がる大きなルクリアの花
星の雨を眺めれば
世界と一つになったよう
不思議な気持ちと微笑んで
「花の寝台。ふふ、いつもは硬くて冷たい硝子の水槽の底だから――柔らかくて、」
眠くなってきた

においたつのはきっと
あたたかな明日への期待だ




「見て、リル! 素敵……!」
「──綺麗、」
 風に尾鰭を揺蕩わせる人魚を連れて、誘名・櫻宵(誘七屠桜・f02768)は秘密の花園へと足を踏み入れる。
 連れられたリル・ルリ(瑠璃迷宮・f10762)は大輪の花を眺め、空を見遣り、唇から溢れた言葉にも気付かないように星を眺めた。
「星は手を伸ばしても届かないのに。届くと錯覚してしまいそうだ」
 その手をそっと引いた櫻宵が片目を伏せて、枝垂れ桜の竜羽を広げる。
「飛べる? リル。お空の女子会よ!」
「え、穹を君と一緒に?」
「そうよ。星に手は届かなくても、星空を游ぐことは出来るわ。美しい空、満喫しなきゃ損よ!」
 女子がいないのに女子会なのは、わからないけれど。櫻宵の言う事は、わからなくはない。ひらりと夜に舞う二人は花園の周りを巡るように空を駆ける。
 地には四季花、空には流星と毀れる程の星屑。
 そして隣には薄紅の。
「……ね。とっても綺麗でしょ?」
 桜の君が笑うから、少し早い春の香りさえするようだ。
「勿論あなたもよ、リル」
「うん。ありがとう」
 ふわり、ひらり。
 長いようで短い空游ぎの終わりは、ルクリア、と指差す櫻宵の一声。
「良い香りの、可愛い花でしょう? リルにぴったりだと思ったの」
 花弁の重なりにリルを下ろし、その隣に櫻宵も腰を下ろして。二人寝転んで眺めた星の雨。世界とひとつになったよう、と嬉しそう人魚は云い、桜の竜は微笑んで。
 なんだか、ふしぎな気持ち。
「ふふ、いつもは硬くて冷たい硝子の水槽の底だから……柔らかくて、」
 ──ねむたくなってきた。
 声の通りの眠たげなそれに、あらあら、と櫻宵は止める事もなく。
 星の瞬きを子守唄に、うとりと瞼を閉ざしたリルの身体を櫻宵の打掛がそっと覆った。
 星に願いを、と人は言う。
「ならあたしは、この人魚がたくさんの世界や倖せに出逢えることを願うわ」
 世界という大海を游ぐ君に、幸あれ。
 においたつ未来は──。
 においたつ明日は──。
 あたたかな、優しい朝であるのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

赫・絲


ユハナは来てるかなー?
誰かと一緒のようなら邪魔しないように一人で、
そうでなければ一緒に流星雨を見に

もこもこのコートを上に着込んで防寒対策はばっちり!

花に寝転ぶなんて生まれて初めて、どのお花にしようか迷っちゃう
ぽっかり隙間が空いた、あの子の寝床の近くで寝台にするお花を探す

きっとここを寝床にしていたあの子もいつの日か、ここから流星雨を見たんじゃないかなって
近くで見たら、あの子が見ていた景色と似た景色が見れるかなって、思って

星の雨が降り始めたなら、目に焼き付けるように瞬きも惜しんで静かに眺める
いつかまたどこかで流星雨を見ることがあっても
今この景色は、今この時しか見れないモノだから




 ユハナ、とその声は呼んだ。
 いつもと同じ色の、彼女の音だ。
「絲。手伝ってくれて、ありがとう。怪我はない?」
「うん! ユハナは? 寒くなかった?」
 もこもこのコートを着込んだ赫・絲(赤い糸・f00433)が、紫水晶の目を綻ばせてくれたので。よかった、と白のエルフが安堵の息を吐く。大丈夫、と互い頷き、花園の中を並んで歩く。
「花に寝転ぶなんて生まれて初めて。どのお花にしようか迷っちゃうなー」
「僕も、こんなに大きいお花は、見ないかな。あんまり」
「あんまり!?」
 つまり少しはあるって事じゃないか。
 剣と魔法の世界、斯く恐ろしき。
「……ふわふわのお花、とか。絲、すき?」
「えっなにそれ。気になる。どこどこー?」
 花園の空洞。ぽっかり空いた、あの子の場所。その近くで花を探していたのだけれど、ふと、ユハナが一角を指差した。
 青紫の、スターチス。
 小花が密集しているその花は、けれどもこの花園ではそれなりの大きさの花の集まり。
 二人揃ってよじよじ上ると、ふんわりと包まれるような心地だった。
 ぽふり寝転べば立ち上る、花の香り。
 天蓋には煌く星屑。
 ──ここを寝床にしていたあの子もいつの日か、ここから流星雨を見たんじゃないかなって。
「近くで見たら、あの子が見ていた景色と似た景色が見れるかなって、思って」
「……うん。きっと、同じような空を、見たと思うよ」
 いつかの星の流れる夜、共生の徒と肩を並べて。
 そんな穏やかな日々は、束の間だったかもしれなくても。
「でも。その景色はこんな風に、綺麗だったと、思うんだ。僕は」
 だってだれかと一緒の夜は、あたたかいから。
「……そうだね。そうだといいね」
 ついと流れる星の涙。
 光条は放射点から流れ出して、楽園の端へ落ちていく。
 その光景を、絲は瞬きも惜しんで眺めていた。
 目に焼き付けるように。刻むように。
 いつかまたどこかで流星雨を見ることがあっても、今この景色は、今この時しか見れないモノだから。
 そうしてそんな娘の横顔を、ユハナは見ていた。
 真っ直ぐな瞳で今宵を見つめた、彼女の事を。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト