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ラストナイト(作者 北辰
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●錆びた騎士
 主命が下りた。
 辺境に生まれた空白地帯に向かい、そこに生きる全てを手中に収めることが、此度の我々の使命だ。
 槍を構え、一糸乱れぬ行進で私に続く部下達の士気も高く、騎士としての誇りに満ち溢れている。

 (そんな訳がないだろう)

 ──何かが、私の中で声を上げたようにも思えるが。
 主より賜りし、誇りある紋章。輝くそれが蠢けば、そのような雑念などたちどころに消える。
 さあ、今宵も人民の為、剣を振るうのだ。

●最後の夜
「皆様、お集りいただきありがとうございます。世界コードネーム:ダークセイヴァーにて、オブリビオンの出現が確認されました」
 シスター服に身を包んだグリモア猟兵が、自分の呼びかけに応じてグリモアベースに集った猟兵達へ語りだす。

 ダークセイヴァーでも、猟兵達の活躍によって生まれた人類側の領域が徐々に増えている。
 人類砦と呼ばれる、立ち上がった人々によって作られた拠点や、猟兵が異端の神を討った事で生まれた辺境空白地帯。
 少しずつではあれど、常夜の世界の状況は改善しており……だからこそ、『支配者』も動き出している。
「今回、皆様が対峙するのは『辺境伯』と呼ばれるオブリビオンの一体となります。強力なオブリビオンへ、紋章と呼ばれる寄生虫オブリビオンが憑りつくことで生まれる存在ですね」
 ただでさえ強力な力を持つ個体に、宝石のようなブローチ大の寄生虫が触手を這わせて憑りつくのだ。
 そうして生まれる辺境伯達の力は凄まじく、通常であれば猟兵ですら苦戦を強いられるような存在である。
「ですが、今回は、我々に有利な状況です。まず、辺境伯の襲撃前に予知が成功しましたので、迎撃準備の時間が存在すること」
 今回、猟兵達が向かう空白地帯は開けた平野であるが、数十年以上前の廃村の名残が点々と存在しており、隠れたり、罠を仕掛ける余地は十分にあるだろう。
 敵の進軍ルートには人々の住む村もある為、そちらの避難にも手を回す必要があるが……その上で、敵を迎え撃つ準備をする機会もある。
 そして何より、これはチャンスなのだ。
「できれば、『辺境伯の紋章』に関しても捕獲をお願いします。寄生先が倒れれば紋章も活動を停止するようなので、特別な技術は不要のはずです」
 ダークセイヴァーを支配する上位の吸血鬼に関しては、未だ多くの謎が残っている。
 かの世界に真の平和を齎すためにはいずれ彼らを討伐する必要があり、その為に、彼らが与えたとされる『辺境伯の紋章』は重要な手掛かりとなり得るのだ。

「辺境伯──個体名、『赤錆の騎士』。オブリビオンとなる前は、人々の為に吸血鬼へ立ち向かった、勇敢な騎士であったようです」
 過去の英雄が率いる忘我の軍勢。
 過去の誇りと、現在の命。
 そして、未来の勝利の為に、錆びついた騎士の進軍を今夜で最後のものとする。
 夜の世界へ続くグリモアの光の中へ進む猟兵達は、迷うことなくその歩を進めるのだった。





第3章 ボス戦 『赤錆の騎士』

POW ●強撃
【瞬時に間合いを詰め、二刀の剣】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD ●致命へと繋がる
【剣による打ち払い】が命中した対象に対し、高威力高命中の【刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ ●切り裂き詰める
対象のユーベルコードに対し【超常すら切り裂く斬撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はフィーナ・ステラガーデンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●がらんどう、あるいは微かな抵抗
 二振りの剣を抜き放ち、辺境伯──赤錆の騎士は迫りくる。
 錆びた全身鎧は、されどその頑強さを感じさせる威容を誇り、胸に憑りつく禍々しい宝石、『辺境伯の紋章』は鎧に触手を這わせながらも妖しい輝きを放つ。
 かの騎士が、紋章によって力を増した辺境伯、それに相応しい力を持つオブリビオンであることは疑う余地もない。

 だけど、それでもなお。
 騎士には、強大なオブリビオンとしての、軍を率いる長としての、卓越した技量を持つ剣士としての。
 覇気、とでも呼ぶべきものが、明らかに欠けていた。
 剣も、鎧も、決して侮るべきではない力を感じさせるものだ。
 けれども、その振るい手たる彼自身が何らかの気力を失っているように見て取れるのだ。
 最初から不自然ではあった。
 騎士が率いた狂信の徒は、結束と統率を持って初めてその真価を発揮できる手合いの者。
 彼らが猟兵と接敵したその時から、騎士が戦場に介入していたのならば、猟兵はより苦しい戦いを強いられていたはずなのだ。

 宝石が、瞬くように輝く。
 剣を振り上げる騎士が、猟兵に敵意を向けていることに間違いはない。
 だが、彼が己の、オブリビオンの勝利を望んでいるか。
 是であると断じるには、あまりに異様な光景であった。
フォルク・リア
「赤錆の騎士か。
個としての力と紋章の力を併せ持つ。
掛け値なしに強敵の筈だが。」
本当にそれだけなのか。
奴自身の意思は別にあるのか。
それも、戦って確かめるしかないか。

攻撃の機会を窺って
周辺の罠を使いグラビティテンペストを発動。
重力波で敵を攻撃。
斬撃により相殺されても
重力の働く方向を変える等変化をつけて攻撃を続ける。

それも退けて敵が接近したら
一時グラビティテンペストを解除。
敵の足元等を狙って罠を設置。
敵が罠にかかりペースを乱したら
【早業】で血煙の様なオーラを纏った真の姿を解放。
【高速詠唱】でグラビティテンペストを再度発動し
全力の超重力で紋章を押し潰す。
「チャンスは此処だ。逃しはしない、狙った敵は。」


シャルロット・クリスティア
……抵抗、しているのですか?
骸の海に呑まれ、吸血鬼の手駒と成り果てても尚、人に仇為す行いを拒んでいる……。
そう言う事なんでしょうか。

いずれにせよ……いえ、だからこそ、かもしれませんが。
その剣をこれ以上不必要な血で染める前に、終わらせます。

幸い、ここまで遠方からの射撃に徹していた以上、身を隠すものは多い。
他の猟兵が戦っている間に息を潜め、身を隠し、死角に回り込む。
相手は一人、周囲を払えぬ死角はどうしてもできるもの。
後は……その首を、掻く。

この身は救済者には程遠い。誰かを守るには、手段を選べない人間です。
誇り高き騎士は卑劣な闇討ちに沈んだ……どうしようもない筋書きですが、ご勘弁を。


●機転
「……抵抗、しているのですか?」
 騎士から離れた廃屋に身を潜めながら、シャルロットはぽつりと呟く。
 遠くから様子を伺う彼女の目にも、騎士の様子が異様であることはよく分かる。
 相手は既に死した亡霊、たまたま調子が悪いなどありはしない。
 彼の足を引くのは、肉体か精神か。
 骸の海に呑まれ、吸血鬼の手駒と成り果てても尚、人に仇為す行いを拒む何かが、まだ彼の中に残っているのだろうか。
「いずれにせよ……いえ、だからこそ、かもしれませんが」
 少女が銃を下ろし、その手に握るのは鋭い短刀。
 鎧ごと叩き潰す剛力に縁はなく、狙撃は既に見られている。
 であれば、シャルロットの為すべきは、この小さな刃を彼の鎧の隙間に通すこと。
 そう──あの剣がこれ以上不必要な血で染まる、その前に。

「赤錆の騎士か。個としての力と紋章の力を併せ持つ、掛け値なしに強敵の筈だが」
 一方で、迫りくるオブリビオンをまず迎え撃つのはフォルク。
 術士である彼が、剣に長けた騎士の前に立つ。本来であれば危険極まりない行為だ。
 もちろん、それは勝利の為。
 相手は強大な力を持つ騎士、フォルクの術の技量も決して劣るものではないが、考えなしにそれをぶつけて勝てる相手ではない。
「(見極める必要がある。相手が剣を振るう、その一瞬の隙を……)」
 たとえ接近にリスクがあろうとも、距離を取り、隠れ潜んでいては勝機を見出せない。
 本質的に研究者であるフォルクだが、だからこそ、勝利の為に必要な条件を冷静に見定められた上でのこの選択なのだ。
 だが、それでもこの危険な戦いに挑むには、もう一つ。
 この騎士の意思がどこにあるのか。
 それを見極めるにも戦う必要があるのだという直感が、彼の背中を押していた。
「a、aa……!」
 騎士の鎧が、ぎしりと軋む。
 目の前のフォルクを斬り捨てるべく剣を握るその姿は堂に入っており、フォルクの首筋にもヒヤリとしたものが走る。

 瞬間、動くのは両者。
 ひと際強く踏み込む騎士を横から叩くのは、フォルクの操る重力波。
「──……ッ!」
「なるほど、重い……死してなお、衰えは無しか!」
 攻撃の瞬間を叩かれた騎士がたたらを踏み、カウンターの見極めに成功したはずのフォルクも顔をしかめる。
 先に戦った兵士たちなら、堪える間もなく吹き飛ばされる一撃だ。
 だというのに、目の前の騎士はよろめく程度で、依然その剣はフォルクへと向けられる。
 もはや火ぶたは切って落とされ、攻撃の手を緩めればあの錆びた剣がフォルクの首を刎ね飛ばすだろうことは想像に難くない。
「aa……、aaa!!」
 二撃、三撃。
 フォルクが操る重力波が立て続けに騎士を襲う。
 その猛攻に、効果が出ていないわけではない。
 それでも騎士は崩れず、変幻自在に全方向から襲い来る重力の連撃にやがて対応を始める。
「これは……!」
 騎士の振るった剣が虚空を裂く。
 その意味にフォルクが気づいたのは直後。
 重力を操っていた支配下の微粒子が、その機能を停止したのだ。
 そうして、フォルクによる術の包囲網にできた、隙とすら呼べぬ僅かな空白。
 ……それを見逃すようでは、『辺境伯』という称号は与えられない。

「く、なにっ!?」
 騎士は、重い鎧を纏っている身でありながらも、跳ねる獣のように加速し、フォルクへと接近する。
 だが、フォルクが目を見開いたのはそこではない。
 繰り返しの話になるが、フォルクは冷静な判断の下、騎士の前に立っている。 
 接近された時の想定が無いはずもない。重力を生み出している微粒子をユーベルコードの影響下から外す──罠の再設置で、敵の隙を作るつもりであった。
 だが、相手は紋章を与えられた強大なオブリビオン。
 落とし穴、それも部下たちが餌食となったのを見た後であるのなら、それを飛び越える程度の運動能力は当然持ち合わせている。
 一度ユーベルコードを解除してしまったフォルクに、純粋な身体能力だけで騎士から逃れる手立てはない。
 赤錆の浮いた剣が、視界の中でやけにゆっくり迫りくる。
 目の前の光景に、錆色が占める割合がどんどん増していき。

 そこに金が混じった時、フォルクの思考は今わの際の加速を取りやめた。

「──すまない、助かった」
「いえ、当然のことです……」
 視界の外、廃屋に身を潜めながら接近してきていたシャルロット。
 騎士の完全な隙を突ける状況で、しかし彼女が選んだのは仲間を救うための牽制だった。
 短剣が裂いたのは騎士の腕。
 首を狙えば騎士を仕留められたかもしれぬが、そも、シャルロットが奇襲という一種の邪道を選択したのは人を守るため。
 見捨てるという選択肢など、彼女にはあり得なかった。
「a、aaaaa──!」
 逃した勝機は大きなものだ。
 騎士の前に姿を晒してしまった彼女には、既に奇襲の選択肢は残っていない。
 騎士として鍛えられた肉体で長剣を振るう敵と、短剣を握る小柄なシャルロット。
 猟兵たる彼女の身体能力は低くはないものの、リーチに勝るオブリビオンと真正面から戦うのは無謀だった。
 それでも、この選択に後悔はない。
 咆哮をあげながら踏み込む騎士へ、シャルロットはそれでも気丈な眼差しを向ける。

 繰り返しになるが。
 シャルロットには、奇襲の選択肢は残っていない。
「チャンスは此処だ」
 だが、もう一人は別だ。

「ッ!?」
 騎士の足元が崩れる。
 研究者であるフォルクの日常はトライ&エラー、窮地に立たされ、そこから挽回の道を模索するのはごく当然にできる事である。
 罠は通じなかった。しかし、シャルロットという新しい要素で条件は変わる。
 騎士の戦意は彼女に向かっている、ならば試そう。
 試して、成功するのなら、改めてプラン通りに事を進めるのみだ。
「手を貸す、紋章を潰すぞ!」
「っ! はい!」
 フォルクの叫びに、シャルロットが飛び出す。
 体勢を崩した騎士の防御は間に合わず、彼女の短剣は禍々しい宝石へと突き立てられる。
 硬い、鋭さではなく、重さが必要な相手だ。
 手応えに反射的にそう思考したシャルロットの握る刃は、しかしその圧を急激に増す。
 瞬間的に血煙のようなオーラを纏い、力を増した真の姿となったフォルクの重力波が、彼女の短剣を楔として打ち込む。
 びしり、という音が響いたのちに。

「……ギ、ギイアアァァァァァ!!!」
 猟兵でも、騎士のものでも無い悍ましい悲鳴。
 それは、真に邪悪な者がもたらした紋章が、生まれて初めて受ける痛みに上げた苦痛。
 猟兵たちの攻撃の成功を示す証に他ならないものであった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴