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くーるに火樹銀花

#アックス&ウィザーズ #戦後 #お祭り #甲鎧虫

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 大事に育てた氷樹に氷の実がなった。
「里の外に出せるくらいにはなったんじゃねぇか?」
 ケントウの里の若者が砕いた氷片を口に入れれば、普通の氷とは違う美味しさ。元となった水が良いのだ。
「やっとシェルフワの大樹祭に氷菓子が出せるね!」
 違う若者が氷の実を収穫しながら喜びの声を上げる。
「前、祭りに行った時に、氷の実と合いそうなものを色々見繕ってたんだ」
 ふわふわに削った氷菓子を、祭会場で見つけた蜜とコラボしたりしたいなぁ、と若者。参加できたら忙しくなりそうだ。
 和気あいあいとしだした若者たちに、子供たちが反応する。
「おまつりいきたいー!!」
「おてつだいするからぁぁぁ!」
「えええ……今ん時期だと凍雨の氷河を越えなきゃいけねぇんだぞ……」
 今度はお年寄りたちが声を上げ始めた。
「死ぬ前に一度しぇるふわのおまつり行ってみたいのぅ」
「たのしく遊びたいのぉ」
「フィリアちゃんとメルルちゃんもこう言っておる。これでも儂は若いころはぶぉんぶぉんゆわせてたんじゃ、旅は任せておけ」
「えええええ……」
 里の若者たちは顔を見合わせた。
「頼もしいっちゃ頼もしいけど……」
「は????」
「いや……いちお、隣町の酒場に依頼出してみるわ。モンスターも出るだろうし」


「群竜大陸での戦い、お疲れさま! 皆さんのおかげでアックス&ウィザーズにも平穏が訪れたわ」
 そう言いながら猟兵たちを笑顔で出迎えるポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)。
「でも、帝竜が倒されたからといって、元から住んでいるモンスターはそのままなのよね。酒場とかには依頼も舞いこむし、冒険者の仕事は結構あるの」
 とある酒場で、ポノはオブリビオンが関係する依頼をひとつ見つけたようだ。
 掲示板から写した依頼書を猟兵へと渡す。
「難しいものでは無いんだけど、『トウケンの里』からの依頼よ。シェルフワの大樹祭で、里の人たちが美味しい氷菓子メインの店を出したいみたいなのだけど、今って一部梅雨の時期でしょう?」
 一瞬「?」となる猟兵たちだが、アックス&ウィザーズにも梅雨があるらしいと察し。
「梅雨時期の氷河って、凍雨が降るのよね」
 凍雨とは、過冷却状態の雨で、何かに触れると凍ってしまう滴だ。
「つ……ゆ??」
 ただの梅雨ではなさそうだ。
「里の人もそこそこ慣れてはいるんだけど、結構大所帯&大荷物になるらしくって、皆さんには荷運びのお手伝いと凍雨に氷漬けにされない助力を請いたいみたいなの」
「雇われ冒険者みたいな感じになるんだね」
「あと、道中、オブリビオンが襲ってくるからその対処と」
「護衛の仕事もだね」
 まあ、同行依頼なら当然だろう。と、頷く猟兵たち。
「あと、お祭り会場で何かイイカンジな物を見つけて、イイカンジな氷菓子の案を出して欲しいみたいで」
「……冒険者の仕事とは」
「氷菓子とかは食べ放題にしてくれるみたいよ? まあ、気が向いたらで良いからよろしくね」

 それはそれとして、と地図を広げるポノ。
 里を出ての道中は寒く、シェルフワの地に入ればそれなりにジメっと暑い、そんな気候を持つ地域だ。氷の実は、実の形状のままだと普通の氷よりも溶けにくい氷ゆえに、祭りでの売れゆきは上々となるだろう。
「出てくるオブリビオンは『甲鎧虫(こうがいちゅう)』っていう、硬くて分厚い甲殻に覆われた敵なの。甲殻は武器防具の素材にもなるみたいだから、道中撃破して回収するのもアリだと思うわ。大樹祭には加工の得意なドワーフもいるだろうし、何か作ってもらうのも良いかも」
 と、色々な説明を聞いた猟兵たちが最初にしたことは、防寒具の用意だ。
 旅立ちはトウケンの里。長旅となるので、装備を確認していく。
「準備はできたかしら? それじゃあ、あとは現場判断で! お祭りは楽しんできてね」
 そう言ってポノは猟兵たちを送り出すのだった。


ねこあじ
 ねこあじです。
 今回はよろしくお願いします。
 プレイング締め切りなどはマスターページやTwitterなどで報告しています。
 いつでもどうぞなスケジュールでやっていく予定です。

 気楽に挑戦できる、冒険者のおしごとのお願い。
 トウケンの里から大樹祭が行われる町への同行・護衛依頼となっております。

●第1章
 凍雨の氷河横断です。
 降っている凍雨は、過冷却状態の雨で、触れるとぱりぱりっとちょっとした氷に。
 凍雨に氷漬けにされないように進んでみましょう。

●第2章
 凍雨地帯を大体抜けたところで集団戦。敵は甲鎧虫です。
 一抱えある、大きな縫いぐるみサイズの虫です。
 武器防具の素材となるようなので、素材採取も可となっています。

●第3章
 大樹祭です。氷菓子を食べたり、会場で見つけた美味しそうな何かと氷菓子コラボしてみたり、買い物したり、祭りを眺めたり。
 お好きな感じで過ごしてください。
 ポノもいますので、声掛けあれば出てきます。
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第1章 冒険 『凍雨の氷河横断作戦』

POW   :    凍る雨もなんのその!ずんずんと進む

SPD   :    全身が氷に覆われる前に横断だ!

WIZ   :    氷を溶かしたり、雨を魔法で避けながら歩く

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 到着した場所は白銀の世界であった。
 猟兵は白い息を吐きながら周囲を見回す。

『護衛募集//トウケンの里からシェルフワの祭会場まで』

 依頼書の写しを手に到着した猟兵たちを、里の若者は喜び迎えてくれた。
「うおおおぉぉ冒険者さんが来てくださったぞおぉぉ」
「た、助かった……!!」
 話を聞けば、今回祭り会場へと赴くのは、
 里の若者六名。
 八歳~十歳くらいの子供五名。
 お年寄り三名。
 ――子供やお年寄りは留守番した方がいいのでは、という提案もしてみる猟兵たちだが。
「火の術は任せておけぃ!」
「あったかい風なら起こせるよ!」
 ウィザードのおじいさんがいて、子供三名はその弟子であるらしい。道中役に立つ気満々の様子。
 荷車の車輪部分はソリ付の切り替えタイプ。氷の実がたくさん載ったものと色々な道具が載ったもの、これを牽引するのは大きく強そうな動物たちだ。ふわふわな毛皮を持つ動物はアラドという種で、トナカイに似ていた。
 氷河の凍雨地帯への対処は若者たちが実践してくれた。
 移動速度は遅くなるが、荷車とアラドの上に傘のようなシェードが設置される。まじないなのか陽の加護を得る刺繍がされていた。
「やばい時や休憩したい時は、垂れ幕のように革布を被せるんじゃ。中をぽかぽかにしてやろう」
 じいちゃんがぽかぽかの魔法を使えば、あったかくなる。
「これでこたつの出来上がりじゃ。良い感じじゃろ?」
「こたつ」
 復唱する猟兵。なんか複雑な造りのように感じたが、一瞬で理解できた。こたつというかテント……いや、こたつ?
 氷河を移動するのならまあ確かにあれば便利なような、大荷物という意味が分かったような。
 氷河は平らな地が続いているようで、移動自体は問題なさそうだ。
「まあちょっち面倒な依頼だと我ながら思うんだが、氷菓子サービスするからさ! 冒険者さん、頼むッ!!!!」
 考えこむ猟兵たちへ、真剣に必死に、里の若者は頼みこむのだった。
篝・陸彦
【鯉灯】
最近は暑いから涼しい所に行くくらい全然いいのにな
冬の時みたいに沢山着せられちゃったよ
父ちゃん達は心配性だよなぁ
えすきもー?なんだっけ、すごい寒い所で生活してる人だっけか

それにしても……思ったより、結構寒いな
着せられて正解だったのかも……

凍らないようにする対策は灯里と暁華達に任せて
おれは動物使いの技能をアラドに使ってじいさん達の手伝いをするぞ

見たことない動物だから友達になりたい
コミュ力と世界知識でじいさん達に色々教えて貰うんだ

アラドだけじゃなくて、火や風の力のこととか!
おれ?おれは妖怪っていう、この世界の妖精とか悪魔みたいなのを連れてるんだ

なぁ、灯里!アラド達が何話してるか教えてくれっ


月舘・灯里
【鯉灯】
ひょうがをおうだんするおしごとにいくといったら
もこもこにされたです

もこもこです
にいさまももこもこなのです
えすきもーみたい、といっていたなのですよ、にいさま

暁華、暁華
ふれるとこおりになるあめなのです
水は暁華のぞくせいなのですから
こおりにならないようにできないですか?

ひとこえないた暁華がたのしそうなです
あめのひはげんきなのです

みなさんはすごいなのですね

あたたかいかぜと
水のぞくせいをあやつる暁華のおかげで
こおらないですみそうなのです

アラドはちからがつよいのです
おなまえをおしえてもらいましょう
動物と話すをつかってなかよくなるですよ!

にいさまはおじいさんのおでしさんたちと
すっかりなかよしなのです



 降り立った先は真っ白の世界。
「うわ……思ってたより、結構寒いな。着せられて正解だったのかも……」
 白い息を吐きながらそう呟いたのは篝・陸彦(百夜ノ鯉・f24055)であった。雪こそ降ってはいないが、空気は冷たく、服の裾からその冷気が侵入してくる。
「最近は暑かったし、涼しい所に行くのぐらい全然いいのにな、って思ってたんだけどなー」
 出発が決まった時、両親に冬の時のようにたくさん着せられてしまって、陸彦はやや呑気に『父ちゃんたちは心配性だなー』とか言ってたのだが今やそのもこ具合に感謝である。
 少ぉし動き難いのがアレ。
 だが、もこもこぱんぱんな胴回りを楽しむようにくるりと月舘・灯里(つきあかり・f24054)は回ってみせた。少女の動きにつられて暁華もくるり。
「もこもこです。にいさまももこもこですね。かあさまがえすきもーみたい、といっていたなのですよ、にいさま」
「……えすきもー? って。なんだっけ、すごい寒い所で生活してる人だっけか」
「にいさま、こうやってからだぜんたいでうごくとうごきやすいのですよ」
「おー」
 なるほど。と、灯里に倣って動いてみる陸彦。
 そんな子供たちに、準備ができた里の者と猟兵一行は「出発するぞ~」と声を掛けてくる。くーるくる回っていた二人は、そのまま駆けて着いていった。
「それじゃシェルフワまでよろしくな、冒険者さん」
「任せとけって」
「よろしくなのです」

 荷台から身を乗り出した陸彦は、興味津々にトナカイのような動物をしばらくじいっと観察したのち、手綱を繰る御者――里の若者へと話しかけ始めた。
「おじさん、おじさん、アラドって一体何を食べるんだ?」
「おじ……アラドは甘いものが好きで、寒中野菜とか好んで食べるんだ」
「ふーん」
 と、どこか夢中になっている上の空のような返事。その視線は白い息を吐きながら軽く駆けるアラドへと依然注がれたままだ。
 アラドの大きな角には里の者の手製なのだろう、編んだ革紐やチャームが括りつけられている。
「おなまえはなんというのですか?」
 陸彦の隣に並んだ灯里が尋ねれば、この荷車を牽引するアラドの名はトルテムとヤーガというらしい。初めて見る生き物を見分けることは出来ないが、異なったチャームを付けているので「こっちがトルテム」「そっちはヤーガ」といった風に呼ぶことが出来る。
 里を出てからしばらくは晴れ渡る空の下、進みの良い旅となっていた。
「……とと、雲が近付いてきたな」
「くも」
 里の者の呟きに空を見る灯里。こちらへと流れ広がってくる灰色の雲はどこか硬質だ。
 準備をしよう、と、一旦アラドを止める里の者たち。
 猟兵たちも氷河での護衛は交替で行っていくことにした。
「坊主、アラドたちへの食事を頼む」
「えっ、いいの? やったー」
 荷台から出されたたくさんの野菜を手渡された陸彦は、アラドの元へと跳ねるように近付――瞬間、はっとして歩みをそろりとしたものへと切り替えた。
「ブモ?」
 頭を動かし、トルテムとヤーガは黒い瞳に陸彦をうつす。
「はじめましてだな」
 そう言った陸彦をふんふんと嗅ぎ、差し出された野菜をぱりぱりっと食むアラド。そのスピードは速く、ぐわっと開いた口にすかさず野菜を差し出す陸彦。完全にアラドのペースである。
「ブモ!」
「にいさま、ヤーガが『もっとつっこめ』といっているのです」
「わかった!」
 最初はペースが掴めていないのかやや遅れがちだった陸彦も、徐々に彼らの呼吸を合わせられるようになった。
「ブモ、ブモモ」
「おいしいっていってますね」
 兄の姿とアラドの食事風景をにこにこと見守っていた灯里は、次の瞬間、ぽつんと落ちてきた凍雨一滴に「あ」と小さく声をあげた。
 手袋に落ちた滴下が薄い氷となっている。僅かに動いただけで砕けるものだが、これが雨のように降ってくると確かに凍ってしまうだろう。
「暁華、暁華、ふれるとこおりになるあめなのです」
 竜を模した朱色の精霊を呼ぶ灯里。
『ぎゃう』
「水は、暁華のぞくせいなのですから、こおりにならないようにできないですか?」
 灯里と同じ緑の目で空を見上げて、暁華は再び『ぎゃう』と鳴いた。やってみる、から、次の瞬間、やれる、という風に胸を張る精霊。
 水を操る精霊の力によって、降り落ちた雨は凍ることなく場を濡らしていく。

 シェードが設置され、再出発はゆっくりと。
 遠くに降る凍雨は氷石を形作り、道のりが粗いものとなる。
 そんな中でアラドの背に乗せられた陸彦と、ウィザードの卵である弟子たち。
「実地訓練じゃ」
「へ?」
「おれも?」
 いきなりのことにびっくり顔の弟子たちと陸彦。
「アラドの首のもふもふのところに手を突っ込んで暖かくしてやるといい。魔法で」
 魔法で。
 動物相手なので慎重顔になる弟子たち。そして陸彦は挙手した。
「じいさん、じいさん、おれ、たぶんマホーは使えないんだけど」
「む?」
「えーっと、そのかわりに」
 陸彦の持つSiren [ MKS ]が点滅し、召喚される鎌鼬たち。
「すげー!」
「かわいい!」
 子供たちが驚き喜び、陸彦はにかっと笑んだ。
「おれは妖怪っていう、この世界の妖精とか悪魔みたいなのを連れてるんだ」
「まーいいようにやってみい。赤の、そこに突っ込んでみたらどうじゃ?」
 アラドのもふもふな毛に埋まる鎌鼬・ミツコ。妹に続きイチローとジローももふに潜っていく。
「ぶおんぶおんさせてみぃ」
「ぶおんぶおん……」
「にいさま」
 兄の頑張る姿に灯里も思わず手をぐーにする。
 アラドの角は込められた力に呼応するもののようで、僅かに赤く光り、進める歩みに伴う風は仄かに温かくなる。
 わあ、と灯里は感嘆の声。
「みなさんはすごいなのですね」
 冷たかった頬があたたかくなる。
「あたたかいかぜと暁華のおかげで、こおらないですみそうなのです」
 足元悪くなった地面は同行する猟兵たちが力を使い、払ってくれている。
「快適な旅になってるな~♪」
 と、里の者たちも喜びの声。
 シェルフワを目指す一行の旅は順調であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イネス・オルティス
あら、まっとうな冒険者の仕事ね
大物を相手にしない仕事も大事だもの頑張りましょう

そうね【風車縛陣】で荷車に向かってくる凍雨を吹き飛ばしてしまいましょう
ちょっと刺激を与えれば雹みたいになって、凍り付くことはなくなるとは思うけど
それはそれで厄介だもの、こっちに来ないようにするのが一番よ
ま、直接こちらに当たりそうにないやつは無視ね

え? 寒そう? ビキニアーマーーの女戦士はこの程度じゃどうにもならないわ
オーラ防御や氷結耐性があるのよ

恥ずかしさ耐性のあるイネスは、周りの視線を気にしません
そのビキニアーマー姿の存在感で、無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません

アドリブ・絡み・可


菫宮・理緒
過冷却の雨かぁ。自然現象はなかなか防ぎにくいよね。
まわりの温度を高くすると、氷の実が溶けちゃいそうだし、
ここはやっぱり、雨に当たりにくくすることを考えた方がいいかな。

雨に当たると凍っちゃうみたいだし、
そうなると、人も荷物も危険な感じがするもんね。

【E.C.O.M.S】で傘っぽいの作って、濡れないようにしてみよう。
少し当たるくらいなら、なんとかなるよね。

どうしても危険になったときは、おじいさんたちのおこたに頼りたいな。

……会場でおこたやったら、人気出るんじゃないかな、とか思ったり!
寒いときのおこたの誘惑は、凍雨とかなくてもかなりのものだし、
おこたで氷菓子とか最高のぜいたくだよね!



 荷車に物を積み込み、出立の準備。
「イネスさ~ん、こっちよろしくー♪」
「分かったわ」
 里の若者にどことなく上機嫌に頼まれ、牽引するアラドたちへハーネスを装備させるイネス・オルティス(隠れ里の女戦士・f06902)の動きは手慣れたものだ。
「まっとうな冒険者の仕事ね。大物を相手にしない仕事も大事だもの、頑張りましょう」
「ブモ」
 そう言ったイネスへと応じるかのようにアラドが頭を振る。大きな角につけられたチャームがチャリチャリと音を立て、「あら、かわいいわね」とイネスがアラドの鼻辺りを撫でた。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、寒くないの?」
 薄着も薄着、ビキニアーマーの出で立ちで氷の世界へとやってきたイネスへ、里の子供たちが「腹巻き貸そうか?」と言ってくる。
「ありがとう、でも、大丈夫よ。ビキニアーマーの女戦士はこの程度じゃどうにもならないわ」
 寒さにも耐性はあるし、イネスの肌はオーラを纏っている。
「えー」
「えー、じゃなくって」
「はらまき、可愛いのあるよ?」
「そういう問題でもないの」
 食い下がる子供たちとイネスのやりとりは微笑ましく、思わず菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の表情が綻ぶ。
「本当だ。可愛い腹巻きだね。他に必要な人が出るかもしれないし、一応持っていこうか」
 理緒の取り成しに「わかった」と腹巻きを畳み、自身の荷物へと入れる里の少女。
「助かったわ」
 イネスの声に、首を振る理緒。
「子供って無邪気だからね。それじゃあみんなの準備も整ったみたいだし、出発しよう」
 道は平坦。最初は荷台に乗せてもらって、大きなソリの旅を楽しむ。

 アラドが駆けると頬打つ風は冷たくて、おじいさんが入っているこたつに「お邪魔します」と理緒も相席してみる。
「はぁぁぁあったかい~~」
 冷風吹きこむ出入り口を縛れば、みるみると室内(?)は温かなものへとなった。
「そうじゃろそうじゃろ」
 ウィザードのおじいさんと、おばあさんが二人。
 外と中は別世界のようだ。しばらくまったりする四人。自然と、話題は大樹祭のこととなった。
「……会場でおこたやったら、人気出るんじゃないかな、とか思ったり! ――するんだけど、どうかな?」
 おこたで氷菓子とか最高のぜいたくだよね、と理緒。
 わかるぅ~と頷くじいちゃんばあちゃんたち。
「うちでもソレやるんじゃが、幸せでのー」
「なるほど……祭会場でも、氷菓子とこたつか。ブームが来そうじゃの」
「かふぇーじゃのー」
「わ、いいなぁ、おこたカフェ」
 おばあさんたちの会話に理緒がまったりと頷く。
 その時、合わさった布の出入口にすいっと手が差し込まれた。ほんの少し開かれる。イネスだった。
「失礼するわね。皆さん、どうやら凍雨が降ってきそうな雰囲気よ」
「過冷却の雨かぁ。自然現象はなかなか防ぎにくいよね」
 こちらへと流れ広がってくる灰色の雲はどこか硬質で、ぽつりと一滴の『雨』。イネスの肌や理緒の手袋に触れれば薄い氷が膜を張るように。すぐに砕ける脆いものであったが、これが雨のようにとなれば確かに凍ってしまうだろうと思えた。
 一旦アラドたちを止め、準備をする一行。
 広範な雲行きに猟兵たちも交替で護衛することとなった。
 再び、ゆっくりと進み始める。
 シェードが広げられたなか、理緒は迫る雲を見上げて思考する。次に、違う荷車へと視線を向けた。
「まわりの温度を高くすると、氷の実が溶けちゃいそうだし……ここはやっぱり、雨に当たりにくくすることが大事だよね」
 そう呟いて召喚するのは正八角形のユニット・Octagonal Pyramidだ。
 一辺を合わせ、ドームのように展開すれば蜂の巣模様が拡がった。
 ぱたっ。
 雨打つ傘の音があちこちから響き、複数回当たったユニットは消失するのだが他ユニットが補填に飛ぶ。
 ぱたぱたぱたっ――バババババッ。
「本降りがきちゃった」
「任せて頂戴」
 御者台へと立ち、巨獣槍をひと回し。振るう長柄から放たれた竜巻が上空へと放たれ、凍雨を払う。パンッと一瞬氷の膜が空に現れ、続く残滓となる風圧の回転に砕け、雨景色が刹那に止んだ。
 雨は降り続けるもの――けれど新手とみなせば如何様にも対処できる。イネスは長柄を振るった。
「理緒さん、呼吸を合わせていきましょう。直接こちらに当たりそうにないやつは無視ね」
「うん、わかった!」
 イネスが続けて放つ風車縛陣で雨無き空間が出来上がり、一瞬の隙間に落ちてくる雨を理緒が防ぐ。
 地面に触れた凍雨は針、跳ねた形と連なっていき薄氷のうちは進行に伴い砕けていたが、道は平坦ではなくなっていく。
 奇妙な薄いオブジェへ、仲間の猟兵もまた対処していくようだ。そちらは任せ、落ちてくる凍雨に専念する二人。
 タイミングを合わせて凍雨を払いつつ、イネスと理緒は護る一行とともに氷河を渡っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
オブリビオンさんは海へ還して差し上げなければ
氷菓子も楽しみですし(笑
さあ出発しましょう

全員の防寒具や傘を失礼してぺろ
摩擦0で撥水
これで凍結は地面に落ちてからになるでしょう

その上で歩きながら常に竪琴を奏でます
弦を爪弾き魔力を練り上げて
音色に属性魔力を宿します

翠の音:風
緋の音:炎
蒼の音:水

三魔力の旋律で
一行を包み込むように暖かな微風を吹かせ
暖かな雨にしましょう
ウィザード師やお弟子さんの真似っこでごめんなさい…

道中
アラドさんへも労りの声かけも
お話ししてみたいです

休憩時間には炬燵でぬくぬくしながら
小さな魔術師さんから魔法を教わりたいです

やりたことが一杯で素敵な道中になりそうですね♪


レテイシャ・マグナカルタ
全身を覆うコートを複数用意して体が凍り付くのを防ぐぜ
付け替える時に凍った物はぽかぽか魔法で乾かしてもらうか
荷車を引くアラド達が生命線になるからな、こいつらが体力奪われないよう雨具着せてやったり食事の面倒はしっかりみてやらないとな
荷車で通行が難しい場所があったらアラドと荷車順番に抱えて運ぶぜ

休憩中には子供達と遊びながら
「魔法か、使えたら便利なんだがなぁ」
魔法に縁遠い世界で育ったから体内に膨大な魔力があって肉体を強化している事に気付いていないので、ウィザードのじいさん辺りなら指摘してくれそうだ
魔力を体外に出す為の初歩の訓練とかをじいさんに習ったり弟子たちと一緒に練習したりして過ごすぜ


クララ・リンドヴァル
※連携・アドリブOK
(依頼の貼り紙を見る)
アックス&ウィザーズ……戻って来ました。
帝竜を倒した後も、冒険の日々はまだまだ続きそうです……ね。

【WIZ】
これが……凍雨ですか。キラキラしていて綺麗ですね。
でも、地面や荷車に付着すると、なかなか厄介そうです。

炎使いの方は既にいらっしゃるのですね。
魔法はお任せして、私はスチームエンジンを展開します。
排出口を大きめに作り、そこから蒸気を撒きながら荷車と並走。
雨が地面で凍結しないように、周囲の大気の温度を上げていきましょう。
温かい風に乗せて頂ければ効果はさらに上がるかと。
氷河そのものが溶けないのなら、蒸気の量を調整して、足下に直接撒き散らす手もありますね。



「アックス&ウィザーズ……戻って来ました」
 里の掲示板を見て、クララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)は続く他地域の依頼も目にした。
 討伐依頼、探し物依頼、採取依頼、護衛依頼と様々なものがあるようだ。
「帝竜を倒した後も、冒険の日々はまだまだ続きそうです……ね」
 残存するオブリビオン――強いモンスター集団を冒険者が討伐することは難しいだろう。まだまだ猟兵たちが手を差し伸べていかねばならない。
 掲示板から視線を外したクララは、ほぼ真下ともいえる位置でこくこくと頷くケットシーに気付いた。
「はい、オブリビオンさんは骸の海へ還して差し上げなければ」
 クララの呟きを拾った箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)であった。
「それに依頼達成後の氷菓子も楽しみですしね」
 そんな彼の視線は積みこまれていく荷へと向けられた。
 出店のための品、道中に必要とする物資など荷は色々あり、そこにはレテイシャ・マグナカルタ(孤児院の長女・f25195)の手伝う姿。
「こうやって動いていると体も温まってくるな」
 全身を覆うコートの前ボタンを開きつつ、レテイシャ。ハーネスをアラドに装着させる猟兵や、自らの荷車に改造方法を習う猟兵と、場の空気は出立前の独特な慌ただしさだ。
「これが氷の実、こちらのお野菜はなんでしょう?」
 冷え冷えとしている荷台へ一緒に積まれたたくさんの野菜を見た仄々は首を傾げる。
「それはアラドの餌になるみたいだぞ」
「この辺りの野菜は甘くてな、アラドは甘味を好んでいるんだ」
 答えたレテイシャと里の若者、なるほど、と頷くのはクララだ。
「……寒中野菜は甘みがあるようですからね」
 そうなんですね、とどこかのんびりとした声で応じつつ、仄々はアラドを見上げた。大きなトナカイのような動物だ。角には編んだ革紐やチャームが飾られている。
「しばらくよろしくお願いしますね」
 そう言う仄々へ、頭を下げて匂いを嗅ぐアラド。
「ブモ、ブモモ」
 さあ、出発だ。

 里を出てからしばらくは快適な旅となった。
 アラドの駆けも速く、雪車に乗った猟兵たちの頬もあっという間に冷たくなった。たまにこたつにお邪魔する。ぽかぽか魔法に温まったテント内で濡れた上着を替え、乾かしたりとレテイシャは新たな用途を見つける。
 御者台にいた里の若者が「あ」と声を上げた。
「そろそろひと降り来そうだなぁ」
 猟兵たちが空を見上げてみれば遠くから迫り広がってくる灰色の雲。どこか硬質な感じだ。
「準備しないとな」
 手綱を繰ればアラドはゆっくりと止まる。レテイシャが真っ先に雨具を持ち荷台から降りた。
「えっと……餌もいるか」
 餌やりは子供たちが担うそうで、里の子供、まだ子供ともいえる猟兵たちがアラドたちへと(一部おっかなびっくり)餌をあげていく。
「腹いっぱいになったか?」
 アラドの鼻先を撫でて尋ねたレテイシャは、彼らへ合羽を着せていく。
「お嬢さん、もふもふなところは避けてやってくれのー」
 ウィザードのじいさんにそう指摘され、不思議に思いながらもレテイシャは「分かった」と返事をした。
 シェードや防寒具へ猫の毛づくろいを行い、摩擦抵抗を極限まで減らす仄々。
 ざりざり。
「摩擦ゼロで撥水です。これで凍結は地面に落ちてからになるでしょう」
「へえ、便利なもん? だな??」
 クララもシェードを張って手伝っていると、伸ばした手にぽつんと一滴の凍雨。手袋に落ちたそれは一瞬に凍り、見れば薄く氷の膜が張られていた。
 「これが……凍雨ですか。キラキラしていて綺麗ですね――でも、地面や荷車に付着すると、なかなか厄介そうです……」
 手を動かせばすぐに砕けてしまったが、たくさん降ってくれば確かにこちらが凍ってしまうだろう。
 ぱた、ぱた。打つ音ののち、猫の毛づくろいによって滑り落ちていく滴は地面で新たな氷を張った。
 降ってくる凍雨、アラドの進みはゆっくりと。道のりは長い。猟兵たちもまた交替で護衛することとなる。

「経験あるのみ。実地訓練じゃ」
 そう言ったウィザードのじいさんがアラドへと弟子たちを騎乗させた。
「魔法の訓練ですか?」
 そろそろ護衛交替だと出てきたクララが興味を惹かれ、様子を眺める。さっきまで子供たちに手遊びを教わっていたレテイシャもまた、どこか興味津々という風だ。
「魔法か、使えたら便利なんだがなぁ」
「……? おお、そうじゃ。お嬢さんもやってみるとええ」
「えっ、オレもか」
 どこか戸惑いつつ、アラドに騎乗するレテイシャ。ウィザードのじいさんは仄々を抱えるとレテイシャの後ろにひょいと乗せた。
「??? え、えっと失礼します。アラドさんも、よ、よろしくです?」
 わけがわからない、という表情になる仄々。びっくりするねこの顔。
「アラドの首のもふもふのところに手を突っ込んで暖かくしてやるといい。魔法で」
 そう言ってじいさんがアラドのもふもふへ手を突っ込むとアラドの角がほのかに赤く光り、熱を持った。
「――個体の判別がつくように、と思っていた角の装飾は呪いの一種でしたか」
 角は込められた力に呼応するもののようだ。
 じいさんが御者台に座り、準備に止まっていた一行は再出発。
「じいさん、魔法と言われてもオレは――」
「レテイシャさんといったか。その体に眠る膨大な魔力を少しずつ、起こしてみなさい」
「ま、りょく?」
 どこか訝しげにふわふわな毛へ手を差し込むレテイシャ。すると感触の違う毛――否、一本の糸を見つけた。
「なんだこれ」
 腕半ばまで通った気がして、びくっと手を抜く――何もなかった、が、僅かな残滓。
「自身の魔力を掴む初歩の訓練じゃー。相手は動物じゃからの、優しく頼むぞ。あとはネコチャンと適宜交替するんじゃぞ」
「私も? やってみます~♪」
 力加減は必須。神妙な表情でレテイシャは頷き、仄々は楽しみだという風にニコッと笑った。
 アラドの歩みに伴う微かな温風は、冷たくなったレティシャのコートを暖める。

 小雨や本降りと様々な顔を見せる凍雨。
 一行の護衛をしているうちに気付くことがある。
「氷河に障害が出来るのですね……」
 周囲を見回しながらクララ。
 平らだった氷河は、雨が降り重なった結果、今や凹凸であったり奇妙なオブジェが形成されつつあった。放っておけば氷の壁でもできそうだが、時折吹く風が薄氷を払う光景にも遭遇した。
「少し、前に出ます」
 行く道が凍結されないように荷車と並走し、スチームエンジンを展開していたクララが氷河に出来た新たな氷塊を払っていく。
「上空の凍雨はお任せ下さい」
 アラドの背でカッツェンリートを奏でる仄々。
 翠の音色には風を。
 緋の音色には炎を。
 蒼の音色には水の属性をのせて。織り上げるように奏でれば、春の陽射しのような微風が発生し、凍雨を暖かな雨へと変化させた。
 厳しさに険しさを重ねる冬のように大地を荒々しいものへと変えていた雨は、ゆるりと大地を溶かす。
 風は行く道へ、遠くクララの蒸気を届けていく。手を伸ばせば掴めそうな位置に複数のコントレイルが描かれた。
「ほぅほぅ、綺麗な力じゃのー」
 じいさんの声。
 レテイシャも弟子たちも、鮮やかな力の発現に目を奪われた。
「ブモ」
「アラドさんたちも進みやすくなったと喜んでいますね♪」
 アラドの声を聞き、仄々が皆へと伝える。
 いつもとは違う、どこか長閑な氷河の旅路となったらしい。
「少し、駆けますか?」
 クララが尋ねれば、アラドの歩みも勇ましく。
 シェルフワを目指して一行は進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんにき】だよ!

わあ、さむー。
冬支度してきてよかったね!(クリスマスピンな衣装で)
え、しっぽカバー?(ちょっと窮屈そう)

里の荷車に興味津々。
おいらも、木元村の荷車引いてきたんだー。
こたつ、いいねー♪ どうやって作るのー?(屋台炬燵化計画)

里の荷車は、アラドが引く。
村の荷車は、おいらが引く!

雨はアンちゃんのお友達が遮ってくれるからね。
だから、道々はあったかいモノ食べよーねー♪

ウチの母ちゃん、屋台やってるんだー。
おいらも、屋台料理できるよ!(荷車にはサムエン食材がいっぱい)

じーちゃんに鉄板あっためてもらって。
おにぎりにお醤油垂らして、両面じゅわーっと。

アラドたちも食べるかなあ?
卵焼きもあるよー♪


木元・杏
【かんにき】

まつりん屋台に木元村の「〇」印の旗立てて
ん、護衛お任せあれ
わたしは杏、こっちはまつりん(祭莉指差し)
まつりんの尻尾は凍り防止に尻尾用の帽子を被せて
わたしも垂れ耳付のニット帽で防寒対策

皆のお名前も聞いてみる
牽引するふわふわさんもお名前は?
嫌がらないならそっと背中を撫でてみたい

ん。雨対策に透明の大きな空飛ぶエイを空に浮かせて
暫くの間、雨避けしてね?

シェルフワの大樹祭、おじいさんが子供の頃にもあった?色んな地域の人達が集まる?
お祭りの事に、トウケンの里のお話も聞いてみたい

まつりん、屋台がおこたになった
ふふ、なんだかお神輿みたい
お神輿はね、わっしょい♪て掛け声しながら進んでくの
わっしょい♪



「わあ、さむー」
 到着すればそこは真っ白な、氷と雪の世界。木元・祭莉(とっとこまつさんぽ?・f16554)はぶるりと震えて、羽織っていただけの蓑をしっかりと着込む。撥水性があり、通気性にも優れていて何よりあったかい。
「冬支度してきてよかったね!」
 と、双子の妹の木元・杏(食い倒れますたーあんさんぽ・f16565)に言えば、彼女はふるふると首を振った。
「まだ足りない。まつりん、尻尾にもお帽子」
「えー」
 杏が手袋を脱ぎながら少し屈み、祭莉のふわふわな尻尾にも専用の帽子を被せた。軽く紐で括る。祭莉が視線を落とすと、杏の白ニット帽に付いた垂れ耳が僅かに揺れていた。
「ありがと、アンちゃんー」
 再び手袋を付ける杏へ言いつつ祭莉はぶんぶんと尻尾を振ってみる。違和感もあり、ちょっと窮屈そうな振り方となった。
「いこ、まつりん」
 意外と人見知りな祭莉の手を引いて、杏は出立の準備をしている場へと向かった。里の者や猟兵たちが荷を積みこんだり、牽引する動物のチェックと、慌ただしい。
 荷車ならぬ雪車を見た祭莉は、ぱっと顔を輝かせて造りに見入り始める。接地部に太く大きなソリが備わっていた。
「こんにちは。わたしは杏、こっちはまつりん」
 と、雪車の周囲をくるくる回りながら観察している祭莉を指差す杏。
「やあ、俺はダーツっていうんだ。今回は依頼を引き受けてくれて、ありがとうな」
 ちょっと厳つい里の若者がにこりと応じる。
「よろしく、ダーツ。こっちのふわふわさんにもお名前、ある?」
 そう言って杏が向けた視線の先には、ハーネスを装着され、出立を待つアラドの姿。
「そこにいるのはイサヤムと、隣のがナルル。見分け方は角についてるチャームを参考にしてくれな」
 トナカイのようなアラドは、もふもふな毛と大きな角がある。角には編まれた革紐と個体によって違うチャームが付けられていた。
「イサヤムと、ナルル。よろしくね」
 手のひらを差し出した杏を、ふんふんと嗅ぐイサヤム。人懐っこく、撫でさせてくれた。
「まつりん」
「……ん……」
 隣に来た祭莉もおっかなびっくり、触れてみた。
 柔らかそうな体なのに筋肉はしっかりと逞しく。今度はぺたりと手のひら全体で撫でてみる祭莉。
「わかった! 里の荷車は、アラドが引く。村の荷車は、おいらが引く!」
 何やら仲間意識を持ったようだ。
「おいらも、木元村の荷車引いてきたんだー。村も雪が降るからね、おじちゃんたちのとお揃い!」
「あ。旗、忘れてた」
 杏が屋台の内側から木元村の「〇」印の旗を取り出し、屋台風荷車に立てる。
「坊主が引いていくのか?」
「うん、人力だからー。おいら、ついてくの、ダッシュで頑張るね」
「一応、牽引ロープもあるからな?」
 と、ダーツは雪車の後方にある引っ掛け部分を指差すのだった。

 里を出てからしばらくは快調な旅だ。
 アラドたちが駆け、続く氷河の風景は飽きるようで飽きない。雲の影が映り流れていく。
 凍雨の到来は空を見ればすぐにわかった。灰色の雲が迫り広がってくる。
「ひゃ。降ってきたー?」
 ぱたっと祭莉の頬を打った雨が、ぱりりっと張りついた。触れると砕ける薄い氷だったが、本降りとなれば確かに凍結してしまうもの。
 一度進みを止めて準備をし、猟兵たちもまた交替で護衛へとつくことにする。道のりはまだ長く、アラドたちの歩みもゆっくりとなった。氷河に降る凍雨が平坦な地を、進みづらいものへと変化させ、猟兵たちもまた適宜対応していく。
 もう少し進んだら休憩にしようと、御者台に乗ったダーツが言った。
 彼が指差す先に氷山があり、浅い岩窟のような場所があるのが見えた。
「休憩の時間は、わたしの番」
 仲間と交替した杏は白銀の仲間を呼ぶ。
 透明な大きなエイがふわりと空を飛んだ。氷壁にくっつくようにして屋根のように胸ヒレを広げた。奥行きのない休憩所を拡張するように。
「ん。暫くの間、雨避けしてね?」
 今は小雨。ぱたぱたと音がして、繋がる杏のオーラが凍結を防ぐ。
「雨はアンちゃんのお友達が遮ってくれるからね。あんしん、あんしん! じゃ、あったかいモノ食べよーねー♪」
 と、祭莉が屋台風荷車『木元村』から取り出したのはサムライエンパイアの食材だ。
「お? ごちそうしてくれるのか?」
「うんっ、ウチの母ちゃん、屋台やっててねー。おいらも、屋台料理できるんだ!」
 猪肉、米、そら豆、そして卵と、様々な食材がいっぱい。
「じーちゃん、鉄板あっためてくれるー?」
「お任せあれじゃ。これでも火の術は得意でな、昔はモテモテじゃった」
 便利屋的な意味でのう、と、メルルばーさんが呟く。
 おにぎりに醤油を垂らして、鉄板でじゅわーっと焼く祭莉。香ばしい匂いが漂っている。
「おー初めて見る食い物だなぁ」
 米を見たダーツが調理過程を興味津々に眺めてくる。
「アラドたちも食べるかなぁ?」
「雑食じゃから食べると思うぞぃ。好みで言えば甘めのものが好きじゃの」
「じゃあ、卵焼き甘くするねー」
 卵をほぐし、再び鉄板上でじゅわっと音を立てる祭莉。
 あとは里の野菜を煮込んだスープ、塩の利いた干し肉を浸して好みの味にする。
「あったまるの~」
「わ、甘い~♪」
 甘めの卵焼きは子供たちにも人気だ。食事中の話題は自然と、これから参加するシェルフワの大樹祭のことになる。
「シェルフワの大樹祭、おじいさんが子供の頃にもあった?」
「そうじゃな、わしが生まれる前からあった祭りでの~」
 杏が尋ねるままに、ウィザードのじーさんは話をしてくれる。
 シェルフワというドラゴンが大樹となり、広く、守り神として祀られている話。
 大樹祭は人も動物も元気だということを示しながら、大樹に感謝するものらしい。
「じゃから、こうやってうちの里も感謝を伝えるために参加しようとなったんじゃぁ。お供えするために新たに仕込んだ氷の実がちゃんとなるまで、何年もかかってしまったがのぅ」
「神様にお供えするなら、品質も大事だしな」
 トウケンの里は、十数年ぶりの参加となるらしい。
 道中、ちょっと話題に出たおこたかふぇーをやるのも良いのぅとフィリアとメルルのばーさんはきゃきゃっとしている。
「そうだ、こたつ! どうやって作るのー?」
 おいらの屋台もこたつにしてみたい、と祭莉。どれどれとダーツやじーさんが見に行く。
「鉄板に温石を置くと広く熱も伝導するかの」
「基礎の骨組みは確りしているな」
「あ、そっちのは改造したとこー」
 祭莉があちこち説明していく。
 ぱたん。折りたたんでいた台を広げるダーツ。カウンター席のように立ち飲食ができるようになっているし更に内側へとやれば荷車内での調理台の一つにもなる。
「防寒性のある布をテントみたいに上から吊る手もあるし、この台に沿うように掛けてもいいな。会場に着いて良い布――あー、好きな柄もんがあればやってみるか?」
「うん!」
 なんやかんやでいい感じに出来るらしい。
 ひとまずは、里の布を借りてみる。
「んー、隙間を失くすためにもやっぱり布は形に合わせての発注だな」
 と、ダーツ。
「まつりん、屋台がおこたになった。ふふ、なんだかお神輿みたい」
「おー、ほんとだおみこし!」
「おみこし?」
 弟子の一人、シュクリーが不思議そうな表情。杏は「ん」と頷く。
「お神輿はね、わっしょい♪ て、掛け声しながら進んでくの」
「わっしょい?」
「わっしょい♪」
 わっしょい、わっしょい、テンポのよいリズムは出発後もしばらく続くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
瑠碧姉さんf04280と


ぼちぼち暑い時期だが…
こりゃ寒すぎだろ
マフラー巻き直し
ん?
暑いの苦手だしまぁちょうどいいんじゃね?
やせ我慢しぎこちなく笑い
俺はいいよ里の人にして

んん?
交互に見て
よろしく頼むな
と真似

おおー…さすが
瑠碧姉さんは精霊達に愛されてるよなぁ
しみじみ

うわっマジでぱりぱり
慌てて払って全身に薄くオーラ防御
1枚でも空気の幕がありゃ少しはマシだろ
緩く振動させ凍らないように

道中は周囲警戒し
荷運び手伝ったり
里の人達の様子気遣い
大丈夫か?
動いてりゃ少しは暖まるだろ
子供誘いおしくらまんじゅう
…瑠碧姉さんもやる?
年配には軽いストレッチ教え

おー休憩いいじゃん
温かいもんでも入れる?
ってそれも凍るのか?


泉宮・瑠碧
理玖(f22773)と

氷河と凍雨…私は、好きですが…
理玖は、大丈夫ですか?
…氷の精霊達に
冷気を抑えて貰える様、伝えておきます

アラドは撫でて
牽引は大変だけれど、お願いねとご挨拶
理玖にも、勧めます

では、皆が進み易い様に…
まず水の精霊へ
薄い水の覆いで、中空へ大きな傘を幾つか作り
風の精霊も、当たる雨を軽く散らす様に

もし凍れば、氷の精霊へ
氷が崩れて落ちる様に、頼みます

おしくら…?
私はやりませんが、微笑ましく眺めます
アラドの様子も、気を付けたり、疲労を訊いたりしますね

私自身の冷えは、大丈夫ですが…休憩しますか?
私、火は駄目なので…ぽかぽかは、お任せします
クッキーなら、携帯食で持っては、いますが…食べます?



 降り立った地はほぼ白銀。
 ふと吹く風は身を切る冷たさで、陽向・理玖(夏疾風・f22773)は「さむ」と一つ紡ぐ。
「ぼちぼち暑い時期だが……こりゃ寒すぎだろ」
 と、マフラーを巻き直す理玖へ、泉宮・瑠碧(月白・f04280)はどこか気に掛ける視線を向けた。
「……氷の精霊達に……冷気を抑えて貰える様、伝えておきます」
「ん? や、いいって。俺、暑いの苦手だしまぁちょうどいいんじゃね? 里の人にしてやって」
 へらりと笑むそれはやせ我慢の表れなのかややぎこちない。
「それに動いてりゃそのうち暖まるって」
 そう言って、ひらりと風のように身を翻した理玖が荷運びの手伝いを始める。
 出店のための品、道中の物資など意外と荷物は多く、出立前の慌ただしい独特な雰囲気。
「野菜? これどうすんの?」
 これと、これも、と木箱を渡された理玖が中身を見て問う。
「主にアラドの餌だな。俺達の道中の食料にもなるんだが」
「へぇ」
 一番働くのは牽引する動物である。
 柔らかそうな体だが逞しいアラドの胴にハーネスを装着しながら瑠碧がその鼻先を撫でた。
「牽引は大変だけれど、お願いね」
「ブモ」
 任せとけと頷くようにアラドが頭を振る。大きな角に付けられたチャームがチャリチャリと音を立てた。
「理玖も、挨拶をしてみては」
「んん?」
 瑠碧の声に反応し、彼女とアラドを交互に見る理玖はそれじゃあと手を伸ばしてみた。
「よろしく頼むな」
「ブモモ」
 真似っこな動作だが、伝わったようでアラドは再び頭を振る。
「よし、準備はいいか? それじゃあ出発するぞー」
 御者台に乗り上げつつ、里の若者が皆に声を掛けた。

 里を出てからしばらくは快調な旅だ。
 猟兵たちも荷台へと乗り、アラドたちが駆ける。頬を打つ風は冷たかったけれども、瑠碧が氷と風の精霊に和らげるよう願ったのもあり、いつもより駆けやすい日だなぁと御者台の若者は言った。
 続く氷河の風景は飽きるようで飽きない。澄んだ空の色や、雲の影が氷河を彩り、時にはっきりと見えるエメラルドグリーンの濃淡を楽しむ。
「……っと、雲が出てきたな」
 どこか不穏めいた声に空を見上げれば、こちらへと迫り広がってくる灰色の雲。硬質そうなそれはきっと凍雨の到来だろう。
 一旦進みを止めての雨支度。シェードが張られる下で、理玖はアラドに雨具を着せる手伝いを。
 その時、ぽつんと雨一滴が頬に落ちた瞬間、ぱりっと違和感。
「うわっマジでぱりぱり」
 触れるとすぐに砕ける薄さだったが、これが続くとなるとたまったものではない。確かに凍結してしまうだろう。オーラで薄く自身を覆った。
 落ちてきた水が氷に。それは瑠碧から見れば美しい変化であった。鮮やかな精霊の変身を見て瑠碧が微笑む。
「ここからはゆっくりと行くのですね」
 荷台から瑠碧が降り、自身も歩みながら再開した進みを眺める。
 道のりはまだまだ長く、猟兵たちは交替で護衛につくこととなった。

 降る凍雨は氷河の景色をも変える。
 地平まで見渡せた風景は、雨が降り重なった結果、今や凹凸であったり奇妙なオブジェが形成されつつあった。
「よろしく、ね……」
 行く先を塞ぐ氷塊を見た瑠碧が氷の精霊へと伝えれば、その瞬間、パキン、と中心部分が砕け形成された氷塊が瓦解した。
 交替の時間となり、皆が進みやすいようにと瑠碧は精霊たちへと願う。
 一行の上に薄い水の覆いが現われ、それは視認することができた。傘のように梅雨の空を彩る。
 ぱたぱたぱたっ。
 凍雨が落ちると薄氷が空を覆う。刹那にできた氷の天井は、風の精霊たちが払い散らしていった。
「おおー……さすが。瑠碧姉さんは精霊達に愛されてるよなぁ」
 しみじみとした理玖の呟き。
 決して派手な力ではない。けれども瑠碧の呼び掛けに応じる精霊たちは皆、世界に添うものであった。
「あ、あっち、綺麗な模様ができてる!」
 子供の一人が声を上げ、指差した先をみれば氷晶の空。
「星空みたいだなぁ――と、ちょっと寒くなってきたな」
 みんなでおしくらまんじゅうでもするか! と理玖が子供たちを誘い、歩きながらのおしくらまんじゅう。
「モッシュッシュー!」
「こっちではモッシュッシュって言うのか」
 モッシュッシュのリズムを教えてもらって、おしくらまんじゅうの歌を教えて、理玖が里の子供たちと遊ぶ。
 どんどん元気になっていく歌声。瑠碧が彼らを微笑ましく見つめる。
「瑠碧姉さんもやる?」
「いえ、私はいいです……あと、もうすぐ休憩に、なるようですよ」
 首を振る瑠碧。言葉後半は、夢中になって聞いてなかった子供集団に伝えるもの。休憩場所となる氷山の窟では、色々と用意されるようだ。
 奥行きはなく、浅窟であったが猟兵が凍雨が届かないように力を使う。
「良い場所じゃん。どのくらい休憩すんの?」
「二時間ほどかなぁ」
 理玖の疑問には里の若者が答え、それを聞いた仲間の猟兵が屋台を開いた。
 準備をする間はアラドの世話。瑠碧は子供たちとともに餌をあげたり、汗ばむ体を拭いてやったり、そして彼らの声を聞いて休める位置へと連れていく。
 どっこいしょとこたつから出てくる村の老人たち。
「じいさん、ほとんどこたつにいたな」
「ぽかぽかあったかいからの~」
「ちょっとは体動かしたほうがいいんじゃね?」
 と言った理玖が老人や里の若者にストレッチを教えた。
「うん、強張った体が良い具合にほぐれたな!」
「バッキバキじゃぁ……」
 里の若者はぐるんぐるんと楽しげに腕を回しての感想。ウィザードのじいさんはちょっと恨めしげな感想。
 この頃には食事も出来上がりつつあり、出てきたのは――。
「焼きおにぎりと卵焼き……」
 理玖が呟いた。いただきます、と瑠碧が言う。
 まさかここでお目にかかるとは、である。サムライエンパイアの食材で作られた和食。
 里のばあさんが作った野菜スープも不思議とマッチしていた。
 食後も少し休憩したら再出発だ。あちこち好きな場所で休む一行。
「瑠碧姉さん、温かいもんでも飲む?」
「そう、ですね」
 こくりと頷いた瑠碧に「ちょっと待ってて」と告げて、しばし場を離れた理玖は温かい飲み物を持って戻ってくる。
「食後の『お茶会』だな」
「お茶会……クッキーなら、携帯食で持っては、いますが……食べます?」
「いいの? いるいる」
 氷の世界で感じるあたたかなもの。
 さあさあと凍雨の降る音の行き着く先は、氷の軋む音。
 梅雨時期の氷河は、旅人に色んな風景を見せてくれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
大樹祭か
どんなお祭りなのか楽しみだネ
特殊な気候のようだから気をつけて行こうか

ソヨゴはいつも元気だネ
ふふっと笑い
ソヨゴの連れのアヤネだよ
よろしくネ
とついでに挨拶しよう
トナカイっぽい生き物にも興味がある

南極に比べたら涼しいくらいだネ
氷結耐性で寒さは問題ない
でも氷が付くのはまずい
氷漬けにされない方法を尋ねて実行しよう
定期的にシェードの氷をどければいいかな

UC発動
触手でさっさと氷をどかそう

ソヨゴがスープを用意してくれたら
ありがとうと言っていただく
さすがソヨゴ用意がいい
ジンジャーが効いてて温まるネ

道中先々の用意ができるように
同行者からできるだけ情報収集はしておこう


城島・冬青
【橙翠】

初めまして!
城島冬青っていいます
皆さんのことは私達がしっかりお守りしますからね!
里の皆さんにコミョ力全開で挨拶し
アラドさん達にもご挨拶
大きいですね
もふもふですね(撫で撫で)

しかしまさかこの時期に極寒の地へ赴くとは…
まぁ氷結耐性でへっちゃらなんですけどね
耐性を利用し外で作業の手伝いをしたり(UCのカラスくんで運搬作業)
料理の支度を手伝ったりします
あ、アヤネさん
今日は生姜のスープを作って持ってきたんですよ
どうぞ温まりますよ?
とサーモボトルに入れたスープを勧めます

動物と話すでアラドさん達とも会話して調子を尋ねる
疲れてるようなら
好物や疲労が回復する食材をあげて元気を取り戻してもらいましょう!



 到着した世界は、白銀の世界。
 硬い雪を踏みしめる音はざくざく、ぎゅっぎゅっと。出立の準備をしている一行に向かって城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)は駆けていく。
「里の皆さん、初めまして! 私は城島冬青っていいます」
「ソヨゴさんだね、道中はよろしく頼むね! 僕はシルーガっていうんだ」
「シルーガさん。はい、お任せです。皆さんのことは私達がしっかりお守りしますからね!」
 そんな里の者と冬青のやり取りを見て、ふふっと笑うのはアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)だ。
「ソヨゴはいつも元気だネ。ソヨゴの連れのアヤネだよ、よろしくネ」
 里の子供たちも「よろしくおねがいしまーす!」と声を揃えての返事。
「元気ですね~。――あっ、何かお手伝いします」
「助かるよ。それじゃアラドたちの餌を運び入れてくれる?」
 冬青の申し出に、積みこみ待ちの荷へ視線を向けるシルーガ。
 箱の中には野菜がいっぱいだ。
「寒中野菜でしょうか。ここらの野菜は甘そうですね」
「甘い物が好きなのかな……」
「あまいもの、大好きなんだよ、トルテムたち」
 子供たちが交互に言い合って、アラドの名を教えてくれる。
 トナカイのような動物、アラドの角には編まれた革紐やチャームが付けられていて、頭を振ればチャリチャリと音が鳴る。ハーネスの装着を終え、彼らは出発を待っていた。
「こんにちは、えーと、トルテムさん? こっちはジェンナさん」
「ブモ」
 冬青が名前を呼んで鼻先を撫でると、気持ち良さそうに目を閉じるアラド。
「大きいですね。そしてもふもふですね」
 特に首回りがふわふわとした毛。柔らかな毛玉に手を入れるようにして撫でる。
「僕も――もふもふの下は逞しそうだネ」
 と、アヤネも撫でてみる。確りとついた筋肉が頼もしい。
「それじゃあそろそろ出発するぞ~」
「あ、行きましょう、アヤネさん」
「うん。大樹祭、楽しみだネ」
 雪車に乗せてもらい、シェルフワに向けて一行は旅立つ。

「空を映したようで凄いですね」
 里を出てからしばらくは、頬打つ風は冷たいけれども快適な旅だった。
 アラドたちが駆ける。
 続く氷河の風景は、空の色や、雲の影が氷河を彩り、意外と飽きない。寒さに耐性のある二人は、視界を遮らない荷台でお喋りをする。
「南極に比べたら涼しいくらいだネ」
「それなら、寒いところはどこでもへっちゃらですね!」
 アヤネの言葉に、にこにこと冬青。
 そんな風にのんびりとしていると、遠くから灰色の雲が迫り広がってくるのに気付いた。
「あれ? 雨雲ですかね」
「やっぱりひと降り来そうだね」
 冬青の声に応じるように、御者をしていたシルーガが言う。一行は一旦進みを止めて、準備をする。
 シェードを張ったり、今の内にとアラドへ餌をあげたり、雨具を着せたり。
「いつも凍雨にはどういった対処をしているんだろうか?」
 アヤネの問いには、ウィザーズのじいさんが答えてくれる。
「基本的には常に動いて、氷を砕くんじゃ」
 その時、アヤネの手袋にぽつんと落ちてきた雨一滴。瞬間的に薄氷を張るも、それはすぐに砕ける脆いものだった。
 少しなら問題なさそうだが、本降りとなればひとたまりもないだろう。
「あとは、魔力があればアラドをぶおんぶおんさせたりするのぅ」
「……? ぶおんぶおん?」
 じいさんが言うには、アラドは魔力に呼応する力があり、魔力を通してやれば温かな風を起こすのだという。
 これには弟子や猟兵たちが実地訓練し、首のもふもふに手を入れて騎乗すれば、アラドの角は光り、歩みに伴い発生する風はあたたかなものとなっていた。
「アラドさんたちは凄いんですね~」
 冬青が感心の声をあげる。
 こういった対処を施しつつ、一行の歩みはゆっくりとしたものに。
 景色は、ぱたぱたと降り始めた雨のものへと。

 道中は長い。
 猟兵たちは交替で護衛につくこととなった。
 凍雨へと対処する猟兵たちのなか、定期的にシェードの様子を見にいく冬青のコルヴォ。降り立てばざくざくとした音が鳴る。
 アヤネがウロボロスを起動させ、蛇に似た異界の触手を伸ばした。そしてシェードに降り積もった氷を払っていく。
「アヤネさん、アラドさんの上も」
 冬青の指差す先のアラドが着る雨具にも氷。そうっと触手で払ってやる。
「そろそろ休憩になるみたいだよ」
 里を出てどれくらい経っただろうか。
 遠く、薄く見えていた氷山までもうすぐだ。一つの目印らしい氷山は浅窟があってそこを利用しての休憩となる。
 奥行きは無いので、仲間の猟兵がユーベルコードを使って屋根のように。休憩の場が拡張された。
 アラドに餌をやっていると、あちこちで何かの準備。
 調理の始めるおばあさんに気付いて、冬青が駆け寄る。
「お手伝いしますね。何を作るんですか?」
「体があったまるよう、野菜スープじゃ」
 アラドの餌だと思っていた野菜は食事用でもあったらしい。
 細かく刻んで煮込む。味付けは凍ったキューブ。家庭で一度煮立てたコンソメらしい。
 その味は薄く、個人の好みでそれぞれ塩気のある干し肉を入れて調整するのだそう。
 あとは猟兵が作った焼きおにぎりや卵焼き。スープが意外とそれにマッチしていて、食卓の並びを見た冬青が思わずといったように呟く。
「わ、和食だ……」
「まさかこの世界に来て、日本食を食べるとは……」
 思ってもいなかったとアヤネ。二人の分のスープは少なめで。何故なら――、
「アヤネさん、今日は生姜のスープを作って持ってきたんですよ」
 と冬青が荷物から出したのはサーモボトルだ。中身は今言ったように、生姜のスープ。
「さすがソヨゴだネ、用意がいい」
「はい、どうぞ。温まりますよ?」
 差し出されたそれを「ありがとう」と受け取るアヤネ。保温に優れた水筒のおかげでまだまだ熱め。
「――、――うん、ジンジャーが効いてて温まるネ」
 ほうっと息をつく。頬がほんのりと色付いた。
 おいしい、と言うアヤネに、冬青も笑顔になる。
 食後の休憩時間も、それぞれが思い思いに過ごして。
 一行は再びシェルフワを目指し、出発した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『甲鎧虫』

POW   :    鎧甲殻
対象のユーベルコードに対し【防御姿勢】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD   :    穴掘り
【地中に潜って】から【体当たり】を放ち、【意表を突くこと】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    球体変化
【闘争本能】に覚醒して【球状】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 氷山の浅窟を利用した休憩時間は、食事時間でもある。
 里の食材で作った野菜スープは薄味のコンソメ。個人の好みで、塩の利いた干し肉を浸し味を調整していただく。
 あとは猟兵が作った焼きおにぎりと卵焼き。
 焼きおにぎりを野菜スープに入れてみれば、とろりと香ばしいちょっとした雑炊に。
 食卓を囲む中、話題になるのはシェルフワの大樹祭のことと、先の道中のこと。

 シェルフワの大樹祭は、大昔、大樹となり『辺り一帯』を守るようになったドラゴンを祀るものだ。人も動物も元気だということを示しながら、大樹に感謝する祭りらしい。
 この『辺り一帯』にはトウケンの里も含まれていて、今回は十数年ぶりの参加。
「ようやく、氷の実の品質が新しいお供え物として出せるくらいになってな」
 今まで参加していなかったのは、ちょっとしたこだわりもあるようだ。

 そして、この時期は梅雨独特の湿った風に誘われて虫系のモンスター群が出やすくなるらしい。
 凍雨の雨雲が過ぎた辺り――場所の特定は、流動的なこともあり出来ていない。
 十分に休憩をとり、再出発。
 雲が流れ、凍雨も止んでいく。氷河を抜け、氷の景色は剥き出しの土が混ざるものへと。
 ふと、湿った風が吹いてくることに気付いた。
 ――ギチギチギチッ。
『ギャギャ』
 軋む硬質な音と、ざらついた鳴き声。
「――しまった、甲鎧虫だ!」
 アラドの歩みを止める里の衆。
 猟兵たちが見たオブリビオン――甲鎧虫(こうがいちゅう)は地面に脚や背の棘を突き立て這い進んだり転がったり。動きは素早い。
 硬くて分厚い甲殻に覆われた敵の甲殻は武器防具の素材にもなるようだ。

 柔らかな人の肉、そして引き締まったアラドの肉を感じ取ったのか、甲鎧虫たちの気配がこちらを向いた。
 ここからは実戦、護衛の仕事だ。
 大量の虫たちを撃破するべく、猟兵たちは前へと出る。
篝・陸彦
【鯉灯】
着込んだ服は脱いで戦いの準備をするぞ!
動けば体も温かくなるだろうし、動き易くなきゃ
それに皆を助けるんだから寒いのなんか我慢できるよ

里の皆には一か所に固まっててもらおう
散り散りになると危ないし、アラドが怯えて暴れないように
傍で宥めてあげててくれよな!

高速詠唱で召喚術奥義『狸と狐の化かし合い』
多重詠唱も使って狸も狐も同時に巨大化
大きくなれば灯里のユーベルコードにも耐えられるだろうし
硬そうな虫だけど、今のこいつらならドングリを割るのと一緒だ!
動物使いの技能で二匹に里の皆が巻き込まれないように指示
おれも移動して潰れないように注意しながら弱った虫を倒していくぞ!


月舘・灯里
【鯉灯】
ひょうがをぬけたら、たたかいにそなえてもこもこはぬぐです
だって、あかりたちはこのためにごいっしょしたなのですから

てきがしゅつげんしたら
さとのひとにはそのばでたいきしてもらうです

暁華もおてつだいしてくださいね
エレメンタル・ファンタジアでこおりのつなみをおこすのですよ
さとのひとたちからとおざけるように
まきこまないようにしゅうちゅうするです

ぼうそうしないように
とうさまのように
こきゅうをととのえて、いしきをしゅうちゅうして

つなみでとおざけたらにいさまがぷちっとたおしてくれるです
つなみをぬけてくるてきは
硬度をましたBlue Diamondでうけてはじくです

にいさまのあしもともちゅういするですよ?



 時は少し遡り。
 ガタガタと雪車が揺れる。
 氷から土の地面へ変わり始めた頃に、ソリから車輪のものへと切り替えた。
 小休止の中で、にいさま、と月舘・灯里は篝・陸彦を呼ぶ。
「くるまのおきがえといっしょに、あかりたちも、たたかいにそなえてもこもこはぬぐです」
「そうだな。歩いてるとあったまってきたし、備えは大事だって父ちゃんたちも言ってたからな!」
 陸彦の言葉に、こくんと頷く灯里。

「やっぱり出た!」
 ――ギチギチギチッ……!
 連なる軋みの音にアラドの歩みを止める里の者たち――対し、一行を守るように前へと出るのは猟兵たちだ。
「皆はこのままここで待機な! 散り散りになると危ないし、アラドが怯えて暴れないように宥めてあげててくれよな!」
「わ、わかった」
 陸彦の言葉に御者台の男が手綱を固定させ、他の者がアラドの宥めへと向かった。
「けど、冒険者さんたちは大丈夫なのか? ――その、子供も多いだろう?」
「大丈夫!」
「はい。だって、あかりたちはこのためにごいっしょしたなのですから」
 そう答えて陸彦も灯里も駆けていく。
 甲鎧虫の群れは大地を穿ちながら進路を変え、こちらへと向かってくる。一筋であった敵の進みが放射されるように拡がった。
 灯里はエレメンタルロッドを手に集中し始める。
「よーし、おまえ達! とっておきで行くぞ!」
 陸彦が得意の召喚術で呼び出したのは狸と狐。もっふりとした狸のポン太、そして素早い翻しを見せる狐のコン太は、陸彦が同時に施した多重詠唱により大きな体となっていた。
 迫る敵を太い尾で払っていく狸と狐。
 その時、後方で灯里のエレメンタル・ファンタジアが発動した。
 ジャジャジャジャッッ! と起こった飛沫は氷柱。氷の津波が大地を走り、甲鎧虫たちを巻き込み、跳ね上げた。
(「ぼうそうしないように」)
 灯里は圧を感じながらも、心を凪いだものへと保つ。
(「とうさまのように、こきゅうをととのえて」)
 初めの深呼吸から、二つめ三つめは水平にならすような静かなものへ。
(「いしきをしゅうちゅうして」)
 灯里の切っ先はロッドの先端。それを通して触れた暁華の世界。
 一行から遠ざけられた甲鎧虫たちを追うポン太とコン太。飛び跳ねた虫を上手く口で銜え、キャッチする。
「硬そうな虫だけど、ドングリを割るのと一緒だぞ!」
 陸彦の声に応じ、コン太が牙を立てれば、バキン! と砕ける鎧音。冷たくなってしまった甲鎧虫にぴややとなりながらもポン太も強く噛み付き割り砕く。
 その中で波に乗りあげた一体が飛んできて、灯里は咄嗟に白銀の盾を翳した。
 魔力を流した盾は瞬間的に弧を描くように拡がり、甲鎧虫を弾く。
「平気か、灯里」
「だいじょうぶなのですよ」
 弾かれ、ゴロゴロッと転がった敵を薫風で斬り払う陸彦。滑り止め加工のされた革手袋が長柄の動きを芯あるものへとしている。
 続き、地中に潜り氷と土を撒き散らしながら体当たりしてきた甲鎧虫を、ブレのない突き払いで倒す。
 一動作を終え吐き出した呼気は白い。冷たい空気が心地良いほどに、陸彦の体はエンジンがかかったように温まっていた。
「よし、この調子で倒していくぞ」
「暁華もおてつだいしてくださいね」
 灯里の声に、竜を模した精霊は「ぎゃう」と鳴いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イネス・オルティス
あら出たわね
上手くやれば小遣い稼ぎになるだろうけど、あくまでも護衛優先ね

【薄衣甲冑覚醒】を攻撃力重視で使用
甲鎧虫から見て? 私は柔らかいところが多そうに見えるでしょう
ちょうどいいから自身の存在感で敵をおびき寄せましょう
集まった敵を怪力を活かしてこちらに来る敵をまとめてなぎ払いましょう、鎧砕きになってグシャっといくか
それともどこかに飛んでいくか、どちらでも目の前から脅威が無くなる事には違いないわ

ビキニアーマーの女戦士が闘う姿は
自然と護衛対象者を鼓舞するかもしれないし、何となく誘惑するかもしれない
それは受け取る相手次第なのです

アドリブ・絡み・可


箒星・仄々
村の皆さんやアラドさんは護り抜きます!
甲鎧虫さんには骸の海はお還りいただきましょう

弦を爪弾き魔力練り上げ
属性魔力宿した音色=魔力の矢で攻撃

翠の音:風
緋の音:炎
蒼の音:水

激流が押し流し
烈風が触手や肢を斬り裂き
焔が土や氷を溶かし動きを阻害

球状の突進は
疾風を纏って加速し残像分身で回避したり
放水&激風でその回転を減じつつ
炎熱の盾で防御

緋の音を繰り返し奏で
焔で包み焼きにしちゃいますよ♪
寒冷地にいる種ですから熱には脆弱でしょうし
その甲殻も炎は防げないでしょう

事後
鎮魂曲を奏で歌います
どうぞ静かな眠りを

折角なので素材の甲殻も回収します
供養にもなるでしょう
…焼いちゃいましたけど使えそうでしょうか?



 ――ギチギチギチッ……!
「あら、出たわね。あれが甲鎧虫――」
 進みを止めた一行。その荷台から飛び降りたイネス・オルティスが、ふわりと靡く赤茶の髪を払いながら前へと出た。
「上手くやれば小遣い稼ぎになるだろうけど、あくまでも護衛優先ね」
 甲鎧虫の群が大地を穿ちながら、こちらへと向かってくる。一筋の道のように進んでいた敵は一体一体放射するように拡がった。
「村の皆さんやアラドさんは護り抜きます!」
 箒星・仄々が手にする懐中時計のボタンを押すと、カチカチと時計のような絡繰音が鳴って蒸気機関式竪琴が展開された。
「甲鎧虫さんには骸の海へと、お還りいただきましょう」
 仄々の駆けは、前を行くイネスを援護するような位置取りで。
 巨獣槍を背に、藪払いを手に、駆けを止めたイネスは彼我の距離を詰めてくる敵を見据えた。
『ギャギャギャギャ!!』
 この戦場においてイネスの姿は、目に見えて柔らかな部分が多い。その血肉に惹かれるように甲鎧虫は一直線に迫る。
「今、伝統の鎧は、伝説の鎧へ進化する」
 ビキニアーマーの勇者たちへの畏敬、精霊への信頼、そして一族の守護精霊への信仰を捧げ、昇華させたイネスの力はほのかな光のオーラを放つ。
 集まり肉薄した敵群へと戦斧を振るうイネス。名の如く払いに長けた斧刃は直に当たった敵の硬い甲鎧を割り砕き、その衝撃に連なる敵が後方へと払い飛ばされた。
 弧を描くようにイネスの前が一掃され、防御姿勢を取り突出してきた敵を巨獣槍で穿つ。
 イネスに払い飛ばされた甲鎧虫を、仄々の風の矢が貫いていく。
 矢を操るのは魔力を宿した仄々の音色だ。カッツェンリートを奏で、翠の音が今だ滞空状態にあった敵を撃破していく。
 次に蒼の音による水の矢が集束し放たれた。敵の進みを激流のように留め、押し流し、仲間の放った氷の津波によってできた氷壁向こう側へ。
 けれども既に喰らう目的を持った甲鎧虫たちは氷壁をも穿ち突進してくる。
 仄々が奏でる音を変えた。
 放射された焔が氷を溶かし、敵群にたたらを踏ませる。
「焔で包み焼きにしちゃいますよ♪」
 翠と緋の音を使った曲に、火属性の魔力矢はぐるぐると回転し踊る。跳ね上がった回転数と矢数は、焔の竜巻のようにも見えた。
 香ばしく焼かれていく甲鎧虫たち。
 仄々の曲と合わせれば、イネスの力強い槍さばきも艶やかに舞うように。
 オーラの光は槍にも伝い、神々しい軌跡を生む。女神の舞だ。
「おお……」
「さすが冒険者さんたちだぜ」
 鮮やかな動きに、後方で待機していた里の者たちも感嘆の声を上げていた。


 戦いを終えると、仄々が鎮魂曲を奏で歌う。
(「どうか静かな眠りを」)
 同じく、祈りを捧げる猟兵もいた。

「――ところで、甲鎧虫の素材になりそうな甲殻はどうしようかしら?」
 と、イネスが振り向き、仲間たちに声を掛ける。
「素材となるようですし、折角なので回収しましょうか」
 供養にもなるでしょうし。仄々が言うやいなや、拾い集める猟兵たち。品質は倒し方にもより、例え砕けてしまったものでもある一定の大きさがあればゲットしている。何か使用目的があるのだろう。
「……焼いちゃいましたけど使えそうでしょうか?」
 どこか不安そうな仄々が手にした甲殻を、貸してみて、とイネスも手に取った。
 甲殻を返し返し、検める。
「仕方にもよるのだけど、焼き入れは強度が増すらしいわね」
 焼いてからの急冷は硬度・引張強さ・降伏強度があがる。寒冷地ともいえるこの一帯では適した処理だったかもしれない。撃破された後の甲殻は品質が上がっているようだ。
「それなら良かったです。良い素材が手に入りました」
「そうね」
 ほっとした仄々の声に、イネスも微笑む。
「さあ、そろそろ先へと進みましょう。シェルフワまであとどれくらいなのかしらね」
 イネスが行く先を見れば、少し先に緑が茂り始めている。少しずつ深くなっていく草木。
 一行は再び進み始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

ダンゴムシもどきか?
瑠碧姉さん…
少し気遣わしげに
よっしゃさっさと倒そうぜ
里の人達守らねぇとな

UC起動
ダッシュで距離詰め足払いでなぎ払い
腹なら柔らかそうだけどどうだ?
ひっくり返してグラップル
そのまま蹴る

穴掘ってる奴いたら集中攻撃
距離離れてたら衝撃波
動き見切り
体当たりは避け
無理なら武器受け
さすがに気配位分かる
虫ごときに背後取られるかよ
拳の乱れ撃ち
大丈夫と軽く手上げ

無理に硬いとこ狙う必要ねぇし
何体か戦ってりゃ弱いとこも分かる
暗殺交え的確に数減らす
丸まったら開けばいいだろ
こじ開けようと
攻撃来るなら避けてカウンター

さすが瑠碧姉さん綺麗になったわ
撃ち漏らしあったらトドメ

大体片付いたか?
お疲れ様だ


泉宮・瑠碧
【月風】

…甲鎧虫なりの
普段の捕食なのかも、知れませんが…
何も、食べられる訳には、いきません
…ごめんなさい

私は杖を手に精霊羽翼で空へ
…虫、少し苦手なのも、あって
地上は、理玖へ任せます
空へ攻撃が届くなら、第六感と見切りで回避

主に、浄化の水を波の様に流して属性攻撃と
波に巻き込んでの範囲攻撃
甲殻の間に流れ込めば、鎧の意味はありません
球状の虫に対しても、同じく

地中は地面の凹凸や地の精霊で、居場所を
位置と第六感で、体当たりの機を
察知出来れば、理玖にも警告を

空から
アラドや里の人達と
理玖の背後側の虫達は、なるべく気を付けます

終えれば
甲鎧虫達へ、安らかにと祈り
理玖に、お疲れ様

荒れた道は、地の精霊に頼み、整えます



 ――ギチギチギチッ……!
 連なる虫音にアラドの歩みを止める里の者たち。
「ダンゴムシもどきか?」
 まだ遠く、けれどもはっきりと標的を認めた甲鎧虫の動きに陽向・理玖は目を細め呟いた。
 敵群が大地を穿ちながら向かってくる。まとまりのあった敵の進みは一体一体放射するように拡がった。
 その動きを理玖と共に見つめる泉宮・瑠碧。
「……甲鎧虫なりの……普段の捕食なのかも、知れませんが……」
 今は否や。アラドと里の者たちを後ろに瑠碧は進み出た。
「何も、食べられるわけには、いきません……」
 ごめんなさい、という呟きは覚悟するもの。
「瑠碧姉さん……」
 理玖が少し気遣わしげに呼ぶ。彼の心を汲み取ったのか、瑠碧は僅かに微笑み頷いて見せた。
「……虫、少し苦手なのも、あって……地上は、理玖へ任せますね」
 そう言って精霊羽翼を背に、精霊たちの加護のもと、彼女はふわりと浮上した。
 一拍、二拍ほどの時を見送りに使った理玖は、切り替える。
「よっしゃ、さっさと倒すか。里の人達、守らねぇとな」

 ギチギチ! ギシギシッ!
 およそ十四脚を使って、僅かに跳ねるように進んでくる甲鎧虫。
 群れから突出した一体を狙い理玖が駆けた。彼我の距離をつめ、間合いに入るや否や右脚を軸にしたスライディング。
「――見えた!」
 彼の左脚が突出した甲鎧虫の下へと入り、そのまま薙ぐように蹴り払った。
『ギイ!!』
 脚を払われた甲鎧虫が虚空でひっくり返るなか、続く理玖の蹴撃が敵を襲う。
 初撃のなぎ払いに煽られ、同じくひっくり返った敵を龍掌が捉えた。節目に打ちこみ割り砕く。殴り飛ばした三体目、四体と続け様に打てば、その間に更なる虫の波。
 光景を目にした瑠碧が精霊杖を翳せば、浄化の水が波となり、群がろうとしていた甲鎧虫たちを押し流していく。敵のギシギシと軋み大地を穿つ進軍の音が一時的に止んだ。
 甲殻の中に流れ込んだ浄化の水は虫たちを弱体化せていく。絶え間なく入りこむ水にとうとう弱った節が千切れた。
『ギイィィ……!』
 球状となった虫たちも同様だ。
 その時、甲鎧虫の触角の先が光り、大地を裂いた。
「理玖、虫たちが潜るみたいです」
 瑠碧の警告の言葉通り、地中へと潜りこむ虫たち。
 次の瞬間には土塊を纏った体当たりが理玖へと放たれた。
「おっと」
 地中というのが仇となっているのだろう、どこか鈍い体当たりの速度に、理玖は易々と見切る。よって、
「こういうのは不意打ちでないと意味ねぇよな」
 球状となっていた虫たちはドリブル中であるかのように理玖の僅かに引きを見せた掌へ――拳を作る。
 龍の体表のように硬く、ごつごつとしたブラスナックルで殴りつければ、敵の加速も相まってその衝撃に割れたのは甲鎧虫の方であった。
 上空の瑠璃は適宜、理玖や護衛対象に群れが向かわないように浄化の水波を送る。
 精霊杖をゆっくりと振るえば、呼応し水たちが寄せていく。
 その光景は、さながら水龍が大地を泳ぎ回っているかのようであった。
 はー、とどこか感嘆めいた息を吐く理玖。
「さすが瑠碧姉さん。綺麗になるわ」
 脚をとられひっくり返った甲鎧虫を蹴り潰し、撃破した彼は呟いた。


 散開していた猟兵たちが再び戻ってくる。
「大体片付いたか?」
 撃ち漏らしがないかと理玖は周囲を見回す。
 甲鎧虫たちへ、安らかにと祈りを捧げていた瑠碧は顔を上げた。
「理玖――お疲れさま」
「ああ、お疲れ様だ」
 彼女の声に、確認を終えたところの理玖がぱっと振り向き応えた。
「里の皆も、アラドたちも、大丈夫……でしょうか?」
「冒険者さん達のおかげでな。宥めることに専念できたしな」
 瑠碧の言葉に里の若者が答える。パニックになることなく、アラドたちは大人しく待機していたようだ。
 仲間たちが素材回収をしている間に、再出発の準備。
 警戒を続ける猟兵たちは、護衛対象を一定の距離で囲い歩く。
 大群の虫、そして戦いの痕跡によって大地は荒れたものとなっており、瑠碧が地の精霊に頼み、道を整えていった。
 温かな風の通り道は、虫系モンスターの通り道でもあったのだろう。草無き荒れ地を抜ければ、少しずつ草木が茂った場所へと入っていく。
「あ。『大樹』ってあれか?」
 理玖が指差した先。遠く、目的地の大樹が見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
引き続きアンちゃん(f16565)とー。

なになに、虫が出た?
どんなやつ? 角何本ある??

……なぁんだ、幼虫じゃんー。(ちぇー)
角は多いけど。

トゲトゲには触らないようにねー。
荷車……お神輿を前に出し、後ろには通さないようにして。
イサヤムとナルルもおとなしくしててね♪

じーちゃんばーちゃんの声援を受け、頑張りまっす♪

ふわりと宙を蹴って、舞扇をぽーい。
爆発を相殺されても、絆は繋がるから。
動き回れないようにぐるぐる縛って、アンちゃんの方へ向けて引っ張る!
あー、粉々にしない程度でー。あー。

大きめの殻が取れたら、荷車のスキーにならないかなぁ?
後で試してみよっと♪(トゲトゲやら何やらいっぱい拾って格納)


木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
んむ、……だんご虫?
以前、お庭の土掘ったら沢山の彼らとご対面した
あれは少し恐怖…(思い出し、ぶるっと)
(甲鎧虫見て、再度ぶるっ)
まつりん、倒そう

ダーツ、皆を下がらせて?
おじいさんには跳返の符を渡しておく
攻撃がそっちに来た時、掲げたらきっと虫ごと跳ね返す

【絶望の福音】
第六感も働かせ、体当たりのタイミングを予知
幅広の大剣にした灯る陽光からオーラの壁を作り、体当たりを防ぎそのままジャンプ
落下速度の勢いに怪力も加え、甲殻の継ぎ目を次々と叩き斬る
ん、粉砕注意……あ。(たまに失敗)

甲殻、コンコンしてみる
ん、硬い
何かに使えそう?兜や鎧に加工したり
破片はお皿に
お鍋にもどうかな?



「――しまった、甲鎧虫だ!」
 ダーツがアラドを急停止させ、望遠鏡を取り出すと現れたモンスターの群れを注視する。
「なになに、虫が出たの? どんなやつ? 角、何本ある~??」
 木元・祭莉が彼を仰げば、ほれ、と望遠鏡を貸してくれた。覗きこむ。
 大地を穿ち進む敵群はこちらに気付いたのか進路を変え、放射状に散開を始めるところであった。
「……なぁんだ、幼虫じゃんー」
 ちぇーと頬を膨らませる祭莉。
「なんかトゲトゲ、でも角多いね」
 アンちゃんも見る? と回ってきた望遠鏡を木元・杏も覗いてみた。
「んむ、……だんご虫……?」
 杏の頭の中で、ふよよんと、以前彼ら(だんご虫)と対面した記憶が呼び起こされた。
 庭の土を掘ったら――たくさんいたのだ。たくさん。
 だんご虫は土壌を豊かにしてくれる。
 けれども植物の根っこや葉茎も食べてしまう。
 良いところも悪いところもあるのだが、それはそれとして繁殖時期だったのだろう――うぞうぞとしたモノを見た杏は固まってしまった。
「あれは少し恐怖……」
 思い出して体を震わせ、甲鎧虫を見て、再びぶるっと震わせた。ぞわぞわする。
「まつりん、倒そう。ダーツ、皆を下がらせて?」
「お、おう。大丈夫か?」
 冒険者――猟兵の中には子供も何人かいて、ダーツは祭莉と杏にもやや心配そうな目を向けた。
「だいじょうぶ。おじいさんには跳返の符を渡しておくね」
 ウィザードのじいさんにはトランプ型護符を渡す。攻撃や呪い、あらゆるものを跳ね返す力があるのでいざという時は掲げれば良い。
 ほほー、と、じいさんは興味津々だ。
「じーちゃん、遊んじゃだめだよー?」
「ふぉほほほほ……」
 神輿(こたつ)化している荷車を盾となる位置に据えながら言った祭莉に、にっこりとじいさんは笑った。

 地中に潜った甲鎧虫を見た杏は灯る陽光を幅広の大剣に。
『ギイ!』
「ん」
 絶望の福音でまるで十秒先の未来を見てきたかのように。飛び出し体当たりしてくるタイミングで灯る陽光を振るえば、衝突の瞬間に顕現する白銀の盾。
 衝撃に跳ねる大剣と、敵二体ぶんの勢いをも利用しジャンプした杏が、降下速度に乗って一刀を叩きつける。
「……あ。粉砕」
 反動から、体をばねのように使い振り下ろした一撃は、甲殻間に綺麗に入ったものの力が入ってしまって粉々に。
「次は上手く、やる」
 迫る次敵へと再び振るう。切っ先は薄く、隙間へと入る光のように。暖陽の彩が虫体内を巡り、今度はざんばらりんと内部から解体される甲鎧虫。
 止まることなく次の目標へと白銀の大剣を振るいながら、杏はその仕上がりに満足気に微笑んだ。
 一方。
 跳躍した祭莉が宙を蹴れば、その身はふわりと空中浮遊。赤の綾帯の端を括る白銀の玉や、尻尾でバランスを取る。
「とぉー!」
 投擲した舞扇の幻影がくるくると回って甲鎧虫に命中する。
 ぽいぽいぽーいっと。幻影のため投げ放題だ。爆竹のように軽快なテンポで爆破する。
 得体のしれない飛来物に防御姿勢を取った甲鎧虫たちが触角を光らせて爆発を相殺するのだが、ひらり舞い降りる舞扇が、オトナには見えない夢色の絆で彼らと祭莉を繋いだ。
「わーい、掛かった~♪」
 一本釣りどころか投げ網漁である。
「まつりん」
「はい、アンちゃんぱーす!」
『ギィィ!!』
 絆に引っ張られ、およそ十四の脚をばたつかせつつひっくり返った甲鎧虫。うぞうぞとした腹が見えた。何ともいえない表情で祭莉を見る杏――その腕は今も剣を振るっているので――、
「あー、アンちゃん、てもとー! 粉々にしない程度でー。あー。…………」
「ごめん、まつりん」
 Gを叩くレベルの加速と勢いだった。一体粉砕。
「でもあっちはちゃんとざんばらりん、したから」
 撃破した大きな敵を指差し、杏は言うのだった。
 

「これ、荷車のスキーにならないかなぁ? どう思う?」
 と、イサヤムに掲げてみる祭莉。大きな甲鎧虫の甲殻はちょっとしたボートの大きさで、硬そうなそれをふんふんと嗅ぐイサヤム。
「ま、後で試してみよっと♪」
 トゲトゲや大きな針になりそうな脚も拾っていく祭莉。
 甲殻をコンコンと叩くのは杏だ。
「ん、硬い。おばあさん、これ、お鍋に使えそう?」
「そうだねぇ、お鍋に丁度よいかもねぇ」
 頭の部分は深みがある。
 メルルばあさんが杏が拾ってくるものを一緒に見てくれる。
「こっちは、兜や鎧に加工したり、破片はお皿とか、胸当て?」
「そっちのはおたまにも良いわねぇ」
 光っていた青い触覚部は、魔力などを通せば岩もバターのように切れるもの。これを使って地中に潜っていたようだ。
「拾ったものはおいらの荷車にどうぞー♪ 載せられるぶんだけね」
 氷河も抜け、これからは草木ある場所なので歩いていける。人の乗っていた荷車や祭莉の荷車に素材を乗せて。
「もうすぐかなー」
「大きな樹、見えてきたね」
 遠くに見えた大樹を目指し、一行は進む。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

ソヨゴは張り切ってるネ
ソヨゴのその構えは…
包丁さばき?あ、違うのネ
冗談冗談わかってるよ

十数年ぶりのお祭りを邪魔させるわけにはいかないネ
じゃあ僕はアサルトライフルで接近戦と行こうか

ふむ敵さんは僕らを食事だと勘違いしているようだけど
僕らには君たちが素材にしか見えないんだよネ

ライフルを連射モードにして
UC発動
動かれては当たらないので
敵を拘束して継ぎ目や腹の部分にライフル弾を撃ち込む

一匹ー、二匹ー
と数えながらテンポ良く処理して行こう

敵の攻撃は触手で受け止め
目一杯弾丸を撃ち込む

あっこれはやり過ぎたかな?
品質を保って倒すのも結構難しいネ

蛾?
全然平気だよ
苦手な動物っていないかも?
でも食べるのはパスネ


城島・冬青
【橙翠】

害虫駆除ですね、任せて下さい
色々お手伝いしましたがやはり私達に適任なのは…(刀を構えて)コレ!ですね
包丁じゃないです!
それに虫を食べるのはちょっと…
えっ!あの虫の甲鎧も再利用できるんです?
じゃあなるべく傷つけずに駆除しないと

虫には虫をぶつけます
脇差・不死蝶を抜き
カモーン!スカシバちゃん達!!
UC吸血蛾発動
甲鎧虫VS吸血蛾ファイッ
いくら硬い甲鎧を纏っているとはいえ関節部は存在する…
スカシバちゃん達
そこを狙って吸血管を突き刺して!
虫に纏わり付かれそうになったらダッシュで回避するか衝撃波で弾き飛ばす

そういえばアヤネさん
今更ですが蛾って平気でしたっけ?
よかったー
アヤネさんって生き物好きですよね



 モンスター群にアラドが足を止める。
「現われましたね! ここからは害虫駆除ですね、任せて下さい」
 荷車が完全に停車しないうちに、飛び降りた城島・冬青は早速腰の得物へと手を添えた。
「ソヨゴは張り切ってるネ」
 後を追って降りるのは降車するのはアヤネ・ラグランジェだ。
「はい。色々お手伝いしましたがやはり私達に適任なのは――コレ! ですね」
 と、手にした柄と鞘を水平にし敵を見据えるその姿は……、
「ソヨゴのその構えは……包丁さばき?」
「包丁じゃないです! それに一体何を調理するんですかー! 虫を食べるのはちょっと……」
 冬青はサブウェポン・脇差の不死蝶を手に、アヤネへと軽く抗議する。
「冗談、冗談。わかってるよ」
 ウインクして肩を竦めて。アヤネはPhantom Painを手にする。
「十数年ぶりのお祭りを邪魔させるわけにはいかないからネ。今回は僕もアサルトライフルで接近戦と行こうか」
 彼我の距離はまだあり、しかし甲鎧虫たちは大地を穿ちながら向かってくる。まとまりのあった敵の進みは一体一体放射するように拡がった。

「UDC形式名称【ウロボロス】術式起動。――かの者の自由を奪え」
 敵群に向けて二重螺旋のウロボロスを放つアヤネ。彼女の影が伸びるように、蛇に似た数多の異界の触手たちが甲鎧虫たちの脚を拘束する。否、時折影が跳ね、敵を仰向けにした。あらわになった腹部分へとすかさず撃つアヤネ。
「一匹ー、二匹ー、三! と、四匹ー」
 リズムを取って、テンポよく対処していく。
 連射モードにしたアサルトライフルで撃っていけばたまに乾いた音を立て弾が跳ねる。
『ギイ!』
「……ふむ。僕らを食事だと勘違いしているようだけど、僕らには君たちが素材にしか見えないんだよネ」
 確か、素材にするのに良いのだったか――というアヤネの言葉に、えっ! と声を上げる冬青。
「あの虫の甲鎧は再利用できるんです? じゃあなるべく傷つけずに駆除しないと」
 冬青が不死蝶を抜けば、刀から魔力が発生する。はらはらと落ちる花弁は魔力そのもの。「カモーン! スカシバちゃん達!!」と冬青が言えば、花弁はオオスカシバへと姿を変え空を舞った。
 くりっとした丸くつぶらな瞳、ふわふわとした体を持ち、繊細な模様の翅を動かすオオスカシバたち。
「いくら硬い甲鎧を纏っているとはいえ関節部は存在する――」
 事実、冬青が視認した甲鎧虫たちは繋ぎ合わせた鎧板のようにして体全体を動かしている。
「スカシバちゃん達、そこを狙って吸血管を突き刺して!」
 素早く旋回し、時にホバリングしながら接敵するオオスカシバたち。次々と鋭い吸収管を突き刺し吸血していく。
『ギイィ……』
 力を吸い上げられ、力尽きる甲鎧虫。
 一斉に防御姿勢を取り、丸くなる虫たちは、闘争本能に覚醒するものもいてアヤネに向かって転がり始めた。
「そこまで」
 触手がばしっと受け止めて、アヤネはめいっぱいに弾丸を撃ちこんでいく。
 一撃目は弾かれても間断なく撃ちこめば、鎧のような甲殻がへこみ、五、六発目が貫いた――ところで「あっ」とアヤネ。
「これはやり過ぎたかな? 品質を保って倒すのも結構難しいネ」
 うっかりやってしまったけれども。
 まあ……たくさんいるようだし、少しくらいはいいか、と思い直す。
 一方冬青のオオスカシバたちは品質を保つように、上手に撃破していった。
「そういえばアヤネさん。今更ですが、蛾って平気でしたっけ?」
「蛾? 全然平気だよ」
 アヤネは冬青の問いに答え、ちょっと考える。
「苦手な動物っていないかも?」
「よかったー。アヤネさんって生き物好きですよね」
「観察してると飽きないネ。でも食べるのはパス」
 これだけは譲れないという風に頭を振るアヤネ。ほんとむり。

 撃破したあとは素材回収だ。
「胸当てとかに加工できそうですねー」
「触角の光っていた部分は魔力が通るみたいだネ」
「脚は大きな針にもなりそう」
 何かに加工してもいいし、そのまま売っても良いだろう。
 乗ってきた荷車に積み、一行はシェルフワの大樹祭を目指して再出発するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
虫かー……。
ふだんならまず逃げるところだけど、任務ならそうもいかないよね。

見た感じは『メタルダンゴムシ』ってところかな。
武器の素材になるっていうのも解る気がするね。
と、いうことで、甲鎧虫にはしっかり素材になってもらおう。

鎧の防御は固そうだけど、熱は防げないだろうし、
【Nimrud lens】で焼きつつ、中への熱ダメージを狙っていこう。
【砲撃】と【誘導弾】も使ってしっかり当てていくよ。
「煮えちゃえー!」

お祭りの前に、素材もげっとしちゃうのもいいかもだね。
大樹祭で武器とか防具とか作ったら、
ドラゴンや大樹さまの加護もついちゃったりするかもだしね!
氷菓子もだけど、アイテム作成もたのしみかもっ♪


クララ・リンドヴァル
※アドリブ連携OK
可愛いですよね。ダンゴムシ。
蜘蛛程ではないですけど。
シェルフワの大樹祭を盛り上げるためにも
張り切って行きましょう。

書庫の隅で埃を被っていた杖です。
半年ぶりに引っ張り出して来ました。
僅かですが【属性攻撃】の力を増幅します。

後衛。護衛対象の近くに布陣します。
素早い動きを鈍らせます。霜の矢を弓なりに降らせ、
甲殻を氷塗れにして重くしたり、隙間を凍結させたりして
動きを阻害します。

球体と化して著しく接近してきた個体には全弾集中砲火。
任務達成を最優先とします。

甲殻、見るからに重戦士向けな……と思いつつ
素材の性質が気になっています。
やはり鉄とは異なっているのでしょうか。少しだけ貰いましょう。


レテイシャ・マグナカルタ
アドリブ連携歓迎

発砲、傷一つつかねぇだろうがアラドを狙う個体を引き付けることぐらいは出来るはずだ
素早い動きで回り込まれたりするのを警戒しながら、頭を狙って殴り飛ばすぜ
頭が潰れりゃ流石に攻撃はできねぇだろ!
だがそのうちこっちの動きを見て丸まって頭を守る奴が出てきそうだ

その時は爺さんに教えられた事を思い出す。魔法なんてまだ使えやしねぇが、それでもあの時指先に残った何かをオレは覚えてる……
目を閉じて心を落ち着かせる、深呼吸と共に体の中に巡る何かを指先に…ぜええりゃああっ!!!
裂ぱくの気合と共に放った手刀がまるでバターみたいに蟲の身体を両断するぜ

(無意識で効率悪く散らしていた魔力を集中できた結果)



 モンスターが現われたとの声に、荷車から飛び降りた菫宮・理緒はまだ向こうにいる甲鎧虫を視認しながらも、どこか遠くを見つめるように「虫かー……」と呟いた。
「……見た感じは『メタルダンゴムシ』ってところかな」
(「ふだんならまず逃げるところだけど、任務ならそうもいかないよね……」)
 という理緒のややテンション低めな感想に対し、彼女の言葉に頷くクララ・リンドヴァルは、
「可愛いですよね。ダンゴムシ」
 対照的な感想であった。淡々とはしていたが。
「か、かわいい……かなぁ……?」
 どこかのんびりとした性格の理緒は(「え、そうかな?」)と思いながらの二度見。
「蜘蛛程ではないですけど、可愛いです」
「くも」
 続くクララの言葉を復唱する。可愛いの認識は人それぞれであった。
「ダンゴムシは土を豊かにすると教えてもらったことはあったが――」
 育った孤児院での教えをなぞりつつ、可愛いに関して真顔に考え込むのはレテイシャ・マグナカルタ。
「多すぎると根も葉も喰っちまうしなぁ」
 畑仕事も手伝っていたのだろう。現実的な感想であった。三者三様とはこのことか。
 それはともかくとして。
「武器の素材になるっていうのも解る気がするよね。と、いうことで、甲鎧虫にはしっかり素材になってもらおう」
「そうですね。素材は加工も出来れば、売ることもできますし……シェルフワの大樹祭を盛り上げるためにも、張り切って行きましょう」
「うし、そんじゃ一発やってくか」
 理緒とクララの言葉に、レテイシャは気合いを入れて掌に拳を打ち付けた。

 走っていく猟兵たち。
 一筋の道のように駆けていた甲鎧虫たちは大地を穿ちながら向かってくる。まとまりのあった敵の進みは一体一体放射するように拡がり、それを見た三人は、後衛の位置につくことにした。
「クララさん、後ろはお任せするね」
「はい」
 二人よりも前へと出た理緒は虚空に向かって手を翳す。
「屈折率、固定……収斂」
 大気を屈折させレンズを生成し、光を内包する。収束させた光は熱線となり、敵群に向かって次々と放たれた。
 直撃した甲鎧虫は腹を見せるように跳ね、続く熱線にその身を焼かれる。中には丸くなり転がり始める敵もいた。
「わ、素早い……!」
 ならば、と、熱誘導の術式を加算する理緒。
「煮えちゃえー!」
「……電脳魔術も、中々興味深いですね」
 扱いの違う術式を見て、クララのオレンジ色の瞳が僅かに輝いたようになる。
 そんな彼女が手にしたのは、珍しくも杖であった。書庫の隅で埃を被っていたウィザードロッドはおよそ半年ぶりに日の目を見た。
「参ります……」
 理緒のような加算式ではなく、力の増幅。発生した熱気のなか、霜の筋が数多に通る。
 霜の矢を弓なりに降らせ、球状化した敵群の甲殻を霜で氷濡れにした。霜が張り付き、加えて思うようにも転がれず、敵の動きが鈍くなる。
 ここを叩くのは最後衛のレテイシャである。
 氷結状態の甲鎧虫を蹴り飛ばす。その衝撃たるや。蹴り潰すか虚空でバラバラとなるかの二択。
 前にいる魔術組を避け、回りこんでくる敵を対処するのもレテイシャだ。
「アラドたちにゃ近付けさせねぇぜ!」
 攻撃には彼女の魔力も無意識に込められている。敵頭部を狙って殴る――兜を割っていた。
 三人の周囲は、防御姿勢や闘争本能に覚醒した甲鎧虫たちが転がり始めた。
 ガン! とレテイシャの拳が弾かれる。
「む?」
 先程、ウィザードのじいさんに教えてもらったことを思い出すレテイシャ。
(「魔法なんてまだ使えやしねぇが、それでも、あの時指先に残った何かをオレは覚えてる……」)
 目を閉じて心を落ち着かせて。
 深呼吸と共に、体の中を巡る『何か』を指先に――レテイシャは集束させた。
「……ぜええりゃああっ!!!」
 裂ぱくの気合いを発し、同時に放った手刀はスッと防御姿勢を取っていた甲鎧虫へと入った。球状の両断に残骸となった三つが地に落ちた。
「うおお、できたぁぁ!」
 ガッツポーズのレテイシャ。
 最接近してきた敵に向かってクララが霜の矢を全弾集中砲火すれば、バババババッと霜が乱立し氷晶の壁が刹那に出来上がる。
 焼き入れ、氷結、物理と、魔力の使い方も三者三様であった。

「わ、これが加工できる素材か~」
 理緒が手にした甲殻は硬かった。焼き入れからの氷結と、鋼のように強度が増し、結果的に品質の上がった素材が辺りに転がっている。
(「見るからに重戦士向けな……」)
 と思いながらも、品質の良い素材を手にするクララ。ねえ、という理緒の声に振り向く。
「大樹祭で武器とか防具とか作ったら、ドラゴンや大樹さまの加護もついちゃったりするかな?」
「それは、ありそうですね。加護となると護符も刻めば……」
 小さな甲殻も加工すれば胸当て、肩当てにもなる。
「氷菓子もだけど、アイテム作成もたのしみかもっ♪」
 にこにこ笑顔の理緒が、これはどうかな、あれも何かに使えそう、と触覚の刃部分や脚も拾っていく。
「オレには使い道が思いつかないんだが、何かに使えそうなら拾っとくか」
 レテイシャも素材回収のお手伝い。
 ここからは歩きでも十分に行けるので、人が乗ってきた荷車に素材を積んだ。
「それじゃ、行くかぁ!」
 と、里の若者が言った。
 草木が茂り始めた地に入ったところで、ふと遠くを見れば――大樹が見えた。
 祭り会場まであとすこし。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『大樹祭』

POW   :    興行への飛び入り参加

SPD   :    露天商・屋台巡り

WIZ   :    祭りの喧騒を遠くに、静かに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 むかしむかし、シェルフワというドラゴンが戦の絶えぬこの地に降り立った。
 人々は最初はシェルフワを強大な敵だと思ったのだが、優しきドラゴンは言葉を用いて人々と心を通じ合わせた。
 ドラゴンの穏やかな言葉は、やがて人の心に優しさを宿らせる。
 争いはなくなっていった。

 長い時が流れ、動かぬ大樹となったドラゴンは『辺り一帯』を守護するものとして称えられるようになった。
 過去、戦の絶えなかった地が今も平和だと、人も動物も元気だということを大樹に伝える。

 それがシェルフワの大樹祭である。


 大樹を中心にした大きな都。
 敷かれた石畳は、辿っていくと大樹へと行きつくのがほとんどだ。それを打つ人々の足音、喧騒が響く。
 フェアリーやエルフ、ドワーフなどなど集う人種も様々。
 明日から開催となる大樹祭のため、皆、慌ただしく準備している。その間を歩くのは、飲み物や食べ物を販売する売り子たち。
「ここまでありがとうな! 冒険者さんたち」
「いやあ助かったぜ。これ報酬ね」
 と、金貨の入った袋を手渡された。
 トウケンの里の皆も無事、出店の登録が終わり、出店準備を始めることとなった。
 猟兵たちは荷下ろしを手伝っていく。
 荷車――保護布の中の氷の実は溶けておらず、球体を保ったまま。不思議そうな表情の猟兵たちに、ココ、じつは皮でな、と説明する里の者。剥けば中身は正真正銘の氷である。
 机と椅子――道中のアイディアを取り入れたのか、カフェ風に設置された。

 その日は出店準備で終わった。
 旅の疲れは感じていたけれども、どこか心地の良い疲れであった。


 一夜明け。
 都全体で早朝から準備をしていたのだろう。上を見上げればカラフルな布地のガーランドや、道沿いには花を寄せ植えたプランター。店も屋台も装飾がされて華やかで、通りは既に人が賑わっている。
 猟兵たちは、まずは少し見て回ることにした。

 トウケンの里の店に行ってみると、お客さんもいて盛況の様子。
 専用の道具を使い、削ってふわふわになった氷。それに昨日里の者が買い付けた花蜜や果物のシロップがかけられて、濃淡ある甘めな香りを放っている。
「やあ、冒険者さん! 是非食べてってくれな!」
 里の若者が猟兵たちに気付き、声を掛けてきた。
 味の種類は豊富なようだ。ふわふわ冷え冷えな氷菓子に合うものを更に見つけてきたりするのも良いだろう。
 忙しそうなので、氷菓子の店を手伝ったりも出来そう。

 回収した甲鎧虫の素材は、そのまま売ってお金にしたり、職人通りに持っていったり。
 店が並び、武器や防具・道具が売られているのはもちろんのこと、一部には鍛冶場もあるのでドワーフが素材を加工・強化してくれるだろう。
 甲殻は繋いだ籠手や胸当て、肩当て、盾、日常雑貨など用途は様々だ。
 触覚の青い刃のようなものは、魔力を通せば岩がバターのように切れる代物。
 他にも、あちこちの土地から集まった商人が店を出しているので、買い物も色々とできそうだった。
 可愛い物もあれば、美味しい物もある。

 祭りの喧騒を遠くに、静かに過ごすのも良いかもしれない。
 賑やかな通り、静かな通りと、大樹へと続く道も様々だ。

 好きなように、思い思いに過ごしてみよう――。
菫宮・理緒
トウケンの里のお店も盛況みたいだしよかった!

氷菓子も気になるんだけど、
今回はちょーっと途中でげっとした甲鎧虫アイテム、
作ってみたくなっちゃった。

ドワーフの鍛冶場もあるってことだし、
素材を持って、ちょっと訪ねてみたいな。

わたし電脳魔術師なもので、
武器や防具らしいものってあんまり持ってないんだよね。
ドワーフの鍛冶師さんなら専門家だろうし、
わたしに合う武器とか、見繕ってもらえると嬉しいな。
「手とか体格とかで、解ったりするかな?」

素材は持ってきた甲鎧虫の甲殻を使って作ってもらおう。

元が虫っていうのはちょーっと気になるけど、
加工してもらうしおっけーだよね!

わたしに合うアイテムってなにになるのかなー?



 削られてふわふわになった氷に、サルサソースのようなピリ辛シロップと絞ったライムをかけて食べれば、ちょっぴり大人の味。
(「トウケンの里のお店も盛況みたいだし、よかった!」)
 店の様子を眺めながら、氷菓子を楽しんだ菫宮・理緒は「ごちそうさまでした」と里の者へと器を返し、祭りの喧騒の中を行く。
「えっと、鍛冶場はこっちかな?」
 目指すは職人通りだ。空を見上げれば煙の上がる一帯があって、そこを目指す理緒。抱えた大きな袋の中には、甲鎧虫の甲殻などが。
 職人通りの前で露店を開いていた人へ、どこを訪ねれば良いのかを聞く。鍛冶場は共有スペースとなっているようで、辺りの武器防具・道具屋であればどこでも請け負ってくれるらしい。
 ということで、
「こんにちはー」
 好みな看板の店へと入る。
「こんにちは、いらっしゃいませ~」
 店番をしていたドワーフの少女が理緒を出迎えた。大きな袋にも視線がいく。
「ええと、今日はアイテムを売りに? それとも何かを求めて?」
「今日は武器や防具を作って貰おうかな、って思って。モンスターの素材を旅の途中でゲットしたんだよね」
「発注ね、どんな武具が良いのかしら?」
 ドワーフの少女が言うと理緒は笑みを見せて応える。
「そこは是非お勧めでお願いしたいなぁ」
 その時、店の奥から父親らしきドワーフも「いらっしゃい」と出てきた。「どれどれ」と理緒の渡した素材の確認。
「ほう、ほう、甲鎧虫か。たくさんあるのぉ」
「わたし電脳魔術師なもので、武器や防具らしいものってあんまり持ってないんだよね。で、どんな物が良いのかもちょっと分からなくって……」
「デンノウ? お姉さん、魔法使いさんなんだ」
 ほぉ、と感嘆の声でドワーフの少女は理緒を見上げた。
 ちょいと失礼、とドワーフの親父が理緒の腕や体格を見る。
「魔法使いさんなら、守りの加護が入った防具をオススメしとるんじゃがのー」
「やっぱり手とか体格とかで、解ったりするのかな?」
「そうじゃのー」
 ドワーフの親父は何か考えているのか、どこか返事が上の空である。
 そのまま甲殻を持って奥へと入っていった。
「父さん!? あ、ありゃ――いっちゃった。えーと、お姉さん、ちょっと待っててね。父さん、何かアイディアはあるみたいなんだけど――」
「え、うん、時間はあるから大丈夫だけど……おとうさん、職人気質だね」
 理緒が言えば、「そうなのよねぇ。人の話が時々素通りしちゃってて」とドワーフの少女がぱたぱたと動き始めた。
「お姉さん、こっちで座って待っててくれる?」
 店内には待つためのスペースがあり、机と椅子、暇つぶしのための本棚や玩具、武具のレプリカなどが置かれていた。
「はい、お茶とお菓子ね。待ち時間がどれくらいか分かれば、一旦お祭り見学に行って貰ってたんだけど~」
 アレでしょう? と店の奥を見るドワーフの少女。鋼を打つ響きが聞こえてくる。
「何も言ってなかったから、一時間か二時間くらいで出来上がる……かな……たぶん」
「それくらいなら待てるよ。色々と見るものもあるしね」
 そう言って理緒は店内を見回した。

 飾られた甲冑、鱗を使った籠手や、敵の尾を使ったランスなど、理緒には持てそうにもない重い武器防具を見るのは楽しかった。
 持たせてもらったショートソードもずしりと。
「あ、こっちはちょっと可愛いね」
「そこの飾りはあたしがやったの。銀細工好きなんだ」
 剣帯やスリングはちょっとオシャレな装飾が入っている。ドワーフの少女の作品らしい。
 そんな風に見たり喋ったりしながら待っていると、奥にある鍛冶場からドワーフの親父が出てきた。
「お嬢さん、出来たぞい」
「わ、はやい!」
 ドワーフの親父は、三つほど、武具を作ったようだ。
「気に入ったものがあればで良いからのぉ。説明をしていくぞい。まずはオーソドックスなものからじゃな。小盾と短剣」
 甲鎧虫の素材は磨けば銀のよう。翳せば光の入りによって、薄らと走る青の色。
 縁に装飾がされた鏡のような小盾と、理緒でも持てるバゼラードのような短剣は風竜の加護が入っている。鞘におさまる短剣は腰のベルトに添うように横向きでの装着となるようだ。
「盾を翳せば風が駆け、敵の攻撃軌道も逸らすじゃろ。お嬢さんの力量によっては風繭を纏うこともできるかの。
 短剣は振れば、その斬線に風が発生し敵を軽くなぎ払う」
 敵に接近された時、『魔法使い』が咄嗟に使える代物だ。
「――冒険者みたい」
 装備してみた理緒の感想はこれであった。ファンタジーっぽいなぁと眺めてみる。
「で、三つめはお嬢さんみたいな魔法使い向けだと思うんじゃがのー」
 チャリチャリと鎖とチャームが鳴る音。鎖の長さは理緒の腕よりも少し長いくらい。
 その細鎖に、全長・人差し指くらいの金属板――切り出し磨いた甲鎧虫の甲殻だろう。
 金属板は計十二枚ほど。その一つ一つに異なる護印が刻まれている。
「色々な耐性を付与する護りでの。こう、羽織るマントやコートの重しにもなり――」
 理緒の肩や背に細鎖を回し胸元で留める。
「――または、腰元に下げたりという感じで装備するんじゃ」
「鎖ベルトみたいになるんだね」
 わさびパウダーとマイ七味唐辛子を持ち歩くためのベルト辺りに、ゆるりと下がる三つめの防具。
「銀細工のアクセサリーみたいだね」
 仕上がった品々の元が『虫』とは思えない。
「値段が少々張るでの。気に入ったものがあれば、で、必要でなければこちらでも買い取るからのー」
 ドワーフの親父の言葉に、その辺は大丈夫だという風に頷く理緒。
 群竜大陸の財宝があるため、猟兵たちの懐は今潤っている者が多い。
「ありがとう、ドワーフのおじさん。お茶もね、ごちそうさまでした」
 程よい重さは、足がしっかりと地に着く感じ。ドワーフの親子に別れを告げて、店を出て。
 再びアックス&ウィザーズ世界を歩く。
 ふと、先程見た護印が、あちこちの石畳にも刻まれているのを見つけた。
「――シェルフワって、風属性のドラゴンだったのかな」
 いつ見上げても視界に入る大樹には銀花が咲き誇っている。その時、
「……綺麗」
 風が吹き、ひらりひらりと。雪のように花びらが舞うのをしばし眺める理緒であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・灯里
【黒鯉灯】
ネロにいさまとごうりゅうしたら
さとのおみせをおてつだいするです!

あかりはシロップをかけたり
できたうつわをせきまではこぶですよ?

おてつだいをひととおりしたら
こおりがしをいただくのです
シロップはオススメでおまかせなのですよ
あ!アラドのミルクもちょっとかけたいなのです!

おいしいこおりがしをいただきながら
これからのよていをそうだんですよ

おいしいなので……す
(ぷるぷるしている。ぷるぷる)
きーんってしたです

みればにいさまたちもぷるぷる!
あかりだけではなくてよかったなのです

びっくりしたかおのネロにいさま
だいじょうぶなのですよ
みんなきーんとしたです

さぁ!とうさまたちのおみやげ
みにいきましょうなのです


篝・陸彦
【黒鯉灯】
ネロと合流した後、店の手伝いをするぞ!
ネロは……どうしよ、店の前に座って客寄せしてみるか?
目立つからきっと人が寄ってくるぞ
人馴れ人馴れ!

おれは氷を削る、難しい時は削った氷を盛る皿を乗せたり
減った氷を交換したりするぞ!
分担すれば効率もばっちりだよな

人が落ち着いたら、おれ達も氷菓子を貰うぞ
頑張った後の食べ物は最高に美味しいんだ!
おれは花蜜と果物の2種類を半分ずつ
仕上げにアラドのミルク!

いっぱい口に含むとキーンってするな!なんでだろうな!
あっはっは、灯里もネロも一緒だ
沢山口に入れるからなのかもしれないから、ゆっくり食べれば大丈夫だ

よーし、食べ終わったお土産買いに行こうぜ!


ネロ・ヴェスナー
【黒鯉灯】
ミチヒコ、アカリ、マダカナ
里の前で待ち、二人の姿を見れば自然と尾を揺らして
二人トモ、オ疲レ様……!

オ店ノ、オ手伝イヲスルノ?
二人のように持つことはできず、どうしようとおろおろ
キャ、キャクヨセ!?人、来タラ、ドウシヨ……!
馴レルタメ……ガ、ガンバル

店の前で人が来るのを待つ
寄って来た人に少し動揺しながらも
氷ノ、オ菓子、冷タクテ、美味シイヨ?
二人の頑張る様子を見て、客にも見るように誘導

ボク達モ、オ菓子食ベテイイノ?味ハ、何デモ
体の大きさに合わせて大盛にして貰った氷菓
匂いを嗅いでから、がぶっと一口
甘クテ、美味シ……!!!
頭にキーンと来て押さえる
ウン、ユックリ食ベル

今度ハ、オ土産
ボクモ、行ク!



 ネロ・ヴェスナー(愉快な仲間のバロックメイカー・f26933)はどこか自信なさげに四脚を動かし続けた。ふわふわの毛を時折吹く風が撫でてゆく。
 一見、大きな狼のような姿のネロであったが彼は心やさしき疑似生物。ぬいぐるみであった狼足は石畳で音を立てることなく、どこか柔らかだ。
(「ココ、カナ……?」)
 目指した店――から、少し離れた人の邪魔にならない場所に座るネロ。
「ミチヒコ、アカリ、マダカナ」
 そわそわと動き出しそうな前脚をきゅっと抑えつつ、ネロは待つ。
 と、その時。
「ネロー!」
「ネロにいさま!」
 篝・陸彦と月舘・灯里の声を捉え、ネロはぱっと立った。彼自身気付かぬうちに、大きく太い尾が左右に揺れた。
「二人トモ、オ疲レ様……!」
 ネロに灯里がぎゅっと抱きつけば、ふわふわな毛に埋もれる。陸彦も手を伸ばしてネロの頭を撫でようとしたので、ネロは頭を少し傾けた。
 【黒鯉灯】の三人が無事合流したところで、次はトウケンの里の店の手伝いへ。
 元々やってきた人員が里の男衆ばかりだった(ご老人と子供たちは祭り見学へ行った)ので、手伝いは大歓迎である。
「た、助かった……!」
「今気づいたんだけど、この店めちゃくちゃムサくね!?」
 里のおにいさんが悪いというわけではないのだが、店員に華やかさが無かった――華やかさといえば、ひらひらなエプロンをしているくらいで。
「むさ……? おてつだい、がんばるのです」
 里の若者たちが何に嘆き喜んでいるのか、よく分からなかった灯里だったが、がんばる気持ちの表明を。
 手伝いが必要なところは、だいたい『全部』である。後から入ってくれる猟兵もいるとのことで、午前の部は三人がお手伝いに入る。
「あかりはシロップをかけたり、できたうつわをせきまではこぶですよ?」
「おれは氷を削る!」
 ひらひらのエプロンを着た灯里と陸彦。ネロは――?
「オ店ノ、オ手伝イヲスルノ?」
 ネロは自身の前片脚をやや掲げた後に、どこか諦めたように地につけて。二人の方へと顔を向けた。尻尾が垂れた。
 うーん、と考える陸彦。
「ネロは……どうしよ、店の前に座って客寄せしてみるか? 目立つからきっと人が寄ってくるぞ」
 ほら、エプロン、とひらひらなエプロンを首に巻けば店員の一人だと分かる。……かも。
「キャ、キャクヨセ!? 人、来タラ、ドウシヨ……!」
「客寄せだから、人が来て当たり前だって! 人馴れ人馴れ」
 頑張れ、とエプロンを首の後で結んでやりながら陸彦。
「ネロにいさま、かわいいからだいじょうぶだとおもうのです」
 スカーフのようになったエプロンを整えながら励ます灯里に、ネロは頷く。
「ナ、馴レルタメ……ガ、ガンバル」

 ネロの姿は目立つ。
「あ、おっきなわんちゃんー」
「お店のぬいぐるみかな?」
 明るい声でしゃべっていた女子二人がネロに気付き、寄ってくる。ぴしりとネロは固まった。瞼はぎゅっと閉じたまま。
 けれども、今はお手伝い。客寄せ――案内しなければ。
「……コ……」
「「こ?」」
「氷ノ、オ菓子、冷タクテ、……美味シイヨ?」
「えっ、わんちゃん喋ったぁ!?」
「きゃあかわいい! 動いてる!」
「もっかいもっかい!」
 え。もう一回?
「氷ノ、オ菓子、冷タクテ、美味シイヨ、ドウゾ」
 と、中で働く灯里と陸彦へと顔を向けた。
 陸彦が大きな氷菓子機に氷の実を一杯に入れる。ハンドルを回せばガリガリと中の方で氷の実が削れて、ふわふわの氷が下部に設置した器の中に溜まっていく。
 何だかガチャマシンのようで面白かった。
「ほい、灯里。三番テーブル」
「はい、おまかせなのです」
 綺麗な山となった氷菓子に、客の注文通りにシロップをかける灯里。スプーンを添えて、お盆に乗せて席まで運んでいく。
「ふわふわなかきごおり、おまたせしましたなのです。ベリーシロップをひとつ、もうひとつの、サルサのほうはこちらのしぼりたてのライムをおこのみでどうぞなのです」
 里の氷菓子屋さんでは辛いものも提供している。専用のソースもあり、覚えるのは大変だったが、ちゃんと暗記して給仕をしていく灯里。
「わ、ここの氷菓子おいし~」
「氷魔法屋さんのも良いけど、なんか美味しさが違うね!」
 そんな感想を聞いて陸彦は改めて氷の実を手にしてみた。魔法の氷は造られたものだが、この氷の実は人の手で育てたものだからだろう。だから美味しいのだ。

 昼時が近くなると皆ご飯屋さんへと向かうらしく、客足は落ち着いてきた。
「いやあ、ほんと助かったよ! ありがとうな」
「冒険者さんたちもゆっくり休んで行ってね」
 里の若者の言葉に、ぱっと笑顔になる陸彦。
「いいのか? やった! 頑張った後の食べ物は最高に美味しいんだよな!」
「そうそう、めちゃくちゃ美味しいよね~。」
 分かってるね~と応じる里の若者。
「ボク達モ、オ菓子、食ベテイイノ?」
 おずおずとした様子で言うネロにも、頷きが返された。
「ああ、おっきい器を用意するね。シロップはどれにするかい?」
 若者が看板にもなっているメニュー表を指差し、それを追う三人の子の目。
「あかりは、シロップはオススメでおまかせなのですよ」
「ボクモ、味ハ、何デモ……」
「おれは花蜜と果物の2種類を半分ずつで!」
「はい。お任せ二つ、花蜜と果物のハーフね。それじゃあ一番テーブルで待っててね~」
「あっ、仕上げにアラドのミルクも!」
 カウンターで軽くジャンプして手を挙手する陸彦。少年の主張に、少女も同じように「はい」と挙手する。
「あかりもちょっとかけたいなのです!」
「はい、了解だよー」
 席について、あまり待たないうちに氷菓子が運ばれてくる。
 ふわふわに削られた氷。
 陸彦の氷菓子には、甘いけれどもさっぱりとした口当たりの花蜜。刻んだフルーツ(マンゴーっぽい)が入ったシロップのハーフ。
 灯里のもフルーツシロップであったが、こちらは柑橘系だ。二人の氷菓子の上にはアラドのミルクと砂糖を煮て凝縮させたものが掛けられた。
 ネロのは桃のシロップだ。その芳醇な香りや、ほのかな氷の実の匂いをふんふんと嗅ぐネロ。
 いただきます、と三人で一緒に言って。
 ネロは、がぶっと一口。
 灯里と陸彦も大きくスプーンで掬って。

「甘クテ、美味シ……――!!!」
「おいしいなので……、……す」
「……っ、……と。いっぱい口に含むとキーンってするな! なんでだろうな!」

 ネロと灯里は言葉後半、ぷるぷると震え、最初に二口ぶん行った陸彦は速攻で頭がキィンとなった。
「あっはっは、灯里もネロも一緒だ」
 遅れてキィンとなった二人に少年は笑みを向ける。
「たくさん口に入れるからなのかもしれないから、ゆっくり食べれば大丈夫だ」
 な。と言う陸彦。
「ユックリ……ウン、ユックリ食ベル」
「ちょっとずつ、なのですね」
 こくんと頷いて、山となっている氷菓子を少しずつ崩していくように。
 氷菓子を食べながら話したのはこれからの予定だ。
 お祭りなので色々見て回りたいし、食べたり、飲んだり。
 けれども、メインはお土産を選び。
「食べ終わった! な? よーし、お土産買いに行こうぜ!」
 空になった器を見て、灯里たちの方もチェックする陸彦。頷きが返ってきた。
「はい。とうさまたちのおみやげ、みにいきましょうなのです」
「オ土産、何ニ、シヨウ?」
 ぱたぱたと尾を振ってネロが席を降りる。
 ワクワクとした三人の動きは軽い。
 ごちそうさまでした! と里の者と氷菓子店に手を振って。
 少年少女たちは、シェルフワの大樹祭の喧騒へと飛び込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イネス・オルティス
SPD
それにしてもなかなか素敵な言い伝えのお祭りよね
せっかくだし、私も色々まわってみましょう

そういえば硬い甲鎧虫をぶん殴ったんだし
鍛冶師に〔藪払い〕の具合を見てもらいましょうか

ここに来るまでの護衛の仕事で甲鎧虫を相手したんだけれど
ちょっと整備をお願いしたいんだけどいいかしら?
ちゃんと整備しておかないと、泣きを見るのは私だもの

恥ずかしさ耐性のあるイネスは、周りの視線を気にしません
そのビキニアーマー姿が、無意識に誘惑してしまう事がありますが
イネスにそのつもりはありません

アドリブ・絡み・可



 シェルフワの大樹祭。
 遥か昔にドラゴンが変化したとされる大樹は、都のどこからでも見ることができた。
 拡がった枝葉が麓へ影模様を描き、燦々とした陽あたりの良い場所にも涼しげな風が吹きこむ。時折花びらが落ちてくる――銀色のそれは大樹に咲くものらしい。
「それにしてもなかなか素敵な言い伝えのお祭りよね。せっかくだし、私も色々まわってみましょう」
 イネス・オルティスは、石畳を跳ねるが如くの喧騒をすり抜けた。彼女の脚にフィットするグラディエーターブーツは、イネスの歩みを軽やかな猫のようにしてくれる。
「――そうだ、薬草を買い足しておかなくてはね」
 生まれ育った里を離れ、世のために力を振るわなくてはならないという掟に従い旅をするイネスは常に身の回りのものに気を使っている。武器も整備しなければ。
 冒険者が多い屋台通りへと入り、必要な薬草を選んでいく。
 イネスが訪れた露店には良く知る薬草、そして初めて見る植物があった。
「これは香木かしら?」
「ああ、よく分かったねお嬢さん」
 人当たりのよい笑みを浮かべる女店主。イネスの姿を見て、それは優しく親しみのあるものへと変化した。
「こっちはモンスター避け、こっちは病に作用のあるもの」
 ミントのような香り、リラックスできるような香り、様々ある。
「そしてこっちは誘き寄せのものさね」
「ふぅん、色々な香りがあるのね……」
 見ていくと可愛らしい袋に入ったサシェなども売られている。シェルフワと思われる竜の刺繍がされたサシェの、心地の良い香りをしばし楽しむイネス。
「――薬草はこんなものかしら」
「どうも、まいどありさね」
 しばらく香りのある場所にいたせいだろう、店を去ったイネスから仄かに華やかな香りが立つ。
「移ってしまったわね」
 自身の赤茶色の髪をひとつまみ。陽に透ければ、夕焼け空を思わせる赤と淡金。その佇まいはどこか神性でありながら艶やかなもので、道行く人がイネスへと視線を向けた。感嘆の囁き。
 ――とはいえ、それにイネスは気付くこともなく。
「……硬い甲鎧虫をぶん殴ったんだし、鍛冶師に〔藪払い〕の具合を見てもらいましょう」
 次の目的地は職人通りにある鍛冶場である。
 大きく広い鍛冶場は職人たちの共有スペースとなっており、常に火が入っている。
 暑さの増した一画にある武器屋へと、イネスが入った。
「いらっしゃいませ。お姉さん、何か武器がいるんですか?」
 店番をしていたドワーフの少年がイネスへと声を掛け、けれどもイネスはいいえと首を振った。
「ちょっと整備をお願いしたいんだけど、いいかしら?」
「ええ、大丈夫ですよ。――親方ー! お客さんが来たよー!」
 少年の声に、ずんぐりむっくりとしたドワーフの親方が店の奥から出てくる。
 彼女が出した斧を見る親方。
「見て欲しいのはその斧だけかい?」
「ええ。ここに来るまでの護衛の仕事で甲鎧虫を相手したんだけれど、まあ当然、硬くってね」
「ああ、あいつらか。甲殻が鋼のようじゃしのぅ」
 猟兵とは違い、冒険者たちは数人がかりで時間をかけてやっと一体が倒せる。
 親方は斧刃はもちろんのこと、口金や柄舌の具合を見ていく。
「ふむふむ。打ち払うのに長けた型じゃのぉ。整備はお任せあれ」
 見ていくか? という言葉に頷きを返したイネスは、店の奥――鍛冶場へと入り、親方の仕事ぶりを眺める。
「それにしても、使ってすぐに整備に出すとは、良い冒険者さんじゃの」
「ちゃんと整備しておかないと、泣きを見るのは私だもの」
「そうだの。――意外と、刃に脂が巻いて泣きついてくる若者も多くてのぉ」
「駆け出しの冒険者かしらね」
 そういう者はまだまだひよっこの証だ。イネスの言葉に親方が笑う。
「ほいさの。仕上がった。これでどうじゃ?」
 刃を研ぎ、締め、整備してもらった藪払いを受け取ったイネスは明後日の方向へと斧を振るった。感覚として、柄は伸びるように。掛かる遠心からの先は確りと戻るように。つまり、しっくりきた。
「ええ、大丈夫。ありがとう」
 これで一安心だ。
 代金を払って、店を出るイネス。
「さて、この次は……どうしようかしらね」
 護りを兼ねたアクセサリーを見て回るのも良いし、一度、食事に行っても良いし。
 ひとまずは気ままに進んでみよう。
 さらさらと揺れる葉を抜け吹く風を、その滑らかな肌に受けてイネスは再び歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
【月風】

うわぁ!
すっげぇ美味そう
花蜜ってどんな味がすんのかな?
白って奴?でも香りよさそう
果物のシロップも美味そうだよな
苺とか桃とか
瑠碧姉さんは何にする?
って手作り練乳!やべぇ!
テンション上げ
じゃあ俺は苺に練乳
ついでに果物とか追加しちまう?
メガ盛り行っちまうか


何だコレ氷が違うのか?
かき氷専門店とか目じゃねぇし
あと練乳美味い
めっちゃ合う
幸せそう

折角だから祭見て回らね?
俺、大樹見てみてぇ
…そっか

おお…でけぇ!
元ドラゴンってのも納得だな

喧騒ぼんやり眺め
(ここが、瑠碧姉さんの…)
守れてよかったと小さく呟き
ん、ああ、いや…
優しいドラゴンだったんだろ?
悪用されなくてよかったなって
みんな楽しそうで
…よかった


泉宮・瑠碧
【月風】

理玖の様子に微笑ましく
花蜜は…
甘くてさらりとした蜜ですね

私は前日中に、加糖練乳を作って来ました
瓶と匙を出して、理玖と里の方々にもどうぞと
私も、苺に練乳で…
今は、ベリー類も美味しいので、足します

理玖の様子に自分も一口
…わ、おいひい…
氷自体も、凄く美味しい…
同じく幸せそうに

はい、見て回りましょう
一瞬だけ視線を落とし、故郷の森を思い
…大樹は、私もご挨拶したかったので

逢えば見上げて、初めまして
樹になっても、見守ってくれて…お疲れ様とありがとう

途中
ぼんやりした理玖を呼び
少し、疲れました?
そうですね
穏やかな中、眠れていると、良いなと思います
…他の子達も

…はい
そうして、人の歴史は、続いていくのですね



 大きな氷削り機に氷の実を入れてハンドルを回すと、削られた氷はふわふわと器に盛られていく。
 甘いシロップはもちろんのこと、辛いものもあり、少し汗ばむこの地域での氷菓子屋は盛況のようであった。
 陽射しで時々キラリと輝く削り氷に果実シロップの彩りが足されていく。
「うわぁ! すっげぇ美味そう」
 客人に出されていく氷菓子を見た陽向・理玖の声は、いつもより華やいでいた。
 看板を兼ねたメニュー表を眺め、
「花蜜ってどんな味がすんのかな?」
 そんな疑問を呟く。彼の様子を微笑ましく眺めていた泉宮・瑠碧が「ああ、それは……」と言葉を紡いだ。
「花蜜は、甘くてさらりとした蜜ですね」
「白とかみぞれって奴? でも香りもよさそうだよなー」
「そうですね……蜂蜜とは違う、爽やかな花のような香りがしますね」
 花蜜の氷菓子には輪切りのライムを一差し。砂糖漬けの花が添えられて、可愛らしい仕上がりの様子。
「でも果物のシロップも美味そうだよなー、苺とか桃とか」
 とろりとしたシロップと刻み漬け込まれていた果実が掛けられたそれは甘やかな香り。
「瑠碧姉さんは何にする? 俺は苺にしようかな」
「理玖、こちらも如何ですか?」
 と、瑠碧が取り出したのは前日に作ったコンデンスミルクだ。材料を買い求め、共用台所で煮詰めたもの。
 瓶に詰めたそれと匙を出し、理玖とトウケンの里の者へ「どうぞ」と差し出した。
「って手作り練乳!? やべぇ!」
 テンション上がった理玖の声に続くのは、里の若者たちの歓声であった。
「ひゃーありがてぇ!」
「冒険者さんありがとう!」
 ちょっと可愛めな氷菓子屋さんに太い声――当日、給仕をし始めて気付いたのだが、猟兵たちの手伝いも入っているものの基本は里の若者(男)ばかりの氷菓子屋である。
「私も、苺と練乳にします……あとは……」
 メニューを見て、次にカウンターに並んだ色々なものへ視線を向ける瑠碧。
「今は、ベリー類も美味しいので、足します」
 成熟期に入ったブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーと今はベリー系の実りの季節だ。
「おー、更なるトッピング! 俺も果物とか追加しよかな。んでメガ盛りで!」
「はいよー、ご注文うけたまわりー」
 どこか大衆食堂のようなノリで、氷菓子を作っていく里の者たちであった。

「旨」
 スプーンで掬って食べた氷菓子は、口に含むとすっと溶ける――その口どけに乗って違和感なく甘味が広がっていく。
「何だコレ、氷が違うのか?」
 理玖の感想に瑠碧も一口。
「……わ、おいひい……」
 冷たさが広がって、口元に指先をあてる。同時に食べたベリーもジュースのように喉を潤してくれる。
「氷自体も、凄く美味しい……」
 ウィザードが営む魔法で作った氷菓子とは違って、人の手で大事に育てた氷の実のそれは美味しいものであった。ふわふわ感を損なわないよう、盛り付けにも気が使われている。
 新雪のようなふわ氷へ差し込むスプーンも、良い意味で手応えを感じることなくふわふわをすくう。
「あと練乳美味い。めっちゃ合う」
 とろりとして甘く、優しい味だ。上機嫌な声で理玖。
 幸せそうに食べる彼の様子に、微笑む瑠碧――彼女もまた幸せそうに。


 ごちそうさまでした。そう言って里の者たちに別れを告げた【月風】の二人――理玖は瑠碧を振り返った。
「瑠碧姉さん、折角だから祭見て回らね? 俺、大樹見てみてぇ」
 どこにいても見える大樹を軽く指差し誘う理玖に、瑠碧が応える。
「はい、見て回りましょう」
 そう言って、一瞬だけ視線を落とした瑠碧は、故郷の森を想う。青の瞳が一瞬深く染まった。
「……大樹には、私もご挨拶したかったので」
「……そっか――それじゃ、行こっか」
 な? と。言葉後半は元気付けるように。歩き出した理玖に続き、瑠碧も一歩。
 大樹の場所は一目瞭然であったが、視線を落とせば、間隔をおいて石畳に刻まれたドラゴンのレリーフが旅人を導いてくれる。
 最初それを何となく眺めていた瑠碧であったが、レリーフの傍には平和を象徴するものがあることに気付く。そこは噴水広場であったり、駆け上がった坂からの見晴らしであったり。
 坂道から垣間見える根で、樹の大きさや強靭さが分かった。
「大樹、花が咲いてるんだな」
 ほら、と理玖が銀の花を指差す。拡がる枝葉が、地面に風揺れる影模様を描いていた。
 近付けば、少しずつその生きた存在を感じ取ることができ、そうやって辿り着いた場所――理玖はやや腕を広げながら大樹を見上げた。
「おお……でけぇ! 元ドラゴンってのも納得だな」
「本当、ですね」
 瑠碧も見上げ、その邂逅へ、ふと手を添えるように。
「初めまして……樹になっても、見守ってくれて……お疲れさま」
 そして、
「……ありがとう」
 声を言霊に。祈りを捧げた。

(「ここが、瑠碧姉さんの……」)
 どこか陽気に、自然と共に日々を営むアックス&ウィザーズ。空に在る群竜大陸の脅威を払い、時が経った今。改めて立つその世界。
 ――守れてよかった、と小さく理玖は呟いた。
「理玖?」
 瑠碧の呼ぶ声。
「少し、疲れました?」
「ん、……ああ、いや……」
 彼女に軽く手を振って、理玖は違う空へと目を向けた。
「優しいドラゴンだったんだろ? 悪用されなくてよかったなって」
 視線の先は、ここからは見えぬ群竜大陸がある方向――自然と、瑠碧も其方へと目を向けた。
「そうですね。穏やかな中、眠れていると、良いなと思います……他の子達も」
 やすらかにと願った。願い続けている。
「みんな楽しそうで……よかった」
 再びどこかぼんやりとした表情と声になった理玖へ瑠碧は頷く。
「……はい。そうして、人の歴史は、続いていくのですね」
 いずれ『彼ら』の眠りは新たな海へと揺蕩っていくかもしれない。そして世界に新しく芽吹き時に限りの在る生命となるのかもしれない。
 その未来の時まで、世界の時を繋げていくのは、猟兵や今生きる彼らの役目とも言えるのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】

さすがこの世界で大樹と言うと桁違いにでかいネ
まるで北欧神話の世界樹のようだ
そうそれ
根暗なドラゴンが根っこを齧っているネ

集めた素材は売ってしまっていいかな?
触覚の青い部分だけは記念に持ち帰ろう
イガイガダンゴムシって言うとかわいい

ソヨゴと一緒に屋台巡り
こんな時はいくらでも食べられるから不思議

氷菓子いいネ!
フラッペとはまた違うのかな
全部お任せ
いろんな味を試したいとお願いする
珍しいものが食べられそう

ソヨゴと並んで座って
いただきまーす!
ふむふむこれは果実のような味だけど食べたことがないネ?
そっちのも美味しそう
ソヨゴに食べさせてもらって
じゃあ僕も
はいあーん

仲良く食べている様子をスマホで記念に自撮り


城島・冬青
【橙翠】

北欧神話の大樹…知ってます知ってます!
確かユグドラシルですよね
雄大だなぁ

駆除した虫も売ってますね
こうして見るとイガイガしてるダンゴムシですね…

折角だから里の人が作った氷菓子を食べましょう
アヤネさん
店の人に声をかけ氷菓子を頼みます
シロップは…どうしようかな??UDCアースの定番かき氷シロップとは違いそうだし
仮に似たようなものがあったとしてもA&Wでわざわざ似たようなものを食するのも面白くないので
ここは里の人のおすすめでお願いします

氷菓子を買ったら席に座っていただきます
どんな味なのかな
きっと美味しいよね!
あ!アヤネさんのも一口下さいな
私のもあげますから、はいあーん♪
ふわふわでおいしーい!



「さすがこの世界で『大樹』と言うと、桁違いにでかいネ」
 都の何処からでも見上げれば目に入る大樹。
 枝葉拡がるそれを見て、アヤネ・ラグランジェが言った。祭りの始まりの日、一番最初に訪れたのはシェルフワの大樹のふもと。ちょっとしたビルのようだ。
 都の中心に位置し、眼下には建物や、向こうには草原が広がっているのが見えた。大樹自体が高台の役割をこなしている。
 根も大きく、強靭なのが分かった。燦々と差す陽射しは樹の枝葉が和らげ、アヤネや城島・冬青の足元には風揺れる影模様。
「まるで北欧神話の世界樹のようだ」
「北欧神話の大樹……知ってます知ってます! 確かユグドラシルですよね」
 雄大だなぁ、とアヤネと同じく大樹を見上げる冬青。
「そうそれ。根暗なドラゴンが根っこを齧っているネ。あのリスっぽい動物はメッセンジャーかな?」
 大樹の幹を器用に駆ける小動物を目で追いかける。
 シェルフワの大樹見学を終えて、次に向かうのは「祭り」のなか。
 少し賑やかだった大樹の麓から、喧騒へと入っていく【橙翠】の二人。飾られた花々や櫓、日常雑貨、アクセサリーなどを売る露店は勿論のこと、移動遊園地のような木造の遊び場などが設置されていてどこも盛況。とても賑やかだ。
「あ。アヤネさん、昨日売った虫が、もう売られていますよ」
 昨日通った場所で、覚えのある屋台を見つけた冬青がアヤネを呼ぶ。
 甲鎧虫が吊られていた。
「こうして見るとイガイガしてるダンゴムシですね……」
「イガイガダンゴムシって言うとかわいい……」
 アヤネが素材として記念に持ち帰ることにした触覚の青い部分は鞄の中に。
 更には、すでに加工された武具が売られている。
「へえ、磨くと銀みたいな輝きになるんだネ」
「お守りなのかな。カードみたいに加工されてますね」
 買い求めやすいよう、旅のお守りとして風竜シェルフワの加護の刻印。
「おやおや、昨日のお嬢さんたちだね。良い素材をありがとうね」
「いえ、誰かの役に立つのならその方が良いので」
 屋台のおばちゃんが言い、冬青が応じた。
 そんな風に屋台を巡って、軽食にはブリトーのようなものをベンチに座って食べた。
「テリヤキみたいに確りと味付けされてますね」
「……ちょっとさっぱりしたものも食べたくなるネ」
「さっぱり――あ。アヤネさん、折角だから里の人が作った氷菓子を食べに行きませんか?」
「氷菓子いいネ! フラッペとはまた違うのかな?」
「見てのお楽しみだとか言ってましたよね~」
 御馳走様をして、そんなことを喋りながら里の氷菓子屋へと向かう。
「こんにちはー」
「おっ、冒険者さん!」
 里の若者たちが営む氷菓子屋は、交替で猟兵たちの手伝いも入っている。お年寄りと子供たちは祭り見物へと出かけてしまっているらしい。
 看板を兼ねたメニューを見て、むむむ……といった風に眉を寄せて悩むのは冬青。
「シロップは……どうしようかな?? UDCアースの定番かき氷シロップとは違いそうだし」
 ふわふわ氷は流行りのものと同じように見える。
「仮に似たようなものがあったとしても、折角のアックス&ウィザーズでわざわざ似たようなものを食するのも面白くないですよね」
 舌の肥えたUDCアースっ子たちは、何か変わったものを食べたいらしい。
 ならば、
「それじゃ、全部お任せで」
 アヤネが里の若者へと言った。冬青も頷く。
「そうですね、ここは里の人たちのおすすめでお願いしますね!」

 お勧めそのいち。
 オーソドックスにフルーツシロップ。果実を多種刻み漬け込んだシロップをかけたもの。
 変わったものが良いということで、口に含めばぱちぱちと炭酸のように弾ける氷の実を使った。
 お勧めそのに。
 バラ水を氷の実として育て上げた、美容成分もあったりす一品。ふわふわに削った氷からは華やかなバラの香り。こちらは煮詰めた花蜜と、砂糖漬けのエディブルフラワーが添えられて見た目も可愛らしい。コンデンスミルクがお好きにどうぞと置かれた。
 アヤネと冬青は改めて里の氷菓子屋さんを見た。里から出てきた若者はむさい男衆――おにいさんだかおじさんだかが多かったはずだが――給仕をする顔ぶれは変わっていない。
「ギャップが凄いネ」
「努力したんでしょうね」
 褒めてやって。
 お勧めそのさんは、辛い氷菓子だ。
 サルサソースのようなものが掛かった氷菓子に、酸味あるライムをお好みで。
「「いただきまーす!」」
「どんな味なのかなー。あ、お勧めその二はさらっとした甘さですね」
「ふむふむ、こっちのは果実のような味だけど、食べたことがないネ?」
 種が多いのか、ベリー類を食べたような食感。ぱちぱちさせながらすぐに溶けてしまう氷を追う粒々。
「ソヨゴのも美味しそう」
 と、アヤネが言い示したのは冬青が手を添える氷菓子。
「食べますか? 私にもアヤネさんのを一口くださいね♪」
 そう言って冬青がスプーンで氷菓子を掬った。
「はいあーん♪」
 冬青に食べさせてもらって、アヤネは嬉しそうに笑む。ほろり、甘さが溶けて潤った。
「じゃあ僕も。はい、あーん」
「あーん――……、ん、ふわふわでおいしーい!」
 仲良く食べ合いっこして、記念にスマートフォンで自撮りも。
「アヤネさんの方も、良い感じに撮れました?」
「うん、もちろん」
 カメラ目線で撮ったもの、笑いあったもの、あーんの最中など色々な表情が写真として残る。
「あとで見せ合いっこしましょうね!」
 冬青の声に、アヤネは頷く。
「よし、それじゃあ食べてしまおう。このままだと溶けてしまうしネ」
 残りの氷菓子も食べて、里の者たちに別れを告げた二人は、再びシェルフワの喧騒へと軽やかな歩みで戻っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

箒星・仄々
大樹祭を目一杯楽しみましょう

まずは弾き語り
許可して下さるお店や街角で竪琴奏で
シェルフワさんの伝説を序幕に
トウケンの里での氷の実作りの苦労話
そして今回の旅の冒険談を
ミュージカル風に弾き語り

皆さんに楽しんでいただけたら
それに氷菓子の宣伝にもなるかも

ふぅ
流石にのどが渇きました
ふわふわ氷菓を堪能しましょう♪


林檎果汁をかけてはどうでしょう?
酸味が爽やかです

柚子ジャムかけの氷菓に
枇杷のコンポートも添えて
美味しいです!

もっともっと食べたいですけれど
お腹を一休みさせないと
大変なことになりそうです

弾き語りやかき氷での沢山の笑顔や喜びの声
きっとシェルフワさんが大好きだったもの
是からも大切にしていきたいです(ぽろん



「あ、ホノボノさん、今日はよろしく頼むな!」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
 声を掛けてきた里の者へと、手を振りながら箒星・仄々が応えた。
 カッツェンリートを装備した今日の仄々は『吟遊詩人』である。前日に会場で登録して、都のあちこちでの演奏許可も貰った。首に下げた許可カードには風竜シェルフワの加護と銀花が刻まれている。
「大樹祭を目一杯楽しみましょうね」
 都のどこからでも、見上げればそこに在る大樹に向かって一礼。

『そこをゆく旅人さん、シェルフワという名のドラゴン伝説を聴いていきませんか?』
 そんな仄々の口上から始まる物語。
 ぽろん。
 弦を爪弾く竪琴の音色はあたたかみのあるもので、音楽と仄々の言葉で伝承が紡がれる。
 彼の優しい声は、まるでドラゴンの穏やかな言葉そのもので、人の心をあたためた。
『強く差す陽も世界も、ドラゴンの翼のように拡がる枝葉が、大地を守ってくれるでしょう』
『大地に映る風揺れる枝葉の影模様も、皆さんの歩みを楽しいものへと』
『歩くことに疲れてしまったのなら、その喉を潤す果実をいかがですか? ひとつ、まつわるお話を語りましょう』
 時が流れゆくような歌声は、やがてトウケンの里の氷の実作りの苦労話へ。
 そして紡ぐは今回の冒険譚だ。凍雨や甲鎧虫たちの戦いは臨場感あふれるもの。
「ぎんゆーしじんさん、氷の実ってどんな実なの?」
「それは食べてのお楽しみですね。あちらの氷菓子屋さんが、美味しく加工して提供していますよ。ほら、可愛らしい大きな狼さんが見えるでしょう? あの店です」
 興味津々な子供の声に、猫の手で店の方を示す仄々。
 へえ、と都の者が開かれた屋台へ目を向けた。
「ウィザードさんが作る氷菓子とは違うのかな?」
「里の人たちが心を込めて作った氷の実です。魔法使いさんとはまたひと味違ったおいしさですよ」
 そうお勧めをして。
 食べてみようよ! と、歩き出した皆へと仄々は見送る奏でを送った。

「やあ、お疲れさま」
「ふぅ……流石にのどが渇きました」
「お、なら氷菓子はどうだ? 潤うよ」
「そうですね――お言葉に甘えて、私もふわふわ氷菓を堪能しましょう♪」
 看板を兼ねたメニューを見上げて、シロップやトッピングを選ぶ仄々。
 そこにはオススメした林檎果汁も記されている。甘やかな林檎蜜と、爽やかな酸味が味わえる一品だ。
 注文した後に席へ案内されて、待つこと少し。
 ふわふわな氷が運ばれてくる。
「いただきます♪」
 ふわふわ氷菓子はハーフにしてみた。
 林檎果汁と、柚子ジャムかけの氷菓だ。枇杷のコンポートも添えたそれをスプーンで掬う。新雪のような削氷は良い意味で手応えがない。
「――、美味しいです……!」
 ざらざらとした猫の舌にすっと溶けていく氷。柚子ジャムがジュースのように口の中に広がった。コンポートされた枇杷の柔らかな果肉は、上品な香りと増した甘味。そこへ程よく溶けていく氷たちが混ざり合う。
「もっともっと食べたいですけれど、お腹を一休みさせないと大変なことになりそうですねぇ」
 味わう仄々はのんびりとした声で言う。
「ぎんゆーしじんさん、またのどがかわいたら食べにくればいいよ」
 仄々の音を気に入ったらしき先程の子供が、傍に来て言った。大きな目をぱちぱちとさせて、そうですねと仄々は緩やかに頷いた。
 ふと、気付けば都中に爽やかな風が吹いていた。
 弾き語りで伝える仄々に、伝わってくるのは皆のたくさんの笑顔や喜びの声だ。
「きっとシェルフワさんが大好きだったものですね」
 今の時期に大樹に咲くという銀の花。皆の心が灯り咲き誇ったような花だ。
「是からも大切にしていきたいです」
 ぽろん。
 大地の様々な実りは、賑やかな声は、この奏では、大樹へと届くだろうか。
 仄々の願いをのせて、音色は風とともに流れていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レテイシャ・マグナカルタ
甲鎧虫のナイフは便利だし魔力を操る練習に持って来いみたいだな一つ作ってもらうぜ

加工の間にぶらっと散策、祭の様子を写真に収めていく
ポノがいるなら声をかけ大樹へ
元はドラゴンだったらしいぜ、エルフなら何か声とか聞こえたりするか?
自分も手を触れて、帝竜に滅ぼされた古竜ってのがいたらしいが、アンタもそうだったのか…?
生憎オレはアンタと違って荒事しか出来ねぇが、アンタの気持ちはよくわかるぜ…

その後は里の屋台を手伝うかポノもどうだ?(エプロン姿見たい)
休憩でふわふわ氷を堪能、うめぇ…
ポノに確認とって、実家のガキ達に食わせてやる分くらい持ち帰れそうなら、帰りの護衛後に里にある分から買わせてもらうかな



「邪魔するぜ」
 レテイシャ・マグナカルタが武器屋へと入る。
「いらっしゃい、冒険者さん。本日は何か武器をお求めで?」
「いや、素材の持ち込みだ。これでナイフが作れるか?」
 ドワーフのおやじがどれどれと渡された素材を検める。
「ほう、甲殻虫か」
 その触角部。
「任せてくれ。冒険者さんが満足いくように仕上げてみせよう」
 レテイシャの掌の型も取り、ドワーフのおやじが請け負った。
「出来上がるまで待つかい?」
 鍛冶場は共有スペースとなっているようで、そこを中心に武器防具屋が展開されている一画だ。見て回ることもできる。
 けれどレテイシャは首を振った。
「いや、折角だから祭り見物にでも行ってくるぜ。夕方には戻る」
 そう言って取り出したカメラを軽く振る。撮った写真は、孤児院の子供たちへの土産となるのだ。

「まずは大樹を目指して行ってみるか」
 都の何処からでも見える大樹をパチリとカメラに収める。
 一定間隔をおいて石畳に刻まれた風竜のレリーフをパチリ。華やぐ屋台、通りの空に掛けられたガーランド、撮るものが歩みを進めるたびに増えていく。
 そんな喧騒の最中、一人の猟兵を見つけるレテイシャ。
「ポノじゃないか」
「あ。レテイシャさん」
 旅は道連れなんとやら。ポノ・エトランゼと共に大樹へと向かうことにしたレテイシャ。
 大樹の麓へと行くには、ちょっとした坂をのぼっていくようだ。
「レテイシャさん、こっち、根っこが見えるわ」
「強靭な樹なんだな」
 しっかりと大地に根付くシェルフワの大樹。
 大樹に近付けば、いつしか地面には風揺れる影模様が描かれている。同じ『絵』はなく、移り変わっていく時の流れ。その一瞬をパチリと写すレテイシャ。
 あちこちへ視線を向けながら、大樹の元へ。
 見上げれば、翼のように拡がる枝葉。銀の花が咲いているのが見えた。
「元はドラゴンだったらしいぜ、エルフなら何か声とか聞こえたりするか?」
「んー、精霊の気配なら良く『聞こえる』んだけど――ああ、でも」
 ポノがレテイシャを呼ぶ。促され、大樹の幹に触れるレテイシャ。耳を添えれば、ごうごうと中で何か流れるような胎動。植物としての息吹は勿論、大地――石畳を通じて祭りの喧騒が届いているのかもしれない。
「帝竜に滅ぼされた古竜ってのがいたらしいが、アンタもそうだったのか……?」
 記憶に新しい群竜大陸での戦い。古竜平原には古竜の巨大な骨がいまも残っている。
「生憎オレはアンタと違って荒事しか出来ねぇが、アンタの気持ちはよくわかるぜ……」
 戦いなんて、ないほうがいいよな。
 どこか励ますように、レテイシャは幹をぽんぽんと叩いた。

 大樹見物の後は、トウケンの里が出す店の様子を見に行った。
「うーん、なんつーか、分かっちゃいたが……」
 レテイシャは一瞬だけ額をおさえた。
 年寄と子供たちは祭り見物へと当然行っている。氷菓子屋で働くのは里の若者たちである男衆だ。
 華やかなディスプレイ、バラ水で育てた実の氷果、添えるエディブルフラワーがメニューにあったりもする、まあ可愛らしい氷菓子屋なのではあるが――、
「むさいな」
「言っちゃなんねぇことをレテイシャさんが……!」
「これでも午前中は冒険者さんの手伝いがあったからマシだったんだよ!!」
 男衆が可愛らしいエプロンを着ての給仕。ギャップが凄かった。しょうがない、当日まで誰も気づかなかった。
「分かった、分かった、約束通り手伝う。ポノもどうだ?」
「結構むさくてびっくりしたわ。……そうね、手伝っていきましょう」
 ということで、エプロンを借りて二人で氷菓子屋の手伝いだ。
 フリルなし柄有り、フリル有りのエプロンが残っている。
「フリルエプロン姿のレテイシャさんが見たいなぁ~」
 そう言ってポノに手渡されたふりふりエプロン。レテイシャのふわふわな金髪に似合うことだろう。

 休憩では二人でふわふわ氷を堪能した。
 人気の果実コンポートを添えたもの。スプーンで掬う氷は良い意味で手応えがない。ふわふわだ。口に含めば、新雪のようなそれは直ぐに溶けシロップの甘味が広がる。
「うめぇ」
「ほんとおいしー」
 ふわふわな普通の氷、ぱちぱち炭酸のように口の中で弾ける氷と、氷の実も種類がある。
「これ……実家のガキたちにも食わせてやりたいな」
 たしかカキ氷機なるものが、実家の棚に眠っていたはず、とレテイシャ。
「氷の実は溶けにくいって話だし、大丈夫じゃないかしら?」
 そうポノが言う。専用の袋に入れれば安泰だ。
 帰りの護衛後に、里にある分を買わせてもらうことにした。
 子供たち、喜ぶわね。というポノの言葉に、レテイシャは頷く。
 お代は要りませんから、とか、里の発展のためにもきっちりと払う、といったやり取りののち、半額での購入となるのはまた別の話。
 夕方には仕上がったナイフを受け取りに。柄の握り具合を確かめる。
「持ちやすいな」
 にぎにぎ。
「ちょっと振ってみぃ」
 鍛冶師であるドワーフのおやじの言う通り、ナイフを振ってみれば『ぐっ』と伸びる感覚。
 ナイフ分、自身の腕が伸びたようにも感じた。
「魔力を込めれば切れ味も増すからな」
 合わせて作られた革鞘におさめながら、ドワーフのおやじの言葉にレテイシャは頷きを返した。
「魔力を操る練習にも持って来いみたいだな。ありがとう」
 右腰に柄がくる丈夫なナイフとは反対方向に。ひとまずは左へと装備した。
 外へと出れば、世界は暗くなり始めていて煌々とした灯があちこちに。けれども祭火は外縁部に多くあるのみだ。きっと大樹に配慮しているのだろう。
 円を描くような光の数々。
「アンタから見たこの光景は、どんな感じなんだろうな」
 飛んで確かめるのは簡単だ。
 けれども大樹だけが知ればいい光景だ――そのための祭りなのだから。地上の灯の一つとしてレテイシャはカメラに映る世界を見た。
 パチリ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

まつりん、トウケンの皆さんの処はふわ氷菓子
食べたい…(そわそわ

ん、冷たくてきゅっとして、甘い
食べながらお祭を堪能
ミルクをふわ氷にかけると更に甘さが増して
まつりんもひと口どうぞ?
こっちは猪肉のワイン煮、スペアリブなるものに、釜焼きパン
パインに葡萄、苺ジャム缶
全部まつりんと半分こ

皮布?屋台ぱわーあっぷ
楽しそうに選ぶまつりんを見てるとわたしも楽しい

人と敵対する竜もいれば、心を通わせる竜もいる
祭の人達はシェルフワや竜の事、どう思ってる?
聞いてみたい

大樹の元へ
両手を広げても足りない幹の太さ
葉から零れる光はシェルフワの微笑みのようで
まつりんの短冊に、大樹に
そっと願いをかける


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と大樹祭ー。

お仕事も終わって、おまつりん開始ー♪
最初はじーちゃんたち(?)のフワ氷!

あ、ダーツだ、やほー♪(子供たちとハイタッチで挨拶)
いい匂いの果物味、南国のと北国のと、いっこずつ!
大盛りにしてね♪

さ、炬燵屋台の皮布を探すぞー。
そうそう、この荷車を、あんな風にしたいんだー♪
風雪防御と熱源確保。結露防止に換気もね。
強度補強には、これ使えない?(甲殻をずいっと)

改造計画が一段落したら、アンちゃんと合流。
一口貰いながら大樹へ向かうよー。

触ってもいい?
えっとね。オブリビオン・フォーミュラ、倒したよ!
七夕飾りを枝に預けて、両手を合わせて祈るよ。
これからも、平和だといいね♪



 朝が来て、気付けば都はもうお祭りで賑わっている。
「お仕事も終わったし、おまつりん開始だねー♪」
「まつりん、待って」
 早速、屋台風荷車『木元村』を牽いて歩き始めた木元・祭莉を、木元・杏が追う。
 ぴったりついて行かないと、多い通りではあっという間に人にのまれてしまいそうだった。
「アンちゃん、荷車に乗ってたら?」
「ん」
 行き交う人は祭莉の屋台を避けてくれる。人形のウサミミメイド、うさみん☆を抱いて荷車に乗った杏は再び兄を呼んだ。
「まつりん、トウケンの皆さんの処はふわ氷菓子……食べたい……」
「はーい、最初の目的地はじーちゃんたちのとこだねっ」
 大通りのカーブしたところはちょっとした場があって、その一画に氷菓子屋さん。里の皆は良い場所を取れたようだ。
「あ、ダーツみっけ。やほー☆」
「おお、マツリにアン。おはようさん」
「おはよう」
 里の皆は開店準備をしているところだった。――皆、否、里の若者たち。
 お年寄りと子供たちは「じゃあいってきます」と出かけようとしている。
「あれ? どっかいくのー?」
 おはよう、と里の子供たちとハイタッチしながら祭莉が問えば、
「遊びに行くに決まってんじゃん~」
「お祭りだよ?」
 そのために来たんだからと、楽しそうに手を振って出て行った。
「? 氷菓子屋さんはダーツたちだけでする?」
 杏が不思議そうに尋ねる。
「何人か、冒険者さん達が手伝ってくれるらしいが、基本俺らだけだなぁ」
「そっか~~~、じゃ、おいらたち、お客さんだいいちごーで! いい匂いの果物味、南国のと北国のと、いっこずつ!」
 手伝うことを思わなくもなかったが、本日の双子はちょっと忙しい。
「大盛りにしてね♪」
「はいよー」
 祭莉のお客さん第一号な注文を受けて、動き出す里の者たち。
 席に案内されると同時に、ふわふわな氷菓子も届けられた。
 シロップはコンポートされたものが掛けられている。
 南国風のマンゴーっぽい滑らかな果実が添えられていて、一画にはフルーツ盛り。
 もう一つには林檎蜜とジューシーな緑の果肉。ちょっとすっぱめなベリーが添えられている。
 いただきますと二人で声を合わせて、氷をスプーンで掬ってみた。手応えのなさはふわふわな証拠だ。
「ん、――冷たくてきゅっとして、甘い……」
「おいしーねー」
 前日に作られたコンデンスミルクをふわ氷に掛ければ、更に甘さが増して優しい味に。
「まつりん、ここ、ミルクと合う」
 スプーンに掬った氷を祭莉へと差し出せば、ぱくっと素早い一口。
「じゃー、アンちゃんにも。おいしーとこあげるね」
 と、緑の甘い果肉とふわふわ氷を、祭莉は同じようにスプーンで掬って杏へと差し出せば、やっぱり素早い一口。
「ところで、マツリとアンはこれから何かあるのか?」
 ダーツの質問に二人揃って頷いた。そうだ、と何かを思いついたのか、祭莉はダーツへと尋ね始める。


「おお、ダーツたちの紹介か」
 トウケンの里がよくお世話になっているという工房を二人は訪ねた。
 でてきたドワーフの親父が、祭莉の身振り手振りな『炬燵屋台化計画』の説明を聞いてくれる。
「時々里の方にも行くんじゃが、確かにこたつ車はあるのぉ」
「そうそう、この荷車を、あんな風にしたいんだー♪」
 風雪防御と熱源確保。結露防止に、換気もね。と、祭莉とドワーフの親父のやり取り。
 まあ待て。まずは設計図が必要じゃて、とドワーフの親父が木板にペンを走らせる。
「しかしこのままだと過重になるのぉ」
「強度補強には、これ使えないかな? ソリのとことかー」
 言いながら、甲鎧虫の甲殻を抱えてくる祭莉。
「おうおう。甲鎧虫を倒しなすったのか。この素材があれば、あちこち補強もできるのぉ」
 どこか上機嫌になったドワーフの親父が、更にシャッシャッとペンを走らせた。その様子を見学しながら、おー、と感嘆の声を上げる祭莉の尻尾が揺れている。
 そんな兄の楽しそうな姿は、見ている杏も楽しくなってくるのだった。

 経過を一度夕方に、仕上がりは明日の昼頃となるらしい。設計図を確認し、改造をドワーフの親父に任せて工房を出る二人。
 探さなければならない物もある。
「さ、炬燵屋台の皮布を探すぞー」
「ぞー」
「アンちゃん、どんな皮布がいい?」
「ん…………可愛いの、かな」
「あっぷりけとか、できるかなー?」
 そんな会話をしながらインテリア雑貨の多いこの一画を見て回る祭莉。
 杏もあっちこっち、ふらふらと何かに惹かれるように見て回る。
「はい、まつりん」
「? アンちゃ、あーん」
 声を掛けられて振り向けばずずいっと迫りくるスペアリブ。反射的に祭莉は大きく口を開けた。窯焼きパンで挟んだものらしい。口に入れて分かった。
「おいひい」
「猪なお肉を葡萄ワインで煮たもの。みたい」
 柔らかく、口の中でほろろとなる肉。
 はんぶんこ。そう言って杏も一緒に食べる。
 探す時も全力、食べる時も全力と、パワフルに祭りを楽しむ双子。
 良さげな皮布を見つけて購入した祭莉は、それを紐で括って背負う。
「まつりん」
「あー」
 再び杏に声を掛けられて、振り向くと共に口を開けば、入ってきたのはジャムサンドだった。
 見れば杏の荷物も多くなっている。イチゴジャム、フルーツのカップ盛りなどを持っていた。
 シェルフワらしきレリーフを見つけたり、噴水広場で休んだり、目当ての物を買いながら二人が向かう先は何処からでも見える大樹の麓だ。
(「人と敵対する竜がいれば、心を通わせる竜もいる」)
 祭の人たちは、シェルフワやドラゴンのことをどう思っているのだろう。それを聞いてみたくて、杏は時々歩みを止める。
「そうさね、モンスターのドラゴンは恐ろしい存在だろう? けれどシェルフワさまはみんなを守ってくれる存在だから――」
 と、都のおばさん。
「彼は風竜だからね。風にのせた願いは、遠くまで届けたりするのさ」
 と、これは郵便屋さん。『シェルフワの加護がありますように』とよく文面で使われているらしい。
『強く差す陽も世界も、ドラゴンの翼のように拡がる枝葉が、大地を守ってくれるでしょう』
 吟遊詩人の紡ぐ物語も耳にして。
 色々な風竜像を聞きながら、少しずつ坂を上がっていき、杏たちは大樹へと辿り着く。
 詩のように、翼の如く拡がった枝葉が風に揺れ、地面に影模様を作っている。今は開花の時期らしく、銀の花が咲いているのが見えた。
「大きい」
 杏の両手を広げても足りない幹の太さ。
 葉から零れる光はシェルフワの微笑みのようで、キラキラと。杏は眩しそうに目を瞬かせた。
 祭りの間だけ大樹の根元にも装飾が置かれている。それは人形であったり、収穫物であったり。氷の実も見つけた。
 祭莉が幹に触れてみれば、硬く、けれども柔らかだった。
 杏がそっと耳を添わせてみると、ごうごうとした音。大樹としての息吹、そして、祭りの喧騒が大地を伝いここまで届いているのだろう。
「皆の気持ち、届いてる」
 微笑む杏。
「――えっとね。オブリビオン・フォーミュラ、倒したよ!」
 群竜大陸での戦い。敵となったドラゴンはたくさんいた。シェルフワは古竜平原のような古竜だったのかもしれない。
 アックス&ウィザーズに新たな平穏が訪れた。きっとシェルフワも喜んでいることだろう。
 祭莉は持ってきた七夕飾りを大樹の盛り上がった根の部分に預けて、両手を合わせた。
 祈る。
「これからも、平和だといいね♪」
 祭莉の言葉に、同じことが書かれた短冊に、そして大樹に――杏も、目を閉じてそっと願いをかけた。
 平和であるように。
 それは誓いのようなものなのかもしれない。
 未来へと繋げていくのは、今の時を生きる者たちなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クララ・リンドヴァル
※アドリブ連携OK
大樹祭、遠方から色々な種族の人達が来てますね。
さて、換金できる場所は……うわわっ!

【WIZ】
ドロップアイテム「甲鎧虫の甲殻」をお金に換えて
杖を突き突き、なんとか雑踏を抜け出します。
私に人混みは無理でした……。

気分を落ち着かせる為、静かな通りへと足を向けます。
お祭り独特の空気は感じつつも、
裏通りを歩いたり、静かな場所でお店を探したりするのが
個人的な楽しみだったりするのでした。

祭りの喧噪も大樹も遠ざかってしまいましたね……。
異世界の人々の装いや、店の飾りつけの数々は
いつまでも見飽きる事がありません。遠くからなら大丈夫。

もし余所で見ない本が売っていたら
手を出してみようと思います。



 一夜明け、大樹祭の日。
 結構早くに目覚めたクララ・リンドヴァルであったが、気付けば既に都は喧騒が広がりつつあった。
「す……凄い……遠方から色々な種族の人達が来てますね」
 フェアリー、ドワーフ、エルフと種族は様々、旅人、冒険者、買い付けの商人、観光客と行き交う人の目的も様々だ。
「…………」
 宿の扉を開いて外を見たクララは、一旦後退しパタンと閉めた。そろそろと宿の中に戻る。
 ん? とカウンターにいた宿の女将が、不思議そうな表情でクララを見た。
「あの……、すみません、女将さん」
「おや、お客さん、どうしたのかね?」
「――この辺りで、ドロップアイテムを換金できる場所は、ありますか?」
 クララが背負う革袋を見て、ああ、と何かを察したかのような女将。
「そうさね、この都の鍛冶場は共有で大きな場所なんだけど、そこを中心に、武器屋防具、工房とあるんさね。売るのならそこがいい。地図にお勧めの工房を書いてあげるよ」
「あ、ありがとうございます」
「えーと、大通りを突っ切らなきゃいけないんだけど、大丈夫かい……?」
「……頑張ります……」
 そう言って、再びクララは宿の扉を開いた。深呼吸を一つ。喧騒の中へと飛び込む心で歩き始める。

 大通りを突っ切って、職人通りへ。
 表に面した店は売り専門の武器防具、雑貨屋などを過ぎ、やっと工房を営む店たちが見えてくる。
 今の時期は大樹の開花時期で、護印の物を作るには最適らしく、ここも人は行き交っていた。
 どこか人に流されるように辿り着いたクララは、紹介された工房に甲鎧虫の甲殻を買い取ってもらい現金を手にする。
「…………」
 昼も近くなり更に人が多くなってきた。このまま来た道を戻りたくないけれど、違う道を目指すも、そこに辿り着くまでが…………なんというか……遠い。クララはちょっぴり重めの溜息を吐いたのち、一歩。
 ウィザードロッドを突いて人に流されそうな自身を止めつつ、なるべく目立たないように喧騒を抜けようとする。
 が、通りかかった商人チームを避けると、今度は走ってくる子供たち。
「……うわわっ」
「えっ、ごめんなさ、ってクララねーちゃんじゃん!」
 ぶつかった子供の勢いに、よろけるクララの手を、ぱしっと掴む子供の手。目を瞬かせて、ぶれた焦点を合わせると見覚えのある子供たち。
「……? あ、トウケンの里の……」
「わーごめんごめん。何してんの?」
「あっちの……静かな通りに行こうと」
 しています、と紡ぐ言葉は間に合わず、子供たちに誘導されるクララ。
「ありがとうございます」
「いや、こっちこそぶつかっちゃってごめんね。もう大丈夫?」
 道の隅に寄り、問われて頷けばへらりと笑みを返す子供たち。今は楽しく祭り見物をしているようだ。
「もう走らないようにするねー」
 束の間の出逢いに手を振って別れ、子供たちが再び喧騒の中へと入っていく。今度はちゃんと歩いている。
「しっかりした子たちでしたね……」
 里の将来も安泰だろう。見送ったクララは微笑む。
 先程よりも静かな細い通りを横切って、路地へ。不思議と都の何処からでも見える大樹へと向かうほど、静かな雰囲気となっていく。――ある意味、境界線があるのだろう。
 翼のように拡がり、枝葉の影が落ちる一帯は涼しくて静謐な空気を漂わせていた。
 店が無いわけではない。
 看板に銀のような造花が装飾されてちゃんとお祭り仕様なのだが、通る人はまばら。クララのようにローブを纏う者をよく見かけた。
「祭りの喧噪からは、すっかり遠ざかってしまいましたね……」
 路地を抜けて見つけた通りは、迷路のように。坂があり、通ってもいいのか分からない狭い通路もある。
 ふと地面にドラゴンのレリーフが刻まれているのに気付いた。
 ふわっと涼しい風が吹く――風の通り道なのだろう。大樹が咲かせる銀の花がいくつか、道に落ちていた。
「あら、お嬢さんは旅人さん?」
 いきなり話しかけられて、びくっとしつつ、クララはこくんと頷いた。
 見れば通りに面した窓からお姉さんが。
「幸運ねぇ、ここは『穴場』だったりするのよ。折角だから、うちの店を見てみない?」
「……え、っと……」
「仕入れた古書を誰かに見てもらいたくってねー」
「お邪魔します」
 そわっとしたクララは、ちょっとだけ歩みも軽やかなものに。
「本を探していたの?」
「そうですね、何か、見たことの無い本があれば……と、いつも思っています」
 古い紙、インクの匂い。
 製本されたものもあれば、巻物状のものもある。
 お姉さん――店主が仕入れた古書というのは、風にまつわる伝承を集めたものであった。
 その中に風竜シェルフワの名もあった。護印の記録、竜血の作用など、興味深く読ませて貰うクララ。
 祭りの喧騒は遠く、けれども窓には大樹の方から吹いてくる涼やかな風が、緑と花の匂い、僅かな人の気配を運び入れる。
 穏やかな時間を過ごし、気になった数冊の本を換金したばかりの銀貨で購入した。
 大事に本を抱えて店をでれば、昼もとうに過ぎ、夕方近く。
「……少し、遠回りして戻りましょうか」
 喧騒も落ち着き始める頃だろうか。夜の灯が少しずつ増えていく、静かな道を歩くのも良いかもしれない。

 ぽろん。と、どこからか竪琴の音色が聴こえてきた。
 うたわれる伝承歌。音色は異国のものであったが、物語として紡がれるのは平和を願うもの。
 異国であれ、異世界であれ、願いは同じようなものなのかもしれない。
(「好きなものも、どの世界に訪れても、つい求めてしまいますしね……」)
 微笑み、そう想って。
 異世界の本を手に、クララは帰路へとつくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月16日


挿絵イラスト