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鏡ノ向コウ誰ソ彼(作者 鳴森
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●鏡館、コチラ
 日中は楽しく華やかだった遊園地の音楽も、陽が傾くにつれて哀愁を誘うメロディーへと変化していた。
 至る所に設置されたスピーカーから流れるノイズ混じりの園内放送をバックに、楽しい夢を終え出入り口であるゲートへと向かっていく者、まだもう少し夢の世界を楽しもうと次のアトラクションに向かう者、様々な者達が行き交う中で囁かれている噂があった。

 ――夕暮れ時、遊園地の奥にある鏡館では不思議な体験が出来るんだって。
 ――迷路の中で会いたい人に会えるかもしれないらしいよ。

 誰が言い始めたかすらあやふやな噂話だが、興味を持つ者の心を擽るには充分であるのだろう。
 一人、また一人と遊園地の奥に建てられている青い屋根の西洋館へと向かい、そうして誰もその館からは出てこなかった。


「鏡のおやしき……、ミラーハウスって言うのかな」
 小さく折り畳まれた遊園地のリーフレットを広げながら、レーヴ・プリエール(物語る亡霊・f11944)は描かれている地図の一か所を指す。
 青い屋根に白い壁のその屋敷は小さくない造りらしく、地図からは屋敷だけではなく裏庭や青い屋根の小さな塔が繋がっている事も見て取れる。
 レーヴ曰く、屋敷の中は鏡張りの迷路になっているのだという。
「昔から鏡の迷路だったんだよ。本当だったらね、迷っても十分くらいで出て来れるんだ。すぐに終わっちゃうし、昔からある場所だから……今はあまり人が来なくなってたみたい。だけど……」

 ――人が来るようになって、誰も出て来なくなるユメを見たんだ。
 囁くような声で、見えた予知をレーヴは伝え始めるのであった。

 その館――鏡館はUDCの呪いのようなものにより、入ると出られなくなる迷路になっているのだと言う。
「はじめは普通の鏡の迷路だから、楽しんで良いよ。そっちの方が良いかな、うん」
 迷路を進んでいくと地図から見える庭や塔に行く事も出来る様になっている。
 館の庭は小さいながらも、仄かに夕陽色に染まる青紫の紫陽花やブルーサルビア達が迷い込んだ者を歓迎してくれるであろう。
 塔に続く扉を開いたなら、鏡で作られた長い螺旋階段を登る事にはなるであろうが、登りきった先にある小部屋から茜に染まる遊園地を一望する事も出来るという。
「いっぱい楽しんでいるとね、どこからか音が聞こえたり、人影が見えたりするんだ」
 遊園地の園内放送ではない音。
 耳を澄まして聞けば、焦がれるあの人の声かもしれない。
 ふと、目の前の鏡にうつる世界の向こう側。そこにもう会えない人の影を見るかもしれない。
 合わせ鏡の先に映るのは、知る筈の無い未来や過去の自分の姿。

 怪異は突然現れて、そうして迷路の奥へと猟兵達を誘うだろう。

「レーヴが見たのはここまで。ごめんね、あまり知らせてあげられなくて。何が起きるか分からないからね、気を付けて行ってね」
 琥珀色の瞳を伏せながら詫びを口にするも、緩やかに微笑んだ。





第3章 集団戦 『呪いの額縁』

POW ●待ち伏せ擬態状態
全身を【霊的にも外見的にも一般的な額縁】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD ●作品モデルの複製
自身が【破壊される危険】を感じると、レベル×1体の【肖像画に描かれている存在】が召喚される。肖像画に描かれている存在は破壊される危険を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ ●無機物の芸術家
【額縁の中心】から【対象を急速に引き寄せる魔力】を放ち、【キャンバスに取り込み肖像画に変える事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 霧の中を歩み進める者。
 鏡の見せる幻に足を止める者。
 鏡館に迷い込んだ猟兵達の前にソレは唐突に現れるであろう。
 本来であれば、出口へと通じる最後の長い廊下に飾られている筈の絵画。その一枚一枚がまるで意志を持ったかのように、時には獲物を狙う獣の様に息を潜め、猟兵達を襲い掛かろうとしていた。
春霞・遙
気持ちが悪い。
幻とは言え、大切にしていた、暖かい物語を、自分の意志で血に濡らした。
この館の呪いを絶つためには必要だったんだ。
まるであの惨劇が成ってしまったようで。
いや、あそこにいたオブリビオンは銀の弾丸に倒れた。

吐き気がする。
できるものなら【カガリビノマジナイ】で鏡館ごと燃やし尽くしてしまいたい気分です。
そんな大層なことは出来ないので地面に火を点けたハシバミの枝を落として無理やり体を動かして敵を叩き割ろうとします。
素手でも銃でも杖でも、傷を負っても反撃を許しても、もし小児という守るべき対象が相手になるとしても、動けなくなるまで壊そうとします。

ああ、頭が痛い。
帰ったら、全部忘れて眠りたい。


●凍てつく心
 春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)の中を満たすのは不快感のみであった。
 霧の見せた幻は、遙自身が大切にしていたもの。
 多くの猟兵達が力を合わせ起こす事の出来た奇跡。それを嘲笑う様な幻に、遙の眉間には深い皺が刻まれていく。
 あの幻は鏡館の呪いを断つために必要なものであった、そう頭は理解していても、心はあの幻を厭い拒絶する。叶うのであれば今すぐ、この館ごと全て焼き払い浄化してしまいたい。実現が困難な願いだと理解しながらも、遙はそうは思わずにはいられなかった。
「……あのオブリビオンは弾丸に倒れた。だからあれは現実では無い。霧が見せた幻……」
 自身に言い聞かせる様に言葉を重ねながら霧の中を歩む遙の側を、一陣の風が吹き抜けた。
 霧の中を切り裂く様に、確実に遙を狙ったそれは一枚の絵画。
「……ッ!」
 草原で幼子達が遊んでいる。
 呪われた額縁に収められた、その絵画に遙の胸中は揺らいでしまう。
 絵画は不気味な程、ゆっくりと遙の方を向けば再び回転しながら遙へと猛スピードで向かってくる。
 金縛りにあったように避けることの出来ない遙の瞳が捕らえたのは、キャンバスから伸びる不気味な腕のような魔力。まるで靄の様なそれは、子供の腕を模している様に見えて。
 絵画へ投げ放とうと火をつけたハシバミの枝をもつ指先は心なしか震え硬直してしまったように上手く動かす事が出来ず、指先付近まで枝が燃え肌を焼く熱とその反射により、無理矢理に体を動かし横へと跳び避ける。
「どうして……」
 それは無意識の言葉であった。
 止めどなく湧いてくる吐き気を堪えながら、再びハシバミの枝に火を付ければ遙を狙ってくる絵画に投げつける。
 一つ当たっても小さな焦げ跡が出来た程度であった。
 二つ当たって幼子の顔が一つ潰れた。
 僅かな動揺を察された様に、絵画に掴まれた腕が絵の中に引きずり込まれれば呪詛を帯びた魔力に傷つけられ、遙の身体は汚染される。
 胃の中のものがせり上がる不快感、気持ちの悪さと痛む頭。
 早く終わらせて帰りたいとさえ願ってしまう。
 ――ここで起きた事を忘れて眠りたい、と。
 まるで身体内、心の中から凍てついてしまうような感覚を抱えながら、遙はわざと絵画が掴みやすいように腕を伸ばした。
「……これで終わりにしましょう」
 まるで遙を逃さない様に掴んでくる幾つもの腕を見つめながら、遙がポケットから取り出したのは物理的な破壊を攻撃力を持つ拳銃であった。
 痛みすら鈍くなった様な感覚を感じながら、遙はその引き金を可能な限り引き続ける。
 何発撃ったのかもう数も数えてはいない。
 穴だらけになった絵画は力を失ったように地面へ落ち粉々になり、残されたのは遙だけであった。
成功 🔵🔵🔴

黒柳・朔良
目の前の鏡を割って出てきたのは額縁に入った絵か
誰を描いているかは知らんが、『あの方』の姿を騙ったその罪は償ってもらうぞ

選択UCを使用し、【目立たない】ように『額縁』を破壊していく
変化させる暇を与えず、危険すら感じさせる間もなく
壊して、壊して、壊して……
最後の一枚に描かれていた『あの方』の姿に一瞬その手が止まる
たとえこれが『怪異』によって描かれた紛い物だとしても
『あの方』を、親愛なる主を、この手にかけることは出来るはずもない

だから、これは違うのだ
『あの方』がここにいるはずもないことは私がよく知っている
そう気付いたから、最後のそれも壊して
これでようやく、終わらせることが出来た


●偽りの親愛
 目の前の鏡を割った先。
 新たな道を作り出した黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)前には始めの鏡の迷路がまるで当たり前の様に広がっていた。
 朔良の出た先はやや広めの部屋となっており、その壁には何枚もの絵画が飾られている。
 黒い服を着た人物、青いドレスを着た人物、それぞれ一枚一枚に描かれている人物の特徴はあるものの、そのどれもがはっきりとした顔が描かれてはいない、どこかの誰かの姿をぼんやりと描いたものであった。
 けれどもたった一枚、部屋の一番奥にある一番大きな一枚は違う。
 見覚えのある黒い服、曖昧な笑みを浮かべる顔立ちは他の絵画よりもはっきりと細かく描かれている。まるで朔良の焦がれる『あの方』とよく似た、けれども明らかに違う誰かの姿に朔良は思わず、得物の柄をぎゅっと握り込む。
「何だ、これは……。誰を描ているかは知らんが、『あの方』の姿を騙った罪。償ってもらおう」
 そうして朔良は駆け出した。
 絵画自体に罪は無い。けれどもその絵画を納める額縁は、今回の騒ぎの元凶となっているのだから。
「『影』の獲物は何処にいる?」
 言葉をひとつずつ音にする程に、朔良の存在自体が薄くなり比例する様に烏を思わせる漆黒の小太刀がより暗殺に向いた形へと変化していく。
「『影』に殺されるのは……」
 揺らぎ始めた存在感すら利用して、朔良は目立たぬ様に部屋に飾られた絵画達を破壊していく。
 引き裂かれるキャンバスに、額縁を縦横無尽に切り刻めば、床に落ちそれ以上は動かなくなった。
「――誰?」
 一枚、二枚目は気付かれる事無く始末し、三枚目と四枚目は宙に浮かび朔良を攻撃してくるも避けた際に出来た隙を的確に突く事で破壊する。
 最後に残るのは『あの人』とよく似た一枚。
 容赦なくキャンバス諸共、額縁を破壊する腕が止まる。
「……」
 例えこれが作り出された偽りであっても、朔良の大切な『あの方――親愛なる主』であれば、敵に向けるべき刃を向ける事は許されず出来る筈が無い。
 浮かび上がった絵画は、その標的を朔良に決めたのであろう。ブーメランのように高速で回転をしながら朔良の方へと幾度も突撃を仕掛けてくる、
 攻撃が出来なければ、この限られた空間で避ける事しか出来ず、絵画はじりじりと朔良の体力を追い詰めていく。
「……違う」
 朔良の『あの方』は、朔良が朔良として存在するその全てであった。
 会える筈が無い人。
 だからこそ、会う事を望んでしまった。
「違う、違う、違う。ここに『あの方』はいる筈もない。来ることも無い」
 目の前に立ちふさがる絵画を否定する様に口を開き、吐き出す言葉は朔良自身にも跳ね返っていく。
「そんな事……私が誰より知っていただろう?」
 元より『あの方』の姿がここに並ぶ事こそあり得ないのだから。
 朔良は地面を蹴り上げ、一気に距離を詰めると大きなキャンバスを斜めに切り裂いた。返す刃で額縁を鋭利に切断し、どの絵画よりも破壊し尽くす。
 欠片となったキャンバスは、もう何が描かれていたのかすら判別がつかなくなっていた。
大成功 🔵🔵🔵

サンディ・ノックス
他人の心を踏み躙り欲望を満たしていた、邪悪な力と完全に同化していた頃の自分に出会った
俺の心を今一番満たしているヒトが「僕だけを見てほしい、ずっと二人きりでここに居よう」と言った
…色々やってくれたね

過去の自分は反省する機会になったし許してあげるけど
彼の姿で自分本位の発言という侮辱は許さない
体は粉々に砕き魂は喰らって何も残さないよ

指定UCを発動、無数の両鎌槍で全方位から攻めたてる
へぇ…キャンバスに取り込みきれると思ってるの?
お前達を無に帰す欲は尽きないし、憎きお前達を食べたくてたまらないから俺の肉体は際限なく両鎌槍へと生まれ変わって滅ぼしにいくよ

お前達の魔力と俺の魔力と体力、どちらが勝つか根競べだ


●蹂躙されし親愛
 透明な境界越しに映し出された姿は過去の己自身であった。
 宿していた昏く邪悪なモノと融けあい、ひとつとなったサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は正にカタチを得た悪。優しさを見失い、欲望を満たす為に他者の心を踏みにじり荒していた過去。出会って喜ばしくはないものの、迷路の中を歩みながら映し出される景色を振り返り、反省する時間はたっぷりと与えられた。
「俺の過去を見せたのはまだ許すよ。全部事実だし過ぎてしまった事は変えられないからね」
 壊したばかりのキャンパスを見下ろす瞳は冷たく、新たにサンディを取り囲む様に現れた大小様々な絵画達を前にその口元は好戦的に弧を描く。
「僕だけを見て、ずっと二人きりでここに居よう。……ははっ、よくそんな事を彼に言わせてくれたね」
 乾いた笑い声はその瞳と同じく温かな温度は皆無であり、唇から一つずつ言葉を吐く程に、全てを飲み込もうとする強欲で昏く黒い悪意がサンディの肉体を換えていく。
 霧の中で出会った、本当の彼はそんな事を決して言わない。
 自分本位な事を厭い決して口にしない彼を、ここに巣食う怪異は侮辱したのだ。
「本当に色々やってくれたね。……へぇ、キャンパスに取り込みきれると思っているの?お前達ごときに?」
 サンディの側にある大きな額縁が戦慄くと額縁の中心からサンディへと伸ばされるのは魔力で作られた無数の見えぬ腕。不可視であるも空気の動く気配からその動きを見切れば、サンディは暗夜色の剣を斜に振り下ろし腕を断つ。
「やってごらんよ。俺は彼を穢したお前達が憎くてたまらない。粉々にして、魂もキャンパスも何もかも喰らって無に帰してあげるよ」
 先の一撃が合図であったのか、怪異達は一斉に動き始めた。
 背後から回転しながら高速で飛んで来る額縁達を避け続ければ、それを待っていたかの様に怪異はサンディを三方向から挟み、指先から肘に掛けた腕の一部をキャンパスの中へと取り込んだ。
 のっぺりとした絵画となった手を気にする事無く、サンディはそのまま腕を振り回し周囲の額縁を壊しなが嗤う。
「たったこれだけでお腹いっぱいなの?呆れた。お前達がのんびりしている間に俺はちゃんと準備をしていたのに」
 騒ぎに気が付いて集まってきているのか、先程よりも数を増す絵画達の中心でサンディは青い瞳を細めながら天井の見えぬ上空へと視線を向けた。
 漆黒の十文字槍。
 それはサンディの肉体を悪意にし作られる武器のひとつ。
 数え切れぬ槍の穂先は、サンディと怪異のいる地上に向けられていた。
「あれだけじゃない。この身体がある限り、肉は際限なくお前達を滅ぼす両鎌槍に生まれ変わるよ」
 呪われた額縁が現れたとしても、サンディの槍はサンディの魔力と体力が尽きない限り作り出す事が出来る。
 この戦いがどれ程長引いたとしても、サンディには勝利する自信があった。
 否、負ける事等許されないのだ。
 サンディの心を一番満たす彼の為にも。
「逃げ場なんてない。どこまでも追い掛けるよ」
 それはまるで指揮者の様に。
 振り下ろした腕と共に無数の槍が地上へと降り注ぎ、執拗な程に額縁達を破壊する。
大成功 🔵🔵🔵