いけ猟兵! 異世界序盤転送無双変!
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「剣と魔法と冒険の世界、アックス&ウィザーズ。まさにRPGの世界そのままでワクワクしますよね」
転送の準備を進めながら嬉乃・抹茶子(至高の食を求めて・f07810)は猟兵達に語り掛ける。
「ですが、この世界も実はピンキリなんです。
神話のような力を行使する魔王や、大地を喰らう伝説のドラゴンもいれば――。
そう、まるでゲーム序盤のような低レベルな場所も、中には存在するのです……」
つまり、これから猟兵達が転送されるのは、まさにそんな場所である。
アックス&ウィザーズの絶海孤島。その名も『ジョ・バーン島』。
世間から隔絶されたガラパゴスのようなその島に、大海の広さを知らぬ井の中の蛙どもがメッチャひしめいて生活している。
そして、今この島では、『謎の精兵』と名乗る謎の軍隊が、イキり全開で島の住人を苦しめているのだ!!
「この島の中での基準では『謎の精兵』は強力な兵器を持つ軍隊なのですが、実のところ世界的な標準で言えば、哀しいほどの超ザコでしかありません……」
だが、それよりさらに弱いジョ・バーン島の住人達にとっては、彼らは恐るべき脅威となる。
所詮、強さとは相対評価でしかないのだ。
「不当な支配に苦しむ住人の方々を救うために、皆さんの力を貸してください」
猟兵達に向き直り、ペコリと一礼する抹茶子。
扉を潜れば、そこは異世界序盤のような島。
やりすぎて住人の方が腰を抜かさないように注意する必要があるだろう。
河流まお
河流まおと申します。精一杯努めさせて頂きますので宜しくお願い致します。
いわゆるネタ依頼です。
自重しないほうが楽しいリプレイになるかもしれません。
RPGで適当に例えると、街の住人はレベル1。『謎の精兵』はレベル3ってところです。
もはやただのザコですが、ジョ・バーン島の中ではガチで最強の軍隊です。
皆さんの力で、どうか平和な島を取り戻してください。
プレイングは随時受付です。もっと詳しい情報はMSページにまとめていますので、気が向いたらご一読ください。
では、皆さまの無双をお待ちしております。
第1章 冒険
『勇者の聖剣伝説』
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POW : 体力勝負!地道に聞き込みや現場の張り込みなどで調査
SPD : 技量勝負!現場の調査や痕跡を調べて手がかりを見つける
WIZ : 頭脳勝負!伝承を調べたり動機を推理したりして真実を探る
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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異界への扉を潜ると、そこは石造りの建物の中だった。
周囲を見渡すと、ジョ・バーン自警団第一駐屯地と仰々しく書かれた垂れ幕が目に留まる。
「では、このまま手をこまねいて奴らの支配を黙認するというのかッ!」
すぐ隣の会議室と書かれた部屋から怒号が響き渡る。
「貴殿の言いたいことは解る……だが、奴らに逆らったところで、すぐに殺されてしまうだけだ……奴等は、化物だ……」
苦渋に満ちた老年男性の声が漏れてくる。
「畜生! どうすりゃいいんだ……ッ!」
どうやら、島の住人が『謎の精兵』に対する会議をしているらしい。
敵の圧倒的な武力に怯え、奮い立てない彼ら。
まず猟兵達は、彼ら自警団に自らの力をアピールしその信頼を勝ち得る必要がありそうだ。
神代・凶津
こんなRPGゲームの序盤みたいな場所があるんだな相棒。
ここの事件はRPGで例えるならレベルが70はあるであろう俺達が華麗に解決してやろうぜッ!
「・・・あんまり調子に乗らないでね。」
どうやら自警団が対策会議をしているらしいから乗り込むか。
あんたら、どうやらお困りの様だな。
この俺達が力を貸してやるぜッ!
「・・・私達、凄く怪しくない?」
そんな馬鹿な、相棒ッ!?
取り敢えず自警団の連中と模擬戦をして俺達の力を証明してやろうぜ。
全員いっぺんにかかってきな。
攻撃を見切って避けて妖刀の峰打ちで一気になぎ払ってやるぜ。
「・・・ちょっとやり過ぎじゃない?」
あ、あれ?
相棒、幻朧桜花で回復だ回復ッ!
【アドリブ歓迎】
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重苦しい沈黙に包まれた自警団の会議室。
あまりに絶望的な『謎の精兵』との戦力差。
残っている選択肢はこの地獄のような支配を受け入れるか、価値があるのかどうかも定かではない蛮勇を見せてあっさりと始末されるか二つに一つ。
だがその時――。
絶望の中に差す一筋の光明があった。
『あんたら、どうやらお困りの様だなッ!!』
バーンッと扉を開け放って現れたのは黒髪の艶やかな巫女姿の少女である。
「き、きみは――?」
自警団の面々が目を丸めたのは突然の闖入者の登場に驚いたというのもあるが――。
なにより先程の声が『男の声』にしか聞こえなかったからである。
「――ん!?」
え、でも女の子にしか見えない。
まさか、声が厳つい系の女子なのか――?
『オイコラ、なんだ人をジロジロ見まわしやがって』
少女が手に持った真っ赤な鬼の面、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が牙を剥く。
「ヒッ、喋った!?」
騒然とする会議室。
腹話術とかそんなチャチなものじゃ断じてねぇ! 普通に喋るぞコイツ!
「……私達、凄く怪しくない?」
『そんな馬鹿な、相棒ッ!?』
巫女姿の少女こと神代・桜が静かに呟くと、凶津がちょっと傷ついたかのような声をあげる。
どうして怪しくないと思ったのか。
まぁこの二人に限らず、完全に不審者集団の猟兵達である。
「……失礼ですが、会議の内容は聞かせて頂きました……」
『この俺達が力を貸してやるぜッ!』
自信たっぷりに歯を剥く凶津の姿に、自警団のおっさんは互いの顔を見合わせる。
「気持ちは有難いが……貴殿らは、奴らがどれだけ危険なのかをまるで解っていない――」
自警団の団長と思われる壮年のおっさんが重々しく告げる。
「この島を護る我々自警団の精鋭をもってしても、奴等にはまるで歯が立たなかったのだ……!」
悔しそうにガンっとテーブルを叩く団長。すすり泣くその他大勢。
『……お、おう。まぁそう言わずに、まずは俺達をテストするってのはどうだ?』
「テスト……? 貴殿らが?」
己の耳を疑うかのように、ピクリと反応する団長。
「良いだろう……それで貴殿らの気が済むのならば……。
だが、我々は誉れ高き自警団第一部隊。たとえ女子供といえど、手加減はせぬぞ――!」
覇気を纏いながら団長が立ち上がる!
こうして、自警団によるテストが始まるのだった。
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自警団の面々と共に建物を出ると、そこにはのどかな草原が広がっていた。
ポカポカの太陽。爽やかな風に誘われるように視線を遠くに映せば、クッソ弱そうなモンスターが平和そうに草を食んでいる。
『こんなRPGゲームの序盤みたいな場所があるんだな、相棒』
「……うん」
まるで絵に描いた様な序盤っぷりだった。このままおつかいクエストが始まればもう満点である。
「ではテストを開始する!」
バッとマントを翻しながら、高らかに宣言する団長。
『さーて、俺達の力を証明してやろうぜ』
「……あんまり調子に乗らないでね」
心配混じりで眉尻を下げながら桜。
この場合、心配なのはモチロン自警団のおっさん達の安否である。
スッと鬼の仮面を被る桜。
凶津と桜、二人で一つ。これが彼らの戦闘スタイルである。
「先鋒、前へ!」
精悍な顔立ちをした自警団のおっさんの一人が進み出る。
『全員いっぺんにでもいいんだぜ?』
無銘の妖刀で肩口をトントンと叩きながら凶津。
「面白い冗談だ、ご客人……。見れば君も剣士の様だ」
先鋒のおっさんがニヒルに笑う。
「我が剣速、その眼に見えるかッ!?」
カッコよく言い放ち、先鋒のおっさんが突撃してくる。
『……なぁ』
「……うん」
見ていて悲しくなるほどの遅さだった。
まず腰は引けてるし、両腕は剣の重量に完全に負けている。そのままバランスを崩して仰向けに転倒するのではないかとこちらが心配になってくる。
『……なんか、生まれたての小鹿みてーだな』
「……しっ、ダメよ……そんなこと」
もはや、一刻も早く引導を渡してやることこそがせめてもの慈悲だった。
『んじゃ、まぁ、そういうことで』
踏み込みの動作と共に、凶津の姿が消失する。
「――なッ!?」
先鋒のおっさんが目を見開く。おっさんの眼には一陣の風が吹き抜けたようにしか映らなかった。
『安心しな。峰打ちだ』
納刀と同時に、先鋒のおっさんが膝から崩れ落ちる。
それはまさに、一瞬の出来事だった。
「……ちょっとやり過ぎじゃない?」
仮面を外した桜が、先鋒のおっさんを助け起こす。
おっさんは完全に白目を剥いて、ヤバいぐらいに痙攣していた。
『あ、あれ? 相棒、幻朧桜花で回復だ、回復ッ!』
アタフタしながら凶津。
ともあれ、これで1勝である。
大成功
🔵🔵🔵
リウティナ・スピネルレッド
ここがジョ・バーン島!この島でまた壮大な冒険を……なんかすぐ終わりそうだなぁ……。
とりあえず、自警団のみんなに島を助けに来たって猛烈にアピールするよ!
信じてくれそうになかったらUCでそこらにある岩や、木をどーん!しまくるよ!これで信じて……あれ?なんかドン引きされてる?脅してないよ!助けたいだけだよ!
※アドリブ、連携可
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自警団の方々の信用を得るために、まずはその実力を示すことになった猟兵達。
自警団の団長に案内されながら詰め所を出ると、そこには爽やかな草原が広がっていた。
「わあ……ここがジョ・バーン島!」
思わず感嘆の声を上げるリウティナ・スピネルレッド(一般冒険者(自称)・f26107)。
サラサラと草を薙ぐ風の音色。
抜けるような青空と燦々と輝く太陽。
遠くへと目を凝らせば、草原の先に街があるのが見て取れる。
それはまるで、冒険の始まりを予感させるような――。絵に描いた様な序盤っぷりであった。
サラサラッと手帳に記録を書き込むリウティナ。
見たこと。感じたこと。そして出会った人々のこと。
過去の記憶を失ったリウティナにとって、世界はいつだって新鮮で、様々な驚きに満ち溢れているのだ。
「この島でまた壮大な冒険を……」
ペンを口元に寄せながら大冒険の予感に思いを馳せるリウティナであったが――。
「勝負あり! 第一戦、勝者は猟兵組!」
恐ろしいほどにあっさりと終わった先鋒戦を観戦してリウティナは「うーん……」と唸る。
「なんかすぐ終わりそうだなぁ……。この冒険」
冒険譚としては、圧倒的にスペクタクルに欠けていた。
そう、あまりにも敵が弱すぎる……。
「次鋒! 前へ!」
「えっ、もうわたしの出番!?」
出番が回ってくるのが早すぎる。秒殺すぎてメモに書き込む時間がない展開の速さである。
「オイオイ、俺の相手はお嬢ちゃんかい?」
巨漢の自警団のおっさんが「やれやれ」と肩を竦める。
「お嬢ちゃん、悪いことは言わねぇ。あの『謎の精兵』どもはとんでもねぇバケモンだ……。この力自慢の俺ですら全く歯が立たなかったんだからな……」
力こぶを見せつけながらも、あらくれ自警団員は悔しそうに歯を噛む。
「大丈夫だよ! そいつら悪者なんでしょ? なら、このリウちゃんに任せて~!」
微笑むリウティナに、あらくれ自警団員は困ったような笑顔で返す。
「そうはいってもなぁ……」
話はどこまでいっても平行線。結局のところ、実力を示す他は無さそうである。
「よーし、じゃ、見ててね!」
近場に手ごろな岩があるのを発見し、リウティナは歩み寄る。
リウティナの背丈の倍以上はある大岩だ。
「オイオイ、お嬢ちゃんまさか――」
やめとけって、という顔であらくれ自警団員。
「いくよ~!」
愛用のロングソードを抜き放ち、天高く大上段に掲げるリウティナ。
すうっと小さく息を吸い、一気に叩きつける!
「どーん!」
その声と共に地響きが起こる。まるで雷が落ちたかのような轟音が響き渡り岩が破壊された。
「……え?」
パラパラと小雨のように砕けた岩の細かい破片が降り注いでくる。
木っ端微塵。そう表現するしかなかった。
「今……えっ? 何?」
目の前で起きた出来事に理解が追い付いていないらしい。あらくれ自警団員が唇を震わせながら呟く。
「今のはリウちゃんアタックだよ!!」
単純で重い【武器】の一撃を叩きつけるリウちゃんアタック。なお直撃地点の周辺地形はこのように木っ端みじんに破壊される。
「えと……聞きたいのは技名じゃなくてですね……」
思わず敬語になるあらくれ。
もし、このまま次鋒戦が始まったらどうなるのだろうか?
もしリウちゃんアタックを喰らったら、自分はどうなってしまうのだろう?
あらくれに戦慄が走る。
「どーん! どーん!」
次の一撃で大樹がスナック菓子のようにあっさりとへし折れる。
更に次の一撃で草原にクレーターが穿たれる。
「これで信じて……あれ?」
すでにあらくれは失神していた。勝負は始まる前に決着を迎える。
ざわっ……とした自警団の視線がリウティナに突き刺さる。
「なんかドン引きされてる? 脅してないよ! 助けたいだけだよ!」
必死にそうアピールするもののリウティナだったが、自警団の皆さんがその後リウティナに話しかけるときは完全に敬語になってしまうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
本人たちは真剣で悲痛でも、はたから見りゃギャグだってこたぁ、往々にしてよくあんだよなぁ。
バカにする気はねえし、お遊びにする気もねえ。いつもどおり行かしてもらわぁな。
強さを印象づけるってぇハナシだが、俺はなまっちろいし筋肉もねえ。なもんで、召喚士って方向で行こう。
おいで、ヒュー坊。首は9ツ、体高6m弱の、そりゃあもう見る目にも恐ろしい猛毒の怪蛇さ。だてに神話に語られてねえや。
その頭の上に腰掛けて表れりゃア、戦力とみなすにゃ十分だろォ。
念のため、ショックを弱めるためにも見た目をふんわりデフォルメしとくか。てめぇらも威嚇しないように。いいな? よォし、いい子だ。
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自警団の信頼を得るために、まずはその実力を示すことになった猟兵達。
自警団の団長に案内されながら詰め所を出ると――。
「――おっと、こいつはまた」
朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が息を飲みながら呟く。
そこには爽やかな草原が広がっていた。
サラサラと揺れる草が風を形作る。
春風のような温かな風が逢真の黒髪を優しく揺らした。
「……なんとも健康的な光景だねぇ」
燦々と輝く太陽の恵みを、ほんの少しだけ恨めしそうに見上げながら逢真。
病毒を司る神である逢真にとっては、眩しいくらいの光景だ。
遠くに視線を向ければ、草原の先に街があるのが見て取れる。
「人口千人規模ってところかねぇ」
絶海の孤島という閉じられた自然環境の円環の中に、突如として現れたオブリビオン。
面倒ではあるが、『帳尻合わせ』が必要だろうと、こうして逢真が出張ってきたというわけだ。
「次鋒戦、勝負あり! 勝者は猟兵組!」
「って、オイオイ……展開早過ぎやしねぇかい?」
逢真がこの島について考察を深める暇も無く、出番はすぐに回ってくる。
一応、観戦はしていたが自警団は悲しいほどに弱かった。
「本人たちは真剣で悲痛でも、はたから見りゃギャグだってこたぁ、往々にしてよくあんだよなぁ」
吐息と共に煙管から煙を吹かせば、爽やかな風に乗って流れて消えてゆく。
「まぁ、バカにする気はねえし、お遊びにする気もねえ。いつもどおり行かしてもらわぁな」
ゆらりと陽炎のように進み出る逢真。
相対して敵側から出てくるのは自警団の中でも異彩を放つローブを纏った男だ。
「二勝して勢いに乗っているようだが、この私は一筋縄ではいかぬぞ」
スッと杖をあげてその男が指し示したのは、訓練用の木人形である。
「我が魔術、見せてやろうッ!!」
自警団魔術師が「ハァアアア!」と魔力を練り上げてゆく!
「原初の炎を司る混沌の主よ! 我が呼びかけに応じてその力を貸したまえ!」
ボッと魔術師の右手から火球が生み出される。
テニスボールに灯油を沁み込ませて燃やした感じを想像して頂ければ、それに近い。
「喰らえ! 我が魔力の奔流を! ファイヤーボール!!」
木人形を狙って放たれた火球は、小さな焦げ跡を木製のボディに刻み込んだ。
「――」
どうだ! と言わんばかりの視線を魔術師から送られて、コメントに詰まる逢真。
「……そうさなぁ。強さを印象づけるってぇハナシだが、俺はなまっちろいし筋肉もねえ。なもんで、召喚士って方向で行こうか」
せっかくだから、敵の魔術勝負に乗ることにした逢真。
「おいで、ヒュー坊」
逢真がスッと右手を薙ぐと、その足元に闇色の沼が広がる。
そして、その沼からゆっくりと顔を出すのは――。
首は9ツ、体高6m弱の見る目にも恐ろしい猛毒の怪蛇。
まるで神話に語られる怪物そのままの姿だ。
その怪蛇の上に腰かけながら、自警団の面々を見下ろす逢真。
自警団の面々は皆一様に表情を凍り付かせ、文字通り蛇に睨まれた蛙のようになっていた。
「あ~、ちっとやりすぎちまったかな……」
念のため、ショックを弱めるためにも見た目をふんわりデフォルメしておいたのだが……。
失神してしまった魔術師の男を見るに、まだまだ刺激が強かったらしい。
瞬膜をパチパチさせながらヒュドラーは小首を傾げて逢真の指示を待っている。
「呼んじまった後でなんだが、既に勝負あったみてぇだ。
てめぇらもこれ以上は威嚇しないように。いいな? よォし、いい子だ」
眷属たる怪蛇を撫でながら、逢真はゆっくりとヒュドラーを帰還させてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
謎の精兵――果たして何者なのか。
何にせよ、平穏な島を脅かす輩には少し灸を据えに参りましょう。
◆
自警団の面々に呼び掛け、精兵らの居場所を尋ねます。
自分は彼らを誅しに参った者と。
不審に思われるか、敵わないと見做されるなら……分かりやすい形で武威を示しましょうか。
屋外に出て、『逆鉾』――口径百匁の大鉄砲を羅刹の【怪力】で扱ってみせるか、後は【太阿の剣】で地面を砕いてみせるか。
別に大したことではないのですが……何かおかしなところでもありましたかな……?
うまく信頼を得られたら、詳しい事情や、彼らが今どこにいるかを聞き出してみます。
もし近くで悪事を働こうとしていれば、即座に阻止してくれましょう。
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服従か、それとも玉砕か――。
重苦しい沈黙に支配された自警団の会議室に乗り込んでゆく猟兵達。
「き、貴殿らは――?」
自警団のメンバーは突然の闖入者に初めは面食らっていたものの――。
「自分は彼らを誅しに参った者です。どうか精兵らの居場所を教えては頂けないでしょうか?」
礼節を重んじる鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)が丁寧に『謎の精兵』の討伐を申し出るものの、自警団の面々は皆一様に絶望に染まった乾いた笑みを浮かべた。
「ご客人……。助太刀の申し出は有難いが――」
自警団の団長である壮年の男が苦々しく答える。
「貴殿らがそれぞれ、並々ならぬ使い手であることは感じております……。
ですが――。あの精兵共もまた、実力の底すら見えぬ化物……」
恐怖と悔しさに身を震わせながら団長。
正直なところ、グリモア猟兵からの事前情報ではどっちもどっちな弱さのはずなのだが……。
きっと彼等の中では歴然とした実力差が存在するのだろう。
「縁も所縁もない貴殿らに命までも賭けさせるわけにはいきません」
「……ふむ……」
と、思案する景正。
頑固な男だ。なかなか好感の持てる人物ではあるのだが、今回のような件では少々厄介でもある。
「結局のところ、分かりやすい形で武威を示す他ないようですね」
このままでは平行線であると景正。
他の猟兵達も同じ結論に至ったようである。
猟兵達が『謎の精兵』と戦うに足りるかどうか、テストをしてくれ、と申し出ると団長もそれで頷きを返すのだった。
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自警団の団長に案内されながら詰め所を出ると、そこには爽やかな草原が広がっていた。
空を見上げれば燦々とした太陽が輝き、大地に視線を映せば風がサラサラと草を薙いでゆくのが見える。
「良い島ですね」
サムライエンパイアで領地領民を預かる身として素直な感想が漏れる。
これほど穏やかな土地であれば、きっと農耕と牧畜が主産業なのだろう。
「ええ、自慢の故郷ですよ」
少しはにかむ様な笑顔を見せる団長。
「奴等、『謎の精兵』が現れてから、すっかり変わってしまいましたがね」
団長の視線を追って草原の先を見やれば、遠くに街の姿を発見できる。
「……」
恐らく、猟兵達が来るまでに幾度か略奪を受けているのだろう。『謎の精兵』による破壊の痕があるのが見て取れた。
蒼炎のような静かな怒りを灯す景正。
「それでは、始めましょうか」
自警団との力比べが始まると猟兵達はそれぞれの方法で自らの実力を示してゆく。
かなり実力差があることも手伝ってテストはサクサクと進み、あっという間に景正の番まで回ってくる。
「出番ですか。……さて、どうしたものか」
対戦相手である自警団の男が身構えてくるが、景正は思案するように顎元に手を添えたまま。
正直、怪我でもさせてしまっては気の毒だった。
ならばこの方法なら、と思い至ったのが――。
「――あ、あんた、そりゃ一体……!」
景正が何気なく取り出した『火縄銃』を見て、対戦相手の男が唖然とした声を上げる。
いや、それを火縄銃と生易しく呼んでいいのかどうか――。
全長約九尺四寸、口径百匁の対城火縄銃『逆鉾』。
本来ならば数人掛りで運搬、照準、射撃を行う大砲のような代物を――。
景正は『片手で持ち上げた』のである。
「別に大したことではないのですが……何かおかしなところでもありましたかな……?」
まさに鬼神の如き膂力。
言葉通り事も無げに、あくまで涼やかな景正を見て対戦相手の男は口を金魚のようにパクパクさせる。
続いて【太阿の剣】で地面を砕いて見せられれば、戦う前から男が降参しても咎めるものなど居やしない。
「お、おい……もしかしたら彼等なら『謎の精兵』に勝てるのでは……?」
「う、うむ……」
ザワザワと自警団たちからそんな声が漏れ聞こえてくる。
自警団の信用を勝ち得た景正が改めて事情を問うと、『謎の精兵』は明日、上納金を取り立てに街までやってくるとのことである。
「謎の精兵――果たして何者なのか」
自警団に案内されて街に辿り着くと、圧倒的な武力に虐げられ疲弊した住民の姿が見て取れた。
「何にせよ、平穏な島を脅かす輩には少し灸を据えてやるとしましょうか」
たとえ、自らの領地領民でなくとも悪政を見過ごすことは景正には出来ない。
刀に決意を込めて、景正は明日の戦いに備えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
マーロン・サンダーバード
SPD
やれやれ、信頼を勝ち取るためとはいえあんまり力を見せびらかすってのは
…楽しいよな!何やろっかな!
などと言いながら黄金の仮面をかぶったイケメンが自警団にやってくるわけだ
どういう反応が返ってきても答えは一つだ
「俺は太陽の使者サンダーバード! 平和と自由を愛する男だ!
で、ワルい奴らがいて困ってるみたいじゃないか。どうだい、一つガンマンを雇うってのは」
多分カッコよすぎて怪しまれると思うからまずは銃の腕を見てもらいたいね
適当に的を6つ並べて、だ…「六連発の黄金銃」で全部ぶち抜く!
【クイックドロウ】には自信があるんだ、正確さにもな
「何って……一瞬で6発撃っただけだけど?」
イキりアピールもしとこう
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「やれやれ、信頼を勝ち取るためとはいえ――」
異界の門からヌッと顔を出したのは黄金の仮面を被った謎の男、マーロン・サンダーバード(『サンダーバード』・f18492)。
「あんまり力を見せびらかすってのは……。楽しいよな! 何やろっかな!」
もうめっちゃノリノリである。
さて、会議室から漏れ聞こえてくるのは、悪党に虐げられる一般人達のよくあるパターンである。
「お~お~、随分ともめていらっしゃる」
ここは一発景気づけに、明るく元気にご挨拶すべき
「俺は太陽の使者サンダーバード! 平和と自由を愛する男だ!」
自警団の皆さんのギョッとした視線がマーロンに集まる。
「おおおお、お前は一体何者だ!?」
「フッ、どうやら多分カッコよすぎて怪しまれているようだな」
OK,OK。その反応は想定の範囲内さ。
どんなヒーローだって最初は不審者と紙一重。
街の住人に受け入れられるために大切なのは、いつだって信頼と実績ってヤツだ。
「で、ワルい奴らがいて困ってるみたいじゃないか。どうだい、一つガンマンを雇うってのは」
シュルルルルっと黄金銃を回転させながらマーロンがそう提案すると、自警団の面々は顔を見合わせる。
「も、申し出はありがたいのですが」
気弱そうな新人自警団がおずおずと進み出る。
「見ず知らずのあなた方に、命まで賭けさせるわけには――。
正直なところ、すでに金目の物は殆どが『謎の精兵』どもに奪われており、我々にはあなた方を雇うための契約金すら用意できない状態なのです」
うつむく自警団の男達。
「え~……じゃあタダでいいよ別に」
そもそも貰う気無かったし、とテキトーに応えるマーロン。
「そ、そういうわけには」
「じゃあ、成功報酬ってことでどう? 敵を倒せばお金は返ってくるんでしょ?」
その自信たっぷりのマーロンの様子に、自警団の面々は一瞬言葉を失う。
「し、失礼ながら、あなた方はあの軍隊の強さをご存じでない。
奴等も銃使いでありますし、何より人数はあなた方の比ではない」
真面目だな~、コイツ。と思いながらマーロン。
とはいえ、このままでは平行線である。
「まずは銃の腕を見てもらいたいね」
マーロンが改めてそう提案すると、自警団たちは戸惑いながらも頷くのだった。
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自警団の団長に案内されながら詰め所を出ると、そこには爽やかな草原が広がっていた。
「お、いいねぇ。太陽サンサンじゃない」
青空を見上げながら背筋を伸ばすマーロン。
「んじゃ、早速始めようか。
えーと、さっきの新人っぽいキミとお隣の5人。小銭は持ってるかい?」
「ええ、それぐらいなら」
やっぱりカツアゲだろうか、思いながらもとりあえずマーロンの言葉に従う自警団6人。
「OK、じゃあ、いっせーのせでそのコインを弾いてくれ。俺は後ろを向いてるからさ」
手品でも始まるのだろうか、と顔を見合わせながら自警団たちはコインを取り出す。
「は、はあ、了解です。では――いっせーのせっ!」
渇いた金属音と共に6つのコインが青空に向けて弾かれる。
「瞬きするなよ、一瞬だぜ! GOLDEN GUN!!」
マーロンが振り向くと同時、ホルスターから黄金銃が抜き放たれる。
「――!?」
その言葉通り、全ては一瞬。
銃声と小気味よい金属が青空の下で響き渡る。
「い、今のは、な、なんだ?」
呆然としながら自警団の面々。
「何って……一瞬で6発撃っただけだけど?」
にわかには信じがたいことを平然と言ってのけるマーロン。
同時に弾かれた6つのコイン全てを、彼は一瞬で撃ち抜いたのだ。
そして――。
「そんな、ま、まさか、嘘だろ――」
草原に落下したコインを恐る恐る拾い上げる新人自警団。
思わず指先が震えるのを止められなかった。
コインが正確に真ん中を撃ち抜かれ、まるで『穴開き硬貨』のようになっていたのだ。
速度、そして正確性――。とても人間技とは思えなかった。
「記念硬貨だ。とっておいてよ」
事も無げに言うマーロンに自警団たちはガクガクと頷く。
もしやとんでもないヒーローが味方についてくれたのではないか、と思いながら。
大成功
🔵🔵🔵
鳴海・静音
お、おう?絶海の孤島っつーから気になって来てみりゃ…
ま、関係ねェカタギは「俺」も「私」も助けるべきだって思ってるしなァ
この船長に任せておきな、力を貸してやるぜ
…ビビらせねェように住人の信用を得ろってかァ?
………いや、無理だろ(亡霊の手下達を見つつ)
「海賊」に「亡霊」だぞ!?グリードオーシャンなら兎も角、A&Wじゃ無理だろォ…
…アー、よし、考え方を変えるか
こいつ等"鼓舞"して何とかなると思わせるように"コミュ力"発揮して演説すんぜ
大丈夫だ、俺たち海賊…じゃねェ…猟兵に任せとけ!
野郎共も話を合わせな!…下手に剣当てただけで呪いでヤベェだろうしなァ…
※協力・アドリブ歓迎
手下共の言動等はお好きにどうぞ
●
海賊帽子の位置を直しながら、草原を見渡す少女、鳴海・静音(不思議の国の亡霊船長・f19460)姿がある。
「絶海の孤島っつーから気になって来てみりゃ……」
いつの間にやら猟兵達が自警団に実力テストをされる展開になってしまって吐息を一つ。
「テストなんてまどろっこしいことしてねぇで、ただその『謎の精兵』とやらブッ飛ばせばいい話だろうによぅ~……」
草原に寝転びながら、頬杖をつく静音。
「そうは言ってもお頭、結構広そうな島ですし、アテも無く敵を探すのも大変ですぜ」
亡霊の手下がなだめると、静音は「わーってるよ」と口を尖らせる。
「んで、どうでした? この島は」
「ハズレだな~」
自分の世界に帰るために航海を続けている静音。
なかなか綺麗で美しい島ではあるが、静音の記憶に触れるような場所ではなかった。
「では、もう用事は済みやしたかねぇ?」
ニヤリと意地悪く問いかける手下。
あ~、コイツ分かってて聞いてやがるな、と静音。
「ま、関係ねェカタギは『俺』も『私』も助けるべきだって思ってるしなァ。
事のついでだ、この船長に任せておきな、力を貸してやるぜ」
頭を掻きながらよっと身を起こすと、手下達は「それでこそお頭だ!」と満足そうに笑う。
さて――。
とは言え、だ。
「……ビビらせねェように住人の信用を得ろってかァ? ……いや、無理だろ」
手下の亡霊たちを改めて見る静音。
「『海賊』に『亡霊』だぞ!? グリードオーシャンなら兎も角、A&Wじゃ無理だろォ……」
思わず頭を抱える静音。
つーか、「へへ……」って感じで鼻を擦りながらまんざらでもない顔するんじゃねぇ。
ほぼアウトなの亡霊であるお前らのせいだからな。
うーん、うーん……。
「……アー、よし、考え方を変えるか」
自警団の奴らの話を統合すると、敵である『謎の精兵』ってやつらは軍隊だそうである。
これまで幾人かの猟兵が自警団に実力を示しているものの、未だに団長が迷っているのは『圧倒的な敵の数』によるところが大きいのかもしれない。
それならば――。俺の"鼓舞"で何とかなるように思わせてやりゃあいい話だ。
「おうおう、聞きやがれ! てめぇら!」
その辺にあった岩を壇上にして、静音は大声を震わせる。
「大丈夫だ、俺たち海賊……じゃねェ……猟兵に任せとけ!」
パチンと指を弾くと、静音の背後からブワッと亡霊の手下たちが飛び出してゆく。
数えきれないほどの亡霊の群れ。
敵ならばそりゃ恐ろしいだろうが、これが全部味方だってんなら、数による安心感を与えられる……はずだ。
「おい! 野郎共も話を合わせな!」
アピールが足りてねぇぞ! と静音が耳打ちすると海賊の亡霊たちはそれぞれが得意技を披露してゆく。
短剣のジャグリング、ラッパの演奏、そして円陣組んでの陽気なダンス――。
大道芸人一座かよ、と静音は頭を抱えるが……。
「団長、もしかしたら彼らがいれば――」
「うむ……」
自警団の面々の警戒心を解き、数においての劣勢はないことを印象付けることには成功したようだった。
大成功
🔵🔵🔵
喰狼・シス
へぇ・・・凶悪な輩が跋扈する場所もあればここみたいな所もあるのね。・・まぁ、それでさえ苦労してるようだけども。
こんにちは。所謂他の人達と同じで問題の解消に協力して良いって者よ?
ん〜、力の証明辺りはした方が良いかしら?
・・嫌よ、人の相手はしないわ。壊れても良いなら構わないけど。
そうね、広い地形や大岩があるのならルガー・ルーを篭手の形に変形させてUC使って一発ぶん殴るわ。
これで良いかしら?それとも・・誰か手合わせする?
【アドリブ歓迎】
●
重苦しい沈黙が落ちた会議室。
服従か、それとも玉砕か――。
どちらにしても絶望しかないその選択を、選ぶことが出来ずに皆が口をつぐむ。
頃合いを見計らって、他の猟兵達と共に喰狼・シス(No."9"66・f25533)も会議室に乗り込んでゆく。
「あ、あなた方は――」
自警団の者達の視線が猟兵達へと集まる。
「こんにちは。所謂他の人達と同じで問題の解消に協力して良いって者よ?」
長い艶のある黒髪をなびかせながら、シスは自警団に協力を申し出る。
「も、申し出はありがたいのだが――。
見ず知らずのご客人に命を賭けさせるわけにはいきませぬ」
自警団の団長と思われる壮年の男性が答える。
「貴殿らも腕が立つ冒険者であることは感じる――。
だが、奴等『謎の精兵』も実力の底すら見せぬ化物であるのです」
「……」
返答に困るシス。グリモア猟兵の話では敵はただのクソザコとの話だったが――。
自警団の者達からすれば、『謎の精兵』も雲の上の存在ということなのだろう。
「ん〜、力の証明辺りはした方が良いかしら?」
このまま話し合ったところで平行線となりそうなのでシスは自分たちをテストするように申し出る。
「貴殿らがそれで満足するのであれば――」
互いに顔を見合わせながらも自警団がその提案を飲んでくる。
「じゃあ早速だけど始めましょう」
スッと踵を返すシスに、慌てて自警団の者達も続くのだった。
●
団長に案内されながら詰め所を出ると、そこには爽やかな草原が広がっていた。
空を見上げれば太陽が燦々と輝いており、シスは思わず目を細める。
「眩しいくらいね……」
手を太陽に掲げながら、青空を見上げるシス。
長らく暗い牢獄に囚われていた身としては、未だに外の明るさに馴染みきれないものがある。
「……みんな、無事に逃げれたかな?」
かつて共に暮らした奴隷仲間一人一人の顔を思い浮かべながら、シスはポツリと寂しそうに呟く。
ようやく手に入れた自由。広がった世界。
これからどうしていけばいいのかは、まだ解らない。
あるいは路頭に迷ってこのまま野垂れ死ぬことになる可能性だってある。
生きるのも死ぬのも、全ては自分の手に委ねられているのだ――。
「でも、諦めるって選択肢は無いわ」
ギュッと拳を握るシス。
何か自分なりの目標を見つけるまで、しばらくはこの猟兵稼業をしてみるのも良いだろう。
そんなことを考えていると――。
「勝負あり! 勝者は猟兵組!」
自警団によるテストは思いの外サクサクと進み、直ぐにシスの出番が回ってくることになる。
自警団側から進み出てきたのは、先ほどの壮年の男……自警団団長その人であった。
「最終戦は私が相手になろう」
スラッとロングソードを抜き放つ団長。自警団メンバーの期待に満ちた表情から察するに、実力としても彼は頭一つ抜けているらしい。
だが――。
「……嫌よ、人の相手はしないわ。壊れても良いなら構わないけど」
傷つけられてきたのだ。誰かを傷つけることなんて御免だった。
「そうね、あの岩が丁度いいかしら」
鍵剣『ルガー・ルー』を抜き放ちながら、手近な大岩を指し示すシス。
ルガー・ルーがシスの意思に応えて、篭手へと変形してゆく。
右手を引いて、腰打めに構えるシス。
「――!」
裂帛の気合と共に正拳突きが放たれると、大岩が轟音と共に爆ぜる。
中心部を吹き飛ばされた大岩は、パラパラと破片を零しながらドーナツのような形へと変っていた。
「これで良いかしら? それとも……手合わせする?」
再び問うシスに、団長は苦笑を浮かべながら「いや、十分だ」と応える。
「貴殿らに賭けさせて頂こう。この島の未来と、我々の命運を――」
街に案内されることになった猟兵達。
自警団の者達の話では明日、『謎の精兵』たちが街に取り立てに来るとのことである。
決戦に備えて、猟兵達は街でそれぞれ身体を休めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『謎の精兵』
|
POW : 防衛陣形
対象のユーベルコードに対し【防衛の陣形になって銃弾 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
SPD : 弾幕攻撃
レベル分の1秒で【初期型の銃 】を発射できる。
WIZ : 妖精の怒り
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
イラスト:ロミナ毅流
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リウティナ・スピネルレッド
(ゴクリ)……この人達が謎の精兵!つよ……いの?う、う~ん。
まぁいっか!島のみんなが困ってるの事実だし、なんとかしなきゃだね!
【見切り】を使って攻撃を交わしつつ、【力溜め】からのUCで弾幕攻撃を防御しつつ攻撃するよ!
これ以上攻撃するのは流石にちょっとかわいそうな気がしてきたら止めようかな。
これでちゃんと反省してくれない……かなぁ。
●
翌日に現れるという『謎の精兵』を迎え撃つため、街で一泊することになった猟兵達。
「う~ん、美味しい!」
チーズとパン、そして干し肉にミルク。
簡素ながら新鮮な朝食を頬張りながらリウティナ・スピネルレッド(廻る冒険家・f26107)は瞳を輝かせる。
「それはなによりです。この街は牧畜が産業ですから、乳製品が唯一の自慢なんですよ」
リウティナを泊めてくれたのは、力比べの時に対戦相手だったあのあらくれ自警団員であった。
「ほら、リウティナちゃん。こうやって暖炉でチーズ炙ると美味しいわよ~」
あらくれ自警団員の奥さんは、まるで新しい娘が出来たかのようなはしゃぎ様である。
パチパチと薪が焦げる音。香ばしい香りと共に、とろーりと蕩けてゆくチーズ。
家族がいたらこんな感じなのかな、と少しだけ考えるリウティナ。
どんなに思い出そうとしても、過去の記憶は靄がかかったままである。
自分の家族……これまであまり考えていなかったけど――。
こうして様々な『世界を渡る冒険』を続けていれば、いつか出会うことが出来るのかもしれない――。
そんなことを考えていたら――。
カーン! カーン! カーン!
と、街の中央にある見張り台からけたたましい鐘の音が響いてきて、リウティナは現実に引き戻される。
「来たぞ! 『謎の精兵』どもだ!」
朝の穏やかな時間は打ち破られ、街は瞬く間に緊張した雰囲気に包まれる。
「よーし、お仕事の時間だね!」
ロングソードを手に取り、玄関口へ向かうリウティナ。
あらくれ自警団員は申し訳なさそうに、そして奥さんはどこか心配そうにリウティナを見送る。
「大丈夫だよ! このリウちゃんに任せてー!」
ドンと胸を叩いて見得を張るリウティナ。
さて、これが冒険の第一歩とするならば――。この冒険譚の始まりに相応しい言葉があるはずだ。
「いってくるね!」
夫妻に手を振りながら、リウティナはその一歩を踏み出すのだった。
●
街を取り囲むようにして侵入してきた『謎の精兵』たち。
その数は数千……いや、もしかしたら万に届くかもしれない大軍であった。
「オラオラ~! 金の用意は出来たかよォおお!!」
目抜き通りの先に精兵の一団を発見したリウティナ。
「……この人達が謎の精兵!?」
思わずゴクリと息を飲むリウティナ。
「あ~ん? なんだ小娘。見ねえ顔だなァ? テメ~余所もんかぁ?」
ガン飛ばし全開で絡んでくる精兵共。
「余所者なら教えてやるぜ! 俺達こそがあの最強の軍隊! 『謎の精兵』様よ!」
ウェーイ! と騒ぎ立てる精兵の一団。
自ら名乗ってくれたので確認の手間が省けた。
「それ! ぐーるぐるーー!!」
走ってきた勢いそのままに、大回転斬り【ティーフォソニック】を放つリウティナ。
竜巻が敵の一団を文字通り吹き飛ばしてゆく。
「うぐおあああああッ!!!」
悲鳴をあげながら早朝の空を舞う精兵共。それはもう、悲しいほどの弱さだった。
「最強軍隊……? つよ……いの? う、う~ん」
雑草のように吹き飛んだ雑兵どもに思わず小首を傾げるリウティナ。
「まぁいっか! 島のみんなが困ってるの事実だし、なんとかしなきゃだね!」
見れば、通りの先から数えきれないほどの増援がやってくる。
軍隊を名乗るだけあって、なかなか統率された集団のようである。
「やりやがったな! 撃て撃て!」
瞬く間に目抜き通りは銃弾が飛び交う戦場と化してゆく。
射線から敵の攻撃を見切りながら、再びティーフォソニックを放つために力を溜めてゆくリウティナ。
思いっきり勢いをつけて、敵の前線を打ち破ると敵が驚愕の表情を浮かべる。
「バ、バカな――!?」
きっとこれまで自分達より強いものと出会ったことが無かったのだろう。
「これでちゃんと反省してくれない……かなぁ」
吹き荒れる暴風となって敵を数百人単位で吹き飛ばしながら、なんだか敵がちょっとかわいそうになるリウティナだった。
大成功
🔵🔵🔵
マーロン・サンダーバード
話によれば実力のほうはアレらしいけど、いつだって怖いのはラッキーヒットってね
俺も相棒のダニエルも、勇敢さにはいつだって不自由してるのさ
【地形の利用】で巧みに【迷彩】効果を活かしてこの太陽の黄金銃の必殺の射程まで近寄るぞ
さぁて、精兵だか煎餅だか知らねえが太陽の力ってやつを見せてやる!
【クイックドロウ】からの【先制攻撃】でガンガン撃ちぬいていくぜ
ガンマン同士のバトルってのは先に抜いて先に撃ったほうが偉いんだぜ、わかる?
わかったなら今さら銃を抜けても【カウンター】でやられるってもわかるかい?
ワルいことすりゃ太陽が見てるのさ
俺の名は太陽の使者サンダーバード、妖精に代わってお仕置きをする男だ!
●
『謎の精兵』を迎え撃つため、街で一泊することになった猟兵達。
「あの……こんな場所で良かったのでありましょうか?」
おずおずと新人自警団員がマーロン・サンダーバード(『サンダーバード』・f18492)に問いかける。
街の中心部にある見張り台で夜を明かしながら、マーロンは敵の襲来に備えていた。
「気にすんなって。美味しいツマミは揃っているしさ」
新人クンが持ってきた干し肉とチーズを肴にしながらホロ酔い気分で答えるマーロン。
「あんたは食べないのかい?」
「いえ、私は――」
緊張で青ざめた顔の新人自警団員。きっと食事が喉を通らない状態なのだろう。
夜明けと共に始まるであろう『謎の精兵』との戦い――。
彼らにとっては、まさに街の命運を賭けた戦いになるわけだ。
「マーロンさん……私は貴方が羨ましい」
カタカタと恐怖に震えながら、乾いた笑いを浮かべる新人自警団員。
「私は正直、明日が来るのが怖くてたまらない――」
マーロン記念硬貨をお守り代わりに握りしめながらも、新人自警団員は顔を歪めてポツリと呟く。
「……」
茶化すことなく、新人自警団員の独白を聴いていたマーロン。
「怖いことは恥ずかしいことじゃないさ」
見張り台の上から、草原の先へと視線を送るマーロン。
「俺も相棒のダニエルも、勇敢さにはいつだって不自由してるのさ」
茜色に染まる地平線。もうじき夜が明けてようとしている――。
「だが――。
たとえ明日を嫌がったところで、太陽はお構いなしに勝手に昇っちまう。
そうやって太陽はいつだって俺達を見てるのさ」
だから、と一拍置いて。マーロンは新人自警団を真っ直ぐに見つめる。
「そうやって俯いたままじゃ、お天道様に顔向けできないぜ?」
「――」
マーロンの言葉にハッとして、新人自警団員は顔を上げる。先程までの震えが僅かにおさまっていた。
「さて、おいでなすったようだぜ?」
草原の先から顔を出したのは朝陽だけではなかった。
数えきれないほどの軍用車が黒煙を上げながら街へと迫ってくるのが見て取れる。
「あ、あれは――!!」
すぐさま、見張り台の警鐘を鳴らす新人自警団員。
カーン! カーン! カーン!
と、けたたましいモーニングコールが街に響き渡るのだった。
●
「んじゃ、この場は任せたぜ!」
コートの裾を翻しながら、見張り台から飛び降りるマーロン。
街並みの地形を利用しながら、迷彩効果を利用して敵軍へと距離を詰めてゆく。
「数千……いや、下手したら一万人いってるかもな……。あのグリモア猟兵め、テキトー言いやがって」
クソザコ軍隊とは事前に聞いていたが、ここまで数が多いとそれは十分に脅威となり得る。
「いつだって怖いのはラッキーヒットってね」
十分に警戒していくべきだろうと即座に判断。
屋根から屋根へと飛び移りながら、必殺の射程まで慎重に近寄るマーロン。
サッと煙突の一つに身を隠し、敵の様子を窺う。
「オラオラ! 金の準備は出来たかよぉおおお!」」
広場に辿り着いた敵の一団がイキり全開でくだを巻いていた。
もうテンプレみたいな悪役っぷりである。
「さぁて、精兵だか煎餅だか知らねえが太陽の力ってやつを見せてやる!」
ホルスターから抜き放つと同時に六発全弾を発射するマーロン。
「うげぐおあッ!!」
急所を撃ち抜かれて倒れる精兵ども。
「な、なんだ!? 敵襲だとッ!?」
「あそこだ! 屋根の上!」
動揺しながらも撃ち抜かれた射線から此方の位置を割り出してくる『謎の精兵』。腐っても軍隊を名乗るだけはあるようだ。
「くそ! 反撃だ! 撃て撃て――」
敵もまた銃を抜き放とうとした瞬間――。
「うがッ!?」
銃に手を掛けた者達が黄金銃に撃ち抜かれて倒れる。
「ガンマン同士のバトルってのは先に抜いて先に撃ったほうが偉いんだぜ、わかる?」
ユーアンダスタン? とジェスチャーで問いかけるマーロン。
「ひ、怯むな! 構えろ!」
仲間を撃ち抜かれながらも、数の暴力で時間を稼いで戦闘態勢を整えてくる精兵。
敵の集中砲火がマーロンを狙い撃とうとする、が――。
「わかったなら今さら銃を抜けても【カウンター】でやられるってもわかるかい?」
屋根から跳躍し、空中に身を躍らせながら敵の銃撃を回避するマーロン。
黄金銃の撃鉄が薬莢を叩くと、銃口に苛烈な華が咲く!
次々と倒されてゆく仲間達の姿に、精兵どもが震えあがってゆく――。
「ば、バカな――。貴様は一体……何者だ!?」
OK、その言葉を待っていた。
やっぱヒーローは名乗りを上げないと格好がつかないからね。
「ワルいことすりゃ太陽が見てるのさ。
俺の名は太陽の使者サンダーバード、妖精に代わってお仕置きをする男だ!」
朝日に黄金銃を輝かせながら、マーロンは華麗にキメるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
喰狼・シス
(事前情報がクソ雑魚云々だけなのよね・・何処まで信用して良いのかしら?装備なのか能力なのか・・はたまた連携なのか。まぁ、仮にも侵略者だし何かあると思うのよね)
事前にルガー・ルーは構えておきましょう、持ってるだけで便利だし。・・野性の勘と言うか【第六感】で何か気付けないかしら?一応ね。
敵に攻撃行動がみられた時点でUCを発動、強化された身体能力で一気に接近戦を仕掛けるわ。銃弾に関しては、銃口の向き等を参考に【第六感】働かせて武器受けで弾く、射程に入ったら【カウンター】意識して応戦ね。ルガー・ルーは篭手や鉄爪、手槍など距離感を意識した変形を活かして行くことにするわ
【アドリブ歓迎】
●
『謎の精兵』を迎え撃つため、街で一泊することになった猟兵達。
「……ここは」
眼を覚ました喰狼・シス(No."9"66・f25533)は、まだ微睡む頭の中で呟く。
目覚めて最初に感じたのは、奇妙な違和感であった。
「……あったかい」
そこは冷たくて硬い牢獄の石畳ではなく、ふかふかのベッドの中だった。
「ああ、そういえば……昨日、街に着いてから自警団の宿舎に泊めてもらったんだったわね――」
気だるい身体に鞭を打って起き上がると、ことの経緯が一気に頭に戻ってくる。
ベッドの横に立掛けてあった鍵剣ルガー・ルーを引き擦りながら、どこかで朝食でも取れないかしら、と宿舎を出るシス。
外に出て東の空に目をやると深い群青色の空が、茜色に塗り替えられようとしているところだった。
もうすぐ朝日が昇る頃合いらしい。
「ちょっと早く起きすぎたかしら」
もう少しあのふかふかベッドで二度寝してもバチは当たらないような……。
一瞬だけそんなことを考えたシスであったが――。
彼女の研ぎ澄まされた【第六感】が寝ている場合ではないと警鐘を鳴らした。
「――!」
ピクリと耳を立てるシス。
「随分と早起きな連中ね……」
遠くから微かに響いてくる音。
この低い重低音は、恐らくは大型の運搬車の排気音か。
「それにしても……」
思わず眉をしかめる。
『音』が響いてくるのが一つの方角ではなかったのだ。
街を取り囲むかのようにして、四方八方から響いてくる音。
「事前情報がクソ雑魚云々だけだったから、何処まで信用したものかと思っていたけど……。
あのグリモア猟兵め。とんだ大軍勢じゃないの」
仮にも侵略者だし、何かあるかも知れないと一応警戒していたシス。
その悪い予感がどうやら的中してしまったらしい。
敵を迎え撃つため、ルガー・ルーを構えて走り出す。
「さすがにこの数は……一人では抑えられないわね」
ある程度、他の猟兵達と場所を分散しながら防衛してゆく必要がありそうだ。
シスは現在位置から近く、かつ敵の層が厚そうな東門へと向かう。
カーン! カーン! カーン!
と、街の中央にある見張り台から敵襲を報せる警鐘が響いてくる。その音を背中で聞きながら、シスは『謎の精兵』の一団と接敵するのだった。
●
「何だァ……この辺りじゃ見ねぇ顔だな、女」
「知らねぇなら教えてやるぜ! この島の最強軍隊! 『謎の精兵』様とは俺達のことよッ!」
イキり全開でギャハハっと騒ぎ立てる謎の精兵たち。
というか自分達で名乗るときも『謎の――』って付けるのね。
「あんた達のことは既に知ってるわ……。あたしは、自警団に雇われた傭兵ってところかしら?」
「傭兵だとォ――。俺達に逆らうってことがどういうことか教えてやろうか! ああん!?」
良く吠えながら精兵の一人が肩で風を切りながら迫ってくる。
敵がこちらを脅そうと右手に銃を握ろうとした瞬間――。シスはユーベルコードを発動させた。
「……孤高なる魔鍵よ! 『吼えろ!』」
機械仕掛けのパズルのように鍵剣が展開する。一瞬で長槍のように伸びたルガー・ルーが敵を払い撃つ!
「ぐほあッ!」
小気味いい悲鳴をあげながら吹き飛ぶ精兵。
「な――!?」
仲間の精兵たちが目を見開く。
打撃を受けた精兵が木っ端のように空を舞い、近くにあった民家の屋根に突き刺さる。
ハッとようやく我に返る敵の一団。
「テメ―! やりやがったな! 撃て撃て!」
四足獣のように身を屈め、強化された身体能力で一気に接近戦を仕掛けるシス。
「あんたたちの腕で、あたしを捉えられるかしら?」
敵の武器は銃だ。遠距離だとどうしても不利になってしまう。
だが、こうして敵陣に割って入る近接戦闘ならば――。
「――遅い」
銃口がこちらに向けられた瞬間に反応して、ルガー・ルーで弾を弾くシス。
「あうッ!」
弾かれた銃弾がすぐ隣にいた別の精兵へと突き刺さった。
「チッ――! 味方に当たっちまう――!」
こうやって同士討ちを意識させてやれば、敵の動きは自然と鈍る。
民家の壁を蹴って、三角飛びの要領で敵の背後を取るシス。
彼女の意思に呼応して、ルガー・ルーハ縦横無尽にその姿を変えてゆく。
鉄爪が血飛沫の軌跡を描きながら振るわれると、そのたびに敵が数を減ってゆく。
「うん……たしかにザコい。でも、悪党には容赦はしないわよ」
まとめて敵を斬り払いながら、シスは精兵たちにそう宣言するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
コイツらが島の人間相手にイキり散らしている『謎の精兵』か。
この島に来る前に聞かされた『哀しいほどの超ザコ』って評価はどうやら本当のようだな。
ハッハッハッ、これなら楽勝だな相棒ッ!
「・・・だからってあんまり油断しないでよ?」
敵の攻撃を見切りながら無駄にスタイリッシュアクションでも決めつつ妖刀で先制攻撃だぜ。
他の敵も叩き斬りながら囲まれたら『千刃桜花』でなぎ払ってやる。
まるで無双系アクションゲームをやっている気分だなッ!
「・・・思った以上に早く終わりそうですね。」
仕方ねえぜ、相棒。
俺達があまりにも強すぎたんだからなッ!!
(イキり全開の鬼面)
【技能・見切り、先制攻撃、なぎ払い】
【アドリブ歓迎】
●
街で一泊し、次の日の朝方。
カーン! カーン! カーン!
と、街の中央部にある見張り台からけたたましい警鐘が響き渡ってきて、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)はハッと目を覚ます。
「うおッ! なんだ!? 敵襲かッ!?
つーかここは何処だ!? 昨日泊まったはずの宿じゃねぇぞ!」
そう……昨日は確か――。
宿についてから桜のやつに帽子掛けスタンドに掛けられて……。
最初は「俺は帽子じゃねぇぞ!」と文句を言ってみたものの、これが案外、悪くない居心地で――。
そのまま襲ってきた睡魔に身を任せたはずであったが――。
●
目が覚めたら、そこは町の広場であった。
「なんだオイ……この状況は」
今からお祭りでも始まるのだろうか?
広場には物凄い人数の人が集まっていた。
どいつもコイツも何故か銃を片手に持って、ゲロ以下の犯罪者な人相を浮かべながら銃口をこちらに向けている。
うん。こりゃどう見ても、今回の敵である『謎の精兵』どもだわ。
「って、すでに取り囲まれてるじゃねーか!?」
なんだこのドッキリ企画は!? 思わず責任者出てこいとばかりに吼える凶津。
「あ……やっと起きたのね」
責任者こと、相方の桜がこちらを見ながら呟く。
どうやら凶津が寝ている間に、そっと持ち運びされていたらしい。
「……なんだかぐっすりと寝てたから、起こすのも悪いと思って……」
その心遣いは有難いが、こういうのマジで心臓に悪いからやめてくれ。
「やれやれ――。まぁそれはともかくとして、だ。
コイツらが島の人間相手にイキり散らしている『謎の精兵』か」
溜息をつきながら、改めて周囲を見渡す凶津。
まさに、広場を埋め尽くさんばかりの敵軍の群れだ。
「なあ。なんか思っていた以上に数が多くねーか?」
「……見張り台からの連絡では、一万近くいるみたい……」
多すぎるだろ……あのグリモア猟兵の情報収集能力ザルじゃねーか。
とはいえ、こうなった以上は愚痴っても仕方がない。
「仕方ねぇ、やるか! 相棒!」
「……うん」
スッと鬼の仮面を被る桜。
凶津と桜が合一し、一人の剣鬼と化す。
「何を一人で喋ってやがる! この小娘がぁああ!」
「俺達が『謎の精兵』様だって解って喧嘩うってんのか!? あ~ん!?」
解りやすい悪党のセリフを吐き散らしながら、拳銃を構える謎の精兵ども。
その引き金が一斉に引き絞られようとした瞬間――。
凶津の姿が広場の中心から消失した。
「なッ!?」
驚愕の声を上げる精兵たち。
「……いけ、千刃桜花」
「細切れになっちまいなッ!」
ドンッと轟雷のような音が響き渡ると、最前列に居た兵士たちが一斉に木っ端のように吹き飛んだ。
桜吹雪が舞い踊る。
たったの一太刀で100人以上の精兵を屠り、凶津はニヤリと牙を剥く。
「まるで無双系アクションゲームをやっている気分だなッ!」
この島に来る前に聞かされた『哀しいほどの超ザコ』って評価はどうやら本当のようである。
まるで芝を刈るかのように、敵陣をガンガン斬り崩してゆく凶津と桜。
「ハッハッハッ、これなら楽勝だな相棒ッ!」
「……だからってあんまり油断しないでよ?」
敵も反撃とばかりに銃弾の嵐を放ってくる。
「ク、クソッ! なんで当たらねぇんだ!?」
弾幕の中を飛燕のような速度で駆け抜ける凶津。
下手な鉄砲でも数撃ちゃ当たる? ま、確かにそうだ。
ならば、当りそうな弾だけ斬り払えばいい話だ。
小細工なしの正面突破。
凶津が駆け抜けた場所から、敵陣が二つに割れてゆく。
「……思った以上に早く終わりそうですね」
指揮が分断され、敵が更なる混乱へと陥ってゆくのを確認し、桜が呟く。
「仕方ねえぜ、相棒。
俺達があまりにも強すぎたんだからなッ!!」
鬼神のような大立ち回りを見せながら、凶津と桜は次々と精兵たちを討ち取ってゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴海・静音
な、何とか信用は得たようだなァ…
つまり後は暴れるだけだ!派手に行くぞ野郎共!
何処から出て来るかはわからんが俺にとっちゃァ関係ねェ!
出航するぞ野郎共!『亡霊の船出』!
何処に敵が出ても空を征く亡霊船たる俺の船ですぐさま駆けつける
他の猟兵も楽してェ奴は運んでやるぜ?
ンで現場に着いたら船をそのままに野郎共を引き連れて降下、後は暴れるだけだッ!
俺も先頭で野郎共を"鼓舞"しつつカットラスで斬り込む
多少の傷は"生命力吸収"で回復するからな、ガンガン行くぜッ!
さぁ、名すらも失った海賊団のお通りだァ!住民に代わってお前達に奪われた自由を奪い返させてもらうぜェ!
※協力・アドリブ歓迎
手下共の言動等はお好きにどうぞ
●
『謎の精兵』を迎え撃つため、街で一泊することになった猟兵達。
見張り台が併設された自警団の宿舎を間借りして、敵の襲来まで暫しの休憩タイムとなる。
「な、何とか信用は得たようだなァ……」
食堂のテーブルに突っ伏しながら鳴海・静音(不思議の国の亡霊船長・f19460)は安堵の吐息を一つ。
自警団の方々のご厚意で、テーブルに並べられているのは町の特産品であるチーズやビーフジャーキーの盛り合わせである。
「えっ、この組み合わせで酒が無いんですかい――?」
なんという生殺しだ、と手下の亡霊。
その余計な一言に静音はプンスカと頬を膨らませる。
「あるわけねーだろ――。未成年で悪かったなァ。
つーか、たとえ貰ったとしてもお前ら亡霊だから飲めないだろ」
ジャーキーを噛みながら静音がそう指摘すると、手下の亡霊は肩を竦める。
「フッ、解ってませんねぇお頭。
俺達レベルの霊歴になると、もはや酒に飢え過ぎて、こうトクトクっと酒が霊体を通り過ぎるだけでも酔えるようになるんっすよ」
得意顔でそう解説する手下の亡霊だが――。それはただの気のせいだと思う。てか霊歴って何だ。
「それよりも、敵はいつ現れるんだよォ~!」
椅子に座りながらバタバタと足を振る静音。
手下の亡霊たちもそんなことは解らないので、それぞれトランプしたり、ジャグリングをしたり、手品の練習をしたりしている。大道芸人一座か。
「ええい! やっぱり待つってのは性に合わねぇや!」
残りのジャーキーを一気に平らげてガタッと立ち上がる静音。
「何処から出て来るかはわからんが俺にとっちゃァ関係ねェ!
出航するぞ野郎共! 『亡霊の船出』!」
宿舎を飛び出し、コートを翻しながら仁王立ちで叫ぶ静音。
巨大な亡霊船が夜空に現れ、ジャラララッ、と鎖の音と共に錨が下りてくる。
「ちょ――相変わらずせっかちだなぁ。待ってくださいよ、お頭ァ」
錨に掴まって亡霊船に乗り込んでゆく静音を、手下の亡霊たちは必死に追いかけてゆくのだった。
●
やがて地平線が茜色に染まり、朝日が昇ってくる。
望遠鏡で周囲を観察していた手下の一人がようやく声を上げた。
「お頭ァ! 来ましたぜ、あれが『謎の精兵』に違ぇねえや!」
黒煙を上げながら街を目指す軍用車の群れ。
アックス&ウィザーズの世界観ぶち壊しも甚だしいが、まぁそんなことよりも問題は別にあった。
「うお!? こりゃあすげえ数だ……一万人規模ってところっすね……。お頭、どうしやす?」
観測員の報告に、静音は犬歯を覗かせながら微笑む。
「上等じゃねぇか。後は暴れるだけだ! 派手に行くぞ野郎共!」
静音の号令に頷く手下たち。
「取り舵いっぱーいッ!! 船体側面を敵に向けェ! まずは大砲をプレゼントしてやんな!」
轟音と共に黒煙が噴き上がり、大砲弾が放物線を描いてから敵陣で炸裂する!
開戦を告げる合図のように火柱が立ち昇った。
「よし、このまま突っ込むぞ! 野郎ども、俺に続けぇええ!!」
怯んだ敵陣に向けて、全速で亡霊船を走らせる静音。
敵の頭上についた瞬間、そのまま船から飛び出して降下してゆく静音。
「な、なんだ!? 海賊だと!?」
突然の襲撃に驚く精兵ども。だがまぁ、手加減してやる義理も無い。
着地と同時にカットラスで斬り込む静音。
「オラオラ! ガンガン行くぜッ!」
最前線で手下を鼓舞しながら、静音は次々と敵を屠ってゆく。
「さぁ、名すらも失った海賊団のお通りだァ! 住民に代わってお前達に奪われた自由を奪い返させてもらうぜェ!」
静音がそう叫びながら剣を朝焼けの空に掲げると、手下の亡霊兵士たちも「応ッ!」と応えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
ああ、敵サンがいらしたかね。そンじゃあいっぱつ歓迎と行きますかっと。
でかい《虫》に乗って群れをかき回してっと。銃弾は《鳥》を盾にして防ぐ。ぐるっと回って一箇所に集めたら、杖とした《恙》をかかげて半径81メートル八方に死んでもらおう。
ああ、お味方さんにゃ当てねえよ。こちとら病毒の扱いはプロさ。それしか取り柄がないともいうな。これは自虐じゃねえ、単なる事実さ。
もしもこの様子をジョ・バーン島のおヒトらが見てたらトラウマになっちまうかもしれんが、他のおヒトらも派手にやるだろう。うまいことごまかせれちゃくれんもんかねェ。
…ま・だめなら、あとでなんやかんやするさ。
●
遠く地平線の彼方から、空が朝焼けに染まってゆく。
「なかなかいい街だねぇ」
街の中央にある見張り台の上で朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が小さく呟く。
朝の静謐な軟風に、その黒髪が僅かに揺れる。
牧畜を主産業とした穏やかな街並み。
自然と人間が上手く共存した理想的なバランス。
疫病の蔓延は得てして、人間が自然の領域を深く侵したときに起こるもの。
こんな田舎街では、逢真が担う『もう一つの仕事』の出番はまだまだ先になりそうである。
「まあ――」
逢真にとって事の善悪に興味なんぞない。在るのは役割、只それだけだ。
「今回は手を貸してやるとしようかね――」
オブリビオン共に勝手に減らされても困る。面倒ではあるが、『調整』が必要だろう――。
街を眺めながら逢真は薄く微笑む。
と、その時。
草原の先、黒煙を吹かしながら此方に接近してくる軍用車の群れを発見した。
「ああ、敵サンがいらしたかね。そンじゃあいっぱつ歓迎と行きますかっと」
その右手がスッと虚空を撫でると、巨大な『恙虫』が常闇から姿を現す。
「う、うわあああッ!」
見張り台に居た自警団の男達が驚愕の悲鳴を上げた。
まあ、それも無理もない――。
召喚された恙虫が逢真を迎えるため、見張り台を梯子のように登ってきたのだから。
蜘蛛のような形状にでっぷりと肥大した腹部。その内部に蓄えられているのはあらん限りの『病毒』だ。
「ご健勝で何より、恙(ナムタール)」
逢真が優しく一撫ですると、恙虫は満足そうに身を震わせる。
「じゃ、掻き回してやるとするかね」
ガンッと地響きのような衝撃が見張り台に伝わり、自警団の面々は思わず尻もちをつく。
巨大な恙虫が見張り台を蹴って、大跳躍をしたのだ。
「あ、あの男は一体……」
遠ざかってゆく逢真の背中を見ながらも、自警団の男たちはしばらく腰が抜けて立ち上がることが出来なくなるのだった。
●
ぐるッと適当に街の大通りを流して、敵が一カ所へと集まるように誘導してゆく逢真。
「クソ! 化け物が! 怯むな、撃て撃て!」
何千丁もの拳銃が巨大蟲を狙うが――。
突然、異変が起こった。
「き、消えた――?」
石畳を砕きながら疾走していた巨大蟲が、何の前触れもなく消え失せた……ように見えた。
「さァて、集まったな。それじゃあ死んでもらおう」
冷たい声が響いた。巨大蟲が居た場所に立つ黒髪の青年。
その手には、不気味な瘴気を纏う杖が握られていた。
大気を薙ぐように、緩やかに杖が振るわれる。
「――!?」
なんだ? と精兵たちが疑問に思った瞬間には、もう『遅い』。
「うぐ……ごふっ!?」
60もの大病と劇毒がばら撒かれ、次々と血を吐いて倒れてゆく精兵たち。
「毒……!? そ、そんな、貴様ッ! ここは街中だぞ――」
眼から血を流しながら、敵の一体が非難めいた断末魔を残すが――。
「ああ、お味方さんにゃ当てねえよ。こちとら病毒の扱いはプロさ。
それしか取り柄がないともいうな。これは自虐じゃねえ、単なる事実さ」
トントンと杖で肩を叩きながら嗤う逢真。
でもまァ――。
チラリと周囲に視線を巡らせる。
「もしもこの様子をジョ・バーン島のおヒトらが見てたらトラウマになっちまうかもしれんが――。
他のおヒトらも派手にやるだろう。うまいことごまかせれちゃくれんもんかねェ」
淡い期待を込めて呟く逢真であったが……。
残念ながら、後に書かれた街の歴史書では『あの謎の精兵』をも蹂躙する『真の魔王』が襲来したと記されることになるのだが、まぁ、それは兎も角。
「……ま・だめなら、あとでなんやかんやするさ」
敵の屍を築きながら、薄く微笑む逢真。
そのなんやかんやが一番怖いのだが、それにツッコめるような敵は、この場にはいないのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
あれが精兵たちですか。
大層な名乗りなれど、やっている事は野盗と変わりなし。
◆戦闘
敵の陣形と銃の構えを【視力】で観察しつつ、接近。
銃口の向きを確認しつつ、発射の号令か、手先の動きに変化があれば太刀を横薙ぎに振るっての【衝撃波】を。
それで銃身を切断するか、弾道を逸らしましょう。
発砲されたものも、事前に見た銃口より推測できる着弾点と軌道を【見切り】回避。
そして接近戦の間合に至れば、【羅刹の太刀】で敵陣ごと薙ぎ払うように一掃。
しかし殺害はせず、手傷を負わせた状態のまま一人か二人は捕虜に。
彼らの頭目や本拠地、そして掠奪以外に何か目的でもあるのか。
持ってる情報は洗いざらい吐かせてみせましょう。
●
『謎の精兵』を迎え撃つため、街で一泊することになった猟兵達。
宜しければ、と自警団の宿舎に案内された鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は、食堂にて団長に絡まれていた。
「うううッ! 申し訳ございませぬ! 貴殿らのような若者に全てを背負わせッ!
本来この街を守護すべき我々が街の住人たちの避難誘導などを――!」
号泣しながら自警団。
「まぁまぁ団長殿……。避難誘導とて立派な務めです。卑下するようなことでは」
明日の決戦の気を紛らわすために、ほんの少しだけ酒を勧めたのが間違いだったか。
一杯飲んで感情を吐き出し、それを抑えるためにまた一杯――。
そんなことを繰り返すうち、団長はすっかり絡み酒を覚醒させていた。
「かたじけない! ですが! ですがッ! う、ううううッ!」
泣き崩れる団長。
本当は明日の決戦の前に休んでおきたかったのだが――。
挙句の果てに団長の身の上話まで始まってしまい。
絡まれっぱなしの夜は更けてゆくのだった。
●
不覚にも、少しウトウトとしていたようである。
カーン! カーン! カーン!
と、けたたましい鐘の音が響いてきて、景正は目覚める。
「これは――」
「み、見張り台からの警鐘ですぞッ!?」
同じく目覚めた団長が一言。よだれすごい。
さて、朝も早くから大軍で街に攻め入ってきた『謎の精兵』たち。
見張り台からの報告では敵の数は1万近く。
既に街中では猟兵達と精兵の戦いが至る所で繰り広げられているようである。
団長や自警団の面々に住人の避難誘導を頼み、景正は戦場へと疾駆する。
大通りを抜けて広場のように大きい十字路に至ると、そこにはファンタジーの世界観をガン無視したゴツイ装甲車が停まっていた。
そして、それを取り囲むように数百人の兵士。
「あれが精兵たちですか」
拳銃で武装したその集団を見て、景正は小さく呟く。
「オラオラ! さっさと金を用意しねぇか!? 俺達を誰だと思ってやがる!」
敵の陣形と銃の構えを【視力】で観察しつつ接近してゆく景正。
「そうだ! 俺達こそがあの最強の軍隊! 『謎の精兵』サマよおお! ビビッて声も出ねえってか!? ああん!?」
「ひ、ひい」
逃げ遅れた町娘にイキり散らしながら、人相の悪い精兵が唾を飛ばしている。
「大層な名乗りなれど、やっている事は野盗と変わりなし――。その女性を放しなさい」
進み出た景正に、悪党ヅラの精兵がガンを飛ばす。
「あぁん!? なんだテメ―は。ここいらじゃ見ねぇ顔だが……。
ほーう、なかなか高価そうな身なりじゃねぇか……たんまり持ってそうだなァ」
ニヤリと微笑む精兵。
その瞬間、景正は動く――。
トッと大地を蹴り、瞬時に相手との距離を縮める。
手首を返して刀の『腹』で敵を打撃。
「ぐ、ほッ――」
肺腑の空気を吐き出し、悪党ヅラが膝から崩れ落ちて沈む。
「なッ!?」
仲間の精兵たちが驚愕の声をあげる。
いつ刀が振るわれたのか……全く見えなかったのだ。
「やりやがったなテメ―! 撃て撃て! ぶっ殺せぇえええ!」
数百もの銃口が一気に景正に向けられる。
場は直ぐに銃弾飛び交う戦場へと変わってゆく。
だが――。
「お、おい! な、なんでこんなに撃ってるのに当たらねぇんだよ!」
悲鳴と抗議ともつかない叫びが精兵から洩れる。
弾幕の間を縫うように、最小限の動きで駆け抜け――。
躱しきれない弾丸は一閃の刃で斬り落とす。
まるで予知能力でも備えているかのような、恐るべき技の冴え。
銃口の向き、そして発射の号令――。
これら予兆を全て見逃さず、的確に対処してゆく。
これが予知にも似た回避の正体であったが、謎の精兵たちにはそんなこと理解できる実力も、余裕もなかった。
横薙ぎに振るわれた景正の【羅刹の太刀】が敵陣を根こそぎ薙ぎ払う。
「うぎゃあああ!」
まるで雑草でも刈るかのように、数百もの敵兵が虚空を舞う。
「バ、バカな――!? 我々精兵が、ここまで容易く――」
装甲車から顔を出したヒゲの男が青ざめながら目を見開く。
恐らく、これまで自分達より強い者と出会ったことが無かったのだろう。
強いと勘違いしてしまったが故の不幸。
そこはまあ、少々気の毒ではあるが――。
「ひ、ひいいいい!」
悲鳴をあげながらヒゲ。
迫り来る景正から逃れようと、装甲車が必死に反転しようとする。
だが――。
「悪行成せば罰も致し方なし。覚悟なされよ」
太刀を一度鞘に収め、精神を集中させる景正。
「――ッ!」
音も軌跡も置き去りにして、刹那で抜き放たれる居合い。
発生した斬撃が、逃げ去ろうとする装甲車を両断した。
「そ、そんなバカなァアああ――!?」
燃料に引火したのだろう、チュドーンという爆音を残して四散する装甲車。
十字路の戦いを制し、景正は「ふう」と吐息を漏らす。
「さて――」
最初に昏倒させた精兵の元に歩み寄る景正。
「頭目や本拠地、持ってる情報は洗いざらい吐いてもらいますよ」
ペシペシと頬を叩いて精兵を起こす景正。
こいつから色々と聞き出すつもりだったのだが――。
告げられたのは驚愕の事実であった。
「あ、あの装甲車が、です……」
「……?」
「あの装甲車に乗っていたのが、俺達の総司令官だったのです……」
「……あ、そうでしたか」
敵将討ち取ったり。
ひどくあっさりとしたその幕引きに、景正は複雑な表情を浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『群竜大陸開拓』
|
POW : 悪いモンスターを追い払おう!
SPD : 安全な場所の確保を最優先
WIZ : どんな場所がいいか、現地に詳しい生物に聞いてみよう!
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
圧倒的な大軍で街に押し入ったものの、猟兵達による文字通りの一騎当千の活躍であっという間に駆逐された『謎の精兵』たち。
「お、おお……」
一部始終を見ていた街の住人たちが、恐る恐る避難所から出てくる。
「やっ、やったああああああ!!」
歓喜の声が爆発した。
街を救った英雄達へ人々が駆け寄る。
長らくの支配から解放された人々。
街はもう泣けや歌えやのお祭り騒ぎとなってゆく――。
こうして街の歴史の1ページに刻まれることになった猟兵達。
グリモアベースに戻る前に、ちょっとだけお祭りを楽しんで行ってもバチは当たらないだろう。
●
最後は日常回です。
街の人々とお祭りを楽しんだり、付きまとってくる記者のインタビューに答えたり。思い思いの時を過ごしてください。
神代・凶津
かくしてジョ・バーン島は平和取り戻しました、ってか。
まあ、俺達にかかれば楽勝だったな相棒ッ!
せっかくだから帰る前に祭りを楽しんでいこうぜ。
めでたい祝い事には何が必要か?
そう、ズバリ酒だぜ。
てな訳でじゃんじゃん呑むぜえッ!
いい気分になってきたなッ!
え、何?インタビュー?
おう、構わねえよッ!
そう・・・敵の軍勢が街に迫って来たのを察知した俺は風のように飛び出して謎の精兵達の前に立ちはだかったんだぜ。
「・・・凶津は戦いの直前までぐっすり寝てたでしょう。」
あれ?そうだっけか相棒。
まあ、いいじゃねえかッ!
敵を千切っては投げの大立ち回りをしたのは事実なんだからさッ!ハッハッハッハッ!
【アドリブ歓迎】
●
昇る朝日の中で、人々の歓声が爆発する。
街の人々は互いに抱き合い、喜びの涙を流す。
「かくしてジョ・バーン島は平和取り戻しました、ってか」
喜びに包まれる街を眺めながら、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が満足そうに呟く。
「……めでたし、めでたし」
普段あまり感情を表に出さない桜もこのときばかりは少しだけ微笑んでいるように見える。
さて、街は急ピッチで祭りの準備に取り掛かる。
いま喜ばないでいつ喜ぶのか、と言わんばかりに、人々は笑顔を取り戻し――。
この島を救った英雄たちをもてなそうと全員が一丸となっている。
「まあ、俺達にかかれば楽勝だったな相棒ッ!
せっかくだから帰る前に祭りを楽しんでいこうぜ」
「……そうだね」
喜びに満ち溢れた街を歩けば「せめてものお礼に」と街の人から様々な街の特産品が手渡されてゆく。
きっと草原での牧畜がこの街の主産業なのだろう。
チーズ、牛乳、ビーフジャーキーなどなど……。
桜の両腕はすぐに一杯になるものの、街の人はまだまだとバランス系ゲームのように荷物を追加してゆく。
「ハッハッハッ! これでツマミは十分だな!」
「……じ、自分で持たないからって」
葉を剥いて大笑いする凶津と、お土産の山が崩れないように右往左往する桜。
「だが、まだまだ足りねぇ――。
めでたい祝い事には何が必要か?
そう、ズバリ酒だぜ。
てな訳でじゃんじゃん呑むぜえッ!」
酒樽を抱えた自警団員を発見し、凶津は桜を急かしたてる。
まさに浴びるように、浸かるように――。
思う存分、心ゆくまで酒を呑む凶津。
桜はお土産の山を降ろして、ようやく一息といったところだ。
「いい気分になってきたなッ!」
噛めば噛むほど味が滲みだすジャーキーを摘まみながら、上機嫌の凶津。
そのとき――。
「あっ、いたいた! 街を救った英雄さん! ちょっとインタビューさせてくれませんか!?」
吟遊詩人っぽい風貌の男がメモと酒瓶を持ちながら語り掛けてくる。
彼にとっては、きっとここからがお仕事モードなのだろう。
「え、何? インタビュー? おう、構わねえよッ!」
「やった! いい物語にさせてもらいますよ!」
酒を交えながら、凶津は昨日から今日にかけての出来事を熱く語り、吟遊詩人の男は前のめりでそれをメモしてゆく。
「そう……敵の軍勢が街に迫って来たのを察知した俺は――。
風のように飛び出して謎の精兵達の前に立ちはだかったんだぜ」
「おお、映えますね! そのシーンは是非とも使わせてくださいっ!」
べろんべろんに酔いながら、騒がしく笑いあう凶津と吟遊詩人。
「……凶津は戦いの直前までぐっすり寝てたでしょう」
……そこは私の出番の場面だし……と不満げに頬を膨らませる桜さん。
「あれ? そうだっけか相棒。
まあ、いいじゃねえかッ!
敵を千切っては投げの大立ち回りをしたのは事実なんだからさッ! ハッハッハッハッ!」
笑い声が、歓喜に包まれた街の喧騒に溶けてゆく。
さて、そんなこんなのやり取りも、きっとこの島の歴史に刻まれ――。
いつしか『寓話』として語り継がれてゆくに違いない。
『物語』としてはちょっと異色の――。
鬼と少女が、困っていた人々を救う話。
世界に幾千と紡がれてゆく物語の中には、一つくらいそんな変わり種があったっていいだろう。
大成功
🔵🔵🔵
リウティナ・スピネルレッド
大きな冒険ではなかったけど、こうして街のみんなが幸せそうにしてるのを見てたらやっぱ来て良かったなって。
それに、少しだけど家族の温もりみたいなのを知ることが出来たかも……
わたしに良くしてくれた、おじさんとおばさんにはちゃんとお礼を言わないと。
……それと、またいつか遊びに来てもいいかな?
●
昇る朝日の中で、人々の歓声が爆発する。
互いに抱き合い、喜びの涙を流す街の人々。
「これで今回のお仕事は完了、かな?」
ロングソードを鞘に納めながら、リウティナ・スピネルレッド(廻る冒険家・f26107)は静かに瞳を閉じて街の喧騒に耳を澄ませる。
騒がしくも生き生きとした、街の人たちの喜びの声が聞こえてくる。
「大きな冒険ではなかったけど――。
こうして街のみんなが幸せそうにしてるのを見てたら、やっぱ来て良かったなっ」
しみじみと思うリウティナ。
さて、そうこうしている間にも街は急ピッチで祭りの準備に取り掛かってゆく。
いま喜ばないでいつ喜ぶのか、と言わんばかりに人々は活力を取り戻し――。
この島を救った英雄たちをもてなそうと全員が一丸となっているのだ。
そんな街の中を、軽く流すように歩くリウティナ。
「おっ、街を救ってくれた英雄さん! ウチの店に寄って行ってくれよ! もちろんお代は頂かないぜ!」
定食屋の主人が笑顔でリウティナに手を振ってくる。
既に街の人々に英雄の噂は知れ渡っているようである。
「え、こんなかわいい女の子が英雄さんなのかい!? こいつは驚いた……。
ねぇ、良ければキミの英雄譚を聞かせてくれないかい?」
吟遊詩人と言った風貌の男がリウティナに駆け寄り、インタビューを求めてくる。
どうやら、今回の騒動を元にした『歌』を一曲作って一儲けしようと目論んでいるらしいが――。
「ごめんね! それは企業秘密ってことで」
ウィンクしながら書きかけの冒険手帳を見せるリウティナ。
吟遊詩人の男は少しだけガッカリした顔をしながらも、リウティナに笑いかけ、
「同業者でしたか。では、せめてお名前を。
いつかキミが書いた『物語』を読ませていただく日を楽しみにして――」
と、ハープを鳴らして風のように去ってゆく。
読者候補が出来たかな、とリウティナはクスリと笑う。
「リウティナちゃん! 無事だったんだねッ!」
ひときわ大きな声が広場に響き渡った。
「あっ、おばさん!」
振り返ってみれば、リウティナがお世話になった自警団員のおじさんと、その奥さんのおばさんが顔をクシャクシャにしながらこちらへと走ってくるところだった。
「良かった――。心配したんだよっ!」
恰幅の良いおばさんにむぎゅっと抱きしめられて、リウティナは少し照れくさくなる。
さて、少なくとも『謎の精兵』を千人単位で蹴散らせる強さを持つリウティナが、普通のおばさんに心配されるというのも変な話ではあるだが――。
それでも不思議と、嫌な感じはしなかった。
「良かった、無事で良かったよぉおおおお……!」
初対面では粗野なあらくれ者といった印象を受けたおじさんが、リウティナとおばさんを抱いてオイオイと年甲斐もなく泣いている。
昨晩、泊まった時に二人に少しだけ『身の上話』をしていたリウティナ。
自分の家族のことを含め、全ての記憶を失っていること――。
いつか自身が体験した冒険を自叙伝にして、出版するのが夢であること――。
その時から、この夫妻はすでにリウティナに対して思い入れバリバリだったのである。
夫妻に思いっきり力強く抱きしめられて、リウティナはちょっと胸が苦しくなるく。
「帰る前に、おじさんとおばさんにはちゃんとお礼を言いたかったんだ」
二人を抱き返しながら、リウティナは微笑む。
「お礼を言わなきゃいけねぇのは俺達のほうさ」
と、おじさんはそう言うが、リウティナはこの二人から確かに『貰った』のである。
そう、少しだけど――。
忘れていた、家族の温もりみたいなものを――。
「……それと、またいつか遊びに来てもいいかな?」
照れるようにしてそう呟くリウティナは、この時ばかりは冒険者ではなく年相応の女の子のようだった。
「当ったり前じゃないかっ!」
「来い、いつでも来い!」
そう言って、夫妻は当然のように力強く頷きを返すのだった。
さてこうして、小さな冒険は終わりを告げる。
この冒険と、出会った人々の事をどう書き綴ろうかなと、ちょっと楽しみにしながら、リウティナは帰路につくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴海・静音
いやー、終わった終わった
あんだけ敵がいたのも久しぶりだったが…まぁ昔の戦争の時よかは楽だったなァ
ま、やる事はやったんだが…どうすっかねェ?
ま、こんな状況で俺達がやる事は一つか。野郎共、宴だァ!
住人達と楽しくやるとしようぜェ!
…あー、酒が飲みてェが「私」は未成年だからなァ…仕方ねぇ、なんか寄こしな
…このまま酒が飲める歳になるのが先か、俺が帰れるのが先か…どっちなんだろうなァ…
ま、考えても仕方ねェ。今を楽しむとするかァ!
※協力・アドリブ歓迎
手下共の言動等はお好きにどうぞ
●
昇る朝日の中で、人々の歓声が爆発する。
互いに抱き合い、喜びの涙を流す街の人々。
「いやー、終わった終わった。
あんだけ敵がいたのも久しぶりだったが……まぁ昔の戦争の時よかは楽だったなァ」
ヒュンヒュンとカットラスを振りながら、鳴海・静音(不思議の国の亡霊船長・f19460)は二カッと犬歯を見せながら笑う。
昔は海の上で大船団相手にドンパチやってたんだ。このぐらいの敵にゃ遅れはとらねえってもんさ。
さて、それはともかくとして――。
「ま、やる事はやったんだが……どうすっかねェ?」
敵を倒したので依頼は達成だ。
あとはその辺に居るであろうグリモア猟兵をとっ捕まえて、帰りのゲートの準備をさせるだけなのであるが――。
街の人々は今、全速力で祭りの準備を進めている。
この島を救ってくれた英雄たちに少しでも恩を返そうと一丸となっているのだ。
「ま、こんな状況で俺達がやる事は一つか。野郎共、宴だァ!
住人達と楽しくやるとしようぜェ!」
せっかく俺たちの為に祭りの準備を進めてくれているんだ。このまま飲まずに去るってのは失礼ってもんだろう。
船長のナイスな決断に手下どもが「ヒャッホー!」と歓声をあげて飛び回る。
そのまま、酒樽を運んでいた自警団員の男に憑りついて、文字通り浴びるように酒を楽しんでゆく手下ども。
「おーい、ハメを外しすぎるんじゃねーぞォ」
ドンチャン騒ぎではしゃぎ回る手下どもを見ながら、小さく苦笑する静音。
それにしても――。
「……あー、一緒に酒が飲みてェが、『私』は未成年だからなァ……」
恋い焦がれるような酒への想い。
キャプテン・ミュートが思い浮かべるのは、手下共と航海の最中で飲んだラム酒の灼けるような喉越しである。
「ヒッヒッヒ――。お頭ァ、すいませんねぇ、俺達ばかり飲ませていただいて……ヒック」
「このヤロー。ぶっ飛ばすぞ、酔っ払いが。
仕方ねぇ……ジュースでもなんでもいいから、なんか寄こしな」
絡んできた手下をそう言って追っ払いながらも、静音ことキャプテン・ミュートは口元に笑みを浮かべてゆく。
さて、まさに死んでも続く手下共との腐れ縁。
いや、静音からすれば『前世』からの縁とでも、言うべきなのだろうか――?
ともかく、海の藻屑となったはずの『俺達』がこうして奇妙な形で航海を続けているわけだ――。
「……このまま酒が飲める歳になるのが先か、俺が帰れるのが先か……どっちなんだろうなァ……」
ワイン替わりにぶどうジュースを飲みながら、ぼんやりと考えるキャプテン・ミュート。
そして、なによりも――。
『私』が故郷を見つけて、この航海を終えた時――。
『俺』とこの海賊団は一体どうなるのだろうか――?
それはキャプテン・ミュートの心に染み付いた一つの疑念でもあった。
「お頭、どうしたんっすか? いつになく真面目な顔しくさって」
心配して顔を覗き込んできた手下の一人に、キャプテン・ミュートの思考は中断された。
まぁ結局のところ、故郷を見つける前に考えてもしょうがないとも言えるか。
「考えても仕方ねェ。今を楽しむとするかァ!」
ガバッと立ち上がり、輪になって踊っている手下共と街の人々の列に、静音も加わってゆく。
海賊たちの陽気な歌声が、朝日の照らす街に高らかに響いてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
鞍馬・景正
これで終わりですか……。
いえ、平和が戻ったのなら良い事です。
しかしあの装甲車――猟兵の誰かが乗り捨てたものでも拾ったのでしょうか。
◆祭
祭りといえば酒も振る舞われることでしょう。
喜んでご相伴に預からせて頂きます。
ワインや蜂蜜酒、クワスなど飲みつつ、自警団の団長殿にも挨拶。
これで肩の荷も下りたでしょう。
されどまたあのような連中が現れないとも限りませんし――良ければ軽く軍略を教示していきましょう。
実力や数で劣っても拠点や地形を活かした防衛戦、内偵を潜らせての諜報活動、心理戦――それらで優位を取る事も出来ます。
最悪、人死にさえ出ない程度に粘っていれば……また我らが救援に駆け付けましょうからな。
●
黒煙を上げて炎上する装甲車。
「これで終わりですか……。
いえ、平和が戻ったのなら良い事です」
全く気が付かぬ間に総大将を討ち取り、どこか微妙な気持ちになる鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)。
「しかしあの装甲車――。猟兵の誰かが乗り捨てたものでも拾ったのでしょうか」
顎元に手を寄せながら首を傾げる景正。
剣と魔法の世界であるアックス&ウィザーズに合わない武装していた『謎の精兵』たち。
……その正体は、けっきょく最後まで謎のままであった。
●
さて、あとはグリモア猟兵を捕まえて元の世界に帰還するだけなのであるが――。
「……この人混みでは探すのも一苦労ですね」
長きにわたる支配から解放され、街は歓声に包まれている。
いま喜ばないでいつ喜ぶのか、と言わんばかりに、人々は笑い――。
この島を救った英雄たちに少しでも恩返しをしようと、全員が一丸となって祭りの準備を進めているのだ。
「なぁ、ウチで飲んで行ってくれよ! いやいや、街を救ってくれた英雄からお代を頂くなんて滅相もないって!」
グリモア猟兵を探しつつ適当に街を流していると、酒場のオヤジが良い笑顔で景正に手招きをしてくる。
本日は酒場もお祭り仕様なのだろう。
テーブルと椅子の全てが店先に出され、大通りを占拠するようなオープンカフェが形成されている。
「喜んでご相伴に預からせて頂きます」
と、景正が席につけば、すぐさまワインや蜂蜜酒、クワスなど様々な酒類が飛んでくる。
「なあなあ! どうやってあの精兵を倒したんだい! 話を聞かせてくれよ!」
街を救った英雄の登場に、人々が次々と集まってくる。
騒がしくも心地よい人々との一体感――。
静かに一人で飲む酒も美味いが、こうして多くの人々と飲み交わすというのも、悪くない。
「おや、あれは――」
程よく酔いが廻ってきた頃、自警団の男たちが酒樽を担ぎながら追加の酒を運んでくる姿が見て取れた。
そして、その中には――。
「おおおおおおッ! 景正殿ォオオオ!」
ドドドドッと土煙をあげながら、見覚えのある男が景正の元に走り寄ってくる。
自警団団長の壮年の男である。
「私は、私は! 最初っから貴殿を信じておりましたぞォオオオオ!!」
暑苦しい叫びをあげながら感動の再会に号泣する団長。
(……初対面のときはかなり疑われて、実力テストまでされた気がしますが――)
それを言うのも野暮と言うものだろう。
「これで肩の荷も下りたでしょう」
互いに酒を酌み交わしながら、団長と暫しの雑談を楽しむ景正。
ウィスキーの喉を灼くような喉越しが、確かな達成感を与えてくれる。
「そうですなぁ……貴殿らのおかげで、こうして長い支配から解放され……。まさに夢みた光景そのままですな」
笑い、歌い、踊る――。街の人々の様子を眺めながら、団長は微笑む。
「……しかしながら街の安全を預かる身としては、少なからず自分自身が恥ずかしいという思いもありますな。
これで一安心……だと良いのですが」
樽ジョッキを空にしながら苦笑する団長。
平和な島を襲ったオブリビオンの魔の手。今回の襲撃が最初で最後であるという保証はどこにもない。
「またあのような連中が現れないとも限りません。良ければ軽く軍略を教示致しましょうか?」
「お、おおッ! 是非ともお願い致します!」
自警団の宿舎から街の地図を取ってきてもらい、テーブルの上に広げる景正。
「実力や数で劣っても拠点や地形を活かした防衛戦、内偵を潜らせての諜報活動、心理戦――それらで優位を取る事も出来ます」
そう、自分たちが弱いと知る事が、『強み』となり得る――。
弱者としての戦い方を徹底した者達が、圧倒的な強者を退けた例は、数多く存在するのだ。
それに――、と景正は優しく微笑む。
「最悪、人死にさえ出ない程度に粘っていれば……また我らが救援に駆け付けましょうからな」
「景正殿……ッ!」
頭を垂れる団長、熱い感謝の涙がその頬を伝う。
解放祭、と名付けられた祭りは続く。
グリモア猟兵がゲートの準備を整えるまで、景正は街の人々と共に、ちょっと騒がしい酒の席を楽しむのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
やァ、めでてえこった。なんか俺にゃ寄ってこねえが。めっちゃ怖がるじゃん。いいけどよ。
ンじゃ、なんやかやしようか。
人目につかないとこで【幸災の虚夢】を展開。すこしずつ夢に引き込んで心の傷を癒やしてくぜ。
せっかくだしご期待に答えてホラー演出にすっか。影からそっと引き込んで眠らせて、返ってきてもなにも覚えてねえ…みてえな。
魔王はホラ、そうそう姿見せちゃだめだろ?
ま・目的はトラウマの解消だ。よけいな傷はつけねえよ。
ただちょっと、そうちょいっとばかし肝試しをな。せっかくの夏だしさ。納涼ってやつさ。
●
長きに渡る支配からの解放を喜び、人々は家族や友人と抱き合い、泣き、笑いあう。
島を救った英雄たちに少しでも恩返しをしようと、人々は一致団結して祭りの準備を進めてゆく――。
「やァ、めでてえこった」
酒を酌み交わし、歌い踊る人々の姿。
祭りの様子を横目に見ながら、通りの隅で静かに酒を呑む朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)の姿がある。
神の一柱である逢真にとって、人々から祀(祭)られるというのは決して嫌なものではない。
それが畏れであれ、感謝であれ――。
人々からの畏怖や畏敬こそが神の力の源であり、人々の記憶から忘れ去られた神は次第に力を失ってゆくものだ。
「にしても――」
逢真が司っている力は疫病の類なので、人々から恐れ敬われることはあっても、こうして感謝されることは大変珍しいと言える。
「こういうのもたまにゃ悪くないな――。なんか俺にゃ寄ってこねえが」
大通りで騒ぐ人々を見やれば、逢真のほうをチラチラと見ながら逡巡している者も幾人か存在する。
逢真を誘って一緒に酒を飲みたいものの、今一歩の勇気を踏み出せない、そんな感じだろうか。
「めっちゃ怖がるじゃん。いいけどよ」
苦笑する逢真。
「……戦いのためとはいえ、かなり派手に蟲を使役しちまったしなァ――」
その戦闘を目撃した者の中にはトラウマになっている人もいるかもしれない。
盃を傾けながら一考する逢真。
「ンじゃ、なんやかやしようか」
人目のつかない路地へ移動し、【幸災の虚夢(ユーフォリア)】を展開する逢真。
音も無く、静かに広がってゆく毒の煙。
毒と言っても、身体に害があるというわけではない――。吸ったものを眠らせ、夢の中に引き込むというものである。
街の人たちのトラウマの解消のため、逢真はその力を行使してゆく。
●
「……ちょっと飲みすぎちゃったかな……」
千鳥足で歩く一人の町娘がいる。
さて、こうして街が解放されたことは素直に嬉しいのだが――。
戦いの最中に見た、『あの光景』がどうにも脳裏にこびり付いて離れない。
悍ましく蠢く巨大な蟲と、その上に乗った黒髪の青年――。
そして、為すすべもなく無慈悲に屠られてゆく精兵たちの姿。
まるで物語に登場する魔王みたいだと、其のとき町娘は思った。
美しくて、身震いするほど恐ろしいあの光景。
どれだけ酒を飲んだところで、忘れられるものではなかった。
「あ……」
それは夢か幻か――。
酔いで朦朧とする頭の中で、町娘は一人の青年に目をとめる。
忘れもしない、あの黒髪の青年。
町娘がポカンとしている間に、青年は立ち上がって路地裏に入っていってしまう。
「あ……。ま、待って!」
まるで魔に魅入られたかのように、町娘は後を追う。
路地裏に迷い込むと、街の喧騒がぐっと遠のいた。
暗く細く、まるで異世界へと通じているかのように路地裏が続いている。
怖い。
だが、それでも――。
もう一度だけ、彼女はその青年を見たかったのだ。
勇気を振り絞って、路地裏へと踏み出す。
「あれ?」
少し進むと、石畳の上に朱色の羽根が落ちているのを町娘は発見する。
不思議に思いながら、その羽根を拾い上げようとした瞬間――。
「――ッ!?」
路地裏の影の中から、白い手がスッと伸びてきた。
その冷たい手が指先に触れて、町娘の背筋に甘美な恐怖が駆け昇る。
「心配するな。よけいな傷はつけねえよ」
娘の手を惹いたのは、探していたあの青年だった。
「あ――」
その赤い瞳が覗き込んでくる。
なんだか不思議な心地だった。
きっと酔いのせいだろう。酷く興奮しているはずなのに、脳内が蕩けるように睡眠を訴えてくる。
これが夢なのか、現実なのか、解らない。
きっとその境界線だ――。
彼に聞きたいこと、話したい事が山ほどあるはずなのに――。
それは叶わぬまま、まるで堕ちるように、町娘は逢真の腕の中で夢の世界に沈んでゆくのだった。
●
スヤスヤと寝息を立て始めた町娘を逢真は「よっと」抱えあげる。
次に彼女が目を覚ました時には、その心に染み付いたトラウマも、
そして、彼女が逢真へと抱いていた感情も綺麗さっぱり忘れ去られていることだろう。
変にトラウマを抱えさせてしまうよりも、忘れさせてあげるほうが彼女のためであると言える。
「いい夢みろよ。まァ、返ってきてもなにも覚えてねえだろうが」
遠くから響く、祭囃子の音を聴きながら、逢真は苦笑しながら呟くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
マーロン・サンダーバード
よーし今日も太陽の力は偉大だったな!
俺としては宴会に加わりたい気持ちはあるんだが、相棒がシャイなんでね
ひっそり消えるのもヒーローっぽいしな
サンダーバードはクールに去る…え?インタビュー?
俺に?しょーがないなーなんでも答えちゃうよ!!
好きな女の子のタイプはねーギャルだね!見た目派手だけど根が良い子っていうのが最高!
でもこの世界だと中々いないよねーいや派手な子じゃなきゃいけないわけじゃないぜ?
こういう世界ならではの素朴な子ってのも趣きがあるってもんさ、あとほら、ビキニアーマーとかあるじゃん?そういうの俺大好き……ああ、そういうのじゃないのね
普段の訓練?いいよいいよ教えるよ……うん
●
昇る朝日の中、燦然と輝く黄金の輝き。
「よーし、今日も太陽の力は偉大だったな!」
シュルルルルッと黄金銃をハンドスピナーばりに回転させ、華麗にホルスターに収めてゆくマーロン・サンダーバード(『サンダーバード』・f18492)。
「や、やったああああ!」
人々の歓声が爆発した。
長きに渡る支配からの解放され、街の人々は家族や友人と互いに抱き合い、笑いあう。
「おう、祭りだッ! 島を救った英雄たちをみんなで称えるんだ!」
そして、少しでも猟兵達に恩返ししようと、人々は一致団結して祭りの準備を急ピッチで進めてゆくのだった。
●
フードを目深に被り、なるべく目立たぬようにしながら街を流すマーロンの姿がある。
「このお祭り騒ぎの中じゃ、グリモア猟兵を探すのも一苦労だな」
街は歌えや踊れやのどんちゃん騒ぎである。
「あ、いたいた! マーロンさん! 何やってるんですか? 島を救った英雄がこんなところで!」
聞き覚えのある声がして振り返ると、あの新人自警団員が走り寄ってくる。
「俺としては宴会に加わりたい気持ちはあるんだが、相棒がシャイなんでね」
「相棒? お連れ様がいたのですか?」
と、キョロキョロと見渡す新人自警団員。
「いや、気にしないでくれ。こっちの話さ」
まぁ解りづらいよな、と苦笑するマーロン。
「は、はぁ――了解であります」
新人クンは首を傾げながらも、とりあえず頷く。
それに――、とマーロンは続ける。
「ひっそり消えるのもヒーローっぽいしな。サンダーバードはクールに去るぜ」
新人自警団員に踵を返しながら、太陽に向かって消えてゆこうとするマーロン。
フッ、これが朝陽じゃなくて夕焼けだったら完璧だったんだがな――。
「えっ!? ちょ、待ってください!
これから叙勲式とか、今回の出来事を島の歴史に永劫残すためのインタビュー記事作成とかあるんです!」
形振り構わずマーロンの脚にしがみ付いてくる新人。
「……え? インタビュー? 俺に?」
ピクリと反応を示したマーロンに、新人はブンブンと頷く。
「しょーがないなー、なんでも答えちゃうよ!!」
ヒーローたるものインタビューと言われれば応えざるを得ない。そういうものさ。
●
島の歴史を長年書き綴ってきた書記官は記す。
これは島を救った英雄、マーロン・サンダーバードの言行録である――。
『好きな女の子のタイプはねーギャルだね! 見た目派手だけど根が良い子っていうのが最高!』
書記官の注釈:ぎゃる、という存在が如何なるものなのかは不明であるが、後半のお言葉から推察するに、高貴な身なりをした清らかな女性を指す言葉だと思われる。
『でもこの世界だと中々いないよねー。いや派手な子じゃなきゃいけないわけじゃないぜ? こういう世界ならではの素朴な子ってのも趣きがあるってもんさ』
書記官の追記:英雄はそう言いながら、輪になって踊っている町娘たちを眺められた。慈愛に満ちたお優しい眼差しであった。
『あとほら、ビキニアーマーとかあるじゃん? そういうの俺大好き……』
書記官の注釈:ビキニアーマー。護るべき部位を必要最低限とすることで肌をさらけ出し、身にまとう女性の美しさを武器としてしまった攻撃的な鎧。
男に対して有効とされるが、その鎧としての実用性を疑問視する声が――。
●
「……ああ、そういうのじゃないのね」
これを島の歴史に残してもいいのだろうかという雰囲気になり、インタビューは中断された。
「で、では――。こちらからの質問に答えて頂く、という形に変更させて貰ってもよろしいでしょうか……?」
書記官の言葉に仕方なく頷くマーロン。
「普段の訓練? いいよいいよ教えるよ……うん」
こうして、英雄サンダーバードの伝説はつつがなく書き記されてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
喰狼・シス
(数は兎も角、それ以外はおおよそ予知通りね・・・。歓声が聞こえる・・?他の皆も終わったみたいね。)
ふふっ、悪くは無いわねこうゆうのも。
にしても、ホントに単純ね。次があるかも知れないって考えないのかしら。あたし達みたいなお人好しなんて早々来ないのに
。
【祭り見学なう】
・・・悪くは無いわね。参加してはしゃぐのは好きじゃ無いけど。
飲み物貰えるなら貰おうかしら?中身はお酒?酔わせてどうするの??
ふふっ、冗談よ冗談。
・・正直、街の現状には不安しか無いのよね。アドバイスなり軽くしとこうかしら。
湿っぽい話したお詫びに行事か何か行われてたら参加するわ
【アドリブ歓迎】
●
東門の敵を殲滅し終え、喰狼・シス(No."9"66・f25533)は「ふぅ」と小さな吐息を一つ。
「数は兎も角、それ以外はおおよそ予知通りね……」
最初は数に圧倒されそうになったもの、戦ってみれば確かにクソザコだった。
穏やかな草原の先、東の空を見れば、すっかりと朝陽が昇っている。
新しい一日が始まろうとしているのだ。
「歓声が聞こえる……? 他の皆も終わったみたいね」
騒がしい歓声が街の各所から巻き起こってくる。
理不尽な支配から解放された人々の、歓喜の叫びだ。
「う、うぉぉおおお! や、やったああああ!」
「ありがとうございます……! ありがとうございます……!」
当然、シスの元にも避難していた住人達が駆け寄ってくる。
「祭りじゃ、祭りじゃ! 街を救ってくれた英雄に恩返しをするのじゃ!」
長老っぽいお爺さんがそう宣言すると、住人達は「おうっ!」と頷きを返す。
シスたちに少しでも恩返しをしようと、人々は一致団結して祭りの準備を進めてゆく――。
●
どんちゃん騒ぎを眺めながら、オープンカフェで頬杖をつくシスの姿がある。
「にしても、ホントに単純ね。次があるかも知れないって考えないのかしら」
歌や、踊れ――。浮かれポンチ状態の住人達を見ながらシスは吐息。
まぁ、支配から解放された喜びっていうのは解らなくもないけど――。
「あたし達みたいなお人好しなんて早々来ないのに――」
島に突如現れたという謎の精兵。
今回の一件が最初で最後の襲撃であるとは限らない。
「……正直、街の現状には不安しか無いのよね。アドバイスなり軽くしとこうかしら」
平和な島だったのだろう。防衛とか殆ど意識して無さそうな感じがするし、ツッコミどころは山ほどあった。
シスがぼんやりとそんなことを考えていると――。
「あ、いたいた。シス殿、探しましたよ」
声の方向に視線を映せば、自警団の青年が酒樽を抱えながらこちらに歩いてくるところだった。
「どうですか? お祭りは」
「……悪くは無いわね。参加してはしゃぐのは好きじゃ無いけど」
ビーフジャーキーを摘まみながらシス。
よっこいしょと樽を下ろす自警団員。
「飲み物貰えるなら貰おうかしら? 中身はお酒?」
「ええ、ウッカですね。街を救ってくれた英雄にぜひ注がせてください」
ウォッカか、しかもアルコール度数のすこぶる高いやつのようだ。
悪酔いさせるには持ってこいなお酒である。
「……酔わせてどうするの??」
ジト目で青年を睨むシス。
「そそそ、そんな! 滅相もない」
顔を真っ赤にしながら青年。どうやら自警団でも新人のほうらしく、真面目な人柄のようである。
「ふふっ、冗談よ冗談」
からかったことを詫びながら、青年と酒を酌み交わす。
キツい酒だが、この灼けるような熱さが心地良い。
さて、ついでだから、先ほどの懸案事項であった街の今後の防衛について少しレクチャーしておこうかしら。
「なるほど――。団長に報告させて頂きますね」
必死にメモを纏めながら青年。
一通り話し終えて、一息つくシス。
「せっかくの酒の席に、湿っぽい話しちゃったかしら?
なにかお詫びをしたいところだけど――」
「お、お詫びですか?」
さて、酒の席で美しい女性からお詫びと言われれば男は何を期待するだろうか?
つまり、そういうことである。
「で、では――!」
と、思わず無謀なる突撃しかけそうになる青年だったが――。
(いや、待て――!)
昨日の自警団によるテストのとき、シスが大岩を一発で粉砕していた場面を思い出して、青年はハッと我に返る。
いやぁ……あれは見事な木っ端微塵だった。
「そ、それでしたら、お祭りのイベントに参加して頂くというのはどうでしょう?」
「……イベント?」
「はい。街を救った英雄が参加してくれれば、大盛り上がり間違いなしです。豪華景品もありますよ」
青年の話では大食い大会、腕相撲大会、ノド自慢大会などなど、色々と催されているらしい。
「……そうね、じゃあ腕相撲大会に行ってみようかな」
圧倒的な優勝候補あらわる。
もはや対戦相手の手が折られないか心配するレベルである。
自警団の青年に案内をお願いして、シスは立ち上がる。
街を歩けば、どこもかしこも歓声と喜びの歌で溢れている。
「ふふっ、悪くは無いわねこうゆうのも」
喜ぶ人々の顔を見ながら、シスも僅かに微笑むのだった。
大成功
🔵🔵🔵