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灯は篝より出でて篝より灯し

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●月のない夜
 炎がひとつ、ふたつ。宙に浮かんでゆらゆら燃えて、くるくるふわふわ回り出す。まるで踊っているように。一定のリズムで繰り返す動きに合わせ、ひとつ、またひとつと炎は増えていく。
「助けて、たすけて」
「熱いの、痛いの、苦しいの」
「だれか!」
「どうしてこんな酷いこと」
 何処から聞こえてくるのだろう、悲痛な叫びが耳に響く。嗚呼きっと、これは『燃えカス』だ。彷徨う亡者の記憶だ。命の灯火はもう消えているのに、未だ終わらない熱に苛まれている。
 舞う炎たちの中央には、一際目立つ篝火がある。煌々と輝くそれはあまりにも美しく、思わず見惚れてしまう程。
 風もないのに篝火が大きく揺れた。呼応するように、周囲の炎が私を取り囲むように踊り出す。熱い。ああでも、なんと綺麗な光景だろう。この生き物が燃える匂いさえなければ最高の――。

●グリモアベースにて
「死者の怨恨というものは、生者への嫉妬で燃え盛る……という話を思いついたのだけど、どうかな?」
 本題の前に一呼吸置くのが、今回の担当グリモア猟兵――織譜・奏(冥界下り・f03769)の癖らしい。集まった猟兵に向け、内容を絡め歌うように語り出す。
 ダークセイヴァーのとある廃村を中心として、近隣の村から人がぽつぽつと消える事件が発生している。原因は燐火、人魂や鬼火とも呼ばれる、浮遊する火球だと現地では噂になっているようだ。真相を知ったところで彼らに何が出来るわけでもない、それでも好奇心で近づく者は少なくなかった。尾ひれのついた噂は近隣の村落を泳ぎ周り、恐怖と新しい犠牲者を増やしていく。
「裏にはヴァンパイアがいるのさ。かつての惨劇の記憶を使って人を誘い、釣れた獲物の肉は焼き、そして魂は撒き餌に再利用する。効率がいいと言えば聞こえは良いかな。動機は暇潰しとかその辺だろうね。迷惑極まりないったら」
 現地は廃屋が広がっているようにしか見えないが、石作りの建築物や水回りはかろうじて形を残していた。そこに今回の事件の実行犯、元凶たるヴァンパイアへの手掛かりがあるかもしれない。ひとりでに魂が燃えるなどありえず、必ず種と仕掛けがある。猟兵の最初の仕事は調査だ。
「鮮明に糸口が視えなくてすまないね。廃村を調べるも、噂の出所を探すも、君達の判断に任せる。気をつける事と言えば時間帯くらいか。日中に送り出す予定だけど、当然その日も夜は来る。夜は敵の領分だ、それまでに調査は終わらせてくれ」
 十分に調べ、準備をすれば燐火を操る者を逆に誘き寄せる事も可能であると説明を続け、必要と思われる資材の管理場所を記したメモを各々に配る。紐や土を掘る道具等、簡易的なものは大体揃っている。あとは足と頭の勝負。
「火のないところに煙は立たない。今回の予知にも火種がある。消火は頼んだよ。それでは諸君、御武運を」
 奏は大仰に礼をしながら、猟兵を送り出す。今宵の歌は、嘆き以外でありますようにと祈りを込めて。


まなづる牡丹
 オープニングを読んで下さりありがとうございます。まなづる牡丹です。
 本シナリオは『ダークセイヴァー』の廃村が舞台です。不審な炎(山火事ではない)の正体を突き止め、元凶を打ち倒して下さい。

 調査→戦闘→ボス戦の流れになります。ここが怪しい、こうなったら面白い等、プレイングのスタイルは問いません。ダークセイヴァー世界にない物の持ち込みも可能ですので、皆様のアイデアを活かして下さいませ。OPにもある通り、1章の調査では同時に迎撃準備を行う事も可能です。
 なお、近隣の村人は情報提供以上の事には消極的です(協力要請自体は出来ます)。

 それでは皆様のご参加お待ちしています。
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第1章 冒険 『廃村に潜む影』

POW   :    邪魔な瓦礫などを撤去して痕跡を探す。

SPD   :    足跡や何かを動かした跡などを探して調査する。

WIZ   :    情報をもたらした者を探して話を聞く。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

芦屋・晴久
【WIZ】アドリブ歓迎です

どうかな?……じゃないんですよねぇ織譜さん。
まぁ良いでしょう、廃村は一からの調査、近隣に村はあるらしいですがそう簡単に口は開かないでしょうねぇ、関わりたくないですもの。

さて、時間は有限。なれば私は【高天奉隠者】を呼び出し近隣の村人同士の会話を収集、私自身も聞き込み【情報収集】致しましょう。
上手く【言いくるめ】られたらこちらの儲け物、口を噤んでも私が村で聞き込みをしている事を吹聴してして頂けるならば好都合、隠者の式神が影からその会話を聞くことでしょう。

村には少しでも早く着いた方が良いでしょう、【飛相天后】で時間短縮が出来れば良いですねぇ。


デナイル・ヒステリカル
オブリビオンの行動で苦しむ人が出ているのなら、それは猟兵(僕たち)が対処するべき分野です。

噂話は人から人へ伝達される際に尾ひれが付いたり改編されたりしていきます。
しかし元をただせば共通の同じ噂へと辿り着くはずです。
よりシンプルで、より多くの噂に共通した骨子が存在する話を、近隣の村を巡って村人へとお話を伺いながら、探していきます。

これがオブリビオンの仕組んだ事ならば、最終的にはオブリビオンに繋がる情報へと辿り着けると考えました。


オイフェ・アルスター
燃やすなんて素敵なことですが……
でも、ヴァンパイアが関わっているなら放置できませんね。
彼らこそ『燃えカス』になるべき存在でしょうに。

情報は闇雲に探すよりも楽ですから、情報を持ってそうな人を探しましょう。
村人の誰かしら見ていてもおかしくはありません。
長老でも村長でも、知っていそうな人を片っ端から聞きに行きましょう。

【祈り】を捧げ、神の代行者である私を見せれば話してくれるでしょう。
【生まれながらの光】で神々しさもあげていきますわ。

怪我人や病人がいるなら、【生まれながらの光】で軽くしてあげましょう。
疲れてますけど、大げさに疲れたら恩義を感じるかもしれません。

他の猟兵の動きも気にしましょう。




 噂は一体どこから湧いたのか。情報を辿り、源泉を突き止めるように3人の猟兵が近隣の村に調査に立ち入った。廃村からはさほど遠くない隣村を訪れたのは、デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)とオイフェ・アルスター(妄信する神の代行者・f12262)。大人たちは怯え、子供たちは噂に憶測を被せ得体の知れぬ怪火に油を注ぐ。あの炎がいつ此処まで来るのかと恐怖する村人は、どこまでも無力な一般人だ。誰かに守られなければ、もがき苦しむ声にすら耐えられない。痛々しく、哀れでもある。
「これは僕たち猟兵が対処すべき分野です。皆さん、知っている事をお話していただけませんか?」
 デナイルの言う猟兵、というものが何なのか、村人には分からない。それでも呻きを、火を、いつまで続くのか分からない不気味さを何とかしてくれるなら誰でも良かった。こちらが詳しい事情を説明するより先に、口々に不安を訴える。
「夜になると声が聞こえるのです。助けて、熱いと泣いているんです」
「毎日あっちで炎が出るの、うちも燃えそうでこわい」
「この前は工房のとこの息子が焼かれたんだ!」
 行方不明者はこの村に留まらず、近隣の村でも起っているらしい。そんな夜は必ず、廃村の方から燐火と声が現れると揃えて語る村人達。怪しんだ者が日中、廃村を訪れると見つかるのは焼け焦げた死体と遺品。丁重に埋葬し慰霊の碑を建てても収まらないとあれば、彼らにはもうお手上げで。
 次々と溢れる噂と事実に触れるも、火種には至らない。より確実な手掛かりを求め、二人は各々の手段で村人たちに話を聞いて回る事にした。

 女子供は噂話が大好きだ。古今東西変わらない性質に感謝しながら、デナイルは脚と耳で情報を稼ぐ。ある女性はこう言った。
「声は必ず夜聞こえるのよ。段々声が大きくなっている気がするの」
 割って入った子供――恐らくは女性の子だろう――は話を付け加える。
「声のする方を覗いてみたんだよ!そうしたら隣村が明るかったんだ。もう焼けて誰もいないのに」
 更に子供達が集まってくる。
「あのね、火がぐるーってまわって近づいてくるの」
「俺達の事を狙ってるんだ!悪い子は燃料にされるって母さんが……」
 声と燐火を直接見聞きした者は複数いる。どれほどが真実か、疑いだしてはキリがないのでツッコミはしないが、ともかく『夜』『廃村の方から』『声と炎が迫ってくる』という共通点は拾うことが出来た。眼鏡の奥、翠緑の瞳を光らせてデナイルは作戦を組み立てていく。
「場所と時間が予測できるなら、そう難しい話じゃないね」

 闇雲に探しても中々確信には迫れない。農夫に神父に語り部に。あらゆる可能性に当たり、最後に村長に辿りついたオイフェ。神の代行者らしく灼かな光に包まれた姿に、村長は救いを見出した。
「事態は急を要しますわ。ご存知の事を話して下さいますわね」
 圧を感じさせない程度に、しかし力強い口調で問うと村長は手をもじもじさせながら歯切れ悪く口を開いた。
「あの炎は彼らの……ヴァンパイアの『火遊び』なのです。声持つ火に震える我らを見て、酒を啜る。そういう興に過ぎませぬ。逃げだせばすぐにでも村ごと焼かれます。我らに出来る事など、何もありはしません……」
「貴方はどこからそれを知ったのでしょう。それに、そこまで知っているのに村民に伝えないなんて、不思議でなりませんわ」
「篝火がやってきたのです。燃える炎が私に告げました。恐ろしい記憶です、誰かに伝播させるなどとんでもない」
 悲痛な面持ちの村長は、余程憔悴していたに違いない。誰にも話せなかった事実を、部外者であるオイフェだからこそ吐露できたのだろう。労わりの聖なる光を浴びせれば、安堵とともに紡がれる懇願。
「どうか、あの篝火を消していただきたい。村を代表して、お願い申し上げます」

 暫くして。合流した二人はお互いの情報を共有しあった。一部の者だけが知っていた事実、皆が知りたがっている真実。導き出された共通点。
「燃やすなんて素敵なことですが……ヴァンパイアが関わっているなら放置できませんね」
「素敵、か。はは……。この村でかなり敵の的は絞れました。まだ時間がありますから、僕は他の村も巡ってより正確な情報を仕入れてきますね」
「そう。では私はこの村の人々を癒していますわ。お気を付けて」


 街道というには心許ない道を、驀進の護符に騎乗し駆け抜ける。時間は有限、となれば一刻も早く多くの者から話を聞く事が、確実で重要だと芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)は理解していた。他の猟兵達よりやや遠く、噂の最端を掴むべく訪れた村では、陽の高い内から井戸端会議で盛り上がる女が数人。他にも何人か農作業や家事に精を出している。
「これは好都合ですねぇ」
 人が多ければそれだけ情報源も増えるのだから。ほくそ笑む晴久は笑顔を対人用に切り替え、旅人を装い村の入り口にいた男に話しかけた。余所者、それも例の噂についての話となれば良い印象は抱かれないのも当然であったが、警戒の眼差しをさして気にせず穏和な笑みを向け燐火について引き出していく。高い話術から繰り出される疑問・相槌・気遣いに段々と絆され、ぽつりぽつりと零れ出すがいまいちハッキリしない話。
「――つまり、その火を直接見た人はこの村には居ないのですね?」
 渋い顔をしながらもそうだ、と頷く村人。これ以上の情報を引き出すのは難しいと判断した晴久は一礼し、村の外れに身を隠した。ぽつんと建つ蔵の裏、誰もいない其処で次はどうするかと考え……腕と指で小さく印を結ぶ。陰陽の気を場に集め、大気を振るわせればぼんやりと浮かぶ輪郭線。最初は丸く、続いて人型に。言の葉に力を籠めて、手のひらサイズのそれに告げる。
「頼みましたよ――顕現し臆せよ、カクレガミ」
 まるで熱せられた空気の様にふわふわ浮遊する式神を召喚すれば、術者以外には見えない事を利用し先程とは違う村人たちの会話の輪に潜り込ませる。ひそひそとしていながらも姦しい声は、拾うのに丁度良い。
「先程の方、燐火について聞いてきたんだって?あの村の関係者かねぇ」
「いやいや、きっと霊媒師さ。なにせ死者の怨念だ。街に火の粉が降りかかる前に消火に来たんだろうよ」
「本物を見たこともないくせによく言う。あんたこそ水でもかけておいで!」
 けらけらと笑い合う人々、その様子からこの村に実害が出ていないのが分かる。護衛は不要、その分猟兵の戦力は戦いに回すべきだと伝えるべく、晴久は村を後にした。陽はまだ沈まない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

雷陣・通
父ちゃんが言っていた
頭を使って、ダメな時は身体も使えって

【POW判定】
情報を整理するために瓦礫を撤去しよう、大きいものは手刀で使いやすいサイズに切って運ぶよ
現場の痕跡が見やすい位になったら改めて調査
頭良くないから分からないけれどきっと何かあるはずだ、分かんなかったら頭のいい人に聞けばいい

その後は仕込みだ
廃材を上手く使って相手が一度に襲ってこれないように柵を作っておくんだ。そうすれば少ない数でも戦える!




 雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)は焼け落ちた村で一人作業を続けていた。人気のない村はひっそりと朽ちてゆくだけなのに、風化せず残る松明と灰に違和感が拭えない。辺りを見渡すと、まだ色濃く残る焼失の跡が嫌でも目に入る。手刀で瓦礫を切り、廃材を退かして炎の痕跡を追う。グリモア猟兵の話では、廃村に何が残っているか鮮明には分からないとの事だったが……。
「酷過ぎるぜ。こんな事ってあるかよ」
 時たま見つかる骨、貴金属。燃え尽きなかった思い出の欠片。拾い上げようと触れたらボロっと崩れる遺物を手で握り潰し、塀の奥に井戸の底、櫓に厨をひっくり返す。余計な事を考える意味は、今はない。
 家屋の中でも一際大きな石造りの建物に入ると、微かに何かが匂った。年若くとも感じる、本能的に嫌な臭い。通の背筋に冷やりとしたものが流れる。悪臭の元を辿れば、赤黒い塊が目に飛び込んだ。『燃えカス』と一言で吐き捨てるにはあまりにも生々しい、生き物だった肉片。
「……あとで皆に知らせねーとな」
 まだ形を保つそれをなるべく見ないようにして、手近な板や布を掛けた。事件が終わったらきちんと土に返してやろうと心に刻み、次の作業にとりかかる。
 切り分けた廃材を合わせ、不格好ながらもそれなりの柵を作り出した通は、出来上がった柵で村を区切っていく。小さい村落だ、このまま作業を進めたら日没までには終わるだろう。敵は猟兵に対しどう出現するのか現段階では不明、ならばあえて狭くすることで一度に攻め込まれる事を防いだ方が良い。少ない数でも戦えるよう、戦場となる廃村をせっせと整える。陽はまだ傾きだしたばかり。

成功 🔵​🔵​🔴​

琥珀川・れに
「伝承ではよく聞く話だよね」

住民は誰か回ってくれていそうだし
【動物と話す】で別の切り口を開いてみよう。
「おおい、カラス達、ネズミ達。〜こういう事を調べているんだけど何か気づいたことはないかい?」

せっかくなので一応【聞き耳】廃墟でと、村の中で。
村人との会話もいいけど、それより炎が出す声に興味が湧いたからね。

何かが起こる予感がする。
吉とでるか凶と出るか、
UC【トリニティエンハンス】で炎属性の防御力を上げておこう。

※何が起こるかわからないのでアドリブ大好き。省略・追加アレンジご自由に。



 民間伝承というものは、場所や時代が違ってもある程度似通っていたりする。此処ダークセイヴァーも例外ではない。他の猟兵が人々に話を聞いてまわってくれるなら、と。琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)は別の切り口で答えに迫っていく。隣村から出て数歩、森の入り口と言って差し支えない場所を陣取り、獣の言語で話しかけた。
「おおい、カラス達。〜こういう事を調べているんだけど何か気づいたことはないかい?」
 それに応えるは賢い鴉。2羽がデュエットするように矢継早に鳴く。人によっては不吉だと感じるかもしれない鳴き声も、れににとっては重要な証言だ。
「――それにしても、火など無い。とは」
 動物は嘘を吐かない。人々の生活にも密接に関わる鴉が知らないのは不自然だ。噂によれば燃え盛っているそうだが、森の住人たちは知らないと言う。となれば燐火と声は人間にしか感知できていないと見るべきだろう。村の中、すっかり意気消沈している村人にそっと近づき話を聞き耳を立てると、やはり話題は例の燐火。
「毎日毎日、頭がおかしくなりそうよ。せめてあの声だけでも無くなって欲しいわ」
「火が喋るなんて抑々ありえねぇ。ありゃ人魂に間違いねぇよ、オラたちの事羨んでるんさ」
 廃村は近いとはいえ、声が届くほど近距離ではない。それがこちらまで響いてくるとなれば、現地では一体どれほどの声なのだろうと少し気になったれには、場所を廃村に移す。
 閑散とした其処は、焼け跡で見るも無残だった。落ちている骨と焦げた装飾品に嫌な予感が走る。何が起こるか分からない今、対策をするに越した事はない。念入りに自らに炎耐性を込めて、夜に備えた。
「声からかな?それとも火?いつでもかかっておいで」

成功 🔵​🔵​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
全く悪趣味なことよ。死してなおも苦しむというのは、良い心地ではあるまいに。
ともかく首魁を釣り出さねばなるまい。では、仕事といこう。

何にせよ、死んだ場のことは、死者に訊くのが手っ取り早い。
【死者の岸辺】で呼び出した死霊に協力を願うとしよう。
どこから来たのか、どのあたりでどこから現れる魂を見たのか、どういう状況で死んだのか――覚えている限りを教えてみろ。
その周辺にある建造物なり水回りなり、調べてみれば何か見つかるやも知れん。
無理やり呼び起こして悪いが……貴様の無念を晴らすためだ、協力を頼むぞ。


クリミネル・ルプス
【廃村を中心としての調査】
視覚と乖離するモノはあると考え.UC『嗅ぎ分けるモノ』で嗅ぎまわる。
本来は攻撃を回避する為に用いるが【周辺の全てを嗅ぎ分け】る特性を生かし、焔が犠牲者がどの様に動いたかを選り分ける。
「……正直、吐きそやな……」
元々高めの嗅覚と相まって気分も悪いが、焔が何も無い所から発生しているわけではないと考える。
空中を飛んでくるなら森に、地面を歩いて来るモノなら地面を崩すかと位置を確認。
覚えた『匂い』で視界にボンヤリとした【敵】の姿をイメージとして構築していく。




 全くもって悪趣味なことよ。ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は内心で謗言を吐かずにはいられなかった。斯様な死に一体なんの意味があるのか、首魁を問い質してやりたい気分を抑えながら廃村に向かう。焼け跡の村は想像していた通り、崩れそうな建物と燃えカスが点々と残るばかり。気が滅入りそうな中、悪いと先に詫びを入れ、目を閉じて場に集中する。死の舞台は死者が1番良く知っている、ならば本人に訊くのが手っ取り早い。大地に眠る記憶の細糸をくいと引き、彼岸より霊魂を呼び寄せる。最初はぼんやりと、やがてくっきりと姿形を保った亡霊がニルズヘッグの周囲に現れ、ふわふわ浮かんでは明滅した。
「起き抜けだろうが、いくつか聞かせてもらう。貴様の無念を晴らすためだ、協力を頼むぞ」
 火はどこから来て何をしたのか。覚えている限りを話すよう促すと、亡霊は惨劇の仔細をニルズヘッグに視せた。絵画のように、鮮烈な場面が脳裏に映る。
 村を守る篝火が消えた夜、突然燐火は現れた。持ち手もいないのに勝手に動きまわり、次々と家に、人に、ありとあらゆるものに燃えうつる。水気を求めた人々は自然と円状の石台に集まる。恐怖に震える瞳に、篝に照らされた黒衣のナニかが見えて……というところで現実の視界が戻ってくる。
「形からして井戸であろうな。調べれば多少なり何ぞ見つかるか」
 向かう先は村の中心。振り向きもせず歩き出す背後で、事件の解決を予感したのかもしれない亡霊は静かに消えていった。

 一方のクリミネル・ルプス(人狼のバーバリアン・f02572)。あらゆる匂いを嗅ぎ分ける嗅覚を駆使し、死の足跡を追っていく。村の中心部に行くほど濃くなる悪臭に、つい顔をしかめた。
「……正直、吐きそやな……」
 含まれているのは腐敗や煙の匂いだけでない。クリミネルの超人的な嗅覚は、死と敵の気配までも捉えていた。焔を辿れば嫌でも鼻につく人々の逃げ惑った残り香。神像の前の炭を集めては横切り、壁に凭れた肉塊を横たわらせ、寄り添い合うような焦げ跡に土を被せる。服が汚れるのも気にせず、誰とも知らぬ亡骸を弔った。案内料にもなりはしないが、此処まで導いてくれた者たちに感謝して――眼前の篝火を見おろした。それは村に元々あっただろうがっちりと組まれた大きな代物。それまで点在していた篝火はどこかしら崩れていたり焼け跡があったのに、これにはそういったものが一つもなく綺麗すぎる。
「ふはっ、流石に隠れるのが下手すぎや」
 わざとらしく言ってから、思い切り蹴りつける! ガラガラと崩れる外枠と薪の中から現れたのは、深いふかい井戸だった。

● 
 派手な音がニルズヘッグの耳に届く。足早に駆けつけて見れば、煤を払うクリミネル。何事かと話を聞いてみれば、巡った道は違えど互いに井戸に辿りついた事が分かる。
「降りてみるか?そろそろ陽も沈む頃合いだが」
「怪しいのは分かっとるし、見張ってたらええやろ」
 ウチの一点張りは強いで、とアタリの匂いに胸を張るクリミネル。その自信溢れる姿に圧され、ニルズヘッグは大船に乗りこんだ。自信がある者が本番に強いものだと分かるから。二人の猟兵は井戸から少し距離をとり、夕陽を背にして山場を待つ。今宵は半月、火などなくても明るさは十分だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オイフェ・アルスター
「亡者のご登場ですの」
亡者の群れを眺めながら嘲笑するかのように呟く

一定の距離を取りつつ【流星の如く聖なる螺旋光】で蹂躙します
気絶する人がいたら、水をぶっかけて起きてもらいましょう。
敵が増えても困りますし……

あとはひたすら浄化するのみですわ。
ヴァンパイアさん、あなたの従者をボコボコですの!!


フォルク・リア
「既に命は絶えているのに、
死に切れてもいない。
ならば、そんな歪な生には
此処で終止符を打つしかないだろう。」
「救うなどと大層な事は言えない。
ただ、止めて見せるさ。」

生命を喰らう漆黒の息吹を発動。
ネクロオーブを漆黒の花びらに変えて
自身の周辺に展開させ
自分の姿を覆い。
影に触れない様にする。
更に近づいて攻撃範囲内の
敵の篝火を撃ち落とし、花びらで切り裂いて
確実に仕留め。
復活させられない様に原型を留めない程に損傷させるか。
木や廃屋の下敷きにする、穴や崖があれば
そこから落下させるなど復活しても
戦場に戻れない様にする。

「死者に対する扱いでない事は承知しているが、
此方も余裕がないんでね。」
事が終わったら弔うさ。




 星の光が目に刺さるような夜。ある猟兵達は廃村を囲うように、またある猟兵は特定の場所に狙いを定めて敵襲に備えていた。灯りを消し、息を潜めて。死角を潰すように互いに背を預け、いつでも抜けるよう武器に手を掛ける。森のざわめきも聞こえない中、その時を待つ。
 日付も変わる頃、それは音もなく現れた。村の中央に浮き上がったひとつの炎は、拳大から人の頭程に膨れ縦に横にと踊り出す。炎が動くたびに耳に響く、助けを求める声。心ある者ならばつい向かってしまうだろう切ない叫び。しかし、それが罠だと猟兵は知っている。しばらく様子を窺うと炎は二つに分かれ、8つになったところで円を描くように回り出した。ゆらゆらと燃える炎の下、ぐにゃりと空間が歪み、呻きと共に黒衣を纏った亡者が具現する! これ以上待つ必要は無い。タイミングと間合いを見計らい、猟兵の鎮火作戦が始まった――。



「亡者のご登場ですの」
 嘲笑するかのように呟くオイフェ。亡者を眺める眼差しは柔らかくも冷たい。琥珀の瞳で捉えた橙に、流星の如く聖なる螺旋光を降り注げば、亡者の肌は塩酸を浴びたようにジュワジュワと焼け、痛みに狂い叫びをまき散らす。浄化の煌めきを炎杖で振り払い、新たな炎を呼び起こさんと詠唱を始めるが隙は大きく、用意していたバケツを掴むには十分な余裕。近づかれるより先に一歩踏み込み、一気に水をぶっかけた! 炎を守るべく身を挺して庇う背中を、渦巻く聖光が貫く。螺子か蔓か、はたまたドリルか、渇いた肉を抉る光は杭となって亡者を地面に縫いとめる。こうなってしまえばあとは蹂躙するのみ。神罰を下すオイフェの顔には、薄らと笑みが浮かんでいた。
「浄化の時間ですわ。大丈夫、あとは逝くだけですから……存分にボコられて下さいね」

 魔力を宿す呪われた宝珠を黒い鳳仙花の花弁に変え、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は自身を覆い隠した。死の影に触れぬよう闇に紛れながら亡者に近づいて、一呼吸の刹那。気付かれるよりも早く、無数の花弁を偽りの生の炎にぶつける。撃ち落とされた炎は地に触れても燃え続け、亡者は命の源を掬おうと縋りつく。逆巻く漆黒の花嵐はローブごと炎を切り裂き、急激に周囲の熱と明かりを奪った。可哀想に、星の光ではか細すぎるのだろう――標を失い崩れる体は一コマずつに刻まれ、二度と復活できない程にバラされた。原型すら残らない徹底ぶり。油断の欠片も無い証拠だ。念には念を入れ、手近な廃材を襤褸切れとなった亡者に被せる。
「死者に対する扱いでない事は承知しているが、此方も余裕がないんでね」
 全てが終わったら弔う事を約束し、瓦礫に埋もれた炎に一片の花びらを添える。炎がこれだけなら良かったがなとごちて、その場を後にした。

 ふたつの炎を失い、意味のわからない言葉を喚き出す炎がひとつ。焦りか、怒りか、嘆きか。手にした灯火の炎を倍にも膨らませ、オイフェに襲いかかろうと折れそうな足で走り寄る。しかし、なりふり構わない動きでは高速詠唱には間に合わない。
「跪きなさい。請いなさい。罪を認めなさい。聖なる光に包まれて浄化されなさい」
 夜を割る光線が亡者を追い詰める。強すぎる救いの光は目深に被ったフードを貫通し、目を焼いた。よろめきながら近寄るもその度に距離をとられ、中々オイフェに辿りつくことが出来ない。ふふふと口元に手を当て、上品に微笑む神の代行者。
「私の前に出てきたのが間違いね。さようなら」
 ついに振りかぶった亡者にざくり、空く風穴。物陰から飛び出したフォルクが生み出した花弁は、太い突剣となり炎を背後から刈り取った。伏して揺れる灯。主の元に戻った鳳仙花に寄り添いながらそれを見下ろす瞳は、誰からも見えない。
「救うなどと大層な事は言えない。ただ、止めて見せるさ」
 小さく、誰に伝えるでもない言の葉を花の香りに乗せて。二人はまだ残る炎を片付けに向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

デナイル・ヒステリカル
彼らが噂の燐火の正体ですか。
この事件の黒幕である吸血鬼の排除も重要ですが、実働である彼らの打倒も大事な役目です。

しかし相手は多人数、一筋縄ではいかないでしょう。
こちらも数で対抗していこうと思います。
ユーベルコード:バーチャルレギオンを使用して、機械兵士を召喚します。
援護射撃で味方の支援と、逃走する敵へ先回りして戦場を限定させましょう。逃がせばどこかで同じことをするかもしれません。厄介です。
敵の主な武器である篝火を撃ち落とすのが狙いです。


クリミネル・ルプス
【戦闘方針】
井戸から出現するとやら予測しているが周辺もある程度は警戒。
事前に連携取れれば奇襲の事は他の猟兵に知らせておく。
敵が出現したと同時に狭い入り口周辺にいる敵の群れに上空から飛び込み、人狼咆哮をぶっ放す(篝火の影対策)
以降はちまちま確実に一体ずつ潰し、戦闘不能の敵が復活しない様に立ち回る。

敵の動きを妨げるバリケードを作ってくれているので【数に押されて逃げ腰になっている】振りをしてそちらに誘い込む。他の猟兵に聞こえる様に大きめの声で。
「アカン!数が多過ぎや!逃げるが勝ちや!!」

【心情】
獣化せずとも獣の如き形相で
「焼かれたヒトの痛みも苦しみもワカらんわ?…でもなぁ『匂うん』や!」


琥珀川・れに
一応人だったものだ、気持ち的になんとなく挨拶をする
「やあ、僕はレニー
喋る炎とは君達のことかい?…だんまりだ。違うのかな?」

こんな姿になってしまってはまともな形で葬えない。
せめて輪廻の輪に戻れるようUC【ブラッドガイスト】で僕の地肉となり次の生を受けるといい

近接戦になる。
技能【火炎耐性】と
前章で炎属性の防御力をあげている
村の人を救う。また亡者に救いの手を差し伸べる為炎まみれでも我慢しよう
まさに【捨て身の一撃】かな?

「僕の腕の中で安心しておかえり」


※アドリブ大好き。省略・追加アレンジご自由に


ディアリス・メランウォロス
亡者とは既に亡き者、今を生きる人々を穢す権利などない。
君達も辛かっただろう、元凶は我々猟兵が必ず仕留めるから安心して眠るといい。

黒剣を握りしめて叩き斬っていくよ。
篝火の炎はもちろん影にも注意を払って立ち回りを考えなくてはね。
多少余裕があるようなら周りの猟兵達の手伝いや加勢もしていきたいところだね。

さて、そろそろ元凶のお出ましかな?



熱で空間が歪む。熱さを感じていないのか、亡霊は灯を手にじりじりと猟兵達に迫り寄る。濃紺の夜に輝く星を滲ませる揺らめきは残り5つ。対峙するのは真っ直ぐ銃口を向けるデナイルと、黒剣を構えるディアリス。フード下の視線を探る様にしばし睨みあい……先に動いたのは亡者。短い呻きを引き金に灯から放たれる火球は見た目以上に素早く、二人を燃やさんと束になって襲いかかる!


 飛来する火球に照準を合わせ、射的のようにデナイルが撃ち落とすが数が多い。捌ききれない火球はディアリスが叩き斬って打ち消す。黒剣に炎が写り込み、橙を孕んだ一閃が夜に走った。降り下した勢いが失われる前に横切りで薙ぎ払えば、怨嗟の声を響かせて割かれた火球は燃え尽きる。
「辛かっただろう、元凶は我々猟兵が必ず仕留めるから安心して眠るといい」
 地に軽く片手をつき、タンッと弾けるように一回転。炎は煤となりほろほろと舞い散って地に還る。それを一瞥し、今度灯される時は意味ある生であるようにと祈りを捧げてから、視線を前に戻した。
 単発の射撃では間に合わないと判断したデナイルは、銃身に額を付け、囁くように短く詠唱を紡ぐ。電子の世界より呼び寄せられた膝丈ほどの精霊たち。その数百以上、数には数で対抗するのが吉。軍隊のように規律正しく揃った足並みで、疲れ知らずの配下たちは灯を圧す。否、圧しこめる。猟兵により事前に作られた柵が、亡者の後退を妨害していた。瓦礫で出来た柵は簡単に壊れそうで、組み合わせが上手いのか存外燃えも崩れもしない。殿がガタガタと柵を壊すのに手間取っている間、手前の亡者は火球を投げ続けて電子精霊を一撃で消し飛ばしていく。数の利も段々と減ってきた中、亡者との競り合いが拮抗してきた具合を見計らいデナイルが叫んだ。
「――今です!」
「待っとったで!」
 応えたのは白を纏う赤い瞳。声はどこから聞こえるのか、見上げれば切り取られる亡者の視界。
 落ちてきたとも降ってきたとも違う、的確に狙いを定めて飛び込んできたのはクリミネル。着地と同時に鼓膜を破らんばかりの激しい咆哮をあげれば、衝撃波は空気を伝い、亡者の一体を内側から破壊する! 火花を散らして四散した仲間を見て炎は更に揺れた。まるで動揺しているようにも見える灯。しかし、例えそう見えても彼らにもう人の心は無く、ただ生者に恨みと救済を求め繰り返しているに過ぎない。
「焼かれたヒトの痛みも苦しみもワカらんわ?……でもなぁ『匂うん』や!」
 匂いは鼻だけで感じるものに限らない。記憶から甦る不快な香りを吹き飛ばすように、叫ぶ。死臭は霧散し、デナイルとディアリスにまで届いた。戦場に居る以上付いて回る香りに顔をしかめたくなるも、それはほんの少し、悲しくて。
「……吸血鬼の排除も重要ですが、実働である彼らの打倒も大事な役目です。必ずこの連鎖を断ちましょう!」
「そうですね。彼らを人の姿で逝かせる事はできなくても、せめて次の犠牲者を出さないように」
 4つとなった灯火は背を預け身を寄せ合い、三方へ向けて其々火球を放った。火球に照らされた地面に写る亡者の影が、猟兵の動きを捕えようと鞭のように伸び寄る。電子精霊は片手で数えるまでに減り、壁とするには心許ない。残り少ない弾丸で応戦するデナイルと、込められた想いを声に乗せ刃とするクリミネル、二人を守るディアリス。優勢に見えた状況は火球と影により押し返され始めていた。あと一人、こちらにも戦力があればと誰かが思った時、猟兵の横を素早い人影が駆け抜ける。
 身を低くして弾幕に当たらないよう亡者に急接近するのは、誇り高き紫の騎士王子れに。細身の突剣を灯火を持つ腕に刺し、弧を描くように下に引く。肉が破れ、前に引き摺られる身体からは火花が溢れた。熱い、が、受け止めきれる。火のルーンの加護を借りながら、腕と剣で鍔迫り合う。他の亡者はれにを剥がそうと振り向き炎杖を翳したが、背後を見せたのが命取り。隙をついて側面から背面をとったクリミネルの拳が、灯火を掴み握り潰した。
「余所見はアカンで」
 暴れる炎はより一層勢いを増し、夜を焦がす。かろうじて保たれていた亡者たちの統率が失われた今がチャンスと、ディアリスは走り出しデナイルも掲げられた灯火を狙う。
『たす……けて……』
 声が聞こえたような気がした。誰のものでもなく、誰かだった人の声。ギリギリと腕を斬り上げるれにの剣に、ついに屈する亡者。ふっ、と優しく笑う。 
「僕の腕の中で安心しておかえり」
 安堵を誘う葬送の言葉。グキリと音を立て、骨の筋に沿い開かれる腕。力なく炎杖を落とす亡者。完璧な所作にヒュゥ、と口笛を飛ばしたクリミネルは、転がってきた炎杖を踏みしめてトドメを刺した。
 残るはあと二つ。ここまで減らされては勝ち目は薄いと判断したのか、亡者は東西に分かれて逃げ出そうと試みるが猟兵はそれを許さない。足元に撃ったデナイルの先制攻撃に、ビクリと一瞬立ち止まったのが運の尽き。黒剣が脳天から黒衣を叩く。中心から鮮やかな火花をまき散らし倒れるさまを確認したら、残る灯火はあとひとつ。
「大丈夫、君の魂は僕の血肉となり、輪廻の輪に循環する。だから、もう此処で苦しまなくていいんだ」
 ぐらり、炎が歪な形をとる。返事をしたのか、諦めたのか、確かめる術はない。人の心は失われているはずなのだから。ゆっくりと近づくれにから、逃げずに佇む亡者。ドスリと灯火の根本を突き、風を巻き込んだ剣戟でかき消した。


 死を弄ばれた者たちは全て消滅した。あとは元凶たるヴァンパイアを残すのみ。
「さて、そろそろ元凶のお出ましかな?」
「随分な呼び方ではないか。悪戯が過ぎるぞ」
 遊興を壊されて黙っているような性質ではないのだろう、半分冗談半分皮肉を込めて挑発するディアリスに、すかさず応えが返ってくる。廃村の中央、冷えた篝火に突然ゴウッと赤い火が灯る。闇夜を背負った白髪のヴァンパイアが炎の中より現れた。
「此処を私の遊戯場と知っての戯れか?だとしたら歓迎しよう、すぐにでも遊んでやる――私の娯楽の一環としてな」
 魔力を蓄積した赫腕が唸る。彼の者をうち倒し、消火しきるまで、あと少し――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

三原・凛花
【依頼掲示板前広場】の皆と連携するよ。

来たばかりで詳細を完全には掴み切れてないけど、随分火遊びがお好きなオブリビオンみたいだね。
だったらわたしがもっと楽しくしてあげる。

【呪詛】を全開にした状態で、【呪詛の篝火】を発動。
21個の鬼火を一つに合体させて、れにさん(f00693)が剣で敵を串刺しにして動きを止めるのを待つよ。
そしてれにさんが離れたところを見計らって、鬼火を【衝撃波】に乗せて敵を串刺しにしている剣に向かって放つ!
鬼火の熱が剣から体内に伝わり、内臓を直接焼かれることになるわけだね。

どう、最っ高に楽しいでしょ、バーベキューって。
まあオブリビオンの串焼きなんて食べたくもないけど。


オイフェ・アルスター
WIZ
他の猟兵と共闘しますの。
「火遊びは程々になさった方がよろしくてよ? 」
不敵な笑みを浮かべつつ、ヴァンパイアと対峙します。

【地形の利用】で廃村の障害物を利用して、攻撃を避けますの。
【高速詠唱】で【流星の如き聖なる螺旋光】を放っていきますわ。
影の蝙蝠も杖で【属性攻撃】をして撃退しつつ、ヴァンパイアに隙あれば攻撃をしかけますの。
「貴方のだーい好きな光ですわ。火傷には注意してくださいまし」


エウトティア・ナトゥア
WIZを使用します。
チーム【依頼掲示板前広場】で参加するのじゃ。

娯楽で他者を弄ぶのかの?ちとお仕置きが必要じゃな。

まずは、マニトゥに騎乗し、騎射でレニー殿(f00693)の攻撃を援護しようかの。

おお、レニー殿が上手く『ヴァンパイア』の動きを止めてくれたようじゃな。
好機じゃ、リンカ殿(f10247)も攻撃の準備をしているようじゃし、わしも便乗して一気に畳み掛けるのがよいじゃろう。
リンカ殿と同時に「破魔」の「祈り」を載せた砲撃で『ヴァンパイア』を撃ちぬくのじゃ!

(焼かれるヴァンパイアを見て)お、おう…リンカ殿、ノリノリじゃのう…


デナイル・ヒステリカル
敵はヴァンパイア。この世界を支配する種族の一角。僕一人だけの個人プレーでは太刀打ちできませんね。【依頼掲示板前広場】の方々と協力して挑みます。琥珀川さん(f00693)が敵に接近するために、スマートガンを撃って援護をします。目眩ましになれば充分です。その後は前衛が引いたタイミングを見計らい、合図を待ってUC:ライトニングストライクを使用します。狙いは敵ではなく突き刺さった魔法剣。 金属は電流を通し、生物の内部は電気抵抗が弱い。大きな効果を望める筈だと考えます。彼がこの件の黒幕だとして、何故このような回りくどい策を練ったのかは分かりませんが優先すべきは事態の解決です。ここで打倒させてもらいます。


琥珀川・れに
デナイル/凛花/エウトティア
【依頼掲示板前広場】チーム

僕は一人じゃないよ
UC【クィニティ・エンハンス】1章の炎に加え雷の魔力を魔法剣に帯びさせる

【串刺し】して動きを止めたら剣を刺したまま僕はすぐさま離れる
「今だ!」
すぐに味方の攻撃が集中砲火して避雷針のように集まり剣を押し傷をえぐり熱伝導と電気伝導を起こすさ

静電気は火も引き寄せるのかな?
試したことはないけれど、オブリビオンの鬼火なら引き寄せられる

僕たちの炎と引き寄せた自らの火で焼かれるといい。【属性攻撃】

「焼けたけど…吸血鬼のBBQが好物なんて人はいないよね?」

※アドリブ楽しみ。省略・追加ご自由に


ディアリス・メランウォロス
どうやら遊び相手を間違えたようだね、ヴァンパイア。
貴様が弄んだ全てに懺悔しながら塵と化せ。

飛んでくる契約書は避け、刀剣は叩き折るつもりで弾いていこう。
強敵には違いないから油断しないようにしないとね。
影の蝙蝠を発見することができたなら斬っていきたいところだ。
仲間が追跡されていたら声をかけよう。


クリミネル・ルプス
【戦闘方針】
攻撃をUC『嗅ぎ分けるモノ』で躱しながらヒットアンドアウェイが基本。出来る限り、此方に意識を向けさせる。
剣を操って来たら、剣の中を敵の方に向けて潜り抜ける。
他の猟兵のチャンスを作れる様に動く事を意識する。
【心情】
「あー、腐った【匂い】のする焔やなぁ…」
ヴァンパイアの出現と同時に迸った篝火から感じた【匂い】から今のままでは殺しきれないと判断。
「今夜は半月やからな?」
身体は獣化するが頭の中は冷めた怒り。


【戦闘後】
篝火ではなく、弔いを、せめて安らかに眠れるように、丁寧に埋葬をする。




 残忍さを凝縮した嗜虐の笑みを浮かべながら、炎を掻き分け現れたヴァンパイアは大仰に口上を述べた。
「今からお前たちが私の玩具だ。精々楽しませろ」
 猟兵達の事を、活きの良い玩具が来た、程度にしか考えていない傲慢な一言。無力な魂を弄ぶだけでは飽き足らない強欲さに、ある者は苛つき、ある者は呆れ、またある者は嘲笑った。
「火遊びは程々になさった方がよろしくてよ?」
 両者の間に走る緊張を意に介さず、オイフェは不敵な笑みを浮かべてヴァンパイアと対峙する。一人でこの邪悪に神罰を執行するのは難しい、だが今は共に戦う仲間がいるのだ。何を恐れる必要があるというのだろう。だからこそ、この笑みはこれから勝者となるべき彼女にふさわしい。
「あー、腐った【匂い】のする焔やなぁ……」
 隣に立ち並び不機嫌を露わにするクリミネルは、鼻の前で手をぱたぱたと振った。ヴァンパイアを擁する篝火から感じた匂い――蹂躙者の持つ圧倒的な死のオーラから、今のままでは殺しきれないと、静かに状況分析。幸いにして今宵は半月、十全とはいかなくても天運はこちらに味方しているはず。沸々と湧き上がる怒りは胸に秘め、クリミネルは人の姿よりも実力を解放できる人狼形態に姿を変えた。半身を引き、拳を構える。
 その様子を黙って見ているわけもなく、ヴァンパイアは両腕を広げ、呟くように召喚術を行使。虐殺の剣を篝火の炎から引き摺り出した。10を優に超える剣は真っ赤な刀身を光らせ、ヒュンヒュンと猟兵に向かってくる! 
「軽い」
 黒剣を手に躍り出たディアリスが、ガチンと音を立て飛剣を叩き落とす。持ち手のいない剣を征するなど、使い手であるディアリスにとっては容易い。横に薙ぎ払い3本纏めて吹き飛ばせば、ぶつかり合う剣戟。巻き込まれないようオイフェは周囲に散らばる瓦礫に身を隠してやり過ごし、クリミネルはあえて剣の乱舞に向かって走り出した。頬を掠める炎剣、じわりと浮かび上がる血の筋。『嗅ぎ分けるモノ』で気配を読み取り、紙一重で躱していなければ、首と胴が離れていただろう。
「鬼さんこちら、っと。そんな動きじゃウチには追いつけんで!」
 右に左に、バネのように身体を弾ませる動きはヴァンパイアを翻弄し、剣の軌道を引き寄せた。
 視線が自身から逸れた事を確認し、オイフェは物陰で神速の高速詠唱を紡ぐ。編んだ術式は青白い光となり、空を割く『流星の如き聖なる螺旋光』が夜に迸った。剣に命中した光は収束し、点を打つように刀身に穴を開ける。その穴にディアリスが黒剣をねじ込めば、ビキビキとヒビが走った。ギュっと力を込めて押し付けると、剣は砕け破片が飛び散る。きらきらと聖光を反射して地に堕ちる様は、まさに流星。
 ヴァンパイアは「ちっ」と舌打ちした。足りない手数を埋める為、新たな使役を呼び出さんと赤腕を振るう。召喚に応じたのは影に溶ける真っ黒な蝙蝠たち。篝火の炎で微かに輪郭線を捕えられるものの、目を凝らして見つめる程の余裕はない。蝙蝠はじわりと闇に隠れ、猟兵を食い破る機会を伺う。下手に動けばヴァンパイアが襲い来る、かといってヴァンパイアだけを見ていては敵の思う壺。静寂が辺りを包み、相手の吐息も聞こえそうな中、互いに一歩も退かない。
「――――オイフェさんっ、上です!」
 ディアリスが叫ぶ。反射的に見上げたオイフェの目に映ったのは、頭上に集う巨影。半月を覆い隠す黒。聖光を呼び寄せるには距離が近すぎた。首筋に狙いを定め急降下する蝙蝠の群れは――ディアリスによって斬り伏せられる! 黒騎士は転がるようにオイフェの足元に飛び込んで、闇すら断つ呪いの黒剣を翻し闇色の翼を血で濡らした。
「露と消えなさい!」
 ぼたぼたと臓物と血を零しながら尚も諦めない蝙蝠に鬱陶しさを感じながら、オイフェはこれでもかとばかりに星を宿した聖杖で力いっぱい殴打した。
 その間ヴァンパイアを放置していたわけではない。まだ飛び交う剣を引き付けるクリミネルは、ランダムに動いているように見えて、しかし確実に本元との距離を縮めていた。近づけばそれだけ剣の密度は増し、避ける空間は減っていく。面倒やな、と内心で文句を言いながら考える――如何に強力な術といえど、操るものが多ければ術者の意識は分散する……それをひとつに纏める事が出来れば大きな隙が生まれると思い至ったクリミネルは、地に両足を着けわざとらしくヴァンパイアに背を向けた。殺せる者から殺すと合理的に判断したヴァンパイアは、心臓を貫かんと飛剣でクリミネルの四方を囲む。
 もらった、と思ったのはどちらか。
 剣に命令が伝わるより先に、眩い閃光がヴァンパイアの視界を奪う! オイフェの螺旋光が瞬いたと同時に、駆けだす二人。
「いっぺん死んどき!」
「貴様が弄んだ全てに懺悔しながら塵と化せ」
 クリミネルの拳が腹に食い込み、ディアリスの刃が赤腕を切り落とした。


「ああああああ!貴様ら、よくも、よくも!」
 片腕を失ったヴァンパイアは怨毒の念を漂わせ唸る。底冷えする低温は耳に残り煩わしい。血走った紅い翼を広げ、宙に飛び上がると同時に再び飛剣を突き下ろす! 狙いは後方で呪術に集中する三原・凛花(『聖霊』に憑かれた少女・f10247)。怨嗟が煮詰まった呪詛を開放し『呪詛の篝火』で黒い鬼火を産み出している様子を目敏く見つけたヴァンパイアは、飛剣を一直線に凛花に向かわせる。
 そこに割り込む一匹の獣とヒト。聖獣マニトゥに騎乗したエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)だ。向かい来る剣をマニトゥの尾が払い、凛花を庇う。
「怪我はないかの?」
「大丈夫!ありがとうエウトティアさん。はぁ、随分火遊びがお好きなオブリビオンみたいだね。だったらわたしがもっと楽しくしてあげる」
 鬼火は21個にまで膨れ上がり、凛花の周りを漂う。廃村に集った燐火と違うのは、彼女の意思で発熱・延焼すること。積年の恨み辛みは円を描き、くるくると高速回転を始めやがて一つの大きな炎となった。ずっしりと重量さえ感じるようなドス黒い炎を従えて、然るべき時を待つ。
 一度は払われた赤い剣は、しばらくすると息を吹き返し、ヴァンパイアの間近で刀身を交差させて主人を守る体勢に入った。これを破るには多少骨が折れるかもしれない。デナイルは死角を探しながら、スマートガンで1発ずつ確実に当てては堅牢な守備を崩していく。鋼より固い刀身でも弾丸の衝撃が蓄積されれば脆くなり、一部が欠けたら流れは掴んだも同然で。
 一方、後方。纏わせていた炎はそのまま、更に絡めるように雷の魔力を魔法剣に帯びさせるれに。芯から吹き出す剣士の誇りが彼女を奮い立たせた。1、2回魔法剣を振り具合を確かめる。その間れにを守るエウトティアとマニトゥは、次々と蝙蝠を噛み千切り、人狼一体となって使役どもをねじ伏せていく。着実に数を減らされ、悪態を吐き捨てるヴァンパイア。白い貌には青筋と汗が浮かんでいた。
 ――炎雷の相性は良好、必ず上手くいく。確信を持つれに。
「少し、耐えてくれ。絶対に成功させてみせる」
 走り回るデナイルにも届くよう少しだけ声を張れば、三人それぞれから無言の了解が返ってくる。頼もしい仲間の相槌に感謝して、ヴァンパイアに向かって駆け出すれに。優れた援護射撃に後押しされながら、全身全速で間合いを詰めてゆく。その背後をエウトティアの精霊力が守り、集る蝙蝠からの痛み和らげた。
 数歩踏みこめば魔法剣がヴァンパイアを捕える。
「れにさん、準備は出来たよ!」
「何時でもいけるのじゃよ!」
 猟犬の声に篝火は震える。
 助走の勢いを保ったままぐっと屈み込み、れには反動で高く跳ねた。重力を乗せ、杭を打つように魔法剣を脳天に突き刺す! 頭蓋を貫き喉を抜け、胴体にまで達した魔法剣はバチバチと帯電し火花を散らし出した。素早く場から離れるれに。
「がっ……!」
 ヴァンパイアの身体がよろめく。簡単には死ねない身体が痛みを訴え、制御の効かなくなった使役たちは無差別の攻撃を始めた。意思と言う枷を無くした今、力は何倍にもなって猟犬に降りかかる!残された片腕を高く振り上げる動作を見て、れにが叫ぶ。
「今だ!」
 号令を待っていたデナイル・エウトティア・凛花が、一斉に照準をヴァンパイアから生える魔法剣に向けた。
 凛花が放った衝撃波にのって、巨大な鬼火が刀身にぶち当たり、熱を発する。下段からは破魔の祈りが宿ったエウトティアの『天穹貫く緋色の光条』が白い皮膚を破った。
「PSIプログラム実行。チャージ完了。これが雷霆だ……!」
 最後に突きだした拳から射出されるデナイルの『ライトニングストライク』が、魔法剣を使いヴァンパイアの内部を抉り取って。内臓が茹り、干上がり、焦げる独特の匂いが立ち込める。避雷針の役目を果たした魔法剣は、三人の攻撃を正しく全てヴァンパイアに伝えた。熱と電気伝導で煮沸する血。せめて道連れにと伸ばした腕は虚しく空を掻く。眼球は焼け爛れもう何も映さない。
「僕たちの炎と引き寄せた自らの火で焼かれるといい」
 ヒトの苦しみを愉悦と笑っていた支配者は、がくりと膝をつく。慈悲の炎撃が爆ぜ、ボッと激しく炎上するヴァンパイアの肉体。篝火の炎は萎れるように窄み、静かに消えた。


 燃え尽きた屍を見下ろし、事切れていることを確認するエウトティア。炭を通り越し灰になりかけたそれに水をかける。念を入れるに越した事はない。
「娯楽で他者を弄ぶのからじゃよ。それにしてもちとお仕置きがキツかったかの?」
「最っ高に楽しかったでしょ、バーベキューって!」
 おどける凛花に苦笑するれにとデナイル。勝利に胸をなで下ろし、軽口を叩く余裕が出てきたのだろう。表情は晴れやかだった。
「焼けたけど……吸血鬼のBBQが好物なんて人はいないよね?」
「ははは、流石にね。それにしても、何故このような回りくどい策を練ったのかは分かりませんが、黒幕をここで打倒できて良かったですね」
 討伐が終わった夜に、段々と陽が昇り出す。燐火となった死者の魂は天へと昇り、屍は土へと還って、この物語はお終い。簡易的ながらも建てられた墓に、花が添えられる日も遠くない――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト