何奴も此奴も壊れてしまえばいいのだ(作者 やさしいせかい
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●因果怨報
 帝都の一画に聳える煌びやかな燈を灯す夜の華――遊郭。その名も『小夜曲苑』、知る人ぞ知る名店である。
 四つ辻の一角に面を向けるこの店は立地に優れ、往来を行く者達の目を引き興味を湧かせ、そして一度足を踏み入れれば遊女の質に満足した者が惚けた顔を晒して帰って行く。立地に限らず店としての『格』も優秀だと客達は囁き合っていた。
 故に、その夜の騒ぎは大勢が目にし、巻き込まれた。
 絢爛の一言を表すに至る名店を覆う影は夜闇よりも濃く、粘質な瘴気から湧いた影朧の集団によって。
 襤褸切れとなりかけた衣に縫い付けられた桜紋を鮮血が汚す。
「ぎゃあああ!? ぁ、あっ、やめ――ふッんぐ?!」
「黙れ下衆共」
 哀れ、遊郭の主人だった男は命乞いすら許されず。彼を切り捨てた剣士の瞳には強い憎悪が滲んでいた。
 装束に縫いつけられし桜の紋。鉢金に刻まれた帝都を象徴せんとする印は、影朧として蘇った女達がかつて其の身を過去の大戦に費やした者達だと証明している。
 どことなく虚ろな目の者もいれば、憎悪に顔を歪ませる者。程度の差こそあれ影朧になってから何かあったのかもしれない。
 尤も、それを遊郭の住人達が知る由も無い。
「殺して」
 阿鼻叫喚となった『逢魔が辻』の場に凛とした声が響く。
 『小夜曲苑』上階の露台から顔を出したのは豪奢な着物に身を包んだ姿の女性だ。煌びやかな様相に反して顔を仮面で隠して陰鬱な雰囲気を醸し出している。
 しかしその背に憑いている瘴気は彼女が影朧である証左。この、『逢魔が辻』の内を支配する影朧だった。
「人を人とも思わない下郎の巣……偽りの栄華を餌に遊女となった女を縛り付ける、屑の巣窟。忘れたとは言わせない、私を……『私たち』を、犯して壊した。男も女も、全て血に溺れて死んでしまえ。
 ほら……ほら! 使い棄てられた影朧達、骸に集る蟲共! みんなみんな、地獄に落としてしまいなさい――!!」

●自棄の影朧
 シック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)はクラクラとした様子で頭を振って言った。
「予知にも色々あるんだな……夢から醒める夢の後に来たから全部夢かと思ったぞ……」
 シュンとした犬耳をピンと立て直す。
 グリモア猟兵、シックが言うにはサクラミラージュの帝都にある遊郭で『逢魔が辻』が発生するらしい。
 場所を選ばない現象であるが、ここまで限定的に現れるとは運が無い。彼女は複雑な表情で語った。
「連中の初動は遊郭の占拠だ、従業員は殺されるかも知れないが遊女達なら救えるかもな。
 影朧の集団の中には旧帝都軍に携わっていた隊士もいるみたいだった……が、あれは正気じゃないな。影朧にまともなのがいる事自体そうそうないって話とは言え、登場人物全員キマッてるのは笑えない。
 狭い場での戦いになりそうだから注意してくれよな」


やさしいせかい
 初めましてやさしいせかいです、よろしくお願いします。

「シナリオ詳細」

『第一章:集団戦』
 遊郭を取り囲み、内部に切り込んでいる影朧『桜花組隊士』達との集団戦になります。
 とにかく数が多いわけではなく、猟兵一人に対して二人がかりで挑んで来るように動いています。
 調子よければ何組か倒せると思いますので上手く撃破(無力化)して下さい。

『第二章:集団戦』
 遊郭の陰に潜んでいた影朧の花が隊士(他の影朧)や遊郭従業員の体を乗っ取って襲ってきます。
 こちらは乱戦になりそうな雰囲気です。第一章と同じく上手く対処して下さい。

『第三章:ボス戦』
 遊郭最上階の『小夜曲苑牢座敷』にて迷路のようになった空間をボスと猟兵がヒット&アウェイ型に戦いを繰り返します。(猟兵のプレイング次第で変わります)
 強い憎悪を漲らせている相手です。

●当シナリオにおける描写について
 三章全てにおいて描写(リプレイ)中、同行者または連携などのアクションが必要な場合はプレイング中にそういった『同行者:◯◯』や『他者との連携OK』などの一文を添えて頂けると良いかと思います。
 また、三章通して戦闘オンリーなシナリオになると思われます。

 以上。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 集団戦 『旧帝都軍突撃隊・桜花組隊員』

POW ●疑似幻朧桜の鉄刃
自身の装備武器を無数の【自分の寿命を代償に起動する鋼鉄の桜】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD ●疑似幻朧桜の霊縛
【舞い散る桜の花びら】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●疑似幻朧桜の癒やし
【自分の生命力を分け与える桜吹雪】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●見つけた
 夜半、既に『逢魔が辻』は発生し四つ辻の中央にまで侵蝕した瘴気の闇が遊郭を覆っていた。
 『小夜曲苑』の雇っていた警邏は影朧となった旧帝都軍突撃隊の手によって葬られており、じきに店の前に積まれた非力な障害物も取り除かれて殺戮が始まるだろう。
「この中よ。この中に居る者は皆、貴方達を使い捨てた連中よ。
 未来なんて知った事かと言い捨てて、御国の為に戦った貴女達隊士を侮辱し見世物にして――此処に居る遊女も皆、裏切り者でしかない。
 だってそうでしょう? 彼女達も貴女達を笑っていたんだもの、命を懸ける事は醜いと、美貌と金さえあれば良いのだと言い嘯いた女狐共」
 殺しなさい。と、遊女の姿をした影朧の女は指差した。
 渦巻く瘴気に比例してその場にいる他の影朧達の憎悪が膨れ上がる。
「許さない……私たちを、よくも……」
「フゥ……ふゥゥ……! 殺す! 殺すッ――!!」
 影朧達の放つ桜花弁の刃が入り乱れ、吹き荒れ、そうして遂にバリケードが破壊された。

 鋒を向ける相手を間違えた女達は、魔女の囁きに惑わされるがままにその足を踏み入れて行くのだった。
朱酉・逢真
お前さんがたに何があったかは知らん。わからん。興味もない。知ったところで何のなぐさめにもなりゃあしねえだろ。
だから夢を見せよう。突入した瞬間から夢の中だ。好きなだけ憎いやつを殺し、気の済むまでいたぶるがいい。
夢の中で存分にストレス発散して、正気を取り戻したらいい。なァに、夢の中で何年経とうが現実じゃ一眠りさ。
すっきりしたら転生の選択肢も選べるだろう。それでも転生したくねえってんならそれもいい。夢見るままに苦しまず逝くがいいのさ。


●夢
 ――バリケードを破って直ぐに視界に飛び込む、遊女を盾にして下がろうとする男の姿。
「ッッ! 覚悟ぉぉおお!!」
 既に抜刀していた鉄刃を桜吹雪へと昇華させ、舞い散る鋼鉄の花弁を纏って捨て身の突撃を行う。
 距離にして数十尺飛んで。尚滑空する桜花組隊士の少女は滾る憎悪を隠しもせず、一瞬で遊女の背後に隠れていた男のみを八つ裂きにして錐揉みさせる。
 少女は吼える。
「卑怯千万……っ、悪漢の極み! はぁっ、はぁ……やっぱりそうだ、こいつらはみんな! 何奴も此奴もォッ!!」
 悪党は見渡せば他にもいる。
 刀を振ればそれだけで殺せる。
 ユーベルコヲドを起動すれば瞬く間に殲滅できる。自分なら、目の前の悪鬼を殺せる。自分達を棄てた屑共を一人残らず、これは正義の執行であると信じて。
「殺す! 殺す殺す殺すゥゥ!! 転生なんぞするものか! 私は、貴様等現世の屑共を皆殺しにする為に戻って来たんだ――」
 
●夢
「ああ、そォかい」
 崩れかけたバリケードの内側で佇む朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)の足下で複数の紅い噴水が上がる。
 ガクガクと痙攣しながら息絶える影朧の少女達は朱酉が見せていた夢の中で、最後まで目を醒ますことなく毒を受けて死んだ。
「お前さんがたに何があったかは知らん。わからん。興味もない。知ったところで何のなぐさめにもなりゃあしねえだろ」
 遊郭の一部では既に戦闘が始まっているのか、朱酉の耳に遠くから騒乱の音が聴こえて来る。
 彼は踵を返すと同時に冷たい眼で見下ろす。苦痛を感じる間も無かっただろう影朧の少女達の骸。
「――いい夢見ろよゥ」
 特に感慨も無く。彼は煙管を手の中で弄びながら騒乱の下へ向かうのだった。
成功 🔵🔵🔴

アメリ・エルヴィユ
まあ、ひどい有り様ね
無作法者が踏み入れて良い場所ではないでしょうに
かつての誇りは、もうすっかり瘴気に侵されてしまったのね

救えるかもしれない命があるのなら、早々に包囲網を突破しなくてはね
【高速詠唱】で機先を制するわ
【ニュクスの涙】を【全力魔法】で放って一気に片付けてしまいましょう
道を阻むのなら切り開くまでよ



 慌しさは既に限度を上回り、遊郭の中は混乱の渦と化していた。
 遊郭内を蹂躙する影朧を止められる者も少ない中、未だ悲鳴の類が連続していないのは猟兵の介入があったからか。アメリ・エルヴィユ(アタラクシア・f10001)は荒れ果てた遊郭の正面口を潜り、呆れたように水晶の様なクリスタリアン特有の美しい瞳を瞬かせた。
 吹き抜けになった橙色の灯り揺らぐ玄関広間、その中央に彼女は立つ。
 助けを呼ぶ声。視線を向ければ壁際に追い詰められた下男が旧帝都軍が桜花組隊士に刃を向けられている姿があった。
「まあ、ひどい有り様ね。無作法者が踏み入れて良い場所ではないでしょうに」
 言いながら。揺れるアメリの衣装から乳白色の花弁が彼女の周囲に散布される。
 ほう、と――短く吐かれた呼気に応じるように散布された花弁が青白く煌めき連続する。
「……かつての誇りは、もうすっかり瘴気に侵されてしまったのね」
 踵を小さく打ち鳴らした直後、ザザアと激しい波音を立てて淡青混じりの銀閃が迸る。
「~~!?」
 機先を制するが如く薙ぎ払われた無数の花弁による衝撃波は、陰に潜んでいた影朧達を弾くように燻り出した。
 己が寿命を削って発動した桜花の刃も掻き消された影朧の少女は目を見開く。
 次いで繰り出された全力の奔流。月光にも似た輝きを持った花弁の波に飲まれた影朧達はそのまま、アメリの視界から消え去るのだった。
「ふ、は……助かりやした……」
「行きなさい」
 此の場からの退避を促したアメリは視線を上げる。
 階上から飛び降りて来た新手を前に、彼女は端正な指先を唇に置いて。

「道を阻むのなら切り開くまでよ」
成功 🔵🔵🔴

阿紫花・スミコ(サポート)
アルダワ魔法学園の生徒。暗い過去を持ちつつも性格は明るい。自信家で挑発的な一面がある。力があれば何をしてもいいというようなダークセイバーの領主達を心底嫌っている。機械系に強く様々な世界の機械知識を広く持ち自作ガジェットの研究・開発を行っている。

からくり人形「ダグザ」:巨大な棍棒で敵を粉砕する。
精霊銃「アヴェンジングフレイム」:黄金に輝くリボルバー。弾丸には炎が宿る。
ワイヤーギア:射出したワイヤーを引っかけ、巻き取りと、蒸気噴出で推進力を得る。

「力があれば何をしてもいいって思ってるんだろう?お前が奪われる立場でも同じことが言えるのかな!」

(エロやグロに巻き込まれなければどんな展開でも大丈夫です)



 壁を破り飛び出す三つの影。
 否、数尺ほど体格の大きな影の下で両手を奏者の如く揮う小さな影。阿紫花・スミコ(ガジェットガール・f02237)と、彼女が操るからくり人形『ダグザ』のコンビである。
 追走し、対するは文字通りの影。影朧の少女二人組から殺到する鋼鉄の桜花弁が床板を刻みスミコ達を粉砕しようとしていた。
「いくよ、ダグザ!」
 繰糸が数拍跳ね、彼女の繰り手が瞬く間に旋律を紡ぐ。
 そして旋風が駆け抜ける。人形の内部で起動した技巧が火花すら散らし、迫り来る鋼鉄の花弁を超高速回転で繰り出された棍棒によって吹き散らす。
 スミコの繰り手が弾かれる。まばたきの隙も無い。
「過去、大戦で何があったかは知らないよ。でもその時の怨念を今! 何の力も無い人達に振るっていいわけないだろ!」
「こ、の……!」
 人形ダグザとスミコの間に言葉は不要だ。棍棒を握る彼と彼女とを繋げている糸が、絆を紡ぎ意志を伝えるのだから。
 激しい駆動音が鳴った直後、影朧の少女達は鞠のように吹き飛ぶのだった。
成功 🔵🔵🔴

オーガスト・メルト
まぁ、色々と事情はあるんだろうさ。
だがそこまでだ。

【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズ、【竜鱗飛甲】を召喚しろ。操作は任せる。『うきゅー』
二人一組で来るというなら、片方は竜鱗飛甲の【盾受け】と【シールドバッシュ】で対抗。
確実に一人づつ対処していく。
向こうのUCはこちらの【鏡面迎撃砲陣】で相殺する。ナイツ、頼むぞ。『うにゃー』
敵の動きを【見切り】つつ、【焔迅刀】による【二回攻撃】を叩き込もう。
火事にならないように、焔迅刀に籠める【属性攻撃】は雷にしておく。

使い捨てられた恨みねぇ…それでまた誰かに操られて捨て駒にされるとは救いがないな。
いやはや、まったく…


叢雲・凪
連携・アドリブ大歓迎

まずはその世界の住人・猟兵仲間に挨拶をしよう…。
礼儀は大事。年上の人や先輩にはちゃんとしないとね。
『どうも ジンライ・フォックスです』(お辞儀しつつ)

ボクは彼女達に何があったかは知らない。
でも 無差別に殺意と憎しみを振りまくのならそれはいずれ肥大化してここだけで済まない規模になる。悪いが容赦なくオヒガンに送り返してやる。

それに… あの首謀者…(黒い狐面…)

【SPDで戦闘】

場所は屋内の閉所。敵は桜の花びらを用いた広範囲攻撃を行ってくる。ならば… 一瞬で間合いを詰めて全力で攻撃を叩き込む。黒雷神+ダッシュ+残像+ジャンプ+リミッター解除を用いて超高速で接近。属性攻撃を叩き込む。



「どうも ジンライ・フォックスです」
「あ、ああ。オーガストだ、よろしくな」
 夜も深き丑三つアワー。遊郭の三階へと辿り着き、今宵初めて面を合わせたオーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)と礼儀正しく叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)は『アイサツ』を交わしていた。
 と、そこでお辞儀をした0.2秒後。凪とオーガストの二人は互いに息を潜め足を止めた。
 影朧。旧帝都軍の桜花組隊員だった少女達だ。彼女達は階層内の部屋を駆け回りながら遊女と従業員たちを襲っているようだった。
 その様子を見て。
「……ボクは彼女達に何があったかは知らない。
 でも、無差別に殺意と憎しみを振りまくのならそれはいずれ肥大化してここだけで済まない規模になる――悪いが容赦なくオヒガンに送り返してやる」
 黒狐の面を深々と被り直した凪は静かに拳を握り締める。
 一方で凪に頷きを返したオーガストは着々と、それでいて迅速に行動に出る準備を整えていた。
「デイズ、【竜鱗飛甲】を召喚しろ。操作は任せる」
『うきゅー』
 愛らしい饅頭めいた白竜のぬいぐるみからの応答は一瞬。次いで顕現した陰陽の夫婦盾が彼の周囲を飛行する。
 浮遊しながら何らかの調整をしている様子を一瞥したオーガストは傍らにいる影朧の動向を観察していた凪にハンドサインを送る。
「向こうのUCはこちらで相殺する。やれるな」
「応ッ」
 凪は仮面の下で力強く、静かに応えた。

 ――廊下を駆ける四人の影朧。
 憎悪を隠そうともしない荒々しい動きで、大部屋を隔ていた障子を蹴り倒した影朧の少女達は待ち構えていたオーガストの姿に一瞬体を強張らせる。
「……!」
 悍ましい程に瘴気を纏った少女達。躊躇なく、その手から放たれた凶刃の花吹雪が殺到する。
 同時。
「ナイツ、頼むぞ!」
『うにゃー』
 怯む事無くオーガストが真紅の小太刀を抜き叫んだ瞬間、桜鋼の吹雪に向かい同質量の鋼鉄の嵐が爆ぜたのだ。ヘンテコ黒竜大福こと彼の愛騎『ナイツ』が複製し繰り出した物である。
 衝突し大量の火花が散る。あまりの光景に驚く影朧の少女達だが、オーガスト達はただの相殺では終わらせない。
「解き放つ……!」
 駆けるオーガストを追い越し這う様に抜ける黒い雷。
 畳が爆ぜ飛ぶ。静止画の様に音も無い刹那の時を、鋼鉄の桜吹雪の中にある僅かな隙間を縫って、天井の梁が折れ砕けた直後に影朧の懐に入り込んだ凪の姿が映る。
 声にならない悲鳴じみた吐息、反射的に振り抜いた脇差の一振りが凪を捉えたものの――目に焼き付いていた残像を斬れる筈もない。
「な……ッ」
 狼狽える影朧の背後で鈍い音が二つ轟く。
 オーガストと向き合っていた前衛を抜けた凪が『黒雷神』を纏ったまま後衛の二人組を一蹴したのである。
 軌跡描く雷電の尾を、前衛が思わず目で追う。
 だがその隙を逃す訳もなし。たちまち距離を詰めて来たオーガストが一閃した『焔迅刀』が紅い電雷を帯び斬り伏せに掛かる。
「あぁぁ……ッ!?」
 倒れ行く同志を目の当たりにして異能を解き斬りかかって来る影朧の少女。しかし脇から飛来した奇妙な装甲がオーガストを守り、その一刀を弾き返すのだ。
 返す刃。或いは、背後から凪が手刀を打ったのだろう。紅と黒の対閃が影朧に走った。
「……また、利用されるだけ利用されて……終わっちゃうの」
 膝から崩れ落ちていく少女はまるでうわ言の様に呟く。

 静寂を取り戻した広間の中、影朧を無力化した事を検める凪の傍でオーガストは遊郭の外を窓から見下ろす。
「使い捨てられた恨みねぇ……それでまた誰かに操られて捨て駒にされるとは救いがないな。
 いやはや、まったく……」
 早々に片付けねば。そう思考を切った彼等は上階を目指そうとする。

 ……まだ、騒乱の渦は終わりを予感させない。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 集団戦 『死に添う華』

POW ●こんくらべ
【死を連想する呪い】を籠めた【根】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【生命力】のみを攻撃する。
SPD ●はなうた
自身の【寄生対象から奪った生命力】を代償に、【自身の宿主】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉体本来の得意とする手段】で戦う。
WIZ ●くさむすび
召喚したレベル✕1体の【急速に成長する苗】に【花弁】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●儚くも絢爛生りし悪之華
 猟兵が投入されてから短時間で騒乱が収まりを見せようとしたその時。
 遊郭最上階から事の顛末を見ていた影朧は髪飾りの鈴を鳴らす。
「……逝ってしまうの?」
 『逢魔が辻』は遊郭の側面から瘴気を漂わせている。まだ、終わりではないと呟く彼女の意思に応じるように。
「まだ何も成せていないわ。嗚呼、嫌ね。あんなにみっともなく着物を乱れさせてまで逃げたりなんかして……そんなに生きたいのかしら。
 誰も、逃がさない。逃がしたりするものか。下衆な男共も、女を捨てきれずに女を騙る遊女共も……影朧の娘も、猟兵も――――!!」
 座敷牢のような部屋を飲み込む絢爛な迷宮。
 それとは別に、階下で爆ぜるのは『逢魔が辻』から飛び出した大量の種子だった。

 死に添う華。その芽は力尽きた桜花組隊員の少女達を侵し、操り人形と化して行く。
オーガスト・メルト
気に入らないな。実に気に入らない。
今回の黒幕は俺が特に嫌いなタイプだというのが良く分かる。

…少し手荒になるが、解放するまでもう少し我慢しろよ。

【POW】連携・アドリブ歓迎
ナイツ、デイズと【竜鱗飛甲】の操作を交代しろ。『うにゃー』
敵の攻撃を【見切り】でかわしつつ反撃を狙う。
【焔迅刀】の【武器受け】からの【吹き飛ばし】と
竜鱗飛甲の【盾受け】からの【シールドバッシュ】で敵の態勢を崩し、敵の核である華をデイズの視界に入れる。
デイズ、「寄生しているオブリビオン」のみをUC【焦熱庭園】で焼き尽くせ!『うきゅー!』
一度燃え出せば根まで確実に延焼する竜王の炎だ。消え失せろ。

さて、黒幕を潰しに行くか…


朱酉・逢真
おやおや乱れ咲きかい。どうしたもんかねェ。枯葉剤ってんじゃねえが、その華だけを枯らし尽くす毒を作るかねェ。
《傘》をさして戦場に雨を降らす。【特効厄】を雨に混ぜてな。
そうすりゃぜんぶの華にぶっかかるだろ。苗ってんなら水も吸うだろうしさ。
俺は高速で飛ぶ《虫》に乗って攻撃を躱すことに専念するさ。傘が飛ばねえ程度にな。
さァて、顕要大かなめの影朧さんや。お前さんの番だぜ。どうなさるね?
怒りが収まらねんだろう。なら全力でぶつかってきたらいい。しっかり相手つとめさしてもらわぁな。


アメリ・エルヴィユ
アドリブ・連携OK

状況は芳しくないようね
これ以上貴方達の手を汚させはしないわ

植物には炎を、といきたいけれど燃え移ってしまったら本末転倒ね
【属性攻撃】による氷魔法の枷で動きを封じるわ
成長の速さは【高速詠唱】で、数には【多重詠唱】【範囲攻撃】で対応ね
妨害出来たら【Nidana】に宿る【破魔】の力で浄化よ

救いを求める人がいたら見捨てるわけにはいかないわね
負傷は【祈り】を込めた【生まれながらの光】で治療してあげましょう
私達がこの場を鎮めるまでの辛抱よ



 上がる悲鳴。
 未だ遊郭から逃れる事の出来ていなかった一般人が再び襲われ始め、階層内のあちこちから気配が迫るのを猟兵達は感じる。
「気に入らないな。実に気に入らない」
 オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)は眼前の、角から朧気に現れたそれを睨みつけて声にする。
 冒涜的。言葉にしてみれば軽いものだと思う。
 つい先ほど一戦交えた影朧の少女、桜花組の紋を背負いし旧兵。その彼女が得体の知れない植物に侵された姿で彼の前に姿を見せていた。
 離れていても聴こえて来る。不快な鼓動の音は、歪な華が奏でる核のそれか。それとも少女の臓腑を侵す者の嗤う声か。
「状況は芳しくないようね」
「今回の黒幕は俺が特に嫌いなタイプだというのが良く分かる……少し手荒になるが、解放するまでもう少し我慢しろよ」
 荒れ果てた座敷を一瞥しながら、月の色帯びたアメリ・エルヴィユ(アタラクシア・f10001)はオーガストに応じるように横合いから近寄り並ぶ。
 対する影朧もまた、個ではない。
 影朧の足元を這いずる苗のような、冒涜的に蠢く植物群絡み合う触手は影朧と同等の気配を有しているのだから。
「ぁ……っ、あ゛ぁ……!」
 足取り覚束ない少女が引き攣った表情のまま、駆ける。
「ナイツ、デイズと【竜鱗飛甲】の操作を交代しろ」
『うにゃー』
 すかさずアメリの前へ出ると同時に流れる指示。彼の周囲を漂っていた白と黒の大福饅頭めいた竜達が交差し、次いで視界の外から繰り出された一撃を黒い装甲が受ける。
「――これ以上貴方達の手を汚させはしないわ」
 続いて影朧の少女が突き出して来た一刀の切先を逸らし、廊下奥へ弾き出す様に竜鱗飛甲で打ったオーガストが前へ踏み込む。
 その刹那に照らす月光、アメリが高速で紡いだ詠唱が顕現させた氷の縛鎖による拘束が廊下奥から殺到せんとしていた影朧どもを壁や床に縫いつけた。
 二撃、三撃。バリバリ、と木の皮でも剥がす様に周囲を破壊する触手の乱舞をオーガストは躱し続ける。
 見切る。文字通り隙を見て火焔刃が一振りで触手を斬り飛ばし、影朧の少女を峰打ちで吹き飛ばす。
 激しい打撃音から錐揉みする少女。その一瞬をオーガストは見逃さず、同じく彼の使役する『デイズ』も捉えていた。
 視線を動かす事なく。
「デイズ、"寄生しているオブリビオン"のみを【焦熱庭園】で焼き尽くせ!」
『うきゅー!』
 二人の息が合ったコンビネーションから繰り出された一条の炎。
 それは精確に、床を転がり滑る少女の背に宿っていた歪な五枚羽の花弁とその核のみを焼き切って見せたのだ。
「ここで炎は悪手かと思っていたのだけど、あれは特別ね」
 火の粉散る様子を見るに、延焼は何らかの形で防ぐ仕組みだと気付いたアメリは感心したように目を伏せる。
 白亜とは異なる透き通った輝きが彼女の足下から溢れる。オーガストも気付いている。影朧の花が殖やした苗どもが急速に変化を生じている事に。
 だが、それが『成る』事はない。アメリが一手先に放った破魔の力が流れ込んだ苗どもは静かに朽ちていくのだから。

「一度燃え出せば根まで確実に延焼する竜王の炎だ。消え失せろ」
 少女を侵していた華が燃え尽きる。その後、今度は確かに少女の骸が瘴気と共に霧散して行くのだった。
 のんびりと眺めている暇は無いとばかりにオーガストが踵を返す。黒幕を潰しに行かねば――そう考えた彼の頭上で火花が散る。
「……その前にこっちを片付けないとな」
「私は負傷者の方へ向かうわ。まだ、見捨てるわけにはいかないもの」
 当然だ。別の方向へ向かって行ったアメリに返したオーガストは頭上の破壊された天井から襲って来た寄生された影朧と分身体達と対峙する。分身体はいずれも、先の苗が花開いたモノだ。
 何者かの誘導か、集中する敵の動きに彼等は眉を潜めようとした。
 その時だった、如何にも愉快そうな……しかしそれでいて自然体な。悠然と足を運び姿を現した朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)の声が響いたのは。

「おやおや乱れ咲きかい。どうしたもんかねェ……枯葉剤ってんじゃねえが、その華だけを枯らし尽くす毒を作るかねェ」
 誰に語っているわけでもなく、逢真は傘を差し肩に置きながら。不意に懐から取り出した極彩色の大きな種のような物を摘み上げた。
 それは何かに濡れ、瘴気を霧散させ消えて行く。
 逢真は首を傾げて周囲の影朧に向け手を広げて言った。
「よく水を吸うやつだねェ」
 この時、同階にいた猟兵達は揃って頬を濡らした雫に気付いただろう。
 そこは屋内の筈だ、逢真の差している傘が本来示す用途である雨が降るなど有り得ない。
 まさかと思い視線を上げれば、そこには実際に水を降らせているスプリンクラーの存在があった。
 どうやって仕込んだのか。或いはそれが彼の『武器』なのか。
 逢真が告げた通り、突如降らされた雨に含んでいた毒厄は猟兵並びに一般人を除いた影朧達を蝕み、歪な華を枯らして行った。
 例え雨から逃れた個体がいたとしても、それは限定的で――アメリやオーガストの敵ではない。
 朽ちていく影朧達。
 崩れた天井の上にはまだ上階がある。そこから感じる気配は猟兵だけが影朧のものだとわかる。
「さァて、顕要大かなめの影朧さんや。お前さんの番だぜ。どうなさるね?
 怒りが収まらねんだろう。なら全力でぶつかってきたらいい。しっかり相手つとめさしてもらわぁな」

 未だ、遊郭には影朧が散っている。
 しかしそれでも、既に黒幕を飾る存在の意図から大きく外れた結末に近付いているのは誰もが予感していたのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

トレーズ・ヘマタイト
※アドリブ・連携自由
後から来たので状況がわからんが、寄生体を倒せばいいようだな

黒魔導鎧を纏い、鎧の装甲と●オーラ防御、鎧の両手それぞれに持った黒剣と白剣の●武器受けで根を防ぎつつ
鎧の隙間からタールの触手を伸ばし被寄生者を●怪力で拘束し引き寄せ、鎧からタール体を出して寄生体を●捕食していく
囲まれればUCで強化し、黒剣の●生命力吸収、白剣の死●属性攻撃で根を枯らし、呪いを受ければ●呪詛返しを行い逆に寄生体の生命力を削る

助けた被寄生者は救急装備のAI・ドゥーズに任せ、最低限の治療後安全だろう場所に連れていかせるようにしておく

寄生の処理のため捕食したが、影朧なら魂を後で吐き出さねばならんのだろうか

以上


ケルスティン・フレデリクション(サポート)
みんな、がんばって!
わたしも、おてつだいするね!

こうかで複数攻撃を行う
こうかは光華。
武器を自身の花である勿忘草に変えて戦う
「みんなをいじめちゃ、めっだよ!」

一人称 わたし
二人称 名前を呼び捨て

口調は幼く
言い切る形や「〜なの」「〜よ」言葉尻を伸ばすことも多い

基本的には皆のお手伝い役
戦闘や情報収集、その他言われた事を行います。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。


風雷堂・顕吉(サポート)
アドリブ連携歓迎

約100年前、ダークセイヴァーの人類敗北以来、ヴァンパイアとの死闘を細々と繰り広げてきたダンピール、それが俺だ。
ダークセイヴァー世界の大抵のヴァンパイア相手ならそれがどのような血族かは知っているし、知らなくとも調べる伝手はある。
それ以外の世界については物珍しそうに振る舞うことになる。すぐに慣れるだろう。
ダークセイヴァーとスペースシップワールド以外の世界は日差しが強すぎるので、サングラスを着用する。

戦闘は剣士の動きだ。
フェイントを多用する。相手が格上や多数の場合は挑発をして隙を作ることもある。
次に参加する猟兵が戦いやすい状況を作ることも多い。



 階上から流れ来る水が階段を伝い落ち、黄金色に塗られた床板を湿り濡らして行く。
 火の気も無しに何故水が溢れているのかと思いながら、後続ゆえに状況把握ならずも目の前の明確な目的を達して見せようとトレーズ・ヘマタイト(骸喰らい・f05071)は天井を這う様に移動しながら考える。
 既に、遊郭の騒乱は収まりを見せつつあるものの。それでも未だ階下や外へ散っていた影朧の化生は少なくない。
 彼は、桜花組隊士の少女に寄生した植物型影朧。これに襲われていた遊女たちを今、トレーズの有する『機体換装式多目的女性型AI・ドゥーズ』に任せている。
 赤い眼球は溜息代わりの気泡と共に影朧を観察した。
「ふむ――寄生する花か。本来この形態を取る植物は脆弱か、何らかの法則に従うものだが」
 影朧。自我など望めそうもない植物如きが何を思い、何者かの支配を受けているというのだろう。
 思考を巡らせるトレーズ。そこで、彼の眼下で変化が起きる。
「みんなをいじめちゃ、めっ! よ、悪いお花さん!」
 聞こえて来る愛らしい口調とは別に雪鳥の羽根のようになった光刃が遊郭内の壁を影朧と共に突き破って噴出する。
 その後を追い現れるのは幼くも可憐な少女。ケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)だった。
 否、彼女だけではない。
「東洋の娼館は趣が深いだけに目を奪われがちだが、あのような少女が居ていいものか……まあこの状況なら問題無いか?」
 寄生体である影朧本体を追う形で飛来して来た『花開いた苗』を紅蓮の炎が覆い、同時に一刀が幾重もの剣閃を結ぶ。紅い瞳が瞬いた直後に苗の核が砕かれ、いずれも塵芥と化して行く。
 妖しく揺れる焔を散らし、垣間見える肌と同じく白い髪を掻き上げた風雷堂・顕吉(ヴァンパイアハンター・f03119)がケルスティンに並ぶ。

 吹き荒れるユーベルコヲドの気配。影朧にだけ分かるのか、或いは別の意思に唆されたか――彼等の集う場に次々に影朧が姿を現す。
 ケルスティン、顕吉達が身構える。
「助力する」
 べしゃりと粘液めいた音を立てて降りるトレーズ。タール状の彼を二人が視認するよりも先に、紅い眼光の軌跡のみを残して黒魔導鎧を纏う。
 更なる猟兵の出現に影朧達が動き出す。
「くまさん、でてきてー!」
 勢いよくトレーズが前へ躍り出たのと同時、彼等の前面を大柄なクマのぬいぐるみが顕現する。
 荒ぶるクマのぬいぐるみが横殴りに奮い四方八方から伸びる触手を叩き落とす。桜花の紋背負う少女が突進してくるも、すかさず顕吉が割り込み一蹴する。
 派手な轟音に続く剣戟音。しかしそんな彼等を飛行する『苗』が包囲しようと動く。
(此のオブリビオンの苗は本体を持つが故に急速で成長し、群体で動き回る)
 魔導鎧の駆動音が高鳴る。
(少なくとも殲滅すべきは)
 ガシュン、と鎧の一動作。両腕が揮い薙ぐ黒と白の剣が擦れ違い様に『苗』を斬り伏せながら距離を詰めた先、影朧の少女へとトレーズが向かう。
 猛烈な攻勢に影朧達は一瞬で包囲を崩される――顕吉が放ったであろう紅蓮の劫火がトレーズの背後で爆ぜ、光の刃が花弁のように吹き荒れて周囲の触手が切り飛ばされて行く。
 三体の影朧の少女を前に、トレーズは二振りの剣を一切の躊躇なく一閃させた。
 死に添う華。その核たる種子から瘴気が流れ花を咲かせ、呪詛が籠められた根がトレーズに叩き付けられ。反射的に少女が彼から距離を取ろうとする。
 だが逃がさない。ブラックタールの触手が怪腕とも思える様相で少女を捕らえ、怪力で引き寄せたのだ。
 次の瞬間、ケルスティン達に魔導鎧が背を向けたままガクンと震える。残像がブレた、ともいえる。

「……殲滅完了」

 無機質にそう告げたトレーズの一声を最後に、周囲の『苗』が弾け飛んだのだった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴


第3章 ボス戦 『『殺人者』遊女』

POW ●ゴールデン遊郭
戦場全体に、【あらゆる存在を誘惑する、豪華絢爛な遊郭】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD ●【指定技能:呪詛耐性】水子コンセプション
【広範囲に、遊郭で死亡した遊女達の恨み】を籠めた【指定技能以外では防御不可能の呪詛】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【身体の中に異形の赤子を孕ませ、その体内】のみを攻撃する。
WIZ ●享楽バイオレンス・ボーイズ
【遊郭で豪遊していた、Lv×10人の男性達】の霊を召喚する。これは【【性別:女性】の対象では防御行動】や【回避行動を不可能にする能力を持ち、手足】で攻撃する能力を持つ。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●遊び、戯れよ
 禍々しくも静かな恐怖の象徴。『逢魔が辻』は遊郭に寄り添う様に健在だった。
 だが、素早い猟兵達の対応と奮闘により驚くほど被害は抑えられていた。
「……逃げられたのね」
 遊郭最上階。
 そこは『小夜曲苑』の遊女にかつてあった、序列の中で最優として認められた者にだけ与えられる座敷牢だ。
 遊女の影朧は自らの力で迷宮化した座敷牢の一部を撫でる。
 この部屋に、女はかつて在った。どの客も、遊女も、店を運営する男達も"趣深く風情がある"などと語っていた。
 こんな下衆な話があるものかと女は思う。奴等はこの煌びやかに輝く金の檻を内側から見た事が無いのだ。
「変わったわね――私が生きていたあの頃は、逃げ出せる者は一人も居なかったのに」
 遊女、かつては『栖桜』と名付けられていた女は仮面の下で笑みを溢した。
 彼女の過去は遊郭の者だけが知っている。
 その昔。二代前の『小夜曲苑』主人の愛人でもあった栖桜は当時、最高位の遊女であると共に最高の待遇を得ていた。それは多くの遊女に羨まれると同時に妬まれ、疎まれる事も必然だった事は誰もが知っている。
 彼女自身、そうした環境の中で生きる事に抵抗があったわけでもなかった。
 望んで遊女になったわけでもなかったが、生来。彼女は闘争心が強かったのだろう。
 しかしいつしか、その闘争心は『競い合う相手』を失くしてから徐々に歪に形を変えてしまっていた。
「あの頃は……あんなに楽しかったのにね」
 栖桜は鈴のように声を転がして笑う。
 彼女の足下から次第に、遊郭全体を覆う闇の帳が下りる。灯火は消え、照明が割れていくのだ。
 代わりに残ったのは最上階に広がる、『逢魔が辻』を利用し異界化した豪華絢爛の黄金牢が囲う迷宮。
 狭く、広大で、黄金色に輝く檻が行く手を阻み、そして同時に檻こそが壁となり導き手となる。

「何奴も此奴も、壊れてしまえばいいのよ」
 影朧の持つ力を全て用意し、絢爛なる遊女は久方ぶりの客を待つ。
一郷・亞衿(サポート)
廃墟探索中に呪われ、その結果として力を得た猟兵です。独自に開発した混沌魔術や呪詛を纏わせたカッターナイフ、金属バット等の道具を用いて戦います。
各種オカルト話を好みますが、UDC怪物やオブリビオンに対しては基本的に容赦しません。
外見特徴として、マスクで常時顔を隠しています。

一人称は「あたし」。
年下~同年代にはくだけた感じの口調で話し、年上や偉い人には敬語(さん付け、ですます口調)を使います。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、寿命が減るタイプの物はタイミングを見計らい極力短時間の使用で済ませるようにしています。
軽口を叩いたりもしますが、戦闘時は真面目に役割を果たそうとするタイプです。



 たった一歩、足を踏み入れた先に待っていたのは悠久の檻。
 入り組んだ空間、絢爛なる黄金迷宮の内に囚われたかのような錯覚を覚えながら、一郷・亞衿(奇譚綴り・f00351)は最奥に『逢魔が辻』の支配者がいると考えていた。
 しかしそれは。
「ようこそおいで下さりんした……とでも言って欲しいわけではなさそうね」
 たった十数歩先で格子の向こうから鳴る鈴の音。否、女の声。
 亜衿がそこで一歩後退する。
「オブリビオンさんかな、あたしこういう迷路苦手だから逃げないでいてくれると嬉しいなー」
「ごめんなさいね。『私達』は基本的に追われるように誘うのには慣れてても追うのは得意ではないの」
「あちゃー、そっすか」
 言い合いながら、どちらが先とも知れぬ一瞬の後。奇しくも互いの手元からユーベルコードの発露に応じた閃光が奔る。
 淡い群青色の焔が噴き出した遊女のそれを、亜衿がとっさに取り出したカメラがフラッシュを焚いた事で相殺されたのだ。
 両者の視線が交差する。片や迷路の奥へと着物を翻す様を見せつけ、片や背から振り抜いた金属バットを構え追走する。
 軽快に鳴らされる指先、遊女の影朧の呼び声に応じ召喚されたのは彼女が『生前に屈服させた』男達の霊体だった。
 この男達がどういう人間だったかは知らないが。亜衿から見ればいずれも死して尚、その魂が縛り付けられているようにも見える。
 滑り込むように男の霊の懐へ潜り込む亜衿がバットを振り抜く。
「あっ……ん! く、何よその動きは……ッ」
 半ば力技で霊体を突破した亜衿は男達の背に隠れていた影朧の遊女へと一撃を見舞う。横薙ぎに振るわれたバットを袖で弾かれるも、勢いそのままに返す刃で繰り出したカッターナイフの刃が影朧の胸元を大きく切り裂いて後退させた。

「ぐぅ……ッ、ただの人間じゃないようね……これが弩級戦力……」

 何かが遊女と亜衿の視界を遮る様に降りて来る。
 黄金色の格子が行く手を遮ったその後、亜衿の前から影朧の遊女は逃走するのだった。
成功 🔵🔵🔴

アメリ・エルヴィユ
アドリブ・連携OK、エログロ描写NG

やっと最上階に辿り着いたと思ったら、まるで迷宮みたいね
彼女は今も遊郭に囚われたままなのかしら
とはいえ、この所業は赦されないわね
私達の手で解き放ちましょう

先ずは霊達の相手かしら
遊女を追い込むためにも攻勢をかけていくわ
厄介な攻撃は受けないよう距離を詰められる前に撃破よ

召喚された霊達は、光の【属性攻撃】による【全力魔法】を【範囲攻撃】で放って一掃するわ
周囲が片付いたら【破魔】の力を帯びた【ニュクスの涙】を遊女へ
澱んだ檻から解放されるよう【祈り】を込めて


朱酉・逢真
かわいそうたぁ言わねえぜ。楽しかったんだろ。ならそれでいいさ。
遊郭ねえ。ぜんぶの男にとっての極楽でもなけりゃ、ぜんぶの女にとっての地獄でもなかったんだろうが。それがマイノリティになる程度にゃ極楽で地獄だったんだろな。
俺はいつだって弱者の側につくよう決められてっから、いまはあの姉さんの敵だが。お前さんがたはかつて強者の側に居たんだろう、ボーイズ?

男特効の厄毒を身に湛え、襲いかかれかわいい眷属どもよ。俺は作った本人なんで効かねえがね。接触・血液感染だ。たいそうな量がいるみてえだが、そんだけ集まってりゃ避けられんだろう。触れたトコから腐り落ちていくがいいさ。梅の花がきれいに咲くだろう。っひひ。



 思い違いだった、などと情けない言葉が自ら出て来るとは。
 檻の内側を逃げ回る遊女『栖桜』は次々に霊体を召喚しながら嫌な汗を背筋に感じていた。
(一瞬だけ、イヤな事を想像してしまったわ)
 仮面の下で唇を半ば噛み締め、栖桜は外観面積を遥かに上回る広大な空間へと変貌した迷宮を駆ける。
 かつて、この檻の内に在った自分は囚われの身と思いながら数多くの男達を下していた。
 人という生き物を知らずとも、男と女の二つだけを知っていれば造作もない。自らに溺れ、店に金をつぎ込む男達に一つ二つ囁けば栖桜を陥れようとする他の遊女すら手にかけて見せたほどに。
 だから。死して尚その魂すら弄ぶ自分を、こうまで脅かして来るとは――栖桜は猟兵とのたった一合で殊更警戒色を増していた。

「やっと最上階に辿り着いたと思ったら、まるで迷宮みたいね」
 影朧の思惑とは別に、最上階へと足を踏み入れたアメリ・エルヴィユ(アタラクシア・f10001)は黄金色の鈍い輝きを眺めつつ歩を進めていた。
 何処からともなく聴こえて来る遊女のカランコロンとした、軽い笑い声が耳に障る。
 嘲笑っているのだろうその声音には、どこか闇の中を覗く様な空虚で冷たいものをアメリは感じ取っていた。
「彼女は今も遊郭に囚われたままなのかしら」
 ぬう、と。不意に曲がり角を過ぎた彼女の横合いに立っていた男の霊体が襲いかかってくる。
 僅かにアメリの眼が見開かれる。が――彼女の脇を抜け飛来した毒蛇めいた『何か』が次々に霊体を襲い、更にはその後方に控えていた他の霊達をも捉えていったのだ。
 リン、と鈴の金音。
「遊郭ねえ。ぜんぶの男にとっての極楽でもなけりゃ、ぜんぶの女にとっての地獄でもなかったんだろうが。それがマイノリティになる程度にゃ極楽で地獄だったんだろな」
 手の中で淡く発光した液体の小瓶を弄びながら、悠然と羽織をたなびかせ迷宮回廊の奥から姿を現す。
 霊薬の類。そうアメリが朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)の手元を見て思うのと同時に、背後で果実が潰れたような音がするのを彼女は耳にした。
「俺はいつだって弱者の側につくよう決められてっから、いまはあの姉さんの敵だが。お前さんがたはかつて強者の側に居たんだろう、ボーイズ?」
 赤い染みを残して霧散して行く霊魂を見届けながら皮肉を籠めて朱酉は言う。
「……『あの姉さん』というのは、この迷宮を顕現させているオブリビオンのことかしら」
「ちょいとちょっかいを掛けようとしたらすぐ逃げちまう女さ」
「それはつまり……――!」
 その応答にアメリは霊達が現れた方へ視線を向けた刹那、視界に映った物に素早く反応して高速詠唱を紡ぎ出す。
 月光を思わせる発動光が迸る。戦場を漂っていた多くの水子霊を呪詛に変えた一撃を逸らし、同時に檻の向こうにいた遊女を弾き飛ばした。
「見かけによらず暴れるじゃない」
 尚も不快な嗤い声を上げながら豪奢な袖を揮う影朧は、再び多くの霊体をその場に召喚して見せる。
 その姿に、朱酉が堪える様に、苦笑を漏らす。
「たいそうな量がいるみてえだが、そんだけ集まってりゃ避けられんだろう。触れたトコから腐り落ちていくがいいさ」
 梅の花が咲くだろうと、そう告げた朱酉の昏い笑み。
 ピタリと遊女の嘲笑う声が止まった直後、迷宮内を風が吹き荒れる。
 格子が並ぶ狭い檻の内を霊体が押し寄せて来たのを、朱酉の放った眷属が更に殺到し次々に霊魂を砕いて行く。
 アメリは彼等に鎮魂を胸の内で祈りながら、瞬時に編み込んだ術式を解放すると共に月光を奔らせた。高速詠唱、次いで繰り出されるは彼女の宝石色に輝く無数の花弁。
 床板や天井、檻さえも切り裂き進む花弁の群れは迷いなく遊女を捉え――飲み込んだ。

 短い悲鳴。
 暫しの後、そこには遊女の着物や髪飾りの欠片だけが残っていた。
「……この澱んだ檻から解放されるよう、わたしは祈っているわ」
 逃げ果せた影朧にアメリは、静かにそう呟くのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

トレーズ・ヘマタイト
※アドリブ・連携自由、青丸規定値到達によるプレイング不受理可

迷宮の壁は檻か

●オーラ防御で魔術的な誘惑は防ぎ、檻の隙間をタール状態ですり抜けていく
行く手を阻む霊は白剣の浄化●属性攻撃で祓い、呪いで赤子を入れられれば、体内から取り出して片手間に世話をしながら進む

ボスは●呪詛で相手の術等を妨害しつつ、タールの触手を絡ませ●怪力で動きを封じ、黒剣と白剣の●二回攻撃を加える

ボスが檻を出して逃げようとしたならば黒剣と白剣を合体させて大剣とし、UCを起動して強化して、檻に込められた力を●生命力吸収で奪いつつ、●鎧砕きを使って檻を破る

赤子は返す、どうであれお前のこどもなのだろうから、ちゃんと連れていけ

以上


桜井・乃愛(サポート)
 桜の精のパーラーメイド×咎人殺しの女です。
 普段の口調は「元気(私、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は明るく天真爛漫で、少し天然ボケな感じの少女。
一番好きな花は桜で、その他の植物も好き。
強敵にも怖気づく事は少なく、果敢に挑む。
人と話す事も好きなので、アドリブ歓迎。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 身の内から漏れ出る瘴気に比例し、辺りを漂う霊魂が震える。
「何なのよ……どいつも……こいつもぉ!」
 息も絶え絶えに声を荒げるその姿は見るに堪えない様だった。かつてこの檻の中で栄華を手にしていたあの頃とは、余りにも違い過ぎる醜態。栖桜はずたずたに引き裂かれた着物の下から流れる血液を見下ろして、何度も叫んだ。
 彼女の声はきっと黄金迷宮の何処かにいる猟兵が聞いている事だろう。
 それが、どれだけ惨めで腹立たしくて。どれほど自らの在り方と矛盾しているのか。

 桜井・乃愛(桜花剣舞・f23024)は女の叫びを聞きながら、多数の霊体を相手取って燻っていた軽機関銃の硝煙を吹き消した。
 悲痛な声が耳障り良いとは言えず。彼女は歩を進めながら首を振る。
「どうしてそうなっちゃったんだろうね」
 こんなに綺麗なのに。そうぽつりと、呟いた彼女の言葉が小さく響いた後に沈黙が流れる。
「時間をかけてはいられない、最短で行くぞ」
 応える事なく、トレーズ・ヘマタイト(骸喰らい・f05071)が過ぎ去る。
 それまで時折派手な破壊音が響いていたのだが、トレーズが来た方向へ視線を動かした乃愛は粉砕された格子を見つけた。
 振り返る、物々しくもどこか禍々しくも見えるその姿。黒魔導鎧が駆動する度、両の手に握られた白と黒の巨大戦斧が一閃して黄金牢が破壊されて行く。
 破壊の速度は次第に増していく。後を追う乃愛がその足を急がせるほどに達した頃には、それまでと異なる空気を肌で感じるまでに。
 やがて。豪華絢爛な中に一種の色香を含んだ、甘ったるく重い空気が流れていた空間から一変する。暗い、昏い闇を鈍く輝く黄金の檻が囲う狭い迷宮だ。
「……硬度の変化を確認した。少し手荒に行くぞ」
 静かな一言。
 次の瞬間、暗がりの奥で何かが短い悲鳴を上げた。
 戦斧がダークブルーに発光したのと同時に薙ぎ払われた一撃で硬度の増した迷宮の檻を何層にも渡って粉砕し貫いて見せたのだ。

「荒々しい殿方は他にも見たけれど……随分な御客人だこと」
「そっちこそ! このお店に招かれてないお客さんじゃない!」
 暗がりの奥。黄金色の格子に寄り掛かり、濃密なまでに黒々とした瘴気を背負った遊女が居た。
 一歩も退かぬ乃愛の応答に「皮肉ね」と笑った女は複数の霊体を檻の前に展開させ、また自らも其の身を影朧として得た異形の姿へと変貌を遂げた。
「私が招かれた事は一度だって無いわ。一度もね――かつての遊郭に私が在ったのは生活苦から子を売る親がいた、それだけのこと。いつだって客は私が呼び込んでいたんだもの、私は常に『こうして』男を使う立場にあったから……当然身請けの話も出ることは無いわ」
 哀れ。影朧の遊女、栖桜が語る男達とはまさに猟兵の前に召喚されている霊達だった。
 栖桜は語った。自身の最期はあまりにくだらないものだったと。
 そんな中、乃愛とトレーズが両者並んで前へ得物を揮い躍り出た。魂、或いは影朧によってこの場に縫いつけられた霊達は逃げ出す事もしないで応戦する。
「信じられるかしら。私を殺したのは私を最も気に入っていたこの遊郭の主人だったのよ? 散々イイ思いをさせていたのに、最期は私との逢瀬をたかだか配偶者に知られそうになった程度の理由で……劇的な変化もなく、何の救済もなく。私は傷つき冷たくなっていったのよ」
 今度は、トレーズが短く応じた。
「安い痴話だ。何故死して尚も固執できるのか理解出来ん」
「あ、っは――感情に任せて机の上に置かれた物を全て床に叩き落としたくなるの、わからないかしら。丁寧に端から端までね」
 影朧は語る。つまり、この遊郭はあくまで奇縁から至ったに過ぎない足がかり。これは始まりに過ぎないのだと。
 生憎だが。そう声を重ねて答えたトレーズは無傷のまま、愚かでみっともない男達の霊魂を一蹴して退ける。
 張り詰め、震えていた空気が爆ぜる。
 檻の向こうから鬼火めいた呪詛を撃った栖桜に対し、咄嗟に前へ踏み込んだトレーズが同じくをもって相殺した。
 狐面の下で間の抜けた声が漏れ出ていた。
「……っ」
 じり、と。異形化して尚も影朧の踵が返ろうとする。逃走の気だった。
 遊女は未だ檻の向こうだ。トレーズがユーベルコードを交えての一撃を見舞うならば破壊程度容易いこの迷宮も、影朧としての力を総動員して逃げられればたった一瞬の隙でも見失いかねない。
 だがそれをさせる道理など無いとばかりにトレーズが前へ沈み込む様に跳んだ。
「壁であれば流石に抜けれんが、檻ならばな」
 それまで纏っていた装備をタール状の身の内に収納し、一直線に檻へずるんと衝突し通過して見せた直後。クイックドローさながらにトレーズと栖桜が呪詛を放つ。
 火花が散る。
 視界の端を駆け抜けた火線を目で追うより先に、下から抉り込む様に打たれたタール状の触手からの一撃に狐面が罅を走らせたのだ。
「~~ッ!?」
 驚愕の声を上げる暇もない。
 次いでトレーズの身が文字通り渦を巻くと、触腕が掴み回転鋸のように振り回された戦斧が周囲の格子ごと薙ぎ払って見せたのだ。

 狐面が、割れる。
 煌びやかな破片と共に少なくない量の血潮を溢れさせ、畳の上を転がる影朧は。その幼く見える美貌を憎悪に歪めて、髪を振り乱しながら呪詛を交え、或いは獣めいた爪で一合、二合と幾度もトレーズと打ち合いを繰り広げた。
「もう逃がさないわよ!」
 僅か数秒。打ち合いの真っ最中、呼吸の間を刺す様な閃光が暗がりの奥から奔り抜けて来た。
 危険を察した栖桜がその場から離脱を図ろうとするも、その無数の紅い火線は容赦なく急所を射抜いて来ていた。

「――ねえ、しってる? この座敷牢、ね……」

 黄金に輝く迷宮が、消失する。
 灯籠も蹴り倒され明りも無い部屋へと空間が戻って行く狭間。栖桜はトレーズ達の前に頭を垂れながら、どうにか息を吐き出す様に言った。
「……どんなに金箔で覆っても冷たい色をしているのよ……ね」
 ほう、と。安堵するように。
 女はトレーズ達の前で瘴気を霧散させ、『逢魔が辻』と共に消えて行くのだった。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

最終結果:成功

完成日2020年06月30日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴