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鬼隠しと湯の毒花(作者 オーガ
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 栂櫛温泉。
 とある街の名前だ。
「街一つの結界。長年に渡り、鬼と呼ばれた影朧を封印せしめた迷宮」
 礼服を纏う、カイゼル髭を生やした男が、湯の薫る街並みを旅館の窓から仰ぎ見て、肩を揺らす。
「ふふふ、聞くにその檻は今、空席だというではないか」
 超弩級戦力が、ここにいた影朧を討伐してくれたのだという。浴衣に身を通す男が喜ばしげに言う。
「ありがたい話ですな」
「ああ、期せずして絶好の隠し場所を用意してくれたということだ」
 藤見望。影朧を用いて不死を求める集団。彼らはその分派であった。
 その研究の最中作られた、一つの影朧。その保管場所を彼らはこの地に定めたのだ。
「何もかも壊そうとする怪物だが、結界の中に容れてしまえばいくら暴れようと構いますまい」
「我らは素晴らしい景勝地で、じっくりと研究を続けられるというわけだ」
「さて、封印の口は予定通りに?」
「はい、恙無く」
 問いかけた声に、控えていた女性が頭を垂らして返す。
「すでに影朧も、戸隠の檻に収容しております」
 今は安定している。女性の報告に満足げに腹を揺らす男は、ならば、と集まる面々を見渡し、告げた。
「今日は、自由にするといい。そのうち暴れだすだろう。檻の強度も見極めねばなるまいさ」
 それまで、各々のままに過ごすといい。
 その声に彼らは、ばらばらと部屋を辞していった。


 まあ、そういうわけだ。
 とルーダスが言う。
 ある温泉街に、危険な影朧が呼び込まれた。街に危険が及ぶ前にその討伐を行いたい。
「ただ一つ問題があってね」
 街のどこに、封印の檻、その扉があるかが分からないのだ。
 地道に探しては時間を食い過ぎるし、そもそも、がむしゃらに探して見つかるものではないだろう。
 故に、確実な方法を取る。とルーダスは言う。
 つまりは、答えを知っている者に聞く。これが一番だと。
「酒に酔わすも、色で惑わすも、陰にかっさらうも自由にすればいい」
 詰問の邪魔が入らぬよう、二人きりの状況を作れさえすれば問題なはい、と彼は言う。
「さて、街の為、人の為、利己の為に危機を呼び込む不貞の輩をとっちめようじゃないか」
 ルーダスどこか楽しげに、そう締めくくった。





第3章 ボス戦 『『夜香影』雪布』

POW ●白氷・撃砕
【氷魔の冷気を凝縮し、瞬時に暴発させた蹴り】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD ●白氷・拡散
【両脚や氷結させた箇所から、氷魔の冷気】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ ●白氷・支配
【氷魔を宿す両脚による、多彩な蹴撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を氷魔の支配下に置いて氷結させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ルーダス・アルゲナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 深夜、二十四時間入浴可能な湯殿は、その日だけ完全に封鎖されていた。猟兵達が、影朧被害を防ぐために厳戒体制を敷いたのだ。
 いや、もしかすれば、猟兵達がそれを突き止めなくとも閉鎖自体は行われていたかもしれない。被害が発生してから、かもしれないが。
 隠された鬼。影朧。
 その影響か。踏み入れた露天の温泉は、冷ややかな空気に満ちていた。
 凍り付いてはいないが、岩には霜が立ち、蓄えられた湯は、雪の溶けだしたように鋭く冷えている。
 建造物を利用し、地熱、霊脈そう呼ばれるもので異界を成し、結界とする。それがこの街の結界だという。
 だが外界と完全に遮断されているわけではないようで、こうして影朧の力が染み出てきている。
 早く影朧を除かねば、影響は広がっていくだろう。
 戸の無い長屋の迷宮。急ぎ、その檻の中へと踏み入れた猟兵達が見たのは、迷宮などではなく。
 霜と氷柱に彩られた、瓦礫が重なる開けた世界だった。
「――」
 その中心で、一つに人影が揺れる。
 蝕むように、足の触れた先から凍らせるそれは、ただ破壊衝動のままに、全てを壊そうとしている。

●第三章。
 
 結界の外へ影響を与える、雪布によって精製される氷柱を破壊しつつ、戦う場面です。

 氷柱を巻き込んだり、利用したりする感じだと、良い感じになるかもしれません。

 お好きにプレイングください。好きに書きます。

 よろしくお願いします。
シキ・ジルモント
◆SPD
その破壊衝動ごと、影朧を正面から迎え撃つ
凍った足場ではスリップを警戒
脚ごと地面が凍り付いたらエンチャントアタッチメントを装着した銃で、足元すれすれに炎の属性攻撃弾を撃ち込む
手荒だが、氷結を解除できるかもしれない

交戦しつつ、氷柱へありったけの弾を撃ち込む
脆くなった氷柱を蹴りつけ、その衝撃でへし折って敵の方へと倒す
直撃しなくても、少しの間視界を塞いだり攻撃を一時的に止められれば良い

ユーベルコード発動の為に、隙が欲しい
自身の身の安全も、影朧を道具のように扱う藤見望への憤りも、全て頭から追いやって
意識の全てを、この一射を命中させる事へと集中する
影朧をここから解放する術は、これしか無いのだからな


 人狼の男は、踏み締めた氷の割れる音に僅かに眉を顰めていた。
 溶けた水に靴のグリップが滑る。凍り付いて乾いた氷の表面なら問題は無いが、警戒は必要か、と両脚に均等に力を籠めるように立つ。
 シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は、そうして氷柱の乱立する中で薄らげに笑う影朧へと銃口を向け。
「――!」
 一足飛びに飛び込んできた雪布と視線を交差させていた。
 ゴ、バンッ!! 爆ぜる音は、冷気が空気を砕く音か。放たれた蹴りを反射的に放った弾丸で逸らし転がって回避したシキは、直後頭上へと落ちる影に、体を跳ね上げていた。
 踵の猛襲からの連撃。腕を拘束されながらも、しかしその動きは武技を操る獣さながらであり。
「厄介だな」
 何よりも、それが放つ冷気がシキの体を蝕み、体力と動きを奪っているのが確信出来ていた。
 蹴り上げ、振り下ろし、そのまま上下に旋回した体から鎚の如き脚撃に薙ぎ払う円蹴。
「……、やるしかないか」
 絶え間ない連撃と放たれる冷気の刃を、攻撃を放棄してどうにか躱しながら、握るハンドガンにアタッチメントを装着する。
 隙を作らなければ、有効な手が打てない。
 その時、ズゴァ! と冷気が渦を巻いた。
 突撃槍の如く撃ち出された蹴りに、シキは体を半身に反らし交差させるように銃口を突き出していた。
 引き金を引く。
 撃ち放たれるのは、炎の魔力に螺旋を描く、氷を溶かし消す弾丸だ。
 だが、それが雪布を貫くことは無かった。直下から突き上がる脚がそれを弾き、凍てついた周囲から放たれる冷気が、続けて打ち出した弾丸を逸らしていく。
 蹴りの応酬。それを躱し、躍るように至近距離での射撃で応戦するシキの弾丸が舞う攻防は、シキの耳に響いた微かな音に均衡を乱した。一瞬で距離を詰めた雪布の蹴りが、シキの腕の上から胸へと衝撃を伝わせ、吹き飛ばした、その先。
 足を凍った台地に滑らせ、体勢を整えたシキの傍。
 ビギリ、と重い亀裂の音。それは誘導していたシキの傍にある氷の柱から発されるものだった。放っていた炎の弾丸は、全てを雪布に放っていたわけではない。
 躱される延長戦に、時には蹴りの軌道に弾道を変えて、撃ち抜いていたその弾丸が、巨木の幹にも思える氷の柱を砕いている。
 シキが、軋むような胸の痛みに息を深く吸いながら、氷柱の亀裂を蹴り抜いた。
 徐に傾きゆく氷柱に、雪布はしかし、その場を離れず地面をその脚で叩く。瞬間。地面からせり上がった新たな氷柱が、倒れるそれと衝突し、互いを支えるかのように轟音を放ちながらも静止する光景に、シキはおもわず舌を打つ。
「一押し、足りないか」
 破片が宝玉を砕いたように舞う中で、シキは破壊衝動に満ち、狙いを定め続ける瞳を正面に見据え。
「なら、俺がもう一押しするっすね!」
 過ぎた二つの影が放った声に、雪布の頭上でアーチを作るような状態の氷柱が砕ける音を重ねて聞いていた。
大成功 🔵🔵🔵

秋月・充嘉
寒っ!
もー、さっきまで暖まってたのになんで寒くするんすか!
ま、いいや。んじゃ、仕事やるっすかね。
影を出して2対1で戦うっすよ!
出てくる氷柱はシャドウウェポンで逐次破壊っす。
うまく接近できたら、がら空きのボディに攻撃っす!
…それにしても、こいつもなかなかいい身体つき。んー、うまそうー。あわよくばこいつをちょっとでも手駒に出来たら…。うん、楽しそう。
あぁ、大丈夫、ちゃんと倒すっすよ。

倒したあとの楽しみが残っているっすからねぇ。
あのお兄さん、けっこう可愛かったし、逃げないよう縛っておいたし、お持ち帰りして、第二ラウンドを…えへへ。


 倒れる氷柱に、混沌とした獣が駆け出した。秋月・充嘉(キマイラメカニカ・f01160)は、風に乗って聞こえた言葉に、快活な声を発していた。
 あと一押しが必要なら。
「なら、俺がもう一押しするっすね!」
 気炎を上げる。意気は充分、温泉での一幕に体を暖めていた充嘉は、冷気など吹き飛ばす勢いに猛進する。
 踏み込んだ勢いのままに、充嘉の体が弾丸のように跳躍する。アーチを作る二本の柱。それに振り上げるのは、影を練り固めた、身長程もある鈍器。
 その質量のみを己の意義とする六角棍棒を両の手に握りしめた充嘉が跳躍の落下の勢いにのせ振り下ろして。
 ゴ、ガッ――ァ!!
 支える氷柱の半ば程を盛大に砕き折っていた!
「ぅう、寒っ!」
 途端、周囲を埋める氷の破片と冷気に、充嘉は思わずに、砕けて落ちる最中の瓦礫の上で身を震わせる。
 暖まっていた体も急激に冷えていく。
「さっさと終わらせて、――暖まりなおさなくちゃ、すね」
 マズルの先を軽く舌で濡らして充嘉は、瓦礫を蹴り飛ばして、墜落さながらに地面へと加速させる。
 先には雪布。
 冷えた光を滾らせるそれへと迫る最中に、握る鈍器が影へとほどけ、充嘉の両下腕へと纏わりつく。
「ゼ――ァッ、!!」
 雪布が脚を振り上げる、と同時に振り下ろした拳は、影の籠手が覆っている。
 直後、衝突。瓦礫が地面に砕ける轟音の最中に蹴りと突拳がぶつかり、冷えた霧が周囲に飛散し弾ける。
 白霧を影の腕で裂くように、充嘉は着地と同時に霧へと突っ込んだ。
 ゴ、ッ、と視界を遮る霧を抜けて突き出された脚撃を、腕で弾いた充嘉へと追撃せんとした雪布の背後に、影が揺れた。
「――!」
 気配にか、それを察した雪布は、しかし、影が動く方が早かった。
 それは充嘉の姿をしていた。違いは腕に纏う武装を脚にしている事くらいか。そこから豪然と放たれた蹴りが、雪布を襲う。
 その一瞬。
「っ、のぁ!?」
 冷気が作り出す槍が地面から、充嘉とその影へと真下から突き出され、影の蹴りが槍を砕く一瞬の間に、雪布は屈み避け、充嘉へと跳ね上がるように充嘉の側頭を狙う回し蹴りが放たれていた。
 ズ、ゴガ、ッ!!
 充嘉に届く寸前に差し込んだ腕で豪脚を受け止めた音が、彼の耳を殴打する衝撃と痺れに地面を踏み締めながら、しかし、充嘉は口許に笑みを作る。
「いやあ、いい体っすねえ」
 拘束状態での肉弾戦を可能にする体幹、それを生み出す肉体。それが大きく脚を上げた姿は、思わず、手籠めにしたいとすら考えてしまう光景だが。
「でもまあ、待たせてるっすからね」
 防御が作った隙を、影が突く。
 ボ、ゴァ! と今度こそ、確実に打ち込まれた影脚が雪布の無防備な胴体を蹴り飛ばしていた。
 縛って転がした逢瀬の相手を待たせている、目移りする暇は無いのだ。と、充嘉は吹き飛んだ先で跳ね起きる雪布へと拳を握った。
大成功 🔵🔵🔵

宇迦野・兵十
失敗作、不法投棄
まったくひどい話もあったもんだ
お前さんだってそんな風に呼ばれたかった訳でもないだろうに

―【コミュ力】で語りかけ、雪と氷を踏みしめて

お前さんも僕もさ
どこかの悪党に踊らされているようで気に入らないもんだねぇ

―氷柱や攻撃を【見切り】回避し、当たりそうものは【早業/武器受け】で捌く
 捌ききれないものは【覚悟/激痛耐性】で受け

お前さんも、昔ここにいた鬼も好き好んでそんな風になった訳じゃないだろうさ
でもねお前さんがいるとまた誰か死んじまうのさ
だからさ

―【暗殺/早業】で踏み込みつつ、【早業】で笑狐を引き抜く

僕だけ怨んで、地獄に帰りな

―【三狐新陰流・常世還】

[アドリブ歓迎お任せいたします]


懐に片手を突き入れ、片腕で刀の鞘を握る妖狐が、弾ける氷の霧というべき冷気に白む世界で、脚に打たれ、吹き飛んだ雪布に歩みを向ける。
 アレが失敗作の廃棄物だ、というなら。
 猟兵は掃除屋だろうか。
「お前さんも僕もさ」
 結局、利用されるだけ利用されて「ああ、よかったな」などと一言で済ませて消えるのだろう。
「どこかの悪党に踊らされているようで気に入らないもんだねぇ」
 そう語り掛けた声に、雪布は一も二もなく、兵十へと攻撃を仕掛けていた。
「――ッ!!」
 ゴ、バッ!! と爆ぜる冷気に押し出された蹴りを握る刀に受け止めた兵十から、その威力に握力をもぎ取られたように握っていた鞘ごと刀が弾き飛ばされる。
 手首から肩へと痺れを走らせる痛みに、気を逸らす暇など与えず放たれた追脚に、着物を棚引かせながら、兵十は全身を駆使し、攻撃を避けていく。
 背を向けるように旋回し、柄を押し下げ、跳ねた鞘先に打たれた脚を弾いて兵十は、振り向きながら「ああ、」と小さく声を漏らす。
 弾いた蹴りに、しかし、心臓すら凍らせんとする冷気が瞬く間に指先を軋ませる痛みを薄い笑みの向こうに隠して、彼は地面を埋める霜の柱を踏み砕く。
「失敗作だの何だの、挙句の不法投棄なんて」
 下げた頭上のすぐ傍を過ぎていく足甲の鋭さに息を呑みながらも、しかし言葉を止めはしない。
「まったくひどい話もあったもんだ、と思ったが」
 その全て破壊するという一念のみで動くその薄らいだ笑み。言葉に反応すら返さず、その衝動に身を任せ続けるそれに、兵十は笑う。
「そうかい」
 掌の上だろうと、どこだろうと、躍るのはそれの意思一つか、と。
 あの男が選んだのは場所だけで、さて、それが暴れようとした事とは無関係なのだろう。
 でなければ、暴走の危険がある等と始末をさせるなどせず、それこそ手元に置いておけばいいのだ。
 凍る鞘の先を掌の肉が灼けるのも厭わず掴み取って、柄を逆手に握りこんで兵十は、体重を支える事を放棄し、体を重力に預けるように前へと体を倒す。
 手綱を握れぬ程に暴れた故に、この場に至ったのならば、それはある意味での勝ち取った自由なのだろうか。
 それは、称賛すべきなのかもしれない。
 だが「でもね」と兵十は、その自由を否定する。
「お前さんがいるとまた誰か死んじまうのさ」
 一足に落ちるように、兵十の体は、雪布の懐に沈んで。
 バンッ!! と何かが弾け飛ぶような音と共に、黒紐の結び目が己から解けていた。
 黒の戒めが解ける。
 封印の解かれた鍔口に朱が瞳を開くように、奔る。
 だから、斬る。
「そうら」
 その意思ごと、残った衝動ごと。
「起きな。――なまくら」
 笑むように、漏れた赤が細まって刃の形に収まった、その瞬間。
 順手に、両の掌を備えた一刀が振り抜かれていた。
 ボ、――ッ!!
 と、肉を裂く音が一瞬遅れて、弾ける。一閃に赤の軌跡が揺れて、雪布の腹を兵十の振るった刃が食い破る。
 傷に、氷が張り付く。
 その一瞬、中身から溢れるいびつな冷気が、彼の視界を奪い去っていた。
大成功 🔵🔵🔵