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33分猟兵~櫻の都に咲く血の花と尺余り~

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 とある屋敷にて。

「そ、そんな……目を覚ましてください、コウガさん!」

 惨劇が幕を開けた。
 赤色の舞台に倒れ伏すは、白衣を着た一人の男。どうやら科学者らしい彼の矜持を示すような白い実験服は、無残にも血色に染まっている。
 その場にいる人間は、四人。

「嘘。こんな、こんなことって……!」

 右目の下にハートを描いた、奇術師見習いの少女。

「気力充分な御仁であったが、定命の運命には逆らえぬ、か。脆いのう、人間は……」

 独り言のように呟く、料理人の老人。

「殺しても死ななそうだったがな。まあ、墓くらいは建ててやるか。莫迦の墓な」

 赤ワインを片手に退屈そうにナイフを研ぐ、富豪の女性。

「私がやりました」

 呆れるほど血のついた包丁を持って、黒い衣を返り血で真っ赤に染めた男。
 今ここに、新たな事件、新たな謎が幕を開けるのだった……!

『ここで終わらせて良いんですか?』
「はい猟兵! 事件です!」

 何やら珍妙な呼び声と共に、無意味に大きな音で扉を開いて、月見里・見月(幼き彼女の悩み・f27016)が姿を表す。

「今回のターゲットは……所謂『迷』探偵というやつでして。殺人事件を起こして、それを自分で解決するという……マッチポンプも良いところですね」

 なので影朧が事件を起こす前に、対象を誘き出さなければならないのです。と言ってから、少女は苦虫を噛み潰したような顔をする。

「で、殺人事件を偽装して誘き出すことは簡単なのですが……どうやら、自分以外の手で事件が解決されると、出てくる前に逃げるようです。凄い速さで」

 当該影朧氏は、自分よりも賢くない、と見做した人間の前にしか姿を見せないのだ。微妙に姑息である。
 その性質が、今回の事件を一筋縄では行かないものにした原因だと言う。

「この探偵さん……推理力が壊滅的なんです。例えるならクロスワァドパズルを見て、白い部分を塗り潰して絵を描こうとする感じです」

 異世界のどこを探しても、彼ほど明後日の方向に推理を放り投げる者は居ないであろう、天晴れなまでの理論の方向音痴。
 故に、凝った事件を作ってしまえば彼は出てこない。解けないからだ。

「なので、向こうの知り合いにお願いしまして、とんでもなく簡単な事件をご用意しました。皆さんはそこに乗り込んで、良いですか、圧倒的に間違った推理を披露しなければなりません!」

 そうしていればなんやかんやあって、やあやあ我こそ古今無双の名探偵也と影朧が姿を見せるはずだ、とグリモア猟兵は言い切って見せた。
 なんやかんやとは、何だ? と問えば、

「なんやかんやは……なんやかんやです!」

 兎に角絶対に、違う人を犯人と指摘して、とんでもない推理を披露して見せること。今回の作戦はそれが肝なのだと、力説する。

「良いから行ってください! 尺が……じゃなくて、時間がないんです!」

 言いたいことだけ言うと、転移を始めるグリモア猟兵。光が収まった先に待っていたのは……凄惨な殺人現場、のような何かだった。


眠る世界史教師
 こんにちは、帰ってこさせられた眠る世界史教師です。
 頭から尻尾までギャグシナリオです。普通にやればたった青丸3個で終わる超簡単な事件を、シナリオクリア目標の33個まで何とかもたせる名猟兵、それが皆さん。次々繰り出される推理にガンガン増える一方の容疑者、その果てに真犯人は見つかるのか見つからないのか。
 一章では思い思いの名推理を披露していただきます。全ての情報は可変です。情報提供者、アリバイ、容疑者、証拠、全てはプレイングに書いた通りのものが現れます。真犯人は違う人かもしれません(違いません)。凶器は包丁ではないかもしれません(包丁です)。他殺ではないかもしれません(他殺です)。そもそも舞台がサクラミラージュだけとも限りません(限ります)し、犯人はユーベルコードを使ったのかもしれません(使っていません)。兎に角、タガの外れた自由な発想と、砂上の楼閣でジェンガを積み重ねるが如きウルトラC級のアクロバットな論理展開が鍵なのです。
 二章と三章は集団戦とボス戦です。ただし、こちらも普通の戦いにはなりません。頑張ってください。
 それでは皆さんのプレイング、お待ちしております……只今五百文字です。
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第1章 日常 『あなたのことを教えて』

POW   :    積極的に話しかける。

SPD   :    関心を持たれそうな話題を提供する。

WIZ   :    場を和ませるように、笑顔で接する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちは、"事件現場"への転移を果たす。
 現場となった屋敷の応接間では、一通りの茶番を終えた容疑者たちが被害者を囲んで暇を潰していた。

「こいつが死んでると静かでいいな。考えておくか」
「そういうことであれば、お手伝いいたしましょう。生を弄ぶは専門分野です故」
「お母さんもサイゴクさんも、悪い冗談はやめてよ! ……冗談なんだよね?」
「……あァ、猟兵の方ですね。お待ちしておりましたよォ」

 もう色々と終わってしまっている気がするが、これでも影朧は現れるらしい。
 猟兵たちを見つけて話しかけてきたのは、黒いコートを真っ赤に染めたラジオパーソナリティ、[月詠・シラベ]。隈の浮かんだ眼を人の良さそうに瞬かせながら、今回の"事件"のあらましを伝えてくる。

「——ということですが、存在しない情報を使って推理しても構わないそうですよォ。……私が犯人役なことを含め、色々と納得はいきませんが。これで影朧退治のお手伝いが出来るのでしたら」
「で、でも! シラベさん、とても良く似合ってますよ、犯人役!」
「……そうですか」

 言動に一切の悪意を持たない奇術師見習いの少女、[卯月・ナユタ]。

「いちいち言動が怪しいからな。天職なんじゃねえか? 犯人」

 その母で文化保護財団の代表者、被害者の上司でもある[卯月・アソギ]。

「儂に言わせれば、まだまだですな。罪人には、特有の隠しきれぬ臭みが出るものです」

 レストラン『葉桜ノ逆旅』のオーナー兼料理長、[長月・サイゴク]。

「……ゲホッ」

 律儀に仰向けで倒れ続けている、アソギの側近で科学者兼発明家である[皐月・コウガ]。
 君たちは今から、この個性豊かな面々を相手に、一分の整合性もない推理劇場を繰り広げなければならない。
 これも全て、影朧に対処するため……そう自分に言い聞かせてから、思考を始めたまえ。


(情報)

・現場となった屋敷は高い柵に囲われており、正門と裏門には一日中鍵がかけられていた。
・五人が最後に顔を合わせたのは12時丁度、二階の応接間にて食事をした時。コウガはその後、ずっと応接間で本を読んでいたと考えられる。
・12時40分、アソギは応接間に毛布を取りに行った。
・12時45分、シラベが食堂に包丁を一本借りに来た。その際に料理を仕込んでいたサイゴクと顔を合わせている。
・死体の第一発見者はナユタ。12時から13時までアソギの私室に二人でいた。食堂でおやつを貰う為に部屋を出た所、同時にシラベが応接間から出てきて、応接間を見るとコウガが死んでいた。
・サイゴクは12時50分に裏門から屋敷を出て、片道10分弱の位置にある商店街で魚を買い付けていた。帰ってきたのは13時15分。
・コウガの腹部に鋭い刃物で刺されたような傷跡がある。床に落ちた本に本人の筆跡で『S・T』と血のダイイングメッセージが書かれていた。
・応接間の窓が開いていた。隣の部屋はアソギの私室だが、二つの窓の間にバルコニーはない。
・血のついた包丁からはシラベとサイゴクの指紋が検出された。同型の包丁は食堂に何本かある。
・犯人はシラベである。
真棚井・にゃんきち
そだにゃあ、にゃんきちはかしこいねこなので、まるっとお見通しなのにゃ。
つまり……犯人どのは、ネコチャンが好きなのにゃ!
なんでって? あせるのはよくにゃい、今から説明するにゃん。

まず……すべての知的生命体はネコチャンが大好きでしょ?
だから、犯人どのもネコチャンが好きなのにゃ。
この包丁が動かぬ証拠にゃ。
ここの刃の模様が猫のお耳に見えるのにゃ。
さあ、ネコチャンの大好きな犯人どのは、だあれ?

……え?
みんながネコチャン好きなら、みんなが犯人どのじゃないかって?
え……そうかもしれにゃい。にゃんてことにゃ。
にゃんきちのふわふわに免じて許してほしいにゃ。
撫でてもいいにゃ、でもひと撫でだけね。



『サクラ街の黒猫』

「名探偵にゃんきちに、お任せあれ……なのにゃ」
「もう不安だ」
 初めに名乗りを上げたのは、容疑者達の膝ほどの大きさの生物……二足歩行する猫、[真棚井・にゃんきち]であった。
 その金色の瞳は、自分こそこの混沌を極めた事件の全てを見通している、という自負でいっそう輝いている。容疑者、真犯人、被害者……その場の全員が、早くも真犯人が明らかになるのでは、という期待から息を呑んだ。
「では、お聞かせ願えますかな。真犯人を」
「その前に、聞いておくことがあるにゃ……ここにいるみんなは、ネコチャンが好きかにゃ?」
「ネコチャン……猫ちゃん?」
 その言葉の意図は、一見しては図りにくい。問われた容疑者たちは、口々に自分について——猫が好きかどうか、語り始める。
「私は大好きですよ! もふもふしてますし、自由なところも愛くるしいです!」
「まあ……嫌いじゃねえけど」
「私もですが……この質問に、一体何の意味があるのでしょうかねェ?」
「生憎分かりませぬな。まだ捌いた事がありません故に」
「俺は好きだぜ!」
 被害者も含めた供述を全て聞き届けた探偵は、満足げに一つ頷く。我が意を得たり、とばかりに……そして、その結論を高らかに告げたのだった。
「それじゃ、言っちゃうのにゃ……犯人どのは、ズバリ。ネコチャンが好きな方なのにゃ!」
 瞬間。部屋にいる全ての人間が、言葉を失う。
 それが探偵……否、名探偵にゃんきちの余りの慧眼に恐れを成してのことだと、誰の目にも明らかであった。
「……何て?」
「この包丁こそ、動かぬ証拠なのにゃ」
 彼は滔々と、一片の綻びも無い論理に基づいた完璧な推理を語り始める。
 取り出したのは、血のついた包丁。シラベが手にしており、今回の犯行に用いられたと考えられている物だ。「ここを見てほしいのにゃ」と言って差すのは、鈍く輝くその刃。
「この刃の部分が、ネコチャンの耳の模様に見えるのにゃ。犯人どのは犯行の時も、つい自分のネコチャン好きに逆らえなかったのにゃあ」
 犯人は自らの愛故に、致命的な手掛かりを残してしまったのだ。まるでギリシア悲劇のような物語だが、証拠はそれが真実であることを、過たず証明していた。
 感極まったかのように、アソギが自らの顔を片手で覆い、嘆息する。もはや犯人は明らかになったも同然だった。
「おいシラベ……これ、わざとなんだよな。本気で言ってるんじゃあ無いんだよな」
「それはそうですよ、彼らはプロフェッショナルですから。……多分。えェ、多分」
「さあ、ネコチャンが大好きな犯人どのは、名乗り出るのにゃ」
「……あの、にゃんきちさん」
 そこで手を上げたのは、奇術師の少女だった。自身が先ほど猫好きだと言っていたことに不安を覚えたのか、その言葉はどこか自信無さげだ。
「どうしたのにゃ?」
「その……ここに居る人は、大抵が猫さんが好きだと思うんですが」
「そだにゃあ、全人類は猫好きだからにゃあ」
「違えよ」
「そうすると……その情報では犯人は絞れないんじゃないでしょうか?」
 その言葉に、再び部屋の時間が凍り付く。
「え……」
 そう、彼は致命的な見落としをしていたのだ。彼が迂闊なのではなく、遠くを見据えすぎていたがためのミス……優秀が故の過ちだった。
 『生命はみんな、猫がだーいすき』……この当たり前の常識は、当たり前過ぎたが為に彼の意識から抜け落ちていたのだった。
「そうかもしれない……にゃんてことにゃ」
「げ、元気を出してください! 猫は……猫は可愛いから、仕方がないんです!」
「そだにゃあ……にゃんきちのもふもふに免じて、許してほしいにゃ」
「許します!」
「オレの娘、こんなだったかな……ひっくり返った時に頭でも打ったか?」
 確かに、彼は最終的な結論を誤ったかもしれない。
 しかし彼は、真実よりも大事なものを人々に残していったのだ。
「わー、もふもふー!」
「一撫でだけなのにゃ」
 癒し、である。

今回の犯人:とりあえず全生物

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネリー・マティス
…………???
とにかく、シラベさんを犯人じゃなくすればいいんだね!わかったー!(わかってない)
ずばり!犯人はアソギさんだ!アソギさんは、実は脱いだら筋肉すごい系の人だったんだ!これですべての謎は解ける!
ナユタさんが部屋を出ようとしている隙に、アソギさんは窓から出た!そして壁に掴まり応接間に渡ったんだ!そしてコウガさんを手刀でひと突き!偽装のため血文字を書き始める……その場にいたシラベさんは包丁で応戦!アソギさんを刺したものの、傷口に力をこめることで傷は閉じ塞がれた!シラベさんは急いで部屋から逃げ出し、アソギさんは窓から去っていった……!
うーん、我ながら完璧な推理……探偵としてやっていけるかも!



『疾走する筋肉の密室』

「……?」
 次に現れた探偵は、巨人と見紛うほどの巨躯と筋肉を誇る少女、ネリー・マティス。しかし彼女の武器は肉体だけではない。その灰色の脳細胞も、真実を見抜くに足るだけの輝きを持っているのだ。
 その瞳が現場となった部屋を見渡し、理知的に光る。
「これって、犯人はシラベさんなんじゃ——」
「違います! いえ違わないんですけど、今回は皆さん頑張って私が犯人ではないという風にしていただく感じで」
「成る程!」
「大丈夫かよ……」
 元気よく発せられたその言葉には、全てを理解した確信が篭っていた。部屋に集まった人々は、その頼もしさに思わず嘆声を洩らす。
 それから、また暫く部屋を見回し、考え込み、深く思案し……
「分かった!」
 目を見開くと、大きく叫んだ。
「犯人は、アソギさんだね!」
「あァ!?」
 黒いドレスに身を包んだ、財団の代表に指を突きつける。
 椅子に腰を下ろしてナイフを研いでいた女性は、その刃を壁に投げ付けると、憤りを隠せないように荒々しく立ち上がった。
「随分なご挨拶じゃねえか、オイ!」
「ちょっとお母さん、落ち着いて……」
「いえナユタさん、今回はこれで良いのですよ」
 容疑者達には、探偵の推理に積極的に反論する事が求められている。その方が今回の目的は達せられ易くなるだろうという配慮の為だ。
「オレに濡れ衣を着せる以上は、串刺しにされる覚悟はあんだろうなあ、えェ!?」
「それにしたってやり過ぎのような……」
「ふっふっふ……勿論、推理はあるよ」
 怒りを露わにするアソギとは対照的に、マティスは不敵に微笑んで見せた。
 今度は、その丸太のような腕で開いた窓を指し示す。人一人なら余裕で通り抜けられそうな大きさだ。例外は彼女自身くらいだろう。
「アソギさんはこの窓から、この部屋と隣を行き来していたんだよ」
「確かに、隣にはアソギ氏の部屋がありますな。しかし、バルコニーも無しに窓から部屋を行き来するのは難しいのでは?」
「それに、お母さんは私とずっと一緒にいましたよ! 窓なんて通ってないと思いますけど……」
「その問題は全部、ある前提があれば解決するんだよ」
 一呼吸おいて、その真実を高らかに宣言する。
「アソギさんは、脱いだら凄い人なんだよ!」
「こいつは殺そう」
「お母さん待って!」
 彼女の推理はこうだ。
 犯行が行われたのは、ナユタが応接室にお菓子を取りに部屋を出てから応接間にたどり着くまでの間。
 私室の窓から身を乗り出した彼女が移動手段として用いたのは、普段はそのドレスに隠された隆々たる筋肉であった。その筋肉を使って壁に手をめり込ませ、そこを支えにして応接室の窓まで移動する。そして部屋で本を読んでいるコウガを……
「手刀で一突き!」
「マジかよアソギ様、凄え! "漢"だぜ!」
「コウガ、これが終わったら話がある」
 そしてダイイングメッセージを偽装する。
 しかし、その際に思わぬ人物の侵入が起こる。それがシラベであった。
「ふむ……しかし、ナユタ氏が応接室に辿り着くまでそうかかるとは思えませんが」
「そこは事前に仕込みをしていたんだよ、タオルを取りに行くときに……アソギさんはナユタさんのお母さん、ナユタさんの大好きなものは良く知っているはずだよ、そう——」
 トランプカードの山!
 アソギは53枚のトランプを、私室の前にばら撒いていたのだ。それを見たナユタは、奇術師としての本能に逆えずそれを全て集めようとする。彼女が応接室に辿り着くまで時間がかかったのは、それが原因だ。
「いや、集めるかよ!」
「それは……集めちゃうかも」
「集めるのかよ……」
 応接室に入ってきたシラベは、目の前の事件を見て気が動転。咄嗟に食堂で借りてきた包丁でアソギを刺し、逃走したのだ。
 包丁に付いていた血は、被害者では無く犯人の物……凶器だと思われていた物がそうではなく、被害者の血だと思われていた物がそうではない。全てがひっくり返る推理劇場に、人々は舌を巻いていた。
「……じゃあ刺されたオレは何で無事なんだよ」
「傷口に力を込めて傷を塞いだんだね!」
「出来るか!」
「わたしは出来るよ?」
 そうして、完全に無傷、何の変わりもない状態で、彼女は犯行を成し遂げ何食わぬ顔で私室に戻る……窓経由で。
 それこそ、この事件の全貌なのだ。
「うーん、我ながら完璧な推理……探偵としてやっていけるかも!」
「お母さん、やっぱり凄い……!」
「流石アソギ様だぜ……男皐月コウガ、一生付いて行くぜ!」
「……頭が痛え……」
 ここに一つの事件が、名探偵の手で解決されたのだった。

今回の犯人:卯月・アソギ

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイコブ・ホームズ
POW

名探偵の出番だな!!
私はホームズなのだよ、どんな難事件も解決して見せよう!
……ところで、部屋が少々狭いのだが。

では単刀直入に言おう。
犯人は、死んでいる【皐月・コウガ】だ!
順を追って説明しよう。

本を読んだコウガはこう思ったのだろう。
「あれ、この描写って本当に出来るのでは?」
そう思ったコウガは試したくなったのだろう。
ウキウキとキッチンへ行き包丁を拝借。
応接間に戻り、さぁ、殺ってみようと自分の腹を刺した!
こうして実証出来たが当然コウガは死んでしまったというわけなのだよ。

指紋がなかった?持ってなかったんだろう。
メッセージ?シラベのサインを真似たんだろう。
シラベが犯人?それはない、私は名探偵だぞ?



『まだらの紐理論』

「名探偵たるこの私の出番だという訳だ!」
 次に現れた探偵は、今度は正真正銘の巨人、[ジェイコブ・ホームズ]。最も偉大な探偵と同じ名を持つ、自他共に認める名探偵だ。
 見上げる程の巨躯を窮屈そうにさせながら容疑者達を見下ろして、早速推理を語り始める。
「この度の犯人……単刀直入に言おう、それは被害者たる[皐月・コウガ]なのだよ!」
「ええっ、皐月さん!?」
「嘘だろ、皐月さん!……俺様じゃねえか!」
 余りに荒唐無稽と思える推理に、人々は驚きを隠さないでいる。先程まで倒れていた被害者——否、容疑者が起き上がって、探偵を見上げて叫んだ。
「俺様は今回殺されたんだぜ! そもそも自殺なんて"漢"らしくない真似、するわけねえじゃねえか!」
「それが、したのだよ。自分ではそうと気付かずとも、ね……」
「自覚が無かった、ということですか?」
 シラベの言葉に、重々しく肯くホームズ。その一挙手一投足に、自分の推理に対する絶対の自信が伺えた。
 そして彼が指差したのは、死んでいた彼がダイイングメッセージを遺していた本だ。
「発端は、それだ」
「S・Tのメッセージだろ? どう見たって死んだ後に書いた物じゃねえか」
「いや、違う……その本自体が、問題なのだよ」
 彼はメッセージの存在だけに囚われず、その裏に隠されていた、より重要な手掛かりに目を向けていたのだ。
「その本……タイトルに『超紐理論概論』とあるようだ。フィクションの小説だね?」
「バリバリのノンフィクションの学術書だぜ」
「やはりな。そしてなおかつ、私の見立てではミステリだ。ミステリは最高に面白いジャンルだからな」
 今回の事件の被害者にして加害者、皐月・コウガが読んでいたミステリー小説にこそ、今回の事件を紐解く鍵があるとホームズは断言する。
 作家は難解な事件を作り出し、読者はそれを解き明かそうとする。一種の頭脳ゲームとも言えるミステリー小説を読んだコウガに、ある感情が芽生えたのだ。
「つまり彼はこう思った。『この描写、僕にも試せるんじゃないかな』……と」
「して、自分で実践した、ということですかな」
「その通り! コウガは科学者、実験を何よりも重んじる人種だ。疑問を解消する為に命をかけても、不思議ではあるまい」
「そう言われると……そんな気がするぜ!」
 犯人はほぼ確定したと言っても良かった。今回の事件は、一人の人間の好奇心が産んだ悲しき事故だった、という真実と共に。
「……何で馬鹿の指紋が包丁から出なかったんだよ」
「持っていなかったのだろうな」
「じ、じゃあこのダイイングメッセージは……?」
「自分を刺して倒れ込めば、当然血の付いた指が近くの物に触れる事になる。その跡に過ぎない」
「私は……何なんですか?」
「君は犯人ではない。私は名探偵だぞ?」
 そう、彼は名探偵である。百の言葉より、千の証拠より、それこそが彼の言葉が真実であることの曇りなき証明なのだ。
「故に犯人ではない。それを繰り返して行けば……あり得ない可能性を除いて最後に残った推論こそ、真実なのだ」
 それがどんなに荒唐無稽であっても、その巨大な瞳は真実だけを見通すのだった。

今回の犯人:皐月・コウガ

大成功 🔵​🔵​🔵​

エレン・マールバラ
※アドリブ・連携歓迎

hmm…なるほどなるほど。結論から言わせてもらうっすよ。真犯人はMr.長月…貴方っす!

12時50分、彼は片道10分弱かかる商店街へ向かったっす。…でも、本当に商店街に行ったか誰も見てないっす!
食材のダツ…たまにFishermanに刺さる事で有名な魚っすけど、冷凍してあったこれを隠し持って裏門を出たMr.長月は、どこかに隠してあったBowでダツを放ち、応接間のMr.皐月を殺害、結んであったRopeでダツを回収して証拠隠滅したっすよ!
Mr.長月はArcheryの達人…、この程度の狙撃Easyっす!
さあ、言い逃れできるっすか!?(なお、食堂の冷凍庫にはカツオしかなかった模様)



『青い矢』

「Hmm……成る程。EasyなCaseっすね、これは」
 奇妙な外国語訛りで自信ありげな言葉を吐くのは、探偵[エレン・マールパラ]。
 彼女は情報を耳にするだけで、早くも推理を固めてみせたのだという。桁違いの推理力に、部屋の人々の緊張と期待が高まった。
「単刀直入に、結論から言わせてもらうっす。真犯人はMr.長月……貴方っすね!」
「ほう」
 名指しされた老翁は、どこか愉快そうな声を出してみせた。戸惑ったのは、むしろ周りの人間の方だ。
「で、でもよお。俺が死んだ時、サイゴクさんは買い物に行ってたんだろ?」
「そうですよ! いわゆる……アリバイ、でしたっけ。とにかく、屋敷の中には居なかったはずです!」
「屋敷の中に居なかったから犯人じゃない……nonsenseっすよ、皆さん」
 そう言って差し示すのは、応接室の開いた窓。外には高い柵と、その向こう側に帝都の街並みが見える。
 長月が通ったという裏門から出る道は、こちらの窓に面しているのであった。
「Mr.長月は、外に居ながらにして犯行をしたんす」
「な、なんだってー!」
 彼女の推理はこうだ。
 まず初めに、食堂に包丁を借りにやって来たシラベを後ろから殴り、気絶させる。そして包丁と共に、応接室まで運んだのだ。
「そして応接室に放置っす」
「馬鹿が気付くだろうが」
「Mr.皐月はBookを読んでいたから、気がつかなかったっす」
「無理だよ」
「とても熱心に読んでいたから、気がつかなかったっす」
 そうして皐月に気付かれる事なく応接室に包丁を握らせたシラベを放置して、何食わぬ顔で裏門から外に出る。
 その後、片道十分かかる道のりを行く前に、その場で犯行に及んだのだ。
「料理人というprofessionを活かして……外からMr.皐月を殺したっす」
「ほう、参考までにお聞かせ願えますかな、探偵様の巧みな想像を」
「サイゴク氏、結構ノリノリですねェ」
 ダツ、という魚がいる。非常に細長く、口が鋭く尖っているのが特徴だ。それこそ、刃物のように。
「Mr.長月。貴方は事前にダツを冷凍しておいて、外に持ち出した。そして……隠してあったBowでダツを矢のように放ったんす、応接室の窓に向けて!」
「は、え、弓で二階の窓に!?」
「それが可能なんすよ。その指にできたタコを見るに、貴方は料理人であると同時にArcheryのプロ!」
「これは包丁ダコです」
「彼にとってこの程度の狙撃はEasyっす。そして、結んであったRopeを使ってダツを回収。料理して証拠を隠滅したっす。現場に残るのは、血塗れで包丁を持ったMr.月詠だけ……」
 これによって、完全犯罪が為されたのだ。
 事件現場と犯行現場が、必ずしも一致するとは限らない。単純な事実だが、見落とされやすい事実を用いた事は、マールパラの優秀さを如実に示していた。
「さあ、言い逃れ出来るっすか!」
「成る程成る程……面白い話ですな。小説家にでもなったら如何でしょう」
「本当にな」
「しかし、探偵殿……一つ、言うことがあるとすれば」
 老獪な瞳を怪しく輝かせて、サイゴクは言う。
「あの日お出しした魚は、商店街で買ってきたカツオだけです」
「カツオ?」
「あっ、確かにそうでした! カツオをぶつけたら、刺殺じゃなくて撲殺になっちゃいます!」
「その前に弓じゃ無理だろ。いやダツも無理なんだが」
「……What?」
 容疑者からの反撃に遭い、マールパラは言葉を詰まらせてしまった。
 細長い魚でなければ、被害者に刺さらない。しかし、今までに出てきた情報の全てが、目の前の料理人こそ犯人であると示しているのだ。
 彼女は考える。真実へと至る、たったひとつの論理を。その脳細胞を酷使して、考える——
「せた……なら……っすね」
「何だって?」
「痩せたカツオなら刺さるっすよね!」
 瞬間。
 部屋を包んだ静寂が、何による物であるか……今更、説明するまでもない。

今回の犯人:長月・サイゴク

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧ヶ峰・星嵐
なるほど……真犯人が分かりました!

これは外部の人間の犯行です!
この館は一見侵入不可能。しかしサイゴクさんが買い出しの行き帰りだけは開いていた。犯人はサイゴクさんが買い出しに出る時、なんやかんやで気づかれずにすれ違い侵入、偶然包丁を持ち歩いていたシラベさんをタツジンめいた動きで気絶させて包丁を奪い、コウガさんを刺殺したんです!

ダイイングメッセージはその証拠。そう、これはSTRANGERと書こうとしてTまで書いて力尽き犯人によって・が付けたされたんです!
そして犯人は気絶したシラベさんに包丁を持たせ、サイゴクさんが帰ってきたときになんやかんやばれずにすれ違い外へ逃げた……これが、この事件の真相です!



『鍵のかかった屋敷』

「なるほど……真犯人が、分かりましたよ」
 桜を思わせる薄桃色の髪の少女、[霧ヶ峰・星嵐]。今は普段の改造制服ではなく、平たい帽子に茶色いコートというステレオタイプな探偵の衣装に身を包んでいる。
 彼女の異能は、衣装から力を引き出すもの。今彼女は、『なりきり』ではなく本物の探偵なのだ。
「ずばり……これは外部の犯行ですね!」
「つまり、私も含めて、この場の全員が犯人ではない……ということですか」
「いやいや、無理だ。この屋敷は高い柵で囲われているし、正門にも裏門にも鍵がかかっていたんだ、壊された形跡も無え」
「確かに、この屋敷は大きな密室かもしれません。しかし、一瞬だけ。その密室が崩れる瞬間があったんです」
 そこで一息ついて、容疑者達の意識を次の言葉に向ける。
 今この空間は、完全に彼女と、その推理に支配されていた。その完璧な秩序に水を差せる者など、存在しない。
「つまり、サイゴクさんが裏門から出入りした時です。その時は、鍵は開いていた……そうですね?」
「……まあ、確かに筋は通ってるが。けど一体どうやって——」
「サイゴクさんが裏門から出る時、なんやかんやでバレずにすれ違ったんです」
「筋のカケラも通ってねえ」
 屋敷に入ってしまえば、話は簡単だ。
 真犯人は包丁を持って応接間に向かっていたシラベを音もなく気絶させ、その包丁を手に入れる。そして、それを使ってコウガを刺殺したのだ。
 裏門でサイゴクに気がつかれずにすれ違える能力がある人間なら、一連を屋敷の人間にバレずに成し遂げることなど容易いだろう。
「証拠は、このダイイングメッセージです。『ST』とは、『STRANGER』……『見知らぬ人』と伝えようとしたものです!」
「でも、真犯人によって『・』が付け足されたんですね……!」
 霧ヶ峰は、満足げに微笑む。それは自分の推理が完璧であることへの喜びか、或いはここにいる誰も、知り合いを手にかけたりしていないということへの安堵か……
 兎も角、真犯人が別にいるという事は立証されたのだった。
「そしてサイゴクさんが戻ってくる時を見計らって、なんやかんやでバレずにすれ違って外に出たんです」
「なんやかんやって何なんだよ、オイ!」
「なんやかんやは……なんやかんやです!」
 こうして、一人の名探偵の手で一つの事件が解決を迎えたのであった。

今回の犯人:外部犯

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
な、成程、或る意味でとても難解な状況ですねぇ。
うぅん(ぷるぷる)。

重要なのは、サイゴクさんが購入されたという「お魚」ですねぇ。
被害者の残した「ダイイングメッセージ」は「S・T」、これは「Scyliorhinus torazame」、即ち「トラザメ」の頭文字ですぅ。
サメさんが実は頭が良かったり、空を飛んだりするのは有名な話ですから、おそらく「料理して食べられそうになっていることに気づいたトラザメが、咄嗟に近くに有った、自分を料理する為に用意された包丁を咥えて突撃、刺殺して逃げた」のでしょう。
犯人がサメなら指紋が無くても当然ですぅ。
何しろ、サメですからねぇ。



『シャークロック・ホームズ』

「今回の事件の鍵は、サイゴクさんが購入されたという『お魚』ですぅ」
「また魚かよ、オイ」
 長年猟兵をしていても遭遇したことのなかった事態に戸惑いを覚えつつも、[夢ノ枝・るこる]はその素振りを表には出さず冷静に推理を始める。
 間延びした口調とは裏腹に、彼女の言葉には自分の推理に対する確かな自負が籠もっていた。
「手がかりになるのは、コウガさんが残していたダイイングメッセージ……『S・T』が、今回の事件の犯人をそのまま示していたんですよぉ」
「ふむ……その魚とは、一体?」
「トラザメ、ですぅ」
 その言葉に、人々は目を丸くする。
 トラザメ。一部地域では高級食材として持て囃されるが、鮫は鮫。その獰猛な性質は、人など本来は彼らにとって餌でしかないのだ。それが犯人であることに、何の疑問も無かった。むしろなぜ今までその可能性を考慮していなかったのか、という驚きがあったのみだ。
「……いや、結局あのダイイングメッセージはなんなんだよ」
「ですから、トラザメ。『Scyliorhinus torazame』の略ですぅ」
「シ……何て?」
 つまり、今回の事件のあらましはこうだ。
 今夜の食卓のメインとして、サイゴクは活きの良いトラザメを仕入れていた。当然新鮮さを保つために、生簀に生かしていたはずだ。
「でも、どうやって水槽の中のトラザメがコウガさんを?」
「そこはどうにでもなります、鮫ですからねぇ」
 自分が食べられるということを悟ったトラザメは、暴走。包丁を借りにきたシラベを気絶させ、その包丁を奪って逃げ出したのだ。
 そして狂乱のトラザメは、応接室へと泳ぎ、そして……
「……いや待て待て待て待て! 肝心な部分が飛んでるぞオイ!」
「サメが実は頭が良かったり、空を飛んだりするのは自明の理、ですぅ」
「そんな訳あるか!」
 そんな訳はあるのだが、るこるはそれに関しては黙ったまま纏めに入る。
「指紋が残っていないのは、鮫だから。簡単な話なんですぅ」
「ふむ……食材にも命がある、という初心を忘れた某への罰か……」
 この事件に、悪人は居なかった。ただ、鮫が居たがために悲劇は起こってしまったのだ、
 その慧眼で隠された真実をいとも容易く暴いて見せた少女は、一通り話を終えると椅子に深く座って一息つくのであった。

今回の犯人:サメ

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
【流星群】
(サブカルBGMを流す)
(成人式で使った袴を女学生風に仕立て直して気合は十分)

風見先生!(わくわく)
事件だよ!(ノリノリ)
長年名探偵風見先生の第三番助手を務めた僕の経験からすると、
容疑者について見るべき点は以下の三つ!

「年下か」
「女の子か」
「僕より身長が低いか」

これらの条件を満たす存在は法を超越した正義だし、よしんば殺人を犯していたとしても無罪。
第一発見者の卯月・ナユタくんは間違いなく年下の女の子だ。つまり今最も重要なのは――
彼女の身長が154.1cm以下かどうか!

『瞼の裏で君とふたり』
敵対する対象は……まあこの屋敷の中のどっかには居るでしょ
僕は次の行動として、彼女の身長を測定する!


風見・ケイ
【流星群】
(この為に書生服を買った……)

やれやれ……また僕の出番か。
僕にとって青丸3個分にも満たないよ。

『犯人はこの中にいる』
お決まりの常套句。それが罠だ。
即ち『犯人はこの中にいない』
常識に囚われるな。猫に噛みつく鼠もいるさ。

卯月ナユタくんは条件を満たせば犯人ではない。満たさなくともなんやかんやでシロだ。
此処は重要文化財の旧邸だ。卯月アソギ氏なら血で汚さぬ手段をとるだろう。
長月サイゴク氏。料理人が包丁で人を刺すとでも。刺すならばもっと美しく捌いてこその料理人だ。
月詠シラベ氏は言動が怪しすぎるので逆説的に犯人ではない。そんな推理小説、僕には書けないよ。

――と、いうことだよ。臥待くん。
(なにが?)



『慎重に嘘をつけ』

『事件あるところにこの人あり! 超速明快快刀乱麻で謎を解き明かす名探偵——』
「おいおいおいおいおい」
 いつの間にか設置されたスピーカーから、ポップな音楽が流れ始める。この難解な事件を解決するべくやって来た、たった一人の名探偵の名を讃える歌が。
『その名も——』
「風見先生! 事件だよ!」
「やれやれ……また僕の出番か」
「勘弁してくれ」
「あ、臥待さん」
 [風見・ケイ]。元警察官の探偵という、唯一無二の経歴の持ち主だ。まさに正義の使徒、今回の事件を解決するのは、彼女をおいて他に無いと、その場の誰もが思った。今回は書生服を仕立てて、形から入っている。
 その側に控える、女学生風の袴に身を包んだ女性[臥待・夏報]は、スピーカーを片づけながら自信ありげに叫んだ。
「この事件、風見先生には既に真相が分かっている!」
「そう……『犯人はこの中にいる』という常套句が、罠だ。今回の事件においては……一人ずつ見ていこう」
 そう言って、その場に集まった容疑者を一人一人指差していく。
「まずそもそも、月詠シラベ氏は犯人ではない。包丁を持って血塗れの人物がそのまま犯人、なんてことがあるかい? そんな物語、僕には書けないよ」
「いやその……まあ、そうでしょうねェ」
「長月サイゴク氏。料理人である彼が包丁を使って人を殺すなら、ただ刺すはずがない。もっと美しく捌こうとするだろう」
「その通りです。よく分かっていらっしゃる」
「卯月アソギ氏。この旧邸は重要文化財、文化保護を第一に掲げる彼女がそんな場所を血で汚そうとする筈がない。よってシロだ」
「こんな茶番に文化財貸し出さねえよ」
「それでは、最後に残った……卯月ナユタくん」
「は、はい……」
 怯える少女に向かって、助手が駆け寄る。そして探偵に代わって、今度は彼女が滔々と語り始めた。
「長年風見先生の三番弟子を務めた僕の経験則によれば……『僕より年下で』『身長が低い』『女の子』は、法を超越した存在で決して犯罪をしない。よしんばしたとしても、無罪になる」
「なんだそ……いや、そうか」
「アソギさん!?」
 野次を飛ばそうとした富豪の女性が、急に口を閉ざす。その様子を見て、風見は一つ微笑んだ。
「ナユタくんは間違いなく年下の女の子。故に、今確かめるべきなのは……彼女の身長が僕、154.1cmより低いか!」
 そう叫んで、彼女と向かい合わせになる。果たして、その結果は——
「……た、高いように見えます」
「私より年下なのに! か、風見先生、これはどうしたら!?」
 僅かに、本当に僅かにだが、奇術師の少女の方が高身長だった。危機的状況。このままでは完璧な推理が崩れてしまう、その瀬戸際だった。
 助けを求められた風見は、しかし不敵に笑ってみせる。
「臥待くん。発想を転換し、見方を変えるんだ。万物の状態は一つではない。ある状況では是だったものが、ある状況では非となることもある」
「……そうか!」
 開催を叫ぶと、臥待は再び少女に向かい合う。
 そして、全力で背伸びをした。
「……思った通りだ風見先生、僕より低いよ!」
「ん、あれ、えっと……あれれ?」
「うん。これで、ナユタくんの無実も証明された、と言うわけだよ……」
 そう言うと、すべてを成し遂げた達成感からか、一つ満足げに息を吐くのであった。
「……あれ?」

今回の犯人:?????

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『殭屍兵』

POW   :    アンデッド イーター
戦闘中に食べた【仲間の肉】の量と質に応じて【自身の身体の負傷が回復し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    ゾンビクロー
自身の【額の御札】が輝く間、【身体能力が大きく向上し、爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    キョンシーファクトリー
【死者】の霊を召喚する。これは【仲間の死体に憑依する事で、負傷】や【欠損箇所が完全修復し、爪やユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『真打登場』

「非常にナンセンス、ナンセンスなのだよ……諸君!」
 部屋中に、何処からともなく若い男の声が鳴り響く。嘲るような声は、だんだんと大きく、こちらに近づいて来るようだった。
 そして、大きな音と共に扉が開け放たれる。
「この程度の事件も解決できないとは、どうやら猟兵とやらも大したことはないようだ!」
 現れるのは、周りに何人もの使用人らしき人物を従えた男。茶色い外套に帽子と、所謂テンプレートな探偵の装いだ。
 使用人の一人が、男に言う。
「ご主人様、何故来てしまったんですか」
「愚問だな! 僕は探偵であり、この事件を解決する義務を負っている! こういう危険に飛び込んでこその探偵だぞ。よく言うだろう、『トラ……』何たら、と。分かるかい?」
「『トラップ』、でしょうね」
「その通り、『虎の穴』だ! 僕はこの事件を華麗に解決し、称賛を浴びる! その為のリスクは軽いものさ」
 噛み合わない会話を繰り広げた後に、探偵と名乗る男は部屋にいる容疑者達の方を向いた。
「さて皆さん、今回の皐月コウガ氏殺人事件……犯人は、ズバリ」
 ビシ、と指を突き立てる。
「貴方だ! [月詠・シラベ]!」
「はい」
「しらばっくれても無駄だよ、証拠は揃っている……そう、包丁についた指紋が、貴方が犯人だということを語っているのだよ!」
「そうですね」
「ククク……また一つ、真実を暴いてしまった」
 一人で勝手に満足したようで、影朧は暫く悦に浸る。
 それから思い出したかのように、今度は猟兵達の方を向いた。
「そしてこの程度の真実も見抜けない三流探偵の皆様には、ここで退場していただこう!」
 男が二つ手を鳴らす。そうすると、部屋の外からぞろぞろと大量の影が部屋になだれ込んできた。
 生気のない肌。強張った肉体。不死者の軍勢である。
 それらと入れ替わるように、男は部屋の外に出て行った。使用人と何やら話し合っている声が、猟兵達にも聞こえてくるだろう。
「ご主人様、流石にアレでは力が及ばないのでは?」
「無論分かっているとも。だが奴らを消耗させることは出来るはずだ。そしてそこで僕が出て来る! 敵を倒す! 事件は解決!」
「……それじゃ、猟兵達が全く苦戦せずにこちらに向かって来たら?」
「ははは、そんなことか」
「無論、逃げるともさ!」

※集団戦です。相手はそこまで強くはありません。皆さんなら無双できるでしょう。
 が、余りに簡単に突破すると本命の影朧が逃げます。そうなるとまたこの茶番をやり直さなくてはなりません。影朧の逃亡を防ぐ為に、『致命的でない範囲で苦戦しているフリをする』のが今回の趣旨となります。頑張って苦戦してください。それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
本当に難儀な方ですねぇ。
まあ、逃がすわけには参りませんし、お付き合い致しましょう。

それでは、本来の『主力武器』である『F●S』3種を『使用禁止』とし、『霊刀』のみでお相手しますねぇ。
『女神様』の加護を得た『刀』ですから、屍人相手でも問題なく仕留められますぅ。

基本は相手の動きに合わせて[カウンター]からの[2回攻撃]、1体ずつ確実に落として参りましょう。
相手【UC】は『食べる時間』が必要ですから、食べ始めた個体は優先的に狙いますぅ。
斬撃には全て【剣刃一閃】を乗せますねぇ。

『加護の【UC】』も使用せずにお相手する形ですから、手加減はしているのですが、これで大丈夫ですかねぇ?



「あ、戦いが始まりましたよ」
「ふむ。それでは僕はここから高みの見物と洒落込もう。探偵にとって何より大切なのは情報だよ」
 部屋で勃発した、あまりやる気のない大乱戦。影朧達は腰を据えて観戦に入る。どうやら逃走を図るかどうか決めるというのは本当のようだ。
 影朧に付き従う使用人が最初に指差したのは、刀を手に舞うように闘う少女だった。
「あの子とかどう思います? 強そうですよ」
「いや、話にならない。僕の敵ではないな」
「とんでもない胆力ですね」
「褒めても何も出ないよ。何、簡単な推理さ」
 そう言うと探偵も少女を指差し、彼女が恐るるに足らない理由を語り始める。
 少女は一体ずつ、自分に襲い掛かってきた屍人を二太刀で斬り捨てていた。斬れるというより消えるかのように、刀身に触れた肉体は容易く分解される。
「彼奴は敵を知ろうとしていない。屍人を相手にしているのに、刃物を使っているのがその証拠だ」
「……なんか、まだ隠し種がありそうなんですけどね。あの小箱とか」
「何を言っているんだい? 兎に角ね、傷口を再生することが出来る相手に刃物を使っても無意味。その程度のことも理解出来ない者に、僕が負けるはずがないのさ」
 影朧の言葉通り、手足を切り離されたとて不死者の兵は動き続ける。腕を繋げ、脚を繋げ、再び戦場へ。その数は減ることはない——筈なのだが。
「いや駄目ですよ、再生できてないじゃないですか。完全に浄化されてますよ、アレ」
 尤もな懸念が口にされた。薄く光を帯びた刀身は、斬り落とされた肉体に醜悪な奇跡を許さない。数は一体一体少しずつ、しかし確実に減っているのだ。
 それに対して、影朧は言う。
「やれやれ……浄化だとか何だとか、さっきから君はオカルティックなことばかり言っているようだ。もっと現実的にものを考えたまえよ」
「何言ってんだ今更」
 探偵、脅威に気がつかず。

「本当に難儀な方……そのままじっとしていて下さいね」
 その様子をチラリと伺い、夢ヶ枝は嘆息する。
 彼女の主武装は、本来ビームに砲台果てはミサイルと、現在の状態は片手落ちどころの騒ぎではない。が、そうであってもその実力は十二分に発揮されているのである。
「本当なら、部屋ごと吹き飛ばせるのですが……」
 違うことといえば、そんな若干のフラストレーションくらいなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧ヶ峰・星嵐
いえ、待ってください!
被害者の残した「S・T」のダイイングメッセージ、犯人がシラベさんだというのなら、あれは一体……!?

え、何をしてるのかですか?
もうちょっと言い負かされればあっちもいい気になってこの場に残ってくれるかなーと。

もちろん戦闘も忘れていませんよ!
桜幻朧・七変化! 影朧を鎮めることこそ、私の本分です!

初期技能:見切りのフェンサーメイルに早着替え、強化された見切りの技で、敵の攻撃をギリギリで回避していきます。私の制服はひらひらしたところが多いですし、敢えて爪があたるようにして袖などが破ければもっと苦戦しているように見えるでしょうか?
ある程度時間を稼いだら月ノ輪で一閃、殭屍兵を倒します。



「ちょっと待ってください!」
 戦場に不似合いな大音声が、部屋中に響く。影朧は驚いて肩を震わせた。
「探偵さん……それなら、あのダイイングメッセージは何なんですか!」
「何だ君か。余り驚かせないでくれ……」
 霧ヶ峰の目的は、影朧をこの場に止めることにある。
 彼の自信の源は、猟兵達の推理力が乏しいこと。故にそこを再び刺激してやろうと言うのだ。
「ふん、そんなことも分からないとはね」
 果たして影朧は、見事にその計略に乗った。
「アレは倒れる時に付いた血の跡だ」
「正気か、ご主人」
 方向は斜め上を向いていたが、乗ったことに変わりはない。影朧は露骨に満足気な顔で、その場にふんぞり返った。
「ほらほら、今は自分の命が大事なのではないかな」
「……桜幻想七変化! フェンサーメイル!」
 流石に呆気にとられたのも一瞬で、少女はすぐさま戦闘態勢を整えた。
 一瞬だけ全身が光に包まれると、纏う衣が薄い布を繋ぎ合わせたワンピースのようなものに変化する。
「ふはは見たまえよ、あの鎧。アレでは蟻の牙だって通してしまうぞ」
「ええ、しかしその代わり避けることに特化し——」
「ぶえっくしょい! 風邪か?」
 相当理解力のあるらしい使用人の言葉通り、その目的は致命傷を避け、カウンターの一撃を加えることにある。それが探偵に届くことは無かったが。
 三体ほどの屍人が少女を取り囲んだが、その爪や牙を霧ヶ峰は踊るような動きで躱す。衣装には裂傷が刻まれるが、肉体は完全に無事だった。
「どうやら戦闘においても完全な素人だな。傷だらけじゃないか。それに剣を持っているのに誰も倒していないぞ」
「衣装が、ですね。ご主人様、言っておきますがアレは——」
「ぶえーっくしょーい!」
 豪快すぎるくしゃみと同時に、影朧が完全に下を向く。その機を逃さず、霧ヶ峰は衣装に合わせてレイピアのような形になった愛刀を横薙ぎに一閃。
 彼女を取り囲んでいた屍人の肉体が、上半身と下半身に綺麗に分かたれた。
「ほらご主人様! 今! 今完全に全員やられましたよ!」
「うん? よく見ていなかったよ」
 探偵、脅威に気がつかず。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真棚井・にゃんきち
ネコチャンのねどこにいらずんば、ネコチャンを得ず……なのにゃ?
にゃんきちのねどこはひみつだけど、じつはどこでも寝れちゃうにゃん。

にゃお。すなわち、ここもにゃんきちのねどこ。
ねどこを守るためにも、にゃんきちは頑張るのにゃ。

にゃんきちはUC「かむかむ」で、敵どのをかぷかぷ噛んじゃうのにゃ。
いつもより念入りに噛むにゃ。
じっくり噛めば、めーたんていどのも、にゃんきちがただのネコチャンであることをわかってくれるのにゃ。
ネコチャンはかわいいだけで戦力なのにゃ。
かむかむなんて、人間どのにはごほーびでしょ?
にゃお。

満足いくほどかむかむしたら、子首をかしげて聞いてみるのにゃ。
次に噛んでいいのは、どちら様かにゃ?



 戦場を油断なく見渡していた使用人は、ある事に気が付く。
「……何もされていないのに、倒れてるのが何体か居ますね」
「物事には順序があるのだよ。何もされていないなら倒れるはずがない。寝言はぐっすり寝てから言い給え。九時間くらい」
 探偵の方は顔も上げず、指のささくれを取るのに夢中だ。
 もはや慣れっこなのか文句を言うようなことはせずに、使用人は見えない脅威を探すために目を凝らす。
「暗くてよく見えませんね……ん、あれは?」
 大量の不死者で溢れた部屋の中で、何か黒い影のようなものが素早く横切るのが見えた。
 使用人はその影の行く先に目を凝らす。
「……ね、猫?」
 そこにいたのは、金色の瞳を持つ二足歩行の黒猫──真棚井であった。
 愛玩動物にしか見えない彼だが、右へ左へと戦場を駆けては敵の喉に食らいつく。不死者の方はがむしゃらに暴れ回ってそれを振り落とそうとするが、しっかりと食らいついた牙は中々離れない。攻撃しようにも、並の猫程度の大きさしかない彼に爪を当てることが出来ない。
 そうして、時間をかけつつも確実に敵の数を減らしているのだった。
「ご主人様見てください、アレですアレ、あの猫」
「ん、猫? どれどれ……」
 影朧はようやく顔を上げ、そちらを見つめる。その先には……
「……にゃお?」
「何だ、猫か……」
 何にも噛みついていない、ただの二足歩行の猫がいた。
「あ、あれ……」
「君、僕を揶揄うのもいい加減にしたまえ。あんなにかわいい猫が不死者を倒せるはずないだろう」
「にゃーん」
 鳴き声をあげながら、顔を洗うにゃんきち。それを見て、「全く……」と呟いた探偵は、手鏡で自分のヘアスタイルを念入りにチェックし始めた。
「……さ、次に噛んで良いのはどちら様かにゃ?」
「ご主人様! アレ!」
「にゃーん」
 探偵、脅威に気が付かず。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネリー・マティス
渾身の推理が一蹴された!なんて探偵だ!ゆるせん!今すぐ物理的立証を……え?力をセーブしなきゃならないの?……むずかしい注文だね!でもやってみる!!
うわー!なかまを食べて回復するなんて!なんててごわい敵なんだ!!メインウェポンは犯行にも使われた手刀!生かさず殺さず【部位破壊】をねらうよ!そして傷ついた敵は【がっぷりよつ】で押す!うわー!押した先にたおれた敵が!ぐうぜんだなー!これでは回復されてしまう-!
あっ、頃合いになったら【怪力】でとどめ刺すよ。



「私の渾身の推理が! こうなったら私流マッスル立証を——」
(ストップ! ストップ!)
 ハリケーンミキサーでも放ってこの部屋もろとも敵を一掃しようとしたマティスを、彼女に犯人と指摘された富豪がジェスチャーで必死に止める。
 その様子を見て、彼女も自分がしなければならないことを理解する。
「……力をセーブしなきゃいけないの? むずかしい注文だけどやってみる!」

「じゃああの猟兵はどうですか? お願いですからきちんと見て下さい、命に関わるんですよ」
「あの……あの馬鹿みたいに大きい奴か」
 使用人に半ば叱責された探偵は、顔を上げてマティスの動向を観察し始める。
 その手刀が振るわれる度に、辺りには文字通りの『死体の山』が築かれてゆく。彼らは死ぬことはないが、脚がなければ当然動けなくなる。遠巻きに見ているドレスの女性が、嫌そうな顔をしているのにもお構いなく、縦横無尽に暴れ回っているのだった。
「アレは相当な脅威ですよ。徒手空拳で不死者と渡り合うなんて……ご主人様、ここは」
「ははあ。恐怖に取り憑かれては、真実は見えないよ。アレが何をしているのかよく見てみるといい」
 そう言う影朧の眼前で放たれたのは、全力の速度を載せたタックル。勢いのまま、五体程の不死者が弾き飛ばされる。その筋肉を武器とし、防具とする少女に隙はないように見えた。
 だが、探偵は彼女の攻撃は無意味だと言う。
「見たまえ」
 弾き飛ばされた不死者達は、奇妙に折れ曲がった関節や骨を使い、共食いを始めていた。仲間の血肉を食らった者の傷が、みるみるうちに癒えて行く。
 これこそ彼らが不死の者たる所以だ。
「何度も言うように、相手に対して何が効果的かを論理的に判断する力のない人間は僕には勝てないのだよ」
 その後、マティスは普通に両の手で影朧の頭を挟み込んだ。いとも容易く頭部は弾ける。
 仲間を食べるための口がなければ、共食いによる再生は出来ないのだ。
「——と言う訳だよ」
「えっご主人様、今の見てましたよね? 効果的でしたよ、考えてますよ、見てましたよね?」
「全然見てなかった」
 探偵、脅威に気がつかず。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイコブ・ホームズ
SPD

バカな、名探偵の私の推理が外れただと……!
そうか、分かったぞ真犯人が!今来た名探偵とか名乗ったやつ、あいつが犯人だ!
こうしてはいられん、今すぐあいつを捕らえなければ。だがこうも狭いと……。

ええい、引っ付くな動けんだろう!

(ここから素に戻る)
あ、こらやめろ、服を引っ掻くな!
人間の価値で換算すると高いんだぞ!
破くなって言ってんだろ!俺の名探偵の仕事を邪魔するな!
ここぞとばかりに集まってくるなー!!
敵が逃げるだろうがーーー!!



「馬鹿な……名探偵の私の推理が外れるなど……!」
 一方こちらは、先程の茶番に対して深刻に落ち込んでいる名探偵、ホームズ。
 殆ど天井すれすれの頭を抱えて、名探偵でありながら推理を外すという決定的な「矛盾」を解決する理論を模索していた。
「そうか……今来た奴、あの探偵とか言ってる奴が真犯人だな!?」
「ご主人様、親戚に巨人の方とかいらっしゃいました?」
「いや? 何故そんなことを聞くんだい」
 影朧の付き人は、その様に何かの既視感を覚えたようだった。
 そんな呑気な会話を繰り広げる二人の元へ、巨人が迫る。だが、人間用に作られた部屋は彼が全力で走るには小さすぎた。その上、意思を持たぬ不死者が足に縋り付いてくる。
「ええい、邪魔をするな! 全く今は——」
 とここで、彼の名探偵らしい鋭い眼光が凍りついた。更に鋭くなったという意味ではない、驚きでだ。
 その視線の先には、一体の不死者が彼のズボンに引っ掻き傷を作っているのだった。
「おいやめろ! これ高いんだぞ! 人間価値にすると!」
 大事な一丁羅に傷をつけられ、もはや彼は冷静ではいられない。とはいえ足を張って振り払いなどしたら、最悪影朧も他の猟兵も纏めて生き埋めだ。それ故に、彼には叫ぶことしかできなかった。
「俺の名探偵の仕事を邪魔するな!」
「ふはは! 名探偵は僕一人なのだよ」
「……似てる」
 使用人は、そんな彼と自分の主人の顔を見比べ続けている。
「敵が逃げるだろうがー!」
 皮肉にも、この場で最も影朧を逃さぬように尽力しているのは他ならぬホームズなのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エレン・マールバラ
【SPD】※アドリブ・連携歓迎

…なんなんすかね、アレ。見た目はともかく、Baker Streetに聖地巡礼に来る連中の方がよっぽどDetectiveっぽいっすよ…。
とりあえずはこのImmortalsを適度にあしらえばいいんすね。OK!C'mon!Scum Weapon!(【選択UC】を発動。出現した駄っ作兵器は鉄パイプに銃剣を溶接しただけの槍)
Home Guard Pike!手加減して戦うにはこんなものでいいんすよ。危なくなったら拳銃を【クイックドロウ】すればいいっすから。
さて…。きゃーたすけてーちかよらないでー(棒読みで悲鳴を上げながら間合いを取って槍を適当に振り回し、泥仕合を繰り広げる)



「探偵って言うからもう少しマシかと思ったら……酷いのが来たっすね。見た目だけも良いとこっす」
 これなら、彼女の故郷にある探偵の聖地に巡礼にやって来る若き信者達の方が百倍まともに推理をしてくれるだろう。そうマールバラは思い、やるせないため息を止められなかった。
 それから、顔を上げ、気持ちを切り替えるかのように軽く首を振る。
「で、今度はこのimmortals相手に時間稼ぎっすか…… OK!C'mon!Scum Weapon!」
 彼女がカッコいい口上を唱えると、その目の前に何かが乱雑に放り出された。
 現れたのは、銃剣をモチーフにした武器だ。ただ、鉄パイプに適当に溶接されていてかなり心許ない。使っているマールバラ自身が『ウンザリゲンナリ』と自嘲してしまうような武器だが、この場に限ってはそれが正解なのだった。
「Home Guard Pike!手加減して戦うにはこんなものでいいんすよ」
 念の為、懐の拳銃をいつでも撃てるように備えだけはしつつ、彼女は戦場へと駆け出した。
「きゃーたすけてーころされるー」
 そして見るに堪えない泥仕合を始めるのだった。
「あの猟兵は逃げてばかりだな。持ってる武器も……武器? まあ、気にしなくていいな」
「どうも演技臭いですけど」
 使用人がどれだけ慧眼を誇っても、その恩恵は主人がシャットアウトしてしまう。その為マールバラは、不安無く自分の仕事に臨めた。
 追いかけられて、そこそこの速度で逃げ、攻撃を何とか躱す感じを出し、たまに思い出したかのように敵を倒す。普段のミッションでは死と生の境目を掻い潜らされている彼女なだけに、そんなことにはならないこの状況はずいぶん居心地が良く思えた。
「やーらーれーるー!」
 わぁわぁと叫びながら、口元にシニカルな笑みが浮かぶのを止められないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

風見・ケイ
【流星群】
そうですね……で、あれば――
(あとはよろしく螢。呟き瞬けば赤い瞳)
――嘘だろ……俺にこんな茶番演じろと?(クソデカ溜息)
ああ、わかるよ『臥待クン』……僕から離れないように。

(演技だからって喰らうのは癪に障るし、夏報もいる。UCで視えた爪の斬撃を『苦し気に』躱す)
なんて疾さだ、僕に見切れぬ事象が存在するなんて!(左肩、右足、頭)
臥待クン大丈夫か!?(夏報右に一歩、屈め)

(このままだと感づかれ……ないかもしれないがもう一手。自由自在な銃弾だからこそ『当てない』)
馬鹿な……推理も銃も百発百中の僕が!?
う、嘘だッ!!

――なんてな。炎に隠れて、外れたはずの銃弾が敵に向かう。
……派手すぎないか?


臥待・夏報
【流星群】

(小声で)
どーする風見くん……正直僕らの戦闘力じゃ素で苦戦🔵🔴🔴しかねない……
って、ああ、ホタルくんか(あだ名)。おはよう、キャラ設定わかる?
とりあえず戦闘シーンの尺は任せたよ!

(こほん)
風見先生っ……!
うんっ、絶対離れたりしない……けど、僕を庇ったせいでそんな(かすり)傷まで……
こんな足手纏いでごめんね……(右ね、わかった)

――などという茶番の間にユーベルコードは完成している
殺人現場の血を用いて描き拡げられたミステリーサークルが、辺り一面を呪詛の炎(演出用)で包む
一般人や文化財を巻き込むわけにはいかないし、一発で決めるよ!

派手すぎるってことはないでしょ
エンタメ重視エンタメ重視



 先程まで探偵を演じていた風見が、目を瞑る。
 次に目が開いた時、その瞳の輝きはどちらも血のような赤色に染まっていた。
「おはようホタルくん。キャラ設定分かる?」
「……俺にこんな茶番演じろって、嘘だろ……?」
 明るく言う臥待を見て、風見ケイ……否、"螢"は露骨に溜息を吐いた。荒事を担当するのは彼ともう一人の担当だが、荒事の演技は専門外だ。出来ないわけではないが、気が乗らない。
 が、だからといって職務を放棄するわけにもいかないのだった。
「……ああ、分かるよ『臥待クン』。どうやら難敵のようだ……僕から離れないように」
「風見先生、私——きゃっ!」
 普段は絶対に出さないような悲鳴を漏らし、繰り出される爪に身を竦ませる臥待。その体を、螢はすんでの所で引っ張り上げる。
 しかしその顔は苦痛に歪み、手の甲を見て驚愕の声を上げた。
「くっ、何て疾さだ……僕に見切れぬ事象が存在するなんて!」
 まるでそれがやっとであるかのように、ふらつきながら臥待と共に攻撃を躱す。勿論プライドはいたく傷つけられるので、実際には当たっていない。仮に敵の攻撃が本当に疾かったとしても、未来を見る能力を持つ風見に致命傷を与えることなど出来ないのだ。
「こいつらっ……!」
「いやっ!」
 今度は爪が二人の間を掠める。当然これも演技で、事前に動きを共有しているのだ。
「そ、そんな……私を庇って、そんな 傷まで負って……役立たずで、ごめん……!」
 台詞の間に妙な隙間を作る臥待と風見に対し、影朧が嘲笑を投げる。
「ふはは、早く降参したらどうかね。満身創痍、避けるのがやっとじゃないか」
「……どうも、致命傷を避けるだけの余裕があるような……」
 かなり聡い使用人の言葉をかき消すように、風見は六発続けての発砲を行った。射手の意思によって自在に動く弾丸は、しかし六発全てが虚しく壁に反射する。
「まさか。推理も射撃の百発百中の僕が! 嘘だ!」
 まさに嘘なのだが、観客たる影朧はそんな事とは露知らずに彼女を笑い続けていた。
 と、ここで戦場に変化が起こる。どこかで照明器具が倒れでもしたのか、真紅の絨毯が突然燃え盛り始めたのだ。
「うわーっ!!!」
 煙と炎が、腰を抜かす探偵から、猟兵達の姿を見えなくする。
「あの炎は、まさか……」
「君! 助けてくれ! 動けん!」
「うわ、ひっつかないでください!」
 何かに気が付きかけた使用人も、主人に追い縋られてその思考を四散させてしまう。
 暫くの後、今までの勢いが嘘だったかのように炎が消えると、そこには満身創痍の猟兵達と、頭を撃ち貫かれ、或いは炎で焼け焦げた影朧の亡骸があるのだった。
「……少し派手すぎないか?」
「いいの、エンタメ重視だよ」
 炎の仕掛け人である二人は、ひっそりとこう言い合っていたが、探偵も使用人もそれに気がつく事はなかった。
 かくて、多大な犠牲を払って、部屋に攻め込んだ不死者は一掃されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『名探偵』斜録・家々』

POW   :    僕の完璧な推理を聴きたまえ!
【誰にでも思い付くような穴だらけの推理】を披露した指定の全対象に【この推理は一切の隙がなく完璧であるという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    助手君、始末してくれたまえ。
自身が【自らより目立つモノへの強烈な嫉妬】を感じると、レベル×1体の【家々の助手たち】が召喚される。家々の助手たちは自らより目立つモノへの強烈な嫉妬を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    助手君、何とかしたまえ!
【家々よりも有能だが戦闘能力のない助手】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は比良野・靖行です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 不死者の軍勢が全滅したのを見届けると、満を辞して探偵が再びその姿を現した。猟兵達を露骨に侮るかのように、薄笑いを浮かべて拍手している。
「良くここまで頑張ったものだね、だが君たちの命運もこれまでだ……」
「自信満々ですけど、ご主人様そんなに強くないですよね?」
 隣に立つ使用人から、一切の容赦のない厳しい言葉が飛ぶ。が、探偵は指を振ってそれを否定して見せた。
「僕は探偵として、新たな技を手に入れたのさ。その名も『理論武装』!」
「はあ」
「僕は今、あらゆる攻撃に対して無敵なんだ。相手が僕の弱点を論理的に推理して攻撃してこない限り、一切のダメージはない!」
「……」
 その言葉を聞いて、椅子に座っていた富豪の女性が研いでいたナイフを予備動作無しで投げつける。
 勢い良く飛び出したナイフは、真っ直ぐと影朧の右肩に普通に突き刺さり、
「ぎゃーっ!!」
 影朧は普通に悲鳴を上げた。
「嘘じゃねえか!」
「う……嘘じゃない! 効いてないぞ、全く。君、これ取ってくれ。早く」
 もはや何を言う気力も失せたのか、使用人は黙ってナイフを引き抜く。肩を抑え、脂汗を流しながら、探偵は勝ち誇った。
「君たちが僕の言動を推理して弱点を当てられなければ、僕を倒す事はできないのさ。そして君たちにそんな思考力が無いのは先程証明済み。勝った! 完璧だ!」
「よしんばそれが本当だとしても、こっちから攻撃する手段もないんですけどね」
 こうして、最後の尺稼ぎが幕を開けたのだ。


※何故か敵が全てを解説してくれましたが改めて説明致しますと、このボスは『ある弱点をつくプレイングをしない限りダメージを与えられない』と強硬に主張しています。弱点とは攻撃する場所かもしれないし、攻撃する方法かもしれません。彼の言動や今回の事件から、それを推理して導き出してください。長く続いた尺稼ぎもいよいよラスト、次の番組が始まるまでに決着をつけましょう!
 ちなみに、推理抜きでも普通にダメージは通ります。
ネリー・マティス
確かに探偵さんの推理は納得できるものかもしれない……でも!わたしだって負けてはいない!より高いパワーを持って推理をぶつければ良い!!
【怪力】をもって【ベアハッグ】で拘束!締め上げつつ、あらためてわたしの推理を聞かせるよ!さっき一蹴された推理!この状況でもそれができるか!?筋力を持ってすれば不可能な犯罪はない……!それでもわたしは、この生まれもった筋力を正義のために使うんだ!!(実際にアソギさんに筋力があるかはスルーし【気合い】を入れ熱くなるネリー)



「さあ! この僕の弱点、論理的に推理出来るものならしてみるが「どっせーい!!!」
 初めの返答は、マティスによる雄叫びだった。叫ぶや否や全力で敵に駆け寄り、周りの誰も静止する間もなくその身体を抱き抱えた。
 そしてそのまま、探偵の身体を締め上げる。影朧であれ肉体は人間であるようで、何かが軋むような音が部屋中に響いた。
「痛い痛い痛い痛い痛い!!」
 当然、影朧の方もすぐに悲鳴を上げる。
「……さあ、私の推理を聞いてもらうよ!」
「え、この状況から!?」
「ギブギブギブギブ!」
 マティスは許せなかった。自分の珠玉の推理が、彼に一蹴されたことが。何とかして、彼に自分の推理を認めさせなければならない、
「まず! 犯行の前に! 部屋の前にトランプカードを!」
「推理ってそっちのかよオイ! それはもう終わったんだよ!」
「これが私の推理だー!」
 そう叫び、より強い力で探偵を締め上げるマティス。影朧の顔は赤を通り越して青くなっている。もはや返事ができる状態ではない。
「筋肉があれば、今回の犯行は可能だった……だけど私はこの筋肉を正義の為に使う! 私のこの推理パワー、覆せるかな!」
「推理とパワーは一旦離して考えていただけませんか」
 暫くして。
 堂々と胸を張るマティスの眼前に、一人のボロ雑巾が転がる。
「……」
 誇らしげなマティス。呆れ顔の使用人。頭を抱えるアソギ。ボロ雑巾。
 彼らの静寂を破ったのは——
「……だから、アソギさんの筋肉さえあれば反抗は可能なんだ!」
「いい加減にしろーっ!」
 富豪の手からナイフが放たれる。
 が、その銀色の刃は少女の分厚い筋肉の鎧にぶつかって甲高い音を立てた。
「——ね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
まあ、折角ですしお付き合いしましょうかぁ。

探偵さん自身が仰っておりましたよねぇ?
「探偵にとって何より大切なのは情報」と。
今の「ナイフ投擲」が効いた事と合わせれば答えは一つ、その能力は「一度見た攻撃への耐性を得る能力」でしょう?
であれば、対処は可能ですぅ。

『F●S』3種を展開、最初は通常の『ビーム』による[砲撃]と「斬撃」を行いましょうかぁ。
更に『FCS』で『FRS』の「弾頭」を変更し『実弾』『ミサイル』等に切り替えて射撃しますねぇ。
これに【遍界招】で様々な「武器型の『祭器』」を召喚、入替えつつ使えば、全て違う条件で攻撃を行うことが可能ですぅ。

さあ、覚悟は宜しいですねぇ?


エレン・マールバラ
※アドリブ・連携歓迎

Week Pointを推理っすか。OK、その「名探偵ごっこ」に付き合ってあげるっすよ。…私の古巣のやり方で、っすけどね!(【選択UC】を発動)

さあ、『Your Week Pointを教えてくれるっすか?』素直に喋ればすぐ楽になるっすよ。答えなかったら…Inquisitor=サンに「喋るのも憚られるえげつない拷問」の実験台にされるっすけど、まあ、「あらゆる攻撃に対して無敵」ならそんなのToo Easyっすよね?(悪い笑顔で【精神攻撃】)

…えっ、普通にダメージ通るんすか?ハハッ、Nice Joke!きっと細切れにしても、場面転換した瞬間になんやかんやで再生してるっすよ。



「さあ! この僕の弱点、論理的に推理できるならしてみるがいい!」
「さて……」
 あくまで強気の姿勢を崩さない影朧を見て、夢ヶ枝は溜息交じりに呟いた。
 先ほどまで生死不明の一歩向こう側へと漕ぎ出していた探偵が、何か、こう……“何か”の拍子に、何事もなかったかのような状態でいるのだ。
「攻撃が効かないかは兎も角、生存能力だけは優れていることは確かみたいですねぇ」
「そうっすね。アレ、多分細切れにしても『なんやかんや』で蘇って来るっすよ」
 マールバラが同意する。オブリビオンに対して、『撃退』や『防衛』ではなく『退治』をしなければならない猟兵にとって、こういった手合いはある意味非常に厄介な相手なのだ。
「……まあ、折角ですしお付き合いしましょうかぁ」
「優しいっすねえ。じゃ、こっちはこっちで準備しておくっす。『名探偵ごっこ』の為にね」
「恐縮です、主人がご迷惑をお掛けしまして……」
 夢ヶ枝が、一歩前に進み出る。
「ふん!」
 それを見た影朧は彼女を嘲笑うような笑みを浮かべながら、二三歩下がって壁に背中をぶつける。
「無敵なら、逃げる必要は無いのではないですかぁ?」
「これは大局的な視点を得るための後進さ。僕の弱点を突かない限りダメージは無いのは嘘じゃあない。だからといって攻撃しても良い訳ではないから暴力的手段に訴えるのは止めるように」
「あらあら……それでは、一つ推理を聞いて下さい」
 壁に跳ね返されて地面を転げ回っていた探偵は、彼女の言葉を聞くとぴたりと動くのを止めた。
 そして声の方を見上げる。その顔は言うなれば、『嘘だろ?』と言いたげなものだった。彼自身、本当に推理を持ち出してくる相手がいると想定していなかったのかもしれない。
「どうして、アソギさんのナイフを防げなかったのか? それがずっと気になっていました」
「僕へのプレゼントだよ、アレは」
「鍵になるのは探偵さん自身の言葉……『探偵にとって何より大切なのは情報』と仰っていましたねぇ」
「言ってない、ということにしておきたまえ」
 戯言には耳を貸さずに推理を披露する傍ら、少女は自らの持つ武装を次々と展開し始める。
 ビームサーベルに砲台、更に刀、ナイフ、槍にチャクラムまで。さながら武器の見本市とも呼べる光景が広がった。
「つまり、探偵さんの弱点は『情報のない攻撃』ではないかと思った次第です」
「ワオ、amazing」
「な……何てきちんとした推理だ。完全に想定外だぞ」
 影朧は露骨に焦り始めていた。だが、もう遅い。部屋から逃げ出そうとも足止めのいない状況ではすぐに追いつかれるだろうし、頼みの綱の使用人もこの物量の前ではどうしようもない。
「いや、猟兵の方というのは何でもありですねェ……」
「……つーかアレ、オレらもヤバくねえか?」
「では、お覚悟……宜しいですねぇ?」
「宜しくない」
 その言葉を合図とするかのように、武器を切り替えながらの一斉攻撃が始まった。

「……ふん、この程度かね」
「倒しきれませんでしたかぁ」
 改行が挟まったので、影朧は復活する。それまでに三回は吹き飛んでいたが、無傷だ。
「残念ながら推理は外れだ。外れだから二度とやらないように」
「ふむ……しかし、無駄だとも思えませんねぇ。焦りは見えます」
「それじゃ、今度はウチに任せてくださいっす」
 入れ替わるようにして、洋装に身を包んだ少女が前に出た。
「君たちには推理なんてできないよ、止めておいた方が良い。止めておいてください」
「そっすね、推理は他の人に任せるっす」
 意外にもあっさりと認めた少女は、懐から何の変哲もないバインダーを取り出した。探偵は、何だか分からんがバインダーなら大丈夫かと安心する。
 が、そんな彼の安心はすぐに打ち砕かれることとなるのだった。
「だから一足飛びで、あんたに直接聞くことにするっす。『Your Weak Pointはどこっすか?』」
「そんなことを教えるわけが」
 バインダーの開いたページから飛び出した黒い影が影朧に命中し、その身体を完全に拘束する。そしてその傍らにはいつの間にか、黒いスーツとサングラスに身を包んだ巨漢が佇んでいるのだった。
 突然の出来事に探偵が暴れ、使用人が手を打った。
「直接聞きだすのですか」
「That's right.Inquisitor=サン、今回は少し手荒に扱って良いっすよ」
 そして、“推理”が始まった。

「言えるわけないだろーっ!」
「もう五回は死んでるっすよ」
「どうなっているのでしょうかぁ」
「ご主人はそういう生き物ですから」
 思ったよりも長引く拷、尋問を眺めながら、三人でお茶に興じていた所。
「無い物を言えるわけが──」
 ついに、決定的情報が口にされた。
 やるせないやら拍子抜けやらの気持ちを胸に、少女は語り合う。
「まあ、そんなことだろうとは思ったっすけどね」
「どうしますかぁ?」
「うーん……」
 少しだけ悩んでから、
「……もう何回かやっといて下さいっす」
 こうして、探偵は再び死ぬのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真棚井・にゃんきち
にゃお。
にゃんきちは、全ての世界で生きている心を持つ知的生命体に対する弱点を、既に知っているのにゃ。
そう……み~んな、みんな、ネコチャンが大好きなのにゃ。
ネコチャンはネコチャンであるだけで最強なのにゃ。

そこな名探偵どのが、たぶん「強いのは助手どのたちだけで、実は本人はぽんこつ」とか、そういうのもあるかもにゃけど。
きっとあんまり関係ないのにゃ。

そういう訳だから、UC「にゃんごろりん」を使うのにゃ。
だいぶ人間味あふれたオブリビオンどのだから、きっとにゃんきちの「みりき」にメロメロにゃ。

にゃお。探偵どのはにゃんきちのことかまうのにゃ。
すると他の猟兵どのが頑張れるのにゃ。
なでなでとかするにゃ。
にゃお。


霧ヶ峰・星嵐
な、なんということでしょー。まさかそんな能力があったなんてー。

しかし私にできることは多くありません。
これはもう倒れるまで切り続けるしかありませんね!

助手の人たちは割と強いですね!? ですが私も負けられません!
【招来剣舞】を使用、周囲を舞う76本の剣で助手たちを切り払っていきます。

助手たちを倒したら76本の剣を合体、一本の剣にして「月ノ輪」との二刀流で家々の前へ進みましょう。

さて、戦ってるうちに弱点を思いついた……ではなく、見破りました、論理的に!
私のこの服、どこの制服か分かりますか? そう、帝都桜學府の制服です! そしてあなたは影朧! よって私の攻撃はなんやかんやであなたに効きます!



「さあ! この僕の弱点、論理的に推理出来るものならしてみるがいい!」
「ろ、論理的に……ま、まさかそんな能力があったなんてー」
 霧ヶ峰は、とりあえず驚いてみせた。本当に驚くべきはつい先ほど「そんなものはない」と言ったのに、もう前言をひっくり返していることなのだが、この手合いにマトモに対応しても疲れるだけだ。
「しかし、私にあるのはこの剣の道だけ……切り開きます!」
「ほう面白い、やめてください。出でよ僕の助手達!」
 彼の号令と共に、どこからとも無く顔のない人間達がわらわらと現れる。
 直接的な戦闘力は無いものの、誰かとは違ってきちんと考える力があるようで、彼女の行く手を的確に阻んだ。
「くっ、卑怯ですよ!」
「君に構っている暇なんてないんだ! この猫ちゃんを撫でなければ」
「やっぱり全生物の弱点はネコチャン、なのにゃあ」
 どこかで見たことのある猫を撫でるのに夢中になっている探偵が、ロクな指令を出さないのが幸いした。
「招来剣舞! 一手お付き合い願います!」
 呪文と共に、空に浮かび上がる数多の剣。全部で76本あるそれを使い、一つの刀を振るい終わる前に別の刀を振るい始め、また別の刀を……と繰り返すことで、連撃を行う。
 たった一人の少女に、大勢いる助手達がまるで塵屑のように吹き飛ばされるのだった。
「お覚悟——!」
 探偵へと肉薄した少女が、全ての剣を集めて生成された巨大な一振りと、愛刀たる変形武器『月ノ輪』との二刀流で彼に斬りかかろうとした、その時。
「お待ちください」
「っ!」
 突然の闖入者が、その片方を盾で防ぎ、もう片方の矛先を鋭い蹴りで逸らした。
「貴方は……!」
「助手たちとは違って、私はある程度の戦闘訓練は嗜んでおります。ご主人にご用でしたら、私を通してお伝えくださいませ、お客様」
 先ほどまで家々のことを護る様子など欠片も無かった使用人が、霧ヶ峰の眼前に立ちはだかる。
 その右手に握られ、先ほど彼女の攻撃を防いだのは、銀色に輝くトレイであった。
「……どうして急にこんなことを?」
「さあ。そうしなければならない気がしたのです」
「どうやら……貴方はきちんとお相手をしなければならないようです」
 言いながら、二刀を構えなおす白髪の少女。
「お手柔らかに、お願いしますね?」
 微笑んで、左足を半歩下げ臨戦態勢を取る使用人。
 暫く見つめ合った後、どちらかから──裂帛の気合と共に駆け出し、ぶつかり合う。どちらかが倒れるまで終わらぬ、死の舞踏へと。
「やれー使用人くん!」
「にゃー」

「必殺斬り!」
「ぐわーっ!」
 探偵は死んだ。
「あ……えっと、そう、推理。私の制服! 桜學府の制服です、影朧退治専門の! だから私の攻撃は、なんやかんや効きます」
 慌てて披露された推理を聞いている者は、この場には二人しか居なかった。
「はあ……負けちゃいました」
「そんなこともあるにゃあ」
 否、正確に言えば二体。一騎打ちに敗れた使用人が、にゃんきちを撫で回しながら呟く。
「使用人どのは十分お強かったのにゃ」
「そう言っていただけると嬉しい限りです……はあ、仕事辞めたいな」
「……よしっ、これにて一件落着!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
【流星群】

(小声で)
ホタルくん……なんか目が死んでるけど大丈夫?
って今度はイバラくんか(あだ名)。おはよう、キャラ設定わかる?
ラストに向かって巻きで行くよ!

(こほん)
2対2とは都合がいい。君と僕、どちらがより優れた助手か決めようか!
といっても、勝敗は呪詛の炎を視るより明らかだ
だって君の探偵先生、こそこそ逃げ回ってばかりじゃないか
風見先生は僕を護って戦ってくれるのにさ
それはね
茶番じゃなくてほんとだよ
仕える主人を選び損ねたその【後悔】――さぞかしよく燃えるだろうな!

最後にもうひとつ、ほんとのことを言っちゃうか
夏報さん、実は、風見くんの書生服コスプレが見たかっただけなんだ
後で衣装代振り込んどくね……


風見・ケイ
【流星群】
なんか疲れた……荊、ケリつけといて。
(顰めた眉の下、開けば青)

えぇ……あ、おはよ夏報ちゃん。
わかるけど……僕はふたりみたいには頭回らへんで。
記憶から思い返してもなんもわからへん……いや、あれが滅茶苦茶ってのはわかるな。めっちゃツッコミたい。
と、設定設定

探偵同士、対決といこう。
僕の推理によれば(ヤバ何も考えとらんかった)……君の弱点は、極技だ。
どんな鋼の肉体でも関節は壊せるし首を絞めれば殺せる。人型なら影朧も同じだ。
大切な助手に悲鳴を上げさせたその報い――今度は君が啼け。

気にせんでもええと思うけど……ここだけの話な
慧ちゃん、夏報ちゃんのそのカッコ見て、めっちゃテンションあがっとったで。



「ぜぇ……ぼ、僕の弱点を論理的に推理出来るものならなんたらかんたら……」
「えぇ……何あれ」
「ホタルくん、何だか目が……って、イバラくんか。おはよう。設定分かる?」
 げんなりしきった赤色の瞳が閉じられ、再び開かれると、そこには青色。
 『荊』は風見の人格の一つである。『螢』から殆ど押し付けられるようにして役目を代わった彼女は、困惑を隠しきれずに周囲を見渡した。
「あー……分かるけど、分からへん。何してんの二人も三人も集まって……」
 探偵ごっこにノリノリだった主人格とは違い、そういう趣味はないようだ。が、馬鹿馬鹿しくともこれも仕事の一環である。
 気を取り直して、探偵としての演技を再開……と行く前に、荊はコスプレをした臥待をまじまじと見つめた。
「何かついてる?」
「いや……気合入っとるなあ、と思って。慧ちゃん、夏報ちゃんのカッコ見てめっちゃテンション上がっとったで」
「……実は僕も、風見くんの書生服コスが見たかっただけなんだよね。後で衣装代振り込んどくね……」
「どうした! 来ないならこっちから行くぞ!」
「行けませんよ。お願いですから行かないでください」
 描写されていなかったので復活を遂げた影朧が、使用人に引き留められながら挑発的な言動を繰り返している。それを耳にした荊は、思い出したかのように帽子を深く被り直した。
「勿論、考えを纏めていたところさ。君の弱点は見破らせて貰った……探偵として」
「な、何だと」
「教えて下さい、風見先生!」
 部屋中の視線が、彼女に集まる。
 しかし、その頬に流れる一筋の汗を見つけることが出来たのは、隣にいた臥待と観察力に優れた使用人だけだった。
「うん、そう、つまりだね、えっと」
「貴女、まさか——」
「極技だよ!」
 とっくに微妙な空気は流れ尽くしている。
 被害者や容疑者からの容赦の無い視線が、二人を貫いた。
「大抵の生物は……関節が弱点だ。だから君にも有効なのだよ」
「あの探偵、もしかしてあの鐘を聴いたんじゃないだろうな。アイツが隣にいるし」
「ああ。展覧会の時の、臥待さんの」
「まあ、今は状況が状況ですし。……ねェ?」
「兎に角! 大事な助手に悲鳴を上げさせた罰、償ってもらおう——今度は、君が啼け」
 無理矢理に真面目なムードを作り出すと、視線を振り払うようにして影朧との距離を一気に詰める。
「ご主人!」
「おっと、君の相手は僕だ」
 助けに入ろうとした使用人の行先を、灰髪の女性が塞ぐ。
「どちらが優れた使用人か、勝負をつけようじゃないか。と言っても、勝敗は呪詛の炎を見るより明らかだけど」
「呪詛の炎……やはり、先程の火事は貴女でしたか。傷つく演技に、感謝する演技……使用人の演技を止められては?」
「……まあ確かに、この部屋で行われていることの九割は茶番だよ」
 そう言いながら取り出したのは、もはや何が写っているかも定かではないほど古びたアルバムである。
「だけど、風見先生が僕を助けようとしてくれたのは本当なんだよ。今この瞬間だけでも、僕はあの人に仕えられて良かったと思っている……君はどうかな」
「っ!」
「仕える主人を選び損ねた【後悔】、さぞかし良く燃えることだろうな!」
 アルバムが赤く染まる。過去の記憶を消却することを象徴するかのように、燃えているのだ。そしてその暴力性は、そのまま使用人へと向けられた。
 灰と煙が飛び散り——
「……素人の方に粋がられては、私の矜持が耐えられませんね」
「……」
「確かに、ご主人は人前に出すに相応しくない人格の持ち主かもしれません。話は聞かないし、迷惑しかかけない……しかし」
 そう言って、真っ直ぐと臥待を見据える。
「私はあの人の使用人です。彼が何だろうと、自分をそう定義しているのです。そこに、貴女に口を挟まれるような後悔など、一欠片も」
「痛い痛い痛い痛い! 何で僕がこんな目に合わなくちゃいけないんだただ探偵っぽくカッコよく目立ちたいだけなのに!」
 アルバムから再び炎が飛び出した。
「クソ主人めーっ!」
「うん……まあ、同情するよ」
 関節技をかけられたショックにより、探偵は死亡。使用人も無力化されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイコブ・ホームズ
(名探偵モードに戻り)
ふ、ふん名探偵気取りが…!だが、君の弱点はすでに判明しているのだよ。
(顔の前に三角形をとるハンドポーズ)
君の弱点、それは…。物理的手段に圧倒的に弱い!
ならば私が取る手段はただ一つ!
(ここで原初の巨人を使用)

バリツだ!!

バリツで真犯人を攻撃するぞ!
(バリツと言っているが実際は単純な殴る蹴るである)
どうした真犯人?体がお留守だぞ!どうにか抵抗してみせろ。まぁ、もっとも私のバリツはかわせられないだろうがな!
(気のせいか推理中よりも生き生きとしている)

…こうして、真犯人は捕らえられた。我ながら己の推理力がこわいよ。



「ふん! 名探偵気取りが、君の弱点などとっくに判明しているのだよ!」
 場面が切り替わってピンピンしている影朧に対し、本当の名探偵は不敵に笑ってみせる。
「ハッタリを……では聞かせてもらおうか!?」
「君の弱点は……物理的手段に! 圧倒的に弱いことだ!」
「まあ、だろうな」
 容疑者が呟く。彼が物理属性に対する耐性を一切持っていないのは、先程までの惨状を見ていれば明らかだ。問題は何度倒しても復活される方なのだが、そちらについては——
「ということで、変身!」
 ジェイコブは特に考えていなかった。
 顔の前に三角形を掲げ、集中。しかるのち、カッと目を見開く。
 ただでさえ巨大な彼の姿は、もはや頭がどこにあるのかも見えないほどになっていた。屋敷の住民は既に避難している。
「……いや、物理攻撃というかこれは」
「私のバリツ武術で倒れるがいい!」
 そう叫ぶと、"バリツ"の構えを取るために右脚を前に出す。
「ぐわー!」
 その動きだけで、探偵は路傍の石ころのように吹き飛ばされた。
 影朧は満身創痍だ。というかもう殆ど死んでいる。が、それを知ってか、或いは身長が高すぎて様子がよく分かっていないのか、ジェイコブの"バリツ"の乱撃は止まらなかった。
「ふはは、体が留守だぞ真犯人! 私の推理力の前に手も足を出ないようだな!」
「うわーっ!」
 叫ぶジェイコブの声音は、心なしか探偵として推理をしている時よりも生き生きしていた。
 何度も吹き飛ばされ死にながらも、影朧は再び起き上がって笑う。
「無駄だ……僕の弱点ゲホンゲホン……秘密を暴かない限り、僕は何度でも……」
「ご主人」
 とそこで、傷を癒した使用人が口を挟んだ。影朧がそちらを向くと、彼女は懐中時計を差し出している。
「もうすぐ、お時間です」
 探偵は暫く目を瞬かせた後、
「ぐはーっ!」
 今までで一番大きな悲鳴を上げ、
「ま、まさかこの僕が推理で負けるなんて……し、しかし僕が死んでも第二第三のシナリオが——」
 そう叫ぶと、完全に消滅してしまった。
「ふははー……ん、終わったか。真犯人を捕縛出来ないのは残念だが、オブリビオン故仕方あるまい」
 敵が消えたことを確認したジェイコブは、高笑いをするのであった。
「やはり私こそが真の名探偵なのだーっ!」
「あ、それでは私もこの辺で……ご迷惑おかけしました、皆様方」
「ああ、いえいえ」
 使用人は、普通に帰って行った。

 かくして、邪悪なる探偵は討ち滅ぼされ、桜の都は守られた。
 しかし、猟兵たちに休みはない。こうしている間にも、事件は起き続けているのだから。
 猟兵たちの戦いは、まだ始まったばかりだ——!

【完】

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月18日


挿絵イラスト