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トモダチ(作者 八幡
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●トモダチ
 ――キッカケは、本当に些細なことだったと思う。
 トモダチのカナエが絶対イイからと渡してきた本……その感想を聞かれて、ゴメンねヨクワカラナイと答えた。
 カナエは少しだけオドロイタ顔をしていたけれど、ソッカと笑った。それだけの話。

「なっちゃんはシンユウ。だもんね」
 カナエは色々なものを勧めてきた。
 音楽、お菓子、ゲーム、新しいトモダチ。
 中にはイイと思うものもあったけれど、ヨクワカラナイものも多くて……私は素直にワカラナイってカナエに伝えた。
 私たちはシンユウだから、ウソをつくのはイケナイんだと思ったから。

 カナエは私の他にも色々な人に色々なものを勧めていた。
 カナエはニンキモノだった。
 カナエがシンユウで、私は鼻が高かった。
 いつの間にかカナエの周りには、カナエがイイと思うものをイイと言う人だけが集まるようになった。

 ――気が付いた時には、カナエがオオサマになっていた。
 自分をイイと言うコエだけを聞くオオサマ。
 それでも私はカナエが勧めてくるものにヨクワカラナイと返すことが多かった。
 私ダケがカナエのシンユウだから、ヨクナイと言うことをユルサレテイルと思っていた。

「なっちゃんさぁ、ちょっとはクウキよみなよ」
 あるときカナエがそう言うと、周りのトモダチもミンナがクウキよみなよと私に言った。
 トモダチがミンナで私をヒナンする。
 小波のように始まったその声は、あっという間に大号令のように広まって……怖くなった私は助けてとカナエを見た。
 けれども、ミンナが私をヒナンする様子を見ていたカナエは、とてもウレシソウな顔をしていて……私はただ怯えることしかできなかった。

 ――それからは地獄のような日々だった。
「なっちゃんさぁ、何で生きてるの?」
 カナエが私を嗤えば、トモダチもミンナで私を嗤った。
 カナエが私の頬をはたけば、トモダチもミンナで私を殴った。
 カナエが私を汚いと言えば、トモダチもミンナで私に汚水を浴びせかけた。
 カナエが私を捕まえろと言えば、トモダチはミンナで私を閉じ込めた。
 カナエが私の家に火をつけようと笑えば、トモダチはミンナで私の家に火をつけにいった。

 ――頭がおかしい。
 あのオンナは頭がおかしい。周りのトモダチとやらも頭がおかしい。この世界はおかしい。おかしい。おかしイ。オカシイ。おカシい。オカしイ。
「私のセイで……ごめんなサい」
 あの女はきっと本当に火をつけるだろう。
 そして、燃える家と私の家族を見ながら、トモダチと笑うのだ。
 こんなことが許されるはずがない、許されてたまるものか……けれども私には何もできない、
「お願イ、無事で、どうカ……」
 私は暗闇の中で膝を抱えて、家族に懺悔することしかできない。
 これから家族の身に降りかかるであろう恐怖を思い、ガチガチと震えて上手く動かない口で、無事で居て欲しいと、祈りの言葉を綴ることしかできない。

 ――不意に。
 この先もずっとあの頭のおかしい女に弄ばれ続けるのだと、気づいてしまった。
 あの女は私を生かさず殺さず弄び続けるだろう。
 この先もずっと……こんな、ことが……。
 気づいてしまった事実に、自分の未来に、血の気が引いていく、頭の中が暗闇で覆われていく。
「もウ。カンガえたく……ナイ」
 このまま生きていても苦しみしかない……なら、もういっそこのまま消えてしまいたいと、私はその暗闇に身をゆだねた。

●救いと制裁を
「UDC-HUMANを知っているかしら?」
 グリモアベースでたむろしていた猟兵に、八幡・茜は話しかける。
 UDC-HUMANと言うと、辛いできごとにより心が壊された人間が、UDC怪物に変貌してしまったもののことだ。
 ただ、UDC-HUMANになったばかりならば、まだ人に戻せる可能性もあると言う。
「そう、UDC-HUMANになってしまう少女を助けて欲しいの」
 話を持ってきたからにはそういうことなのだろう……事態を理解した様子の猟兵に茜は頷く。

 自分の話に興味を持った猟兵たちに、茜は説明を始める。
「少女の名前はナツキ。年のころは十と四つくらいかしら。素直な……そうね、とても不器用で、真直ぐな娘よ。優しく家族想いで、男の子からも人気があるみたい」
 見た目の可愛さもあってねと、茜はUDC-HUMANとなってしまう少女、ナツキについて説明し、
「ナツキを追い詰めた娘は、カナエ。ナツキと同い年だと思うわ。この娘は恐ろしいくらいに要領が良く、数の暴力と、集団の心理を正しく理解しているわ。だからこそ、男女問わず人気もあるようね」
 併せてナツキを追い詰めた少女、カナエについて語る。
 二人についての話を聞くだけならば、どこにでもいるような少女たちに思えるが……、
「ナツキはカナエを親友だと思っていたようだけれど……カナエは最初から違ったようね。ナツキは取り巻きの一人程度にしか思っていなかったみたい。と言うよりも、カナエは人を装飾品程度にしか思っていないわ」
 茜は小さく息を吐いた。
 その装飾品の一つ程度に思っていたものに、自分を否定されれば腹も立つのだろう。
 そして、腹が立ったついでに、攻撃の対象としたのだ。人心をまとめるのに判り易い敵を作るのは、よくある手法だ。
 ……とは言え、度が過ぎている行動に移ったからには、他にも理由があるかもしれないが……いずれにしても、人が人で無くなるほどに追い込む理由に足るものなど存在しない。

 ナツキとカナエについて説明した茜は、続けて状況を伝える。
「ナツキは使われなくなったホテルの一室に監禁されているのだけれど、ナツキが居る部屋を中心に災いの王が現れ始めたみたい」
 残念ながらどの部屋かまでは分からなかったけれど……と茜は頬に指をあてるが、ナツキの部屋を中心に敵が出現しているのならば、その事実が手掛かりとなるだろう。
「ナツキは司書と呼ばれる邪神に姿を変えようとしているわ。けれども、早くに発見してあげれば、その分だけもとに戻せる可能性も高くなる。だから、なるべく早くに見つけ出して助けてあげて」
 心が暗闇に呑まれてしまいそうならば、その暗闇を払ってやればいい。光を見つけてやればいい。
 だが、それができるのはナツキの心が残っていればこそ……故に、急がなければならないと茜は言う。

 一通りの説明を終えた茜は、ゆっくりと目を閉じて、
「最後にカナエについてだけれど。改心させるのは難しいわ。けれども、二度と同じことを起こさないように、楔を打つ必要がある……だから、もし同じことをするようならどうなるか、分からせてあげて」
 あとのことを猟兵たちに託すのだった。





第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る
SPD証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる
WIZ事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●トクベツなトモダチ
 車も通らないような狭い道のわきに、ぽつんと一軒の家が立っている。
 家の中からは明かりが漏れ……中で人が生活していることがわかる。
 その家の前に、六人の若者が集まっていた。
 よくよくその姿を見れば、手に火を付ける機械や、良く燃える液体やら、固形のものやらを抱えているのが分かっただろうか。
 その家に火を付けようとしていると、分かっただろうか。
「え~? いまさらびびったの?」
「ちょっと火つけるだけだろ?」
「もうすぐ雨がふりそうだし、どうせすぐ消えるっしょ」
 流石にいざ火を付けようとすれば尻ごみもするのか、火種を持った一人の男に、周りの男女がけらけらと笑いかける。
 ちょっとした悪戯なのだと。
 ちょっとしたイベントなのだと。
 どうせ大したことになりはしないと。
「そうだよね? カナエちゃん」
 聞いてきたトモダチに、カナエはにこりと笑う。
 カナエの笑顔を見て、肯定されたと思ったのか、そのトモダチは早速準備に取り掛かる。
(「そんなわけがないじゃない。あなたたちは人殺になるのよ、ヒトゴロシに」)
 カナエは心の中で嗤う。
 ヒトは馬鹿だ。
 考えれば判ることも、集団になるとまともに判断できなくなる。
 特に道徳観や倫理観などと言うものは、集団の一体感と、イベントの興奮で簡単に打ち消せる。
 あとはワルモノを作り、自分が正しいと思わせてやれば、大抵何でもする。
 その結果が今の状況。
 自分の思い通りに動くトモダチを見ていると、楽しくなってくる。
 それに、この後もトモダチを使って色々楽しいことを考えているけれど、
「可哀そうな、なっちゃん……でも、なっちゃんはずっと可哀そうなままでいてね」
 なっちゃんはトクベツな私のトモダチ。シンユウなのだから。
 ずっと私の遊び道具でいてねと、カナエは満面の笑顔を浮かべた。