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勇気の火を灯して

#アポカリプスヘル #アイカワさん

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#アポカリプスヘル
#アイカワさん


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●新たなる希望
「羊を鍛えて欲しい」
 ジュリア・レネゲード(叛逆者・f24378)は集った猟兵達へ唐突に口を開いた。
「ああ、羊と言っても賢い動物よ。何も毛刈りをするとかそういう話じゃないわ」
 グリモアベースの会議室、背後のスクリーンにはアポカリプスヘルの作戦地域がでかでかと表示されている。マイハマ・エリア――かつて激しい戦いがあった場所だ。
「彼はアイカワという名の気弱な羊。拠点では余り目立たないけれど、予知によれば恐るべき戦闘力を秘めているらしいの」
 そして眠そうな羊の姿が映されて――先の戦い、マイハマ・エリアの防衛線では目立たなかったが、何を隠そうたった一人で後方の拠点直通ラインを死守していたらしい。それを知った上層部が彼を今後の要にと推したものの、当の本人は至ってやる気がなく、拠点内でも相変わらず惰眠を貪っているらしい。
「彼を鍛え、拠点の……『賢い動物たちの国』をより盤石の体制にするのが目的よ」
 何故ならば度重なる戦いに疲弊した彼らは、ここを放棄するつもりだからだ。だからこそ新しい、若いリーダーを立ち上げて、この拠点を再び活気溢れる場所へ変えなければならないのだ。

「その為にまず彼と共に、マイハマから少し離れたカサイ・エリアで仕事をしてもらうわ。オブリビオンとの戦闘じゃないから、そこは慎重にね」
 そのやる気のない羊を連れて、荒くれ者が集う近隣のパトロールをする。随分な任務だが決して安全ではない。だがこれも世界の為だとジュリアは強く言い放つ。
「続いてニシカサイ・エリアへ移動してオブリビオンの拠点を叩く。アイカワに自信と経験を付けさせる為、しっかりサポートしてあげてね」
 アイカワが一人前になれば立派な戦力になる。優れたリーダーに率いられた集団は何よりも強い。10×10が1000にもなる可能性を秘めているのだから、と。
「最後に孤立した区画……ギョウトク・エリア方面へ彼を先頭に、孤立者への救援を行って欲しい。皆が鍛えた彼ならきっと大丈夫だろうけど、万が一のバックアップは万全に」
 そうして信頼と実績を得る事が出来れば、きっと独り立ちして新たな素晴らしいリーダーになるだろうとジュリアは結んだ。
「以上、作戦の内容から余り大人数での行動は想定していないわ。むしろ支援がメインだからそのつもりでよろしく。それじゃ……」
 グリモアが煌き、繋がった先はシェルターだ。目指すべき所は分かっている。
「来たるべき決戦に備え、やれる事をやりましょう。よろしく頼むわね!」
 今はやるしかない、この世界に平穏を取り戻す為に。

『アンタ達が猟兵か。ハァ……どうしてこんな事に』
 ぶっきらぼうに気怠そうな羊――アイカワが言い放つ。猟兵達も既にカサイ・エリア内。やるべき事は治安維持活動……だが。
『カサイの獣は狂暴だ。さっさと帰りたいんだがなぁ……』
 そう言った矢先に、ガラの悪いアライグマの群れがこちらを睨み返してきた。さて、アイカワを鍛える為にはどうすべきか……。


ブラツ
 ブラツです。
 アポカリプスヘルで羊を鍛えるお話です。
 少数短期決戦を目標にします。

●作戦目的
 第1章冒険は羊のアイカワをカサイ・エリアへ連れ出して、チンピラに対しての治安活動の協力をお願いします。例えば声のかけ方や、相手の行動を制する方法など、正しく制圧する方法を伝えればアイカワはきっと上手くやります。場合によってはチンピラが仲間になります。

 第2章集団戦はニシカサイ・エリアのオブリビオンとの直接戦闘です。こちらも直接猟兵が手を下すのではなく、アイカワの指揮の元、前章で仲間になったチンピラと共に戦う事で、アイカワの心理的・技術的サポートをすることが目的です。彼に自信をつけさせましょう。

 第3章日常はギョウトク・エリアへアイカワと共に出向き、孤立している人々を救援し、場合によってはマイハマの拠点へ連れて行ってあげましょう。成長したアイカワのバックアップをお願いします。

 以上になります。
 プレイングは本シナリオ承認と同時に受け付けます。
 アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
 単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
 今回は各章6名前後の採用で進め、尚且つ2章以降は1章参加者を優先する予定です。
 その為、大人数での連携は採用率が低下しますのでご注意ください。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『君臨せよ!』

POW   :    武の力で語り合う

SPD   :    早さや技術で翻弄する

WIZ   :    魔力や知識で圧倒する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィーナ・ステラガーデン

優しい猟兵が教えると思った?残念!私よ!
なめられないように躾けてやるわ!
出来ないようなら今晩のご飯はジンギスカンとなるわね!材料はあんたよ!!

最初だけは腕を組んで静観するわ!
こっちにまでアライグマが舐めた口を叩くようなら
「!?」ってコマいっぱいに出てきそうな表情でビキビキしながら睨み返した後、間髪いれずアライグマを殴り飛ばすわ!
いい!?こういう口で言ってもわからなさそうなバカは鉄拳制裁よ!
練習用サンドバック(アライグマ)はまだまだいるわ!
あんたもやんのよ!戦って覚えるのよ!
ホラ!睨み返して殴り飛ばすのよ!
もっとコメカミをビキビキ言わせなさい!!
相手に何か言われたら「あぁ!?」よ!!



●太陽曰く燃えよ云々
「優しい猟兵が教えると思った? 残念! 私よ!」
『……誰?』
 現れたのはダクセの狂犬、泣く子も泣いて詫びるフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)だった。日が出てるだけマシじゃないと言わんばかりに、たむろする辺りの獣どもをジロリと睨み、最後にアイカワへと向き直る。
「戦闘力ヒトケタのクズばかりね! こんなへちょいミッションもコンプリート出来ない様なら今晩のご飯はジンギスカンとなるわ! 材料はあんたよ!!」
『お前が敵かよ!?』
 両腕を組んで仁王立ちするフィーナへ突っ込むアイカワ。だがその眼はマジだ。本気と書いてそう呼ぶ方の殺気を感じたアイカワは渋々、目つきの悪いアライグマの群れへと向かった。このままでは本当にそうなると思ったから。

『あんだぁゴルァやんのかオァァ!?』
『はあ……あのですね……』
 所詮羊と舐めてかかるアライグマはオウオウと息を荒げてアイカワの周囲を旋回する。この手の動物に多い迷惑な示威行動の一種だ。そのままアイカワを一瞥すると顔を上げて、鋭い牙を見せながらフィーナの方へ面を向ける。しかし、それが良くなかった。
『だべしゃあ!』
「いい!? こういう口で言ってもわからなさそうなバカは鉄拳制裁よ!」
『えええ……』
 そのまま子羊を睨みつける様な仕草でフィーナを見てしまったのだ。当然そんな事が許される訳が無い。活火山の様な形相でフィーナがビキビキと睨み返せば、電光石火――音より早い拳がビビビと走り、アライグマはたおれた。
「あんたもやんのよ! 戦って覚えるのよ!」
『いや、ちょっと』
 その威力に一同が恐怖する。泡を吹いて倒れたアライグマをそっと見て、更に命の危険を感じたアイカワは意を決した。つまり、戦わなければ生き残れない。
「ホラ! 睨み返して殴り飛ばすのよ!」
 最早地獄はここにあり。相手は魔女か獄卒か、響く怒声に蜘蛛の子を散らす様に逃げ惑うアライグマ。
「もっとコメカミをビキビキ言わせなさい!!」
 しかしフィーナに恐怖を与えられた彼らは、最早自由に動く事もままならない。
「相手に何か言われたら『アァ!?」よ!!」
『アァ!?』
 その時アイカワに電流走る。ビビビと拳が頬を打って、怒れる魔女が寛大な心で迷える羊を許したのだ。
「何か言ったかしら」
『いいえ』
 こうして、新たな力と恐怖の信徒がここに誕生した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
まさに羊の皮を被った狼ってわけか。
いや……もしくは、骨の髄まで羊であるからこその戦功なのかな。
そのあたりがわからないうちは、部外者が上から目線でものを言うのは筋じゃない気がする。

てわけで、共感的態度という名のコミュ力を駆使。情報収集は仲良くなるとこから始めよう。
ま、お仕事って大変だよな。わかるよ。
一日中ゴロゴロ寝て食べてるだけでいい世界だったら素敵なのにね。

ねえアイカワくん、アライグマたちはどうして凶暴なんだと思う?
彼らだって本当は、一日中ゴロゴロ寝て食べて過ごしたいんじゃないかな?
そう出来ないのはどうしてなんだろう。

夏報さんはできるだけ目立たないようにしてるから、君のやり方を見せてほしいな。



●我等は恐怖の隷也
「ま、お仕事って大変だよな。わかるよ」
『アァ!?』
 気さくにアイカワへと話しかけた臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)はあんまりな歓待を受ける。目を血走らせ歯をむき出しにした羊――だが相手が猟兵である事に気付き、アイカワはすぐさま詫びを入れた。
『っと……すまない。こうしないとジンギスカンにされそうな気がして』
「大丈夫だよ、ここは北海道じゃないから。それよりもさ」
 部外者が上から目線でものを言うのは筋じゃない気がする――とは言え、何もしない訳にもいかない。ファーストコンタクトは兎も角、言葉を交わすには困らない距離感だ。後は本題……この羊を見極める為の問い掛けを。
「ねえアイカワくん、アライグマたちはどうして凶暴なんだと思う?」

「一日中ゴロゴロ寝て食べてるだけでいい世界だったら素敵なのにね」
『……全くだ』
 逃げるアライグマ達を見やりアイカワは溜息を吐いた。そもそもどうしてこんな事になってんだ、と。
「彼らだって本当は、一日中ゴロゴロ寝て食べて過ごしたいんじゃないかな?」
『まあ、そう……なのか?』
 いや、どう見てもアイツらがゴロゴロしている絵面が思い浮かばない。むしろ暴れ回る生き方を楽しんでいる様にすら感じる。
「――そう出来ないのはどうしてなんだろう」
『どうしてって、アライグマはジンギスカンにならないしなぁ』
 ジンギスカンにされる恐怖、それが無ければ暴力など必要ない。にも拘らず常に闘志を剥き出しにしている彼らをアイカワは訝しんだ。
『そうか、俺と同じ……』
 何故闘志を剥き出しにしなければならないか、答えは既にアイカワの心の内にある。これまでも無意識に叩き付けられた、この世界の者全てが抱えている疾患と言ってもいい――感情。
『……恐怖、か』
「そう、かもね」
 目を薄めて頷く夏報。それだけでは無いかもしれないが、それは間違いなく原因の一つだ。じゃあどうする? と言わんばかりに小首を傾げて、夏報はアイカワへと向き直った。
「さあ、夏報さんはできるだけ目立たないようにしてるから、君のやり方を見せてほしいな」
 そう言うと夏報の体が宙に溶け――決して不思議な力ではない、超常にも等しい達人の妙技が、夏報の存在を尋常より隠したのだ。最早そこには、声しか残らない。
『ああ。そもそもこれは俺の仕事……だからな』
 そして羊が再び進む。迷いは無い。恐怖を、それを以って、それを乗り越えてこそ――我等の行く末があるのだ。そう感じたから。

「まさに羊の皮を被った狼ってわけか。いや……」
 夏報の目の前で羊がアライグマに襲い掛かっている。最早気怠げな雰囲気など微塵にも感じさせない、世界の理を理解した獣の姿。
「もしくは、骨の髄まで羊であるからこその戦功なのかな」
 ひたすらに生存を望み、闘争を忌避する。故に――その手並みは如何なものか? 願わくば恐怖の名の下に、我等へ振るわれぬ事を祈って。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
あの…触っていいですか…?
はー、ふわふわ…やばい…
…はっ、すみません!私、春乃っていいますっ
寝る前にちょっとお散歩でもどうですか?

うわ、睨んでますよ…ヤンキーこわぁ…
でも、意外と話せる人…動物…?もいると思うんです
この過酷な世界で、無駄な体力は使いたくないやろうし
でも隙を見せたらだめですよ
アイカワさんは強いから、堂々と、フレンドリーに話しかけてみるのです

血気盛んな人もいますよね
そうなったらアイカワさんの強さを見せてあげよう
でも、相手が手を出すまで待つんです
全然効いてないけど?って感じを出しつつ軽くボコーってする
したらきっと、アイカワのアニキ!ってなります
あの人たち、強い人に憧れてると思うから



●羊と踊れ
「あの……触っていいですか……?」
 続けてパトロールの最中、不意に現れた少女がアイカワの自慢の毛並みを一方的にモフり始めた。
「はー、ふわふわ……やばい……」
『なにをするきさま』
 突如現れた少女――春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)がいつの間にかアイカワの背後を取っていたのだ。それだけでも彼女が並の手合いでは無い事が分かる。
「……はっ、すみません! 私、春乃っていいますっ。あの、寝る前にちょっとお散歩でもどうですか?」
『いや寝ないよ? 仕事中だよ?』
 魅惑の誘いに心がぐらりと傾いたアイカワだが、それでも男一匹仕事に勤しむ姿をだらしない締めで終わりにするつもりは無い。
「うわ、睨んでますよ……ヤンキーこわぁ……」
 しかしアイカワの返答を聞くまでも無く、結希が溌剌とした声色で話を続けた。
「でも、意外と話せる人……動物……? もいると思うんです」
『……何が言いたい』
 事はそう単純では無い。首を傾げるアイカワに結希はあっけらかんと言い放つ。
「だって皆、この過酷な世界で、無駄な体力は使いたくないだろうし」
 確かに一理ある……正直、誰もが自分の身を守る事で精一杯。余計な事などしたくない。ではどうすると言わんばかりに、アイカワがつぶらな瞳で結希を見上げた。
「だから、堂々と、フレンドリーに話しかけてみるのです」

『やあ』
『んだゴルァすっぞオラァ!』
『アァ!?』
「アイカワさん、ステイ、ステイ」
 やっぱり駄目じゃないか! 涙目で見つめてくるアイカワを強引に引っ張ってその場から放す結希。違うそうじゃない、と目を合わせてアイカワへぼそりと呟く。
「アイカワさん十分強いんだから、凄まれて凄み返さなくてもいいと思うなぁ」
『……じゃあどうしろと』
 ジンギスカンにされる恐怖は分かるまい。やらなければやられるのだと心に熱い感情が滾る。しかし結希が続けた言葉は、それよりも過酷な修羅の道だった。
「そういう時は、相手が手を出すまで待つんです!」

 再び狂暴なアライグマの元へ。ぐるぐると周囲を回られても一切微動だにしないアイカワ。その様子に業を煮やしたアライグマが遂にアイカワへと襲い掛かる!
『…………』
 叩かれた。痛かった。だがそれは、とても命を奪える様な一撃じゃなかった。
(でも、全然効いてないけど? って感じを出しつつ軽くボコーってするんです)
 結希に言われた事を思い出す。向こうも必死だがこっちの方が圧倒的に上だ。それでも、威嚇混りの攻撃をしなければならないのだ。この世界では生き抜く為に、脅威は追い払わなければならないのだ。誰もが話など、到底出来ぬ現実を幾度となく見てきたから。
(したらきっと、アイカワのアニキ! ってなります。あの人……動物? たち、強い人に憧れてると思うから)
『……おう、活きがいいな』
『んだゴルぁ痛った! てめ痛い! 痛い!』
 元より羊の毛は深い。攻撃を受け止めてそのまま圧し掛かり潰してしまえば、小柄なアライグマなど一溜りも無かった。

『すんませんでしたアニキ……』
 ゴロンと立ち上がり荒くれアライグマを諭すアイカワ。別に喧嘩を売りに来たんじゃないと言い聞かせ、静かに結希の元へ戻る。そして暫く、いつの間にかアイカワの後ろに心を改めたアライグマが徐々に集う様になっていった。武威をひけらかす事無く、アイカワは狂暴なアライグマのハートを少しずつキャッチしていったのだ。
「ね? 簡単でしょ?」
『ね? じゃないよ!』
 笑顔で返す結希に怒るアイカワ。だがその表情はまんざらでもない様子だった。
 もうすぐパトロールの最終地点。ここを越えれば、残るは問題の鎮圧のみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

無間・わだち

ここまで生き延びて
一人で拠点のラインを死守してた時点で
彼の実力は十分ある
きっと、自信さえつけられればいい

俺はあくまで付き添うだけ
基本的には彼にアドバイスできれば

チンピラ達への威嚇は見せているし
あとは優しく接してあげてください

アメとムチじゃないですけど
ああいうのって、大抵怖がりで強がりですから
自分より強い誰かに、ついていけたら
安心するものだ

怪我をしている者が居れば
彼もきっとすぐ気付く
それを労わってやるようにすれば
自然と誰がリーダーに相応しいか
皆、無意識に気付き始める

まだ不意打ちでアイカワさんに攻撃を仕掛ける者が居た時だけ遮る
俺は、そうヤワな躰じゃないんで
ふわふわの毛より、殴り甲斐があるでしょ



●心を込めて
(ここまで生き延びて、一人で拠点のラインを死守してた時点で――)
 無間・わだち(泥犂・f24410)はアライグマ達と休息をとるアイカワの方を見やり、一人思案した。パトロールも大詰め、あと一区画で大体の仕事が終了するらしい。
(彼の実力は十分ある。きっと、自信さえつけられればいい)
 たむろするアライグマ達は何処か安堵した表情を見せている。目の前の羊は敵じゃ無いし、何より頼もしい。だが当の本人は、アイカワはその事に全く気付いていない様子だった。だから、それを分からせてあげれば……ゆっくりとアイカワの元へと近付いていき、わだちは優しく声を掛けた。
『……誰だ?』
「大丈夫、怖がらないで」
 不意に現れたデッドマンの姿に驚き身構えるアイカワ。それは無意識の群れの長としての立ち振る舞いか、その緊張をほぐす様にわだちは静かに諭していった。
「チンピラ達への威嚇は見せているし、あとは優しく接してあげてください」
『何で、急に……』
 言葉を続けるわだち。その端々にはこの世界で生きてきた者としての矜持――求められた救いを求める声に応えてきた、猟兵としての経験をこの羊にも分け与える様に。
「アメとムチじゃないですけど、ああいうのって、大抵怖がりで強がりですから」
 群れなければ生きていけない弱者は多い。たった一人で立ち向かえるような、柔な世界では無い事はわだちも十分承知していた。だから、強さを示したアイカワにこうして皆付いて来ているのだと。
「自分より強い誰かに、ついていけたら、安心するものだ」
『俺はそんな強か無ぇよ』
 だから、今度は優しくしてあげて、と。しかし己の強さを信じられないアイカワは頑なにそれを拒む。その頑なさに、わだちは口元を綻ばせた。
「いや、あなたは十分強い」
 でなければ、こうはならない。そしてその強さは同時に、優しさにもなるのだと。
「それに、気付いていないだけです」

『おい、どうした』
『あ、アニキ……』
 わだちの言葉に突き動かされたか、たむろする一団へ顔を出したアイカワは、怯えた表情で固まるアライグマ達を一瞥し尋ねた。
『この先、マジでヤバイから……』
 その怯え様は尋常では無かった。確かにニシカサイ・エリアの悪名はマイハマにも轟いている。だがどうして、そこまで怯える必要があるのだとアイカワは訝しんだ。
『心配すんな。怪我してる奴だっていんだろ』
 ゆっくり宥める様に言葉を続けて、そして意外な言葉が自身の口から発せられる。
『休んどけ。来れる奴だけついてこい』
 ずっと昔――まだ新兵だった時、お猿の大将にそんな事を言われた気がする。そしてそれを伝えるべきだと、勝手に言葉が続けて出たのだ。
『大丈夫、俺が守る』
『アニキ……』
 パトロールは何も威嚇する為に行っているんじゃない。力無き者達を助ける為に、いつも誰かがこうやっていた。そうだ……俺もそうだった。
『そうだ、その為に……俺は来たんだ』
 そしてそれを、受け継ぐ時が来たんだ。

『……!』
「俺は、そうヤワな躰じゃないんで」
 自らの役割を見出したアイカワを見守っていたわだちは、それに近づく怪しい影の前に立ちはだかった。アイカワを狙った鋭い爪を、鬼の名を冠した得物で軽々と受け止めて。
「ふわふわの毛より、殴り甲斐があるでしょ。で」
 そのまま絡めるように腕を取り、アイカワを狙ったはぐれアライグマを押さえ込む。不意打ちは考えていた……が、こうも大胆に狙ってくるとは。恐らく彼等のボスが、無理やりそうさせたのだろう。
「誰に言われて来たんだ?」
『あ、姐さん……』
 姐さん――女か。恐らくはこの先、ニシカサイ・エリアのボスだろう。
 あと少しで哨戒も終わる。そうすればアイカワの本当の戦いが始まる、か。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
はっはっは、此度はよろしく頼むぞ
妾がお主をイケてる羊へと導いてやろう!
今は乗り気でなくとも全然構わん!
強さにも色々とあるが、己の理想像が自身の持つ才能とは合致せんこともあるからのう

お主は常に武威をひけらかすタイプではあるまい?
ならば重要なのは、どのタイミングで力を見せつけ主導権を握るかよ
制圧なんぞ対人の心理戦、理論と技術がいくらでもある!
ちなみに妾の場合は諸々検討して、力押しが最も効果的という結論であるがな

頭を働かせ、冷静に機を窺い…的確に弱点へと一撃ブチかます!
な~に、何事も経験よ!
ミスっても妾がきっちりフォロー(物理)するから安心せい!
反省と改善点を洗い出し、次の集団へとゴー!



●声高らかに蛇神は笑う
「はっはっは、此度はよろしく頼むぞ!」
『今度は蛇かよ!?』
 アライグマの群れを引き連れたアイカワの前に現れたのは、またしても猟兵――御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の圧倒的な姿だった。
「妾がお主をイケてる羊へと導いてやろう! 何、今は乗り気でなくとも全然構わん!」
『構うっての! 大体パトロールに来ただけなのにやれ絡まれろだの凄めだの戦えだの! 訳が分からない!』
 ズバリと指差し導かんと声を上げた菘に対し、疲れからか不意に暴言を吐いてしまうアイカワ。しかしその様子をじろりと一瞥した菘は、溜息交じりに口端を歪める。
「矢張りイケておらんなぁお主……鍛え甲斐がある」
『ヒッ!?』
 まるで獲物を前にした大蛇の様な威圧感を放ち、菘は有無も是非も言わさずにアイカワ(とアライグマ軍団)を引き連れて、最後の哨戒へと向かった。

「強さにも色々とあるが、己の理想像が自身の持つ才能とは合致せんこともあるからのう――お主は常に武威をひけらかすタイプではあるまい?」
『はい……そうです……』
 巨大な尾を這わせながら辺りを一瞥する菘。成程、臆病な目線がずっと突き刺さって痛いくらいだ……自身の故郷の様で全く違う世紀末世界だけど。そういう取れ高は欲しくないのだよ。
「ならば重要なのは、どのタイミングで力を見せつけ主導権を握るかよ」
 バチンと、不意に尾を鳴らす菘。その音に驚いて一斉に逃げ出すアライグマ達。
「制圧なんぞ対人の心理戦、理論と技術がいくらでもある!」
(思ったよりまともな講義だ……)
 直接拳を振るう必要は無い。自身が彼等より格上である事を分からせれば自然と序列が出来上がる。そうすれば、彼等を従わせる事は容易い。それでも。
「頭を働かせ、冷静に機を窺い……的確に弱点へと一撃ブチかます! な~に、何事も経験よ!」
『やっぱり、そうなりますよね』
 矢張り、この世界で最後にものをいうのは暴力なのだ。暴力は全てを解決する……嫌な現実だとアイカワは溜め息を吐いた。

『おい……』
『アァン? 何だオメ……』
『ここで何してる?』
 言葉を遮り、多少の凄みを利かせつつ、たむろするアライグマの一団へ向かったアイカワは連中にゆっくりと尋ねた。変に下手には出ない……だが、居丈高に振舞い過ぎるのも良くない。落ち着いて、言葉を選んで彼等の話を聞いてやる――そのつもりだった。
『ファ、○タ飲んでんだよ文句あっか!?』
『ストロングじゃ無いな……なら、良し』
『ヨシ! じゃねえコノヤロ』
 キシャア! と歯を剥き出しに片手を振り上げたアライグマ。どうして……だがここまで来たら、最早隠し立てをする必要は無いだろう。最低限の動きで最大限の戦果を齎す。アイカワは全身に力を籠めて、仕方なく自らの力を開放した。
『何か、ビリっと……』
『痛い目遭いてぇか?』
『ヒッ……』
 僅かにフワフワの羊毛が帯電し、まるで雷雲のようになる。体内のヴォルテックエンジン――それこそがアイカワがたった一人で戦線を維持出来た所以。それを僅かに起動させてやれば、手を触れずともその威を軽々と示す事が出来る。
(ただ、これ疲れるんだよな……)
「中々良いぞ。タイミングもバッチリだ」
『はぁ、じゃあこれで』
 平伏したアライグマの一団を満足げに見下ろす菘がアイカワをポンポンと叩く。
「フォローは任せよ。それじゃ次の集団へとゴー!」
 どうして。アイカワの声無き悲痛な叫びが廃墟へ溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『少女強盗団』

POW   :    「一斉に掛かれ!」「囲め囲めー!」
【手作りや拾い物の雑多な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    「1班、2班で抑えろ!3班は回り込め!」
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【メンバーの誰かのナイフ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ   :    「おい、アレ出せ!」「は、はいっ!」
自身の身長の2倍の【車高の、履帯と砲塔を備えた戦車】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ばりばり作戦です!
『おいおい……マジかよ……』
 ニシカサイ・エリアへ到達したアイカワとアライグマ軍団を待ち構えていたのは、戦車に乗った少女達だった。
『何あれ、羊?』
『マジで! 刈っちゃおうよ』
 しかし年端もいかない形ながら、溢れる邪悪さは最早人のそれではない――オブリビオンだ。
『さあ毛刈りだよナッシー!』
『『『『ヒャッハァーッ!!!!』』』』
 タンクデサントめいて箱乗りした少女達が奇声を上げる。何なんだコイツらと怪訝な表情を浮かべるアイカワとアライグマ達……そして爆音が轟き、ぐらりとサスペンションが車体を持ち上げた直後、彼女たちの悲鳴がこだました。
『あれぇ~っ! ナッシー止まった! なんで!?』
『まあエンジン温まったら動くっしょ!』
 ナッシーとはどうやらこの戦車の事らしい。ぐつぐつと車体を揺らしながらも、滑らかな曲面で構成された旧式の戦車は前進出来ず、ただ砲塔をアイカワ達へ向けたまま立ち竦んでいた。
『それじゃあ刈っちゃおっか!』
『冗談じゃねえ……刈らせるかよ』
 バチバチと電流がアイカワの膨らんだ羊毛に迸る。その後を三匹のアライグマが思い思いの獲物(釘バット等)を持ち並んで、場は一触即発の空気となった。
『そうっすよアニキ!』
『アイカワのアニキ!』
『やっちまいましょうぜ!』
 頼れるアライグマはアライさんとアライくんとアライちゃん。アイカワが彼らを指揮して上手く立ち回れば戦況は有利となるだろう。ここが男を見せる所だ――無論、露骨にならない程度にアイカワを支援するのもいい。ともあれこの試練を乗り越えれば、きっとアイカワはニューリーダーとして覚醒してくれるに違いない。

※注意
・本作戦はアイカワの教導が目的の為、上手く指導しつつ敵の殲滅を狙って下さい
・アイカワ自身は体当たりと電撃で、アライグマ達は獲物で叩くのが攻撃手段です
・猟兵自ら手を下しては意味が無いので、その点はご注意下さい(支援はヨシ)
・プレイング募集は現在より。他、オープニングコメントに準じます。
・猟兵自ら手を下す事も可能ですが、出来る限りアイカワらをサポートして下さい
(例えばアイカワに攻撃タイミングを教えて、自ら実践するように仕向けたり等)
春乃・結希
ふわふわしてる人……動物が増えましたね
…やばい…ちょっと触っていいですか…
あっ、すみませんそんな場合やないですよね!
刈られたら風邪ひいちゃいますしねー

私、実はめっちゃ強くて、というか最強だから
あのナッシーだって一瞬で叩き潰せるんです
……って強く思うことって大切だと思います
『自己暗示』ですね
アイカワさんも、アライさんも、アライくんもアライちゃんも
絶対に強いです。見たら分かります
だから、自分を信じて立ち向かってください

あっ、あと倒すと決めたら遠慮したら駄目ですよ
そこに隙が生まれて、つけ込まれるので
絶対潰す!って気持ちで戦ってください

大丈夫です、私たちが付いてます
何かあったらお手伝いしますからっ



●俺達は強い
「……やばい…ちょっと触っていいですか…」
 新たに増えたふわふわしてる人……動物を見やり、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は心を躍らせた。しかし、これで戦闘中でなければ……などとのんきな事を考えている場合でもない。
『おい姉ちゃん、それどころじゃねえだろ……戦車やぞ?』
「あっ、すみませんそんな場合やないですよね! 刈られたら風邪ひいちゃいますしねー」
 溜息交じりに羊のアイカワが結希へこぼす。既に得物を手にした少女――オブリビオンの集団が、彼等を刈ろうと迫りつつある。幾ら戦車が不調とは言え囲まれれば一溜りも無い……刹那、突出した少女の白刃が結希の首筋へその鋼を躍らせた。
『って、危ない!?』
 稲妻の様な軌跡を描いて――少女が吹き飛ばされる。遅れて爆音が周囲へ轟いて、みしりと地形に巨大な亀裂が入った。いつの間にか結希の手には光すら飲み込む漆黒の大剣が。がつんと大地に当てられたその巨塊が、衝撃と共に少女を吹き飛ばしたのだった。
「――私、実はめっちゃ強くて、というか最強だから。あのナッシーだって一瞬で叩き潰せるんです」

『はい』
 そうだね。そういう他無い。何なんだあの一撃は。そんな表情を浮かべる動物達へ、笑顔を湛えて大剣を担いだ結希はそのまま向き直り言葉を続けた。
「……って強く思うことって大切だと思います。『自己暗示』ですね」
 そんなレベルかよ!? しかし突っ込む余力がある訳も無く――ただ、本当に彼女は『最強』だ。それは今の一瞬の攻防を見れば即座に理解出来る。
「アイカワさんも、アライさんも、アライくんもアライちゃんも、絶対に強いです。見たら分かります。だから、自分を信じて立ち向かってください」
 そんな『最強』が言うのだ。自分達なら大丈夫だと。この危機を乗り越えられると、自身を持てと宣うのだ。
『本当に……大丈夫なのか?』
「大丈夫です、私たちが付いてます。何かあったらお手伝いしますからっ」
 にこりと笑顔を振り前いて視線を外す結希――その先には残る少女の集団が、足元を振るえさせてこちらを睨んでいた。
『アニキ……』
『ああ……大丈夫だ』
 何だ、あいつらもビビってんじゃねえか……同じだ。怖いのだ。未知の敵とその正体と、それと共にある俺達が。だったら今が好機――叩くしかない。
『行くぞ』
 バチリと帯電したアイカワが吼える。それに続いて獲物を高々と掲げた凶暴なアライグマの一団が、恐れを振り切り少女達へと突撃した。
「あと、倒すと決めたら遠慮したら駄目ですよ! そこに隙が生まれて、つけ込まれるので――絶対潰す!って気持ちで戦ってください!」
『絶対潰す!』
『潰す!』
『行くぞ野郎ども!』
『『『YEAAAAAAAAAH!!!!!!』』』
 うんうん、素直な良い子たちだ。深く頷き――背後の悪意へ視線を飛ばして、結希は得物を大地へ突き立てた。さあ、戦いの時間だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン

羊が少しでも怯んだりピンチになったら横あいから敵をヤクザキックで蹴り飛ばして敵にはUCでもくれてやるわ!

ストップよ!あんた解って無いようね!
誰も上っ面で虚勢張れとか言ってないわ!

・・あんた一匹で後方の拠点直通ライン守ってたらしいわね?それは何でよ?
一人で守り通すなんてそう出来るもんじゃないわ!
それでもやり遂げたのはあんたが守りたかったからでしょ!?
なら!大事なのは相手に怯まず!流されず!自分のやりたい事を貫き通す心と行動でしょ!
自分が本当にやりたい事を見失って流されてたらあんた本当にジンギスカンになるわよ!

ふん!待たせたわね!
ここからはまた羊が相手よ!
ただの羊だと思わない方がいいわよ?



●アブない奴ら
『ちょっと、あの羊さん達目がヤバいんですけど!?』
 猟兵のアドバイスを受け奮起したアイカワら恐れを知らない動物一同は、果敢にオブリビオンの少女達へ立ち向かっていった。まるで雷雲の様に肥大化した羊毛から凄まじき電撃が迸り、その間隙を凶暴なアライグマらが危険な得物を手にして少女達を追い回す。
『ねえ、ナッシーまだ動かないの!?』
 叫び惑う少女達に動物達の怒りの鉄槌が振り下ろされて、一人、また一人と戦闘不能に陥っていく。バチバチと紫電が舞い、さながら世紀末――いや、元より世紀末な風景が一層おどろおどろしい様へと変わっていった。
『オルァ、行くぞお前らッ!!』
『『『YEAAAAAAAAAH!!!!!!』』』
『って、このままじゃ――!』
 奇声を上げる動物達が少女の眼前に迫ったその時、轟音と共に動物達の背後で爆発が巻き起こった。
『な、アニキ……』
『うろたえるな小僧ども! あんなもの――』
 あんなもの――それはナッシーこと陸上自衛隊の旧主力戦車の雄叫び。オブリビオンと共に蘇ったその主砲が目覚めの号砲を解き放ったのだ。
『やった! 着弾観測――もうちょい手前!』
『いえっさー!』
 歓声を上げる少女の声に従ってぐらりと傾いた車体が照準をアイカワらへと向ける。
『ヤバいっすよ、あんなもの喰らったら……』
『うるせえバカヤロウ突っ込むぞ!』
「バカヤロウはあんたよコノヤロウ!」
 怯む事無く再び突撃を試みたアイカワに、突如地獄より恐ろしい怒声が届く。
『あ、あ……』
 ざり、と崩れた足場を踏みしめ、小柄な影がアイカワへと近寄って。
『何、新手? イイから撃っちゃえ!』
『いえっさ!』
 それを狙って再び轟く砲声はされど影には届かず――否、着弾の寸前で弾体ごと蹴り飛ばされ、彼方で爆発が巻き起こったのだ。何という事でしょう。
『あ……』
「アァ!?」
『ヒィ!』
 その凄みに後ずさるアライグマ達――それ程までに、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は苛烈だった。

「ストップよ! あんた解って無いようね! 誰も上っ面で虚勢張れとか言ってないわ!」
『いや、そんな事を言われましても……』
「……あんた一匹で後方の拠点直通ライン守ってたらしいわね? それは何でよ?」
 ずい、と顔を寄せたフィーナがアイカワへ問う。その様子をアライグマと少女達が固唾を飲んで見守っていた。
『それは……あの時は……』
「一人で守り通すなんてそう出来るもんじゃないわ! それでもやり遂げたのはあんたが守りたかったからでしょ!?」
 ダークセイヴァーの死地を散々潜り抜けてきたフィーナの言葉には重みと確信があった。その力強い言葉に促されて、アイカワがゆっくりと面を上げる。
「なら! 大事なのは相手に怯まず! 流されず! 自分のやりたい事を貫き通す心と行動でしょ!」
 虚勢を張らずに怯まず、流されず、強き意志をもって――そうだ。狼狽えているのはアライグマ達だけじゃない……俺だって、そうだ。
「自分が本当にやりたい事を見失って流されてたら、あんた本当にジンギスカンになるわよ!」
 それだけは嫌だ絶対に。ならば俺がやるべき事、仲間を導いて何を成し遂げれば……。
「ふん! 待たせたわね! ここからはまた羊が相手よ!」
 おいちょっと待って。試合再開ですかコンチキショウ!
「でも……ただの羊だと思わない方がいいわよ?」
『アッハイ』
 このお姉さんが言うならそうなのだろう。少女達は身構えて、戦車は砲塔を旋回させて照準を付け直す。
「さあ、あんたなら分かるでしょう? 何をすればいいのか――」
『ああ……分かる』
 敵本営への強襲は現有戦力では愚策。ならば敵を利用し行動を封じ込めて……それから……。
「だったらチャキチャキ動きなさい! タレかけて焼き尽くすわよ!?」
『イエッサー! お前ら付いてこい!』
『『『YEAAAAAAAAAH!!!!!!』』』
 何よりここにいたらもっとヤバい。仲間と共に再び戦場へ――されどその歩みにもう、迷いは無い。確実に一つずつ、障害をクリアすれば良いのだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘
ガチ敵とのバトルとなるが、具体的な戦法は他の者が指導するであろう
妾はその前の段階をレクチャーするぞ?

勝利や敗北条件の設定だ、これはリーダーにしかできん!
ぶっちゃけ部下の犠牲を許容できるなら、相当無茶な作戦まで選べるであろう?
敵の全滅まで望むのか、降伏や逃走を許すかもある
指揮をする上で、お主がこの点を曖昧にしてしまうと、集団は脆く崩れる!

ヤバそうになって、作戦を切り替えるのは悪いことではない
それが咄嗟の思い付きではなく、状況変化を想定して事前に考えてあった作戦であればな
頭から煙が出るまで考えるがよい! 此度のバトルはどうしたいのか!

それと、シンキングタイム中の横槍は適当にあしらっておこうかのう



●戦いの作法
「ほう、随分と派手にやっておるのう」
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は果敢に戦う動物達を見やり口端を綻ばせた。先程までとは打って変わって、単純に突撃するだけでは無く相手を選び、じっくりと一つ一つ障害を突破する彼等の健闘は美しさすら感じさせる。
「にしては……ふむ」
 それでも、敵の背後には巨大な戦車が控えていた――あれと対峙する所まで近づいた時、彼等はどうするのだろう。このまま見ていたい所だが、矢張り仕事はこなさなければ。
「どれ、一つ手を貸してやろう」
 ずるりと長い尾を引き摺って、菘はゆっくりと戦場へ向かっていった。
「はーっはっはっは! 中々やるではないかお主ら!」
 敵襲か!? 否、スタアの参上だ! 戦闘不能になった少女達がそこいら中で倒れ伏せ、肩で息をする動物達が戦場を駆け巡る惨状で、一同が更に悲鳴を上げた。
『か、怪獣よ! 砲撃用意!』
「馬鹿者、怪獣では無いわ!」
 一喝と共に手近な廃材を尻尾で弾き飛ばし戦車へ痛恨の一撃を与える菘。その隙にずるりとアイカワへ近寄って、淑やかな声色で言葉を掛ける。
「のうアイカワ、努めて上手く立ち回ろうとしているみたいだが……」
 先ずは労う様に彼の働きぶりを称え、そして問う。
「して、何をもってこの戦いを終わらせる?」

『戦いの、終わり……?』
「つまり、勝利や敗北条件の設定だ。これはリーダーにしかできん!」
 くわっと目を見開いて顔を寄せる菘。真剣なまなざしでアイカワへとにじり寄るその姿は、まるで獲物を睨む蛇の様であった。だが喰らうのは肉ではない。
「仲間の犠牲を伴うか? 敵を全滅させるか? それとも逃がすか?」
 重ねて問い続ける菘。それが分からぬのであればどうなるか……したり顔で講釈を続ける菘は、面を上げてジロリと周りを一瞥した。
「指揮をする上で、お主がこの点を曖昧にしてしまうと――集団は脆く崩れる!」
 少女達は確かにアイカワ達の奮闘で徐々に数を減らしてはいた。だが最後、少女達の背後に控える巨大な戦車を含め、彼女らをどうする事でこの戦いを終わらせるつもりなのだと厳かに問う菘。
『そんなの……もしかしたら伏兵がいるかもしれないし、そうしたらやる事だって変わっちまう。何をする、とかパッと決めるのは難しい……』
「確かにな。で、どうする?」
 そんな事は問題では無い。結論さえ決まれば過程は如何様にでもなる。それが肝要なのだ――それさえ理解していれば、やるべき事は絶対にブレたりはしない。
「ヤバそうになって、作戦を切り替えるのは悪いことではない。それが咄嗟の思い付きではなく、状況変化を想定して事前に考えてあった作戦であればな」
 故に準備が大切なのだ。瞬間瞬間で最前手を打ち続ける事など早々出来る事ではない。だからこそ目標を定め、それに沿って全体で動く――そうしなければ、生き残れないのだとキマフュのFPSで教わった気がしたのだ。
『……俺は』
「頭から煙が出るまで考えるがよい! 此度のバトルはどうしたいのか!」
 にゅっと身体を引いてアイカワを見下ろす菘。その時、空を裂いて巨大な砲弾が再びアイカワへと迫る。動きを止めて会話をしていたから――とはいえ、余りにも無粋!
「――邪魔をするな!」
 菘の咆哮と共に空間が大きく揺れる。その圧がどす黒い闘気の槍となって、砲弾の飛ぶ方角を穿つ様に放たれた!
『あ……』
 見上げたアイカワが見たものは、菘の闘気に撃たれて再び動きを止めた戦車の姿。ああ、そうか。アレを破壊する事が目的じゃない――だったら、やるべき事は決まった。
「ではな。精々生き足掻くがよい。健闘を祈る!」
『ありがとうな、蛇の姉ちゃんよ』
 フン、と鼻を鳴らして菘はその場を去っていった。獣の浅知恵はこれで喰らい尽くしただろう。後はその賢い頭を使って――成すべきを成すといい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

無間・わだち
毛皮狩って
何と売買するんだか
戦車が動かないうちに終わらせよう

アイカワさん
アライさん達に戦い方を教えてあげましょ

きっと集団戦そのものには手馴れている
けど、互いに助け合う戦法は
覚えてこなかったんじゃないか

アイカワさんの目に見える範囲に
確実に一人は弱った敵が居る筈です
そこから全員で落としていけば
問題なく対処できます

今なら彼らもあなたの指示に従う
逆に敵には指示する者も居ない
落ち着いて崩していけば
これくらい、全滅させられます

孤立しそうな者が居れば
それとなくラムプを振って
敵から対象への意識を散らす

動物達の防御や回避が本当に間に合わない時だけ俺が庇います
そんな武器にも満たないガラクタじゃ
痒さすら感じないよ



●手を取り合って
「毛皮狩って――何と売買するんだか」
 無間・わだち(泥犂・f24410)は遠巻きに煙を噴いて鎮座する戦車をみやり、薄く目を閉じる。先の攻撃で砲塔が壊れたのか、高々と主砲は天を仰いだまま微動だにしていない。
「……戦車が動かないうちに終わらせよう」
 そしてそれはアイカワ達も同じか。戦車には目もくれず、散らばった少女達を一人ずつ追い回しては、片っ端から全力で攻撃を加えていた。だがそれだけでは余りにも効率が悪い――既に息絶えかけて転がっている者が幾人もいるが、数は敵の方が未だに優勢。
「行こうか」
 この先ずっと、彼等が生き延びる事が出来る様に。

『アニキ! ちょっと、休憩……』
『休んでる場合か! 各個撃破で順に退治! まだまだいっぱいいるんだ――』
『アニキ!』
 多少くたびれてクシャッとした感じでとぼとぼ続くアライグマ達を叱咤したアイカワを、不意に黒い影が襲う。疲労が一瞬の判断を鈍らせた――逆手にナイフを構えた少女が、残骸の影からその腕を伸ばした刹那、黒い影が間に割って入った。
「アイカワさん、大丈夫?」
 バチバチと帯電した斑模様の細腕が、少女の腕を取り上げる。閃光の如きスピードで現れたわだちはそのまま捉えた腕をぐるんと捻り、その場に少女を押さえ込んだ。
『あ、ああ……助かった』
 間一髪、命の恩人に謝意を告げたアイカワはそのまま向き直り獲物を探す。だがそれを続けていては――そっと耳元に顔を寄せて、わだちはアイカワに提案した。
「ねえ、アライさん達に戦い方を教えてあげましょ」
『戦い方? アイツらは十分戦ってるぞ!』
 即席とは言え仲間の働きぶりをけなされたと思い語気を強めるアイカワ。そうじゃない、やる気じゃ無くて手段の問題だよとわだちが優しく諭す。
「あなた一人で戦っている訳じゃないんだ。それに今なら彼らもあなたの指示に従う」
 集団戦は皆で徒党を組んで一斉に掛かるだけじゃない。狩りをするならば獲物を的確に追い込まなければ――そうすればより確実に、敵の首を狙えるのだから、と。
「逆に敵には指示する者も居ない。落ち着いて崩していけば――これくらい、全滅させられます」
『そこまでするつもりは無い。戦術目標はこの地域の奪還だ』
 血を見たい訳じゃあないんだ、と続けるアイカワ。その為に全滅させなければならないのだとしたら止むを得ないが……そう言いかけた時、わだちがすっと立ち上がる。
「ならば、アイカワさん。少しだけ手伝おうか」

『アライさんとアライくんは二人一組で止めを刺せ! アライちゃんは俺と一緒に来い!』
『『『YEAAAAAAAAAH!!!!!!』』』
 改めて立て直した作戦――それは、アイカワが囮となり、アライちゃんが追い立て、アライさんとアライくんで止めを刺すフォーメーション。そうすれば最小の労力で一人ずつ、確実に倒す事が出来る。だが群れの数が減った分、敵の奇襲が怖い所――だからこそ。
『羊さんたちバラけたね……チャンスかも!』
 戦力の分散を好機と見なした少女も残る仲間を集めて奇襲部隊を編成する。狙うはアライさんとアライくん――素人っぽいアライグマだけなら何とかなる! 手にした白刃をそっと隠して小柄なアライグマに近付き音も無く振り抜いた。だが。
「そんな武器にも満たないガラクタじゃ、痒さすら感じないよ」
 華奢ながら剛健なその腕は易々と刃を通したりはしない――ラムプの灯りに惑わされ、あらゆる痛みを耐え退けるわだちに突き立てられた刃はそれ以上動く事は無い。それをくるりと返して、わだちは少女の鳩尾に銃把を振り当てる。
「殺さないよ、リーダーの指示だから……」
 だから、早々に立ち去れ、亡者ども。のたうちながら離脱する少女達に目を細め、わだちはぼそりと呟いた。願わくばその甘さが、命取りにならない様にと。

成功 🔵​🔵​🔴​

臥待・夏報
刈るの……?
狩るんじゃなくて……?
まあ確かに、お腹冷えちゃいそうな格好のお嬢さん方だけども。

アライさんくんちゃんも心を入れ替え……てはないのかもしんないけど、一緒に戦ってくれるんだね。
アニキの元なら、君たちはもっとビッグになれる。
みんなは先陣を切って、でも肝心なところはアニキに譲って立てることだ。

……アイカワくんは、
彼らが譲ってくれたタイミングをちゃんと見て、巻き込まないように気をつけながら電撃をお願いね。
アニキの威厳を見せつつも、ちゃんと子分にも花を持たせること。
だって、そのほうがお互いラクできるだろ?

よーし。
密猟者をやっつけたら怖いものなしだ。
そうしたら、一緒にもっと楽しい遊びをしようぜ。



●ハートに火を点けろ
「刈るの……? 狩るんじゃなくて……?」
 臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は訝しんだ。どっちなんだ。そもそもこれから更に暑くなる……まあ確かに、お腹冷えちゃいそうな格好のお嬢さん方だけども、そういうガラとは到底思えない世紀末ファッションリーダーじゃないかな。にしても、だ。
「アライさんくんちゃんも心を入れ替え……てはないのかもしんないけど、一緒に戦ってくれるんだね」
 奇声を上げてどっかんどっかん得物を振り回すアライグマの背後にそろりと忍び寄り、ノールックで影からこそこそと彼等を狙う少女へリボルバーを放つ夏報。大丈夫、致死性じゃないから。何も覚えちゃいないだろうけど。
『あ、あんだぁ……?』
「アニキの元なら、君たちはもっとビッグになれる。みんなは先陣を切って、でも」
 突如現れた夏報に小首を傾げつつも、その言葉に孕んだ超常が『その通りだ』とアイカワへ感じた意識を肯定させる。そうだ、こんな肥溜めみたいなところは抜け出して、ゆくゆくは……。
「肝心なところはアニキに譲って立てることだ。そう考えればいい。無茶はしなくていいんだよ?」
 アニキと共にこの世界で成り上がる。もっとビッグに! その為には目の前の奴等を倒し、この街を取り戻す。少女達も残り僅か――高揚したアライグマのウォークライが戦場に木霊した。
『な、何だァ!?』
「……アイカワくんは、彼らが譲ってくれたタイミングをちゃんと見て、巻き込まないように気をつけながら電撃をお願いね」
 突如猛り始めたアライグマ達に面食らったアイカワ。その横からスッと顔を出した夏報が、アイカワへと耳打ちする。囮作戦は上々。しかし彼我の戦力比が逆転した今こそ、全力を投じて敵を叩く時だ。
「アニキの威厳を見せつつも、ちゃんと子分にも花を持たせること。だって――」
 見れば後詰のアライさんとアライくんも前に出て、アライちゃんと一緒に少女を追い掛け回している。恐いくらいの奇声を上げて得物を振り回す姿を見やり――少女が動きを止めた直後、おあつらえ向けに身を引いたアライグマ達のど真ん中に、必殺の電流をバチバチと浴びせてやった。
「そのほうがお互いラクできるだろ?」
 確かに、彼等の働きぶりに感謝しつつも自らの手で始末する――最大火力はこちらの方が上だし、何よりも夏報の言葉には並々ならぬ説得力があった。何故ならばこれは、そういう超常だから。
『ああ、あと一人だ……やってやるよ』
 戦術目標は敵の駆逐。戦闘能力を奪われた数多の少女達は動かぬ戦車を放置して続々とその身を引いていた。最早部隊の体も成してはいない――夏報の導きに従って、荒ぶる動物達は遂にニシカサイ・エリアの奪還に成功したのだった。

「よーし。密猟者をやっつけたら怖いものなしだ」
 にこやかに笑みを浮かべて、一仕事終えた動物達を労う夏報。流石に一日中走り回っていたのだ。アイカワにも、アライグマ達にも並々ならぬ疲労が感じられる。だが怠け者の羊に率いられた荒くれ者達が、恐るべきオブリビオンの魔の手からこの街を救ったのは明白――猟兵自ら手を下さず、自分達の力だけでそれをやり遂げたのだ。それは彼等の自信へと繋がり、そして次代への芽吹きとなる。
『そうだ。もう怖くはない……大丈夫だ、ありがとう』
 ぺこりと謝意を述べて、自らのホームへ戻らんとするアイカワ。その後をアライグマ達が追って――彼等の背を追う様に、夏報が再び声を掛ける。
「アイカワくん、お疲れ様だ。この辺りもきっと平和になるだろう」
 銃声も悲鳴も咆哮も無い静寂の中に、澄んだ声が響き渡る。
「そしてこの世界も――やがて平和になる。君らが頑張っているからね」
 この声は術ではない。ただこれまでを見て来て思った事を少しだけ言葉にしているだけ。荒んだこの世界のごく当たり前の日常を見て、感じた事を。
「そうしたら、一緒にもっと楽しい遊びをしようぜ」
『ああ。ただジンギスカンは遠慮しとくよ』
 俺は草食系だから。のんびりと返したアイカワに夏報は口端を綻ばせる。
 かくして、新たなリーダーの誕生と共に、ニシカサイ・エリアの鎮圧作業は無事終結した。来るべき時に備え、世界は変わりつつある――これまでも、そしてこれからも。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『孤立者移住支援』

POW   :    瓦礫の撤去や、扉の破壊など捜索に必要な力仕事を行う

SPD   :    孤立者の居場所を特定したり、シェルターの扉の鍵を開けたりする

WIZ   :    孤立者を説得して移住に合意させたり、移住先の住民との交流を促進する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●帰還者たち
『ここがギョウトク・エリア……』
 アイカワら荒くれ動物達は休息を挟んだ後、孤立した人々が多数いると言われるギョウトク・エリアへとやって来た。
『とりあえず旧市街へ向かうか。それにしても』
 海岸沿いに到達したギョウトク・エリアは瓦礫に塗れた廃墟も同然だった。ホテルや警察署だった残骸。ガソリンスタンド跡地は既に略奪し尽くされ、最早そこに人影はない。だが、所々に車両が通過した跡や真新しい足跡がある。誰か氏らが近くに住んでいるのだろう。
『本当に誰か、住んでいるのか?』
 思案するアイカワ。兎に角人々と接触する為に、この廃墟を進まなければならない。

『誰かいるみたいだけど……瓦礫を退かせられればなあ』
『引き籠ってる奴もいる……扉ブチ破るか?』
『何か警戒の匂いがするな。話出来りゃあいいんだがよ』
 先立って偵察に出たアライグマ達が口々にアイカワへ報告を。成程、要はここいらで生活してる連中と話付けてこっちへ引き込めってか。幸い大きな戦がすぐに始まるとは思えないが、来たるべき時に向けて準備は常に進めなければならない。
『分かった。じゃあお前ら、もっかいそこ行って仕事してこい』
『『『マジですか僕らコミュ障ですけど!?!?!?』』』
『しっかり合わせてんじゃねえよッ!!』
 群れてれば調子のいい奴らだが一人になると途端にこれだ。だがこれからはリーダーとして、彼等をしっかり率いていかなければならない。その為には辛い指示を出さなければならない事もある。
『……えー、というわけで、ですね』
 そしてアイカワがちらりと猟兵を見やり呟いた。
『ちょっとだけアイツら、助けてやってくんねえか?』

※注意
・プレイングはフラグメントに沿って貰えれば大体何とかなります
・フラグメント外の自由な選択も大歓迎です
・アイカワは一緒に行動し、大体のプレイングに沿って動きます
・プレイング募集は現在より。他、オープニングコメントに準じます
フィーナ・ステラガーデン

(全体的によりダメな子を見ての反面教師とアライグマにフィーナの面倒を見させ答えを出させる)
あのアライグマ達を助ける?なんで私がそんなことしなきゃならないのよ!

まあいいわ!扉を退かせばいいのね?わかったわ!全部ぶっ飛ばしてやるわ!(魔力溜め)(不穏な空気を感じて止められる)
何よ?引きこもってる奴が巻き込まれる?形あるものはいずれ崩れるというやつね!諸行無常といってもいいわ!

じゃあどうすりゃいいのよ!話して説得?でっかい声で話しすりゃ聞こえるんじゃないかしら!
「中の奴ー!聞こえてるかしら?2秒以内に出てこなきゃ全部ぶっとば(止められる)」
何よ?余計警戒される!?じゃあどうすりゃいいのよ!!



●アレなるもの
「あのアライグマ達を助ける? なんで私がそんなことしなきゃならないのよ!」
『一体全体何しに来たんだよ!?』
 フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は三度激怒した。この理不尽な世界に、暴力に、そしてよく分からない業務内容に。
「そりゃあジンギスカン食べに来たのよ」
 そもそも羊をどうにかしろというから喜び勇んでフォークとナイフを握りしめ馳せ参じたというのに延々とお守りを続けなければならないとは一体どういう事なのよ! とアイカワへ思いを吐露するフィーナ。
『後生だからそれだけは……』
 この御方のご機嫌を損ねるとヤバい事は先の戦いで十分承知していた。もう一度、アライグマと共に今何をするべきかを淡々と説明するアイカワ。目的は交流を断っているここの住民の心を開き援助する事。その為にはまず、目の前の物理的な障害を突破しなければならない。
「まあいいわ! 扉を退かせばいいのね? わかったわ!」
 そう言い一歩前に出るフィーナ。手にした杖に魔力を込めて、すうと静かに息を吸う。魔法でここの扉を開こうというのか――緊張の面持ちでその動作をつぶさに見やる動物達。
「全部ぶっ飛ばしてやるわ!」
『どうしてそう極端なんですかやる事成す事!』
 目標をデストロイしたら目的を達成出来ないでしょ!? 焦るアイカワを見てアライグマは察した。ああこれはあかん奴だ、と。
「何よ? 引きこもってる奴が巻き込まれるって?」
 んなこと気にしてたら世界は救えないわ。多少の犠牲はつきものだ。鼻息荒く魔力を溜めるフィーナを、必死の形相でアイカワは止める。
「邪魔しないで! 戦わなければ生き残れないのよ! 祭の場所はここよ!」
『これじゃカーニバルじゃなくてカタストロフだ!』
 正にヒューマノイド・オブリビオン・ストーム――暴れるフィーナを何とか宥めて、アイカワがひたすら言葉を続ける。それ以外の方法で何とか業務を進めなければならないのだ――ああ、マイハマの大将達もこんな気苦労をずっとしていたのだろうか。そんな思いが脳裏を過って。
「形あるものはいずれ崩れるというやつね! 諸行無常といってもいいわ!」
『解体現場は今度紹介するから! しますから!』
「じゃあどうすりゃいいのよ!」
 無情で無慈悲なのはアンタだけだよ……と無言で見つめるアイカワの横で、最早凶暴さも鳴りを潜めたアライグマが、ここに来て恐る恐る口を開いた。
『あの、説得して開けてもらうとか……』

「中の奴ー! 聞こえてるかしら? 2秒以内に出てこなきゃ全部ぶっとば」
『これ以上いけない! これ以上いけない!』
『誰か救急車! 黄色いの!』
「あんたが先にブッ飛ばされたいかしら!?」
 これじゃ説得じゃなくて脅迫だ。恐怖が場を支配し、無法のエリアに暴力という名の法が君臨しかけ、慌てふためく動物達が必死の形相で魔女を宥める。
「何よ? 余計警戒される!? じゃあどうすりゃいいのよ!! どうしたいのよ!!!」
『出てきたくなる様にする、とか?』
『外は危なくないから大丈夫、みたいな』
「なら私がいるから安心ね!」
『『どこがだよ!?!?!?』』
 厳重な扉の前に居座って、ぎゃあぎゃあとすったもんだを繰り返す三人。何にせよ暴力沙汰だけは断固止めなければ……怖いけど。そう、暴力では何も解決しないのだ。そういう事がよく分かった。
『……五月蠅いっすよ、さっきから』
 不意に、聞き慣れぬぼうっとした声が聞こえた。いつの間にやら扉が僅かに開き、その隙間から人間の若者がこちらをじろりと見返していたのだ。
『……何、アンタら?』
 不審な挙動に目を細めて、フィーナらをじろりと一瞥。どうやら危なそうだが危険ではないらしい――一体誰なんだ、と訝しげに問いかける若者。
「ほらね!」
『苦情じゃねえか!』
 さも計算通りと言わんばかりに胸を張るフィーナ。違うそうじゃないと返すアイカワ。その横で粛々と若者に話しかけるアライグマ。そもそも孤立者の救援が目的だった筈――その事を懸命に伝え、ようやく理解を得る事が出来た。
『へー……大変っすね』
『ええ、まあ……』
 取り急ぎ拠点との連絡手段を確立し、継続的な相互扶助の契約を交わす一方で、魔女と羊は相変わらずバチバチとやっていた。きっとこれが終わった後魔女は『すべて計算通りだった』と言うのだろう。もうどっちでもいいよ……と、アライグマは心底思った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
よーし!
友達百人できるかなー!

なんて必要は全然ないからね。
てか、友達を数で考えちゃ駄目だよな。
三人(匹?)くらいがちょうどいいと思わない?

【POW】
夏報さんも昔はこういうの苦手だったけど……
仲良くしようとか、心を開こうとか、気張りすぎると駄目なんだよ。
淡々とやるべき作業をやって、丁寧にマニュアル対応する。信頼なんて案外、その積み重ねで生まれるものさ。
避難民をカボチャだと思えってやつだね!
(……アライグマってカボチャを洗って食べたりしないよな?)

って感じで指導してきたよアイカワくん。
……『指導』なんて偉そうに言ったけど、これだって全部、上司や本の受け売りなんだ。
そんなもんだよ。
できるできる。ね?



●アイを紡いで
「よーし! 友達百人できるかなー!」
『いや百人なんて……無理ぽですよ……』
 警戒する避難民の輪へ恐る恐る近付くアライグマの前に、臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)がそろりと現れた。
「……なんて必要は全然ないからね。てか、友達を数で考えちゃ駄目だよな」
 ニコニコと笑みを湛えてアライグマを撫でる夏報。一生懸命人々に話しかけてはいるものの、いまいち成果が上がってない感じだった。
「三人……くらいがちょうどいいと思わない?」
 いや、匹か? まあいいや。丁度仲の良い彼等の数に合わせて言葉を繋げる。そんな夏報の言にこっくりと頷くアライグマ。一人は嫌だけど、多すぎるのも苦手だ――何より、知らない人と話を付けること自体が、とてもハードルが高い。
「実は、夏報さんも昔はこういうの苦手だったけど……」
 意外な言葉にアライグマは目を丸くした。ずっと一緒に、色んな場面で助け舟を出してくれた彼女だ。さぞ話し上手の聞き上手かと思いきや――初めからそうでは無かったらしい。
「仲良くしようとか、心を開こうとか、気張りすぎると駄目なんだよ」
 それこそ、たった今アライグマがやっていたような必死さは却って逆効果。そういう事を押し付けてはいけないのだと夏報は諭す。
「淡々とやるべき作業をやって、丁寧にマニュアル対応する。信頼なんて案外、その積み重ねで生まれるものさ」
 だからこそ、そういうマニュアルが生まれたのだと。そうしてコツコツと積み上げれば、おのずと信頼は目に見える形となるのだから。
「ま、避難民をカボチャだと思えってやつだね!」
 そう結んで、夏報はその場を後にした。所でアライグマってカボチャを洗って食べたりしないよな? まあ、大丈夫でしょ。

「――って感じで指導してきたよアイカワくん」
『避難民を食えと』
 違うそっちじゃない信じて、と僅かに目元を潤ませてアイカワへと報告する夏報。一人ずつしっかりとレクチャーし、遠目に見れば最初の頃より大分マシになった風に感じられた。これならば本日中にやるべき事は大体終わらせられるでしょ、と胸を張って、夏報は話を続ける。
「……まあ『指導』なんて偉そうに言ったけど、これだって全部、上司や本の受け売りなんだ。そんなもんだよ」
 本? 世界がこうなる前には巷に溢れていたらしいが――成程、そういう媒体で人間は知識を伝播させていたのか。上司は……静かな猿だったから、余りこういう話はしたことが無かったな。思案するアイカワを不思議そうに覗き込む夏報に気付き、慌てた様子でアイカワが言葉を返す。
『ありがとう。正直どうすれば良いか……悩んでいたからな』
「そんな顔をしていたら眠れなくなるよ?」
 おどける夏報に笑顔で返すアイカワ。示してくれた様にこれから自分が為すべき事は分かったから、後はそれらを続けるだけ――ただ。
『本当に、俺に出来るだろうか?』
「できるできる。ね?」
 君ならば、やろうと思った時点で答えはもう出ているのだから。ポンポンと膨れた羊毛を叩いて、夏報はその場を後にした。これで彼は、きっと大丈夫だろう。
「では、良きしゅうまつを」
 これで来たるべき日も、必ず乗り越えられるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
はっはっは、群れねば弱気というのは悪くないぞ、可愛いものよ!
まあ肩の力を抜いていこうではないか
お主らと同じくらい、廃墟に棲む誰かも、不安な心境であろうからな

いや、このままでは困ったときに突然現れ、的確な助言をして去ってく謎キャラっぽくない?
ちゃんと物理的にもデキるのをアピールせんと!

とゆーことで、物理的な壁は取っ払ってやるとしよう
瓦礫なんぞ軽いものよ! ほ~れ、ひょいひょい取り除いていくぞ!
もっと観客が多くてアガってれば、ビルを丸ごと動かせるからな? マジで!

それとアイカワよ、指示出しするときは何か一言添えるのもテクニックであるぞ?
実は無茶振りでも、話し方次第ではその気にさせるのも可能なのだ!



●蛇の神託
「はっはっは、群れねば弱気というのは悪くないぞ、可愛いものよ! まあ肩の力を抜いていこうではないか」
 あ、良い事を云う人だ。瓦礫の撤去作業を続けるアイカワ達の前に現れた御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)の姿に、アイカワはほっと胸をなでおろした。
(あれ、何か雰囲気違くない? なんでこんな安堵されてるの我?)
 まあいいや、と菘はひょいと瓦礫を持ち上げ粉々に砕く。何も難しい事ではない。数多の世界を旅し続けた菘にしてみればこれくらいの事は朝飯前だ。その力強い姿に感嘆の声を上げる動物達。いやだから何か違くない? 妾はもっとこう何ていうの――厳かさ? 蛇神っぽさ? いや敬われてそうだけど、何か違う、そうじゃない感が菘の脳裏を過る。
「お主らと同じくらい、廃墟に棲む誰かも、不安な心境であろうからな」
『集合! 皆この方の話を聞くんだ!』
(いや、このままでは困ったときに突然現れ、的確な助言をして去ってく謎キャラっぽくない?)
 そうか、そういう事か。確かにこれまで妾は危機に現れる謎のアドバイスマンになってたっぽい。こんなコンクリ塊をクシャッとした所で誰も本来の意図を見ちゃいない事に気付いた菘は即座に演出プランを変更する。ちゃんと物理的にもデキるのをアピールせんと! このままではただの良い蛇になってしまう……それだけは何かこう、避けなければ。
「瓦礫なんぞ軽いものよ! ほ~れ、ひょいひょい取り除いていくぞ!」
 言うと共にのたうつ巨大な尾で身の丈以上の瓦礫を締め上げ、瞬く間に粉砕する。玉砕上等で剥き出しの鉄骨を闘気を浴びせて粉々に砕く。その一挙手一投足に静かな感嘆の声が沸き上がり――ええい、もっとこう何というか、大喝采的なモノは無いの!?
「もっと観客が多くてアガってれば、ビルを丸ごと動かせるからな? マジで!」
『マジか、ヤバいな』
『ヤバいサンだな……』
『流石だ……』
 腕を組みざわめくアライグマ達。何かのカンファレンス会場ですかここは! ステージが温まらない! やや離れた所でぼうっと菘の雄姿を眺めるアイカワへ、のっそりと近付きそっと言葉を投げる菘。こういう時はオーディエンスをも巻き込むのが一流よ。
「それとアイカワよ、指示出しするときは何か一言添えるのもテクニックであるぞ?」
『えっ? あっハイ』
 生返事を返す羊をぺちぺちと尾の先端で叩き言葉を続ける菘。それでもめげずにアイカワへと言葉を続ける。
「実は無茶振りでも、話し方次第ではその気にさせるのも可能なのだ!」
『それは一体、どんな』
 無茶振り。確かにジンギスカンとか――いやあれはどちらかと言うと脅迫の類だろう。そんな都合よく人の心は動かせるのか? 訝しみながらもアイカワは真剣に菘の言葉に耳を傾け始めた。
「うむ、例えば……アライグマ諸君よ! どうしたもう終わりか?」
 ふと気づけば、アライグマ達は腕を組んでウンウン唸りながら菘の雄姿を眺めていた。その間仕事はしていない――完全に菘に頼りっぱなしの形になりつつある。それはいけない。
「眺めてるだけでは仕事は終わらんぞ。それに夜になれば危険な野生ヤンキ……生物が巷に溢れる! 終わらなければここから帰れぬが、果たして出来るかのう?」
『それは危ないのだ……』
『てか俺ら揃ってれば大丈夫じゃね?』
「貴様ら揃って鍋の具にされるぞ? ここらの地下は冷房も効いてるらしいからの」
『夏なのに、何と恐ろしい……』
『鍋なんて……貴族かよ!』
『いや貴族って鳥だろ。看板落ちてるし』
「どちらにせよ食われる事に変わりはない」
『さ、さあ仕事に戻っぞ!』
 ちなみにそんな危険な外来種はとうの昔に駆逐されている。だがそれも方便、きっちり働かすには虚実を混ぜて、彼等をその気にさせれば良い。現にアライグマ達はそそくさと持ち場に戻り、一生懸命働き始めたのだから。
「……とまあ、こんな所だ」
『流石だな、本当に』
 いとも容易くアライグマ達の心を操った菘の手腕に感嘆の声を上げるアイカワ。
「だが、使い過ぎは禁物だぞ? メッキが剥げれば効果は二度と発揮しない――気を付けたまえ」
 ずるりと尻尾を這わせて、菘がゆったりとその場を後にした。
「ではな。これからの健闘を祈る!」
 地を揺らし蛇が跳ねる。その姿を見て、アイカワは心の中で敬礼した。清濁併せ持ち人々を導く――今の自分なら、そんな事も出来る様な気がした。彼女の様に。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
瓦礫を【怪力】で運び、大きなものは『with』で砕きながら
アイカワさんとお話ししたいです

…アイカワさん知ってますか
実は私もコミュ障なんです
相手の本当の思いなんて、絶対わからないと思うから
誰かと関わるのは、本当は怖いんです

でも、1人で生きていくのは、きっと難しいとも思います
少なくとも私は、絶対に無理です
私の場合はこの『with』が拠り所

そんな、誰かの拠り所になる存在に、アイカワさんはなれると思います
私たちは、ほんの少しお手伝いさせて頂いただけ
ここまで来れたのは、アイカワさんの力です
だってほら、みんなアイカワさんを信じてついて来てくれてる
アイカワさんなら、ここの人たちの心も、きっと開けますねっ



●ハートの鼓動
「……アイカワさん、知ってますか?」
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)はアイカワと共にがれきの撤去作業に勤しんでいた。これまで本当に色々な事があった。指導に戦闘、そしてお話。一つ一つは小さな事ばかりだが、決して楽な事では無い。ましてや猟兵では無い普通の賢い動物にしてみれば、一歩間違えれば命を落としかねないモノばかり――だがそれも、今日で終わる。
「実は私もコミュ障なんです」
『いやいきなり知ってるかって言われても知ってるわけないよね!? って、意外だな……』
 にこやかな表情を崩さずに淡々と続ける結希の突然のカミングアウトに、アイカワは面食らった。少なくとも人当たりも良く、面倒見の良かった彼女がそんな事を考えていた……なんて、そもそもこれまでのアイカワでは思い巡らす事も出来なかったから。
「相手の本当の思いなんて、絶対わからないと思うから――誰かと関わるのは、本当は怖いんです」
 ああ、それはよく分かる。だから敢えて距離を置いて、一人で黙々と生きようとしていた――かつての自分は、間違いなくそうだった。いや、本質的には今もそう変わらないのかもしれない。
「でも、一人で生きていくのは、きっと難しいとも思います。少なくとも私は、絶対に無理です。だから」
 それも、分かる。俺も、あいつらも、きっと一人だけで生きていく事なんて出来やしない。そんなに強くないし、世界も優しくはない――そういう事は、ここ数日で嫌という程に知ってしまったから。
「私の場合はこの『with』が拠り所――『with』があれば、どんな時でも絶対に大丈夫やと、そう思えるんです」
 一際巨大な瓦礫を破砕した漆黒の大剣をそっと撫でて、結希が顔を綻ばせる。本当に、心の底から大切と思える相棒――そんな気持ちが、よく分かる。
「そんな、誰かの拠り所になる存在に、アイカワさんはなれると思います」
『俺がか? 買い被り過ぎだろう』
 そう励まされた羊は何やら照れ臭そうに結希から視線を逸らし虚空を眺めた。誰かの為に何かをする――ずっと前の戦いでは、ひたすら自分が生き残る事だけを考えていた。他人を使ったのもその為だ。やってる事がそう変わらないとしても、この前とは中身が全く違う。今はもう、自分だけの為に何かをする、なんて考えは思い浮かばない。それは確かだ。
「私たちは、ほんの少しお手伝いさせて頂いただけ。ここまで来れたのは、アイカワさんの力ですよ」
『それは……あいつら自身の力だろう』
 決して自分一人だけでは、ニシカサイの戦いは勝てなかった。的確な連携が戦線を維持して、圧倒的な戦力差すら覆す事が出来た。それは猟兵達と、あのアライグマ達――細かな瓦礫を運んではせっせと遠くへ捨てている彼等――のお陰だ。しかし改まるアイカワへそれでも、と結希が言葉を重ねて。
「だってほら、みんなアイカワさんを信じてついて来てくれてる」
 それはあなただったからだよ、と。あなただったから、皆が付いて来てくれたんだと笑顔で返す結希。
「だから……アイカワさんなら、ここの人たちの心も、きっと開けますねっ」
 言葉と共に最後の瓦礫が真っ二つに割られた。これで少しはこの辺りも過ごしやすくなるだろう。時間は掛かるかもしれない――それでも、アイカワならきっと出来ると力強く結び、ウロチョロと動き回るアライグマを呼び止める。
『……ありがとう』
「えっ?」
 ぼそりとアイカワが呟いた。ああ、やってみせると心の中で言葉を続けて、がらがらと瓦礫が積まれた猫車を押す。
 本当に、大変だった。でも――大変なのはこれからも変わらない。だがもう、一人じゃないんだ。自分だけじゃない、彼等も、ここの人達も。いつかの未来の為に、羊は心に勇気の火を灯し続けるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月10日


挿絵イラスト