まだみえない。もうみえない。ほんとう?(作者 みしおりおしみ
5


 期待しないで。望まないで。頼らないで。

 お願い期待しないで。私は期待なんて背負えない。
 お願い望まないで。私はそんな望み叶えられない。
 お願い頼らないで。私は頼りになんてならない。

 怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

 期待を裏切った時の瞳が怖い。
 望みを叶えられなかった時の溜息が怖い。
 頼られて、力になれなかった時の言葉が怖い。

 私は精一杯やった!!
 期待を裏切りたくなかった!
 皆の力になりたかった!
 頼りに応えたかった!

 だから、だから、だから、だから、だから!
 責めないで…。

 テストでは頑張って高得点取った。
 部活だって努力していい成績取った。
 友達にだって嫌われないようにしてる。

 ああ…それでもダメなの?
 責める声がする。責める視線を感じる。
 溜息が聞こえる。苛立った足音がする。

 なんで。なんで?
 頑張って頑張って頑張って頑張って頑張ってきたのに。もう頑張れない。
 努力して努力して努力して努力して努力してきたのに。もう出来ない。
 少しずつ。少しずつ。小さく。心がけずれていって…。
 ああ。
 もう。
 だめだ。


「皆様。UDC-HUMANと呼ばれる存在をご存知でしょうか?」
 緑髪の少女が微笑みを浮かべたまま、あなた達に問いかける。
 知らない方もいるでしょうから。と続けられた説明を纏めれば、
 UDC-HUMANとは人がUDC怪物に変貌してしまった存在である。
 変貌の理由は悲劇。つまり心を追い詰められた人物がなる。
 そして、変貌直後であれば元に戻せる。救えるかもしれない。
「御理解頂けましたでしょうか。それでは、今回のお話に移りましょう。」
 彼女が手を差し出すと幻想の蝶が溢れ出し、一つの光景を映し出す。
 それは暗い、月さえ望めない曇天の夜の光景。
 だと言うのに赤く、紅く、目に焼きつくほど鮮烈な川の色。
 人気の無い橋の上。そのような光景であった。
「救って頂きたい方は依里坂・依頼(よりさか・いより)という少女です。」
 父子家庭であるが、勉学と部活に取り込む明るい少女。
 彼女が橋から飛び降り死のうとする。
 そして、その心に引き寄せられたのか。それともただの偶然なのか。
 彼女はUDC-HUMANになろうとしている。
「今はまだ、ただUDCの皮を被っている状態にすぎません。
 ですので、皆様ならまだ選べます。」
 どう救うのか。それとも救わないのか。
 彼女はまだ欄干を越えていない。まだ、向こう側には行っていない。
「とはいえ、彼女を止める以外にも問題は二つあります。」
 一つ目は、UDC-HUMANを呼び水にしたかのように沸いた邪神の分霊。
 取り込もうとしているのか、彼女の周囲に二重三重に取り囲んでいる。
 黄昏を映したかの様な赤い川の色も彼らのせい。
「そして二つ目。彼女が死を選んだ原因。」
 彼女を追いこんだ誰か。
 追い詰めた誰か。
「それは彼女自身です。」
 彼女の友人達は頼り過ぎず、頼り失敗したとしても失望も責めもしなかった。
 教師や顧問にとって彼女は模範足り得る生徒であり、
 同時に失敗もする他と同じ一生徒であった。
 父親は、仕事と家事で忙しい自分を暇があれば手伝う娘に感謝していた。
「正確にいうのなら、彼女の在り方でしょう。」
 どれだけ出来たかより、どれだけ出来なかったか。
 上があるのなら、なぜ届かなかったのか。
 成功よりも、失敗に目を向ける。
「すでに事故で亡くなっていますが、母親の影響のようです。
 今まで生活し、磨き、形成してきた彼女自身の形ですから、
 それを変えるのは容易ではないでしょう。」
 それでも言葉をかける選択をするのであれば、それはあなたの選択です。
「解決方法としては、UDC組織に頼り保護し、死亡を偽造するのが楽でしょうね。」
 競争社会は地雷がたくさんでしょうし、ね?
「けれどそれはあくまで手の一つでしかありません。
 皆様であれば、私が想像できない解決の仕方をお持ちかもしれませんから。」

「では、皆様に良き選択を。」


みしおりおしみ
 2作目です。
 集団戦ボス戦日常。

 なんでシリアスかなー。
 UDC-HUMANに関してはまだその者ではない感じです。
 なりかけ。

 3章に関しては例は出しましたがそれの則る必要はありません。
 一例ですので。
 止めたし買い物行くかーとかでも個人的には?
 その場合は例に出した解決方法の通りになります。
4




第1章 集団戦 『黄昏の救済・分霊体』

POW ●あの浜辺でみんなが待っている。痛みを得た君を。
【輪郭の内側から押し寄せる血色の波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を亡者の這い出る黄昏の浜辺に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD ●その痛みが、君の生きている証。痛みこそ命の意味。
【子供のような笑い声と共に皆で踊り狂うこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【地形ごと黄昏の浜辺に取り込ん】で攻撃する。
WIZ ●苦痛に満ちたあの浜辺で。さぁ、一つになろう。
【激痛を呼び覚まし、法悦に変える赤い雨】を降らせる事で、戦場全体が【輪郭の内側と同じ、苦痛に満ちた黄昏の浜辺】と同じ環境に変化する。[輪郭の内側と同じ、苦痛に満ちた黄昏の浜辺]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 橋の中程で、じっと川を見下ろす少女が一人。
 その周囲をふわりふわりと踊るように巡る人ならざる者。
 まるで黄昏の景色を切り抜いたかの様な薄っぺらな人型。
『おいで『こっちに『みんな』なろうよ『君も『ぼくの」黄昏に」きっと『だから「楽に」できるよ『一緒に」救って」わたしの「痛みを』君なら「追いで『出来るよ』
 人型たちは響く様な、拡がる様な、外から聞こえる様な、頭の中から聞こえる様な不可思議な声で口々に誘う。
 ひらり、ひらり、ひらりと彼女の周囲を巡りながら彼女の背中を押す。

『『「『さぁこっちへおいで。君も黄昏の浜辺へ。一歩踏み出せば君もできる!」』」
黒鵺・瑞樹
アドリブOK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

何となく少し。わかるような気がする。
取り合えず取り巻きを倒さないと。きっと話はそれから。

敵に認識されない様、存在感を消し目立たない様に立ち回る。可能な限りマヒ攻撃を乗せた暗殺のUC五月雨で分霊体を攻撃。
同時に投げられるだけのマヒ攻撃を乗せた柳葉飛刀も投擲し、なるべく多数へダメージを、もしくはマヒを与え動きを制限するようにする。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは黒鵺で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものは激痛耐性、オーラ防御で耐える。
取り込まれには狂気・呪詛耐性で耐える。


    「あはは!」     「えへへ」
『うふふ』    「きゃはは!」
     「きひひ!』        『ひひひ!』
 幾つも幾つもの声が、笑い声が、囃し立てるように橋に拡がる。
 早く早くと急かす様に、見守るように、少女を仲間に入れようと黄昏の人型はその周りを巡り踊る。
『あれ?』
 人型の一つが立ち止まる。その正面に大振りなナイフが突き刺さった同じ人型が倒れていた。
 体を捩じる様にして周りを見渡せば、同じように倒れている人型と、異変に気付き周囲を見渡す人型が居る。
――シャコン…。
その視界の先でまた一体、どこからか投げられたナイフが突き刺さり倒れる。
「攻撃?」『襲撃ですか?』『猟兵かな?』「猟兵じゃない?」『猟兵しかいないでしょう?』「どこです?」『姿が見えないよ』「みあたりません」『捜しましょう』
「かくれんぼ?」『鬼さんどっち?』『鬼さんあっち』
 踊るのを止め、わらわらと襲撃者を探し始める黄昏の人型を陰から見やる人物。
「何となく少し。わかるような気がする。」
 存在を変えつつあるという少女の事を反芻し、その襲撃者たる黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は、柳葉飛刀をを手にしながらその様子を観察し続けていた。
 その視線の先で、瑞樹が隠れている場所とは全く違う方向からナイフが飛来し、また一つ人型が倒れた。
 彼のユーベルコード、五月雨によって自身の本体である刃が黒い大振りなナイフ【黒鵺】を複製し、そして念力で操作し自身の位置を悟られないよう別の場所から投擲していた。
(人型をしてはいるが、急所は人とは違う。ましてや獣とも違う。けれど…。)
 倒れている人型達をよくよく見てみれば、その多くは麻痺した様にピクリピクリと動いていた。が…。
 瑞樹が柳葉飛刀を投擲する。それは狙い違わず歩き回る人型へと突き刺さり、そして二度と動く事なく消えていった。
(観察していれば強い場所弱い場所は割れる。)
 倒れ動き続ける者と動きを止める者、その趨勢は数分もしない内に覆される。
 粗方、柳葉飛刀を投げ終わった頃、声が耳に届く。
『なんで邪魔する!「この子の心は痛がってる!』『だから仲間に入れる!」こんなに痛がってるのは…」『『とっても素晴らしいこと!!』」』
「痛いのは生きてる証拠!』『痛いのが命の意味!」
 とたん、わっと賑やかに。しかしそれは明るい喧噪ではなく狂った様な笑いの狂騒が響き渡る。
 見やれば、まさしく言葉通りに人型達は踊り狂いそして…“人型の一体を犠牲にして”橋の一部を地形ごと黄昏の浜辺に取り込んだ。
(俺が見つからないからって自爆攻撃…。あそこに切り込むのはやめだな。)
 そう結論付けると残っていた複製されたナイフと柳葉飛刀を一投も外すことなく投げ切り、そして見つかることなく退散していくのだった。
大成功 🔵🔵🔵

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

UDC-HUMANの話を聞いてからさ、
実はな、少し怖かったんだ。
「誰も悪くないのに被害者が出ちまったらどうなる?」ってね……
まさか、本当にそういうケースが出ちまうなんてよ。
けれども、まだ間に合うんだろう?
だったら!お前らみたいな「お迎え」は願い下げなんだよ!

止めろ。嗤うな。嘲るな。
彼女の苦しみを、悩みを。
その笑い声を思念で塞ぎ、浜辺の再現を押し止める。
その根源が狂気なら、耐性を持って思念の『衝撃波』を叩き込む。
いよりちゃんはな、お前らみたいに「薄っぺら」じゃねぇんだ。
そんな紛い物の救済じゃ、救われる筈はねぇんだ!
有象無象の雑魚どもが、散り去りやがれ!


「UDC-HUMANの話を聞いてからさ。実はな、少し怖かったんだ。」
 心を追い詰められた人間が、UDCへと姿を変える。多くの猟兵はそんな話を聞いた時、きっと追いつめた『誰か』を考えた。
 けれど彼女は、数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は…
「誰も悪くないのに被害者が出ちまったらどうなる? ってね……。まさか、本当にそういうケースが出ちまうなんてよ。」
 ただ運が悪かった。ただ偶然が重なった。ただ間が悪かった。
 ただ一人で抱え込み過ぎた。そんな、悪のいない事件。
 そんな、責める事の出来ない事件を想像した。
 そして今、彼女の視線の先にその存在を変えようとしている少女がいる。
 拳を握り締め、少女を誘おうとする黄昏の『救済』に隠れること無く叫ぶ。
「けれども、まだ間に合うんだろう? だったら! お前らみたいな『お迎え』は願い下げなんだよ!」
 人がUDCへと変わるなんて、オブリビオン化した友を送った彼女にとっては他人事などではない。
 そんな彼女の声に『痛み』を感じ取ったのか、黄昏の人型は誘われる様にひょこりひょこりと、ひたりひたりと顔を向け、近づく。
『どう「なぜ」して?』「素敵な事なのに」『彼女はきっと」「気付ける」『それが才能だって!』「貴方も痛そう』「あの子は命の意味を知ったんだ』
「貴女も『一緒に』「『なりましょう?』」
 笑い声が爆発する。甲高い子供の声。けれど決して楽し気で命の溢れる声なんかではない。狂いきった、子供の声をまねただけの奇声。
 その狂笑に喚起される様に多喜の周囲が黄昏の浜辺へと変わり行き、取り込まんとする。
「止めろ。嗤うな。嘲るな。彼女の苦しみを、悩みを。」
 素敵な事だなんて。素晴らしい事だなんて…。
 静かに、けれど強く否定するように呟き、拳を前に突き出し構え。
 多喜は睨むように正面を見、集中する。
 瞬間、彼女の思いを乗せた思念波が発され、浜辺への侵食を押しとどめる。
 カウンターパスト。
『存在の本質を捉える思念波』『記憶や経験を探査する思念波』
『精神や思考回路に干渉する思念波』を段階的に放ち、相手のUCに干渉する。
「いよりちゃんはな、お前らみたいに「薄っぺら」じゃねぇんだ。」
 悩み続け、今もまだ悩み続けている彼女は、決して痛みを受け入れたそれ等とは
 違う。
 まるで、エンジンの様に、鼓動の様に、思念波を黄昏の侵食に叩きつける。
「そんな紛い物の救済じゃ、救われる筈はねぇんだ!」
 痛みとしか見ないそんなものじゃ、絶対に。
 ユーベルコードにより人型の本質を捉え知覚し、顔を歪ませるもすぐに歯を噛み締め耐え、さらに力を籠める。
 思念波はギアを上げるように、込められた思いをそのまま表す様に強く、より強く発せられ黄昏の侵食を逆に削り始める。
「有象無象の雑魚どもが、散り去りやがれ!」
 大喝一声。その声と共に叩きつけられた思念波は黄昏の侵食を跡形もなく吹き散らし、同時に黄昏の浜辺が覗く穴、人型のUCの触媒たる『人型自身』が思念波に曝され、まるで紙が千切れる様にぼろぼろと崩れ消えていった。

そして多喜は視た。
最後に放った思念波はいよりにまで届き、その精神と思考に触れた。
溢れるほどの埋め尽くすほどの後悔と自責。
その合間に覗く、小さな想い。
『ただ母に、褒めてほしかった』
たったそれだけの叶わぬ願い。
大成功 🔵🔵🔵

尾守・夜野
(命ある事を終わろうとする…
まぁそれは理解できるが…
だからといって人の形まではなくしちゃぁいけねぇよなぁ)

首筋を掻きつつがゃちゃがちゃと皆(剣)が騒ぐ方に進もうか
皆もこの状態でもまだ生きてはいるが…俺含め外的要因とは言え【変わった】ものだし引きずられる部分あるな

「だからといっててめぇの仲間にはさせねぇよ」
生存圏が塗り替えられるなら塗り替えそう
俺にとって過ごしやすいように

いるだけで黒纏の強度上がるし
黒纏を伸ばして突き刺し攻撃、防御と使い分ける

ついでにUDCから吸血し刻印の…俺の足しにしとこうか
最近とってなくてやばかったし

正気か狂気かなど関係ねぇな
普段は気にしない皆の言葉の通り動けば問題はねぇだろ


 尾守・夜野(墓守・f05352)は歩みを進める。
(命ある事を終わろうとする…。まぁそれは理解できるが…)
 自ら死を選ぶこと。それ自体は責める気どころか理解すらある。けれども。
(だからといって人の形まではなくしちゃぁいけねぇよなぁ。)
 人が人としての。人であるのを踏み外すのなら、見過ごせない。
 歩み近づく夜野に気づいた黄昏の人型を認めながら、独りでにがちゃがちゃと震え音を発する剣に意識をやると、無意識に首筋に手をやり掻く。
 剣は彼が知る村人達が材料であり、そんな状態でありながらまだ『生きている』。
 自分自身も、幾つかの欠損を抱え、『変わって』しまっている。
(ああ、だからこそ。あれは人の形を無くそうとしている。けれどまだ変わっていない。だからこそ…)
「…引き摺られちまうよなぁ。」
 先輩気取りかと自虐的に笑うと、口に笑みを浮かべたまま瞳に真剣さを宿す。
「そいつの意思で死ぬのならオレは止めはしねぇよ。だけどな?
 だからといっててめぇの仲間にはさせねぇよ。」
 夜野は人型に剣を向け、宣言した。
『痛い?「痛み?」』『いっぱい『痛そう」「責めてる』自分を『罰してる』
『君も!「こっちへ!『貴方はきっと!』『黄昏の浜辺が『ぴったり!』
『ほら!』「ほら!』ほら!』
 人型は夜野の言葉など聞こえていなかった。夜野自身のその自らを罰しようとする、自らを責める様な心を感じ取り歓喜していた。
『マタ仲間が来た!』と。
 ぽつりぽつりと、そしてさらさらと夜闇により黒く変じた赤い雨が降り始める。
『ほら!』「これが黄昏の浜辺!』苦痛に満ちた!』「浜辺で「一つになろう!』
『痛いでしょう?」痛い…』あれ?」…………これは『違う』
 狂喜し踊り笑っていた人型が空を見上げ、体を捩じる様にして困惑を顕わにする。
 激痛を齎し、それを喜びとする赤い雨が降るはずなのに。確かに今、赤い雨が降っているというのに。この雨は違う。
「ああ、オレが俺にとって過ごしやすいように塗り替えたんだ。」
 朱いねばつく様な血の雨の下でそのジャケットが槍の様に伸び、人型を突き刺し持ち上げ『取り込んでいる』夜野が薄く笑いながら言う。
 相手が赤い雨を降らせて自分に有利にしようとするのなら、その上からこっちに有利な空間に上書きする。ただそれが赤い雨と、止む事の無い血の雨であったと言うだけだった。
(代わりに正気であろうとしてはいけないが…。)
「正気か狂気かなんて関係ねぇな。」
 夜野は目を閉じると剣(皆)に意識を寄り添わせ始めた。
(普段は気にしない皆の言葉の通り動けば問題はねぇだろ。)
『――————!』
 剣は震え、皆が示す。
 黄昏の浜辺を作り出すしか戦う術を持たない人型にはそれを止める術はなく、その蹂躙すら痛みとして喜びと感じる故に逃げるという意識すらなかった。
 そして狩られ、取り込まれパーツとされる事すらきっと…人型にとっては恐怖にはなりえないのだろう。
大成功 🔵🔵🔵

アリステル・ブルー
(アドリブアレンジ歓迎)
黒の細剣を抜いて、行動POW

まだ間に合うなら、思い止まって欲しい。
僕と彼女が抱える絶望は同じではないから分かり合えないかもしれない。それでも僕は彼女を救えたらいいなと思う。生きてて良かったと思える日が必ず来るから思い止まってくれる事を祈る。

「その為には、まず君達を蹴散らさなきゃいけないね」
闇に紛れて黒剣で奇襲…なんて出来たらいいね、まぁやれる事をやろう!
UC【アンリーシュ】を周囲に延焼しないように使用。『目には目を』って言葉通りに絶望には絶望をぶつけようじゃないか!

受けるダメージは激痛耐性で耐えるよ。この痛みは僕が生きている証。誰にもあげないよ、僕は欲深いんだ。


地籠・陵也
【アドリブ連携諸々歓迎】
多分、彼女の苦しみを俺は理解してやれないんだろう。
俺がやろうとしていることはもしかしたら間違いなのかもしれない……でも、救えるかもしれないのを放っておける理由にはならない。

そして――その苦しみにつけ込む奴を許すワケにはいかない。

【指定UC】で光の騎士を召喚する。
俺の【浄化】の力を共有しているから、空間を作ろうとするエネルギーをある程度相殺できるハズだ。
敵の攻撃は【オーラ防御】で可能な限り防ぎ、それでもしのぎきれない攻撃は【激痛耐性】【狂気耐性】でやり過ごしながらUDCを騎士で蹴散らしていこう。

――例え、彼女がどの道を選ぶとしても。
お前たちみたいな奴はお呼びじゃないんだ!


 黄昏の人型が数を減らし、狂った喧噪は小さく。代わりに胸に差し込むような孤独感が強くなる。そこに、響く足音が二つ。
「多分、彼女の苦しみを俺は理解してやれないんだろう。」
「僕も、僕と彼女が抱える絶望は同じではないから分かり合えないかもしれない。」
 白いジャケットと黒いコート。対照的な色合いながら、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)とアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は、依里坂・依頼のその苦しみを、深くまでは推し量れないと同様に吐露する。
 そして陵也はだから…、と顔を苦悶する様に歪め続ける。
「だから、俺がやろうとしている事はもしかしたら間違いなのかもしれない…。」
 もしかしたら、自分がやる事は苦しみを伸ばすだけなのではないかと。
 アリステルは少し沈黙し、まだ距離がある少女に一度目をやり答える。
「……そうだね。僕はそれでも彼女を救えたらいいなと思う。」
 明確な答えではなく、祈りを。
「生きてて良かったと思える日が必ず来るから、思い止まってくれる事をボクは祈るよ。」
 あまりにも楽観的で、希望的で、けれども、
「ああ、そうだよな。ここに来た時点で決まってたんだもんな。答えなんて。」
 そして陵也は決意を口にする。
「救えるかもしれないのに、それを放っておける理由にはならない!」
 その言葉を引き金にし、二人は走り出す。

『またきた」ふたりも「まにあわない?』「どうだろう」わからない』
『けれど「やっぱり」ふたりとも』『痛そう』
 人型の一体が空に祈る様に仰ぎ見るば、ぽつりぽつりと赤い雨が降り出す。
「陵也さん!」
「準備はできてる! 俺はっ!あの子を止めないといけないんだよ!」
 瞬間、陵也とアリステルの周囲に整然と隊列を組んだ淡く光輝く騎士が現れ、携えている盾を先頭に立っているものは前方に、それ以後のものは頭上に掲げ守りの陣形を組み歩む。赤い雨は降れども降れども、陵也とアリステルにも光の騎士にも降りかかる事なく、その浄化の輝きによって消えてゆく。
『とまらない「とめられないです』なら『かさねましょう』
 幾体かの黄昏の人型の内。その輪郭の内側からごぽりと音がしたかと思えば、津波と見紛うほどの血色の波が押し寄せ、光の騎士へとぶつかる。
 光の騎士の盾と浄化の力はその背後、自らの主へその汚らわしき波を一滴たりとも通しはしない。しかし、歩みは止まった。
『とめなければ『じかんはかせげそう?」「かせげそう』『つづ……
 人型の言葉が途中で途切れた。
「…苦しみにつけ込む奴を許すワケにはいかないよなぁ。」
 いまだ血色の波にうたれている光の騎士たちの中から声がし、そして…
「この痛みは確かに、僕が生きている証。けれど誰にもあげないよ。僕だけの痛みなんだ。僕は…欲深いんだ。」
 黄昏の人型の背後。人型を黄昏の騎士と挟み込むようにして“赤い雨に曝されながら”アリステルは黒の細剣を人型に突き刺し立っていた。
「陵也さんが居て助かったよ。おかげで簡単に後ろに回れた。」
 こんな暗い中で光ってるのが居ればそっちに意識が行っちゃうよね。と呟きながら細剣に力を籠めれば、まるで人型の輪郭の内側を焼き尽くすかの様に漆黒の炎が細剣を中心に燃え広がり、そして燃やし尽くした。
「彼女と話す為には、まず君達を蹴散らさなきゃいけないからね。時間稼ぎなんてさせないよ。」
 人型が対処に移る前に、血色の波を出している人型を素早く切りつけ、波を出すのを止めると共に漆黒の炎を点ける。
『あ…」「ああ…』『これは』
 光の騎士が、高らかに騎士甲冑を鳴らし再び進み始める。
「――例え、彼女がどの道を選ぶとしても。少なくともお前たちみたいな奴らはお呼びじゃないんだ!」
 陵也のその叫びと共に、騎士は剣を振りかぶり…
『おしいなぁ…』
 そう溢す様に言葉を紡ぐ人型を切り裂いた。

 橋の下を流れていた血の様に真っ赤だった赤い川は、黄昏の人型が全て倒されると共にまるで夕陽が沈むようにゆっくりと、その色を底へ沈めていくように消していった。
「まだ間に合うなら、思い止まって欲しい。」
 そう声をかければ、川を眺めていた少女は…。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第2章 ボス戦 『臼氷・みしろ』

POW ●虚色の破片-赤-
【自分の意思に関係なく過去を体験させる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【傷害事件の刃物で刺された被害者役にする事】で攻撃する。
SPD ●虚色の破片-藍-
【自分の意思に関係なく何も無い場所】から【水流】を放ち、【溺れさせる】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ ●虚色の破片-黒-
自身が【何かの感情や想い】を感じると、レベル×1体の【意思を持つ刃が刺さり赤い絵具が垂れた絵画】が召喚される。意思を持つ刃が刺さり赤い絵具が垂れた絵画は何かの感情や想いを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は天星・零です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


…ゆっくりと顔をあなた達に向けた。
「――—。」
彼女の姿を正面から捉えれば、どこか違和感を覚えた。
どこか…ぶれる。二つの姿が重なっているような感覚。
おそらくそれが『皮を被っている』と言う事だ。
今はっきりと見えている姿は彼女が成りかけているUDC【臼氷・みしろ】の姿であり、
彼女が閉じこもる殻。
ならば、届かせなければいけない。

【補足】
たとえ攻撃しても依里坂・依頼本人の肉体は傷つきません。
巡る。巡る。
頭の中で 心の中で
自責が巡る。後悔が巡る。
どうして出来なかったのだろう。なんで出来なかったのだろう。

声がする。声が刺さる。
責める様な声 期待する様な声 
失望が絡みつく。落胆が悔い込む。
まだ、頑張らないといけない? まだ、休んではいけない?
黒鵺・瑞樹
アドリブOK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

頑張らなくてもいい。休んでもいい。
でもそれは君が君自身であることが前提じゃないか?

でも君はすごいな。なぜ出来ないのか?って考えられるんだから。
誰も責めはしないよ。人よりできる事をちょっと休むだけなんだから。
(それに思考をやめてしまったらそれは人とは言えないんじゃないか)

敵に認識されない様、存在感を消し目立たない様に立ち回る。
マヒ攻撃を乗せた暗殺のUC剣刃一閃で分離をさせるように攻撃。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。回避しきれないものは黒鵺で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らうものは激痛耐性、オーラ防御で耐える。


「頑張らなくていい。休んでもいい。」
 右手に胡と呼ぶ刀を。左手に本体たるナイフ、黒鵺を携え黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は依里坂・依頼とUDC臼氷・みしろの存在をダブらせる彼女に声をかける。
 その声はどこか思いやるようで優しく……けれど、相手が成りかけであれUDCである事を決して頭から排除すること無く、その姿を闇に溶け込ませていた。
「頑張らなくて…いい? やすんでも…いい?」
 瑞樹の声が聞こえたのか、それともただ単に認識した音を反復しただけなのか彼女は言葉を口にする。
「けれど、それは君が君自身であることが前提じゃないか?」
 いよりに、いより自身の事を意識させれば彼女とUDCのずれが大きくなるかもしれない。そう考えながら、問いを投げる。
 声を投げられた方向を追うこともなく、ただっぼうっとした表情で立っている彼女は変わらずに、ただ淡々と、平坦に、澱んだ澱の様に口にする。
「私って…なんだろう。私自身って…なんだっけ。
 ………そうだ、頑張らないといけない。休んでちゃいけない。
 …………けれどもう…疲れた。」
 彼女が彼女自身であるのなら、期待に、信頼に応えなければならない。
 そう彼女自身が呪う。
(これは重症だな。)
 瑞樹はそう思いながらも、観察する様に彼女から瞬きも視線を外すことなく声を投げる。
「でも君はすごいな。なぜ出来ないのか?って考えられるんだから。」
 その声に反応がないのを見て取り、続けて瑞樹は投げかける。
「誰も責めはしないよ。人よりできる事をちょっと休むだけなんだから。」
 その言葉を最後まで発するその前に、明確な反応が返ってきた。
 瑞樹は学校の教室に立っていた。夕闇が差し込む放課後の教室。
 一瞬動揺を起こすが、それが幻視しているだけであり、異空間に取り込まれたわけでもないと認識する。
 過去の追体験。視認が必要であったのは、刺す瞬間。そのタイミングであったことを悟った。そして…。
「嘘。」
 彼女が目の前に立っている。苦しげに表情を歪めて。
「誰も責めないなんてそんなのは嘘!」
 そう叫ぶとナイフを振りかぶり襲い掛かる。
 それを瑞樹は容易に黒鵺で防ぐ。どう見ても素人であり、拙く、弱弱しかった。
 けれど、被害者役を充てられているのならば、最後には軽くあれ重くあれそのナイフは因果をもって瑞樹に傷を作るだろう。
「嘘!嘘!嘘よ! “貴方だって”そうやって私を責めるじゃない!」
 彼女はそうやってUDCとのブレを拡がらせながら泣いて、叫ぶ。
 瑞樹はその歪みを見た。
 我武者羅に振るわれる彼女のナイフを再度黒鵺で受け、そして弾き飛ばす。
 弾かれたナイフを目で追う彼女に向け、瑞樹は胡を振り上げ、そして視る。
 ぶれを、歪みを、境界を、見定め……斬る。
 胡を振り切った瞬間、教室は割れる様に消え去り、瑞樹は幻視を見る前から一歩も動いておらず、彼女も同様であった。
 ただ、彼女はぶれを大きくし、瑞樹は一つ彼女を理解していた。
「ああ、君には本当に見えてもいたし、聞こえてもいたんだな。」
 責める声も、視線も。ただそれは、彼女が作り出した幻ではあったけれど。
 
大成功 🔵🔵🔵

尾守・夜野
「…なぁ
それでお前は救われるのか?
救われるなら納得出来るなら止めねぇよ」
…人の姿ならな…
死ぬを含め否定はせず

UDCに対して弱体化、本人に対して強化かける
ぶれてるなら別々の判定で取れる筈

その上で純粋な疑問を
俺は…終わりを選ぶのは許されねぇ
皆を助けられる可能性があるからだ
「俺はお前が羨ましいよ
選べるなんて」

回復や強化で本人の意識も起きるかな?
逆上されそうだが
「何がわかる?わからんよ
お前が俺の事わからんように」
質問とは思考、思考とは理性だ
怒るのは否定だからだろ?

攻撃は絵の内容眺め叩ききる
「何故お前は頑張った?
何か欲しかったんでねぇの?」
落胆が嫌だからもあるかも知れねぇが…
認めて貰いたかったんじゃね?


「…なぁ、それでお前は救われるのか?」
 ただ、こちらに向けただけの無感情な顔。ただただ疲れたと、澱ませた瞳を見返し尾守・夜野(墓守・f05352)は問いかける。
「救われるなら、納得出来るなら止めねぇよ。」
 人の姿ならな…そう付けたし、剣を手に反応を窺う。
「……わからない。」
 彼女はそう短く呟き視線を少し下に向ける。
「救われるのかな…。救われれば…いいな。」
 彼女が言ったそれは不確かな願望であり、そして…明らかな逃避だった。
「俺は…終わりを選ぶのは許されねぇ。」
 夜野は漏らす様に言う。
 死して楽になるには抱えるものがある。その身に多くの負債を抱えながらも、夜野は『皆』を救える可能性が存在するのなら、それを選ぶことは決してできない。
「俺はお前が羨ましいよ、選べるなんて。」
 だからであろうか、その胸に宿る思いは羨望であった。
 彼女自身はただ「そう…。」と呟くのみであったが、UDCの面がその感情に反応し、ナイフの突き刺さったキャンパスが幾つも宙に浮かんだ。
 夜野はUDCがいより本人とは別に、猟兵を敵と認識してしまう故に行動してしまった瞬間を捉え、すかさず炎の蝶をいよりとしての側面、そしてUDCとしての側面に飛ばす。UDCには弱体を。本人には強化を。
 夜野は、自ら作り出した炎の蝶に一瞬鼻白むも、すぐに何事も無かったかの様に彼女へと視線を戻す。
 弱体と強化、それにより彼女とUDCの溝は大きくなった。
 UDCの力が弱まったせいか、召喚されたキャンパスの幾つかはガシャンと地面にぶつかるとそのまま消えていった。
 そして彼女は…胸を掻き毟る様に服を握り締め、
「なんで…なんで眠ったままにしてくれないの…?」
 そう、泣きそうな瞳で訴える。
「お前に聞きたい事があるからだよ。」
 無感情な顔ではなく、感情を伴った彼女の顔に向け夜野は言う。
「何故お前は頑張った? 何か欲しかったんじゃねぇの?」
「私は…」
 彼女が何かを言うのを押さえつける様に、夜野は続ける。
「落胆が嫌だからもあるかも知れねぇが……認めて貰いたかったんじゃね?」
「…………。」
 いよりはただ、俯き沈黙する。
 沈黙は、はっきりとした肯定だ。
 きっと彼女は褒められ認められた事など幾らでもあった。
 けれど彼女の思うただ一人からは、それは望んで望んで願っても手に入らないもの。だからこそ、否定はできない。
「あんたに…なにがわかるのよ……。」
 その問いに、夜野は絵が浮かび上がり絵画となったキャンパスを眺めながら答える。
「何がわかる? わからんよ。お前が俺の事わからんように。」
 絵画には一様に髪の長い笑う少女。おそらくいより本人の姿と、その上に大きく赤い絵の具でばってんが描かれていた。
 それはきっと彼女の心象。一番彼女に失望し落胆しているのは彼女自身。
 夜野は嘆息し、その絵画を残らず叩き切ると口を開き
「けれど少なくとも……。」
 自分を責め過ぎだと言いかけやめる。
 自虐的で自罰的な彼女に言えた義理ではない。そう思って。
大成功 🔵🔵🔵

地籠・陵也
アリステル(f27826)と。アドリブ歓迎

アリステルが彼女の殻を破ろうとしてくれている……俺も俺にできることをしよう。

【指定UC】を【浄化】の力と一緒に彼女へ。
癒しと一緒に周りにある穢れを祓う。疲れようが被弾しようがやめない。
その後彼女と話をする。

「昔、俺を育ててくれた親代わりの人がこう言った。

"苦しい、辛いと思いながら誰かの為に頑張ることは簡単に見えて誰でもできることじゃない。
それをずっとし続けれるのは凄いし、とても偉いこと。
だから疲れたら休んでいいし、頑張らなくていい。
それで石を投げる奴がいたら怒ってやる"

あんたを一番褒めてやりたかった人もそう言うんじゃないかな。
……違ったら、ごめん」


アリステル・ブルー
地籠・陵也(f27047)と連携
アドリブOK行動POW

黒の細剣を抜いてあえて正面から接敵するよ、マトは僕だけで十分でしょ。 依頼さん本人ではなくあくまで閉じこもる殻、それを破るのが目的だ。
後は陵也さんがなんとかしてくれるはず。
UC【アンリーシュ】を使うね。周囲には延焼させない。
この理不尽さ、僕は認められない。まだ先がある生命を羨んだ…暗い感情を炎に変える。
「僕に君を責める理由はないよ」反撃は激痛耐性と聖痕で何とでも。
傷がなければ責める理由はないだろう。

「僕は君ではないから君の過去も抱える絶望も今はわからない。
これは僕のエゴだけどお願い、死を選ばないで。それ以外の道絶対にあるから一緒に探そうよ」


 彼女を覆う殻は大きく剥がれ、彼女の心を隠せないほどに大きく開いている。
 けれど、それでも彼女は殻にしがみつく。ぱきり、ぱちり、自分を守ろうとするかの様に、あるいは自分を覆い隠すかの様に砕けた殻を直していく。
 そして、聞こえる足音にびくりと肩を震わせた。
「僕が殻を破りに行くから。だから後ろはお願いね。」
「そうか。なら、俺も俺にできることをしよう。」
 アリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は黒の細剣を手に前へ、地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)はその後ろに立ち、相対する。
「ふふ、こんばんは依頼さん。僕はアリステルだよ。よろしくね。」
 場違いな様でいて、きっと目の前にいるのが倒すべき敵と思っていないからこその優しい笑みと、はじめまして。
 それを見て依頼は警戒した顔で見つめ、口にする。
「あなたは……、あなたも…。」
 止めに来たの?と
「そう、僕は君を止めに来たんだ。あなたのその殻を破りに来たんだ。」
 依頼は唇を噛み、泣きそうな顔をしながら決して涙を零すことなく叫ぶ。
「なんで! なんでなんでなんでっ !邪魔ばっかり!」
 アリステルの視界が夜の教室を映す。幻の教室のその正面で、依頼がナイフを手に憎しみの籠った瞳で睨みつけてきていた。
「なんで…か。」
 その問いにアリステルは暫し考え、答える。
「僕としては、答えは二つかな。」
 アリステルが手を振るえば、その軌跡に黒い炎が舞った。
「君の命はまだ長いんだ。だから、きっと生きてて良かったと思える日が必ず来るから。」
「だったら! 死んでいた方がよかったって! きっと思う!」
 その言葉が憎らしいのか依頼は弾かれる様にアリステル目掛け飛び出す。そして同時にUDCがアリステルの漆黒の炎…アンリーシュ、その感情を感じ取りキャンパスが回転しながら飛ぶ。
 そして…。
「まだ二つ目を言ってないのに…。」
 アリステルは困ったような顔で、片手で依頼の腕を掴みナイフを止めており、キャンパスは到達前に振り撒かれた漆黒の炎にまかれ燃え落ちていく。
「二つ目は僕の我儘だ。自分勝手だよね。」
 依頼はなんとな脱け出そうと腕を弾きもがくが脱け出せない。
「僕は君ではないから君の過去も、抱える絶望も今はわからない。だから、これは僕のエゴだけどお願い、死を選ばないで。」
 アリステルがぱっと手を離せば、もがく勢いのあまり二、三とたたらを踏みバランスを崩す。
「それでさ、それ以外の道が絶対にあるから一緒に探そうよ。」
 アリステルは殻を意識し、細剣を振るう。
 剣は依頼を傷つける事無く通過する、けれど確かにUDCを切った。
 そして教室は砕け消え、現実へと引き戻される。
「あとは陵也さんがなんとかしてくれるはず…。きっと大丈夫だよ。」

 陵也からすれば、それはほんの数秒の出来事であり、依頼が叫んだ途端二人と沈黙し…そして今、依頼が崩れるように膝をついた。
(アリステルはうまくやったのか。アリステルは殻を破る役目を…)
 陵也は手を突き出し祈りを込める。
(なら俺は俺にできることを…その穢れを、UDCを払う!)
「全ての"穢れ"を大地に還せ!」
 依頼の周囲に翡翠色の吹雪が舞う。
 吹雪は依頼へ力を与えると共に、UDCを浄化しようと降りすさぶ。
 依頼の心を覆う殻はすでに大部分が砕けてしまった。
 それはすでに欠片でしかない、それでもなおしがみ付く。
 それはUDCか、それとも依頼自身なのか。頭を抱えながら悶える様に、駄々をこねる様にして髪を振り乱す。
「昔、俺を育ててくれた親代わりの人がこう言った。」
 すでにUDC-HUMANとしてのぶれは依頼本人の姿がはっきりと見え、UDCの姿が薄くなるほどになっていた。
 その姿を見ながら陵也は話す。
「苦しい、辛いと思いながら誰かの為に頑張ることは簡単に見えて誰でもできることじゃない。それをずっとし続けれるのは凄いし、とても偉いこと。
 だから疲れたら休んでいいし、頑張らなくていい。それで石を投げる奴がいたら怒ってやる。ってさ」
 翡翠色の吹雪、生命の澪標は使い続ければ続けるほど体力を消耗する。
 ただの穢れであればここまで消耗はしない。
 成りかけ、削りに削った状態であれ、UDC。消耗が早い。
 それでも、あと一押し。
「あんたを一番褒めてやりたかった人もそう言うんじゃないかな。」
 その言葉と共に、依頼の体がぴたりと止まった。
「ほめて…やりたかった人が……?」
 ポツリと呟く。
「誰…? 誰も…誰も私を褒めない。何時も何時も何時も何時も笑う声ばかり!
 責める声ばっかり! 逃げても! 耳を塞いでも! 頭に響いてくる!
 今も! 貴方達もぉっ!」
 瞬間、キャンパスがその感情に呼応したかのように無数に現れるや否、滅多矢鱈に飛び、砕け、破片を散らす。
「っ!」
「わ、大丈夫陵也さん。」
 アリステルが陵也に向かって飛んだキャンパスを燃やし切り飛ばしながら聞く。
「このぐらい平気だ。けれど…余力を残してたな。」
 とんだ破片で頬に赤い線を作りながらも生命の澪標を止める事無く呟く。
「体力は持ちそう?」
「持つ。いや、持たせる。」
 陵也がそういうと、アリステルは笑ってその前に立つ。
「そう。じゃあ付き合わせてもらうよ。」
 そして、その嵐が終わるまでアリステルは飛び込んでくるキャンパスを切り飛ばし陵也を守り、陵也は生命の澪標を行使し続けUDCを削っていった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

……いよりちゃん。
アンタ。一番大事な時に、一番欲しいものが手に入らなかったんだね。
なんだ、アタシと一緒じゃねぇかよ。
違うのは……そこからアタシは進もうとした。
いよりちゃん、アンタは立ち止まっちまった。
でも、まだ完全な後戻りはしていない。
だから……アタシの声よ、届け……っ!

【過去に抗う腕】をそのまま伸ばし、
いよりちゃんの「こころ」に触れる。
『覚悟』をもって水流は受け止め、思念を切らす事は絶対に避ける!
一番の負い目は、母親へ何もできなかった悔恨かな。
違うかもしれないけれど、そこに賭けるしかない!
記憶の奥底の母親の言葉を聞いて、
そこを手掛かりに前を向くよう『鼓舞』する!


 地面に手をつき、肩を上下させる。
 なんで。どうして。ぐるぐると堂々巡りを繰り返す頭の中で考える。
 いったいなんで、こうなったのだろう。
「……いよりちゃん。」
 女の人の、声がする。
「アンタ。一番大事な時に、一番欲しいものが手に入らなかったんだね。」
 一番欲しいもの。欲しかったもの。もう手に入らないもの。
「なんだ、アタシと一緒じゃねぇかよ。」
 その声に顔を上げれば、また同じ光を持った瞳がこっちを見ていた。
 なんでこの人たちは…そんな強い目をしてるんだろう。

「違うのは……そこからアタシは進もうとした。」
 こちらを見上げるいよりの顔を見つめ数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は続ける。
「いよりちゃん、アンタは立ち止まっちまった。」
 その瞳は疲れ切って、黒く澱んでいた。もう何もないと、光を発する事を諦めた様な暗く沈んでいた。
「でも、まだ完全に後戻り出来ない場所までは行ってない!」
 多喜は過去に抗う腕と共に、手を伸ばす。
 それは相手が握り返すのを待つように、その心を掬い上げ様としているかの様に伸ばされる。
(だから……アタシの声よ、届け……っ!)
 その手がいよりの心へと触れる。
「っ!! やめてっ!」
 いよりが拒絶の声を上げる。途端、多喜を遠ざけ様とするように依頼の脇から水流が現れ、多喜の正面にぶつかる。
「こんっなの!! かくっごの! ………上ぇ!」
 足を踏みしめ、水流の勢いで押された上体を押し戻し耐え、腕を伸ばし続ける。
 いよりとUDCの分離が大きく、UDCそのものの消耗も大きかったため、UDCの意識に引っ張られる事無くするりと入り込む。
 そして多喜の意識はいよりの記憶へと沈んでいく。

 その気持ちの萌芽はきっとあの時。
 幼稚園でお絵かきをする事になって、お母さんとお父さんを描いた。
 家に帰ってお母さんに見せたら…とっても嬉しそうな笑顔をして、褒めてくれた。
 始まりは、そんな些細な出来事。
 私はその顔が見たくて、なにをすればいいのか考えた。
 御本を読んだ。料理のお手伝いをした。
 運動会の駆けっこで一番を取った時、沢山褒めてくれて、とっても喜んでくれた。
 がんばれば、喜んでくれた。1番を取れば、あの笑顔が見れた。
 がんばれば、がんばるほど、あの顔が見れた。

(一番の負い目は、母親へ何もできなかった悔恨かなって…思ってたけれど…。)
 少女と母親の、UDCでは当たり前にありそうな微笑ましい記憶。
 記憶が小学校へと移り行く最中、多喜の視界の端に何かが引っ掛かった。
(何?)
 視線を動かせば、すぐに見つかった。
 ×。
 記憶が流れる周囲にバッテンとペケが増えていく。

 ——学校のテストでいい点数が取れた。それをお母さんに見せたら…
『ああ、こことここ間違えちゃったのね。次は間違えないように頑張ろう。』
 ………そっか100点じゃないとダメなんだ。
 100点を取ったら喜んでくれた。やっぱり!
 100点を取って。100点じゃなかったら考える。
 運動会だって頑張る。一番を取れば喜んでくれるから。
 頑張って走るの。喜んでほしいから。笑ってほしいから。

 中学校。お母さんが推してたところには入れたらとっても喜んでくれた。
 誇らしい。
 けれど、満点は難しくなった。
 勉強が難しくなって、覚えることが多くなって。
『こことここ、注意していれば間違えなかったでしょう?』
 けれど、頑張る。頑張ればきっと取れるんだから。
 陸上部に入った。走るのは好きだったから。
『この問題、気が緩んでいたんじゃない?』
 学年で一番。先生から褒められた。
 お母さんは…。
『この場所、覚え間違いね。早く直さないと響くわよ?』
 体育祭で1位……取れなかった。頑張らないと。

『――——もっと頑張ればできたでしょう?』

 多喜はただ、顔を顰めた。

 そして高校の合格発表の日……お母さんが交通事故で死んだ。
 お父さんは泣いてて、私はただ…呆然としてた。
 悲しくってどうしようもなくって。
 お母さんが笑ってくれた瞬間ばかりが頭に浮かんできて、それがもう見れないって突き付けられて……私はどうすればいいの?

 高校の初めての試験が返ってきて、それを見ていたら…声が聞こえた。
『ここ、何度も見てたじゃない』
 そう、お母さんの声がした。
 見てる。だったら、頑張らないと。
 頑張って頑張って頑張って頑張ったら……。

(これは…どうすりゃいいんだよ…。)
 そう思いながら心への干渉で消耗し始めた自分を認識し、
(UDCをとりあえず取り除こうか。)
 いよりの精神へと手を伸ばし、心に絡みつくUDCの核を掴み…握りつぶす。
 瞬間、引っ張られるような、弾かれるような感覚と共に現実へと引き戻されてゆく。
 瞬間瞬間、記憶を掠めていく。最近の記憶。
『声がする溜息が聞こえるイライラとした声が聞こえる足音がする見捨てられる責める声がする出来なかった一番になれない足音がする視線が刺さる怒ってる急かされる頑張らないと……』
男性の背中が見えた。こちらに気づくと疲れたような表情で、けれど笑って頭を撫でる。
『いつもありがとうな。いより。』
光景はすぐに過ぎ去り…。

 多喜がはっと目を覚ませばそこに水流はなく、目の前にパジャマ姿の髪の長い少女が座り込んでいた。
 そこからは、もうUDCの気配はしなかった。
大成功 🔵🔵🔵


第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る
SPD証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる
WIZ事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


あなたの選択は…。



補足
能力値を気にする必要はありません。
地籠・陵也
【アドリブ連携歓迎】
彼女ともう一度話がしたい。

さっき言った、俺を育ててくれた人はもういないんだ。
もう話をしたくてもできない。叱って欲しくても褒めて欲しくても、もう敵わない。

あんたには本当に、誰も褒めてくれる人がいないのかな。
家族は褒めてくれない人しかいなかったのかな。
話を聞いてくれる人は、本当にいないのかな……?

……もしそうじゃなくて家族がまだ生きているなら、死ぬ前に話をして欲しい。
話す勇気が出ないなら、俺も付き添う。あんたがあんたの思ってることを全部話せるようにする。
話をした上で死ぬのを変えるつもりがないならもう止めないから……
どうか、あと1つだけわがままに付き合ってくれないか……?


黒鵺・瑞樹
俺からの提案は、どちらかというと受け入れられたら組織の負担がでかくなるから何とも言い難いんだけど…。
でも彼女に所謂未練があるのなら。
「あと一日生きてみる」っていうのをやってみるのはどうだろう?一日が長いなら、半日でも、一時間でも。なんなら一分だっていい。
だって死ぬのはいつだってできる。そう、いつでも逃げられるから。
UDC組織の人には手間をかけさせる事になるから申し訳ないけど。

ただ俺は。せめて彼女が依里坂・依頼として少しでも生きて欲しいって願うから。
…新たな重責になりかねないから、これは決して彼女に言いはしないけど。
俺も折れるのはいつだってできると思ってるから、まだ死んでないだけだ。


尾守・夜野
■POW
アド・連携OK

…ふざけるなよ
心底望んでの事なら認める
だが願いも叶う可能性がある
なら救って(死なせて)やらねぇ

「…俺には記憶ねぇし世話になった村の皆も全員俺の目の前で■されたよ
だがよ

お前さんまだ父親ってのがいるんだろ?

さっき聞いたのも母親に関してだろ?

あぁ…でもそうか
さっき否定しなかったってこたぁ
てめぇの家族ってのは母だけだった
父なんて関係ないって事だな?

…違うってなら
一度だってお前は父に母に向けた感情をぶつけた事はあるのか?

その上で違う事でも言われたのか?
そりゃ家族でも違う人間だ
その意見を取り入れた事は?

考えろよ
その上で問う
お前は誠に認められなかったのか自分から切り捨てたのか
答えろ!」


アリステル・ブルー
アドリブ連携歓迎

「依頼さん言ったよね」
死んでいた方がよかったってきっと思うって。
でもそれは確実な未来ではない。逆にあの日死を選ばずによかった、そう思う日が必ず来る。
それに何も今死を選ぶ必要もないよ。実行しようとする度胸があるのだから…。
「ねぇ周りを見て?目的がどうあれ今君の為にこれだけの人数が集まったんだ。君が気づいていないだけで、君の事を心配してる人いるんじゃない?」
例えば父君や友人、気づいてないだけでたくさんいるんじゃないかな。
「僕の両親はもういないから欲しい言葉は貰えない…けど君は違うよね。ねぇ一度お父さんと話し合ってみない?それでダメなら、他の道を探そうよ」
君の人生はまだ長いんだから。


数宮・多喜
いよりちゃん。
一つ、謝らなきゃならねぇな。
アタシもすっかり読み違えてたよ。
てっきり病気か何かだと思ってたけど……
交通事故たぁ、余計やるせないね。
あの笑顔、合格が分かってたならもう一度見せてくれただろうにさ。

ま、アタシからすると窮屈にも思えるけどさ。
その教え自体は、間違っちゃいないんじゃね?
どこを間違えたのか、どこを良くすればいいのか。
振り返るのは大事だよ。
だから、もう二つ気付こうな。

いよりちゃん、今聞こえている一番でっかい声は、
「自分自身の心の声」さ。
「お母さんの声」じゃない。
お母さんはな、もう、戻ってこないんだ。
辛いだろうけど、その悲しみを分かち合える人がいるじゃないか。
お父さんと仲良くな。


 依里坂依頼は耳を塞ぐ。
 座り込み、背を丸め、過程はどうあれ自殺を試みそれを止められた。
 非難の視線が全身を刺し、責める声が頭に響く。
 固く、固く、耳を押さえ塞ぐ。
「……ふざけるなよ。」
 耳を塞ぐ掌を越えて、頭の中で反響する声に飲まれる事無くその声は到達する。
 責める様な声音でありながら、頭に響く声とは別種の声音。
 尾守・夜野(墓守・f05352)は、ただ静かにその声に怒気を孕ませながら近づいてゆく。
「心底望んでの事なら認める。だが願いも叶う可能性がある。」
 夜野は依頼の傍らにしゃがむとおもむろに耳を塞いでる手を掴み外させ、無理やり視線を合わせ、そして告げる。
「なら救って(死なせて)やらねぇ。」
 心底望んでの事ならば否はなかった。けれどそれが逃避であるのなら。
 逃避でありながら救われる可能性があるのなら。認めないと。
「…っ。」
 その瞳に宿るものに気圧され怯えながらも依頼は視線を外すことが出来なかった。
「ふん…。」
 それを認めると、夜野は自ら視線を外し手を離すと一旦離れ、橋の欄干に背を預けた。
 他の猟兵はその姿に苦笑しながらも、依頼へと向き直る。
 彼女の心に隙間が出来た。今なら、声はちゃんと届く。

「いよりちゃん。一つ、謝らなきゃならねぇな。」
 アタシもすっかり読み違えてたよ…。そう口にする数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)に何のことか分からず依頼は首を傾げる。
「母親の死因、てっきり病気か何かだと思ってたけど……交通事故たぁ、余計やるせないね。」
 優しく、労る様な声。その日の事を思い出し依頼は小さく肩を震わせる。
「笑顔。合格が分かってたならもう一度見せてくれただろうにさ。」
 その言葉に依頼は小さく頷くと口を開いた。
「電話で……合格してたって言ったら…………嬉しそうに…してたっ…」
 そうして、小さく嗚咽を漏らす。
 多喜は少しの間、黙って見守り、あやす様に肩を優しく叩く。
「それにさ、どこを間違えたのか、どこを良くすればいいのか。振り返るのは大事な事だからさ。その教え自体は、間違っちゃいないんじゃね?
 ま、アタシからすると窮屈にも思えるけどさ。」
 依頼ちゃんは気張り過ぎだよねぇ。と、そう歯を見せ笑う。
「間違って、ない。きばりすぎ…。」
「だからさ、もう二つ気付こうな。」
 気づく?そう顔を上げる。
「いよりちゃん。いよりちゃんが聞こえている一番でっかい声は、
『自分自身の心の声』さ。責めてるのは『お母さんの声』じゃない。
 いよりちゃん自身だよ。お母さんはな、もう、戻ってこないんだ。」
 責める声を自分の中に生み出しても、戻っては来ないのだ。
 そう、優しく告げる。
「辛いだろうけど、その悲しみを分かち合える人がいるじゃないか。お父さんと仲良くな。」
 そう言いながら、ぐしゃぐしゃと頭を撫でる。
 アリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)もそこに加わり、
「依頼さん言ったよね。『死んでいた方がよかったって、きっと思う』って。」
 そう言うと、依頼も記憶にあるのか、戦ってしまっていた事が後ろめたいのか、顔を曇らせながら小さく頷くと続け、
「うん、でもそれは確実な未来ではない。逆にあの日死を選ばずによかった、そう思う日が必ず来るから。それに何も今、死を選ぶ必要もないよ。実行しようとする度胸があるのだから…。」
 きっといつか幸せに。未来を示しながら、その決断の力を示す。
 俺も提案だけどさ。そう黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)も入ってくる。
「死にたくなる度に『あと一日生きてみる』っていうのをやってみるのはどうだろう? 一日が長いなら、半日でも、一時間でも。なんなら一分だっていい。
 だって、死ぬのはいつだってできる。そう、いつでも逃げられるから。」
 死ぬのは明日、明後日、明々後日。先延ばし、先延ばし。
 いつでも死ねるのだから。
 UDC組織の人の負担は大きくなるし、手間も掛けさせる事にはなるから申し訳ないけど。と苦笑しながらもどこか他人事のように嘯く。
(俺は…せめて彼女が依里坂・依頼として少しでも生きて欲しいって願うから。)
 だから、組織の人には苦労をしてもらおうと、後ろ向きに生真面目に考え始めた依頼を見つめながら思う。
「一日?」
「一日」
「半日?」
「半日」
「一時間?」
「一時間」
「先延ばし…。」
「そう、先延ばし。俺もさ、折れる…死ぬのはいつだってできると思ってるから、まだ死んでないだけなんだ。」
 依頼は驚いた様に顔を見つめ、そして本当なのかどうか探るような視線を投げかける。
「所謂、未練って物なのかな。それでいつも先延ばしだ。」
 その静かな青い瞳から何も探れずに、けれど嘘ではないと思ったのか視線を緩める。
「未練…ですか。」
 依頼は……考える。

 依頼の前に地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)が立っていた。
「さっき話したさ、俺を育ててくれた親代わりの人ってもういないんだ。」
「怒ってやるって…言った人?」
 おずおずと尋ねる。
「そう。もう話をしたくてもできない。叱って欲しくても褒めて欲しくても、もう叶わない。」
 陵也は片手で自身の腕を掴み、何かを堪える様に少しの間目を閉じる。
「あんたには本当に、誰も褒めてくれる人がいないのかな。家族は褒めてくれない人しかいなかったのかな。話を聞いてくれる人は、本当にいないのかな……?」
「それにさ、ねぇ周りを見て?目的がどうあれ、今君の為にこれだけの人数が集まったんだ。君が気づいていないだけで、君の事を心配してる人いるんじゃない?」
 居るはずだよ。と考える様に促す陵也に、アリステルも続くように周りを見る様に促す。
 見ず知らずの他人がこれだけ君を気にしたんだと、ならば見渡せばきっと居ただろうと。
「……もし家族が死んでなくて、家族がまだ生きているなら、死ぬ前に話をして欲しい。話す勇気が出ないなら、俺も付き添う。あんたがあんたの思ってることを全部話せるようにする。」
 親身に、献身的に頼むように、けれどどこか縋るような表情で願う。
「僕もさ、両親はもういないから欲しい言葉は貰えない…けど君は違うよね。ねぇ、一度お父さんと話し合ってみない? それでダメなら、他の道を探そうよ」
 二人の言葉に、依頼は迷う。と言うよりも…決心が出来ない。
「話をした上で死ぬのを変えるつもりがないならもう止めないから……。
 どうか、あと1つだけ我が儘に付き合ってくれないか……?」
 最後だから…と、そう陵也が願う。そして、それでも依頼は迷い続けた。
 その時、声が響いた。
「父親。そう父親だよ父親。」
 夜野が欄干から背を離し、近くに立っていた。
「…俺には記憶ねぇし世話になった村の皆も全員俺の目の前で■されたよ。
だがよ……お前さんまだ父親ってのがいるんだろ?」
 平然と告げられる言葉。けれど、自分の方が辛いのだと…そういう言葉ではない。
「死んだって言うのも母親の事だろ?」
 依頼は困惑した様に夜野を見上げる。
「あぁ…でもそうか。母親に認められないだけでこうまでなるってこたぁ…てめぇの家族ってのは母親だけだった。父親なんて関係ないって事だな?」
 父親に認められたって意味ないんだな?そう耳朶を打つ。
「違うっ!」
 急くように。遅れてしまえば嘘となるかの様に依頼は叫ぶ。
「…違うってなら、一度だってお前は父に母に向けた感情をぶつけた事はあるのか?」
 その答えに、低い声で夜野は返す。
 褒めてほしい、笑ってほしいと焦がれるような感情を。
 母親ばかり見ていた。母はあまり笑わなかった。だから…。
 母が死んでから、完璧を目指した。父親にすら、弱い部分を見せるわけにはいかなかった。だから…。
「その上で違う事でも言われたのか? そりゃ家族でも違う人間だ。 その意見を取り入れた事は?」
 依頼が答える隙もなく問いを重ね、
「考えろよ。 その上で問う。 お前は誠に認められなかったのか、自分から切り捨てたのか…。 答えろ!」
 様々な問いを尽くして、言葉を尽くして、夜野は問う。
 遠回しに願う。父親を見てくれと。
「ああ、そっか。私はお父さんを……切り捨ててたんだ…。」
 頼らない、縋らない、願わない、弱くあれない、求めない。
 そんなのはまるで…他人じゃないか。
「切り捨ててた…か。それが答えか?」
「はい。気づかせてくれて…ありがとうございます。」
 依頼はそう言って頭を下げた。
 それを聞くと夜野はさっさと踵を返し肩をすくめ去っていく。
 依頼はそれを見送ると、陵也とアリステルに顔を向け再び頭を下げる。
「付き添うって言ってくれて…ありがとうございます。でも、一人で話してみます…お父さんと。私がそれでどう変わるのかはわからないけれど…。けど、まだ話せる私が話さないのはずるいですもんね。」
 その言葉に、アリステルと陵也は顔を見合わせると、
「もしかして美味しいところ持ってかれた?」
 そう茶化す様に言いあうと二人して笑った。それにつられる様にして依頼も少しだけ笑った。
 そして立ち上がると、髪を撫でながら思う。
(未練…そうですね。お父さんを一人にはできませんからね。)
 乱暴に撫でられた手は、お父さんの手とは全く違っていたけれど…思い出す。
 あの優しい顔を。暖かい手を。
 まだ声は聞こえる。けれど大丈夫。
 まだ、先は見えないけれど。
 もう、見失わないから。
 ほんとうに? 本当に。

付録:帰還前の一幕
「本当に付き添わなくって大丈夫か?」
「夜道なんだし家に送るくらいは僕はいいと思うけどね。」
「ならバイクで送ろうか?」
「あ、あはは。付き添いはなくって大丈夫ですから…。頑張りますから。
 遠慮は…しない方が良いんでしょうか…?」
「そうだな。それも第一歩だな。」
「じゃんじゃん頼っていいんだよ。あ、金平糖食べる?」
「もう振り返ってるのかい? じゃ、頑張るって言うのも気を付けないとね。」
 そんな、一幕。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年07月08日
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