12
我ら大勢なるがゆえに(作者 コブシ
22


●灯り
 ……手に握っていたランタンの取っ手を肘にかけなおし、ジャコバンは、自分の胸元をつかんでいる指をおそるおそる開かせていった。
 その指はちっちゃくて、あったかくて、湿っている。
 小さな作りの指を見るたび、「赤んぼうとはみんなこうなんだろうか?」「これが本当に人間に育つのか?」と心配になる。
 ようやく眠りについてくれたちっちゃな娘を抱きかかえなおし、ジャコバンは自分の家に踵を返した。
 夜。
 ダークセイヴァーの夜だ。
 真の闇の中、自分の下げた灯りが照らすほんのわずかの距離を歩く。二歩先は見えない。……見えないはずなのに、わずかに闇が薄い場所が見えた。
 一瞬緊張したが、その正体がわかってジャコバンはほっと安堵の息を吐く。薄闇に向かって歩く。
 薄闇の中には同じ集落に住む男がいて、自分と同じように灯りを提げ、小さな宝物を抱きかかえいた。
 体を左右にゆっくりと揺らしているのは、彼の子供もまた夜泣きが激しいからだろう。こうすると赤んぼうはようやく寝入ってくれるのだ。
 ジャコバンと眼が合って、男は疲れたような笑顔で会釈した。ジャコバンもまた、同じく疲れた笑みを返す。
 相変わらず闇は深く夜は果てしない。だが自分が持つ以外にも灯りがあるおかげで、少し歩きやすくなった気がした。


 ジャコバンの集落は出来て間もない。
 住居は用意され、食料も十分に貯蓄されていたが、長く暮らしていくための畑や井戸などは整備されていない。
 あくまで「間借り」なのだ。少なくとも、乳幼児やその家族が、ふたたび長い距離を旅することが可能になるまでの。
 ジャコバンの家は集落の端の方にある。ここまで自分たちを運んできてくれた馬の世話を、ジャコバンは一手に引き受けているので、荷車もまとめて近くに留めてあった。いつでも旅立てるよう、準備は怠っていない。
 急ごしらえの馬小屋から聞こえるわずかないななきに、不穏な気配がないのを確かめてから、ジャコバンは家の扉をそっと体で押し開ける。
 小奇麗で、まだ自分たちに馴染んでいない家だ。間に合わせの道具や家財はどこかよそよそしかった。だが、今ジャコバンと、彼の家族が雨風をしのぎ食事をとり皆で眠るのはここなのだ。
 中に入ってすぐ、寝台ではなく机に突っ伏して、お気に入りのストールを頭からすっぽりかぶって寝息を立てている妻のカタリナの姿が目に入る。赤んぼうの夜泣きのおかげで目に下に隈ができているが、すうすうと規則的な寝息はとても気持ちよさそうだ。
 妻の寝息に、胸元で眠る娘のぷす、ぷすという可愛らしい寝息が重なって、ジャコバンはすこしおかしくなり……そして、ジャコバンはこの現実に呆然とする。
 妻のカタリナ、娘のエステル。健やかに寝息を立てている。
(「誰が想像できただろう」)
 よろめいて、向かいの椅子に腰を下ろす。
 領主付きの御者として、背後に怯えながら鞭を振るっていたあの頃。支配下にある領民の、腹の中の赤子の性別を賭けるのが趣味だという領主の客人に震え上がり、カタリナの手を引いて闇の中を絶望とともに駆けたあの頃。
 ジャコバンの口は開いたまま、出ていくのは声とも息ともつかぬ何か。
(「あの頃の俺が……まさかこんな未来を迎えるなんて……」)


「そう。ふつうの人間に未来は見えない。闇の中を手探りで行くしかない」
 グリモアベースにある一室で。
 カウチに深々と身を沈み込ませ、疲れたようにローズ・バイアリス(アリスが半分色を塗った薔薇・f02848)は言った。グリモア猟兵には未来が見えるのだ。
「この集落に、『辺境伯』と呼ばれる極めて強力なオブリビオンの軍勢が襲い掛かる。俺の見る限り『皆殺し』だ。俺の予知はそんなものばかりだ。見ていたら気がおかしくなる。……その未来が、変えられるものだと知っていなければ」
 ローズが低い声で語るには。
 集落には城壁のようなものはない。
 簡単な柵を家並の周囲に張り巡らせているが、大型の獣なら一突きで壊せてしまうくらいぜい弱だ。
「この集落には人手も時間も足りていない。だから攻め込まれたらひとたまりもない。その認識を集落の全員が持っている。不安がっている」
 だからオブリビオンの軍勢の槍先が、逃れられぬ絶望が、集落をぐるり取り巻いて押し寄せてきている、と言っても驚かず、すぐに信じることだろう。
「かつて猟兵に救われた人々だ。猟兵がそう言えばすぐに信じるだろう。指示にも従ってくれる筈だ。ジャコバンは絶対に妻と娘を逃がそうとするだろうし、それは集落の皆も同じ」
 かつての自分たちが想像できなかった未来を迎えているように、今回も、何とか命を拾おうとするだろう。
「敵の軍勢は四方から来るが、東の軍勢が他の倍以上になる。どうも、敵軍の勢力と集落の住民の心理状態とは関係があるらしいが……詳しいところまでは見えなかった」
 見える前に全滅した、のだろう。
「敵の軍勢が到達するより先に住民たちを逃がし、軍勢を迎撃してもらいたい。数が多く、また強力な敵と対峙するだろう。充分に気を付けて、」
 身を起こし、「よろしく頼む」とローズは軽く頭を下げた。


コブシ
 OPを読んでくださってありがとうございます。コブシです。
 以下は補足となります。

●フラグメントについて
 第1章【冒険】
 第2章【集団戦】
 第3章【ボス戦】
 の予定です。

●行動の指針のようなもの
・集落の現状はOPでローズが語った通りです。
・集落の構成員は30家族ほどです。どの家にも乳幼児がいます。
・敵は全方位から集団で攻めてきます。
・住民を逃がす方策を立てなければ、第2章において集落は包囲され、全員殺されることでしょう。
・第1章で得た情報をもとに、第2章以後のプレイングを考えるのも可能です。
・第2章から、かなり激しい戦闘になる予定です。

●集落の状況
・東西に走る大きめの道をはさんで、差し向かいに一軒ずつ家が並んでいます。
・集落の出入口にあたる2か所には簡単な門があります。
・集落の周囲には柵が張り巡らされています。
・門も柵も、藪を編んだものです(集落の周辺に加工できるような木がないため)。これだけで何かを押しとどめるのは到底無理でしょう。
・ジャコバンの家は一番東側にあります。

●周辺の地理
【東】
・ジャコバンら集落の住民が以前逃げてきた湿地帯です。湿地帯の先は、今もオブリビオンらが治める地であると予想されます。
【北】
・木々はなく、固い地面が続いています。大岩も多く、人が掘り返したり耕したりするのには相当苦労することでしょう。
【西】
・渇いた地面が続きますが、遠くに山並みが見えています。
【南】
・遠くに森が見えています。

●プレイング受付について
『【一次受付】7/28(火)朝8:30~7/30(木)朝8:30』
 ・この間に届いたプレイングをマスタリングし、プロットを組み立てます。
 ・プレイングは一度すべてお返しします。
 ・その後、「全採用できるか否か」をマスターページやツイッターでご報告します。
『【二次受付】8/1(土)朝8:30~』
 ・上記の内容でも構わないとお思いであれば、プレイングの再送をお願いします。

 いろいろと、お手数だと思いますが、何卒よろしくお願い致します。
 皆様のプレイング、楽しみにお待ちしております!
59




第1章 冒険 『辺境伯迎撃準備』

POW襲撃を行うポイントに移動し、攻撃の為の準備を整える
SPD進軍する辺境伯の偵察を行い、事前に可能な限り情報を得る
WIZ進路上の村の村びとなど、戦場に巻き込まれそうな一般人の避難を行う
👑7

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。