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曰く、その怪物は月夜に目覚めり

#UDCアース

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#UDCアース


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●曰く、その怪物は月夜に目覚めり
 血濡れた満月が真夜中を不気味に照らす。一つ吹いた突風は、大きく不協和音を奏でている。
 地面に広がるのは真っ赤な血溜まり。そしてその周りには、壊れた人形のように無造作に捨てられた、いくつもの子供の死体だ。
 不意に風がピタリと、不自然にさえ感じる程突然止んだ時。
 暗闇に赤いシルエットが現れた。

●グリモアベースにて
「まるで悪夢だったよ……」
 邪神復活を予知した。弱々しい声でそう呟くと、クラム・ドグマ(ブラックタールの探索者・f03711)はため息を漏らす。
「明確な正体がわからず、ただただ恐ろしい雰囲気だけ。予知で得られた情報といえば、それがUDCアースでの出来事だということ、夜に儀式が行われること、既に何人かの子供が犠牲になっていること……もう少し早い予知が出来ていればこの子たちも助かったのではないかと思うと、本当に心が痛いよ」
 加えて猟兵達にとっては、儀式についての情報がないのも痛い。
 邪神が復活すれば、それを止めるとはほぼ不可能だ。よって儀式は絶対に阻止しなくてはならない。
 しかし、少ない情報ではそれすら難しい。何とかして情報収集を図りたいが。
「どうやらUDCアースでは、ここ数日フリーマーケットという催しが行われているらしいんだ。そしてそこで、不審な人物が目撃されたとの情報が入ってね」
 何でも、子供用のおもちゃを片っ端から買い漁る男が見つかったのだという。男の子用であれ女の子用であれ関係なしに買っていくその様が怪しかったものの、イベント事態に迷惑はかけていない為に、取り締まりが出来ない状況だという。
「とはいえ、こちらとしては邪神復活の儀式に何かしらの関わりがあるものと思っている。君たちには実際にそこへ行き、不審な男についての情報を集めて欲しい」
 やはり他の依頼とは一つ違った内容なのだろう。これ以上ない真剣な表情で、クラムは頭を下げた。
「邪神が暴れれば、その被害は想像もつかない程大きな物になるだろう。それだけは何としても阻止しなければならない」
 その為にまずすべきは、その男の正体を突き止めること、そしてこれ以上の子供の犠牲を出さないことだ。
 頼んだよ。そう硬く告げ、彼は転移の準備を始めた。


くらげ屋
 初めまして。或いはお久しぶりです。くらげ屋です。

 さて、今回の依頼は邪神復活の阻止です。とはいえ、すでに犠牲になった子供達を助けるのは不可能ですので、皆さんの仕事はこれ以上の犠牲を防ぐことです。
 その為に、まずは正体不明の男について調査してください。もしその正体に近づけば、何か分かるかもしれません。

 皆さんのご活躍を期待しています。
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第1章 冒険 『フリーマーケットで情報収集』

POW   :    お店を出して、怪しい人物をおびき寄せる

SPD   :    お店の人に話を聞いて、怪しい人物がいなかったか聞き出す

WIZ   :    客に扮装し、他のお客さんに怪しい人物がいないか探し出す

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 晴天の下。そには大勢の人が集まっていた。
 ある人は洋服や小物などを売っていた。ある人はそれを眺めていた。
 楽しい喧騒が広がるそこに、異分子のような男がいた。
「……これ、全部くれ」
 腰程まである黒いローブのフードを目深に被ったその男は、ぬいぐるみやプラモデルなど、売っているスペースで、ボソボソと聞きづらい声で告げる。
「ま、毎度……」
 戸惑いつつ、商品を手渡す相手。黒い革手袋をつけた手で受け取った男は、手持ちの袋に無造作に入れる。よく見れば、そこにはすでに多くのおもちゃの類が入っているようだった。
 やがて男は、その場から立ち去った。
「……神の加護の、あらん事を」
 そう、歪んだ笑みを口元に浮かべながら。
糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

こどもって、幾つぐらいの子なんだろう
何歳でもだめだけど、オレよりちっちゃい子だったら……、って考えたら、悔しい

昔に発売されたおもちゃを探してるっていう体で、お店の人に話を聞くぜ
品物が特定されないように、でも違和感ないように気を付けつつ、こんなのを探してますって説明する

もし男の手がかりが見つけられたら本人を探してみる

直接接触出来るなら無邪気なこどものフリをして
おじさんいっぱいおもちゃ持ってるんだな! オレ、こんなの探してるんだけど、って話しかけてみる

食いついてくれたらラッキー
そうじゃなかったらなんでこんなにいっぱい集めてるの?
ないか確かめたいからみせて、って言おうかな


皐月・灯
…何が邪神だよ、下衆野郎が。

裏で糸引いてるヤツを引きずり出す、
そのためにまずは客に紛れて売り場をうろつくぞ。
商品を見るふりで周りを探りつつ、
店出してるヤツにも怪しいヤツを見なかったか話を聞いとく。
狙い目は、売り切れになったスペースが目立つ店だ。
全体をくまなく探して、それでも見つからねーなら【第六感】にも頼るぜ。
使えるもんは使う主義なんでな。

……玩具、ね。
手当たり次第に集めてるとこをみると、ガキどもを釣る餌にしてんのかもな。

ところでオレの普段着は、黒手袋にフードつきの上着だ。
外にいるときゃフードも被ってる。
顔は出づらく、手の跡も残さねー。
……服装だけなら、野郎はオレみてーなヤツかもな。



「こどもって、幾つぐらいの子なんだろう……」
 会場の出店スペースを巡りながら、沈んだ表情で呟く糸縒・ふうた(朱茜・f09635)。帽子の下の耳を折り、瞳に悲しみを浮かべるその姿は、賑やかな会場には少々不釣り合いと言えた。
 ふうたの言葉を一蹴するように、隣を歩く皐月・灯(灯牙煌々・f00069)は不機嫌そうな声で返す。
「何歳だろうと許される行為じゃねえよ」
「そ、そうだな。でももし、オレよりもちっちゃい子だったら……」
 悔しいな。そう続いた台詞は、自責にも聞こえて。無言の灯は、深く被ったフードから僅かに覗く青の瞳を先に向けた。
「……とりあえず、あそこの店が怪しそうだ」
 視線の先には、他のスペースに比べ明らかにシートの上の空いている場所が広い一角。既に多くの品が売れたのだろうと推測された。
「……ああ。それじゃあ、あそこから話を聞いてみるか」
 パチン、と自分の頬を両手で挟み、ふうたは表情を変える。そうして無邪気な雰囲気で走るふうたを、灯は後ろからゆっくりと追った。
「……何が邪神だよ、下衆野郎が」
 鋭い眼光を、どこにいるともわからない男に向けて。

「お姉さん、オレ、探してる物があるんだ」
 先程灯に示された場所まで行き、その出品者に尋ねるふうた。番をしていたのはそこそこ年が行っていると思われる女性だったが、あえて「お姉さん」と呼びかけたのは里での経験からだろうか。
「昔に発売されおもちゃなんだけど……」
「あら、おもちゃをお探しかしら?」
 いくらか気分を良くした様子の出品者は、申し訳無さそうに眉を下げる。
「ごめんなさいね。実は一時間くらい前に来た男の人が全部買って行ってしまって、うちはもう売り切れなの」
「男の人……?」
 その一言に反応するふうた。やはり灯の読みは当たっているようだ。
 隣に立つ灯もそこに反応し、彼女に聞き返した。
「おい、それは本当か?」
「え、ええ。ちょうどあなたみたいに真っ黒なコートを着て、黒い手袋を両手につけて。フードも被っていたから顔は分からなかったけどね」
 思いもよらないところに食い付かれ、戸惑う様子を見せる。それに構わず灯は、
「他に何か気になったところはないか?」
 と、更なる情報を求める。
 少し思考を巡らせる女性。いくつか思い当たる点はあるようで。
「姿はあなたに似ていたけれど、身長は高かったわ。あとは……『神の加護』、なんて言っていたかしら?」
「神の加護……?」
「あまり意味はわからないけれどね」
 顎に手をやり考え込む灯。先程のような笑顔を浮かべたふうたは、女性に礼を述べる。
「ありがとな、お姉さん! おもちゃはまた別の場所で探してみるよ!」
「見つかると良いわね。それじゃあ、また」
 小さく手を振る女性に手を振り返しながら、二人はその場をあとにした。

 声が届かないであろう距離まで離れたところで、ふうたは小さく唸る。
「聞き込みから男の跡を追えればと思ったけど、一時間前ってなると難しいだろうな」
「そうだな。あと気になるのはさっきの台詞だが……」
 神の加護。疑問こそ浮かべど、今の段階では何とも判断が出来ない。
「ひとまず、ある程度の情報は得られたな」
「そうだな。後は他のみんなの報告を待とうぜ」
 灯の言葉にそう返したふうたは、二人揃って喧騒に消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

死之宮・謡
今回のターゲットって強いんだよね?情報収集とか苦手だけどターゲットとやりあうのは楽しみだからここは一つ真面目にいこうか。
って言っても情報収集ね?したことないなぁいつも仲間任せだったから…まさか駄目人間?まあ良いけど。玩具を買い漁る怪しい奴ね…じゃあ逆に私が買い漁れば向こうから何らかのアクションがあるんじゃないかな?とりあえず作戦参加中の他の猟兵にも伝えてやってみようか、何か連絡手段も必要だね、んでもって釣れたら儲けだね。楽しみだなぁターゲットさん思う存分殺しあおうぜ、既に罪もない子供殺してるんだし殺しちゃってもいいんだよな。



「エーット……ココノオモチャ、全部下サイ」
「は、はい?」
 死之宮・謡(神喰らいの狂戦士・f13193)の言葉に、店番をしていた男性は困惑した表情で聞き返す。その意図が分からなかったのか、片言故にそもそも彼女の台詞を聞き取れなかったのか。
 彼女は後者と捉え、もう一度ゆっくりと同じ台詞を述べる。
「ダカラ、此処ニアルオモチャガ、全部、欲シインデス」
「はぁ……随分お好きなんですね。マニアか何かですか?」
 変わらぬ表情のまま精算をしつつ謡に問いかける男性。ターゲットを殺す事に熱中しているという意味においては間違っていないその問いに彼女は「マア、ソンナ所ネ」と返答した。
 やがて精算を終え、商品を渡そうかという時。男性は、既に謡の小脇に抱えられたおもちゃとこれから渡す物とを見比べる。
「えっと……ビニール袋に入れましょうか?」
 遠慮がちに伝えてみれば、謡はぱあっと顔を明るくした。相当不便に感じていたのだろう。
「アリガトウ! ソロソロ持ツノニ疲レテタノヨ」
「それは良かった」
 購入した物と、ついでにそれより前に買っていた物をまとめて袋に入れる。それを手渡された謡は、不意に思い出したように、
「ソウソウ。モシオモチャガ無イ事ヲ尋ネテクル人ガ来タラ、私ノ事ヲ伝エテ貰エマスカ?」
 この様な事をしていれば、ターゲットの男と間違われるかもしれない。とはいえ他の猟兵との連絡手段を所持していない彼女は、これによって自分の行動を彼らに伝えようとしていたのだった。
 快く了承した男性に礼を言い、その場を去る謡。周辺を眺め、軽く思考する。
(さすがにまだ釣れないか……とはいえ、少なからず動揺はしているでしょうね)
 その動揺で他の猟兵の捜索が進めば万々歳だろう。
 別の店に向かいながら、彼女はその口を三日月型に歪める。
(楽しみだなぁ、ターゲットさん。思う存分殺しあおうぜ)

成功 🔵​🔵​🔴​

ミスター・クラウン
んーんんん?
こりゃ俺より外道の香りがするじゃあないかギャハハハハ!!!あ、変わんねぇかぁ俺も
まずは調査だなぁ
ターゲットが子供になってるんだぁ、犯人をよく目撃するのは他でもない子供だろぉ
ガキどもに話しかけて聞き込みと行くかぁ!

やぁやぁ!ボウヤ達?僕の名前はミスタークラウン!みんなを楽しませる面白ピエロさ!
何が見たい?マジック?ダンス?風船もあげようかい?
そうそう!みんなに聞きたいんだけどさ!この辺りのおもちゃ屋さんでおもちゃを沢山持ってる人を見かけなかったかい?知ってることなーんでもいいよ!
教えてくれた子にプレゼントもしよう!

キヒヒッ



 ミスター・クラウン(ジョーカー・f13489)がいたのは、会場から少し離れた公園だった。
 公園で遊んでいた五人の子供達に近づき、彼は愉快に話し始める。
「やぁやぁ! ボウヤ達?」
「……おじさん、誰?」
 一斉に集まり、尋ねる子供達。クラウンは両手を広げ、小さくお辞儀をした。
「僕の名前はミスタークラウン! みんなを楽しませる面白ピエロさ!」
 言うと同時、何も無かった右の手から一輪の赤い薔薇を出して見せる。途端に子供達の注目を集めたクラウンは、大げさにお道化て、
「何が見たい? マジック? ダンス? 風船もあげようかい?」
 そう言いながら彼は珍妙に舞い、いつの間にか手に持っていた風船を子供達に配る。けらけらと笑い、わっと驚く子供達は、すでに彼に熱中していた。
「うわぁー! ピエロさんすげぇ!」
「私にも! 私にもお花ちょうだい!」
「お安い御用さ! ほら、どうぞ」
 ぴょんぴょんと跳ねて訴える女の子に、今度は左手からたんぽぽを出し、その頭につけてあげる。
 目をキラキラとさせて喜ぶその子のに小さく笑いかけてから、彼は全員に向かって本題を話し始めた。
「そうそう! みんなに聞きたいんだけどさ! この辺りのおもちゃ屋さんでおもちゃを沢山持ってる人を見かけなかったかい?」
 そう問われれば、困ったように表情を曇らせて顔を見合わせる子供達。何か知っていると見たクラウンは、
「知ってることなーんでもいいよ! 教えてくれた子にプレゼントもしよう!」
と、ご褒美をちらつかせた。
 うーんと唸る子供達。いくらか待った後、一人の男の子が口を開いた。
「あ、あのね。カナちゃんとサトルくんが、おもちゃをいっぱい持った男の人についていっちゃったんだ」
「おや、それは本当かい?」
 眉をひそめたクラウンは、更なる情報を聞き出そうとする。
「それは、どのくらい前のことだい?」
「たぶん、二時間くらい前だと思う」
 その言葉を、先程花を貰った女の子が続ける。
「でもね! その人、さっき一人で歩いてるの見たよ!」
「一人! なるほど、つまりはそういう事か!」
 その二人はどこかに隠されているのだろう。そして連れられた子供は、もっと多くいるのかもしれない。
 考えてみれば、たくさんのおもちゃを持っているのに二人だけというのは不自然な話なのだ。
(んーんんん? こりゃ、俺より外道の香りがするじゃあないか。ギャハハハハ!!! ……あ、変わんねぇかぁ俺も)
 心中で高笑いをし、突然我に返るという忙しい行動を取るクラウン。納得した様子の彼は、その女の子の手を握った。
「ありがとう、皆! これは僕からのささやかなお礼だよ」
 離した女の子の手には、零れる程の飴玉が。先程の曇り空が一気に晴れた子供達は、笑顔でお礼を述べる。小さく手を振ってその場を後にしたクラウンは、口端を吊り上げて笑みを浮かべた。
「キヒヒッ」
 彼の頭上では、空が茜色に染まっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七瀬・麗治
私服でフリーマーケットへ。人気のない場所で【カルマハウンド】を使用、「業」の匂いを発する人物を探し、追跡させる。それと同時に客として本やアクセサリーなどを見て周りながら、自分の足で不審な人物を捜索。黒いローブのあからさまに怪しい男など、すぐに見つかりそうなものだが……。それらしいのを見つけたら仲間に連絡、会場を出たら〈変装〉して共に男を追跡しよう。「こちら七瀬、今からターゲットを尾行する」男が儀式場に着くまでは一切手出しはせず、単独では突入しない。仲間が合流するまで待機し、監視を続行。



 日が傾きはじめ、客足も減ってきた会場内。七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)は私服姿で歩きつつ、辺りを見回す。
「そろそろ終わりに近づいているんだろうな。これなら、不審な男を見つけるのも楽になりそうだ」
 既に彼は『カルマハウンド』で犬型UDCを放っている。その五感は彼自身と繋がっている為、異変にはすぐに気づけるはずだが。
 それは、とあるスペースに並ぶ本を見ていた時だった。
「……ん?」
 カルマハウンドを通じて伝わってきたのは、黒いローブを身に着けた長身の男。横に三人の子供を連れていることから、それがターゲットだとすぐに判別出来た。
『こちら七瀬、今からターゲットを尾行する』
 催眠術でテレパシーを送り、猟兵達に直接伝える。それから彼は素早く変装をし、自身のUDCの元に向かった。

 後をつけて数分。男は一つの施設に入っていった。
 早足にそれを追い、施設を確認する麗治。どうやらそれは、廃校となった小学校の体育館のようだった。
『こちら七瀬、ターゲットは近隣の廃体育館に入っていった。応援を求む』
 すぐに他の猟兵達に伝えた麗治は、ドアの狭い隙間から中を窺う。彼の目に飛び込んできたのは、隅で肩を寄せ合う数名の子供達と、床や壁に飛び散る大量の赤黒い液体。そして宙に浮かぶ球体に乗る多数の兎だった。
(やはり、既に子供達が犠牲になったという話は本当だったのだな……)
 助けられなかった命を思い、歯を食いしばる。だからこそ、今目の前にある命は、自らの命をかけて守らなくてはならない。
 やがて、猟兵達が集まった。それぞれ顔を見合わせて、一斉に突入する。
 空はもう、濃い藍が覆っていたーー。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『月の兎』

POW   :    満月
【透明化】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    新月
自身と自身の装備、【騎乗している浮遊岩石】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
WIZ   :    朔望
【油断や庇護欲】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【仲間】から、高命中力の【装備武器による一撃】を飛ばす。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 突入した猟兵にまず飛び込んできたのは、血生臭い匂いと部屋中に広がる血の飛沫。それらは、子供達の凄惨な末路を物語っていた。
 夜空に浮かぶ満月から降り注ぐ淡い月灯りが部屋の中に届く。
 次の瞬間、兎は子供達の方に向けて前進する。命の危機を感じ、縦横無尽に慌てて走り逃げた。

 部屋の中央部では、先のローブの男が立っている。その足元には、子供の血で描いたのであろう大きな魔法陣。
「もう少しだ……これで、この餓鬼共を殺す事で……本当に、神の力が手に入る……」
 焦がれた願いを目前にし、天を仰ぐ男は、
「……神の加護の、あらん事を」
 ニヤリと不気味に笑みを浮かべ、そう口にした。
糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

がっこう、ってほんとは、色んな事を教えてもらうところなんだろ
だったらもっと明るくて楽しくなきゃいけないのに、こんな……
この子たちが安心しておうちに帰れるように、がんばろう

【疾風】の背に乗って、一匹づつ確実に仕留めていくぜ
全速力で走ってもこれだけ広かったら全然問題ないよな

兎はぴょんぴょん飛び回ってすばしっこいだろうけど
素早さなら【疾風】だって負けてないんだから!


散り散りになったこどもたちにも気を配りつつ
もし足が竦んで動けなくなった子とかがいたら一緒に乗せてあげる

安心して
オレたちがおうちに帰してあげるから

落っこちないように腕の中に抱き込んで、声をかけてあげる


死之宮・謡
アッハハ、アハハ、アハハハハ!
最高ダ!最低ダ!期待以上ノ狂気ジャァナイカ!
サァ殺ソウ!血反吐ブチマケナガラ命ヲ削リナガラ!

不謹慎かもしれないけど私は今、最高に楽しい。強い奴は狂ってる、強者は狂者なんだ。こんな最高にぶっ飛んでる奴ならきっと最高の殺し合いが出来る筈だ。此れだよ此れこの空気を、この狂気を求めて私は戦うんだ。戦場に理性は要らない、良識も要らない。怒り?憎悪?下らないね。戦場だ、此処はもう戦場なんだ!気に入らないなら御託を並べてる暇があったら己の力で己の心を叩きつけろ!私は戦いたいから戦う。私の狂気を叩きつける。

【鬼神血統装具・真式】展開!サァ、思ウ存分殺シ合オウジャァナイカ!


七瀬・麗治
濃密な血の匂いに、一気に緊張が高まる。
あれは……兎? いや、あの気配は……UDC!

【寄生融合兵器】を発動。<武器改造>で記憶消去銃を
寄生体と馴染ませ、融合させる。
兎は小柄なため、<誘導弾>も併用して命中率を
重視した<援護射撃>をしていこう。
「可愛らしい容姿に、騙されんなよ! 人間の生き血を
啜ってきた化け物だ!」
と仲間に注意喚起。敵の透明化が始まったら、その場で
神経を研ぎ澄ましながら<力溜め>。
黒剣を構え、気配を頼りに攻撃の機会を窺おう。
寸前で奇襲を<見切り>、強い血の匂いが漂った方向へ、
<捨て身の一撃>で思い切り剣を振り下ろす。
仕留め損ねても<怪力><グラップル>で抑え込み、さらに一撃だ。


ミスター・クラウン
なんだぁ?あの兎……しかも妙に大きい魔法陣…これは間違いねぇな。召喚陣の類だぁ…。
キヒヒッギャハハハハ!!!
外道だなぁ!俺より!!

…俺より外道は嫌いだぜ

ガキンチョ共の血で書いた魔法陣があのウサギ共に何かしらの作用はしているはずだぁ…まずはこいつを塗りつぶす。
ペイントブキ…具体的にはでかい筆と水鉄砲だ!それを使ってユーベルコード【グラフィティスプラッシュ】を使うぜ!
お絵描きピエロの登場だァ!アイツが作った陣を俺の陣へと塗りつぶすぜ!!
テメェの苦労を一瞬でパァにしてやるぜギャハハハハ!!!
それで注意も引けるし陣も消せる…

道化師ってのはおどけるべきとこでおどけるんだぜ!ギャハハハハ


五條・桜花
途中から参戦ですが頑張らせていただきますよ
兎ですか……私になじみのある動物ですが……
しかも油断や庇護欲を与えた相手になんて卑怯な
可愛い外見につられたら、大ダメージをもらうわけですね

油断大敵です
どれほど可愛いとしても倒すべき敵です!
子供たちの犠牲を増やさないために私頑張ります

まず私は彼らを可愛いと思ってはいけないと
そう、その血まみれの武器は……彼らの血に染まっているのですね
ならば私は、完膚なきまであなた方を倒します

我が桜よ、子供たちの安寧を願え、そして咲き誇り怒りの吹雪を巻き起こせ!



 鼻を抜ける強烈な鉄の匂いに、その場は一気に緊張が高まった。
 そこで跳ね、或いは球体に浮かぶ兎を見て、七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)は眉をひそめた。
「あれは……兎? いや、あの気配は……UDC!」
 それに気づいたのは、自らに宿したUDCと同じ空気を感じ取ったからだろう。目を見開いた麗治は、流れるような動作で記憶消去銃と自身の寄生体とを融合させ、引き金を引く。
 自分の近くに差した光線に慌てて逃げる一羽。抱える小槌を身の丈以上に大きくするそれは、だが振り下ろす前に直撃した麗治の熱光線に弾けた。
 その横でミスター・クラウン(ジョーカー・f13489)は、球体に浮かび子供達を追いかける対象に、訝しげな視線を向ける。
「なんだぁ? あの兎……」
「可愛らしい容姿に、騙されんなよ! 人間の生き血を啜ってきた化け物だ!」
 声を張り上げて注意を喚起する麗治を気にも止めず、続けて月明かりを浴びて鈍く輝く魔法陣に目をやる。
「しかも妙に大きい魔法陣……これは間違いねぇな。召喚陣の類だぁ……」
 舐るように、どこか可笑しそうに口にするクラウン。次の瞬間、地獄から湧き上がるような笑い声がその空間に響き渡った。
「キヒヒッギャハハハハ!!!」
「うわぁっ! な、何だよ!」
 突然の笑い声に、糸縒・ふうた(朱茜・f09635)は尻尾を立てて大きく驚いた。そんな彼に構うこと無く、クラウンは瞳孔すら開き、狂ったように笑い続ける。
「外道だなぁ! 俺より!! ハハハハハッ!」
 そうして一通り笑った彼は、ピタリとその笑いを止める。愉悦に満ちたその表情を無に変え、声を落とした。
「……俺より外道は嫌いだぜ」
 小さく呟くや否や、素早く銃型のペイントブキを引き抜き、鈍く光る魔法陣に向けて数発放つ。精密に練られた術式を鮮やかな緑で上書きした。
「お絵描きピエロの登場だァ! テメェの苦労を一瞬でパァにしてやるぜギャハハハハ!!!」
 再び顔を愉悦に満たし、そこから飛び出すクラウン。巨大な筆を魔法陣に乗せ、黄色いインクで術式を壊してしまった。
 クラウンが暴れる様子を遠目で見ていたふうたは、困惑を顔に浮かべる。
「な、何だったんだ……?」
「あ、でも見てください! 兎の動きが……」
 五條・桜花(六花の元に咲く桜・f03321)が指をさした先。そこでは兎の動きが明らかに鈍っているように見えた。小槌を大きくしていた個体はそれを元の大きさに戻し、透明になりかけていた個体も姿を現していた。
「魔法陣の術式は邪神を降臨させるものだと思っていましたが、兎の行動にも影響を与えていたのですね」
「そうだな。とりあえず俺は子供達を……」
 そう言いかけた時、またしても自陣から感じられた異常を肌に感じる。思わずそちらに顔を向けると同時、自身の物であろう血を全身に纏った死之宮・謡(情緒不安定の狂戦士・f13193)から、甲高い笑い声が聞こえた。
「アッハハ、アハハ、アハハハハ! 最高ダ! 最低ダ! 期待以上ノ狂気ジャァナイカ!」
「こ、今度はなんだ……?」
 ついに呆れを見せるふうたと、困ったように苦笑を浮かべる桜花。勿論二人に構うことを知らない謡は、強く地面を蹴り、光の如き速さで兎の近くに移動する。
「サァ、思ウ存分殺シ合オウジャァナイカ!」
 腕を振るって見せれば、纏う魔の血が鋭利な斬撃に代わり、兎の体を切り裂いた。鮮血が飛び散るのも見えないとばかりにもう一羽、更に一羽と仕留めていく。
 きっと彼女には、子供を利用した男に対する怒りも憎悪も無いのだろう。ただ純粋に闘うことを楽しんでいるのだというのは、享楽に満ちた笑顔から容易に読み取れた。
 彼女の戦いぶりをただ見ていたふうたと桜花に、麗治は黒剣を構えて声をかける。
「おい、ぼーっとしている暇はないぞ!」
 こちらに向かってきた数羽の兎から避け、一気にそれらを薙ぐ。
 自らに返り血が飛ぶのを気にせず次々に斬っていく彼を見て、桜花は
「……ああ、そうでした!」
 夢から覚めたようにはっと声をあげる。
「我が桜よ、子供たちの安寧を願え、そして咲き誇り怒りの吹雪を巻き起こせ!」
 自身の武器を無数の桜の花びらに変え、腕を振り上げれば、風に乗って一直線に兎の体を貫いた。
 次々に血の華を咲かせる桜花は、ふうたに向けて声を張る。
「子供達をお願いします!」
「了解。おいで、疾風!」
 どこかに呼びかければ、いつの間にか現れた大きな狼の姿。その大きな背に飛び乗り、一流の風が吹くように駆ける彼らは、軽やかなステップで兎を払い、踏み付けていく。
 そして隅で震えている子供の側に行くと、ふわりと降り立ち、手を差し伸べた。
「おいで。もう大丈夫だからな」
「う、うん……」
 ゆっくり伸ばされた腕を掴み、疾風に乗せる。外まで出した彼は、その子を降ろし、再び子供を救出する為疾風と駆けた。

 何往復かすれば、子供は皆外に連れられた。そして、体育館の中には、猟兵と男を残して何もない。飛散する血は来た時より数を増していたが、そこに新たな子供の血は一滴も無かった。
「さて、後はお前だけだ」
 そう言ったのは誰だったか。白い月光を背に浴び、鋭い視線を向ける猟兵達と、その男は対峙した。
 しばらく無言のままの男。痺れを切らし、前に出ようとした、その時。
 男がローブを脱ぎ捨てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒装の破壊者』

POW   :    砕け散れ
単純で重い【拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    贄となれ
自身の身体部位ひとつを【異形の大蛇】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    磔になれ
レベル×5本の【物理】属性の【邪神の肉で作った杭】を放つ。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は麻生・大地です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ローブの下にあったのは、およそ人間の姿では無かった。
 全身を赤黒く染め上げた肌は、既に普通の質感では無い。
 背中に深くつけられた傷口からは血が溢れ、羽衣のように形を作っていた。

 男は語る。もう儀式のほとんどは終わっていたのだと。邪神の完全な力は無くとも、そのほぼ全ては我が物になっていると。
「これから世界は俺の手によって支配される! 貴様らの命を、ここで刈り取ってなぁ!」
 大層愉快とばかりに高らかに宣言する男。自らの勝利を確信した彼は猟兵達に向け、小さく呟いた。
「神の加護のあらん事を」
 邪悪に口の端を吊り上げながら。
糸縒・ふうた
アドリブ・絡み・改変等歓迎

今まで、どれだけの子どもたちが犠牲になってきたんだろう……
みんな、お前の勝手な野望のために生まれてきたわけじゃないのに!
絶対! 許さない!

【疾風】と一緒に戦うよ

積極的に向かっていって
爪で引っ掻いて牙で噛みちぎるぜ

全身カチコチで攻撃が効いていなさそうだったら、背中を狙ってみよう

もしかしたら傷からなら牙と爪が食い込みやすいかもしれないから

相手が身体のどこかを大蛇に変形させたら、逆にその頭に噛みついていくぜ
オレと【疾風】のふたりで、噛みちぎってやる!



「何が支配だよ……何が神だよ! お前の勝手な野望の為に、どれだけたくさんの子供達が犠牲になったと思ってるんだ!」
 喉が裂けそうになる程叫ぶ糸縒・ふうた(朱茜・f09635)。怒りを込めて睨みつけた彼は再び疾風に乗り込んだ。
「絶対! 許さない!」
 力強く地面を蹴り上げ、一気に距離を詰める。鋭い爪を怪物の肌に突き立てるが。
「効かないな」
 鼻で笑う怪物の強堅なそれには、傷一つ付いていない。
 驚いたように目を見開くふうた。少しも動じない怪物が静かに右腕を前に出せば、途端にその肘から下が大蛇の姿に変貌した。
「我が贄となれ」
 小さな宣言とたまに太い体をくねらせ迫り来る異形。身を躱して攻撃を避けた疾風がそれに噛み付くと、頭を振るって引き千切った。
 その勢いのまま男の背後に回ると、背中についた深い傷に気付いた。
(あそこからなら攻撃が通るか……?)
 そう考えた彼は、一気に背まで跳躍し、鋭い爪を突き刺した。
「ぐぁあ!」
「よし!」
 呻きをあげる男に確かなダメージを感じたふうたは、その爪で背中の肉を抉り取る。再び血を吹き出し大きく呻いた男に、ふうたは怒る瞳を向けて叫んだ。
「犠牲になった子たちは誰も、お前の勝手な野望のために生まれてきた訳じゃないんだ! 死んで後悔しとけよ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

死之宮・謡
アハハハハ、いよいよ本命だ。待っていたよこの時を。邪神の力は保々入手後?最高じゃぁないか!嗚呼、どうせなら、完全な力を手に入れた後の君と戦いたかったよ…到着前に儀式が終わっていたら止められなかったのに…ククク、不謹慎かなぁ怒られちゃいそうだ。何せ今回の面子は正義感の強そうな奴等がいるからね。全くダークセイヴァーじゃこのくらい日常茶飯事だってのに…ま、こういう手合いは其れも許せないんだろうがねぇ?
おっと、今は目の前のコイツに集中だ。嗚呼愉しそうだ、コイツとの殺し合いはさぁ。

命削リナガラ、心躍ル殺シ合イヲシヨウジャナイカ!【天燐血統装具】展開!



「アハハハハッ! イヨイヨ本命ダネ!」
 興奮を隠さず甲高く笑う死之宮・謡(血の王・情緒不安定の狂戦士・f13193)。天穹血戦体と化した彼女は、絶えず血を滴らせる大振りな剣ーー天燐血統装具を展開した。
「死ハ何時モ隣ニ在リテ我ハ其レヲ示ス者。命削リナガラ、心躍ル殺シ合イヲシヨウジャナイカ!」
 狂気じみた彼女は愉しそうに笑い、男に向かって大剣を振り回す。縦横無尽に飛散した赤い水滴は、鋭利な刃となって怪物の身体を切り裂いた。
「小癪な……喰らえ!」
 歪に膨らんだ彼の腕から生成された幾つもの杭が謡の元に飛んでくるが、彼女はそれを物ともせずに躱していく。
「アハハ、温イナァ! モット本気ヲ見セテヨ! ネェ!」
 自らの命が削れる感覚すら愉しむ彼女が一際大きく打ち振るって放った一撃は、刹那の内に怪物の硬い皮膚に大きな傷が斜めに走った。
「クソがっ……!」
 痛みに耐えきれず、怪物は膝をつく。咳き込むと、赤黒い血が一緒に吐き出された。
 興ざめした表情の謡。大した手応えでは無かったのか、天燐血統装具を解除し、それを見据えた。
「ドウセナラ、完全ナ力ヲ手ニ入レタ後ノ君ト戦イタカッタヨ」
 ハァと溜息を吐き、謡はその場に背を向ける。窓からは、雲に隠れた月が僅かに光を注いでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七瀬・麗治
……ひどい業の匂いだ。鼻が曲がりそうだ。腐ったゴミは、処理しないとな?

眼鏡を外し、【闇堕ち】を使用。肉体を、別人格「ロード」に明け渡す。青いUDC寄生体が体の表面を覆い、〈怪力〉〈グラップル〉で真っ向からの格闘戦を挑む。
「道化師に吸血鬼、邪神の使徒、そして魔人……今宵は人外の宴か! クククッ、実に愉快だ!」
敵の攻撃は、〈呪詛耐性〉で持ちこたえつつ、覚悟を決めて受け止めて動きを拘束しよう。黒剣で何度も斬りつけて生命力を吸収。〈毒使い〉の技を生かし、鋭く伸びた爪で神経毒を打ち込んでやる。

「世界を支配するだと? 貴様、『世界』がいくつあるのかも知らんだろう。まったく哀れな奴よ」


ミスター・クラウン
キヒヒッ
まぁー大方そうだと思ってたぜ…
だが完全では無いなぁ?相当な力はあるみてぇだが、隙さえあればつけこめれるぜぇ

ギャハハハハ
忘れてねぇとは思うがよ!!俺様は召喚陣を塗りつぶしたが、塗りつぶしただけじゃあねぇぜ!塗りつぶした場所は俺の陣地!ここは俺様の領域だぁ!!

そして、先程の兎は魔法陣を封じた時弱まった…この召喚はどこかから魔力を供給し続けることにより本来の力が出るというものと推測するぜ!
つーまーりー…てめぇも例外じゃあねぇ…どこかにてめぇに魔力を送る魔力源があるはずだァ…
他の猟兵が頑張ってる隙に俺はそいつを探して手元のアサルトとペイントブキで破壊してやるぜぇ!



「キヒヒッ。やっぱり儀式をほとんど終えていたか」
「……ひどい業の匂いだ。だが、先程までの戦闘を見ている限り、脅威となり得る力はそこまで持っていないように見えたが」
 既に勘付いていた様子のミスター・クラウン(ジョーカー・f13489)が可笑しそうに笑う横で、先程までの戦いを見ていた七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)が不思議そうに顎に手をやる。
 確かに、あれだけ豪語していた力があれだけとは思えない。実際兎と戦っていた時には、強大な雰囲気を感じ取っていたのだから。
 クラウンは広い空間を見渡し、それに返す。
「あの兎は魔法陣を塗った事で力が弱まった。ってこたぁ、あいつらは魔力を持続的に供給することで動いてたってことだ!」
 そしてその原理はあの怪物にも言える事だろう。クラウンはそう語った。
「俺様は供給源を潰す。だからそれまで時間を稼げよ」
「了解した。ところで……」
 ふむと頷いた麗治は、眼鏡を取り、口端を吊り上げた。
「時間稼ぎの間に倒してしまっても構わないんだよな?」
「キヒヒッ。上等だよ!」
 言い放ったクラウンは銃型のペイントブキを手にどこかへ走っていく。それを見送りながら、麗治は自らに宿るもう一人に声をかける。
『こちら七瀬、これよりカードの封印を解除する』
『ククク、やっと出番が来たか。ここからは、私の自由にやらせてもらうぞ……!』
 同じ声ながらやや闇が入ったような声で返された次の瞬間、全身を青いUDCが覆った。
 一瞬脱力したように腕をだらりと下げる。顔を動かし、そこにいる人物を確認すると、背を震わせた。
「道化師に吸血鬼、邪神の使徒、そして魔人……今宵は人外の宴か! クククッ、実に愉快だ!」
 そうして一通り笑うと麗治、もといロードは黒剣を構えて怪物に向かって駆けていく。
「くたばれ!」
 黒剣を振り上げ、その刃を怪物に突き立てようとするロード。だがそれが怪物に当たることはなかった。
「なっ!」
「遅いな」
 目にも留まらぬ速さで彼の後ろに回った怪物。そこから振るわれた豪速の拳を、寸でのところで黒剣で防いだロードは、クラウンに向かって叫ぶ。
「どうなっている!? コイツ、明らかに動きが速くなっているぞ!」
「ちょっと待ってな! 今考えてるからよぉ!」
 ロードの声を受けたクラウンは、ぐるりと辺りを観察する。
 体育館として特段変わったところは見当たらない。血が飛散していることと魔法陣があること、そして今が夜であることくらいか。
(とはいえ、魔力の供給源だろうと思った魔法陣は消したしな……ん?)
 彼が目を付けたのは、体育館に広がる大量の血痕。月光を浴びたそれは、所々で魔法陣同様鈍い光を放っていた。
「……なるほど! この空間全てが魔法陣と同じ働きをしてたって訳か!」
 光を帯びているか否かの違いは、恐らくその血が子供の物か兎の物かの違いだろう。そういえば、先程月を隠していた雲は綺麗に無くなっている。
「だとすりゃあ、俺様はそれらを塗りつぶせば良いってことだな! やってやろうじゃねえか!」
 言うと同時、光る血痕に向けてインクを放っていく。壁に、床に、広く飛散した血痕を、緑で次々塗り潰していった。
 やがて空間のほとんどが緑でいっぱいになったところで、クラウンはロードに向けて問いかける。
「おい、どうだ!?」
「だいぶ動きが鈍ってきた! これなら止めを刺せそうだ!」
 ロードの眼前には、先程の人物と同じとは思えない程弱った怪物の姿。苦しそうに肩で息をするそれに、ロードは躊躇なく黒剣で斬り付けていく。
「ガハッ!」
 血反吐を吐きつつ背中から倒れこむ怪物。それを見下し、ロードは
「惨めだな。最期に、貴様に一つ教えてやろう」
 長く伸びた爪で神経毒の用意をしながら問いかける。
「世界を支配すると言っていたが、貴様、『世界』がいくつあるのかも知らんだろう。最期まで哀れだったな」
 そんな言葉を吐き捨て、彼は怪物の首元にブスリと爪を刺し、神経毒を流し込んだ。

 力を失い、邪神が剥がれた男を見下げ、元に戻った麗治は静かにクラウンに問う。
「これで、犠牲になった子供も報われるだろうか?」
「報われなきゃ困るだろうよ。こんな外道野郎の所業は、これからも許されねぇけどな」
 笑うこと無くそう答えたクラウンに、麗治は小さく頷く。
 そして猟兵達は、子供達を元の家に帰すために、体育館を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月07日


挿絵イラスト