うとうとと、夢の中に居たはずの彼は、肌を刺す風の冷たさに目を覚ました。
季節外れの寒風、凍える程の冷気が、ごうと鼓膜を揺らす。
突風か、嵐か。そうではない、自分が『落ちている』のだと気付いて、彼は手に触れたそれをがむしゃらに掴み取った。
青く輝く柔らかな、それが何かなど考えている暇もない。向かう先へと目を遣れば、湖の中心に浮かんだ、チョコレートケーキのような島が見えた。
●氷菓の国の異変
「君達は、『ラクトパラディア』という国を知っているかな?」
集まった猟兵達に向かって、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)はそんな風に問いかける。彼が示しているのは、アリスラビリンスにある不思議の国の一つ、何もかもが甘いアイスで出来ているという、極寒の国だ。
かつて猟兵達も、その建国や発展に関わったその場所には、『ピーノくん』と呼ばれる愉快な仲間達がのんびりと暮らしている。防寒服に身を包んだ雪だるまのような見た目の、気の良い連中のはずなのだが……。
「ちょっと、ねぇ。彼等が予知に出て来たのさ」
そう言って、グリモア猟兵はフードの下で眉根を寄せた。
アリスラビリンスの常と言うべきだろうか、この国にもアリスが訪れるようなのだが、そのアリスが、デスゲームに巻き込まれて命を落としてしまう。
予知として、彼が見たのはその一幕。アリスを追い詰め、とどめを刺したピーノくん達が、そのままアリスを食べてしまう光景だった。
「何かの間違いだと思いたいんだけど……捨て置くわけにはいかないからね。君達には現地の調査と、アリスの救出をお願いしたいんだ」
もちろん必要とあらば、愉快な仲間達との戦闘を行ってもらう必要もあるだろう。
「まあ……恐らくオウガが黒幕なんだろうとは思うんだよね」
ふむ、と首を傾げながら彼は言う。
「一応僕達も発展に手を貸してきた場所だもの。オウガに好き勝手使われるのは面白くないよねえ」
だから、どうか君達の手で、事態を解決してほしい。心してかかってね、と言い置いて、オブシダンは一同を送り出した。
つじ
今回の舞台はアリスラビリンス、全てがアイスで出来た国で、アリスを救い出してください。
第一章では、ちょっととんでもない事になっているこの国のトラブルに対処してもらい、第二章、第三章でデスゲームに巻き込まれたアリスの救出と戦闘を行っていただきます。
●アリスの少年
空からこの国に降ってきました。
第一章の終わりに猟兵達と遭遇することになります。
●氷菓の国『ラクトパラディア』
アリスラビリンスにある不思議の国の一つ。凍った湖の真ん中にある島で、木や岩、花に果実、建物まで全て甘いアイスで出来た国です。
以前猟兵達によって開拓された国で、観覧車付きのお城、氷の樹のような見張り台、水辺の劇場など様々な施設があります。
●愉快な仲間達『ピーノ・オブコート』
通称『ピーノくん』。黒い防寒着に身を包んだ雪だるまのような見た目をしています。
基本的には気の良い怠け者ですが、六人一組になると何故か異様な勢いで働き始めます。攻撃手段は凍える吐息と、氷切のノコギリです。
猟兵達をはじめ、来客には好意的なはずですが……?
以上です。それでは、ご参加お待ちしています。
第1章 冒険
『溶けるアイスの国』
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POW : 溶けるアイスを食い止める 原因を排除する
SPD : 住人達に避難指示を出す 安全な場所を確保する
WIZ : 溶ける原因を突き止め、対策を講じる
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ものがたりのはじまりはじまり
青く輝くマントで風を受けながら、少年は公園の真ん中に着陸しました。いつかの名残、広場の中央に集められたふかふかのアイスケーキの山の上です。それが良い具合にクッションになってくれたので、少年に怪我はありませんでした。
「ワー、だれか落ちて来マシタヨー」
「猟兵サンですかネー」
周りに居た愉快な仲間達が、なんだなんだと集まり始めます。
「もしかして……」
「アリス?」
実のところ、この国にアリスが迷い込むのは初めてです。これはちょっとしたお祭り騒ぎになるような大ニュースなのですが……それどころでは、ありませんでした。
「――ンン?」
頬を炙る、空からの熱気。それに煽られるようにして、世界が溶け始めたのです。
じりじり広がる熱と、上がる気温。ほとんどのものがアイスで構成されているこの国は、それに耐えられるように出来てはいません。
建材にアイス以外も使っているお城はまだ大丈夫でしょう。けれど、それ以外は。
「お店の中に雨が降ってマスヨ?」
「アーッ、屋根が溶けてる!」
商店街の家々はどれも氷で出来ています。防寒着や氷のお花、氷のランプなど、このままでは商品もダメになってしまうでしょう。
森の中では、最も熱に弱い状態の、アイスの果実が真っ先に崩れ始めています。
「モウすぐ食べ頃ダッタのにー!」
「急いでー! 早く回収シテー!」
そして街を囲う城壁もまたぐらついて、最も不安定だった、とある猟兵を模した氷像が倒壊しました。
「まあソレは良いか」
「そうダネ」
とはいえ、壁の中でも脆くなった補修跡が、この後どうなるかはわかりません。
森の中に建つ、見張り台の上。猟兵達はそこに転移してきました。そこからならば、そんな国の惨状がすぐにわかります。この緊急事態にあっても、六人揃っていないピーノくんの動きが鈍いままなのも見て取れます。こちらも、溶け始めた見張り台が小さく揺れるのを感じて、猟兵達はみな、急がなくてはならないことを悟りました。
鈴木・志乃
な ん じゃ こ こ は
うわーーっ急がないと!!!
アド連歓迎
氷で補強する? ダメだまた溶けて来る!
ビニールシートで水を止め……そうじゃない!
そもそも原因はなんなんだよ、太陽か!?
分からん!! 分からんから……
UC発動
早業高速詠唱全力魔法で、国全体にオーラ防御を展開
保護膜を張って熱気から国を守るよ!
でもこれ根本解決になってないんですよねえ!
同時に手持ちの『雨降り小僧』から生み出した水を
高速詠唱で急速冷凍させて氷に……
あー上手く行くか分からんけどやるしかない
ピーノさん達無事ですか!
お願いだから今の内に色々固め直して!
あああ早く他猟兵来てくれ
熱気はなんとか食い止めるからぁ!
●空を覆う
なんじゃここは。転移した鈴木・志乃(ブラック・f12101)は、目の前の光景にそんな声を上げる。
放っておいたアイスのように溶けかけた世界。零れる甘い匂いが、いずれ完全に溶け落ちてしまうのは火を見るより明らかで。
「うわーーっ急がないと!!!」
街に入れば、そこに住まう愉快な仲間達もどうすればいいかわからない様子。
「ワー、猟兵サン、いらっしゃーい」
「そんな呑気な!」
歓迎の意を伝えてくれるのは嬉しいけども。とりあえずそれどころではないだろうと志乃は思考を巡らせる。
「氷で補強する? ダメだまた溶けて来る! じゃあビニールシートで水を止め……いやそれ意味ある!?」
そもそも原因は何だ、太陽か? それが正しいかもわからないし、だとしたらどうすれば良いかも不明だ。一手で全てを覆す手段など、現状で思い付けるものではない。だからこそ、今できることは。
「時間を稼ぐ……!」
祈りを、『祈願成就の神子』の力を乗せて、志乃は全力を以って島全体を覆うほどの防御膜を形成する。
「ワーイ、ヤッター!」
「暑くなくなってキマシタヨー」
やはり熱気は空から来ているようで、彼女の展開した壁はそれを和らげることに成功した。
「ピーノさん達無事ですか!」
「オカゲサマでー」
「ありがとう猟兵サーン」
「あーーーー待って帰らないで! これ根本解決になってないから!!」
素直に喜んでいる愉快な仲間達を引き留めつつ、志乃は手にした小箱――雨降小僧から生み出した水をさらに魔力を使って冷却し、氷に変えて、溶けかけた建物を補強していく。
しかし如何にも、国全体だの街全体だの一々範囲が広すぎる。細部まで手を届かせるには他の協力が必要だ。
「ピーノさん達、お願いだから今の内に色々固め直して!」
「エー、僕達お昼寝の時間ナノニー」
「猟兵サンもアイス食べマス?」
彼女が促すのに応えてピーノくんたちも働き始めるが、元来の性根のためかその動きはいまいち鈍い。差し出された美味しいアイスを受け取って、志乃は思わず頭を抱えた。
「あああダメだ危機感が伝わってない! 他の猟兵早く来てーーー!!」
ちょっと悲鳴に似た声は上がったが、とにかく、国を襲う熱気は薄く揺らいでいく。こうして志乃の確保した時間を、仲間達はきっと有効に使ってくれるだろう。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【花簪】
此処へ来るのは去年の秋以来でしたが随分気温が上がっていますね
ピーノ殿達の建物もアイスなのですから住処を失う訳にはいきません
……アイスの魚も泳ぐ前に溶けてしまうのでは
熱気は空からですから対処は難しそうです
私が使う水霊『紫水』も水壁であれば、空からの熱を凌ぐ事は出来そうですが
この水壁も熱でぬるくなってしまえば厳しいでしょうね
私もピーノ殿には近くにあるアイス等を抱えて貰い
少しでも体を冷やすようにしながら避難を
そういえば彼等は6人になれば働きものになるのでしたね
誘導して集め、6人そろった所で凍える吐息を使わせましょう
私はその間に視力を使って周囲を確認
アイスの溶ける所が早い場所等、元凶を探します
ジョン・フラワー
【花簪】
このまま全部溶けたらアイスの海になっちゃう?
うーん、見てみたいぞ! アイスの魚が泳いだりするかもしれない!
竜のアリスが沈んでしまうからアイスの海はまたの機会にしよう
まずはそうだな。建物が崩れるのを防がなきゃ!
ふーふーしたら冷えるかな? 藁の小屋相手なら負けないんだけど!
簪のアリスは冷たくできる? 僕のおてては暖かいからなあ
そうだ! アイスなアリスたちにふーふーしてもらおう!
大事なものをお部屋に集めて、みんなでふーふーしたら固まるかもしれない
まとまってないアイスなアリスを運んで集めてお部屋ごと冷やす作戦だね!
がんばれがんばれ! 天井まで凍らせるんだ!
僕も精いっぱい応援しちゃうぞ!
●ふーふーする
「これは……随分気温が上がっていますね」
「春が来たのかな? これならまた別のお花が咲きそう!」
防寒着の襟元を開けながらの月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の言葉に、ジョン・フラワー(まごころ・f19496)が頷く。凍てつく寒風も随分和らいで、過ごしやすく感じるほどなのだが。
「ピーノ殿達の建物もアイスで出来ていましたから、このままでは……」
「アイスの海が出来ちゃう?」
夜彦の言葉から着想を得たジョンが、そう目を輝かせる。頭に浮かぶのは、溶けたアイスが混じり合う、マーブル模様のシェイクみたいな海だ。
「うーん、見てみたいぞ! アイスの魚が泳いだりするかもしれない!」
「……アイスの魚も泳ぐ前に溶けてしまうのでは」
「そうかなあ……あ、でもそれだと竜のアリスも沈んじゃうね」
またの機会にしよう、などと言い合いながら、彼等は愉快な仲間達の住む街の方へと駆けていった。例の薔薇園がどうなったのかも気になる所だが、最優先は彼等の住処だろう。たとえ世界が救われたとしても、宿無しになったのでは素直に喜べまい。
足早に二人の向かったそこは、氷で出来た民家の立ち並ぶ住宅地。幾つも並んだ白い小屋が、表面を濡らして半透明に輝いて見える。
「ヤダー、おうちが透けちゃいマスヨー」
「何だかグラグラしてきてマセン?」
「見てよ簪のアリス! アイスなアリス達も困ってる!」
「私には相変わらずの様子に見えますが」
一応慌ててはいるのだろうか、小屋の外でおろおろしている……と思われるピーノくん達と合流し、ジョンも一緒に首を傾げて見せる。
「建物が崩れるのを防がなきゃ! ふーふーしたら冷えるかな……簪のアリスはできる?」
「そうですね、でしたら――」
来たれ、『紫水』。夜彦の手により生み出された水壁が、住宅地と空を隔てる覆いになる。
「さすがだね、簪のアリス!」
「スゴーイ、ちょっと涼しくなりマシタヨー」
一同の歓声を聞きながらも、夜彦の表情は晴れない。一時的に熱は遮断できたが、このまま水壁が温まれば同じことだ。
「何か、他にも手を打ちたいところですね」
もちろん元凶を絶つのが一番だろうが、それまで時間を稼げる材料が欲しい。
「そうだ! アイスなアリスたちにふーふーしてもらおう!」
「エッ」
「僕達デスカー?」
微妙にはたらきたくないオーラを放ち始める彼等を、ジョンが笑顔で捕まえる。
「さ、大事なものをお部屋に集めて、みんなでふーふーして固めてみよう!」
「なるほど、そういえば彼等は、6人になれば働きものになるのでしたね」
心得たと頷いて、夜彦もそれに合わせて動き出した。
その場にいる頭数を数えて、二人は避難を促す傍ら数名のピーノくん達を連れて――というか運んで、数を合わせていく。
「大事なものは自分で抱えていくんですよ」
そうしてアイスを抱いていれば、彼等の冷たい体温もきっと保てるだろうから。そんな心遣いを加えながら、いくつかの小屋に彼等と物品を運び込んで。
「よーし、それじゃ頼んだよアイスなアリス達!」
「ハーイ!」
整列、と突如きびきびした様子になって彼等が並んだ。
「がんばれがんばれ! 小屋を吹き飛ばすくらいの気持ちで!」
そういうの得意だよ、と言いながら、さあ天井まで凍らせてみようとジョンが促す。
「吹き飛ばしたくはないんデスケドー」
「そうだね! じゃあ北風になった気持ちでいってみよう!」
はい、せーの。合図に合わせてピーノくん達が息を吹いて、その小屋の室温が一気に下がるのをジョンは感じる。
ぴきぴきと小さな音が壁から、柱から響いて、彼等の住居の表面がまた固く戻っていった。
「とりあえず、ここは大丈夫そうですね」
「うん、アイスなアリス達も頑張ってくれたし!」
小屋の外で、絶つべき元凶を探していた夜彦と合流し、ジョンはそう頷いて返す。皆で吹かせる凍てつく風は、中々のものだった・
……ああ、でもこの話はいつ聞いたんだっけ。確か、北風は勝負に負けてしまうのだ。
二人は共に、空を見上げる。
そう、最後に勝ったのは、赤く輝く――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神埜・常盤
さつま君/f03797と
あァ……アイスが溶け始めてる
あの薔薇は無事だろうか
勿論、滑り台も心配だ
氷属性の風を此の国に吹かせながら
ラクトパラディアを探索しようか
冷気でアイスを固められると良いンだが
さあ、目指すは滑り台のある公園だ
然し……さつま君の補修は可愛いなァ
こんな時だが思わず頬が緩んで仕舞うよ
さて、優先すべきは……ピーノ君の確保かね
この国のことは彼らが何より詳しいだろう
目的地に辿り着いたら声を掛けて
彼らを六人組に振り分けて行くよ
ちゃんと揃うと君達は本当に勤勉に成るねェ
さあ、君達が守りたいものは何かな?
熱気は氷属性の風で遠くに追い遣って
さつま君と一緒に、此の国を冷やす手伝いをしてあげよう
火狸・さつま
常盤f04783と
わぁあああ!あったかい!!
周囲きょろきょろっ
あちこち、とけてきて、る、ね
ひんやり美味し薔薇も、滑り台も、無くなっちゃ、ヤだ
常盤の風、ひえひえ!だね!
いつもスマートでかっくいい!なんて隣見て尻尾ふりふり
俺もやる!と、てってけ崩れそうなところへ駆け寄っては
彩霞に冷気纏わせて氷属性攻撃…ちょんっと切っ先触れさせ応急処置!
雷火の雷撃も今日は氷結属性の稲妻!
範囲攻撃で周囲の建造物凍らせつつ滑り台のある公園へと向かう
ピーノ君、集めなきゃ、ね!
こくこく頷き、はぐれピーノ君見れば
一緒、行こ!と声掛けて
ピーノ君、ほんと、6人揃うと俊敏…!
その働きっぷりに感心しつつ
常盤と一緒にひえひえお手伝い!
●冷やして集めて
「わぁあああ! あったかい!!」
降り立ったそこで、早速火狸・さつま(タヌキツネ・f03797)が歓声を上げる。いつか訪れた時よりも、その空気は格段に暖かい。周囲をきょろきょろと見回す彼に次いで、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)もまた、この国の直面した惨状に目を向ける。
「あァ……アイスが溶け始めているね」
「ほんとだ、あちこちとけてきて、る、ね」
「ここからは見えないけれど、薔薇の庭園は無事だろうか……」
「ひんやり美味し薔薇……あ! それに、滑り台、も!」
「ああ、そちらも心配だね」
さつまの言葉に頷いて、常盤は街の方角――その中心にある、滑り台を構えた公園へと足を向けた。そうして、足を進めながら指先を一つ振り、渦巻く風を呼び起こす。『夜王より給わす喝采』、紡ぎ出すは氷属性の風。往時のこの国を思い起こさせる、肌を刺す冷気が広がっていく。
「ひえひえ……」
「そうだね、これで少しはマシになると良いンだが」
それを隣から見て、「いつもスマートでかっくいい!」と尾を振るさつまも、負けじと目に付いた民家へと駆けて行って。
「えい!」
剣の切っ先で軽く触れれば、纏わせた冷気が伝わり、流れ落ちる雫を氷に戻す。ついでに尾から放射状に黒い雷も放って、そこに含ませた氷の属性を辺り一帯に広げていった。
「いやあ、さすがだねえ」
胸を張るさつまに賛辞の言葉を投げて、常盤はそんな様子に頬を緩めた。この国にとっては緊急事態なのだろうけれど、そこはそれ。補修に駆け回るその姿は、やはりどこか微笑ましい。
「滑り台、まだ大丈夫みたい?」
「形は崩れていないが、表面が少し溶けているね。今ならとてもよく滑りそうだ」
「ほんとに!?」
思わず目を輝かせたさつまを窘めつつ、常盤は辺りを見回す。黒い防寒着に白い顔、歩く雪だるまのような愉快な仲間達を探して。
「まずは、ピーノ君の確保かね」
この国に詳しい人材と言えば当然彼等だ。できれば話を聞きたいところ。
「そうだね、はぐれピーノ君も、探そ!」
さつまもそれに頷いて返す。ピーノくん達には、六人一組になるとその真価を発揮するという謎の特徴がある。それを最大限生かしてやるためにも……。
「アー、この国の名付け親の猟兵サンじゃないデスカー」
「元気にしてマスー?」
「ああ……君達も相変わらずのようで何よりだよ」
「この街が溶けたら困る、よ。一緒行こ?」
常盤とさつまは協力して彼等を説得し、ばらばらに動いているピーノくん達を一箇所に集め始めた。急な事態に方針も定まっていないのか、危機感もまちまちな彼等の協力を、順番に取り付けていく。そして。
「これで、六人かな――」
「僕等の出番デスカー?」
「任せてください猟兵サン!」
六人揃ったピーノくんが突如整列して敬礼する様子に、常盤は小さく笑みを浮かべた。いや、先程までとは大違い。さつまはさつまで感心したように頷いている。
「ああ、このままだと街が無くなってしまうだろう? 君達の手を借りたいんだがね」
「ハーイ!」
「ヨロコンデー!」
反応の良さに安堵の息を吐いて、常盤は尋ねた。
「ならば、まずは目的を明確にしよう。さあ、君達が守りたいものは何かな?」
「エ!?」
「ぜ、全部デスカネー?」
ははあ、なるほど。思わず苦笑が浮かんでしまうけれど。
「……君達、意外と欲張りなンだねえ」
だったら、目に付く所から片っ端にだ。
「さつま君、僕達も此の国を冷やす手伝いをしてあげよう」
「一緒にひえひえお手伝い!」
まかせて、と首肯したさつまと常盤は、集まったピーノくん達を連れて、公園を中心に建物の補修へと取り掛かった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エドガー・ブライトマン
ここは……アイスの国?
そこかしこから甘いかおりがするねえ
前にも来たことあるような、無いような…… それはさておき
この国のアイスが溶けて、国民が巻き込まれたら
文字通り国の崩壊だ。それはいけない!私が助けてあげる
通りすがったのもきっと何かの縁だろう
残念だけど、私には溶けるものを固める術がないから
アイスの崩落からピーノ君らを守ってあげたり、
かれらの大事な商品を回収しておいてあげる
オスカー、溶けたアイスに巻き込まれてる子がいないか
キミも探してきてくれよ
お礼に後で大きな虫(ごはん)を捕まえてあげる
埋もれている子は引っ張り出すし、
回収した商品はマントに包んでおいてあげる
ウーン、しかしなんでこんなコトに……
清川・シャル
真夏にアイスだと素敵なんですけどね、今時期のUDCとか…
でも氷の国って素敵です、シャルは氷使いだからお役に立てそう。
ピーノくん、よろしくお願いしますね。
シャルが使うのは氷と花吹雪のUC
他の人を巻きこまないように気をつけて使います
あちこち見て回りながら第六感と情報収集しながら原因を突き止められたらと思います
溶けるって事は、どこかに熱源があるということでしょうか…
全力魔法で逆探知してもいいですね
ライラック・エアルオウルズ
氷菓と避暑地が――、
何て膝付く間も無さそうだな
庭園に限らず暖かい原因を、
《救助活動》中に調べないと
悪夢を現実と、しない為にもね
魔導書をぱらりと捲れば、
《属性攻撃:氷》で一時補修
《属性攻撃:石》も混ぜ込んで、
《全力魔法》で建物包む壁を形成
UDCに居る間に良く世話になる、
冷凍庫を真似たけど如何だろう
散らばるピーノさんは誘導し、
六人整列の万全の状態として
魔法で冷風送り、作業の応援を
君達も溶けないか心配だし、
頃合いを見て避難するんだよ
然して、こんなに微笑ましい彼らを
残忍に変える物は、一体何だろうな
――そうだ、どうしてこんな事に?
住民全員、ホットココアを淹れたとか?
何て、隙見て《情報収集》しよう
●冷凍庫に仕舞う
「まさか……こんなことに」
ああ、氷菓と避暑地が。溶けゆく国を目にして、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)はがっくりと肩を落とした。とはいえ、膝を付く暇はないだろう。この国の場合、暖かな場所はあの庭園のみで良かったはずだ。ここまでの激変の、その原因を探らなくては。
「悪夢を現実と、しないためにもね――」
そう、気掛かりなのはもう一点。予知において、残忍にアリスを殺したという、この国の愉快な仲間達だ。
「あなたがピーノくん? よろしくお願いしますね」
「ワー、はじめまして猟兵サーン」
「よろしくドウゾー!」
その頃、当の愉快な仲間達と、一足早く街を訪れていた清川・シャル(無銘・f01440)が挨拶を交わしていた。氷を、そしてアイスを建材に使った街並みの様子を興味深げに眺めて、シャルは涼しげなそれに溜息を吐く。
「真夏にアイスだと素敵なんですけどね……」
それこそ、今の時期のUDCアースで見られたらどんなに良かったか。
「でも、氷の国って素敵です」
「アリガトウゴザイマース!」
「チョット今溶けちゃってますケドネー」
やけに和やかな時間を過ごしてしまったが、周りの商店はまあまあ融解が進んできている。屋根から店の中に降っていた雨は、やがて破片と天井の氷の崩落へと変わる。脆くなった一部分が崩れて、不幸にも真下に居たピーノくんの一人を――。
「おっと、危ない」
寸前でぐいっとその肩を引いて、エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)が被害者候補を落下物から救い出した。
「あー、この間の猟兵サンじゃないデスカ」
「うん……そうか、僕はやっぱりこの国に来たことがあったんだね」
お礼を言う彼等の言葉に、エドガーはそんな気がしていたのだと頷いた。この光景に空気、そして漂う甘い香りにも覚えが――あるような、ないような。
「それなら、なおさらだ。これもきっと何かの縁、私が助けてあげるよ」
「本当デスカー?」
「さすが猟兵サン、親切ー! カッコイイー!」
調子の良い彼等の言葉に笑みで応える。何より『国の崩壊』となれば見過ごすわけにはいかないのだと胸中で呟いて、エドガーは友であるツバメへと声をかけた。
「私の目だけでは足りないからね、オスカー、手を貸してくれ」
後でお礼に、食べ甲斐のありそうな虫を捕まえてあげるから。そんな風に伝えて、エドガーはツバメと視界を共有した。
――今みたいに、溶けたアイスに巻き込まれた子が居るかも知れない。それに、空からならば、溶けかけて脆くなったところも発見しやすいだろう。
「とはいえ、私には溶けるものを固める術がないんだよね……」
「ああ、それでしたら、シャルがお役に立てそうです」
エドガーの呟きに、シャルが申し出る。そう、彼女が扱うのはこの状況でもっとも役に立つ、氷だ。
「崩れそうなところ、教えていただけますか?」
エドガーとオスカーから得られた情報を元に、シャルは凍れる花吹雪を展開する。白く輝く桜の花弁が舞い、そこを吹く冷気が、商店街を覆っていった。
「見事なものだね……」
中々良い光景だと呟くエドガーの前で、シャルは若干眉根を寄せて。
「ちょっと、待ってくださいね。少しだけ制御が難しいので……」
今回は攻撃ではないのだから、誰も傷つけないようにと、彼女は暴走しがちなその術を狙った範囲に収めていく。
「――ああ、大変だ。既にいくつか崩れているところがあるね。助けにいかないと!」
徐々に固まっていく建物の様子に頷いてから、エドガーは自分の手が届く役目のために颯爽と駆け出した。
俄かに吹く冷たい桜吹雪に見惚れながら、その中心までやってきたライラックも、仲間の意図を察して手を貸すことにする。
「なるほど、それなら僕も――」
手にした魔導書をぱらりと捲れば、足元から冷気が立ち上る。溶けた水を再度凍り付かせるそれに、今回は石の属性も混ぜ込んで、補修がてら追加の壁を形成していく。容易い真似ではないけれど、彼の全力を以ってすれば、実現は十分に可能だ。生み出された四角い壁は、密集した商店のいくつかを囲うことに成功した。
日の光、そして熱を遮断するそれは。
「冷凍庫、ですか?」
「ああ、あれを真似てみたけど如何だろう」
シャルの言葉に首肯して返す。UDCアースではお馴染みのもの。冷気を生み出す機構はないが、シャルの使う冷気を封じて、アイスをたくさん仕舞えば立派な氷室になるだろう。
「溶けたらまずいものも、仕舞っておけるしね」
「それでしたら――」
そうしてシャルが指差したのは、先程エドガーの走っていった方角だった。
「ピーノ君、そこにいるかい?」
「ハーイ、助けてクダサーイ」
軽い崩落の起こった場所に駆け付けたエドガーは、その下敷きになった愉快な仲間を発見した。
「冷たくて気持ちいいケド、重いデスヨー」
「結構頑丈……というかクッション性高いんだね君達」
柔らかい感触に感想を言い直しながら、彼はピーノくんを引っ張り出しにかかる。
氷と雪をいくらか掻き分ければ、その身体はずるっとこちらへ抜けてきた。
「ワー、ありがとうゴザイマース!」
「お安い御用さ、それよりも早く避難した方が良い」
「そうデスカー?」
でも大事な商品がまだ店の中に残ってるんですよねー、とピーノくんが渋る様子に、エドガーは頭を悩ませる。
「回収は手伝おう。でも、どこに運ぶのが良いかな……」
「それでしたら、良い場所がありますよ」
そこに、シャルとライラックが合流する。指し示されたのは、先程建てた『冷凍庫』だ。
「スゴーイ!」
「すごいね、いつの間にあんなものが……」
けれど、現状としてはとても助かる。エドガーがそう頷く横で、ライラックは途中で声をかけたピーノくん達を前へと押し出した。そうして、エドガーの助けた者達と合わせて六人揃えば――。
「さあ、君達も働いてくれるかな?」
「勿論デスヨー!」
「整列! 我々も頑張りましょー!」
急にきびきびした様子になった彼等は、ライラックの言葉に敬礼して返す。
「……ということらしいよ」
「なるほど、それじゃ私について来てくれるかな?」
「アイアイサー!」
興味深げにそんな様子を見ていたエドガーは、早速彼等を引き連れて周りの物資回収に動き出した。
「仕事の時間デスヨー!」
「行くゾー!」
そんな彼等の後ろ姿に、ライラックは一時、視線を落とす。
やはり、こうした姿を見ると考えずには居られない。こんなに微笑ましい彼等を残忍に変える物とは、一体……?
商品の移送と避難が軌道に乗ったことを確認して、猟兵三人は改めて顔を見合わせる。『冷凍庫』は確かに有効なのだが、これも永遠ではないし、救える範囲は限られている。
「ウーン、しかしなんでこんなコトに……」
「溶けるって事は、どこかに熱源があるということでしょうか……?」
やはり原因を何とかしなくては。エドガーとシャルが頭を捻る。あちこち見て回ってみれば何か分かるだろうか。それか、魔法の類であればそれを突き止めれば……。こちらも頭を悩ませていたライラックは、もう一人、近くにいたピーノくんへと声をかけた。
「ちなみに、心当たりはあるかい? 住民全員でホットココアを淹れたとか?」
「ウーーーーーン、突然デシタから……」
美味しいですよねホットココア。僕は紅茶が好きデスヨ、などと要らぬ情報を差しはさみながら、彼が告げたのは。
「デモ何か、今日はおひさまがギラギラしてるんデスヨネー」
「おひさま……」
「太陽かい?」
三人は揃って、空を見上げる。そこにあるのは赤く燃える太陽と、青く輝くオーロラだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
【咲日花】
うん
ピーノくんたちはアリスにそんなことしないよ
だから、きっとなにかがおこるんだ
ピーノくんがピーノくんじゃなくなるみたいなこと
……アリスがすごーくおいしいアイスに見えちゃうとか?
わあ、かんがえてるばあいじゃなかったっ
クロバっ
ツムギもクロバもすごい
よーし、つぎはわたしっ
ガジェットショータイム
手に氷を削るための刃がついた大きなロボ
頭に「氷」の旗
きれいに重なるようにけずっていくよっ
肩に座って操作
ロボに乗ったまま移動
そーっとね
クロバ、あっち
ピーノくんはっけんだっ
ピーノくんたちーっ
大きく手を振る
ロボがめじるしになるかな
はいはいはいっと器を渡して
削った氷でかき氷
6人あつまるのを待つ間に話を聞こうっ
華折・黒羽
【咲日花】
ピーノさん達がアリスを、なんて
俄かには信じがたい話ですね…
オズさんもそう思いませんか?
一緒に思い出を作ってきた彼らの
のんびり怠けた姿思い出せば
どう考えたって予知とは結びつかなくて
何が起こっているのか
…まずは現状をどうにかしなければ、ですね
凍らせる事なら任せてください
新しい友
水の精霊、紬を呼んで
彼女が生み出した水を縹の力で次々と氷へ
積み上げていく氷の形整えるのは
オズさんに任せればきっと上手くいく
おお
…おおきい
現れたろぼに眸見開いてきらきら
ほんのり浮足立つのは裡に残る
男のろまん、というものだそうで
飛んで肩に乗るオズさんの側へ
ピーノさん達を見つけたら
何が起こってるのか教えてもらいましょうね
●冷やしてあげる
「ピーノさん達がアリスを、なんて……俄かには信じがたい話ですね」
予知にあったというその話について、華折・黒羽(掬折・f10471)は思考を巡らせる。この国には何度も足を運び、彼等と一緒に思い出を作ってきた。のんびりとしたその姿をいくら思い返してみても、それが件の光景とは到底結びつかないのだ。
「オズさんもそう思いませんか?」
「うん、ピーノくんたちはアリスにそんなことしないよ」
オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)もそれは同じようで、黒羽の言葉に迷いなく頷く。
「だから、きっとなにかがおこるんだ」
彼等のよく知る愉快な仲間、ピーノくんがピーノくんではなくなるような、何かが。
「なるほど。……例えば、どういったものでしょう」
「……アリスがすごーくおいしいアイスに見えちゃうとか?」
「それは……困りますね」
それだけならば、ピーノくん達らしい微笑ましい理由に聞こえるのだけど。そう頷いた黒羽は、そこで思考を切り替えた。
何が起きているのか、それともこれから何かが起きるのか。とりあえず、予想しか出来ないそれは置いておこう。
「……まずは現状をどうにかしなければ、ですね」
「わあ、かんがえてるばあいじゃなかったっ」
クロバ、とオズの呼ぶ声に応えて、彼は新たな友の力を借りる事にする。
「凍らせる事なら、任せてください」
『細水』、水の精霊である紬の手で生み出した水の塊を、黒羽は呪符を用いて凍らせていく。それを繰り返せば、歪な氷が次々と。
「よーし、つぎはわたしっ」
続いてオズはガジェットを起動し、その形を変えさせる。
「おお……おおきい」
思わず、黒羽がそれを見上げて感嘆の声を漏らす。変形の末に現れたのは、頭に『氷』と書いた旗を立てた巨大ロボだった。
「クロバ、気に入った?」
「ええ……こういうのを男のろまん、というのだそうですね」
眸を見開き輝かせた彼の前で、巨大ロボは回転する刃を付けたその手を伸ばす。黒羽の作りだした氷塊を、音を立てて削り取れば、それは美しい立方体へと形を変えた。
「できたっ」
形を整えられ、完成したそれは、歪だった頃とは違って綺麗に積み上げることができる。
「どんどんけずっていくよっ」
ロボの肩の上でオズが指示を出すのに応え、巨大ロボは次々と氷のブロックを生み出していった。
「さすがです、オズさん」
「クロバが氷を作ってくれたおかげだよっ」
ロボの肩に乗ったオズの元へと飛び上がった黒羽は、彼と共に辺りを見回す。せっかく出来た氷だ、有効に活用したいところ。
「クロバ、あっち、ピーノくんはっけんだっ」
「ああ、あれは……果樹園で収穫作業をしていたみたいですね」
行ってみましょうか、という声に応えて、オズはそっと、慎重にロボを進ませ始めた。
「おーい、ピーノくんたちーっ」
「ワー、何かすっごいのが来ましたヨー」
「猟兵サン達じゃないデスカー?」
手を振るオズに応え、集まってきた彼等に、手早く器を配れば、ロボが持ってきた氷の塊を腕の刃で削り始める。がりがりと音を立てて、あっという間にかき氷の雪が舞い、皆の器を満たしていった。
「おつかれさまっ、これを食べて休憩してね」
「ワーイ!」
「ありがとうゴザイマース!」
労いついでに体温を下げてもらい、このままロボを発見して集まってくるピーノくん達で六人組を作っていこうという算段だ。ついでにこの待ち時間も、上手く使いたいが……。
「イタダキマース!」
「ピーノさん、食べながら出構いませんので、この国に何が起こっているのか教えていただけませんか?」
「何でしょうネー」
「急に全部溶け始めチャッテ大変デスヨー」
黒羽の問いに、ピーノくん達はかき氷を食べながら首を傾げる。どうやら彼等の認識も、猟兵達と大差ないようだ。事態に明確な対応が取れていないことからも、それは予想出来ていたが……それでも彼等にしかわからないことがあるはずだ、と黒羽は質問を重ねた。
「溶け始めたのがいつからか、わかりますか?」
「ウーン……」
「ピーノくん、きっかけに心当たりはない? 何かかわったことがあったとか」
「そうですねェ」
「そういえば、この国にアリスが来たらしいんデスケド……」
オズと黒羽が視線を交わす。頭を過るのはもちろん予知の情報についてだ。あえて彼等にそれを教える必要はないだろう。しかし、気にかかるのは事実。
「それから、デスかネー?」
そんな事は露とも知らず、ピーノくんたちはいつもの平和そうな様子で、かき氷のおかわりをした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リダン・ムグルエギ
…アタシの店が…倒産(物理)しそうになってる…
ちょっと!
ストライキしてる場合じゃないわよ、ちゃんとなさ…うん、聞いてる余裕なさそうね
アイスが溶けるのを防ぐ手段なんてアタシは持ってないし
ここはピーノくんを箱詰して働いてもらうしかないわ
ピーノくんの「集合場所」を作り、効率的に6人1セットにしていこうかしら
その旗頭は…ま、一番ホットな「広場」ね
そこで大きな旗を集めて振る事で、なんだなんだと集まっちゃうようなブームを仕掛けちゃうのよ
はい、そこの6人、息でふーふー隊γ、城へGO!
キミら6人はノコギリで溶けすぎたとこ切る舞台ε、商店街へGO!
という感じでサクサク割り振り
…で、この落ちてきた子は何?
服いる?
九之矢・透
ちょっとぶりだな!
暑くなってきた今こそ来たい、けど
ココまで暑くなるってのは予想外だった
公園の様子も気になるけど、まずはピーノ君たちを救出しにいこう
見張り台から大体の方角を見て6名未満の所へ「大鷲」で飛んでいく
特に建物の中に居たら溶けたアイス……ジュース?に押しつぶされちゃう
おーい、ピーノ君!いるかい?
見つけたら開けた所かお城、出来るだけ安全な所に
動いてくれそうになかったら連れていくか、6名集めちゃおうか
ほら起ーきーてー!いくぞ!
避難がある程度出来たら、空を見にいってみよう
空が熱いってんなら原因も其処にあるかもしれないな
又は島全体を見て
より溶けてる所に何かあるか?とか
兎に角
なんとしても止めないと
●招集をかける
「……アタシの店が……倒産しそうになってる……?」
いや、この場合は『倒壊』と言うべきだろうか? しばらくぶりに様子を見に来てみればこれである。物理的に傾いた店の経営状態を目にして、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は半ば呆然と声を上げた。溶け始め、緩く汗をかいた扉を開ければ、中には傘を差したピーノくん達の姿が。
「イラッシャイマセー」
「ちょっと! ストライキしてる場合じゃ……えっ、営業してるの?」
「あ、マネージャーサンじゃないデスカー。勿論デスヨー」
「えぇー……アタシ、そんなブラック営業を強いたつもりは……」
ないんだけど、というか頑張りどころがおかしくないかしら? 普通室内で傘さしてまで営業する?
そんなことを考えている暇がないのは分かっているのだが、思わず頭を悩ませたそこに、窓から九之矢・透(赤鼠・f02203)が顔を覗かせた。
「あれ、まだ居たのかピーノ君。建物溶けて来てるんだから、早く逃げないと」
いつまでも留まってると溶けたアイス……ジュース? に押しつぶされてしまう。そんな風に促してはみるが、彼等の反応はいまいち鈍いまま。
「そうデスカネー。デモー……」
「……もしかして、商品持って避難するの面倒になった?」
「ソンナコトナイデスヨー」
「ああ、そういうこと……?」
眩暈を堪えるように額を押さえて、リダンも愉快な店員達に避難を促す。
「商品は……えー、移動の邪魔にならないだけ持っていけば良いから、さあ早く行きましょ?」
「デモ外は外で暑いですしー」
「僕まだ休憩終わってナイですしー」
「あーもー、ゴネてる場合じゃないって、ほら起ーきーてー! いくぞ!」
「何だか、既視感があるわね……?」
今度は引っ張られる側から引っ張る側に回ったリダンと共に、透は店員達を連れて店の外へと出ていった。
「とにかく六人集めないと、終わらないよなコレ……」
「そうねぇ、それじゃあ――」
透の呟きに応えて、リダンが対策を一つ挙げる。
「この子達、広場に呼び集めるようにしようと思うのよ」
何やらそこで、人を集めるような何かがあったようだし。聞き及んだ噂を利用する形で、彼等の六人組を結成しやすいようにしようと彼女は言う。
「なるほど、じゃあアタシもそっちに集合するように言って回るよ」
頷いた透は、引き続き逃げ遅れがいないかの確認のため、『大鷲』の力で空へと飛び立っていった。
「……終わったら、店構えも直さないとダメね」
看板の傾いた店の様子にため息を一つ吐いて、リダンは店員達を叱咤しながら町の中心へと向かった。
「いやでも、ココまで暑くなるってのは予想外だったな……」
頬に暖かい風を感じながら、透は空へと舞い上がる。季節的に、アイスの国には来たかったけれど、こういう事情では素直に喜べないのが実情だ。
上昇し、遮るものが無くなれば、やはりその熱はより強く感じられる。
「やっぱり、原因って言ったらあれしかないよなぁ」
島全体を見回せば、被害状況はよくわかる。逃げ遅れが居ないか探すのが主目的だが、彼女は身体を捻って、一旦空へと視線を向けた。
熱の源として考えられるのは、やはりそこで赤く光る太陽だろう。
……けれど、と首を傾げる。それは前から空にあったはずなのに。
「何で急に、こんなことに?」
「この辺りで良いかしら。それじゃピーノくん達、お願いね」
「ハーイ!」
「お任せクダサーイ!」
道中で六人揃ったのでこの通り。リダンの言葉にきびきびと応えて、ピーノくん達は広場の真ん中に大きな旗を突き立てた。
次いで周りでいくつもの旗を振ってもらって、注目を引いてもらう。
「アレ、何やってるんデス?」
「お祭りカナー?」
呑気に集まってきた彼等を、リダンは順に捕まえて。
「よく来てくれたわね。あなた達の国のためだもの、しっかり働いてもらうわよー」
はい、そこの6人、息でふーふー隊γ、城へGO! そっちは商店街で、溶けすぎた所をノコギリで切って来て! とそんな具合に、人員と役割を割り振っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
トリス・ビッグロマン
【エレルA】
あの氷像は真っ先に溶けて崩れたか
安心したぜ
しかしなんてザマだよこりゃあ
オレが指揮をとってやった防壁までボロボロじゃねぇか
オマケに足元がベタベタして気持ち悪い
ピーノを助けたメトロへ倒れていく、アイスの壁に向かって発砲
バラバラに崩してぺしゃんこになるのを防いでやる
まぁその代わり、アイスに埋もれちまうかもしれないがな
おい、不甲斐ねぇなピーノども!
トロトロしてっとテメーらこそドロドロになっちまうぞ!
『配下の十一人』を呼び出しピーノたちに発破をかける
建物から貴重品を運び出すなら手伝ってやれ
あぁ?アイスばっかじゃねぇか捨てさせろ!
エンジに縛られたクソウサギはオレが引き取ろう
引き摺って運んでやる
アイネ・ミリオーン
【エレルA】
……甘い匂いがすごいです、ね……
酸素マスク越し、なので、まだマシです、けれど……甘い匂い、慣れがないんですよ、ね
僕の世界に、アイスなんて、ないです、し
溶ける、って事は、氷、なんですね
僕は、上空に機体を飛ばして、周辺を見て回ります、ね
避難誘導が、必要な人以外にも、原因、っぽいものも映れば、それに越した事は、ないんですけれど
映像は、受信して、ホログラムで其処らに出しておく、ので、必要でしたら、皆さんも、確認して、ください
ピーノくん、さん?
えぇと、こっちです、よ
6人セットで、逃げましょう、ね
雪だるまが、防寒着って、どうなってるのかとか、溶けないのかとか、すごい気になるんです、けれど
エンジ・カラカ
【エレルA】
アァ……アイスが溶けてるなァ。
賢い君、賢い君、食べてもイイ?イイ?
後で?ちぇっ、仕方ないなァ。
避難誘導を頑張ろう、そうしよう。
コレには賢い君がいるのサ
賢い君の糸を伝えば迷子にならない!
賢いだろう。うんうん、そうだろう。
ピーノ、ピーノ、はぐれたらダメー
そっちは違う。コッチコッチ。
六人組を作れー!六人になったら強い!
確か、ピーノはそうすると強くなる
六人でかたまってにげろー
ミンナのちからもすごいなァ
ピーノもびっくり
手をしばるー?
えー、どうしても?絶対ー?
仕方ないなァ……ピーノがみてないうちにネェ。
メトロ・トリー
【エレルA】
もぐもエ!食べるお仕事じゃない?
おーけー!
「大丈夫だよ!」
溶ける理性の代わりにヨオシ!
なんでもできちゃうからね
ほらほら崩落中の巨大アイスに潰されそーなぴーのくんを
庇ってスライディング!ウヒ!
ロマンさまのお陰で
ぼくはボスン!
ピーノくんはつるるーん
その先のウサギ穴にGO!
落ちた先で合流できちゃうのさ!ヒヒ!仲良く6人組だあ!
え!?アイネくんすごい!
上はどんな感じだい?あちち?
はあぜえ!けけ!えヒヒ?
あわわエンジくんお願い!
ぼくが多少まともなうちに縛ってくれないかなあ
誰か齧りたくてしょうがないんだもの!
エ!いいのかい?
やったあ!一回縛られてみたか
ア!
何すんだいロマンさま!キャハハ!ガブ!
●お隣の国へしゅーと
「アァ……アイスが溶けてるなァ」
エンジ・カラカ(六月・f06959)の眼前で、冷たく凍り付いた国が、じわじわと柔らかくなっていく。氷解、雪解け、春の訪れ、それらは良いイメージで使われることの多い言葉だが、溶けかけのアイスとなれば、素直に「もったいない」という感想が出てくるだろう。
「賢い君、賢い君、食べてもイイ? イイ?」
後で? ちぇっ、仕方ないなァ。そんな風に口を尖らせながらも、エンジは窘める『彼女』に大人しく従う事にする。
「……甘い匂いがすごいです、ね……」
その一方で、アイネ・ミリオーン(人造エヴァンゲリウム・f24391)もまた、溶けたアイスの香る風に、何とも言えない表情を作っていた。酸素マスク越しにも感じ取れるその匂いは、アイネには全く馴染みのないもので。
「アイス……溶ける、って事は、氷、なんですね」
「ああ、ここに在るものは大体それで出来てる。……しかし、なんてザマだよこりゃあ」
溜息混じりの嘆きの声を漏らして、トリス・ビッグロマン(ストレイグリム・f19782)は最初に補修を手伝った防壁の方へと視線を向けた。あの氷像が取れてくれたのは構わない。以前からあの上で戦ったり大改造されたりと色々あったが、高く積み上げたアイスの壁は、現状では最も不安定な建造物となっていた。
「仕方ない、そっちから見て回るか」
足元がベタベタして気持ち悪い、などとぼやくトリスを先頭に、一行は街の外周の防壁へと向かった。
「では、ついでに辺りを見てみます、ね」
アイネの手元から複数の偵察機が飛び立ち、周囲を、そして島の全景を探るようにカメラのレンズを向ける。映像は並行してアイネにも送られており、彼はそれをホログラムの形で自分の周囲に展開した。
「何か、映ると良いんです、が」
避難誘導の必要な者を捉えるのが第一目標だが、上手くすると、この事態の原因となるものが映るかもしれない。
「え!? アイネくんすごい!」
とはいえ、こうした形の情報共有ができるというだけで、効果は十分。ついでに見たまま楽しめる。メトロ・トリー(時間ノイローゼ・f19399)は歓声を上げて、ついでにひとつ問いを投げた。
「上はどんな感じだい? あちち?」
「あちち……地表よりは、暖かい、かも知れません、ね」
道中でそんなやり取りをしながら、アイネの捉えた迷いピーノくんを発見し、エンジが声をかける。
「ピーノ、ピーノ、はぐれたらダメー」
そっちは違う。コッチコッチ。明らかに行先に困った様子の愉快な仲間に手招きし、こちらへと呼び寄せ。
「アー、猟兵サン達じゃないデスカー?」
「ウンウン、あんまりフラフラするのはよくない。他のピーノにもそう言おう」
「ハーイ。……でも、ドコに逃げるんデスカー?」
「それはもちろん……アァ……ドコ?」
国中が溶け始めている状況だ、逃げるにしても目指す場所が難しい。改めて首を傾げたエンジの視線に応えて、トリスが首を横に振る。
「知らねえよ、少なくとも崩れてくるものが――」
――ない場所だろう。そんな一言に合わせたように、防壁の一部が崩落し、アイスの塊が彼等の上から降り注いだ。
「危ない! でも大丈夫だよご安心!」
いち早くそれを察知したメトロが素早くピーノくんに向かってスライディング。
「ワーーーーッ!?」
フラミンゴで叩かれたハリネズミのように吹き飛んで、つるつる滑って転がって、ピーノくんはその先のウサギ穴に落ちていった。
「1ポイント獲得! やったね!」
とはいえ、メトロは代わりに落下物の下に身を晒すことになるのだが。
「世話が焼けるな」
落ちてくる城壁の一部トリスが撃ち抜き、粉々に。岩のような塊からアイスキャンディの束くらいに砕かれたそれは、結局メトロの上に降り注ぐ形になったが。
「メトロ、メトロ。生きてる?」
「大丈夫だよ、大丈夫! わあ、こんなにいっぱい食べられないなぁ!」
とりあえず元気そうだと判断して、エンジはアイスに埋まったメトロから、ピーノくんが落ちていったウサギ穴へ目を向ける。
「ピーノは? この向こう?」
「隣の国にご案内だよ! 6点取ればきっとボーナス!」
「アァ……確か、ピーノはそうすると強くなる」
合点がいったというように頷いて、エンジは他のピーノくんもここに入れるべく捜索を開始した。
「ここに、彼等を入れればいいんですね?」
アイネもそれに従って、偵察機の捉えた彼等の元へ。宥めすかして時に運んで、赤い糸を伝って戻ってきたエンジもピーノくんをぽいぽいと投入し。
「ワーイ!」
「何の競技デスカー?」
一時静かになったところで、すぐさまどたばた音がして、別のウサギ穴から六人になったピーノくんが、こちらに転がり込んできた。
「あ? 何で戻ってきたんだよ。事態が収まるまで他所で待ってていいんだぜ?」
「穴の向こう……砂漠の国だったんデスヨー」
「コッチの方が涼しいー」
「それは、災難でした、ね……」
ぜえはあと肩で息をする彼等の傍らに、アイネが屈みこむ。歩く雪だるまみたいに見えるが、彼等も雪で出来ているのだろうか、などと観察しつつ。
「六人、揃いましたし、一緒に逃げましょうか」
「しょうがねえな、手伝ってやるから大事なもの運びだして来いよ」
そう言って、トリスは配下の猟師達の霊を召喚する。
「ワーイ! じゃあ秘蔵のアイスとー」
「ごはんのアイスと、おやつのアイスを~」
「……アイスは置いてけ」
物資の運び出しが進む中、アイスの山に埋まっていたメトロが復活する。多分結構美味しかった。……が、その様子が少しおかしい。
「はあぜえ! けけ! えヒヒ?」
ぼくの笑い方ってこうだっけ? あれ? と首を傾げてから。
「あわわエンジくんお願い! ぼくが多少まともなうちに縛ってくれないかなあ」
「手をしばるー?」
急な申し出に首を傾げた彼に、メトロはさらに言い募る。
「そうそう緊急! 誰か齧りたくてしょうがないんだもの!」
「えー、どうしても?」
先程用いたメトロのユーベルコードは、成果の代わりに彼の抱く狂気を助長するもので。その結果がこの状態である。
「仕方ないなァ……」
「エ! いいのかい? やったあ! 一回縛られてみたか――ア!!」
早速赤い紐でぐるぐる巻きされたところで、トリスがその襟首を掴んだ。
「何すんだいロマンさま! キャハハ!」
「良いだろ、せっかく引きずって運んでやろうってんだ、大人しく――うおっ、やめろ妙な動きをするんじゃねえ!」
体の自由を奪われながらもびちびちとのたうって、跳ねあがって、メトロは満面の笑みでトリスに齧りつきにかかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
え、なんで?
いやなんで!?
溶けてるのはまあ、夏だしって気もするけど…でも発見したのも夏の終わりだったから違うか。
それ以上にあの気のいいピーノ君達がアリスを食べるなんて冗談じゃない。
まず溶けるの止めて原因突き止めないと。
ピーノ君達にご挨拶しつつ6人集めよう。
コンビニだとかステージだとか彼らが居そうな場所ダッシュで回ってね。
その間に各所のアイスの溶け方を見ておく。
ある方角の面が溶けてるのか全体的になのか、前者ならその方角に熱源というか原因が…?
ピーノ君集まったらアイスの維持頑張って貰い、更に他のピーノ君6人集めに国中走り回るね。
ある程度抵抗出来始めたらUCでアイス冷却を援護。
※アドリブ絡み等お任せ
●集める
え、なんで? 溶けゆく世界を前にクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)の頭に疑問符が浮かぶ。
夏だから、と思わなくもないが、他の世界の暦をアリスラビリンスに当て嵌めるのもおかしいだろうと首を振る。そしてそんな事よりも、あのピーノ君達がアリスを食べてしまうなんて――。
「原因を突き止めないと……」
あ、でも溶けるの止めるのが先かな。思考を整理しつつ、彼女は軽やかに地を蹴った。
「猟兵サン、コンニチハー」
「ああ、うん。大丈夫かい?」
湖の畔、劇場やコンビニ辺りに駆け付けた彼女は、早速困ったような様子のピーノくん達と合流する。思わずまじまじとその姿を観察してしまうが。
「? ドウカされマシタ?」
「いや……何でもないよ。キミ達はどこへ向かってるの?」
見たところ、いつもと変わった様子はない。気の良い怠け者たちの顔だ。
「建物が崩れる前に、湖の氷を切り出そうと思ったんデスケド……」
建材の補充。しかしその材料も、同じ氷では溶けていってしまうだろう。それ故の立ち往生か。
「途中でお昼寝の時間にナッタので……」
「……そうだった、キミ達そういうタイプだったね」
とにかく六人ずつ集めていこうと心に決めて、クーナはその辺にいる愉快な仲間達を導くために駆け回りはじめた。
「集まったら、吐息で氷の維持に努めるんだよ」
「ワー、猟兵サン頭イイー」
ゆるい声援を背中で受けながら、彼女はユーベルコードで凍結する花吹雪を展開し、自らも国が溶け落ちるのを防ぐのに尽力する。
忙しく働きながらも、また再度固まり始めたコンビニの様子を観察する。この事態の原因、熱源があるのなら、その方向から溶けてくるはず。溜息混じりに、クーナはそちらへと視線を向けた。
謎解き自体は容易いものだった。けれどまだ疑問は残っているし、対策を打つにはまだ材料が足りない。
厄介なものだと、彼女は空を見上げて溜息を吐いた。
大成功
🔵🔵🔵
ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレルB】
うわあ地面もゆるゆるです…ピーノさまたちはご無事でしょうか?
一度溶けきったアイスは再冷凍すると悲しいくらいにカチカチに
そんな悲しい事は断固阻止です!
ねっ!そこなお医者さま!…?どちらさま??ロカジさまのお知り合い?
奇稲田さんのキラキラで溶けるのがゆっくりになったアイス達
手袋を外し、風向きを確認。うんうん良さそうです
少し離れて下さいね、吸ってしまうと大変な事になりますから
崩れそうな建造物に【刺霧】で内側から補強
煉瓦に藁を混ぜ込む感じで頑丈になるかも。なる!
わあ…本物のコバンです!如月さまなんだかサンタさんみたいですねえ(たのしい)
はーい
おいしくなぁれー!(復唱)(キラキラエフェクト)
雅楽代・真珠
【エレルB】
溶けたあいすくりんは美味しくない
見逃せない事態だ
まずはぴぃの、集まって
お前たちは揃っていないと僕の手足になれないのだから
揃って行動するように
はい、点呼して
溶けにくくなる薬があるんだね
ふぅん
不味そうだけど美味しいの?
僕は『玉手箱』を開くよ
出てくるのは河豚の御用聞き
今日も儲けさせてあげるよ
欲するのは『雪女の吐息』だよ
対価に小判を差し出せば、如月が袋を背負っている
風神のようでいい格好だね
…小判よりもあいすくりんを見るといいよ
袋の凍える空気をヨシュカが補強したところへ吹きかける
凍るかは解らない
けれど時間は稼げるはず
おいしく……かわいくなぁれ
時間を稼げている間に
足りていないぴぃのを回収しよう
ロカジ・ミナイ
【エレルB】
ラクトパランラ製防寒着持ってきたのにいらないじゃん
アイスは溶けたら元に戻らねぇんだよ!
…溶け掛けのアイス(美味しい)食い放題だと思ったんだけど
食ってる場合じゃなさそうだね
僕に出来る事、……そうだ!大親友の奇稲田さんに聞いてみよう!
チャチャッとして出来たるは
ジャーーン
「溶けないキラキラ」!
なんとこのキラキラした粉をかけると
溶けそうなアイスが溶けちゃうのを少しだけ遅らせることができます
アイス食べるのが遅い婦女子向けのお薬(ミラクルアイテム)です
――って取説に書いてある
さぁ!僕の薬が効いてるうちに!みんなで力を合わせるんだ!
はーい、おいしくなーれー(キラキラエフェクト)
●おいしくなぁれ
「なんだいこれ、せっかく持ってきたのに防寒着要らないじゃん」
ぶつくさと文句を言いながら、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)はもこもこしたもこもこを脱いだ。極寒の地にしては過ごしやすい気候になったが、そこはそれ。
「溶けかけのアイス食べ放題……とか言ってる場合でもなさそうだねえ」
分類するなら大惨事に陥りつつある光景に溜息を吐けば、ヨシュカ・グナイゼナウ(明星・f10678)と雅楽代・真珠(水中花・f12752)もそれに続く。
「うわあ地面もゆるゆるです……ピーノさまたちはご無事でしょうか?」
「ぴぃの、ぴぃの。集合の時間だよ」
柔らかくなった足元を確認するヨシュカの言葉を受けて、真珠は如月に抱えられながら、合図代わりに何度か手を打つ。
「猟兵サン、イラッシャーイ」
「助けに来てくれたんデスカー?」
「それはお前たち次第だよ。はい、点呼して」
「イチ」
「ニー」
「サン!」
「あれ、キミ一番最初に点呼した子ジャナイ?」
「アーッ、転んだー!」
「うーん、揃ってないお前たちはどうしてこう……」
集合すらままならない彼等を見下ろしている内にも、この国は徐々に形を崩していってしまう。
「溶けたアイスは元に戻らないからね、何かできることはないかな……」
「はい、再冷凍すると悲しいくらいカチカチになってしまいますし……」
「それは見過ごせないね。美味しくなさそうだ」
「そこなお医者様はどう思われます?」
ヨシュカに声をかけられた医者は、ちょっとびっくりした様子で首を傾げた後、ロカジに薬の包みを渡してどこへともなく帰っていった。
「……今のどなたです?」
「奇稲田さんはね、優しくて優秀な僕のお友達だよ」
「そうですか! なら大丈夫ですね!」
手渡された粉薬には、丁寧に取説も添えられている。それによれば、なんとこのキラキラした粉薬を振りかける事で、アイスが溶けてしまうのを少しだけ遅らせることができるらしい。
「アイス食べるのが遅い婦女子向けのお薬(ミラクルアイテム)だね!」
「ふぅん、でもそれ美味しいの?」
「味については何の記載もない」
「そう、ダメだったらロカジが責任を取るんだよ」
「味見くらいはしておいた方が良いかも知れませんね……そこな魚人様はどう思われますか?」
ヨシュカに声をかけられた河豚の形をした魚人は、ちょっとびっくりした様子で首を傾げた後、如月に大きな袋を渡してどこへともなく帰っていった。
「……今のどなたです??」
「あれはただの御用聞き・気にしなくて良い」
「さっきのコバンは……」
「……手配したものの代金だよ」
そんなことより、と促す真珠に従って、ヨシュカは指差された方へ目を向ける。
「うわっ」
「おいしくなーれー!」
そこでは、ロカジが先程手にした薬を辺りに向かって振り撒いていた。読み上げられた説明の通り融解を遅らせる効果を示したそれは、ついでに日の光を反射し、とてもキラキラしている。
「ワー、スゴーイ!」
「ボク達もキラキラデスヨー!」
キャッキャし始めたピーノくん達を従えて、ロカジは薬粉を撒きながら街を練り歩きに入った。
「さぁみんな! 僕の薬が効いてるうちに! みんなで力を合わせるんだ!」
「とてもキラキラしています……」
「なんだろう、腹が立つね……」
二人でそれを見送ってから、ヨシュカはキラキラし始めた建物からめぼしいものを定めていく。全てを補強することは難しいため、できれば複数人が入れる大きな建物から。手袋を外して風向きを確認し――。
「少し離れて下さいね、吸ってしまうと大変な事になりますから」
ピーノくんと真珠を遠ざけて、彼は建物の内側に向かってそれを放った。
『刺霧』、亀裂より滲み出た黄金が、霧となって広がっていく。キラキラと光を放つ建物に染み込んだその霧は、建材の内側で無数の黄金の針と化した。本来は対象を内側から貫くものだが、建材に対してなら、つなぎとしての効果も期待できるはず。
「如月、手伝ってあげて」
真珠の声に応えて、絡繰り人形が大きな袋を背負って進み出る。
「如月さま、なんだかサンタさんみたいですねえ」
「風神のようでいい格好だよね」
そんな声援を背中に受けながら、如月は袋の結び目を解いて、ヨシュカの補強した建物へと向けた。
『玉手箱』を介して手配させたそれは、雪女の吐息を込めたもの。往時のこの国に吹く風よりも一際冷たい空気が溢れ、溶けかけた外壁をさらに分厚く変えて行った。
「ヤッター! 頑丈になりマシタヨー!」
「しかもキンキラのピカピカ!」
半透明の建材は内側から金色の光が覗き、その表面にはロカジの粉薬でデコられ、何だか街並みの一部が美しく飾られたようで。
「何だか、休憩所が落ち着かない感じに……」
「この調子で参りましょう、真珠様!」
満足げなヨシュカの言葉に少し瞑目し、とにかく本来の目的のためにも、真珠は如月に続けて働かせることにした。
「おいしくなぁれー!」
「それ言わないと駄目なの?」
はいはい、それじゃあ。かわいくなぁれ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ミミクリープラント』
|
POW : 噛み付く
【球根部分に存在する大きな顎】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD : 突撃捕食
【根を高速で動かして、突進攻撃を放つ。それ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 振り回す
【根や舌を伸ばして振り回しての攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:猫家式ぱな子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●遅い雪解け
防壁を張り、冷たい風を呼び寄せて、猟兵達はこの国が溶けていくのを一時、遅らせる。その間に避難場所を確保したこともあり、住人達まとまりやすくなり、それぞれにこの街を、国を守るために働き始めた。
六人一組になったこの国の住人達はとても働き者で、この国の一時的な維持程度であれば、任せてしまっても良いだろう。その間に、猟兵達はこの事態の原因を――。
と、そこで。
「すごい……いつの間にか街がきらきらになってる……」
見知らぬ誰かが森の方から歩いてきた。
「……どなたです?」
「さあ?」
「僕も知らない」
今度こそ本当に知らない人だ。ヨシュカの問いにロカジと真珠が首を横に振って……だったら、該当するのは一人だろうとリダンが進み出る。
「じゃあ、あなたがアリスね」
デザイナーの目が上から下まで素早く走る。身を包むように羽織っている、青く輝くマントは見事だけれど、その下はどう見ても寝間着だ。靴だって履いていない。
「服要る?」
「あ、ありがとうございます……?」
ところで、皆さんは? その少年がそんな問いを投げる前に、周囲のピーノくん達が彼に気付いた。
「アーッ、アリスじゃないデスカ?」
「どこ行ってたんデス?」
「アイス食べマス?」
それどころではないなりに気になるのか、彼等は仕事の手を休めないまま少年に構う。
けれど、そのタイミングで、猟兵達はその『異常』に気が付いた。
聞こえてきたのは、誰かの声。
●すると、愉快な仲間達は言いました
この国を炙り、溶かしていたのは、空に輝く赤い太陽でした。ここでは仮に、他の世界に倣って『夏』と呼びましょう――ある時期になると、それは激しく燃え上がるのです。
これまでに何度も訪れた『夏』に、このアイスの国が耐えられたのは、空にあるオーロラのカーテンが、その熱と光を和らげていたからでした。青く美しい空のカーテンは、『夏』も『冬』も受け止めて、この国を優しく包み込むもの。それなのに、今日は、あの太陽がよく見えます。
「アーッ、カーテンガ、破レテマスヨ!」
「ワッ、本当だ」
ピーノくんの一人の言葉に、皆が空を見上げます。青く輝くカーテンに、ぽっかりと開いた大きな穴。
――ところで、ねえ、アリス。あなたの羽織ったそのマントは、空の破れ目にそっくりね。
「そんな……僕のせい……?」
心当たりがあるのでしょう、アリスは、羽織っていたマント……空にあったオーロラの一部を見て、困ったような顔をしています。けれど、きっと大丈夫。アリスが自分の足で走って、ちゃんと自分の手で、オーロラの切れ端を空に返すことができれば、空の穴は塞がるでしょう。
「ナルホドー」
「アリスサン、がんばってクダサーイ」
――ところが、そんな事とは露とも知らず、ピーノくん達は言いました。
「エッ」
なんてことを、してくれたんだ。
「ナンテことを、してくれたんだ?」
ぜったいに、ゆるさないぞ。
「ぜったいに……ゆるさないぞ!」
ノコギリを取り出した彼等の様子を見て、アリスは一歩後退り。
「ち、ちょっと待って、落ち着いて!」
「もんどーむよーデスヨーッ!」
そのまま襲ってくる彼等から逃れて、アリスは踵を返し、走り出します。向かう先に迷ったアリスでしたが、すぐに道の先――遠くに見えるお城を、目的地として定めました。
飛べないアリスが、空に手を届かせたいのなら、そう。お城に良いものがありますから。
●集団戦『ピーノくん&ミミクリープラント』
街からお城に向かって走るアリスを、ピーノくん達が襲ってきます。次々に迫る彼等を撃退し、アリスを守ってあげてください。
彼等は基本的に六人一組で動き、ノコギリと凍てつく吐息で攻撃します。
また、襲ってくる集団の中には、オウガが煽動役として放ったミミクリープラントが、擬態ピーノくんとして混ざっています。擬態ピーノくんは六人一組でなくても活発に行動し、ミミクリープラントのUCに準拠した攻撃を行ってきます。
何らかの力が働いているため、説得はほぼ不可能です。ただし、第一章で救い出したピーノくんが居れば、その相手にのみ声が届くようです。
ジョン・フラワー
【花簪】
な、なんてことをしてくれたんだ!
ぜったいにゆるさないぞ!
アイスなアリスは叩いたらつぶれてなくなっちゃいそう
木槌でシュートはできないな。安全のために置いておこう
そして安全のために! ひとり掴んですごく遠くに投げる!
たぶん平和に数が減るし、帰ってくるにも時間がかかるね!
積極的なやつだけどんどん投げていけば大人しいアリスに戻ってくれるさ!
えっ、これは倒してもいいやつなの?
木槌は置いちゃったし、今頼れるのはおててだけ。うーん……
そうだ! 地面があるじゃないか!
地面でいっぱい叩けば木槌くらいつよいはず!
これでちょっと静かにしてもらって
ち、違うんだアリス達!
僕は怖いオオカミじゃないんだからね!
月舘・夜彦
【花簪】
ピーノ殿達が煽動されたのでしょうか
いずれにせよ、アリスがやられる訳にはいきません
オオカミ殿、私達で援護しましょう
……ピーノ殿達は殺さぬ程度に、ですよ
倒していいのはミミクリープラントのみ
間違い探しの様なものですね
吐息は氷結耐性にて耐える
アリスへ仕掛けてくる攻撃はかばって水霊『紫水』の水壁で防御
六人一組で活発になるのですから
一人でも戦闘不能にできれば戦力はかなり下がります
斬りかかるとフェイントし、なぎ払いによる衝撃波で吹き飛ばします
ミミクリープラントの判別方法は六人一組でなくとも活発である事
単独で活発なのは早業の2回攻撃にて仕掛けます
オオカミ殿、奴は倒しても大丈夫ですよ
……怖くは、ないかと
●間違い探し
囁くようなそれに、ジョンは頭の上の耳を、ぴくりと震わせる。
――なんてことを、してくれたんだ。
「な、なんてことをしてくれたんだ!」
ぜったいに、ゆるさないぞ。
「ぜったいにゆるさないぞ!」
桜色の瞳を爛と輝かせたその様子を察し、夜彦が問う。
「オオカミ殿……?」
「うん? どうかしたかい簪のアリス?」
すぐにいつもの調子に戻ったようだが、気のせいか。訝し気にそちらを窺いながらも、夜彦は駆け出したアリスを追って走り出す。青色のオーロラを纏った彼の姿を見失う事はないだろうが、それは敵も同じこと。しかし、敵……と言っても良いものだろうか。
「待ーーーてーーーーー!」
「僕達は怒ってるんデスヨーー!」
短い足で意外なスピードを発揮するピーノくん達の姿を一通り目で追って。
「ピーノ殿達は、煽動されているのでしょうか……」
調子に乗りやすそうな彼等だが、それにしても先程は様子がおかしかった。とはいえ、目の前の状況を捨て置けば予知通りの展開になってしまうだろう、それは、何としても避けなくては。
「オオカミ殿、私達で援護しましょう」
「そうだね!」
すぐさまに彼等を追い抜いて、夜彦は先程と同じく、その場に水の壁を展開する。アリスに向けて放たれた、凍てつく風を受け止めて。
「ワーッ、凍っちゃった!」
「通れマセンヨー!」
分厚い水の壁は、氷漬けになってもその存在で行く手を阻む。
「さあ、今の内に」
「あ、ありがとうございます!」
夜彦に礼を言ってアリスが走り去る、その間に、ジョンがピーノくん達の前に立ち塞がった。
「そこまでだ、アイスなアリス達!」
「ウオーっ、氷を切り出しマスヨー!」
「そこをどいてクダサーイ!」
「えーっと……?」
「殺さぬ程度に、ですよオオカミ殿」
夜彦の声に従って、ジョンはいつもの木槌を置く。さて、どうしようかと少し考えて、彼はノコギリを手に迫るピーノくんの脇をおもむろに掴み――。
「飛んでいけーっ」
「アーーーーーーッ!?」
思い切り放り投げた。放物線を描いて飛んで行ったピーノくんは、溶けかけた雪の大福の上に墜落。小さく跳ねて転がっていく。
「ワーッ、今の楽しそう!」
「ずるーい! 次は僕デスヨ!」
「はいはい、皆さん、順番にお願いします」
何故か逆に勢いづいた彼等を、夜彦は刃に伴う衝撃波で一薙ぎ、最前列をまとめて吹き飛ばす。それでもなお、次々と襲い掛かる彼等を、ジョンはぽいぽいと放り投げていった。
もちろん、考え無しの行動ではない。とどめを刺さないまでも、こうして散らしていくことで、ピーノくん達の『六人組』は、二人の狙い通り崩れていく。
「走るの疲れてきマシタ……」
「何であんなに怒っていたんデシタっけ……?」
段々と、その場でぐうたらし始める個体も増えてきたところで、ジョンが目の前に迫る一体を持ち上げると。
「えっ?」
ずぼっ、という妙な手応え。まるで野菜を引っこ抜いたような感触に下を見れば、ピーノくんらしきものの足元に繋がった、巨大な球根のようなものが、地面から顔を出していた。
ぱっくりと割れたその球根の断面に、鋭い歯の並んだ口が開く。
「うわーっ、アイスじゃないアリスも居る!?」
「別種……? いや、偽物ですね。オオカミ殿、それは倒しても大丈夫ですよ」
「えっ良いの? でも木槌が――」
得物は手放してしまっている。しかし、頼れる武器は他にもあるのだ、とジョンは気付いて。
「離セーーーーッ!」
「ちょっと、静かにしててね!」
大暴れする偽物と、襲い掛かる足元の球根、それらをまとめて、力ずくで振り回す。頭上を越えて地面に叩き付けて、さらにもう一度、正体を現したミミクリープラントをびったんびったん。
「オオカミ殿、こちらへ」
「えーいっ!」
最後に放り投げられたそれを、待ち受けていた夜彦が居合の一太刀、さらに重ねたもう一撃で、球根部分を四つに斬り分ける。すると、ピーノくんに見えていた擬態部分がゆっくりと萎びていった。
「エーッ……」
「エグーい」
そんな偽物を見遣って、ピーノくん達はドン引きしたような声を上げている。
「こ、これは……違うんだよアリス達」
「大丈夫ですよオオカミ殿、我々が恐れられているわけではありませんから」
多分、と言い添えて、ジョンを窘めながら、夜彦は刀を鞘に納めた。
何にせよ、アリス襲撃の第一波は、ジョンと夜彦の手により退けられた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
【咲日花】
クロバの作戦に頷き
信頼の言葉に笑み返す
わたしも、クロバならだいじょうぶって思ってるよ
引き付けてから掛け声
左向け、左っ
わたしたちが集めたピーノくんがいれば
聞いてくれるはず
クロバと顔見合わせ頷いて別れ
6人そろってないのに速いとか
ノコギリと凍てつく吐息以外の方法で攻撃してくるなら
にせピーノくんだねっ
根と噛みつきを回避
間に合わなければ武器受け
あれ、もしかして
アリスを食べるピーノくんって
ガジェットショータイム
あらわれたのは冷凍光線銃
えいっ
しょくぶつだったらさむいのはにがてじゃないかな?
アリスはまもるし
ピーノくんたちだって傷つけさせないよっ
かたづいたら
クロバっ
駆け寄って、両手をあげてハイタッチ!
華折・黒羽
【咲日花】
声が届くなら
まずは引き付けて
そこで揃って駆け声です
右向け、右!
一人でも別々になれば
ピーノさん達の本来の習性なら力は半減するはず
その中で変わらず活発に動いてるのが球根です
そこを一気に、叩きましょう
一旦二手に分かれる形になってしまいますが
オズさんは強いので、心配していませんよ
笑んで伝える信頼の言葉
もちろん俺も後れを取るつもりはない
此方に向かってきた集団を氷の花雨で狙い囲う
指定した対象は勿論球根のみ
刃たる花弁を見舞う
アリスは追わせないし
ピーノさん達を利用したりなんて、絶対にさせません
戦い終えたらオズさんと合流しよう
互いに笑って“はいたっち”をするんだ
─オズさん
そわり、両手をあげて
●二手
逃げていくアリスを追うピーノくんの一団を見かけ、オズと黒羽はその前方に回り込む。六人組を作った彼等の足は速い。できればここで足止めか、追いかけるのを断念させてしまいたいところだが。
「アッ、猟兵サン! かき氷ごちそうさまデシタ!」
「でも僕達にはやる事ができマシタので! そこをどいてクダサーイ!」
「ねえ、クロバ。あれって……」
「はい、先程会ったピーノさん達ですね」
わかりやすくて何よりです、と黒羽はオズに頷いて返した。少なくとも彼等にはこちらの言葉が通じているようだ。ならば、手筈通りに、と目配せを交わして、二人は揃って声を上げた。
「右向け、右!」「左向け、左!」
「エッ、突然なんデスカ!?」
「右? 左? ドッチ??」
「アーッ、そんなところで止まらナイデー!」
突然の号令に一部のピーノくんが混乱をきたし、ついでに追突事故が起こって隊列が乱れる。『六人一組』がごちゃごちゃに、曖昧になったのを見て、オズを黒羽は頷き合った、
「一旦、二手に分かれましょう」
直接の連携は出来なくなるけれど、心配はしていない。そんな信頼の込められた笑みに、オズもまた同じように微笑んで返す。クロバならだいじょうぶ、そう信じているのだから。
「それじゃ、あとでね」
言葉少なに言い置いて踵を返したオズと、逆方向に黒羽は駆ける。もちろん、こちらも後れを取るつもりはない。
「待テーーーッ!」
「逃ガシマセン、ヨ」
こうして隊を乱して、分ければ、自然とピーノくんの集団意識は薄れていく。そうすれば、走るのがめんどくさくなりだした彼等の中で、速力を失わない者のみが前に出る形になるだろう。
「やっぱり、偽物が混じっていましたか」
自分を追ってきた集団、その先頭を狙い、黒羽はその手の黒剣に呪符を纏わせる。ふわりと風に溶けるように、その刀身は無数の氷の花弁へと形を変えた。
ピーノくんがこちらに飛び掛かる……ようにも見えるが、それはミミクリープラントが擬態部分を振り回しているだけだと、今の黒羽は見切っている。半ば溶けたアイスに覆われた地面から顔を出した、巨大な球根。擬態ピーノくんの本体を、風に乗って花弁は撫でた。
「――アリスは追わせないし、ピーノさん達を利用したりなんて、絶対にさせません」
『花雨は白姫』、解けてもなお鋭い刃として、花弁がミミクリープラントのみを切り裂いていく。
そうして一方、オズもまた『偽物』の存在を明らかにしていた。
ピーノくんの体当たり――その実、擬態部分の軽い衝撃に気付いたそこに、地面から顔を出した球根が、大口を開けて襲い掛かってきたのだ。
「みつけた、にせピーノくんだねっ」
手にした大斧をつっかえ棒代わりに、口が閉じるのを防ぎながら、オズは飲み込まれないよう後方へ跳ぶ。
「あれ、もしかして……」
ふと、その鋭い歯列を見て思う。グリモア猟兵は、「アリスを食べるピーノくんの姿を見た」と言っていたが、これのことだろうか?
そんな気もするが、とりあえず考えるのは後回し。蒸気を上げてミミクリープラントの口を火傷させた大斧が、ガジェットとしての本懐を果たすべく形を変える。
「にせピーノくんがしょくぶつだったら……」
寒いのは苦手なのでは? 形を成したのは、冷凍光線銃。抱えたライフル型ガジェットの引き金を引けば、この国に似合いの冷気が飛び出す。
「えいっ」
地を覆うアイスが溶けだしたからこそ動けていたのだろう、ミミクリープラントは凍てつく冷気を受けて、急速に力を失い、萎びていった。その調子で、続く偽ピーノくん達に狙いを付けて――。
「アリスはまもるし、ピーノくんたちだって傷つけさせないよっ」
向かい来る敵を、オズは次々と氷漬けにしていった。
それぞれに向かった敵を平定し、オズと黒羽はようやく元の場所で合流する。
「クロバっ」
「――オズさん」
駆け寄るオズの前に、黒羽はぎこちない様子で両手を上げる。そうして向けられた黒いてのひらに、オズは満面の笑みで自分のそれを打ち付けた。
「やったねっ」
「……はい」
ハイタッチの軽やかな音が、冷たい風を一度揺らした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神埜・常盤
さつま君/f03797と
おいおい、どうしたんだ君たち
そんなキャラじゃないだろう?
もっとこう、ゆるキャラみたいな
……ねェ、さつま君
兎も角、アリスを庇いつつ迎撃を
盾状に護符を展開し武器受けしながら
彼等に声も掛けてみよう
さっき僕達と仕事をした子は何処かな
折角街を綺麗に整えたのに……
客人に見て貰わなくて良いのかね?
隊列崩し有難う
頼もしいなァ、さつま君は
ふふ、ピーノくんに血の色なんて似合わないよねェ
話を聞いてくれない子は魔眼で無力化しよう
さァ、"ピーノくんに”命じるよ
――暫しお休み
これで起きてる悪い子は
多分擬態したオウガだろう?
ピーノくんの保護はさつま君に頼りつつ
怪力の侭に炎を纏った影縫で串刺しに
火狸・さつま
常盤f04783と
わわ、常盤、ピーノ君たち、様子おかし、よ
おみみぺそり垂れ
豹変っぷりにおろおろ
うん、そ、だね!まずは、守らなきゃ!
頼りになる常盤に倣って、迎撃!
さっきの、ピーノ君達、どこー?
おめめ、覚まし、て!こんな事しちゃ、メッ!!
声掛けつつ、出来るだけ傷つけたくない、から
オーラ防御めいっぱい展開して弾く弾く
凍てつく吐息は炎で相殺!
動き見切り、捕縛出来たら、遠くへぽ~ぃっと投擲!
6人隊列を、崩さなきゃ!
常盤が眠らせたピーノ君達は、巻き込まれぬよに隙見て脇へと移動
相手をよく見て、違う攻撃してくるヤツを見切る
敵見つけれたら早業【燐火】の仔狐達嗾け
おまえ……ちがう!!
この国で悪さするヤツ、赦さない
●看破
「わわ、常盤、ピーノ君たち、様子おかし、よ」
「おいおい、どうしたんだ君たち、そんなキャラじゃないだろう?」
殺気だったピーノくん達の様子に、さつまの耳が垂れて、常盤も訝し気に彼等の表情を探る。六人組を作ったから、では済まない怒りに燃えたその眼光。得物がノコギリというのもなかなか物騒だ。
「もっとこう、ゆるキャラみたいな……」
ねェ、さつま君。そんな振りにも、戸惑った彼は満足に答えられないでいる。
「男の子なら、やらねばナラナイ時があるんデスヨー」
「そういえば僕達、男女の区別アリマシタっけ?」
「細かい事は置いておきマショウ」
ごちゃごちゃと言い合いながらも、標的へと向かう足は止まらぬまま。立派な狩人の群れと化した集団に溜息を吐いて、常盤はその意を決した。
「兎も角、まずはここを収めて、アリスへの追撃を防ごうか」
「うん、そ、だね! まずは、守らなきゃ!」
さつまもそれに頷いて、共に襲い来る彼等の前に立った。
「さて、君達、この先へは行かせないよ」
「ウオーッ、そこをどいてクダサーイ!」
「猟兵サン達と言えど、邪魔するのデシタラ――!」
勢いを緩めず突撃を駆けてくるピーノくん達を、常盤は呪符で、さつまはオーラの盾を形成して受け止める。ひゅ、と鋭く吹かれた吐息が凍える風となって吹き荒れ、湖の氷をも切り出す力強い刃が、二人の盾へと叩き付けられた。
「なるほど、意外と戦えるんだね君達」
「もう、おめめ、覚まし、て! こんな事しちゃ、メッ!!」
堅い防御で彼等の攻撃を弾き、生み出した炎で冷気を相殺しながら、さつまが愉快な仲間達を叱る。それに、常盤も一つ頷いて。
「その通りだ。折角街を綺麗に整えたのに……客人に見て貰わなくて良いのかね?」
君達は、元々アリスを歓迎していたはずだろう? そんな彼の問いに、一部のピーノくん達……先程二人に救われ、共に働いた者達の動きが鈍る。
「エー、そう言われるとそうデスネー」
「ドウしましょー?」
集団の中で遅れ気味になったその一角を見切って、その間にさつまがそちらに接近、捕まえた彼等を思いきり放り投げた。
「キャーーーッ!?」
そのまま何人かのピーノくんが、集団から吹き飛ばされて宙を舞う。
「ワー」
「力が強ーイ」
六人ずつ組んでいた隊列が崩れて、いつもの雑な発言が戻って来た事を見て取り、常盤が笑う。
「頼もしいなァ、さつま君は」
有難う、そう改めて礼を言って、常盤はその瞳を一時的に紅に染めた。そう、感謝の意を正しく伝えるためには、このタイミングを活かし切らなくては。
『紅月遊戯』、彼の魔眼は、見る者を従わせる力があるのだから。
「さァ、聞こえるかな『ピーノくん』。疲れたろう――暫しお休み」
「ふぇ?」
「ハーイ」
「オヤスミナサーイ」
効果の程には大小あれど、彼等は揃って大きく動きを鈍らせる。
「やっぱり、血の色なんて似合わないよねェ」
基本的に素直な彼等には効果覿面だったようだが……一部、動きの鈍っていない者が居る。
「まだ起きている悪い子が居るね。……で、君達は誰だい?」
「おまえ達……ちがう!!」
浮き彫りになった擬態ピーノくん達に向かって、さつまがその眼を光らせる。先程から冷気を防いでいた炎の仔狐達が、一斉にそちらへと飛び掛かった。
「この国で悪さするヤツ、赦さない」
「あァ、お帰り願おう」
炎に巻かれ、たまらず地面から顔を出した球根に、常盤の影縫の刃が突き立てられていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴木・志乃
おお、危ない危ない
洗脳か寄生までするオウガか……危険極まりないね?
アリス、ちょっーと風で君を後押しするからね
体ほぐして、あんまり力入れないでね……それっ!
高速詠唱でアリスにオーラ防御を展開
全力魔法UC発動
幸福な幻想で偽物のアリスの幻覚を生み出し敵を誘導
かつ風で本物のアリスの逃走を早めます
風でピーノ君たち分断してみましょうか
ミミクリープラントなら、分断されても即座に追ってくるはず
第六感で行動を見切り光の鎖か、鎧砕き出来る魔改造ピコハンで
早業2回攻撃でなぎ払いしちゃいますよっ
あれあれー、このピーノ君だけピーノ君じゃないみたいですね?
不思議な動きしてますねーおかしいなァ
一体何なのかなァ……?
クーナ・セラフィン
ううん?なんか変な声が聞こえてきたような。
さらにピーノ君の様子もおかしく…これ扇動だね。
見た目だけで判別するのも難しいしアリスを助けながら、かな。
少年の護衛をしながらピーノ君を分断。
ピーノ君の攻撃はUCで瞳見て先を予測しながらアリスと共に回避、もしくは槍で受ける。
ちょっと荒っぽくなるけどごめんね、と予め断っておこう。
他の猟兵が守ってくれそうなタイミングあれば適当なピーノ君一人にタックルして一気に他の五人から引き剥がす。
それでも活発に動いているのはきっと偽物、もしかしたらその瞳に邪悪な終焉が見えてるかもだけど。
そして探り出した偽物に壁を跳ねつつ空から槍の一撃を喰らわせよう。
※アドリブ絡み等お任せ
●風が吹く
「やっぱり、きっかけはアレ、かな」
様子のおかしくなったピーノくん達、その始まりを思い返して、クーナは呟く。どこからともなく、何か、声が聴こえたような気がして。それからピーノくん達が怒り出した。
「……ああ、これは扇動だね」
確信を持って呟いて、だとすれば、と推理を進める。扇動者がどこかに居る。とはいえ見た目でどうにか出来る様子もない。
仕方がないと割り切って、彼女はアリスを狙った一撃を槍で弾き返した。
「ワーッ」
「邪魔しないでクダサイヨー!」
「まあ、そうもいかないよね」
苦笑交じりに帽子のつばを押さえて、アリスの少年を護衛するべく軽やかに駆ける。
「キミ達こそ、無駄だから諦めた方が良いよ。その動きはもう『視えて』るんだ」
言って、藍色の瞳を輝かせる。牽制くらいにはなったろうか、実の所、言動に反して護衛対象を抱えたまま凌ぎ続けるのは中々辛い。
「そういう時は、先に行ってもらえば良いんですよー」
そこに、合流した志乃が軽い調子で声をかける。思わず、クーナも眉根を寄せてしまうが。
「そんな簡単に言うけどね……」
「まあまあ、任せてみてくださいよ」
相手は恐らく、洗脳か寄生までするオウガだ。危険極まりない相手であるからこそ、取れる手は確実に取っていくべきだろう。そう説いて、彼女はアリスへと声をかけた。
「アリス、ちょっーと風で君を後押しするから」
「えっ、は、はい。どうすれば……?」
「大丈夫、カタくならないで。身体をほぐして力抜いてー……そうそう」
それっ、と合図代わりの声をかけて、オーラの障壁で包んだ少年を風で押し出してやる。
「――わわっ」
ふわりと体重を感じなくなったように、その一歩はより大きく、より前へとその体を進ませる。青く輝くマントを靡かせ、アリスは十数歩分前まであっという間に運ばれていった。
「それから、これ!」
『流星群』、ピンと弾いたコインが空中で溶けて、アリスの幻影となって志乃の傍らを走り始める。
「――なるほど」
これなら大丈夫そうだ。礼を一つ言って、クーナはその場で足を止める。
「おや、どうなさるんです?」
「引っ掻き回しに行ってくるよ」
「ああ……それは楽しそう」
志乃もまた、向かい来るピーノくん達の方へと向き直って。
「ちょっと荒っぽくなるけど、ごめんね」
「エー? 何ですカー?」
「今日は風が強いですね、ってさ」
軽口を叩いて、志乃が向けた指に合わせて、再度の突風が吹き荒れる。それを乗りこなすように跳んだクーナは、ひとつふたつと、進路上に居たピーノくんをタックルで弾き飛ばした。
「キャーッ!?」
「ワー! 大丈夫ー?」
一人が分断されることにより、一時的に『六人一組』の隊列が乱れ、混乱が生じる。そんな中で、立ち直りの早い――というかそもそも、混乱している様子もない個体を、志乃もクーナも見逃さなかった。
躊躇うことなく突き出されたそのノコギリを、志乃はピコハンの素早い一撃で叩き落とし、脳天にさらなる一撃を見舞う。
「あれあれー、このピーノ君だけピーノ君じゃないみたいですね?」
不思議な動きしてますねーおかしいなァ。からかうような口調の彼女に、その擬態ピーノくんは怒りを露にする。低い唸り声と共に足元から巨大な球根が姿を現し――。
「一体何なのかなァ……?」
「ま、ろくなものじゃないのは確かだよ」
その終焉をその眼で視ながら、空中から舞い降りたクーナが、正体を現したミミクリープラントを、串刺しにした。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイネ・ミリオーン
【エレルA】
状況が忙しないです、ね
アリスは走って、早く、お城へ
オーロラを、空に還して
扇動してる奴を、どうにかしないと
出来るだけ、罪のないピーノ、は、倒したくないです、ね
見た目で判別がつかない、ので、もうどれがどれやら、ですけれど、声は満遍なく掛けて行きましょう
スピーカーで広範囲に響き渡るウィスパーボイス
さあ、心も身体も揺さぶって、千々に乱せ
音波でばらばらに薙ぎ払って、ピーノの、6人組を崩しましょう
肉壁の兎さんが、肉塊になると、困るので
大丈夫、吹っ飛ばすだけで、手加減します
これだけじゃ死にはしません、よ
嗚呼でも、其処の、ひとりで元気なピーノさん
君は此処で、さようなら、ですよ
遠慮なく、撃ち殺します
エンジ・カラカ
【エレルA】
ピピピピ、ピーーーノ!!!
アァ……目を覚ませピーーーノ!
一緒に遊んだ仲間、暴れたらダメ、ダメ……!
アァ、アァ……ミンナがピーノをどーんって
どーんって、ダメダメ、ピーノには優しく
じゃないとアイス貰えない。貰えない。
賢い君の赤い糸で一匹くくりつけてメトロの前に
一匹くくりつけてトリスの前に一匹くくりつけてアイネの前に
大漁ダー。ピーノの踊り食いダー。
踊り食いって何だろうなァ……まァイイや…。
一匹ずつを繰り返してピーノ釣り
コレはピーノを傷つけるコトが出来ない。
アイスくれくれ、ピーノ、アイス。
おかしくないピーノが釣れたらコレの後ろに隠しておこうそうしよう
じゃないとミンナに狙われる。うんうん。
トリス・ビッグロマン
【エレルA】
なんだあいつら、いきなり豹変しやがった
背後に侵略者の気配がするな
まんまと紛れ込みやがって、好き放題してくれるじゃねぇか
小隊は面倒だが、分断しちまえば個々はボンクラだ
ウサギが今晩の食材にならないうちに、撹乱して先導者を焙り出すぞ
場合によっちゃ、今日はウサギ鍋だ!
おうら、足元に気をつけなピーノども!
BANG!BANG!
同じようなツラさげてオレを煩わせるんじゃねぇよ
まとめて撃ち抜いちまうぞ!
エンジに結んでもらった糸で一匹ずつ釣り上げて、
その様子を伺う
これはボンクラ、こっちもボンクラ…
ン?お前は一匹でも威勢がいいな
気に入った、オレが直々に稽古してやるぜ!
集え、『配下の11人』!
メトロ・トリー
【エレルA】
もぐもぐイイ夢見てたのさ
助けたピーノに連れられて海底の城でおねえさんとイチャイチャ!
目が覚めたらノコギリーノじゃないか!
斬首だよ!
え?グレちゃったわけじゃないのかい?
ふむふむ悪いピーノくんかくれんぼ
ヨオシ!
よいこピーノくんをみんなが探してる間に肉壁をしよう!
なんたってぼく切られたいからね!(エコー)
痛い!
違うよもう!ウサギ鍋だよ?もっと細かく刺してくれなきゃ!
およよ、エンジくん一本釣り?
ぼくも釣ってよ
およ!
痛ァこの子、できるぞ!
1人でぼくのお腹を刺せちゃう!ぎゃは!
折角だからそのまま裂いておくれよ
ショータイムさ
ぼくの血をたっぷり吸った荊棘くんが臟からコンニチハ!
オラ!仕返しだよオ!
●大漁
「絶対に、許しマセンヨー」
「ウオーッ」
いつになくやる気を漲らせ、ノコギリを手に駆ける彼等の様子を、トリスとアイネは冷静に観察する。
「なんだあいつら、いきなり豹変しやがった」
「状況が忙しないです、ね」
先程までの救助対象が、今では敵に回るというこの状況に溜息を吐いて、ひとまずはアリスを目的地へ向かわせる。順を追って対処を進める一方、エンジには迫り来るピーノくん達の様子が衝撃だったようで。
「ピピピピ、ピーーーノ!!! アァ……目を覚ませピーーーノ!」
「目は覚めてマース」
「オハヨウゴザイマース!」
悲鳴に似た呼びかけも、今の彼等にはあまり効果がないようで。
「一緒に遊んだ仲間、暴れたらダメ、ダメ……!」
「わかったわかった、ちょっとお前は下がってろ」
落ち着け、とその肩を引いて、トリスが代わりに前に出る。すると彼に引きずられたまま眠っていたメトロも、ようやくそこで目を覚ます。
「誰だい邪魔をするのは? ぼくはまだリューグージョーのお姫様とイチャイチャしてる途中なんだけど」
「そりゃスゲェな。だが仕事の時間だ」
「えー。ああでも、何だか楽しそうなことになってるじゃないか!」
敵前に放り投げられたメトロは、迫る彼等とその手のノコギリに目を輝かせた。
「しかし、なんだ。背後に侵略者の気配がするな」
「ええ、扇動した奴が居そう、です」
先程の様子を思い出しながら、トリスの言葉にアイネが頷く。
「え? みんなグレちゃったわけじゃないのかい?」
「はい。出来るだけ、罪のないピーノ、は、倒さないよう、に」
「ふうん、悪いピーノくんがかくれんぼ……」
くるくると思考を回して、メトロは導き出した結論のままに動き出した。
「ヨオシ! ぼくが肉壁になるから、その間にみんなで見つけてね!」
「ああ、任せろ。お前がやられたら骨と肉は拾って鍋にしてやるからな」
「やったあ! 期待しちゃう!」
「良いんです、か……?」
「もちろんだとも――」
アイネの問いに応えつつ、嬉々として敵陣に飛び込んで行ったメトロは、今日一番の元気な声で宣言した
「なんたってぼく切られたいからね!!」
「エッ……何言ってるんデスカこのウサギサン?」
「こわ……」
心の距離そのままに数歩離れたところで立ち止まって、ピーノくん達は揃って近づかなくても良い攻撃法……ふーふーと吐息を吹きかける事を選んだ。凍てつく風が渦を巻いて、メトロの周りの空気を急速に冷却していく。
「あー! 違うよもう! ウサギ鍋だよ? 冷やしてどうするのさ!」
そうじゃない、刻んで、と訴える内にもぴきぴき音を立て、彼の周りが凍り付いていく。
「兎さんが、冷凍肉になると、困ります、ね」
「さっさと炙り出してやるか」
そう応じると同時に、トリスの手にした猟銃が火を噴いた。景気の良い音を響かせて、弾丸がピーノくん達の足元を次々と抉っていく。
「おうら、足元に気をつけなピーノども!」
「妙な誘いに乗らない、で。落ち着いて、ください」
続けてアイネの唇……その奥のスピーカーから音波が広がり、愉快な仲間達を薙ぎ倒していく。
「アーーーッ!?」
「ダメダメ、ピーノには優しく……じゃないとアイス貰えない。貰えない」
悲鳴を上げて吹き飛んでいく彼等の様子に、エンジが明らかに動揺しているようだが。
「吹っ飛ばすだけで、手加減は、して、ます」
これだけじゃ死にはしませんよと説きながら、アイネは彼等の様子をもう一度探る。今の内に、扇動者を特定したいところだが。
「どれが、どれやら……」
見た目で判別を付けるのはどうにも難しいようだ。
「同じようなツラさげてオレを煩わせるんじゃねぇよ! まとめて撃ち抜いちまうぞ!」
苛立ったような、楽しんでいるような、トリスもそんな声を上げながら引き金を引く。このままでは埒が明かないところだが、間違いが起きる前にとエンジは賢い君に声をかけた。自在に動く赤の糸は、吹き散らされ、乱れた隊列の中からピーノくんの一人を絡め取って、仲間の前へと引っ張り込んだ。
「およよ、エンジくん一本釣り?」
「アァ、大漁ダゾー」
ピーノの踊り食いダー。でも踊り食いって何だろうなァ。
メトロの前へ、トリスの前へ、アイネの前へとピックアップ。彼等を傷付けることを忌避した彼は、そこからの判断を仲間に委ねることにした。
「動けナーイ! 何するんデスカー」
「アッ、猟兵サンさっきはどうもー」
「……これは違うな」
のんびりと挨拶をしてくるピーノくんを前に、トリスが首を横に振る。問題ない個体はエンジが回収し、続けてもう一体釣り上げて……。
「これも、違う。そいつもただのボンクラ――おい、一匹ずつ全部判別させる気かよ! 真面目にやれ!」
「エー……」
確実ではあるが、いくら何でも手間がかかりすぎる。アイスをくれる普通のピーノくんを確保できるエンジとしては、それでも十分なのだが。
「仕方ナイ、怪しいのは……」
トリスの怒声に渋々応え、赤い糸はそれを巻き取る。隊列を崩した上に、何度か繰り返したピックアップによって、『六人組』はかなりの割合で崩れている。その中でもまだ動きの良い者が――。
「ヨクモヤッタナ! 食ラエーッ」
「およ! 待ってましたァ! じゃなくて、この子できるぞ!」
飛び込んで来た勢いのまま、ピーノくんの一体がメトロの腹にノコギリを突き刺す。輝く刃と飛び散る返り血、そのままノコギリを引く動きには淀みがなく。
「ン? お前は一匹でも威勢がいいな」
「ああ! ダメだよイイトコロなんだから!」
さあ、そのまま裂いておくれと誘うメトロに、地を割って飛び出した球根が、牙を剥いて襲い掛かる。ノコギリと同じくらい鋭い歯が、彼の身体を挟み込んだ。
「痛ァ! 楽しいけどつまみ食いはよくないなァ!」
齧りつかれたメトロは、うっとりと夢見心地な悲鳴を上げて、破れたお腹から赤いそれが零れ落ちるのを楽しむ。
「オラ! 仕返しだよオ!」
『磔刑の薔薇』、長くうねった臓物みたいな茨が飛び出し、ミミクリープラントの口の中から、その内側をずたずたに斬り裂いた。
たまらずメトロを吐き出したそこに、アイネの荷電粒子砲と、トリスの連れた猟師達の銃が向けられる。
「まんまと紛れ込みやがって――」
「ですが此処で、さようなら、ですよ」
並んだそれ等が揃って銃火を上げて、擬態ごとミミクリープラントを蜂の巣にした。
「エ! もうおしまい!?」
「まだ、混ざってるんじゃ、ないでしょう、か」
「よーし、この調子でどんどん連れて来い! 次はオレが直々に稽古してやるぜ!」
転がったそれから次の獲物へと、彼等は意識を移す。要領は掴んだ、そう遠くなく、この一部隊を平定することも可能だろう。
「アイスくれくれ、ピーノ、アイス」
「ウーン、まだ残ってマシタっけ?」
サボるな、後にしろ。そんな怒声を響かせながら、一行は作業の続きに取り掛かった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレルB】
わああ、ピーノさま達が変な風にやる気に満ち溢れています!
これはどういう事なのでしょうか!ロカジさま!
わ、アリスさんをノコギリで!?いけません、と【開闢】の鞘で【武器落とし】
おお、如月さまのお腕は頑丈ですね
落ち着いてくださーい!あちらで雅楽代さまがお呼びです、整列です
二列くらいに、ハイ!
ロカジさまの不思議な煙と雅楽代さまのお歌で
ピーノさまたちはすっかり夢の中
となると残った変な植物…?の伐採はお任せ下さい
はい!頑張りましょう!ロカジさま、如月さま
成る程、これがピーノさまたちを焚き付けて
そうです、お尻をペンペ……おしり??
まあいいか!悪いことする雑草は根刮ぎ刈り尽くして差し上げます
雅楽代・真珠
【エレルB】
あれ、ぴぃのがおかしい
それに違うぴぃのがいるね
どういう事なのロカジ、説明して
あいすくりんのせいなら仕方ない
ぴぃのが鋸をアリスに振り下ろすなら如月が間に入るよ
腕で防ぐんだ
ぴぃの、お前たちがアリスを傷つける事は許さないよ
こっちにおいで
悪いぴぃのは僕の言うことを聞きやしない
良い子になれるように歌ってあげる
ほら、こっちにおいで
良い子だね、褒めてあげるよ
『波の聲』は子守唄だ
ロカジの煙と合わせて眠りを誘う
おやすみ、ぴぃの
僕はぴぃのたちを寝かしつけているから
みみくりぃぷらんとと戦うのは如月の仕事
そうだよ。ヨシュカ、如月やってしま…
って、如月に命令していいのは僕だけなんだから
ロカジも働いておいで
ロカジ・ミナイ
【エレルB】
ピーノくんらがおかしくなったって!?
かわいそうに!アイスが足りないんだ!
鼠も人も、みんなおんなじような姿だけども
見慣れると個体差が分かるようになるじゃない
ピーノくんも例に漏れず
さっき会った子たちの点呼の番号まで覚えてる
スッと懐から煙管を出して紫煙を燻らせる
ただの御休憩じゃないよ、ちゃんとした仕事よ
戦場から退いてくるピーノに煙ならぬ薬香を嗅がせりゃ
愉快な仲間は愉快なほど眠っちまうだろう
そうやって炙り出したミミクリープラントは
そりゃもうボッコボコよ
よくも僕らのピーノくんらを唆したな!
お尻ぺんぺんじゃ済まないんだからな!
さぁヨシュカ!如月!やっちまいな!
あ、はい、すいません僕もいきます
●誘眠
ノコギリを手に、ピーノくん達がアリスを追う。凶暴さを纏わせたその気配は、まるでタガの外れた暴徒のようで。
「天誅、天誅デスヨー!」
「抹殺してやりマスー!」
回り込め、追い立てろ。そうして迫る彼等の姿を見遣ってから、ヨシュカは真珠と、そしてロカジの方を振り向いた。
「ロカジさま! ピーノさま達が変な風にやる気に満ち溢れています!」
「どういう事なのロカジ、説明して」
「ああ、かわいそうに! 彼等にはアイスが足りなかったんだ!」
「なるほど! さすがロカジさま!」
「あいすくりんのせいなら仕方ないね」
雑な説明を挟みながらも、淀みなくヨシュカが駆けて、主の意を酌んで如月もまたそれを追う。こちらに向かって走るアリスの脇を抜けて、青く輝くオーロラのマントを潜る。そうして素早く短刀を引き抜いたヨシュカの前には、アリスに向けて振り下ろされたノコギリの刃があった。
「――いけませんよ」
振るったのは、刀ではなく鞘の側。斬撃ではなく打撃でピーノくんの手元を打ち、その得物を取り落とさせる。続けてもう一人、と方向を変えたところで、そちらのピーノくんの前には如月が立ち塞がる。
「おお、如月さまのお腕は頑丈ですね」
その言葉通り、如月は自らの腕でピーノくんのノコギリを受け止め、硬質な音を響かせていた。
「ぴぃの、お前たちがアリスを傷つける事は許さないよ」
真珠の声が届く中で、ヨシュカは居並ぶ彼等を視線でなぞる。攻撃の第一波は凌いだ、けれどこのままでは、殺到する攻撃を捌くばかりになってしまう。足止めとしてはそれでも良いのかもしれないが――。
「良いかい、ヨシュカ」
彼の脳裏に、ここに来る前に聞いた言葉が浮かび上がる。
「鼠も人も、みんなおんなじような姿だけども、見慣れると個体差が分かるようになるじゃない」
ピーノくん達も、それと同じことだ、とロカジは言った。
「実際に、僕はさっき会った子たちの点呼の番号まで覚えているよ」
感心して聞き入ったその言葉。その後ろで真珠が「あのぐだぐだな点呼で覚えたとか嘘でしょう。正直に言ってごらん」という目をしていたし、急いでいなかったら実際そう問い詰めていただろうけれど、とにかく。
その気になれば、見分けることだって、できるはず。
「――こっちにおいで」
真珠の声に、比較的反応を示した個体を特定する。あっちが四番で、こっちが一番と三番を答えた子? わかるようなわからないような、けれどそちらへ向けて、明確に言葉を投げる。
「整列! 雅楽代さまがお呼びですよ」
「エッ、お呼びデスカ」
「そうデスカー」
「二列くらいに、ハイ!」
目を合わせてのヨシュカの言葉に、思わず彼等は従う。結果として集団の中で不規則な動きが生じた。
「アーッ!?」
追突事故と玉突き事故が連鎖を起こし、俄かに渋滞が発生する。
「まったく。仕方ないね、おまえたちは」
「上手くいくと思っていたよ、僕は」
溜息を吐く真珠の横で、ロカジは煙管に火を入れる。休憩、のようにも見えるが。
「そんな目で見ないでよ、これも仕事だからさ」
『妬焦女の薬膳香油』、薬液をしみこませた煙草は、どこか甘い香りを辺りに漂わせる。
「言う事を聞かない悪いぴぃのも、良い子になれるように歌ってあげる」
続けて真珠が『波の聲』を響かせて、透明な美しい歌声でピーノくん達を包み込んだ。
「――は、なんだかイイにおいがシマスヨ?」
「お歌も心が安らぎマスネー」
隊列を崩し、『六人組』の統率を失った彼等は大して抗う事もなく、怠ける方向に走った。
だって疲れたし。眠った方が心地良いし。
「おやすみ、ぴぃの」
「オヤスミナサーイ」
そうして、ぱたぱたと眠りに落ちた彼等の中で、香りを嫌い歌を拒み、起きている者が何人か。
「……お前たちは『ぴぃの』じゃないんだね」
残った彼等の足元には蔓が伸び、それは地中へと続いている。
「何でしょうこれ、植物……?」
「何でも良いけど、よくも僕らのピーノくんらを唆したな! お尻ぺんぺんじゃ済まないんだからな!」
そう、何にせよやることは変わらない。ロカジは擬態ピーノくん……ミミクリープラント達へと啖呵を切った。
「さぁヨシュカ! 如月! やっちまいな!」
「……ロカジも、働いておいで」
「あ、はい、すいません……」
「頑張りましょうね! ロカジさま、如月さま!」
如月に命令して良いのは僕だけだよ、不敬じゃない? そんな真珠に嗾けられて、ロカジもヨシュカ達の戦列に加わった。
擬態部分の根元の球根。恐らくそれが本体なのだろう。本性を露にしたミミクリープラント達との交戦が始まり、先程よりも軽やかにヨシュカが舞う。
「ロカジさまー! これお尻ってどこなんですかね?」
「え、わかんない、どこだろ」
「土の中じゃないの?」
「なるほど! では、悪いことする雑草は――」
根こそぎ刈り尽くして差し上げます。ヨシュカの鋼糸が球根の周りを走り、四肢のように伸びた根を刻み、土の中から抉り出した。転がるように宙を舞う球根は、ロカジの方へと飛んでいく。それを迎え討つ様にして、彼は背負った太刀を引き抜いた。
……こうして、すやすやと眠りこけたピーノくん達を他所に、三人の雑草刈りはしばし続く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リダン・ムグルエギ
アタシの前で「ブーム作り」ね
舐めた真似を
ウチの社員はね…
もっとぐーたらなのよ
製薬組に簪の人に透君もいれば大丈夫ね
安心して奇策に走れるわ
そうだそうだー
ぜったいゆるすな!
アリスと、ピーノ君に化けた『にせもの』を!
流行操作ポイントは2つ
ピーノ君に同調し敵対しない事
偽ピーノ君の存在を知らせピーノ君の敵と認識させる事
「アリスに追いつくために運んであげるわ!
追うのに混ざって6人組に近づいては1人抱き上げて独走
組を機能不全にする事を繰り返す
「悪いわね
ノコギリ相手を想定した防刃服に…歯は通らないわ
皆、にせものよ!
ゆるすなー!
敵が発覚したら
機能してるピーノ君らに相手をしてもらい
追手をさらに減らす事を狙うわ
九之矢・透
ピーノくん、怒らせると怖いタイプだったか……
って、それどころじゃないな
アリスは先に行かせて後ろを行くよ
攻撃は庇う
んで、振り向きざまに『翡翠』!
ピーノくんは狙わずに
足元や近くの木を崩して少しでも進行を妨げよう
息やノコギリの狙いが逸れるかもだし
逃げながらさっき会ったピーノくん達がいないか確認
傘や商品をまだ持ったままだったりしないかな……
あ、アイツかな??
今アリスをとっちめても何にも解決しないぞ!
いずれ皆仲良く溶けちゃうだけだ
折角みんなで頑張って色々作った住みかだろ?
アンタらも空を返すの協力してくれよ!
明らかに一体でも動いてるヤツが居れば、
その口に思いっきり柳を叩き込む
やあ、随分と働き者だな?アンタ
●流行の行方
「はぁ、もう、駄目かも……」
「もう少しだから、がんばってくれよ」
完全に息が上がってきているアリスへと声をかけ、透は迫る足音の方を探る。短い足ながら回転が早いのか、『六人一組』の隊列を組んだピーノくん達は、結構な勢いで距離を詰めて来ているようだ。
「ピーノくん、怒らせると怖いタイプだったか……」
そろそろ対峙する覚悟を決める必要があるだろう。少なくともアリスへの攻撃は通さないと決意を固めた彼女は、その手で投刃を確かめながら、振り返り――。
「待ちナサーイ!」
「僕等の国をこんな風にしたアリスを許スナー!」
「そうだそうだー、絶対許すなー」
「……リダンサン、なにしてんの?」
ピーノくん達に混じって声を上げているキマイラの姿に、思わずそう声を漏らした。
「丁度良かったわ透君……アタシもうそろそろ限界だから……」
「ええ!?」
「この子達……思ったより、足が速……」
息が上がっているのか、言葉が途切れる。でもね、結構がんばったのよ、とリダンは続けた。
「アリスと、『にせもの』を、ゆるすなー!」
「許スナー!」
そんなリダンの掛け声に、ピーノくん達が唱和する。彼女が得意とする流行操作、それにより、ピーノくん達の主張をそれと気付かれないよう逸らしたのだ。そう、目の前で『ブーム作り』などという真似をされては、黙ってはいられない。
「でもニセモノってなんデス?」
「知らナーイ」
「リダンサン……」
「良いの、仕込みは済んだ……から……」
ぜはー、と息を吐いて、今度こそリダンは言葉を失った。走りながら喋るのは大体しんどい。
それに加えて、道中では「アリスに追いつくために運んであげるわ!」とピーノくん達の一人を抱えて独走、六人組を崩すことで隊を脱落させ、地道に戦力を削って来ていた。体力勝負向いてないのに。
「わかった、わかったよ……」
もう完全に黙ってしまったリダンを労いながら、透は後を継ぐべく彼等を一通り見回して。
「そうだ、リダンサン。店員の子ってここに居る?」
無言で指差された先には、GOATiaのロゴ入り防寒着のピーノくん達が居た。
良かった、と彼女は息を吐く。ならば、きっと言葉は無駄にはならないだろう。
とはいえ、そうこうしている内に、先頭のピーノくんがフラついたアリスの方へと迫っている。
「う、うわ……!」
「お命頂戴デスヨーッ」
「させない……!」
飛び掛かろうとした彼の足元に投刃を放ち、足を止めさせたところで、透は彼等へと声をかけた。
「今アリスをとっちめても何にも解決しないぞ! いずれ皆仲良く溶けちゃうだけだ!」
こちらを睨むピーノくん達に向かい合って、彼女はそう訴えかける。
「折角みんなで頑張って色々作った住みかだろ? アンタらも空を返すの協力してくれよ!」
真っ向からの説得は、扇動されたピーノくん達には大して意味を成さないだろう。しかし。
「ウーン、猟兵サンがそう言うなら……」
ピーノくん達の中で、先程透に救われた者達が顔を見合わせ、足を止める。
「アレ、やめちゃうんデスカー?」
「もー走るの疲れマシター」
「騙サレルナー! 突撃デスヨー!」
すると、隊の中での反応が二つに割れた。六人組が崩れれば、彼等はいつものノリに戻るはずだが。
「……アンタは、随分と働き者なんだな?」
「何ダトー!」
「もう遅いわよ」
透の指摘に反発するそのピーノくんに、追いついてきたリダンが後ろからもたれかかった。
「残念ね。うちの社員って、ぐーたらなのよ」
反射的に、擬態ピーノくんがその正体を現す。地面を割って現れた球根が、大口を開けて『引っ掛かった獲物』に噛みついた。
「リダンサン!?」
「ワーッ、なにコレ!?」
「ニセモノだーッ」
俄かに騒ぎが起きるが、しかしリダンがその身を噛み千切られるようなことはなく。
「悪いわね。ノコギリ相手を想定した防刃服に……歯は通らないわ」
狙い通り、という笑みでその球根を見下ろして、彼女は改めてピーノくん達に呼び掛けた。
「皆、にせものよ! ゆるすなー!」
「許すナー!」
「ワー、でも気持ち悪いデスヨー?」
「見なかった振りした方がよくないデスカ?」
「あーっ、アンタらすぐに六人組つくって! 早く!」
悲鳴に似た声を上げながら、透は現れたミミクリープラントの口へと投刃を叩き込んでいった。何にせよ、目的が同じことがわかれば共闘関係はすぐに整う。二人の猟兵とピーノくん達は、続けて偽物を看破し、討伐していくことに成功した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エドガー・ブライトマン
おやおや、ご機嫌ナナメじゃない
アリス君とピーノ君の間に割って入る
ノコギリなんて似合わないものを持っちゃって
あれはさっき私が引っ張り出したピーノ君かな
そんな物騒なモノはしまいなよ
カーテンを破ったのはアリス君も悪いとおもってる
今それを戻しに行くトコロなんだ
アリス君がケガでもしたら、それも出来なくなっちゃうよ
六人のうち、ひとりでも動きが止まったら
ホンモノのピーノ君なら怠け始めるでしょ
いつまでも働き者なキミがニセモノだ
“Hの叡智”で防御力を重視
アリス君に攻撃を当てるワケにはいかないし《かばう》
キミの顎が届くなら私の剣も届くだろう
《捨て身の一撃》で反撃さ
さあ走ってアリス君
キミのやることは決まっているんだ
ライラック・エアルオウルズ
恒の暢気な姿からは、
想像も出来ない様相だ
矢張り、何か可笑しいね
何も、過激に追う事はないよ
陽も帷も僕らが解決するさ
一応と説得はしつつ、
魔導書で喚ぶ獅子に騎乗
逃げるアリスを庇う様に、
敵前に割り込み通せんぼ
必要に応じ《オーラ防御》で
彼は勿論、自身や仲間を守る
対峙するピーノさん達も、
無闇に傷付けたくはないから
《第六感》で知れる事無いか、
獅子上から良く様子眺めて
《属性攻撃:石》放ち武器落とし、
突撃は石壁築いて進行妨害
獅子の爪隠して柔く弾いて、
ピーノを彼方此方と散らせる
戦闘中や散らせた後に、
擬態ピーノに気付けたなら
妨害後等の隙突き駆けて、
切り裂きや噛み付きで攻撃
これは、――可愛くない
一体全体どうなってる?
清川・シャル
目を覚ましてくださいビーノくん!
一応声掛けしますね。
それにしてもお空からの熱だったんですね。なんとかして空の穴を塞ぐお手伝いしましょうね。
それにはまず目の前を片付けなくては。
全力魔法で風を起こします
突風と鎌鼬です
強い風で、動きと視界を鈍くするのが狙いですよ
プラスでぐーちゃん零で爆風を作りましょう
ミミクリープラントは第六感で察知して、念動力で確実に当てに行きましょう
近接距離は桜花乱舞で殴ります
手加減はしないけど気絶程度に済ませられたら。
ダメな時は殴りますね
あと蹴りも含めて連撃を行います
敵攻撃には激痛耐性、武器受け、カウンターで対応
●迎撃
「ヨクモ、僕等の国をー!」
「止まりナサーイ!」
そろそろ城にも辿り着くかと言うタイミングで、ピーノくんの一団がアリスへと向かう。殺気立ち、ノコギリを構えるその姿は、何度もこの国を訪れているライラックにとっても見覚えのないもので。
「……矢張り、何か可笑しいね」
普段からは想像もつかない様相。そこに疑念を抱きながらも、目の前の状況を打破すべく、彼は輝く毛並みの獅子に跨り、進軍する彼等を追う。
「う、わ……!」
「天誅デスヨーッ!」
ここまで走り続けだったためか、足を縺れさせたアリスへと、ピーノくんの一人が飛び掛かる。振り下ろされるノコギリの刃、それがアリスの肉に食いつく前に、エドガーが両者の間に割って入った。
ギザギザの、けれど鋭い刃は、エドガーの剣によっていなされる。
「おやおや、随分ご機嫌ナナメじゃない」
「目を覚ましてくださいピーノくん!」
同時に割り込んだシャルも、怒りに駆られた様子の彼等に声をかける。可能なら、戦うことなく済ませたいところだが。
「どいてクダサーイ!」
「あのアリスをこらしめてヤリマスのでー!」
どうやら聞く耳を持つ者は少ない様子。それでも諦めずに彼等の様子を探った彼女は、声掛けへの反応が他と違う者を見つける。それは、先程氷の街で出会った相手。エドガーもそれに気付いたか、そちらを意識しつつ説得を試みた。
「そんな物騒なモノはしまいなよ。カーテンを破ったのはアリス君も悪いとおもってるさ」
「エー、そうなんデスカー?」
「ああ、今はそれを戻しに行くトコロなんだ。アリス君がケガでもしたら、それも出来なくなっちゃうよ」
エドガーが頷くと、そのピーノくんは考え込むような素振りを見せる。
「ソンナノ、嘘ニ決マッテマスヨー!」
「でも、あの猟兵サンはさっき助けてくれマシタしー」
なにやら揉め始めた彼等の様子を獅子の上から観察しながら、追いついたライラックもそこに声をかける。
「何も、過激に追う事はないよ。陽も帷も僕らが解決するさ」
「空の穴を塞ぐのでしょう? 私もお手伝いしますから」
「ムー、冷蔵庫を作ってくれた猟兵サンも……それなら……」
シャルの援護射撃もあり、ピーノくんの一人がノコギリを収めようとするが。
「騙サレナイゾー! 僕達ハ絶対ニ許サナイ!」
「ソウダソウダー!」
大半の者達はそれに続く様子はない。しかし、舌ったらずな喋り方をするピーノくん達の中に、さらに拙い喋り方をする者が居るような……。
「……うん?」
「この子……」
ライラックとシャルがそれに気付く。が、当の相手もそれを察したようで。
「カカレーッ!」
「ワー!」
掛け声を上げて集団を煽り、けしかけてきた。短い足で駆け出して、隊列を組んだ彼等は一斉に吐息を吹きかける。冷たい風は人数分だけ重なって、俄かに突風を形作る。
「ああ、大したものだけど……嵐と呼ぶ程ではないかな?」
「下がって、落ち着いてくださいねー」
ライラックの作る石壁とオーラによる障壁がその冷風を押し留め、シャルの全力で紡がれた風が逆にそれを吹き散らす。
「アーッ」
「風が強ーイ!」
仕方なく、直接乗り込んできたピーノくん達をエドガーが捌き、ライラックの駆る獅子が肉球で叩いて転がしていく。桜色のメリケンサックを手にしたシャルも、少しばかりそれを見て考え。
「……仕方ありませんよね」
拳で彼等に応戦した。こちらも刃を向けられている以上、手加減は出来ない。桜吹雪の舞い散る一撃を受けたピーノくんは大きく吹っ飛んで、よよよとその場に手をついた。
「い、イターい」
「もう立てマセンヨー」
明らかにわざとらしい仕草をしている者も居り、どうやら六人組が崩れてサボり始めたようだと彼等は悟る。そんな中で、なおも変わらず駆ける個体へと目を向け、シャルはグレネードランチャーの照準を向けた。
「あなたが、偽物ですね!」
それは、先程見つけた喋り方の拙い個体。連続発射された弾頭が爆ぜて、それを爆炎で包み込み――。
「――そこかな」
もうもうと立ち込める煙の中、逃れようとしていたそいつを獅子の牙が捕らえ、引っ張り上げる。
……ぶち、と。音がして、そのピーノくんの足元に伸びる蔓が千切れた。途端、蔓が絡まり形作られていた、ピーノくんに擬態したそれがぐにゃりと崩れる。
「これは……!」
それを目にしたライラックの眉根が寄る。良く出来ている、が、全く可愛くない。
「一体全体、どうなってる?」
蔓の根元に向けられた爪を避けて、球根は地を割りながらすさまじい勢いで逃れていく。目指す先は、城へと逃れ走るアリスの背中。球根が割れて、鋭い歯の並んだ口を露に。そのまま大口を開けたミミクリープラントの前へ、先回りしていたエドガーが跳びこむ。
「こんなになっても諦めないなんて、君は働き者なんだね?」
ああ、けれど、ここまでだ。
『Hの叡智』、落ち着いて迎え討つ準備を整えていたエドガーは、閉じ行く口を上下に抑える。噛み砕かれるその前に、彼の剣がミミクリープラントの口の中を貫いた。
捨て身の一撃で敵を仕留めたエドガーは、萎れていくその球根を興味深げに見た後、目を丸くしているアリスの方を振り向く――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●氷の城へ
駆けつけてくれた猟兵達に。守ってくれた彼等に、「ありがとう」とアリスは言った。
けれど、その足が止まってしまったのを見て、エドガーは次の言葉を待った。
「……でも、信じてほしいんだ」
苦し気に、絞り出すような声。そこからは、少年では上手く言葉に出来ないようで。
こんなことになるなんて。望んでやったわけじゃない。どうしようもなくって――。突然この世界に迷い込み、住人に怒りと殺意と、心無い言葉を向けられ続けた事が、それなりに応えたのだろう。とりとめのない、けれど泣き出しそうなそれに、彼は少年の肩に手を置いて答えた。わかっている、と。
傍らに寄った志乃が、その顔を覗き込む。
「でも、ここまで来れたじゃない。もう少しだよ」
そして、小さく頷いた少年の背を、青く輝くマントを、エドガーはそっと押した。
「さあ、走ってアリス君。キミのやることは決まっているんだ」
門を潜れば、そこは木と石と、氷と、色の付いた氷で組み上げられた、モザイク模様のお城が見えるだろう。
それを見上げて、アイネが言う。
「お城へ。オーロラを、空に還して」
うん、と頷いて駆けていくアリスを見送り、振り返る。城の外、猟兵達の前には、ピーノくん達が集まってきていた。
第3章 ボス戦
『クチナシの魔女』
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POW : 「ものがたりのはじまりはじまり」
【絵本から飛び出す建物や木々】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を描かれた物語に応じた形に変化させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 「すると、愉快な仲間達は言いました」
【愉快な仲間達が登場する物語】を披露した指定の全対象に【朗読された言葉通りに行動したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ : 「まあ、なんということでしょう!」
無敵の【愉快な仲間達が合体したりして巨大化した姿】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
イラスト:Kirsche
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠八津崎・くくり」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
氷のお城。王様の居ないこの国の、お飾りの玉座の間に立って、魔女は手にした絵本を開く。
覆い隠した唇が小さく動いて、そこに描かれた物語を、彼女の描いたお話を、言葉として紡ぎ出した。
「
●まあ、なんということでしょう!
怒ったピーノくん達の襲撃を切り抜けて、アリスは氷のお城に辿り着きました。この国のお城には様々な特徴がありますが、中でも一番目を引くのは、一番高い尖塔の上に建てられた、観覧車でしょう。この上からならば、島を一望できる……そう、この国で一番高い場所です。
この観覧車に乗って、雲のアイスを食べた人も居ると聞きます。そこからならば、きっとオーロラのカーテンにだって手が届くことでしょう!
ただし、この観覧車は人力。お城の地下にある取っ手付きの柱を、ぐるぐる回さなくてはいけません。そこはきっと、アリスと猟兵に味方したピーノくん達が何とかしてくれると信じて……問題は、お城の外でした。
「そこをどいてクダサーイ!」
「アリスを出セーッ」
集まったピーノくん達が、猟兵達に訴えます。アリスがこの城に入っていったことは、もう知っているようで。彼等は空のカーテンに穴を開けた犯人が、勝手に空の向こう、元の世界に帰る気でいるのだと、そう信じているようでした。
「そうナノ?」
「ソウ言われると、そんな気がシテきマシタねぇ」
ピーノくん達は、言いました。
ぼくたちのくにを、こんなふうにしておいて。
「ボクたちのくにを、コンナふうにシテおいて?」
にげだすなんて、ゆるせない。
「にげだすナンテ、ゆるせない!」
その時、不思議なことが起こりました。義憤に燃えるピーノくん達の体が、光に包まれ始めたのです。
「エッ……?」
「まさか……」
すると――まあ、なんということでしょう!
輝く六人のピーノくんは、合体を遂げて、巨大化してしまいました!
「ヤッターーー!!」
「カッコイイーーーー!!!」
歓声の中で立ち上がった、大きな大きなピーノくんは、手にした回転ノコギリを唸らせて、一歩一歩大地を踏み鳴らして、お城へと進みます。
果たしてアリスは、このジャイアントピーノくんの襲撃を躱して、オーロラのカーテンを空に届けることができるのでしょうか。
――事の成否は、きっと足止めを担う猟兵達にかかっています。
」
●ボス戦『ジャイアントピーノくん』
クチナシの魔女のユーベルコードによる産物。ピーノくんが六体合体して生まれたという設定ですが、明らかに六体まとめたものよりサイズがでかくなっています。
手にした『虐殺チェーンソー』と、吐息による『猛吹雪』で、城と観覧車を倒壊させようとしてきます。
強力ですが、生みの親である魔女が「無敵だ」とあんまり信じていないため、普通に倒せます。
※材料に本物のピーノくんは含まれていません。
●クチナシの魔女
今回のデスゲーム、『オーロラのカーテン』を成立させることに集中していますので、直接戦闘には参加しません。デスゲームを攻略されると負けを認めて大人しく倒されます。
絵本を読み上げる事でユーベルコードが発動しますが、逆にそれ以外で口を開くことはほぼありません。
かつては絵本作家だったようですが、アリスとしてこの世界に至り、扉を潜る前に絶望し、オウガとなった存在です。
●種族『愉快な仲間』の方限定
クチナシの魔女のユーベルコードは、『愉快な仲間』にのみ非常に強く作用しそうです。たとえ猟兵であってもそれは変わらないでしょう。他の方の数値判定に影響は出ないようにしますので、操られた体でプレイングをかけていただいても結構です。
もちろん、操られなかったということで普通にプレイングを書いていただいても問題ありません。
ジェイクス・ライアー(サポート)
この先へ進みたいのなら
私が力になろう。
●探索等
「お嬢さん。少しお話をお聞かせいただいても?」
その場に相応しい人物を演じることに長ける
●戦闘スタイル
「さあ、仕事を始めよう。」
様々な武器を駆使して戦うスピード暗殺型
紳士的な所作で苛烈な攻撃を行う
さまざまな武器を状況に応じて使い分ける
銃の仕込まれた傘、靴の仕込み刃等
魔法や超能力は使えない
●性格
「紳士たるもの、いかなる時に於いても優雅たるべし」
クールな紳士、女性には慇懃な態度
●NG
フレンドリー、過度の笑顔(微笑み程度ならOK)、キャラの過去や私生活に関わる話、ギャグシナリオ、公序良俗に反する行為
●PLの好み
純戦、スタイリッシュ、怪我、泥臭さ、後味が悪い
●Back stab
成り行きと敵の行動から、猟兵達の目的は示された。だが、首謀者たるオウガに標的としての価値がなくなったわけではない。
例えば、先に仕留めてしまえば追撃はなくなる。そうでなくともしばらく釘付けにすることが出来れば、その分表の戦場への援護射撃を防ぐことも可能だろう。
「――!」
そうして玉座の間に漂う冷気に、微かな光が混ざるのを見つけて、クチナシの魔女は帽子を押さえてその場に伏せる。すると彼女の頭上、先程まで首の在った場所で、鋼糸がその輪を閉じた。
静かで簡素なギロチンをやり過ごした魔女は、気付かぬ内に侵入していたジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)の姿を捉える。
「失礼、驚かせるつもりはなかったのですが」
巻き取られた鋼糸が指輪へと消える。わざと丁寧に、「一撃で仕留めるつもりだった」と言外に語りながら、紳士はステッキのような細い傘を手に、一歩踏み出す。自然に距離を詰めにかかったジェイクスを前に、クチナシの魔女は柱の影へと身を移し、手にした絵本を開いた。
「現れた襲撃者の姿に、魔女は慌てふためいて、お城の奥へと走ります」
読み上げる言葉のままに、彼女は走る。だが玉座の間の奥、そちらが袋小路であることを、ジェイクスは当然把握している。
「すると、玉座の間に飾られた、氷の鎧が動き出しました」
「……何を言っている?」
鎧など見当たらないが。傘の先を持ち上げたジェイクスの目の前に、魔女の絵本から『氷の鎧』が飛び出した。この国の住人に合わせたような、大きな頭に短い手足。登場の勢いそのままに、動く鎧は装備した馬上槍を叩き付けようとする。槍の穂先と傘の先端では、勝負は決まったようなもの
玉座の間に響く銃声。ジェイクスの傘を模した銃から散弾が飛び出して、氷の鎧の胴体を粉砕する。
目を丸くした魔女は、今度こそ慌てて次の一射から身を躱した。ドレスの裾と髪の一部が散弾に齧り取られ、細切れになって宙を舞う。けれど獲物を狙う狩人は、油断なく更なる一歩を刻む。
「逃がさん」
「――と、紳士のような姿の彼は、冷徹にそう言い放ちます。ああ、なんて鋭く、恐ろしい眼をしているのでしょう」
砕けた鎧の代わりをもう二、三体呼び出しながら、魔女は朗読を続ける。
「けれど、安心してください。実はこの城の玉座の裏には、秘密の抜け道があるのです」
「は? 待て――」
そんなものは、なかったはずだ。襲撃前に探りを入れていた彼の言葉に、魔女は覆いの下で微笑んで。
玉座を動かす。たとえ存在しなくとも、彼女が読み上げれば、そのように。生まれ出でた隠し通路へと、魔女はヒールの音を響かせて走っていった。
抑えた舌打ちを一つ。ジェイクスはその後を追うべく、現れた『氷の鎧』へと銃口を向けた。
成功
🔵🔵🔴
ジョン・フラワー
【花簪】
こんなふうにしておいて、にげだすなんてゆるせない!
正義のためにおおかみは立ち上がるんだ!
アリス! 覚悟するんだぞ!
まず合体!!!
……僕ってもしかしてひとりしかいない?
とにかく巨大化だ! わおーん!!!
どうだい! 立派なおおかみだろう!
力溜め&ジャンプでお城の上までひとっとびだ!
衝撃波でちょっと揺れるかもしれないけど気にしないさ
なんならこのまま揺らし続ければいいんじゃない? 僕かしこい!
おおかみは騙す側の生き物だから大丈夫!
確かにちょっとアリスが多くて誰を足止めすればいいか迷うけど……
全部? 全部かな? 全部ならたぶん間違いないよね
簪のアリスも、おおきいアイスなアリスも!
にげられないぞ!
月舘・夜彦
【花簪】
今度は合体しましたね
……オオカミ殿?
どうも彼の様子がおかしいような
もしや彼も愉快な仲間の一人ですから魔女の力の影響を受けているのでは
アリスからの脅威が増えてしまうのはまずいですね
私も急がなくては
オオカミ殿の位置を視力にて確認、彼を追います
城は飛んで上った方が早いならば活用しましょう
……オブリビオンによる特殊な力とならば抜刀術『断ち風』にて
オオカミ殿についた魔女の力を祓えるか試してみましょう
オオカミ殿、お気を確かに
あの巨大ピーノ殿は偽物、オオカミ殿は騙されております
巨大ピーノ殿には武器落としと鎧砕きの2回攻撃にて手足を斬り落とします
体さえ崩して、動きを封じられれば皆も動き易いことでしょう
こんなふうにしておいて、にげだすなんてゆるせない。
「こんなふうにしておいて、にげだすなんてゆるせない!」
義憤に燃える声を上げたのは、ピーノくん達だけではありませんでした。
正義の心を熱く燃やし、おおかみさんも立ち上がります。
「正義のために、おおかみは立ち上がるんだ!」
すると、その足元に芽吹いたお花が、光と共に鮮やかに咲き誇りました。輝きが、おおかみさんに力を与えて――。
「さあ、合体だ!!!」
「……オオカミ殿は一人しか居ませんが」
「僕もそんな気がする! でもね簪のアリス、ひとりでだって合体はできるよ!!」
猟兵がそれに聞き返す前に、おおかみさんは高らかに遠吠えを上げました。
わおーん。
●おおかみさんがほえる
城へと走るアリスに向かって、ジャイアントピーノくんが歩を進める。
「ゥラーッ、待つんデスヨー!」
溶け始めた大地を揺るがす一歩。六人のピーノくんが合わさる事で、怠け者と化す弱点を克服した巨人は、淀みなく城へと向かう。巨大さ故の緩慢な動きも、その大きな歩幅で十分に補えるだろう。
「ワーイ、大きいー!」
「ソレイケー!」
完全に観客に回った他のピーノくん達がわいわいと騒ぐそこに、もう一つの大きな影が舞い降りた。
「アリス! 覚悟するんだぞ!」
地響きと共に降り立ったのは、体高5mを超える『花畑の狼』。真の姿となったジョンの登場と共に、大地が一つ、また大きく揺れる。俄かに発生した地震と衝撃波に、ピーノくん達が薙ぎ倒されるが。
「アーーーーッ!?」
「スゴーーイ、カッコイイーーー!」
ふふん、そうだろうそうだろう。自慢気に鼻を上げた狼は、楽しかったのかそのまま何度か地面を叩き、ぐらぐらさせる。
「突然どうしたのでしょうか、オオカミ殿は……」
一方、その後を追ってきた夜彦は、ジョンの意図を掴みあぐねていた。自由奔放で、時折突拍子もない事を始める彼だが、突然巨大化した彼の様子には、やはりおかしい所がある。
「まさか、魔女の力の影響を……?」
操られているのだとすれば、そして、このままアリスに危害が及ぶのだとすれば。腰に差した刀へと、夜彦はその手を添える。
「ヨーシ、一緒にアリスを懲らしめマスヨー!」
「あ、そうだったね! アリスを捕まえないと!」
衝撃波を生み出して遊んでいたジョンは、ジャイアントピーノくんの言葉に目的を思い出して、標的へと牙を剥く。これは、やはり、と夜彦もその言葉に覚悟を固めた。
えてして、オオカミとはそういうもの。童話においては脅威、物語における障害、悪者として描かれる存在だ。
「あれ? えーっと、捕まえるのはどのアリスだっけ?」
「エッ」
「何でコッチ見てるんデスカ?」
「まあいっか! とりあえず全部捕まえれば間違いないよね!」
簪のアリスも、アイスなアリスも、おおきいアイスなアリスだって! 彼にとってのアリスは、こんなにたくさんいるわけで。
「エー」
「雑じゃナイ?」
「さあ、みーんな逃げられないぞ!」
彼の特性によるものだろうか、その足元に色鮮やかな花畑を生み出しながら、ジョンは一同の前に立ち塞がる。もちろん、ジャイアントピーノくんの前にも。
……これは、別に放っておいても良いのかも知れない。そんな風に夜彦は思った。
「ウオーッ、邪魔するなら容赦しマセンヨー!」
「やる気だね、おおきいアイスなアリス! 僕だって負けないよ!」
双方ともに相手へと突進、大きくてふかふかな雪のような身体と、大きくてもふもふのでかい毛玉が、その質量を込めてぶつかり合う。膂力はジョンの側に軍配が上がったか、衝撃に負けて巨大なピーノくんがたたらを踏む。
「ムムム……!」
「スゴーイ! どっちもガンバッテー」
声援が上がる中で体勢を立て直し、ピーノくんは大きく吸い込んだ息を、ジョンに向けて吹き付ける。発生するのは常とは比べ物にならない猛吹雪。ピンクの毛並みに霜が降りて、猛風の中、周囲の水分が凍り付くような音が響く。
「わー、お花が散っちゃうじゃないか!」
動きの鈍った彼に向けて、ピーノくんは手にしたチェーンソーを向けようとするが。
「させませんよ」
その身体を伝い、駆け上がっていた夜彦が刀を一閃、その刃を空中で叩き落とした。武器を取り落とさせるには至らなくとも、行く手を逸らされた刃はただ大地を抉る。さらに彼は、相手の動きを鈍らせるべく腕を、脚をと斬り裂いていく。
「よーし、今だ!」
その隙に地を蹴ったジョンは、吹雪を突き抜けてピーノくんへと噛みついた。
「ウワーッ!」
「アーッ、巻き込まれるー!」
「逃ゲテー!」
ごろんごろんびたんびたんと両者は争い、やがてピーノくんがジョンを振りほどいたことでまた距離が離れる。吹き飛ばされた形のジョンは、空中で体勢を立て直しながら着地して。
「……あ! あっちにもアリスが居るじゃないか!」
丁度城へと駆けこんだ青いマントの端を見て、アリスの存在を思い出した。
……ああ、そちらは不味い。その様子に目を細めた夜彦は、ジョンの身体の上へと飛び乗りながら、呼びかける。
「オオカミ殿、お気を確かに」
魔女の力に操られてはいけません、とそう諭すが。
「ピーノ殿も、オオカミ殿も、騙されているのですよ」
「えっ、嘘吐きが居るのかい? オオカミの僕が騙されている?」
――そんなことは、ありませんよ。
「ほら、騙されてるワケないデスヨー」
「だよねえ」
どこからともなく響く声。安心、と笑う彼の姿に頭痛を堪えるような表情を浮かべながら、夜彦は鞘へと一度刀を納めた。
黒塗りの鞘へと手を添え、握るのは『嵐』を冠するその一刀。
「御免」
抜刀術『断ち風』。このまま二大怪獣総進撃みたいにされてはいたずらに被害を広げるのみ。夜彦の振るう嵐は、彼の狙い通り、魔女がジョンへと及ぼした悪影響を振り払い――。
「――あれ?」
無理矢理底上げされていた力を失い、元のサイズに戻ったジョンは、背中から地面に着地した。
「目は覚めましたか、オオカミ殿?」
「ええ、僕はちゃんと起きてるよ?」
地に倒れたまま答えるジョンの顔に、先程の怒りは見えない。溜息を吐きそうになるのを堪えながら、夜彦は巨大な足音に巻き込まれないよう、彼を連れて一時距離を取った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メトロ・トリー
【エレルA】
きゃあ!ぎゃはは!
豆の木も登らずに巨人に会えちゃうなんて
ジャックもびっくり?
ぎゃはは!ロマンさま合体かい!?
クソだせえなおい
お城をぶっ壊すついでにぼくもぼくも〜
うわあ!エンジくんが武器を取り上げちゃう!
わわ!アイネくんまで!動けなくなっちゃうよ!
どうしようロマン様!いやダサピーノさま〜!!
ヨヨヨ悪は滅びる運命なのかあ
アイネくんがぼくに惚れ直すって言うなら
がんばっちゃうけど
え‥‥?なおす?
ヨオシ!早くしないとアイスが溶けちゃう!
時間は待ってくれやしないクソ野郎だか‥‥ら?
?次巻?字間?
時間の話はやめておくれよ!
ギギギ疑義儀GIFT!
並びやがれ食器共
クソだせえその首ちょんぎってやんな!
アイネ・ミリオーン
【エレルA】
わ、大きい
えー……明らかに大きいです、ね……?
データ確認、した感じ、ピーノくん、数減ってなさそうな、ので……やっぱり、偽物です、かね
なら遠慮なく、倒せます
エンジの糸に重ねるよう、ケーブルを伸ばして編んで連ね、足元を邪魔して、UCでも足止め
大丈夫、僕が直接的な、攻撃しなくて、も、他に居ます、し
トリス、メトロ
あとはお任せ、します
えっ
……あー……トリス、愉快な仲間たちでした、っけ
メトロまで、バグってます、けれど
惚れ直してあげます、から、早く正気寄りに戻って来てください、ね
……折角、アイスの国に、来たのに
アイス、全く食べてません、ね
残念、です
薬屋に帰ったら、みんなとアイス、食べましょう、か
トリス・ビッグロマン
【エレルA】
オレを呼んだか?
トリス?いいや、違う
オレこそは無敵の将軍、"ジェネラル・ピーノ"!
(オープニングで溶け去ったはずの氷像(下半身はピーノ)の
肩に乗って、かつての仲間を睥睨する)
さあやってしまえ、ギガントピーノよ!
喰らえ必殺、トリプルアイスバズーカ!
ん?ギガントの足に何か絡みついて……うおあ!
(ドカーン!)
(他の巨大ピーノを巻き込んでギガントピーノが倒れる)
(トリスの上半身が地面に突き刺さる)
ぶはあっ!
お、オレは何を?
痛ェ!!なんだこりゃ、食器?
やめろ、なにすんだクソウサギ!
ジェネラル・ピーノ?訳のわからんことを!
畜生、大恥かかせやがって!
やっぱり魔女なんて大ッ嫌いだぜ!
エンジ・カラカ
【エレルA】
ヤッター!カッコイイ!
コレもピーノと一緒にカッコイイーってしたいー。
これだけでかかったらアイスもおっきいヤツができる?できる?
ピーーーーーーノ!
アイス!城を倒すよりもアイスの方がイイヨー。
観覧車よりもアイスー
……ダメだなァ。
賢い君、賢い君、ピーーーーーーノを止めよう。そうしよう。
でっかくなったピーノの足にぐるぐる糸を巻きつけてしまおう
動かれたら困るンだよなァ。
危ない武器も必要ないない。
あれにも糸を絡ませてしまおうそうしよう。
アイネナイスー。
アレー、トリスとメトロがおかしいおかしい。
コレも遊ぶー。いけー。
合体ピーノ、アイスはどこどこ?
ロカジ・ミナイ
【エレルB】
でっけー相手ってのは燃えるねぇ!
ちいちゃいのは可愛くって仕方ない
ジャイアントピーノの出現により小さき雑魚(仮)と化した今の僕は
ちっちゃくて可愛い方の役だしね
けども戦うならでっけー相手よ
漢の浪漫ってやつ
ここは僕のペットの幾岐大蛇ちゃんの出番だね
首八本あるのに頭二つ失くしちまった間抜けな子よ
概ねメガオロチくらいの大きさになってもらって
僕はその頭にヒョイと乗ってジャイアントピーノと対峙する
ヒーローが巨大メカに乗り込むのは戦隊モノじゃ定番でしょ?
ヨシュカ(エレルブラウン)もお乗り
地上のピーノは任せたよ、真珠(エレルホワイト)
秘技・オロチの通せんぼ
あんまり悪い子だったら蛇尻尾でお尻ペンペンよ
雅楽代・真珠
【エレルB】
大きければいいってものではないでしょ
ヨシュカはどっち派?
ロカジが可愛い…?
まあ相手は大きい方が平伏させ甲斐はあるよね
僕は眠らせたぴぃのの傍にいよう
子守をしてあげないとね
ぴぃのはうるさいけれど小さいからいいのに
解っていない
大きいぴぃのとか頭が高い
不敬だよ、不敬
そんな大きいぴぃのには『天誅』だ
…ロカジが不敬な呼び方をした気がするけど大目に見てあげよう
魔女も本当に解っていない
ぴぃのは六人居ないと駄目なのに
六人を一人にしてしまったら駄目ぴぃのだよ
じゃいあんとぴぃのって言うの?
それならじゃいあんとだめぴぃのだね
僕の使用人たちは働き者なんだ
じゃいあんとだめぴぃのとは違う
やってしまえ、お前たち
ヨシュカ・グナイゼナウ
【エレルB】
わたしですか?大きくて格好良いのが好きです!あ、でも小さくてかわいいのも良い……
そうです!ピーノさま達は小さい方がかわいいですよ。解っていませんね、あの方
むう、これでは爪先しか攻撃が届きそうもありません
わたしも10mくらい身長が有れば…
…え?わたしも蛇さんに乗っても良いのですか!?わあああ
ありがとうございます!ロカジさま!いえ、エレルレッド!(ピンク)
ジャイアントピーノvsとても大きい蛇さん…!!スゴイ!気分が高揚します…!
蛇さんに乗ってピーノ(大)に近づけたら、機を見て飛び移り
体に登れたならこちらのものです
取り出したるは七つの千本
楔の様に打ち込んで差し上げます
「――オレを、呼んだか?」
ええ、呼びましたとも。
ピーノくん達の戦う姿を見て、狩人さんは、自らに課せられた真の使命に目覚めました。
決して戦いには向いていない、元来から怠け者のピーノくん達。このアリスラビリンスで生きていくには余りに弱く、非効率な彼等を、率い、鍛え、導く者が必要なのは明らかです。誰かがやらねばならない。そして、それに一番向いているのは誰か。
狩人さんは、本当はもう、とっくに分かっていたのです。
あの日見た、ピーノくん達の建てた氷像のように、雄々しく、力強く、そう。
「今こそ、立ち上がる時――!」
●雄大なる対峙
迫り来る巨大なピーノくんを前に、待ち受ける面々はそれぞれに声を上げる。
「きゃあ! ぎゃはは! 豆の木も登らずに巨人に会えちゃうなんて!」
ジャックもびっくり? メトロは笑って、エンジはその登場シーンに居合わせたかったと惜しんで見せる。
「コレもピーノと一緒にカッコイイーってしたいー」
とはいえ巨大なものが現れるタイミングなど、そうは訪れないもので。
「いやあ、でっけー相手ってのは燃えるねぇ!」
「でも、何だか……合体に、しては、明らかに大きいです、ね……?」
ロカジの声にアイネが首を傾げる。飛ばしていた観測機から得たデータを検証したところ、この場のピーノくんの数が減った形跡はない。となると、やはり合体したというのは方便で、偽物と見るべきだろう。
「大きければいいってものではないでしょ。ちなみにヨシュカはどっち派?」
「わたしですか? 大きくて格好良いのが好きです! あ、でも小さくてかわいいのも良い……」
眠らせたピーノくん達の傍に控えた真珠は、ヨシュカの答えに頷いて。
「お前はよく解っているね。ぴぃのはうるさいけれど小さいからいいんだよ」
「そうですね! ピーノさま達は小さい方がかわいいですよ。合体させた方は、きっとその辺り解っていないのでしょう」
未だ見ぬ黒幕へと言及する彼等を背景に、ロカジが動く。
「何にせよ、これで僕等がちっちゃくて可愛い方の役ってことだね」
「ロカジが可愛い……?」
疑問の声は聞き流しておく。
「ま、こういう時はこの子の出番さ」
ロカジの命に従って、彼の従えたペット、白い鱗の幾岐大蛇が姿を現した。
「巨大怪獣相手なら、ヒーローも巨大メカに乗り込んで戦わないとねえ――ヨシュカも乗るかい?」
「良いのですか!?」
「もちろんだよ、今日の君は戦隊ヒーローエレルブラウンだ」
「ありがとうございますロカジさま! いえ、エレルピンk……レッド!」
輝く笑顔を浮かべたヨシュカと共に蛇の頭に乗って、ロカジはジャイアントピーノくんに向かい合えるほどの高さへと上っていく。
「エレルホワイトは留守番よろしく」
「……」
まあまあ不敬な呼び方だけど、ヨシュカが大盛り上がりしてるから聞こえなかったことにしてあげる。ふいと横を向いていた真珠は、傍らの小さなピーノくんと、今まさに大蛇と対峙しようとしている巨体とを見比べて。
「……あれを作った者は、本当に解っていないんだね」
ピーノくんは六人一組になった時に働き者の側面を発揮する。それをまとめて、一体にしてしまうとは。
「あれじゃあ、じゃいあんとだめぴぃのだ」
「はッ、甘ぇな! 合体したこいつらは真の『六人一組』! そんな欠点はもう存在しねえ!」
「……お前は」
不敬オブ不敬みたいな声に、真珠の眉がぴくりと動く。そして同時に、声の元から輝く光が立ち上り始めた。
「エッ」
「これは……モシカシテ……!?」
ピーノくん達がざわざわし始める。そう、黒幕の使うユーベルコードが一回切りなどという都合の良い話はない。短い、けれど巨大な足が地を鳴らし、ずんぐりむっくりした胴体が光の中から現れて――。
「ヤッター、カッコイ……ンンー?」
周りのピーノくん達と一緒に歓声を上げかけたエンジが思わず口を噤む。
――まあ、なんということでしょう、新たに現れた巨大ピーノ君の上半身には、倒壊したはずの氷像がくっついていました。
何故か上半身裸で両手を広げた例のアレだ。困惑の反応を見せるピーノくん達と同様、ヨシュカも僅かに眉根を寄せて。
「あれは……トリス殿の氷像ですよね」
「頭が高い。不敬だよ不敬」
「ぎゃはは! ロマンさまも合体かい!? ――クソだせえな」
「オイ、クソウサギ、そこだけ真顔になるんじゃねえ!」
氷像の肩の上から響く声。よく見れば、そこには氷像のモデルであるトリスが乗っていた。
「……あー、トリス? 何やってんだい」
「悪いなロカジ、今のオレはトリス・ビッグロマンじゃねえ……」
問いかけるロカジに向かい、これ見よがしに指を振って、ふ、と鼻を鳴らす。
「オレこそがこの雪の国における無敵の将軍、"ジェネラル・ピーノ"!!」
「うわダッサ」
「何てこと言うんデスカー」
「カッコイイと思いマスヨ僕はー」
「本当かい、ぴぃの、僕の目を見て言ってごらん」
「ンンー」
結果的に、大蛇に乗ったロカジとヨシュカは、新たに現れた歓迎ポーズの氷像と対峙することになった。
「スゴイ、気分が、高揚……するようなしないような微妙な感じです、エレルレッドさま!」
「落ち着くんだよエレルブラウン。悲しいけれどこれまで苦楽を共にしてきたエレルシルバーの正体は、敵の幹部でもあったんだ」
「なるほど!」
それいいですね。テンションを持ち直したヨシュカ達の遥か下、地面の上ではエンジ達も両者の姿を見上げている。
観測機越しにトリスの様子を窺っていたアイネは、彼の目に変な光が宿っているのが察せられて。
「何か、変な影響を、受けて、ます?」
そういえばトリスもまた『愉快な仲間』、ピーノくんたちと同様、操られているのだろうか。
「ロマンさまー、お城をぶっ壊すならついでにぼくもぼくも~」
メトロもきっと同じように……いや、これは素だな。
「トリス、トリス。これだけでかかったらアイスもおっきいヤツができる? できる?」
「あーうるせえな! そんなに欲しけりゃ喰らわせてやるよ!」
度重なる批判に、メトロやエンジからの要求、痺れを切らしたトリスことジェネラルピーノは、そこで高らかに宣言した。
「さあやってしまえ、ギガントピーノよ! 必殺の、トリプルアイスバズーカだ!」
「ウオォー!」
指揮官の声に応え、ジャイアントピーノくんは両手を高く掲げ、咆哮する。
そうして放たれるのは、トリプルでアイスなバズーカ。
「ドウやるんデスカ?」
「良いからやれ! 何かあるだろ! それっぽいのが!!」
「ワーイ横暴ー」
文句のついでに口を開いたジャイアントピーノくんは、そこから猛吹雪を発生させた。ごう、と音を立てて、凄まじい雪の嵐が吹き荒ぶ。
「わーッ、また冷風! 良くないよそういうの! 刃物はちゃんと使ってあげなきゃ!!」
「ダメだなァ……こういうのじゃナイ……」
全くお気に召さなかった二人の横では、吹雪に巻き込まれた大蛇が急速にやる気を失った顔をし始めている。前に来たときに比べ、大分過ごしやすくなってはいたようだが、この猛吹雪は蛇にも辛い。
「え、寒い? もうちょっと我慢しなよ、すぐだからさあ」
「よーし動きが鈍った! 行け! 三枚に下ろしてやれ!」
オロチを宥めすかすロカジに対して、トリスはジャイアントピーノくんへとチェーンソーを振るうように指令を出す。
「ピーーーーーノ!」
しかしそこに、赤い糸が絡みついた。
「アイス! 蛇の刺身よりもアイスの方がイイヨー」
切実な訴えと共にエンジの放ったそれは、武器を持つ手に、足元に、絡みついてその動きを阻害していく。
「言われてみる、と、アイス、全く食べてません、ね」
せっかくアイスの国に来たというのに。半分考え込むようにしながら、アイネもケーブルを操って、エンジの糸の上から拘束を補強。さらに眠りを誘う歌声で、ジャイアントピーノくんをその場に押し留めていく。
「早く、片付けてしまいたい、です、が」
「メトロー、そろそろソッチも……」
拘束に専念した二人は、攻撃に回れる人材へと目を向け――。
「あああ! 巨人くんがやられてしまう! どうしようロマン様! いやダサピーノさま~!!」
「ジェネラルピーノだっつってんだろ! 何とかしてほしいなら手伝えクソウサギ!」
「メトロ……?」
「バグってます、ね……」
「やっぱり悪は滅びる運命なのかあ……でも、万が一ってことも……」
よよよ、とメトロがその場に頽れる。巨人は確かに迫力があったが、案外あっさり優勢になってしまった。これでは、彼の望みは満たされない。
「そりゃね、ぼくもさ、アイネくんが惚れ直してくれるって言うなら頑張らなくもないんだよ……?」
顔を覆う手からちらっと瞳を覗かせて、メトロは仲間の方を窺っている。
「はい、はい。惚れ直してあげます、から」
「え……ほんと……?」
ようやくモチベーションが上がって来たのか、メトロは素早く立ち上がる。
「ヨオシ! それじゃさっさとやろう! 早くしないとアイスが溶けちゃう! 時間は待ってくれやしないクソ野郎だか……ら?」
え、今なんて言った? ジカン? 何だったっけそれはそんな話聞きたくないなあやめておくれよもうぼくのまえではさあおとなしく。
「並びやがれ食器共ォ!!」
『GIFT』、メトロの命に従って、現れた銀食器達が隊列を組んだ。
「おかしい……おかしくナイ?」
「正気寄り……いえ、さっきよりは、マシ、かと」
「チッ……どいつもこいつも使えねえ、結局はオレがやるしかねえってことか」
あっさりこちらを見切ってきたメトロを捨て置き、ジェネラルピーノはそう呟く。しかし視線を戻せば、そこにはオロチのご機嫌取りに成功したロカジとヨシュカが、対等の高みへと上ってきていた。
「いやあ、やっぱりでっけーのと戦うのは良いね、漢の浪漫ってやつ?」
「ハッ、それがオレの名前だってわかって言ってンのか?」
「えっ……さっきご自分で「その名は捨てた」みたいなことを……」
ヨシュカの追及を聞かなかったことにして、ジェネラルピーノは広げた掌を相手へと向ける。
「まあ良い、今こそ、このジェネラルピーノの真の姿を――」
高らかに宣言しかけたそこに、静かな溜息が響く。不思議と明瞭に聞こえたそれは、真珠の発したものだった。
「黙って見ていれば……さっきから調子に乗りすぎだよ」
「あァ?」
「お前たち」
やってしまえ、と呼びかければ、とっくにそこまで駆け上がっていた使用人姿の人形が、敵の顔面へと靴裏を叩き込んだ。
「ぐぁ――!?」
「さあ行け食器共! クソだせえあの首ちょんぎってやんな!」
「それじゃ、オロチ。こっちはお尻を一発叩いてやって」
組み合わさり、回転ノコギリもかくやという勢いで銀食器が踊り、大蛇が尾の一撃でその背中をぶっ叩く。歪な巨人は腰を砕かれ、氷像の首が吹っ飛んで、空中に投げ出されたトリスと一緒に崩れ落ちて行った。
「それじゃこっちも仕上げと行こうか、エレルブラウン!」
「了解しました」
大蛇の首の一つを駆け抜けて、それが伸びた先、糸とケーブルで絡め取られたジャイアントピーノくんへとヨシュカが迫る。
「ピーノさま、少しおやすみください」
『七哲』、繰り出された暗器は楔の如く、その関節を縫い留めて。身体の自由をほとんど奪われた巨人は、飛び移ったヨシュカの身体を最後の一押しとして、ゆっくりと仰向けに倒れていった。
「アーーーーーレーーーーーーーーーッ!!!」
地響きがひとつ、城の間近の広場を大きく揺らした。
崩れ落ちた巨人の残骸、氷と雪の山の中から、トリスが顔を出す。
「ぶはあっ! お、オレは、何を……?」
「ロマンさま! 良かったまだ息が有ったんだねくたばれェ!」
「やめろ、なにすんだクソウサギ! その食器をこっちに向けるな!!」
その様子から、どうやら彼が正気に戻ったようだと察せられ、ロカジと真珠は溜息を吐いた。
「止める?」
「なんで?」
「じゃあ放っておこうか」
少し痛い目を見てもらおうと、そういうことで一致した二人の後ろでは、エンジが転がったジャイアントピーノくんの元へ駆けつけていた。
「合体ピーノ、アイスはどこどこ?」
「アァ……猟兵サン、僕達は、もう駄目みたいデス……」
「エッ」
「僕達のお墓には……アイスをいっぱいお供えしてクダサイネ……」
そんな言葉を残して、ジャイアントピーノくんはさらさらと粉雪のようにくずれ、消滅していった。
「ピーノ!? ピーーーーーノ!!」
「落ち着いてくださいエンジさま、この子、ニセモノらしいですよ」
「……アイスは……?」
「帰ったら、みんなとアイス、食べましょう、か」
エンジを宥めるヨシュカと共にそう言って、アイネは空を振り仰ぐ。
目前の脅威は去ったように見える。だが青く輝くカーテンの隙間からは、未だ雪融かす熱気が降り注いでいた。
大成功
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●「まあ、なんということでしょう!」
地響きと共に、ピーノくん達はお城に入ったアリスを目指します。けれどその前に立ち塞がる猟兵達の、何と強い事でしょう。巨大化し、力を得たはずのピーノくんは、おおかみさんと狩人さんの協力も空しく、倒されてしまったのです。
合体を解かれた仲間の姿を見て、観戦に回っていたピーノくん達は不思議な気持ちを抱いていました。
いつもならがっかりして諦めてしまうどころでしたが、その胸にはまだ、熱い気持ちが残っています。
そして、ピーノくん達は言いました。
ぼくたちが、かたきをうつんだ。
「僕達が、仇を討つんだ!」
そうして新たな六人が光に包まれ、もう一体のジャイアントピーノくんが、その姿を現しました。
●「そして」
お城の中に至ったアリスは、息を整えながらきょろきょろ辺りを見回します。ステンドグラスのようになった氷の壁、それに見惚れている暇はないはずですが、城の中に入ると、目的のものが見えなくなってしまうので。
「観覧車なら、向こうだぜ」
先にお城に入っていた、帽子の少女が指を差します。その先にあるのはこの城で一番高い尖塔。その階段を登りきったところに、観覧車の乗り場があります。
「空を返すのは任せたからな」
「それから、ピーノさん達も」
「そうだね、アリスを手伝ってあげてっ」
黒翼と、人形の少年の二人が、一緒に居た協力的なピーノくん達に呼び掛けます。オー、と答えた彼等は、アリスの先に立って走り出しました。
「偽者は任して! オーロラ、よろしく!」
そして、尻尾のふさふさした彼がそう言い置いて、城の外へと走っていきます。猟兵達は、再度現れた巨大ピーノくんを止めることが、自分達の役割だと判断したようです。
「ところであなた、針と糸は持ってる?」
「え?」
青色山羊の女性にそう問われて、アリスは首を傾げました。
「カーテンの穴を塞ぐんでしょ? もしかしたら、要るかもしれないわよ」
「そう……ですかね……?」
念のため持って行った方が、と少しわたわたした後、皆はそれぞれの役割を全うするため、そこでお別れしました。
「そうそう、アリス。後で名前教えてくれよな!」
そう言って手を振る帽子の彼女に頷いて、アリスは観覧車の方へと走り出しました。ちなみに、尖塔の階段はかなり長いそうですよ。
リダン・ムグルエギ
あれピーノ君なの?
え、なーんだ、偽ピーなの
玉座の間の窓から外を眺めつつ
のんびり魔女相手に質問&休憩してるわ
走り疲れた…
喋らなくても首振りくらいできるでしょ
背景デザインくらい知りたいのよ
あのアリス選んだのはなんで、とか
アタシの狙いは単純
近づいてきた巨大ピーノ君を「概念的に小さくする」糸で迎撃する事で
巨大という概念を崩して弱体化を狙うの
可能ならその直線に魔女も巻き込みたいわ
彼女が絶望する前の幼い頃
楽しんで絵本を書いて読んでしてた頃の気持ちを思い出す一助になればな、なんて
ま、デバフかけて後は皆にお任せ
餅は餅屋よ
アタシの本分はこの騒乱が終わった後
さ、崩れた町をもう一回アタシ色に染めるわよ
ピーノ君整列!
クーナ・セラフィン
むっ、中々面白い展開じゃないか。
謎の力で巨大化ってお休みの朝的な感じでいいよね、そこはセンスあると思うよまだ見ぬオウガくん。
…冗談はさておきピーノ君の爆発、消滅オチは阻止しないとね。
しかしこう見ると中々迫力あるにゃー。巨大ロボ相手に生身で挑む気分。
唸る回転鋸を空中戦、跳躍やダッシュで躱しつつ足元へと接近。
一番力がかかってそうな位置にUC発動できつい一撃喰らわせ転倒させてやろうか。
一撃で倒ずとも仕切り直し挟みつつ、しつこく一点狙い連続攻撃。
まあ倒せずともアリスが空に届ける時間を稼げればよし。
巨大ピーノ君斃れたらえー、ここは最強!無敵!と信じる位じゃなきゃとかダメ出ししたり。
※アドリブ絡み等お任せ
●若返りピーノくん
「しかし、巨大化とはね。中々面白い展開じゃないか」
迫り来るジャイアントピーノくんを見上げて、クーナは不敵な笑みを浮かべる。謎の力で巨大化とか、そこはセンスあると思うよ、とまだ見ぬ黒幕を評価しつつ、槍を構えた。
「……冗談はさておきピーノ君の爆発、消滅オチは阻止しないとね」
軽口を叩きながらも、クーナのその眼に油断はない。間近で見ると大迫力の、唸る回転ノコギリから身を躱すべく、彼女は強く地を蹴った。
翼でも生えているのかと見紛うばかり、軽やかに空中を舞うクーナと、それを仕留めようとするジャイアントピーノくんの戦いを窓越しに見ながら、リダンは数歩離れた場所の魔女へと声をかける。
「それで、何であのアリスを選んだの?」
氷の城の玉座の間、どうやら城を一周して追手を撒いたらしい魔女と、リダンは偶然居合わせたのだ。
こちらも道中随分と走る事になったので、疲れた様子でリダンは観戦に徹している。
「喋らなくても首振りくらいできるでしょ、背景デザインくらい教えなさいよ」
他に喋る相手もいない。けれどそれらの問い掛けに、魔女は口元へ人差し指を立てることで答えた。
「内緒って言いたいの? もったいぶるわね……」
軽く眉根を寄せながら、リダンはそこで、窓の外の方へと対応を行った。ジャイアントピーノくんの位置と自らの位置を比べ、玉座の間の数歩を駆けて。
「さ、着替えの時間と行きましょう」
『ゴートリック・ヘブンズ』、真っ直ぐ直線状に放たれるのは、A&Wにある彼女の領地でも取れる時の蜘蛛糸だ。本来の若返り効果は僅かにしか残っていない代物だが、それを補強することが出来れば、かつて猟兵達を苦しめた幼児化の糸の再来となる。
ピーノくんのみならず、射線に魔女を巻き込んだそれを、察したものか彼女はその場を飛び退いて躱した。
――仕掛けて来られた以上は、自らも戦うべきだろう。
そんな敵意の生じた魔女の瞳に、リダンがその後のプランについて思考を巡らせる。しかし、その検証を行う前に、魔女は踵を返して隠し通路の奥へと消えた。
「……そんな急いで逃げなくても良いのに」
恐らくは、あまり目立ちたくなかったのだろう。この城の中には、他にも魔女を探している狩人が居るので。
城から放たれた糸がピーノくんに絡むのを、クーナはほとんど目の前で確認する。
「……?」
「何デスカ今のー?」
どちらからの援護か、両者共にまずは確かめたいところだが。
「? なんかお肌がツヤツヤにナリマシタネー」
「え……何で……?」
思わずクーナの口からも疑問符が漏れる。この場に居合わせれば、リダンもまた「この子達の幼児期ってどうなってんの?」みたいな反応になっただろうが。
「まあ、いっか」
目に見えるもう一つの変化、本人は気付いていないようだが、ジャイアントピーノくんのサイズが落ちているのを悟って、クーナはこの機を逃さぬよう動いた。サイズが縮み、狙いやすくなったその場所、短い足を支える関節を目掛け――。
「悪いね、目的は時間稼ぎなんだ」
白百合のオーラを纏わせた槍で、貫いた。
「イターーーイッ!!」
「ああ、随分簡単に貫けるんだね……ここは最強! 無敵! と信じてやるところだと思うんだけど?」
ここには居ない魔女に注文を一つ加えて、クーナは出来る限りの足止めのために再度敵の懐へと飛び込んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オズ・ケストナー
【咲日花】
ピーノくんがおっきくなっちゃったっ
かっこういいっ
は、だめだめ
お城も観覧車もまもるからねっ
クロバとわたしとピーノくんとでつくった観覧車なんだから
クロバ、わたしもとべるよっ
いっしょがうれしくて綻ぶ
シャボン玉に身を包み
大きなピーノくんの前へ
観覧車をこわしたら雲のアイスが食べられなくなるよ
ピーノくんたちもいっしょに食べようよ
攻撃するのは憚られ
ピーノくんもいたいのいやだよね
あっ、あっちむいてほいで勝負するのはどう?
じゃーんけーん
クロバと交互に
たのしくなってきて
ふふふ
止まらないなら魔鍵で生命力吸収
ほらほら、おなかすいてきたでしょ
クロバっ
建物を壊す攻撃はクロバと武器受け
そうだよ、もうおやつにしよう
華折・黒羽
【咲日花】
おお、ジャイアントピーノさん
大きくなってもどこか愛らしく感じますね
こちらもはっと頭を振って
空の雲はとても美味しいんですよ
観覧車が無くなってしまってはもう食べられなくなってしまいます
そんなの、困ります
真剣な顔で翼を広げ飛ぶと
ふわり追いかけてくるオズさんに瞬いて
オズさんが飛んでる…
一緒に飛べている事に嬉しげに綻ぶ雰囲気
あっちむいてほいでこちらを向いたなら
今度は俺と
じゃんけん─
オズさんと互いに交互にくるくると
あっちむいて、ほい
疲れただろうか?目が回った?
塔と観覧車が壊されない様に武器受けを
それでも止められなければ城塞となろう
さあピーノさん達
そろそろ元に戻って、一緒におやつにしませんか?
●あっちむいてほい
「見てクロバ、ピーノくんがおっきくなっちゃったっ」
かっこういいっ、と周りのピーノくん達と同じような声を上げたオズに、黒羽は頷いて返す。
「ええ、それに、大きくなってもどこか愛らしく感じますね……」
何となく和やかな雰囲気になってしまったが、はっと我に返って二人は一緒に頭を横に振る。今は、そう、襲撃を受けている非常事態だ。こちらに迫ってくるジャイアントピーノくんの狙いはこの城であり、そこに聳える観覧車だ。それはオズと黒羽と、それからピーノくんで建てたもの。一緒に上までのぼって、雲に手を伸ばした思い出の場所だ。
「空の雲はとても美味しいんですよ、観覧車が無くなってしまってはもう食べられなくなってしまいます」
そんなのは、困ります。飾らず素直な黒羽な言葉と同じ思いを、オズもまた抱いていた。
「お城も観覧車もまもるからねっ」
ジャイアントピーノくんの進路に先回りして、黒羽はその背の翼を打ち振るう。
「先に行きます……!」
使命感から、張り詰めた空気を纏って飛ぶ彼の後ろで、いつもとは違う声がした。
「クロバ、わたしもとべるよっ」
え、と後ろを振り返れば、いつもは地を行くオズが、ふんわりとシャボン玉のようなものに包まれて、後ろを追いかけて来ていた。
「オズさんが飛んでる……」
「うん、一緒に行こうっ」
「はい!」
嬉しそうに表情を綻ばせるオズの姿に、自然と黒羽も緊張を緩める。どこかあたたかい気持ちを胸に、微笑んで。黒羽はまだ飛び慣れないであろうオズを先導するように、緩やかな軌道で空を滑っていった。
障害物の無い空を行けば、巨大なピーノくんが相手とは言え、その眼前まですぐに至ることが出来るだろう。
「ピーノくん、観覧車をこわしたら雲のアイスが食べられなくなるよ」
いっしょに食べようよ、と早速呼び掛けるオズの声に、ジャイアントピーノくんはそっぽを向く。
「そんなことをシテいたら、アリスが逃げちゃいマスヨー!」
合体したピーノくんはいつだって六人一組と変わらない、働き者の使命感を持って進んで行こうとしているようで。
「そこをどいてクダサーイ!」
「うーん……じゃあ仕方ないのかなあ……」
聞く耳持たない様子のピーノくんに、オズは大斧を構えようとして。
「でも……ピーノくんもいたいのいやだよね」
「オズさん……」
考え込んでしまった彼の様子を、黒羽は少しハラハラしながら見守る。気持ちは分かるが、相手の方は手加減する気もないのでは――。
「あっ、あっちむいてほいで勝負するのはどう?」
「えっ」
「エー。僕が勝ったらどいてくれマス?」
「うん、そのかわり、わたしたちが勝ったらおやつにしようね」
「ウーン、それでしたらー……」
承諾した。どこかほっとした気持ちになった黒羽を他所に、勝負が始まる。
「じゃーんけーんぽん」
あっちむいてほい。
ぶん、と首を振ったピーノくんの顔がこちらを向いて、黒羽は目を丸くする。
「つぎは、クロバっ」
「は、はい」
それでは俺も、と右手を差し出し。
「じゃんけん――」
巨大な敵を相手取りながら、どこか和やかに、決着のつかないあっちむいてほいが続く。
「ウゥ……やりマスね猟兵サン」
「ふふふ、ピーノくんもね」
楽し気に笑うオズに対して、ジャイアントピーノくんは声に疲労が滲んでいた。
「お疲れですか、ピーノさん?」
「そうなの? じゃあそろそろ休憩にする?」
「だ、大丈夫デスヨー」
気遣うような二人の言葉に、ピーノくんが応える。
「でも、さすがに目が回ったのでは?」
「そうそう、それにおなかすいてきたでしょ」
「ウーーーーン……」
悩んだ様子の相手に、黒羽が問う。
「ピーノさん達、そろそろ元に戻って、一緒におやつにしませんか?」
「そうだよ、もうおやつにしよう」
大分心が折れてきて、もう一押しだと悟った二人の言葉に、ピーノくんはうんうんと唸っていたが。
「アッ……!」
上から聞こえた軋む音に、ハッと我に返る。ぎ、と音を立てて、ゆっくりと観覧車が回り始めたのだ。
「ワーッ、アリスが行っちゃいマスヨー!」
足を止めている間に、もうあんなところに。慌てた様子のジャイアントピーノくんは、急いで前へと歩を進める。
「わっ……」
「通りマスからネー!」
やわらかな巨体でオズを弾き飛ばして、道を拓くようにチェーンソーを振り下ろす。
「オズさん……!」
危ない、と回り込んだ黒羽は黒剣を手に『無敵城塞』を発動、回転する刃を受け止める。
「くっ……!」
押し退けるように方向を変えたそれを、黒羽は吹き飛ばされながらも行く手を逸らした。
「クロバ、だいじょうぶっ?」
「はい、オズさんもお怪我は……?」
互いに無事を確認し、二人は大きな歩幅で走り去るピーノくんから一旦距離を取った。戦闘こそほとんど起きなかったが、十分に時間は稼げただろう。後は――。
「まにあうかな?」
「きっと、大丈夫ですよ」
見上げた観覧車の、太陽の描かれたゴンドラに、青いマントのアリスの姿があった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
火狸・さつま
常盤f04783と
巨大化、した…!!
常盤のお隣で、おめめきらっきらしっぽぶんぶん
てっぺん!良い、ね!!(漲るヤル気)
偽者は任して!オーロラ、よろしく!
アリスと味方ピーノ君に声掛け
迷い無くダッシュ
攻撃見切り躱し
敵足元で空中浮遊ジャンプ!
砕け散れ!昇りゅッこヤーん拳~!
途中狐鳴きで誤魔化し
風纏わせた属性攻撃【粉砕】アッパー!
え?技名違う?気のせい!
空方向に猛吹雪出ればしめたもの!
冷却効果で時間稼ぎになるはず
うっかり地上にまで吹雪いても大丈夫
だて、危ないのは常盤が相殺してくれるから!
空中浮遊、好機見計らい狙う着地点は…
てっぺん☆
きゅっヤ!
ご機嫌な狐鳴きと共に万歳ポーズで頭上着地【粉砕】
偽地形も破壊!
神埜・常盤
さつま君/f03797と
巨大化ピーノ君だと……
なんだアレ格好いい
僕も男子だからああいう合体は憧れるなァ
てっぺんに乗ってみたい
猛吹雪は厄介そうだねェ
管狐の九堕が操る炎で対抗しよう
なんとか相殺出来ると良いなァ
さつま君が格好いい拳法を編み出してる……
必殺技を叫びながらのアタックとか
男の浪漫を感じるなァ
ひとまず、九堕が頑張ってる隙に接近して
炎を纏った影縫に怪力を込めつつ串刺しを
このまま彼らを溶かし……
あっ、さつま君いいな!?
僕もてっぺんに乗りたいけど
小回りが利かないから残念だ
気を取り直して、巨大化ピーノくんを
確りと串刺しにしよう
ラクトパラディアは平和で美味しい国だ
デスゲームなんてお呼びじゃないのさ
●登頂成功
断続的に迫る地響き、回り出した観覧車目掛けて走ってくるジャイアントピーノくんを、先回りしていたさつまと常盤が迎え撃つ。
「あれが、巨大化したピーノ君……!」
「僕も男子だからね、ああいう合体は憧れるなァ」
見上げれば首が痛むくらいのサイズになったそれを眺めて、常盤の口元が弧を描く。
「できることなら、てっぺんに乗ってみたいね」
「うん! てっぺん! 良い、ね!」
隣のさつまも目を輝かせ、それに答えた。漲るやる気表すように、その尻尾がぶんぶんと揺れている。
こちらに向かって駆けてくるピーノくんも、二人の姿を認めたようで、最接近する前に足を止めて、思い切り吐息を吹きかけた。
「ウオー! 吹き飛んじゃってクダサーイ!」
俄かに巻き起こる猛吹雪。思わず丸くなったさつまの前に立って、常盤は手元を自らの背で庇いながら、竹筒を取り出した。
「なるほど、これは厄介だねェ――九堕!」
しゅるりと筒から抜け出した管狐は、その身に纏う炎を操り、吹雪に逆らうように解き放つ。とはいえ出力の差は歴然、炎が吹き消されるのも時間の問題と言えなくもないが、それでも範囲を絞れば、吹雪を切り裂き道を形作ることは出来る。
「さァ、さつま君!」
呼ばれるが早いか、切り拓かれた道を駆け抜けて、さつまはピーノくんの足元から高く跳びあがった。そうして、固めた拳を天へと突き出すように。
「砕け散れ! 昇こヤーん拳~!」
「痛ーーーーイ!」
風を纏った一撃は、ジャイアントピーノくんの顎を捉え、カチ上げる。
「……必殺技を叫びながらのアタックとか、男の浪漫を感じるなァ」
ピーノくんの仰け反る動きに合わせて、口から吐き出される猛吹雪も天に散る。吹雪の直撃から解放された常盤は、さつまの網だした謎拳法に感心したように笑った。
空に吹雪が向いたことで、周囲の気温も若干低くなったように感じられるが、それと同時に、下から上へと吹雪に撫でられた城の表面と、観覧車の軸が凍り付いて、その動きを止めた。
「あァ……これはよくない」
それに気付いた常盤は、使い魔の操る炎を手元の刃――クロックハンドにだけ纏わせて、九堕自身は観覧車の動きを再開できるようそちらへと向かわせる。
「痛いじゃないデスカー!」
その間、ピーノくんがぶんぶんと振り回すチェーンソーを、空中浮遊したさつまは軌道を見切って躱していく。上に向いた視線が、さつまを狙うことで固定されれば、地上の常盤の接近も極めて容易になるだろう。
体勢を立て直される前に地を蹴って、常盤はそこで掲げた刃を振り下ろす。時よ止まれと言わんばかりに、炎を纏ったクロックハンドでその右足を串刺しに。
「アーーーーッ! 熱いー!」
溶けちゃうじゃないですか、と巨大なピーノくんが悲鳴を上げる。そして足を地面へ縫い付けられ、動きの止まったその隙を、さつま見逃さなかった。くるくると空中を回転しながら舞って、両足を使い、敵の頭に万歳ポーズで着地を決める。
「きゅっヤ!」
「あっ、さつま君いいな!?」
満足気な鳴き声を頭上に聞いて、常盤が思わずそう声を漏らす。とはいえ、あんな風に小回りは利かないだろうし、と嘆息。何よりも、ユーベルコードを伴う着地によって、頭部に大打撃を受けたジャイアントピーノくんが、ゆっくりと倒れながら、形を崩していくのが見えたから。
残骸の崩落に巻き込まれぬよう走って、常盤は降ってきたさつまを受け止める。
「――ラクトパラディアは平和で美味しい国だ、デスゲームなんてお呼びじゃないのさ」
振り向いたそこで、粉雪が風に吹き散らされるように、ユーベルコードによって作られた敵の残骸が消滅していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●「まあ、なんということでしょう!」
ああ、なんという悲劇。敵討ちを誓ったピーノくんもまた、猟兵達にやっつけられてしまいました。
しかし、再びの哀しい出来事を目にしても、一度点いた心の火は、そう簡単には消えないのです。
この国のために。正義のために。
ぼくたちが、みんなのいしをひきつぐんだ。
「僕達が、皆の遺志を引き継ぐんだ!」
三度目の光。そして、恐らくは最後のジャイアントピーノくんが、ラクトパラディアの大地に立ちます。
●「アリスは」
観覧車の上からは、この国全体の様子がよく見えます。そこら中が溶けかけた様子も、駆け抜けてきた道も、そして、猟兵達が戦っている、眼下の様子もです。そしてそこからは見えないけれど、この観覧車を回しているのは、ついて来てくれたピーノくん達。
少しだけ苦し気に眉根を寄せてから、アリスはぐっと空を見上げました。
そこにあるのは、彼の纏ったマントと同じ、青く輝くオーロラのカーテン。
その真ん中に開いた穴、この世界に落ちてきたアリスが最初に掴んだその場所が、徐々に近づいてきています。
少しだけ、いやかなりびくびくしながら、アリスはゴンドラの扉を開けて、身を乗り出しました。
九之矢・透
合体した……ちょっとカッコイイとか思ったりはしてないぞ
空を返すのはアリス、ピーノくんに任せたぜ
そうそう、アリス
後で名前教えてくれよな!
皆の居る城や観覧車を壊させる訳にはいかないし
まずは攻撃を止めようか
【WIZ】
『蜘蛛の絲』を使用
「範囲攻撃」でブレスを出す口だの
チェーンソーだのを絲でぐるぐる巻きにしちゃってくれ
上手いことチェーンソーに絲が絡まってくれたらラッキーかな
こっそり「二回攻撃」でもう一匹蜘蛛を放つ
そいつは足に
巨大ピーノくんが尚も攻撃しようと近づいたら両足でも絲で繋げちゃってくれ
アンタが黒幕サン?
全く、なんということをしてくれたんでしょう、だな
アタシな、ハッピーエンドの方が好みなんだわ
清川・シャル
な、なんか大きく合体しました!?
なんてこと!
でも負けません、シャルの方が正しいからです!
この国を崩壊から守るのです!
行きますよ〜!とう!
もう悪さは許しませんよ〜
ぐーちゃん零に、毒使いとマヒ攻撃と呪殺弾を込めて。
視力で確認しながら念動力で確実に当てていきます。制圧射撃、範囲攻撃、吹き飛ばし攻撃です。
ふっとべー!
どかーんしたら、そーちゃんを片手に走ります
呪詛を帯びたなぎ払い攻撃です。
敵攻撃には激痛耐性と武器受けとカウンターで対応します
全力魔法で追加のブリザードを起こし、氷の崩壊を防ぎます。あと、足止めになれば。
エドガー・ブライトマン
ワー、ずいぶんと大きくなってしまって
私も私が六人いれば、あれくらい大きくなれるのかしら
いやいや、私は世界で唯一の王子様だったよ
しかしね、大きなピーノ君。ここから先へは行かせてやれない
キミを通せんぼするコトが、キミの願いを叶えるコトに通じるってワケ
まあじきに解るさ。さてさて…
繋ぎ止めるコトといえば、レディの方が得意だろう
私は手放してばっかりだもの
だから頼むよ。“Eの献身”
左腕からぐんぐん伸びる茨で、大きなピーノ君と私を繋ぎ止めて足止め
引きずられそうだけど、まあレディも頑張ってくれるでしょう
かれらのコトを忘れる前に、もう一度
ねえ、ピーノ君。すこしくらい私たちを信じてみてよ
きっとこの世界は元に戻るさ
●綱引き
「な、なんか大きく合体しました!?」
敵の登場する瞬間を、間近で見る事になったシャルが驚愕の声を上げた。
「ワー、ずいぶんと大きくなってしまって」
「何だよ、ちょっとカッコイ……くはないな、うん」
同様に感嘆の声を上げるエドガーの横で、透は口を突きそうなったそれを否定する。
「私も私が六人いれば、あれくらい大きくなれるのかな」
「いやー、それは……」
「どうだろうなぁ……?」
シャルと透の反応が芳しくないことを、察しているのかいないのか。エドガーは首を横に振って。
「いやいや、私は世界で唯一の王子様だったよ」
とりあえず、合体の秘めた可能性については頭から追い出した。
「オリャーッ! 邪魔するなら容赦シマセンヨーッ!」
皆の目前まで迫っていたジャイアントピーノくんは、宣戦布告と共に口からの吐息で猛吹雪を形作る。猟兵達はもちろん、その後ろのお城も、観覧車も、まとめて薙ぎ倒さんとする暴風が、俄かにその場に吹き荒れる。
「なんてことを……! でも負けません、何故なら、シャルの方が正しいからです!」
「エッ!?」
「もう悪さは許しませんよ~!」
シャルの構えたグレネードランチャーが火を噴いて、嵐を突き抜け弾丸が飛ぶ。念動力によってその軌道を操作された榴弾は、吹雪を生み出す口の中に着弾した。
「アーーーーーーッ!?」
マヒ効果やら呪いやらを込めた爆発が口の中で起こり、悲鳴と共に嵐が止んだ。
「何てことするんデスカー! 悪いのはソッチなのにー!」
「いいえ、シャルはこの国を崩壊から守るために戦うのです!」
グレネードランチャーから棘付き金棒へと持ち替えたシャルに、それならばとピーノくんのチェーンソーが向かう。
「ああ、それはいけないよピーノ君」
するとエドガーの左腕から急速に伸びた茨が、チェーンソーを手にした腕に巻き付いた。大きく振るわれようとしていたそれを、エドガーは茨を強く引っ張る事で押し留める。
「ムムム、アナタも邪魔をするんデスカー?」
「ああ、そうだとも」
雪解けによって濡れた地面をしっかりと踏み締め、ピーノくんの膂力に抗いながらエドガーは言う。
「彼女の言う通りさ・キミをここで捕まえるコトが、キミの願いを叶えるコトに通じるってワケ」
「意味がわかりませんヨー!」
「まあじきに解るさ。さて……」
「えーいっ」
そうこうしている内にシャルの振り上げた金棒が、ピーノくんの横っ面に命中する。イターイ、と悲鳴を上げたピーノくんもすかさず反撃に出た。
「モウ怒りマシタヨーッ!」
「う、わ」
ぐん、と引かれるそれを支えきれず、エドガーの身体が宙を舞い、チェーンソーを振り回すピーノくんに引き摺られてしまう。このままでは、二人とも危ない状況だが。
「直接綱引きなんかしちゃダメだって、巻いて絡めてやらないと!」
シャルの反対側に回り込むことで、接近に成功した透が言う。その手に乗った蜘蛛は、彼女の命に従い透明な糸を紡ぎ出していた。その言葉通りに糸は踊り、ピーノくんのチェーンソーに引っ掛かった糸はその反対側をピーノくんの腕へ、身体へとくるくる巻き付いていく。
「ワーッ、どうなってるンデスカこれー!?」
振るった自分の腕の力に引かれて、ジャイアントピーノくんが体勢を崩す。力比べで分が悪いのなら、相手の力を利用してやれば良い。
「これで、攻撃を止めるのは成功したかな?」
「なんの、コレくらいではムググーッ」
ついでに吹雪を生み出す口も塞いで、処置は完了。それでも、ピーノくんは無理矢理前へ進もうとするので。
「しょうがないなぁ」
透の潜ませていたもう一匹の蜘蛛が、ピーノくんの両足を糸で繋いだ。
「あ」
「え?」
丁度そのとき、ピーノくんの突進を迎え撃ったシャルが、金棒で一撃を加えていて。
「ムーーーーーーーーッ!!」
「あ、あぁーーーー!?」
バランスを崩したピーノくんは、両者の悲鳴が響く中、城の方へと倒れ込んでいった。
ばきばきと音を立てて氷の壁を半壊させて、半ば城に埋まった状態でピーノくんは止まった。
「アーリースーッ!!」
それでもなお、天を見上げて。拘束を断ち切りながら、ジャイアントピーノくんは観覧車のある上方へと手を伸ばす。
周りを破砕しながら伸ばされるそれを、透が押し留めようとするが、巻き付けるのではなく貼り付けるだけでは強度が足らないのか、目的を満たせないでいた。
「ええと……」
「どうやら、出番みたいだね」
どうしようか、と続きそうなそこに、エドガーが割り込む。彼はすぐに、自らの左手、そこに居る『彼女』へと呼びかけた。
「私は手放してばっかりだけど、ここは繋ぎ止める力が必要なんだ。――だから、頼むよ」
記憶の、思い出の断片を捧げて、手を伸ばす。それこそが『Eの献身』。レディ、そう呼ばれた彼女は、茨を強く引き寄せる事で応じてみせた。
先程から絡みつけてあったピーノくんの右腕、天へと向けて伸ばされるそれが、エドガー一人では成せぬ力で引き下ろされる。
「え、ええ、手を貸しても大丈夫だよな!?」
「こっちは崩れないようにしておきますね!」
先程は否定した『直接の綱引き』に透も参加し、シャルは全力の魔法で放つブリザードで、崩れ行く城壁を縫い留め、補強していく。
皆の手で、力ずくで作りだした拮抗。その代償に消えゆく記憶をぎりぎり捕まえながら、エドガーは口を開いた。
「ねえ、ピーノ君。まだ私たちが嘘を吐いていると思うかい?」
「そりゃーそうデスヨ、じゃなきゃ、何でアリスは逃げようとしてるンデス?」
「違いますよ!」
「アリスは、空を元に戻そうとしてるンだ」
シャルと透が言い募るのに合わせて、最後にもう一つだけ。
「すこしくらい、私たちを信じてみてよ」
きっとこの世界は元に戻るさ。エドガーはそう付け足した。
「ウーーーーーーン」
それは、何てことのない説得だった。
実のところ魔女の産物であるジャイアントピーノくんには、それを聞き入れる理由は全くない。けれど、『彼』もまた確実に、『ピーノくん』として生み出された存在なので。
「ソコマデ言うなら、仕方ないデスネー……」
渋々、と言った調子で、ピーノくんは伸ばしていた腕を引っ込めた。
すると、傍らで溜息が聴こえて、透がそちらへと目を向ける。
そこには、絵本を開いたままの魔女が、動くのをやめたピーノくんの傍らに立っていた。
「アンタが黒幕サン?」
その問いに、彼女は無言で視線を返す。
「全く、困らせてくれたもんだな。――でも、アタシな、ハッピーエンドの方が好みなんだわ」
残念だったな、と油断なく構えながらも、透は上空へと視線を向けた。
その場の皆が見上げた場所で、観覧車のゴンドラが、ついに天頂に至る――。
●「アリスは、空へと手を伸ばしました」
青色のマントを脱いで、針と糸で縫い付けて、オーロラノカーテンはアリスの手により、元の姿を取り戻しました。
降り来る陽光が収まり、気温が下がっていくのを感じて、顔を見合わせていたピーノくん達も、ようやく状況を悟りました。
「や、ヤッターーー!」
「アリスがこの国を直してクレタゾー!」
調子の良い事を叫ぶ彼等に、青色山羊の彼女が呼び掛けます。
「さ、あなた達にはもう一仕事あるでしょう?」
崩れた街をもう一度立て直さなくては。それから、アリスをちゃんと歓迎するのでしょう?
そんな言葉に、彼等は揃って頷きました。
青く輝くオーロラの下、この国の歴史はこれからも紡がれていきます。
そして自分の扉を探す、アリスの冒険はここからはじまり、猟兵達の旅路もまだまだ続いていくのでしょう。
けれど、このお話はこれで御終い。
めでたし、めでたし。
――そうして最後の一撃を受け入れて、クチナシの魔女は絵本を閉じた。
大成功
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