憧れ、虚飾を被る人生(みち)
「紙とインクの無駄だ。お前、どうして凄みも熱意もなくなっちまったんだ」
わかっている。そんなことは判り切っている。でもしょうがないじゃないか。好きでも何でもない、むしろ嫌いな題材だが、それじゃないと読んですらくれないじゃあないか。
昔の、あの男の言葉と顔が浮かんでくる。駄作だなんだの、吾輩の小説を破り捨ててきたあの男の言葉が。
「やめちまえ。上辺面だけの作品なんて、吐き気がするわ。流行なんぞに頼るから、まともに書けないんだろうが。お前が本当に書きたいものだけを書けばいいだろうに」
それで書いたら誰か読んでくれるのか。誰も読まないだろう。吾輩の渾身の出来は、いつだって誰も読まなかった。だが、この上辺面は、誰もが読んでくれた。
それが非難一色でも、読んでくれたということが一番嬉しかった。だから、この男の言葉は気にしなくていい。気にしなくていいのだ。
……なのに、どうしてこんなに心に響く。この【ユーベルコヲド】で、さらに見てもらえるようになったのに、どうしてこんなに虚しいんだろうか。
分からない。分からないが、もう吾輩はやり直すことも退くこともできない。虚飾で蔽われた道だが、行くしかないのだから。
「サクラミラージュでやってほしいことが皆にあるんだ」
そう言い出すのはクトゥルティア・ドラグノフ。事件という様子ではないようで、むしろそれを事前に防いでほしいという様子であった。
「幻朧戦線の連中が、また面倒なことをしてね。籠絡ラムプっていう影朧兵器を市井に密かにばら撒いたんだよ。この影朧兵器は、影朧を何らかの力で手名付けて、その力をまるで自分のユーベルコヲドのように扱うことが出来るようにするものなんだ」
それは一市民からすれば、とても夢のある代物かもしれない。だがこれは影朧兵器。美味しい話には罠がある。いずれ影朧は暴走し、使い手を含めた帝都の人々に多大な被害を及ぼすだろう。
「だから、影朧の力を得た偽のユーベルコヲド使いから、籠絡ラムプを取り上げる必要があるんだよね。今回のターゲットが何者かまではわからなかったけど、どうやら古びた時計塔周辺に現れるそうなんだよね。錆びた時計塔を修理しつつ情報を集めて、事件を未然に防いでほしいんだ」
そういってクトゥルティアはテレポートを開いた。無数の桜が舞うその先には、年季を感じさせる荘厳な時計塔が見えるだろう。針が完全に止まっており、動いていればさらに素晴らしいと感じさせる出来であった。
「あれが例の時計塔だよ。それじゃあみんな、よろしくたのんだよ!」
そういってクトゥルティアは、猟兵たちを見送るのであった。
しじる
初めましての方は初めまして。そうでない方はお世話になっております。しじると申します。
今回は、初めて心情メインのシナリオに挑戦してみます。
慣れていないので、いつも以上に拙く、お待たせする期間が長くなってしまうかもしれませんが、皆さまが満足いただけるリプレイを返せるよう努力いたします!
それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
第1章 日常
『風化した時計塔』
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POW : 腐食してしまった部品をとにかく取り替える。
SPD : 錆ついた箇所を磨いて元通りにする。
WIZ : 欠けてしまった部品がないかを特定する。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
執筆の息抜きにと、久々に家を出た。この力を手に入れてから、毎日紙と睨み合い、好きでもないホラー小説を書き続けていた。その為か、日差しが嫌にまぶしく暑苦しい。舞い散る幻朧桜の花弁も鬱陶しいと感じるほどだ。
散歩は創作に置いていい刺激になると、どこかの文豪が呟いていたのをふと思い出した。だが、今日は散歩なんてしなければよかったと、心の底から思う羽目になった。
往来のどこを見ても、人人人人人人。蟻地獄に落ちていく虫けらのように、皆同じ場所目掛けて歩いていく。聞くところによると、凄いユーベルコヲド使いが、あの古びた時計塔を直すそうだ。
煩わしい。吾輩の行きつけカフェーはその周辺だぞ。そんな大勢で行かれたら、こっちは溜まったものじゃない。
第一あんな古臭く錆塗れの何がいいんだ。吾輩が子供のころからあった時計塔だが、もう動いているところなど見たことがない。直せるのか? 正直無理じゃないかと思う。直ったところで……ただの時計じゃないか。
「そうだ、ただの時計だ。今だけ注目されて、すぐ忘れ去られる」
そしたまた錆塗れになって、いつか壊れるんだ。誰にも知られることもなく。そして誰にも惜しまれることはない。
……そう考えたら、なぜか心がいたくなった。
何故かはわからない。いや、わかっているかもしれない。でも分かりたくなかった。だから目を背けたかったし、忘れたかった。
だが、できなかった。気が付けば吾輩の足は、時計塔へと向かっていたのであった……。
ドゥアン・ドゥマン
時計塔。…素晴らしいな…
もの作る方の手に、敬愛を抱いている
建造も芸術も…本も。易くは無かろう
本には、この不調法な身にも
秘された灯を、静かに見せて貰うようで、好ましい
多少の経験はある故、入り組んだ場所や複雑な個所を重点に、
皆方と協力を
各々方と部品が動きやすいよう、磨き粉も振おう
休憩の際は、住民方に時計塔の話を聞きに
思い入れもまた、修繕に必要な事だ
影ある眼差しの御仁いれば、
ランプの噂も尋ねてみようか
危険な品故、回収に来た事。特に隠しはせぬ
考える時間あれば、思う事もまた、あるやもしれぬ故
猟兵として。ことが起こる前に尽力できる機会は、貴重だ
代償払おうともの理由があるのだろう、
その人物の話を、聞けたらと
今や錆び付き、時を刻むことはなくなった時計塔。誰も見向きもしなくなったその場所に、猟兵は訪れる。【ドゥアン・ドゥマン】もそのうちの一人であった。
「…素晴らしいな…」
時計塔を見上げ、そう呟く。
錆び付き、時を刻まなくなったとはいえ、その外観が損なわれたわけではない。むしろ年季を感じさせ、人によっては此方のほうが好みと評価するやもしれん。
しかし、そもそもそれだけの年月を持たせられたのは、これを作った職人らのおかげである。それを鑑みれば、ただ美しいという言葉では足りない。
「建造も芸術も…本も。易くは無かろう」
そう、本もそうである。
「本には、この不調法な身にも、秘された灯を、静かに見せて貰うようで、好ましい」
幼少期に神隠しに遭い、辺境の地で墓守をしていた猟兵に拾われた彼にとって、本という文学の塊は興味深いもの。
字というただ一つのツールのみで、己の情熱を表現する。それがどれだけ困難かは、ドゥアンにはわかる。
言葉だけでも、表情だけでも、動きだけでも、自身の思いは完全に伝わらない。三つそろっても、状況次第では真反対の意に取られることもある。それなのに、本では字だけ。その字だけで表現するということに、好奇心旺盛な彼は惹かれた。
さて、件の時計台の内部や外部、普通ならば足場を作らねば場所さえも、ケットシーである彼は苦も無く踏破していく。そして錆びた場所にたどり着けば、ユーベルコード【墓守の毛づくろい(タンナー・ブラッシング)】を使って、錆のよって増えた摩擦抵抗を減らしていく。
それは今すぐ効果は見えなくとも、動かす時には絶大だったと皆が知るだろう。
そうして時計塔を直していれば、小休憩の時間となった。現地工事係の班長が、皆にそれを伝え、時計塔の下で休憩を始める。
それに乗じて、ドゥアンも休憩しつつ、従業員の方々に話を聞いていく。この時計台は、かつてどのように動いていたのかを。その時の記憶や思い出を。
それはきっと、修理において役立つものとなるだろうから。
聞けば聞くほど出てくる。耳に残る鐘の音、今は錆びて陰っている白銀の装飾、それが日光と幻朧桜の照り返しを受けて、鮮やかに薄いピンクに染まる景色など。
きっとよみがえらせることができれば、それもしっかと見ることができるだろう。
そうやって話していれば、いつの間にか時計塔の周りは人だかり。
どうやら、誰かが時計台を猟兵が修理するという情報を話したのだろう。別に秘匿しなければならないことではないので、ドゥアンはそれを気にせず、むしろ集まった人々にも話を聞いていく。好奇心、それに従って。
ふとそんなときに、視界に入るのは眼鏡をかけたかなり猫背の青年。桜の精なのか、頭から桜の枝が生えているが、それがかすむほどに深い目の隈。何よりなんの熱意も感じられず、無気力とさえ思えるほどであった。
皆が時計塔修理の話題で明るい中、そこまで暗い存在。強い好奇心を持つドゥアンが、見逃すことはなかった。
「そこの御仁、少々よろしいだろうか」
そう話しかければ、件の青年は、いかにも不満という表情を見せるが、頷きはする。断るほうが面倒になるとでも思ったのだろうか。何方にしても好都合。ドゥアンは話を続けることにした。
「最近、市井に出回ってるという、【黒いランプ】を知らぬか? 危険な品故、回収に来たのだ」
刹那の硬直、遅れて、僅かに青年の目が泳いだ。それを見逃すドゥアンではないが、それ以上に聞きたいことがあった。その青年に聞きたいことが。
「代償払おうともの理由があるのだろう。貴方はなんだと思う。ランプを使ってまで、なしたいと思うそれは」
沈黙。二人の間に、緩やかで暖かな場の空気に相反する、張りつめた冷たい空気が走る。それは時にしてどれほどか、恐らく秒にも満たないかもしれない。だが、二人には無限に思えただろう。
やがて青年が、押し殺したような声でつぶやいた。
「見てほしいからじゃ、ないか? どれだけの力を込めても、どれだけの努力をしても、それを一向に見られない。なかったことにされる……そんな人たちが、『自分はこれだけ頑張ったんだ』っていうのを、認めてほしい。見てほしい。その為に、じゃないかね?」
そういう青年の目は、ドゥアンを見ていなかった。
大成功
🔵🔵🔵
メグレス・ラットマリッジ
【ブットバース】から
時計塔の修理? お任せください! ……雑用ならば!
手先の器用さに多少の自信はあれど修繕技術は本職の方々には遠く及ばない ならば余計な手出しはせず、影から助けになりましょう
私の武器は笑顔と馴染みの速さ(と諦めの悪さ)、ユーベルコヲドを期待した皆様はごめんなさいね。
これは見世物ではない故、時計塔はしっかり直していくのでそちらをご覧になってくださいな。
心血が注がれた物には魂が宿ります。あの時計塔はまだまだ長生きしますよ。
休憩時間や買い出しの合間に籠絡ラムプについての聞き込みを行います 最近変わった事は無いか、怪しい者は見てないか、或いは今読んでいるその本についてとか。
本職に技術的に勝てなくとも、なにか役に立てることはあるはず。雑用なら任せてと、修繕に参加してきたのは【メグレス・ラットマリッジ】である。
「私の武器は笑顔と馴染みの速さ、ですからね!」
その言葉に偽りはない。持ち前の笑顔は、元々朗らかだった現場の空気を、より一層明るくする。
下手に修繕を助けることはせず、指示された物を持ってきたりし、影から現場を支え続けた。
ユーベルコードこそ使ってないが、その気配りと持ち前の明るさは、ユーベルコード並みと言って良かっただろう。
これは見世物ではない。だからこそ、メグレスは無理に前に出るのとはない。
「心血が注がれた物には魂が宿ります。この時計塔はまだまだ長生きしますよ」
それは猟兵ならではの答え。ヤドリガミという存在を知っているからこそ出せる。
この時計塔も、いつかはヤドリガミになるのだろうか。そんなことをふと思いつつ、始まった昼休憩。皆の弁当を買うため、渡された小銭を手に、近くの繁華街へ向かうのであった。
繁華街はやはり人が多い。幻朧桜の花びらが舞う、幻想的な町並みに溢れる人の海。
これだけ多ければ、誰かしらは籠絡ラムプを知っているだろう。
買い出しに生まれた僅かな時間を、聞き込みに利用して、メグレスは話を皆から聞いていく。
優しい朗らかなメグレスの空気に飲まれて、繁華街の人たちは聞いてもないことも話してくれる。
そのため一人一人の会話が長くなってしまったが、それはそれで楽しいので良しとしていたメグレス。そうしていれば当たりに出くわす。
繁華街の少々奥にあった本屋、そこに長蛇の列ができていた。
「こんにちは、これはなんの列でしょうか?」
メグレスは、すぐ側にいた老婆に問いかける。
メグレスの優しげな空気を感じて、老婆は抵抗なくすんなりと答えてくれた。
「最近流行りの小説家の【久瀬・港(くぜ・みなと)】の本を買いに来た客どもさ。私にはあれが何で売れているかわからんが、とにかく人気なのさ。今週で150万部突破する勢いだそうだよ」
本当に何で売れているかわからんわ、そういって老婆はメグレスに本を渡す。ペンネーム久瀬港と書かれたそれが、件の小説のようだ。
少し興味を持ったメグレスは、それを斜め読みしてみることにした。
頁を捲り、字を目で追っていく。すると数十行ほどで妙な違和感を感じた。
メグレスは本は人並みに読む程度で、本の虫というほど読みはしない。それでも、なんだこれはという奇妙な違和感を感じる。
「わかるかいお嬢さん。そのホラー小説、ほぼパクリもんなんだよ。ほれ、こことここ。それにここも、有名なホラー作家の名シーンを継ぎ接ぎしただけなのさ」
そういう老婆の声を聞き、改めて読み直す。確かに言われてみればどれも違和感がある。字と字の繋ぎが不自然なのだ。
文字通り、誰かの物を無理矢理くっ付けなような感じである。
「そもそも、ホラー小説と銘を打ってるが……異世界から転生してきた主人公が、ホラーミステリーを、神からもらったとんでも知能で解決するっていう設定自体無理があんのさ。私は本好きでね、こんな読者を馬鹿にした丸パクリ嫌いなんだよ。だけどなんでか売れてるんだよねぇ……私の考えが古いのかい?」
「……いや、そんなことないと思いますよ」
メグレスは読み進める内に気づいた。
文字の一部に、ユーベルコードの残り香のようなものを感じたのだ。
それには、対象に恐怖と中毒性を与える力があったのだ。
猟兵であるメグレスにこれは通用せず、またユーベルコードが使われていることを見切ることができた。
この本は、ユーベルコードの力で売れている。
それを言葉に出し手はいないが、なにかを察したのか、老婆がメグレスにだけ聞こえるような声で、呟いた。
「私はさ、45年も本を読んできた。だから本の良し悪しは、数行見ればわかる。本物の小説には魂があるのさ。どんなに下手くそな文章でも、それはハッキリと伝わってくるのさ。だが、こいつにはない。ただの空。文章は綺麗でも、中身がない。……言いたいこと、わかるね?」
「……はい、しっかりと、その事を、伝えてきます」
老婆は、メグレスのその返答に納得したのか、微笑んだあと、繁華街を去っていった。
大成功
🔵🔵🔵
華上・ユーディ
【ブットバース】から参加です。
アドリブ&連携OK
マスター様にお任せします。
サクラミラージュは初めてですねぇ🎵
細かい事情は苦手なので。
「腐食してしまった部品をとにかく取り替える。(POW)」に挑戦‼️
えっ?何でか?
言う前に行動。時計塔が動くようになれば自ずとみんなの心も開くはず。芸術はそんなものだ(笑)→(深く考えていないキマイラ…)
部分は現場の技術者さんに聞きながら【メカニック】で修理保全を開始。
皆が一体になって時計塔を修理すれば何かが動く筈だよ。
初めて訪れるサクラミラージュ。故郷キマイラフューチャーでの戦争が終結し、UDCアースで大学に通っている【華上・ユーディ】は、この世界の美しき景色に少し胸打たれた。
猟兵を引退したと噂された彼女が、何故また戦場に舞い戻ってきたのか、それはわからないが、兎にも角にも時計塔修繕に力を貸すようだ。
「時計塔が動くようになれば自ずとみんなの心も開くはず。芸術はそんなものだ」
と言うより早く、現場の職人の指示を聞きつつ作業に当たるユーディ。なお、特に深い意味で言った発言ではないそうである。
「しかし嬢ちゃんみたいな別嬪さんまで手伝ってくれるのはうれしいねぇ……ここは男臭くてなぁ」
そう呟く職人たちに、ふふっと微笑を向けて答える。
「冥土長やからなぁ~任せときぃ~」
メイド長と聞き間違えた職人たちは、皆おぉと感嘆を上げる。これは頼りになりそうであると。
どうやらメイドはメイドでも、パーラーメイドと思われたようだ。
「なんか、思ったのとちゃう視線やなぁ~まあ、ええわぁ」
口も手も動かしつつ、ユーディは修繕を手伝っていく。この程度、大学のレポート課題をやるよりもはるかに簡単であると思いつつ。
「あっ……レポート……」
思い出したくないことが頭をよぎる。だが、それは今はいいと、なかったことにして修繕を続ける。
そうだ、こうして皆が一体になって時計塔を修理すれば何かが動く筈。そう信じて。
その思いが届いたのか、錆び付いて動かなかった針が動くようになったと、時計塔外部にいる従業員から声が聞こえる。
何事も、やり続ければいずれ実るのだ。
「だから、嬢ちゃんも課題、やり続けて実らせようぜ」
「はわわ!!」
職人たちと、ユーディの笑い声が、塔メンテナンスルームに響くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
幻朧戦線め
ふざけやがって
どうしても叶えたい願いや望みがあって
それを容易く手にすることができる力を
もし得られたなら
誰だって溺れちまう
その力に縋りたくなるよな
そいつも犠牲者だ
ラムプに囚われた影朧共々
助けてやりたいぜ
手段
影を人の目が届きにくい場所や機構内部へ放つ
止まってたり壊れている部品あれば皆に知らせ
俺も影と協働して修理や交換を手伝うぜ
新たな時を刻み始める時が楽しみだな
塔周辺で影朧の気配を微かにでも漂わせている奴がいたら
影で追跡
住居とか行きつけの店とか判れば改めて調べられるし
影に気づくようなら…見つけたってコトだよな
今回の事件の発端となった人物、彼もまた被害者だと考えるのは【木霊・ウタ】である。どうしても叶えたい願いや望みがあって、それを容易く手にすることができる力を
もし得られたなら……誰だってそれに溺れてしまうし、縋りたくなるだろう。
それが高く遠ければ遠いほど。
「幻朧戦線め……ふざけやがって」
怒りが沸き上がり、煮えたぎった窯のようになる。
しかしそれは表に出さない。彼は守護者、自身の怒りは誰かのためのもの。自身のをぶつける為のではない。だからこそ、抑えて、まずは時計塔修繕を手伝う。
ユーベルコード【影の追跡者の召喚】によって、放たれた影の追跡者は、人が入ることができないような歯車と歯車の間さえ潜り抜けて、見落としがちな小さな綻びや錆びを見つけ出していく。
見つけ出せたなら職人たちの出番。共にウタも手伝い、確実に修理を進めていった。
「新たな時を刻み始める時が楽しみだな! ……ん?」
そんな時であった、時計塔の外に行かせた影の追跡者の一体が、影朧の気配を察知したようだ。
五感を共有している以上、それが誰でどこに行くのかは丸わかりである。
それは、小休憩の時にドゥアンが話していた青年その人だった。
青年は此方に気づいていないようで、特に警戒することなく時計塔から離れていく。
それを追う影の追跡者、暫くすればそれはカフェーにたどり着く。
例のカフェーのテラスから見える景色は、小高い丘の上にあり、時計塔がはっきりと見え、幻朧桜が舞う姿と相まって絶景ともいえる。
そこでテーブルに座って、いつものという姿からして、個々の常連なのだろう。
前払い式の店なのだろう、青年が、財布をカバンから取り出そうとして手を突っ込んだ時、それは見えた。見えてしまった。
「籠絡ラムプ、見つけたぜ!」
すぐさま他の猟兵たちに知らせつつ、職人たちに改めて事情を説明する。
職人たちは、猟兵たちの出陣を快く受け入れてくれた。
「すかっと解決、期待してるぜ! 超弩級戦力さんたちよ! あんたらのおかげで時計塔もだいぶ良くなった、事件が解決するころまでに、完全に直しておいてやるぜ!」
そう言って豪快に笑いながら、職人たちは猟兵たちを見送るのでった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『藍の影法師』
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POW : 不屈の影業
【自身の影に近づく者を襲う影の刃と】【離れた者を追い貫く影の触手を宿し、】【自身に死に瀕する程に戦闘力が増強する呪い】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD : 毘藍風
【自身の戦闘力を増強し、敵を切り刻む暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 暗中鬼影
全身を【見た者が心中で恐れる何かを見出す影】で覆い、自身が敵から受けた【殺意、敵意、恐怖等の負の感情】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ルーナ・ユーディコット」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
時計塔での人込みをようやく退けて、たどり着いたお気に入りカフェー。吾輩はこのテラスから見える景色が、それなりに好きだった。何より、出される料理がうまい。
吾輩好物の芋羊羹、ここまで旨くできるカフェーはここ以外ないだろう。少々高いのがたまに傷だが。
口の中に広がる優しい甘さと、ゴロゴロとした芋の触感。なるほど絶品だ。抹茶の渋さとよく合う。
こうして甘いものを食べているときは、嫌なことを忘れさせてくれる。
例えば、今日あった妙に猫っぽい男とか……あいつは、吾輩がなんなのか知らなかった。だというのに、吾輩が【こいつ】を持っているんじゃないかと、まるで気付いたような眼をしていた。
肝が冷えた。思い出すだけで気分が滅入ってくる。
だから甘いものを食べて誤魔化す……誤魔化すことができるはずなのに、視界に入る時計塔が想起させる。
「くそが!」
なんなんだ今日は。まるで時計塔が、吾輩に何かを訴えるために、吾輩に不快なことしてきてるように思えて腹立たしい。錆びて動かない、今だけ注目される時計塔ごときにだ。
やっぱり、今日は外に出るべきじゃなかった。むしろイライラが加速した。
完食し、いつもならしばらく眺める景色も、今は真っ赤に染まっていて。吾輩は早々に席を立ち、去るはずだった。
ざっと吾輩の前に立つ、様々な格好をした男女。年齢もバラバラで、全くまとまりを感じない。
奴らは自身を猟兵といった。
猟兵、噂に聞く超弩級のユーベルコヲド使いのことだ。そんな奴らがなぜ吾輩の前に。
いやわかっている。それはわかっているんだ。
「また、また天才が、吾輩の夢を潰すのか……」
沸々と憎しみがわいてくる。いつだってそうだ、どれだけ書いても読んでも、才能を持つ奴にはかなわない。
吾輩が10000努力しても、天才は1で超えていく。この生まれた時からある格差に、憎しみが生まれないわけがない。
天才どもにはわからない。たとえ泡沫の夢に消え、【一時期だけ注目されて消える】存在になるのだとしても、【注目すらされず消える】ものの気持ちなぞ!
虚飾と借り物ばかりでも、吾輩は夢をつかんだのだ。
「1の努力で100000手に入れる天才が、また凡人の吾輩から1000000を奪って踏みにじるんだ! そんなことはさせるか、吾輩は偽物でも【才能】を手に入れたんだ! 凡人の苦労も知らない天才を、今度は凡人の吾輩が踏みにじってやるぅ!!」
真っ赤に染まった視界の中で、その名を吾輩は叫んだ。
吾輩に仕える、影朧の名を。
「藍の影法師、久瀬・港の名のもとに、この駄文どもを絶版本に変えてやれ!!」
「委細承知、参りましょう」
港の言葉に合わせて影朧が姿を現す。
実力行使の時間だ、猟兵よ、才能を嫉むことしかできなくなった青年を、欲望を歪めて実現する悪魔のラムプから解放せよ。
木霊・ウタ
心情
どっちも救ってやりたいぜ
港
辛そうだな
今あんたがやってる行為は
自身を貶めてる
判ってんだろ
時計塔はもうすぐ直る
人もいつだってやり直せる
コツコツと時をかけ研鑽を積み重ねた
未来の自分を信じようぜ
今よりももっとすごい自分を
俺も本当のあんたの物語を読んでみたい
戦闘
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払いう
仲間を庇う
炎の煌きが影を払い
刃や触手を消し去る
藍
傷つき虐げられた過去、か
だから港に共感し力を貸し
望みを叶えている
けど…気づいてるだろ
それが港の未来を奪ってる
港を信じてやれよ
きっと大丈夫だ
まずはアンタが未来へ進むんだ
理不尽な未来を灰に帰し転生促す
港、癒しを
転生させてやるんだ
事後
藍へ優しげな鎮魂曲
転生後
港の本を楽しみにな
どっちも救ってやりたい。それが【木霊・ウタ】の素直な心情であった。
どちらも被害者である。影朧は無理やり従属にされその力を弄ばれ、そして港もまた、幻朧戦線の甘い禁断の果実を食べさせられた。
確かに、港は自らの意思でラムプを使ったが、そもそも幻朧戦線がラムプをばら撒かなければ、こんな事件は起きなかった。港も、このような形で文豪になることもなかった。
「命を弄ぶ、そんな奴らの思い通りにはさせないぜ!」
巨大剣・焔摩天を構えて、ウタが走る。それを視認し影法師が自傷するかのような嘲笑いを行う。
「思い通りには……か、なれば実行して見せよ、少年」
不屈の影業、影が、迫るウタを切り刻まんと、群れを成して殺到する。それは雨、悲しみと屈辱の雨を表しているかのような、哀愁を感じさせた。
「港、判ってんだろ? 今あんたがやってる行為は、自身を貶めているのと変わらないって」
怒涛に降り注ぐ刃を、同じく巨大な刃をもってくるりと防ぐ。剣に弾かれ、影の刃は空へと走る。
ウタが足を進めて、影法師と港へ踏み込んでいく。
「藍、傷つき虐げられた過去を持っているって聞いたぜ……だから港に共感し力を貸し、望みを叶えている」
「だとしたら……なんだね!」
空へ走った刃が、踵を返したかのように鋭角に曲がり、ウタの背面を狙う。ならばと焔摩天は、煌めく獄炎を持ってして、強き光で影を消す。
それは、辛く歪むこととなる、理不尽な未来を、明るい炎で優しく照らすようであった。
「港を信じてやれよ」
一言、ただその一言が、いかなる刃よりも影法師を貫く。
しかし、返答は否。言葉に出さずともそれは伝わってくる。
オブリビオンとはそういう存在だから。心の奥底ではそう思っても、本能が妨げる。だが、その本能すら揺らがせ、影法師はウタが踏み込む隙を与えてしまった。
「まずはアンタが未来へ進むんだ」
「影朧に、我らに未来だと、笑わせる! 最早君らに見つかった時点で、我らの破滅は確定だろうに!」
十分な距離に入られ、影の刃も間に合わない。思いをぶつける様に、影法師が叫ぶ。
影法師はすでに理解している、いくら暴れたところで、自分たち二人に未来はないと。だが、その理不尽な未来を許せるウタではない。
希望を歌う地獄が、守護者が、二人の破滅を望むことはしない。
「なら……そんな理不尽、灰にして消し飛ばしてやるぜ!」
ユーベルコード【ブレイズアッシュ】。地獄の炎が、二人にこれから訪れるだろう、理不尽な未来を改変する。
「コツコツと時をかけ研鑽を積み重ねた、未来の自分を信じようぜ、港! 今よりももっとすごい自分を!」
「俺も、本当のあんたの物語を読んでみたい」
その一言は、港にしっかりと届いていた。
彼の視線が揺らぐ、しかし、今更と揺らぐことを辞めない。
だからこそ、ウタは語り続けた。
「時計塔はもうすぐ直る。人もいつだってやり直せるんだ、港!」
「うるさい! 何も知らないで、気軽に言うな!」
今だ港は心開かず、しかし、確かに未来が変わる音がした。
地獄の炎が、二つの影を照らし始めた……。
大成功
🔵🔵🔵
メグレス・ラットマリッジ
【POW】
久瀬・港……ああ、大体察しがつきましたよ。
貴方が流行を生む手段も、求める理由にも。
その本に対する熱意は良し。
言いたい事は多々ありますが、まずは猟兵のお仕事をこなすとします。
流血による解決をお望みならばそのようにしましょう。
影は雷杖で払いつつ隙を伺います
仕掛ける際にはカフェの備品をぶつけて手数を割かせて接近
間合いに入ったら閃光で影を打ち消し(目潰し)
無防備な所に一撃食らわせます
彼がテロリストに与していたと知られたら好奇の目で見られるかも
作家人生に傷がつくのは面白くありません
大事にならないよう済ませたいですね
久瀬港の魂の叫び。苦痛にまみれたそれを聞いて、【メグレス・ラットマリッジ】は大方を察してしまった。彼が流行を生む手段も、求める理由にも。
「その本に対する熱意は良し。言いたい事は多々ありますが、まずは猟兵のお仕事をこなすとします」
雷杖を抜き放てば、紫電が淡く、それでいて力強く走る。
照り返しで薄紫に移されるメグレス。その表情は柔和ではなく、確かに猟兵のもの。幾多も戦場を潜り抜けた戦士の顔であった。
だからこそ、この言葉は、想像以上に重く港と影法師に圧し掛かる。
「流血による解決をお望みならばそのようにしましょう」
一瞬、その凄みに気圧されて、影法師が影の刃を這わせる。
刃は迷うことなくメグレスへと向かい、彼女を串刺しにせんと殺気を纏っている。
「……店員さん、後で弁償いたしますわ」
そう呟き、メグレスは影の刃に対して、傍にあったテーブルを蹴り倒すことで塞ぐ。テーブルに刃が突き刺さり、そしてバラバラに変え進むが、すでにその場にメグレスは居らず。
どこだと見まわし、影法師が刹那の間に視界に映った紫を追えば、雷杖を振り上げ、左側面から飛び掛かる彼女の姿が見えた。
「賢しいっ!!」
刃が間に合わぬなればと、影の触手を解き放つ。しかしそれは、血液を消費して強化された稲妻に打ち勝つことは叶わない。
火花が散るような炸裂音の後に触手は弾け飛び、世界を白紫が覆う。
目くらまし、影法師が気付き、視界が蘇るのと同時に、メグレスが影法師の懐に飛び込んだ。
「失礼」
一言、遅れてユーベルコード【肉斬骨砕(テリブル)】が炸裂する。反撃とばかりに突き出された触手を、紙ならぬ髪一本の差で躱し、胴ではなく、右腕めがけて拳を突き出す。
食らった右腕は、やけに軽快な音共に弾け飛び、影法師の攻撃手段を減らした。
「……何故、胴を狙わなかった!」
影法師が、今の一撃で決めなかったことに不満を告げるが、メグレスは諭すように語るのであった。
「伝言を、預かっているので。すべてが終わって、それを話すためにも、今死なれると少し困るんですよ」
そう語るメグレスの表情は、もう猟兵ではなく、いつもの優しい淑女のものであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥアン・ドゥマン
藍の影法師か。この身も暗がりに連なる者
才の比較が久瀬殿の枷なら、
その土俵にこそ乗り上げよう
影法師を捕らえる為、四方釘を鞭の形に
恐れの影は祓うより。その闇に紛れ、受けようぞ
■恐れと心情
この身の生業は才能の有無より“そう在るか”が重要故
それを放棄する事が、我輩は恐ろしい
努力が叶わぬ嘆きを、正せる身ではないのだ
…ただ。
我輩の目に、久瀬殿は消えてなどおらぬし、
己の業を咆哮し立っている
…個人的に。そういう者は好ましい
故、彼に勝手な想いを届けよう
才能の事は判らぬが、
多少拗れている方が、読み応えがあって好い
我輩は貴方の作品を読んでみたいぞ
…もし伝わるなら、影法師の動きも鈍るだろうか
生命力を吸収し葬送を成そう
己もまた、墓守りという日の浴びぬ者。故にか、影法師に少々の親近感を覚えつつ、久瀬港を見つめるは【ドゥアン・ドゥマン】。
眼鏡の奥に見える、濁った瞳。しかしそのさらに奥、そこに秘められたものを、ドゥアンの好奇心は見逃さなかった。
「才の比較が久瀬殿の枷なら、その土俵にこそ乗り上げよう」
取り出す古びた四方釘が、連なり形を成して鞭となる。
恐れは払うことはない。それを受け入れ、影と同化する。そうだ、恐怖も嫉妬心も、言うなれば影である。自身にずっとついて来るし、切り離すことはできない。
それはそうあるものである。だからこそ、それを受け入れられたものが、前に進めるのだ。そう、ドゥアンのように。
努力をうんぬん以前に、ドゥアンは、自身が自分であることを放棄するほうが恐ろしいのだ。それは神隠しに会い、拾ってくれた猟兵から学んだこと以外を知るすべがなったから生まれた恐怖かはわからない。
しかし、確かにそれはドゥアンにとって大きな恐怖である。それを受け入れて、ここに立っている。だから彼は強く、前に進むのだ。
だからこそ、同時に港を好ましく思う。
それが罪だと知りながら、しかし利用してしまったことに罪悪感を持ち、それでもと、完全に折れることなく咆哮し立っている。誰かが、自分を止めてくれると、心の奥底で望んでいる。
「…個人的に。そういう者は好ましい。故、彼に勝手な想いを届けよう」
恐怖の影を乗り越えて、ドゥアンが鞭となった四方釘を払い、ユーベルコード【揺蕩う夜(ステラ・マリス)】を発動させた。
それは、港や影法師が、かつて描き、願っていた思い。
アクション小説を数多書き、一時期若い世代に大受けした女性作家【黒瀬・渚】。その軌跡を追って、ただ本を書いていた。彼女に並べたらと、ただ一心に字を描いていた。あの頃の思いが……広がっていく。
「才能の事は判らぬが、多少拗れている方が、読み応えがあって好い。我輩は貴方の作品を読んでみたいぞ」
その言葉は、失っていた想いを想起した港と影法師に、深々と突き刺さるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
化野・那由他
ご自分の物語を綴る楽しさを忘れかけているのですね。
少しでもお力になれればと。
本体の奇書を広げ、所定の頁を開き、【妖奇譚『鎌鼬』】にて対抗致します(詠唱無)
[第六感]を駆使して、風の[属性攻撃]、[範囲攻撃]を。
風の刃にて[武器受け]し、高速で戦います。
兎と亀のお話を思い出しますね。
なぜ亀が勝てたのかご存知でしょうか。
兎は亀のことばかり見ていましたけれど、亀は違う……。
見ていたのはただ自分の道だけだったのです。
さて貴方は兎と亀、どちらなのか……どちらでもないのか……。
物語とは書き手がいて初めて世に産まれ出るもの。
ご自分の手で物語を紡ぎあげるのが物書きの道というものでしょう。
※アドリブ大歓迎です!
自分で物語を書く、その楽しさを忘れてしまっている。少しでもそれを思い出す手助けになれれば。そう考えたのは【化野・那由他】である。
記憶を失いほぼ白紙とはいえ、本体が本であるヤドリガミだからこそ、本に関連する話には譲れないものがあるのかもしれない。
所々白紙と化した本体を開き、ユーベルコード【妖奇譚『鎌鼬』(ヨウキタン・カマイタチ)】を発動させれば、鎌鼬が宿り、不可視の衝撃波を放つ風を纏う。
ならばと影法師も、風には風をと切り刻む暴風を放つ。
風と風は、鞭を振るったような音を鳴らし、切り結び合い消失する。しかし一点違うところは、那由他は高速移動できること。ただ暴風を放つ影法師よりもずっと優位である。
しかし、だからこそ油断はしない。優位に立ったものが油断し敗北するのは、いかなる世界でも同じである。
だからか、こんな言葉が浮かんだのは。
「兎と亀のお話を思い出しますね」
唐突な言霊に、港と影法師は反応できない。それを置き、那由他が続ける。
「兎と亀のお話を思い出しますね。なぜ亀が勝てたのかご存知でしょうか。兎は亀のことばかり見ていましたけれど、亀は違う……。見ていたのはただ自分の道だけだったのです」
「……それが何だっていうんだ」
その話は、何故か港に突き刺さった。違う、突き刺さった理由はすでに知っていた。ただそれを認めまいとする港に、那由他が告げた。
「さて貴方は兎と亀、どちらなのか……どちらでもないのか……」
次いで風に流れて聞こえた言葉、それは、影法師が切り刻まれ、鮮血が一輪の彼岸花がごとく咲いたのに合わせて響き渡った。
「物語とは書き手がいて初めて世に産まれ出るもの。ご自分の手で物語を紡ぎあげるのが物書きの道というものでしょう」
ねぇ、港さん。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『籠絡ラムプの後始末』
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POW : 本物のユベルコヲド使いの矜持を見せつけ、目指すべき正しい道を力強く指し示す
SPD : 事件の関係者や目撃者、残された証拠品などを上手く利用して、相応しい罰を与える(与えなくても良い)
WIZ : 偽ユーベルコヲド使いを説得したり、問題を解決するなどして、同じ過ちを繰り返さないように教育する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
影法師が敗れた。そのショックは、吾輩自身が思った以上に大きく、だが、どこかスッキリとしていた。靄が晴れたような、これでよかったのだという気持ちがある。
可笑しな話だ、あれだけ名声を求めて、偽りの才能とはいえ夢をつかみ取って、それがこの舞い散る幻朧桜の花弁が如く、儚く終わってしまったというのに。
吾輩は、心の奥底で願っていたのか? この偽りの名声が終わることを。マイナスからでもやり直したいと。
「港、癒しを。転生させてやるんだ」
猟兵の一人が言う。そうだ、吾輩のせいで、この倒れた影法師は、やりたくもないことをやらされていたのだ。そうするのが筋で、そうするのが償いだろう。
「……許してくれとは言わない」
そう呟く吾輩に対して、影法師はふっと笑って逝った。
さて、久瀬港は敗れ、その悪行も公に晒されてしまった。民衆の眼は冷たく容赦がない。洗脳が解けた読者は、港へと無慈悲なバッシングと非難を向けるだろう。
このまま放置すべきか。否、我々は幻朧戦線ではない。やるだけやったら投げっぱなしにはしない。
久瀬港、彼がまた小説界に戻っていけるように、何か手伝えないか聞いてみよう。
彼は間違ったが、まだやり直せるのだから。
メグレス・ラットマリッジ
下の話題からいくつか喋ります
・その場凌ぎの嘘はつかない。民衆を心証を良くする事実だけを口にする。
先生も幻隴戦線の被害者であること
怪我人がいない等を材料にフォローします(対外的アピール)
・先ほど聞いたお婆さんの言葉を伝える
今の先生なら分かっているのでしょうけれど……要約して伝えます
それと私からも。筆を取る理由に善し悪しはありません
でも、物語を書く人は物語を好きであって欲しいと思います
いつかは忘却される運命なれど、親にも忘れられたらあまりにも悲しいですから
・出来る事があるか聞いてみる。但し危険な橋は渡らない。
久瀬港の名は未だ死なず。筆もまた折れてはいない。
窮地こそ絶好の機会、諦めるには早いですよ!
その場しのぎの嘘は、かえって印象を悪くするだろう。だからこそ、【メグレス・ラットマリッジ】は真実を話した。勿論、久瀬港の印象を悪くする事実は伏せ、印象を良くする事実を。
彼も幻朧戦線の被害者であること、怪我人が誰もいないこと、何より本人がこの道を選択したことを悔いていたことを。
もちろん、それを流して終わりではない。港自身に変わってもらわなければならない。だからこそ、メグレスは港に告げる。あの老婆のことを。
「あなたが今まで書いていたものは、空っぽでした。上辺だけ、誰かが整えたものを借りて作った虚飾。それでは誰も振り向いてくれませんよ」
「……ああ、わかっているさ」
老婆からの伝言は、確かに港に届いていた。影法師を打倒され、心がすっきりとしていたから、聞き入れることができたのだろう。
また、それとは別に、自分からもと付け加え、メグレスは語った。
「筆を取る理由に善し悪しはありません。でも、物語を書く人は物語を好きであって欲しいと思います」
港が何故と返す前に、メグレスは話した。それが一番伝えたいことだったからである。
「いつかは忘却される運命なれど、親にも忘れられたらあまりにも悲しいですから」
その言葉は、妙にすとんと港の心に収まった。欠けていた歯車がしっかりとかみ合い、止まっていた時計が刻むように、港の止まっていた心を動かした。
「では、私から言いたいことはこれだけです。何か手伝えることがあれば……」
もちろん危険でないこと前提。そう付け加えたメグレスに港はこう返した。
「あの時計塔のもとで、謝罪会見がしたい……手伝ってもらえるだろうか?」
それに対してのメグレスの返答は、優しい微笑みであった。
大成功
🔵🔵🔵
木霊・ウタ
心情
港に未来を諦めさせちゃダメだ
それじゃ幻朧戦線の思い通りだ
港
物語りたいとの気持ちは本物で
今もその情熱は燃えてるだろ?
なら書き続けない理由はないよな
想いあれば希望の未来を紡いでいける
何度でも言うぜ
俺は本当の港の物語を読んでみたい
今後
私見なんで決めるのは港だ
まず謝罪会見
先に謝られたら赦したくなるのが人情だ
非難はあるだろうけど
港は犠牲者だ
応援や擁護もあるだろう
よければ俺達も証言するぜ
幻朧戦線許すまじとの世論が盛り上がるだろ
暫くして話題の注目作家が新作を発表
気負わず、な
心込めた作品なら響く人はきっといる筈だぜ
転生した藍にもきっとな
港の決意の言葉や表情を見届けたら
藍への鎮魂&港の再出発を祝し弦爪弾く
「港、物語りたいとの気持ちは本物で、今もその情熱は燃えてるだろ?」
そう問いかけるのは【木霊・ウタ】だ。
港に夢を諦めさせる訳にはいかない。それこそ幻朧戦線の思うつぼ、そう判断して、最初は元気つけるために言うつもりであった。しかし、ウタが思う以上に、港のスッキリとした心は強かった。
その意味で言う必要はない。そう判断し、港の意思を再度確認するように続けた。
「なら書き続けない理由はないよな」
「……ああ」
その気持ちに偽りはない。そういう眼差しであった。
だからこそ、安心して謝罪会見に送ることができた。ウタは時計塔へと、港を連れながら話す。
「想いあれば希望の未来を紡いでいける。何度でも言うぜ、俺は本当の港の物語を読んでみたい。でも、気負わず、な」
「ありがとう……優しいな、君らは。吾輩は、あれだけ酷く突き放したというのに。ここまでしてくれる」
そう零す港。やはり、負い目からか、色々と思うところがあるようであった。だが、ウタはそんな彼に言ってのけた。
「なに、俺たちは、俺たちの使命を果たしてるだけだぜ。過去を滅し、安らかに眠らせる。そして、今を生きる人の未来を築く。ただそれだけを、な」
はっきりと、そして力強く。赤々と燃え盛る炎のように、揺らぎ消えることのない意思を感じ取れる言葉。だからこそ、港の心に響くのだ。
「使命を……か。なら、吾輩も、吾輩なりの使命を果たすだけだな」
その意志ある瞳は、ウタに港が折れない心を持ったと理解させるのに十分であった。
時計塔の元に作られた謝罪会見の台に登っていく港。それを見送り、弾く弦爪。
影法師に鎮魂歌、港にエール。二人に手向けた歌が、風に乗って暖かに流れた。
大成功
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ドゥアン・ドゥマン
世の反応は、むべなるかな
一歩違えば、取り返しのつかない被害が出ていたやもしれぬ事だ
…しかし。そうなる前に戦えて、良かった
茨の道だろうが…、もう一度を願うなら
我輩も、応援しよう
故。久瀬殿には、謝罪の一つとして
猟兵側が要請した。という事で、
時計塔の修理を手伝って頂くのはどうだ?
作業は安全に教える故な
職人方にも、了承を願おう
この時計塔は、住民方に愛されている
貴方にも、想い入れがあるのだろう
スランプなら、何かの刺激になるやもしれぬ
…藍の影法師も。穏やかな、眠り際であったな
転生の送りは、尊い御仕事。我輩にはできぬ
…これは、素人目線だが
貴方だからでき、見えるものがあるのは
作品も、そう、違わぬのではないかな
一歩間違えれば、取り返しのつかない事態になっていた。それを考慮すれば、民衆の評価は、悲しくも間違ってるなど言えない。それを【ドゥアン・ドゥマン】は十分に理解していた。
「…しかし。そうなる前に戦えて、良かった」
これが彼の率直な気持ちであった。
これから港は、間違いなく茨の道を進むことになるだろう。だが、死んでしまったらやり直すことはできない。そこまでの事態になる前に終わらせることができたのだ。それは喜ぶべきことだろう。
そうして、長い謝罪会見が始まり、港はケジメを示した。
今販売している本は全て絶版し、料金も全額返済、手に入れた賞も返還し、現在所属する出版社を脱退すると。
また、傷はないとはいえ、多くの被害者を出してしまったことについても謝罪し、それでも、まだ自分を受け入れてくれるのであれば、この小説世界に帰ってくることを伝えていた。
偽の物語ではなく、自分で書いた本当の物語で……と。
しかし、それで終わりというのは港的にも、民衆的にも納得いかなかった。何か行動を示してほしかった。
そこで、ドゥアンが提案を持ちかけたのだ。
「謝罪の一つとして、猟兵側が要請した。という事で、時計塔の修理を手伝って頂くのはどうだ?」
スランプなら、何かの刺激になるやもしれぬ。そういう思いも込めて、住民たちに愛される時計塔を修理しようと誘った。安全にできるようにもするとも伝えた。
これに食いつかないわけがなく、港はぜひと参加した。
勿論、港は完全な非運動系。いわゆるモヤシである。かなりキツイ作業となってしまったが、それはそれで自身への罰として受け入れられたようだ。
既に猟兵たちと職人たちによって、大方の修理は終わっており、仕上げしか手伝えていなかったが、それでも確かにやっていた。
そうして、後は動力を再起動させるだけとなり、新品同然に修繕された時計塔が動き出すのを、外で待っていた時、ドゥアンが港に零した。
「…藍の影法師も。穏やかな、眠り際であったな。転生の送りは、尊い御仕事。我輩にはできぬ」
「あなたは、墓守りと聞いたが……癒しとはまた違うのか?」
「……未来へと送ってやる癒しとは違う。吾輩の送りは、過去へと安らかに眠らせてやるものである。そういう意味では、少々久瀬殿が羨ましいやもしれぬな」
そう呟き、一拍息を吸って吐く。ドゥアンの表情は、優しく笑っていた。
「…これは、素人目線だが……貴方だからでき、見えるものがあるのでは? 作品も、そう、違わぬのではないかな」
ドゥアンの言葉に合わせて、時計塔の鐘が鳴り響いた。
鐘の音は、どこまでも響いていくような荘厳さと雄大さを感じさせ、舞い散る幻朧桜と合わさり、神秘的かつ、新たな始まりを祝福してくれるようであった。
「帰ってくるのを、待っているぞ。久瀬殿」
「……ああ。待っていてくれ、猟兵たち」
そう答える港の顔には、もう影はなかった。
彼の新しい旅立ちを祝う鐘のは、どこまでもどこまでも響いていくようであった……。
【拝啓。
猟兵の皆様へ。
強い日差しに向かって咲き誇る、一輪の美しい向日葵のように、猟兵の皆様方におかれましてはますますご活躍されていることを、お喜び申し上げます。
以前は皆様方にお救いいただけたおかげで、わたくしも誤った道をやり直すことができ、今ではとある出版社様に拾っていただき、何冊か本を出させていただけました。
実はその内の一冊が、コアなアクションマニアの方々に大きく受けたようでして、大ブレイクとなりまして、近々国民的スタァの○○様主演のミュージカルとして取り上げられることとなりました。
あの黒瀬・渚先生も、わたくしの本を絶賛していただけました。ちゃんと魂が入っているようで良かったと、言っていただけました。
かつて絶縁状態になってしまった友人ともやり直すことができて、今では先生と彼が、わたくしのアシスタントを行ってくれています。
猟兵の皆様方のおかげで、私はこうして、正しく文豪になることができ、友人とも関係を直せたうえ、憧れの大先生がアシスタントについてくれました。
そのお礼にしては味気ないかもしれませんが、ミュージカルの方を見に来ていただけたら嬉しいです。
末筆にはなりますが、皆様方の健康と、ますますの活躍をお祈り申し上げます。
またお会いできる日を、願っております。 敬具。
○○年〇月〇〇日 久瀬港】
桜色の便箋が、やり直せた少年の感謝を伝えた。
時計塔は、壊れて錆びてもまた動く。
止まってしまった過去は動き出し、未来へと進みだすのであった。
大成功
🔵🔵🔵