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わたし達はここにいます

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●わたし達はここにいます
 その場所を見つけた時は、幸運だと思った。
 屋根の残っている建物。無限ではなくとも、当面は生活に困らない物資。それだけでもわたし達にとっては変え難いものだ。
 ここからみんなでやり直そうって、誓った。嵐はわたしからお父さんもお母さんも、お兄ちゃんも妹も奪ってしまったけれど。手を引いてくれる人たちはとても優しくて、家族みたいに思えたから。
 だからきっと、また、できると思ったんだ。
 なんでもは無いけれど、暖かくてささやかな、幸せというものが。

「――どうだ、やつらの様子は」
「相変わらずこちらにご執心さ。少しは浮気してくれてもいいもんだけど」
「こちらも限界が近いって分かっているんだろうよ」
 けれど今、私たちを守るはずの建物は、私たちを閉じ込める檻となっていた。
 もう一度やり直そうって決めてからすぐ、奴らは塞がれた筈の部屋から押し寄せてきた。それからわたし達は……ずっとここにいる。
 残り少ない水と食料を分け合って、いつ諦めるかわからないあれらに怯えて。
「でも、大丈夫だよ。もうすぐ助けが来る。救難信号は受け取ってもらえたんだから、後は耐えるだけだ」
 本当に、なんて言えない。だってみんながそれに縋っているのに気付いていたから。
 それでも、嫌な予感は拭えないんだ。

 ねぇ、ねぇ。
 わたし達はここにいるよ。
 わたし達はここで、生きているよ。
 これからもずっと、みんなと一緒にいられるのかな?

●グリモアベースにて
「舞台はアポカリプスヘル。そこで、一つの拠点が襲われている」
 猟兵達を出迎えた白狼の耳と尻尾を持つ青年、言祝・ことは(海神の御伽噺・f25745)は挨拶もそこそこに早速説明を始めた。
「まぁ、拠点ってもできたばかりのところでさ。これからってところだったんだ」
 そこは、元々は放棄された廃病院だったという。
「そこそこ大きな施設だったみたいだな。建物は二階建てに屋上もついているし、崩れちまっていたが地下に続く階段もあったみたいだ」
 無人になって久しいそこへ集まったのは、嵐に追われた十数人の人達だった。
 命辛々に逃げ延びた彼らは、廃病院に残された物資を頼りに再興しようとまさに意気込んでいたところだという。
 ――しかし。一度声のトーンを落として、ことはは話を続ける。
「そう、物事は都合良く進まないもんだな。病院はあくまで表向きの顔。その建物の真の姿は実験施設だったんだ」
 どんな輩が、何を目的に行なってたことか真実はわからない。その研究さえ、とうの昔に打ち捨てられているのだ。
「問題だったのは、奴らが残した置き土産さ。塞がれていた地下には研究設備があって――そこには、研究に造り出された化物が閉じ込められていた」
 きっかけは、杳として知れない。
 誰かが無理やり地下への道を拓いたかもしれないし、物音が彼らの目を覚まさせたのかもしれない。或いは、ただ来るべき時が来ただけかもしれない。
 結果として、突如として地下から湧き上がったオブリビオンに襲われ、彼らはあっという間に追い詰められた。
「現在は階段にバリケードを作り二階に篭城して、助けが来るか奴らが諦めるかを待っている感じだ」
 しかしそれとて限りはある。
 その上、彼らにとってさらに悪いことに、一匹のオブリビオンが侵入し、ギリギリで保っている均衡を破ろうとしているのだ。
「奴さんは人に擬態し、防壁を崩す機会を窺っている。それが壊されちまえば……中の奴らは数時間ももたねぇだろうな」
 けれど、猟兵なら。
 人に紛れ込んだ敵をいち早く見つけ、来たる最悪を寸前で止めることができる。その上で、彼らの窮地を救うことができるだろう。
「ってことで、今回お前さん達に頼みたいことは三つ。一つは、今言った潜入したオブリビオンの討伐。2つ目は、建物の一階とその周辺を占拠するオブリビオンの掃討、および避難経路の確保。そして最後が敵の首魁の撃破だ」
 拠点の一階に蔓延る敵は力はそれほどだが、いかんせん数が多い。一対多数を意識した、効率的な戦い方が求められるだろう。
 そして彼らを統べる存在は、建物の地下を根城にしている。その為、一階を制圧しない限り大元を叩くことは難しいと思われる。
「ま、簡単な話、敵がいなくなるまでひたすら叩くってだけの話さ」
 また、拠点には今まで彼らを守っていた腕の立つバトルガンナー達がいるらしい。掃討戦ではうまく指示を出せば彼らも力になってくれるだろう。
「せっかく掴みかけた未来なんだ。それを黙って潰えさせるのは、バッドエンドが過ぎるってもんだろう? だからどうか、お前さん達の手でハッピーエンドへと変えてくれよ」
 希望に満ちた語り話は一つでも多い方がいいだろうさ。
 飄々とした態度の中で最後にぽつりとそんな言葉を漏らし、ことはは転送の準備を始めるのであった。


天雨酒
 折り畳み傘を持つか持たざるか、雲との騙し合いの日々が多くなってきました、天雨酒です。
 パッとしない天気なので、せめて物語の中では景気良くバトルと参りましょう。
 ということで、初のアポカリプスヘルでのシナリオになります。純戦系となります。

●戦場について
 全体を通して廃病院内での戦いが多くなります。
 崩落寸前ではありませんが、それなりに風化した建物の為派手な戦闘を行えば壁や天井は壊れるでしょう。
 今後も拠点となれる可能性がある場所のため、なるべ注意して戦ってあげると彼らの今度に繋がるかもしれません。

●第一章
 籠城の要を壊そうとするオブリビオンとの戦闘になります。籠城する人々に紛れていましたが、猟兵が来たのを察すると実力行使に防壁を壊そうとします。なので、現行犯を捕まえて撃破しましょう。
 戦場は建物の二階と一階の間の階段、踊り場となります。

●第二章
 群がる敵をなぎ倒し、拠点の人々の安全を確保しましょう。とにかく数が多いです、わらわらといますのでバシバシと倒してください。
 尚、拠点にはサバイバルガンナー(賢い獣)の方がいますので指示を出せば助力してくれます。なければ二階で拠点の人々を守っています。
 戦場は1階〜建物周辺です。

●第三章
 地下にいる首魁との戦闘です。
 強敵の為、サバイバルガンナーさんは戦闘に参加できません。敵は一体のみですが、心してかかってください。
 戦場は地下の実験施設になります。

●プレイング受付について
 各章、断章を投下してから受付を開始します。
 詳細はMSページ、Twitterを参照願います。

 それでは皆様、良き戦いを。
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第1章 ボス戦 『リクファ・ルシーズ』

POW   :    ReTuning-Beleth
【傷口を自ら開き、強酸の血】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ReTuning-Astaroth
自身の【それまで受けた傷と理性】を代償に、【左手に寄生する悪魔の爪】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【UCの効果ごと切り裂く、飛来する爪】で戦う。
WIZ   :    ReTuning-Focalor
【服から覗く無数の赤黒い悪魔の瞳の開放】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【悪魔の宿った服から伸びた、酸に濡れた触手】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリルファ・ルシーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●開始
 建物屋上へと転送された猟兵達を出迎えたのは、黒く長い毛並みを持つ大きな犬だった。
「ああ、助かった……!」
 尾を振り、それは人の言葉を話した。胴体に専用の銃器を装備していることからも、彼こそがこの拠点を支えていた一人なのだろう。
「正直、私一人では荷が重いと思っていたんだ。君たちが来てくれて心強いよ」
 そして、彼の傍らには幼い少女が縋り付くように寄り添っていた。年の頃は十を少し過ぎたあたりか。少女は突然現れた猟兵たちを見た驚いた様子だったが、自分達が味方であるということを知ると、一歩前へと歩み出る。
「猟兵さん」
 そして少女は真っ直ぐに猟兵達を見渡して、言った。
「こわい人がいるの。ずっといて、さっき、下へ行ったの」
 血の気をなくした顔で、傍の犬の毛並みを握りしめて、それでも少女は訴える。
「良くないことが、きっと起こるよ。お願い、助けて……ください」
 彼女が指し示すものが何であるか、問うまでもない。
 猟兵達は急ぎ、彼らの守護の要へと急ぐのであった。


 拠点に残された人々の最後の砦。
 廃材や家具を寄せ集めて堅牢に作られた防壁の傍に、一人の女が立っていた。
「きひ」
 ずるり、と女だった『皮』が床に落ちた。文字通り女を被っていたそれは、元の姿に戻ると再び笑う。
 白過ぎる肌と髪、赤い瞳は作られた命である証。しかし生まれ落ちると同時に悪魔に魅入られたその瞳に、理性の色は無い。
「きひひ」
 人々が築いた最後の抵抗へ向けて凶器へと変質片腕を振り上げ、それはもう一度歪んだ笑い声を上げた――。
ルパート・ブラックスミス
未来を呑み込みに足元から蔓延る災いの過去、か。
させんさ。踏み躙り更地にしてくれる。

UC【炎抱きて白熱せし鋼肢】起動。
敵が破壊活動に移る前に【先制攻撃】、
味方や防壁を【かばう】為にも距離を詰めて格闘戦だ。

傷口を態々開いてくれるなら好都合。
【カウンター】の要領で放たれる血諸共傷口に爆撃を叩き込む。
【捨て身の一撃】になるが、浴びた強酸はUCで白熱化した四肢で即座に【焼却】してダメージ軽減を狙おう。

後が閊えている。貴様は早急に死ね。



●地獄の釜
 地上へ降りる道をたどりながら、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)はこの状況のことを思う。
「未来を呑み込み足元から蔓延る災いの過去、か」
 まるでそれは、地下深くに存在するという死者の国。そこから地上へ這い出す軍勢のようだ。
 輝く生を嫉妬し渇望し、力なき者達から奪い取る。それでも満たられず、次の命に手を出す。
 そんな、無慈悲な世界、そんな、地獄が、この先に待つ未来など。
「させんさ。踏み躙り更地にしてくれる」
 そう、宣言するのと、彼が防壁へと到着するのは同時だった。
「きひ、ひ――?」
 気配に気付いたそれ――かつてフラスコチャイルドだった少女が動きを止める。
 ルパートの敵意を感じ取り、異形の爪をそちらに向けようとして――少女の身体は真横に吹き飛んだ。
 目が合うことすら侭ならぬ刹那、一息に踏み込んだルパードの回し蹴りが彼女を壁へと叩きつけたのだ。周囲の防壁、そして建物の状況を考慮し、被害を最小限に抑えるが故の格闘戦。
腰に刷いた剣は抜かず、ルパードは両の拳を握りしめる戦闘態勢を整える。
「ぎ、ひ……!」
 背後に幾何かの罅を残して、少女が立ち上がる。激痛を伴う筈のルパードの一撃にも、彼女の表情は崩れなかった。さらに少女は、あろうことか自身の爪でその白い腕を突き刺し始める。
「あは、ははっ……!」
 痛覚など、とうの昔に壊れている様だった。自らを傷つけた少女が嗤い声を上げる。零れ落ちた彼女の血が触れた床をみれば、その箇所は溶け、白く煙が上がっていた。
 あらゆるものを浸食し、溶かす異形の血。それをばら撒きながら、少女はルパードへ向けて突進する。
 自らが傷つくことも厭わず、痛みすら感じず、ただ全てを破壊することにのみ執着する。その狂った有様をルパートは一瞥し、
「――傷口を態々開いてくれるなら好都合」
 真向からぶつかってきた彼女の身体を力技で受け止めた。我武者羅に暴れる少女の動きに合わせて、強酸の血がルパードへと降り注がれる。鉄であろうと鉛であろうと溶かすであろうそれ鎧の内から溢れる熱で焼き棄て、彼女の身体を宙へと投げた。
 無防備に投げ出される肢体。その血が溢れる傷口に、己の拳を叩きつける。
 転瞬、吹きあがる劫火。爆撃のようなそれに零れ落ちる血は蒸発し、傷口は焼き塞がり――初めてそこで少女は驚きの表情を湛えた。
 思わず、といったように後方へ跳ね、距離を取る少女をルパードは睨み、吐き捨てる。
「後が閊えている。貴様は早急に死ね」
 狂気も、悲しみも、絶望も。
 全てを青い火に焼べて、騎士は鉛の身体を燃やしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナハト・ダァト
余リ、建物ニ被害は与えられ無イ、カ

少々難はあるガ、「瞳」で構造ハ把握しタ
問題無ク、行動出来るヨ

施設の地形
崩落した瓦礫や崩れた場所の隙間を利用
変化した体を忍び込ませる場所として
残像を用いながら縦横に
闇に紛れながら動く

酸に対しては
一ノ叡智で血質強化を行い

世界知識、情報収集から酸を中和する組成にタールの身体を武器改造して耐性を得ておく

私ノ、こノ姿はネ
「視る」為に有るノでハ無イ
「視られて」こソ、意味があるんダ

例えそれが、視界の端であろうと
ほんの数瞬、過ぎったのみであろうと

相手が視認すれば発動する

瞳ガ多いのハ好都合
此方モ、よく視えル「瞳」があってネ
弱点ハ、知っているヨ

時にハ視え過ぎるのモ
考え物、だネ


鳶沢・成美
できたばかりの拠点では荷が勝ちすぎる状況みたいですね
とりあえず引き込み役を倒さなければ

多少の暗さは”暗視”で問題ない”闇に紛れる”事で
”目立たない”場所から敵に”全力魔法”で【火雷神道真】を放つ
”誘導弾”の様に敵を”追跡”させれば拠点に対するダメージも最小限に抑えられるでしょう
あえて当たらない軌道から曲げるなどすれば”フェイント”の効果も期待できますね

アドリブ・絡み・可 ””内技能



●忍び寄る
 青い火が燃え尽きた後に降りたのは暗闇だった。
 放棄されて久しい施設だ。照明の類はとっくに壊れているし、なまじ残っているものがあったとしてもそれなりの修復を施さなければ電気など通っていないだろう。
 そんな場所に灯っていた明かりが消えたが故に、造られ士少女の周囲には、暗闇が覆いかぶさっていた。
 そこに、ばちんと。なにかが弾ける音がする。
 一瞬だけ浮き上がる稲妻。それが少女の身体を貫いた。
「ぎ、ぎ……!?」
 音の方向へと視線を向けても、赤い瞳が写すのは薄暗い部屋と闇ばかり。邪魔者の姿は見つけられぬ。
 そうこうしている内に、背後からもう一矢。稲妻が走り少女の肌を焼く。
「道真さん、よろしくーってね」
 それは、物陰に隠れ敵の隙を伺っていた鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)による一撃だった。
 UDCアースの歴史上に残る御霊、その荒ぶる側面を召喚する体でくみ上げた術式で雷の礫を生み出し、少女の注意を引いていく。気付かれぬ範囲内で少しずつ、その歩みの先が防壁から遠ざかるように。
「とりあえず、引き込み役を倒さなければいけませんね」
 彼女が、そして地下の者達がいる限り、できたばかりの拠点にはこの状況は荷が勝ちすぎる。それを打破するためも、一刻も早く少女の姿をした敵を討たねばならない。
 もちろん、建物の被害は抑えつつ、だ。
「ここからが腕の見せ所……ってね」
 そして、闇に紛れ敵を狙うものは成美だけではない。
「全クだ」
 彼の言葉への同意もまた、暗闇から。
 自身の身体をより異形へと変異させ、瓦礫の中に潜むナハト・ダァト(聖泥・f01760)だった。
 彼は自身の「瞳」で建物全体の構造を確認しつつ、そっと息を吐く。
 かつては堅牢であったであろうその材質は、度重なる嵐に浸食され、全盛期の守りを失っている。今すぐどうというレベルではないにしろ、それでも無用な衝撃を与えるべきではないだろう。
「余り、建物二被害は与えられ無イ、カ」
 ふむ、と触手で形を変えた顎の部分をなぞり、ナハトは成美と目配せをする。
「少々難はあるガ……建物の造りハ把握しタ。問題無ク、行動出来るヨ」
 ぬるり、と音を立てるような流れるような移動で崩落した瓦礫の隙間に潜り込みながら、成美へと目配せをする。その視線を受けた成美もまた頷き、雷の礫を少女へ向けて放り投げた。
「それじゃ、いきましょうか」
 その軌道は少女を射抜くためのものではなく、あくまで注意を惹くため。
 敵対者の姿を見つけられないまま、一方的に攻撃を受けていた少女は素早くその光に反応した。雷が来た方向を読むように顔を向ける。
「ド、こだ……!」
 嗤うことしかしなかった少女の口が片言の言葉を吐き、赤い目を光らせる。それは一つだけではない。二つも、三つも。
 敵を探すには、目は多くあった方がいい。ましてや暗闇に潜むやつらならば。
 そんな少女の考えに呼応するように、少女の衣服が広がり、彼女に宿る悪魔の瞳が無数に開いたのだ。
 広げられた異形の視界は、光の跡を追い――そして遂に、物陰に隠れる敵の姿を発見する。人にはおよそ入ることの敵わない筈の隙間に光る、聖者の瞳の光を。
「かかりましたね」
 しかし、それこそが二人の猟兵の狙い。
「――あア、視たネ?」
「ア、ア――……?」
 その瞬間、少女の目が、悪魔の目が、一斉に火を噴いた。
「瞳ガ多いのハ好都合。此方モ、よく視えル「瞳」があってネ、弱点ハ、知っているヨ」
 【八ノ悪徳・貪欲】。敵を喰らおうとしたものはそのものに食い殺される、悪徳の形。
 確実に捕らえたと思った矢先、消失した視界に少女の歪な嗤いは驚愕へと染まる。そこに、ナハトの滔々とした声が響いた。
「私ノ、こノ姿はネ。『視る】為に有るノでハ無イ。『視られて』こソ、意味があるんダ」
 確かに小さな場所に潜り込めるこの姿は、偵察に向いてはいるけれど。それはこの『貪欲』悪徳の一端に過ぎない。
 例えそれが、視界の端であろうとも。ほんの数瞬、過ぎ去ったのみであろうとも。
 相手が視認すれば、この特性は発動する。この、『視た』者は視界が焼き尽くされるという触手の化け物の特性は――!
 視界を奪われ、暴れる少女に向けてナハトの触手が走る。触手で斬り裂き、強酸の血がナハトの躰に降りかかってもその攻撃は衰えない。完全とまでにはいかないが、自身の身体、その血室を酸と中和する組成に変えていた躰は彼女の血に限りなく強い耐性を獲得していたからだ。
「こっちも忘れないで下さいね、っと」
「時にハ見えすぎるのモ考え物、だネ」
 少女の背後を突くように、雷の礫が不規則な軌道を描いて迫り、同時に前方から突き出されたナハトの触手。その姿を遂に知ることなく、少女はその攻撃をその身に受けたのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルゥナ・ユシュトリーチナ
●アドリブ連携歓迎
民間人を守りつつ乱入者を倒せ、と。こりゃ中々難儀な事で。流れ弾に気を付けるべきか…まぁ、そんな必要もないけれど。

こう言うので一番困るのは民間人の中に突っ込まれて、盾にされる事。まずはそれを防ぎましょうか。
敵を発見次第、【覚悟】を決めて吶喊。触手はナイフで切り払いつつ、敵へと肉薄。徒手圏内に捉えたら手でも足でも頭でも良い、【怪力】で掴んで離さない。

酸の触手?近くて防御もままならない?そんなのは端から織り込み済みだっての。
痛み上等、苦しさで思わず掴んだ箇所を握り潰したらすまないね。

とは言え本気でヤバくなったら離脱しよう。その際はPDWの至近距離斉射を叩き込んで手切れ金にしてやる。



●握砕
「民間人を守りつつ乱入者を倒せ、と。こりゃ中々難儀な事で」
 ルゥナ・ユシュトリーチナ(握撃系無気力フラスコチャイルド・f27377)はやれやれとでも言いたげな口調でぼやく。
 背中には無力な民間人、そして前方には凶悪なオブリビオン。数が多く厄介な上に、地下にはさらなる脅威も存在するという。勿論、守りながら戦うという不利は言うまでもない。
 一度均衡が崩れてしまえば混戦は必須だろう。
「流れ弾に気を付けるべきか……」
 攻める上でも、守る上でも。そう状況を分析しかけたルゥナは、大きく息を吐いてその思考を放棄した。
「……まぁ、そんな必要もないか」
 要は、『そんな事態』に陥らせなければいいだけだ。民間人の安全圏は死守する、敵は一匹の残らず殴る。OK、それでいこう。
「こう言うので一番困るのは民間人の中に突っ込まれて、盾にされる事。まずはそれを防ぎましょうか」
 幸い、民間人の中に紛れ込んでいたという敵は防壁を破ろうと目立つ動きをしているというのだから、捜索は容易だろう。
 にぃ、と無気力な笑みを浮かべて、ルゥナは階段への通路を目指した。
 
 
 鬨の声を上げる。
 闇に紛れた猟兵と入れ違いに飛び込んでいったルゥナは、吼えながら敵へと突貫した。勿論、大人しく接近を許すような敵ではない。焼かれた目を抑え、衣服の隙間から再び宿した悪魔を起こし、『瞳』を開かせる。
 その瞳に魅入られたものは、彼女の執着から逃れることを許さない。酸に塗れた触手が少女の服から伸び、愚直に進むルゥナへと向かった。
 装備したサバイバルナイフで、眼前へと迫ったそれを斬り裂いた。続いて足払いをかけてきた触手を飛び越して、上体を捻る。すぐ近くを触手が風を切る音がして、形容できない粘液の匂いが鼻を突く。
「正直キッツイけど……」
 触れたら即座に肉を溶かされる、命がけの鬼遊び。それでも確実にルゥナは触手を捌き、少女との距離を詰めていく。
 度重なる酸に侵され、刃毀れを始めたナイフを投擲。撃ち落とされた触手を踏み潰し、大きく踏み込む。背後から迫ってきた気配は、構うものか。
 右手を突き出し、振れたものを――掴んだ。
「やるしかないよねぇ?」
 捕まえた。
 鷲掴んだ少女の顔を、きつく、握る。少女の白い肌が裂け、頭蓋骨が軋むまで――否、砕け、潰れるまで、異常なまでに特化された握力を以って握りしめる。
「ア、アアアアッ――!?」
 痛みは無くとも、危機は感じ取ったのか。少女が悲鳴を上げ、一斉にルゥナへ向けて触手をけしかけた。
 至近距離から飛び出してくる酸の腕を――ルゥナは今度は避けることをしなかった。
 触手が少女を掴むルゥナの腕をへし折ろうと絡みつく。酸が乳白の肉を焼き、血が零れ落ちる。
 走る痛みを――彼女は、鼻で笑った。
 酸の触手? 近くて防御もままならない? そんなの端から織り込み済みだ。
「痛み上等。寧ろ、苦しさで思わず掴んだ箇所を握りつぶしたらすまないね」
 激痛をかみ殺し、握る力を強める。みし、みし、と音と手の中で鈍い音が響く。
 限界がくるその時――最後の抵抗にと触手がルゥナの胴体を貫きかけ、それを重火器でハチの巣へと変えてやる瞬間まで。
 彼女の手が少女を離すことは、無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン

ワイヤーアンカーを射出し●操縦
●ロープワークで捕縛するように動かし回避行動を取らせバリケード前から遠ざけ

そこまでです
これ以上の狼藉はご遠慮していただきましょう

この場所は今を生きる人々が見出した希望の地、たとえ実情が違っていたとしても騎士として災いを取り除くまで

(この巨体で踊り場、立ち回りでは此方が不利。ですが…退く理由にはなりません)
センサーでの●情報収集で地形を把握し●見切り閉所向けのコンパクトな戦闘動作で応戦

強酸を●盾受けで防御し防壁を●かばいつつ格納銃器での●だまし討ち●スナイパー射撃でUCを傷口へ発射し炸裂させ凍結で止血

ご遠慮いただくと言った筈です!

●怪力での剣の腹の殴打で追撃



●思考は冷たく、魂は熱く
 乳白の握撃を無理矢理振り解いた少女の身体に、鋼鉄の縄が飛ぶ。
「そこまでです。これ以上の狼藉はご遠慮していただきましょう」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が少女へ投擲したワイヤーアンカーを操り、その身体を捕縛しようと試みたのだ。
 冷たい鉄で織られたワイヤーは敵の肌を掠めて裂傷を生み出すも、その行動を戒めることまでは敵わない。人外じみた動きで間一髪でワイヤーから逃れた少女は、焼けて真っ赤に染まった目をトリテレイアへ向けると真っ直ぐに駆けてきた。
(ここまでは、計算の内)
 彼女がこちらの攻撃を回避するのは想定の範囲内。寧ろ先程の狙いは注意を自身に惹きつけ、少女をよりバリケードから引き離すことを目的としていた。
 この建物は、今を生きる人々が見出した希望の地。たとえ実情が違っていたとしても、騎士として災いを取り除くまで。
 己の矜持に従い、トリテレイアは少女の突撃を大楯を以って堂々と受け止めた。2mを超える自身の巨体では、狭い踊り場での立ち回りは圧倒的に不利。それでも退くことは誰でもなく、彼自身が許さない。
 センサーで解析した戦場の広さ、高さを演算装置へと入力し、閉所での立ち回りに適した最適解を優先モーションへと設定する。
 自身の武器と行動が周囲への被害を及ぼさないように、さりとて、敵に最大限の損害を与えるように。トリテレイアは行動を開始する。
 機械で作られた彼の腕が、肩が音を立てる。格納されていた銃器が展開し、無数の銃口が敵を捕らえた。攻撃を邪魔をする盾ばかりに気を取られていた少女は突然現れた凶器にとっさに動けない。
 一瞬の硬直。それが決定打だった。
「ぎッ――」
 立て続けに銃口から打ち込まれる銃弾が、少女の体内に潜り込み、爆ぜる。
 しかし撒き散らされるはずの酸の血の雨は振らず、代わりに赤い氷の破片が周囲に降り注ぐ。
「氷の剣や魔法程の華はありませんが……十分に効くでしょう」
 トリテレイアの打ち込んだ弾丸、その弾薬に仕込まれていた薬剤が白い肌を傷つけると同時に凍結、彼女の傷口と血を凍結させたのだ。
 これではいくら掻いたところで傷口は広がらず、酸の血は彼の身には届かない。少女は悔し気な唸り声をあげ、ならばと傷口へ向けていた異形の爪を振り上げた。
「ご遠慮頂くと言った筈です」
 静かに先の言葉を繰り返し、トリテレイアは一歩下がるだけでその攻撃を見切る。大きく空ぶり、体勢を崩したすきに踏み込み、腹の部分を向けた剣を少女に向けて振るう。
 刃の部分を向けなかったのはただ、酸の血を放出させないため。故に壮麗な騎士剣は純粋な鈍器という武器となり、少女の身体を打ち据えた。
 もう何も、少女が彼の背後にいる者達から奪って良いものなど存在しない。彼女の爪は勿論、その血液からも、何一つ。
 他でもないトリテレイアの機械の躰の、その奥底に燃える騎士の心がそう、誓ったのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロゼ・ラビットクロー
ラブリー(f26591)と
ラブリーのことはラビィと呼び、普通の口調
他の人には敬語。適当でも問題無し

拠点内の戦いか。今回は爆弾は封印だな。
武器は戦車“ラビットモービル”だ。
戦車と言っても大きさはスノーモービル程度。
病院は通路も階段もそこそこに広く、移動に問題は無い。
火器は搭載していないため、攻撃手段は体当たりのみ。

強酸の血は食らわないにこしたことは無いが、
ある程度戦車やパーカー等の装備で受けることも覚悟しよう。
重さとパワーだけなら戦車が有利と見たが決め手に欠ける。
跳ね飛ばす、或いはそのまま押し運ぶ。
可能なら床等に押し付けて一瞬でも動きを止めるのがベストか。
追撃はラビィに任せるとしよう。


ラブリー・ラビットクロー
クロゼ(f26592)と参加
クロゼの呼び方はししょーやくろぜやくろ等気分によって自由に

ししょー
爆弾をフーインするのか
ししょーは約束を守るショーニンだからな
じゃーくろぜを見習ってらぶも火炎放射器はガマン
チェーンソーをぶいーんって振り回すぞ
あれ?バリケード背にされると意外と当てづらいんだ?
おいマザー
当たらないけど?
【当たる様にお願いしてみると良いですよ】
あっ
変な爪攻撃来た
野生の勘で避けようと動き回るん
あんまり動き回り過ぎるとポッケの中のビー玉とむかしのお金を床にばら撒いちゃうかも
でも逆に敵の足場が悪くなっていー感じ
その間にもしししょーが相手の隙を作ったらチェーンソーを振り被るぞ

らぶのお願いを聞いて



●いっしょうのお願い
 身体中にこびりついた氷を忌々しそうに引き剥がそうと試みる人造の少女。そんな彼女の前にゆったりとした足取りで近付くのは、ガスマスクの二人組だった。
「拠点内の戦いか。今回は爆弾は封印だな」
 壁に手をつき、建物の状況を確認していたガスマスクの一人、クロゼ・ラビットクロー(奇妙なガスマスクの男・f26592)はそう判断する。
「ししょー、爆弾をフ―インするのか」
 その言葉に反応したもう一人の小柄なガスマスク、ラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)がぐっと伸びをして、クロゼのことを見上げた。
「そっちのがカンタンなのに?」
「簡単だけど、建物を壊したら意味が無いからね」
 敵を一瞬にして殲滅する爆弾は確かに殺傷能力は高いが、それ故に攻撃の範囲を選べない。使えば民間人の未来の希望となるこの建物もただではすまないだろう。
 そう説明すると、話の内容を理解したのか、はたまた別の理由からか、ラブリーはこくんと素直に頷いた。
「ししょーは約束を守るショーニンだからな。じゃー、くろぜを見習ってらぶも火炎放射器はガマン」
 ズシン、となんとも重量感のある音と共に、ラブリーは持っていた得物をその場に落とした。
 代わりにこれ、と引っ張り出したのは、派手なペイントが施されたチェーンソー。ぶおんとけたたましい音を立て起動したそれを担ぎ、ラブリーは敵へ向けて前進する。
「いってくる!」
「はいよ」
 元気よく飛び出した彼女を見送り、クロゼもまた改めた己の武器を起動し、飛び乗る。彼が飛び乗ったそれは、小型の戦車、『ラビットモービル』。
 建物内と言ってももとは病院だ。通路はそれなりの幅があり、走行には問題は無さそうだ。火器をはじめとした武器を搭載していないのが唯一の懸念だが、ものはやりようというやつである。
 アクセルを握れば元気よくエンジンが応える。
 そのままキャピタルを回転させて、クロゼもまた、ラブリーの跡を追うのであった。
 
 
 大きく振りかぶって、ぶいーん。横に振り回して、ぶおん。
 唸り声のような駆動音を立てるチェーンソーが縦横無尽に宙を飛ぶ。しかし、その動きはどれも大振りな上に、バリケードを傷つけないように、狙いも大雑把。敵はあっさりとラブリーの動きを読み、チェーンソーの刃の軌道からすり抜けている。
「あれ? バリケードを背にされると意外と当てづらいんだ?」
 何度目かの空をきったチェーンソーを見つめ、ラブリーは驚きの声を漏らした。どうしよう、考えたラブリーはポケットから端末を取り出し、マイクに向けて呼びかける。
「おいマザー、当たらないけど?」
 明日の天気も応えてくれる非通信端末、【マザー】の答えはいつもの通り迅速だった。
『当たるようにお願いしてみると良いですよ』
「いや聞いてくれるわけないだろっ!」
「ぎゃん!」
 人口知能の回答に的確なツッコミを入れ、小型戦車に乗ったクロゼが追い付いてくる。ついでにラブリーが悩んでいる間に襲い掛かろうとしていたフラスコチャイルドを華麗に跳ね飛ばして。 
「おー、ししょー。あれ当たらないぞ」
「……今動きを止めるから、ちょっとあれの相手をしててね」
 もんどりうって転がり、それでも不気味な笑顔のまま起き上がった敵をクロゼは横目で確認しながら、ラブリーに指示を出す。
 それを、ラブリーは素直に頷いた。彼がそう言うのだ。きっとなんとかなるだろう。再びチェーンソーを構え、敵の姿を探した。
 その眼前に、血の様に真っ赤な赤い爪が迫った。
「あっ、変な爪攻撃」
 今まで受けた傷の返礼とでもいうように、少女の左手の爪が伸び、チェーンソーごと斬り裂かんと襲ってくる。
 武器で受けるのは不味い、そう直感で感じたラブリーは、無理やり状態を捻り、紙一重でそれを躱した。爪が掠ったパーカーが派手に千切れ、ポケットの中身がばら撒かれる。
 どこかの街の、むかしの硬貨。いろんな世界を写し出す、ぴかぴかのビー玉。それらが軽い音をたてて、床を転がっていく。
 それは、体勢を崩したラブリーへ向けて接近しようとしていた少女の足元を見事に掬い、
「隙ありです!」
 ――見事、クロゼの一撃へと繋ぐきっかけになったのであった。
 不安定な足元に少女が一瞬静止した隙に、クロゼは小型戦車を急発進させる。
 ラビットモービルは小柄な少女の体躯を巻き込み、そのまま近くの壁へと押し付ける。壁と車体に挟まれた少女が暴れ、衝撃で開いた傷口から酸の血を撒き散らすがクロゼは怯まない。
 食らわないに越したことはないが、多少の損害は覚悟の上。それよりも、少女の動きを止めることの方が重要だった。 
 クロゼは理解していた。重さとパワーだけなら戦車が有利な反面、装備がない分決め手に欠ける。だからこれは、あくまでさらに次の一手、それに繋がる布石。打たれた球をさらに加速し、打ち返すように、叫ぶ。
「ラビィ!」
「はーい」
 クロゼの合図にラブリーが得物を振り上げ、飛び掛かる。
 そう、当たらないのならこうすればいいのだ、多分。
「らぶのお願いを聞いて?」
 これからちゃんと、チェーンソーを真っ直ぐ振り下ろすから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユスト・カイエン

嫌いなんだよ。理不尽に弱者の踏み躙られる光景はね。
キミもそのままずっと大人しくしていてくれれば良かったんだけどね。
今からでも止めにしないかい?
……まあ、無理だろうな。何にせよ、此処までだ。
おまえたち以上の理不尽を見せてやる。思い知れ、これが暗黒の力だ。

【読心術】で【殺気】を読み取り擬態している敵を察知、【第六感】にて攻撃を【見切り】、飛び散る強酸を建築物に被害を出さないように【念動力】で空中に固定、或いはフォースセイバーによる【武器受け】で切り払い、消滅させる。間髪を入れずに繰り出すUC暗黒卿の雷光。雷【属性攻撃】の強烈な電撃で【マヒ】させつつ【継続ダメージ】を与えて動きを鈍らせていく。


向坂・要
建造物損壊の現行犯、ってとこですかね
なんて軽口叩きつつも油断なく

それ(バリケード)を壊されちゃ困るんでね
相手とバリケードや建物(特に支柱など)との間に割って入るように位置取り
難しそうならUCで生み出した不可視の陽炎纏う蝶の群れに宿らせた重力で足止めしたり斥力で阻んだりと防御
相手の攻撃により放たれる触手も同様に重力で床に縫い止めたり押し潰したり宿した毒で蝕んだり

積極的に前に出る人がいりゃその露払い役もさせてもらいますぜ

戦闘中は第六感も生かし全体を把握するよう心がけ、バリケードの外の様子や目の前の敵によるバリケードや建物への攻撃が無いかを中心に警戒しておきますぜ

アドリブ
絡み歓迎



●それは繰り返すもの
 まるで吐き気にも似た気分だった。
 鋸の刃を袈裟懸けに受けた少女は、血を吐きながらゆらりと身を起こした。ぼたぼたと傷口から血が零れ落ち、強酸が床を焼く。
「ぎひ――」
 その様子に、にやり。少女が歪な笑みを見せた。
 どうせやるならもっと、派手な方がいい。赤い瞳が歪むと、己の爪で胸元の傷を大きく抉る。零れる酸の量はさらに増し、壊れていく建物に少女は鈍い声を上げて笑った。
 ――しかし、それも長くは続かない。彼らが見過ごす筈がない。
「嫌いなんだよ」
 感情を押し殺したユスト・カイエン(終の紅刃・f24320)の声が響き、少女から吹き出していた血が文字通りぴたりと『止まった』。
「理不尽に弱者に踏みにじられる光景はね」
 球体となり、空中に留まる酸の血液。自身の念動力により少女の捨て身の攻撃をとどめたユストは、片手にフォースセイバー携え、それらに近づいた。
 一閃。
 無言で振るわれた三つの光刃に、瞬く間に血液の球体が消し飛ぶ。
「まったくでさぁ。さしずめ、建造物損壊の現行犯ってとこですかね」
 苦虫を噛み潰したような表情のユストに同意する声は、飄々とした態度をあくまで崩さない向坂・要(黄昏通り雨・f08973)のもの。
「これを壊されちゃ困るんでね、邪魔させて貰いますぜ」
 ユストとは対照的に、軽い口調ではあるものの、その身体はいつの間にか少女とバリケードの間を滑り込む様に位置取っている。僅かに上げられた右手と、油断なく敵の動向を見る紫の隻眼。いつ敵が強行突破に移ろうとも、決して逃しはしない。要の纏う気配がそう告げていた。
 二人に挟まれる形となった少女は、交互に彼らの顔を見ながら少しだけ迷ったような素振りを見せる。
 当初の目的であった防壁の破壊は難しい、酸の血は悉く防がれる。逃走は――きっとまだ、選択の中に浮かんですらいないだろう。
 その視線や動き、挙動の一つ一つを観察し、その心の内を読みながら、ユストはなぁと少女へ声をかけた。
「今からでもやめにしないかい?」
 もしも彼女が、ずっとそのまま大人しくしてくれていたら。地下で醒めることのない眠りにつき、永久の夢の中に居続けてくれたのなら。こんな現の悪夢は訪れなかったではないか。
 傷だらけの少女が、真っ直ぐにユエトを見返した。その白い唇がゆっくりと動き出す。
「――きひひ!!」
 零れたのは、やはり変わらず、歪な嗤い声だった。
「……まぁ、無理だろうな」
 少しだけ、ほんの少しだけ何かを期待していたユエトは息を吐き、ゆっくりとフォースセイバーを構える。
 きっともう、彼女には無いも残ってないのだ。
 正気を失くしたその身体にあるのは、純粋たる破壊衝動。壊して、破壊して、壊して、こわして。それが過去だとしても、未来だとしても関係ない。
 ただ壊す為に彼女は痛みを捨て、傷つくのを厭わずに暴れ続ける。
「あちらさんには碌に聞こえちゃいねぇでしょうや」
 見かねた要が、だから、と促そうとするのをを視線で制する。言われなくとも、分かっている。
「何にせよ、此処までだ」
 それが戦闘再開の合図となった。
 少女が悪魔の瞳を開き、服の隙間から酸に塗れた触手を伸ばす。それを撃ち落とすのは、要の呼び出した地の力を宿した蝶の群れ。
 陽炎によって周囲の景色を揺らめき、歪ませ。重力を意のままに操る精霊の蝶は触手を地へと縛り付け、飛び散る酸を斥力で弾き飛ばす。揺らめきに乗じて伸ばされた蛇腹剣を走らせて、お返しというようにその身を崩壊へと導く毒を少女の身体に撃ち込んだ。
 重なる傷に、流れ過ぎた体液。そこに追い打つように毒が回り、少女の身体が揺らぐ。
 そこに、ユストが踏み込んだ。
 暗黒面の力を凝縮し生み出した闇色の雷が掌に集める。敵を動きを封じるのではなく、敵の命をかき消すためにあるそれを、腕を振り下ろすと共に少女へ向けて放出。連続した破裂音が響き、稲妻が人造の少女の身体を貫く。
「――ッ」
 傷から滲む血が沸騰し、口から血泡が零れる。肌が焼け焦げ、服から伸ばされた触手がのたうち回った。
 例え痛覚が無かったとしても、致死に至る攻撃は本能的に察するのだろう。或いは、刻一刻と動かなくなっていく身体に危機感を覚えたのだろうか。とうとう少女は踵を返し、ユストから遠ざかろうとする。目指すのは雷が届かない、範囲の外。
「おっと、逃がしませんぜ」
 その肩に、ずしりと。要の蝶が乗った。
 重量を操る精霊はまるで巨大な鉄であるかのように少女へ圧し掛かり、逃れようとする身体を押し潰す。少女は何としても逃げようともがくが、その間にも暗色の雷は彼女の身体を焼いていく。
「折角だ。もっとゆっくりしていきなせぇ」
「思い知れ、これが暗黒の力だ」
 途切れぬ雷光に、不可視の引力。止まらぬ攻撃に、逃れられない縛め。
 嵐と共にやってくる存在、それ以上の理不尽を叩きつけるように、二種の檻は敵を閉じ込めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト

いつか別れる日が来るとしても
何も、二度も奪われることはねえ
「よく耐えた」そう言ってやりてえもんだ
さて、こっちへは
わざわざ拠点の奴らから離れてくれた協力への感謝、拳で伝えようじゃあねえか
敵UC一発目は前方へ範囲を絞った『覇気』の衝撃波である程度相殺を狙い後は耐性で凌ぐ。肉が多少溶けたところでな
手の内が分かれば二度三度と喰らってやる義理もねえ、覇気で制御する『枷』の鎖を先の衝撃波に紛れ撃ち出しておき【選択UC】
杭打ちで視界や次の行動を阻害。分と言わず秒も隙ができりゃあいい
踏み込んで殴るには事足りる
その際、拳に覇気を纏わせ直接酸に触れねえようにはする。こいつは前座だ。じきにお仲間も続くから待ってな



●今ではないと聖者は告げる
 出会いがあれば、そこに別離があることは必然である。
 例えばそれは時間。例えばそれは命の定め。永遠など存在しないがゆえに、いつかヒトは別れの日がやってくるのだ。
 けれども。
「何も、二度も奪われることはねぇ」
 上階へ残した人々を思って、レイ・オブライト(steel・f25854)はそう呟いた。
 暗黒の竜巻に幾度となく喰われ、蝕まれたこの世界であっても、一方的に踏みにじられ続けて良いものなど、この世にありはしないのだと。
「なぁ、あんたはどう思うよ」
 かつての事情など知る由もない。けれど今は紛れもなく、奪う側として立つ少女にレイは問いかけた。
 少女の返答はない。ただ、血まみれの身体を酷く動かしにくそうにしながら、歪な笑みをこちらに向けるだけだった。
 彼女の過去は、果たして奪われた側だったのか。初めからその為の存在だったのか。
「どちらにしろ――わざわざ拠点の奴らから離れてくれた協力への感謝、拳で伝えようじゃねぇか」
 小さく電流が迸る覇気を全身から昇らせ、レイは少女の『別れ』を叩きつけるべく走った。
 強酸の血がレイを襲う。幾度となく開かれた傷口を晒し、飛ばされた血は、まるで赤い散弾のようだった。これに対して、レイは纏う覇気を前方へと固め、拳を振りぬく。それだけで武器として成立するほどに練られた気は衝撃波を生み、赤い弾丸を消し飛ばす。
 足に焼けるような痛みを感じた。見れば、飛び散った酸に脚の一部の肉が解け、骨が覗いている。
 覇気が相殺したのは、あくまで彼の前方のみの話。その全てを消し去ることは当然できず――同時に、多少の被害は想定内。
 肉の一つや二つ溶けたところで、大きな問題ではない。何故なら彼はデッドマン。死してなおしから厭われるもの。今この時を動けるのなら、全ては些末なことだった。
「だが、手の内が分かれば二度三度と喰らってやる義理もねぇ」
 その言葉と共に、レイの周囲に光が灯る。
 衝撃波を繰り出すと同時にばら撒いた銀の鎖が仄かに光を帯び、周囲へと浮き上がったのだ。鎖は震え、澄んだ音を立てて砕け微細な破片へ、銀の欠片は白金の杭へと変じ、一斉に少女へ向けて突き立てられた。
「ぎっ……!?」
 その目に、服に、足に、手に。次々と杭が貫き、少女の行動を戒める。杭の疵に比例して零れる酸の血は増えていくが、そんなものでレイは今更止まらない。
 酸の被害は脅威には成り得ない。この攻撃も、分とは言わず、秒も隙ができれば上出来だ。
 それだけあれば――踏み込んで殴るには事足りるのだから。
 そして殴るには、右腕一本あれば十分だ。
 覇気を全てを収束し、右手のみで纏う。攻防一体となった拳を握りしめ、踏み込みと同時に前へ。
「オオッ――!」
 白き杭は少女に逃げる事を赦さず、そして酸の血と触手は覇気を前に少女を守ることを許さず――その拳は真っ直ぐに、少女の腹から背中までを貫いた。
 ごふりと、最期に一度、酸の血をレイに向けて吐き――少女の躰は力を失う。
「こいつは前座だ。じきにお仲間も続くから待ってな」
 光を失っていく赤い瞳を閉じさせ、レイは少女だったものを床へと横たえる。
 この拠点にも、そこに活路を見出す人々にもいつかは終わりは来るだろう。
 しかし人々は既に、十分奪われた。二度目はもう、起こさせはしない。
 そんな彼らに与えられるべきなのは、ただ「よく耐えた」という労いの言葉だけでいいのだ。
 その為に、とレイは猟兵達の手で護られたバリケードへと視線を遣る。幸い、バリケード、及び周囲の損害は最小限で済んでいるようだった。

 しかしその奥、放棄された空間へと耳を澄ませば、低い唸り声と共に何かが壊れるような異音が響いている。
 ――奪還の戦いは、これから始まるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『改造屍人『インテグラルアーム』』

POW   :    暴虐たる捕縛者
【巨大化能力】を使用する事で、【全身に触手】を生やした、自身の身長の3倍の【第二形態】に変身する。
SPD   :    マルチプルインテグラル
【無数】【の】【触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ポイズンテンタクルス
【触手】から【粘液】を放ち、【それに含まれる麻痺毒】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●千曳
 無事バリケードを守り切った猟兵達の元に、一つの影がやってくる。
「なんてことだ……」
 驚きの声の主は、自分達を出迎えてくれた大型犬、この拠点を守護する賢い獣の戦士である。
「まさか内側から突破を図るとは……」
 彼は戦闘の名残が残る場を一瞥し、全てを悟ったのであろう。己の不甲斐なさを悔やむように尾を垂らし、項垂れた。
 しかしそれも一瞬のこと。すぐに頭を上げると、切り替えるように猟兵達を見渡し、自らの代わりに守り切ってくれた彼らに礼を述べる。そして、彼は建物の下層へとつながるバリケードと猟兵達を真剣な面持ちで見比べた。
「……君たちは、進むのだろう。この先へ、我らの未来の為に」
 頷く猟兵達に、獣の戦士は自らも力になりたいと申し出る。
「拠点として間が無くても、制圧された場所であっても、ここは我々の拠点、道案内くらいはできるだろう。無論、戦闘でも足手纏いにはならないつもりだ」
 アサルトライフルを背負った獣は、覚悟を決めた目でこちらを見た。
 彼は自らの力が猟兵達に劣るということを十分に知っている。こちらの判断には異を唱えることは無いだろう。
 もし彼にできることは何も無いと断わったとしても、彼は冷静に己の為すべきこと――即ち守るべき人々の元で守護に回るだけだろう。
 ひとまずは様子を見るだけでも、と案内役を買ってでた獣と共に、猟兵達は防壁を超えて死者の集う下層へと向かうのであった。
 
 
 オオォォ……――。
 ヒトとも、獣とも定かではない唸り声が響く。
 地上へと降りた彼らを出迎えたのは、死者の地獄であった。
 見渡す限りの、死と屍。生者など等に潰えたその空間は、力尽きた順番に捕食者から被食者へと成り変わる。
 繰り返す死の喰らい合いの中で変化したのか、それとも端からそう、造られていたのか、それらの姿は既に人の形を放棄している。見上げるほどの巨体に、以上に発達した筋肉。そして触手が蠢く腕。弱者を探す知性無き目は十や二十ではない。
 それらの群れが、バリケードを超えたとたん一斉にこちらへと向く。
 久方ぶりの新鮮な肉が来たというように。嬲り甲斐のある玩具がきたというように。
 悍ましく蠢く触手からは毒を、獣のように並んだ牙の隙間からは唾液を零しながら、屍人は一斉に猟兵達へ向けて襲ってくるのだった。
鳶沢・成美
これはこれは、なかなか厳しい状況ですね
まあ、拠点よりこちらを優先するなら、面倒くさくなくていいと思っておきますか
相手が数で攻めてくるのならば……

やはり”おびき寄せ”て”範囲攻撃”で数を巻き込みたいですね
”全力魔法”の【氷雪竜巻】です
”早業”で間髪を入れずに”2回攻撃”で追い打ちをかけていきましょう
それに凍えてかじかめば”マヒ攻撃”になる事も期待できます

可能ならサバイバルガンナーの方にマヒした敵を攻撃してもらえるとありがたい
そういえばお名前伺うの忘れていた気がしますね、これはしまった

数が多くても、落ち着いて確実に削っていけば何とかなるもんですよ




トリテレイア・ゼロナイン
(賢い動物戦士に)
この数からよくも人々を今まで…
その辛苦、無駄にはいたしません

肩を並べ共に戦うのです、お名前を教えていただいても?
敵を『一網打尽』にする為、ご助力を願います

敵陣へ脚部スラスターの●スライディング移動で接近
格納銃器の●スナイパー目潰しで機先を制し、●怪力で振るう剣や左腕に接続した大盾殴打で攻撃しつつ移動
四方八方の触手や巨躯からの攻撃をセンサーの●情報収集で●見切り回避もしくは●武器受けでの斬り飛ばしや銃器の●武器落としで迎撃

狙いは注意を牽きつけ敵を集める事

お願いします!

合図で彼に遠距離攻撃を指示
充填していた左手のUC解放
陽動で対処が一瞬遅れた敵群逃さず光剣で●なぎ払い確実に一掃



●Ready
 化け物たちが蔓延る領域に一歩足を、踏み出す。
「これはこれは……」
 予想を上回る惨状に、鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は小さく眉を寄せ呻く。
 到着時に見た避難民の様子から鑑みるに、この階層を放棄してそれほど長い期間は経っていない筈である。
 それでいて、これほどまでの数。
 右も、左も、前も。背にしているバリケードと、共にきた仲間以外、動くもの全てが化外の肉しか見えない光景。拠点より視界に映る自分達を優先するあたり、面倒ではないのがささやかな救いだろう。
 一体どれほどの勢いで、それらは湧き上がってきたというのか。そしてこの嵐のような暴力から人々を逃がすことが、どれほどの至難であったか。
「この数からよくも人々を今まで……」
 自分達が到着するまでに起きたであろう苦難を想像し、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は獣の戦士へ向けて素直に感嘆の言葉を漏らした。
 勝利を前提にしていないとはいえ、只でさえ戦力差は圧倒的。その上、非戦闘要員を誘導しながらの戦いは想像を絶するほどに困難であっただろう。
「大したことでは無いさ。勝てなくとも、誰も死ななければよい。それが私の仕事だからね」
 二人よりやや前へ出た位置にいる獣の戦士は、化け物達へ威嚇の構えを見せながらその言葉を否定した。そして、やや歯切れが悪そうに、言葉を続ける。
「……それに、その仕事も完遂できたとは言い難い」
 体毛に覆われた尾は、力なく垂れ下がったままで。言外に含まれた意味に、二人はそっと視線を落とす。
「……それでも。なかなかに状況は厳しくても、『絶望的』ではありませんよ」
 敵の数は多く、こちらの人員は少ない。奪われたものがあり、失ったものも多い。
 それでも、まだ人は生きている。望みを失っていない人々は確かに、助けを求めている。
 だから絶望は、此処にはいない。
「ええ、貴方のその辛苦、決して無駄にはしません」
 成美の言葉を継ぐように、トリテレイアも宣言した。
 希望が潰えていないのなら、戦う理由は充分だ。それを独りで護り切った、知恵ある獣自身の為にも。
「敵を『一網打尽』にする為、ご助力を願います」
 成美とトリテレイアの呼びかけに、獣は驚いたように一度振り返り。
「ああ……」
 愛用の銃を構え直し、力強く頷くのであった。
 
 
「そういえば」
 指先で氷の粒を遊ばせながら、成美は思い出したように傍らにいた獣へと問うた。
「お名前を伺うのを忘れていた気がしますね。これはしまった」
 格納スペースから抜いた刀と、それに繋がるケーブルの調子を確かめながら、トリテレイアも成美の言葉に賛成するように獣へと視線を向ける。
「そうですね。肩を並べ共に戦うのです。教えて頂いても?」
 到着してから挨拶もそこそこに戦闘へ赴いたのだ。無理もないといえばそうだろうが、仲間の名も知らないというのは騎士としても、戦士としてもあるまじきことだろう。
「む……」
 対する犬の戦士は、言われるまで気付かなかったのか、やや罰が悪そうに片耳をはためかせる。そして改めるように体ごとこちらへ向き直ると、真っ直ぐに二人を見上げ、自身の名を告げる。
「私としたことが失礼した。私はオネス、オネス・ハウンドだ。」
「オネスさんね、よろしく」
「オネス様、共に戦いましょう」
 成美は軽い口調を崩さず、トリテレイアは騎士たる手本のように丁寧に。
 そう挨拶を交わしたのを最後に、三人はそれぞれの為すべきことを開始した。
「お相手願いましょう!」
 気合の声と共に、敵に斬りかかっていったのはトリテレイアである。脚部のスラスターを展開、機動力を確保した彼は、床の上を文字通り滑りながら、格納銃器の引き金を引く。その銃口は、移動の中でも違えることなど起こらない。ばら撒かれた弾丸は屍人達の目を射抜き、その視力を奪った。
 そうして敵の先手を封じたところで銃を投げ捨て、腰に吐いた剣を手に取り、構える。
 その目の前で、屍人の肉が盛り上がった。ただでさえ人並み以上の躰が膨れ上がり、二倍、三倍へと膨れ上がっていく。腕だけに生えていた触手が全身の至る所から伸び、手当たり次第に周囲を破壊しようとする。
「いいえ、させません」
 その、異形の一つへ向けて。トリテレイアは剣を振りかぶり、叩きつけた。
 ――ッ!
 地上の生き物の何にも例えられないような咆哮が響いた。視界を潰された屍人が、声の元へと群がるも、トリテレイアは意も介さず剣を振るう。伸びた触手を切り飛ばす。腕の名残だったような肉塊を寸前で躱し、横から入ってくる別個体の突進を盾で受け止める。
 盾越しに剣を突き立てる。屍人の赤い飛沫がトリテレイアの盾を汚した。
 それでも尚、異常肥大化したその身体を止めることはできない。無数の触手と筋肉に守られた心臓へは、並大抵の攻撃は通らないようだ。
 構わずに、トリテレイアは剣を振るう。
 ――なぜなら、彼の狙いはあくまでも注意を惹きつけ、敵を集めることにあるのだから。
「お願いします!」
 騎士の言葉を合図に、風が起った。
「舞え、氷の竜よ……なんてね」
 成美が放った氷の竜巻は、トリテレイアに殺到していた屍人を瞬く間に屍人を呑み込んだ。風に混じった氷の礫が屍人を撃ち、肥大化した肉を削り取っていく。
 相手が数が攻めてくるのなら、こちらは連携で迎え撃つまでだ。
 トリテレイアが惹きつけ、敵が纏まったところを成美の攻撃で一気に薙ぎ払う。一度の攻撃でより多くの敵を巻き込み、敵の数を一気に減らしていくのだ。
 成美がさらに竜巻を重ね、冷気に晒された屍人の動きが徐々に鈍くなっていく。無理矢理振り解こうとした敵へはオネスが銃弾を叩き込み、氷の領域へ押し戻した。
 そうして屍人達の動きが完全に封じられた時、トリテレイアはケーブルで自身と繋がれた『剣』を抜いた。
「……充電中断、刀身、解放!」
 柄だけの形状をしたそれを起動すれば、充電されていたエネルギーが放出され、巨大な刃の形をとって。
 たった一太刀、薙ぎ払う。
 凍てついた屍人に、それを受けるほどの力は残されていない。成美の竜巻が止んだ時、そこに残されたのは真っ二つに両断された屍人の名残だった。
「数が多くても、落ち着いて確実に削っていけば何とかなるもんですよ」
 ほら、この通り。
 開かれた突破口に三人は互いの顔を見合わせて笑い、先を急ぐのであった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト

さっきのはあんた(犬)ひとりで勝てる相手でもなかった
生きてるだけで貢献できる機会は増える。今とかな
つうことで力を貸してもらう。オレが引き付ける間に奴らを、まあどこでもいい、別方向から射撃してもらおうか。そっちに注意が逸れた瞬間に頭なり急所をこっちで潰す
なに、外しはしねえ
【Storm】
身体能力を上げる。敵中へ飛び入り挨拶代わり蹴っ飛ばしとく
便利な腕で羨ましいこった。幾つか分けてくれよ。触手は此方から掴み取り属性攻撃(電気)を流し粘液ごとまとめて焼き切る
そんな具合で犬と連携。オレに引き渡すまでもなく、弱った敵を減らしてくれてもいいがな

……で、少し寝る
あんたの次の貢献は目覚ましだ。頼りにしてるぜ



●山風と成り
 開かれた突破を起点に猟兵達は進んでいく。
 進むべき道は一つでは無い。根源たる地下への道を拓く必要もあるし、万が一のためにも、外へと続く道も確保しなければならないだろう。無論、前へ攻めることばかりを考えてはいられない。戦いの隙に乗じて民間人が襲われてしまえば、それこそ元の木阿弥だ。
 攻め入り、同時に守る。その全てをこなすためにも、まずは敵全体の数を減らす必要があるだろう。
「おい」
 そんな中、異形の屍人を前に怯むことなく進もうとするオネスに、レイ・オブライト(steel・f25854)は静かに声をかけた。
 立ち止まった獣は何の用だと振り返る。真っ直ぐに見上げてくる黒い瞳に、レイはただ、思っていたことをぶつけた。
「さっきのはあんたひとりで勝てる相手でもなかった」
 レイが指したものの存在に思い当たり、オネスの目が見開かれる。
 彼は侵入者に気付かず、仲間を危機に晒していたと気にしていたと己を責めていたが。なまじ気付いてしまえば、彼の命はなかっただろう。
 だから、いいのだと彼は肯定した。彼がここまで、あれと戦わずに生き延びていたことを。
「生きているだけで貢献できる機会は増える。……例えば、今とかな」
 つうことで、力を貸して貰おうか。
 最後の方は、彼にしては冗談めかした軽い口調で言って、少しだけ口の端を吊り上げる。
 感じたことを、そのまま言葉にしただけだ。全てが正しく伝わったかはわからない。
 けれども、ゆるりと振られた彼の尾を見る限り、悪い意味で取っている訳ではなさそうだと思えたから。レイは満足して走り出す。
「オレが引き付ける間に奴らを、まあどこでもいい。適当に撃ってくれ」
「心得た」
 心強い返答を背後で受けながら、群れの中へ飛び込んだ。初手は挨拶代わりに、屍人の横っ面に跳び蹴りを叩き込む。転がるように着地し、顔を上げればお返しとばかりに触手が降ってきた。
 毒の粘液を纏った触手がレイを絡め捕ろうと伸びるが、それを遮るように銃弾の嵐が横から割り込む。レイの陽動の隙、屍人の死角へと回っていた獣の戦士の銃撃が、群れ居る触手を撃ち落とし、同時に屍人の身体を撃ち抜いていく。
 熟練の戦士による、正確無比の射撃。殺傷力は低くても、それは屍人の気を一瞬でも引くには十分だ。
「上等だ」
 それを見届けて、レイは己の奥深くに埋め込まれた動力装置に電流を走らせた。
 ヴォルテックスエンジン、最大出力。
 嵐の中心は此処に――【Storm】。
 動力装置に火花が走る。レイの纏う覇気に電流が迸る。火花と熱、荒ぶる雷の勢いのままに駆け、屍人の腕――新たに生え始めた触手を掴み取った。
「便利な腕で羨ましいこった。幾つか分けてくれよ」
 麻痺の毒など触れた端から覇気が焼き消している。気にも留めず、触手が纏う粘液を介するように、ありったけの電撃を叩き込んだ。屍人とレイ、二人の躰を青白い光が走り、稲妻が肉を焼いていく。
 そうして消し炭と成った肉塊を殴り飛ばし、さらに奥の屍人へ。怯んだ隙に飛び込んで、雷の拳を叩き込む。
 目を奪うのはレイ。虚を突くのはオネス。銃弾と雷の打撃は瞬く間に屍人を撃ち抜いていった。
 それは、ほんの一分程度。けれども、全てを薙ぎ払い蹂躙する、災害のような怒涛の時間。
「……少し、寝る」
 やがて、最後に屍人の頭炉握りつぶしたレイが、全身から白い煙を上げながら深く息を吐いた。
 過度な負荷をかけすぎた機械は熱を発し、自壊する。この死した身体に埋め込まれた動力装置もまた然り。
 活動限界を迎えた躰を床に投げ打ち、レイは視線だけを動かし傍に座る獣へと依頼した。
「あんたの次の貢献は目覚ましだ」
 頼りにしてるぜ。そう言い終えるや否や、意識は闇の中へと沈んで行って。
「それは大任だな。必ずや生き延びて……やり遂げよう」
 獣の言葉を最後まで聞くことなく、死した身体は束の間の眠りへついたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルゥナ・ユシュトリーチナ
●連携アドリブ歓迎
正直、対多数戦闘って苦手なんだよねぇ…ほら、手って二つしかないじゃん?(脳筋的思考)
となるとまぁ、こうするしかないかなぁと。

戦場を一瞥して敵の位置を把握したら、スモークグレネードを投擲して視界を奪う。
後は記憶を頼りに接近して補足、頭なり首なりを掴んで捻り潰す。そのまま足を止めずに動き回り、触手から逃れつつ敵の各個撃破を狙うよ。足跡とかに耳を立てる。
こんな格好だけど、残念ながらその手のお触りは禁止だからねぇ。無理やりなお客さんには痛い目を見て貰おう。

もし捕縛された時にはナイフやPDWで切断、煙幕が薄れたら再度スモークグレネードを使用。兎に角足を止めずに握り潰し続けようかね。



●One more time?
 あーあ、と敵の姿を認めながら、ルゥナ・ユシュトリーチナ(握撃系無気力フラスコチャイルド・f27377)は気だるげな声を上げる。
「正直、対多数戦って苦手なんだよねぇ……ほら、手って二つしかないじゃん?」
 ゴットハンドたるルゥナが得手とする戦法は、己の身体を駆使した肉弾戦。いくら動きが速かろうと、力が強かろうと、ルゥナは一人しかおらず、敵を殴り殺す手は限られている。
 至極単純、力任せに頼った話ではあるが、それは決して覆らない事実。
 だから、とルゥナは困ったように溜息をついて両手を上げて。
「――となるとまぁ、こうするしかないかなぁと」
 その手の中に隠し持っていたスモークグレネードを床へと放った。
 硬い物が床を転がる音がして数秒。小さな破裂音と共に白煙が巻き起こり、屍人の視界を白く染める。
 無論、視界を塞がれたのはルゥナも同じこと。しかし彼女は迷うことなく煙の中を進み、右手を突き出す。
 指先に触れる固い肉の感触。小さな肉が蠢く悪寒に耐え、それを掴み取った。
「――ッ!」
 間近で化け物の悲鳴が上がる。引き戻した彼女の右手は、自身の倍近くもある化け物の首を鷲掴みにしていた。煙が周囲の景色を塞ぐ前、事前に何が起こるのかを知っていたルゥナだけが、敵の位置を把握し、その場所を知っていたのだ。
 急所を掴まれた屍人が何かを叫ぶが、構わず右腕に力を籠める。指先が屍人の肉に食い込み、その奥にある固いものを砕き、捻り潰した。
 手の中にある肉が弛緩したことを確認すると、すぐさまそれを投げ捨て、ルゥナはその場を飛び退いた。同時に、彼女が今いた場所を無数の触手が打ちのめした。
(さっきのヤツの声を頼りに、ってところかね)
 煙の中、屍人達が近づく足音に耳を澄ませながらルゥナは腰に佩いていたナイフを引き抜く。
 白煙がゆらりと動く。左から迫る、風を切る音。聴覚が捕らえた情報に身を任せ、ナイフを音の方角へ向けて切り払った。
 手応えと共に、ルゥナを捕らえようとしていた触手が斬り裂かれ、粘液と血を撒き散らし煙の中へと引っ込んでいった。
「こんな格好だけど、残念ながらその手のお触りは禁止だからねぇ。無理やりなお客さんには痛い目を見てもらうよ」
 言いながらも、ルゥナは移動をしながら、記憶と気配を頼りに敵へと接近する。
 足は止めない。敵の姿を捕らえられないのは同条件。それなら、あとは事前の情報と場所の読み合いが勝負を決める。わざわざ敵に位置を知らせたまま立ち止まるほど、ルゥナは親切でも愚かでもない。
 延びた触手の出所へ、手を前に出したまま足に力を籠める。放たれた矢を思わせる様な加速で敵へと接近し、捕らえる。
 掴む。握り潰す。飛び出して、へし折る。抑えて、粉砕する。
「ああ……」
 やがて白煙が薄れ、敵の姿が朧げに見えだした頃。
「おかわりはいかが?」
 腰に括りつけていた追加のスモークグレネードを部屋の中央まで蹴り飛ばすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロゼ・ラビットクロー
ラブリー(f26591)と
ラブリーのことはラビィと呼び、普通の口調
他の人には敬語。適当でも問題無し

今度はパワータイプの敵か。
この小型戦車だと力押しは通じないだろうな。
相手の得意分野では戦わず、戦車の速度で翻弄する。
出来れば外で戦いたいかな。
とにかく回避に専念しよう。

(NPCの)ガンナーには隙を見て狙撃してもらいたい。
物語のゾンビというと不死身感あるが、
この世界のゾンビは撃ってればそのうち死ぬからね。
実際見てきたから多分間違いない。

ラビィには後部座席に乗って攻撃に専念してもらおう。
チェーンソーが当たればゾンビでもサメでもだいたいの敵は死ぬ。
聞いた話だけども。


ラブリー・ラビットクロー
クロゼ(f26592)と

ししょー!
敵ばっかり!どーするんだ?
中は味方に任せてらぶ達は外へ出るのん?
おっけー
らぶ達に任せるん!
マザーとししょーが一緒ならなんでもできるんなん!
【次世代のネットワークシステムはあらゆる事を可能にーー】

凄いスピード
らぶは耳で聴いて触手をチェーンソーで切ってくのん
らぶの目じゃ周りを全部追いきれない
らぶそんなに沢山色んな事ムリ
でもらぶにはくろぜがついてる
ししょーがらぶの代わりに避けてくれるから
らぶはししょーの代わりにゾンビやっつけるんだ

巨大化した気配には火炎放射を使うなん
ここは外
ゾンビはおっきくなっていーかもしれないけどらぶだって燃やしていい
あ!ししょー!右からくるん!



●場所により突風注意報、にわか雨にもご注意ください
 見渡す限り、敵、敵、一つ飛ばしてまた敵。
「ししょー!」
 一階へと辿りついたラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は、視界一杯の敵の姿に堪らず声を上げた。
「敵ばっかり!」
 何故か興奮した様子のラブリーには対照的に、クロゼ・ラビットクロー(奇妙なガスマスクの男・f26592)は小型戦車に騎乗したまま、自身の装備と屍人の戦闘力とを比較する。
「今度は見るからにパワータイプの敵、か……」
 対してこちらは、防衛からの連戦。この規模の戦車では、先程のような力押しの戦闘は不可能だろう。
 かといって、現在地は未だ室内の中。階段よりは広いとは言え、最大速度で走るには狭すぎるし、何より派手に動いては建物の破損に繋がってしまう。
 相手の得意分野で戦うつもりは毛頭ない。けれど、こちらの得手も活かせない。
 それならば答えは一つ。
「よし、決めた」
「お? どーするんだ?」
「外に出よう」
「おー!」
 
 
 ラブリーを後部座席に乗せたクロゼは、控えていた獣の戦士に片手をあげた。
「それじゃ、合図と同時に突っ切るから援護よろしくお願いします」
 エンジンは充分に暖まっている。クロゼがアクセルを切れば、愛車はいつでも彼の命令に応えてくれるだろう。
「中はみんなに任せて、らぶ達は外へいくのん?」
「私からも頼みたい。外に敵がいたままでは、何かあった際に彼らを逃がす事ができないからな」
「おっけー。らぶ達に任せるのん!」
 オネスの依頼に、クロゼの後ろに座っていたラブリーが元気よく片手をあげる。
『本日のお天気を表示致します――』
 ポケットのスマホ、の中のビックマザーも、今日も調子はばっちりだ。
 では、出発!
 スタートの合図と共に、オネスの銃口が火を吹いた。
 その隙に、クロゼはラビットモービルを全速前進。主の命令を待ち望んでいた機体は直ぐにトップスピードに乗り、建物の外へと向けて二人を運ぶ。
 追い縋る様に、立ち塞ぐ様に、進路を邪魔してくる敵には、オネスの銃撃がこれでもかと叩き込まれた。無数の鉛玉が屍人の肉に穴を開け、屍人の勢いを削いでいく。
 物語のゾンビというと、不死身という印象が強いけれど。血を撒き散らしながら追いかけてくる屍人の気配を感じながら、クロゼは考える。
 この世界のゾンビは撃ってればその内死ぬ。不死身なんてもの、たとえ骸の海にだって存在しないのだ。
「実際見てきたから多分間違いないよ」
 そう、例えば目の前で力尽き、憐れ戦車に踏みつぶされた奴のように。
 背後から飛ぶ銃撃に助けられながら、風を切る。瓦礫を避けて、死体を乗り越え隙間を通り、目指すは最速、最短のルート。
 そして最後の瓦礫を乗り上げて、着地をすれば。
「外だ—!」
 光が視界を焼き、ラブリーの歓声があがった。
「こっからが勝負だぞ、舌を噛むなよ!」
 それでも、クロゼはハンドルを握る手を離さない。外に出ただけで、敵の数が変わるわけではない。広い分密集こそはしていないが、あふれ出たのか屍人の数は室内と同様に多い。さらに後ろからは、二人を追いかけてきた手負いの化け物。
 獣の援護はここまでは届かない。けれど、愛車を縛る制限はもう存在しない。
 宣言した通り、此処からが勝負所だ。
 ハンドルを切り、土煙を上げならカーブする。無論、アクセルは全開のまま。速さを取り戻した車体が、屍人を振り切った。
 右へ左へ、腕の隙間を、或る時は巨大化した屍人の股の下を、クロゼは縦横無人にかけながら、速さで敵の群れを引っ掻き回していく。
 その戦車の上で、ラブリーは耳をすませていた。
 風圧の中で偽神兵器である兎の耳がぴょこりと揺れる。代わりに、ガスマスクの下の目はぎゅっと瞑っていた。
 駆け抜ける風が髪を攫う。ばさばさとピンクの服が音を立てる。
 クロゼの全力の速さの中では、ラブリーの目は全ての景色を追いきれない。見て聞いて、攻撃して避けて、なんて沢山の色んな事、自分には不可能だ。
(でも、らぶにはくろぜがついている)
 例えラブリー独りではできなくても、自分がししょーと呼ぶ彼が、代わりに避けてくれるから。ラブリーは彼の代わりにゾンビを倒せばいいのだ。
 だから、問題なんてない。
『次世代ネットワークシステムは、あらゆる事を可能にします――』
「マザーとししょーが一緒になら、なんでもできるなん!」
 手に馴染んだチェーンソーを振り上げる。耳が捕らえた気配を頼りに、近づく触手を斬り裂いて、屍人の身体を真っ二つへと変えていった。
「チェーンソーが当たればゾンビでもサメでもだいたいの敵は死ぬ。聞いた話だけれどね」
 血が噴き出す音、肉が倒れる音、そして、クロゼの宣言。それら全てを置き去りにして、クロゼとラブリーは疾走した。
 前方に気配。膨れ上がり、巨大化する『音』に、ラブリはチェーンソーを片手に持ち変える、もう一つの武器――火炎放射器を突き付けた。
 さっきまでは封印していた武器だけれど、ここでは話は違う。ここは外。思う存分走ってもいいし、炎だって敵以外何物も傷つけない。
「ゾンビはおっきくなっていーかもしれないけど、らぶだって燃やしていいんだぞ!」
 引き金を引くと同時に、ウサギが炎の息を吹き付ける。圧倒的な火力は見る見るうちに巨大化した屍人を炭へと変え、止めとばかりにクロゼの戦車が轢き殺した。
 大きな衝撃に、クロゼにしがみついたラブリーの耳が再び動く。
 敵はまだまだ一杯。そしてクロゼもラブリーも、マザーもまだまだ元気一杯。
「あ、ししょー! 右からくるん!」
「ほいきた」
 派手なドリフト音を立ててカーブする車体から、チェーンソーが矢の如く吹っ飛んで屍人へと突き刺った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
場違いだ。ここは地獄では無い。
黄泉路の案内ぐらいは務めてやろう。
続きは向こうでやるがいい。

【地形の利用】の為、獣の戦士から【情報収集】。
欲しいのは建物の構造上最も頑強、かつ敵が数体一度に入り込める空間。
場所を見繕えたら、敵の間合いを【見切り】つつ短剣の【投擲】などで【挑発】し【おびき寄せ】る。
屋内戦では大き過ぎる図体や得物は邪魔になる。
密集した状態で巨大化なんぞすれば互いが邪魔で身動きがとれまい。

とはいえ無理に暴れられては建物が心配だ。

UC【理異ならす凍炎】起動。
凍る鉛を地走らせ敵に這わせ氷結【属性攻撃】による束縛【グラップル】。
その巨体を凍結させたら大剣で粉々に砕いて始末していく。





●紅蓮獄
 此処は地獄のようだった。
 死の集まる場所。根の国から湧き上がる、希望を呑み込む絶望の形。圧倒的な暴力で無力な人々を引き潰す、無慈悲な亡者達。
「――場違いだ」
 それらを一瞥して、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は吐き捨てた。
「ここは地獄では無い。お前達がいるべき場所で、ある筈がない」
 此処はいつかの、希望の地である筈だ。故に、この場にそれらがのさばっていい理由などある筈がないのだ。
 故に。
 ルパートは手に持っていた短剣を、屍人の一人に投げつけた。
 何の変哲もない只の刃物でしかないそれは屍人に致命傷を与えるには不十分。しかし、屍人達の気をこちらに向けるということに限っていうのなら、それは充分の効果を発揮した。
 一体がそれに気付けば、つられたように隣のそれも目を向ける。その動きに気付いたものも同様に彼らに倣って。
 向けられた敵意に屍人達の視線が次々とこちらへと集まっていく。それを確認したルパートは、躊躇いなく踵を返し、走り出す。
「ついて来い。黄泉路の案内くらいは務めてやろう」
 その声を理解してか、または愚かな餌が逃げ出したと認識してか。屍人達もまた迷いなくルパートを追いかけていく。
(大部屋を抜けて――廊下を抜けた先の、扉の奥)
 重みのある足音が背後から迫るのを感じつつ、ルパートは事前に犬の戦士、オネスから伝えられていた情報を反芻する。
 ルパートが彼から求めたのは、建物の構造。そして、自分の目的に適った条件の場所。
 大きく拉げ、崩れかかった扉を蹴り飛ばし、目的の部屋へと転がり込んだ。
 足元で割れたガラス瓶が音を立てた。破り捨てられた袋の中身はとうに消え去り、棚は倒れ元の役目を果たしていない。
 それは、倉庫として使われていた部屋だった。本来はおそらく医薬品等の物資の保管庫だったのだろうと彼は言っていた。そこをずっと食糧をはじめとした倉庫として使用していたのだと。
 長期間の保存の為に頑強に作られた部屋。かつ敵が複数一度に入り込める、広すぎない屋内。ルパートはおびき寄せた屍人達引きつれ、部屋の奥へ奥へと入り込んでいった。
 只人の体格であるルパートはともかく、屍人達にとっては充分とは言えない広さの部屋だ。お互いの動きを妨げあい、自然とその動きは鈍くなっていく。満足に動けない苛立たしさから、化け物が咆哮を上げた。
 そこに追い打ちをかけるようにルパートの短剣が閃く。
 オオォオ――ッ!!
 刃で片目を抉られた屍人が叫び、巨大化を発動させた。
「愚か者が」
 それこそが、ルパートの狙いだった。
 通常の姿でも身動きに支障が出る部屋だ。その身を倍以上へと変じてしまえば、満足に身動きなどとれる筈もない。強引に動けば仲間を潰し、攻撃を喰らった理性無き屍人は本能のままに暴れ、巨大化し、お互いの動きを奪い合う。
 地形を利用し、こちらの消耗を最小限に抑えつつ損害を与えるルパートの策。
「……とはいえ、無理に暴れられは建物が心配か」
 部屋全体が大きく振動したのを見て、ルパートは嘆息する。そして己の鎧の内から溢れる鉛を急速冷凍させ、床へと地走らせる。
 鉛が満足に動くことすらできない彼らへと届くのはあっという間だった。敵の足元を捕らえたルパートは、己の一部を媒体に氷結の能力を発動させ、屍人たちを凍結。完全なる行動不能へと陥らせる。
 あとは手に持った大剣で、氷像と化したそれらを砕いていくだけだ。
「続きは向こうでやるがいい」
 残るのは至極簡単な、作業でしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユスト・カイエン
犬くんは下がっていたほうがいい。
この戦いが終わってからも此処を守るつもりなら、厄介事は僕たちに任せておけ。……避難民たちに何かあっても心配だからね。

ただ生きるだけ、其処に在るだけの者を僕は否定しない。
それでも、彼らを喰らい尽くそうというのなら、僕は戦う。
此処から先は、今を生きる者たちと過去の残骸との生存競争だ。
未来に続く道筋は、この剣で斬り拓く。

「殺気」を「第六感」で「見切り」、「武器受け」で触手を払う。敵が巨大になるのなら、僕を相手取ってはその巨体こそが仇となる事を知るがいい。【封雷剣】にて、敵の神経系を「マヒ」させ動きを止める。身動き出来ない巨体など、最早ただの大きな的でしかない。


ナハト・ダァト
そウだナ…賢イ君にハ、人々の安全ヲ頼むヨ。
少々、踏み込むにハ危険ナ迷宮ヲ、展開すルからネ。

屍人を閉じ込める為に迷宮を構築
閉じ込めた集団の魂を個体ごとに入れ替える事で、混乱を狙う

シかシ、本能デ戦ウ相手ダ。
此方ノ作用ガ、寧ロ本命だヨ。

入れ替え、支配下に置いた魂を作り替える事で、肉体そのものに変化を及ぼす迷宮の能力を発動

そウだナ…触手ノ無イ姿ニ、変えテおくカ
葦の様な植物
魚類、哺乳類
凡そ武器と呼べる部位を身体構造として持たない生物の象に作り替え、
迷宮の素材として組み込んでいく

後ハ、広げルのみダ。

操っていた酸に対抗する耐性を持つ迷宮の素材として活用しながら
展開範囲を広げて制圧を行っていく



●存るということ
 屍人の数が減ってきた頃合いを見計らって、ユスト・カイエン(終の紅刃・f24320)とナハト・ダァト(聖泥・f01760)は地下へ至る道を目指していた。オネスの案内に従い、封鎖されていた通路の入り口へと差し掛かる。
 目的はこの先にあることを確認したユストは、屍人達の動きに注意を払いながら獣の戦士へ向けて静かに提案した。
「犬くんはもう下がっていた方がいい」
 何故、と弾かれたように顔を上げ聞き返すオネスに、ユストは静かに首を振り、言葉を続ける。
「この戦いが終わってからも此処を守るつもりなら、厄介ごとは僕達に任せておけ」
 それは、この場所の未来の未来を思ってのこと。
 たとえ目の前の障害を払ったとしても、この拠点に住み続ける以上、次の災厄はいつか訪れる。猟兵達は手を貸すことはできるが、それでもずっと居続けることは不可能だ。
 力なき人々の安全の為に、自分達の救助の意味を在り続けさせるために。力ある者であるオネスに怪我を負わせるわけにはいかないのだ。
「確かにそうだが……」
「そウだナ……それなラ賢い君にハ、人々の安全ヲ頼むヨ」
 尚も釈然としないオネスに、ナハトはついと触手を上へと向けた。
「数が減っタとは言え、マダ油断は出来なイ。護衛が不在でハ彼ラモ不安だろウ、ドウカ傍で安心させて上ゲて欲シイ」
 守るべき民間人のことを上げられ、言葉を詰まらせるオネス。ナハトはその様子をゆったりと見守り、それ以上の言葉を添えなかった。
「……了解した。これ以上はキミたちの侮辱にあたるだろう」
 やがて、オネスは観念したように溜息をつき、元来た道を引き返していった。
 何度も振り返るその背中を見送りながら、ナハトはやれやれと息を突く。無事に聞き分けてくれて助かった。
「少々、踏み込むにハ危険ナ迷宮ヲ、展開すルからネ」
 きっと彼はそう言っても納得はしないだろうけれど。万が一、巻き添えにしてしまえばそれこそこの拠点の未来に関わる。
「其レでは意味が無イだろウ」
 やがて獣の姿が完全に見えなくなったことを確認して、ナハトは己の異能を解放した。
 【九ノ悪徳・不安定】。
 彼を中心に生まれた迷宮が、敵ごと通路を呑み込んでいく。
 それは、あらゆる肉体と魂をさ迷わせる異空間。影が見つめた精神は微睡みに揺蕩い、己の肉体を抜け出て徘徊を始める。もと来た道が同じ道とは限らない、以前とは異なる器に収まった心は拒絶に狂い、混乱へと身を堕としていった。
「――シかシ、本能で戦ウ相手ダ」
 それでも、元より彼らは理性亡き者。狂乱の中でもその足は、腕は止まることはない。
 だからナハトの本来の本命は、迷宮のもう一つの作用にあった。
 低く唸る屍人。その姿がどろりと崩れる。
 融け落ちた肉の下から覗くのは、魚の尾ひれ。腹からは葦の葉が突き出し、足は細枝のような鳥のものへ。立つ事すら侭らなくなった屍人はその場に倒れていく。
 ナハトの悪徳の迷宮が及ぼすもう一つの効力は『改変』。彼の支配下に置いた魂、その器を変質させ、迷宮の壁へと取り込んでいく。
 例えばそれは牙を抜かれた哺乳類。陸では呼吸すら不可能な魚の鰓。翼の折れた鳥のようなもの。一つ一つ丁寧に、屍人の肉を凡そ武器としての身体構造を持たない生物へと変えながら、ナハトは迷宮の奥底へと彼らを誘っていった。先の戦いで造り上げた耐性は残存している、滴り落ちる酸が迷宮の壁を傷つけることは、ない。
 その中でまだ、藻掻く屍人がいた。
 歪な羽を与えられ、触手は全て腐り落ち。それで生に足掻く過去の骸は己の身体を肥大化させ、迷宮に抗う。
 そこに忍び寄るのは、終わりを齎す紅刃の影。
「……ただ生きるだけ、其処に在るだけの者を僕は否定しないよ」
 それは、ユストが送る屍人達への敬意。彼らがただ、在るだけならば、そこでひっそりと息づくだけの存在であったのなら。ユストは彼らを狩るようなことはしなかっただろう。
 けれどここは、人々が見出した希望の地だから。屍人達が生きようとする彼らを喰らい尽くそうとするのなら――ユストは戦う。
 倒れるような屍人の突進を先読みし、紙一重で避ける。新たに生えた触手を剣で切り払い、幾多もの生物の残骸が突き出た巨体を駆け上った。
「僕を相手取っては、その巨体こそが仇となることを知るがいい」
 魔剣を振り上げる。電流を纏う刃を振り下ろす先は、敵の首の、人ならば脊髄に当たる部分。非殺傷モードへと切り替えた魔剣がその肉を傷つけることはない。ただ深く、その深部へと入り込んで、止まる。
 ――そして内部から、高圧電流を以ってその神経を焼き切った。
 動くことを殺された巨体など、最早ただの大きい的でしかない。無情な電撃は断末魔を上げる事すら赦さず、屍人をユストの止めの一撃を待つだけの存在へと変えた。
 これは、戦争だ。
 刃越しに命を絶つ手応えを感じながら、彼は思う。
 此処から先は、今を生きる者達と過去の残骸との生存競争。そこに恨みはなく、慈悲もなく。ただ勝ったもののみが、生き残ることを許される。
 ならば、ユストは未来の者達の為に剣を振るおう。
「未来に続く道筋は、この剣で切り拓く!」
 無限に続く迷宮の中、ユストは次の敵目指して電を走らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
まぁこんなのがいちゃ、くつろげそうにありやせんねぇ

建物とそこの頼もしいお仲間への被害は極力抑えておきたいところで

夜華を護衛も兼ねて犬の兄さんの側へ
オレより闘い方って意味でもいい見本でしょうしね
道案内は任せますぜ

【念動力】や武器による【地形を生かした】【範囲攻撃】【毒】による【属性攻撃】にUCを併せ

兄さんの他にも建物も可能限りは【庇い】たいところ

なぁに
動けなくても視線は届きますでしょ?

ま、痛いのは嫌なんで可能な限り【見切り】や【カウンター】決めたいですがね

アドリブ
絡み歓迎



●四文字にはまだ早く
 まさに後ろ髪を曳かれるような、という表現がぴったりだと思った。
「お戻りですかぃ?」
 来た道を戻ってくるオネスを見つけ、残兵の相手をしていた向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は敢えて軽い口調で話しかける。彼に気付いたオネスは顔を上げ、二階の護衛に戻ると返す。その振舞いは努めて普段通りを意識しているようだが、力なく下がった尾が見えてしまってはその本心は筒抜けだ。
「そう気落ちしなさんなって。頼もしいお仲間への被害は極力抑えておきたいおきたい所でさぁ」
 苦笑を浮かべつつ、気遣いにとかけた掛けた言葉に、獣はじっと床を見つめる。
「いや……彼らの言うことが正しいのは理解している。歯がゆいのは、私自身の力不足だ」
 同じ武器を手に取るものとして、何か思う所でもあるのだろうか。その様子を興味深そうに眺めていた要だったが、ふと思いついた妙案に笑みを浮かべた。
「……それじゃ、ちょいと俺と上の拠点まで同伴といきませんかぃ?」
 どの道、敵はまだ残っている。拠点に戻るにしても、まさか彼らを引き連れたままにいかないだろう。彼を無事送った上で数を減らす協力を仰げるのなら、一石二鳥だろう。
「まぁこんなのがいちゃ、くつろげそうにありやせんからねぇ」
 そうと決まれば話は早い、というように羽織っていた要の上着が形を変え、夜色の狐の姿となって床に降り立つ。新たに表れた小さな獣はオネスを見上げると尾を振り、傍らに寄り添った。
「護衛も兼ねて、ではありますがね。同じ獣のよしみだ、ついでに闘い方の見本を見せてやってはくれませんかぃ?」
 代わりに露払いは任された、というように要は彼らに先んじて一歩前へ出る。
 屍人達の出鼻を挫くように、その足元へ向けて鞭を振るった。戦闘と暴動の跡が色濃い場所だ、お世辞にも足場は良くないし、周囲には瓦礫があちこちに転がっている。
 その中の一つを鞭で弾き、屍人達の顔へ向けて撃ち出した。そうして視界を塞いだその隙に、毒を仕込んだ鞭の先で一気に薙ぎ払い、それらの力を削いでいく。
 続けるようにオネスが発砲し、弾丸と共に飛び出した影の狐が喉元を喰い裂いた。立て続けの攻撃を受け、ゆっくりと化け物が仰向けに倒れる。
 ――その後ろから、真新しい触手が飛び出した。
「――ッ!?」
 なんてことはない、邪魔をしていた同胞が倒れるのを待って、新しい個体がこちらに向かって攻撃を仕掛けたのだ。そう理解はできたが、攻撃直後の不意打ちに流石に反応が送れてしまう。
 滴る液は相手動きを麻痺させ、その活動を鈍らせる毒。その延長にあるのは、弾を撃ち尽くした直後の獣の戦士。
 ああ、それはいけない。けれど、共に避けるには間に合わない。
 だから要は、その身をあっさりと獣の前に晒した。
 彼を庇い、麻痺毒をまともに被って倒れ要に、オネスが悲鳴じみた声を上げるのをどこか遠くで聞きながら。
 溜息をついて、彼は目の前の触手を『視』遣った。
 例えこの身が砕けても。毒により四肢が言うことをきかなくなったとしても。
「なぁに。動けなくても、視線は届きますでしょ?」
 ならば、問題なんて何もない。
 眼帯に隠された右目の視線。それを向けられた屍人の頭から炎が上がる。突然生まれた熱に慌てて触手を戻して消化を試みるも、夜色の尾が走り、異形の腕を切り落とす。
 その間に、やれやれと要は立ち上がり、少しだけ動かしにくそうに鞭を構え直して。
「痛いのは嫌なんで、出来るだけ避けたかったんですがねぇ」
 燃え広がり、火達磨と化した屍人の躰の奥深くに致死の毒を植え付けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ゾンビジャイアント』

POW   :    ライトアーム・チェーンソー
【右腕から生えたチェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ジャイアントファング
【無数の牙が生えた口による捕食攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    レフトアーム・キャノン
【左腕の砲口】を向けた対象に、【生体レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ゼロへと至る始まり
 その始まりはなんであったのだろうか。
 屍人を殲滅し、地下へと降りた猟兵達が目にしたのは、始まりであり、すでに終わった場所だった。
 事前の情報の通り、そこは研究所の体を為していた。棚は倒れ、薬品の入った瓶は割れている。残された機材は壊され、再び動くことは無さそうだった。
 荒らされた形跡は色濃いものの、内部を観察していく内に、朧げながら此処がどういう場所であったのかを推測することはできる。
 誰かが言った。此処は何かを生み出す為の場所だったのだろう、と。
 理から外れた命。何かを生み出す為の、或いは壊す為の。かつての人々によるエゴから始まり、そのまま止まってしまった場所。
 その最奥、割れた水槽が並ぶ部屋の先で、それは猟兵達を待ち構えていた。
 一際大きい水槽は無惨に砕かれ、辺りに硝子の破片を散らしていて。周囲には屍人のものと思しき肉片が散らばっている。
 その姿は、ただ、ただ――歪。
 その体躯は地上にいた屍人の巨体よりさらに一回り。屍蝋の色をした皮膚からは、骨のような、牙のような突起が無数に生えている。両の腕の先、掌から生えるのは赤く錆びた鉄の武器。
 それが叫び声を上げる。身体のあちこちの亀裂から。中枢に付けられた、巨大な顎から。
 これこそが屍人達の中枢。封じられし地下に眠る、災厄の要。
 全てが無となったこの地に、新たな希望を見出す為に。
 過去に淀みし罪の澱を、無へと帰すために。
 猟兵達は各々、戦闘に向かうのであった。
鳶沢・成美
さあ、あとひと踏ん張り……しかし酷い場所ですね
事情が許すならコンクリとか流し込んで埋め立てたいくらいだ
まあそれはそれで怨念とか怖そうだけど

”早業”の”先制攻撃”での【風神旋風縛】を”全力魔法”で使用
まずは動きを止めましょう、そうすればただの的ですから
正面切っての殴り合いはしませんよ、僕はそういうキャラじゃないので

敵のレーザーはいかに命中率が高かろうとも、撃てなければないのと同じです
うまく封じられるといいなあ……




ユスト・カイエン
お前たちに罪はない。お前たちを生み出した者にこそ、罪はあるんだろう。
……けれども、この場所から復興をやり直そうとする彼らに罪はない。……そのためにも、既に終わったお前には退場してもらう。怨みも淀みも、せいぜいこの一戦で存分に吐き出し消えていくが良い。

【第六感】によって攻撃を【見切り】、【念動力】によってチェーンソーの回転数を抑え込みながら、セイバーによる【武器受け】で切り払う。
大振りの一撃を往なしたならば、フォースオーラを叩き付けて敵の巨体を【吹き飛ばし】て強引に隙を作り、フォースセイバーの【鎧無視攻撃】を叩き込み、斬り捨てる。

その因果は此処で終わりだ。
今日から此処は希望に満ちた場所になる。



●彼岸の中で
 安全地帯は守られた。蔓延っていた悍ましき屍人も、残党の数はもはや数える程度。
 さぁ、あとひと踏ん張りだ、と鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は気を引き締めた。
 対峙するのは、白い巨躯を持つ異形の屍人。こいつさえ倒してしまえば、この拠点の危機は防がれるだろう。
(といっても、そんな簡単な話では無いでしょうけれど)
 おそらく一対一に於いては圧倒的に敵の方が上。油断をすれば、制圧されるのはこちらの方だろう。
 内心でそう分析する成美の気配を察知したのか、屍人が動いた。
 牙と、骨と、肉。その隙間に申し訳ばかりに埋め込まれた眼球が成美へ向けられる。その視線が絡む、その前に成美は走り出す。
 力任せに薙がれた刃物の腕を飛び越える。数センチ下を肉塊が通る、それだけで巻き起こる風圧が成美の頬を打った。
 正面切っての殴り合いをするつもりなぞ、毛頭ない。前衛は成美の得意とするところではないし、何より自分のキャラじゃない。そのまま足を止めず、転がるようにその間合いから抜け出す。
「しかし……酷い場所ですね」
 その途中、割れた水槽の残骸が視界に映り、思わず口をついてそんな言葉が出てしまった。
 それは成美の本心だ。事情が許すのであれば、コンクリートを流し込んで、埋め立ててしまえればいいのに。そんなことすら思ってしまう。
 そうすればもう、此処はなかったことになる。二度と誰も立ち入れず、二度と何も這い出さない。初めからなかったように、ゼロに戻してしまえればどんなに良いだろう。
「……なんて、そんな勿体ないことはできませんか。それはそれで、怨念とか怖そうだし」
 浮かんだ考えを、成美は自身で否定する。
 蓋をしてしまえば終わり、なんて、世界はそんなに都合のよく出来てはいないのだ。
 過去も、未来も。そして、今も。
 床を手について、振り向きながら立ち上がる。
 近接が届かなければ、次はどうする? ――決まっている、遠距離の攻撃に切り替えるまでだ。そんなの、至って簡単なこと。
 だから予測できた。存分に、全力で、此方に向けられた砲口へ先手を打って風の魔法を叩きつけられた。
「僕は、こういう方が得意な性質なんで、っと……!」
 旋風が起こる。目には見えぬ縛めが彼の手から放たれ、砲口へと集まっていた生体エネルギーを霧散させた。
「どんなに命中が高かろうと、撃てなければ無いのと同じことです」
 そして、と続ける言葉に従うように、旋風はその威力を増していく。
「うまくいくといいんですけれど……」
 不安げな成美の声とは裏腹に、不可視の枷が屍人の左腕に嵌められる。その次は右、その次は足。己の命を対価とした戒めの力は、確かに今ひと時、屍人からその身体の自由を奪いとった。
 いかに巨大で頑強な肉体を持とうとも。動けなければ、それは只の的と同義。
「充分だよ」
 その隙に、赤と黒のローブに身を包んだ小柄な影が屍人の躰を駆けあがった。
 より早く、より高く。白い皮膚を踏み台とし、ユスト・カイエン(終の紅刃・f24320)はその身を宙へと躍らせる。
「お前たちに罪はないよ。お前たちを生み出した者にこそ、罪はあるんだろう」
 一瞬だけ湧いた感傷は、知性なき彼らに対しての同情か。
 けれどすぐに、ユストはその感情を抑え込み、オーラを纏った両手を振り上げる。裂帛の気合と共に叩きつければ、さしもの巨人も怯んだ様子を見せた。
 地上で這いまわっていたあれらは、そして目の前に居るこれは、只造られただけだ。彼らは本能のままに生きているだけ、そこに害意も悪意もたしかに無い。
 ……けれども、この場所から復興をやり直そうとする彼らにもまた、罪は無いのだ。
 命が存在できる場所は限られている。人も、獣も、化け物も、ただ生きているだけで、その場所を争わなくてはならないのだ。
「……その為にも、既に終わったお前には退場してもらう」
 此れも、彼も、ただ生きる為だけだ。故に、抵抗するならば存分にするがいい。
 風の戒めを振り払った異形が吠える。右腕のチェーンソーが唸りを上げて稼働し、ユストの身体を両断せんと振り抜かれる。
 大振りの攻撃、その軌道を読み、体を捻る。髪の毛数本と、黒いローブの裾が刃物に巻き込まれて微塵となった。
 それでもまだダメージには至らない。続けざまに振るわれる刃物を、今度は魔剣を己の前に翳すことで受け止める。回転する刃と光の刃が噛み合う。削り裂く凶器に、念動力を以って逆らい威力を殺した。
 そうして相手の攻撃を押し留めた一瞬に、ユストは残っているオーラの全てをぶつける。重低音が響き、屍人の巨体が傾ぐ。
 強引に生み出した隙に、魔剣を構え直す。
「恨みも澱みも、せいぜいこの一戦で存分に吐き出し消えていくが良い」
 彼の振るう剣は、禁忌とされる暗黒の力。 
 その技、決して人目に触れるべからず。――然らば、一度晒しながら場、その者は必ず命を絶やせ。
 秘匿の誓約を代償に最大出力となった光刃を水平に構えて。屍人の分厚い肉の壁を貫かんと、魔剣を突き入れる。
 内腑まで届く確かな手応えと、化け物の悲鳴。敵に大きな損傷を与えたことを悟ったユストは、体勢を立て直すべく得物を手に一度下がる。
「……因果は、此処で終わりだ」
 そして今日から此処は生まれ変わるのだ。
 人々の希望に満ちた、新たな場所に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロゼ・ラビットクロー
ラブリー(f26591)と
ラブリーのことはラビィと呼び、普通の口調
他の人には敬語。適当でも問題無し

距離を取って戦いたい相手だけど
あのレーザー砲がなあ…
仕方ない、今回は戦車は無し。
徒歩で対応する。
レーザーより早く動くのは無理でも
射線を予測して避けることはできるからね。
戦車乗りながらだとちょっと無理。

武器は戦車のトランクから出したニードルガン。
壁も貫通できないであろう弱っちい武器だ。
金属製の矢には小さな羽がついていて妙な軌道で着弾する。
装填した薬剤は筋弛緩剤。
敵に通用するかどうかについてだが、
奴は魔術で動く骨の兵士等とは違う。
筋肉で動く兵器なら効くはずだ。
ほんの僅かな時間、動きを止められればいい。


ラブリー・ラビットクロー
クロゼ(f26592)と

ここ、らぶも良く見た光景だ
壊れた計器に割れた水槽
らぶも気づけば水槽の中で生まれた
あれ?
もしかして
らぶもニンゲンじゃなくてあいつと一緒…なん…?

い…今はそんな事考えてる場合じゃねーのん
地下は太陽の光もきっと入らない
真っ暗かも
マザーナイトモード!
【ナイトモードを起動しました】
ライトも点けてらぶとししょーを照らして
【任せてください。】
ししょー!見えたん!
みんなでセカイを守るんだ

チェーンソー使っていーけどらぶだって使っていい!
でもちょっと怖い
あんまり近寄りたくないから火炎放射器の炎を時折短時間にボッボッて放ってけんせーするのん

らぶはだいじょーぶだよね?
白いゾンビにならないよね?



●ウサギの夢は
 敵から少し離れた位置で小型戦車を止め、クロゼ・ラビットクロー(奇妙なガスマスクの男・f26592)は久方ぶりに地面へと降り立った。
「仕方ないけど……今回は戦車は無しかな」
 後ろに乗っていた相棒を降ろしてやりながら、一つ、溜息をつく。
 外で存分に暴れた後だ、再び屋内へと入ってしまえば、多少なりとも窮屈さを感じてしまうが、それは誤差の範囲。制限される、という程でもない。
 それでも、クロゼには一つの懸念があった。
「あのレーザー砲がなぁ……」
 控えめに、はっきり言って厄介だった。いくら自慢の戦車でも、光の速さにはとてもではないが追い付けない。それならば、小型戦車以上に小回りの効く徒歩の方がまだマシだった。
 たとえ速さはレーザーに劣っても、射線を読み、予測することができれば回避できる見込みはあるだろう。
「戦車に乗りながらやれって言われても、ちょっと無理あるからな。ってことで、ここからは自分の足で頑張るぞ、ラビィ」
 そう隣に声をかけながら、クロゼは戦車に乗せていたトランクと向き合う。
 その言葉に、相棒ことラブリー・ラビットクロー(とオフライン非通信端末【ビッグマザー】・f26591)は――応えなかった。
 否、応えることができなかった。
 ただじっと、薄闇に広がる地下空間を凝視していた。
(……ここ)
 壊れた計器。割れた水槽。始めてくる場所なのに、不思議と視界に馴染む錯覚を覚える。
 だって、そう。飽きるほど、ずっと見てきたものだから。
(らぶもよく見た光景だ)
 ずっと、ずっと。ししょーと呼び慕う彼と出会う前。掠れた名札の部屋で、たいくつに縛られていた時の、風景。
 大きくて、沢山の水槽。きっと化け物はあそこから生まれたのだろう。
(そしてらぶも、気づけば水槽の中で生まれた)
 奇妙な等号。一致する偶然。それは、ガスマスク無しでは清浄な場で生きられない造られた少女に、一つの『結論』を突き付ける。
 ――あれ? じゃあ、もしかして。
 ――らぶも、ニンゲンじゃなくて、あいつと一緒……なん……?
「ラビィ!」
「きゃんっ!?」
 うさ耳の傍で張り上げられたクロゼの声に、ラブリーは我に返った。
「だから、ここからは徒歩だって。いけるか?」
 見上げれば、クロゼが胡乱気な顔をしてこちらをのぞき込んでいる。その手には、戦車に乗せていたニードルガン。
 ばくばくと自己主張をしている心臓の音を呑み込んで、ラブリーはこくんと頷いた。嫌な考えはまだ頭にこびりついているけれど、それでも首を振り、集中する。
(い……今はそんな事考えてる場合じゃねーのん)
 だって今は、クロゼと一緒に戦う時。みんなで、セカイを守る時。
「いくのん!」
 彼が銃を使うなら、太陽の光も入らない真っ暗な地下ではきっと撃ちにくいだろう。
 だから、ラブリーは手の中の通信端末に向けて叫んだ。
「マザー、ナイトモード!」
【ナイトモードを起動しました】
 端末の画面が暗転する。暗い中でもより正確に、情報を読み取れるように。
 けれど、まだだ。画面が見えても、敵が視えなきゃ意味が無い。
「ライトもつけて、らぶとししょーを照らして!」
【任せてください】
 無機質な女性の声が応え、スマホの画面が輝いた。
 どんな暗い場所でも、これさえあればカメラはばっちり。ともすれば正常な視界を焼くくらいの光に、白い異形の姿がくっきりと浮かび上がる。
「ししょー! 見えたん!」
「よしきた!」
 屍人の姿が映るのと、その左腕の銃口がこちらを向いたのは同時のこと。
 次の瞬間、放たれた生体エネルギーを横に跳んで避けながら、クロゼがニードルガンのトリガーを弾く。小さな羽が突いた銃弾が大量に射出され、奇妙な文様を描きながら屍人の脚部へと飛来する。 
 それ一つ一つは、直撃しても壁も破壊できないような威力の弱い弾丸だ。万が一、外れてしまっても建物に直接被害は及ばない。
 けれども、それが一度、屍人の肉へと刺さったのならば。針を通して装填された筋弛緩剤が次々と敵の躰へと注入されていく。
 魔術で動く骨の兵士達とは違う。敵は歴とした肉ある器を持った生体兵器だ。その身体が筋肉で動く以上、その効果から逃げることはできない筈。
 ――ッ‼
 クロゼの目論見通り、身体中に薬物を打ち込まれた異形の巨体が揺れた。まるで支えを失ったように、ずしりと。床に罅を残して、膝をつく。
 そうして生まれた僅かな時間に、ラブリーは走った。
 薬の効果はあくまで足元だけ。敵の両腕の武器は尚も健在だけれど、武器を引っ提げているのはラブリーもまた同じこと。
「チェーンソー使っていいけど、らぶだって使っていい!」
 チェーンソ―とは反対の手に持った火炎放射器を牽制代わりに放つ。未だ動けない屍人は、肉を焼かれる痛みに我武者羅に武器を振り回すだけ。
 聞き耳を立てて跳んで、しゃがんで。太い腕の影へと潜り込んで、開いたわき腹へ向けて回転する刃を走らせた。
 
 白い躰に赤い線を描きながら、ラブリーはこっそりと心の中で問いかける。クロゼにも、マザーにも聞かないで、自分の心の奥に、そっと尋ねる。
 ねぇ、らびはだいじょーぶだよね?
 白いゾンビに、ならないよね?
 だって兎が振るうチェーンソーは、未来を壊す為ではなく、世界を助けるためのものなのだから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
喧しい、耳障りだ。永遠に黙らせてくれよう。

UC【燃ゆる貴き血鉛】起動。
敵の太刀筋を【見切り】チェーンソーを、UCを纏った大剣で【武器受け】。
回転鋸にUCの鉛を巻き込ませる形で敵の刃を何も断てぬ鈍に【武器改造】しつつ【焼却】。
これで最早使い物になるまい。

首尾よくいったら後は敵の足元を【ダッシュ】で素早く立ち回り【挑発】と牽制、隙あらば攻撃。
特に脚部を【なぎ払い】【部位破壊】を狙い機動力を奪いにかかる。
味方の攻撃チャンスになれば最良だな。

ここで積まれた罪過諸共貴様は過去に消えろ。
ここに在るのは彼らの未来と希望だけでいい。




●槌の音は
 鬨の声がする。鉄で編まれた武器の音、全てを焼く光の音。
 咆哮がする。傷つけられた恨みの、憎しみの。生あるものへの執着の、怨嗟の。
 ――それは果たして、本当に化け物のものだけなのだろうか。
「喧しい、耳障りだ」
 どちらにしても、関係ない。ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は己の鎧の中に反響する化け物の声ををそう切り捨てた。
 一度意識から切り離してしまえば、耳障りな音は只の雑音でしかなくなる。端から興味もないそれを聞き流して、ルパートは大剣を構えた。
「貴様がここで喚く権利など無い。永遠に黙らせてくれよう」
 その鎧の隙間から、溶け出した鉛が零れ落ちる。液体化した金属は、まるで彼の心の苛烈さを具現化したかのように熱を生み、手の中の刃へ炎を灯した。
 それを見届けて、真っ直ぐに駆け出す。
 ――ッ!
 新たにやってきた獲物に気付き、腹を赤く染めた化け物が右腕のチェーンソーを叩きつけた。
 その攻撃を、ルパートは避けなかった。始めの一撃は重ねるように打ち合い、受け流す。続く二撃目は、真向から剣で受けた。
「グッ……」
 重なる刃を通して全身が砕けるような衝撃が走る。無いはずの躰が悲鳴を上げ、金属の鎧が軋む音が反響した。
 だが、止めた。真っ向から受けきり、押し留めた。
 そしてこれこそが、彼の狙っていた好機。
「――その武器、潰させてもらおう」
 瞬間、青い炎が大きく吹き上がる。
 回転することで威力を増す、敵の凶器。青く燃ゆる瞳でそれを睨み、剣に纏う鉛を差し向ける。己の武器の内にある時は一切傷つけなかった鉛が途端に青い火を噴きあげ、敵の右腕を炙った。
 この鉛はルパート自身。彼を彼たらしめる信念の奔流。故に、吹きあがる炎はルパートの意思のままにその姿を変え、彼が滅すると決めたものだけを灰へと変えていく。
 幾多の命を屠ってきたであろう化け物の刃とて、その例外には成り得ない。大剣がチェーンソーを受け止めているその隙に、鉛が細く流れ出で、その駆動部に潜り込む。熱く煮えたぎる金属が化け物の肉を焼く。燃え上がる青い火が、鋭い鉄の刃をただの鈍へと溶かし変えていく。
「これで最早使い物になるまい」
 鉛と、炎の跡を残してルパートが剣を引く。急に崩された均衡に屍人の体勢が一瞬揺らぐ。その隙に、身を低くして今度は敵の足元へ。巨体を支える大木の様な足へ向けて、刃を突き立てた。
 再び上がる咆哮。間近で受けた異音に、ルパートは小さく唸る。もしも人の身体を象っていたのなら、思わず顔をしかめていただろう。
「喧しいと言った筈だ」
 止めとばかりにナイフを構え、大きく開かれた顎へと投擲する。ふつりと消える声と、微かに空気の抜ける音。
 新たにせりあがった肉が傷口を埋めるのはすぐのことだったが、それでも暫しの間、沈黙が訪れた。
 その中で、ルパートは異形に向けて其れの終焉を通告する。
「ここで積まれた罪諸共、貴様は過去に消えろ」
 ここに在るのは、彼らの未来と希望だけでいいのだから、と――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルゥナ・ユシュトリーチナ
●アドリブ連携歓迎
チェーンソー?キャノン砲?あーだめだめ、なってないね。
何を作ろうとしたのかは分かんないけどねぇ…端から得物に頼るのは女々よ(筋力至上主義的感想

砲撃は避けりゃ良いから、厄介なのは回転鋸かな。流石に直撃を食らったら痛いからねぇ。距離を詰めつつナイフを使って軌道を逸らし、隙を見て機関部へ刃を突き立てる。壊せればそれで良し、出なくとも刃身を噛ませて動作不良を狙おう。

懐まで飛び込んでしまえばこっちのもんさ。頭…って言えるのか分からないけど、そこを掴んで握り潰す。反撃を食らおうと絶対に離さないよ。筋肉の鍛え方が違うさね。

ゾンビを倒すにゃ頭を狙えってのは、古今から変わらぬセオリーってね?



●究めるとは
 其れは何でできている?
 目に見える範囲での構成されている要素を、指を折って数えてみる。
 チェーンソー?キャノン砲? 死人の手足と、凶悪な武器の何もかも?
「あーあ」
 飽き飽きするようなテンプレートに、ルゥナ・ユシュトリーチナ(握撃系無気力フラスコチャイルド・f27377)は大袈裟に溜息をついた。
「だめだめ、なってないね」
 この地下室が一体何を作ろうとしたのか。そんなものは今更分からないけれど、端から得物に頼るなんて、女々しいにも程がある。
「やっぱさ――やり合うなら拳でしょ」
 握りしめた己の両の拳を撃ち合わせて、にやりと笑う。
 鉄の器物あっての暴力などナンセンス。力を求めるのなら、行きつく先はやはり己の肉体でなくては。
「来なよ。少し揉んであげる」
 ちょい、と指先を動かして相手を挑発してみれば、ルゥナの意図を理解したのか異形が咆口をこちらへ向けた。その奥に灯る光を見つけ、ルゥナは走り出す。
 間髪入れず、発射される光線。数秒前までいた空間を化け物のレーザーが通過する。
 いくら敵の砲撃が強力だとしても、自分にはこの両の足がある。当たらなければ、それは脅威には成り得ない。
(寧ろ厄介なのは……)
 腰に指したナイフを抜きながら、ルゥナは敵の右腕を注視する。
 先の仲間の功労によりその刃は焼け、形状は歪。回転することで攻撃力を上げるという特性は半減していしまっているが、それでもまだ、その大きさは鉄塊の如く。真っ二つはないとしても、まともにあれを喰らってしまえばルゥナの肉体など簡単に拉げてしまうだろう。
 敵の戦闘力は未だ健在。ルゥナの得意とする間合いに入るには、その腕の対策は避けては通れない。
 それに――折角、壊れかけているのだ。ならばいっそ全部壊してしまえば、すっきりするのではないか?
 ルゥナのナイフが走る。首に向かって飛んできた鉄の軌道をずらした後、手の中で回転させて真下へ滑り落とした。狙い通り、鋭利な切っ先は得物の中心、回転鋸の機関部へと吸い込まれる。
「……何事も、中途半端ってよくないよねぇ?」
 落とした先からけたたましい音が産まれ、火花が散った。
 例え生命の一部としても、その部位だけを拡大してしまえば機械は機械。繊細な動力部に侵入した異物に、回転鋸が悲鳴と煙を上げ、駆動を止めた。噛み合った機械とナイフの隙間から血が零れ落ちるのは、繋いだ命故だろうか。
「さて、これでスッキリした」
 敵の得物と共に使い物にならなくなったナイフから手を離し、ルゥナは改めて空いた右手を構える。猛禽の爪のように、軽く曲げた指が次の瞬間捕らえたのは――屍人の頭部。
 大きく裂けた口だ大半を占めるそれを五指で掴み取る。牙のような、骨の様な突起物が掌に喰いつき貫く。屍人は暴れ、ルゥナを振り解こうと壁へと激突する。
 それでも、こちとら筋肉の鍛え方が違うのだ。掴んだものを握りつぶすまで、絶対に離してなどやるものか。
「ゾンビを倒すにゃ頭を狙えってのは、古今から変わらぬセオリーってね?」
 止まらない場合? そんなの、正解の『頭』を掴むまで繰り返すまで。
 ――そして、圧搾するだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナハト・ダァト
ふム…因果応報、カ

だガ、勝手ニ報いラれてモ
困るナ

死者ニその権利ハ無イだろウ

物理的攻撃は液体状の身体で受け流し
光学兵器は液体の屈折とトラップツールⅡで反射

「瞳」から、構造と弱点部位を捉えるよう立ち回る

沢山、あるのだネ
良いサ、振るイ甲斐があル

武器改造により、触手を先鋭、発条化
特定した弱点部位を「瞳」で的確に狙い

残像と無限光による撹乱の隙に接近して触腕で叩く

もウ、治ラ無いヨ
そウさせテ、貰っタからネ



●罪の向く先
「ふむ……因果応報、カ」
 ローブの奥で光る『瞳』で、敵の姿を見上げながら、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)そう呟いた。
 今更周囲に残る装置の残骸に目を通さなくても、此処で何があったのかは手に取るようにわかっている。
 これは、罪だ。かつてこの場にいた者達の、人々の身勝手さが生み出した末の。
 そして罪は償わなければならない。
 ――だが、それもまた、過去の話。
「勝手に報いラれてモ困るナ」
 罪を作ったのは確かにこの世界のヒトではあるけれど、希望に縋る人々では無く。
「そレニ、死者二モその権利ハ無イだろウ」
 罪深き人々も、時間の流れに朽ち果てた。
 ナハトの言葉を否定するように、屍人の巨躯が動く。只の棒きれとなった右腕を叩きつけ、左手の銃口を振り回す。
 けれど、その力がどんなに激しくても、どんなに凶悪でも。ナハトの躰は黒き泥。液状の躰は謂わば水のようなもの。
 棒でも、刃でも、たとえ光でも。幾ら掻いても、その姿を捕らえることはできないのだ。
 屍人の右腕が空振った直後を見切り、ナハトの躰が眩い光を放った。
 尽きることなく、聖者の身体を照らす閃光は屍人の視界を焼き、その身体を硬直させる。
 その隙に。光が生んだ影に隠れるように、黒い流動体は走った。役割を果たさなくなったチェーンソーを飛び越え、丸太の如き腕部を螺旋を描きながら駆け上る。
 行きついた先、敵の肩口から跳ねれば、敵の姿は目と鼻の先、裁きの手の、届く中。
「――」
 もう一度、『瞳』を通してその『躰』を見れば、歪な頭部、砕けても尚動き続ける生命の視線と、ナハトの視線が交わった。
「――嗚呼」
 造られた躰。失った命を寄せ集めて、幾人もの肉をつなぎ合わせて。拒絶も許さず、腐ることもゆるさず、新たな生命として生かされて。
「沢山、あるのだネ」
 その姿はなんて不出来で。その死の数はなんて、多いのだろう。
「……良いサ、振るい甲斐があル」
 ローブの裾から黒い触手が伸びる。その先端は死肉を穿つ鋭利な発条と化して、屍人を穿った。
 頭部に空いた、虚ろな口。潰れたような赤い瞳。味方が残した傷跡も勿論、なぞるのは忘れない。視覚から共有される、その強くも脆い身体の点を、一つ一つ、丁寧に潰していく。
「塞がらナイだろう?」
 刺さった触手を引き抜いた。あらゆるものを砕き、修復不能とする腕により貫かれた部位は沈黙し、血を吐き出すだけ。
 降りそそぐ赤い飛沫を浴びながら、ナハトは宣言する。
「もう、治ラ無いヨ。そウさせテ、貰っタからネ」
 報いも罪も、その厳正の中に無へと消えて。
 過ぎた死も又、原初へ還る時であるだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

向坂・要
こうして考えてみりゃお前さん達も生きようと足掻いてんのかもしれませんねぇ…。
ま、だからってやることは変わりませんが。

武器や【第六感】【地形を活かし】敵の動きに注意を払いつつ
多少の怪我は慣れたもの
(なんなら【覚悟】きめて至近距離でも場合によってはありってね)
【見切り】からのUCによる【カウンター】を狙わせてもらいますぜ

強い方が生き残る、ってのは世の常っていいますしね

戦闘後は念の為夜華も一緒に残してきた犬のにーさんに元気な顔見せておきますかね
心配かけちまったみてぇですし、ね


トリテレイア・ゼロナイン
肉か鋼か…違いあれど、私と同じく『戦いの為』の被造物というべきでしょうか
知性が、理性がもしあったならば…いえ、それが彼にとって幸いなのか
知る機会は永遠に無いのでしょう

…排除させていただきます

マルチセンサーでの●情報収集で敵の特異な肉体構造調査
筋肉や関節の可動範囲や挙動●見切り振るわれるチェーンソーの腹を怪力による●武器受け●盾受けで捉え弾き逸らし防御
●シールドバッシュで体勢を崩し剣で追撃

強靭さか、再生力に優れるのか…
やはり効果は薄いですね

全格納銃器を展開しUC●スナイパー射撃
着弾部分を炭化させ剣で脚を切断

一息で終わらせること能わず、申し訳ございませんが!

動きが止まった相手を追撃で炭化、剣を一閃



●生きたいなら、足掻け
「あーあー、奴さん、ひでぇ有様ですねぇ」
 緊迫した戦場の空気の中に、飄々とした向坂・要(黄昏通り雨・f08973)の言葉が響く。
 彼の言葉通り、既に化け物の躰は満身創痍だった。切られ、潰され、貫かれ。白かった肌の大部分は自身が流した血で汚れていた。右腕のチェーンソーはとうの昔に止まっているし、傷付いた足は自身の躰を支えきれず、今にも頽れてしまいそうだ。
 その身に刻まれた傷は、確実に命を削っている。たとえこの場を生き延びることがあったとしても、もうそれは長くは持たないだろう。誰が見ても、一目瞭然だった。
 それでも、化け物はこちらに向かい、戦おうとしていた。上げる声は悲鳴ではなく威嚇の咆哮で、振るう手足は逃走の為ではなく、目の前のものを蹂躙する為。
 そんなちぐはぐな敵の様子に、要はそっと、紫の左目を細めた。
「こうして考えてみりゃ、お前さん達も生きようと足掻いてんのかもしれまぇんねぇ……」
 ただ、生きたくて。ここで終わりにしてなるものかと。そう足掻いて、藻掻いて。それでも抜け落ちた知性では、撤退という選択すら浮かばずに。
 それでもただ、死にたくないと。己の持つ手段をぶつけ回って。
 ――嗚呼、それはなんて、悲しい命なのだろうか。
「……ま、だからってやることは変わりませんが」
 吐き捨てることも無く、かといって感情を切り捨てることもなく。常の変わらぬ口調のままそう断じて。要は動き出す。
 夜色の狐の友を託してきた、二階へと戻った彼のことも気がかりだ。早く終わらせて、元気な顔を見せておいた方がいいだろうと思う。
「心配、かけちまったみてぇですし、ね」
 別れる前の、彼の必死な形相を思い出して、少し苦笑を浮かべ。要は敵へと向かう。
「肉か鋼か……違いはあれど、私と同じく『戦いの為』の被造物というべきでしょうか」
 彼と並ぶように立っていたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の胸中もまた、化け物の出生を考えていた。
 造られたそれを、思う。
 謂われは異なるのかもしれない。理由は同じとは限らない。それでも、その出生は、他人事であると切り捨てることはできなかった。
 しかし、今はそれは過去のものとなり、そして自分は騎士として、未来を守る側にいる。
 その違いは一体、どこにあるというのか。
 ――もしも、知性が、理性が。生まれ出でる過程でその中に残されていたのなら。何か変わることがあったのだろうか。
「……いえ、それが彼にとって幸いなのか。それすらも、現状では判断はできません」
 そして、それを知る機会はこの先、永遠に無いのだろう。
「……排除させて頂きます」
 思考を、一時的に遮断する。優先すべき事項は敵の出生に纏わる考察ではなく、敵を殲滅することだ。
 先導して走り出した銀髪の仲間の跡を追う様に、トリテレイアもまた、盾と大剣を手に飛び出すのだった。
 
 
 相手の図体は大きくて、罅割れた足場は不安定。ましてや相手は手負いの身。
 そんな躰から繰り出される攻撃だ。威力は強力ながらも、自然とそれは直線的で単調なものとなる。敵の行動を見定め、合わせて動けば回避することは難しくない。
 第六感を最大限に駆使して、踏みつぶさんと迫った敵の足を、要は横に跳ぶことで回避する。お返しとばかりに手の中の短剣で斬りつければ、さらにひとつ、屍人の躰に傷が増えていった。
 鬱陶しい。そう言葉にして聞こえてきそうな憎悪の籠った視線がこちらを向き、棍棒の如き右腕が振るわれる。風を切って迫るそれを、さて、どう避けるのが手っ取り早いか。
 そう思案した要の視界に、鋼鉄の白い騎士が滑りこんだ。
「右腕は私が受け持ちましょう」
 鉄塊の生えた腕を大楯で受け止めたトリテレイアは背後の要にそう言い残すと、屍人に負けぬ怪力で相手を押し返す。
 屍人の躰の構造、その肉体が繰り出す性能、骨格、筋肉量と、そこから生み出される運動エネルギー。それらすべては体内に装着されたマルチセンサーでスキャン済みである。
 そこから計算される敵の挙動の癖、関節の稼働範囲、限界耐久力。それらを見切ったトリテレイアの盾は、屍人の力を以ってもびくともしない。
「ああ、助かりやす」
 ならば、至近距離から敵を撃ち抜くまで。そう動く、敵が左腕を二人へ向けるのも又、二人の予想の範囲内で。
 ならこちらは俺が。その言葉と共に、要の短剣に刻まれたルーンが光を帯びた。
 形を変えていく刀身は文様が刻まれた鏡の形へ。直後に放たれた生体レーザーを受け取めた。
「お返ししやすぜ」
 得物を介して伝わるその情報を解析し、瞬時に己の力として。元の短剣の形を取り戻した【Lücke】を突きつけ、屍人へと打ち返した。
「強い方が生き残る、ってのは世の中の常っていいますしね真向から返されたんじゃ、文句は言えねぇでしょう」
 そう嘯く要に続いて、右腕を弾きあげたトリテレイアが己の躰の全格納武器を展開させる。
 元も強靭さか、再生力に優れるのか。まだ敵の注意はこちらに向けられたまま。
 まだ終わらない。まだ、死ねない。
「――行きます」
 だから、このまま畳みかける。
 敵の足元へ狙いを定めて――一斉掃射。
 化学物質が込められた弾丸が着弾と共に火を噴き、屍人の足を火達磨へと変えていった。
 白い皮膚を焼き、肉を焼き、炎は着弾した部位を瞬く間に炭へと変えていく
 その脆く、黒く焦げた箇所へ向けて、剣を抜く。
「一息で終わらせること能わず、申し訳ございませんが!」
 轟音。
 気合と共に放たれた騎士の一閃が、その両の足を断ち切った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト

何に使う気だったんだか、こんなのを
……詫びはしねえよ。あんたの事情も知らずに

いいぜ、怒りに正当もくそもない。来な
身ひとつ真っ向応戦する過程で
チェーンソーの歯に鎖を噛ませ怪力他で力勝負。電流流すわ手放しで浮かして拳は打ち込みに使うわするが、ズルなんて言いやしないな
敵が弱り斬り払いに綻びが出た際チェーンソーの腹を殴り弾く
ここまでに掴んだ攻撃の通りの良い箇所へ余りの腕で【Vortex】
顔を上げれば光を拝める生者と違って、んな辛気臭くて薄暗え場所に落とされたんじゃそりゃ誰だって腐る
痛み分けって訳じゃあないが、あの世の篝火にでも持っていっていいぜ


終わった分、景気良く始まってくれねえとな



●送り火
「何に使う気だったんだか、こんなのを」
 レイ・オブライト(steel・f25854)が吐き捨てた言葉に返ってくるものは無い。
 部屋の主はとうの昔に過去のものへ。残された怪物もまた、足を失い、床を這い、こちらを見つめるのみ。
 そんな力も残っていないのか、耳障りな咆哮ももう上がらない。失った脚の切断部は依然炭のまま。もう回復することも、別の足が生まれることもないのだろう。
「……詫びはしねぇよ。あんたの事情も知らずに」
 ――それを憐れとは思うまい。いや、思うことは、きっと許されない。
 レイがその過去を知ることは、少なくともこの化け物が生きている間には起こり得ないのだから。
 だから。
 レイはただ、真向から挑むだけだ。
「限界だろうが……もうちょっと付き合えよ」
 レイの声に反応して、屍人が顔を上げる。動くことは諦め、上体だけを起こしてこちらを見下す。
 振り上げられた両腕を満足そうに見上げて、レイは白銀の鎖を手に取った。
 腕が振り下ろされる前に、投げた鎖が化け物の右腕に絡む。力任せに引き寄せて、敵の動きを妨害。そうして間を持たせた所で、左側からの殴打を片腕で受け止めた。
 全身に響くような衝撃。踏みしめた床に亀裂が走る。
 足掻くというには、散り際というにはあまりに重い一撃。
 思わず、笑みが零れた。
「いいぜ、怒りもくそも無い。来な」
 それでいい。それでこそ、真向から迎え撃てる。
 レイが纏う覇気に電流が走る。鎖を盾とした腕を、絡んだ鎖を返してそれを屍人へとぶち込んだ。
 反応などいちいち待ってはいられない。強引に左腕を押し返し、鎖を曳く。視界一杯に飛び込んできた右腕の鉄塊へ向けて、握りしめた拳を叩き込む。
 これは真剣勝負だ、鎖も電撃も、ズルなんて言いやしない。
 ただ、互いに持てる技全てを使って、全力で撃ち合い、生き残る。それだけの戦い。
 骨が軋む。肉が千切れる音が響く。それがどちらの躰のものなのか、今のレイにはどうでもいい。
 拳を引く。今度は雷を纏って、さらに敵の躰の中枢へ。
 赤く染まった躰にレイの腕がめり込み、巨体が大きく吹き飛んだ。
「終いだ」
 それを確認して。握っていた鎖を放り投げる。ここまで来ればもう、拘束も何も必要ない。
 だから――鎖離した腕に、躰に残る電流の全てを収束させた。
 耐久量を軽く上回る熱量に、レイの腕が青白い炎を上げて皮膚を焦がす。稲妻が迸り、地下室の闇を裂いた。
 そう、ここは――暗い。
 顔を上げれば光を拝める生者と違って、こんな辛気臭くて薄暗い場所に落とされていたのだ。誰だって、こんな処にいては腐ってしまうもの。
 だから、最期はせめて光と共に。
「痛み分けって訳じゃあないが、あの世の篝火にでも持って行っていいぜ」
 それが、理由も知らず事情も知らず。ただ戦い、傷つけ、一方的に送り出した側のせめてもの餞だと。レイはそう言い残して。
 片腕一本、手土産として、地下室の怪物を塵へと帰したのであった。

●Canaan
「さ、終わった分は、景気よく始まってくれねぇとな」
 崩れれ落ちた片腕は放置して、レイは地上へ、そしてその上へと足を向ける。無論、共に戦った猟兵達も一緒だ。
 二階へ続く階段を見上げれば、待ちきれなかった賢い獣の戦士が今か今かとこちらを伺っている。防壁を越えれば、彼らの帰還を待っていた人々も猟兵達を歓待するだろう。
 新たに生まれつつある拠点の脅威は払われた。
 しかし、それはあくまでこの場では、のこと。資源には限りがあるし、またいつ嵐がオブリビオンを連れてくるかもわからない。
 それでも、今この場では。生きる喜びを抱きしめて。
 人々が、未来へ希望を見出すことを咎めるものはいないだろう。
 

 わたしたちはここにいます。
 昨日も、今日も、明日も。
 失ったものは多いけれど、それでもこの場所にたどり着いたから。
 わたし達のことを知り、いていいと言ってくれた人たちがいたから。
 わたし達はここから、もう一度生きていきます――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月05日


挿絵イラスト