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みんなオオカミになればいい(作者 麦門冬
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●アリスラビリンス 絶望の国
 ガチャガチャガチャと乱暴に扉を開けようとする音が響く。だが、三日月状に歪んでしまったその扉は開かない。いや、扉が『開かない事』を確認しているようにも見える。
「帰れるわけなんてないのに」
 ドアノブから手を離した少女はそう呟く。自分にはもう、帰る資格などないのだ。おぞましき獣へと堕ちてしまったのだから。もう、元の世界にいた家族や友人の顔も思い出せなくなっていった。そして、自分が誰だったのかも……、
「私は……」
 そう少女は呟いた後、口元をニィッと三日月のように歪ませる。
「私はァ! オオカミさんでしたァ!!」
 そう叫んでケタケタと笑い、走り出す。狼のような耳と尻尾を生やした少女『アリーチェ・ビアンカ』は四つん這いになり、獣のように走り出す。

 今日の獲物はなんだろう? アリスだったらご馳走だ。
 お腹いっぱいになって、それでもアリスを見つけたら、その子といっぱい遊んでやろう。噛んで引っ掻いて組み付いて……もしかしたら私と同じオオカミさんになってくれるかも。
 そしたら、その子も帰らなくっていい。ずっとここで野山を駆けて、獲物を狩っていればいい。

「今日は何が見つかるかな?」
 扉の前で考えていたことなどすっかり忘れ、少女は永遠に降りない満月の下を駆けてゆくのだった。

●グリモアベース
「今日はオウガ退治をお願いしたいっす」
 そう話すのはヒーローマスクのグリモア猟兵、リカルド・マスケラス(ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160)だ。
「アリスラビリンスの国の中にずっと満月の夜が続く国があるんす。そこが、オウガを生み出す『絶望の国』になっているんすよ」
 別名、『オウガのゆりかご』。この状態になってしまったら、一刻も早く国のボスであるオウガを倒さなければいけない。
「オウガは元アリスで、自分の本来の扉周辺を根城にしているらしいんすけど、そこに到達するまでが大変なんすよ」
 なんでも、空に浮かぶ満月の光を浴びると、心が凶暴化し、暴れたくなるという。
「任務そっちのけで目につくものに攻撃したくなったりとか、そんな感じっすかね? 仲間と参加する場合は勿論注意が必要っすし、たまたま他の猟兵や、偶然迷い込んできたアリスやこの世界の住人とかと鉢合わせすることもあるかもしれないっすからね。何かしら対策が必要っす」
 精神力に自身があるなら気合で耐えるのもいいが、気を紛らわせる方法などを用意したり、狂気に陥っても周りを傷つけたり任務を忘れたりしなくて済むように対策を考えてもいいかもしれない。
「で、ボスとなるオウガなんすけど、元の名前がわからないから『アリーチェ・ビアンカ』と呼ばせてもらうっす」
 直訳で『白のアリス』、白い狼の耳と尻尾が生えてるアリスなのでとりあえずそう呼ぶことにしたとのことだ。
「元はどこの世界かもわからないっすし、経緯も不明っすけど、この世界でオオカミみたいな姿になって帰れなくなったらしいっす。人狼病に罹患したのか、はたまたオウガにとり憑かれたのか」
 帰れなくなったというよりは『帰るのを諦めてしまった』が正しいのかもしれないっすけどね、とリカルドは付け加える。
「それで、ビアンカは自分と同じようなオオカミ型のオウガをどんどん増やそうとしているみたいっす。なので、これを止めて欲しいって訳っす」
 そこまで言ってから、リカルドは付け加える。
「ビアンカを倒した後、この絶望の国は崩壊するんすけど、そこで生まれたオウガは襲いかかってくるみたいなんで、そいつらも倒して欲しいんすよ。倒しきれないと、そのまま国の外に出て悪さすると思うんで」
 ただ、ボスであるビアンカの絶望を和らげた状態で倒すことができれば、生まれてくるオウガは少なくなるので、逃さずに倒し切ることも可能だという。
「もうアリスに戻すことはできないっすけど、できるだけ救ってあげたいとは思うんすよ。だから、よろしく頼むっすよ」
 そう言ってリカルドは猟兵達をアリスラビリンスへ転送するのだった。





第3章 集団戦 『『偽アリス』アリーチェ』

POW ●ミルクセーキはいかが?
【怪しげな薬瓶】が命中した対象に対し、高威力高命中の【腐った卵と牛乳で作ったミルクセーキ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD ●甘いおねだり
レベル×1tまでの対象の【胸ぐら】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
WIZ ●お茶を楽しみましょ?
【頑丈なティーポット】から【強酸性の煮え滾る熱湯】を放ち、【水膨れするような火傷】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●獣は倒され、残ったものは
(ああ……)
 致命傷を受けたビアンカはそのまま力なく倒れようとして、猟兵に抱き留められる。
(私は何がしたかったのかな?)
 瞼を閉じそうになる視界に入ってきたのは猟兵達の顔。心配そうにこちらを見ている者もいる。そう言えば、彼女達の誰かが言っていた。
『キミの気が済むまで暴れ、狂い、そして嘆くといい。誰よりも重いものを背負ってしまったキミには、きっとその権利があるはずだ』
 私は、帰れなくなったこと、こうなってしまった理不尽を誰かに受け止めてほしかったのかな。そして、
『さようなら。アリス』
 自分では否定していたけど、アリスとして、人として見てもらいたかったのかな。そう思ったら口から言葉がこぼれた。
「ごめんなさい……」
 素直になれなくて、
「ありがとう……」
 わがままに付き合ってくれて。そこまで言えたら、周りは何も見えなくなって月明りも見えなくなった。けれども胸の中に沈んでいた何かがすとんと落ちて、スッとした気がする。そして、今まで思い出せなかったものが思い出せてきた。家族の顔、友達の顔、それに……私の名前。
 そうだ、私は……

●崩壊する絶望
 二言ほど喋り、瞳を閉じたアリーチェ・ビアンカはどこか満足そうな表情のまま、目を覚ますことはなかった。
 それから間もなくして地響きが起こる。絶望の国の崩壊の予兆だろうか。そして、空を見上げた誰かがはたと気づく。月が大きくなっている……否、月がこちらに落ちてくることに。狂気を与える魔性の光を発さなくなった月は、自分の役目を終えたと言わんばかりに、地面へと落下してゆく。今すぐ衝突するわけではないので、衝突前にこの国から脱出することは可能だろう。
 だが、その前にやらなければならないことがある。

「ここはどこかしら?」
「あら大変、月が落ちてくるわ」
「急いでここから離れないと」

 地面から湧き出るように合わられたのは、ウサギの耳、ネコの耳、オオカミの耳など、獣耳を生やした少女達、ビアンカの絶望が生み出した残滓『偽アリス・アリーチェ』だ。彼女たちを逃してしまえば、後々厄介なことになるだろう。幸い、ビアンカの絶望がある程度払われたのだろうか。数はそこまで多くなく、全滅させることも難しくなさそうだ。
 限られた時間の中、猟兵達の最後の戦いが始まろうとしていた。

(※なお、月は落下しますが、それによって絶望の国の外に何か影響があることはありません)