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優雅たれ、斉唱の宴

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「キキッ! キキッ!」
 悪魔が哭いている。
 小さな小悪魔、グレムリン。団体様でやってきた。真夜中過ぎにやってきた。
「キキッ!」
 何を探しているのか、きょろきょろとしながら迷宮を進み、あっちへ曲がって、こっちを真っすぐ……。
 せっせせっせと運び出す。鳴らないように運び出す。
 それは迷宮群の、ほんの一角での出来事。


「んぅ~……むにゃむにゃ……」
 今日のメッティは脚立の上でお休み中。猫はこたつで丸くなる、ならぬ、ケットシーは脚立に凭れている、か。
 ――傍目から見れば心穏やかな光景だが、忘れてはならない。彼は夢によって予知を得る“グリモア猟兵”だ。
 ほら、だからね。もうすぐ起きてお決まりのセリフを言うんだ。
「はっ!? たたた大変だ! みんなー! 大変だよー!!」
 ほらね。

「ふああ……あっ、ごめん! えっとね、アルダワ魔法学園で楽器のパーツが盗まれる事件が起きる夢を見たんだ! ……といっても、学園から楽器が盗まれた訳じゃなくて、迷宮から盗まれたんだけど……」
 アルダワ魔法学園には、無数の迷宮がある。危険極まりないモンスターやトラップを内包した迷宮もあれば、精霊の住処となっている複雑だが安全なものまで様々だ。
「なかでも精霊の住処ではね、時折音楽祭のようなものが開かれるんだ。精霊がそれぞれ楽器や歌で楽しく過ごすんだよ。でも……」
 メッティは、楽器のパーツや楽器そのものが何者かによって盗まれて、使い物にならなくなってしまう。そんな夢を見たという。
「僕は盗んだ人視点から夢を見たんだけど、最後は別の迷宮に入っていくところで夢が覚めたんだ! きっと、その迷宮を探せば楽器のパーツが見つかるに違いないよ!」
 折角の音楽祭を邪魔するなんて許せないよー!
 ぷんぷんと怒るメッティ。というわけなんだ、宜しくお願いします! とグリモアを起動させた。どうやら件の迷宮傍に転送してくれるらしい。

「あ! そうだ、どうせならその音楽祭も見ていくと良いよ! 勿論事件を解決してからになるけど……きっととっても楽しいお祭りだよ!」


key
 音楽はいいね。文化の極みだよ。
 keyです、みなさんこんにちは。今回は楽器のパーツを取り返して頂きます。

●第一章、第二章
 戦闘パートになります。
 倒す敵はパーツを一か所に集めているようなので、倒しても壊れたりすることはありません。どかどかーんとやってしまいましょう。

●第三章について
 日常パートになります。👑の都合上、3日ぎりぎりまで待って一気にリプレイを執筆する形になりますので、ご了承ください。
 第三章ではメッティもお祭りだー! とその辺でうろうろしています。
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第1章 集団戦 『グレムリン』

POW   :    スパナスマッシュ
【巨大なスパナ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ツールボックス
いま戦っている対象に有効な【分解用の工具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    ハイドアンドシーク
自身と自身の装備、【アイコンタクトをとった】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●盗んだ奴
 猟兵が飛んだ先、目の前にぽっかりと開いた迷宮入り口。
 薄暗い中を進んでいくと、何やら旋律のようなものと、蝙蝠めいた鳴き声が聞こえてきた。
「キキッ! キキッ!」
 小悪魔が笑っている。その数は多いけれども――猟兵の敵ではないだろう。
 工具を振り回して、相手の戦闘準備は万端だ。躊躇することはない!
寧宮・澪
音楽祭を、邪魔するなんてー……許せない。
お仕置き、なの。

【霞草の舞風】、使用。
【戦闘知識】で、グレムリン達を、なるたけ、戦場の中心に、押し込んで、囲い込みー……逃さない、ように。
透明でも、逃さない……【第六感】、も、頼って、花びら、半径いっぱい、ひろげましょー……。

攻撃は、【オーラ防御】で、耐えたり、【見切り】で、避けて、嵐の中に入れるよう……頑張りましょ。

詩を謳って、世界に、お願いしましょー……シンフォニア、ですし。
できるだけ、グレムリンを、倒せるように、逃さぬように……味方して、くださいなー……。
【祈り】を込めて、【歌唱】しますよー……。

(アドリブ、連携、歓迎ですよー)


霧亡・ネリネ
どしがたい!とってもどしがたいぞ!!
きょうだ……楽器のパーツを盗むなど、晴れ舞台をうばうような真似を!
ゆるしておけないからな!(ぷんすか)

ホルンを構えて<子猫のポルカ>
気持ち荒々しくなった演奏で猫さんを出してグレムリンの行動阻害
向こうの透明化には注意しておきたいので、透明になったら聞き耳を立てて居場所を探る。<学習力1>で把握も徐々に効率的にしていけたら



「音楽祭を、邪魔するなんてー……許せない。お仕置き、なの」
「そうだそうだ! どしがたい、まったくどしがたいぞ!」
 寧宮・澪(澪標・f04690)と霧亡・ネリネ(リンガリングミストレス・f00213)は怒っていた。彼女らはシンフォニア。歌と音楽に親しい技能を持つが故に、音楽を奪われる悲しみを知っている。輝くネリネの瞳が、きっと吊り上がる。これは相当怒っていらっしゃいますね。
「という訳で……たおしましょー」
「うむ! では私からゆくぞ!」
「うんー。出来るだけー、一か所に、集めてくださいー」
「心得た!」
 ネリネは愛するきょうだいを抱いて、誇らしげに打ち鳴らす。それはホルンの音。――楽器のパーツを盗むなど。晴れ舞台を奪うような真似を。そんなのは、絶対に許せない!
 奏でるは“子猫のポルカ”。にゃーん、と舞い出るいかづちの猫、そこらを荒々しく駆け巡る。グレムリンは互いにアイコンタクトをしあって、次々に姿を消していく。姿が見えるのは澪とネリネの二人と、遠巻きに囲むグレムリンだけ。足音がぱたぱた、ぱたぱた、二人の周囲を駆け回っているのは確認できるのだが――
「あ、此処――あいた」
 くるり、と澪が身をかわす。カンに任せた咄嗟の判断だったが、何かが振り下ろされたような気配は気のせいではない。そして避けた先で、したたかに胴を打ち据えられる。
「ちょ! お前、大丈夫か!?」
「ギャビビビビ!」
「大丈夫ー。これくらいなら。ぶい。」
 オーラ防御を通じて痺れるような感覚はあったが、防御のおかげで打撲傷以下で済みそうだ。途中で入った音声は、猫ちゃんに感電したグレムリンの悲鳴。
 雷を纏った猫はくるくると、一定の円を描くように周回し始める。外側のグレムリンは近付けず、内側のグレムリンは出る事が出来ない。
「こんな感じで良いか?」
「うんー、ばっちり。では、いきますー……」
 澪は眠たげに瞼をこすると、最初は小さく、呟くように歌い始めた。どうかどうか、この敵を倒させてくれたまえ。一匹たりとも逃さぬように、この花弁を遠くまで届かせたまえ。
 澪が歌う。彼女の足元から、カスミソウの花弁が芽吹いて舞う。合わせるようにネリネがホルンで奏で、猫たちがくるくると舞い踊る。天に捧ぐ即席セッション。花弁は舞い、グレムリンを次々に切り刻み、疲弊させ、透明化を解除させていく。中には透明化を解除して倒れ込む者もいて。
「……なかなか、いいですね。ホルンも」
「そうだろう? そうだろう! ふふん」
 ネリネはきょうだいを褒められて嬉しそうだ。雷の猫がニャン、とポーズをとって、ぽんと消えた。
 まだまだ戦いは続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アスティリア・モノノフィシー
SPD
音楽祭なんて楽しそうですね。
私には楽器の心得なんて大層なものはありませんが、優雅に音を楽しむのは大好きです。
楽器のパーツを盗み出した犯人を懲らしめて、精霊さんの音楽祭に参加させてもらおうっと。

相手との距離を取りながら拳銃で攻撃。
ツールボックスは怖いですが、距離を保って攻撃すればさほど脅威ではないはず。
「私のSRPを分解なんてさせませんよ」
誰が組み立てると思っているんですか、私機械音痴なんですから!

周囲に燃えやすいものや危険なものがない場合はユーベルコードを使用し畳みかけます。



「音楽祭。楽しそうですね」
 私には楽器の心得はありませんが、音を楽しむのは大好きですよ――そう語るのはアスティリア・モノノフィシー(清光素色の狙撃手・f00280)。妖精の音楽祭とは、聞いただけでわくわくするものだ。さっさと楽器のパーツを取り返したいところ。
「そのためには邪魔なんですよねえ。どいて頂けます?」
 その場に響くは拳銃の音。SRPが音を立てて、グレムリンたちを貫いていく。
 あれは機械かな。あれは機械だね。グレムリンがツールボックスを空けて、じゃじゃーん、と銃の手入れに使う道具を取り出す。けれど、これは何に使うんだろう? 銃を使った事のないグレムリンは、それを理解しかねている。
 ほっと息を吐きながら、グレムリンから更に距離を取るアスティリア。
「SRPを分解なんてさせません。誰が組み立てると思ってるんですか」
 ――私、機械音痴なんですから!
 じゃあ誰が組み立てているんだろう……という謎はさておき。早期に片付けてしまうに限る、とアスティリアはSRPに祈る。赤き魔力よ、炎のちからよ、どうか敵を貫く弾丸を……!
「使い方が判る前に灰になって下さい!」
 Huge Blood Red Moon。炎の弾丸が雨あられとバラまかれ、次々とグレムリンを撃ち抜いて行く。けれど。
「まだまだいるようですね。――しかし、なんでしょう。さっきから何か、メロディのようなものが聞こえる気がします……」

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加。


これでもアタシも音楽家の端くれでね。音楽のパーツには興味ある。機械に関係あるからか、機械の妖精がいるのか。どうやらいたずらが過ぎるようなので、お仕置きしてやらないとね。

攻撃への防御は奏に、後方支援は瞬に任せて、【忍び足】と【目立たない】で敵の視線から逃れつつ、ツールの使い方を理解するのと透明になる前に【先制攻撃】で奥の手を使って攻撃手段を封じたいね。【二回攻撃】で攻撃チャンスも増やすよ。スパナの攻撃に対しては【武器受け】【カウンター】で対処しようか。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

楽器のパーツを盗むなんていけない子もいるんですね。他人を困らせるような悪い子はお仕置きしないと。機械の妖精、本当にいたんですね(興味ありげに目をキラキラ)

とりあえずスパナの攻撃は物凄く痛そうですので、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】でがっちり受け止めながら、工具の使い方を理解する前と透明になってしまうまえに、信念の一撃で攻撃したいですね。先手必勝です。【二回攻撃】で攻撃機会も増やしますね。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

僕も一応音楽家ですので。(愛用のインカムを調整しながら)楽器のパーツを盗んで、人を大変困らせるようないたずらは戒めませんと。いきます。

敵は時間をかけると戦闘態勢を整えて手強くなるようなので、速攻でいきます。【高速詠唱】【全力魔法】で氷晶の矢を撃ちます。【二回攻撃】で攻撃回数も増やします。敵から攻撃を受けるようなら、【見切り】【オーラ防御】で対応しますね。



 一方『間宮家』。
「これでも一応音楽家の端くれ、妖精の楽器ってのには興味あるけど……分解して盗むとは頂けないね」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)はお仕置きしてやらないとね、と母の威厳をもって言い放つ。後ろからひょこりと顔を出した真宮・奏(絢爛の星・f03210)は、実際に見るグレムリンに目をきらきらさせた。
「わあ……! 機械の妖精! 本当にいたんですねぇ」
「こら、喜ぶところじゃないでしょ」
「そうですよ。相手は盗人、しっかり戒めないといけません」
 神城・瞬(清光の月・f06558)は言いながら、愛用のインカムを調整する。癖のようなものだ。
「さて、じゃあやられるまえにやりますか!」
 響がそういうと、一瞬、まるで消えてしまったかのような錯覚に陥る。グレムリンたちがきょろきょろしているが、その眼前に響はいる。無防備なグレムリンに放つのは奥の手の拘束具だ。透明化される前に縛り付け、目印にしてしまおうという算段。
「奏は防御、瞬は後方支援!」
「はぁい」
「判りました」
 二人の子に指示を飛ばしながら、殴りかかってくるグレムリンを或いは武器で受け、或いはカウンターで蹴りをお見舞いしながら排除する。
「こういうのは、先手必勝、ですっ」
 巨大スパナの攻撃を、防御一点集中で受け止めた奏。その華奢な体に反するように高めた防御能力のおかげで、痛みはあるものの致命傷には至らない。
 次々と巨大スパナを持ったグレムリンが奏に殺到し、周囲ではツールボックスから何か判らない工具を取り出すもの、互いにアイコンタクトを取って透明化するものなど様々だ。瞬はそれを確認しながら、弓を番えるように構える。
「速攻でいきます。戦闘準備を整えさせる訳にはいかない!」
 ――氷晶の矢!
 その数およそ三桁にいたろうかというすさまじい数の矢が、グレムリンたちと大地に突き立つ。大地にぴきりと氷が奔る――その名の通り、氷属性の矢である。
「ありがと、瞬!」
「いえ。それより母さん、また来ます!」
「私が行くわ! ――信念を貫く、一撃!」
 響の後ろで巨大スパナを構えていたグレムリンに、奏が一気に武器を振り下ろす。その一撃はスパナを振り下ろすより速く目標に到達し、相手が慌てて交わすよりも早く、その体を両断した。
「……うっ、機械の精霊さん、倒しちゃった……」
「まあまあ。もっと良い精霊さんがいるかもしれないからさ」
「そうですよ。一体でこれなら身が持ちませんよ」
 ぐっと苦い顔をする奏を宥める響と瞬。瞬はその隙にも、また氷の矢を放ち、グレムリンを串刺しにしていく。
 奏にとって幸いだったのは、その死骸が灰になって消えてしまい、視認せずに済んだことだろうか。
 三人は家族ならではの密な連携で、敵を次々に撃破していく。

 やがてグレムリンの大群は少なくなり、目減りして、残り数匹になり――やがて最後の一匹までが消失した。
 残ったのは猟兵と、奥から聞こえる荘厳なメロディだけ。
「……音からして、パイプオルガンみたいだけど……なんで迷宮にそんなものがあるんだろうね」
「判りませんが、目印としては判りやすいかと思います。罠かもしれませんけど……」
「進むしかないよね! ううっ、機械の精霊さん……改心したらまた会おうね……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『叡智の守護者』

POW   :    叡智の封印
【翼から放たれた羽】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    叡智の斬撃
【鉈】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    叡智の風刃
レベル×5本の【風】属性の【羽】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠マユラ・エリアルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●使う奴
 猟兵が迷宮を進むたび、旋律はいよいよ大きくなっていく。
 それは時折思案するように止まっては、川のように流れていく、即興曲のようだった。時に激しく、時に優しく、猟兵の耳をくすぐる音に悪意はない。
 やがて猟兵たちは大きく開けた場所に出る。目につくのは大きな――パイプ。そしてその下部にいる、一匹のオブリビオン。

 ――旋律が、止まった。

「ホウ、あの群れを抜けてきたか」
 振り返るのは、梟と人間を足したような異形の徒。少なかったかな? と小首を傾げるその後ろには、聳え立つパイプオルガン。
「ホウ。やっとこの楽器の音色を聞くことが出来て、吾輩は安堵と少々の落胆を感じている。なにせずっと――眩暈がするほどずっと、このオルガンは吾輩の心を掴んで離さなかった。謎というのはいつだって高揚する。欠けた像が人々を魅了し続けるように」
 オルガンの蓋を閉じて、オブリビオンは猟兵に向き合った。
「君たちが求めるものは、このオルガンの中にある。――ホウ。取り出せない事はない。だが、取り出してしまったら吾輩はまた、思い出と憧憬に苛まれることとなる。なので返せない。困ったね」
 なんと身勝手な理由だろうか。猟兵たちは迷いなく武器を取る。
 それを見て、ホウ、とオブリビオンは唸った。
「困ったね。オルガンを血で汚したくはないのだが」
真宮・響
【真宮家】で参加。

まあ、奥深い音を聴いてみたい気持ちは理解出来なくもないけど、拘りの余り多大な迷惑をかけるのは頂けないねえ。思い出に浸るのは死の世界でどうぞ、だ。

敵の攻撃の性質からして近づくのは容易ではなさそうだし、危険そうだ。【目立たない】と【忍び足】で敵の視線から逃れつつ、【槍投げ】を当てる隙を伺う。子供達の攻撃で敵に隙が出来て槍を当てれたら、ドラゴニックエンドで攻撃するよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加。


むむ、機械の妖精に悪い事させてた黒幕は貴方ですか!!貴方が絡まなければ妖精は好きな機械いじりに専念出来てたかもしれないのに・・悪い事して出す音はただの雑音です!!ここで絶対に倒します!!

敵は遠距離攻撃に長けていて近づくと危険そうなので、【オーラ防御】と【盾受け】【武器受け】で盾になりつつ、刹那の見切りで技をお返しますね。お返し出来て敵がひるんだら儲けものです。鉈での攻撃は【かばう】も併用して積極的に引き受けます。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

他者から奪った物で奏でた音楽などただのノイズにしか過ぎません。音楽の奥深さと在り方を根本的に勘違いしているようで。さあ、パーツを返して貰いましょう。それは真に音楽を愛する人達の物です。

敵が風の刃と羽根を飛ばしてくるならこちらは氷の矢です。防御役の奏の援護と、響母さんの槍を確実に当てる為に【高速詠唱】【全力魔法】で氷晶の矢を撃ちます。必要ならば風の刃の撃ちあいもやりましょう。こちらに飛んでくる攻撃は【見切り】と【オーラ防御】で対処しますね。



 【間宮家】の面々はオブリビオンと対峙する。言い分はさまざまだ。
「奥深い音――聞いたことのない音を聞いてみたいという気持ちは理解できなくもないけどさ、その拘りで周りに迷惑をかけるのは頂けないねえ」
「むむむ。それに、機械の妖精さんに悪い事をさせるのもいけません! 貴方が絡まなければ妖精は好きな機械いじりに専念出来ていたかもしれないのに!」
「他者から奪ったもので奏でた音楽など、ただのノイズに過ぎません」
 まさに三者三様だが、共通して言いたいことはただ一つ。“お前のエゴで周りに迷惑をかけるんじゃあない”――だ。
「パーツを返して貰いましょう。それは真に音楽を愛する人たちのものです」
 瞬が詠唱する。それはまるで早回しのように――周囲に氷の矢を具現させ、全力を注ぐ。
「ホウ。吾輩も音楽を愛している。だからこそオルガンの音を求めた、それが理解できないとは」
「貴方のそれは愛ではありません! ただのエゴです!」
 オブリビオンの前に、果敢に奏が立ちはだかる。オブリビオンが放った羽の矢を、その両腕で一手に引き受けた。羽の数は瞬の氷の矢よりも遥かに多い。相殺しきれない、と読んでの事。腕に顔に、羽による切り傷と刺し傷が刻まれるが、それで退く奏ではない。
「奏!」
「だいじょうぶ、これくらい……っ!」
「ホウ、それを受けて立つというのか。ではこれはどうだろう」
 オブリビオンはすぐさま二撃目の羽をばらまく。それこそが奏の狙い――次こそは、見切って見せる。
 瞬が少しだけ速く矢を放つ。奏が見切りやすいように、その羽を相殺させる。多量の矢は面と面の撃ちあいとなる。羽が凍って落ちる音が、まるで奏でるかのように鳴る。
「ホウ。氷の矢とは優雅だね。けれど、そこのお嬢さんは串刺しを免れないようだ」
「いいえ……! そんな事にはならない!」
「ホウ」
 では、これでどうだろう。
 オブリビオンの矢が一斉に奏に向けて放たれようとした、その瞬間。
「そこっ!!」
「む」
 響の声が凛として、オブリビオンの横っ腹を槍が貫いた。肉をえぐり裂いて、鋭い槍が差し込まれる。――僅か一瞬の攻防だった。オブリビオンは身をよじり、槍が体にとどまるのを防ぐ。文字通り身を引き裂かれる痛みと共に、槍が体を抉って通り抜けていく。
「――……成る程。君たちは“三人”だったね」
「そう、アタシ達は三人――そして、槍にあたったアンタは終わりだ!」
 よくもアタシの娘に傷をつけてくれたね、と響は怒りを含ませる。その身から顕現したドラゴンが、槍に食いつくかの如く――“ドラゴニック・エンド”――オブリビオンへと踊りかかった。
「ふむ。困ったね」
 オブリビオンは動じない。いや、動じる事を忘れてしまったのかも知れない。ドラゴンがオブリビオンに襲い掛かり、その血と肉を求めても……ふむ、と唸って、両腕から羽を放つ。
「お母さんに手出しはさせない……! そこです!」
 奏とて、やられてばかりいる訳ではない。オブリビオンが放った羽の矢を見事に見切り、波動を放ってその推進力を減衰させる。羽はふわふわと宙を舞い、標的を見失って大地に落ちた。
「ふむ」
 ドラゴンの直撃を受けてなお――オブリビオンは立っている。小首を梟のように幾度か傾げて。
「侮れない」
「それはお互い様ってね」
 響が言う。
 このオブリビオン、なかなかしぶとそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

寧宮・澪
こっちも、貴方の血で、楽器のパーツ、汚したくは、ないですがー……。
返せない、という、戯言は、却下、なの。

【謳函】、使用。
【祈り】、【鼓舞】、しっかり込めて。
フクロウ、叩きのめす。
楽器のパーツ、取り戻す。
精霊の、音楽祭、聞きに行く。
【歌唱】、しますよー……。
頑張りましょか。

こっちへの攻撃はー…【オーラ防御】、【見切り】で、軽減してー……。
あっちに牽制で、【だまし討ち】ー……歌の中に、衝撃波、あてるフレーズ、入れれます、かねー……。

(アドリブ、連携歓迎ですよー……。)


霧亡・ネリネ
オルガンを聞きたいがために、こんなことをしたのか……本当にどしがたいぞ……!
オルガンの奴も、部品も音も、おまえだけのものではない!

「子猫のポルカ」による猫で飛んでくる羽に対処、
きょうだいと共に距離をしっかりとって戦うぞ
<フェイント>で中断からの攻撃回避、雷で焼きもらした羽には<オーラ防御>
他の猟兵とも連携し、羽根の対処と隙あらば本体への攻撃を


アスティリア・モノノフィシー
SPD
音の源がオブリビオンじゃなければ称賛するところでしたね。
いえ、もともとのパイプオルガンがそれほどまでに良いものということだったでしょうか。

オルガンを傷つけないように気を付けながら射撃です。
叡智の斬撃に注意しながら、距離を保ってユーベルコードを使用。こちらの攻撃範囲の方が上手です。

「精霊さんの音楽祭の方が、オブリビオンである貴方の思い出と憧憬よりも大事です」

遠慮なく、休む間もなく、攻撃を続けます。



「こっちも、貴方の血で、楽器のパーツ、汚したくは、ないですがー……返せない、という、戯言は、却下。なの」
 澪がぼんやりと言う。ぼんやりとしている割には結構えげつない言である。
「オルガンを聞きたいがためにこんなことを……本当にどしがたいぞ! オルガンの奴も、部品も音も、おまえだけのものではない!」
 ネリネが怒りもあらわにそういうと、きょうだいを高々と吹き鳴らす。にゃあにゃあ、猫の鳴き声が混じり、いかづちを纏った猫が真っすぐと梟へ向かう。
「音の源がオブリビオンじゃなければ、称賛するところでした。……元々のパイプオルガンがそれほど良いものということかもしれませんが」
 アスティリアが銃に魔力を込めながら言う。確かに、入り口からでもよく見えるそのパイプオルガンは古く、よいもののように思えた。
「オブリビオンである貴方の思い出と憧憬より、精霊さんの音楽祭の方が大事です。という訳で、失礼しますね」
 丁寧な物言いながらも、しっかりと排除するべきものは排除する。アスティリアは構えると、炎の弾丸を遠慮なしに放った。隙をついて近付こうとしたオブリビオンだが、まるで面攻撃のように飛来する弾丸に、思わず鉈を盾に使ってしまう。
「ふむ、これは困ったね」
「はい、存分に困って下さい」
 鉈でアスティリアの弾丸を受けながらも、その腕から羽を放つオブリビオン。その羽は違わずいかづちの猫を撃ち抜いて。
「おのれ! かわいい猫になんたることを!」
「ふむ。見た感じでは可愛いだけではなかったようだが」
 その行いはネリネの神経を逆なでするばかり。しかし近付いてはいけない、鉈と羽が待っている。ネリネは遠くからいかづちの猫を増やしつつ、退け損ねたオブリビオンの羽を避け、遠距離からの援護に終始する。
「はい、がんばりましょー……」
 オブリビオンは動けない。そう判断した澪が箱型ガジェットを展開する。開かれて飛び出すのは、澪自身の歌声。祈りと鼓舞を込めて、フクロウを叩きのめす。楽器のパーツを取り戻す。そして精霊の音楽祭を聞きに行くのだと歌う。ガジェットに内蔵された歌に合わせて、澪が歌う。二重の歌は螺旋を描いて、フクロウの耳に届く。
「よい歌ですね」
「うむ、力がみなぎるのを感じるぞ!」
 その内容に共感した猟兵たちは、力が増すのを感じた。けれど、オブリビオンは――
「ふむ……内容は到底共感できないものであるが、この歌声は素晴らしい。せめて、」

 せめて、吾輩のために歌ってほしかった。

 ――その傲慢たるや。
 しかしオブリビオンの願いは届かない。子猫たちに足止めをされたまま、羽で撃ち落とし損ねた炎の弾丸に額を撃ち抜かれ。
 音楽を傲慢に愛したオブリビオンは、灰となって過去へ還るのだった。

「やったか! あのごうまんオブリビオンめ!」
「これで、精霊さんの、音楽祭が、聞けますねー」
「ええ。……ところで、パイプオルガンってどうやって解体するんでしょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『精霊音楽祭』

POW   :    楽器で演奏するなど

SPD   :    ダンスを踊るなど

WIZ   :    歌を披露するなど

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●調和の斉唱
 パイプオルガンに組み込まれた部品は、見てすぐに判別することが出来た。放置されたオルガンのさび付いたパーツの中にある、新品同様磨き抜かれたパーツはいっそ可哀想でもある。
 時間はかかったがパーツを一つ残らず外して、迷宮を出る猟兵たち。すると、精霊たちがふわふわと待ちわびているのに気付いた。
 こっちだよ、と誘う精霊。誘われるままについていくと、別の迷宮がぽっかりと口を開けている。
 そこからは不思議な音程の声と、ふわふわした楽器の音。間違いない、精霊たちが住処とする迷宮だ。

 精霊たちは猟兵に――猟兵の持ってきたパーツに、わっと群がった。
 そして各々がパーツをあるべき場所にはめ込み、音を確かめると……早速曲を奏で始める。誰も聞いたことのない、けれどとても感傷的な歌。
 精霊たちは奏で続ける。猟兵への感謝を込めて。
寧宮・澪
おー……なんとも、妙なる、歌ですねー……。
すてき、ですー……。

曲と、歌を味わいつつ、一緒に、歌わせてもらえる、でしょかー……。

邪魔しないよーに……精霊さんの曲や歌を、より、高みへ、より、深くー……。
合わせて、併せて、共に、響かせて。
【歌唱】しますー……。
揺蕩うように、踊るように、流れるようにー……。
聞いてる人が、心地よく、なるようにー……。
【祈り】ながら。

うん。
一緒に歌えて、幸せ、ですよー……。
メッティさんも、一緒に歌いましょー……。

(アドリブや、絡み、連携、歓迎ですよー)


アスティリア・モノノフィシー
SPD
精霊さんの音楽祭!
とても楽しみにしていました。
猟兵のお仕事って戦いや捜査とか緊張感の抜けないものばかりですので、こういう音楽祭でリフレッシュ出来るのって嬉しいです。
精霊さんには感謝を伝えながら間を縫うようにダンスを楽しみます。
「やっぱりこのパイプオルガンはいい音です」
弾いている演奏者も違いますしね。
メッティさんいらっしゃるなら一緒に踊りましょうと声をかけてみます。
みんなで楽しむのこの音にはぴったりだと思うんです。


真宮・響
【真宮家】で参加。

いやはや、手間かけさせたね。パーツはようやく本当の持ち主の元に戻った
。ここからはアタシたち一家のもう一つの顔の出番だ。そう、音楽一家としての顔だ。

アタシは瞬の楽器演奏に併せて歌を歌うよ。(アルトのハスキーボイス。伸び伸びとして声量がある)奏はこれでもダンサーだから、アタシの歌と瞬の楽器演奏なら、可憐な踊りを披露してくれるだろうね。ああ、こういう時間もいいものだ。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

手強い敵でしたが、なんとかなりましたね11(ぐぐっ)ここで存分に踊っていいというのでワクワクです!!戦いの技ばっかり使ってますが、これでも私、ダンサーですから!!

響母さんと瞬兄さんの楽器演奏でバックは完璧です!!ノリノリで踊っちゃいますよ~。空を掛ける踊り手たる所以、お見せします!!(まるで風の精が舞い踊っているようなしなやかで可憐な踊り)


神城・瞬
【真宮家】で参加。

音楽を愛する者同士、協和音を重視した僕達の信念が勝ったということですかね。やれやれ、ようやく騒動が収まりました。元々真宮の家族は芸術一家。存分に演奏会を楽しみましょうか。(愛用のインカムを調整)

僕は楽器演奏を担当しましょう。専門ですからね。響母さんの歌と奏の踊りと併せれば素晴らしい舞台をお見せできると思います。たまには戦いの日々を忘れて、こういう時を過ごすのもいいですね。


霧亡・ネリネ
ふわふわ、ふわふわ。聞いたことのないものだけれど、
綺麗な演奏に首をゆっくり傾けて聞く
拍子に合わせてちょっと揺れてみたり、めいっぱい楽しみたいな
こういうのは幻想的っていうのだろうか。すてきな音だ

もちろん、演奏が終わったら拍手もわすれないぞ
すごく素敵な演奏をありがとう!のきもちをいっぱい込めてぱちぱちする



 ふわふわ、ふわふわ。聞いたことのないような、何処か遠い昔に聞いたような、不思議な音の群れに、ネリネはご機嫌だ。だいじなきょうだいと一緒に、精霊のセッションを聞いている。人間の作った楽器では出せない音だ。とてもうつくしい、とネリネはトパーズの瞳を輝かせる。
 最後の最後まで聞いていよう。聞き終わったら一番に拍手をしよう。この素晴らしい演奏会に、いられることこそが光栄だと。
 精霊たちが、試し吹きから演奏へと流れるように入っていく。合わせてネリネの身体もゆらゆら、揺れる。まるで鼓動まで同じリズムで脈打っているかのような感覚に、そっと身を任せる、なんと心地よい事か。

「なんとも、妙なる歌ですねー…すてき、ですー……」
 澪は精霊の奏でる音に、酔ったようにふわふわと。それでもこの機会を逃すまいと、耳だけはしっかりすまして、そっと、己の声を差し込む。
 最初は精霊のセッションを邪魔しない程度に。ピアニシモからメゾピアノ、アンダンテからモデラート。奏でる楽器の音を声で包み込むように、澪の歌声が響く。祈りを込めて、澪は歌う。揺蕩うように、躍るように、流れるように。聞いている人々が、音楽を愛せるようにと、祈りを込めながら。
 観客は数人。だけれど、数は関係ない。そこにいる人のために、奏でる楽器のために、己のために、幼い音楽家たちは全力を捧げるのだ。
 澪は席を立つと、とあるケットシーが座っている場所へ向かった。歌を奏でながら、そっと手を伸ばす。ケットシー――メッティは驚いたように真っ黒な目をぱちぱちさせて、あ、う、と口を開いたり閉じたりする。
 大丈夫、緊張しなくても良いんだよ。と、澪が真似してごらんというように簡単なメロディを歌う。メッティはそれなら判る、と、小さな声でメロディを追いかけた。そのメロディを澪が更に追いかけて、メッティが追いかけて――

「お歌の次は踊りもいかがですか?」
 くるりと小さなケットシーの手を取ったのは、アスティリアだった。悪戯っぽく笑って、簡単に体を揺らす。
「あ、アスティリアさん! ぼく、お、お歌うたえたよ! びっくりしたあ……!」
「ええ、聞いていましたとも。お上手でしたね」
「ううん、ううん。澪さんが教えてくれた音を、真似しただけで……歌も踊りも、楽しいや」
「私もです。猟兵のお仕事って、緊張感の抜けないものばかりですから……こういうリフレッシュできる時間は貴重ですね」
 二人で手を取り合って踊る。メッティはアスティリアの負担にならないように背伸びをして。
「あのパイプオルガンの音も、聞いてみたかったですが」
「そうだね……ちゃんとしたパーツを入れて、鳴るようにしてあげたいね!」
 オブリビオンの根城にあったパイプオルガンは、今は鳴らない。パーツがないからだ。けれど、精霊に聞けば何処を取られたか判るし、きっと楽器店へいけば揃うはず。
 聞くときはぼくもいていい? と問うケットシーに、もちろん。とアスティリアは頷いて、くるくると彼をターンさせた。

「さあ、ここからが本番だよ」
 そういうのは【間宮家】響。頷いたのは奏と瞬。彼らは猟兵だけでなく、音楽もよく嗜んでいる。瞬にいたっては愛用のインカムを戦場に持ち込むほど。――もっとも、彼にとって必要な武器だから、なのだが。いや、野暮な話はよそう。彼は一音楽家としていまここにいる。
 一家はうきうきと準備をして、奏は準備運動。精霊たちが何をするのかと興味津々、各々楽器を奏でながら集まってくる。
「少しお邪魔させて貰うよ。アタシたちも音楽が好きなんだ」
「そうなんです! 私、踊り頑張ります……!」
 今にも飛び跳ねてしまいそうなほど、奏は嬉しそうだ。
 踊りかな? 踊るのかな? と、精霊たちも奏の周りをくるくる回る。はい、踊ります! その答えの代わり、くるりと奏は美しいターンを決めた。
 やがて、瞬が準備を終えたのだろう。楽器の音が鳴り響き、精霊の楽器の音と交じり合う。その不思議な音といったら!
 瞬が奏でるメロディに合わせて、響のアルトが優しく歌を奏でる。声量は精霊のセッションを邪魔しない程度に抑えて。すると精霊たちがすぐに楽器の音で入ってきた。時折とんちんかんなところもある精霊のメロディを、響はいっそ楽しむように歌に取り入れ、織り交ぜる。
 合わせて奏が空を舞うように踊る。スカイダンサーである彼女にとっては、大地も空もさほど変わらない。くるりくるり、爪先が踊って、精霊たちを時折悪戯に巻き込んで。まるでそれは、風の精霊が現れたかのよう。まさに風の精霊が誘われて、くるりくるり、つむじ風。髪が風に舞うのも楽しいと、奏は無垢な微笑みを見せる。

「やれやれ。ようやく騒動が落ち着きましたね……元々僕らは芸術一家。存分に楽しみましょう……といっても、二人はすっかり楽しんでいるかな」
 後方で楽器を爪弾きながら、瞬は少しだけ苦笑する。
 血のつながらない己を育ててくれた母と、一緒に育ってきた義妹。天真爛漫なところがよく似ていて、だから自分は此処にいて、だから精霊たちともすぐに仲良くなれるのだろう。
 ――此処にいて、此処にいられてよかった。瞬はその感謝の気持ちをほんの少し、優しく楽器に乗せた。改めて言うのは何となく気恥ずかしいから、優しい音に感謝を込めて。

 人間の作った楽器と、精霊が授かった楽器。
 人間が奏でる音と、精霊が奏でる音。
 人間が歌う声と、精霊の歌う声。
 二つの音の重なりが、空へ舞い登り溶けてゆく。
 やがてその音が迷宮から大空へ消えていくと、拍手がぱちりぱちりと、最初は一つ、そしてさざ波のように広がって、大きな拍手の群れとなった。
 ああ、最初に拍手をしたのはきっとネリネだ。誰よりも音楽を楽しんでいたのだから。

 猟兵たちは明日もきっと、修羅場へと向かうのだろう。
 けれど今はただ、音楽に合わせて心を揺らして。一人の音楽を愛する者として、精霊たちと戯れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月28日


挿絵イラスト