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寄る辺

#UDCアース

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#UDCアース


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●寄る辺
 五月の空はよく晴れていて、陽が落ちるにはまだ少し時間がかかる。直射日光にあたればその暑さに参ってしまうかもしれない。
 少女は冷えきった暗い室内で、祭壇に向かって一心に祈りを捧げていた。彼女の後ろに控える大人達は、皆にこやかな笑みを浮かべている。

「あの子はこれまでの誰より美しく聡明だわ」

「そうさ、彼女こそ我々が待ち望んでいた存在だ」

「あの方のご意思を誰よりも理解できるだろう」

 口々に少女を褒めたたえる大人達の言葉に、少女はふっと小さく口元を緩める。こんなにも大勢の人が、わたしを見ていてくれる。わたしを認めてくれている。それもすべて、『神様』がわたしを選んでくれたから。

 わたしは選ばれたから、もう大丈夫。生きる場所を、与えられた。

 この場所は、誰にも奪わせない。

●かえる場所
「来てくれてありがとう、UDCアースで事件だよ」
 揺歌語・なびき(春怨・f02050)が集まった猟兵達へ語りかけると、グリモアアースの風景は現代日本の街並みを映し出す。
「邪神教団の拠点を見つけてね、皆には教団の壊滅をお願いしたいんだ。当初はUDC組織でも特に害のない新興宗教団体だと思われてたんだけど、予知で視たら、邪神復活の為ならなんでもする真っ黒な団体だったんだよねぇ」
 灰緑の男は眉を下げて、困ったような笑みを見せる。
「目的地は、彼らが管理していたビル1棟まるごと。教団員の殆どは組織に捕まったか、一目散に逃げ出してるよ」
 既に殆ど人が居ないのなら、壊滅しているも同然ではないのか。問われ、なびきは頷く。
「まだね、後片付けが必要なんだ。彼らが残していった置き土産として、スライム状の人造生命体の群れが居る。女の子に擬態して、なんでも溶かして捕食しちゃう危険生物だよ。オブリビオンだからね、これを処分するのに、猟兵の力が必要なんだ」
 それに、と区切ってから男は続けた。
「邪神と教団員達に選ばれて、神子になった女の子が一人残ってる。彼女はもう、人間に戻れない。君達には、彼女を殺してほしい」
 どういう境遇かまではわからないが、教団に拾われ、邪神の神託をうけたり、新たな信者獲得や儀式遂行の看板役を務めていたらしい。
「彼女はこの団体に恩を感じてるのかもしれないね。でも、実際彼女の前にも同じ役目を担った子達は沢山居たんだ。全員、若さを保てなくなってから、捨てられちゃってる」
 捨てる、という言葉をどういう意味で使ったのか、彼の表情を見て察する者も居るだろう。
「それにね、これは捕まった教団員からの情報なんだ。誰も彼女を心配しちゃいないし、誰一人救おうともしてない。……ね、皆は彼女を、可哀想って思うのかな。でも、殺さなくちゃいけないんだ」
 ふわりと笑みを溢して、桜の瞳はゆるく薄紅の光を放つ。
「終わったあとはすぐに帰還……って言いたいところなんだけど。おれ、ちょっと組織の事後処理を手伝わなくちゃいけないんだ。ごめんね、皆には、近くのカラオケで待っててほしいな」
 場末の24時間営業のカラオケボックスは貸し切り、一人で熱唱するもよし、誰かと楽しむのもいいだろう。
「終わり次第おれも合流するけど、皆が満足するまで楽しんでくれたらいいな。温泉とかじゃなくて、申し訳ないけど」
 他に説明はなかったか、ひぃふぅ指折り数えてから納得したように頷き、なびきはテレポートの為に猟兵達を手招きする。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●成功条件
 全てのオブリビオンを撃破し、カラオケボックスで楽しむ。

 第3章は相部屋OK、一人部屋希望などの明記をお願いします。
 お誘いがあれば揺歌語・なびきが同席させて頂きます。歌は聴く専門。

 どの章からのご参加もお気軽にどうぞ。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『不定形少女』

POW   :    あたまはこっちにもあるよ
自身の身体部位ひとつを【自分が擬態している少女】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    みんなとかしちゃうよ
【触手状に伸ばした腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【衣服を溶かす溶解液】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    いっしょになろうよ
【全身を不定形に変形させて】から【相手に抱きつくために伸ばした身体】を放ち、【少しずつ溶解させていくこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大神・るり
【心情】
あまり争い事は得意じゃないんだけれどそろそろ引きこもりを脱却しないと怒られそうだから頑張って依頼をこなしていくよ。

なんでも溶かすスライム……。強力な酸を持っているのは危険だからね。早く駆除しないとまずいんだよ。

いや、でも溶かされる感覚というのもちょっと味わってみた……いや、断じてないんだよ。少し気になるなんてそんなことは断じてないんだよ。

【戦闘】
戦闘は「絶望の福音」を使って敵の攻撃を基本的に避けつつ「猛毒の鎌鼬」でじわじわと毒で体力を削る。そして読みやすい攻撃が来たここぞという時に「オペラツィオン・マカブル」で反射をして敵を倒すよ。

……あれ、ワタシとすごく相性悪い?



 ようやっと降りてきた夕闇は瞬く間に夜へと変わる。猟兵達がビルへ突入すれば、それらはすぐに這い出てきた。
 緑の粘液状のそれらは、ぬるりべちゃりと気味の悪い音を立てる。少女を模した顔は、どの個体も同じものに統一されていた。
「あまり争い事は得意じゃないんだけれど」
 大神・るりは隈の見える瞳で緑の少女達を見つめ、小さくため息をつく。
「……ま、そろそろ引きこもりを脱却しないと怒られそうだし」
『ねぇ、ねぇ』
『いっしょになろうよ』
『わたしたちと、いっしょに』
 すがりつくように声をあげながらも、同じ顔は全て同じ笑みを浮かべている。感情の見えない笑みだった。
 伸ばされた腕はずるんと長い触手状に変わり、勢いよく放たれたそれがるりの腕を縛りつけるが、彼女が居た筈の場所には誰も居ない。標的を見失った触手は床へ落ち、じゅわりと爛れた痕を残す。
「ふぅん、強力な酸なんだね」
 10秒先を読めたなら、あとは回避すればいいだけ。高濃度の酸に溶かされた床をちらりと見て、ふと浮かぶ思いを口にする。
「いや、でも溶かされる感覚というのもちょっと味わってみた……いや、断じてないんだよ」
 誰に言うでもなく、首を横に振って否定する。少し気になるなんて、そんなことは断じて。
 次々に繰り出される触手の腕を軽く躱しながら、白衣のポケットに入れていた手を出す。取り出した医療用メスは、暗闇の中で光を放つ。ひゅっと投げた一本が一匹の身体に突き刺されば、その後も次々と他の個体へ命中。
 メスの刃に仕込まれた猛毒は、みるみるうちに少女達の身体をおかす。鈍くなっていく動きを観察しながら、少女のように幼い見目の女はすぐ先の未来を読み続ける。
『いっしょになろうって、いってるじゃない』
 毒におかされ先程よりも随分鈍くのろく、大振りな動きで一匹が腕を伸ばした時。るりは身体の力全てを抜く。崩れ落ちるのではないかという矢先、寄り添うからくり人形からずるりと這い出た粘液の緑が個体めがけて襲いかかる。
「自分の酸に溶かされる気分はどんな感じなのかな?」
 煙をあげてぐずぐずに溶けていく姿を一瞥し、黒い瞳は揺れることなく少女達にメスを投げつけていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・優希斗
連携・声掛けOK
…運が無かった、としか『神子』とされた子には言う事が出来ないな
けれども、俺に出来ることは一つ
望む望まないに関わらず人身御供にされた神子に、せめて引導を渡して安らかに眠って貰う
ただ、それだけだ
(目前の少女達を見て)お前達は、彼女の意志で動かされている存在なのか?
例えそうだとしても…俺は『神子』にこれ以上の罪を背負わせつもりは無い
だから…さよならだ
触手状に伸ばした腕を見切り、残像で回避しながら、カウンター、ダッシュ、先制攻撃で肉薄
属性攻撃+範囲攻撃+薙ぎ払い+串刺し+傷口を抉るを重ねてUC使用
体内から彼女達を凍てつかせて倒すよ
更に二回攻撃+騙し討ちで追撃で掃討
「…御免な」



 人の生活していた気配を感じながら、北条・優希斗は歩を進める。想うのは、この先で待ち受ける神子と成った少女のこと。
 運が無かった、としか言う事が出来ない。本来なら何が彼女の幸いであったかなど、自分が思い馳せても仕方のないことで。けれど、
「俺に出来ることは、一つ」
 望む望まないに関わらず、人身御供にされた少女に引導を渡す。せめて彼女が、安らかに眠れるように。
『ねぇ、』
『さみしそうなかお』
『わたしたちといっしょになろうよ』
『さみしくないよ』
 青年の想いを知ってか知らずか、緑の少女達は笑顔であやしく招く。眉をひそめて、優希斗は問うた。
「お前達は、彼女の意志で動かされている存在なのか?」
『さみしいのね』
『いっしょならだいじょうぶ』
 それが彼女達なりの答えなのか、そもそも意思があるのかもわからなかった。少しだけ口を噤んでから、漆黒の瞳は少女達を見据える。
「俺は、『神子』にこれ以上の罪を背負わせつもりは無い」
 ずるりと伸びる触手が狙った先、捉えた筈の青年は何処にも居ない。どす、と鈍い音を立てながら触手が壁にぶつかると、コンクリートが溶けるひどい異臭が辺りに広がる。
 ならば全員でかかるのみと判断したのか、少女達は一斉にどろりとした緑を優希斗めがけて一気に伸ばす。
「無駄だ」
 彼がひらりとその身を翻すたびに、黒衣の外套が少女達の視界に残る。狙い澄まして確実に掴んだ黒衣は、その裾に焦げた痕すら残せない。
 少女達ががむしゃらに触手を飛ばす度に、かき消える残像の直後。緑の群れに素早く接近した優希斗本人の動きに、群れは咄嗟に対応できなかった。
 常人には捉えられぬ速度の蒼い月の舞は、彼女達の体内から蒼く輝く氷柱を実体化させる。否応なしに串刺しにされた身体はみるみるうちに凍りつき、ぴしりと音を立てた。
 辛くも氷柱から逃れた個体が腕を伸ばすよりも早く、美しい刃がその身を斬り裂く。
「……御免な」
 振り返ることなく呟いた言の葉を、誰が聞いていただろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

依神・零奈
いつの時代も道を外れた信仰ってのは厄介なものだね
……ま、ともあれ平穏を乱す輩を成敗して人の世を護るのが
私の仕事、例え人が私の事をすっかり忘れて、迷信だ妄想だと
囃し立ててもそれは変わらない……笑えるね

人の姿を真似たオブリビオンが相手か……
まぁいいや、さっさと始めよう

言葉は時に力を得て、災いを招き寄せる(UC発動)

「キミ達は形を失い、命を失い、そして今を失う事になる」
発した言葉に宿った言霊の力で相手に災禍を与えるよ
室内の機械類やガス配管の爆発でバラバラに吹き飛ばし
燃え広がる炎で燃やし尽くしてしまおう

それでも襲い掛かってくるのがいたら……
めんどくさいけど霊符で迎え撃つしかないね



 守り神は思う。いつの時代も、道を外れた信仰は厄介だと。けれど平穏を乱す輩を成敗し、人の世を護るのが彼女の仕事――例え人が彼女を忘れ、その存在を迷信や妄想の域へ追いやり嘲るとしても。
「……笑えるね」
 そこに在るのは信仰を忘れた人々への怒りか、哀しみか、それとも。依神・零奈が一言洩らした時、緑の少女達が広い部屋を塞ぐ。
『ねぇ、ね』
『いっしょになろうよ』
『わたしたちと、ずっと』
 少女達はどの個体もひとしく同じ笑みを浮かべ、ずるりと緑の身体を轟かせる。人のかたちを真似た化け物に、零奈はさして関心を向けることもなく己の仕事を始めた。言葉は時に力を得て、災いを招き寄せる。
「キミ達は形を失い、命を失い、そして今を失う事になる」
 その一言が、感情を乗せることなく朗々と紡がれると同時、少女達が全身を人のそれとは明らかに違う不定形なものへと変える。伸ばした粘液が零奈に触れるよりも先に、何かが小さく破裂する音がして、次いで鳴り響く大きな大きな爆発音。
 放置されていた家具や機械類は見るも無残に燃え盛り、緑の群れはぐずぐずに焼け爛れ熔けていく。立ち込める異臭は、衝撃で吹き飛んだ窓から煙と共に、暗い夜闇へと逃げていった。
『ァアアァァア』
『アツィ、ァツィ、アァア』
 爆発は一度だけでは済まず、給湯器やパソコンが次々に散っては、破片は少女達に突き刺さる。何故か廊下や隣室へ延焼することはなく、その一室だけが地獄と化していた。
 部屋の真ん中に佇んでいるにも関わらず、その貌に傷ひとつついていない守り神の瞳に映るのは、形を喪い、命を失い、今を失ったそれら。
「ああ、熱いかい?すぐにわからなくなるさ」
 黒へと変色し始めた緑の個体が叫びながら全身をうねらせる。抱きしめるように両腕に似たなにかを伸ばすも、ひゅっと軽い動作で投げられた符を受けた途端、ぐずりとその場で熔け落ちた。
「言っただろう、失うって」
 その一言に、感傷は無かった。
 どうせこれらは、人の真似をしていただけなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネロ・ケネディ
……信じる神がでっち上げだったなんて、どんな気持ちだったんでしょう
身勝手な人間と、理不尽な邪神と、たった一人の女の子
救ってあげられる、のかも、わからなくて
……私には、難しいことかもしれません。
灼き尽くす事だけなら、できるのに



【無音の魔弾】で焔を手に纏います
手を噛んで、牙で少し皮膚をちぎって
……なんでも溶かしてしまうといえど
焔は溶かせないでしょう?
直ぐ終わらせますから、逃げないで
手が触れなくとも燃やせる物があれば、それに日を灯して投げつければいいから
まだ、新米なので上手く皆さんのようには出来ないけれど
それでも、あなた達が「みんなの笑顔を邪魔する」存在ならば
――全て燃えて、朽ちて、灰にして



 猟兵達の探索は続く。こつん、と小さな足音を響かせて、ネロ・ケネディは階段を上っていく。
 信じた神がでっちあげだったと知らされた時、その気持ちはどんなものだろう。誰もが保身に走った身勝手な大人達、彼らの邪悪を吸い上げる理不尽な邪神、そして、たった一人の女の子。
 自分は、彼女を救ってあげられるのかもわからない。
「……私には、難しいことかもしれません」
 『資料室』と書かれた部屋のドアノブに手を掛けると、右手に埋め込まれた焔の紋がちらりと覗く。灼き尽くす事だけなら、できるのに。
 ドアを開ければ、そこは金属製の棚が並ぶ広い部屋だった。資料室という名の通り、様々な書籍やなんらかの書類が積まれたダンボールが置かれている。群れる緑の少女達は、部屋のあちこちからべちゃりと音を立てて入口へと這い寄る。
『あなたもいっしょに』
『ねぇねぇ』
『わたしたちと、おなじになろう』
 全て同じ笑顔はどこか空虚で、ネロは一度だけ小さく息を吐く。右手を口元へ近付けると、ぐっと自らへ牙を立てた。がり、と皮膚を貫く感触と痛みを伴って、白い肌からは青黒い炎が噴き出す。
「なんでも溶かしてしまうといえど、焔は溶かせないでしょう?」
 あいする者達の呪いの焔が、彼女の魔弾。放たれた蒼黒は少女達の身体に火を灯し、轟々と燃え盛る。
『ァツ、アツィイイイ』
『アァアァアアア』
 熱に苦しむ少女達の叫びを聞きながら、手近にあった書類の束を引っ掴む。とある個体がネロにぐっと接近すると、ぬるりと伸ばした人を模した腕が緑の少女の頭部へと変化した。大きく口を開いたそれが牙を剥くよりも速く、蒼い少女は火の点いた書類を投げつける。
 あっという間に燃え広がった個体から退避し、次々に焔灯る紙片をばら撒いていく。逃げ惑う少女達に半魔の蒼は呼びかけた。
「直ぐ終わらせますから、逃げないで」
 新米の自分では、別行動で戦いを繰り広げる他の猟兵達の勇猛さには、まだまだ届かないかもしれない。それでも、彼女達が『みんなの笑顔を邪魔する』存在ならば。
 ――全て燃えて、朽ちて、灰にして。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャック・スペード
――お前達も、棄てられたのか
置き去りにされて退屈だったろう
一緒には成れないが遊び相手位は務めてやれる
さあ、ショーを始めよう

召喚するガジェットは、蒸気仕掛のガントレット
怪力で対象を掴まえて蒸気の熱を秘めた其れで炎属性攻撃を
敵に囲まれた時はガントレットを振り回し
衝撃波で周囲の敵を範囲攻撃したく

抵抗するなら其れは其れで良い、ひとつの命として当然の反応だ
然し我が友、チェネルを溶かされては敵わん
伸びてくる触手はリボルバーで撃ち落とし
腕が絡みつけば根元付近を踏みつけ分離を狙う

俺の目に映るお前達は到底ヒトに見えないが
それでも、腕を振るう度に胸のコアが軋む
此れが弱さなのだろうか、「こころ」とは度し難いものだな



「お前達も、棄てられたのか」
 大きな躯体は少しだけ窮屈そうに、緑の少女の群れと向き合う。ジャック・スペードを見つめるいくつもの笑顔に、彼は自分の境遇を重ねた。
『ひとりはいやだよね』
『ねぇねぇ、わたしたちと』
 口々に呼びかけながらずるりと粘液の身体を移動させる少女達に、ジャックは優しく言葉を返す。
「置き去りにされて退屈だったろう。一緒には成れないが、遊び相手位は務めてやれる」
 さあ、ショーを始めよう。ヒーローが喚びだしたのは、巨大な蒸気仕掛けのガントレット。ごしゅ、という駆動音と共にはがねの腕に装着すれば、ぼわんと部屋中に湯気が籠り始める。
 緑の群れが一斉に纏わりつく前に、とある個体を尋常ならざる怪力が掴みあげた。止むことのない蒸気の熱はガントレットを灼熱の兵器へと変え、ジャックが強く握りしめるほど個体は爛れて悲鳴をあげた。
『いっしょがいいよ』
『さみしくないよ』
 爛れて熔けた仲間に目もくれず、少女達はヒーローを求める。しかし囲まれようとも彼は焦らず、拳を握りしめたままの巨大な腕を振り回す。一斉に熱を浴びて薙ぎ払われた少女達はぐちゃりと音を立てて飛び散るが、それでも数はまだ減らない。何かを欲しがるように、長い触手を一心にジャックへ伸ばした。
「抵抗するなら其れは其れで良い、ひとつの命として当然の反応だ」
 ガントレットとは逆の腕が持つリボルバーの、銀の歯車がかちりと噛み合い。伸ばされた触手へ狙いが定まる。
「然し我が友、チェネルを溶かされては敵わん」
 シンプルでいてよく響く射撃音はいとも簡単に触手を撃ち落とし、気味の悪い音と飛び散る緑の部位。ジャックの灰色の友は忠実に彼の身を守り、撥ねた緑も弾き返す。なおも諦めず絡みつく腕と笑顔を見下ろし、身体の根元を踏みつける。重厚な躯体に潰された個体は、びくりと僅かに動いた。
 この目に映る彼女達は、到底ヒトには見えない。だのに、熱を帯びた腕を振るう度に、胸のコアが軋んで響く。
「『こころ』とは度し難いものだな」
 ――これが、弱さなのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

冴木・蜜
彼女はきっと
本当に選ばれただけなのでしょう
たったそれだけの事実が
彼女自身に取り返しのつかぬ陶酔を与えてしまった

…まるで毒のようですね

取り出した注射器を用い自身を『偽薬』で強化
その上で体内毒を濃縮しておきます

取り出した医療器具で
迫る少女たちを迎え撃ちましょう

少女の頭部が噛みついてきたら
敢えて躱さず喰わせてあげましょう
それを待っていたのです
痛いのは苦手ですが慣れています

喰われた身体さえも使って
私の毒蜜で内側から融かして差し上げます

貴女がたは知らないのかもしれませんが
相手を融かす存在は貴女だけではないのですよ
より強い毒蜜を味わうといい

さあ 最後はせめて苦しまずに
おやすみなさい



 その青年は白衣に身を包んでいるのに、どうしてか闇によく馴染む。人間の脚に成りきれぬタール状の下半身で、冴木・蜜は静かに歩く。
 選ばれた少女はきっと、本当に選ばれただけ。たったそれだけの事実が、彼女自身に取り返しのつかぬ陶酔を与えてしまった。
「……まるで毒のようですね」
 ぽつりと呟く彼に迫る、無数に蠢く緑の影。同じ笑みは暗闇の中で不気味に浮かび、うわごとのように同じ言葉を繰り返す。
『あなたもいっしょに』
『おなじになるの』
『ずっと、』
 蜜は無言で注射器を取り出し、慣れた手つきで首に突き刺した。細い針から注入される液体は、彼の体内を循環する毒を濃縮する。黒い御手からぬるりと出てくるメスや鉗子はどれも錆びついており、襲いかかる群れを斬りつける度に、彼女達の体内を猛毒がおかす。
『ねぇ、さみしいでしょう』
 すぐそばでそう呼びかけた個体の腕が、ぐにゃりと少女の頭部へ変わる。大きく開けた口を躱すことなく、蜜は自らの左腕を噛みつかせた。その一撃を合図に、他の個体も次々に彼の身体に喰らいつく。
「それを待っていたのです」
 喰い千切られる苦痛で顔を歪ませるものの、声は冷静そのもの――この身は随分前から、痛みというものに慣れている。
 人間の腕や脚の形をしていたソレは、少女の頭部がごくりと呑みこんだ。四肢を奪われた蜜の胴体からは、黒い粘液がぼとぼとと溢れ出る。
「美味しいですか」
 呼びかける青年を更に喰らおうとした頭部達が、突然動きを止める。胴から離れた四肢ですらも、蜜の猛毒が宿っている。それはやけに甘く身体を巡り、少女達は呻き声をあげながら、どろりと静かに融けていく。
「貴女がたは知らないのかもしれませんが、相手を融かす存在は、貴女がただけではないのですよ」
 痛みは決して感じていないのだろう、けれど自分の身に何が起きているのか、わからないのかもしれない。
「さあ、最後はせめて苦しまずに」
 おやすみなさい、と呼びかける青年の声は優しく穏やかで。
 少女達は皆、不思議そうな表情のまま、ゆっくりと形を失くしていった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『敬虔なる邪神官』

POW   :    不信神者に救いの一撃を
【手に持つ大鎌の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    出でよ私の信じる愛しき神よ
いま戦っている対象に有効な【信奉する邪神の肉片】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    神よ彼方の信徒に微笑みを
戦闘力のない【邪神の儀式像】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【邪神の加護】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天通・ジンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ビルに蔓延っていた緑の少女達は、猟兵達によって全てが骸の海へと還った。
 最上階の部屋へと足を踏み入れた猟兵達の目に飛び込んできたのは、部屋の中央に置かれた真っ黒な祭壇。絨毯が敷き詰められた床が荒れた形跡はない。

「来たのね、異教徒」

 祭壇の背後から聞こえてきた声は鈴のようで、冷たい色をしている。
 現れた神子の顔は、先程猟兵達が倒してきた緑の少女達と同じ――否、あの顔の群れよりも、美しく整っている。

「皆、居なくなったのね――きっと『あの方』を守る為に戦ったんだわ」

 彼女の指す『皆』とは誰のことだろう、神と神子を放り投げた教団員達か、緑の少女達か。
 手にした大鎌は禍々しく、刃が闇の中で黒くひかる。

「わたしも――ううん、わたしが『あの方』を守ってみせる」

 その表情に迷いはなく、瞳にははっきりとした煌きが宿っていた。

「誰にも、奪わせない」
臥待・夏報
ごめんごめん、遅くなった。
情動の薄い不定形の敵、完全に夏報さんの鬼門でね。
それに対して、思春期の多感な少女――たぶん、これは夏報さんのUDCの格好の標的になるはずだ。
悪趣味なことにね。

【2012/8/19】。
このアルバム型UDCは少女の過去を写し撮り、それを目にした彼女の【後悔】の念に応じてその身を焼く。
生来の化け物には通じないけど、一般人は容易く殺せる、扱いに困る代物さ。

君には、どうかな。

仮に、彼女が後悔などないと嘯くなら、これ以外の道はなかったと胸を張ってみせるなら、この炎は彼女を焼き殺すには至らないかも。
その時はその時、トドメは他に任せよう。彼女にはもっと相応しい死があるというだけの話。


北条・優希斗
連携・声かけOK
…あの方、か
『神女』とされてしまった君には俺達は確かに異端だろうな
ならば、異端者らしく君を骸の海へと還そう
…見果てぬ夢を見たまま眠れ(真の姿発動)
真の姿:UC剣王の瞳参照
君に、俺の動きが読めるのか?
先手で攻撃させて剣王の瞳+見切り+残像で回避
オーラ防御で被害を最小限に
その後夕顔でカウンターしながらダッシュ+地形の利用+戦闘知識で肉薄
そこから双刀を抜刀、月桂樹で騙し討ち後双刀で追撃、二回攻撃でUC発動
串刺し+鎧砕きを軸に
でもそれはフェイントでもある
グラップル+鎧砕きで牽制しながら早業を乗せて見切り、剣速を上げてUCで更に追撃させて貰うよ
「どうした?異端者相手にその程度か?」



「あの方、か」
 濁りのないまっすぐな双眸から視線を逸らさず、北条・優希斗は言葉を返す。
「『神女』とされてしまった君には、俺達は確かに異端だろうな」
「『されてしまった』……?やめてちょうだい、わたしは正しく選ばれたの」
 現れた異教徒の言葉に、少女は聞く耳を持たない。そんなことはわかっていたから、優希斗は瞼を閉じる。異端者らしく、彼女を骸の海へと還すために。
「ああ、愛しき方!あなたをお守りするため、どうかわたしに御身の一部を!」
 恍惚とした表情で彼女が虚空へ呼びかける。応じるようにパリ、パリ、と音がすれば、空中に裂け目が拓く。裂け目からずるりと這いでる肉片が、彼女を選んだ神だというのか。
「……見果てぬ夢を見たまま眠れ」
 再び開かれた漆黒の両の瞳は、澄んだ青空を閉じ込めたように蒼く染まる。肉片が優希斗めがけて長い自身を伸ばし、彼の身体を穿った。
「随分とあっけないのね、こんなに簡単に……」
 ふと、少女は目を見開き、口を噤む。肉片に穿たれたはずの青年の亡骸が、何処にもない。
「――君に、俺の動きは読めないみたいだな」
 すぐ傍から聞こえてきた声の方向へ、咄嗟に手にした大鎌で横薙ぎにする。肉を斬る感触より先に、鎌を強く引きずられる感覚に囚われた。
「ごめんごめん、遅くなった」
 まるで友人との待ち合わせのような、場違いにぬけた女の声。臥待・夏報が投げたワイヤーのフックが、がっちりと大鎌を床に固定している。
「情動の薄い不定形の敵、完全に夏報さんの鬼門でね」
「向き不向きはある。それを補い合うのも猟兵だろ」
「お、ナイスフォロー」
 一撃を躱された上に邪魔をされ、少女は怒りを露わに大鎌を無理矢理引っ張る。漸く外れたフックを投げ返され、夏報は肩を竦めた。
「怒らないで、なんて意味ないよね。遅れた分、夏報さんも仕事させてもらうよ――たぶん、君みたいに思春期の多感な少女は、格好の標的だ」
 細い指ではらりと捲られた、色褪せた本のタイトルは『2012/8/19』。その日付が少女にとって重要な意味を持つのか、もしくは、女にとって。
「ねぇ、君は」
 アルバム型の異形が、少女の過去を、あの日を、思い出を写し撮る。夏報の灰の髪が揺れて、やわい口調で問う。
「本当にあの日、後悔していなかった?」
「あ」
 少女の目に何が映っているのか、それを知っているのは彼女だけ。震えだす身体をかき抱く表情は、怯えていた。
「ああ、」
 アルバムからひらりと舞う一枚の写真が少女に触れると、少女の身体は一気に真っ赤な炎に包まれた。絶叫と共に燃え盛る少女の光景を、優希斗は沈痛な面持ちで見つめる。
「生来の化け物には通じないけど、一般人は容易く殺せる、扱いに困る代物さ」
「……恐ろしいな」
「そうだね」
 語る夏報がほんの少しだけ目を伏せた時、少女が呻くように叫ぶ。
「……たしはッ!後悔、してない……ッ!」
 膚を舐める焔から抜け出す少女の姿に、焼き殺すまでには至らなかったかと、また肩を竦めた夏報。
「夏報さんは後方支援タイプだからね、次は君に任せるよ」
 答えは行動で示すとでもいうのか、優希斗は無言で素早く駆けた。抜刀した双刀と大鎌がぶつかる隙に、漆黒の短剣が少女の腹部を刺す。蹲る少女に立て続けに襲いかかる斬撃は、月光よりも鮮やかに輝いて。優希斗の攻撃の合間をぬうように、少女の動きを牽制する夏報の発砲音も鳴りやまない。
「アァアアッ」
 灼かれた痛みと、撃たれ斬られて、裂かれる痛み。その全てが彼女を苛む。
「どうした?異端者相手にその程度か?」
 なおも上昇し続ける剣速が、止まることはない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

依神・零奈
へぇ……今時珍しい信心深さね
狂信なのは残念だけど……
それでも羨ましいって思うよ、キミの「神様」とやらに
……我ながら惨めすぎるけど
まぁ、いいや……終わらせよう

彼女は邪神の加護を受けてる
私の【破魔】で対抗できるか試してみようかな
それにしても何も空間、視界が開けてるのはいいけど
身を隠す遮蔽物も無い、そこは気を付けないとね

……UCを発動して彼女に災いを及ぼそう
言葉は体を蝕む呪いになる
後はそうだね……他の猟兵の支援になるよう
動きを鈍らせられればいいな

「キミの運命は此処に確定した」
「信じた神も 同胞も そして自分も」
「全て此処から居なくなる」

これだけは聞いておきたかったんだ
……キミは幸せだったのかな


大神・るり
【心情】
邪神を復活させるためだと言って一人の少女の運命をここまで歪めてしまうとはな。見ていてとても気分が悪くなってくる。一番たちが悪い所は少女本人は満足をしている。そう、これが少女の幸せだということだ。こうなってしまったらもう普通の道へ戻すことはできないだろう。せめて楽に死なせてやろう。

【戦闘】
出来れば苦しまずに楽にさせてあげたいので
戦闘は「絶望の福音」を使って敵の攻撃を基本的に避けつつの「オペラツィオン・マカブル」で敵の大技を跳ね返して一気に終わらせたい。極力「猛毒の鎌鼬」は使わない。しかし、自分が危険になったら使う。自分の命には変えられない。



「へぇ……今時珍しい信心深さね」
 ズタズタに裂かれたブラウス、焼け焦げた赤いリボン。ひゅぅひゅぅと荒い呼吸をしながらも、まだ瞳の煌めきが消えない少女に、依神・零奈は感心していた。狂信者であることは残念だけれど、それでも。
「羨ましいって思うよ、キミの『神様』とやらに」
 同じ立場であったのに、忘れられてしまったことが。尚もあの頃の思い出に縋る自分が、余計に惨めに思えて。
 大神・るりは、表情を変えることなく少女に視線を遣るが、投げかけた言葉には嫌悪感を露わにしていた。
「一人の少女の運命を、ここまで歪めてしまうとはな。見ていてとても気分が悪くなってくる」
 邪神を復活させるために喪われたのは、彼女に確かにあったはずの未来。必ず明るかったとは断言できずとも、きっかけになったかもしれない道へは、もう誰も案内してやれない。
「一番たちが悪いのは――彼女が満足している点だよ」
「……それは」
 あくまでも淡々とした語り口の女と正反対に、言の葉のまじないを操る守り神は口ごもる。大鎌を支えに立ち上がった少女の唇が動く。
「わたしのこと、好き勝手言って。……でも、ええ、その通り。わたしに気付きもしなかったあなた達がなんと言おうと、皆が――『あの方』が救ってくれた」
 少女が両手を胸の前に組み、背にした祭壇へ祈りを捧げる。重厚な見た目とは裏腹に、無音で祭壇の扉が開き、得体の知れない造形の儀式像が現れた。
「あなた達は、わたしのどこが不幸だっていうの?」
 二人の目に映った少女の美しい貌は焼け爛れても満面の笑みで、儀式像から溢れる黒い靄が彼女を包む。その声色は狂気と正気の区別がつかぬほど、使命感に満ちていた。
「そう、これが彼女の幸せだということだ。せめて楽に死なせてやろう」
「……そうだね、終わらせよう」
 るりに応じた零奈が、靄を撒き散らす儀式像へ茶の瞳を向ける。小さく開いた口が何かを呟けば、ぱん、と軽い破裂音と共に靄がかき消えた。
 ち、と舌打ちした少女が裂け目から肉片を喚びだし、零奈へとけしかける。肌色と青紫の混ざったそれが接近する前に、るりが立ちはだかり零奈の手を取った。ど、と激しい音を立てた肉片が二人を捉えることはかなわない。
「こっちだよ」
 少女がいくら大鎌を振りかざしても、未来予知のようにるりが軽い足取りで躱していく。自分よりも小さなこどものような背格好の女に、少女がしびれを切らした頃だった。
 守り神が、口を開く。
「キミの運命は此処に確定した」
 ――言葉は体を蝕む呪いになる。
「信じた神も 同胞も そして自分も」
 ――彼女に災いを及ぼそう。
「全て此処から居なくなる」
 朗々と紡がれたまじないが、少女を襲う。大鎌を振ることもままならず、その脚はひどく愚鈍な動きを見せる。それでも少女は引きずるように腕を伸ばし、救いを求めるまじないを叫ぶ。
 先程よりも大きな裂け目から覗くのは、ぎょろりとした大きな瞳。肉塊とも呼べる大きさが勢いよく地面へ落下する時だった。
 るりが息を吐き、全ての力を抜いてそれを受け入れる。しかし次の瞬間、肉塊が墜ちたのは少女の上。女の操る絡繰から排出されたモノが、喚びだした少女自身へと返っただけのこと。
 ぐずぐずにこわれた肉塊から這いでる少女から赤が滲んでいるのを確かめ、零奈が問う。
「これだけは聞いておきたかったんだ」
 キミは、本当に幸せだったのかな。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジャック・スペード
彼女は未だに信じているのだな、教団のことを
ならば其の幻想に付き合おう

前に出て仲間を攻撃からかばう盾に成る
物理攻撃は怪力とグラップルで受け止め防御
損傷は激痛耐性で堪えよう
あとは援護射撃で仲間のサポートを
マヒの銃弾で敵の動きを止められたらと

攻勢に転じる際は粘液で自己強化し
目立たぬよう忍び寄り零距離射撃で捨て身の一撃
クィックドロウで速やかに氷の弾丸を撃込もう
そういえば、お前に個体名は無いのか
言いたく無いなら別に良い
此れから手に掛ける命の名を知りたいと、ただそう思っただけだ

お前の仲間はよく戦った――
邪神だけでは無く、お前のことも守る為にな
だから安心して骸の海で眠ると良い
……コレが真実なら良かったんだが


冴木・蜜
貴女の信仰は許容できない
もう手遅れならば
貴女を止めて――終わらせましょう

体内の毒を濃縮し
わざと大鎌の前に身を躍らせましょう
素直に私を攻撃するのなら
敢えてそのまま躱さずに斬撃を受けます

いえ 勿論痛みはありますし
決して痛いのは得意ではないのですが
耐えられないほどではない

私の身体を切り裂いた大鎌に
攻撃力重視の捨て身の『毒血』
これ以上何かを切り裂けぬよう
その刃を融かし落としてみせましょう

ああ
私の血を浴びているのですね
それならば好都合
飛び散った血肉さえも使って
傷痕に毒を塗り込んで差し上げます

せめて苦しむことのないように
静かに確実に
私の毒でその信仰といのちを溶かします

さあ
もう幕引きの時間です


ネロ・ケネディ
――護るものなんて、ないほうが気が楽ですよ
わたしたちがあなたと神様の命を奪うように
あなただって、私たちをの時間と未来を奪うのだから
おあいこです。だから、どうか――無駄な抵抗は、よして

【銀の弾丸】で彼女を討とうか、と。力を貸して、ね、お母様
屠らないといけない、あなたが、未来の邪魔をするというのなら
……過去に縋ったところで、次に生まれるのは破滅でしかないんです
だから、私はあなたの心も、信仰も、無視しないといけない
ごめんなさい、ごめんね、ごめん
悪いとは思ってる、だけれど――無駄な犠牲にはしないから

あなたの首に右手をあてて、そのまま握りたい。脈打つ動悸ごと、どうか――燃えてしまえ



 肉塊から這いでた少女はよろよろ立ち上がり、こぷりと口から血を吐き出す。いくらオブリビオンとはいえ、ただの人でしかなかった彼女の身体は、とっくにこわれていた。
「まだ、まだよ……ッ」
 それでも消えぬ瞳のひかりが輝いていて、冴木・蜜はほんの少し視線を逸らす。絞りだすような声が、暗い部屋に虚しく響く。
「――護るものなんて、ないほうが気が楽ですよ」
 ネロ・ケネディが静かにしろがねの二丁拳銃を構える。
「わたしたちがあなたと神様の命を奪うように、あなただって、私たちの時間と未来を奪うのだからおあいこです。だから、どうか――無駄な抵抗は、よして」
「……いや、いやよ。わたしは負けないッ!皆のために!『あの方』のために!もうわたししか、居ないんだから……ッ!!」
 どこかやさしくささやかなネロの願いを聞き入れない少女の姿に、ジャック・スペードは彼女のこころを知る。それは未だ信じる、神と教団への強い確かな感情。
「(ならば其の幻想に付き合おう)」
 少女が再び祈りを捧げると、祭壇に鎮座する儀式像が黒い靄を溢す。先程よりも色濃いそれは、傷だらけの少女の身体を包む。ああ、と嬉しそうに吐息をもらした少女は、大鎌を握り直した。焦げ臭い髪を振り乱し猟兵達へとまっすぐ駆けたところで、ウォーマシンのはがねの拳が刃とぶつかる。
「そういえば、お前に個体名は無いのか」
「個体名?」
「お前の名前だ――言いたく無いなら別に良い。此れから手に掛ける命の名を知りたいと、ただそう思っただけだ」
「ふざけないで、わたしはあなた達に勝つのよッ!死なない、わたしは死なないのッ!」
 金属同士がぶつかる音は何度も続き、徐々にジャックの装甲を損傷していく。満身創痍の少女の細い腕から、なぜ今更このような力が。
「あの儀式像か」
 もしくは、彼女自身の眠っていた最期の力だろうか。黒い靄は少女の全身に纏わりつき、もう彼女の貌すら見えない。
「離れて」
 ジャックに短く声をかけた蜜が入れ替わるように躍り出る。ジャックとネロによる射撃の支援を受け、黒い御手に隠した錆びついたメスが鈍くひかる。蜜が少女の肩を裂くと同時、彼女の大鎌がタールの身体を白衣ごと真っ二つに斬った。
 激しく噴き出し飛び散る黒にネロが駆け寄り、ジャックが再び前に出る。いびつな形を徐々にひとつに戻しながら、蜜が小さく頭を下げた。
「すみません、驚かせてしまって。平気ですよ」
「でも」
「いえ、勿論痛みはありますし、決して痛いのは得意ではないのですが」
 耐えられないほどではないとよわく微笑んで、それに、と続ける。
「すぐに効いてくるでしょう――ほら」
 蜜が視線を投げた先、ジャックと対峙する少女の大鎌に異変が起きていた。禍々しい刃が、蝋燭のようにどろりと溶けていく。
「な、によ、これ……ッ」
 蜜の体内を巡るあまい猛毒は、彼自身の意志で更に威力を増している。大鎌にあった殺傷力を持つ武器としての意味は、あっけなく消えてしまった。けれど少女は武器を捨てず、がむしゃらに振り回す。否、たったひとつの武器を捨てる選択肢など、はじめからないのだろう。
 そして、駆けた脚は途中で止まる。がくりと膝をついた身体を無理矢理立たせようとする姿は、無惨で痛ましいものだった。
「ああ、私の血を浴びているのですね」
 飛び散った蜜の血肉さえも、夥しい傷痕に毒を塗り込むこととなる。動かそうとすればなおのこと、そのあまい死は少女の細胞全てに巡っていく。溶かされていく信仰といのちに、少女の貌はどんな表情をしているのか。
「さあ、もう幕引きの時間です」
 蜜の呼びかけに応じるように、ネロが胸元で右手を握る。
「力を貸して、ね、お母様」
 ぼ、と蒼い焔が拳を包んだかと思えば、瞬時にダンピールの身体全身を覆った。轟々と燃える蒼と艶やかな髪の青、そして銀の双眸がまざり、醒めるような彩を生む。
「屠らないといけない、あなたが、未来の邪魔をするというのなら」
 過去に縋ったところで、次に生まれるのは破滅でしかない。他の利のために銃を手にする女は、少女にとって残酷な言葉を吐く。
「だから、私はあなたの心も、信仰も、無視しないといけない」
 みんなの笑顔のために、蒼の呪詛焔は尽きることなく燃え盛る。その身を銀の弾丸として、少女めがけて疾駆。防御姿勢をとる少女の背後には、黒い粘液を染み込ませた駆体が忍び寄っていた。
 靄を纏う背中にしっかりとリボルバーを突きつけ、放たれる絶凍の衝撃。六花の結晶がはらりと舞って、黒い靄がかき消える。
 まるでワルツのようにくるりと回り、仰向けに倒れた少女の腹部は、背中から撃たれた氷の弾丸によって凍りついている。静かに覆いかぶさるネロが、苦しげに言葉を洩らす。
「ごめんなさい、ごめんね、ごめん。悪いとは思ってる、だけれど――無駄な犠牲にはしないから」
 あ、う、と意味のない音を出す少女の瞳に、ひかりはもう見えない。
「お前の仲間はよく戦った――邪神だけでは無く、お前のことも守る為にな。だから安心して、骸の海で眠ると良い」
「おやすみなさい――皆、あなたを待っていますよ」
 やさしい嘘は、彼女の耳に聴こえていたのだろうか。
 無言のネロがそっと右手を少女の首にあてて、握る。まだ僅かに脈打つ動悸ごと、少女は燃えて。
 ――もう、塵すら遺らなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『深夜のカラオケボックス』

POW   :    カラオケに来たんだから歌うしかないだろう、朝まで何曲歌えるかな。

SPD   :    もう眠いよ、コーヒー飲むか。ついでにドリンクバーで適当に混ぜたオリジナルドリンクを作って楽しもう。

WIZ   :    軽いカードゲームやボードゲームを持ってきたよ、誰かやらない?

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 未だ夜は明けることはない。ビルの入口から出てきた猟兵達を待っていたのは、グリモア猟兵の揺歌語・なびきと、UDC組織の職員達。

「や、お疲れ様」

 灰緑の人狼は猟兵達へ軽く手をあげ、日常のようにへらりとわらう。彼を案内役としてビルを後にした猟兵達は、深夜のカラオケボックスに辿り着いた。
 安っぽいネオンが照らす24時間営業の看板が、暗い夜道を照らしている。

「それじゃ、おれは事後処理を手伝ってくるね。なるべく早く戻れるようにするけど、皆が満足するまで転送はしないから」

 楽しんで、と男は言い残し暗闇へ消える。

 外観の割に綺麗な内装と、ヒットソングからマイナーな歌手まで網羅した最新機種。
 レンジでチンするだけのたこ焼きやピザ、業務用のフライドポテトにオニオンリング。
 ドリンクバー以外に、セルフサービスで作り放題のソフトクリーム。

 ――さて、君達はどう過ごすのだろう。
依神・零奈
ヒトの幸福は他人とは分かり合えない、他人は自分ではないのだから……
どのみち私には関係ないけどね……
でも、ま……いいんじゃないかな、自分にしか分からない事があっても

……それにしてもカラオケね。
舌禍を使う私とは相性悪そう……もうなんだか怠いし
飲み物でも飲んで見学でもしてよ……
どうせだし全部のドリンクブレンドしてみようかな
いろんな種類を同時に味わえて良さそうだしね

……自分ですら理解できない事があってもいいとおもう



 貸し切りとなったカラオケルームは防音の為か、思ったよりも静けさに満ちていた。大きなテレビ画面は、最新曲のCMや人気ランキングを延々と流し続ける。
 依神・零奈は注文したフライドポテトをつまみ、入店時に自分で用意したオレンジジュースに口をつける。仄暗い個室で一人、呪いをかけて骸の海へと還した少女を想う。
 ヒトの幸福は他人とは分かり合えない、だって他人は自分ではないのだから――どのみち、私には関係ないけど。
「いいんじゃないかな、自分にしか分からない事があっても」
 ぽつりと呟いた言葉は、テレビで自身の曲を宣伝するアイドル達の甲高い声にかき消える。それにしても、カラオケとは。
 言の葉が持つ禍を術として扱う自分とは相性が悪そうだと、歌う選択肢は早々に投げだしていた。なにより、一晩中戦闘に明け暮れていたこともある。守り神は人並みに疲れきっていた。
 手持ち無沙汰にカラオケ映像を適当に流してみるも、特に興味がわいた物もない。どうせ飲み放題ならと、ドリンクバーへ立ち寄る。
 小さな店には似つかわしい、ロボットのような機械にコップをセット。興味深そうに最新のタッチパネルに触れる。
「いろんな種類を同時に味わえて良さそうだし」
 コーラとメロンソーダ、オレンジジュースとアイスティー、少女のように無邪気な気持ちで選んでは、個室に戻ってポテトをお供に新鮮な味を楽しむ。暫くしてから、ふと思い立つ。
 ――折角だから、全部のドリンクをブレンドしてみようか。
 同じ割合で全てのドリンクを混ぜたコップの中身は、普通ならば躊躇する色をしていたけれど。守り神は、迷わずぐいっとひと口。
「……自分ですら理解できない事があってもいいとおもう」
 数秒後、機械の横に設置された飲料水コーナーで、新しいコップに水をなみなみと注ぐ零奈の姿があったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
【SPD】

よーし、夏報さんはもうひと仕事。
カラオケルームは一人部屋。
とびきり濃いコーヒーを作って、ノートPCと機器を広げて、UDC側への報告書の作成だ。
組織人はつらいよー。
もちろん、あの子の過去の念写画像も添えておく。この写真、一応夏報さんの身体のUDCだからそのままは使えない。スキャンしないと。

……ああ。
おかしな話だな。
この部屋には僕以外誰もいないのに、今僕は誰に謝ったんだろう?

「事後処理」とやらが終わったら、こっちにも連絡が来る。
一応伝えておこうか、と思って廊下に出てみるけれど、
他の部屋が盛り上がっているのが見てとれたら、やっぱりやめて部屋に戻ろう。
……各自満足するまで、水は差さずに、ね。



 ドリンクバーでてんやわんやが起きていた頃、臥待・夏報はもうひと仕事に取りかかっていた。
 とびきり濃いコーヒーをたっぷり作り、ノートPCと機器を広げて報告書の作成に入る。UDC組織にエージェントとして席を置いている彼女には、ごく当たり前の、普段の日常。
「組織人はつらいよー」
 テレビ画面に映るのは、宣伝として最近流行りのバンドのミュージックビデオ。スピーカーから個室全体に響き渡るゆるやかな音楽に、ほんの少し鼻歌まじりでキーを叩く。
 見返す資料はひとつひとつ丁寧に。ビルの構造や詳細、対峙した相手の能力、動きまでもを思い出しながら、時折コーヒーに口をつけて、液晶画面とにらめっこ。
 PCと機器の傍に散らばる、ポラロイド写真のような数枚のそれらに映る、ひとりの少女。
 ケーキを前に笑顔を向ける姿、倒れている姿、何かを抱きかかえて泣きじゃくる姿、痣だらけで無表情に此方を見つめる姿――写真によって少し年齢は違えど、すべて同じ少女だろう。裏面に印字されたオレンジ色の数字は、どれも過去の日時を示している。
 夏報自身の身体に憑いたUDCの念写画像を、このまま資料として添付する訳にはいかない。スキャナー機器にセットする際は、一枚一枚丁寧に。
「    、」
 唇が勝手に動いてから、女は我に返ったようにふと顔をあげる。
「……ああ、おかしな話だな」
 この部屋には僕以外誰もいないのに――今僕は誰に謝ったんだろう?
 ふわりと視界に落ちてきた灰の髪を耳にかけ、夏報は再び作業に没頭した。ようやく全体の最終チェックが終わって、ぐ、と両肩を大きく動かす。
 同じUDCエージェントであるグリモア猟兵の『事後処理』とやらが終われば、恐らく彼女にも連絡が来る。静けさただよう個室に、あとで声をかけておこう。


 五月の空はよく晴れていて、昇りはじめる朝陽が静かに、容赦なく夜を終わらせる。
 ひとりの少女はその寄る辺ごと、全てを喪い還っていった。
 それでも猟兵達のやさしい殺しが、なにかを遺していったかもしれない。

 ――猟兵達は、帰路につく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月03日


挿絵イラスト