知らないのって言われても
#サクラミラージュ
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「君みたいに鋭い奴は好きじゃないな」
「ご、ごめん…」
一瞬前まで談笑していた友人から、突然に理不尽な糾弾を受けた青年は、目を白黒させながら詫びる。
「え、いや、知らない?アレの台詞なんだけど、ほら…」
謝られた相手もやや慌て、釈明をする。なんでも有名な作品の有名な文言であるらしく、当然知っているものと思って発言したらしい。他にも同様に卓を囲んでいた友人たちの様子を見るに、それは皆知っているものであったようで――。
また、やってしまった。凍った空気の中、詫びた青年はぎこちなく笑いながら、心を悔恨で塗りつぶす。
真面目に過ぎると、冗談が通じないと言われることも多く、こういったことは少なくもない。その度に『気にするな』とか『大したことじゃない』などと、励ましのような慰めのような、あるいは諦めのような言葉を投げかけられ、その度に彼の心は僅かに擦り減っていた。自身でも分からない程、僅かに、僅かに。そうしてそれは蓄積し、沈殿し、浸潤し…。
「確かに、大したことじゃないか」
澱に染まった黒き体に浴びたる赤き血潮を隠し、解き放たれたる心は、無邪気に笑った。
●
「今回は、あァ…百貨店つーのか?」
グリモア猟兵、我妻・惇が首を傾げつつ語った内容は、サクラミラージュの大きな百貨店の、飲食店における大量殺人の予知に関するものであった。穏やかな歓談の時を破壊した闖入者の手によって、まずは手近に竦む者が次々と殺され、逃げる者の多くは追い付かれれば殺される。
しかし影朧は最後の一人を殺してはぴたりと手を止め足を止め、すぐさま退散してしまうのである。間違いなく固有の標的は存在するらしいのだが、手が届きさえすれば誰も彼もが標的たりえる条件であるようでもある。
「誰でも良いのかも知ンねェし、標的の条件がガバガバなのかも知ンねェし…」
何かあるのは間違いないが、それは現場の様子なり聞き込みなりで明らかにしてやるしかない。もちろん明らかにすることなく、素早く見つけて素早く倒すが一番シンプルな解決方法ではある。
「ンでもう一点だが…目的地は分かるンだが、どこから現れるかが分からねェ。俺の見たより先に、何人がヤられてるのかも分からねェンだわ」
もしかしたら被害はないのかもしれないし、当該の店舗以外をすべて回ってから現れているのかもしれない。そのため対応策として…。
「悪ィが、しばらく遊ンで来てくンねェか。食っても良いし、買いもンしても良いし。色々うろついて、気が向いたら情報収集でもして、警戒がてらぶらついて…ぐらいしかやりようねェよなァ」
言って、ひらひらと手元にサアビスチケットを踊らせながら、渋い表情を見せるのだった。
相良飛蔓
お世話になっております、相良飛蔓です。今回もお読みいただきありがとうございます。アックス&ウィザーズお疲れさまでした。
というわけで平常運行のサクラミラージュです。影朧の標的はカフェースペースにて趣味の話に花を咲かせる、青年集団の一人です。
第1章は日常です。基本的には百貨店の巡回警備という名目で、ゆっくり楽しんでもらえればと思います。手掛かり探しに聞き込んでもらっても良し、一心に遊んでもらっても良し、色んな所にいてもらうだけで意義があります。行動次第で後に反映はしていきたいと思います。公序良俗に反しない、テナントに入れるような施設は大体あるものと思ってもらってOKです。
第2章は集団戦、出現したボスにより『同人娘』の皆様が召喚されます。戦闘というか撃退のニュアンスを考えてますが、容赦なく斬って捨ててもらっても結構ですし、喋ったり絡んだり推し語りしてもらっても良いかな、と。
第3章はボス戦です。正体不明のネタが通じない切り裂き魔です。とりあえず周囲の人が逃げれば敢えて猟兵を無視して追いかけはしません。やり取りには応じますので、癒やす方向性も取れなくは…どうでしょう?
真面目と不真面目を行ったり来たりするつもりで考えています。相良はあまりネタ系詳しくないので、放り込まれたら調べはしますが、お手柔らかに……よろしくお願いします。
第1章 日常
『浪漫百貨店』
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POW : 大食堂で異国情緒溢れるモダンな食事や甘味に舌鼓
SPD : テーラーや女性デザイナーと共に帝都で流行りの洋服を仕立てて貰う
WIZ : 舶来品・幻朧桜から作られた化粧品や装飾品。店員さんにお薦めを聞いてみる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シリン・カービン
「一年中桜が咲いている世界、ですか…」
不思議なものですね、と初めての世界歩き。
メモを見ながら目的の百貨店へ。
店内を一通り下見して回れば、小腹が空いてくる頃合い。
カフェに入って一休みです。
「それにしても… やはりこの格好は目立つでしょうか」
猟兵が超弩級戦力として認識されているのは理解しましたが、
ちらちらと見られていると情報収集がしづらいような…
「あの、ここに合う服を求めたいのですが…」
女給に問うてみれば、何がどうしたものやら女給服姿に。
どうやら『この世界』でなく『この店』に合う服と思われた模様…
ある意味好都合と、切り替えて聞き込み開始します。
「いらっしゃいませ、お客様」
パーラーメイド、デビュー。
相沢・友子
高級文房具店にて。
「プレゼント用のゲルボールペンを見せていただきたいのですが。
指に負担が掛からなくて軽くて、おしゃれで渋くて威厳があって、私の代わりに、ずっと持ち歩いてもらえるような。聡明なお父さんに似合うものを用立ててください!」
プレゼント用のメッセージカードと可愛いラッピング。カードには、愛しています。友子より。の一文を添えてもらった。
これで、気持ちは伝わるはずだ。こんな小さな文で私の気持ちの何が伝わると言うのか?それでも、何もしないよりはマシなのだ。
もうじき、この場所で起こる大量殺人事件。犯人も、何もしないよりはマシって思ってるの?それでも、止めるよ、未遂で終わらせる。
UC寝ず見を放つ。
塩崎・曲人
遊んできてねって言われても。
ここで開き直って豪遊出来るようなメンタルだったら、オレ様ももうちょいビッグな男になれたのかねぇ
生憎現実のオレは後の備えをしとかないと落ち着かねぇ小心者なんでな
まずは下調べと行きますか
なんと言っても固有の標的って奴をマークするのが一番手っ取り早いか
予知に掛かった情報を頼りに、被害予定者を探して相手の傾向を絞り込んでみようとしてみるぜ
見た目だけじゃなくて会話に耳を澄ませたりと、情報をなるべく得てみようとはするが……
「アテのない閃き頼りなのは苦手だぜオイ。そこらに名探偵とか落ちてね―か?」(買った団子を行儀悪く歩き食いしながら)
まぁ、最悪地理だけでも抑えよう
●楽しからずや?
「一年中桜が咲いている世界、ですか…」
サクラミラージュに初めて訪れたシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、興味深そうに周囲の景色を見渡す。幻朧桜に限らねば、他の世界でも爛漫たる桜吹雪も見られようが、いくらも夏めいたこんな時期では、季節外れと言うほかない。もっともこの世界では日常であるのだろうが…
「不思議なものですね」
落ちる花弁を追うようにして視線を落とすシリン。そうして自身の手の中のメモを改めて見ると、その目的地へと歩を進めていく。
「遊んできてねって言われても」
一足先に百貨店の屋内を行く塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)はぼやいていた。
(ここで開き直って豪遊出来るようなメンタルだったら、オレ様ももうちょいビッグな男になれたのかねぇ)
いかに無料、無償といえども、この後に起こる血なまぐさい光景を思えば手放しで楽しめないのも無理からぬことだろう。細かいことに拘泥しない男は、即ち細かいことが気にならない男ということではないらしい。あるいは――否、当然ながら、多くの人命は軽いものではない。少なくとも、脇に置いてあっけらかんと笑っていられるほどには。
「まずは下調べと行きますか」
男は自嘲めいた笑みを浮かべてから、それほど楽しくなりそうもないウィンドウショッピングへと歩き始めた。
●畏影
「プレゼント用のゲルボールペンを見せていただきたいのですが」
建物内の一角、高級文房具店。うってかわって相沢・友子(淡水人魚・f27454)は買い物を楽しんでいるようで。
「指に負担が掛からなくて軽くて、おしゃれで渋くて威厳があって、私の代わりに、ずっと持ち歩いてもらえるような。聡明なお父さんに似合うものを用立ててください!」
単純に『楽しんでいる』というにはなんだか強めの圧ではある。リクエストを受けた店員の方でも、柔らかな物腰が少し引けている。雰囲気を示す形容詞は果たして、ボールペンを指すものか、もしかしたら父を指すものかも……。
ともあれ選定も問題なく済み、納得いく品物が見つかれば、プレゼント用の可愛らしい包装に『愛しています 友子より』との文言を加えたメッセージカードを添えてもらう。これで、気持ちは伝わるはずだ。
…本当に、そうだろうか。こんな小さな文で、何が伝わるというのか。確かに、額面通りの意味は伝わるだろう。聡明であれば、その行間に込めた、もしくは意図せず潜んだ感情ですらも読み取ろうと、読み解こうとするかもしれない。そうして読み取れるものはしかし想いの全てではなく、ましてそれが正しいかどうかも分からない。
(それでも、何もしないよりは)
熱量までは伝わらずとも、その一片でも伝わるのなら、一切を届けぬよりもマシであろう。ならばきっと、無為ではない。友子はそうして疑念を振るって彼方に抛り、さなかに敵の心を思う。
(犯人も、何もしないよりはマシって思ってるの?)
誰かの抱えた思いや恨みは、当人が死ねば浮世を離れ、忘れ去られて過去となる。讐いる者の既になければ、現れたとてやり場のあろうはずもなく。
それでも現れ、人を傷つけようとするのは。それほどまでに忘れ得ぬ、ただに消え去るを許し得ぬ、烈しい思いや恨みのためか。
(それでも、止めるよ、未遂で終わらせる)
僅かばかりは分かりそうな感情――ともすればそれこそが歪み受け取ったものかもしれないが――それでも、止めねばならない。受け取り方を問うまでもなく、それは歪んだ存在であり、その害なすを喜ぶ者もありはしない。
『グラスラット』
小さな声でその名を呼べば、その周囲へと無数のネズミがどこからともなく現れる。友子の力により制御された、父の召喚武具である彼らは、その主を囲んで見上げ、指示を待つ。もしも彼らが無色透明でなく、自然に生きるそれらと同じ色をしていれば、飲食店を擁する百貨店は影朧の出現を待たず阿鼻叫喚の光景となっていたことだろう。
もちろんそんなことにもならず、透明で、勤勉で、ついでに清潔な監視者たちは、一斉に散開し、歩く人々の靴の間を器用に縫って駆け回り、隙なく標的の出現を待つ。
油断なく、思索も多き少女の買い物は、単純に楽しんでいるとも言い難いかもしれない。
●鷽鳩
「まぁ、最悪地理だけでも押さえよう」
発言の通り開き直って遊べない曲人は、周囲に目を配りながらぶらぶらと歩く。後の憂いがある以上、恐らくはじっとしている方が落ち着くまい。
そうして歩くだけでも手持無沙汰だし体力も使う。嫌煙家である青年に話し相手も無ければ口寂しい。したがって、道中に買った団子をお行儀悪く食べ歩くのも、仕方のないことであろう。
「アテのない閃き頼りなのは苦手だぜオイ。そこらに名探偵とか落ちてねーか?」
手数を使い、小さな四つ足で探す友子と違い、ズバリと快刀乱麻の答えをご所望ではあるが、勿論そうそう都合良くは行かないもので、その点は彼も重々承知している。この上は曲人自身が実地の捜査を積み重ねるハードボイルドになる他はないだろう。
ぼやきながらもそつなく注意を払うその目に、影朧の標的を捕まえる。それは歩く道々も趣味の話を元気に語り、同好の二人の仲間と話題に花を咲かせる青年であった。基本的には温厚そうで、無害そうに見えるその人を、串から器用に最後の団子を外しながら、猟兵は追跡を開始する。
興味なさげに振る舞いながら、耳を澄ませるまでもない程の音量で話す三人組の後を追う。聞こえてくるは極めて狭い範囲の話題で、曲人にはいくらも分からないのだが、どうやら彼らの中では当然持つべき基礎知識であるようだ。
そんな中に時折見える、誰か一人の反応のずれ。合わせるように決まって聞こえる定型句。
「ごめんごめん、このくらいは知ってるだろうと思って」
言葉に混ざる嘲笑の色、視線に宿る愉悦の熱。受けた相手はいくらかぎこちない笑みを返し、やり込めた男は満足そうに目を細め。そんな歓談の中の攻防を、猟兵は詰まらなそうに眺めやり。
●転禍
こちらは労働への不平は漏らさず、食べ歩きもしないシリン・カービン。彼女の日常の探索範囲である森に比べれば、整然として見通しも良く、丁寧な地図まである百貨店の下見などは朝飯前と言っても過言ではない。
そんな『朝飯前』の一回りを済ませれば、軽食を食べる程度にはほどよく小腹が減るものだ。折角のサアビスチケットだからということもないが、シリンはカフェーで休憩を摂ることにした。
「それにしても… やはりこの格好は目立つでしょうか」
一息つきながらも、若干の居心地の悪さはちらちらと向けられる視線の為であろう。猟兵である以上、超弩級戦力として期待されるのは仕方ないのだが、やはり目立ちすぎると聞き込みなどの情報収集には不向きである。もっとも、視線を集める原因は服装の為だけではないのだが。
「あの、ここに合う服を求めたいのですが…」
幸いここは百貨店、衣料品店もあるだろう。流行ならば当地の人に訊くが良かろうと注文ついでに尋ねてみれば、にっこり笑って促され、ついて歩けば更衣室、渡された服に袖を通すと――
「いらっしゃいませ、お客様」
数分後には、涼やかに笑って客を迎えるシリンの姿がそこにあった。彼女としては『この世界』になじむ服を希望したつもりであったのだが、カフェーの女給は猟兵と見るや、『この店』における情報収集のために最適な服、即ち自身と同じ制服を必要としていると考えたのだ。気が利くといえば気が利くのだが、気を回し過ぎと言えばそうでもあり…やはり想いや言葉というのは、正しく伝えるは難しい。
しかしこれはこれで好都合、店内に限ればこれほど馴染む服装もない。世間話にかこつけて、シリンは客と給仕と聞き回る。
着替える前より強めの視線を向ける者もいくらかあったが、とりあえず笑顔で躱しながら情報収集を進めれば、どうやら別のフロアのどこかのカフェーでイベントごとがあるらしい。熱狂的な愛好家たちを標的とした、同好の士が挙って来店するような――。
大成功
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レイナ・オトゥール
ヴィリヤ(f02681)お姉さんとご一緒します!
百貨店の中を警戒すればいいんですよね、了解です。
ヴィリヤおねぇさんと良さそうなカフェーにはいってそこの店内を警戒です!
ただ、お店にいるならちゃんと注文をしないと営業妨害ですから、ちゃーんと、えーと、レアチーズのケーキと甘さ控えめの紅茶とかをしっかりと注文します!!
ただ、他にもお店はあると思いますし【虚竜召喚】で虚竜さんたちを喚んで、3竜以上で組んでもらって他のお店に行ってもらって少しでも多くのお店を警戒しましょう!
何かあったら少しでも抑えるのと避難誘導と私への報告を役割分担でお願いします!
(可能なら虚竜さんにもサアビスチケットを渡します)
ヴィリヤ・カヤラ
レイナちゃん(f11986)と。
百貨店だし中のカフェのお茶が気になるかな。
多分美味しいと思うし!
サアビスチケットだから何でも頼めるけど、
紅茶とショートケーキにしようかな。
レイナちゃんは何にする?
あとは店内の会話にも少し気をつけて、
趣味の話をしてる人がいたら要注意かな。
もし誰かが襲われそうになったら止めに入るのと、
カフェにいる人達の避難もしないとだね。
サクラミラージュでもお茶とケーキは美味しいのに、
この後に事件が起きるなんて許せないよね。
せめて事件が起きるのが食べ終わってからだと良いんだけどな。
●両得
最初に現れるのがカフェーかどうかは分からないとはいえ、カフェーに現れること自体は確からしい。であれば、どの店舗に現れるかは分からずとも、人員の一部が張っておくことは有効的な策であると言えるだろう。
というわけで、レイナ・オトゥール(竜と共に・f11986)とヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は、レイナチョイスの『良さそうな』カフェーに入ってその店内を重点警戒することにした。
「お店にいるならちゃんと注文をしないと営業妨害ですから、ちゃーんと、えーと…」
そこはそれ、影朧対策の任務といえど場所を借りるのだから、ひとつの礼儀というものだろう。そういったとりあえずの注文というのも、意外と悩んだりするもので…
「私は紅茶とショートケーキにしようかな。レイナちゃんは何にする?」
ヴィリヤの方は考える時間もそこそこに、実に手早いものである。
「じゃあ、レアチーズのケーキと、紅茶をお願いします!」
少し遅れてこれと定めた少女は、笑顔で去った女給の背を見送りながら、早くも待ち遠しそうな笑顔を浮かべているのだった。それから卓へと向き直り、対面のヴィリヤと目を合わせると、また少し笑って見せて。どうやらメニュー自体も楽しみに、しっかりと吟味して選んでいたようである。
場所だけ借りて食事をしないのは迷惑だが、食事を頼んで楽しまないのは失礼である。そしてせっかくサアビスチケットまであるのだし、楽しまなくては勿体ない。そういうわけでこちらの二人、しっかり楽しむスタイルである。
「せめて事件が起きるのが食べ終わってからだと良いんだけどな」
と、少しだけ憂い顔でヴィリヤが呟く。楽しむのは楽しめる範囲、起きてしまえばそれどころではないだろう。急いで食べても勿体ないし、食べずに駆け付けるのも勿体ないし…せめてそれまで待ってくれれば文句は――もちろんないことはないのだが、現れる所までは決まっているのだから仕方ない。
そうした懸念をぼやく間にケーキと紅茶が運ばれてきて、口に運んだ二人の表情がまた綻んだ。味わう口を開けないままに感嘆の声を上げながら、顔を見合わせ頷き合う。軽くおしゃべりしながらケーキを口に運び、カップを口に運び――
『いやこれは常識でしょ』『知らないのはヤバいって』
互いに紅茶を味わいながら、ほんのしばらく言葉を止めて、その会話へと耳を澄ます。同好の話で盛り上がり、白熱しつつある中で、一人の仲間の知識の漏れに、信じられぬと囃し立てる。それに応じる笑い声は傍からそれと分かる程度にうんざりしたように聞こえた。
ヴィリヤにとっては別に大したことではないし、彼らの趣味にもささやかな応酬にも興味はない。ただ、これが影朧の出現に関与する歪みであるのなら収穫であり、ここでの凶行への対策のために警戒を続ける価値もあり、そういった意味では重要であると言える。
そして彼女にとってもう一つの重大事、関心事。
「サクラミラージュでもお茶とケーキは美味しいのに、この後に事件が起きるなんて許せないよね」
相手が影朧であっても、ヴィリヤが許せないと評することはそれほど多いことではない。これだけでもいかに美味しいか、いかに味わい損なうのが惜しいか、察することもできようというものだ。影朧にはその怒りを煽らぬよう、機を見て現れることを期待するばかりである。
●
探索に練り歩くとある猟兵の目に、サアビスチケットを使用しての食事を楽しむレイナの姿が捉えられる。向かいに座るのも猟兵であろうか。この辺りの警戒は充分であろうと歩き去って。
しばらく歩けば今度は服飾店で色々を見て回るレイナの姿を目撃した。いつの間にやら追い抜かれたのか、フットワークの軽いことで…と、もう一つ奥をひょいと覗けばそこにはさらにレイナの姿。
もちろん本人ではない。彼女の召喚した、彼女を模した虚竜の姿である。より手広く注意を払い、有事の際には避難誘導と足止め、レイナへの報告を行うために3体以上を一組として店内各所に展開しているのだ。召喚された竜たちもサアビスチケットを利用しているのだから、その店舗利用率は大したものだ。至る所で買い物を楽しむレイナ。事実はともかく、傍から見ればとんだ『大物』である。
それらが召喚されたものだと気付くまで、僅かなりとも目を疑ったり首を傾げたりした青年がいたのは、また別の話。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鈍・小太刀
杏(f16565)と
杏もお洒落が気になるお年頃?
ならお姉さんに任せなさい
いい感じにアドバイスしてあげるから♪
とはいえこの世界の流行なんて知る訳もなく
本屋で見つけたモガ入門書を手に
俄か知識であれこれ試してみたり
あのワンピースいいかも!
向日葵みたいに晴れやかな黄色
杏にピッタリね♪
杏に色々着せちゃうのが楽しくて夢中になってたら
被せられたベレー帽に不意打ちキュン!
わ、悪くないじゃないの(ちょっと照れつつウキウキとお会計
お化粧も挑戦する?
お勧めは赤いルージュだって
艶やかに大胆に…
(杏の口元に大胆に付いたケチャップに思わず笑い
うん、似合ってる
カフェーでスイーツも頂いちゃおう
飲物はカフェモガ…カフェモカで!
木元・杏
小太刀(f12224)と
百貨店の案内図を手に、目を輝かせて巡回警備
すごいね小太刀、沢山の品物が集まって、まるでびっくり箱
ん、もだんがーる、する
小太刀のアドバイスを聞いて
洋服フロアで黄色のレトロワンピースに赤のパンプスを選んで
帽子は…
目に入ったのはふわっと大きめ紺のベレー帽
小太刀に似合いそう(被せてみようと手を伸べて)
ん、こっちの白百合のコサージュも小太刀用にとお買い上げ
お化粧もしてもらったら、再度お店めぐ…もとい巡回警備
ふふ、いつもとは少し違う
身も心もお淑やかになったわたし達ね(微笑み
………む?(ホットドッグの香りにぴくり)
気が付けばホットドッグを頬張り再度巡回
………む?(カフェにぴくり)
●墨突不黔
「すごいね小太刀、沢山の品物が集まって、まるでびっくり箱」
木元・杏(食い倒れますたーあんさんぽ・f16565)が目を輝かせながら、あれやこれやと物珍しく見回している。田舎住まいの少女にとって、現代的都会的な製品商品に囲まれた百貨店の中は、さぞかし刺激的で魅惑的なものだろう。それこそ、小さな子どもが手を引かれ、初めて百貨店に来たようなもので、はしゃいで当然というものである。
そんな様子を鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)も微笑ましげに眺めやり、次いで視線の先を追う。
「杏もお洒落が気になるお年頃?」
洋服店のマネキンの衣装に目を留める姿に問いかけると、元気に頷き返してくる。
「ならお姉さんに任せなさい、いい感じにアドバイスしてあげるから♪」
「ん、もだんがーる、する」
頼もしげに胸を叩く『お姉さん』に少女は一層目を輝かせ、足取りも軽く色鮮やかなる服飾品の森に踏み入れる。逸る気持ちを体現するように先を行った杏には、小太刀の背は見えていない。
なので当然、彼女が後ろ手に隠していた、まるで買ったばかりのように真新しいモガ入門書は見えていないのだ。
「向日葵みたいに晴れやかな黄色、杏にピッタリね♪」
巧みに隙を突いてページをめくってみたり、そこで得た情報から流行りに見合う服を見繕ったり。小太刀の努力と工夫によって、杏の装いは似合わしくモダンに変更された。黄色のレトロワンピースに赤いパンプス、素朴で可憐、初夏に相応しくビビッドかつ涼しげなものである。
スカートをふわりと広げてくるりと回り、その拍子にふと目に入ったのはやや大きめの紺のベレー帽。手元の本と睨めっこしながら何やら考え事をしている小太刀を一度見ると、その帽子を持って忍び寄り――
「似合いそう」
夢中の頭に不意打ちを受け、わ、と小さく声を上げる小太刀。顔を上げると悪戯っぽくうっすらと笑う杏の表情が見える。こうなると本はもう隠しても無駄だろう。襲撃の成果の確認のため店内の鏡を探して映してみれば、落ち着いた色味ながら可愛らしいシルエットの素敵なベレー帽。
「わ、悪くないじゃないの」
取り繕って落ち着いた声を装ってはいるが、顔は赤いし足取りは弾むし、こちらも見事に隠せていない。数歩後を追う杏の、その背に隠した白百合のコサージュが、後で自身へと渡されるものだとは思いもよらないことだろう。
●
服を選んだ後でメイクにも挑戦した杏は、口元に鮮やかな紅を引き、より大人っぽく、印象的である。年相応に幼い顔立ちもあって、多少のアンバランスさも見えるが。
「………む?」
たくさん歩けばお腹も空く。そうすると嗅覚もいくらか鋭敏になるものである。温かくおいしそうな香りに反応し、つられるようにその発生源へ。そこでは美味しそうなホットドッグが売られており、抱えた空腹に美味しそうな香りと美味しそうな見た目、そしてお手頃なお値段と、そんな暴力的なまでの誘惑を受けてしまっては……
「杏、そこのカフェーで…」
小太刀が隣を振り向くと、両手で食べかけのホットドッグを大事そうに抱える少女と目が合った。
「む?」
突然の予想外に言葉を途切れさせた小太刀と、咀嚼のために言葉を発することのできない杏はしばし無言で見つめ合い、それから小太刀がふっと噴き出した。
「うん、似合ってる」
そう評された杏の口元には、ちょっと派手めにケチャップが付いてしまっていた。先のルージュと同様に、鮮やかで印象的ではあるが、大人っぽくはないものであった。
「カフェーでスイーツも頂いちゃおう」
という提案を小太刀が仕切り直して投げかけて、杏が受けようとしたところで――
どこかから、悲鳴があがった。片や残りを急ぎ食べきって、片や空きっ腹を抱えたまま、駆け付けるしかないようである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『同人娘』
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POW : ア゛ッ…顔良゛!ん゛っ…(嗚咽)
非戦闘行為に没頭している間、自身の【敵でもあり、公式でもある猟兵の顔 】が【良すぎて、嗚咽。立ち止まったり、倒れ伏し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : ――散ッ!(公式である猟兵に察知されたので逃走)
肉体の一部もしくは全部を【同人エッセイ漫画とかでよくある小動物 】に変異させ、同人エッセイ漫画とかでよくある小動物 の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ : 同人娘達…? ええ、あっちに駆けて行きましたよ。
【オタク趣味を微塵も感じさせない擬態】を披露した指定の全対象に【「こいつ逆に怪しいな…」という】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「あらら、早かったね」
猟兵たちが駆け付けると、黒い影が肩を竦める。展開された分身や巡回の甲斐もあって、人的被害が出ることは防げたようである。
とはいえまだまだ油断はできない。包囲を突破すれば人々への攻撃は容易いだろうし、単純に猟兵たちが倒されてしまえば防げようはずもない。敵がたった一人であれば、押さえ込むだけなら問題はないだろうが……
「おたくらには、これの相手をしてもらうよ」
そう簡単にはすませてくれないらしい。その黒い影は、無数の、手下としての影朧を召喚する。いずれも人間の女性の形をした、一見すれば一般人と見分けのつかない者達である。それらはゆっくりと、一様に、猟兵たちに視線を投げる。いずれも尋常ならざる目をしており、それは間違いなく、一般人と一線を画すものであった。
「僕には正直、こいつらの言うこととか分からないんだけどね。足止め程度に戦ってくれるならそれで充分…」
顔の部分を僅かに揺らがせ――おそらく笑ったのであろう影朧の言葉を遮って、
「ア゛ッッ…」
悲鳴のような、嗚咽のような、あるいは何かの鳴き声のような声が響いた。そうして、一体の影朧の少女が、消滅した。残る者も身を震わせ、あるいは切なげな表情で、あるいは涙を流しながら、あるいは膝から崩れ咆えながら、言った。
『尊い…』
それからは口々に、様々な呪文が聞こえてくる。理解できる言語を用いて理解できない文章を構成するそれらは、きっと呪文である。『受け』とか『百合』とか『解釈違い』がどうとか…召喚された者同士で口論が始まったりもしている。戸惑う猟兵を前にして、黒い影の殺人鬼は言う。
「こいつらの言うこと、分からないんだけど」
表情はよく分からないが、声色がどうも戸惑っている。助けを求めるように言われたところで、どうしようもない。もっとも、どうもしなくても勝手に消滅してくれそうな娘たちではあるが…冷静さを取り戻した殺人鬼が動き出すより早く、彼女らをどうにかする方が得策だろう。
ちなみに彼女らは、なんでもアリの雑食である。
相沢・友子
理解できない呪文?何のことだろう。彼女らが口々に語らってるのは、真理を求める熱い思いの丈に他ならないではないか?
求道者の歩む道は、一本道。ぶつかり弾け飛ぶ修羅道!
それは、海を見限り、陸と淡水に生きる私と同じ、同士よっ!!
「私は、男の娘にナース服を着せて攻めに徹してもらうのが好き。Sっ気が、あればなお良し。受けのガタイのしっかりした殿方が、あられもないお声を上げるところが、すごく良き良きです」
「『こうゆうのが好きなんだよね?ずっと、こうして欲しがってたの知ってたんだ、どう?』とか言ってほしい!」
【行動】大量殺人犯の方は、硝子の寝ず見が静かに取り囲み。私は、同人娘の中に突撃し溶け込もうとします。
塩崎・曲人
OH……
「オレも正直言ってることはよく分からんが―どうすりゃ黙るかは分かるんだなぁコレが」
この手の連中、自分の『推し』?だったか
拘りのあるモンについてはよくペラ回るんだが
それが好きな自分の事を知られるのは恥ずかしいらしい
アルダワの研究バカ共にも似たようなの居たな
「って訳で、まずは紳士的に自己紹介交換と行こうじゃねぇか?オレ様はチンピラ猟兵塩崎曲人、趣味はギャンブル好みのタイプは包容力のある年上のレディ!―さあお嬢さん方、お名前とご趣味と好みの異性についてお答え頂こうじゃねぇか!」
コレが【睨撃粒子砲】の質問な
セクハラ一歩手前だがまぁ相手が相手だ、まぁ良いだろ
これで逃散ってくれると楽で助かるんだが
●総じて、沼
「OH……」
塩崎・曲人は溜め息交じりの感嘆の声を上げながら、相沢・友子は何やらを考えこみながら、その敵と対峙していた。と言っても相手の方からは向かってくるでなく、ちらちらとこちらを見たり小声で何かを話し合ったり、膝からその場に崩れ落ちていたりと、敵意らしい敵意も見られない。今の間にまた一人消滅した。
「オレも正直言ってることはよく分からんが―どうすりゃ黙るかは分かるんだなぁコレが」
と思い浮かべるのは、アルダワで研究を生業とする者たち。熱心な、ともすれば偏執的なこだわりを見せる彼らは、その興味の向く話題になると非常に饒舌になる傾向がある。その中でも内省的もしくは内向的な者は、そんな情熱を有することを恥ずかしがり、隠そうとしたりする。
(『推し』?だったか)
目の前の彼女らにも熾烈かつ激烈なその想いを傾ける対象が存在する。それは例えば人物であったり、無機物であったり、関係性であったり。そうまで熱狂するに至った期間の長短や、対象の人気なんかによる優劣も、貴賤も、判定基準すらもない。推せば『推し』である。
それはたとえば、恋にも似ているかもしれない。避けることもできるし、好まざる者もあるが、落ちてしまえば抜け出せない、幸福な地獄ないしは苦痛を伴う天国。
「って訳で、まずは紳士的に自己紹介交換と行こうじゃねぇか?オレ様はチンピラ猟兵塩崎曲人、趣味はギャンブル好みのタイプは包容力のある年上のレディ!―さあお嬢さん方、お名前とご趣味と好みの異性についてお答え頂こうじゃねぇか!」
という訳で、お手軽インスタントな恋への入り口、いわゆるナンパのような文句でもって、いくらか威圧的に曲人が娘たちへと詰め寄って行った。もちろん彼の目的はそういった行為ではない。もしもお近づきになる事が目的であれば、元来あまりよろしいとは言えない目つきを、少しは取り繕うことだろう。
その言葉は、ユーベルコード。敵を睨み据え、投げかけた質問によって相手を縛り、攻撃とするものである。真実を答えれば解除され、無害なものとなるのだが――
「ヒッ」
自身の嗜好を暴かれることを恥じた影朧たちの逃散を期待した質問であったのだが、その言葉は想定以上の成果をあげた。
彼女らは元より、猟兵をもその思索の糧とする存在である。多種多様の嗜好の中には、たとえば曲人の言うようなギャンブル好きのチンピラを好む者もあり。
「自分と絡むと萌えないんですよ!」
推しから認識されることを良しとせず、即時の消滅を望み死にそうになっている者、
「チンピラ猟兵さんはナンパなんてしないもんナンパされて最初キレ気味に困惑して追い返すのにだんだん相手の本気度に押し切られるようになっ」
僅かに、あるいは大いに許容しがたく、公式の解釈違いに死にそうになっている者、
「アッ死」
推しからズバリ好みド真ん中の軽薄な言葉を投げかけられ、供給過多で死にそうになっている者…悲喜こもごも様々の反応があるが、基本いずれも死にそうになっている。というか結構な数が死んでいる。
(セクハラ一歩手前だが相手が相手だ、まぁ良いだろ)
小さな呵責や遠慮を内心に持った曲人の視線には、冷ややかなものが滲んでおり
「新刊、5冊だそ…」
冷たく射竦められた娘の一人がまた、非常に満足げに消えて行った。
いくらか首を傾げていた友子も同様に動き出す。その疑問の正体は、理解に苦しい呪文や語句のためではない。
(彼女らが口々に語らってるのは、真理を求める熱い思いの丈に他ならないではないか?)
そう、理解できないと口にする者への疑問である。一切どこにも、一片たりとも、理解不能な部分などありはしないではないか。
(求道者の歩む道は、一本道。ぶつかり弾け飛ぶ修羅道! それは、海を見限り、陸と淡水に生きる私と同じ、同士よっ!!)
海に在らざる異端の人魚は、自らの行く茨の道の、その険しさに悔やみはしない。深みに落ちて藻掻くとも、息苦しさに喘ぐとも、沈み行く身を知りつつも。
そうして敵の中へと躍り込んだ彼女の目には、足取りには、少しの迷いもなく、ただ真直ぐに、あたかもそこに確たる道を見るが如く。そして――ひとりの修羅が、咆哮した。
「私は、男の娘にナース服を着せて攻めに徹してもらうのが好き。Sっ気が、あればなお良し。受けのガタイのしっかりした殿方が、あられもないお声を上げるところが、すごく良き良きです」
突然に、明け透けに。投入された燃料によって殴り飛ばされたような衝撃を受ける影朧たち。絶句し、逡巡し、それでいつつも目は爛々と輝き、固唾を飲む気配すら感じられる。感じた手応えに、友子は畳みかけるように言葉を継ぐ。
「『こうゆうのが好きなんだよね?ずっと、こうして欲しがってたの知ってたんだ、どう?』とか言ってほしい!」
その言葉は、鋭利に過ぎる刃のように、娘たちの胸に、というか『癖』に刺さった。不死なる者を貫いてその息の根を止めるという意味では、杭の方が適切かもしれない。もっとも、ここまで結構な人数がいとも容易く斃れているのだが。
「ヒエッもっと下さい…」
「わかります明らかに力で劣る小さな男の娘に主導権を握られてしまう男性の組み合わせで一生推していけるくらいです!」
口々に声を漏らしたり、自らの好みに沿う補足設定を創出したり、彼女らは忙しく討論を始め、そのうちのいくらかは討論しながら消滅していった。意見交換の最中に黒い殺人鬼や他の猟兵の方をちらちらと見ている者がいた点についてはまぁ、割愛する。
配下の一部としばしば目が合い、居心地悪そうにする黒影は、白熱しつつも呑気そうに話す友子の目論見には気付いていないようである。彼が雰囲気に呑まれ動かず静観しているうちに、偵察のために店内各所に散らばっていたグラスラットたちが、静かに、丁寧に、その周囲を取り囲んでいる。その存在に気付くのは恐らく、動き出して蹴躓くか、鋭利な前歯を一斉に突き立てられる時だろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シリン・カービン
影朧への障害は速やかに排除、したいのですが。
なぜか、やりにくい。
女給服の裾を翻し、素早く距離を開けて、
精霊猟銃の照準を同人娘たちに向けます。
「!」
照星の向こうに見える彼女らの瞳は、
まさしく獲物を狙う狩猟者の目。
「く…」
プレッシャーには屈せず、いつもの言葉を絞り出し、集中。
「あなたは、私の獲物」
あの。
引き金引く前に倒れてませんか、彼女たち。
尊死って、どういう意味でしょう…?
よくわかりませんが、とりあえず撃っときます。
※最近流行の美貌の女狙撃手が主人公の漫画、
『双星の詩凛』に重ねている模様。
影朧の気持ちもわからないではありませんが、
それはさておき、仕切り直しと行きましょう。
「 あなたは、私の獲物」
●潟湖
速やかに駆け付けたシリンの服装は、そのためカフェーの女給姿のままであった。静やかな淑やかな動きを想定されたそれは、決して動きやすいとは言えないものだが、それでも百戦錬磨の狩人である彼女にとって、この程度の悪環境などはどうということではない。
ない、はずなのだが。
(影朧への障害は速やかに排除、したいのですが)
なぜか、やりにくい。確かに、翻る裾はいくらかは重い。その愛らしい袖や靴もいくらかは動きを阻害する。しかし、それほど大した障害ではないはずである。雑多な思考を振り払い、集中すべく覗いた照門、遥か見据えた照星の向こうに、その違和感の正体はあった。
「!」
薄い笑みを浮かべながら、こちらを見つめる娘たち。その絡みつくような、射止めるような、強く真っ直ぐな視線は、自らのよく知る、それでいて見慣れない――取りも直さず、獲物を狙う狩猟者の、猟兵自身と同じ目であった。
「く…」
強烈なプレッシャーに僅かな動揺を感じながらも、それをすぐさま捻じ伏せると、シリンはいつものように、ただしいつもと違う、少しかすれた声で呟いた。
「あなたは、私の獲物」
その狩人たちを、過たず獲物とするために。同じ獲物も、同じ狩りもありはしない。多様の狩りのその一つを、いつものように成し遂げるだけだ。
「あの。」
ほんの十数秒の後。累々と崩れ倒れた敵たちを前に、銃口を降ろしたシリンがやや呆気にとられたようにしながら問いかけている。
その表情の原因は、獲物たる影朧たちが倒れたことにある。『倒した』のではない。彼女が撃つより先に、勝手にばたばたと倒れたのだ。一発たりとも弾丸を費やすこともなく、次々と。強いて言うなら、射出されたのはシリンが喰らった豆鉄砲くらい。
「死んじゃう死んじゃう尊死しちゃうこれってアレよねあのっあの―…っ」
「ええこれは……まさしく……詩凛様……」
倒れた者たちが荒い虫の息で声を掛け合っている。励まし合っているわけでも、打開策を求めた連携の相談をしているわけでもない。ただ一心に、推しているのである。今際の際に、狂気とも言える気迫を持って、推しているのである。もはや殉教である。
「尊死って、どういう意味でしょう…?」
悲しいかな、その神体たる猟兵にその意味は通じなかった。少しだけ首を傾げ、戸惑った様子を見せる。クールな表情のメイド銃手という、いかにもな彼女のどこか可愛らしいその仕草に――
「オア…」
また何人か倒れ、何人か消えた。シリンの戸惑いは増すばかりである。
よくわからないが、とりあえず撃っとくことにした。
礼と感想を述べながら撃たれ消えていく同人娘たちの言葉を繋ぎ合わせていくと、どうやら美貌の女狙撃手の活躍する物語が最近流行っているらしい。『双星の詩凛』というそれは、なるほど同じ名前を持つこの猟兵と重なる点がある。
分かってしまえば何ということはない。彼女たちの強い視線は、好きなキャラクターの一挙手一投足を一切合財見逃すまいとするあまりに、重圧を纏ったものであったのだ。
小さく溜め息ひとつ、気を取り直したシリンは、仕切り直しにもう一度
「あなたは、私の獲物」
届いた決め台詞に、さらに幾人かが萌え尽きた。
成功
🔵🔵🔴
木元・杏
小太刀(f12224)と
……尊いとは?
小太刀に問いかける
説明されてもちょっとよくわからない
誘い受け?(首かしげ)
小太刀知ってる?あ、ツンデレは知ってる大丈夫(小太刀見て)
沢山の言葉が聞こえるけど全然わからない不思議
(はっ)
これはもしや、もだんがーるになるための試練
これがわかればわたしもイケてる女…(ごくり
真剣に飛び交う会話に耳を澄ます
へたれ、わかる。おとうさんって意味
!百合、百合の花!
小太刀、百合のコサージュ
顔を近付け帽子につけて
ふふ、小太刀の髪の色と同じ色の花
きっと似合うって思ってた
…ん?お姉さん達悶えてる
ならこの隙n…何か近付くの怖い
透明狼行って?
我に返り出したら体当たり
骸の海に返してね
鈍・小太刀
杏(f16565)と
尊いとは?……ええと、ありがたく貴重であるって感じかなぁ?
杏の問いに答えつつも
純粋無垢な目が眩しい、眩しいよっ
かわいい攻め?ギャップ萌え?
飛び交う言葉の数々も
意味だけなら何となく分かる耳年増
無駄に色々と想像してぐるぐるぐる
いやいやいやいや理解や共感は別よ、別だからね?
そう、ツンデレ……って、誰がツンデレよ誰が!?
わわっ!?ちょっと何し…
急に袖を引かれ体制崩したところに杏の笑顔が
帽子に何か?花だ、かわいい
「……あ、アリガト」
嬉しくて、でもやっぱり気恥ずかしくて
目を逸らしつつもお礼の言葉を……ん?百合??
周囲を見れば少女達が瀕死の状態に!?
待って!?これは違うの、違うからー!!
●すれ違い系
「……尊いとは?」
「……ええと、ありがたく貴重であるって感じかなぁ?」
広義には、その通りである。しかし影朧たちの言う内容には、さらに付随する意味があるらしいが、この少女たち…杏と小太刀には知る由もない。文脈と僅かに合わないその用例に、説明を受けたはずの杏が首を傾げ続けている。小太刀の方でも――
(純粋無垢な目が眩しい、眩しいよっ)
否、どうやらそのスラング的なニュアンスまで含めて理解していたらしい。友を謀る罪悪感に打ちひしがれながら、少し遠い目をしていた。
猟兵と影朧の、あるいは同人娘同士の会話に、片や一言一句を漏らすまいと真剣な表情で、片や目を泳がせながら何やらを想像して少し顔を赤くして、そのどちらもが耳を傾けていた。
「これがわかればわたしもイケてる女…」
その重要性に緊張感を示しつつ固唾を飲む杏。当世風のお洒落な女性、いわゆる『モダンガール』になるための基礎知識的な専門用語であると踏んだ彼女は、年相応に背伸びをしたいものらしく、懸命な様子である。しかしもちろんそれは勘違いである。
「へたれ、わかる。おとうさんって意味」
もちろんそれは勘違いであるが、もしかしたらそうでないかもしれない。
「誘い受け?」
「かわいい攻め?ギャップ萌え?」
繰り返し首を傾げる杏と、それに合わせるように同じく首を傾げる小太刀。しかしその表情からも察せられる通り、年長の少女はその意味をいくらか理解している。
「小太刀知ってる?」
知っているがために、根が善良な彼女にとってはこの質問は非常に痛い。誤魔化すべきか、正直に話すべきか――苦悩のうちにも新しい語句は次々と集積される。そして意外にも、それが小太刀の心を救ったのだった。
『ツンデレ』
これなら尋ねられたところでそれほど痛くはない。答えられるし、健全だ。内心で胸を撫でおろす友人に、杏は。
「あ、ツンデレは知ってる大丈夫」
小太刀を見るも尋ねない。だって知ってるから。なぜなら今まさに目の前にいる、素直になれないその少女がそうだから。そう、鈍・小太刀はツンデレである。
「そう、ツンデレ……って、誰がツンデレよ誰が!?」
「!」
誰へともなく叫ぶ小太刀をそっちのけで、耳聡く語句を聞き取る杏は、その知った言葉に反応を示した。
「百合、百合の花!」
「わわっ!?」
それなら心当たりがある。突然に小太刀へと向き直り、爪先で立って顔を寄せ、その顔を間近に覗き込む。反射的に身を引こうとする袖を掴んで引っ張ると、態勢を崩した少女の戸惑った表情が目の前に来る。
「ふふ、小太刀の髪の色と同じ色の花。きっと似合うって思ってた」
視界いっぱいに杏の笑顔を映していた小太刀には、杏の手の動きは見えていなかった。言われて帽子に手をやれば、そこには柔らかな装飾の感触があって。脱いで見たならやはりそれは、可愛らしい白百合の花。嬉しくて、でも気恥ずかしくて。
「……あ、アリガト」
小さな声で、目を逸らしつつ、帽子に顔を隠しながらも、その言葉をきっちりと紡いで――ふと、周囲の喧騒が止んでいることに気付いた。嫌な、予感。
恐る恐る影朧たちの方を見ると。
「お姉さんたち、悶えてる」
「ヒ、ヒィ、百合…………っ」
ちょっと変則的ではあるが、既に話題に上っていた『かわいい攻め』に他ならない、女の子同士のやり取りに、幸せそうに死にかけている同人娘たちの姿があった。そういう『百合』と解釈されたことを察知した小太刀は、咄嗟に声を荒らげる。
「待って!?これは違うの!」
「ならこの隙に…」
しかしやはり抗議と弁明は聞き入れられない。確かに倒れて隙だらけの敵を前にして歓談に興じる場合でも無し、杏のそれは正しい判断とも言えようが。
「ふふ…うふふふふ……うふっ。眩しい…なんて美しい百合畑ですの…。幻覚でないならなんだというんですこんな都合のいい…都合の…うひッ…すごぉい…生の百合すごぉい……。こんな人の溢れる場所で見せつけるようにあんなコト間違いないわあれは甘いお砂糖に包み隠したどろどろの独占よぐふうっ!」
「…何か近付くの怖い」
さしもの杏もちょっと嫌そうな顔。確かに見た目に割と怖いし、笑顔で手を組んで召されようとしている敵に追い打ちをかけるのは人道的に多少の抵抗もありそうなものだ。
「透明狼、行って?」
別に容赦や呵責はなかったらしい。照れつつ、焦りつつ、小太刀もそれに続き、桜花の刃で敵を断つ。それは願いと祈りの籠められた、邪なるを鎮める力。思うところはありつつも、それでも慈愛でもって浄化を試みる、不器用な小太刀の優しさである。
「ツンデレ猟兵様…かわいい猟兵様と…お幸せに………」
その在り方に感銘を受けた影朧たちは、斬られた者はもちろんのこと、斬られる前にも消えている。口々に、ツンデレ少女への祝福を贈りながら――
「違うからー!!」
はいはい。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レイナ・オトゥール
ヴィリヤお姉さん(f02681)と!
いま、尊いとか百合とか解釈違いとか受けとか…………なるほど、彼女たち、は……です、ならば!
ヴィリヤ御姉様!(ヴィリヤの腕を取りじっと見つめて)
私たち、このままでは(本命の敵から)引き裂かれてしまいます(悲しそうな顔で)
逃げましょう!(同人娘達から)
逃げてから、それから、それから二人で(本命の敵を倒しましょう)……!
二人なら何処でだって(戦いは)やれるはずです!
どうか、私の手をとってくださいません、か(そしてとっととここから逃げましう)
といった感じで、演技をしながら逃げたら彼女たち見逃してくれたり、むしろ応援してくれたりしてくれませんかね?
だめでしょうか??
ヴィリヤ・カヤラ
レイナちゃん(f11986)と。
私も聞いた事があるよ、色んな趣味っていうか好みの人がいるんだよね!
勝手に消えたりもしてるし少し演技してみよう、
道を開けてくれるだけでも良いんだけどね。
ここはレイナちゃんに乗っかって。
ダンピールは顔が良いみたいだから顔は崩さないように気をつけて。
(真っ直ぐにレイナちゃんを見て)
うん、レイナちゃん。
今から行けば間に合うよね(敵に逃げられる前に追い付けるよね)
二人でなら何があっても大丈夫って思うし絶対に守るからね(戦闘中の怪我とかね!)
一緒に逃げよう(レイナちゃんの手を取って微笑んで)
同人娘の間を抜けるなら流し目で微笑んでみようかな。
●フリでもおいしい
「いま、尊いとか百合とか解釈違いとか受けとか…………」
「私も聞いた事があるよ、色んな趣味っていうか好みの人がいるんだよね!」
一方のこちらはレイナとヴィリヤ、両者ともその多種多様な言葉の意味を概ね理解しているようだ。猟兵たちの挙動の尊さに消えゆく同人娘を眺めやり、頷く。
「なるほど、彼女たち、は……です、ならば!」
その様子にレイナが思い立ち、声を潜めてヴィリヤへとその策を届ける。敵に悟られぬよう顔を寄せ、頷き合って意思を通ずる青い髪を持つ同士のその様子は、既に影朧たちにはいくらか刺激の強いものではあるのだが――
「ヴィリヤ御姉様!」
不意に、レイナがヴィリヤの腕を取り、いつもとは違った呼び方でもって悲愴な声を掛けて見せた。その表情もまた、悲哀と苦悩に満ちたもの。道ならぬ愛を決死の想いで貫かんとする『妹』の姿に、同人娘たちがざわついた――もちろん二人は姉妹ではないし、(恐らくは)そういう仲でもない。これこそが先ほどの密談によって共有された作戦、即席の演技によるものである。
「私たち、このままでは引き裂かれてしまいます」
確かにこのまま足止めを喰えば、黒い殺人鬼との距離は離されてしまう。
「逃げましょう! 逃げてから、それから…それから二人で……!」
目の前の危険度の低い敵から距離を取り、優先すべき敵をツーマンセルで倒すのは、戦略的に有効と言える。
「うん、レイナちゃん。今から行けば間に合うよね」
決然と、凛々しい表情で『妹』を勇気付けるように言う『姉』。黒影がその視界から逃れ去っていない以上、今この囲みを破ればすぐさま刃を交えることはできるだろう。
「二人なら何処でだって、やれるはずです!」
「二人でなら何があっても大丈夫、絶対に守るからね」
見つめ合い、頷き合う二人。確かにレイナとヴィリヤの連携は熟練したもので、互いの強みを活かしあったり、互いの弱みを補いあったり、苛烈な攻めも隙のない守りも、自在と言って良いものだ。
――と、いうように、二人の物言いは含む内容と言葉の熱量との間に多大な齟齬はあるものの、ひとつの嘘も状況認識の誤謬もない。ただただ演技が過剰なだけである。それを見た同人娘たちはどうなるか、というと
「愛ァ!!」「ナ…ア……シマイユリ……」
「"在る"じゃん……………………………」
「デッカイ…カンジョ……」「夢かこれ…」
こうなるのである。目から涙を流し、口から血を吐き、その他色々諸々を滲出させながら、成す術もなく斃れ伏して行く。あるいは伏し拝んでいるのかもしれない。有り難きもの尊きものを前にして、人は、たとえ人ならずとも、圧倒的に無力だ。
数多の障害が倒れ光明の差した希望の道を共に駆け抜けんと、または累々とつわものどもの倒れて転がる険しき道を共に踏み越えんと、レイナはヴィリヤの、御姉様へと手を差し出し。
「どうか、私の手をとってくださいません、か」
見上げる影朧たちの目は、その青き瞳に輝くものを見たかもしれない。あるいは差したる後光の眩さに、輪郭だけを見たかもしれない。
「一緒に逃げよう」
頷く凛とした金の瞳に、その身を賭したる凄絶な覚悟を見たかもしれない。それをも隠し笑って見せる、優しき強さを見たかもしれない。
二人の女性猟兵の、本当の心は分からない。描き示された書にあらず、心を暴く語り部もない。分からぬからこそ想像を掻き立て、分からぬからこそ際限なく惹きつけ、影朧たちをも魅了して已まぬ物語となった――ただし、飽くまで彼女らの中では。
後光とか覚悟とか、まるっと一通り気のせいであり、妄想である。仲は良くとも真にも義理にも姉妹ではないヴィリヤとレイナ、全部が全部盛りに盛ったる演技である。なんならヴィリヤは、格好良い御姉様キャラを演じるための表情筋のオーバーワークが小刻みな震えとして表れている。
そして物語でない生きた猟兵の二人の心の裡は描写するまでもなく当たり前に存在している。即ち。
「といった感じで、演技をしながら逃げたら見逃してくれたり、むしろ応援してくれたりしてくれませんかね?」
打算バリッバリである。功を奏して既に立っているものはいない。化けの皮を脱いだところで、もはや虫の息のファンたちの意識は混濁しきって妄想の中、まともに見えてなどいやしない。死に際にもう一目だけでも――と顔を上げた同人娘の一人が、幸運にもヴィリヤの視線を捉えると。
「失礼、先を急ぐので」
去り際に憂いを湛えた流し目を受け、幸せそうに事切れた。オーバーキルであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『切り裂きジャック』
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POW : ジャック・ザ・リッパー
自身の【瞳】が輝く間、【刃物を使った攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : フロム・ヘル
【秘めたる狂気を解放する】事で【伝説の連続殺人鬼】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 霧の都の殺人鬼
自身に【辺りを覆い尽くす黒い霧】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠守田・緋姫子」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
自身に纏わる不可視の敵を蹴飛ばし砕き斬り裂いて。煩わしきを退ける間に、尖兵たちは残らず倒れ、されど敵する猟兵は、一人たりとも欠けはせず……殺人鬼は腹立たしげに舌打ちをした。
「ああ、使えない。わけの分からない無駄ばっかり身に付けて得意になって、結局役にも立たないじゃないか」
骸も残らず消えた手下の、元いた所を踏みにじり、なおも据えかねぶつぶつと。
「そのくせみんな、無駄に偉そうにべちゃべちゃ喋って、当たり前みたいに傷つけるんだ」
だん、だん、だん、と踏み鳴らす足音は次第に大きく激しくなって、そうかと思えばぴたりと止んだ。
「ねえ、どうせ見下したいのなら、どうせ傷つけたいのなら…」
思い出したかのように、もしくはたった今気付いたかのように、黒い影はこちらに頭部を向け、炯々と輝く真赤な瞳を零れんばかりに剥いて見せ。
「こっちの方が、便利で楽しいに決まってる」
姿勢を落とし、真っ黒い刃をずらりと構えて、その影朧――切り裂きジャックなる殺人鬼が、上ずった声で楽しげに歌い掻き消えるように飛び出した。
相沢・友子
「ちらっと聞こえたけど、影朧さん、無趣味だよ・・・。手札ゼロ枚で、ガチデッキに挑んで惨敗して。友達づくりに失敗したってことだよね?そんな君に、私は、ボランティア活動の参加をすすめるよ」
「あそこは良いよ。やる気を持て余した人たちが、人手の足りてない場所に集まって。途方も無い課題に尽力を尽くす場だから。知識が求められることなんて無いし。必要なことなら、その場で説明が在るし。今度時間を作って行ってみると良いよ」
【行動】ひとまず、UC硝子の寝ず見を無限湧きさせつつ。影朧にボランティア活動を勧めてみます。
影朧が、民間人に危害を加えるようなら、戦いもやむなしと思いますが、極力会話のみで、解決したいです。
●望むは孤独
「ちらっと聞こえたけど、影朧さん、無趣味だよ・・・。手札ゼロ枚で、ガチデッキに挑んで惨敗して。友達づくりに失敗したってことだよね?」
相沢・友子は対話のみによる説得を試みる。それだけで済むとは思ってはいないが、それだけで済めば良いとも思ってはいる。行使するユーベルコードも引き続き硝子の寝ず見、積極的に攻撃を行うものではなく、纏わりつかせて行動を阻害することを目的としている。実際それは功を奏し、飛び出したはずの敵の足を止めさせた。先ほど囲まれたこともあって、見えないそれをより強く警戒しているのだ。
ねずみは無尽蔵と思われるほどに次々と召喚され、次々に駆けて黒影を囲む。姿の見えぬからこそ実際の個体数が隠され、脅威となる。
「そんな君に、私は、ボランティア活動の参加をすすめるよ」
そんな見えざる障壁の、不明の脅威を両者の間に横たえながら、友子は寄り添うように穏やかに続ける。
「あそこは良いよ。やる気を持て余した人たちが、人手の足りてない場所に集まって。途方も無い課題に尽力を尽くす場だから。知識が求められることなんて無いし。必要なことなら、その場で説明が在るし。今度時間を作って行ってみると良いよ」
この影朧はもはや真っ当に生きる人間ではない。人々の集まるボランティア活動の場を訪れることは難しいだろう。実現できるとすればそれは、救いを受けて転生してからということになる。友子もそれを望んでいるのだろうが。
「ふうん、無趣味に、ボランティア…ねえ」
嘲りも蔑みもなく、純粋な提案として投げかけられた猟兵の言葉に対し、殺人鬼は含んだ笑いに揺らぐ声で応じた。その声には明確に、友子の声に含まれなかった嘲りと蔑みが込められていた。
「おたくらの知識や興味は当たり前で? おたくらの趣味に合わなきゃ無趣味で? その意味の分からない喩え話も、分からない僕が悪いってことか。はは…」
少女の言葉は、今を生きて、生きて藻掻く人間にとっては正しいことかもしれない。影朧となった誰かの恨みや痛みは、甘えに起因するものと言えるかもしれない。しかし、その恨みや痛みは確かに存在するものであり、支配されたものにとっては正しさなどどうでも良いことであり。そんな見えざる障壁は、不明の脅威は、相互理解を断絶せしめるに足るものであった。
震わせていた肩が、最後に吐き捨てた乾いた笑いとともに、ぴたりと止まった。
「笑えるね」
言葉に反して一切の笑みが消えた赤い目と声色。顔を上げて見せると同時に、足元のねずみを勢い良く踏み砕いた。憐れな一体は弾け散り、さりとてただでは済まさぬと、欠片となりて牙へと変じたその全身で敵の脚へと喰らいつく。刺され裂かれたその傷からは、溢れるほどに血が流れ、黒き身体には目立たぬとても、床へと零れて深手を報せた。
その脚を振って飛沫をとばせば、囲んだ硝子の寝ず見に掛かり、僅かなりともその身を浮かす。その輪郭は分からぬまでも、その数多きはうかがえる。
「多数派は良いよね。数で押すのも傷の舐め合いも簡単だ」
言いつつ影は、雫に汚れた床を選んで一歩二歩、短い助走で宙を駆けるように飛び出して、瞬きの間に距離を詰めると友子の首元へ斬りつけた。
苦戦
🔵🔴🔴
木元・杏
小太刀(f12224)と
ん、シリン(f04146)もいる
見知った顔が揃うと安心感
ぶつぶつ呟く言葉に首を傾げ
…お兄さんは真面目
知らないネタが分からないのは当たり前
そして分からない事ばかりな人達と話をすれば心が疲れる
そんなに無理しなくてよかったのに
でもわたしも…少しだけその気持ちわかる
わたしはうさみみ未経験
でも皆、うさみみして楽しそう
とても疎外感
だからわたしは周りをうさみみメイドで埋めつくし、誰よりもうさみみに詳しくなると決めた
【お掃除の時間】
びゅーてぃはミニスカメイド服にすらり白いパンストにローヒール
そしてうさみみ、無敵
うさみん☆が目潰しする隙に早業でダッシュ&ジャンプ、お兄さんを踏みつけてね
鈍・小太刀
杏(f16565)と
シリン(f04146)…詩凛もいた!
目には目を刃には刃を
攻撃見切り刀で武器受け応戦
変身されても雨音の先で未来読み
先回りして攻勢に
成程ね
なんで配下が同人娘と思ったら
孤独を抱えた殺人鬼とかいう超ベタ設定
彼女達が見逃す筈なかったわ
しかも捻くれた寂しがり屋で
秘めたる狂気を解放なんて中二病全開仕様
なのに全部無自覚な鈍感野郎で
確かに凄い逸材ね
他人が嫌い?自分が嫌い?
合う合わないはあるし
理解不能は仕方ない
全部忘れて転生したら?
でも一つだけ
尊いって言葉の根底は尊敬、リスペクト
少なくとも彼女達はアンタをバカにはしてなかったと思うよ
じゃなきゃ召喚なんて応じない
次会えたらさ
お礼ぐらいは言いなね?
シリン・カービン
【SPD】
杏(f16565)、小太刀(f12224)も来ていたのですね。
いえ、『かわいい攻め』と『ツンデレ』でしたか。
同人娘達の言葉は全く理解できませんでしたが、
彼女らもまた、狩人の目を持つ者でした。
理解出来ずとも良い。
だが、他者を見下し、傷つけ、否定することは許されない。
今一時は『双星の詩凛』として、彼女らの弔いの為に戦いましょう。
(自分が殺ったことは置いといて)
消えた同人娘が残した本をパラパラ捲り、大体把握。
彼女らが見れば、次々萌え死したであろうシチュを展開。
「追いつけますか、私の影に」(UC発動。高速移動で狙撃)
「アデュー、私の獲物」
(真の姿覚醒。精霊護衣のみの姿となり、超加速で斬撃)
●イジられ安定感
「…お兄さんは真面目」
木元・杏のその言葉は、褒めているようにも苦言を呈しているようにも聞くことができるが、首を傾げた表情からの類推は難しい。量りかねるうちに、言葉が継がれる。
「知らないネタが分からないのは当たり前。そして分からない事ばかりな人達と話をすれば心が疲れる」
いくら聞いても、その話題も話法も、何が面白いのかが分からなかった。脈絡もなく投げ込まれ、それまでの文脈に一切構わず始められる未知の会話。静かにやり過ごそうとしてもそれを許さず引きずり込み、知らねば挙って嘲笑い……理解できない体系によって繰り広げられる異形の会話は、自身にとってはただただ不気味だったことを覚えている。短く笑い、謝るだけの、疲労感だけを残す記憶。
「そんなに無理しなくてよかったのに」
その猟兵たちはきっと、無理のない関係であるのだろう。敵と対峙した戦闘の場においてなお、信頼をうかがわせる表情と、軽快な歓談を披露している。
「シリン…詩凛もいた!」
「杏と小太刀も来ていたのですね…いえ、『かわいい攻め』と『ツンデレ』でしたか」
「見知った顔が揃うと安心感」
パーラーメイドの衣装のままのシリン・カービン、イジりに行って涼しい顔で返り討ちにされ逆に照れている鈍・小太刀、そんな様子にほほえましげな様子の杏。言い合っている内容は、やはりよく分からなかったが。
ともあれ、相手が喋って油断しているのなら好都合、狙わない手はないだろう。殺人鬼は刃の血を振り飛ばし、その滴の落ちるより速く駆けた。次に狙うは小太刀の喉元。
「成程ね」
点の攻撃は避けるに容易いが、受け止めるにはそうはいかない。ましてや刃のことである。滑り逸れても刺し貫ける凶器である。にもかかわらず、速さを増した暗殺者の、ただでも速いその突きを、僅かに抜かれたその刃にて、正確に受け止めた小太刀が呟く。
「なんで配下が同人娘かと思ったら、孤独を抱えた殺人鬼とかいう超ベタ設定…彼女達が見逃す筈なかったわ」
阻まれたことに驚いた赤い目に対しながら、少女は至極静かな声で。
「しかも捻くれた寂しがり屋で秘めたる狂気を解放なんて中二病全開仕様、なのに全部無自覚な鈍感野郎で」
咄嗟に身を引く敵に構わず続きを語る小太刀。詳しい。煽っているのか嘲っているのか、はたまた自身が語りたいだけなのか――気のせいだろうか、やや語りが早くなっているような。
「確かに凄い逸材ね」
距離を取って睨みつける影朧に、不敵な笑みを返す小太刀。…というかもしかして、ちょっと楽しくなっているのではないだろうか。
次はこちらからとばかりに飛び込む娘に、迎撃せんと手元を隠し、目線を隠し、影が構える。そして充分に引きつけた所で、狙うは死角、下方からの突き。
「そう簡単に当てられるとは思わない事ね!」
見越して躱し、絶好の一手を空振らせ、続けて刃をうち下ろせば、袈裟に掛かりて飛沫が散った。意識の先を、刃の先を、連なる狂気のその先を。見抜き、見切り、見通して。雨音の先、晴れ間へ導く、鈍・小太刀のユーベルコード。
「他人が嫌い?自分が嫌い? 合う合わないはあるし、理解不能は仕方ない。全部忘れて転生したら?」
膝を付いた敵に対して、見下ろしながら言う猟兵は、されど見下すわけでなく、突き放すような口調にも、救いを促す言葉も混じり。
「はは、分かったようなことを」
自分のことは嫌いじゃないし、他人にも関心がないだけだ。向き不向きだって承知の上だし――忘れられたならこうなるまい。
「おたくのそれも『ツンデレ』だからかい」
「だから誰がっ…」
意味は分からずとも、この猟兵にその言葉が『効く』ことだけは、これまでのやり取りで見て取れた。さらに予想外の方向から言われれば、多少の驚きもあるだろう。間合いのうちで一瞬呼吸を乱してやれば、そうして反応をほんの一拍遅らせれば……たとえ先を読めようとも、それは致命の隙となろう。
●キル数はノーカン
しかしそうとはならなかった。攻撃のために前に出ようとした影が、咄嗟に後ろへ身を引けば、鼻先を魔力の弾丸がかすめた。増強された反応速度でなければ、被弾は免れなかっただろう。ちらと見遣れば、こちらを突き刺す眼光と銃口、シリンが隙なく次弾を放とうと構えていた。
「言葉は全く理解できませんでしたが、彼女らもまた、狩人の目を持つ者でした」
つい先ほど、自身がその銃口を向けた相手を思う。標的に向けた眼光を、一切の動きを見逃すまいと絡めつけ、その息絶える瞬間まで恐怖に呑まれることもなく、ただ一心に見つめ続けた者たち。獣性を抑え込み言葉を紡ぎ、微笑みの中で絶えた者達。影朧と言えど、それはとても、人らしく、気高く尊いものだった。かもしれない。
「理解出来ずとも良い。だが、他者を見下し、傷つけ、否定することは許されない。今一時は『双星の詩凛』として、彼女らの弔いの為に戦いましょう」
人であれば同胞たりえたかもしれない、狩人の目をした彼女たちのために。それを貶める殺人鬼を許せはしない。自らが彼女らの憧れる戦士であるのなら、その汚名を雪ぐのは、自身こその役目であろう。
では、無神経に見下され、無為に傷つき、無根拠に否定された青年は、なぜ存在したのか。その理不尽がなぜ許されたのか。胸の内にて怒りは興り、しかし吐き出される前に潰れてしぼんだ。そうして喉をくぐるのは、やはり乾いた笑いだけ――ふと、気付く。自身は怒っていたのだと。それを諦めていたのだと。
「……ははっ」
もう一つ笑い、ゆらりと揺れて、小太刀の視界よりその姿をかき消した。素早く身を沈め、低く跳び、狙いは距離を取った銃手。剣士相手に寄らば防がれようが、退くを追うには速さは足りまい。
懐に入って突いてやればと駆け付けるも、シリンも座して待つはずがない。
「追いつけますか、私の影に」
彼女もまた、距離を離すように跳ぶ。時の精霊の加護を受けたシリンの加速は、強化された暗殺者の速さに対しても遜色のないものである。寄らば突くこともできようが、退くを追うには、足りない。結局彼は、狩人の眼前に飛び出して、やはり高速で装填された次弾の的となった。
「アデュー、私の獲物」
――衣装も相俟って、普段の猟兵・シリン・カービンとは別人のような雰囲気。それもそのはず、彼女は同人娘たちが残した『薄い本』を目に留めて、その内容をいくらか学んだのである。そして娘たちへの餞にと、宣言通り『双星の詩凛』として戦ったのだ。どこからか小さく歓喜の悲鳴のような声が聞こえるも、それはまるで口を手で押さえたかのように短く途切れた。
余談ではあるが、小太刀が作品のキャラ名でイジろうとしたからには、彼女もその作品を履修しているわけで…あくまで余談ではあるのだが。
●納得いかん
眉間を狙った魔弾を弾き、視界を遮ったナイフをおろしてみれば、そこに銃手の姿はない。消えると見紛う程の速さで、一瞬のうちに一体どこへ去ったのか。
「でもわたしも…少しだけその気持ちわかる」
また聞こえた、いくらか幼い少女の声。銃手も剣士も、知ったような、分かったようなことを言う。今またそんな少女までもが。果たして他人の気持ちの何が分かると言うのか。
「わたしはうさみみ未経験」
……。
「でも皆、うさみみして楽しそう。とても疎外感」
待ってほしい。どうか本当に待ってほしい。
「だからわたしは周りをうさみみメイドで埋めつくし、誰よりもうさみみに詳しくなると決めた」
一から十まで欠片もまったく理解できないことを言いながら、その猟兵がユーベルコヲドを展開すると、現れたのはすらりと背の高い一人の女性。丈の短いエプロンドレス、すらりと白いナイロン地、足元は黒いローヒール。涼しげで知性的な美しい顔立ちにモノクロでシックに纏められたその衣装は非常によく似合いで……でもなぜかうさぎの耳が付いている。アクセサリとかワンポイントとか生易しいものじゃない。普通にうさぎの耳が生えている。
真面目な影朧が戸惑ううちに、杏と相棒の人形ことうさみみメイドさん、そして今召喚したうさみみメイドさんは臨戦態勢となっている。
「うさみん☆」
呼びかけた声にはっとして、影がその美女に注意を向ける。ほとんど同時に構え直して間髪入れずにナイフを突き出すも、流れるように弾かれて、美しいジャブを見舞われる。その隙に、人形の方のうさみみメイド『うさみん☆』が意識の外より飛び掛かり、その目を狙って実に見事なローリングソバット。
彼は初見の方なので、どっちの名前が何なのかなんて知らない。その上では正しい警戒であったと言えるのだろうが、今回は不正解。目を塞がれたその隙に、大きくて無敵の方――『びゅーてぃ』と言うらしい――は、駆けて跳び、中空でその身を翻し、殺人鬼の頭に踵を鋭く叩き込み、床へと沈めてしまった。
「一つだけ」
何やら分からないうちに強烈な打撃を喰らい、まだまだ何やら分からないながらもなんとか立ち上がる彼に向け、さらに言葉が放たれる。
「尊いって言葉の根底は尊敬、リスペクト。少なくとも彼女達はアンタをバカにはしてなかったと思うよ」
それは感情を向ける側の勝手だろう。たとえば敬意があったからって毛髪を編み込んだ衣料をもらってもありがたくはない。
「次会えたらさ、お礼ぐらいは言いなね?」
きっと彼女は、よほどのお人よしなのだろう。ぶっきらぼうな物言いに、彼はくっと小さく笑った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
レイナ・オトゥール
ヴィリヤお姉さん(f02681)と!
貴方は他人の気持ちがわかるですか?
普通は他の人の気持ちなんてわかりませんよ
たくさんお喋りしたり一緒の時間を過ごすからお友達になっていけるんです
私とヴィリヤお姉さんだってそうでした
言葉を文字を絵を…他にも音楽とか芸術、漫画だってなんだって
伝えるために作られたものです
だから貴方もただ一言「教えてほしい」言えばよかったんです
目の前で【竜装召喚】
敵はスピードタイプみたいですが
装着完了まで無防備な私を囮にして攻撃を読みやすくすれば
ヴィリアお姉さんならぜったいに防いでくれます
それを信じてその瞬間に合わせて
ウィルの斧槍で怪力を活かしたなぎ払いで攻撃です!
ヴィリヤ・カヤラ
レイナちゃん(f11986)と。
皆が知ってて自分だけ知らない時に知らないの?
って言われると少し悲しいよね。少しだけ分かるよ。
私も猟兵になってから外に出たから知らない事が多かったし、
一番反応が大きかったのがお米かな。
その時も「知らないの?」って言われちゃったけど、
知らないのはしょうがないよね。
でも、お米も知って食べたら美味しかったし、
影朧さんも今度は知らない事も少し触ってみるのも良いかも?
その刃物を振り回すよりは楽しい事かもしれないよ?
レイナちゃんの装着完了までは『第六感』もフル活用して
敵の攻撃は武器で受けつつ、
装着完了したら【夜霧】で避けてレイナちゃんの攻撃に繋げるね
●揺らぐ諦念
先の猟兵が指摘した通り、殺人鬼は…というより、その青年は、真面目であったがゆえに心を疲弊させてしまった。それは確かに同情に値する不幸ではある。
而してそれを憐れむとても、口を噤んで看過できぬもその猟兵、レイナ・オトゥールの真面目さゆえか。
「貴方は他人の気持ちがわかるんですか? 普通は他の人の気持ちなんてわかりませんよ」
先の同人娘たちも、自らの聞きたいように聞いたからこそ、レイナとヴィリヤの嘘のない会話を『尊い』ものとして捉えていた。言葉にしてもその程度の確度なら、言葉にしなければ伝わらないのは道理であろう。傷つく心に蓋をして、笑ってごまかしやり過ごした、その在り方に非はなかったか。
「たくさんお喋りしたり一緒の時間を過ごすからお友達になっていけるんです。私とヴィリヤお姉さんだってそうでした」
誰もが最初から上手に人と付き合えたわけではない。ましてや初めから仲が良かったはずもない。出会ったときにはすべての人は知らない人だ。過ちだって衝突だって、大なり小なり誰もが経験するものだ。許したり、諦めたり、近づいたり、遠ざけたり…そんな選択によって関係性を築き、友情を、あるいは孤独を得る。であるなら、断絶を許さず孤独を許さぬ真摯な糾弾は、あるいは彼女の優しさゆえのものであろうか。
「言葉を文字を絵を…他にも音楽とか芸術、漫画だってなんだって、伝えるために作られたものです」
知恵を尽くし手を尽くして、様々に人は伝えようと努める。それなら伝えることを諦め、さにありながらも憎悪に呑まれ黒き異形へとなり果てた人は、果たして人たりえたのか…。
自身を揺るがす多くの問いを、答えを出さずにかなぐり捨てて、爛々と光る目を剥き嗤う影朧は、その身を低く、その刃を構えなおした。
『想い繋がりし竜達よ――』
猟兵が詠唱を始めた時には、凶器を携えた黒影は既にその標的へ飛び掛かっていた。代償として身を削り、猛り荒ぶる刃を前に、必定その言は遂げられることなく、血華を散らすことだろう。
だというのにその少女は、詠唱をやめる様子も、身を躱そうと動く気配も、訪れる痛みに緊張を示すことすらなく、まったく、一切、無防備なのだ。自身に迫る死の影を、分かっていようはずなのに。
当然彼女には分かっている。凶器を携えた黒影が見る間にレイナへ距離を詰めてくる。赤く輝く殺意を走らせ、猛り荒ぶる殺意を延べて、必定その言は遂げられず、自分は倒されることだろう……自分ひとりであるのなら。
さにありてその猟兵は、詠唱にかかる躊躇も、身を躱そうと動く理由も、訪れる痛みへの緊張すらも必要とせず、まったく、一切、無防備にある。自身に迫る死の影が、届くことなどないと、確信しているから。
「ダメだよ」
獲物に迫った影朧のそばで、制止の言葉が歌われる、涼やかな声とともに来るは、ゆるりと巻いた蛇腹剣。ヴィリヤが柄を素早く引けば、黒影を緩くくるんだそれが、絡まるように斬りつける。
高めた自身の能力により、電光石火の連刃でもって、迫る刃を退けると、立ちはだかったヴィリヤを向いて、間髪もなく突き込んだ。蛇腹を戻して一刃と成し守りを固める猟兵に、霧を纏いて姿を隠した狂気と殺意が襲い掛かる。追い縋る黒を押しのけようと、ヴィリヤが剣を振ってやれば、伴う衝撃波でもって、堪らずそれは吹き飛ばされる。間合いの上では猟兵に分があるが、飛び込まれれば影朧の有利となる。
そして後者の素早さは、イニシアチブを長く保つに非常に効果的であった。守って戦うヴィリヤの身体に、大小の傷は増えていく。手元、脇腹、頸部に大腿、致命のものは避けつつも、いずれも僅かに至らぬだけで、もう一押しの深手もある。服地と肌の白色を、鮮やかな赤で彩りながら、それでも彼女は涼しげに、剣を振るいつ言葉を紡ぐ。
「皆が知ってて自分だけ知らないときに、『知らないの?』って言われると少し悲しいよね。少しだけ分かるよ」
油断を誘おうとしているわけでも、時間を稼ごうとしているわけでもない。彼女は本当に、思ったことを口にしている。
「けど、知らないのはしょうがないよね」
殺人鬼の不満に一定の共感を示しながら、話題はそのままヴィリヤの経験談へ。外の世界を知らなかったために、いくつかの世界においては非常に広く普及している穀物である『お米』を知らなかったこと、それによって他者からは大いに驚かれたこと、そして自らそれを知って食べてみたら美味しかったこと……カフェーで談笑でもするように語るその口調は、飽くまで平静で緊張や苦境を感じさせない。飛び散る血飛沫やぶつかる金属音がなければ、今がまさに戦闘中であることを、誰も信じはしないだろう。
「だから、影朧さんも今度は知らない事も少し触ってみるのも良いかも? その刃物を振り回すよりは楽しい事かもしれないよ?」
不敵に笑いながら、ヴィリヤは一つ跳び退り、殺人鬼より距離を取る。黒い霧を撒き散らしながら、素早く詰め寄る影により、猟兵は避け得ぬまでに追い詰められて――
「だから貴方もただ一言『教えてほしい』って言えばよかったんです」
もう一人の猟兵、レイナの声がその後ろから聞こえた。待ってましたとまた笑い、ヴィリヤがユーベルコードを放てば、その身は黒い霧となり、影朧の霧へと溶け紛れる。対峙した敵を見失った、彼が続けて見たものは……目にも留まらぬ超高速の横薙ぎで、木製バットか何かのように、いとも容易く自分に向けて振り抜かれたる斧槍であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
両断をなんとか避けつつも、手痛い負傷は免れず、飛び退き膝を付く影朧は考える。僕は共有を望んでいない。無駄な教えを乞う必要などどこにあろうというのか。
…しかし、本当にそうだろうか? 一遍も、一片も、その気持ちはなかっただろうか? 再びの自問に、確と否定できない自分に。気付いた影朧は、もう一度小さく笑った。
塩崎・曲人
まぁ、手っ取り早いのは間違いねぇわな
ただ……『楽しい』と感じちゃお終いよ
ちょっくら後つけて話聞いてみた限り、あの連中も会話の中で上下関係を押し付けたがるようだったし、アンタが癪に障ったのはそれか
なんだっけ、マウンティングっつーんだったかな
オレ様もあんなんやられたら、虫の居所によっちゃ「知るかボケ」で鉄拳をプレゼントしてたかもしれねぇ
……いっそ、鉄拳で済む段階でキレてた方がお互い幸せだったかもなぁ
とはいえ、行き着く所まで行っちまった以上、手加減はしてやれねぇぞオイ!
通り魔野郎、テメェの罪もここで精算して行けや!(【罪が汝に牙を剥く】でステゴロを挑みながら)
●よろこびの温度
「ちょっくら後つけて話聞いてみた限り、あの連中も会話の中で上下関係を押し付けたがるようだったし、アンタが癪に障ったのはそれか」
塩崎・曲人の問いに、満身創痍の殺人鬼は答えない。
「なんだっけ、マウンティングっつーんだったかな。オレ様もあんなんやられたら、虫の居所によっちゃ『知るかボケ』で鉄拳をプレゼントしてたかもしれねぇ」
いっそ鉄拳で済む段階でキレてた方がお互い幸せだったかも。茶化すように言いながらも僅かな寂しさを滲ませる猟兵に、影朧はもう一度、乾いた笑いを喉より零した。短い笑い声にはやはり嘲りと蔑みと、より大きな寂しさが絡まっていた。
猟兵たちの言葉を聞くにつれ、遅まきながら考える。伝えれば良かったこと、伝えねばならなかったこと、それを届けることを怠っていたのは自分なのかもしれない。そしてその気付きは…
「ただ……『楽しい』と感じちゃお終いよ」
遅きに失したのだろうか。きっとそうなのだろう。自らもまた人を、猟兵を傷つけた。そこには怒りの発散があり、間違いなく愉悦があった。
「行き着く所まで行っちまった以上、手加減はしてやれねぇぞオイ!」
言って曲人はその鉄拳を構えて見せた。その瞳は、罪を犯せしものへの怒りと憐れみに彩られ、それを断罪すべく睨めつける。
生きている間に接点はなく、近付こうとも思わなかった人種。相対してみれば話せる相手。ただしそれは自身が凶器を持って、狂気を持って、敵として在って初めてある――殺意を媒介とした縁。寂寥を再び憎悪に塗りつぶさんと、殺人鬼は、鈍く輝く鋭い黒刃を、構え直してまた駆けた。
鎧わぬ徒手の曲人がその腕や脚を防御に使った所で、影朧の刃は容易く貫き、切り裂くだろう。狂気によりてそのスピードを増強させた敵を相手に、ダメージを防ぐ手段が避けるしかないのは非常に不利であると言える。低く駆け来て突かれたナイフに身を翻して寸で躱すも、返す刃の切り上げを受け、その腹部へと傷を負う。
やはりいくらかの享楽に目を細め、咄嗟に斬り上げた無理な姿勢から殺人鬼が見上げた猟兵は――固めた拳を振りかぶり、その敵の顔面に打ち込もうとしている所であった。
「オラァッ!」
躱すを許さず突き刺さり、そのまま床へ圧し潰し、起きる間もなくボールのように蹴り飛ばしては、近くの壁へと叩きつける。負った深手に一切の怯みを見せず、むしろその身を釣り餌として、影朧から大きな隙を引き出した曲人。喧嘩慣れしたこの男にとっては、刃物を持った相手など日常茶飯とも言えること。いちいちビビッてはいられない。
そして同様に、弱った相手にいちいち待ってやる義理もない。壁を支えに立ち上がろうとする敵へつかつかつかと詰め寄ると、胸倉を掴んだついでに肘のひとつも叩き込み、刃を振るおうとしたその手首も片手で抜かりなく押さえ込み。
「通り魔野郎、テメェの罪もここで清算して行けや!」
塞がった両手はそのままに、鼻面へ強烈な頭突きを叩き込んだ。
力の抜けた影朧の手より、ナイフが落ちて音を立てる。斃れようとするそれの口から、ぼんやりと声が紡がれる。
「『清算』したら、僕ももう一度、やり直して良いのかな」
遅くはないのだろうか。許されるのだろうか。人のうちには言えなかった、言いたかったことを言ってみる。猟兵は一言だけ応じてくれた。
「知るかボケ」
駄目ではないらしい。その答えに小さく短く笑い、それきり黒影は消え失せた。
成功
🔵🔵🔴