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めぐり、啼くして

#グリードオーシャン #メガリス #ほとほと #社永守乃勇魚『しろながすのいさな』

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#グリードオーシャン
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#メガリス
#ほとほと
#社永守乃勇魚『しろながすのいさな』


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「ちょっとね、グリードオーシャンの古い地図を眺めていたら何だか思い浮かんだ場所があったんだけど」
 聞いてくれる? と言って猟兵たちを出迎えるポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)。
「メガリスの隠された『無人島』があるみたいなのよね。大体の場所は掴めてるんだけど、ちょっと一筋縄ではいきそうになくって」
 説明をしながらポノが親指と人差し指を繋ぐ、いわゆる「OK」なジェスチャーをしてみせた。
「今回皆さんには鉄甲船に乗って無人島へと向かってもらうわけなのだけど、目的地となる島はドーナツ状になっているのよね。で、外側が接岸できそうにない断崖絶壁な上、深い霧が立ち込めているの」
 要塞のように海の旅人を寄せ付けない島のようだ。
「それでも途切れているところは一応あって、つまり、入り口は一つ。でも視界不良だから見つけるのは難しいのよね」
 親指と人差し指に間を作る。
「ちなみにこの辺の海域は、天候によって流れが変化するみたいなの。皆さんには、まず、鉄甲船で雨乞いしてもらおうかと思って。ついでに飲み水の確保にもなるしね」
 たくさんの雨が降れば、島内部へと流れ込んでいくのだとポノが言う。船はその流れに乗る予定のようだ。
「入り口は広いから鉄甲船くらいは悠々と通れるわ。断崖絶壁に当たったりしないからそこは安心して頂戴。
 ドーナツ状の島の内側も勿論、海ね。異常気象は無く、晴れている――ここがかなり広いのよ。内側の島は砂浜もあるし、上陸も可能。海や、陸を探検してメガリスへの手がかりを探って頂戴」
「手がかり……?」
 猟兵のふとした疑問に、ポノが頷く。
「ええ、島に隠されたメガリスは機械式のちょっと大きな鳥として動いているのよ。
 それと過去、どうしようもない悪い海賊たちがやってきて探していたりもしたんだけど、皆が皆、凄惨な死を迎えているの。そんな曰く付きの場所にもメガリスはたまに訪れて、何らかの痕跡を残しているみたい」
 それを調べたりしてよくいる場所なり、巣なり、絞り込んでいきましょう、とポノは言った。
「同時に、発見したメガリスを横取りしようとしてコンキスタドールも現れるわ。
 撃破して、メガリスを確保してね」
 やってくるコンキスタドールは、社永守乃勇魚(しろながすのいさな)。
 山や島に擬態したり、悠々と空や海を泳ぐ、一見野生生物のようなコンキスタドールだ。
「社永守乃勇魚は常にメガリスを探して喰らい、その身に溜め込もうとしている敵なの」
 溜めた力はオブリビオンのために。今の世界を蹂躙し、すべてを過去の世界へ変えようとしているもの。
「大きな敵だし、力も強いから気を付けて。それじゃあ後は現場判断。がんばってね!」
 そう言ってポノは猟兵たちを送り出すのだった。


ねこあじ
 ねこあじです。
 メガリス探索シナリオです。

 今回はよろしくお願いします。


 第1章のプレイングはいつでもどうぞ。
 プレイング受付締切日&締切時間が発生しますので、
 マスターページやツイッターなどでお知らせしています。
 採用はなるべく頑張るの方針。不採用になったらごめんなさいです。


 第1章は鉄甲船で雨乞いを。
 行動の例以外も色々OKです。

 第2章はイロイロ探索。

 第3章はボス「社永守乃勇魚(しろながすのいさな)」との戦いとなります。
 第2章&第3章はリプレイ導入文記載しますね。
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第1章 日常 『雨降り祈願』

POW   :    お供えに大物を捕ってきて祈る

SPD   :    祠や祭壇を綺麗に整備して祈る

WIZ   :    呪術的に正しい祈りをささげる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 グリードオーシャン。
 異常気象に見舞われる海域を進む鉄甲船は、いつからか暗く、そして深い霧に覆われていた。
 ふと気付けば、甲板に出た船員や猟兵の服は濡れつつある。
「これ以上は危ないんじゃないか」
 と、船の進みは遅くなり、風も無いこの海域にとどまっていると『停滞』や『澱み』という単語が思い浮かぶ。
 あまり長くはいたくない雰囲気だ。
 明かりを灯せばじんわりとした朧のものに。いくつか目印として甲板に置いていく。
 この辺りに無人島はあるようだ。はやく『雨』を呼ぼうと猟兵たちは動き出す。
 雨が降れば、色々な理由が掛け合い、海を行く道も出来ていくことだろう。
「基本的な手段としては、こうなるだろうか?」
 ――鉄甲船に備わる小舟のリードをきちんと繋いで、海へお供えを捕りに行ったり。
 ――鉄甲船に備えられた、航海祈願のための祭壇を整備したり、新たに作ったり。
 ――歌や舞い、祝詞、呪術的に正しい祈りを捧げる。
 どれも猟兵たちの出身世界によって色々と異なってくるだろう。
「あとは雨滴を受ける水桶。島の内部では、飲み水の確保ができないかもしれないしね」
 何せ、今回のメガリスは機械仕掛けの鳥。追うのも大変になってくるかもしれない。
 島の探検は水があるか否かでも安心感が変わってくる。
「それでは、各自、頑張っていこう」
春乃・結希
普通には辿り着けない島……ゲームだと伝説の武器あったりするところですよね
ワクワクしますっ

雨乞いかぁ……やっぱりここは、あめあめ坊主にお願いしますっ
色とりどりの布を用意して、ひとつひとつ丁寧に作って行きます

普段から自己暗示を力とする私にとって、何かに想いを込めるのは得意だから
私が雨が降るって思ったら、雨が降るんです。絶対です
あめあめふれふれー♪……小学校の図工の時間みたいで楽しいなー♪……お、この子の顔は可愛く描けたかもっ

出来上がった色とりどりの、表情もそれぞれ違うあめあめ坊主を船の欄干に吊り下げて行きます
私の想い、ちゃんと空に届けてくださいねっ。お願いします!


菫宮・理緒
まずは雨を降らせてからってことになるのかな?

雨を呼ぶ技術はないけど、
雨乞いならいくつか知ってるから、やってみようかな。

アイテムは【偽装錬金】で作るよ。

お約束としては黒の逆テルテルだよね。
濡らしてから、船のマストに逆さに並べて吊していこう。
びっしりと、ね。
「え? 怖い? うん『お呪い』だからね!」

あとは、和紙に青インクで五芒星を書いたり、
紫陽花の花びらで花占いみたいにしながら、雨を祈ろう。
余裕があったら【虚実置換】で、雨を貼り付けてみるのもいいかな。

どれか効いてくれるといいのだけど!

雨水は【偽装錬金】水桶や樽を作って、そこに貯めておくね。
できるだけたくさん作っておけば、後々困らないかな?



 鉄甲船へと乗船し、猟兵たちは海を行く。
 風が吹かず停滞するは濃霧。波は立っておらず、ちゃぷちゃぷとした水の響きが聞こえてくるのみ。
 いささか、不安にもなりそうな状況ではあるのだが、
「普通には辿り着けない島……ゲームだと伝説の武器あったりするところですよね!」
 春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)がワクワクとした明るい声を響かせた。
「ほんと、一つずつ手を打って進んでいく、っていうのはゲームみたいだよね」
 結希の言葉に頷く、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)。
「はあ、猟兵さんがいて良かった……どうも周囲が見えないっていうのは不安で仕方がないわ」
 頼りになる猟兵たちの会話に、二十代くらいの女船員がほっと安堵の息を吐いた。
「ご安心ください。皆さん、色々と手を打っていくようだし、私たちも雨乞いの用意をしていきますね」
 ――と、船内の一室で結希と理緒は雨降り祈願の準備を進めていくことにした。
 テーブルには湯気のたつお茶。さっきの船員が「よかったら、休憩をする時にでも飲んでね」と淹れてくれたもの。
 さてさて、二人が作るものは――。
「やっぱりここは、あめあめ坊主ですね!」
「うんうん、お約束として逆テルテル坊主だよね」
 他にもふれふれ坊主という呼び方もある。
「とりあえず、色とりどりな布を用意してきました。これで作ろうかなと思いまして」
 結希が赤や青、緑や黒、パステルカラーと、各色揃えた布を取り出した。
「私は後でユーベルコードで作ろうと思っているから、今はおまじないの準備をしていくね」
 理緒は和紙と青インクを取り出して。

 頭に端切れを詰めて丸めて、首にあたる部分をきゅっと結ぶ。
 普段から自己暗示を力とする結希にとって、何かに想いを込めるというのは得意分野であった。
 作ったら、顔を描く。
「あめあめふれふれー♪ お、この子の顔は可愛く描けたかもっ」
 ニコちゃんマークに涙粒を描きこんで「どうです?」と理緒に見せてみる。
「あ、可愛いー。さっきの何だか絞られているような表情も可愛かったよ」
 『><』となったあめあめ坊主をつついて言った理緒に、あちゃという表情になる結希。
「見てたんですか……! 理緒さんは五芒星を描いてるんですね。青インク――」
「水のエレメントと仲良くなれますように、っていうおまじないだよ」
「あっ、それ、青インクで好きな人の名前を書くと仲良くなれるよ、っていうおまじないですね!」
 五芒星は雨乞いの神事にちなんだり、縁結びなるインクを使ったり。理緒は色々なものを作っている。
 その中には和紙で作った紫陽花もあって、きっと飾れば花舞いのようになるだろう。
「小学校の図工の時間みたいで楽しいですねー♪」
 徐々に散らかっていくテーブルの上も『らしさ』がある。そう言って結希は笑顔で作業を進めていくのだった。

 甲板に出れば空気はじっとりとしていた。
 晴れたグリードオーシャンなら、そのじっとり具合もマシなのだが――霧に覆われた甲板であめあめ坊主を船の欄干に飾っていく結希。
 仲間の猟兵作も一緒になれば、あめあめ坊主たちは賑やかなものに。
「~♪」
 口ずさむのは雨のうただ。
 懐かしい童謡を聴きながら、理緒は試作した逆テルテル坊主(黒)を偽装錬金して増やしていく。
 濡らして、船のマストに吊していった。黒の逆テルテル坊主がずらりと並んでいく――びっしりと。
「…………ひぇ」
 甲板で作業を行っていた船員の一人が、ちょっと上擦った声。
「え? 怖い? うん、『お呪い』だからね!」
 にっこりと理緒。
「結希さん、こっちの『おまじない』は一緒に欄干に飾らせてね」
「賑やかになりますねー♪」
 可愛らしい(花とかの)おまじないは彩り豊かになってきた欄干に。
「あとは……」
 引き続き、偽装錬金で飲み水確保のための水桶や樽を作っていく理緒。
「できるだけたくさん作っておけば、後々困らないかな?」
 ――そうして出来上がっていく雨を呼ぶ坊主たちのおまじないの場。
「私の想い、ちゃんと空に届けてくださいねっ」
 最後のあめあめ坊主を括りつけ、「お願いします!」と祈る結希。
「効いてくれるといいね」
 そう言って理緒は周囲を見回す。
 魔法で雨を呼ぶ猟兵、贄を捕りにいった猟兵。
 そして奏でられ始めた竪琴の音色を聴きながら、二人は雨を待つ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルフレッド・モトロ
【POW】
なるほど雨乞いで雨を呼びゃ良いのな!

俺の故郷の島でも雨が降らねえ日が続いた時は
ちょっとした祭っぽいのが開かれてたんだよな

実家の思い出を頼りに
儀式をセッティングしてみよう

うちは漁村だからかお供え物は海の幸だった
その日に獲れた一番デカい獲物を飾るんだ

っつー事で俺は魚を獲るぜ!

【水泳】も【水中戦】も得意だ
コートを脱ぎ捨て海に飛び込む

人を寄せ付けない島だ
でっかい魚がわんさか群れてもおかしくないだろ?

【野生の勘】で周囲を探索
見つけた獲物は軽めの【狂騒海域】で海水ごとを巻き上げて
そのまま鉄甲船に向けてポーンと【吹き飛ばし】て捕獲!

こうやって魚を捕まえるのは久しぶりだ
へへ、故郷が恋しくなっちまうな


箒星・仄々
呪いの秘宝は放置できません
それがオブリビオンの力になってしまうかも知れないのならば
尚更です
メガリスを確保しましょう

水の魔力だけで直接流れを変えるのは力不足かも知れません
ここはじっくりといきましょうか

風、炎、水の魔力を相乗させて
大気中に水蒸気を多量に生み出し、それを上昇気流で空へ
雲を成すまで根気強く続けます

雲が生まれたら
降り始める迄は
波に揺られながら竪琴を奏でて一休み

雨が降りだして流れが変わってきたら
そのタイミングで鉄甲船をぺろぺろ
摩擦抵抗を減らせば少ない雨量でも一気に島まで行けますよ♪


ノイン・フィーバー
雨乞いですカ。
あまりワタシはそういう神仏的ナものは馴染みがありませんガ、お供え物が必要なのは分かりましたので、お手伝いさせて頂きマしょう。

宇宙バイクでふよふよ移動し、近場で漁をしている深海人やセイレーンの方々を探し、接触。余興のマジックショーをさせて頂きましょう。
「イッツァ、ショータイム!」

ジャグリングから始まり、ジャグリングしていたボール達が気付けば1つになり、それは高く空へと投げると花火となる。
皆サンが視線を降ろした時には、彼らの手元にはトランプが配られており、ハートのエースをもった深海人のお嬢サンをご招待して消失・再来マジックを披露。

お捻りとして漁の成果を少し分けて頂き、お供えしますヨー



 鉄甲船へと乗船し、海を行く猟兵たちが濃霧の海域へと入る。
 徐々に船のスピードは落ち、ちゃぷちゃぷとした水の響きが耳につきはじめた。
「船を進めることは出来るが、ここは慎重に行かないとだな」
 そう言うのはアルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)だ。
 いきなり目前に断崖絶壁や、岩礁の海域となっていたら目も当てられない。
「で、雨乞いで雨を呼びゃ良いのな。――俺の故郷の島でも、雨が降らねえ日が続いた時は
ちょっとした祭っぽいのが開かれてたんだよな」
「ほぅ、お祭りですカ。やはりお供えなどもあったノでしょうカ?」
 ノイン・フィーバー(テレビ顔のメカ野郎・f03434)が問えば、アルフレッドは「ああ」と快活に頷いた。
「うちは漁村だからか、お供え物は海の幸だったな。その日に獲れた一番デカい獲物を飾るんだ」
 思い出しながら応じる彼を、微笑ましげに――奥行きのあるモニター画面に、にっこりマークが出た――見るノイン。
「あまりワタシはそういう神仏的ナものは馴染みがありませんガ、お供え物が必要なのは分かりましたので、何カ、お手伝いをさせて頂きマしょう」
「私は自身の魔力で何とかしてみますね」
 湿ってきた毛並み、そしてヒゲを時折撫でつけながら箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)が見張り台へと続く帆縄を見つけ、尻尾を左右に動かしつつとことこ歩いた。
「仄々サン、よろしければ上まで送っていきますヨ」
「良いのですか?」
 ノインが騎乗する宇宙バイク・ブーストスライガーの後ろに乗せてもらった仄々は、あっという間に船の一番上にある見張り台へ。備わったランプに火を入れれば、濃霧のなか、遠くまでほのかに届きそうな光が灯った。
「それじゃ獲りに行ってくる!」
「お気を付けて」
 黒いコートを脱ぎ捨て勢いよく海へと飛び込むアルフレッド、そしてふよふよ移動していくノインに見送りの言葉を投げて、仄々は空を見上げた。
「水の魔力だけで直接流れを変えるのは力不足かも知れませんね……ここはじっくりといきましょうか」
(「呪いの秘宝は放置できません」)
 真摯な瞳に差す想い。
(「それがオブリビオンの力になってしまうかも知れないのならば尚更です」)
「――皆さんと力を合わせ、メガリスを確保しましょう」
 決意に一つ頷き。ケットシーにぴったりの帽子・カッツェンシュテルンを被りなおし、懐中時計を懐から出した仄々。一つのボタンを押せば、それは連なる金属音が展開し蒸気機関式竪琴に。
 仄々はカッツェンリート抱えた。
「風、水――」
 これらの魔力を相乗させるのは、ここでは容易だった。炎は翳されたランプの灯りに己の気を寄せて。
「寧ろ、ここで多くいるのは炎の魔力ですね」
 存分に水分漂う濃霧の中、炎の魔力を生み出して空気を熱する。
 水の魔力を一投げ、風の魔力を上へと向かう気流に。
 一度流れを作ってあげれば、吸い上げられていくような空気。
 それらが雲を成すまで仄々は根気強く、他の猟兵たちと共に魔力を操り続ける。

 ブーストスライガーのライトが濃霧を照らし、拡散された光が数多の粒となりぼんやりとしたものになる。
「この辺りに、セイレーンや深海人がいれば良いのですガ――」
 海中に暮らす深海人を見つけるには一体どうすれば? そう考えながらノインはふよふよと。
 レーダーに登録した船の印が小さくなり、距離が出来つつあったその時。
「おや」
 見つけたのはランプの明かり。船の感じからして深海人の漁船だ。
「初めましテ」
 ふよふよ近付けばそれなりに警戒されていて、テレビ画面を向けたノインはにっこり笑顔で挨拶をした。
「コ、コンキスタドールか?」
「いや違うな……たぶん」
 ざわざわ。
「イエイエ、ワタシは通りすがりの手品師です。皆サン、お仕事お疲れ様です。少しマジックでも見て休憩にしませんカ?」
 ざわざわ、会議中。……だが、海上での娯楽は魅力的なものではあるらしく、そこそこ不審げに漁船の皆が頷いた。ぱぱっとにっこり笑顔からウィンクのものへとノインの画面が変わる。
「イッツァ、ショータイム!」
 取り出したのはボール達。ジャグリングから始まった手品は、気付けばボールは1つとなっていた。
 ポーン。
 ノインが高く空へと投げれば、パンッ! と火の花が空に咲いた。
 空の霧粒に光が映りこみ、不思議な広がりを見せる。ポン、ポン、と取り出したボールを投げて連続しての花火。
「おおー!」
「兄ちゃんすげえなぁ!!」
「フフフ、それではお手元をご覧あれ! ですヨ」
「……あれ? いつの間に?」
 ノインの声に促され、視線を落とした深海人たちの手にはトランプ。
「さあサ、ハートのエースのお嬢さんハこちらへどうぞ」
「……え、この船に若い嬢ちゃんなん、て……」
「オイ! シッ!」
「――あらぁ! やだあ! お嬢さんなんてぇ」
 何だか戦いた深海人たち――の後ろにいた『お嬢さん』を招待して、ノインが披露するのは消失・再来マジック。
 歓声が上がった。

 海へ飛び込んだアルフレッドは水泳が得意であった。
 水中で掻ききる筋力もさることながら、時折、一見帽子にも見えるマンタのような頭部の胸鰭が羽ばたくように動き、泳ぎ進む。
 これから向かうドーナツ状の島は大きい。かつ人を易々と寄せ付けないということもあり――、
(「でっかい魚がわんさか群れてもおかしくないはずだ」)
 嵐や止まぬ落雷が起こる余所の海域に比べれば、濃霧漂うこの辺りの海中は穏やかでさえある。
(「おっ」)
 アルフレッドの読みは正しく、かなり大きな魚影が視界を掠めた。
 振り向けば海中を前進するトップなのか、巨大な魚の向こうには幾分か小さな魚の群れ。
 いたいた、と笑みを浮かべ、巨大な魚の真下へと行くようにアルフレッドもまた泳ぎ進んだ。
 仰ぎ見るその位置にて、彼が腕をぐるり振るえば渦が放たれる。何かを察知したのか、ばっと魚群が霧散した。
 水中に放たれたコマの如く渦は加速し、複数の巨大な渦潮が巨大な魚を海上へと押し上げていく。
 渦潮に乗ったアルフレッドもまた海上へ。
 勢いに発生した水竜巻が空中へと彼と巨大魚を放った――否、魚は船へと叩きつけるように。ばっしゃああぁぁと甲板が一瞬にして水に溢れ、速やかな排水がなされていく。
「よっ。ただいま!」
「お帰りなさいです」
 と、仄々。竪琴を奏でていた彼が、音の流れに渇きの風を乗せる。
 船員たちが大きな魚の出現に、慌てて縄を持ってきた。
「ちょ、アルフレッドさん。巨大すぎんかね??」
「いやーお供え物にするんなら、これぐらいデカくねぇとな」
 びっちびちである。
「さすがに絞めるのも一苦労しそうだなァ」
 船員たちがどう扱おうかと縄を持ちまごまごしていると、「かしてみな」と縄を持つアルフレッド。捕獲し絞めようとする頃には船員たちが手伝いに入ってきた。臓腑を処理し、魚の背びれから口に縄を噛ませ、尾を括る。結構な仕事量を皆でこなす。
 縛り仕上がったお供え物の巨大魚は活き活きと躍動感のあるものに。
「こうやって魚を捕まえたのは久しぶりだ。――へへ、故郷が恋しくなっちまうな」
 アルフレッドの言葉に、鉄甲船の船乗りたちも頷く。サムライエンパイアからグリードオーシャンへ。島々から参加した船員を迎えつつ、別れつつ、思えば遠くまで来た者もかなりいる。
「皆さん、ノインさんもお帰りになられたようですよ」
 見張り台から声を張る仄々に、甲板に出ていた皆がそちらを向けば。
 宇宙バイクでふらつきながら戻ってくるノインの姿。それもそのはず、ブーストスライガーに吊るされた網の中には魚がいっぱい。
「お捻りとして、少し分けて頂きマした♪」
「……?」
 何をやってきたのでしょう? と首を傾げる仄々に、
「マジックショーですよ♪」
 ぱかぱかっと花火の絵文字を画面に映し見せるノイン。

 こうして、雨降り祈願を着々と進めていく猟兵たちであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
【橙翠】

雨乞いかぁ
テレビでやってるのを見たことあるけど
いざ自分がやることになるなんて
アヤネさんはやったこと…ないですよね

あめあめ坊主を作ります!
てるてる坊主の逆ですね
まぁてるてる坊主を逆さに吊るすだけなんですが
布と綿、糸を用意しててるてる坊主を作っていく
でも何体作ればいいかな?
まぁ沢山あったほうがご利益ありそうですね
そうだ、アヤネさん
一緒に顔を描きませんか?

アヤネさん上手です!
わぁとっても可愛い〜!
このあめあめ坊主の顔、私とアヤネさんですね?
あ、でもこれ逆さに吊るすんだった…
…これは吊るさないでおきましょうか

アヤネさん、マグロも獲ったんですか!?
しかも凄い大物!
これなら供物としてバッチリですね


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
雨乞いというのは非科学的な言葉、のような気がするのだけど
とソヨゴの顔を見る
もちろん僕はやったことないネ

別世界の猟兵なら心得があったりするだろうか
と周囲を観察
なるほど
生贄なら用意できるかな

シロイルカにスピアフィッシングの装備一式を積んで出かけよう
電脳ゴーグルで魚を探してから潜る
クエあたりの大物を捕まえて帰りたいネ

おやソヨゴはなにそれ
てるてる坊主逆バージョンか
降らなかったら首を切るんだよネ
僕も手伝おうか

顔?
描いてみよう
真面目に描いてしまってから気づく
あーそうだよネ
うん吊るさないで

とった魚は供物として供え
あめあめ坊主をたくさん吊るす
そうネ
雨が降りそうな気持ちにはなってきた
とソヨゴに笑いかける



 猟兵たちの乗船した鉄甲船が濃霧の海域へと入る。
 徐々に船のスピードは落ちるのだが、波は穏やか。ちゃぷちゃぷとした水の響きがたまに聞こえてきた。
「こんなにも霧が出ているのに雨乞いかぁ」
 しっとりとした霞の景色にふと手を掲げた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)。
「テレビでやってるのを見たことあるけど、いざ自分がやることになるなんて――アヤネさんはやったこと……ないですよね」
 言葉後半はアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)へと振り向きながらのもの。
「雨乞いというのは非科学的な言葉、のような気がするのだけど」
 冬青の問いかけですらないそれにやはり当然といったようにアヤネは頷き返した。微笑みを浮かべる。
「もちろん僕はやったことないネ」
 雨雲が発生するメカニズムも解明されている。けれども、とアヤネは鉄甲船に乗り込んだ猟兵たちを視線で追いかけるように。
 自身の能力を駆使、呪術的なものを試してみたりと様々な方法が試されるようだ。
 その中で、海へと出て行く猟兵たちの姿が。
「……なるほど。生贄なら用意できるかな」
「私はあめあめ坊主を作りますね!」
 それじゃあまた後で! 手を振りあって、お互いが出来ることをしにいく。

 船室のテーブルに冬青は布と綿、そして糸を広げて逆てるてる坊主を作っていく。
 定番の白。黒、緑や青。布によって違う色合いとなるのだが、綿を詰めてきゅっと絞める。
 ふと、自身の指を使って吊ってみれば、あめあめ坊主はブランと逆さまになった。
「何体作ればいいかな?」
 同じくあめあめ坊主を作る猟兵が、たっくさん! と応じてくれたので冬青が頷く。
「まぁ沢山あったほうがご利益ありそうですね」
 一方。
 水上バイク・シロイルカにスピアフィッシングの装備一式を積んで海へと出たアヤネは、電脳ゴーグルを起動させ海中を見つめるように。
「あ、発見」
 電子化された景色に、生命体。スピアガンを手にゆっくりと海を潜る。
 水中の抵抗力や魚のスピードなどを見極め、ぎりぎりまで近付き銛を発射させた。
「なかなか大きいのが獲れたネ」
 獲物は一抱えもあるクエのようなもの。生贄を無事にゲットしたアヤネは鉄甲船へと戻っていく。

「あ、アヤネさん、お帰りなさい!」
「ただいま」
 獲物を背に甲板へと戻れば、丁度冬青が船室から出てきたところであった。
「おや、ソヨゴのそれは……てるてる坊主逆バージョンのやつだネ」
 あめあめ坊主を作ると言っていた冬青は、てるてる坊主をたくさん持っていた。
「はい、ちゃんとあめあめ坊主になりましたよ」
 ほら。
 そう言って首を括る紐を摘んで掲げて見せれば、てるてる坊主は頭が下になった
「降らなかったら首を切るんだよネ」
「それはてるてる……いえ、雨が降らなかったらやっぱり首をチョン切るんですかね……」
 むむむ、と真顔で考える冬青。
 そんな彼女に苦笑しながら、生贄である大きな魚を船員に渡すアヤネ。
 ちなみに獲物はもう一体。
 船員たちが引き上げてくれたそれは――、
「アヤネさん、マグロも獲ったんですか!? すごい! 凄い、大物ですね!」
 冬青が大きな魚を見て歓声をあげた。

 アヤネが身支度を整えていればしばらくが経つ。あめあめ坊主作りは続行中のようだ。
「そうだ、アヤネさん。一緒に顔を描きませんか?」
 テーブルにつけば、まだあめあめ坊主があちこちに。冬青にそう言われ、マジックを受け取ったアヤネは「顔?」と不思議な表情に。
「……顔」
「難しく考えないでいいんですよ~」
 わかった。そう答えて、あめあめ坊主の顔を描いていく。
 真剣に。真面目に。
(「図工の時間みたいだな~」)
 そんなことを思いながら、冬青はにこにこと。
「どう?」と、二つのあめあめ坊主を掲げたアヤネ。
「わあ、アヤネさん上手です! とっても可愛い~!」
 ――って。
「このあめあめ坊主の顔、私とアヤネさんですね?」
「……あ」
 無意識に描いたから、と改めて自身のそれを見れば確かにアヤネと冬青の顔ぽい。
「これを逆さ吊りに……これは吊るさないでおきましょうか」
「うん。吊るさないで」
 こくりと頷いて、混ざらないように二つを別の場所に。
 出来上がったあめあめ坊主は船の欄干などに括りつける。
 仲間の猟兵たちの作、ユーベルコードで作られたもの、折り紙の紫陽花や縁結びのおまじないなどなど。
 甲板はみるみると彩り豊かになっていき、飾りつけるのも楽しい。
「あ、さっきのアヤネさんの魚も、儀式用に紐で括られてますね」
 尾と頭が同じ方向に反った魚の飾りつけは躍動感あるものだった。
「これなら供物としてバッチリですね」
「そうネ。雨が降りそうな気持ちにはなってきた」
 そう言って冬青へと笑いかけるアヤネ。
 相変わらず非科学的ではあったけれど、「雨を待つ気分」とやらを味わった。
 雨降りの儀式。鉄甲船に乗船している皆が一つの道を目指す。
 いつの時代も、たくさんの人が『ただ一つ』を願う――それ自体が奇跡というものなのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
連携、アドリブ歓迎


 島が、少しは視認も出来るようであれば、近づくだけ近づいてから。視界が不良も不良なら、その時点で。UCをフル展開。

 より早いうちから音を聞き分け始められるよう、手を耳に添えるなどもして、前方の音に集中。歌も歌ってその反響具合を聞き分ければ、島の位置や入口が、見えずとも視えてくるので。
 ……違いますから、蝙蝠とかぢゃないですからっ。。

 その歌う歌も雨乞いに関する歌であれば、乞いたい方へ向けて歌える事にもなって、一石二鳥かも。
 出せる限りの【大声】も必要な距離だろうけど、力むのは限度があると思うから……なるべく倍音なり響きなり、それ自体を増幅させられるように【歌唱】できれば、と。



 海を行く鉄甲船が濃霧の海域へと入った。
 穏やかな波に少しずつ船のスピードは落ち、ちゃぷちゃぷとした水の響きが常に聴こえてくる。
 ノネ・ェメ(ο・f15208)が船縁に腕を預け、真下を覗きこむ。
 ちゃぷちゃぷ。
 霧中の、しん、とした空気。
 それでもノネの耳には〝音聴〟によりたくさんの音が届けられていた。
 遥か前方で断崖絶壁を打つ波の音、進む船が起こす海の音。
 ごうごうとした唸りは、気流が起こりつつある遥か上空の風の音。
 海中から聴こえる「鳴き」は何か巨大な魚が出すものだ。
 霧粒に含まれたようなその音たちは、どこか初めて聴くもののようにも思えた。
 船の舳先が霧を掻き分けるように進む。その流れすらも音として。
 手を耳に添え、前方の音に集中するノネ。
 あまりにも集中している彼女に、見かねたのか、女船員が声を掛けてきた。
「猟兵さん、猟兵さん、何か聴こえるの?」
「えぇと、はい、色々なモノが聴こえてますよ」
 一つ、一つを説明するノネ。女船員も耳に手を添えてみるのだが――「?」と首を傾げた。
「静かだけどねぇ」
「ん。いつもたくさんの音がありますから、本当に、ここは静かですね」
 同意し頷くノネ。陸の色々な音が聴こえない海原は、静かなのだ。
 時折、船の見張り台から琴の音色が落ちてきた。
 雨を待つその曲に、ノネは自身の声を乗せる。歌声を含んだ霧粒――音の広がり、反響。
 あ、とノネは再び聴こえてきた音に集中した。
「どうしたの?」
「声が反響してきたんです。聞き分ければ、島の位置や入口が、見えずとも視えてくるので――」
「へー、それって……」
「……違いますから、蝙蝠とかぢゃないですからっ」
 それなりに自覚(?)のあったノネが女船員の声を遮るように、やや泣きの入った唸りの声を発した。

 歌う。
 猟兵たちの手によって大気の流れが作られ、霧の層を貫く誰も気づかない雨一粒は雲間に差す一筋の光のように。
 そのうちに雨が降り出すだろう。
 船、海を叩く雨音はきっと凄まじいものだ。
 だからこそ、島内へと流れ込む海流の音も捉えることができるはず。と、ノネ。
 その時、遥か遠くの人の心音をも明瞭に聴くノネの能力が、一つの鳥声を聴き分けた。
 海音も風音も無い、世界の静寂が訪れた時であった。刹那よりも短いほんの僅かな時。
「え」
 ぱちり、目を開く。
「ホトトギス……?」
 それは音の世界に身を置くノネにだけに聴こえた鳥の声なのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四宮・かごめ
※アドリブ連携OK
それがし山育ちゆえ船は――うっ!!!

(たたたたたたたた……)
(おろろろろろろろ……)

気付いたら周りに桶が並べられていたでござる。
そうでござるか。これに水が溜まるようにすればいいのでござるか。
土砂降りでも良いが、同じ水量なら長く断続的に降り続いた方が桶を変えやすいし、島に起きる変化も捉えやすい。
というわけで他の人の雨乞いを繋ぐようにして雨を呼ぶでござる。
印を結んでなにかぼそぼそと唱えれば天はにわかにかき曇る。
吹き荒ぶ風は長雨を連れてくるのだとか。

あとはなんか高い所で腕を組んで遠くを見ておく。
何か島に変化があったらしゅたっと甲板に降り立ち、伝達する係でござる。にんにん。


泉宮・瑠碧
雨乞い…ですか
森に雨を呼ぶのは、よく行いますが…
同じ感じで、良いのでしょうか
…海なので、勝手は違いますが

海水なら、塩の粒子もありますし…霧も、水ですね
水の精霊に、海の水蒸気を主にして、雲の元を作って貰います
出来た雲の元は
風の精霊へ頼んで空へ舞い上げ、集めて雲に
冷やすなら、空高くへ氷の精霊も呼んで
雨雲を大きくしていきます

飲み水の確保は
水瓶や樽もあれば、量が溜められる気はします

巡る自然は、雨も一つ
雨雲が大きくなれば水達へ、おいで、と降る事を招きましょう
降っては、飛沫を空へ上げて雲に成りと、循環させて…
止め時は、風で散らして終えます

多いと、自然災害にはなりますが
火急では無い、雨の巡りは…楽しいですね


シリン・カービン
「異常気象にメガリスは関係しているのでしょうか」
水や風の精霊の様子を窺いながら周囲を観察します。
霧が意図的に発生させられている可能性もあります。

一回り観察したところで、雨水の確保に協力を。
船の舳先に立ち【エレメンタル・ファンタジア】を発動。
穏やかに『風』の『上昇気流』を発生させ、
周囲の霧や海面の水蒸気を上空に巻き上げて雲を作ります。

雷雨や豪雨にならないよう、調整は慎重に。
「少し刺激があれば降り出すでしょう」
深い霧が薄らげば、入り口を見つけるのも
多少は楽になるかもしれませんね。

雨水の回収は船員にお任せし、私は引き続き舳先で進路の監視を。
精霊の様子に注意しつつ、超視力で島内部への入り口を探します。



 猟兵たちの乗った鉄甲船が濃霧の海域へと入れば、徐々に船のスピードは落ちていく。
 波は穏やかで、ちゃぷちゃぷとした水の響きがたまに聞こえてきた。
 しかし、如何に穏やかでも揺れるものは揺れている。
 ふらふら、ふらふらと四宮・かごめ(たけのこ忍者・f12455)の平衡感覚は死につつあった。
「それがし山育ちゆえ船は――」
 ぐらん。
「うっ!!!」
 青褪めたかごめが船縁へと走る。忍者の里出身なだけあってその「駆け」は速いのだが――、
「嬢ちゃん、ほら、樽抱えてな」
 船員がぐったりとするかごめに樽を抱えさせる。
 そんな彼女へ、旅のお供のポーチや懐を探りながら近付くのは泉宮・瑠碧(月白・f04280)とシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)である。
「かごめ……この葉を口に含んでください」
「ああ、奇遇ですね。私も今酔い止めを――」
 と、二人が差し出した葉は同じもの。アックス&ウィザーズのものだろう。
「か、かたじけn……うぐぅ」
 葉を口に入れれば清涼感。ちょっとだけすっきりした気がした。
 風は無く、海自体は穏やか。かごめが落ち着き始めたところで、視界を遮る濃霧にエルフの娘たちの感覚が僅かに冴える。
「異常気象にメガリスは関係しているのでしょうか」
 意図的に霧が発生しているかもしれないと考えたシリンが呟けば、瑠碧はふと遠くを見るように。
「人を寄せ付けない島――もしかしたらそうなのかもしれませんね」
 島内へと入ってみなければ分からないことだ。
 グリードオーシャン。海満ちる世界の海旅は異常気象などに見舞われる。
 荒ぶる海だからこそまだ見ぬ数多の生命体が存在していそうな世界。肥沃な畑の如き海原。
 その時。
「は。この樽は一体……」
 ふと気付けば抱えていた樽。少し身を離し、不思議そうにかごめが眺める。
「そうでござるか。これに水が溜まるようにすればいいのでござるか」
 そういえばここに来た目的は、と思い出すかごめ。
「雨乞い……ですね。森に雨を呼ぶのは、よく行いますが……同じ感じで、良いのでしょうか?」
 海なので、勝手は違いますが――瑠碧が水の精霊たちの気配を探りながら言う。
「ええ、それで大丈夫かと」
 シリンも今は静かな風の精霊たちを捉えながら応じる。
 魚を獲りに行ったり、あめあめ坊主を作ったり、色々な方法を試す猟兵たちのなか、三人はそれぞれに活きる術を。

(「海水なら、塩の粒子もありますし……霧も、水ですね」)
 しっとりとした空へ僅かに手を翳す瑠碧。ほんの少ししょっぱさの混じった霧の味。
 船縁から海を臨み、水の精霊たちへ願う。
 乗船時、挨拶をした際の「彼ら」は猟兵たちの訪れを喜んでくれた。数多の命を抱く海は何者をも受け入れる。
 くるくると精霊が遊ぶ気配。
 海上を駆けながらダンスをすれば水が跳ねて、穏やかな海に動きをもたらした。
 糸巻き車のように空を翔ければ、霧が回収されていく。
 少しずつ出来ていく雲の元。
 それを風の精霊が抱えるようにすれば――、
「空へと送るのは任せてください」
 ほんの少し微笑んだシリンが船の舳先へと立った。
 エレメンタル・ファンタジア。制御が難しく、時に暴走すらするユーベルコードを慎重に発動させるシリン。
 はたりはたりと、纏うマントが揺らめき始め、風が起こり始める。
(「穏やかに――」)
 強い一陣が起ころうとする気配を察し、すぐに制御を強めた。
 はたりはたりと、猟兵たち作のあめあめ坊主が視界の隅で揺れ、シリンはそれを今回の指標とすることにした。目に見える制御方。
「少し刺激があれば降り出すでしょう」
 この状況での術士たちはまさしく「物理」だ。
 風の上昇気流を発生させ、雲の元を空へと送っていく。
 ぱたぱたとマストに吊られた黒の逆テルテル坊主がたくさん揺れ始めた。
 今度は桶を抱えて船の見張り台の一つへと上がったかごめは、俯瞰し、そして空を仰ぐ。
 供物として捧げられた魚は生け簀で元気に泳いでいるし、供物として捧げられたものは躍動感のある縛り方をされ儀式的だ。
 雨を請う琴の音、歌。
 飾られた折り紙の紫陽花は、雨を待つように。
「にんにん」
 かごめが印を結び、ぼそぼそと何かを唱えた。その口元は忍襟巻に隠れ、見えない。
(「吹き荒ぶ風は長雨を連れてくるのだとか」)
 湿った風が吹く――筍梅雨が雲を撹拌するように、どんどんと変化させていった。

(「巡る自然は、雨も一つ――」)
 濃霧が違うものとなりはじめる。煙る雨中のような視界。
「おいで」
 と、軽く腕を広げ、両掌を空に。降ることを招く瑠碧。
 皆が雨を請うていた。
 あとは自然の巡りに任せれば良いだろう。
 シリンは引き続き舳先で進路の監視を行う。精霊の様子に注意し、何も見落とすことなどないその視力で前方を見た。
 雲間に差す光の如く、一粒の雨。
 二つ、三つ、四つ。滴が猟兵たちへ、船へ、海へと落ちてくる。
「多いと、自然災害にはなりますが……火急では無い、雨の巡りは……楽しいですね」
 空から落ちる滴とその飛沫。水の精霊たちの動きはより「動」を感じさせる活発さ。瑠碧の耳、シリンの耳にも、彼らの楽しそうな「声」が聞こえた。
 見張り台から更に上へ。伝って登ったかごめは腕を組み、遠くを見ていた。
「……む?」
 しゅたっと甲板に降り立ち、
「シリン殿」
「かごめも潮の流れの変化を感じましたか」
 舳先が僅かに違う方向へと。

 ざん! と身を叩くような雨が降り始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『犯人の残した証拠を捜そう』

POW   :    物的証拠を自身の身体を使い捜索してみる。

SPD   :    目撃者などの間接的な証拠を捜してみる。

WIZ   :    気配などの目には見えない手がかりを捜してみる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 雨を請う逆さまの坊主たち。
 雨を待つ造花の紫陽花たち。
 雨願う者が差し出す生贄の魚は元気に生け簀で泳ぎ、供物は儀式的に飾られた。
 雨乞う、音楽や歌の奏上は「人」の願いを届けるもの。
 人と雨との縁結びにも感じられる雨降りの儀式。
 そして自然の巡りを促す術士の働き。

 ざあざあと。雨を迎えた鉄甲船――いや、海原は叩く雨粒に反応したかのように流れを作り始めた。
 濃霧が払われ、かわりに雨で視界は煙る。
 どこかへ引き寄せられるように動き始めた鉄甲船から、やがて見え始めた大きな島。断崖絶壁が途切れた場所へと入っていく。
 舳先に立っていた猟兵が変化にまず気付いた。
 雨のヴェールを切り払ったかのように晴れたのだ。振り向けば、雨のカーテンが下がっていく光景を目にすることができた。
 両側には岩の壁。それは高く、見上げた空は細い。
 それも十五分ほど船が進めば、岩壁は低くなり空は広くなってきて、そして再び見える海原――島の内部だ。
 ドーナツ状の島内部へと入った鉄甲船。陸の中心の海には、岩礁、何故か突き出た鉄パイプのような障害が時折あった。
 その時、ぱっと鉄パイプのようなものの上部が動いた。何か、鳥のようなものが飛び去っていく。
 声を聴きとった猟兵が「ホトトギスのような声」だったことを、みんなへと伝えた。

 外側は断崖絶壁。
 内部の海に面した場所は白い浜が広がっていて、船から降りてみて分かったのだが、浜はほとんど小さな貝殻で出来ていた。それで白く見えたのだろう。
 歩けばざくざくと音が鳴る。
 浜の向こうは緑溢れる陸となっていた。
 陽射しは汗ばむほどで、水筒には回収した水をたっぷりと。
「メガリス……確か、鳥を探すんだったか」
「昔やってきた海賊たちの跡に、たまに訪れているとのことでしたね」
 少し繁った方へと踏み入って、様子を見る。確かに無人島だ。
 だが。
 永い時間は全てを風化させ、緑で覆ってしまってもいたが、なんとなく人がいたのであろうという気配は微かに感じ取れた。
 その昔、凄惨な死を迎えたという海賊たちだろうか。恐らくメガリスを求め、島を侵略しにきたのだろう。
「凄惨な死……って何があるんでしょうかね」
 崖から落ちる。獣に襲われ喰われる。食人植物に襲われ喰われる。海に引き摺りこまれての溺死。などなど。
「思いつく事柄にキリがありませんガ、まずはその『怪しいポイント』に訪れてみましょうカ」
「そうだね」
「……穏やかな小動物や、海に棲む動物がメガリスを見かけているかもしれませんし」
 技能は要るが、目撃者として動物に話しかけてみるのも良いだろう。

 猟兵たちは手分けして探索を開始するのであった。
箒星・仄々
先程の岩礁の鳥
あれがメガリスさん?
真実を求めて探索と参りましょう

森で樹上の鳥さんへ声掛け
機械の鳥さんを見かけた方はおられますか?

どの時間帯に何処にいるか
どんな行動をしているか
どんな声で鳴くか
ホトトギスの鳴き声が聞こえる場所
等々お訊ねします
手をつなぐ&情報収集&優しさ&礼儀作法&聞き耳&動物と話す

答えの有無に関わらず協力に感謝し
囀りと協奏♪
楽器演奏&歌唱&恩返し

場所を変え繰り返し

教えてもらった
機械の鳥さん
ないしホトトギスさんの鳴き声
の居場所や目撃/聞かれた場所へ向かいます
追跡&聞き耳&目立たない&忍び足&迷彩&暗視

ホトトギスさんの鳴き声を蒸気拡声器から流し誘き寄せ
メガリスさんじゃなかったら協奏♪



 散開した猟兵たち――仄々は、きょろりと辺りを見回した。
 海原と打ち寄せる波、緑生い茂る島の陸。
 その中で木々の並ぶ場所へと仄々は入っていく。高い樹木の葉の間から燦々とした陽射しが落ちている。風が吹けば地面は漣のように影が揺れた。
 岩場と柔らかな草が続く傾斜あるこの場所はあまり植物が育っておらず、時に雨水が流れる沢のような場所になるのだろうと、仄々はその光景を思い浮かべるようにして歩む。
 風が通り、木陰で涼しいこの場所は鳥たちの憩いの場のようだ。
「もし、もし、鳥さんたちに少々お尋ねしたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
 樹上の青い小鳥と白い小鳥へと仄々は声を掛ける。
『あら、はじめてみる子ね』
『こんにちは』
「こんにちは、私は仄々といいます」
『ほのぼのの子。わたしは青の子よ』
『わたしは陽の子』
 ちょっと高めの岩に立った仄々へ、ピチュピチュと可愛らしい鳴き声を奏でながら小鳥たちが応えた。
「青の子さん、陽の子さん、この島で機械の鳥さんを見かけたことはありますか?」
『きかいのとりさん?』
 はい、と仄々は頷く。
 同じ船に乗っていた目の良い猟兵が「黒褐色でしたね」と呟いたのを耳にしていた仄々は、少し考える。
 小鳥たちの分かりやすい言葉でいうのなら――、
「ええと、たぶん、黒褐色の子さん、という感じで呼ばれているのではないでしょうか?」
『黒幹の子かしら? あの子は、たまに見るわ』
「おひさまがある時はどこにいますでしょうか?」
『おひさまがある時はお花を摘んでいるわね』
『くらいがある時に、わたしは飛んでいるのを見たわ』
「夜も飛ばれるのですね」
 機械だからだろうか、昼も夜も活動しているようだ。
 鳴き方を尋ねれば『ほとほと、ほと』『キョキョキョ、キョ』と鳴き方を小鳥たちは真似てくれた。
『あとは、なにかむずかしいことをお喋りしているわ』
『置いたお花と、ずっとお喋りしているみたい』
 よくいる場所は様々らしいが、お花のあるところというのは共通しているようだ。
「青の子さん、陽の子さん、色々と教えて下さってありがとうございます」
『だいじょうぶよ、お喋り、すきなの』
 ピーチクパーチクと小鳥は楽しげに歌うように。
 鳥たちを探し、声を掛ける仄々に興味を持ったのか、話を聞き終えた鳥たちが着いてくる。
『ほのぼのの子。もうちょっと行けば、黒幹の子のお花畑があるよ』
 仄々にそう声を掛けたのは大きな鳥である虹の子。
 巡り逢った沢を辿るように、上流へ歩いていた仄々はふと滝の匂いに気付いた。仄かな水飛沫。仄々のひげが動いた。
「ここが『お花畑』なんですね――」
 上から水が落ちてくる崖は、おひさまの当たりが良く色々な植物が岩壁を彩っている。
 その中で目に付いたのは白や紫、薄青と色は様々ながら、共通して斑模様となった小さな百合のような花々。崖に咲く『花畑』だ。
 ――チチチチッ――。
 ゆったりとした流れの場所では鳥たちが水浴びをしている。
「鳥さんたちの遊びの場でもあるようですね」
 ふかふかの草地に座った仄々は、カッツェンリートを奏でてみることにした。
 ――ほと、ほとほと。
『もうちょっとこんな感じだよ』
 色々教えてくれた小鳥たちが、鳴き声の指導に入って「ホトホトホト」と流暢な奏でを流す蒸気拡声器。そうしていると、

『~~♪』

 いつしか、小鳥たちの合唱が綺麗な響きとなって場に渡り始める。
 その光景の外れに一体の鳥――キュィ、とカメラのピントが合わさる音がした。

成功 🔵​🔵​🔴​

菫宮・理緒
ドーナツ状の島ってことだと、
真ん中辺りがあやしい感じなんだけど、鳥さんだし、
海の真ん中っていうのはあんまりなさそうかな?

でも、中央に島がないとも言えない気はするよね。

と、いうことで、
【E.C.O.M.S】でユニットを飛ばして、
ドーナツ島をしっかりスキャンしていこう。

今回は雨ってこともあるし、
敵になるコンキスタドールは擬態が得意みたいだし、
音をメインにしていこうかな。

鳥の羽ばたくような音や鳴き声、
あとは機械式ってことだから、駆動音みたいなのも気にしていこう。

それと、動物さんをみつけたら、
ブルーノワールといっしょに聞き込みもしていきたいな。
「ね、ちょっと変わった鳥さん、見たことないかな?」



「うーん……」
 輪になっているという島。その浜辺に立った理緒は、生い茂る緑とその向こうの外海を阻む高台のような陸地、そして対岸がかすかに見える内海へ目を向けた。
「中央に島がないとも言えない気はするよね……」
 ドーナツ状の島だと、真ん中辺りがあやしいなぁと理緒。
「でも鳥さんだし、海の真ん中……うーん……」
 ちょっと悩んで、悩むよりは調べた方が良いよね、と理緒はOctagonal Pyramidたちを召喚する。
「作戦行動、開始」
 理緒の声に正八角形のユニットたちが飛翔する。
 這うように飛びスキャンしていくユニットたちの情報は、同期しているゴーグルタイプのウェアラブルコンピュータへ。
 しっかりとスキャンさせると分かることがあった。
「…………あれ? この島、磁場がおかしいような……」
 似通った情報としてはUDCアースの富士樹海だろうか。
(「なんだか、擬態が得意そうなコンキスタドールの影響を受けそうだな」)
 今のところ、内海に怪しい島はなさそうだが――。
 と、先程鳥がいたらしき鉄パイプのような場所を過ぎたところに剣山のような岩礁があった。人を串刺しにできそうな鋭さだ。その岩剣と岩剣の間に落ちているもの。
「お花?」
 摘んだばかりの小さな百合のような花が幾つか落ちている。
(「さっきの鳥がくわえてきたのかな?」)
 そう思っていると、何やらモーター音。ユニット一体を旋回させ、音主の上へ。
「あ」
 黒褐色の鳥に擬態した機械仕掛けのメガリスだ。
 その嘴に花をくわえ、岩礁に落とす。翼を休めるように降り立ち――その背には陽の光を吸収しているらしき部分。
 ――ホト、ホトホトホト。
 続く言の葉も、ユニットは記録する。

『はなささぐ かほるみちはつなぐみち のこるつみはあらじ』

 そう鳴いて、鳥は去っていく。

「あ、見失っちゃった」
 隠密の技でも持っているのか、メガリスは陸地に近付くとその気配を消した。
 Octagonal Pyramidたちを回収し、理緒はメガリスを見失った方向へと歩き出す。お供はブルーノワール、蒼と黒のグラデーションの翼を持つ黒兎の精霊だ。
 歩いた先で出会ったのはアルマジロのような動物だった。頭と尻尾がふわふわとした毛に覆われている。
「ね、ちょっと変わった鳥さん、見たことないかな?」
『とりさん? ふわふわ?』
 ブルーノワールに目をやって体をくねらせるアルマジロのような動物。
「えっとあんまりふわふわじゃ無い、かな。ホトホトって鳴くの」
『あ。あいつ』
 アルマジロのような動物は、思い当たったようだ。
『お花、置いてく』
「お花? どんな時に置いていくのかな?」
『かぞく、動かなくなったとき』
 その声に、理緒はブルーノワールと目を合わせた。
 献花、だろうか――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノイン・フィーバー
各種OK

こういう時こそ一人ではなく二人! 初手UC発動し、『彼女』を呼び出して人手にしますヨー。

【場所】
まずは凄惨な死があった場所へのエスコートは『彼女』に任せましょう。そういうのは得意でしょうシ。
食い散らかされた骨などが残ってあれば、埋めて供養致します。一応身元の確認ができそうならしておきますネ。

【メガリス探索】
『彼女』と共に、1ステージ目で収穫しお供えした残り……主に内臓やら皮やら、本来は捨ててしまうような部位を少し乾燥させた上でばらまいて頂きましょう。海鳥達にはいい食事となるはず。
が、ターゲットは機械式の鳥。なら、メガリスは取り残されるハズ。

(なお、ばらまいたのはちゃんと事後片づけます)



 浜辺を、生い茂る緑の中を行く猟兵たち。
 彼らを見送りつつ、ノインは「さて」と呟き己の頭(ブラウン管なテレビ)に手を添えた。
「こういう時こそ一人ではなく、二人。ショータイムです、ミス」
 ユーベルコード・仄暗い井戸の底からを発動すれば、ノインの画面から女がずるりと出てくる――浜辺に彼女の長い黒髪と白のワンピース広がった。
「ミス。本来ならばワタシがエスコートをするべきなのでしょうガ」
 けれど、凄惨な死を探すのは『彼女』の方が得意だろう。
「エスコートはお任せしてモ?」
 ノインがそう言うと『彼女』は首を傾け、そのまま周囲を見回すように――否、一方向を見据えてぴたりと止まった。
 のそりと立ち上がって、関節が鳴りそうな一歩を踏み出す。ざりりと浜辺には引きずるような足跡が残った。
「あちらですカ。それでハ、無人島デートと洒落込みましょうカ♪」
 蝶ネクタイをきゅっと整えて、ノインはある物を持って『彼女』とともに歩き出す。
 歩みのノリは違えどもどこか楽しそうな二人であった。

 一見は長閑な無人島。
 けれどもこの島は澱みがあるようだ。
 浜辺の大きな岩場までやってきたノインは、ぺたりと岩にくっついた『彼女』を見守る。
 ずりずりと横移動。
「……おや?」
 少し大きな岩穴があった。下へと向かうそこは奈落へと続くような錯覚。ダスト・シュートのように扱われているらしく、手の届く場所に動物の骨らしきものが引っ掛かっている。
「肉食動物や野鳥が食べてしまった跡でしょうネ………………エ、行くのですカ?」
 女性の体格ならひとり分は入れそう。ぐいぐいと前に出た『彼女』は躊躇いもせずに中に入っていく。
 やがて出てきた『彼女』は一本の骨を持って這い上がってきた。たぶん人間のモノだ。
 自然溢れる場所だと痕跡の発見も難しいのだが、雨風に晒されていない中だからこそ発見できたもの。
 昔やってきた海賊のものか、迷い込んだ人のものか。
 それを埋めて供養するノイン。
 ふと気付く。ここはぽっかりと拓けた場所だった。先を見れば岩棚が続いている。
「ミス、ここは適切な場所かも知れませんネ」
 そう言ったノインと『彼女』は持ってきたある物――船で供物にした魚たちの内臓やら皮やらをばら撒いたのだ。後で回収しやすいように、限定的な範囲で撒く。
 本来は捨ててしまう部位で、少し乾燥したそれらは独特な匂いを放っていた。
『ギャアギャア』
 と鳴く海の鳥たちが一羽、二羽と空を旋回し始めた。
「ミス、こちらヘ」
 ノインは『彼女』と一緒に観察できる場所まで離れる。
 白と黒の縞々で彩られた大きな怪鳥たちが舞い降りてきて、臓腑をつつく。
『ギャ、ギャギャ♪』
 美味しそうについばんでいる怪鳥たち。
 しばらくすると彼らの頭上に一羽の鳥がやってきて――くわえていた花をぽとりと落とした。
『つきみちて つきみちて』
 機械的な声色。
 尽き満ちて――ノインの耳(と、テレビ付属の集音マイク)はそう聞き取れた。
『はらえたまへ きよめたまへ』
 止まることなく、飛び回る機械仕掛けの鳥――メガリスから蛍のような光がばら撒かれた。怪鳥たちや半渇きの臓腑に触れた光は、ふわりと舞い上がる。
 『彼女』がノインの背へ、そっと隠れるように動いた。
「破魔の力が感じ取れますネ」
 浄化作用の破魔の力、呪詛耐性も入っているような光。
 これがメガリスの力だろうか。
 この時のふわふわと舞い上がる光は、島の至る所で観測することができたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノネ・ェメ
連携、アドリブ歓迎


 アタリをつける?のがちよっと難しい感じ。ああしてみよとか、こうしてみよとか、広く浅く回る事で手広く、の方向性で行ってみよかな?

 貝を踏む音、又は海面のパイプを空気やメガリスが出入りする音等が聴き取れるか、聴き取ってみたり。海上の風ってけっこう強いし、パイプに入り込む音でもその奥、その先は伺い知れるかも。

 島内散策は、海賊の形跡があるごとにUCの【楽器演奏】と【歌唱】でしばしアンサンブルを。鳥の声を表現した曲などを奏でたらそのフレーズに反応した鳥さんがよってきてくれないかな。なんなら鳥さん達はべらせて演奏とか、よくない?(

 気になるものあればそこに時間を割けばOKかな、とも。



「んー……」
 海風がノネの髪をさらりさらりと刹那にさらう。空よりも深く、海よりも幻想的な輝きの青。
「ん~?」
 ノネに届く、ざくざくとした数多の小貝を踏む音は猟兵たちのものだろう。
 草地を踏み分け、葉を掻き分け、様々なそれは連なれば音色となった。それを区切るように分断していく海風の音。
「♪」
 ノネもまた歩み、音と音の繋ぐように浜辺でざくりざくりと音を奏でた。歌姫はみゃあみゃあと鳴く海鳥たち。
 同じ音色が流れることはなく、ただ一度きりのその時かぎりの音楽。
 メガリスは飛び回っているものだ。ああしてみよ、こうしてみよ、と思いつくままにノネは歩み、ユーベルコードを展開した。
「あれ? ここ、削られてる」
 しばらく歩いたその先の岩浜は、不自然な削れ方。
 元々船一つ分を削ったのだろうか。時の経過で大幅に拡がった場所があり、そして、
「……なんだろ、これ」
 岩杭が打ちつけられていた。
 遠くから見たそれは単に突出した岩だと思ったのだ。近付いてみたら違ったけれども。
 そのふもとに花一輪。
「百合の花? かな?」
 六枚花弁。黄色に白の斑が入った花を摘んでノネ。
 良い香りだ。
 海の香りとは違う、爽やかな風の香り。甘くはない。岩場に座り、膝に花を乗せて。
「―― ɑːnsɑ́ːmbl mɪ́ksɪŋ ――」
 一音から。試しに風に乗せるように紡げば、『声』がさらわれていく。エコーを利かせれば波状のように。
 〝音奏〟で表現するのは鳥の声、森の音色。
 いつしかノネの周りに小鳥たち、そして海の怪鳥が寄ってきて、彼らは気ままに鳴き始めた。ちょっとした即興合唱隊になっている。

 彼女の音奏は奇跡を喚ぶ――。

 その時、カシン、と岩に何かが当たる音。
 見れば花をくわえた機械式の鳥が頭を傾け、じっとノネを見ている。キュイ、とカメラの駆動音がした。観察されているようだ。
 トッ、トッ。跳びつつ、軽やかに近づいてくる。
 『うた』は心を震わせるものだ。『メガリス』に心があるのかは分からないが、生き物の心の音色にメガリスは反応しているようにも思えた。
『めぐり、巡り、廻り。いのちはなくした輪廻に還った。アリガトウ』
 機械的な声で囀る鳥はノネの膝上の花を回収した。器用に二輪、くわえて飛び去っていく。
「ぁ」
 ばさっと一羽、二羽、他の鳥たちも飛んでいく。
「――ぇ、なんだったんだろう……」
 どこかぽかんとした表情で、ノネは飛び立った鳥たちを見送った。

成功 🔵​🔵​🔴​

春乃・結希
私あまり頭良くなくて推理とか苦手なので
探検はみんなに任せて海岸で釣りをして過ごすことにします
『journey』の中をごそごそして伸縮式の釣竿を取り出し
餌はその辺を歩いてる虫を捕まえて使います

…といっても釣りなんてこの前この世界に来たときにしたのが2回目くらい
で全然知識なんてありません
でもこんな秘境の海やし、きっと何か釣れるはず!
お魚捕まえてた猟兵さんもいたし、捌いて貰って、焼けば食べられるはず!
…私はお魚苦手なので食べらないんですけど

とか心の中で思ったり
傍らの『with』に「釣れないねー」なんて話しかけたりしつつのんびり過ごします
もしかしたら魚以外のものも釣れたりするかもしれないしっ



「探検はみんなに任せて、私たちは海岸で釣りをしてみたりするのは、どうかな?」
 推理などは苦手だという結希は、withへと話しかけながら浜辺を歩いた。目指すは釣り人が好みそうな岩場だ。小さな貝殻が集まった浜は歩めばざくざくと音が鳴った。
 歩きながら草地へと目を遣れば――ここは自然そのままの無人島、コオロギやバッタのような虫を餌がわりに捕まえてみる。
 古いトランクケース・journeyの中から瓶を取り出して、虫を入れて。
「ここならのんびり、釣りができそうだね」
 適度に寛げそうな岩に座った結希は再びトランクケースをごそごそと。中から取り出したのは伸縮式の釣り竿だ。糸に新鮮な餌を括り、竿をひゅんと振ってほんの少し向こうの海へと糸の先を送る。
(「……といっても釣りなんて、この前この世界に来たときにしたのが2回目くらいなんだけどね」)
 まだまだ初心者という自覚はある。知識なんてない。
 けれども何事も経験なのだ。
(「こんな秘境の海やし、きっと何か釣れるはず!」)
 釣り人は待ち人。のんびりと釣り糸を垂らして過ごせば、何か、魚が通りかかるはずだ。
 海は透き通っていて、ゆらりと寄っては遠ざかる魚の動きを見ているだけで楽しい。
「あ、うに? もいるね?」
 のそのそと動くうに――のようなもの。虹色で、キラキラしているけれども、たぶんうにだ。
(「おっさかな、おっさかな♪ お魚捕まえてた猟兵さんもいたし、捌いて貰って、焼けば食べられるはず!」)
 でも。
(「……私はお魚苦手なので食べらないんですけど」)
 ちょっと苦笑しつつ、そう思いつつな結希。さらには船の保存食にもなればと考えて。
 傍らには最愛の恋人である大剣のwith。無人島の陽射しで一緒に日向ぼっこ。
「釣れないねー」
 と話しながら、結希は長閑なこの風景にゆるゆると心を解していく。
 海面の揺らぎはその下の砂へ光や影となって映りこみ、時折差す虹の色は動きのある絵画のようだ。
 その時。
 ――カシン。
 と、何かが岩に当たったような、降り立ったような音。
「?」
 音がした場所、withとは逆の方向へ目を向ければそこには黒褐色の鳥がいた。嘴に斑模様のある百合のような花をくわえている。
「!」
 よくよく見れば、鳥に擬態した機械鳥だ。
 動き回るでもなく、海賊たちのように害ある行動をするわけでもない結希に興味を惹かれたのだろう。メガリスがいた。
 驚きに目を瞠ったものの、そろりと視線を元に戻して結希は釣りを続ける。メガリスは結希の行動を観察しているようだ。ジジッと関節を駆動させ、頭を傾げている。
 穏やかな時間。
 仄かに香ってくるそれは百合の香りだろうか。清涼感のあるそれはミントを連想させる。
 カシン、カシンと岩を跳び周囲を探っていた鳥は、やがて飛び立っていった。
「……何だったんだろうね?」
 withへとそう呟いて、鳥が去るのを見送った結希――その時、伝わってくる手応え。
 わわっと竿を引き虹色に輝く魚を釣り上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
ホトトギスの鳴き声って東京特許許可局みたいなのだよネ
ソヨゴそこからよくカツオまで発想飛ばせるネ…
でもOK
仕事後の楽しみにしよう

さて相手は機械鳥
鉄パイプみたいなのが機械的な通路もしくは巣なのかもしれない
島全体にある気がする
調べてみようか

ソヨゴがチェックした場所に規則性がないか確認するよ
なんか人工物っぽい感じだなあ

海賊の死因は毒物と推定するネ
探偵?いや簡単な推理だよ
この場所には目に見える脅威が無い
であれば注意しなくてはならないのは見えない脅威だ
つまり雰囲気に惑わされず慎重に行こうって事さ

電脳ゴーグルで周囲の警戒をしながら調査する

ソヨゴは動物とコミュニケーション取れる?
そっちは任せよう


城島・冬青
【橙翠】

ホトトギス…
昔の人はテッペンカケタカと鳴き声を表現しましたけどトッキョキョカキョク!の方がそれっぽく聞こえますよね
目には青葉山ホトトギス初鰹
…アヤネさん、この仕事が終わったらシロイルカくんで初鰹を捕りにいきましょう
よーし頑張って調査するぞー

島の上空から鉄パイプで出来た建造物を探します
見つけた地点は片っ端からチェック
おおー!なんかアヤネさんが探偵っぽいことを言ってる

動物と会話ですか?出来ますよ
コミュ力も効かせ周囲の動物達に聞き込み
鳥は勿論、動物、言葉が通じれば虫にも聞く
島で最近起こった異変や
見慣れない生物
不思議な鳴き声について
疑問に感じたことや知りたいことを聞いて廻る
何かわかるといいなぁ



「ホトトギス、のような鳥ですかー」
「ホトトギスの鳴き声って東京特許許可局みたいなのだよネ」
 UDCアースやサムライエンパイアに生息しているだろう鳥を思い描きながら、鳴き声のことにも触れていく冬青とアヤネ。
「そうですね。サムライエンパイアだと今もなのかな、昔の人はテッペンカケタカと鳴き声を表現しましたけど『トッキョキョカキョク!』の方がそれっぽく聞こえますよね」
 ちょっとだけ声色を真似るような冬青に、うんうんと頷くアヤネ。
『ホトトギス』に言及すればたくさんの名、逸話などがある鳥だ。時に冬青の心に浮かんだものといえば――、
「『目には青葉 山ホトトギス 初鰹』……アヤネさん、この仕事が終わったらシロイルカくんで初鰹を捕りにいきましょう!」
 食のことであった。とても有名な俳句、そして今が旬ということもあり、どんどんと冬青の心はお魚さんに侵食されていった様子。
 そんな彼女をぽかんとした表情で見つめたアヤネだったが、次の瞬間には笑みを浮かべる。
「ソヨゴってば、そこからよくカツオまで発想飛ばせるネ――でもOKだ」
 この仕事が終わったら鰹の旅!
 新鮮な鰹を捌いて刺身として色んな薬味とともに。炙り締めたタタキは粗塩で。
 歯ごたえある食感を思い起こせば、どんどんと食べたくなってくる。
「よーし頑張って調査するぞー」
 笑顔になった冬青に、アヤネもまた笑顔。
「楽しみだね」
 そう言って、調査へと乗り出す二人であった。

「まずは建造物を探してみよう」
 内海にて見かけた『メガリス』が止まっていた鉄パイプが気になった二人。
「鉄パイプみたいなのが機械的な通路、もしくは巣なのかもしれないネ」
 島の構造がどうなっているのか――どの世界から落ちてきた『島』なのか。その辺りもヒントとなりそうだ。
「それじゃあ、ちょっとさくっと上から見てきますね!」
 黒蘭の花弁を纏った冬青が上空から島を眺めるように。
 アヤネは電脳ゴーグルを起動し、周囲を見回した。
 電脳世界に映る地は、磁場の乱れが見て取れた。
「永久磁石……溶岩かな」
 注意してみてみると浜辺には岩場も多くあり、そのひとつへとアヤネは近付く。
 メガリスが機械式の鳥だというのなら、長期に過ごすのは良くない場所のようにも思えた。
 その時、ソヨゴが戻ってきたのでアヤネもまたその場所へと向かうことに――ちょっと悩んだがお姫様抱っこをしてもらった。
「ここ?」
「はい。周囲が繁る緑なのに、ぽっかり空いた空間で気になったんですよね」
『外側』の断崖絶壁へと続く傾斜に降り立った冬青とアヤネ。
 地面は砂利が敷かれていて、手にしてみればそれはどれも同じ大きさだった。何者かの手で作られたのだというのが分かる。
「ふーむ?」
 冬青と一緒に上空から確認できた場は、もう一つあった。そこは色の違う、やはり人工石。二つの場所から流れ落ちる沢があり、二人は少し歩いてみた。
「海賊の死因は毒物と推定するネ」
「おおー! なんかアヤネさんが探偵っぽいことを言ってる……!」
「探偵? いや簡単な推理だよ。この場所には目に見える脅威が無い」
 であれば。
「注意しなくてはならないのは見えない脅威だ――つまり、雰囲気に惑わされず慎重に行こうって事さ」
 ここは無人島。有害な植物や虫、動物がいるであろう島だ。
「スペースシップワールドかアルダワ魔法学園がある世界から落ちてきた島なのかもしれないネ――そうだ、ソヨゴは動物とコミュニケーションを取れる?」
「動物との会話ですか? 出来ますよー」
 何か動物がいないかなぁと見回してみれば、オウムのような鳥が一匹。島への珍しい客人に興味津々なのだろう。
『こんにちは!』
 話しかけてきた冬青へ頭を傾けつつ、寄ってくる。
『こんちは?』
 言葉は通じるようだ。ちょっと質問いいかな? と冬青はオウムくん(仮)と向き合った。
『さいきん、見慣れない生物とかいたりしました?』
 オウムくん(仮)は冬青とアヤネをじっと見た――見慣れない生物なのだろう。
『え、ええーと、そ、そっかー、私たちが見慣れない生物ですよねっ。それじゃあ疑問に感じたこととか、あったりします?』
『ぎもん?』
「……餌を食べない鳥とか?」
『ごはんを食べない鳥さんとか、います?』
 相手はメガリスだ。様子を見守っていたアヤネからの質問を、通訳する冬青。
『あ、あいつ。ごはん食べないなぁ……』
『ホトトギスさんですか? ――あ、鳴き声は『トッキョキョカキョク!』みたいな鳥さんですけど。よくいる場所があれば知りたいなって』
『あそこでよく眠っているよ』
 オウムくん(仮)が案内したのは、二つの場から落ちていく沢の、その合流地点。
 電脳ゴーグルを起動していたアヤネは「?」と周囲を見回した。
「ここ……零磁場だね」
「パワースポット、ということですか?」
 涼やかな風が木々の間を通り抜け、さわさわと。
 水の流れる音は癒しの音色のように。

 神社、もしくは神殿の清涼とした空気。
 メガリスが『眠る』とされるここは、神聖な雰囲気を持つ場所であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

泉宮・瑠碧
鳥で、機械式…どんな子でしょう
見て回りつつ
お話を訊けそうな子も、探します

小動物を見付けたら、まず、こんにちはの挨拶を
お訊きしたいのですが…
機械、と言って分かるでしょうか
普通の鳥とは少し違う、大きめの鳥を知っていますか
どんな子なのか、教えて欲しいのです

あと
前に此処に来た海賊…人達が、亡くなってしまった場所も
…祈りだけでもと

どの情報でも
訊いたら、林檎や苺等の干し果物を御礼に

海賊たちの跡へ
死の覚悟もあったかも、知れませんが…
喪われた命へ、安らかにと願い

引き続き、メガリスの子の探索を
たまに訪れるなら、近くに居ないでしょうか…
この場所に、ホトトギスの鳴き声の子が来ていないか
訊ける子が居れば、訊いてみます



 海へと辿り着く小さな水の流れを見つけた瑠碧は、上流へと向かってみることにする。
 岩や石の間を流れていく沢のようになっていて、木々が避けほんの少し開けたその『道』は風の通りも良く、小鳥たちが行き交う姿があったのだ。
(「鳥で、機械式……どんな子なのでしょう?」)
 ここで目にするのは、アックス&ウィザーズの深き森に訪れる小鳥たちとは違う小鳥たち。オウムのような大きな鳥もいて、彼らの囀りを、瑠碧はどこか嬉しそうな表情で聴き入る。
 水の流れの近くには涼みにきたふわふわな毛並みの小動物もいた。リスのような尻尾をもつその子は、瑠碧を見て長い耳をぴこりと動かした。
「こんにちは」
『こんちは?』
 瑠碧が声をかけると、リスのような子は声を返す。『?』と頭を傾けたリス子さん(仮)は、瑠碧に近い岩場まで登ってくる。瑠碧は体を屈めた。
「少しお訊きしたいのですが……機械、と言って分かるでしょうか」
『?』
 分からないようだ。瑠碧は例える言葉を探す。
「普通の鳥とは少し違う、大きめの鳥だとは思うのですが――」
 リス子さんはオウムさん(仮)を見上げた。
「――恐らく『ごはん』は食べない鳥だと思います」
『あ。しってる。ほとほと。ごはんたべない。いつも花をくわえてる』
 リス子さんは思い当たったようで、瑠碧へと視線を戻した。
「ほとほと、と呼ばれているのですか。どんな子なのか、教えて欲しいのです」
『どんなこ』
『いつも難しいことを言ってるね』
 オウムさんが会話に入ってくる。
『このまえ、迷い込んでしんじゃったいるかに花をあげてた』
『あのとき、光ってたよね』
「……弔い……でしょうか……」
 教えてくれてありがとうございました、と、林檎の干し果物を差し入れれば、わぁいとリス子さんとオウムさんが喜ぶ。
 くわえた花は『し』のあった場所に置いていくようで、瑠碧は着いてくるリス子とともに向かってみることにした。

『へんになっちゃうところ』
 と、小動物たちが、普段近寄らない場所を教えてくれる。黒い砂利が敷かれたその場所はわんわんとした音が、直接頭に響く場所だった。磁場が狂っているのだろうか。
 この場所には斑模様を持つ百合の花がいくつか落ちている。
(「海賊たちは……死の覚悟もあったかも、知れませんが……」)
 喪われた命へ、安らかにと願う瑠碧。
 浄化を纏い祈れば、生命を助ける幻の木の葉が場に舞い落ちた。
 それを見たリス子は『わぁ』と感嘆の声をあげる。
『おねえさんほとほとみたいだね』
「……え……」
『ほとほとも、この葉っぱみたいな光を落とすときがあるんだぁ』
 瑠碧は祈りの手をほどき、その手を見つめた。意識を向けたのは自身のユーベルコード。
 廻るは命の円環――過去は今を生かし、命を繋げるものなり――恵みを招き、浄化を促す力だ。
(「この『メガリス』も浄化の力をもつもの……なのでしょうか……?」)
 呪いの秘宝・メガリスを手にした者は、生きてユーベルコードに覚醒するか、死んでコンキスタドールとなるか――ほとほとの意に反する呪いの力だ。
 ほとほとに心があるのなら、それはきしきしとどこか相反する軋みとなっている。瑠碧はそんな気がしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四宮・かごめ
※アドリブ連携歓迎
【POW】
海賊達が凄惨な死を迎えた場所を探りつつ
物的証拠を中心に探すでござる

分身の術、発動
二人で鉈を抜いて生い茂る緑に踏み込むでござる
わくわく

件の海賊共は極悪人の集まり
しかし海賊である以上、船上での不和は呑み込んで
顔突き合わせなくてはならぬ定め
陸に上がれば色々な形で反動が来る
それが善人揃いとの違い
ここで何があったにせよ、曰くつきの場所は離れた場所に
複数ある可能性が高いのでござる

何かありそうで危険な場所や
判りにくい場所を見つけたら近寄って探索
技能はその都度必要なものを使い
高い所は竹把台明神でぴょんぴょんするでござる

「……にんにん」
「見る聞くと来たから、次は匂いとみた(ぴーん)」



「……にんにん」
 無人島――緑生い茂るその先を見て、かごめは紡ぐ。
「かごめ、かごめ。籠の中の鳥は、いついつ出やる」
 夜明けの晩に、鶴と亀がつうべった――後ろの正面だぁれ? 淡々とした声は祝詞奏上に近いものかもしれない――之に反応した存在がいたが、今のかごめには知る由もなく。
 忍法四宮流・籠目唄を発動させたかごめと、もう一人のかごめがその地に立った。
「にんにん」
「にんにん」
「往くでござるよ」
「往くでござる」
 どちらのかごめも鉈を抜き、生い茂る緑をばっさと払って踏みこんでいく。
「それがしは左へ」
「それがしは右へ」
 現在のかごめの力量の二乗メートル半径分、かなり広範に動ける分身もまたかごめだ。
(「件の海賊共は極悪人の集まり」)
 なれど。
(「海賊である以上、船上での不和は呑み込み、顔突き合わせなくてはならぬ定め」)
(「陸に上がれば色々な形で反動が来る」)
「――それが善人揃いとの違い」
 それを踏まえて検めれば自ずと見えてくるものがあるだろう。
「ここで何があったにせよ、曰くつきの場所は離れた場所に」
「複数ある可能性が高いのでござる」
 船が接岸できそうな近くに陸での暮らしの場があったと仮定する。天幕を張りやすい立地。
 かごめはそこから更に踏み入っていく。
「む」
 鬱蒼とした茂みに蠢く蔦。食人植物だろうか。諍いなどが起こった際、事故などに見せられるような場所。

 もう一人のかごめは傾斜を登る。
 ごろりごろりとした岩場が続き、軽快な忍の跳躍を。
 高台へは竹把台明神を使い、ただの人では時間かかるであろう距離もぴょんぴょんと。軽々とクリアした。
「良い風でござるな」
 森を抜け、岩場を抜け、高台に立ったかごめの視界には見晴らしの良い海の世界。
 そして、
「これは磔台……でござろうか」
 とっても磔に向いた大きな岩を見つけた。少し風化はしていたが、岩には深く穿たれた穴。人工的なものだ。
 その下にはたくさんの百合のような花が落ちていて、風が吹けば一つ、また一つとさらわれていった――その時。
 ぽとり、と花一輪が空から落ちてきた。見上げるかごめ。
『はなささぐ かほるみちはつなぐみち のこるつみはあらじ』
「めがりす」
 何かを唱えたメガリスが落とした新鮮な花は、朝の空気のような清涼な匂いがした。夜が明け心洗われるような香りだ。
 再び花をさらっていく風が吹く。
 メガリスは降下しながら飛び去っていった。何かを導くように、風に乗って。

成功 🔵​🔵​🔴​

シリン・カービン
やはりもっと情報が欲しいですね。 
直接メガリスを追ってみましょう。

メガリスが現れそうな場所に身を潜めます。
姿を現したら、そっと追跡開始。
森を駆け水を走り、風の精霊の手を取り宙を跳びます。
気づかれないよう距離をおきますが、
私の視力ならそう見失わないでしょう。
繁みなどで視界から消えても、
植物の精霊や風の精霊から情報を収集。追跡を継続します。

メガリスはなぜ日々弔いを続けているのか。
往く先々の痕跡や行動そのものから読み取れないか試みます。

その後、機を見てメガリスに接触。
「メガリス、私の言葉がわかりますか」
意思があるのならこの地に危機が迫っていることを伝えたい。
私達はそれに立ち向かうために来たのだ、と。


アルフレッド・モトロ
ふーむ、鳥ねぇ
鳥型のメガリスが居るなら……空だな。

よし、【ヘルカイト】に【騎乗】だ。
風で【サーフィン】しながら空から探すとしよう!

先に行った猟兵たちから、新たに得た情報を共有して貰い、島の怪しいポイントの中でも更に怪しいポイントに絞って重点的に探索。

コンキスタドールが居ないかも気を配っとく。

あとは【野生の勘】頼りになるが、【気合い】で頑張って探すぞ!見つかるまでな!

もし原生生物に襲われるようなら、どうすっかなー
あんまり手荒な真似はしたくねえからな、【よく動くエイっぽい尻尾】の炎をかざして追い払おう!

(連携アドリブ歓迎です)



 献花。
 浄化。
 何故そんなことをするのか、目にしたばかりのメガリスの行動は猟兵たちにとって不思議にさえ映った。
「……やはりもっと情報が欲しいですね。今度は直接メガリスを追ってみましょう」
 仲間の猟兵たちからもたらされた情報を吟味し、やや眉を顰め考え込んでいたシリンの言葉にアルフレッドも頷いた。
「そのためにもまずは見つけねえとな。島の怪しいポイント――中でも更に怪しいポイントに絞って重点的に探索した方がいいか?」
 浮遊しているトビエイ型『ヘルカイト』に騎乗したアルフレッドは上空を中心に探していくようだ。
「では、私は一旦森の中へと身を潜めます」
 メガリスが現われそうなポイントを目指し、シリンは生い茂る緑の中へと踏みこんでいった。

 風に乗るヘルカイト。
 平らなひし形のそれに乗ってサーフィンし、風波を制するアルフレッド。
 遠く、越えてきた断崖絶壁の向こうは相変わらず濃霧が漂っているのが視認できた。島内はからりと晴れているというのに。
 吹く風の発生源はどこなのか分からないが、海洋災害に見舞われる世界だ。不思議なことが多く起こる。
「コンキスタドールがどう出現するのかは分からねえが、まあ、メガリスの側には来るんだろうな」
 敵よりも早くメガリスを押さえておかねばならないだろう。
 風の匂いを嗅ぎながら、アルフレッドとヘルカイトは空を泳いだ。
 一方。
 花を摘んでは落とすメガリスの行動に目をつけ、シリンが訪れたのは細やかな水飛沫が満ちる滝場。目的は共に存在している崖の花畑だ。
 近くの茂みに身を潜めていると、そう長く経たないうちに一羽の鳥が飛来した。
 カシン――硬質な音――着地したのは機械式の鳥・メガリス。
 細長い蔦に咲く花を嘴で摘む。カシン、カシンと岩と岩を跳び移ったのちにメガリスは飛翔した。
 気配を消したまま茂みから出て、森を駆け水を走るシリンに纏わる風の精霊。ハンター・マントがふわりとなびき、『訪れ』を察したシリンは風精霊の手を取った。
「風に舞い、空に踊れ」
 森へと降下していくメガリスを追うシリンはふわりと空を舞う。
 往く先々でメガリスは花を落とし、時々何かを唱えている。仲間の猟兵が撒いた魚の臓腑には顕著に反応し、破魔と祈りの光を蛍のように振り撒いていた。
(「日々弔いを続けているのは分かります――」)
 それは何故なのか。
 シリンとメガリスの追いかけっこを視認したアルフレッドは、飛び回るメガリスが寄り付かない場所を見つけた。
 猟兵たちが集めた情報を照らし合わせれば、そこは磁場の乱れが強い場所らしい。
 飛翔する道は限られているようだ。その『道』の一つへとアルフレッドは向かっていった。

「メガリス、私の言葉がわかりますか」
 再び崖の花畑に降りたメガリスへ、接触するシリン。
 キッ、と軋んだ音を立て、メガリスはシリンを見た。キュインとカメラが動く音がした。言葉は認識できるようだ。
「メガリス。この地に危機が迫っています――私たちは、それに立ち向かうために来ました」
 シリンが手を差し伸べれば、その手をメガリスは避けた。
『そは在りし日の眸』
 カシン、カシン。音を立てて後退る。どこか怯えたような行動であった。
『ゆきむかい我が罪を問ふべし』
「あなたのどこに罪が――メガリス!」
 板を何枚も繋げたような翼を広げて、メガリスは飛翔する。

 風の匂いが変わった。
 淀んだ空気が、磁場の乱れた場所から発生し始める――グルルルッと翼を広げ、凶暴な動物が森から飛び出してくる。
「――何だ!?」
 長くしなやかなエイっぽい尻尾を振るい、溟獄の蒼炎をかざし動物を追い払うアルフレッド。
 そこへ飛び込んでくるようにメガリス。
「お、おい、ちょっと待て、メガ――ほとほと!」
 『黒幹の子』『ほとほと』と動物たちに呼ばれていたという情報――名を呼んだアルフレッドに驚いたメガリス・ほとほとは、飛ぶことを一瞬忘れたのかそのまま彼の頭へと衝突した。
「痛っ――っくねぇ! おい大丈夫か?」
『~~~~くゎん』
 アルフレッドはかなりの石頭であった。一瞬ショートしたほとほとが、ぽとっとアルフレッドの腕の中に落ちた。
「ほとほとぉー! マジか!?」
「アルフレッド、そのままメガリスの確保を。精霊たちの様子がおかしいです」
 空を駆け上がってきたシリンが周囲を見回す。
 空気が轟いていた。
 メガリスを奪うべく、コンキスタドールが現われたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『社永守乃勇魚『しろながすのいさな』』

POW   :    其の身、目に見ゆるより巨躯なり
【自身が放つ重圧(プレッシャー)】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    形あるもの、存ずるを能わず
単純で重い【自身の巨体】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    此処は根之國なりや
【今までに喰らったメガリスの成れの果て】を降らせる事で、戦場全体が【根之堅洲國(ねのかたすくに)】と同じ環境に変化する。[根之堅洲國(ねのかたすくに)]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:山庫

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠早乙女・龍破です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――古い記録。

 書き換えを避けるべく、落とし続けていた記憶領域が『衝撃』により引っ張り出された。
「メガリス」は『ほとほと』と呼ばれていた。
 ほとほととして動き出したのはいつだったか、その記録は古すぎたため消失している。
 ほとほとは祈りに特化したメガリスであった。祝詞を唱え、あの世とこの世を繋いで、死したモノの魂を輪廻と呼ばれる軸へと送る。
 そのモノの未練は骸の海から蘇らないように、清涼な香りの花を贈り、昇華の道を作った。

 穢れが残らないように。

 ある日。
 ほとほとを手に入れた『主』は死んでコンキスタドールとなってしまった。殺戮を繰り返し、世界を破壊へと導く。
 呪いの秘宝・メガリスを手にした者は、生きてユーベルコードに覚醒するか、死んでコンキスタドールとなるか――それはほとほとの意に反する呪いの力だった。
 きしきしと無い心が軋んだ。
 初めて知ったココロは悲しみだった。それ以外を知らない。
 主が死んでも、次の者が『メガリス』を求めた。
 ごめんなさい、と、ほとほとは言った。
 狂わせてごめんなさい。殺させてごめんなさい。
 すべてはほとほとが存在したから。自身が罪そのものなのだと、ほとほとは察した。

 それからずっと、ほとほとは罪の意識による祈りを捧げていた。
 歪んだ祈りは、歪んだ存在を呼び寄せてしまうのだと気付かずに。

 ――。
 機械の冷たい体に温もりを感じて、ほとほとは目を開いた。
『キョ……』
 島の来訪者たちが、視界に映る。――死なせてしまったら可哀想だと思って、あまり、近付けなかった来訪者たち――その一人の腕におさまっていることに気付いたほとほとは、ばたばたと翼を動かすも抜け出すことは叶わなかった。
 その間にも。
 気付けば、ほとほとの世界は、祈りがどこにも届かない場所へと変貌していく。


 猟兵たちは様々な場所から大きなコンキスタドールを見つめた。
「確かに、ちょっとした島ひとつぶんくらいはあるな」
 尖るような岩の胴体。背は緑が溢れ、注連縄が巻かれている。
 合わさる胴鏡は異界へと通じているのか、異様な気配が鳥居をくぐり放出されていた。
『此処は根之國なりや』
 コンキスタドールが様々な人形を降らせていく――するとどうだろう――晴れ渡った景色に、ひやりとした霧と瘴気が入りこんでくる。
『心地良い、心地良い、呪いの力。根之堅洲國には仲間がたんと在るや』
 誘うように、この島のメガリス――ほとほとへと、社永守乃勇魚は語りかけた。
 ぞっとする、おどろおどろしい声色で、社永守乃勇魚は告げる。
『この島ごと、奪ってみせようぞ』
 猟兵たちへ向けた口は、ニィとしたものへ。
 生ぬるい風が吹き出てくるソコは深淵の色をしていた。
箒星・仄々
ほとほとさん
とても心優しく健気なメガリスさんです
根之國へ連れていかれて堪るものですか
勇魚さんを海へお還ししましょう

ランさんを召喚し騎乗

破魔込めた矢で人形を各個撃破
炎や風が霧や瘴気を払います
勇魚さんの力を弱め
同時に
今また利用されている
成れの果てさんの解放も

ある程度数を減らしたら
合わせ銅鏡へ炎の矢
表面を溶かす事で鏡としての力を削ぎます

勇魚さんが弱ってきてましたら
魔力フィールドを纏い
勇魚さんの口から体内へ突入です
鯨さんを倒すにはお腹の中から、ですよね~♪
魔力の矢を連射し
深淵を打ち消しながら突き抜けます

事後に鎮魂曲
ほとほとさんに合わせ
勇魚さんに祈りを捧げます

ほとほとさん
是からは一緒に未来へ進みましょう


ノイン・フィーバー
協力等OK

『彼女』は一度画面に戻し宇宙バイクで空中戦へ
基本はアームドフォート等で皆さんに援護射撃。ボスに対しては鳥居を狙う

・此処は根之國なりや対策

「根之堅洲國……。確か、黄泉の国と同じくあの世の名前でしたネ」
「ですガ、その力で強く在れるのガ、アナタだけとは限りませんヨ?」

敵の背中に不時着OR着地して、改めてUCを発動
ナチュラルに適応しパワーアップした『彼女』が現れる
いつも以上に黒いオーラとか纏ってる感じで

鳥居とか引っこ抜いて背中にびったんびったん叩きつけて、へし折って鋭くした鳥居を背中に突きたてたりオーラ纏った拳で殴ったり。(適度に調整してください)

事後
ほとほとサンから『彼女』はやっぱり隠れる


菫宮・理緒
根之國……。
海の彼方にある、悪霊邪気の根源だっけ?

でもそれはきっと、
あなたがそう思ってしまっているから、だよね。

祈りも呪いも、もとはきっと同じ、心の力。
それが強すぎたから、だからあなたは根之國になってしまった。
わたしは、そんな気がするよ。

悲しみに飲まれてしまったのが残念だけど、
もう助けられないのなら……呪いを受け入れてしまったのなら、
猟兵としては、倒すしかない、かな。

それが、あなたへの助けになると信じて、
全力で倒させてもらうよ。

戦闘では【虚実置換】を使っていくね。
ほとほとを撮影して動きを止めたり、
自分をドラッグアンドドロップいて攻撃を避けたりしていくよ。


アルフレッド・モトロ
…いいかほとほと
ちょっとの間だけ、じっとしててくれるか?
俺達が絶ッ対、守ってやっから!


さあ行くぜ!!

ヘルカイトに【騎乗】したまま
UCで渦をたくさん作って攻撃を凌ぐ!

3回だ 3回凌げばイケる
何故なら俺の【野生の勘】がそう言っているから!

そして左腕に抱いたほとほとを
プロトステガで【かばう】動きをしつつ
渦と空中を【サーフィン】して敵に接近!なるはやでな!

飛行中に尻尾の炎で熱して【力を溜め】たアンカーを
渾身の【気合い】と【怪力】で叩きつけてやるのさ!

あと……

いつでもいいんだが
俺達は猟兵で、お前の力で死んだりしないってコト
ほとほとに伝えたい

上手く言えねえけど
安心させてやりたいんだ

(連携アドリブ歓迎です)



 どこか不穏ながらも中立を保っていた島の性質が、社永守乃勇魚の出現と、社永守乃勇魚が喰らってきたメガリスの成れの果てが降ることにより、少しずつ引きこまれていくような感覚。
 どこへ、と考えれば――。
「根之堅洲國……。確か、黄泉の国と同じくあの世の名前でしたネ」
 ノイン・フィーバーが的確な『行先』を言った。
「――祝詞によれば、罪穢れが押し流される場所であったり、悪霊邪鬼の根源とされるところだね。海の彼方にあるんだっけ?」
 そう言った菫宮・理緒の視線は、アルフレッド・モトロの腕におさまるほとほとへと向けられる。
「祈りも呪いも、もとはきっと同じ、心の力。心の在り方次第だよ」
 ユーベルコードを得るか、コンキスタドールとなるか。理緒が今見るコンキスタドールとメガリスの邂逅は、一つの道の成れの果てだ。
「ほとほとさん」
 箒星・仄々もまた、メガリスであるほとほとへと声を掛けた。
「あなたは、とても心優しく健気なメガリスさんです。根之國へ連れていかれて堪るものですか――ともに、勇魚さんを海へお還ししましょう」
 『ほとほと』は言ってしまえば道具である。――故に、仄々のように優しい声を掛けられることは無かった。
 仄々の言葉に、反応したメガリスはキュイッと目線を動かす。
「……いいかほとほと。ちょっとの間だけ、じっとしててくれるか? 俺達が絶ッ対、守ってやっから!」
 カラスよりも少し大きなほとほとを抱えるアルフレッドの声は強く、邪気に満たされつつある中で確かな勇気を差すように。

「さあ、ここからが "クライマックス" だ!」
 アルフレッドの狂騒海域が複数の巨大な渦潮を発生させる。
 海水を巻き上げたそれは水竜巻の如く、そして鋭き水円盤のように社永守乃勇魚の硬い身を斬り削る。
『流れに身を任せ――』
 敵が巨躯を海に叩きつけ、猟兵への一撃を。
 単純だが重撃。地震が起きた様に地が揺れ、大地に足をつけている理緒が「わわっ」と声を上げた。
 ドン! と敵が転がれば海原は途端に津波となる――それは目くらましであり水飛沫の向こうは続く敵の一撃が迫った。
 二つの渦潮で拓くように敵軌道を阻害するアルフレッド。
 敵攻撃の残滓に左腕に抱えたほとほとをかばい、プロトステガのシールドを展開すれば強い衝撃に弾かれる。
「うおッ」
 騎乗するヘルカイトが空中旋回した。刹那にアルフレッドは後ろ足へ荷重し、続け前足へと重心を移動させ舵を取る。
「ド、ドラッグアンドドロップ!」
 肌を貫かんとする鋭い飛沫を受けつつ、自身をLVTP-X3rd-vanに写し、しなり迫ってきた尾を虚実置換で避ける理緒。
 ドラッグした自身をドロップさせた理緒は空へ。続け指先を走らせれば、彼女の体は鋭角を描き再び地上へ。
 彼我の距離を作り、タブレットを掲げ社永守乃勇魚を撮影することで動きを一瞬止めた。
「ごろんってしてね!」
 画面に接した指先をくるんっとすれば、現実の社永守乃勇魚がくるんっとなった。
 大回転であり、跳ねた水がある意味スプラッシュアタックとなって猟兵たちの全身を濡らす。
「見事に転がりましたネ~」
 ブーストスライガーに乗り上空から猟兵へ援護射撃を送るノインが見たものは、ゴロンした社永守乃勇魚であった。
『小さな、小さな存在が集まったところで何になるや……』
 続く猟兵たちの攻撃を受け、転がされた社永守乃勇魚が何でもない風に言った。構築しゆく人形による陣で、戦場を根之堅洲國へと変えていく。
 それは海のように、敵にとっては快適な世界へと変化していくようだ。
「……ですガ、その力で強く在れるのガ、アナタだけとは限りませんヨ?」
 宇宙バイクを降下させ、ツバメの尾のようにヒーローコスチュームの後裾をなびかせつつノインは社永守乃勇魚と着地した。
 異界に近い場所なのか、青々とした草地を踏めば泥に近い感触。
「ショータイムです、ミス。貴女のその怨みを存分にぶつけてくださいネ」
 ノインのTVなマスクから、長い黒髪で顔を覆った少女がずるりと出てきた。いつもより動きは重く、されど『彼女』にとってのそれは軽やかとさえ表現できる。
 じとりと汗ばむ夜闇のオーラを纏い、故に強調される真っ白いワンピースと肌は幽暗めいたものに。
 這い進んだ『彼女』はガッと鳥居に縋りついた。爪をたて、ずるずると立ち上がっていく。どうやら引っこ抜く気満々のようだ。
「おやおや、殺る気いっぱいですネ」
 良い事ですネ、と頷くノイン。

 カッツェンランツェ・全長五メートルの目旗魚を呼び、騎乗した仄々が魔力の矢を放つ。
 狙いは降ってきたメガリスの成れの果てである人形だ。
 炎の矢は人形を貫き灼き、風の矢は人形から放たれていた瘴気を払い飛ばすように。
 陣のように構築されていた人形を撃破することで、社永守乃勇魚の力を削っていく――それが仄々の狙いだったが、同時に。
(「今また利用されている成れの果てさんの解放を……」)
 軽やかな土鈴の音。破魔をこめた矢がメガリスの成れの果てを浄化していく。
 道具にも魂宿ることがある――これは仄々の優しき願いであり、祈りであった。
「ほとほとさん」
 彼は語り掛けるように、声を張った。
「是からは、一緒に未来へと進みませんか?」
「悲しみに飲まれてしまわないように、ね」
 理緒もまた言い添える。
 あいつらの声が聞こえたか? とアルフレッドはほとほとへと視線を一瞬落とす。
「俺達は猟兵で、みんな覚醒者みたいなもんだ。――お前の力で死んだりしないんだ」
 上手く言えた自信は無かったが安心させてやりたいと、言葉を紡ぐアルフレッド。
 ほとほとが視認した「生命体の埒外にあるもの」――猟兵たちが使う力は、世界の敵と渡り合うもので。

 猟兵の祈りが届いたのか、ほとほとは蛍のような光を放った。
 花弁のように戦場に舞い落ちていく。
 それは花束ひとつぶんくらいの少しの光であったが、未来を認識した祈りでもあった。

「その意気だぜ!」
 アルフレッドがヘルカイトを旋回させた。
 光を見て思わず力が入ったのだろう、ノインの『彼女』が鳥居を引っこ抜き、社永守乃勇魚を叩き、穿ちといった野性味ある攻撃。
「あ。ほとほとサンの光が……」
 呟くノイン。
 光が一つ、近くに落ちてきた時の『彼女』は鳥居を掲げて盾にするように。更にはオーラ纏う足蹴を社永守乃勇魚を繰り出した。
 背中で暴れ回られてはたまったものではない。
 左右に胴を振る敵であるのだが、巨体故に振り落としは叶わず、自主的にごろんした。
「こちらへ、ミス」
 敵背に鳥居を叩きつけた彼女を抱え、ブーストスライガーへと乗り込み浮上するノイン。
 転じ、接敵するのはアルフレッドと仄々だ。ノインのアームドフォート・typeGによる援護射撃と理緒の虚実置換が社永守乃勇魚の動きを抑える。
 尻尾の蒼炎で熱し、力を蓄えたワンダレイ・アンカーをぶん回して敵の巨躯へと叩きつけるアルフレッド。
 岩を穿つ一撃。錨が敵胴を削り荒々しい痕を刻んだ。振り子のようにかかる遠心へ膂力を加え、更に加速させた追撃。
「行きますよ、ランさん」
 上空から降下する仄々が銅鏡めがけ炎の矢を撃ちだした。降る炎矢に、映りこむ鏡面が揺らぐ。
 そのまま空駆けた仄々は敵の口から体内へ突入した。
 社永守乃勇魚の口内はじっとりとしていて、停滞し生無き海の匂い。
 彼が四方八方に魔力の矢を放てば、風と炎の『動』が深淵を打ち消していく。
「鯨さんを倒すにはお腹の中から、ですよね~♪」
 暴れ回るように、思いっきり矢を放つ仄々。
 一方、外では再び降り立ったノインの『彼女』が、社永守乃勇魚をへし折った鳥居の先端でざしざしと突き刺す挟撃。
 コンキスタドールへと難なく一撃を繰り出す猟兵たちの姿を、ほとほとは記録する。
「ここに来るまでの道中も、わたしたちは『祈って』来たんだよ」
 雨降りの儀式の祈りやお呪いは天に届いた。その道を理緒たちは通ってきたのだ。
「未来へ向けた祈りは、あなたへの助けにもなるとわたしは思ってる」

 祈りは未来への道も作っていける。
 メガリスは猟兵たちの言葉や行動を記録し、ベースでもある存在意義へと刻んだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

四宮・かごめ
※アドリブ・連携OK
エンパイアで穢れは日常のもの。
対処出来る範囲内であれば、という但し書きは付きまするが。

役割:防戦とカウンター
雑兵ども、根之堅洲國此処にあり。
お客様は神様。整列してお出迎えするでござる。
味方を支援しつつも、なるべく数を失わないように動く。
竹槍で払ったり手裏剣を投擲したりして、敵の攻撃を撃ち落としていくでござる。

防戦一方の弱兵を敵は一掃しようとするはず。
巨体の一撃を見舞おうとしたら反撃開始。
急いで残存している全ての雑兵を集結させ、合体。
敵の体の落下に合わせて思い切り竹槍を突き出させる。
対空竹槍の真価、その身に刻むが良いでござる

「でっけー」
「忍法変わり身、発動!(ダッシュ」


春乃・結希
凄い…大きくて綺麗…なのに、雰囲気は最悪…
釣り上げたお魚は石で囲った生簀に
ちゃんとここに居てねっ

空の鯨を見上げUC発動
行こう…『with』。こんな素敵な島、めちゃくちゃにされるのは嫌やもん

『withと共に在る私は強い』と言う自己暗示【勇気】により暴風を纏う
重圧に何度弾かれても、本体に届くまで音の壁を超え突撃
痛みは【激痛耐性】で無視、ダメージは地獄の炎で補完
弱点は…あの鳥居か、鏡、かな…?
重圧を跳ね除け『with』を叩きつける【怪力・鎧無視攻撃】
ねのかたすくに…てどんなとこなん?でも、この島よりは素敵やなさそうですねっ

わっ、あなたさっきの!
ほとほと?可愛い名前!
お花集めてるなら、お手伝いするよっ


ノネ・ェメ
 連携、アドリブ歓迎


 ねのくにってなに? この世にあの世のメガリスが降ってきてるの?

 この地に眠る者の多くは悪い海賊かもだけど。その形跡が遺る場所をまわって、歌っててわたし、なんにも考えてなかったのね? そんなわたしにメガリスは、ありがとうって言ってくれて。あの言葉を嘘にしたくない。

 息の根を止める事はしたくもさせたくもないけど、この域の根を止める事は、なんとかならない? 【歌唱】をとことん突きつめて、UCという名の鎮魂歌へ昇華させて。降りてくるもの皆全て、あるべき場所へと帰して。ゆくべき水先を案内するだけ、それが出来るように。

 鳴くよりも感情を込め惜しみなく、誰しもの泣く事を無くするために。


アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
ただの鯨なら大人しいものだけど
コイツは見た目だけ形を借りた危険な相手
ソヨゴ気を抜かないで
この相手は食べられそうもないネ

SilverBulletのケースを下ろし素早く組み立てる
ソヨゴ前は任せた
弱点を見つけ出して一撃で葬ってやる

根の堅洲国は黄泉の国みたいなものか
ハハッ
4年間死んでいたような僕には馴染んだ光景だ
これで僕を止めることなんか…
そう言ってから
少しだけ足が竦んでいる事に気づく
ソヨゴとの出会いが僕を変えたということか
でも僕はそれを肯定するとも
彼女を守りたいという気持ちは僕を強くする

危ないソヨゴ避けて!
援護射撃で一発

電脳ゴーグルで弱点を探る
熱量の集まる中心を目か口から貫いてやる


城島・冬青
【橙翠】

さっきカツオが食べたい…と言ったけれど
カツオの前にクジラが出てくるなんて!
それにしてもなんてプレッシャー…
奪わせませんよ、絶対に

夜歩くで前線へ
アヤネさんの派手な一発、期待してますからね!
UCの飛翔能力で社永守乃勇魚の身体を高速で駆け巡り衝撃波の雨を降らせる
こんなに大きいと捌くのも大変ですね

重圧攻撃は
夜歩くの最大速度で発動までの間に攻撃範囲外まで待避できればいいけど無理なら武器受けで耐える
全体攻撃とか狡い

アヤネさんの援護射撃が心強い
ねぇ奪いたがりのクジラさん
貴方には信じあえる人と戦う気持ちが分かりますか?
わかることができたら素敵なのにな…
そう言いながら
真の姿へ
渾身の衝撃波で弱点を抉ります


シリン・カービン
【SPD】

ほとほとを呪われた存在にはさせません。
大丈夫、私達は死にませんから。

島の外縁に駆け上り、勇魚を見下ろせる位置につきます。
狙いは異界へ通じるという銅鏡。
「あなたは、私の獲物」
他の猟兵に注意が向いている隙に立て続けに狙撃。

しかし露出しているとは言え敵の重要部位。
弾丸が通らないほどの強度だった場合は意識を集中。
褐色の肌と、額の中央に第三の目が開いた真の姿に変わります。

「針の穴だって、通して見せる」
真の姿の時にだけ使える超精密射撃UC【ホークアイ・スナイプ】を発動。
ミリ単位もズレない弾着で連射し、銅鏡を穿って破壊します。

「ほとほと。私たちと来ませんか」
猟兵の庇護下で、以前の様な祈りの日々を。


泉宮・瑠碧
ほとほと、は…
優しく、寂しい子…ですね

…少しだけ
ほとほとの悲しみも、分かる気がします
…自分が、居なければ良かった、とか
でも…
ほとほとの祈りは、悲しい懺悔に、聞こえます…

社永守乃勇魚…君は、メガリスを得られずに…
…呪いとは、悪意を持って齎すものです
望んだ訳では無い子を、呪いと呼ばないであげて
…ほとほとに救われた魂達は、きっと、感謝する筈だから

私は破魔を籠めて霧と瘴気を祓い
上書きする様に生命森林
此処は根之國では、ありません
今を生きるもの達の、場所です

終えれば勇魚へ、祈ります
…躯の海へ還ったら、ただ穏やかに泳ぎ、眠れますように

ほとほと…
悲しい以外も知る為に、もう寂しくない様に
皆と一緒に…行きましょう




 社永守乃勇魚の出現時、絶賛釣り中であった春乃・結希は「わ」と驚きの声をあげて竿を繰り、疑似餌を回収する。大きな鯨を釣ってしまったかのような錯覚。
「……凄い……大きくて綺麗……――なのに、雰囲気は最悪……」
 そうして場を片付けながら、石を囲いにして作った生け簀を見る。そこには今までの釣果である魚たちが悠々と泳いでいた。
「ちゃんとここに居てねっ」
 そう言って、今度は空泳ぐ社永守乃勇魚を見上げる。吹き付ける海風が方向転換し、結希は風を纏った。
「行こう……『with』。こんな素敵な島、めちゃくちゃにされるのは嫌やもん」
 漆黒の大剣を手に結希は飛翔する。

「さっきカツオが食べたい……と言ったけれど、カツオの前にクジラが出てくるなんて!」
 そんな風に軽く言ってみる城島・冬青であったが、空気を震わすこの世のものではない威圧に指先がピリリとした。花髑髏へと手を添える。
「――この相手は食べられそうもないネ」
 アヤネ・ラグランジェも緩く笑んでみせた。
「ただの鯨なら大人しいものだけど、コイツは見た目だけ形を借りた危険な相手――ソヨゴ、気を抜かないでネ」
「はい。メガリスは奪わせませんよ、絶対に……!」
 黒蘭の花弁を纏い飛翔する冬青。陸地を自陣にするアヤネはSilverBulletのケースを下ろし、慣れた様子で素早く組み立て始めるのだった。

(「ほとほと、は……優しく、寂しい子……ですね」)
 島を巡り、猟兵たちが見聞きしたものはメガリスの行動を推しはかるもの。
 泉宮・瑠碧は少しだけ、メガリス――ほとほとの悲しみが分かる気がした。自分が居なければ良かった――過去に落ちた時の滴は、今も瑠碧の元にまで届く。
「ほとほとの祈りは、悲しい懺悔に、聞こえます……」
 瑠碧の呟きが聞こえたノネ・ェメは「あの、ね」と言の葉を紡ぐ。
「この地に眠る者の多くは悪い海賊かもだけど。その形跡が遺る場所をまわって、歌っててわたし、なんにも考えてなかったのね?」
 心赴くままに音を紡いだだけのノネ。
「そんなわたしにメガリスは、ありがとうって言ってくれて。……わたし、あの言葉を嘘にしたくない」
 もしかしたら、ほとほとは自身の祈りが齎すものを自覚しているのかもしれない。
 過去に向かっていない、純粋なノネの音が与えたのは未来への標。
「私たちも祈りましょう、か……」
「ん。息の根を止める事はしたくもさせたくもないけど、この域の根を止めることは、なんとかしてみたい、って思ってる」
 瑠碧とノネの視界には、社永守乃勇魚が降らすメガリスの成れの果て。無造作に落ちてきたかのそれは陣を成し、領域を根之堅洲國のものへと傾かせていた。

「でっけー」
 まるで空に浮かぶ島。四宮・かごめは見上げて思わずといったように呟いた。
「エンパイアで穢れは日常のもの」
 かごめの生きるサムライエンパイアでは、穢れは日常的に触れるもの。対処出来る範囲内であれば穢れを祓う心算であった。
「歩の無い将棋は何とやら。タダ働き、お願いするでござる」
 にんにん。
 外法四宮流・突捨を発動させたかごめの周囲に、額の天冠に『一』と刻印された落ち武者狩の死霊たちが顕現する。
「雑兵ども、根之堅洲國此処にあり。お客様は神様。整列してお出迎えするでござる」
 ――オオオォォォォ! 死霊たちの震えは侵食しゆく空気に良く馴染んだ。形成するは魚鱗の陣。
(「ほとほとを呪われた存在にはさせません」)
 ほとほとを仲間へと預けたシリン・カービンはそのまま島へと着地した。島の外縁へと駆け上り、社永守乃勇魚を見下ろせる位置を取る。
 空駆ける猟兵たち、場をいなす猟兵たち。戦場を俯瞰できる場にて、シリンは精霊猟銃を構える。彼女の視力は易々と敵の銅鏡部を捉えることができた。
「あなたは、私の獲物」
 呟き、引鉄を弾く。それはオブリビオンを前にしたシリンの祈りであった。


 シリンの精霊弾が社永守乃勇魚の銅鏡を狙撃する。
「――硬い」
 やはり。
 呟きの声は既に想定されていたものに対して。シリンは意識を集中させる。
 銃弾の高らかな音が発されるなか、接敵するのは結希と冬青だ。
「弱点は……あの鳥居か、鏡、かな……?」
「まずは広範に、行きます!」
 空翔ける冬青が花髑髏を振るい、社永守乃勇魚の背に次々と衝撃波を降らせていく。
「こんなに大きいと捌くのも大変ですね――」
 巨体故に効いている気がしない、と冬青。その時、敵の銅鏡がキラッと輝いた。
 冬青の後方を位置取っていた結希は、近場の衝撃波が異界へと飲みこまれるように消失するのを見た。
「わ、やばそう。冬青さん、あそこには近づかないようにしましょう……!」
「わかりましたっ」
『目に見えるものより、見えぬものを』
 ズオッ、と、敵が放つ重圧が二人へと放たれた。圧の塊が拡大される様は海の揺れで判別できた。音速で範囲外へと避ける冬青。
(「――『with』と共に在る私は強い」)
 結希は自己暗示を強くし、繭のように覆っていた風を暴風へ。風障壁を纏い重圧へと突き進む。
 バンッと動と圧の空気が触れあい弾けた。生じたのは突風だ。海を裂き、水飛沫を上げた。
「にんにん」
 風船のように膨れ上がる圧へかごめの死霊たちが手裏剣を投擲する。
 刺突できるもので風穴をたくさん作っていけば、内包された空気が抜けていく。
「そこ!」
 拓かれた穴へ突撃した結希へ重圧が襲い掛かる。覆う風で撹拌された圧は残滓となり空へと放たれた。
 鳥居の一基は仲間のユーベルコードが破壊した。二基目へと結希は『with』を振るう。速度に乗せた超重量級の一刀は笠木と渡しを斬り開いた。
『――いらちたるや……!』
 詰みへと進む斬撃だったのだろう。
 高速で駆け抜ける結希へ残滓の風を当てんと社永守乃勇魚が動く。
『道』が閉じるその前に、銅鏡が鋭く輝き、喰らった人形たちを飛ばしていった。そして自身は尾を振り上げ、胴を回転させればすべてを巻き込む一撃に。
 ぐわっと迫る波と敵の巨体。かごめは急ぎ残存していた雑兵たちを集結し合体させた。天冠の数字が足されていく。
「一、二の!」
 参!
 回転し落ちてくる敵の体へ思いっきり竹槍を突き出す。ガカッと巨躯を穿つ先端へ更に力を入れ、振るう。
「対空竹槍の真価、その身に刻むが良いでござる」
 次手、肆!
 長柄を捻ればぐるんと敵軸が反転した。
 敵の動きによって島へ海へと放られるメガリスたち。島全体の磁場は揺らぎ、根之堅洲國へと同調していく。

「……呪いとは、悪意を持って齎すものです……望んだ訳では無い子を、呪いと呼ばないであげて」
 仲間の言葉に蛍のような光を、花束ひとつぶん。ほとほとの祈りが瑠碧のもとへと落ちてくる。
「……ほとほとに救われた魂達は、きっと、感謝するはずだから」
 紡ぐ言霊は瑠碧の祈りだ。
「緑とは生命、廻るは命の円環……過去は今を生かし、命を繋げるものなり――」
 旅立つものと、後に残るものが紡ぎ続ける廻り。破魔を籠めた力は霧と瘴気を祓わんとする。
 今を生きる命を癒し、浄化に満ちる森のものへと空気が変わっていく。
「此処は根之國では、ありません」
 淀んだ空気が動きだし、風を通す。
「今を生きるもの達の、場所です」
『―― mjúːz vòukəlizéiʃən ――』
 とても優しく、柔らかく、静寂へと導くように。
 ノネの倍音豊かなトーンはどの音域にも馴染み、瑠碧の生命森林へと重なる。
 音に、歌に、想いの波を乗せればノネのそれは鎮魂歌となった。
(「降りてくるもの皆全て、あるべき場所へと帰して」)
 ほとほとはメガリスという道具だ。けれども道具にも魂宿るものがある。
(「ゆくべき水先を案内するだけ」)
 メガリスの成れの果て――彼らのあるべき場所は――降ってくるとある地点で砕け、風化し塵となる彼らを、小さな光が乗じて導く。猟兵たちの祈りにほとほとが応えたのだ。
 ノネは降りてくるものすべてを空即是色へと還す。

 一方。刹那に染まりゆく世界を感じたアヤネ。
「根之堅洲國は黄泉の国みたいなものか」
 喉が引き攣り、ハハッと乾いた笑いが出る。瞳は色無き翠。
「四年間死んでいたような僕には馴染んだ光景だ。これで僕を止めることなんか……」
 言って、気付く。世界に差した色、少しだけ足が竦んでいる。
「ソヨゴとの出会いが僕を変えたということか」
 自覚と分析。
「でも僕はそれを肯定するとも」
 認識。
 根之堅洲國の水を既にアヤネは飲むことが出来なくなっている。
(「彼女を守りたいという気持ちは僕を強くする」)
 それはアヤネの祈りであった。否、それよりも確かなもの。魂に息吹く動力だ。
 スコープ越しに冬青の姿を視認したアヤネは、SilverBulletの引鉄を弾いた。
 電脳ゴーグルが捉えた敵の熱量が集まる場所――その一つ、尾に絡む注連縄。
 コンキスタドールが直線となる瞬間を捉えたアヤネのUDC細胞炸裂弾が敵内部を貫通していく。
 オオォォン!
 怯む敵と眼前へと迫っていた重圧が弾け、冬青は花髑髏を構える。
「ねぇ奪いたがりのクジラさん。貴方には信じあえる人と戦う気持ちが分かりますか?」
 わかることができたら素敵なのにな……。
 そう言う冬青は真の姿に。一瞬浮かべた笑みは父のものに似ていた。
「はあっ!」
 音速で飛翔し社永守乃勇魚の胴めがけ花髑髏を振るえば、両胸ビレへと渾身の衝撃波が駆ける。注連縄を裂き、敵の五指を砕く一撃。
『ぐう……ッ』
 びくりとコンキスタドールの動きが止まる。
 様子を確りと視認したシリンは、今や褐色の肌と、額の中央に第三の目が開く真の姿となっていた。月光のような冴え冴えとした感覚を纏うシリン。
 ぶれなく固定された精霊猟銃を通し、敵へ直に銃口を突きつけている感じさえした。
「針の穴だって、通して見せる」
 ホークアイ・スナイプを発動しての超精密射撃。
 ミリ単位もズレない弾着による連射が、銅鏡を穿ち、貫き破壊した。
『アアアァァアアア!!??』
 おぞましき叫びと――内包した世界が爆発するかの如き衝撃、その前触れを間近で感じた結希が降下速度に乗り『with』を叩きつけた。
「ねのかたすくに……てどんなとこなん?」
 振り抜く。
「でも、この島よりは素敵やなさそうですねっ」
『――!!』
 バキバキバキッと敵の岩胴に罅が走り、叫ぶ社永守乃勇魚が空を震わせつつ――瓦解した。


 猟兵の手から離れたメガリスが降りてくる。
「わっ、あなたさっきの!」
「ほとほと」
 驚きの声をあげた結希だが、シリンがそう呼んだことにより、花開くような笑みを浮かべた。
「ほとほと? 可愛い名前だね!」
 差し出したシリンの腕へと降りたほとほとは、頭を傾げ、元に戻し、という動作を二度ほど。
『アリガトウゴザイマシタ』
 そう礼を言った。
「ほとほと。私たちと一緒に来ませんか?」
 意志あるメガリスへそう声掛けるのはシリンだ。確保するのは容易い、けれども既に猟兵たちのなかでほとほとは一個人であるのだろう。
「大丈夫、私達は死にませんから」
「ほとほと……悲しい以外も知る為に、もう寂しくない様に、皆と一緒に……行きましょう」
 喜怒哀楽。たくさんの色がある。瑠碧の言葉にほとほとは猟兵一人一人を見た。
『在りし日の眸、では無し』
 ほとほとを探し見つけた「誰か」の眸の輝きとは違う、猟兵たちの輝き。
 それを認めたほとほとは、あいわかった、と頷いた。
「ふむ。祈り、破魔、結界術や耐性の力を備えているみたいだネ」
 電脳ゴーグルでほとほとを分析していたアヤネが言った。
 ほとほとは何かが気になるのか、落ち着きなくぴょんぴょんと猟兵たちの腕や肩を渡る。
「あ。もしかしてお花かな? お花集めるなら、お手伝いするよっ」
『しかり、しかり』
 結希の言葉に再び頷くほとほと。
「お花摘みなら、根と一緒のがよくない?」
 ノネが言う。生きてるそのままに採取すれば、そのうち球根や種となる。
「そういえば、花畑みたいな場所を見つけてましたね」
 冬青が見つけていた猟兵へと案内を頼みつつ、植物採取組と一緒に歩き出す。
 保護したその先で育てれば、きっとほとほとの祈りの心ももっと育つだろう。
「にんにん」
 と、皆の歩きやすい場所を探しつつ先行するはかごめだ。
 ここで待ちますねと見送る猟兵もいて、そちらは帰路の確保へ。
 侵食する根之堅洲國が祓われ、島はいつもの光景となっていた。
 穏やかな海原。
(「……躯の海へ還ったら、ただ穏やかに泳ぎ、眠れますように」)
 社永守乃勇魚へと瑠碧は祈る。


『メガリス』の確保。
 保護した猟兵たちは、その後も、時折ほとほとの様子を見に行ったりしたのだとか。
 秘めた意志、永遠にあなたのもの。
 そんな花言葉を持つ杜鵑草が少しずつ増えた場に、ほとほとの輪廻を促す啼き声が渡っている。
『つつがなき、旅路を』
 去る猟兵への祈り。
 ほとほとは別れではなく、見送る言の葉を紡ぎ続けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年06月21日


挿絵イラスト