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綺羅星の輝きは地に堕ちて…?

#ヒーローズアース #戦後

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#戦後


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● 光あれば闇がある。
「くそっ! なんて時代だ…!」
 深夜、映画の都の片隅で、一人の映画監督が呻いていた。
 昨年のアースクライシス集結以降、彼は何作もの映画のメガホンを取っていた。強いヒーロー、美しいヒロイン。人々の夢と希望を胸に、現代の英雄たちが巨悪を倒す…そんな物語〈フィルム〉を何本も、何本も。それらは興行的にもそれなりに成功していたし、雑誌やネットの評価だって決して悪くはない。そんな彼が、何故に深夜に唸っているのかといえば…。
「・・・俺は、闇堕ちしたヒーローが見たいんだ…!」
 ヒーローが苦しむ姿が見たい。ヒロインが悩む姿を撮りたい。
 明るく楽しいだけの娯楽作品では無く、ドロドロに泥臭く苦悩する英雄を撮りたい…!
 ああ、できるなら虚構の中で、あの綺羅星のような猟兵を苦しめたい…!
 映画監督は、己の欲望に苛まれ、悶々とした表情で脚本と格闘していた…。

● 光に焦がれ、闇に惹かれ。
「―――キミたちには、映画を撮影してほしいんだ」
 集まった猟兵たちを前にして、アストリッド・サンドバック(不思議の国の星占い師・f27581)は端的に切り出した。
「舞台はヒーローズアース。文字通り、ヒーローとヴィランが戦いを繰り広げていた世界だ。…もっとも、昨年のアースクライシス以降は情勢も少し落ち着いてきているようだけれど…」
 アストリッドは、一冊の台本を取り出した。
「ヒーローズアース世界では、戦後、『イェーガームービー社』という映画会社が設立されてね。猟兵〈イェーガー〉の活躍を映画として後世に語り継ごうという名目で設立された会社だ。今回はその会社からの依頼、という形になるね」

 一頁、台本を捲って概要を続けていく。
「今回の映画の目玉〈コンセプト〉は―――『闇』と『苦悩』だそうだ」

 脚本の概要は、こうだ。
 人々が『英雄』〈ヒーロー〉と呼ぶ猟兵たちが、ある日、突然に闇の力に呑みこまれてしまう。猟兵は守るべき市民に刃を向け、街を破壊し、人々の生活を踏みにじってしまう。
 だが、それは悪役〈ヴィラン〉の恐るべき策略『全ヒーロー闇堕ち化計画』による物だったのだ―――己を浸蝕する闇に抗いながら、裏で糸を引く悪を探し、打倒しなくてはならない―――!

「もちろん、『この物語はフィクションです』 キミたち猟兵が心から信頼される存在であるからこそ、こうしたフィクションも撮れるようになったという訳さ」
 『マルチバース構想』・・・複数の映画やコミックの世界が『平行世界』である、とする一連の企画である。この映画の世界は、つまり猟兵たちが『闇に飲まれた可能性』の平行世界を描くものになるらしい。映画のレーティングは全年齢とのことで過度な暴力シーン等はNGだが、猟兵が『悪』となる展開は人々にも新鮮に映るだろう。

「ああ、もちろんアクションシーンは安全に配慮して行ってくれよ? 迫力を出すためにユーベルコードを使ってくれても構わないが、あくまで撮影に参加するスタントマンは生身の人間だ。キミたちは『悪を演じる』のであって、『悪になる』のではないからね…」
 火薬もナパームも潤沢だし、CG合成も特撮も使える。―――だから、安全第一に。
 そう言い添えると、アストリッドは微笑んだ。

「キミたちは闇に飲まれ、しかし、最後には正義や優しさを取り戻し―――再びヒーローとして舞い戻る。そういう筋書き〈ストーリー〉だ。忘れないでくれ、キミたちは悩み苦しんでも、最後にはヒーローとして人々を守るんだ―――少なくとも、ヒーローズアースの人々はそう信じているのだからね」

 アストリッドのグリモアが輝いて、猟兵たちを送り出す。
 良い映画になるといいね。そう小さな願いが、虚空に溶けて消えた。


骨ヶ原千寿
 初投稿です。コツガハラと申します。
 初球から微妙に変化球です。

 第一章では、闇堕ちしてしまった猟兵さんを描きます。
 闇堕ちの度合いはご自由に、抗うのもヒャッハーするのも自由です。
 ただ、この映画は全年齢向けですので、過度な暴力シーン等は編集されます。
 カメラワークだったり演出だったり、ふんわりとなります。ご了承ください。

 第二章は、スタントマン相手の集団戦になります。
 オープニングでお伝えしたように、安全面に配慮されたアクションシーンです。
 ユーベルコードの使用は歓迎ですが、なんやかんやして安全に撮影されます。

 第三章はボス戦、という名の悪役との対決シーンです。
 猟兵たちを闇に堕としたヴィラン(という設定、中身は俳優さん)です。
 二章よりはアクションが多分派手になります。

 なお、2020年になり『フォーティナイナーズ』以外の猟兵さんも知名度が上がりファンがつくなどして、猟兵が撮影に訪れれば誰もがスター待遇で歓迎されるようになってきました。つまり、登場すれば黄色い声が上がり、ユーベルコードを使えば観客から歓声が上がります。誰もががヒーローで、英雄です。

 手探りながら、頑張って書かせていただきます。よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『主人公は闇墜ちヒーロー!?』

POW   :    シンプルなパワーにより悪道暴虐を尽くす!

SPD   :    鍛えあげられた技術は、誰にも止められない…

WIZ   :    策略、陰謀、その叡智を以て裏社会に暗躍する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ミネルバ・アレキサンドリア
アドリブ歓迎
映画.....!.ついにわたくしも銀幕デビューを飾る時が来ましたのね。あら、闇墜ち?いいでしょう。わたくしの華麗なる『悪役令嬢』の演技を見せてさしあげますの。

■演技の内容 ギャンブルの闇に飲まれる
早朝から優雅に開店前のパチンコ屋に並び、華麗に有り金を全部すります。
「ちょっと、出ませんわよ!こんなのインチキですの!」
エレガントにパチンコ台に殴る蹴るの暴行を加え、店からつまみだされます。
そして、腹いせに巨大ドラゴンと化し、ビルをぶん投げたり火を吐いたりして破壊の限りを尽くしましょう!(ジオラマかCGでよろしくですの)
シメにガスタンクを爆破して歓喜。
「オーホホホ!綺麗な花火ですの!」



「映画.....! ついにわたくしも銀幕デビューを飾る時が来ましたのね」
 ミネルバ・アレキサンドリア(自称「聖なる薔薇」のポンコツドラゴン・f17280)は、ウキウキしながら撮影現場に入った。楽屋に通されると、衣装係やメイクアップアーティストが彼女をテキパキと、しかし一層美しく演出していく。ミネルバは台本に目を通すと、「あら?」と呟いた。
「闇墜ち? いいでしょう。わたくしの華麗なる『悪役令嬢』の演技を見せてさしあげますの」

「―――ちょっと、出ませんわよ! こんなのインチキですの!」
 突然、怒号が響いた。
 視点〈カメラ〉は街中から、とある遊戯施設へと切り替わる。
 その遊戯場…客の射幸心を煽る遊戯機器が設置してある…で、彼女は早朝から優雅に行列に並び、これは!と自身がビビッと来た台の前に陣取って座った後、見事華麗に有り金全てをすっていたのだった。
 ミネルバ・アレキサンドリア、21歳。ギャンブル狂いの浪費家であった。
 淑女然とした表情を憤怒に歪め、遣る方無い不満を台にぶつけていた。・・・設定5以上は確実だった筈ですのに!わたくしが座ってから裏で設定を変えましたのね!そうに決まっているのですわ!
 台をバンバン叩き、極めてエレガントに殴る蹴るの暴行を加えた後、ミネルバは無事に店内から摘まみだされた。残念ながら当然である。

 ―――ここまでは普通?の光景であった。
 しかし、路面に放り出され、ゆらりと立ち上がったミネルバの表情には暗い笑みが浮かんでいた。
 瞬間、その姿は漆黒の闇に包まれる。
 その闇が消え失せた時、其処に在ったのは巨大な足。鱗で覆われた足には巨大な爪が備わっており、それは路面のアスファルトを貫いて大地を揺らした。
 視点が上を向けば、そこには現れたのは巨大な白銀のドラゴンだ。彼女は怒りによって悪竜と化し、怒りのままに街を壊し始めたのである―――!

 特撮技術の粋によって作られたジオラマの街を、【銀竜激怒(レイジング・ドラゴン)】によって姿を変じたミネルバが蹂躙していく。ビルを壊し、それをブン投げて更なる破壊をもたらす。その姿は正に暴虐そのものだ。
 足元には大勢の人々が逃げ惑っている。ミネルバは、それを気にも留めていない。
 歩く時に蟻を気にする人間がいるだろうか? 巨竜は無造作に踏んで進む。
 ―――ああ、頭にきた。この怒り、どうしてくれよう。
 憤怒は紅蓮の炎となった。吐き出せば、一面が火の海となる。
 街を燃やす炎はガスタンクに誘爆し、巨大な火柱があがった。

「オーホホホ! 綺麗な花火ですの!」
 燃え尽きていく街を眺めて、ミネルバは歓喜に酔いしれる。
 そこに居たのは英雄〈ヒーロー〉では無く…ただ己の感情のままに暴れ狂う災厄であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

政木・朱鞠
「力を持つ者の責任だなんてお説教ばかりでうんざりなの!貰った力なんだから私の自由でしょ!」
WIZで行動
闇に堕ちるヒーローか…一般人には手を出さないけど、スーパーパワーを街燈とか大型のダストボックスを破壊する事に使っちゃうチンピラ系の下っ端の感じで行こうかな。
度が過ぎて何らかのしっぺ返しを食らって「おぼえてろ!」みたいな捨て台詞を残して退場…あわよくば思わぬ攻撃で気絶のお芝居で一旦リタイア状態が理想かな。

感覚共有した『忍法・繰り飯綱』を放ち【追跡】や【情報収集】で退場後の周囲を探っておこうかな。
出来れば監督の状況も解かれば良いんだけど、無理に深掘りしないように注意しないとね。

アドリブも連携もOK



 視点〈シーン〉は切り替わる。

 別の街だ。街灯は無造作に折れ、ダストボックスは弾き飛ばされてゴミを撒き散らしている。
 そこにあった筈の秩序を無秩序に変えて、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は笑っていた。これは退屈しのぎだ。一般市民に手を出す気は無かったけれど、どうにもむしゃくしゃしてイライラする。ガン!と路傍の消火栓を蹴り飛ばせば、噴水のように水が勢いよく吹き出して、中空に小さな虹ができる。それが愉快でたまらない。笑いながら朱鞠は歩みを進める。

「・・・止まれ! 手を挙げろ!」
 市民からの通報を受けたのか、サイレンを鳴らしながら警察車両が急行する。
 その数、2台…3台。気付けば、前後を挟まれている。ち、と朱鞠が舌を打てば、正面に見えるのは自動拳銃を構えた警官だ。側面に配置した警官は油断なくポンプアクションの散弾銃を向けている。手際が早く、なにより対応が剣呑だ。同士撃ち〈フレンドリーファイア〉を避けるように展開された銃口が、朱鞠に狙いを定めていた。

「なんでだよ…。なんで、アンタは英雄〈ヒーロー〉だろ…。その力で、みんなを守るんじゃないのかよ…!」
 その声に、朱鞠は苛ついて答える。
「力を持つ者の責任だなんて、お説教ばかりでうんざりなの! 貰った力なんだから私の自由でしょ!」
 言葉と同時に、子狐めいた分霊が召喚された。分霊は朱鞠の感情の高まりに呼応するようにして、警官たちに突撃していく。
 正面に停まっていた車両が跳ね飛ばされた。遅れて、爆発炎上する。

「―――う、撃てッ! アレはもう英雄〈ヒーロー〉じゃ無いッ! 『敵』だッ!!!」
 悲愴な叫びと共に、銃声が上がる。
 かつて英雄と呼ばれたモノに向けて、銃弾が飛んでいく。

 朱鞠は嘲るような笑顔を浮かべて、ひらり軽やかに跳躍する。一瞬で彼我の距離を詰め、疾風の如くに警官たちを吹き飛ばす。ニンジャと呼ばれる神秘的な集団…その次期頭主と期待されていた彼女の実力は、銃器を持った警察など物の数では無い。今まで一般市民に被害が出ていなかったのは、ただの彼女の気まぐれで…その気になっていれば、被害はこんなものではなかっただろう。

 ―――そう、それは気まぐれ。あるいは、油断。
 血を流して倒れ伏した若い警官が、それでも必死に向けた銃口が朱鞠を捉える。
 銃声と飛び退るのは同時。一瞬、灼ける様な痛みが肩を走って、見遣れば僅かに銃弾が掠めていた。
「―――ふん! おぼえてなさいよ!」
 予想外の一撃を喰らったことに憤慨したのか、朱鞠はそう言い捨てると飛び上がった。街並みを風のように走り去り、姿を消していく。後に残されたのは、うめき声をあげて倒れる警察官たちと、破壊された車両だった。


「・・・はい、カット! お疲れさまでしたー!」

 クラッパーボードの音で、世界が元に戻る。

 血を流して倒れていた警官…に扮していた俳優は立ち上がり、朱鞠に笑いかける。あとでCG合成するのはどの部分だ? 銃は撮影用だが、中々に迫力があるだろ。いやあ大した身のこなしだぜ、猟兵じゃなくてコッチの業界の方が向いてるんじゃないか?

 軽口と冗談が飛び交う撮影現場で、朱鞠は少し困ったような表情になっていた。
 分霊にこっそり探らせた周囲は、和気藹々と活気のある撮影現場だ。特に不審な点は見られない。強いて言うなら…ブツブツと独り言を呟きながら危ない目つきになっている監督が一人いるだけだ。
「ああ…良い…。闇に呑まれたセクシー女ニンジャ…実に良い…!」
 恍惚の表情を浮かべる監督の姿に、これは無理に探らない方が良いだろうか…と一抹の不安を感じた朱鞠であった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

デュラン・ダグラス
【アドリブ・絡み・協力OK】

闇堕ちねェ…いや思うトコがねェわけじゃないが(元ヴィランなんで)
でもま、娯楽は大事だし、そーゆー展開に燃えるってのもわかるんでな。
出来る限りやってやるさ。

【SPD】

闇堕ち状態なら見た目もわかりやすくしてェな。
こう、頭抱えながら闇に飲まれて…体の所々にバラとかの植物みてェなトゲ生えたり蔦巻き付いた状態にでも(バイオモンスターらしく)変形してみる。

で、ユーベルCで翼生やして、吠えながら飛び回って。
周囲のものなぎ倒したり吹き飛ばす、そんなワルさをしてみるぜ。

あっ、ちゃんと撮影専用の場所だよな?
なるべくなら壊したくねェが、できれば壊れても問題ないとかそういうのだと嬉しいぜ。



「これだよ…。こういうのが撮りたかったんだよ…!」
 うっとり、と形容するしかない表情を浮かべて、映画監督は現場に檄を飛ばす。
 目の前には、これから無残に破壊される街並みのセットがある訳だが、それを眺める監督の眼は熱情にあふれていた。

(思うトコがねェわけじゃないが―――)
 デュラン・ダグラス(Dracaena Dragon・f16745)は、その監督の様子を伺いながら、内心で思う。
 元ヴィランであるデュランにとって、『闇堕ち】を娯楽として扱われるのは、複雑な心境だ。
 彼は深い闇の世界を知っている。昼の光に満ちた世界からは想像もできない、深く暗い闇の底を知っているのだ。それを、娯楽目的の映画として描かれるというのは…素直に笑って頷けない部分があるのであった。
 しかし、デュランは紛れもなく英雄〈ヒーロー〉であった。少なくとも、自分の思いを秘めて演技できるだけの自制心があった。娯楽は必要だし、そーゆー展開に燃えるのもわかる。己の過去も感傷も、ぐっと呑み込んで「―――出来る限り、やってやるさ」と撮影現場に進んでいった。


 ・・・見た目、というのは大事である。
 バイオモンスターやミュータントヒーローといった者たちには、かつて異形ゆえに排斥された歴史がある。
 異形、異質。そういった要素は、確かに集団社会において「我々とは違う」という恐れを呼び起こすものなのだ。

 今、デュランは文字通りのモンスターと化していた。
 謎の闇に包まれ、頭を抱える。口から洩れるのは苦悶。闇がその身に浸み込むほどに、体の所々に薔薇のような棘が生え、蔦が巻き付いていく。
 その姿は人型だが、植物めいていて、かつ異世界の竜にも似ていた。異形、異質―――怪物〈モンスター〉。
 バサリ、とその背に大きな葉の翼が生えてくる。羽ばたけば、ジェットエネルギーが吹き荒れ、気流を生みだす。

 ―――デュランは空を飛んだ。咆哮が街を震えさせる。風圧が街路樹をなぎ倒し、あらゆる物を吹き飛ばしていく。
 この街並みは壊していいモノだ。遠慮はいらない。楽しく飛ぼう。そう、自由に飛べばいい…!
 デュランは闇に堕ちた心で、空を駆けた。大事にしていた筈の想いを忘れ、かつてヴィランであった頃のように唸り声をあげる。
 眼下の街では、突風に人々が飛ばされていく。泣く子供の声が響いている。
 
 別の場面〈シーン〉、臨時のテレビニュースが差し挟まる。
 アナウンサーが切迫した表情で、各地で起きている事件を報道する。

 街を燃やし尽くした白銀竜、警官隊を壊滅させた女ニンジャ。
 そして―――空を飛ぶ植物竜人の映像。それは誰もが猟兵〈イェーガー〉として名を知られていた人物ばかりで―――人々は、現実を信じられないままに絶望していく。
 世界は、闇に堕ちて、混沌に呑まれていく―――。

成功 🔵​🔵​🔴​

不破・明憲(サポート)
●どのような依頼でも全力を尽くすのみですね。さあ、頑張りましょう。

●私は相手に何らかの形で触れることができれば「医術」を活かした「早業」で弱点を「見切り」、「鎧無視攻撃」を行使することが可能です。たとえそれがヒトの形をしていなくとも、「世界知識」の引き出しから弱点の判断を行います。防御行動は相手の攻撃を「見切り」、そして「早業」でもって行います。

●使うUCはその時の相手によりますが、基本は【触震】での強烈な一撃か、【クロクアップスピード】による翻弄作戦がメイン。あまりにも巨大であれば【ドルザ召喚】を使って戦いましょう。その時はドルザの近くで「空中浮遊」を用いて指示を出しましょう



 ・・・溶明〈フェードイン〉

 視点〈カメラ〉は、重苦しい雰囲気の室内を映し出す。
 円卓を囲んだ面々は、厳しい顔つきの政治家、軍人、官僚―――この国の中枢と言っていい。複数設置されたモニターには、現在の様子がリアルタイムで表示されていた。
 判っていることは唯一つ…。…状況は極めて悪い。

 英雄〈ヒーロー〉が、悪〈ヴィラン〉になる。
 そして、市民を襲っている。

 その信じがたい状況に、軍は、警察は、彼ら自身の責任を全うした――各地の部隊が通信途絶。国内の主要な基地は壊滅。逆立ちしても勝てない『超人』に対して、ただの『人間』たちは文字通りの死力を尽くして…誇りを胸に倒れていった。

「何故、このような事が―――」
 枯れ果てたような声色で、老齢の政治家が唸る。
 ・・・最悪、大西洋に潜行している『潜水艦』から、国内の主要都市にむけて『ミサイル』を撃たねばならない。その可能性すら検討に入っていた。いや、都市ごと焼き払ったとしても、彼ら『猟兵』を打倒できるのかは不明だが…彼らを亡ぼすには、黙示録の炎でさえ火力が足りない…。

「―――理由を知りたいですか。みなさん」
 穏やかな、声がした。
 部屋の入口から、こつん、こつんと歩みを進めたのは白覆面と白装束の男。鍛え上げられた肉体に高身長。武と医を極めたスペシャリスト。その姿は、この部屋に集った誰もが知っていた。

「ドクターノーフェイス…!」
「・・・全ヒーロー闇堕ち化計画…だそうです。手段は不明ですが…謎の『闇』に包まれると、英雄〈ヒーロー〉は暗転し、反転し悪〈ヴィラン〉になるそうです」
 白い英雄は、極めて穏やかに言葉を継いだ。
 不自然なほどに―――穏やかに。

「ま、待て。ドクターノーフェイス、君は…どっちだ。英雄か? それとも…」
 武官が立ち上がる。懐に手を入れ、拳銃を抜く。
 その様子を、ドクターノーフェイスは穏やかな笑顔で見ていた。

「さあ―――どちらだと思いますか、みなさん」
 彼の表情は、穏やかに笑ったまま―――暗転〈ブラックアウト〉

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『アーミーメン』

POW   :    アーミースタンバトン
【伸縮する警棒型スタンガン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ラバーミューテーション
自身の身体部位ひとつを【伸縮自在のゴム】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    プロトデバイス
自身の装備武器に【アメリカ陸軍が開発した試作強化装置】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:赤信号

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


  ・・・もはや秩序は失われた。
 このままでは悪が勝利し、世界は闇に呑まれる。

「―――それでも、抗うというのか。猟兵〈イェーガー〉」


―――――――――――――――――――――――――――
(章途中の参加歓迎です。
 ご自由にバトルアクションしたり悩んだり苦しんでください。
 可能な限り拾って演出させていただきます)
デュラン・ダグラス
ヴィラン捕縛だので加減は慣れてるが、あれ基準にするワケにゃいかんな。
もっと加減して…でも派手なトコねェと多分楽しんでもらえねェな。

【SPD】

体を変形させた蔦を複数使って薙ぎ払うように攻撃する。
スタントマン相手には、棘無しの蔦で足元の地面とか手前狙って、吹っ飛んだふりしてもらいたい。
で、その周囲の虚空を、棘ありの蔦で薙いでおく。

その後、蔦で縛って引き寄せたスタントマンに、ユーベルCで食らいつこう…として、その狙いがずれて、地面なりに食らいつく。

対人戦で、途中で闇堕ちに抗いはじめた、って演出のつもりだ。
ヒーローってのは、人を守るモンだと思ってるからな。
人を本気で傷つけそうになったら、抗いもするさ。



 屋外に設営された撮影現場は熱気に包まれていた。
 スーツアクターやスタントマンが出番を待ち、危険物取扱技師が火薬を入念にセッティングする。慌ただしくあるが、決して浮ついた雰囲気ではない。ピリピリとした緊張感と熱が現場に満ちていた。

(・・・もっと加減して…でも派手なトコねェと多分楽しんでもらえねェな…)
 動きを打ち合わせながら、デュラン・ダグラス(Dracaena Dragon・f16745)は内心で独りごちる。悪人〈ヴィラン〉を相手にした『捕り物』には慣れているが、それと同じにはいかないだろう…。…今回の相手は、ブッ飛ばしてお縄につければいい悪人ではなく、あくまで映画に出演するスタントマンである。猟兵の全力をぶつけてはいけない。しかし、映像に迫力は出さねばならない。中々に難しい注文であった。

 ―――撮影開始〈アクション〉

 デュランは雄叫びを挙げた。大音声が瓦礫に埋もれた市街地に鳴り響く。
 視点〈カメラ〉がデュランの動きに追従する―――彼の体表を覆う緑蔦の蠢き、重量感のある巨体の躍動。彼が一歩踏み出す毎に画面は僅かに揺れ、脅威が近づいてくる迫力を臨場感として伝える。闇に堕ちてしまった猟兵が、絶望を引き連れて襲来する。
 ふと、デュランは何かに気づいたように足を止め、その金の瞳を細めた。周囲には複数の人影。暴走する彼を止めるべく立ち塞がった者たち…演じているのは熟練のスタントマン…が、無謀にもデュランに戦いを挑む。そして、鎧袖一触とばかりに蹴散らされる…そういう場面〈シーン〉だ。

 殺陣の打ち合わせは綿密に行われていた。周囲のスタントマンの動きに合わせて、デュランは己の身体を変化させる。
 動きは二つだ。一つは、棘の無い蔦によるもの。デュランの咆哮と共に、伸びた蔦が足元の地面を薙ぎ払う。同時、スタントマンがタイミングを合わせ、まるで直撃を受けたかのように吹き飛ぶ。
 無論、演技である。しかし、お互いの呼吸ををぴったり合わせることにより、デュランの圧倒的なパワーに為す術もなく吹き飛ばされたと、そのように見えるだろう。
 動きはもう一つ。デュランが作り出した棘有りの蔦が、周囲を虚空を薙ぎ払った。その勢いに砂塵が舞い、散乱した瓦礫が風圧で飛ばされる。当たればとても無事では済まない。その威力は、画面に強い説得力を与えていた。

 ・・・そして、デュランは倒れたスタントマンを追撃する。
 蔦が瞬時に伸び、その体を縛り上げる。ずるずると引き寄せられれば、目の前に迫るのはデュランの顔だ。竜の金の瞳が、じろりと捕らわれた獲物を眺める。
 数瞬前まで肩であったはずの部位が、悍ましい音を立てて変形。竜の頭部が二つに増える。倍の数に増えた目と顎が、哀れな被害者に迫る。
 そして、竜の顎が大きく開かれた。顎に並んでいるのは、ナイフの如くに鋭い歯だ。その噛みつきを、貪り喰らわんとする一撃を避けることは叶わない。もはやこれまで、と捕らわれた者は観念するかのようにぎゅっと瞳を閉じて―――。
 ―――そして、致命の瞬間が訪れることは終に無かった。

「ぐ、ぐぅぅぅ…っ!?」
 苦しむ声が、二つの頭部から発せられた。噛みつき攻撃は狙いを逸れ、デュランは自らの足元の地面を、虚空を噛む。
 それは、不自然な動きだった。振りかぶった刀の斬撃を、無理矢理に途中で軌道変更するかのような不自然さ。行き場を失った力がデュランの体内で暴走し、内側の筋が捻じれて悲鳴を上げる。
 しかし、それでも。デュランは蔦の拘束を解き放つと、己の頭部を掻き毟った。肩口に生えた第二の頭部は崩れて戻り、彼は本来の己の頭を抱えて呻き声を出す。苦しんでいるかのように、抗っているかのように。

『ヒーローってのは、人を守るモンだと思ってるからな』
 撮影開始前に、演出家や脚本担当と話し合った内容が脳内にフラッシュバックする。
『・・・人を本気で傷つけそうになったら、抗いもするさ』

 デュランが振り乱す頭部から、黒い靄のようなモノが染み出してくる。
 それは、英雄〈ヒーロー〉を洗脳していた謎の闇。心を侵し、悪へと走らせていた元凶そのもの。
 ―――デュランは絶叫をあげた。己の心を、誇りを、汚されてなるものかとばかりに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜井・乃愛(サポート)
 桜の精のパーラーメイド×咎人殺しの女です。
 普段の口調は「元気(私、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、偉い人には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格は明るく天真爛漫で、少し天然ボケな感じの少女。
一番好きな花は桜で、その他の植物も好き。
強敵にも怖気づく事は少なく、果敢に挑む。
人と話す事も好きなので、アドリブ歓迎。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 ・・・英雄〈ヒーロー〉は、猟兵〈イェーガー〉は、まだ負けていない。
 闇を振り払い、正気を取り戻す者。己の闇を否定せず、更なる光で上書く者。その本性が闇であるまま、必要悪として立ち上がる者―――その在り方は、人それぞれだった。共通していたのは、誰もが膝を屈したままではいなかった、という点だ。この状況を良しとせず、世界が闇に呑まれることを是としていなかった。その抵抗の意を示すため、少しずつではあるが反攻の芽が出てきていた。

 場面転換〈トランジション〉

 市街地に、銃撃の嵐が吹き荒れる。桜井・乃愛(桜花剣舞・f23024)は、鉄火場の最前線に居た。此処が私の出番だ、とばかりに軽機関銃を構えると、前方へと制圧射撃を見舞う。遮蔽物から身を乗り出して、視界に入った標的に向けてトリガーを引く。

 ―――無論、殺傷力のある実弾では無い。が、塩化チタンの煙もセメント爆弾も大盤振る舞いである。さながら本物の銃撃戦の最中のように、用意されたセットの各所から爆発煙が立ち上る。焦げるような匂いが周囲に漂っていた。
 乃愛は桜色の着物の袖を翻し、大胆にマントをはためかせる。桜の花弁を舞い散らし、人々の先頭に立って反攻作戦を開始した。

「―――もう私の攻撃からは逃れられないわよ!」
 軽機関銃『ブルーミング・ファイア』から撃ち出された弾丸が、未だ闇に囚われ、市街地を壊していたヒーローを撃ち抜いていく。ヒーローたちがもんどり打って倒れると、その身体から黒い靄が漏れ出てきて霧散する。すると、ヒーローたちは正気に戻り、呆然とした後で立ち上がった。己の役目を思い出し、戦いに身を投じるために再び立ち上がっていくのだ。

 乃愛は怖気づくことなく、己の愛銃と共に突撃していく。ドライアイスで作られた煙を掻き分けて、果敢にも前に進む。発泡スチロールに塗装をした瓦礫を踏みしめ、レフ板の反射光を浴びて燦然と。
 その姿は、人々が待ち望んでいた希望そのもの。闇の中にあり、それでもなお輝く希望の星〈スタァ〉 銀幕の彼方から此方側へ助けにきてくれる存在。
 反抗の狼煙は各地で立ち上がり、徐々に闇を払っていくのだった―――!

成功 🔵​🔵​🔴​

ミネルバ・アレキサンドリア
アドリブ歓迎
ふう。お芝居とはいえ破壊活動は楽しいですわね。さて、今度は役者さんと殺陣をすればよろしいのですわね。

槍は手加減が難しいのでアレキサンドリア流格闘術(我流)でお相手いたしましょう!(荒ぶる鷹のポーズ)

最初はわざと攻撃を受けてあげましょう。その方がいいカットが撮れるでしょう。
「くっ......電撃!ここは水を奥義の出番ですの!」

アレキサンドリア流「水」の奥義はある時は滝の如く激しく攻め、またある時は小川のせせらぎのように緩やかに敵を受け流す奥義ですの(解説のテロップ)。

チョップや尻尾のテールスイングで交戦し、隙を見て空高くジャンプ!アレキサンドリア流水の奥義!飛翔銀麗!(テロップ)



「―――ふう。お芝居とはいえ破壊活動は楽しいですわね」
 竜の姿から戻ったミネルバ・アレキサンドリア(自称「聖なる薔薇」のポンコツドラゴン・f17280)はまんざらでもなさそうに呟いた。精巧に作られた模型の街を、怪獣映画の如くに破壊できる機会など中々あるものではない。

 次のシーンは役者との殺陣のシーンである。竜形態のままでは一方的な蹂躙になってしまうし、ミネルバの持つ魔槍(不確定名:魔王殺しの聖槍?)では手加減が難しい。相談の末、アクションシーンは徒手空拳で、という形に落ち着いた。

「アレキサンドリア流格闘術でお相手いたしましょう!」
 場所は、採石場めいた空き地である。ミネルバは周囲を囲まれながら構えをとった。両手を外側に掲げ、翼を広げた鷹を思わせる構え。前方を制圧する攻撃的な構えだ。
 じり、と互いの距離が狭まる。先に仕掛けたのは、スーツアクター扮する敵役だ。手に持った警棒をコンパクトに振りかぶると、一足を踏み込むと同時、ミネルバの胴に横打ちを見舞った。
 ミネルバは掲げていた両手を振り降ろすと、警棒を巻き落とすようにしてカウンターを狙い…そして、警棒が腕に触れた瞬間に、びくりと体を震わせて後方に飛び退った。

「くっ......電撃!」
 設定では、敵の武器は警棒型スタンガンということになっている。撮影後、電撃がバチバチと鳴っているようなエフェクトが後付けされる筈だ。
 スーツアクターはミネルバを挑発するように警棒を横に振ると、再び中段に構えて見せた。
「・・・ここは水の奥義の出番ですの!」
 電撃に腕を痺れさせながら、ミネルバはゆっくりと構えを変えた。水の構え…掲げていた腕を水平に降ろし、左右の手を凪いだ水面のように相手へと差し向ける。
 (アレキサンドリア流「水」の奥義はある時は滝の如く激しく攻め、またある時は小川のせせらぎのように緩やかに敵を受け流す奥義ですの―――DVD版・副音声オーディオコメンタリーより)

 その水の構えは、再び振りかざされた警棒の一撃を難無く受け止める。電撃があると判っていれば、警棒に触れることなく手首を押さえればよいだけのこと。穏やかな湖面の如くに攻撃を止めたミネルバは、激流の如くに攻撃へと転じる。正面の相手へと鋭く繰り出したのは手刀、背後から襲い来た敵には尻尾による強烈なスイングを見舞う。
 反撃に狼狽えた相手の隙を見逃さず、ミネルバは宙へと飛んだ。

「―――アレキサンドリア流格闘術・水の奥義! 飛翔銀麗!」
 (テロップ:飛翔銀麗(フライング・クロスチョップ) 腕を十字に組んだ構えから繰り出される交差手刀、恐るべき必殺技である!)

 デン!デン!デン!と1〜3カメラがカットを切り替え、残心を取ったミネルバの姿を大写しにする。その背後では、必殺技の直撃を受けた敵が断末魔を挙げ、よろめいた後に爆発! ナパームによる派手な爆発炎が、採石場を明るく照らし出した!

成功 🔵​🔵​🔴​

政木・朱鞠
SPDで行動
監督のあの表情からこれはただの広報活動のオファーでは無い気がするけど、現時点ではまだ情報としては予想の範囲を越えないと思うからこのまま演技は続行するね。
臆病に思われるかもしれないけど、不測の事態を予想して行動しないとね。
慎重に動くところと大胆に動くところはしっかり判断するよう心掛けたいかな…。

ニンジャなのに忍んでいないじゃん…って言われそうだけど、舌出しウインクの【挑発】からユーベルコード『柳風歩』の回避と【フェイント】で行動を緩めて隙をついて打咎鞭『九尾〆下帯』で絡め取る演技をしようかな。
もちろん、スタントマンさんの体に跡が残らない様に拘束するようにしたいね。

アドリブも連携もOK



 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は注意深く周囲を伺っていた。撮影はクライマックスに近づいていき、制作陣の働きにも熱が入っている。道具係が慌ただしく機材を抱えて駆けていき、助監督が撮影班に画角の細かい指示を飛ばしていく。進行は滞りなく、もうすぐ朱鞠にも次の出番が来るのだが…。

(監督のあの表情…!)
 朱鞠は、映画監督の表情を思い出す。興奮のあまり血走った目、周囲に伝染していく熱意、撮れた画を確認して「ああ…最高だ…!」と陶酔して体を震わせる。そう、撮影が開始してからというもの、映画監督は気持ちが高まりすぎて卒倒するではないかと心配されるくらいに、異常なまでにギラギラと情熱を燃やしていた。

(現時点ではまだ情報としては予想の範囲を越えない…けれど…)
 朱鞠は表面上平静を装いながらも思案する。ひょっとしたら、この映画撮影は単なる猟兵の活躍を広報する活動のオファーでは無いのかもしれない。監督がオブリビオンに魅入られ、あるいは裏で支配されるなどして異常な行動をとっているのではないか…? そうであるならば、『猟兵が闇に堕ち、世界の敵となる』なんて奇抜な脚本にも説明がついてしまう。
 朱鞠は慎重かつ大胆に周囲を探り、不測の事態に備えて情報を集めていく。もし万が一、この大掛かりな映画撮影全体がオブリビオンによる策略であったとしたら―――その危惧は、朱鞠の忍者としての本能的な警戒感による物であったのかもしれない。彼女はアクション映画を撮影しつつ、同時に緊迫したサスペンス映画の舞台に乗り上げたかのような焦燥感を味わっていた。

 状況再開〈エスタブリッシング・ショット〉

 俯瞰から見下ろす無人ドローンが、上空から降りてくる。空飛ぶ鳥の視点。既に戦闘に入っている朱鞠を画面中央に捉えてズームアップ。その動きは乱戦のものだ。場所は高層ビル街の谷間、建築物の隙を縫うような道路上で、駆け回りながら複数の敵と戦っている。

 ニンジャとは『忍ぶ者』…先手を取られ、数で勝る相手に囲まれている現在の状況は、決して芳しい物ではない。しかし、朱鞠は挑発めいて舌を出し、ウィンクまで飛ばしてみせる。短いカットの連続が、彼女の顔を、肢体を映し出す。近くで直視すればドギマギしてしまうような豊満なプロポーションは、一連の動きの中で躍動感を持ってフィルムに収められる。

 その様子に苛立ったのか。追手は拳を握りしめると、そのまま虚空に向けて正拳突きを繰り出した。それは、撮影後にゴムの如くに射程が延びるパンチとしてCG演出される一撃だ。だが、今はスタントマンによる『殴るフリ』でしかない。
 しかし、朱鞠はその一撃をひらりと躱す。ユーベルコード『柳風歩』…その名が表すまま、風に揺れる柳のように右へ左へと姿が揺らめき、見えない一撃を回避する。朱鞠が避けた後方で、存在しない大型車両が貫かれて大破した。
 
 耳には聴こえぬ爆発音と同時に、朱鞠は踏み込む。
 手に持つのは打咎鞭『九尾〆下帯』 どこか嗜虐的な用途を想起させる革鞭は、変幻自在の軌道で敵を翻弄し、その身を縛り上げる。その拘束に思わず苦悶の声を漏らした敵は、やがてどさりと路上へ倒れ伏した…。


「カット!」
 ―――撮影の魔法が解ければ、現実が返ってくる。ざわめきが戻り、倒れたスタントマンは起き上がった。縛りあげた鞭が痛くなかったか、痕が残っていないかと朱鞠が気遣えば、全然大丈夫だぜ!とばかりにサムズアップが返ってきた。

「あ、あー、良い…。最高に良い…」
 件の映画監督はといえば、撮れた画を何度も確認して満足げに頷くばかり。喋る言葉の語彙はみるみる無くなっていき、終いには一周回って落ち着いてきたのか、何か悟ったような穏やかな微笑みまで浮かべる始末である。
「そう。闇堕ちは確かにロマンだ…。だが、それを必ずや克服し、苦難を乗り越えてくれると信じる『心』…! そうか、俺が本当に求めていたのは、コレだったのか…!」
 映画監督は、真っ白に燃え尽きたように、ディレクターズチェアに深く腰を降ろした…。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『狡賢く悪い狼』』

POW   :    狼の口は何故大きいのか、知ってるかい?
戦闘中に食べた【都市伝説や噂 】の量と質に応じて【捕食した都市伝説に因んだ能力を獲得し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    ボクとお喋りしようヨ!
対象への質問と共に、【自身が知る都市伝説や噂 】から【都市伝説の幻体】を召喚する。満足な答えを得るまで、都市伝説の幻体は対象を【都市伝説の内容に応じた能力】で攻撃する。
WIZ   :    もっとキミのことを知りたいナ
【牙や爪 】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【噂とユーベルコード】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。

イラスト:のはずく

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はレイニィ・レッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『―――ラスト! 最終決戦だ!』
 メガホンを手にした映画監督の声が響く。

 戦場〈スタジオ〉は緑背景〈グリーンバック〉
 待ち構えるのは、狼男の姿をした怪人…その中身は数々の映画で悪役を演じてきた名アクターだ。彼の顔は、狼の被り物に隠されて、しかし、顔の角度と所作のみで君たちを…やってきた猟兵〈ヒーロー〉を嘲笑う。

「今更来たというのか、猟兵〈イェーガー〉
 世界は、もはや闇に呑まれるというのに! 見よ、『全ヒーロー闇堕ち化計画』がもたらした結果を! これが貴様らの別側面、別世界における『在り得たかもしれない悪の可能性』だ! 人々は恐れるのだよ、『もし英雄〈ヒーロー〉が悪に堕ちたらどうなる?』と。彼らは怖いのだ、貴様らの力が、存在が!」

 狼は囁く。ヒーローが闇堕ちしたらという「もし〈if〉」 それの集合体が、あの暗い闇色の靄の正体であると。その有り得ざる可能性は、人々の恐れは、不定形の噂や都市伝説という形をとって、今まさに牙を剥いているのだと。

「己が、それでも英雄〈ヒーロー〉だというのなら…証明して見せるがいい!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

クライマックスシーンです。
舞台背景は、ハイテクな合成処理により、どんな舞台でも可能です。
デフォルトの戦場は高層ビル立ち並ぶ摩天楼ですが、ご要望があれば戦場は上空だろうが宇宙だろうが可変になっております。最終決戦らしく、派手にどうぞ!
政木・朱鞠
SPDで行動
なるほど…まんまと乗せられちゃったね…でも、ここは演技を続けさせてもらうよ。
力を身勝手に振るう中で「ヒーローとしての評価」と「聖人君子では無い自分」のギャップから暴走してしまった事に気が付いてしまう。
悔い改め、観衆に向かってヒーロー着地からの土下座で謝罪と悪と戦う誓いをする…と三枚目ぎみに演じてみたい。

CG処理だと情報過多になりそうだけど『忍法・狐龍変化身』を使用して仮初めだけど真の姿を再現して機動力に特化した強化状態で翻弄しながら隙を狙いたいね。
武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして、攻撃は【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使い【傷口をえぐる】でダメージを与えたい。

アドリブ連帯歓迎



 仰瞰〈ティルト・アップ〉
 市街地から上方を見上げ、雲を突き抜けてその先へ。

 決戦は、大都市を見下ろすランドマーク・タワーの頂上から始まった。
 政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は、悪〈ヴィラン〉の書いた脚本〈シナリオ〉に踊らされてしまったことに歯噛みする。朱鞠の目の前で相対するのは、狼男が召喚した黒い靄だ。それは瞬く間に姿を変えると、朱鞠が『闇に堕ちた可能性』…『闇朱鞠』として厭らしく笑顔を浮かべた。
 そこから生まれた動きは、正に鏡写しだ。影すら置き去りにする速度で、光よりも迅い暗闇が疾走する。打ち合う数は一合、二合。朱鞠は己の影と螺旋を描くように斬り結ぶ。その力量はほぼ同等…否、生まれたばかりの『闇』の方が僅かに強い。『闇朱鞠』は手裏剣を乱打し、打咎鞭で朱鞠を絡めとった。

「―――くっ…!」
「あは、『私』ってば弱ーい!」
 闇朱鞠に遠慮は無い。絡んだ鞭を、そのまま無造作に振り回す。
 捕らえたままの朱鞠を、そのまま別のビルへと放り投げ、その屋上へと叩きつける。その力には加減も容赦も無い。ただ己の欲望のままに、己の思うがままに振る舞うだけの荒ぶる暴虐。それが闇朱鞠の力だ。人としての理性、正義や道徳といった枷を解き放ってしまえば、その力は殺意という名の暴力として吹き荒れる。

 朱鞠は猟兵であり、ニンジャである。
 しかし、それは一般大衆が望む英雄〈ヒーロー〉とは必ずしも一致しない。民衆の思い描く理想像とは―――『完璧な英雄』という概念〈イデア〉 だが、その評価は必ずしも正鵠を射た物ではない。
 ―――無欲に世界の為に滅私奉公する存在など、それこそ絵物語の世迷言である。現実を生きる朱鞠は、決して我欲のままに振る舞う悪では無いが、さりとて聖人君子でもない。この世界は善悪二元論で構成されていない。彼女も彼女なりの悩みや葛藤を抱える一人の人間なのだ。故郷の長老たちには次期頭主として過度な期待をされ、その責任や義務に反発して別世界へと逃れた朱鞠……見方を変えれば、口煩い両親に嫌気がさして、夜行列車で大都会へと飛び出す少年少女と同じような…ごくありふれた悩み多き個人なのである。
 しかし、民衆はそのような事実など知らない。勝手に己の妄想を投影している。彼女は、猟兵は、『我々のような無力な人々』とは違うのだと思いこむ。そのギャップがコレだ。民衆は見上げる。大衆は仰ぎ見る…英雄〈ヒーロー〉は、我々と違って偉大なる存在なのだと、きっと完璧で理想的な『正義』なのだと…そう、願ってしまう。人々は、英雄と呼ばれる者たちから距離を取り、彼らを孤独にしていく。

 ―――朱鞠は弾き飛ばされ、摩天楼から墜落していく。
 闇朱鞠は嘲笑う。中途半端だから、そうなるのだ。
 最初から己独り、自由に生きればよかったものを―――!

 轟音を上げて、朱鞠は大地へと叩きつけられた。弾け飛ぶ瀝青、巻き起こる砂埃。
 衝撃で、周囲の信号機が動作不良を起こして明滅して消える。
 朱鞠は完膚なきまでに打ちのめされてしまったのか? 心を折られ、二度と立ち上がれぬように敗北してしまったのか?
 ―――否。彼女は見事に着地し、その衝撃を分散させて逃がしていた。

 ―――否、それはただの着地では無い。
 両手を地面へ着け、両足を丁寧に揃え、頭を垂れたその姿は…そう、『土下座』である。

 ―――土下座、〈ドゲザ〉、DOGEZA。
 それは、極東の島国における最上級の謝罪礼法である。彼の国を支配するサムライやニンジャにとって、己の命は実に軽い物だ。そして、誇りは何よりも重い。家名、名誉、気位…そういった無形の精神性こそが、彼らを誇り高き戦士階級として成立させているのである。
 故に、彼らは軽々しく謝罪などしない。仮にするとすれば、それは自裁することによって彼我の面子を保つ神聖にして凄惨なる儀式…〈ハラキリ〉である。自らの不始末は自らの手で始末をつける。それこそが〈ケジメ〉であり、命を対価として名誉をこそ守るという〈ミソギ〉の儀式なのである。
 だが―――世の中には〈ハラキリ〉ですら及ばぬ、謝罪の最上級が存在するのである。それが土下座〈ドゲザ〉 もはや命一つでは納められぬ失態や過失に対して、自己存在の全てをさらけ出して委ねるという謝罪儀式である。死んで謝るなど誰にでもできる、しかし、己の非を認め、それでも人生の全てをもって償おうとする不退転の意志表示。それが、DOGEZAだ。
 朱鞠は、頭を下げていた。目の前の敵に対してでは無い。己の未熟によって被害を受けた民衆、朱鞠を英雄〈ヒーロー〉と信じて裏切られた人々、それらの期待に応えられない己の力不足。そうした全ての万感を込めて、朱鞠は森羅万象に頭を下げたのである。その姿は一幅の絵の如くに荘厳であり、敵すらその玄妙なる雰囲気に思わず息を呑んだ。

 朱鞠は、音も無く立ち上がる。
 この土下座は、彼女の誓いだ。
 もはや二度と無様な姿は見せぬ、と。
 闇に呑まれることなく、己は己自身であるままに生き続け、悪と戦い続ける。
 その不退転の覚悟を込めた誓いである。土下座を終えた朱鞠の体からは、今までにない高濃度の覇気が放出されている。
 制御拘束術第壱式を解放し、封印されし狐龍の力を身に纏う。凄まじき覇気が大気を揺らし、朱鞠の周囲を青白い鬼火が乱舞する。そう、これこそが彼女の全力全霊。闇に生き、闇を討つニンジャの真の姿、『忍法・狐龍変化身』である―――!

 瞬間、空気が揺れた。
 次の瞬間には、朱鞠は僅か一度の跳躍で摩天楼の頂上へと到達。闇朱鞠すら圧倒する速度で拷問具『荊野鎖』が振るわれる。
 闇朱鞠は防御しようと己の両腕を交差させて受け止めるが、その判断は誤りであった。超高速の鎖は防御など無意味とばかりに骨を折り砕き、その身体を軽々と吹き飛ばす。・・・追撃。吹き飛ぶ肉体に、朱鞠は空中で連撃を加えていく。それは格闘ゲームの連撃めいた空中殺法〈エアリアル〉 二撃、三撃、攻撃が加えられるごとに速度は加速していき、仕返しとばかりに闇朱鞠を屋上へ叩きつけた。地へと這いつくばらせる。

「『私』に、こんな力が…!? し、知らない!? こんな力は――!?」
 驚愕に震えるばかりの闇朱鞠を、朱鞠は眺めた。
 力を持つ者は、力に溺れてはならぬ―――それは里の長老の言葉であった。己を見つめ直し、自らの弱さを受け容れた朱鞠は、闇に堕ちることはもはや無い。
 英雄〈ヒーロー〉として自覚した朱鞠は、戦いを終わらせるべく悠然と一歩踏み出した…!

大成功 🔵​🔵​🔵​

デュラン・ダグラス
演技って、結構のめり込んじまうモンだなァ。
ま、監督も異論ねェようだし…このまま俺なりの“ヒーロー”やってくか。

(支援も好む。トドメ希望も無い)

【POW】

外見は戻しとく。

確かにヒーローは、一歩間違えばソッチ〈if〉側。
怖がるのも当然だ。
それでも俺は、守るもの〈ヒーロー〉であることを選んだんだ。
その選択を、否定させやしねェぜ!

最後は特に派手に戦わねェとな!

『ガトリングガン』(周囲に)ぶっ放しつつ接近。
『グレートソード』でぶっ飛ばそうとするぜ。

(わざと外して)避けてもらったトコを攻撃してもらう。
そのスキ突く形で、体の蔦(加減して)絡めて動きにくくする。

最後まで諦めねェよ、ヒーロー“達”ってのは。



 視点切換〈マッチ・カット〉

「確かにヒーローは、一歩間違えばソッチ〈if〉側。怖がるのも当然だ」
 デュラン・ダグラス(Dracaena Dragon・f16745)は、一歩踏み出した。
 目の前には、英雄〈ヒーロー〉を嘲笑う狼男がいる。人々を守るなど馬鹿らしいと、力を持つ者はその力を自由に使えばいいのだと…そう嘯く邪悪は、追い詰められてもなおダグラスを嘲笑する。

「・・・流石。怖がられるような外見の方が言うと説得力が違うな、英雄殿?」
 お前はこちら側ではないのかと、悪〈ヴィラン〉ではないのかと。
 そう問うような声色は、しかし、ある種の感情を含んでいた。―――諦めてしまえ。悪に染まってしまえ。闇に呑まれてしまえ。そうした方が楽だぞ? 誰に何を言われることを気にする必要は無い。力こそが唯一の真理なのだ、お前にはその力がある。全てを黙らせてしまえる力が―――!
 
 デュランは、その甘い言葉を鼻で笑った。
 摩天楼を飛び渡り、逃げる狼男に追い縋る。大都会の宙空を、二つの影が疾走する。
 視座〈カメラ〉は三次元軌道で縦横無尽に追従する。急降下、失墜するギリギリで急制動。重力に逆らって体勢を立て直すと、ビルの谷間を再加速。看板や信号機の林を駆け抜ける。狼男は跳ね飛びながら、デュランはその背の翼で飛翔して。都会は立体的な迷宮だ。交差する陸橋や鉄道列車、電線。そういった障害物を避けながら、酔いそうなほどに視界が揺れる。―――やがて、デュランの伸ばした右手が、狼男の足を掴んだ。真下へと全力で叩きつける。吹き荒れる砂塵、朦々と立ち込めた煙の中から、デュランの巨体が再度大きく映し出される。

 その姿、背丈は3メートルに届かんとする威容。素体は人間、そこに植物と異界竜を融合。外見だけならば確かに、知らぬ者がみれば悪〈ヴィラン〉にも見紛おう。だが、人々は知っている。彼の気性は豪放磊落、酒と子供の笑顔を何より好む、良き隣人であるのだと―――!

「・・・それでも俺は、守るもの〈ヒーロー〉であることを選んだんだ」
 捉えられた狼男は、邪悪に哄笑すると闇霧を解き放った。即座に闇は凝固し、闇色の竜となってデュランを強引に弾き飛ばす。
 緑の竜人と、闇の竜人。その造形は互いを写し取ったようでいて、その在り方は全く異なる。
 闇竜は他人を害する存在…デュランという存在を鏡に映し、反転させて暗闇へと突き落とした「ありえざる〈if〉」

「―――その選択を、否定させやしねェぜ!」

 デュランは、ヴィランとして反転した己を撃ち払う。
 一撃目、ドラセナ・ガトリングガン! デュランの体内から、隠されていた大口径の銃器が出現。狙いを定めると一斉掃射〈フルオート〉 弾丸は真っ直ぐな正義の意志となり、闇竜を撃ち抜く。ガトリング砲は秒間50発という単純なる暴力を実現する。嵐の如き数秒が、銃弾の雨と炸裂音として吹き抜けた。超過駆動により銃身は焼けつき、白い煙をあげる。

 二撃目、ドラセナ・グレートソード!
 体内に収納されていた大剣、それをデュランは腕に継いだ。異界の竜の骨で作られた大剣は、この世の物とは思えぬ超硬度を誇る。
 ガトリングと剣、二つの武器を振るうデュランの前に、影法師めいた闇竜は手も足も出ない。その姿は射抜かれて穴だらけとなり、骨剣で断たれれば紙のように千切れて吹き飛んでいく。……おお、見よ。姿形が問題なのではない。英雄〈ヒーロー〉とは人々を守護する者、であるならば、今のデュランは紛うことなき英雄〈ヒーロー〉である!
 哀れにも、闇竜は悲鳴を叫げて爆発。闇は四散して跡形も無く消えていく。
 正義を胸に確固たる道を進む者にとって…不定形の闇など、まやかしのような影に過ぎないのだ!

 爆散した敵を撃破して、デュランは小さく息を吐いた。
 だが―――狼は何処だ。
「余所見がすぎるぞ、猟兵〈イェーガー〉!」
 言葉と共に、斬撃が舞う。デュランが火力と重装に長けたパワーファイターであれば、狼男はその素早さと身軽さを武器としたのだ。大陸風めいた服装を疾駆させ、狼男は爪剣で斬り結ぶ。 
 再びの追走撃〈チェイス〉 先ほどと異なるのは、互いに剣を交わしながらの交錯劇であるという点だ。紙一重で斬撃を躱す、そして飛んだ剣閃は僅かに狙いを逸れて虚空を斬る。剣戟の舞台は地上から再度上空へ、コンクリートジャングルを跳ねまわり、摩天楼を上へと駆け昇っていく。

 高層ビル屋上へ辿り着いたデュランの背後を、狼男が取った。デュランの肩へと乗り、首筋へと爪剣を突きつける。
「終わりだ、英雄〈ヒーロー〉! 此処で後悔しながら果てるがいい…!」
 もう諦めろと、一人で戦ったところで何も変えられないのだと。
 そう語り掛ける悪役〈ヴィラン〉に、デュランは笑った。笑うしかなかった。
 この期に及んで、この悪役は英雄のことを何一つ理解していないらしい。

「―――は、ははッ!」
 デュランは笑い飛ばした。絶対絶命に見えた瞬間、その身体からは植物の蔦が急成長し、油断した狼男の四肢を絡めとる。
「最後まで諦めねェよ、ヒーロー”達”ってのは」

 互いの身体を蔦で結び付けたまま、デュランは屋上から身を投げた。
 重力を引っ張られ、捨て身の一撃が急降下していく―――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミネルバ・アレキサンドリア
いよいよ最終決戦ですのね。最後は私の槍捌きをお見せしますの。

宇宙空間ならば都市伝説も噂も意味を為さないでしょう。翼を展開し、敵を槍で突き刺したままラグランジュ・ポイント(宇宙空間)まで打ち上げます。

宇宙空間で空中戦を繰り広げた後に宇宙戦艦の残骸の中で最終決戦。敵を道連れにすべく、最後の手段として戦艦のエンジンを火炎ブレスで爆破!

爆発する宇宙船をバックに最後は行方不明になりましょう。

撮影が終わったら監督にわたくしの1/1スケールのアクションフィギュアを関連グッズとして商品化できないか相談してみますの。



 焦点調整〈ズーム・アップ〉

 屋上の動きと同時に、ビルの谷底でも動きがあった。
 ミネルバ・アレキサンドリア(自称「聖なる薔薇」のポンコツドラゴン・f17280)は、手に握った己の得物『ベレトの魔槍』を上空へと向ける。
 その槍は魔法の槍。魔王すら貫く聖なる槍。
 槍の穂先は唯一点に照準を定め、ぴたりと据えられて微動だにしない。
 その構えは、天を衝いて撃ち抜かんとするが如く。

 ミネルバは竜種としての力を開放する。それは、制御不能な巨竜として蹂躙するための力ではない。人間の姿のまま、己の意志にて敵を貫くための力。『竜種解放・第二形態(フォームチェンジ・セカンド)』 普段は抑えている力を開放し、ミネルバは路面を蹴る。
 ―――それだけの動きで、路面が砕けた。

 その動きはロケットが飛翔するかの如く。巻き上げられた塵埃を置き去りにして、ミネルバの身体は上空へと飛翔した。
 掲げた槍の穂先が、今まさに蔦に絡めとられて墜落してきた狼男を引っ掛ける。落下と急上昇、相反するベクトルが一瞬交錯し、次の瞬間には上空へと打ち上げられる。―――加速。雲を突き抜け、成層圏を抜ける。眼下には既に青い星が遠ざかっているが、ミネルバの飛翔は止まらない。第二宇宙速度すら超過する急上昇に、狼男は絶叫を上げた。
 その悲鳴を意にすら介さず、ただ真っ直ぐ飛翔する。終着点は宇宙、ラグランジュ・ポイント。重力の軛から解き放たれたその場所で、廃棄された巨大な宇宙船…その船へと狼男を叩きこんだ。

「き、貴様…ァ! なんという無茶を…!」
 狼男は半死半生といった様子で、憎々しげに目の前の猟兵を睨みつけた。
 もはや許せぬとばかりに、その周囲には極大の闇が召喚される。それは『全ヒーロー闇堕ち化計画』そのもの。平行世界に存在するあらゆる『闇に堕ちたヒーローの力』の塊である。
 その闇の力を身に宿すと、狼男は最期の戦いに挑む。無重力の宙域を飛び回り、牙と爪でミネルバを切り刻まんとする。

 だが、真なる力を解き放ったミネルバは、その動きの悉くを上回った。
 爪を躱し、槍を叩きこむ。牙を避ければ、がら空きになった胴を薙ぐ。ついに動きを止めた狼男を貫くと、そのまま宇宙船の残骸へと再突入。
 船体が砕け散り、隔壁を破砕しつつ二人は船内へと突入した。

「・・・! まさか…!?」
 再び闇の力を集めようとした狼は、周囲の様子を見て愕然とする。
 そこは廃棄された宇宙船の動力部であった。未知のテクノロジーによる超科学の結晶。そこには既に廃棄されたとはいえ、莫大なエネルギーが燃料として貯蔵されていた。
「まさか…。じ、自爆する心算だというのか―――ッ!?」

 ミネルバは、無言で薄く微笑した。

 ―――そう、ミネルバはあまりに壊しすぎたのだ。
 悪〈ヴィラン〉による策略があったからとはいえ、卑怯卑劣な手段によって闇に堕とされたとはいえ…ギャンブルに負けた怒りで街一つを焼き払ってしまった。巨大なる竜として市街地を蹂躙し、守るべき人々の脅威となってしまった…その事実は、もはや覆せないのだ。
 もし市民が「仕方無かった」と、「許す」と言ったとしても―――己の所業は決して消えることはない。
 これが罪滅ぼしになるのかは判らない。それでも、ミネルバは選択し、決断したのだ。

 ミネルバは笑う。笑いながら、己の力を高めていく。
 その身体は、既に獄炎に包まれている。通常ならば竜として吐き出す超高温の炎の吐息〈ブレス〉 それを人間体のまま極一点に収束させ、瞬間に解き放とうというのだ…!
「く、狂ったか! そんな力を解き放てば、貴様とて無事では済まん! 死ぬのだぞ!」
 それがどうした。言葉の代わりに、ミネルバは己の力を開放した。
 収束した炎熱は、白く眩い光を放った。

 無音。
 そして、衝撃波が走った。真空である筈の宙域を、途方もない熱量の光が埋め尽くす。
 周辺を浮遊していた宇宙塵〈デブリ〉が、無酸素のまま灼かれて消失する。

 地上では、あらゆる人々が空を見上げていた。
 その光は、まるで太陽が二つに増えたかのようで、煌々と輝いては地上を照らし出した。
 だが、その光も、やがて消えた。
 全ての闇を、光で灼き尽くして。
 ただ青く美しい星だけが、その後に残されていた…。


 ・・・後日談。
 ミネルバ・アレキサンドリアたっての希望で、彼女のアクションフィギュアが映画関連商品として発売された。1/1スケールのフィギュアは大きさ的に難しい…ということで、縮小スケールのフィギュアが商品化されることとなったのだった。

「1/1スケール…は無理ですの?」
「いやぁ…。大きさが、ちょっとねぇ…。それに、宣伝になるといっても、大きい物を作るのは予算が掛かるんだよ」
「―――わかりましたわ。でも! きっと良い物にしてくださいまし!」
「ああ、そこは任せてくれ。完璧なフィギュアにしてみせよう…!」

 ディモン・ヤミオチスキー監督『ダークサイド』好評上映中!
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大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年06月04日


挿絵イラスト