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何もなければ明日には滅びる予定の村

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「御機嫌よう、諸君。どうやら無事に登録は済ませたようだな」
 キミたちの前に現れたのはひとりの青年。彼の名はギド・スプートニク――今回、キミたちの事件を担当するグリモア猟兵だ。
 軽い挨拶をすませると、彼は今回の任務の説明を始めた。
「今回、卿らには『ダークセイヴァー』と呼ばれる世界に赴いてもらう。無論、目的は観光ではなく、オブリビオンの討滅だ」

 ダークセイヴァー。
 夜と闇に覆われた世界。
 その世界の人類は、かつて滅びた筈のオブリビオン――『ヴァンパイア』によって支配されている。

「これから向かうのは片田舎にある辺境の村だ。卿らの初仕事としては適切なところだろう。仮に失敗したとして、小さな村がひとつ滅ぶ程度の話だ」
 ギドは冗談めかして笑うが、それは誇張ではなく現実の話だ。
 予知によると、村の住民たちはヴァンパイア配下の手によって皆殺しにされるというのだ。何の深い理由も無く、無慈悲に。
 よって、それを阻止する為にオブリビオンを倒すというのが猟兵たちに与えられた今回の任務の目的となる。

「住民たちが殺されるのは我々が到着した日の夜。つまり待っていれば敵は勝手にこちらに来る。が、その場合はロクに避難誘導もできぬまま村が戦場となり、住民の半数以上が戦闘に巻き込まれて死ぬ。その上、死んだ住民はそのまま生ける屍と化し我々の敵となるようだ」
 屍兵の一体一体は大した力を持たないが、彼らは痛みも恐怖も感じずに最後の一体になるまで戦い続ける。多勢となれば消耗は免れない。
 また屍兵の他に、より強大な首領格のオブリビオンが控えている可能性もある。
 連戦となれば、最悪、撤退も視野に入れなければならなくなる。

「故に卿らには現地に到着次第、住民たちの協力を仰いで貰う必要がある。支配される事に慣れた住民たちは恐らくあまり協力的ではなく、ただの他所者が口を出すだけではむしろ邪険に扱われるだろう。しかし、卿らはただの他所者ではない。通りすがりの、英傑だ」
 彼らは既に100年近くに渡りヴァンパイアによる支配、圧政を受けている。
 猟兵を除いてオブリビオンに対抗できる存在はなく、彼らは猟兵の存在を知らない。
 つまり略奪されようが虐殺されようが、彼らにとってはヴァンパイアに従う以外に生きる道は残されていないのだ。
 だが彼らとて決して支配を望んでいるわけではない。
 救いを、オブリビオンを打倒し得る存在の登場を待ちわびている。

 力を示し、住民たちの信頼を勝ち取るのも良い。
 知略によって会話や交渉を行なうのも良い。
 或いは俊敏さを生かし、戦いに備え周辺の偵察を行なうのも良いかも知れない。
 キミたちの器量を住民たちに認めさせる事が出来れば、彼らもまたそれに応え協力してくれるじゃじ。
『支配された村』にて『住民の協力を取り付け』、『戦いに備える』。
 それが今回の任務の指針であり、キミたちに与えられた道標(フラグメント)だ。

「後は単純だな。掴んだ情報を元に敵を迎え打てばいい。こちらから打って出るのも構わない。そこからは私の予知ではなく、卿らが掴んだ情報を元に、卿らが現場にて対応するのだ」
 どんな敵が待ち構えているかも分からない。どうすれば勝てるのか、そもそも敵が何処にいるのかすら分からない。
 だが現実などそんなものだ。グリモアの予知は万能ではない。せいぜいが滅びの予兆を垣間見るだけ。解決の糸口の、そのまた糸口程度を掴むだけ。

 臨機応変に、リアルタイムに。
 キミたちが直接異世界へと赴き、その場で対応する――それが猟兵の戦い方だ。

「ちょっと行って敵を鏖殺し、たかだか数十名の命を滅びの運命から救うだけの簡単な仕事だ。卿らにとっては朝飯前だろう?」
 どうか無様な姿は見せてくれるなよ、同輩。
 それはギドなりの、仲間に対する捻くれた激励なのかも知れない。


まさひこ
 どうもはじめまして、まさひこです。
 第六猟兵をプレイするのは今回が初めてなので、不慣れなところもあるかも知れませんがよろしくお願いします。

 本文でも書いたんですけど、今作は従来の作品と比べてリアルタイムでのやり取り、変化する状況への対応が肝だと考えています。
 実際やってみないと分かんないですけど、探り探りでプレイングとリプレイのキャッチボールを楽しんでいけたらな、って思ってます。

 今回はマスコメで特筆すべき情報は無いので、雰囲気重視で異世界での冒険に励んでいただけたらと思います。
 みなさんのプレイングを楽しみにしてます。

 あとNPCとも機会があれば遊んでね。
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第1章 冒険 『支配された村』

POW   :    強さを見せて村人を信頼させる

SPD   :    村周辺の探索を行う、村人達と密かに接触する

WIZ   :    会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フランチェスカ・メリジオ
【会話や行動で村人から情報引き出す】

まずは村をぶらぶら歩き、顔色が悪い人を探そうかな。
そして見つけたらこうだ。

「やあ、そこ行くキミ。この村って食べ物を売っているところはあるかい?」
「むっ、キミ……なんだか顔色が悪いね。これをプレゼントしよう、元気が出るよ。一気に飲まずに少しずつ飲むんだ」

そう言ってボク特製の栄養剤(ポーション)を渡すよ。体が弱ってそうだから、体に優しいタイプのポーションにしようかな。
印象が良さそうだったら、そこから支配しているヴァンパイアについて色々聞こうかな。
うーん、街を戦場にしたくないからボクはヴァンパイアの住処を聞くとしよう。場所が分かれば続く屍兵が来る方角も分かるしね。



村に辿り着くなり、最初に動き出したのはフランチェスカだ。
「やあ、そこ行くキミ。この村って食べ物を売っているところはあるかい?」
「むっ、そっちのキミは何だか顔色が悪いね。これをプレゼントしよう、元気が出るよ」
 忙しなく捲したてるフランチェスカに村人たちは面食らいつつも、警戒の色を強めている。
「な、なんだ嬢ちゃん、旅人か? それにこんな怪しげな飲み物を渡されても……」
「それはボク特製の栄養剤だよ。大丈夫、毒なんて入ってないから。天然成分由来で身体にも優しい、奥様にも人気の逸品だよ!」
「いやいやいや、しかし――うっ!」
 渡された栄養剤を突き返そうとした、その時。村人が見たのはフランチェスカの曇りなき瞳だった。「大丈夫、天才のお手製品だよ」と言わんばかりの自信溢れる表情。説明し難い謎の説得力に気圧されて、村人は恐る恐る栄養剤に口を付けた。
「こ、こいつは……!」
 するとどうだろう。過酷な労働によってあんなに怠かったはずの身体から心無しか疲れが抜け、身体が軽くなったように感じられた。
「おお、なんだこれ。疲れがじんわりと取れて……それに意外と飲みやすい……」
「だろう? 何せあんなものやこんなものが配合されたスペシャルブレンドだからね。一気に飲まずに少しずつ飲むんだ」
「うん……? あ、ああ……ありがとうよ」
 村人は若干の疑惑の芽を残しつつも、目の前の少女が只者でない事は何となく感じ取れた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ワーグワーク・ホットマン
「こぉぉんッ! にっちわぁぁぁッ!!」
広場から村全体に響かせる超大声でお腹の底から元気に挨拶!
怪しむ?まず顔を向けてくれなきゃ何もできねぇもん。挨拶は大事って父ちゃん言ってた!
手をぶんぶん振って友好アピール。しかも光る(聖者感)。ふふん無視できまい(ドヤ顔)。

様子を伺いに人が来たらサッと観察して問答無用で【生まれながらの光】で癒す。ピカーッ!
劣悪な環境なら怪我や病気、寒くてあかぎれもあるだろうから。
「はじめまして! あたし神官なんだ。怪我人とか具合悪い人いたら治すぜ!」
頑なな心を【トンネル掘り】する笑顔で村人を見上げ、両手の指を組んで【祈り】の姿勢。
後は力の限り皆を癒し続け、より耳目を集める。


蓮花寺・ねも
希望を煽る心得くらいはある。尽力しよう。


住民たちと会話を。

こんにちは。
この近辺のヴァンパイアについて調べていてね。
奴の姿を見たり、何かをされたという人は居るだろうか。

ぼくは、それを討ち倒すことを生業にしている。
可能な限り情報が欲しい。
そう、情報だ。情報だけで良い。
上手く行けばきみたちの生活は良くなる。
上手く行かなくても、ぼくが死ぬだけだ。
損はないだろう?

障りがなければ、現時点で怪我等で疲弊している村人へ【生まれながらの光】を使用。
いざという時に動けなければ困るだろう。
これは、きみたちが望む未来を掴むための手助けのひとつ。
選択肢は増やしておくに越したことはない。


猟兵の皆と情報共有もしておきたい。



「こぉぉんッ! にっちわぁぁぁッ!!」
 村の広場に響き渡る、ワーグワークの威勢のいい挨拶の声。
 そこではワーグワークと、ねものふたりが村人と接触していた。
「こんにちは。ぼくたちはこの近辺のヴァンパイアについて調べていてね。奴らの姿を見たり、何かをされたという人は居るだろうか?」
 ねもが尋ねるが、村人たちは目を伏せて口を噤ぐばかり。
 そんな中、ひとりの村人がようやくふたりに対して口を開いた。

「あのよぉアンタら。どんなつもりか知らないが、そんな事を調べてどうなるって言うんだい。見りゃ分かるだろ、村のこの有様……見ての通り、みんな生きるのに精一杯なんだ。余所者がおかしな真似すんなら、さっさと出て行ってくれ」
 村人は迷惑そうな顔で、ふたりに退去を促した。

 だが勿論、はいそうですかと帰る訳にはいかない。

「まーまー、そんな事言わずに! 実はあたし、神官なんだ。怪我人とか具合悪い人いたら治すぜ!」

 そーれ、ピカーッ!(ピカーッ)

 ワーグワークはユーベルコード『生まれながらの光』を使用すると、彼女の全身は眩いばかりの【聖なる光】で輝き始める!

「うおお、何だこれは! なんという神々しい光、そして癒やし! こんな豆粒みてえに小っちえのに、なんちゅー光量だ!」
「アァン!? 誰が豆電球だ、誰がッ!!」
 ぴょんぴょん跳ねて遺憾の意を表するワーグワーク(82.6cm)。

 そして『生まれながらの光』を持つのは彼女だけではなかった。隣に居るねもも、畳み掛けるように『生まれながらの光』を使用する。
 光源が2倍となった【聖なる光】は、村人たちを浄化せんという勢いで輝き照らし癒やし尽くす。
 辛い労働で疲弊した肉体、見せしめとして痛めつけられた怪我が、みるみるうちに癒やされていった。
「ぐうう……あったけえ、あったけえよぉ……」 
「いざという時に動けなければ困るだろう。これは、きみたちが望む未来を掴むための手助けのひとつ。選択肢は増やしておくに越したことはない」
 もはや人とは思えぬ御使いの如き少女たちを前に、村人たちはその場で膝を屈し涙を流し始めた。

「ぼくたちは、ヴァンパイア――それに類するモノを討ち倒すことを生業にしている。だから可能な限り情報が欲しい。そう、情報だ。情報だけで良い。上手く行けばきみたちの生活は良くなる。上手く行かなくても、ぼくが死ぬだけだ。損はないだろう?」
 ねもが淡々と述べる。その瞳から、戦いや死への恐怖は一切感じられない。
「ま、あたしたちが吸血鬼なんかに負けるわけねぇんだけどな!」
 ネモに便乗するように、ドヤ顔でふんぞり返るワーグワーク。

 物怖じしないふたりの説得に、頑なな村人たちの心が徐々に解れていく。
 気が付けば、村人たちは年端も行かぬ少女ふたりに希望の光(物理)を見出し始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

秋稲・霖
WIZ

ヴァンパイアに支配されてるなんてほっとけないし、気紛れに酷い目に遭うかもとか許せないっしょ!
だから、そういう気持ちをばーんと村の人たちに伝えて俺らは味方だよってちゃんと伝えたいな
村がどういう状況なのかって話も聞ければいーんだけど…俺はそれ以上に、村の人たちを安心させてあげたいし、信じてもらいたいかも


天御鏡・百々
【病人やけが人をユーベルコードで治療。特別な力を持ち、ヴァンパイアに対抗できる猟兵の存在を教え、圧政からの解放のためにと情報を引き出す】

ふむ。ここが、ダークセイヴァーの世界か。なかなかに陰鬱だな。

村一つ皆殺しにされるというならば、救済せぬわけにはいかぬだろう

猟兵を知らぬというのであれば、先ずは我らがヴァンパイアに対抗できる力を持つことを教えることが肝要か?
我が本体である神鏡にて照らすことで、病気や怪我は治癒できる。何も知らぬものには奇跡の如く見えるであろう。
特別な力を持つ我らがヴァンパイアより開放すると説明し、そのために住民の協力=情報が得られるとよいのだが。



「さて、これで理解して貰えただろうか。我らはただのそこらに居るような人間ではない。ヴァンパイアに対抗できるだけの力を持つ――という事を」
 先程のふたりと同様に、本体である神鏡から【聖なる光】を放つ『鏡のヤドリガミ』の百々。
 村人たちを広場に集めると、百々は自分たちが特別な力を持ち、この村をヴァンパイアの支配から解放できるという旨を説明した。

「気紛れに酷い目に遭うかもとか許せないっしょ! こんなの絶対良くない!」
 村人たちの立場を考え、人一倍ヴァンパイアに対する怒りを燃やす霖。
 村の人たちを安心させてあげたい、信じてもらいたいという霖のストレートな感情は、そのまま村人たちにも伝わった。
「我慢することねーからさ、俺たちのこと信じてくれねーかな?」
 フランチェスカも懸念していたように、このまま行けば村が戦場になってしまう。
 村人たちの安全を守る為には、村人たちに避難してもらうか、或いはヴァンパイアの根城を探る必要があった。

「分かりました、あなた方を信じましょう」
 村人たちの中から、年老いた男性がふたりの前へと歩み出る。
 どうやら彼は村人たちの代表――この村の村長らしかった。
「知り得る情報はすべてお話します。お手伝いできる事があればお手伝いさせていただきます。ですから、どうかこの村をヴァンパイアどもの支配からお救いください」
 村長、及び村人たちはその場に傅くと、ふたりに向かって頭を下げ始めた。

「うわわっ! 良いって良いって、頭を上げてくれよみんな! 俺はなんつーか、そんな大げさな話じゃなくって、単純にほっとけねぇなーって思っただけだし!」
「うむ。人の助けとなり導く事こそ我が信条。汝らが未来、我が照らして見せようぞ」

 かくして村人の信頼を得る事に成功した猟兵たちは、村人からヴァンパイア勢力に関する情報を聞き出した。

・この村を支配するのは巨大な軍馬に跨る黒甲冑の騎士である事
・黒騎士は北の地より定期的に現れては村人を痛ぶり、搾取し、暴虐の限りを尽くしてきた事
・黒騎士は配下に篝火を持つ亡者の群れを従えており、その亡者の群れには殺された村人も含まれている事

 ――これで情報は得た。
 あとは決戦に向けて準備を整え、ヴァンパイアを殲滅するのみ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロバート・ブレイズ
「普段は邪神どもの情報を集める己だが、偶には地獄へと帰還するのも悪くない。兎角。探索の時間だ」
【SPD】で周囲の探索を行う。
 村人達との接触が可能ならば『言いくるめ』で我々が『ヴァンパイアを討伐できるほどの戦力を有する』と思わせる。
 その後『情報収集』で『ヴァンパイアの姿形、基本的な能力』を探す。もしかしたら村の周囲に『隠れている』かもしれないからな。
 可能ならば『レプリカクラフト』で仕掛け罠を作製し、襲撃に備えよう。


ポケッティ・パフカニアン
ふっふーん、なんかよくわかんないけど、あたし達のパワーを見せつければいいカンジ?え、そっちは他の人がやっちゃう?
しょーがないなぁ、フェアリーの素早さと小ささを生かした隠密性、見せてあげよーじゃないの。

とりあえず、村の周りを見て回って、敵がいないか見て回ろっかなー。
そーねー、奇襲なんかも困るけど、相手はここの人たちを「殺す」だけ、「戦う」気が無いって考えるとー…
村に繋がる広い道の方があれば、そっちから見て回るべきかな?

使う魔法はー…どこかのあたし、ちょっとだけ手を貸して!時渡る幻影!
どうどう?一人の目よりは二人の目でしょ?あたし頭良くない?
まま、任せといてよー。きっとデカブツ見つけてくるから!


アーノルド・ステイサム
【POW】
英傑ね。
まあ、ただの力馬鹿でもできることはありそうだ。

まずは他の猟兵と協力して今夜のことを触れて回る。
ヴァンパイアの手下がやってくること。それによって起こる諸々を。
ガタイは大きいんでね。
声を張りながら村を歩けば、それなりに目立つだろう。

そしてグリモア猟兵の話だと村民は非協力的だとか。
懐疑的な視線を向けられれば――
そこらに転がっている重いものを持ち上げてみせようか。
木材石材、なんでもいいが、
人の手に余りそうなものを軽々と。

見ての通りの力自慢だ。
ヴァンパイアの手勢なんぞ物の数じゃない。
俺たちが倒してみせる。信じてくれ。

真摯に、というのは苦手なんだが
うまく伝わってくれることを祈ろう。



「やれやれ、英傑ね。大層な肩書だ」
 アーノルドは村の子供を肩に乗せながら(アスレチックのように遊ばれながら)村人たちに今夜のヴァンパイアの襲撃に関して触れて回っていた。
 決して外には出ぬように。戸締まりをしっかりし、窓も閉めるように。

 途中途中、村人の要請に答えながら、アーノルドはその強靭な機械腕で常人では到底持ち上げられないような巨大な瓦礫を軽々と持ち上げ、瓦礫の除去作業なども手伝っている。
「見ての通りの力自慢だ。ヴァンパイアの手勢なんぞ物の数じゃない」
 その力自慢は確かに村人たちへと伝わっており、不安を抱く村人たちに確かな安心感を与えていた。

「ふっふーん! いやー、見せつけちゃったわねー、あたし達のパワー!」
 得意げに鼻を鳴らすのはフェアリーのポケッティ。
 アーノルドの10分の1ほどの、ミニチュアサイズの彼女に、もちろんアピールする程の力は無い(それでも常人よりは力強いと言えるのだが)。
「ホントはあたしもなー。岩とか持ち上げたかったんだけどなー! 他の人の仕事を奪っちゃうのも申し訳ないしー」
「…………」
「何よ、文句あるの?」
「いや、そんなつもりはないのだが……」
 そう答えて瓦礫除去を続けるアーノルド。
 ポケッティはどこか納得の行かない様子で頬を膨らませた。

 そんなふたりの元にやって来たのは、同じく猟兵の仲間であるロバートだ。
「周囲の探索をしたいが故、少し付いてきて欲しいのだが」
 ロバートは普段、『邪神』と呼ばれるUDCアースに巣食う奇怪なオブリビオンに関する情報収集を中心に活動する、グリモア猟兵である。
 謂わば探索のエキスパート。今回の探索もヴァンパイアの根城を探る、より具体的なものだ。単独行動であれば隠密性には優れるだろうが、万一に発見された場合の危険が大きすぎる。
「おっ、いいわね。フェアリーの素早さと小ささを生かした隠密性、見せてあげよーじゃないの!」
 そう言い放つと、ポケッティはロバートと共に周囲の探索へと向かった。

「ヴァンパイアの目的は村人と『戦う』ことではなく『殺す』こと。それなら村への奇襲なんかは考えずに、広い道を通るはず!」
 ビシィ! とポーズを決めて推理を披露するポケッティ。
「なるほど、良い着眼点だ。悪くない。加えて何か、化物どもの痕跡でも見つかれば申し分ないのだが」
 そう呟きながら、ロバートもヴァンパイアの痕跡を探る。
「えーっと、それなら……」

 ――どこかのあたし、ちょっとだけ手を貸して!

 詠唱に呼応し、ポケッティのユーベルコード『時渡る幻影(パラレル・ゲンガー)』が発動した。
 平行世界からもうひとりのポケッティが現れ、ポケッティがふたりに増える。
「どうどう?一人の目よりは二人の目でしょ? あたし頭良くない?」
『まま、任せといてよー。きっとデカブツ見つけてくるから!』
 そう言い残すと、ふたりのポケッティはヴァンパイアの痕跡を求めて飛び立っていく。

「ふ、面白い。偶には地獄へと帰還するのも悪くないというものだ。ならば化物の棲家に関しては貴様に任せよう」
 俺は別の仕事をするまでだ――と、ロバートはユーベルコード『レプリカクラフト』によって精巧な【仕掛け罠】を創り出し、辺り一面へと仕掛けていく。

 ――果たして今宵、どのような地獄に相見えるか。
 ふたりが探索から戻る頃には間もなく日も落ち、決戦の時刻が近付いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


夜と静寂が支配する世界。
 猟兵たちは村人に見送られ、ヴァンパイアの迎撃へと向かった。

 迎え撃つのはヴァンパイアの住処から村に向かう開けた道。
 ロバートが『レプリカクラフト』による【仕掛け罠】を設置した辺り。

 闇に浮かぶ無数の篝火。

 猟兵と亡者どもの戦いが、まさに始まろうとしていた。
ポケッティ・パフカニアン
ふふん、来たわねデカブツとその他大勢!ここがあんたたちの共同墓地よ!

…なんて言ったものの、意外と周りに頼もしそーな連中が多いからねー。
あたしは直接攻撃よりも、補助に回った方が良いかな?

第一に、時刻む怪盗での援護。ふふん、相手の時間を止める、なんてシンプルに便利でしょ?
攻撃の隙を作るのはもちろん、回避の時間だって稼げるんだからね!
ま、ボスっぽいヤツに狙う時は注意しないとだけどー…ザコにはガンガン使えるでしょ、きっと。

第二に、盗み攻撃で篝火を盗ってポイしちゃう作戦。
武器がなくなれば、脅威度は一気に減るでしょ?

なーんかこっちがやられたら怪しい目に会いそうだし、倒れる人が出ないようにするのが第一かな?


アーノルド・ステイサム
さあて本番だ。
啖呵を切った以上は負けられん。倒しきってみせよう。

単身で動くことはせず、他の猟兵との連携を基本とする。
斧でぶっ叩き、ぶった斬る。
もちろん味方を巻き込まないよう留意する。
なるべく、だが、村の施設にも被害が出にくいように。

要注意は炎と影だ。
延焼は面倒くさい。喰らいすぎないようにせねば。
影は中途半端な薄暗闇で戦うのが一番見えづらいだろう。
最初から照明用の炎を焚いておくか。避けやすくなれば良し。

戦闘不能のヤツを操って戦わせるんだよな?
倒したヤツは操る余地が無いぐらい念入りに“とどめ”を刺しておく。
エグいかもしれんが作成成功のためだ。

さあ、次に“こう”なりてえのはどいつだ。
かかって来いよ。




 まず最初に戦場へと躍り出たのは、ポケッティとアーノルドのふたりだ。

「ふふん、来たわねデカブツとその他大勢! ここがあんたたちの共同墓地よ!」
「啖呵を切った以上は負けられん。倒しきってみせよう」

 アーノルドは手近な獲物に近付くと、巨大なバトルアックスで横薙ぎにする。その瞬間、亡者の肉体は弾け飛び物言わぬ肉片と化す。
 豪快なパワーだけではなく、戦況を、敵の攻撃や味方との連携を意識した立ち回り。勇猛さと冷静さを兼ね備えたその戦い振りは、まさにウォーマシンと呼ぶに相応しい。
「うひゃー、すっごいゴリラ――もとい、意外と頼もしいわねー」
 仲間の果敢な戦い振りに、思わず舌を巻いた。

「これだったら攻撃はお任せしちゃった方が良いのかしら……ねぇあんた、もっと派手な技はないの? こう、連中をまとめてドッカーン!ってぶっ倒せるようなヤツ!」
「無い事はない……が、少し隙が大きいな。敵もお前さん程ではないが、それなりに小回りが利く。下手に大きいのを狙って外すよりかは、一体ずつ確実に仕留めていくのが堅実かと思うが――」
「おっけーおっけー。だったらオジサンはそのデカいの一発用意しといてくれない? あたしのとっておき、見せたげるからさ」
「お、おじ――!?」

 アーノルドの抗議は知ってか知らずか。ポケッティは敵陣に飛び込むと、その隙間を潜り抜け、縫うように飛翔する。そのすれ違い様に、ポケッティの【手のひら】が亡者の身体にそっと【触れて】いた。

「はーい、ごちゅうもーく! あんたたちの『時間』、まとめて貰っちゃいまーす!」

 ――ユーベルコード発動。『時刻む怪盗(ファントム・タッチ)』!

 パチン、と指を鳴らした瞬間。亡者たちの動きが一瞬だけ静止する。
 【時間系魔法】により【触れた相手の時間を少しだけ盗み取る】。それがポケッティのユーベルコード『時刻む怪盗』の効力だ。

「おっじさーん、後はよろしくぅ!」
「ナイスミドルを捕まえて、おじさんは辞めて欲しいモンだが――ね!」

 そういう事なら事前に説明しておいて欲しかった、そう思いながらも攻撃の準備はしっかりと整っている。

「オオオオ……ッ、リャあああああああああああァッッ!!」

 全身全霊。全体重・全膂力を込めた渾身の一撃。『技』と言って良いのかもわからない力押しの一撃が、大地を砕き・隆起させ辺り一面を吹き飛ばす!
 爆心地にほど近い亡者は無論跡形もなく、吹き飛んだ岩塊や衝撃波によって数十体の亡者がまとめてミンチと化し、大地に凄惨な破壊痕を残していた。
 こうなればもう、トドメだなんだと考える必要もないだろう。

「さァ次に“こう”なりてえのはどいつだ! かかって来い!」
 それはかつて戦闘マシーンと恐れられた戦場傭兵の姿そのままに。

「ってちょっと、あたしまで巻き込まれるところだったでしょーが!」
「あっ……」
 慌てて空中へと難を逃れたポケッティが抗議の声を上げる。
「いや、お前さんなら避けれると信頼していたからな。うん」
「うーそ! 絶対ウソ! もーばか、信じらんない。この筋肉バカ!!」

 アーノルドとポケッティのめざましい活躍によって『篝火を持つ亡者』の群れは半数近くが壊滅した。
 だが依然として、数の上ではオブリビオン側が猟兵たちを圧倒的に上回っている。

 ――まだ戦いは続いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
【「巫覡載霊の舞」を使用し、「なぎ払い」で範囲攻撃。】

敵が多いならば、まとめて切り裂いてやるまでだ。

「巫覡載霊の舞」を使用し光を纏い、技能「なぎ払い」も併用して敵の群れをまとめて攻撃するぞ。
薙刀「真朱神楽」の一閃、受けてみよ!

攻撃の際には「鎧無視攻撃」にて敵の防御が弱い場所を狙っていく。
敵の攻撃に関しては、「巫覡載霊の舞」の効果中であれば多少は耐えれるはずだ。

もちろん【仕掛け罠】は有効に活用させてもらおう。
位置をしっかり記憶し、敵だけが罠に嵌るように立ち回るぞ。
このあたりは「戦闘知識」が使えそうか?



「ふむ、確かになかなかの物量。だが敵が多いならば、まとめて切り裂いてやるまでだ」
 そう言うと、百々はユーベルコード『巫覡載霊の舞』を使用した。自らを【神霊体】と化す秘術。百々自身の高い能力と合わさり、その防御は亡霊程度では簡単に破れぬほど強固なものとなっている。
 そして百々に呼応するように淡い光を放つ、朱色の薙刀。それ自体が意志を持つかの如く、百々の手に吸い付くように馴染む。

「見せてやろうか、我らの舞を――『真朱神楽』の一閃、受けてみよ!」

 その一撃は到底、亡者などに耐えれるものではなく。真朱神楽の斬撃と共に、1体、また一体と斬り伏せられていく。
 闇を照らす篝火の群れ、その中心にて揺れるふたつの光芒――その姿は神楽と呼ぶに相応しく、ただし見惚れる暇もなく周囲の亡者たちは一掃されてしまった。

「味気ない。罠を利用するまでも無かったな」

 考えていた戦術も無駄になってしまったが、それは仕方のない事。
 百々にとってこの程度の敵であれば、相手として不足だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワーグワーク・ホットマン
「うん、豆粒ってのはこういうサイズのことだよな。あたしちげーし。それにあたしはこれから伸びるんだ、これから!」

【子供たちの秘密の抜け穴】で『地上』と『敵が小さく見える程の高空』を繋いだ空間の穴に上半身を突っ込み、上空から戦況を俯瞰しつつぷりぷりと思い出し憤慨。
(この間、地上に残された下半身はいわゆる壁尻に酷似した間抜けな姿でお尻フリフリ)

今回あたしは補助専門の後衛。
村に抜けようとする敵(特に敵戦列の端等の)は『敵足元』と『【仕掛け罠】の区域』を繋いだ空間の落とし穴で逐次強制移動。【篝火からの炎】を出そうとしてる敵がいたら、その射線上に移動させて同士討ち狙いも。

あと尻に接近されたら思い切り蹴る!


伍島・是清
別に此の戦が如何なろうが知ったこっちゃねェけどさ
好き勝手させンのも鬱陶しいから、手伝ってやるよ
ーー安い酒が飲めなくなっても困るしな。

仕掛け罠の発動に乗じて敵に接近
からくり人形をけしかける【フェイント】をかけ
実際は足元に仕掛けた鋼糸で数体の敵を引っ掛ける
「御前ら全部、俺の人形に成れ」

一体は自分の側に置き、【敵を盾にする】
残りの個体は敵の固まりへ夫々鋼糸で投げつける

ーーユーベルコード、『プログラムド・ジェノサイド』

敵の身体に括って隠したからくり人形を
敵の渦中で連続爆破

「亡者は亡者らしく、墓場で寝てろ」


クレム・クラウベル
奪うばかりか、亡骸まで弄ぶか。……気分の良い話じゃないな。
隠れる必要もない。ならば正面から。
誰か目立つ者がいる方が隙を狙う者にも良いだろう。

相手を射程に捉えたらジャッジメント・クルセイドで打ち払う。
命中させやすいとは言え無駄な手は踏みたくない。
動きを確り捉えてから、確実に。
また仕掛け罠も活用できそうなら相手をあえて誘い込み、掛かったところへの追撃を狙う。
亡者にはこれが似合いだろう。
とくと浴びろ。眠れ。――もう目覚めることのない様に。

味方に集中して攻撃されているものがいれば援護も心がける。
……これ以上亡者が増えるのは御免だからな。
後ろは見ておく。後はあんたの力で切り抜けろ。


蓮花寺・ねも
――嗚呼、厭な空気だ。
少なくとも、此処から先へ向かわせる訳にはいかんな。

皆とは適宜連携を取るように。
お互い猟兵だ、合わせる位は出来る。……と、信じている。

【サイキックブラスト】での足止めを主に。
亡者達は視覚には頼っているのだろうか。
可能なら視界を遮るように、目を潰すことを意識しておく。
ぼくは直接攻撃には向かんのでな。精々場を整える事に努めよう。

意識のないものを再利用されてはたまらん。
倒れたのが味方なら、戦闘の範囲外に運びだそう。
被害を広げる訳にはいかないのでね、後で手当をするので手荒に扱っても許して欲しい。

敵なら徹底的に潰しておく。
死は死だ。
死んだ後まで動くな馬鹿者が。



「うん、豆粒ってのはこういうサイズのことだよな。あたしちげーし。それにあたしはこれから伸びるんだ、これから!」

 戦場の片隅で、ぷりぷりと文句を言う、尻。
 だがそれはただの尻ではない。ワーグワークの尻だ。
 ワーグワークのユーベルコード、『子供たちの秘密の抜け穴』は、簡潔に言えば離れた二点を穴と穴で繋ぐ技。つまり今は【地上】と【戦場を俯瞰できる上空】の二点を繋いでいる。

「お、あいつ……あたしらを無視して村の方に向かってるな! そうは行くかっての!」
 ワーグワークは【敵の足元】に向けて『子供立ちの秘密の抜け穴』を使用した。その行き先は【仕掛け罠】の真上。
「そこで嵌ってな!」
 急に襲いかかる落下感に何が起こったのか理解も追いつかぬまま、亡者は仕掛け罠に捕らわれて動きを封じられた。



 作戦通りに事が運び、喜んでいるワーグワーク(の尻)に対して、密かに一体の“はぐれ”亡者が迫っていた。
 ワーグワーグが上空から戦場を俯瞰し自身の周囲まで意識が及ばぬその隙に、尻に向かって放たれようとする【赤々と燃える】炎――!

 ――バチチッ!

 亡者の全身を駆け巡る電撃。亡者は倒れ、その背後から現れたのは、ねもだ。

「大丈夫かい、お尻のきみ」
 ねもがワーグワークに声を掛ける。
「しかし猟兵というのは面白い人が多いのだね。ぼくも驚いたよ、まさか人間がお尻に変身するだなんて」
「だーっ! 尻じゃねえーーっ! あたしはワーグワーク、ワーグワーク・ホットマンだ!」
 ねもの誤解に紛糾するワーグワーク。しかしサイズを誤ったのか、上半身を出して抗議しようにもなかなか身体が抜けない。
 恐らくは歳や背丈の割に立派に育った身体の一部分や、ユーベルコードの同時使用による制御の不具合など、不幸な要因が重なったのであろう。
「なるほど、ワーグワーク。そうだな、お尻にも名前があって然るべきだ。ぼくとしたことが失念していた、反省しよう。ところで、『お尻のきみ』って言うと何だか身分の高そうなお尻に聞こえないかい?」
「いやいや、あんた村でもあたしと一緒に行動してただろ! まるで尻が本当の姿みたいな言い方するんじゃねー!」
「あぁ、さっきの。……光る、お尻」
「もおおおおっ! わざとか!? わざとだよな!? もう1発くらい殴っても許されるだろ、うぐぐっ……抜けねえ、もおおおっ! こいつぅうう!」
「すまない、今は戦闘中だから。――嗚呼、厭な空気だ。少なくとも、此処から先へ向かわせる訳にはいかんな」
「今更かっこつけんなぁああああ!!」

 わいのわいのと騒ぎながらも、ねもは的確に敵を足止めし、ワーグワークも尻を振りながら的確に敵を【仕掛け罠】へと誘導した。



「……ガキどもが騒がしいな」
「良いんじゃないか? 子供が元気なのは」
 亡者の群れを前に、面倒臭そうに糸で“遊ぶ”ダルそうな大人と、その知己らしき青年。
 伍島・是清とクレム・クラウベルは、それぞれ先程大暴れしていたウォーマシン――アーノルドが営むバーの常連仲間のようだ。
「しかし、あんたがわざわざ真面目に任務に参加するようなタイプとは意外だったな」
 クレムが尋ねる。クレムの知る伍島是清という男は極度の面倒くさがりで、こういった仕事の場にわざわざ顔を出すようなタイプだとは思っていなかった。
「別に此の戦が如何なろうが知ったこっちゃねェけど……連中に好き勝手させンのも鬱陶しいからな」
「確かに」
 奪うばかりか、亡骸まで弄ぶ。それは決して気分の良い話ではない。
 尤も、隣のに居る男も亡骸を素体とする点では同じ筈なのだが……それについてどう思うかは、当人のみが知るところだ。
「それに……」
 是清はちら、と遠くで雄叫びを上げるウォーマシンの方を見て。
「――安い酒が飲めなくなっても困るしな!」
 そう言うと是清は亡者の群れに向かって駆け出した。

 亡者はちょうど、各猟兵たちの【仕掛け罠】を意識した立ち回りによって、その足を削られており、動きが鈍っている。現在進行系で罠に掛かっており、罠から抜け出せずにいる個体も少なくない。
「既に罠に掛かっているのなら、楽でいい」
 そう言ってクレムは【指先】を動きの鈍った亡者に向け、照準を合わせる。
 ――亡者にはこれが似合いだろう。

「とくと浴びろ。眠れ。――もう目覚めることのない様に」

 クレムの指先から放たれた、【天からの光】。浄化の力が亡者の身体を貫き、その亡骸は塵へと還った。
「援護は受け持つ。後はあんたの力で切り抜けろ」
「ハッ、生意気言ってんじゃねえ」
 是清は自身の持つからくり人形を亡者にけしかける――と見せかけて、その本命は鋼糸による鹵獲。
「御前ら全部、俺の人形に成れ」
 五指から放たれる鋼糸によって複雑に絡め取られた亡者の肉体は、生きたままに(死んでいるが)是清の操り人形と化す。もはや身体の自由も利かず、ある者は敵陣へと特攻し、ある者は他の亡者から放たれる篝火除けの肉壁にされていた。
【敵を盾にする】。その技術に関して、是清に並び立つ者はそう居ない。
「――此れで終いだ」
 操った亡者を、ただ特攻させた訳ではない。
 その身体には手製のからくり人形が仕掛けられており、是清の意志に応じて爆破される。
 ユーベルコード、『プログラムド・ジェノサイド』。
 からくり人形たちは予めプログラムされていた指示に従い、各自適切な場所で、適切なタイミングで連鎖するように自爆していく。
「亡者は亡者らしく、墓場で寝てろ」
 硝煙燻る大地に、動く亡者はもう一体も残されてはいなかった。



 たくさんのものを見送ってきた。
 うしなわれていくすがたを見守ってきた。
 けして忘れはすまいと、憶えている。憶えてきた。
 
 だからこそ、『ぼく』は知っている。

「死は死だ。死んだ後まで動くな馬鹿者が」

 その言葉は誰にも届くことはない。
 知っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クレム・クラウベル
敵の眼前に身を晒し攻撃を引きつけつつ、【絶望の福音】で翻弄する
どれだけ速く駆けようが、事前に見えているなら恐れるものじゃない
騎兵相手に策もなくぶつかれば歩兵は不利。ならば隙を作り出すまでだ
相手が大技で来る時ほど危険を顧みずギリギリまで引き付け、隙を引き出す
ともすれば向こうの動きに気付いていない振りなども交えて
この通り無愛想なのでな。騙すのは得意だ
大技には大技を
返すなら今だ。さぁ、やってやれ

自身は射撃での牽制等、支援に注力し無理に自分からは仕掛けない
大物相手だからこそ下支えも必要というもの
存分に暴れると良い。得意分野だろう?



「ほう……家畜の中にも少しは腕の立つものが居るようだ」

 猟兵たちが亡者の群れを蹴散らした頃。そこに悠々と、巨大な黒馬に跨る騎士が現れた。
 かつて人類を裏切り、ヴァンパイアに従って戦った叛逆の騎士。彼らは『異端の騎士』と呼ばれ、恐れられた。
 生前の彼らにはヴァンパイアに従う理由や彼らなりの信念、帰りを待つ家族や恋人の存在もあったかも知れない。
 だが『オブリビオン』と化した彼らに誇りなど無く。ただ残忍で暴虐、凶悪な存在として塗り替わってしまっている。

「さて、最初に我が剣の錆となりたい者は誰だ?」
「ではそうだな、俺が相手をしよう」
 黒騎士の問いに、最初に答えたのはクレム・クラウベル。彼はその手に弓を携え、危険を承知で黒騎士の前へとその身を晒した。
「愚かな! 弓兵が前に出るなど。影でこそこそと隠れていれば良いものを!」
「おっと、それは失念していた。無策で戦っていい相手では無かったか」
 クレムはその言葉とは裏腹に、表情も変えぬまま黒騎士の甲冑の隙間――その瞳を目掛けて矢を放つ。
 この至近距離でもプレッシャーを感じさせない正確な射撃。だが相手も相手。その甲冑姿からは想像できない俊敏な動きで放たれた矢を掴むと、そのままふたつに折った。
「ふん、我が剣を抜くまでも無し。我が愛馬、『ブラックキャバリア』の贄となれ」
 黒騎士の言葉に呼応するように嘶く黒馬。その蹄がクレムを肉塊に変えようと襲い掛かる。
 だがしかし、その蹄を前にクレムは微動だにしない。
 蹄が振り下ろされ、クレムの頭部を粉々に粉砕しようとするその瞬間。半歩だけその身をずらし、まさに紙一重で蹄を避けた。
 ユーベルコード『絶望の福音』による未来予知。
 ――どれだけ速く駆けようが、事前に見えているなら恐れるものじゃない。
「……貴様、視えているな?」
「さて、何のことやら」
 得意のポーカーフェイスでとぼけるクレム。
 だが黒騎士もクレムがただの弓兵ではない事には気付いているようだ。
「ふ、くく……家畜風情がユーベルコードを使うとは。なるほど、亡者如きでは相手にならなかったのも頷ける。だが、我が『ブラックキャバリア』もまたユーベルコード。そう何度も同じ手が通じると思うな」
「そうか。ならば試してみてはどうだ?」

 無愛想に答えるクレム。
 目配せをする事もなく、胸中で思い描くのは共に戦う仲間の姿。

 ――下支えはこの程度。
 ――存分に暴れると良い。得意分野だろう?

成功 🔵​🔵​🔴​

フランチェスカ・メリジオ
【真の姿を使います】
この世界の空気のせいかな
どうにも昂って仕方ないんだ

自身の持つ書物の頁を千切り、触れもせず炎上させて準備完了
【フランチェスカ】を発動させるよ
この技で、相手の技を相殺するもよし、相手自身を攻撃するもよし
そこは集ったメンバーの戦略に合わせるとするよ

相殺するのであれば敵のフォーリングローゼスだろうか、こちらは大火力の炎だから無力化しやすそうだね

……過去が今を生きる人を襲うなんて赦されない事さ
もう一度、骸の海で眠りなよ
今度は永遠にね

◆真の姿
髪に白いサボテンの花が一輪
あちこちが焦げた小さな羽
見た目はオラトリオの特徴が出てくるだけ
自身の名を冠した技は、この時だけのモノ



「やれやれ、どうしたものかな……」
 ボクはこんなにも好戦的だったろうか、と自嘲する。
 この世界の空気のせいだろうか。
 どうにも昂ぶって仕方ない。

 フランチェスカは自身の持つ書物の頁を千切ると、それは風に溶けるように燃え尽きて消えていく。

 髪に白いサボテンの花が一輪。
 あちこちが焦げた小さな羽。
 薄桃に灯された燈の髪は、天をも焦がす焔のように。

 それがフランチェスカの【真の姿】。
 人類の埒外たる猟兵が、更なる埒外へと転じる瞬間。
 埒外の埒外。同じく埒外たるオブリビオンを滅する為にのみ存在を許されている、その力。

「過去が今を生きる人を襲うなんて赦されない事さ」

 発動。――ユーベルコード、『フランチェスカ』。

 自らの名を冠したユーベルコード。或いは自らがその名を冠しているのか。
 天をも焦がす焔の花びらが、フランチェスカの半径169メートル圏内、望んだ場所に望んだだけ降り注ぐ。
 そして勿論、今の攻撃対象は『異端の騎士』。

「もう一度、骸の海で眠りなよ。――今度は永遠にね」

 無数の焔が黒騎士へと降り注ぎ、轟音を撒き散らしながら爆ぜていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワーグワーク・ホットマン
「おおっ、かっけー馬! いいないいな、乗せてくれねーかなあいつ!」

あいつは最悪だけどやっぱ騎士ってカッコいいよな!(中世やんちゃ坊主脳)
って思いつつ【子供たちの秘密の抜け穴】で空へ移動。敵に向けて落下開始。

小さな体のパワー不足を落下の速度で補いながら、被っていたオラトリオヴェールの三角巾を足に巻き直す。
その【オーラ防御】を足に一点集中して纏えば、闇を裂く光【属性攻撃】の飛び蹴りだ。
長い茶髪を踊らせて、雷が如く真上から蹴り――の直前で『穴』を潜り『敵真横』から落馬狙いで蹴り飛ばす!

そして『穴』で花びら攻撃から即離脱。別の『穴』で仲間の離脱も援護。
これがノック(ピンポン)ダッシュで鍛えた逃げ足だ!



「ヒューッ、やるねえ。あたしも負けてらんないな!」
 ワーグワークは仲間の戦い振りに賛辞を送ると、彼女はユーベルコード『子供たちの秘密の抜け穴』を発動させる。
 繋ぐ先は再び上空。ただし今回は上半身を突き出すだけではなく、その穴に飛び込み上空へと転移した。
 小さな体のパワー不足を落下の速度で補いながら、被っていたオラトリオヴェールの三角巾を足に巻き直す。『オーラ防御』を足に一点集中して纏えば、闇を裂く光による『属性攻撃』の飛び蹴りだ。

「そのような攻撃、当たると思うか!」
 上空で光り輝くワーグワークの姿に気付かない敵ではない。その勢いだけは大したものだが、姿勢制御もままならぬ空中からの攻撃など避けるのは造作も無いこと。
「残念、当たっちまうんだよなー!」
 その雷が如き飛び蹴りが黒騎士の元へと届く瞬間、ワーグワークは再び『子供たちの秘密の抜け穴』させた。
 結ぶ二点は自身の【真下】と黒騎士の【真横】。
 間合いや方向を無視した空間跳躍殺法――それこそが『子供たちの秘密の抜け穴』
の真骨頂。
 上空からの落下によって稼いだ威力とスピードはそのままに、その蹴りは黒騎士の懐へと転移し、そのまま横っ腹を蹴りつけた!

「ぐうっ、ぬうううっ!!」
 凄まじい勢いの蹴りに咄嗟のガードも虚しく蹴り飛ばされ、黒騎士は落馬し吹き飛ばされる。
「よーっし、これでこの馬はあたしのもの……って、うわぁあ!?」
 馬に跨がり華麗にロデオ――と言いたいところだったが、ワーグワークの小さな体はブラックキャバリアからあっさりと弾き飛ばされてしまう。
 空中でバランスを崩しながらも、ワーグワークは再び【穴】を開くとそのまま綺麗に【地面】へと着地した。

「ちぇっ、もう少しカッコつけたかったんだけどなー」
 ワーグワークぼやきながら、三角巾を手に取ると自分の頭に巻き直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
【「幻鏡相殺」にて敵の攻撃を無効化、味方の攻撃のチャンスを作る】

貴殿が元凶たるヴァンパイアか。
なるほど強敵だな。
さて、流石に先ほどの亡者と同じようにとはいかぬか。
此度は我は補助に回るとしよう。

序盤は仲間の猟兵に戦いを任せ、一通り敵のユーベルコードを観察する。
初見の技まで対応するのは厳しいのだ。

その後、味方が致命打を受けかねない場合、
もしくは攻撃を無効化できれば敵に大きな隙ができるところで
ユーベルコード「幻鏡相殺」を使用する

大鏡の幻影を召喚、敵の攻撃を反射し相殺することで、
味方を護り敵に隙を作る。

攻撃は防いだ。さあ、今が攻め時ぞ!


ポケッティ・パフカニアン
なるほどねー、あれが親玉かぁ。明らかにオーラが違うわねぇ、やっぱり。

どーしたもんかなー?さっき使った技は、見られた思っとくべきよねー。
馬から落ちたから、機動力は落ちた。厄介なのは、やっぱり攻撃力。もっと言えば、ユーベルコード。
…だったら、コレかな。

狙うならバランス崩した今がベスト!時奪う幻想!飽和ナントカよ、いま撃てるだけ撃ち込む!
立ち位置は誰かの後ろ、もしくは障害物の影!さっき倒した連中の残骸でも、馬でもなんでもいいわ!発射元を見られない!

3色当たればベストだけど…今一番警戒すべきは、ナントカローゼスとかいう危なそうな範囲攻撃ね。
だったら、赤と青の蝶はオトリでも構わない。緑を当てにいくわよ!



「なるほどねー、あれが親玉かぁ。明らかにオーラが違うわねぇ、やっぱり」
 ポケッティは黒騎士の様子を冷静に観察する。

 馬から落ちたから、機動力は落ちた。
 厄介なのは、やっぱり攻撃力。
 もっと言えば、ユーベルコード。

(……だったら、コレかな)

 狙うなら黒騎士がバランスを崩した今しかない。
 ――ユーベルコード『時奪う幻想』。
 赤・青・緑、3色の蝶によって敵の能力を封じる技。

 ポケッティはその小さな身体を生かして、発射元を特定されないよう亡者の残骸へと身を隠すようにしてユーベルコードを解き放った。
「飽和ナントカよ、いま撃てるだけ撃ち込む!」
 一斉に放たれる蝶の群れ。だが黒騎士もそれを黙って受けている訳ではない。
「小賢しい虫ケラめ、構うものか! このまま轢き潰してくれる!!」
 下手な小細工など無視して、術者を叩けば良い。
 そう考えた黒騎士は多少の被弾は無視して再び黒馬へと跨がり、ポケッティ目掛けて突進を仕掛けた。
 正確な位置までは掴めない。しかし、そこら中すべて轢き潰してしまえば同じこと!

「さて、そろそろ頃合いか」

 黒馬の進路へと立ち塞がる百々。
 百々は黒騎士が現れてから今まで、ただ只管に敵の攻撃を観察していた。
 敵の必殺の一撃を相殺する、一瞬の機を伺って。

 それが今だ。

「幻なれど鏡は鏡、映りしは鏡像なれど同じ力――『幻鏡相殺』!」

 黒騎士のユーベルコード『ブラックキャバリア』は、既にクロムに対して使用されたのを一度見ていた。
 そして一度見たユーベルコードならば、幻鏡が映し出す鏡像はより本物を再現する。
 それだけではない。黒騎士はポケッティの『時奪う幻想』によってその力・速さ・魔力をそれぞれ奪われており力が削がれている。
 すべての要因が重なった時、その鏡像は黒騎士の突進をそのまま映し出し、見事に相殺した!

 砕け散る幻鏡と共にその場に倒れ、消失する黒馬。
 黒騎士は健在、されどその力は大きく削がれている。

「攻撃は防いだ。さあ、今が攻め時ぞ!」

 まさに千載一遇の好機。畳み掛けるなら今しかない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蓮花寺・ねも
手数の多さが厄介だな。
これは守りを疎かにするわけにもいくまいよ。ぼくは回復支援に努めよう。

皆が受けた傷を【生まれながらの光】で治癒。
血液量が影響するかは判らんが、傷は残らないに越したことはない。
可能な限り早く治すように。

疎かにはできないけれど、守ってばかりでも立ち行かんな。
敵の様子をよく観察する。
特にダメージを与えていそうな攻撃は何か、
動きが鈍る瞬間はあるか、
気付いたことがあれば周知を。

他に回復を任せられるなら、此方に誘き寄せて隙を作るよう試みる。
いずれ疲弊して動けなくなったら荷物になるんだ。
その前に利用できるものは利用したい。
痛みには多少慣れているし、――首が落ちなければお前を殺すには安い。


伍島・是清
理由も、信念も、存在も失った亡者の騎士
御前はまるで人形だな
自分で止まることすら出来ない哀れなもの
……俺も、あんま変わんねェけど

からくり人形をけしかけながら
周りの動きを確認
異端の騎士を自分の方へ誘導する

――ユーベルコード『領域切断』

地面の下に、宙に、仕掛け巡らせた透の絲
俺の絲に触れたあらゆるものを切断する
そのまま狙っても当たンねェだろうからさ
見えねェ絲で仕掛けて誘うよ
自分が囮となり、手痛いモンをかっ喰らっても

此処は生者の世界
亡者が居ていい場所じゃねェ
早く還れ

此処は、居場所じゃねェんだよ
御前も、俺も


秋稲・霖
【POW】

随分とお洒落な騎士サンじゃねえの!
けど、そろそろ疲れてきてるっしょ?
強くなられたり面倒なことされる前に、しっかり倒してやんなきゃね

普通は他の猟兵助けちゃうのが大好きなんだけど、今回は畳み掛けるべきだってそんな気がしちゃうわけよ
攻撃で使えそうな技能は使えるだけ使うって感じでいっくぜー!

あと、俺の相棒の式神も総動員ってわけだ
ちょっとでも縁が繋がったら、見過ごすわけにはいかねえっしょ
村の人たちは助けて、笑顔を取り戻す!

行くぜ相棒!あの黒鎧、きっちり燃やして浄めてやるよ!



「お洒落な騎士サンも、そろそろ疲れてきてるっしょ? 強くなられたり面倒なことされる前に、しっかり倒してやんなきゃね」
 軽口を叩く霖。しかし敵のパワーアップを仄めかす……それは“フラグ”というものだ。

「おのれ、おのれおノレオノレ、家畜共ガァァア! コロス、決シて生かしてハ、帰サヌゥ!!」

 そう叫ぶと黒騎士は手に持つ巨大な剣を鞘から抜き、自らの腹に、――【刺した】。
 
 甲冑を突き破り背中から生える長大な剣。
 夥しい量の血が流れ、端から見れば致命傷にさえ見える。

 だが少し様子が違った。
 鎧が、剣が徐々に変形し、禍々しいオーラを放ち始める。
 クチャクチャという咀嚼音と共に、剣と鎧が黒騎士の血を啜っていた。

「うっへぇー、何アレ、キショっ! マジちょっと流石にキてんぜ……」
 さしもの霖も、引きながらその様子を眺めている。

 ユーベルコード『ブラッドサッカー』。
 それは【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解き、【殺戮喰血態】へと変化させる技。
 しかし今回、血を流させる手近な他者というものが存在しなかった。
 ならばどうするか。――答えが“コレ”だ。

 無論、無傷とは行かない。黒騎士の体力は大きく損傷している。
 しかし今の黒騎士は血に飢えた吸血鬼そのもの。
 殺傷力だけで言えば、通常の殺戮喰血態をも大きく上回るだろう。

「理由も、信念も、存在も失った亡者の騎士。御前はまるで人形だな。自分で止まることすら出来ない哀れなもの……俺も、あんま変わんねェけど」
 是清は成り果てた騎士の姿に憐憫の情を送る。元からああだっ訳ではあるまい。彼はオブリビオンとしてこの世に蘇った時、既に彼ではない“何か”へと歪められてしまったのだ。

「行けるか、妖狐」
「もちのロン。霖だぜ、旦那」

 ふたりは互いの得物を携え、狂える騎士の討伐へと乗り出した。



 ――戦いは苛烈を極めた。

 是清の手繰る鋼糸。霖の放つ式神の炎。
 それぞれ見事なものだったが、基本的な威力では黒騎士が上。
 四方八方とフェイントを織り交ぜながら勝機を狙うが、あと一歩、決定打を叩き込むには僅かな隙が足りていない。

(……手数の多さが厄介だな)
 仲間の傷を癒やしながら、ねもは冷静に観察する。
 苦手とする攻撃、動きの鈍る瞬間。何か打つ手は無いかと必死に探る。
 だがあの騎士に、隙は無い。

 隙が無いならどうすればいい?

 このまま戦いが長引いても疲弊するだけだ。
 あと数刻もせずに、ぼくは動けなくなりお荷物になってしまうだろう。
 利用できるもの。そう、なにか。

 ねもは回復の手を止めると、その場を駆け出す。



「はぁ……ッ、はぁ……、オイ、生きてるか霖!」
「生きてるよォ! ったく、いい加減にして欲しいんですけど、あの黒鎧ィ!」
 是清と霖は互いに大きく息を切らせながら黒騎士と対峙している。
 ふたりはお互いに体力が限界を迎えつつある事を悟っていた。

「訊け、霖。いいか、俺が囮になる。手痛いモンをかっ喰らっても、この絲でがっつり捕らえてアイツの動きを止めてやる。その隙に御前が殺れ」
「はぁっ!? そんなん良い訳ないっしょ! 囮すんなら俺の方が、って言うより悔しいけど俺ひとりの火力じゃ黒鎧を仕留めきるには厳しいって!」
「だったら他に良い案でもあんのか!? 御前も男なら腹ァ括れ!」
 そう言いながら、是清も頭の中では理解していた。霖の言い分にも一理あり、是清と霖、どちらか一方の火力では黒騎士を倒しきるには至らぬだろうと。

「ううん、そうだな。腹を括るのは良いのだが、ぼくは男というものではないのだ。一応ね」
「あ……?」「うぇっ……?」

 そう言ってふたりの間を通り抜けていく小さな影。
 突飛過ぎて、まるで反応できなかった。
 まるでスローモーションのように流れていく風景。

「来たまえよ、そこのきみ。ぼくの血は、とびきり甘いぞ」

 黒騎士は眼の前のご馳走へと飛び付くと、その欲望のままにねもの肩口へと喰らい付いた。血を啜る者(ブラッドサッカー)の名のままに、喉を鳴らしその渇きを潤していく。
 辺りに鮮血が飛び散った。だが、ねもの表情が苦痛に染まる事は無かった。ただ、淡々と。
「痛みには多少慣れている。首が落ちなければお前を殺すには安い」
 ねもの聖痕が光る。
 聖者の血、それは転じてヴァンパイアにとっての毒となる。

「巫山戯るな……、巫山戯るなよ、御前!!」
 その怒りは誰に向けたものか。しかしこの隙を逃すことは許されず、是清は幾重にも鋼糸を繰り上げると、黒騎士の周囲に絲の結界を作り上げる。
「くっそぉおおお! 頼む、相棒!!」
 霖は全身全霊、ありったけの霊力をその符に込めて、式神を放つ。

 ――『領域切断/祓い彩れ、桔梗花』!

 ふたつのユーベルコードが重なり合う。
 幾重にも切断された黒騎士の肉片が青紫色の炎を上げて、灰になるまで灼き尽くされた。



 かくして、村の平和は守られた。
 これによって村の永続的な平和が約束されたわけではない。
 しかし、猟兵たちの活躍によって救われた命は確かにあった。

 猟兵たちは村へと帰還すると、備蓄された食糧によるささやかな宴が催されたという。
 その片隅で延々と正座をさせ続けられた約1名を除いては、概ね幸せな結末だったかも知れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2018年12月19日


挿絵イラスト