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明夜の冥契

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●幾千夜を越えて
 この月も何度目か、やはり私は露台に立つのであった。
 下の諄い舞踏会を透明にしてくれる風さえも、どうやら水銀が渦巻くような胸苦しさは攫ってくれないらしい。ただひたすらに、真珠色に変わってしまった髪を靡かせるのみである。
 眼前の扇状に広がる景色は、今までに手に入れた富、名声、そして権力のシンボル。全てを手中に収めた者と言われる私だが、それでも一欠片抜け落ちていて。
「XXX様」
 静寂を破る嗄れた声。
 こんな夜更けに、ノックなしで私の名を呼ぶ奴など振り返らずともわかる。
「何だね、バトラー」
 イエスの応答の後、奴は簡潔に一言述べた。

「姫君が、見つかりました」

 ──ついに。
「見つかったか……!」
 この日を、この言葉を待っていた。
 醜怪なる一掬の音が冷え切った胸に鋭く、しかし優しく炎を灯し、私の心をじんわりと満たしていく。
 嗚呼、ジュリエット。
 紅色に満ちたグラスを星に透かし、その光を全身に浴びる。
 今宵、貴方と──。

●明夜の冥契
「執着心の強いヤツってどう思ウ?」
 グリモアベースに映される、寂れた光景に射すメゾソプラノ。アタシはヤダ! と幼気に舌を出す女は、グリモア猟兵のベガ・メッザノッテ(残夢紅華・f00439)である。
 猟兵たちを取り巻くのは、ダークセイヴァーの痩けた村。明るくなる様子のないその空には厚い雲が広がり、鈍風が頬を拭う。どうやら今回はここに行くらしいと察する彼らに、彼女は話を続けた。

 昨夜、とある村の娘一人が突然姿を消した。
 少女の名前は、ジュリエット。事件の時刻、村の地主である彼女の家では非常にささやかではあるが、舞踏会が開かれていた。ジュリエットは、その際に御手洗に行くと席を外してから戻らないままだと言う。
 そしてその時に会場のテラスへ降り立ったのは、黒の化身──一体のヴァンパイアだった。この村を含め多くの領地に圧政を敷き、十重二十重に重税を課すことで村の住民の間では有名であるヤツが、何かを抱きかかえて自ら主として君臨する城へ帰っていくのをベガは視た。そのヴァンパイアの腕の中にあるものについて詳しくは不明だが、サイズと時間的に考えてジュリエットであることは間違いないだろう。
「あの城のなかにいることは確かなんだけド……ジュリエットの詳しい居場所や安否ハ、残念ながら今のところ不明なノ」
 しかも、と向こうに投影された城を指差しながら彼女は続ける。そのジュリエットに関して、『姿がわからない』とのこと。家族の証言から、ブロンドの髪に紫の瞳を持つ少女ということはわかったのだが、何せこの世界にカメラを作る技術はなく、貴族でもないただの村娘の肖像画などもあるわけがなかった。
「それとネ、テラスには幾つかプランターがあったんだけド、全部割れず綺麗なままなノ。……普通、いきなり連れ去られそうになったら抵抗するよネ?」
 自分より力の劣る不審者に出会ったら、その辺にあるものを投げて対抗するのが一般的な行動と考えられる。その痕跡すらなく、そしてベガは確かに短時間でテラスを離れたヤツを視たのもあり、もしかしたらヴァンパイアとジュリエットは知り合いなのかもしれない。
「でモ、いくら仲が良くたって誘拐はダメだと思うナー!」

 また、無彩色の世界にぽつりと砥粉色に浮くその城は、ダークセイヴァーへテレポートすれば嫌でも視界に入るだろうが、その城に辿り着く前には薔薇の都が立ちはだかる。迷路とまではいかないが、夜闇や天まで伸びる蔦と棘が邪魔をするので、正面玄関を見つけるのは簡単なものではない。仮に入口を見つけられたとしても、門番にヴァンパイアでない、さらに猟兵だと知られてしまえばもちろん城には入れてくれないだろう。
「おまけニ、アイツの城内の詳細も今のところよくわからないんだよネ……そうそウ、聞いた話だとアッチでも舞踏会が開かれてるらしいヨ。何故だかわからないけド、仮面をつけて踊るんだっテ」
 混ざってみるのも面白いかもねと笑うベガは、昏暗へ猟兵たちを導いた。


水蜜莉紅
 お世話になっております。水蜜莉紅と申します。宜しくお願いします。
 以下、纏めと補足になります。

●1章に関して
 薔薇園の入口〜城内侵入までです。

●2章に関して
 2章冒頭に注意書きを記すので、それを読んでからプレイングを行なっていただけると助かります。

●ジュリエットについて
 ヴァンパイア城のどこかにいます。生きていたとしても、無理に救出する必要はございません。

●敵(オブリビオン)について
 ヴァンパイア……2章を切り抜けたのちに顕現します。彼の背中の赤い翼が、空中戦を可能としているようです。

●キャラの行動などについて
「この人と一緒に行動する!」などありましたら、作者ページ上から二つ目を参照していただけますとプレイング文字数短縮できます。

 それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『血の薔薇園』

POW   :    大胆に行動

SPD   :    慎重に行動

WIZ   :    アイテムや特技を活用

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

執着心、か…治める者としては必須ではあろうが、異性への執着は些か見苦しくはあるな。
だが、執着する者を無下にするのもまた愉しきものよ。

さて、まずはこの薔薇園の突破からか。
闇雲に動いても意味はあるまい。
黒の血玉より使い魔の蝙蝠を放つと共に、UC:ヴィーダーゲンガーを使おう。
162にも及ぶ、五感を共有する腕だ…数の多さ故に集中力を保つのは難しいかもしれぬが、そこは使い魔からの情報で補いたい。
上手く入口を発見出来れば悠々と歩いて向かおう、息が上がっていれば門番に不信を抱かれるかもしれぬ。
その門番は、誘惑で堕とせるか試してみよう。
我の装いと色香にどれ程抗えるか見ものだな…ふふっ。

※アドリブ歓迎


リュヌ・ミミティック
ん、おー、しり、あ、い、で、も、たし、か、に、誘拐は、だめーだ、よー!
ん。……で、も、ジュリエットさん、も、なに、か、思う所、が、ある、の、かなー?

【目立たない】ように黒っぽい服にして、耳や尻尾も隠しておこうかな
小さいし、こう…隙間とか利用して、蔓の方は頑張れそう。
あ、仮面、もあったほうがいいよね…もしも潜入できたら、仮面漬けた方が違和感なさそうだもの

一応、戦闘の際は狐乃火焔で戦うよ!
どうしても必要そうなら灯りがわりや、蔓を切ったりするのに使えないかな…?

ん、猫憑き季月、ダフィット、一緒、にが、ん、ばろ、ね!

・捕捉
「ん、」「ん。」「ん、おー」など会話の最初につく
変な所で区切って喋るのが癖



 ほんの少し欠けた月に、赤と青は透ける。ひらり、ひらりと舞い落ちるそれは、空の流す涙のようで。
 葉と花弁の絨毯へ踏み入れるフォルター・ユングフラウ(嗜虐の乙女・f07891)とリュヌ・ミミティック(妖狐の竜騎士・f02038)を、花園はサラサラと夜風に揺れて歓迎した。……花園というよりは籠や檻という方が正しいか、蔦は二人の背を優に超えているのに加えて夜陰により黒い金属に見えてしまうのもあり、せっかくの隧道も監獄にしかみえなかった。昇ることのない陽が射せば、なんて思う暇も惜しんで進んでゆく二人の猟兵の見る景色は、さほど変わらず。
「執着心、か。治める者としては必須ではあろうが……」
 異性、さらにもし想い人に向けられるのであれば、至極不細工なものである。呆れて溜息を吐くのもまたそれは一手だが、それでは勿体ない上につまらない。──飢える者を、邪(よこしま)に嬲ってこそ。
 汚濁を鞭打つ愉しみに、フォルターは唇を濡らす。
「ん。しり、あ、い、でも、誘拐は、だめ、だよー!」
 黒髪の乙女の一歩前、尻尾をぱたぱたと振りながら歩くリュヌは、蜘蛛足状に分かれるルートの連結部分にでる。コピーアンドペーストされたそれらの道は、まるで猟兵たちを城へ通さないようだ。
「果せる哉、このまま歩くのは闇夜に礫というものか。……何、恐れるものではない」
 指輪に口付けをし、黒天鼠を糾う。
 不思議そうにこちらを見つめる同行者へフォルターが披露するのは、百六十二の腕。彼女の足元から呼ばれたそれは肱を感じさせず──蛇のように濃緑の壁を浸食してゆく。
 間もなく二人の元を離れた無数の腕と使い魔は、地と空から城への道標と成った。さあこちらへと猟兵の前に降りる蝙蝠へ、リュヌは目を輝かせながら手を振った。
「んー、猫憑き季月、ダフィット、僕ら、も、がんばろ、う、ね!」
 さあ負けていられない、と相棒のぬいぐるみを抱きしめるリュヌは、手のひらサイズの狐を繰り出す。暖かな光を召す彼らを、空飛ぶ蝙蝠へ追わせた。
「これ、で、明る、く、なりまし、た!」
 頭上からの狐のランタンにより、ふんわりと足元は彩りを増す。零れるような笑顔を向けるリュヌに、フォルターは表情こそ変わらないが返事の代わりに頭を軽く撫でた。
「れっつ、ごー!」

 麦藁色の尾を持つ少年と使い魔の行列に沿って一歩進む度に、装飾を纏い尽くした建物がこちらへ近付く。
「……気に食わぬな」
 その途中、フォルターはふと気になり視線を向けた薔薇は、蕾まで血を垂らしたように艷めく──いや、これは。
 彼女の目に映るのは、花弁から滲み出たとろみのある液体と、その真下の赤の水溜まり。一雫が波紋をつくるまでの一連は、フォルターに苛立ちを覚えさせた。
 我の懐中を、奪うというのか。
 一瞬、眼前の人を揶揄うようにドクンと脈打つのを見逃さず。どうやらコレは、『植物として』以外にも生きているらしい。鼻の先で蠢く一輪を、彼女自らの手で引き剥いだ。

 テレポートの場から城までは、思っていたよりも遠くはなかった。足の疲れを感じさせる前に最後のアーチを潜り抜けると、玄関を支えるロマネスク調の柱が見え、ギラつく上層よりも明るさを抑えたランプがその下に立つ青白い番人の顔を照らしていた。
 自慢の耳と尻尾は、今だけは隠して。
「ん、こんばん、は。お招き、あり、が、とー!」
 怪しくないようにと仮面をつけたリュヌは、ぺこりと頭を下げる。ゴシック調の服装とその振る舞いから、門番は舞踏会の参加者だとあっさり判断した。
「今晩は。遠い所から前夜祭にお越しくださり、誠に有難う御座います」
 前夜祭──。マントの下のリュヌの大きな耳は、確かにそう聞き取った。
 何の前夜祭かはわからないが、メインイベントが開かれる前なら、ジュリエットは生きているのかもしれない。もしそうであれば、舞踏会会場、もしくはそのイベント時にジュリエットが姿を現すことも十分に有りうる……。
 幼いながら思考を巡らす妖狐をお構い無しに、城の彼は営業用の微笑み付きで丁寧に深々と一礼をする。
 しかし上げられた顔に張り付く口は、弧ではなく一直線を描いていた。
「後ろの方は、お連れ様でしょうか」
 灯明の光に陰られた双眸は、リュヌの後ろに立つフォルターを捉える。
「ん、おー。この、方、は……」
 先程の門番の言葉に気を取られていたのみならず、仮面をつけずに堂々とするフォルターの言い訳など直ぐには思いつかない。さらには凍りついた視線も突き刺しきて、リュヌは言葉に詰まった。
 しかし当の本人は一ミリたりとも動じることなく、ゆっくりと番人へ歩み寄る。
「旧友の祝福の為、態々この我直々に足を運んでやったのだが……ここの主は、部下の躾もならない残渣だったか」
 そう、ここまでは全て彼女のシナリオ通り。本日初めてリュヌの前に立つフォルターは、門番の足先から腰骨、そして首を舐めるように睥睨を返した。突然顔を近づけられた門衛は驚きを隠すことなく一歩下がると、丁度視界に乙女の豊潤な身体と妖麗な目鼻立ちが入り、恐怖と興奮で喉が鳴る。
「……はは、何、冗談だ。仮面は他客の様子を見てから選ぼうと思っていたのだ、許せ。高潔な種族らしい、場に合った儀礼を心がける。それでこそ、我らがヴァンパイアというものだろう?」
 それに、と畳み掛けるフォルターは、仰け反る男門番の顎を右手で引き寄せた。
「この瞳を見ても、まだ疑うかね」
 彼女に面に咲く一対の薔薇は、煌々と脳を蕩けさせて──。温血を求めるその眼差しは、確かにヴァンパイアの血が通うことを示していた。陽の光よりも鋭い棘で視覚を奪われた番人は、透き通るような彼女の指から解放された今も、ぐらりと虹彩を揺らす。
「……失礼致しました。どうぞ、中へ」
 調子を整える男の咳の後、分厚い扉は重苦しい摩擦音をたてながら開かれた。
「んー、お菓子、あ、る、かな?」
 絢爛豪華な内装には目もくれず、リュヌは正面の階段を一気に駆け上がる。お菓子が食べたいのは本当だが、一番乗りで城へ侵入した猟兵として門番に怪しまれぬよう、玄関の様子を素早く把握する。
 舞踏会は階段の踊り場から右の道を真っ直ぐ進むと着く会場で開かれているらしいが、人気の感じられない左の道にもまだ部屋があるようだった。室内がどうなっているのか少々気になるところではあるが、そこは後からくる猟兵たちへ任せることにしたリュヌは、目線ほどの手すりの後ろで飛び跳ねる。
「ん、フォルターさ、ん。こっち!」
「そう焦るな。今行く」
 典麗なる王宮に、こうして招かれざれし子供の声とヒールの音が響き渡るのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。二人の関係がわからない以上、
何を話しても憶測にしかならない…
人間模様が気になるけど、今は別の事を優先すべき…ね

事前に防具を改造
存在感を強化する誘惑の呪詛を施し、暗視機能を強化する
さらに吸血鬼に変装し、壊れた黄金の仮面を身につける

…薔薇の都は【吸血鬼伝承】を発動
第六感を信じて真っ直ぐ突っ切って正面玄関を目指す
蔦と棘が壁になっている場所は霧になって突き進む
城の壁沿いを進んでいけば、やがて玄関が見えてくる…はず

…正門に到着したら吸血鬼らしく振舞い門番を騙す
吸血鬼流の礼儀作法に則った高慢な挨拶をする
“旧い知り合いの招待”や“領地から飛んできた”等、
明らかに人間では無い上位者の存在を匂わせる



 褪紅の流れに身を任せれば、敷かれた路など闊歩せずとも塔へ着くことなど容易いもの。目的地を仰視するリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、瞼を下ろして白金の髪を霧へ溶かす。
 天啓を得た彼女は、迷うことなく真正面の蔦の行き止まりに靄の身体を投じた。薔薇を試着するように進むその姿は、次々と服を着ては脱ぎ捨てて。
 その都度脳裏に過ぎるのは、消えたジュリエットとオブリビオン。二人の間に何かしらの関係があることは間違いなさそうだが、憶測を超える情報のない今、考えるだけ徒爾か。近付く度に背を伸ばす蛭の窼に比例して、腹の中が沸々と湧きあがる。
「この私が──」
 あの城のヴァンパイアを討つのだ、と。

 神籟を辿る刹那、城とは咫尺の間になる。そろそろかと夜霧を散らして舞い降りるリーヴァルディへ、突如後ろから宛てるのは柔らかな声。
「こんばんは」
 肩越しに見る場に立つのは、赤銅色の晴着に犬歯を携えた柔和な女性だった。
「……どうも」
「貴方も舞踏会に招かれたのね。道中全然他の方に会わないものですから、不安で。……ここへは、お一人で?」
 生きるヴァンパイアを眼前にし、リーヴァルディの脈が速くなる。滾る激昂を堪え、なんとか組みつく前に頷き返す少女は相手から視線を逸らした。
 しかし女性の顔は僅かではあるものの曇りをみせ、目の前に現れた生物をじっと見つめる。
 ──まさか、猟兵であると気づかれたか。
 警戒するリーヴァルディを置き去りに、ヴァンパイアの女は再び口を開く。
「……お相手の話を聞く限り、ここの主は自分の歳に相応しくない少女を好むらしいの。その方に招かれた客なら似たようなセンスをしているかもしれないわ、どうか気をつけてね」
 最も、凛々しい貴方なら狙われても大丈夫でしょうけど、と付け足す悪鬼は、どうやら十四歳のリーヴァルディを心配してくれているようだった。ほっと安堵の溜息をついて、女性との適当に会話を受け流す。
 にしても、夫人の口から放たれる『お相手』という言葉。これがジュリエットのことを指すのだとしたら……。嫌な予感が、的中しないと良いのだけれど。

 どうせ行先は同じなのだからと、二人は小話を挟みながら共に玄関へ訪れた。まずは同行するヴァンパイアの女性が門番へ挨拶をする。
「ヴェロネージの街から参りました。今宵はお招きいただきありがとうございますわ」
 ドレスの裾を摘み、深深と頭を下げる。その慣れた手つきは、地味な色のドレス割に位の高い貴族であることを示していた。
「……右に同じく。旧知の知り合いの祝儀と聞いて」
 典雅な礼に続き、お辞儀を一回。感情を零にした面立ちとシニカルな眼光は、人間味を感じさせない。獲物こそ相反するが……狩るモノとしての威勢は、番人にも通じたようで。
「今晩は。前夜祭にお越しくださり、誠に有難う御座います。……と、これはこれは。あのロザライン嬢では──」

 ドン。

 台詞を言い終わる前に門番は吹き飛ばされ、強打した後頭部を押さえて倒れ込む。
 一瞬、何が起こったのかわからなかったリーヴァルディは高く上げられた夫人の足を見て、門番の顔面を蹴り飛ばしたのだと理解した。
 扉の硝子に反射する女の表情は先程とは正反対の、澱を見るような目で男を注視する。
「全く、何のための仮面だと思っているのかしら。家臣もすっかり主に似ちゃって、低脳で無礼ね。……下がりなさい。邪魔よ」
 扉の前で呆然とする門番へ、さらに鈍い音を重ねて道を拓く。
「……」
 足元に転がってきた門番の鼻からは、赤黒い血が流れていた。
 年増に気遣いとも言える挨拶を返しただけでこの理不尽な仕打ち、ヴァンパイアとしてのプライドがへし折られて悔しいだろうに。しかし門番としてこの城に立つ以上、男は鋸状の歯を食いしばることしか出来なかった。
 ──なんて、汚い。
 たったこの一言の感想は、ヴァンパイアとしての本性を纏めていた。
 当たり前のようにさっさと通り抜けて行った吸血鬼は、鼻歌を歌いながら階段を上る。踊り場を目指すその途中何かを思いついたのか、一度だけこちらを振り返った。
「そうだ、三日月のお嬢さん。アイツ多分上にいるから、私の分まで痛めつけておいてくれる?」
 三日月の──目元を飾る、壊れて欠けた金の仮面のことだと気づいたリーヴァルディに向かって、ロザラインと呼ばれた奴は何かを投げる。咄嗟に差し出した少女の両手には、古びた鍵が握られていた。
「それでは、私はこれで」
 再びカオに仮面を付けて去る女は、本来厄鬼である筈だが……処刑の権利を譲り受けた彼女にとっては、果たして幸運の女神となるのか。
「ぐ……っ、なんだよあのババア!」
 少なくとも今判明することは、コイツに差しのべる手などないということだけ。
「憐れ、だな」
 小声で愚痴を零す門番を横に、リーヴァルディも先を急いだ。

 響き渡る鐘は、亥の刻を知らせる。村の光害も沈み、不死の王者としてようやく吸血鬼は覚醒して。
 しかしあんなに賑わった大理石のアプローチには、相変わらず門番が一人。
 結局、垂れ落ちた血痕のみが残された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アウレリア・ウィスタリア
WIZ選択

上手くいくかはわかりませんけど
ボクは元々黒猫の仮面を着用しています
なので舞踏会の客に変装しましょう

真黒なドレスに楽器を手に
楽団員としてまた来場客としても恥ずかしくない格好を

こんばんは
遅くなってしまいました
この度はご招待ありがとうございます

あまりお待たせするのも失礼ですので
さっそく会場での演奏に参加させて頂きますね

そう遅れて到着してしまったように装い
自分への検査などは最低限になるよう気を付けましょう
急いで会場入りしなくてはご領主さまにお叱りを受けてしまいますからね

誘拐されたらしいジュリエット
話を聞く限り気になる部分はありますが
彼女のことは別として人々を害するヴァンパイアは…

アドリブOK


ムルヘルベル・アーキロギア
どうにもきな臭いのであるな……
ヴァンパイアの狙いがいまいち見えぬ、ただ血を吸うだの痛めつけて愉しむというわけではないようだが……
愛欲だとすればなおさら面倒な手合いよな、オブリビオンの親愛にろくなものなどあるまい

なんにせよ、まずはワガハイ自作のガジェットである『金縁の片眼鏡』を使い、侵入に適したルートを〈視力〉で分析する
可能であれば他の猟兵と連帯し、得た情報を共有したい

しかし、薔薇の花園であるか
そして攫われた娘の名はジュリエット
同じ名の娘を描いたさる歌劇では、こんな台詞もあっる
『薔薇と呼ばれるあの花は、他の名で呼ばれようと甘い香りは変わらない』
はてさて、ヴァンパイアめは何に惹かれて事をなしたやら


ジャンヌ・ストレージ
拐われた娘、ジュリエットっていうのね。私の大事なジュリエッタ(人形)と似た名前、放っておけないわ。

蔦でお城の入り口が分かりにくいなら、ジュリエッタを操って蔦をくぐって道を探してもらうわ。敵の行き来がある筈だから開けた道があるはずよ。
もしトゲでジュリエッタのお洋服が破れたら替えに着替えさせるわ。

入り口を見つけたら舞踏会の参加者を装って入る為に仮面を着けるわ。それですんなり入れたらいいけど、無理そうなら『余興の為に練習してきたのに』とバウンドボディで飛んだり跳ねたりして騒ぐわ。あまり騒がれると仕事に支障があるでしょうしきっと通してくれるわ。無理矢理だし恥ずかしいけれど。

他絡み、アレンジ歓迎よ。


枯井戸・マックス
「これは果たして誘拐か。はたまたオブリビオンと人間の結ばれざる悲恋の成就か。それとも……店で披露するゴシップ話しにはうってつけだな。どれ、本腰を入れて調べるとするか」

◇SPD
これ程立派な薔薇園は滅多にお目にかかれない代物だ。破壊して進むのは惜しいな。

しょうがない、手堅く道順に沿って進むとしよう。
分かれ道があれば「第六感」で、隠された道があれば「封印を解く」で対応だ。
迷路として作られた訳でもないならそれほど苦労もないだろうし、ここで変に騒ぎを起こして警戒される方が面倒だ。

しかし何があるか分からない。
武器として小回りが利き、物音も立てない天秤座の杖(オリジナル武装)を構えて進むとしよう。


フランチェスカ・メリジオ
執着心の強い男かぁ
なにやらありそうな感じがするし
二人の関係が気になるところだね!

【WIZで行動】
とりあえず薔薇の迷路を抜けようか
誰か頼れる人が居たらくっ付いていこうかな
ボクひとりだと、このアセイミで蔦切りながら強引に進むしかないんだよね

抜けたら抜けたで次の問題だ
仮面は白いベネチアンマスクを用意してきたものの……
いやぁ、ボクさぁ所謂……聖者なんだよね
ヴァンパイアだって言うの無理がない?
誰かの従者のふりとかさせてもらえないかな

どうしようもなかったら、ダメ元で関係者のフリしてみよう

※いつもながらアドリブ歓迎だよ!



「どうも、きな臭いのであるな……」
 夜闇、夜気ともに深まる頃、乳白色の髪を揺らしながらムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)は吸血鬼の敷地へ立ち入る。その顔に浮かぶ懐疑心の矛先は、やはりあの二人──。
「ヴァンパイアと、ジュリエットのことね」
 私も少し怪しいと思うわ、と静かに笑うジャンヌ・ストレージ(少女を抱く者・f08146)。彼女の所持する人形は、ジュリエッタ──偶然にも、拐われた少女の名前によく似ていた。
「きっとこれも何かの縁。放ってはおけないわ」
 あなたもそう思うわよね? と腕中の子の頭を撫でる彼女は、藤の瞳を閉じて願いを込める。
 研究所から抜け出したあの日のように──どうか、私を導いて。
 ジャンヌの声に応えるジュリエッタは、霊能力を借りてふわりふわりと綿毛のように猟兵たちの前を歩み始めた。どうやら、ここから城までの最短ルートを探してくれるらしい。
 その赤眼の先導の後ろで、キラリと自慢の丸サングラスを光らせる男は、訝りを顕した。
「果たしてこれは誘拐か、それとも……」
 オブリビオンと人間の、結ばれざる得恋なのか。
 どちらにせよ自らの経営する店での良い話ネタになりそうだと、枯井戸・マックス(サモナー・ザ・アーティファクト・f03382)は心を躍らせた。
「考えれば考えるほど、二人の関係が気になりますね」
 以上四名の猟兵の列は、闇に黒の演奏服を溶融するアウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)が最後尾を務めて進んでゆく。

 城をぐるりと囲む薔薇園は、飽く迄も花を楽しむために開かれているのであって迷路として設けられた訳ではない。馬車道から城までの、一時の退屈しのぎ故に複雑な造りではないと予想したマックスの通り、ジュリエッタは時計の針がそう進まぬうちに猟兵たちを入口付近へ案内した。
「ありがとうジュリエッタ。……ああ、可哀想に」
 ジャンヌの腕の中に帰る彼女の雪肌には土汚れが付着しており、綺羅は薔薇の棘により枯れてしまっている。
 急いで着替えを、とはたはた駆け足で蔦の影に移動するジャンヌに代わり、金縁の片眼鏡越しに辺りを見渡しながらムルヘルベルが先頭に立つ。
 花園入口より見た姿から随分大きくなったシルエットは、ヴァンパイアの住む都とあって光を取り入れようとしない。左壁の、ズームによってなんとか見える窪み……恐らく小窓があるのだろう、そこが唯一玄関以外に突破出来そうな場所だった。
「仮面を持つオヌシらは、この道を辿ると良い。ワガハイはこの奥にある窓から侵入し、合流を試みよう」
「あ、それボクも一緒に行って良いかな?」
 各々の行き先へ進もうとする時、俄然蔦の壁の向こうから若い女の声に、猟兵たちは目を光らせる。
「……どなたですか」
 ここに来て敵襲か。もし相手が吸血鬼ならば、水火も辞せず倒すしかないだろう。固唾を呑むアウレリアが、そっと耳を近づけた瞬間──。
「わ!」
「きゃっ……!」
 花々から顔だけ覗かせるのは、声の主──フランチェスカ・メリジオ(ノイジィブライト・f05329)だった。
「いやー、驚かしちゃってゴメンね。ボクもあっちから入ろうと思ってたんだ」
「舞踏会用の仮面をお持ちでないのですか?」
「いや、一応仮面は持っているんだけど……」
 よいしょと顔を緑壁から引っこ抜き、道を回って猟兵たちの目の前に現れた彼女の姿に一同納得する。
「確かに、ヴァンパイアがその光を好むとは思えないわね」
 そう、フランチェスカは荘厳な光を司る聖者だった。傍にいるだけで周りの人々を癒すその輝きは、試しに着けてみたヴェネチアンマスク程度で誤魔化せるものではない。神の化身ともいえる彼女が、古来より敵対する吸血鬼の城を行進することは殊更に許されないだろうことを理解したジャンヌは、ムルヘルベルへ視線を送る。
「同行については勿論歓迎である。遅れずに、しっかりワガハイに着いてくるといい」
「大人数だと悪目立ちするだろうし、二、三で分かれりゃ丁度良いな」
 ジュリエッタの着替えを済ませ、戻ってきたジャンヌに挨拶するフランチェスカを加えた第三陣の賑やかな五人は、また後でと二手に分かれた。

 ホワイトオパールの賢者と自信に溢れた錬金術師を見送り、正面から侵入を試みるアウレリアとジャンヌ、そしてマックスは、薔薇園からそっと顔を覗かせて玄関の様子を伺う。
 他の招待客の影はなく、玄関に立つ番人はたった一人と切り抜けるのはさほど苦労しなさそうだが……我々がここに来る前に何かあったのか、床には掠れた赤インクが染み、げっそりとしたヤツの鼻には何故か白い布のようなものが詰められていた。
「あらあら、物騒ね」
「ボクたちが来る前に、喧嘩でもあったんですかね……」
 痛々しい光景に星屑程の不安を抱くアウレリアは、ショルダーキーボードを肩から下げる。遅刻してきた楽団員として乗り込もうとする彼女は、深呼吸をしてから一番手に玄関へ訪れた。
「こんばんは。遅くなってしまい、すみません」
 駆け足で現れた黒猫の仮面の少女を通そうと、門番はドアハンドルに手をかける……が。横切る瞬間、柔らかな白の片翼が生えたのを見た彼は、血相を変えた。
「止まりなさい! 雲上からの客など、ここの主はお呼びではありませんよ」
 怒号とともに振り上げられたのは、不健康な細い腕。
 血液を好み、偏食がちな吸血鬼の身体はつつくだけで折れてしまいそうだが、そこに貼りつく鋭利な爪は、立派な彼らの武器である。一度喰らえばじわりと広がる痛みに苦しめられる上、傷口から呪詛をかけられてしまえば、死に至ることもあり油断ならない。
「まあまあ、焦せるなって。そんなんじゃ美味い珈琲は淹れられないぜ」
 乱暴にアウレリアを捕らえようとする門番の肩を掴み、マックスが間に入った。
「この嬢ちゃんの衣装、背中の翼が鍵盤の色とお揃いでカワイイだろ?」
「えっと、今日の舞台のためにオーダーメイドで発注したんです」
 とかなんとか言ってこの場を乗り切ろうとするが、それでも怪しむ門番へすかさずジャンヌが仕掛ける。
「私も今夜のためと思って、折角練習したのに……。このままでは余興の時間に間に合わないわ。早く通して下さると、嬉しいのだけれど」
 雲母の輝きを放ちながら門番を軸にして、駄々をこねる子供のようにな輪舞を披露した。その弾力のあるステップは吊り下げられたランプを揺らし、乾いた金属音を増幅させながら留め具から零れ落とそうとする。
「まだかしら、まだかしら」
 仮にここで大きな物音を立てれば他の警備員まで駆けつけるはめになり、また舞踏会の一時中断などと多くの人に迷惑がかかる。主の信頼を失わないためにも特に大切な客が招かれる今夜、ここで騒がれるなんてことは何としても避けたい。
 三人のマスクをしげしげと見つめてじっくり悩み抜いた結果、門番は聞こえないくらいの舌打ちをした。
「……わかりましたから! どうか、お通り下さい」
「ありがとな、兄ィちゃん」
 仮面で隠せないイラつきを露わにする彼へ丁寧な一礼の後「良い夜を」と付け加えるマックスの顔は、仮面そのものが笑うように見えるのであった。
 
 一方その頃、ムルヘルベルとフランチェスカは、エントランスから見て左の窓から進軍しようとしていた。しかしその口は自分達の背の倍ほどの位置にあり、思い切り手を伸ばしても届かない。
「流石、面の端然なる貴族の住処。やはり梯子など放り置いてはないか」
 地面に庭園整備用の道具なども落ちておらず、また届く距離に手足をかけられる場所はないと確認した。
 さて、どうしたものか。眉間を寄せるムルヘルベルの様子を見たフランチェスカは窓を背にし、間近の花園へ戻る。
「ちょっと心が痛むけど……」
 自分が猟兵である以上、ここで留まる訳にはいかないのだ。意を決した彼女は、青々と茂る薔薇を右手のアセイミで次々と根元から切り裂く。いきなり何をと興味を示すムルヘルベルがチラリと見る先、棘も丁寧に削いで束ねて作られたのは、即席ロープだった。
「ま、天才のボクにかかればこれくらい朝飯前だよね!」
 即座にそれは天へと投擲され、先端の輪が小窓の装飾に引っかかった。長さ、強度も十分。見張りの者に見つからないよう、それを辿って二人は素早く壁を駆け上がる。窓には鍵がかかっていたが、叡智のガジェッティアにとって単純な窓鍵の解錠など容易いもの、直ぐにガチャリと音が鳴った。
「む、これは……」
 部屋に降り立つとまず目に入るのは、男性の肖像画数枚。右のものから段々と歳を重ねるそれは、全て同じ人物を描いているらしい。
「ここの城の人かな? なかなかのイケメンだね」
「ワガハイだって、負けてないのである」
「……」
「……せめてツッコミとかないのかね」
 なんて駄弁りながら室内を歩いてみる二人だが、特に目星い物は見つからず。これ以上の探索は時間の無駄だと判断したムルヘルベルは、ただただ綺麗であるからという理由で机の上に置かれた赤色のリボンのみ手に取って部屋をあとにした。
「ジュリエットのお嬢さんは、きっとこういうのが好きであろう」
 城の中でもし会えたなら、渡してあげるのだと言う。

 二人が出た先は、この世界の空模様とは正反対の煌びやかなエントランスホールだった。様々な世界を旅してきたが、ここまで凝った館内を実際に手を触れて体感出来るということは、なかなかないものだ。本でしか見たことのないリアルに見惚れているうちに、そこへアウレリアたちがやって来た。
「無事通れたようで、何より」
「ちょっと苦戦したけどな」
 お疲れの代わりにハイタッチを交わす猟兵たちは数分ぶりに再び集まり、奥の舞踏会の広間へ進んでいった。

 途中の長い廊下には絵画が並び、金糸を贅沢にあしらったレッドカーペットには、傷一つない。恐らく定期的に張り替えていると思われるそれは、吸血鬼たちの優雅な生活を表していた。
 きっと食事も豪華に違いない、どんな麗人が招待されているのかと期待を膨らませながら猟兵たちの歩く先、最初に目飛び込んできたのはそれらではなく──。
「どういうことなのだ……」
 ムルヘルベルの視線の先の、一フロア上から踊り人を見守る玉座。
 そこには、彼の持つのと同じリボンを着けた少女が腰掛けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ヴァンパイアの夜会』

POW   :    真っ正面から敵に戦いを挑んだり建物等を破壊してまわる。

SPD   :    罠の設置や先回りして生贄のダッシュを行います。

WIZ   :    変装して侵入し話術によって敵を撹乱します。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※注意:今回このシナリオは、フラグメントのSPDに記載される「ダッシュ」→「奪取」として判定します。ご了承下さい。
──────────────
フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

夜会か、懐かしい光景だ…我が居城にて最後に催されたのは、何時であったか
久しい参加ではあるが、生来の夜の一族の立ち振る舞いというのを存分に見せつけてやる

さて…誘惑や催眠、言いくるめを存分に発揮し、手近な者共を堕とせるか試してみるか
今の内に骨抜きにして、後顧の憂いを絶っておきたい
幸か不幸か、我は仮面を身に付けておらぬ
「我の美貌を隠すに足る仮面を、共に探してくれぬか」と、熱く耳元で囁いてやる
もし相手が誘惑に掛かれば、ヴィーゲンリードで駄目押しを
「旧友たる城主の祝福に来たものの、暫く遠方に居を構えていた故、彼の近況に疎くてな。知っている事を教えて欲しい」とでも言ってみよう

※アドリブ歓迎



 会場へ一歩踏み入れれば、たちまち冴え冴えしい弦楽四重奏が迎える。空を覆うシャンデリアや艶やかな夜会服など鷹揚に広がる千紫万紅の光景に、フォルターは懐かしさを覚えた。これがプライベートなら迷わず中央の円舞に飛び入るのだが、任務中で仮面を着けていない今、警備に見つからないよう気配を消して広間の隅へ移動しようとする、その時。
「今晩は。お嬢さん」
 背後から声をかけてきたのは、顔色の悪い中年の男性吸血鬼だった。
「御一緒しても、宜しいですかな」
 不気味に頬を緩めながら右手のグラスを揺らすその者は、目も綾な式服より中々の身分と見える。
 ──丁度良い。
 微笑を浮かべるフォルターは軽く頷き、相手の影に姿を隠した。
「良かった。仮面を着けていないようでしたから、どうも気になってしまって」
「取り寄せる時間がなくてな。……貴殿、暇を持て余すのなら我に相応しい仮面を共に探してはくれぬか」
「その輝きを隠してしまうのは、少々惜しいような気がしますな」
「美しいものは秘めてこそ、探し求めたくなるものだろう? 言い分はわかるがな」
 などと話に花を咲かせる長睫毛の彼女は熱い視線を送り、それに応える吸血鬼──ティボルトと名乗る男のエスコートのもと、会場を後にした。

「しかし取り寄せの間もないとは、余程急いで来られたのでしょうな」
 男の案内により出た扉の向こうは華やかな会場から一転、静かな月の光だけが射し込んでいた。辺りは全て青白く光り、様々な表情をみせる壁の石像が立ち並んだその道は、幻想的な空間を作り上げる。
「ああ。旧友たる城主の吉慶に来たは良いが……暫く遠方に居を構えていた故、彼の近況に疎くてな」
「左様でしたか。近況といっても、話すべきことは昨夜のことからになりますが」
「構わん、続けろ」
 黒髪を揺らす乙女の一歩後ろで、丁寧にお辞儀をしてからティボルトは話し始めた。
 周辺の村から税を搾り取り、城内以外は干からびたこの世界で何十年、何百年と噂一つなかった城主が、明日結婚することが発表された。唐突な知らせだったため、百を超える従者たちは裏でバタバタと式の準備急いでおり、今日の舞踏会をギリギリの警備で迎えたらしい。そして繁華なこの場は結婚式の前夜祭で、会場の者は主の親戚か特別に招かれた縁ある吸血鬼とのこと。
「いやあ、明夜はより賑やかになるでしょうな」
「……して、姫君の名は」
「確か、ジュリエット嬢といいましたかな。それはそれは可愛らしい方ですよ」
 私としてはもう少し育てたいところですが、と笑う男の口から発せられたのは、紛れもなく拐われたあの少女の名前だった。
「何せここに招かれている全員が、昨夜……いや今朝でしたかな、いきなり呼び出されていますからね」
 長い長い廊下の先、辿り着いた扉へ手をかける男は、一礼とともに乙女を先に送る。礼も言わず、当たり前のように直ぐそこを通り抜けるフォルターに置いてかれる形となった彼は、尚も話し続けて。
「ですが、招待主があのXXX様ですから……。行かないというわけにもいかなくて」
 扉を開けた瞬間の気圧の変化によるものか、突風が耳を擽って肝心な部分をかき消した。今の話を聞く限りその名の推測はつくものの、確実なる言質をとっておきたい次第だが……。
 どうしたものか、と目の前に現れたテラスに思考を巡らせる彼女をお構い無しに、ティボルトはその腰へ手を添えた。

「お嬢さん、この後お時間は?」

 そのかっ開かれた瞳孔は、フォルターの玉姿に満たされていた。
 腰の手は優しく背中へ上がり、しかし逃がさぬと力強く、返事を聞く前に彼女の豊満な身体を抱き寄せる。彼の激しくなる鼓動が触れるフォルターの胸を伝わり、ドクンドクンと共鳴して。
 ああ、なんて良い眼をするのか。城主の名は後に判明するだろうと判断した彼女は、華奢な腕を男の首へまわす。
「我にその身を、その心を委ねるが良い」
 本能に導かれるがまま、二人は顔を近づけ──。
「……ッ!」
 ばたり。
 乾いた唇が潤うことなく、男はその場に膝から崩れ落ちた。
「生憎、枯れ草を愛でる趣味は持ち合わせていなくてな」
「なんだと……!?」
 侮辱ともとれる宣告に、ティボルトは額に青筋を浮かべる。しかし痺れた身体は言う事を聞かず、掴みかかろうとした奴の手は震えるばかりだった。
 そこからフォルターは今にも落ちそうなグラスを奪い、内側に踊る赤を見せびらかすよう、奴の目の前で一口だけ飲んで──。
「酔いを冷ますが良い」
 残る中身を、目線の高さから一気に薄汚い頭へかけて立ち去るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…無意味な物を渡すような手合いには見えなかったけど、
鍵がこの城の物だとしたら…どうして彼女が鍵を持っている?
罠の可能性もあるけど…上に居るから痛めつけて…ね
ヴェロネージの街のロザライン…。その名前、憶えておこう

事前に改造した防具(変装衣裳)に刻んだ誘惑の呪詛を反転
生命力を微弱に吸収して、存在感を消して目立たなくする呪を発動
【吸血鬼狩りの業】を応用して警備の目や罠を見切り
魔力を溜めた怪力を機動力に変換
渡された鍵が使える部屋を第六感を頼りに秘密裏に探してみる

…執着心の強い吸血鬼の行動…何となく嫌な予感がする
ジュリエットの特徴は“ブロンドの髪”に“紫の瞳”を持つ少女、ね
よくよく忘れないようにしよう


リュヌ・ミミティック
ん、おー?他の、猟兵さんも、きた、みた、い、だ、ねー?
ん。それ、にして、も、なん、だ、か、変な、かん、じ、だー。

ひとまず、仮面もつけてることだし、
「ん、あの、玉座にいる、女の子、だぁれ?」
と聴いて回って、2人の関係を知りたいなぁ…
それに、色んな人に質問攻めにしてれば、少しは撹乱にならないかな?
逆上させて、敵を多くするのは得策じゃないから、程々にするよ
皆が戦闘開始したら補助として狐乃雨を使って飛ぶ敵に攻撃をしかけよう
地面に引きずり落とすよ!
届きそうなら、猫憑き季月とダフィットで、僕も攻撃するとしよう

口調捕捉:
必ず会話の前に 「ん。」「ん、」「ん、おー」がつく。
変な所で区切って喋るのが癖


アウレリア・ウィスタリア
翼が咎められるなんて予想外でした
ボクにとっては当たり前すぎて
意識の外だったので気を付けないと

変装で翼をより作り物っぽく細工して
会場で歌を奏でましょう
ヴァンパイアが好む歌というのは知りませんが
愛の歌を高らかに情熱的に歌いましょう

ボクに注目が集まれば他の皆が動きやすいでしょうし
注目が集まったのなら
きっと向こうから声がかかるでしょう

ここの主の噂、評判それらを収集しつつ
城内の破壊音など聞こえてくるようなら、こんな噂がと
ここの主が拐ったものを取り返すため人が雇われたらしいとか
このパーティーで油断させ招待客を始末して領土を広げようとしてるとか
ただの噂ですがとあることないこと広めましょう

アドリブ歓迎


ムルヘルベル・アーキロギア
【WIZ】
んーむ、いまいち全容が見えてこぬな……
ここは可能であれば、今の時点で合流可能な猟兵たちと合流し、得られた情報の統合や推理などを行おう
ワガハイは知恵者ではあるが、一人で得られる知識や結論はたかが知れておる
さすがに変装もなしにうろつくわけにはいかぬゆえ、パーティ会場内の移動が必要な場合は【クリスタライズ】を用いて透明化するとしよう
宴の最中ならば、よほど妙な音を立てぬ限り訝しまれることはそうそうあるまい
POWでのストレートな解決を試みる者がいればその行動を支援するなど、基本的にはサポートに回りたいところであるな
何か妙な予感がする……この一件、ジュリエットとやらを取り戻して終わりとは思えぬ



 舞踏会は、流石広大な領地を持つ城主が開くだけあって規模の凄まじく、対角線上にいる客の姿は随分と小さく見える。大理石の舞台に悠々と足音を鳴らす喋々喃々な彼らが手に持つのは、赤ワインだと信じたい。
「ん、あそこ、の、女の子、だぁれ?」
 仮面で本性を隠す吸血鬼たちのなか、一人だけ素顔を晒す少女に気づいたリュヌはその方へ指さす。この会場ではとびきり顔色の良い彼女の瞳に光は宿らず、ただ虚ろに吸血鬼たちのバロックダンスへ顔を向けていた。
「ブロンドの髪に、紫の瞳」
「ああ。彼女はもしや……」
 リーヴァルディと、身体を会場へ溶かすムルヘルベルの目に映るその子は、拐われた少女の特徴にぴったりと当てはまっていた。
 その彼女の足元には、似たような男女ばかり。ここには今回の討伐対象がいないと判断したリーヴァルディが調べたいことがあると告げその場を離れたのと、入れ替わりに──。
「姫君への挨拶がまだでしたら、マンチュア交響楽団の演奏が始まる前に行くのをオススメしますよ」
 視線を斜め上へやる猟兵たちを気遣ってくれたのか、丁度そこを通りかかった若い男性吸血鬼が声をかける。
「んー、あの子が、お姫さま?」
「正確に言うと、明日からですがね」
「お兄さん、は、王子さま?」
「はは、まさか」
 筆の線で描かれたような目元、通った鼻筋、そして甘いその声で右にも左にも女を連れた彼は、近くにいた城の者からいくつかのグラスを手配してこちらへ勧めてきた。
「新鮮なうちに召し上がるといい。ここのは下手な店のよりも遥かに美味しいですから」
 姫君と呼ばれた少女へ会う機会があることを知らせてくれたのはいいが、これ以上は吸血鬼でない我々にとって余計なお世話極まりない。しかし、吸血鬼にとっては嬉しい勧めを断ってしまえば相手に不審だと思われてしまうだろうし、ひどくプライドの高そうな彼なら憤慨して面倒なことになりかねない。
 どうにかして、この場を切り抜けねば。歪な笑顔を仮面に隠す猟兵は、グラスこそ受け取るものの口に運ぶことのないまま彼との数分を過ごすが、一向に相手は話をやめようとしない。
 このままでは、時間の悪戯に過ぎるのみ。相棒の猫憑き季月に少し暴れて貰って切り抜けようとするリュヌの元へ、突如女性の歌が聞こえてくる。会場に響き渡る迦陵頻伽なるそのハイトーンは、会場にいる者の聴覚をジャックした。
「おや、声楽家など呼ばれてましたかな」
 彼を含め、透き通った愛の調べに導かれた吸血鬼は、あっという間に人集りをつくる。まずは一曲を終えたその歌声への歓声と拍手を澪引きするのは、アウレリアだった。
「素晴らしい歌声だ」
「我々吸血鬼しかいないこの城に、天使が落ちてきたかと思ったよ」
「ありがとうございます」
 チップとしての紙幣を浴びながら丁寧に一礼する彼女の耳に、歌を聞きに来た貴婦人たちの会話が入る。
「貴方の歌声を聞けたことも幸せだけれど、XXX様もやっと結婚する気になったようで、本当に良かったわ」
「ええ本当に。でもあの人、まだ一度もこの場にいらしてないわね」
「一応我々も客として態々来てるんだからら、挨拶くらいしてもいいのにねえ」
 ギラつく仮面で抑えていた本音は、一度出てしまっては止まらないもので。彼女の周りに立つ吸血鬼は、次々と城主への不満を漏らし始めた。彼らの吸血鬼としての本性の一部を見たアウレリアは、さらに第二の矢を放つ。
「次の曲に行く前に……先程から城の主が姿を現しませんが、それはこのパーティで皆さんを殺そうとしているからなのです」
 勿論こんな情報は、いつもであれば繕いの化身である彼らならすぐに嘘と見破られるはずだが……会場のマイナスの空気と真剣な表情でそれを伝える歌姫に飲み込まれ、会場からどよめきが起こる。
「確かに……。大勢の客が来ているというのに、警備が手薄だわ」
「それに、さっき玄関で大きな音がしていたな」
 ざわめきの音は、振幅を増して。
 こんな所で歌など聞いている場合ではないと、優雅な舞踏を慌ただしい避難の足音に変える彼らへ出口への道順をアナウンスをする黒猫のマスクの彼女は、「今のうちに」と他の猟兵へ視線を送った。
 
「こんばん、は! 君の、名前は?」
 広間の中央で延々と同じ踊りをする組々しか見えない退屈なこの場で、いきなり背後から聞こえた少年の声に、少女は何が起きたか深く理解しないまま答えた。
「私は、ジュリエット。……ジュリエット・キャピュレット」
 目をぱちくりさせてこちらを向く姿は、間違いない。昨夜拐われたあの少女だ。
「オヌシが、誘拐されたお嬢さんであるな。……うむ。怪我もなさそうで、何よりである」
「んー、良かった! 一緒、に、帰ろ?」
 クリスタライズを解いたムルヘルベルは少女の身の安全を確認し、安堵と喜びを表す猟兵とは対照的にジュリエットは悲しさを浮べる。
「──違うの」
 微かではあったが、ハッキリとそう聞こえた。
「……ジュリエットよ。愛する人を想う気持ちもわかるが、吸血鬼しかいないこの城にいるのは危険であるぞ」
 今なら下層の騒ぎに紛れてここから逃げることができる。だから、どうか。
 しかしムルヘルベルの宥めは水泡に帰す。俯いたままのジュリエットは、身体をわなわなと震わせた。
「何よ……結局貴方達も、お母さんとお父さんみたいに反対するのね」
「いや、反対しているわけでは──」
「放っといて!」
 高い叫喚が、この狭い空間を反響する。
 目元を赤く腫れさせたジュリエットはそう言い捨て、勢いよく二人の間を通り抜けて会場を飛び出した。
「待って!」
 咄嗟に少女を引き止めるリュヌの声は届かず、少女は重い扉の向こうへ姿を消した。すかさず猟兵たちも後を追うが、道は二つに分かれている。それぞれに一人ずつが行く手もあるが、危険時の対処が危険であり、どちらの道も試しに進むのは時間が惜しい。
 さて、どちらに進むか。
 ジュリエットの通った手掛かりなく選択を迫られた猟兵たちの元、そこへ月色の少女が駆ける。
「こっち、着いてきて」
 声をかけたのは、ジュリエットと同じ色の瞳を持つリーヴァルディだった。城の中を一通り調べあげた彼女の案内のもと、右の道へ進んだ猟兵はそこに続く螺旋階段を走り上がる。

 猟兵たちの真上を走る彼女は、階段の終点──最上階の扉へ駆け込んだ。すぐに猟兵たちも開けて入ろうとするが、ハンドルを捻っても金属の擦れる音のみ響き渡る。
「んー! ジュリエット、お願い! ここ、開け、て!」
 懇願のノックに、返事は来ず。
 強靭な男が体当たりしてもビクともしないであろうその扉は、冷たい軋みを残すだけで、ノックをやめたリュヌはその耳を下げる。
「これ……使えたりするかな」
 途方に暮れる二人にリーヴァルディが差し出したのは、先程手に入れた鍵だった。
「それは?」
「城に来る時、ロザラインって人から貰ったんだけど」
「ほほう、ロザラインであるか……」
 彼女の口にするこ珍しいその名に、ムルヘルベルは聞き覚えがあった。
 彼の推測が正しければ、その名は城主の元恋人にあたる人物。最も、ほとんど城主の一方的な恋として終わってしまった二人だが、城主と一度は深い関係になったロザラインならこの舞踏会に招かれ、さらに合鍵を受け取っていてもおかしくない。
「強行突破は、気が引けるけど」
 鍵を刺して、半回転。
 金属音の噛み合う音とともに、あんなに拗ねていたドアノブは望み通り頭を垂らした。

 その先は、簡素なベッドと本棚のみ置かれた寝室だった。
 しかしさらに向こうのテラスには、ここらの村を全て覆った光景が広がっていた。そこに立つ男を照らすのは、あと一滴でも銀を垂らせば満ちる月であるのに。
「どうしても、君らは来てしまうのだな」
 そう呟く彼は、部屋へ立ち入る猟兵を横目に夜風に髪を靡かせる。
「お前は……!」
 猟兵たちの前で哀しく笑う白髪の奴は、少女を攫ったあのヴァンパイアだった。
 改めてこちらを振り返り、猟兵たちを視認した彼は、入口の門番のようにお辞儀をする。そして彼の向かいに立つリーヴァルディへ向けられた微笑みは、彼女の抑えていた怒りを、憎しみを溢れさせて。
「やめて!」
 吸血鬼へ組みかかろうとするリーヴァルディの前に飛び出したのは、リボンの少女──ジュリエットだった。
 彼女の頬を伝い落ちる大粒は、足元をドットに染めあげる。
「その人を──」
 月を背にする彼女の双眸は、やけに紅く輝いていた。

「ロミオを、殺さないで」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フォルター・ユングフラウ
【WIZ】

人と魔の種族を超えた愛、とでもいうのか?
ふん、馬鹿馬鹿しい
我の父上と母がそうであったように、人間など単なる一時の慰み者…そうだ、そうに決まっている…!

奴の攻撃はどれも厄介だな
攻撃と回避の両立が可能なUC:トーデスシュトラーフェを主軸とし、動きを掴ませぬ様に心掛けよう
忌々しい、貴様は悲劇の主人公になったつもりか?
呪詛や催眠、毒でその面を醜く歪ませてやる…!
攻撃で負った傷は、黒の血玉より召喚した使い魔を奴に纏わせ、吸血と生命力吸収で賄おう

あぁわかっているとも、貴様等が真に愛し合う仲であろう事は
…だがそれは、愛を知らずに育った我への嘲り
嗤いたくば嗤え
惨めな怨嗟である事は、百も承知の上よ!


アウレリア・ウィスタリア
ダンピールが存在するのだから、こういうこともあるのでしょう

あえてヴァンパイア、アナタに問いかけます
愛する人が老いて、自分だけが生き残る未来
アナタはそれを受け入れることができますか?

ボクにはそんな未来は受け止めきれない
【深淵から響く魂の歌】を奏でマサクゥルブレイドを相殺する
詠い続けるボクに攻撃はできないでしょう

真に愛を語るのなら
ボクは歌うのをやめるかもしれない
でも……わからない
何が最善かわからない

ボクは咎人殺し、復讐者
ヴァンパイアは敵
だけどアナタたちは私の敵?

敵ならば、ヴァンパイアでもヒトでも
ボクの刃がその喉笛を喰いちぎる

歌うのをやめたとき
それは拷問具が血を浴びるとき

アドリブ歓迎


フランチェスカ・メリジオ
さてと、ここまで来たら大人しくしなくてもいいかな
おや、何やら込み入った様子だね?

なるべくキミの話を聞いて、力になってあげたいとは思うんだけど、そいつを野放しにできないんだ。
事情はどうあれ、その人はオブリビオン……過去の存在だからね。

とはいえ、やりづらいなぁ。
ボクはあまあまの甘ちゃんだからね。
【パラライズ・ブレンド】でなんとか行動を制限できないかな。
動けなくしたところで何がある訳でもないけど、落ち着いて話ぐらいはできると思うんだ。すでにそういう局面じゃないかもしれないけどね……

オブリビオンを倒す事は間違っていないんだよね?
誰も正しい答えなんて持っていないだろうけどさ。

※アドリブ等ご自由に!


リーヴァルディ・カーライル
…紅く輝く瞳…まさか、貴女…
…ん。私のすべきことは変わらない
私の名はリーヴァルディ・カーライル…吸血鬼を狩る者よ

改造した防具に施した呪式を変更
第六感を強化し些細な存在感も見逃さない見切りの呪詛にする
これで敵(と少女)の行動を事前に察知できないか試みる

敵の攻撃は【吸血鬼狩りの業】を駆使して回避
攻撃の隙を突いて【限定解放・血の教義】を発動
精霊を誘惑する為に、吸血鬼化した自身の生命力を吸収させ
“過去を世界の外に排出する闇”の魔力を大鎌に溜めて維持

…この一撃で決める

反動で傷口が抉れながら、怪力を瞬発力に変え跳躍し、
大鎌をなぎ払い物理とUCによる2回攻撃で敵を仕留める

……さようなら。ロミオとジュリエット


ムルヘルベル・アーキロギア
ああ、ふむ、なるほどな。そういうことか……
しかしな乙女よ、悪いがワガハイたちはそのために来たのだ
オヌシらの名を冠した劇がある。その終わりは悲恋よ
つまりそういうことだ。悪く思うなとは言わぬが、せめて暴れぬようにな

というわけで、ワガハイは彼奴の攻撃を封殺するために動こう
仲間たちが切り結ぶのを後方から支援し、ロミオ……ヴァンパイアの動きを観察する
十分に分析を終えたところで、彼奴の攻撃に合わせ【553ページの悪魔】だ
「過去は過去であらねばならぬ。化けて出ていい道理はない」
「せっかくの舞踏会なのだ。死の舞踏(ダンス・マカブル)を踊るのはどうだ?」
ま、切り払うのはワガハイではないのだが
報われぬものよな……



 幾望は澄み、一陣の風が通り抜ける。
 輪奐一新たる城の絶点は、やけに冷え込んでいた。それが夜のせいか、はたまた蒼空に触れられそうなくらいの距離なせいかは定かでないが、ここが決戦の舞台になることは間違いなさそうで。
「オヌシ、どこかで見たことあると思えば……」
「イケメンといいジュリエットといい、やりづらいなぁ」
 猟兵たちの登場に驚かず、挨拶代わりに刀剣を飛ばすヴァンパイアは、ムルヘルベルたちが窓から侵入した際に見た肖像画の彼であった。
 立ち尽くすジュリエットを咄嗟に抱えて避難させるフランチェスカは、お人好し故反撃を返さず。抵抗を示す少女を必死に宥めて、彼と共に敵との間で控えた。
「どうして、こんなこと……」
 念動による乱撃に掻き消されてしまいそうなアウレリアの呟きは、確かにヴァンパイアに届いて。
「何時までも彼女を待ち、そして何処までも共に歩むため……神は私に、ヴァンパイアとして第二の生をお与えになったのだ」
 さも当たり前かの如く唄う彼はテラスを背にし、猟兵の後ろで坐するジュリエットを見つめる。
 ──嗚呼、早く取り戻さねば。
 そう思うよりも先に、身体が動いた。懐からロングソードを取り出す吸血鬼を、フォルターは睨みつける。
「人と魔の種族を超えた愛、とでもいうのか?」
「ああ、そうだとも。そもそも私たちは、結ばれるべくして生まれたのだからな」
「は、寝言は寝てから言え──!」
 怒号により、喚び起こすのは炸裂音。
 吸血鬼の背後に展開された魔法陣は煌々と月さえ隠し、刹那フォルターが闇からその光へ姿を現す。
 人間など、単なる一時の慰みもの。それより長く生きてさえ解らぬ愚かな貴様に、我直々に教えてやろう──。
 身体を弓なりに撓らせ、狙いを定めて弧を描く……が、ロミオの背中から生えた翼は飾りなどではなく、それを一つ扇げば斬撃を躱すのは容易いことだった。
「吸血鬼はな、夜に目覚めるものだ」
 空中で体制を崩す彼女を、右手の剣で弾き返す。その一波、もろに喰らっては一溜りもない。
 瞬時フォルターは攻撃を鎌で受け止めるが、衝撃も相俟って踵で地を削った。忽ち揺らぐ砂霧が、視界の邪魔になる。
「眠りにつくのは、どうやら君たちのようだ」
 月に翳す腕に連られて、紫色の唇が上がった。
 勝利を確信した吸血鬼が休む暇なく朱翅の裏から呈するのは、有り余るほどの金銀の剣戟──。
「来るよ!」
 ゆらりと翠炎を宿す剣全てを弾き躱すのには、間に合わない。猟兵はリーヴァルディの号笛に沿い、意を決して目を閉じる──。
 しかし時計の針は進めど身体に痛みはなく、耳からは深淵から魂を震わす音律が聞こえてきた。
「……?」
 俯仰之間、何が起こったのか。
 状況把握のためフランチェスカはゆっくりと片目だけを開けると、刃先を海馬へ向けるダガーが面前でピタリと静止していた。
「残念なことに、子守唄ではありませんが」
 歌い終えたアウレリアが口を閉ざすと同時に、止まる刃物は乾いた金属音を立てて床に落ちる。
「ほう、今宵は踊り子だけかと思っていたが……まさか、歌姫がいるとは」
 サラサラと消えゆく己の宝物を睥睨するも、ヴァンパイアは表情ひとつ変えない。落ち着くどころか、勢いを増してさらに次の一手を繰り出そうと無から放たれるのは、枯れた土地に季節外れの花吹雪……否、白のそこには筆跡が刻まれていた。
「一人くらい歌手を雇うのも悪くない。ジュリエットも喜ぶだろう」
 ロミオの手に乗る誓約書は、鳥のような一群となって羽ばたく。その度に紙面から滲み出た赤インクが垂れ落ち、ゴーサインの出た頃には既にヴァンパイアの右手は血に濡れていた。
「貴様の人生、頂くぞ」
 鳥の、ぱしゃりと足爪に塗れる赤い糸はカナリヤの猟兵へ引かれて──。
「まあまあ、そう急ぐでない。せっかくの舞踏会なのだ、死の舞踏(ダンス・マカブル)を踊るのは如何かな?」
 しかし、先が人の身に結びつくことはなく。
 その代わりに顕現するは死と再生の魔神──浅縹の大蛇がムルヘルベルの持つ魔導禁書から舌を覗かせた。鱗の巨軀は飛躍一打、即座に滑空する平面の猛禽へ茨の歯を食い込ませた。
 悠遠の彼方を越えて純度を高めた手札すら、あっけなくランダムに舞う。その剥がれ落ちる乾羽に目を奪われた吸血鬼は、狼狽を隠す余裕を失ったのか、奥歯を噛むことに気を取られて。
 機は熟した──。自らすら吸血鬼に如くことにより発生する魔力をバネに、地を踏み台としてリーヴァルディは天翔る。土塊が宙を舞い、そして重力に従う彼女は落下点へ、斬。
「ぐ……ッ!」
 崩れ落ちる吸血鬼の胴体には一文字が描かれた。
「お願い、彼を傷つけないで! 死んでしまうわ!」
 その場にへたり込むジュリエットは、前で阻むフランチェスカの足元に泣きついた。
「ゴメンよ。過去の存在を野放しにするわけにはいかなくてね」
「嫌よ! そんなの、嫌……」
「しかしな、乙女よ……。悪いが、ワガハイたちはそのために来たのだ」
 ジュリエットと向き合うムルヘルベルは目線を合わせ、諭すように彼女の両肩に手を置く。
「オヌシらの、名を冠した劇がある」
 彼の瞳は、彼女の紫すら跳ね返して。
「その終わりは、悲恋よ」
 覆ることのない残酷な結末を、無力な少女へ告げるのだった。
「笑止。我らの生は劇などではないぞ!」
 残りの生命を垂れ流しながら、ロミオは個我の化身である黒の天鼠を放つ。弾性波を発しながら生まれたそれは闇に溶け込もうと天球へ飛び込むが──今日は、月が綺麗な夜で。
「影の存在も、影そのものが目立てば丸わかりだよ!」
 的を狙うと逃げられるなら、的を掴んでしまえばいい。フランチェスカは白光に姿を現した蝙蝠にすぐさまパラライズをかける。
 身体に走る雷電に、苦痛を漏らさずにはいられない。しかし猟兵たちの耳にする絶叫は、やけにハスキーな低音だった。
「ボクだって痛いことはしたくないんだ。あまり暴れてくれるなよ?」
 そう、その声の主はヴァンパイア・ロミオ。自身の眷属と五感を共有する彼は、手足の自由を奪われた。
「あえて、アナタに問います」
 悶え足掻くロミオの眼前、アウレリアが髪を揺らす。
「愛する人が老いて、自分だけが生き残る未来──アナタはそれを、受け入れられますか?」
 自分は吸血鬼として時を長く生きられても、ジュリエットは人間で。いつかは迎えるその日の質問を、彼は俯いたまま答える。
「は。そんなの……耐えられるわけがないだろう。故に──ジュリエット」
 彼の声に呼応にして肩を微動させるジュリエットの瞳は、炎が灯されたように爛々と紅く輝いていた。
「まさか、貴方……」
 その血に飢える眼差しは、ロミオとお揃いの赤だった。しかしダンピールならまだしも、後天性吸血鬼化など聞いたことがない。
「は、い。ロミオ、様」
 原因不明のハッキングにきごちなく応じるジュリエットは、覚束無い足取りで相手の元へ向かい歩く。
「貴方も、こちらへ来るのだ。そうすれば、そうすれば……」
 不気味なマーブリング画の如きテノールに導かれるがまま、ジュリエットは吸血鬼の首元へ噛み付こうとする──その時。
「汚泥如きが。これで少しは静まるか?」
 ぱちん、
 はらり。
「え……?」
 同じ赤の瞳を持つフォルターは、盲目の少女の頬を打擲した。
「生憎、我は愛など知らなくてな。その涙にすら、反吐が出るのだ」
 その衝撃によりジュリエットの髪に寄生するリボンは解け、僅か二秒後、双眸のルビーは砕け散る。
「ジュリエット!」
 痛覚のメーターを振り切りながらも、震える腕で最愛の名の彼女を抱き締めるが……ヴァイオレットモルガナイトの瞳に映るのは、月の光のみで。

「──貴方、誰?」

「……!」
 耳元で囁かれたたった五音が、彼を突き放すのであった。
「ああ……込められた念力が切れたのか」
 フォルターの視界に入る髪飾りはあんなにも映えた赤だったのに、主の魔力を失った今、地へ灰色に朽ちた。
 生娘という清く染まりやすい個体だったからなのか、ジュリエットの名に反応し性能が飛躍したのか……。兎にも角にも催眠は解け、自由を取り戻した目を白黒させる、そんな彼女の肩に一人のヴァンパイアは涙を流す。
「ああ、ジュリエット……貴方はどうして──」
 子供のようにしゃくり上げながらも、ロミオの姿は一気に老けてしまったようにみえた。その傷だらけの手で、何処か遠くに消えてしまうのを繋ぎ止めるよう必死に彼女の両腕を掴む。
 一閃困ったような顔を見せながらも、欠片だけでも想いは通じたのか……ジュリエットは目前の吸血鬼を、そっと優しく抱き返した。
「きっと、正しく貴方を導くためよ」
 月が雲に隠れた一刹那だけ、その声は彼のものになった。
「……さようなら。ロミオとジュリエット」
 過去は過去へ、そして物語を終わらせるため──リーヴァルディの大鎌の一振は、ロミオの首を切り裂いた。

●白銀は三度目の正直か
 猟兵たちはロミオの消滅の確認後、城の騒ぎが酷くなる前にジュリエットを連れて脱出することにした。
 二度目の薔薇園を迷うことなく潜り抜け、鶏が鳴き始める頃には彼女の住む村に到着するが、帰宅するまでが依頼である。家はあと少しのところとのことで、そこまで彼女を送り届けることにした。
「家のテラスで休んでいた時に空から天使様が来てくれたと思ったら、いつの間にか寝ていたの」
 目覚め故に元気なジュリエットは、歩きながら当時の状況を教えてくれる。舞踏会が面倒になって御手洗に行くと嘘をついてテラスにいたこと、その時に現れた天使のような彼から髪飾りを貰ったこと、そしてその瞬間から城で吸血鬼に抱き締められるまでの記憶はないこと。
「でもね、私、拐われたのに不思議と良い夢が見れたのよ」
 それにどこかであの人にも会ったことがある気がする、と付け加えた彼女は、無事家に着くと何か閃いたようで。
「そうだ、猟兵の皆さん。紹介したい方がいるの」
 そう言って真っ先に向かったのは、玄関ではなく裏の庭園だった。どうしてもヴァンパイアの城のフラワーガーデンとまで優雅とはいかないが、待たされている間手入れの行き届いた品のある庭を眺めている、そこへ。
「お待たせしてごめんなさいね」
 少し照れながら現れたジュリエットが連れてきたのは、彼女と同じくらいの年齢の少年──その姿は、若い頃を描いた肖像画の吸血鬼に酷く似ていた。
「私のフィアンセ、ロミオよ」
 そう紹介された彼は、一歩前に出て一礼する。
「こんにちは、猟兵の皆様。ロミオ・モンタギューと申します。この度はジュリエットを助けていただき、感謝してもしきれません」
 偶然なのか、必然なのか。
 ジュリエットに寄り添う少年は、あの悲劇と、あの吸血鬼と同じ名を持つようで。
「また何かあれば宜しくお願いしますね、流浪の救世主さん」
 人間であるはずの彼の瞳が一瞬、紅く照らされたように見えたのは……きっと、気の所為だと信じたい──。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月31日


挿絵イラスト