帝竜戦役㉙〜勇者は竜を倒すもの
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「カダスフィアよ……」
竜の口が開き、帝竜の名を呼ぶ。
「オアニーヴよ……ガルシェンよ……」
別の竜の口が開き、別の帝竜の名を呼ぶ。
「女禍よ、ベルセルクドラゴンよ、プラチナよ」
竜の口が、帝竜の名を呼び連ねる。
「ガイオウガよ! ドクター・オロチよ! ダイウルゴスよ! ワームよ!」
竜の口々が、帝竜の名を合唱のように叫ぶ。
「未だ戦い続ける者があることも知っておる! 二心ある者がいることも理解しておる! だが、その上であえて言おう……大儀であった!」
竜が、帝竜たちを称える。
「余が自ら猟兵を討ち、カタストロフを為すことで汝らに報いよう! 余は帝竜ヴァルギリオス! 最強の帝竜であり、帝の中の帝である!」
八つの咆哮が、一つの唸りとなって群竜大陸を揺るがした。
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「各々方、決戦の時にござる」
シャイニー・デュール(シャイニングサムライ・f00386)が集まった猟兵たちに告げる。普段の妙なテンションはなく、その目は真剣そのものだ。
「ついに現れ申した。最後の帝竜にしてアックス&ウィザーズのオブリビオン・フォーミュラ、帝竜ヴァルギリオスにござる」
ヴァルギリオス……この一ヶ月目指してきた名である。
「皆様には敵将ヴァルギリオスと戦い、その首を取ってきていただきたい。言わずもがな、ヴァルギリオスの実力は帝竜の中でも最強。これまでとは次元の違う戦いになり申そう」
これまでのオブリビオン・フォーミュラは皆その世界最強のオブリビオンであった。ヴァルギリオスもまたその例に漏れない、ということだろう。
「ヴァルギリオスは8つの首を持ち、それぞれが炎水土氷雷光闇毒の属性を司っております。8つの首から一斉に各属性のブレスを噴きかけてくる他、属性を複合して猛毒、火炎、凍結のバリアや、属性を自らの尾、鱗、翼に宿し自身を強化するという能力を持っております。攻撃、防御、補助を一つずつというある種シンプル極まりない能力ですが、圧倒的な実力故、その単純さが返って強力とも言えます」
ただひたすらに強い、シンプルイズベストな敵、と言えるかもしれない。
「そしてこやつもやはり帝竜。これらの攻撃を先制で放ってきます。もちろんその威力は他の帝竜の比ではござらぬ。ゆめゆめ御油断召されぬよう」
無策はもちろん、甘い対処法でもその力の前に食い潰されてしまうのは必定だろう。初撃から全力で戦っていく必要がある。
「ここまで攻めたのでござる、あとは大将首を取れば戦は終結、我が方の完全勝利でござる」
シャイニーは猟兵たちを見回し、力強く拳を握る。
「何、悪しき竜は最後は勇者に敗れるもの。勝つのは皆様方に決まっております! さあ、世界を救う勇者のご出陣にござる!」
そう言ってシャイニーはグリモアを起動し、勇者を帝竜討伐へ送り出すのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。
帝竜戦役11本目は最後の大ボス、ヴァルギリオスとの決戦です。世界の半分で手打ちはできません。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
内容自体は今までの帝竜と変わらず、使用能力に応じて『必ず』行ってくる先制攻撃に対処することです。
ただし、このシナリオは『難しい』です。「頑張って避ける」「根性で耐える」程度では対処しきれない可能性もあります。自分の持つ能力を最大限活かして戦ってください。
今回もお宝はありません。あるいは、竜を倒した後の世界そのものがお宝と言えるかもしれません。
それでは、竜を滅ぼす勇者のプレイング、お待ちしております。
第1章 ボス戦
『帝竜ヴァルギリオス』
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POW : スペクトラル・ウォール
【毒+水+闇の『触れた者を毒にするバリア』】【炎+雷+光の『攻撃を反射し燃やすバリア』】【氷+土の『触れた者を凍結するバリア』】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 完全帝竜体
【炎と水と雷の尾】【土と氷と毒の鱗】【光と闇の翼】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : ヴァルギリオス・ブレス
【8本の首】を向けた対象に、【炎水土氷雷光闇毒の全属性ブレス】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:hina
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナハト・ダァト
属性ノ把握ハ、叡智ニ任せ給エ
残像を9体生成
全てにへその緒を持たせ
遠隔操作可能に
その後1体共に迷彩で姿を消しながら
残りの8体はオーラ防御でブレスを受け止める
当然耐えられないのは承知の上
本命は倒れた残像の情報から、
各首の対応属性を把握
迷彩で隠した1体を出現させ
言いくるめ、催眠術、精神攻撃で本体と錯覚させる
最後の一体に向かうブレスを
把握した情報からオーラ防御に武器改造で反映
ドーピング、継戦能力、限界突破で耐えさせる間に
隠れた本体はダッシュ、早業で接近
「瞳」、医術から弱点を見抜きユーベルコードを放つ
そノ首ハ、飾りノ様だネ
八つの首を持ち上げその姿を示す帝竜ヴァルギリオス。それはまさに最強最後の帝竜を名乗るにふさわしい威容であり、打倒の困難さを如実に示すものであった。
だが、だからと言ってここに来て引き返すような猟兵ではない。この大いなる竜は帝竜戦役という長き道のゴールテープでもあるのだ。ここまで走ってきて切らないなどありえない。
その先陣は、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)が切った。
「余は帝竜ヴァルギリオスなるぞ。控えい!」
眼前に現れたナハトに対し、ヴァルギリオスは8つの首を向け一斉に8属性のブレスを吐いた。誰何の声もないその猛攻は、まさに帝に相応しい傲岸であり、それが許される圧倒的力の現れであった。
「属性ノ把握ハ、叡智ニ任せ給エ」
それに対し、ナハトは多数の分身を作成、そのうち8体をそれぞれの首に差し向けた。
激しい炎が、吹き荒ぶ吹雪が、目を焼くほどの光が、全ての属性が、まるでないもののように分身を飲み込み、荒れ狂い戦場を薙ぎはらった。
属性同士が干渉しあい形容しがたき反応を繰り返し、やがてすべてが消え失せて静かになる。ブレスの嵐が止んだ底に残されていたのは、元の形状すら定かではないほどに破壊しつくされた残骸であった。
「他愛ない……」
ヴァルギリオスはつまらなさそうに呟く。何をしてくるかと思えば、木偶を量産した挙句纏めてなぎ払われて終わり、拍子抜けもいいところだ。ヴァルギリオスは次なる猟兵を迎え撃つべく、移動を始めた。
「終わりト思われテハ、困るノダガネ」
その瞬間、全滅したと思われていたナハトが姿を現した。先のブレスの嵐の余波か体は傷ついているが、体にはオーラを纏い、さらにそれを武器のように腕部に纏っている。ヴァルギリオスは一番近くにあった首から漆黒のブレスを吐きかけるが、オーラの光がそれを阻み、先の分身のような即死には至らなかった。
「先の分身は囮か……だが!」
助力するかのようにもう一本の首が伸び、全てを腐らせるが如き猛毒を噴きかけた。二重となったブレスに耐えきれず、今度こそナハトの体は朽ち果て、消滅した。
「そノ首ハ、飾りノ様だネ」
もう一度聞こえるナハトの声。それと同時に、400本近い触腕がヴァルギリオスに襲い掛かった。その色は8色に塗り分けられ、まるでヴァルギリオスの向こうを張るかのように8種の属性を帯びている。
回避に使った今消された分身が時間稼ぎをする間、ナハトは身を隠し倒された分身たちを調べ、それぞれの首が持つ属性に当たりをつけていたのだ。最初の一斉ブレスの強力さ故、それに紛れるには困らなかった。余波だけでもダメージをあったが、倒れなければ反撃にはつなげられる。
そうして分かった属性に、それが苦手とするであろう触腕を放つ。五行、五輪、四属性、属性の伝承は世界中にあり、それらには必ず相関関係がある。
水が炎を消し、光が闇を照らし、炎が氷を溶かした。
全ての属性を使う圧倒的な力があるからこそ受けた反撃に、今度こそヴァルギリオスは大きく身じろぎ、その巨躯を一歩下がらせる。
帝を弑する知性が、戦いの始まりを告げた。
成功
🔵🔵🔴
御剣・刀也
バリアで自分を強化するか
どうしたもんかね。俺の得意な間合いに持ち込めそうにない
まぁ、うだうだ考えても仕方ない。俺はいつだって、突き進んで、斬り捨てる。それだけよ!
スペクトラルウォールでバリアが展開されたら、勇気で被害を恐れず、ダッシュで懐に飛び込んで、覇気でバッドステータスに耐えて捨て身の一撃で斬り捨てる
毒になろうが、体を凍らされようが、自分の体が動く限り、覇気でバッドステータスを凌駕して斬り捨てる
反射できるものならしてみろと、そのバリア事斬り捨てようとする
「たとえこの身を蝕まれようが、闘志が砕けない限り、俺は止まらん!俺を止めたいならこの心臓を止めて見せろ!」
ついに始まった猟兵と帝竜ヴァルギリオスとの決戦。続いてヴァルギリオスに挑むのは、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)だ。
「バリアで自分を強化するか。どうしたもんかね。俺の得意な間合いに持ち込めそうにない」
自身の攻防を強化するバリア。ある種単純なその力は、故にその影響下において絶大な効果を発揮する。接近しての一撃必殺の剛剣を得意とする刀也にとって、それはある種天敵とも言える能力であった。
「まぁ、うだうだ考えても仕方ない。俺はいつだって、突き進んで、斬り捨てる。それだけよ!」
敵の能力に合わせて慣れない手練手管を弄するより、相性が悪くとも己の技を信じる。
そう覚悟を決めた刀也は、愛刀『獅子吼』を構え、ヴァルギリオスへと向かっていった。
「余に触れられると思うか、下郎!」
ヴァルギリオスはその刀也を一喝。猛毒、反射、凍結の三つのバリアを纏い迎え撃った。
それに刀也は怯まない。勇気を胸に、覇気を体に。ただ切るために、足を動かし続ける。
猛毒のバリアが刀也の体を侵す。全身から力が抜け、剣を持つ手が震える。刀也は覇気を腕に巡らせ、震えるその手を強引に支えた。
さらに近づくと、凍結のバリアが刀也の体を凍てつかせた。足が軋み、動きが鈍る今度は足に覇気を纏わせ、氷を強引に引きはがした。
猟兵として鍛え上げた実力のほとんどを勇気と覇気に回した、それはまさに捨て身とも言える走り。その走りは痛めつけられた体を強引に動かし、やがて刀也はヴァルギリオスを自らの間合いに捕らえた。最後のバリアは攻撃を反射する。攻撃的ではない故に覇気で守ることもできない。ならばどうするか。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
反射できるならしてみろと、【雲耀の太刀】にてバリア諸共叩き切る。それが刀也の取った選択であった。
「たとえこの身を蝕まれようが、闘志が砕けない限り、俺は止まらん! 俺を止めたいならこの心臓を止めて見せろ!」
「我がスペクトラルウォールをここまで踏み越えるとはな、望み通りその心の臓余自らが止めてくれる!」
ここまで強引に進んできた刀也を『敵』と認めたか、ヴァルギリオスは反射のバリアをその前に集中させる。そのバリアに、乾坤一擲の一撃が振り下ろされた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「ぬうぅぅぅぅぅぅぅっ!」
二つの怒声が響き、獅子吼とバリアが衝突する。炎雷とともに激しい光が走り……そして、剣は振り下ろされた。
ややあって、剣を持ったまま前のめりに倒れる刀也。ヴァルギリオスの規格外の攻撃を正面から受け続けたその体は、ついに限界を迎えていた。
その前でヴァルギリオスは。
「余のスペクトラルウォールを踏み越えるとは……良かろう、褒美にその首繋いでおいてやるわ……」
胴が深く切り裂かれ、夥しい血を流している。そう言って歩き出すヴァルギリオスの言葉は帝が下賜する不遜なる敬意であるとともに、倒れた者にゆっくりとどめを刺している暇などない戦況と判断したことの表れでもあった。
成功
🔵🔵🔴
ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
帝竜ヴァルギリオス…確かに大将の器ではあるようですね。
しかし、カタストロフを起こして報いるなど、させはしません!
―緑の騎士、推参!
・先制対策
「第六感」を働かせつつ首の向きを「見切り」、少しでも被害を抑えられそうな場所を探し移動。その上で緑の斧槍を自身の前に翳し「武器受け」でブレスの勢いを弱め、緑の大盾で「盾受け」して直撃を避ける。
武器と盾で防ぎきれない分は、「覚悟」を決め「気合い」を入れ、「オーラ防御」と「激痛耐性」で持ち堪える。
・反撃
「たった八本の首で、三百本以上の聖槍を防げるものか!」
ユーベルコード発動とともに、「怪力」をもって緑の斧槍で「ランスチャージ」を敢行。さらに「2回攻撃」で追撃。
戦場外院・晶
耐える、そして殴る……それだけを祈って
「戦場外院・晶と申します……よしなに」
その祈りをオーラの護りとして纏い、ヴァルギリオス・ブレスの最中へ歩む
「――っ」
防ぎきれるものでなし……耐えて
回復し、進んで……また焼かれる
回復
一歩
焼身……また一歩
「……ふふ」
正に地獄、正に苦行
超重力の回廊にて鍛えていなければ挫けていました
「……隙あり」
最強の攻撃であれ無敵の防御であれ隙はあるもの……骨の平原で磨いた業で
【手をつなぐ】
たとえ帝竜であれ手があるならば
「私に繋げぬ筈もなく」
投げる……骨格と関節ある相手は如何に強くとも与し易く
怪力と技巧をもって、崩して
「……破ぁ!」
破魔、体力、一切合切を拳の一撃に込めて、殴る!
二戦を経てなお衰えを見せないヴァルギリオスの威容。そこにまた二人の猟兵が、竜を討つべく立ちはだかった。
「帝竜ヴァルギリオス…確かに大将の器ではあるようですね。しかし、カタストロフを起こして報いるなど、させはしません! ―緑の騎士、推参!」
ウィルヘルム・スマラクトヴァルト(緑の騎士・f15865)はヴァルギリオスの帝竜たちの裏の考えまで知り、その上で彼らを褒めるその将器を認める。だがその報いがカタストロフであるなどは許容することはできない。エメラルドの体を持つ騎士が、竜の将の前で堂々と名乗りを上げた。
「戦場外院・晶と申します……よしなに」
戦場外院・晶(燃えよドラゴン……この手を掴め・f09489)もまた、ヴァルギリオスに静かに名乗りを上げる。その胸の内には耐える、そして殴る……それだけを祈って。
「弱き者の名など知らぬわ、消えよ!」
どこまでも傲慢に、ヴァルギリオスは8つのブレスを放つ。これに消されるような者の名など覚える価値もない、そう言わんばかりに。
ウィルヘルムはそのブレスを、首の角度を見切って発射の少ない方へ動いた。ブレスの範囲は広範だが、均等に注がれているわけではない。相反する属性は離されるし、種類によって広がりやすいもの、纏まるものと特徴もある。ただそれでも、動いただけで避け切れるものではなかった。
「斧槍よ、盾よ、持ってくれ!」
避け切れないならば受けるまで。自身の体と同じ色をした斧槍と大盾を前に掲げ、ブレスを切り裂き、防ぐ。薄い所を選び、さらにその上で身をかわしたブレスは、武器で弱め、盾で防げるほどにまで弱くなってはいた。だがそれでも、帝竜の吐息はその守りさえ乗り越えてウィルヘルムの体に届く。体に届いた分は、体に備わった守りで防ぎ、あとは覚悟と気合で乗り越えるのみ。万策尽くしたからこそ、ウィルヘルムのエメラルドの体はその圧倒的なブレスを受け止めて見せた。
一方、晶は。
「――っ」
自らにオーラの守りを施し、ブレスの中を強引に歩いていく。
当然すぐに尋常ではないダメージを受けるが、それは【生まれながらの光】で回復。防ぎきれるものでなし……耐えて回復し、進んで……また焼かれる。
それは正に地獄、正に苦行。だが初めてではない。幾度となく重ねた超重力での修業、それが自身に、前に進む力をくれた。
激しいブレスの嵐がしばらく吹き荒れ、やがてヴァルギリオスはもういいだろうとその放射を止める。あとは屍の欠片でも確認すれば……そう思った帝竜の前に差し出されていたのは。
「……隙あり」
その前足……『手』を、晶は掴んでいた。体はボロボロである。回復に伴う疲労でスタミナももう残っていない。だが、手があるならば。
「私に繋げぬ筈もなく」
骨の平原で磨いた業で、怪力と技巧を持って、ただ一度、その骨格から相手を崩さんとする。
虚を突かれたヴァルギリオスは、その力に引っ張られて四つ足を崩した。
「……破ぁ!」
そこに、破魔、体力、一切合切を込められた拳が叩きつけられる。体勢を崩していたヴァルギリオスはまともにそれを受け、さらに足を折った。
確かな手ごたえを感じながら、晶もまた力を使い果たし、その場に膝をつく。
「ぬぅぅぅぅ、余に、この帝竜ヴァルギリオスに膝を付かせるかぁぁぁぁ!」
帝たる己が膝をついた、その屈辱に怒り狂うヴァルギリオス。しかしその怒りの声も、全ての首に襲い掛かる槍の雨が塞いだ。
「『破邪の力を宿せし槍よ! 雨の如く降りそそぎて、彼の敵を貫き討ち果たせ!」
ウィルヘルムの【ホーリー・ジャベリン・スコール】が、猛り狂う8つの首に文字通りに降り注いだ。それは頭に下への力を絶え間なく与え、それを徐々に下がらせていく。
「たった八本の首で、三百本以上の聖槍を防げるものか!」
その言葉通り、一本の首が40近い槍の雨に押され、低く垂れさがった。それが自身の真正面に着た瞬間を、ウィルヘルムは逃さなかった。
「敵大将よ、覚えおけ! 我が名はウィルヘルム・スマラクトヴァルト、緑の騎士なり!」
ブレスを切り裂いた緑の斧槍を構え、堂々たる名乗りとともに突進してその穂先を叩き込み、さらに返す刀で斧部分で薙ぐ。帝竜に土をつけた二人の猟兵の名は、その首に深い傷として刻まれた。
大成功
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プリンセラ・プリンセス
【姫と拳士】
連携・アドリブ可
「灯様もご助力ありがとうございます。私なんかの為に」
・対策
初手の攻撃はウマ●騎乗による速度アップと●空中浮遊、●地形の利用、●見切り、●第六感、●視力で回避専念
命中した場合には●激痛耐性、●毒耐性、●氷結耐性、●環境耐性、●オーラ防御、●火炎耐性、●限界突破で耐える
初手を凌いだらネクロ・インペリアル発動
騎馬隊に自分と灯様を●目立たない●迷彩で紛れ込ませて●集団戦術で複数集団に分散
ブレスの標的を分散させる
・攻撃
灯様へ●援護射撃になるように時々●存在感で姿を表し機関銃で射撃して気を引く
それ以外は小集団毎に●ランスチャージ●シールドバッシュで攻撃させていく
皐月・灯
【姫と拳士】
――ただの礼だ。いつかのクッキーのな。
確実にヤツのが速い。
首の向きや視線の動きを【見切り】、
【地形の利用】【ダッシュ】【スライディング】で周囲の遮蔽物を使い初撃を凌ぐ。
負傷?
【覚悟】の上だ。
初手を凌いだら、遮蔽物とプリンセラの騎兵に紛れつつ接近。
ヤツを間合いに捉えるまでが勝負処だが、プリンセラ達の陽動がありゃあ十分狙える。
これだけの騎兵数がちまちま殴ってくるんだ。
ヴァルギリオスにしてみりゃ鬱陶しさの極み、一気に焼き払っちまいたいとこだろ。
その攻撃が発動する直前に合わせ、【カウンター】の《猛ル一角》をブチ込む!
【全力魔法】【リミッター解除】で威力を最大限に高めた、【捨て身の一撃】だ。
邪悪なる竜の前に、姫と拳士がいた。それはまるで物語のクライマックスシーンのようで。
「灯様もご助力ありがとうございます。私なんかの為に」
プリンセラ・プリンセス(Fly Baby Fly・f01272)は隣に立つ皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)にそう微笑みかける。それに対し灯は。
「――ただの礼だ。いつかのクッキーのな」
聞こえるかどうかという程の声で答え、眼前に立つ巨大な邪竜を睨みつけた。
「勇者気取りか、童ども。うぬらのような者、如何程屠ったか最早覚えてもおらぬわ!」
意図などしていないのだろうが、やはり物語の邪竜そのものの台詞を吐きながら、ヴァルギリオスは8つ首からのブレスを二人に吹きかける。
――別にそんな気はねぇよ。
灯は内心でそう悪態をつくが、ヴァルギリオスの実力は本物、速さで勝てるなどと甘く見てもいなかった。
ブレスは口から放たれ、基本的には直線に飛んでくる。ならば首を見れば大まかな方向は分かるし、その首の目を見ればより正確にどこを狙っているのかを読み取れる。着弾地点を見切って上でそこから走り去り、遮蔽に出来そうなものがあれば身を隠し、小さい隙間には体を滑らせ潜り込む。
先手を打って動くことで速度で負けているのをカバーするが、それにしたって全てを避けられるものではない。躱しきれなかった雷が灯の腕に通り、その肌を焼いた。
この程度の傷なら覚悟の上……無傷であることが目的ではない、まずは凌ぎさえすればいいのだ。そう思いながら灯はさらにブレスを躱していく。
また別の首の前では、ウマに乗ったプリンセラが巧みに手綱を操り、ブレスを避けていた。竜の前には馬など一飲みにされてしまう餌でしかないが、この軍用馬は猟兵の相棒として鍛えこまれたある種の武器。主であるプリンセラと人馬一体となり、不安定な地形を踏み越えて宙さえ舞い、プリンセラの視覚に呼応するようにブレスの薄い方へと駆けて行く。
それでもやはり、ブレスの効果範囲は広い。炎がドレスを焼き、氷が足元を奪い、毒が体を蝕んでいく。しかしプリンセラはそれを耐え続ける。ブレスが止むほんの一瞬、その時を待って。
そしてやってきたその瞬間。
「死して尚の忠義、必ず報いましょう――」
姫の号令に応え現れるは、750体の近衛騎兵たち。騎兵は姫の命に応え、勇ましく竜へと向かっていった。
「弱者がどれほど群れようと、余に届くことなし!」
ヴァルギリオスはそう一喝し、前腕で騎兵たちを一薙ぎする。それによって十数人の騎兵が、これもまさに物語の一般兵の如く容易くなぎ払われるが、後に続く兵に怖じた様子は一片もなく、勇敢にヴァルギリオスに攻めかかっていった。さらに騎兵隊は8つの軍に分かれ、それぞれ一つずつの首をめがけて突撃していく。時に槍で突き、盾で殴り、さらには指揮官であるプリンセラの機関銃の掃射がヴァルギリオスの集中を乱す。集団でありながら一つの生き物のように動く集団戦術が、ヴァルギリオスの圧倒的な力に挑みかかっていった。
「雑魚の群れが、分かれて余と対等になろうとでもいうか! その思い上がり正してくれよう!」
ヴァルギリオスは8つの首を一斉に持ち上げ、その口にブレスを溜めた。戦場を纏めてなぎ払う、ヴァルギリオス・ブレスの構え。そして発射のためその首が下ろされた、その瞬間。
「アザレア・プロトコル1番――《猛ル一角》!」
騎兵隊の中央部隊に紛れていた灯が、首に対し【猛ル一角】の拳を突き出した。
ほんの一瞬遅れればまともにブレスの直撃を受ける、まさに捨て身の一撃。だがそれは、姫の騎兵と、手ずからの射撃によってこじ開けられたチャンスを間違いなくものにした。
術式回路のリミッターを外し、全力の魔力を惜しげもなく乗せたその一撃は、口内にブレスを極限まで溜めた赤い首を貫いた。溜まりに溜まった炎が爆発し、首がのたうつ。さらにそれはほかの首にぶつかり、ブレスをあらぬ方向へと吐き出させ、自爆と消耗を誘った。
「灯様!」
竜に一撃を見舞った拳士に、姫が駆け寄る。拳士は一撃を決めた快哉と姫が無事である安堵を意地を張って隠しながら、一度深く頷くのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ナイ・デス
ソラ(f05892)と
かつての勇者達は、ヴァルギリオスと相討った
そんな勇者さん達がいたから、今ここに私達はいる……
託されてきた……なら、負けられない、ですね!
ソラの盾を、私も一緒に【念動力オーラ防御】支える
【かばう】
【覚悟激痛耐性継戦能力】私は再生する。ですから、大丈夫
諦めない。反撃、しましょう。あのバリアは、私が!
聖剣に変身
私達が、破ります!
光輝く。願う
この戦いは、今を
そして、今に繋げてくれた過去を
未来へと繋げる為に
光を集める。勇気の光を束ねて
世界を滅びから、守る為に
どうか――『圧砕』の力をここに!
いってください、ソラ!
剣となった私は【鎧無視】の刃
【生命力吸収】する光を放ちながら、敵を滅す!
ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と
数多くの勇者に想いを託され、此処まで来ました
皆がわたしたちの背を押しています…簡単に倒れませんよ!
全力で守りを固め、【盾受け・オーラ防御】
各種属性の【耐性】を全開
ナイくんの前に立ち全属性のブレスを【見切り】受け流す!
勇者は決して、退きません!【気合い・かばう】
彼の変身した聖剣を手に、一気に飛翔!
今まで縁を紡いだ彼らの声が聞こえます
『圧砕の勇者』ミロナさん、貴方の力を貸してください
わたしたちでは力が足りない
わたしたちでは、あのバリアを破れない!ですが、貴方と一緒ならば!
剣に【属性攻撃】を纏わせバリアの属性を中和
【勇気】を胸に更に一歩!抜けた先で全力の一撃を叩き込む!!
数多の勇者がヴァルギリオスに挑んだ。それは今この場だけの話ではない。かつてヴァルギリオスが生あるものであったその時、大勢の勇者がヴァルギリオスに挑み、相打ちとなった。ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、その勇者たちの眠る勇者の墓標に幾度となく通い、彼らの思いを聞いてきた。
「数多くの勇者に想いを託され、此処まで来ました。皆がわたしたちの背を押しています……簡単に倒れませんよ!」
死してなお力を貸してくれた彼らに報いるためにも、ここで負けるわけにはいかない。その決意を聞き、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)も彼女に続く。
「かつての勇者達は、ヴァルギリオスと相討った。そんな勇者さん達がいたから、今ここに私達はいる……託されてきた……なら、負けられない、ですね!」
この戦いは自分たちだけのものではない。ヴァルギリオスを討つことは、過去の勇者たちすべての勝利にもなる。その思いを胸に、二人はヴァルギリオスに相対した。
「ここまで余に抗しえたは褒めてやろう。なれど余に敗北はない。余の敗北は帝竜全ての敗北……それだけは罷りならぬ!」
ヴァルギリオスにもまた背負うものがあるのか、その8つの口から放たれるブレスは、これ以上の苦境を許さぬとばかりに二人へ襲い掛かる。
その奔流の前に、ソラスティベルは盾を構えて進み出た。その盾に宿るのは、猟兵として磨き上げた技術とオーラの壁。体には鍛え上げた耐性を宿し、目を焼くような属性の嵐を見据え、その動きを見切る。築き上げたすべての力を持って、ソラスティベルはブレスに対抗せんとした。
「勇者は決して、退きません!」
それは驕りではない。数多の勇者から教えられたこと。そしてそれを支えるため、もう一人の勇者が進み出る。
「私は再生する。ですから、大丈夫」
ナイはソラスティベルに行くダメージを肩代わりするように彼女をかばう。それは高い能力と不死性を用いた自己犠牲か。だが、それだけではない。彼女を万全に保つのは、勝利のために欠かせない一手なのだ。
ブレスの間隙に、ナイはその一手を打つ。
「諦めない。反撃、しましょう。あのバリアは、私が!」
内の体が光に包まれ、一本の聖剣へと変わる。ユーベルコード【人界を照らす光の英雄譚】。ソラスティベルの為にあるユーベルコード。発動には賛同者が必要なものだが、その賛同者はこの群竜大陸に間違いなくいた。ソラスティベルに未来を託した、大勢の賛同者たちが。
「この戦いは、今を、そして、今に繋げてくれた過去を、未来へと繋げる為に」
過去が今を支え、未来を創る。光り輝く相棒を手に、ソラスティベルは過去へ祈った。
「『圧砕の勇者』ミロナさん、貴方の力を貸してください。わたしたちでは力が足りない。わたしたちでは、あのバリアを破れない! ですが、貴方と一緒ならば!」
かつて魂と誇りを汚されそうになったところを、ソラスティベルに救われた勇者。その全てを砕く剛力が宿ったあの時の力をもう一度。
「この手に有りしは一振りの光。共に在りしは、強き意思!」
聖なる光を宿す剣を振り上げるソラスティベル。その手にはまるで無数の手が重ねられているようにも見え、そしてその中の一際大きく武骨な手が、剣を握る手に無双の力を与えているようでもあり。
「いってください、ソラ!」
剣となり、相棒にその身を託したナイが叫んだ。ソラスティベルは彼を携えバリアに切りかかり、炎に水を、毒に土を、闇に光を、属性を振るいバリアを次々と中和していく。そしてその全てがはぎ取られたとき、眼前にあるは鋼より硬い帝竜の鱗。
「世界を滅びから、守る為に、どうか――『圧砕』の力をここに!」
ナイの声と、ソラスティベルの勇気。そして勇者の力。
光を放つ刃が鎧の如き鱗をないもののように切り裂き、帝竜の体を深々と圧し切った。生命を吸い上げる光の中、筋骨たくましい一人の男が笑顔を浮かべているのを見たのは戦場の幻影ではないと、ソラスティベルは信じたかった。
大成功
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アノルルイ・ブラエニオン
竜退治は柄ではないのだけどね
帝竜戦役、最後まで仲間達と共に戦うぞ!
ブレスの範囲を【見切り】【ダッシュ】して届かない所へ
それでも被害は被るだろう
だが反撃一回でも出来ればよい
【歌唱】し、物語る
「ヴァルギリオス! 万物を統べし帝竜の中の帝竜! 八の首より放たれる吐息はあらゆるものを破壊する八種の力!」
UCを発動、そのブレスを言葉で再現し逆に食らわせてやる!
竜の恐ろしさを語るのは私の専売特許なのさ
なぜなら私は吟遊詩人だから!
シホ・イオア
wiz
これが、シホの全力だー!
敵の首が向いた瞬間に残像と空中戦で回避を試みる
掠るくらいならオーラ防御で我慢できるかな?
大丈夫、聖痕の痛みと祈りがシホを前に進ませてくれる!
「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、舞い踊れ!」
属性に対応した部位を持ってるみたいだね
狙いは土・氷・闇・毒の部位かな。
破魔・属性攻撃で守りを打ち砕いて
全力魔法に部位破壊・鎧無視攻撃で大ダメージを狙う。
誘導弾で口の中とかも狙えるのかな?
接近できるなら敵を盾にでまとわりつきつつ攻撃していくよ。
配下たちを掌握し受け入れる度量がある
竜としての在り方が違えば友達になれたかもしれないのにね
連携・アドリブ歓迎
「竜退治は柄ではないのだけどね。帝竜戦役、最後まで仲間達と共に戦うぞ!」
アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)は普段の調子を崩さず、しかし確たる決意を持って帝竜の前に立った。
「これが、シホの全力だー!」
シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)もまた、その小さな体にあるすべての力を輝かせ、ヴァルギリオスへと向かい合っていた。
その二人に対し、ヴァルギリオスは首を向ける。その仕草に、最早最初の傲慢さは欠片もない。
「個では余に及ばぬ……なれどそれが如何程のものか。猟兵よ、誇れ! 汝らはこの帝竜に敵するものなり!」
いかに細かろうと、小さかろうと、猟兵は己を脅かし得るものである。その認識のもと放たれたブレスは、必殺の気魄さえ乗せて二人に襲い掛かった。
シホは残像をその場に残し、上へと逃れる。フェアリー故に空中を舞うのは日常事であり、そこで自身を制御するのも難しいことではない。それでも、広く激しいブレスはシホの体を掠める。オーラを固めて防ぐが、それだけでも体には尋常でない痛みが走った。
「大丈夫、聖痕の痛みと祈りがシホを前に進ませてくれる!」
前に、そして上に。その痛みさえも原動力に、シホはブレスをよけ続けた。
それに対し、地をかけて躱すのがアノルルイ。距離を取りながら、ブレスが届く範囲を見極めそこから外れるように走る。
だがそれでもブレスの追随の方が早く、炎や雷がその体に打ち付けられ、その都度浅くない傷を負わされていく。その傷がアノルルイをふらつかせるが、そこで立ち止まってはいられない。
元より躱しきれず被害を受けるのは承知の上。ただ一度、反撃一介の余力さえあればいい。それさえ残るなら、肉でも血でもくれてやろう。
ブレスの掃射が止んだ時、二人の猟兵は空と地でそれぞれ浅からぬ傷を負っていた。だが、両者とも倒れてはいない。戦う力は残っていた。その体にも、心にも。
「輝石解放、ルビー! 愛の炎よ、舞い踊れ!」
シホが空中で、ハートの浮かんだルビーの力を解放する。解き放たれた愛の炎が4つの首に狙いを定め、その口目掛けて飛んでいった。
土・氷・闇・毒を司る首が、その口内を焼かれてのたうつ。シホはブレスを避けながらも炎に弱そうな首を見定め、それが自身の方へ向くよう動きを調整していたのだ。図らずもアノルルイが自分とは逆に地を走って躱していたため、丁度半分の首を自分に引き付けることができた。的を絞った攻撃は的確にその首を攻め、部位破壊に追い込んでいく。
そのヴァルギリオスの前で、アノルルイは高らかに声を上げた。
「我は語らん! 汝、好敵手ゆえに! ヴァルギリオス! 万物を統べし帝竜の中の帝竜! 八の首より放たれる吐息はあらゆるものを破壊する八種の力!」
それは敵の力を認め、称える歌。朗々としたその声は、まさに帝を歌うにふさわしい荘厳さを持って戦場に響き渡る。
歌になった言葉は、そのまま歌われた帝竜の力そのものへと姿を変え、ヴァルギリオスへと襲い掛かった。
「余を騙るか……愚かな!」
ヴァルギリオスは己もブレスを吐き、それを相殺しようとする。炎、雷、光、水は二つのブレスがせめぎ合い、両者の中央で相殺されていく。だが。
「何故……余のヴァルギリオス・ブレスが……!」
残る四属性……シホが炎で破壊をかけた首が司る四つは、アノルルイの再現した万全のブレスに徐々に押し返されていく。同質の技のぶつかり合いに仲間の力が乗り、結果アノルルイの歌は帝竜を上回る技となっていた。
やがて均衡が崩れ、四つの奔流がヴァルギリオスを直撃した。
「ぐおぉぉぉぉぉ! 余は……帝竜全てを背負う者……ならぬ……ならぬ!」
苦悶の声と共に、自らの矜持を掲げ踏みとどまらんとするヴァルギリオス。
「配下たちを掌握し受け入れる度量がある。竜としての在り方が違えば友達になれたかもしれないのにね」
その姿にシホが複雑そうにこぼす。
「ならば君がそのあり得たかもしれない姿を語ってあげるといい。道を違えた恐ろしき竜の話は任せたまえ。竜の恐ろしさを語るのは私の専売特許なのさ。なぜなら私は吟遊詩人だから!」
アノルルイの声が、群竜大陸の奥地に響いた。
成功
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ナハト・ダァト
リベンジといこウ
叡智ノ本領発揮ダ
真の姿解放
対策
先手の毒、水、闇のバリアを庇う形で受け止め
直後、タールの純度を水に合わせてバリア内に溶け込み
闇属性は闇に紛れる技能で自身の力へ
毒に対しては、ドーピング、限界突破、継戦能力を使い
世界知識、情報収集、医術、早業で抗体を作って相殺
「トラップツールⅡ」、武器改造でバリアを体に馴染ませたら
敵を盾にする、シールドバッシュ技能でその他のバリアの相殺に掛かる
炎、雷、光のバリアへ2番目にぶつかり
尚燃える体を、氷と土のバリアへぶつける
全ての障壁を相殺後、
満身創痍にみえるも事前に切り離しておいた触手の一部を集めて攻撃に用いる
借りハ、返したヨ
孤独なル帝竜ヨ
度重なる猟兵との戦いで、帝竜ヴァルギリオスの体は既に満身創痍となっていた。
元より侮ったつもりはなかったが、それでも己の勝利に一片の疑問も抱いてはいなかった。しかし、猟兵は今自身を追い詰めつつある。
倒れてはならぬ。己はヴァルギリオス。最強最後の帝竜なのだ。
己の存在を杖に立つ帝竜の前に現れたのは、最初に帝竜に挑んだ男であった。
「リベンジといこウ。叡智ノ本領発揮ダ」
ナハト・ダァト(聖泥・f01760)の今の姿は漆黒のブラックタールではない。輝く純白のからだに万色の触手を従えた、力を解放した真の姿だ。
「うぬは……良かろう。始まりであったうぬこそ我が禊に相応しいわ」
猟兵を弱者、下郎と罵ってきたヴァルギリオスだが、自身に最初に傷を入れたナハトを彼は覚えていた。否、あくまで価値無しと見るのは実績なき間のみ。己に敵し得た全ての猟兵を、彼は覚えたのかもしれなかった。
同じ手は通じぬと、ヴァルギリオスは全身にバリアを纏う。それに対しナハトは、輝くその身を躍らせ、自らバリアへと飛び込んでいくのであった。
狙うは猛毒の力を持つ、毒と水と闇のバリア。タールである自分の体の純度を合わせて水に滑り込み、黒き闇はタールとしての力である闇に紛れる方法ですり抜ける。
複合を外し、単一となった毒は己の体に備わる耐性と継戦能力で耐えながら、叡智を結集し後退を作り出した。
先の交戦でヴァルギリオスの属性は徹底的に調べ上げた。知とは積み重ねであり、ヴァルギリオスの使う力が属性に依存するものである以上、その知識にて対策を取るのは当然であった。
そうして理解し、分解したバリアを『トラップツールII』を用いて己になじませ、次のバリアに挑む障壁とする。炎と雷と光、焼き尽くす三属性を奪い取り、固め、埋める氷と土へとぶつけ、全てを相殺する。
分析と観察、そして実戦の元、帝竜が誇る属性の壁は、ここにその全てをはぎ取られた。
もちろんナハトもただでは済まない。超エネルギーの塊であるバリアの中を動き回ったのだ。その体は満身創痍、もはや特殊な力を使わなくとも、帝竜の一噛みでその命は絶えそうに見えた。
「良い……来るがいい、不定の猟兵よ。すべて破られれど余には爪も牙もある! うぬの牙ごと噛み砕かん!」
ヴァルギリオスはあくまで堂々と、引く様子を一切見せずに8つの大口を開けてナハトを待ち受ける。
「私ニハ牙モ爪モないケド……これダケは残ってルヨ」
ナハトが表したのは、切り離しておきここまで温存した触手の束。己の身がどれほどバリアに焼かれようとも、この一撃の為に残した無傷の牙だ。
「借りハ、返したヨ。孤独なル帝竜ヨ」
8つの噛みつきをすり抜け、触手はそれを束ねる根本、胴体の真ん中に突き刺さった。その触手は鱗を粉砕し、その奥にある強靭な心臓を叩き潰した。
「猟兵……汝らが……この群竜大陸の覇者だ……帝竜たちよ……許せ……!」
8つの首を天に向け、ヴァルギリオスは最期の声を上げた。その直後に巨大な胴が倒れ、少し遅れて8つの頭が地に叩きつけられる。帝竜ヴァルギリオスの、最期の瞬間であった。
世界に破滅を起こさんとした帝の中の帝、帝竜ヴァルギリオスは猟兵の前に敗れ去った。
悪しき竜は、今ここに勇者によって倒されたのだ。
大成功
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