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帝竜戦役㉙〜ただ、純粋なる強さを此処に

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #ヴァルギリオス #群竜大陸 #オブリビオン・フォーミュラ

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「さて……帝竜戦役もいよいよ大詰めだ。この世界におけるフォーミュラ、帝竜ヴァルギリオスが発見されたよ」
 集った猟兵たちの姿を眺めながら、ユエイン・リュンコイスはそう口火を切った。グリモアベースに集っていた猟兵たちは、誰も彼もが大小問わぬ傷を負っている。しかし、彼らの表情に映る戦意には些かの衰えも見受けられてなかった。
「ヴァルギリオスは四方を呪力高山に囲まれた世界樹の中で待ち受けている。当初は帝竜たちの絶対不可侵結界によって隔絶されていたが、みんなの成果によってそれは解除済みだ……とは言え、油断は決してできない」
 結界の解除は言わばスタートラインに立ったのと同義。この戦役の勝敗を決するのはまさに今この瞬間からなのだ。万が一敗北してしまえば全ての努力は無に帰し、カタストロフがアックス&ウィザーズを飲み込むだろう。
「これまで戦ってきたフォーミュラ同様、ヴァルギリオスの戦闘力もまた凄まじい。一瞬でも気を抜けば、一撃で戦闘不能にまで追い込まれるだろうね」
 敵は絶対に先手を打って行動してくる。鉄壁の三重障壁、竜としての本領を見せる威容。そしてただただ純粋な、それ故に圧倒的な威力を誇る全属性ブレス。どれ一つとっても、どう攻略すればよいのかと首を捻らざるを得ない攻撃手段だ。しかし、打ち破らねば待つのは世界の滅亡に他ならない。
「これまでのフォーミュラ同様、油断は一切できない。だけど、そんなのはこれまでの戦争だって同じだった……だから、今回もきっと勝てると信じているよ」
 そう話を締めくくり、ユエインは仲間たちを送り出すのであった。

●強さの形
 最強と聞いて、誰を想像するだろう。
 無敵と聞いて、何を想像するだろう。

 ――例えば、銀河を統べる皇帝。
 一つの共同体、一つの文明、一つの歴史、そして数多の権能をその身に宿す万能不滅。人の姿をした国家。
 ――例えば、天災なる天才。
 他の追随を許さぬ科学技術、隔絶した才能と能力による無邪気な蹂躙劇。ただ一個人による大災害。
 ――例えば、戦乱の風雲児。
 数多の強者を束ね上げ、己が野心によって世を呑まんとする第六天魔王。万民を引きずり寄せし大望。
 ――例えば、希望を摘む大魔王。
 願いを、望みを、祈りを貪り、確固たる自己を持ちながらも千変に万化する在り様。無形にして不定なる絶望。

 ならば、翻って。此度の王はいったい如何なる強さと形容できる?
『……よくぞここまで来た、猟兵達よ』
 内容は単純にして明快。一目見るだけで、直感することが出来るだろう。
『余こそが群竜大陸の主、帝竜ヴァルギリオスである!』
 それは――生物としての強さ。何よりも力強く、何よりも堅く、何よりも大きく、故に誰よりも強い。単体としての存在階級を極限にまで高めた頂き。
『奥の手であった『ワーム』にさえも辿り着くとは、見事なり。だが、最強の帝竜である余を倒さぬ限り、『カタストロフ』は止まらぬ』
 極まった強さに小細工や小手先の形容詞など不要。強いモノはただ強いという、余りにも理不尽すぎる理。陳腐とさえ言える不条理の体現者こそ、この世界へ顕現せし王に他ならない。
『さあ猟兵達よ、最終決戦といこうではないか!』

 ならば、見せてくれ。キミたちの強さを。絶対なる一を討ち滅ぼす、数多の意志を示してくれ。それもまたきっと――。
 最強の形、その一つに他ならないのだから。


月見月
 どうも皆さま、月見月でございます。
 帝竜戦役最終決戦、フォーミュラ『ヴァルギリオス』戦となります。
 それでは以下補足です。

●最終勝利条件
 オブリビオン・フォーミュラ『帝竜ヴァルギリオス』の撃破。

●プレイングボーナス
『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
 敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。

●戦場
 呪力山脈中央、世界樹内部。巨大なヴァルギリオスが十全に暴れられるだけの高さ・広さを兼ね備えた空間です。

●採用人数について
 出来る限りの採用を目指しますが、キャパシティの問題から採用できない可能性もご了承ください。金曜夕方から着手し、土日を使って仕上げてゆく見込みです。

 どうぞよろしくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『帝竜ヴァルギリオス』

POW   :    スペクトラル・ウォール
【毒+水+闇の『触れた者を毒にするバリア』】【炎+雷+光の『攻撃を反射し燃やすバリア』】【氷+土の『触れた者を凍結するバリア』】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    完全帝竜体
【炎と水と雷の尾】【土と氷と毒の鱗】【光と闇の翼】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    ヴァルギリオス・ブレス
【8本の首】を向けた対象に、【炎水土氷雷光闇毒の全属性ブレス】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナハト・ダァト
サテ、君ノ弱点
こノ叡智デ、証明しようカ

対策
先手の毒、水、闇のバリアを庇う形で受け止める

その後、タールの液体純度を水に合わせてバリアの内に溶け込み
闇属性は闇に紛れる技能で自身の力へ
毒に対しては、ドーピング、限界突破、継戦能力を使いながら
世界知識、情報収集、医術、早業で抗体を作って相殺

「トラップツールⅡ」、武器改造でバリアを体に馴染ませたら
敵を盾にする、シールドバッシュ技能でその他のバリアの相殺に掛かる

炎、雷、光のバリアへ2番目にぶつかり
尚燃える体を、氷と土のバリアへぶつける

相殺後、弱点を実証した事でユーベルコード発動

君ノ弱点ハ
互いヲ殺し合ウ事ダ
まるデ蠱毒…いヤ、孤独だネ


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
バリア……(がくっ)ブレイブ(UC)の反撃は止めておいて別アプローチしてみるにゃん。
攻撃しなければ逃げるのみにゃ。呪いで子猫に変身し、くるりひらりとダンスする様に舞い、保険に呪いのオーラ防御を纏い敵のバリアと接触反発回避を狙い次点はバリア効果軽減を。反発するならバリアを踏み台にするにゃん。【癒しの聖獣】様によるキャットキッスで猟兵達を治療。……毒、燃焼、凍結…バリア(防御)というか状態異常の領域にゃよね。それならいけるかもキャットキッスの聖気による浄化でバリア解除を試み、混乱や注意を逸らすヘヴィなミュージックエナジーによる重量攻撃や肉球バッシュで反撃に繋げていくにゃん。



●隔絶障壁を越え、この手を届かせん
 巨体の這いずる音、雷轟と見紛う唸り。絶対なる強者『ヴァルギリオス』の前へ、真っ先に姿を見せたのはナハト・ダァト(聖泥・f01760)とレフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)の二名であった。
「コれが、帝竜ヴァルギリオスですカ……確カに、他のフォーミュラに勝るトモ劣らヌ威容だ」
「す、すごくおっきいにゃん……!?」
 事前に説明を受けてはいたが、彼らは敵を前に改めてその脅威を再確認する。だが、相手を油断ならぬと判断しているのは何も猟兵側だけではない。
『数多の帝竜によって護られし不可侵結界……それが破られること自体が当初の想定より外れしこと。故に小さきモノよ、我は汝らを侮らぬ』
 獅子は兎を狩るにも全力を出すという。であれば形式上、狩られる側の獅子は如何な一手を打つか。それは単純明快な選択。
『だが……この三重障壁であればどうか。超えるか、破るか、屈するか』
 第一層は触れし命を蝕む漆黒の毒水。第二層は眩き応報の雷火。そして第三層は万物を静止させし凍土。一枚だけでも必殺必滅、それを三枚重ねて帝竜は絶対の護りを構築したのである。
「バリア……無策で突撃するのはきっと悪手にゃん。ブレイブでの反撃は止めておいて、レフティは別アプローチしてみるにゃん」
「ソうデスか。さて、なら私ハ……君ノ弱点、こノ叡智デ、証明しようカ」
 それに対し、猟兵の反応は対照的と言って良かった。敏捷さを上げる為に子猫へと変じ、手のひらサイズの小ささを活かして攪乱を狙うレフティ。そして……渦巻く膨大な魔力など意にも介さず、障壁へと歩み寄るナハト。
『ほう、これを破る策を持ち合わせているのか、黒き粘体よ』
「勿論。こうシテ液体ダかラこそ、出来ル芸当と言ウものガあルのダヨ?」
 まず第一、毒水の障壁へナハトが手を触れると、どろりとその体が輪郭を失い始める。ブラックタールが持つ液体としての特性を生かし、絶死領域へ同化することによって潜航を開始したのだ。
(ぐゥ、闇ト水はマダしも、毒ハ対策をしてイテも辛イですネ……!?)
 水は同化で対処、闇は裡より漏れる輝きで照らせる。問題は毒だ。ナハトは痛みや症状から種別を特定し、手持ちの道具で素早く中和を試みてはいる。しかし、次から次へと激痛が身体を苛み留まることは無い。何とか第一の障壁を突破できたものの、彼は既に満身創痍と言った有様であった。
『ほう、一つ突破したか。それだけでも驚嘆に値するが……されど、まだ一つだ。そして我もまた、ただ座して待つだけに在らず』
 帝竜の巨躯が動く。大山が如き体が身を起こし、絶望的な試みを計るナハトを叩き潰さんと前腕を振り上げ……。
「そうはさせないのにゃん! そっちがバリアを張るなら、こっちもバリアにゃん!」
 その眼前を小さな影が横切った。それは全身へ魔力障壁を張りながら飛び回るレフティである。残念ながら、彼の纏う防御に帝竜の護りを突破するだけの耐久力はない。しかし、障壁同士が弾き合う作用を利用して縦横無尽に動き、敵の注意を引かんとしていたのだ。
『……死に体よりも先に、まずは邪魔な羽虫を消すのも合理か』
 ヴァルギリオスは敵戦力の脅威を見比べ、仔猫の排除を選択する。黒粘体は障壁を突破しているうちに息絶えると判断し、小さくとも未だ健在な相手を叩き潰さんと決めたのだ。壁の如き掌が頭上より振り下ろされ、レフティを弾き飛ばす。障壁で直撃こそ免れたものの、衝撃までは全てを殺し切れぬ。全身を襲う激痛に歯を食いしばって耐えながら、それでも獣は懸命に敵へと挑み掛かってゆく。
「例えどれだけ、大きさに差が在ろうとも……絶対に負けないにゃん!」
 そうして仲間が稼いでくれた時間を、ナハトもまた無駄にするつもりはなかった。
「諸刃ノ、剣ダったが……何とカ上手くいッた様で何ヨリ」
 第二障壁へと挑むナハトは、己の身体に第一障壁の毒水を多分に含んでいた。彼は激痛と引き換えに微量ながらも敵の護りを奪取、それを利用して雷火の壁へと飛び込んでゆく。しゅうしゅうと蒸気を噴き上げながらも、黒粘体は敵の力を利用して強引に灼熱を突破することに成功する……が。
「ぐ、ムぅ……ッ!」
 全身に残火が纏わりつき、毒に変わってナハトを苛み続けていた。二度に渡る障壁踏破は体力を余さず奪い尽くし、既に彼は虫の息。第三の凍土へと挑む余力などなく、更には人の形が崩壊しかけている。
『敵ながら天晴である……だが、これで終わりだな』
「いいや……まだにゃん!」
 帝竜は黒粘体を撃破したと判断した。だが仔猫は、仲間はまだ戦えると信じた。彼は敵の注意がナハトへ向いた一瞬の隙を突き、光り輝く聖猫を召喚。くるりと身を翻すや、キャットキッスを放つ。それを見て、帝竜は喉を鳴らして嗤う。
『愚かな。我が障壁は攻撃を通さぬ』
「そんなこと分かってるにゃ……でもそれは、本当にこれが攻撃だったら、の話にゃ」
『なに……?』
 光輝を放つ祈りは無明を貫き、応報の雷すらもすり抜けた。聖光がナハトを包み、傷を癒してゆく。レフティの狙いはヴァルギリオスへの牽制でも障壁の破壊でもない。最後の障壁を破るためのあと一押し、それを仲間へと届けることであった。
「支援、感謝しマス……さぁ、炎マデ消えテしまワヌ内に終わラセまショウ」
 体力を取り戻したナハトは浄化によって焔が鎮火してしまわぬうちに、凍土を踏破すべく飛び込んでゆく。全てを凍てつかせる氷風に対抗できるもの、それは同じ存在が生み出した灼熱だけだと彼は推察したのである。果たして、最後の障壁を突破したナハトの身体には火の粉も霜も見当たらず、黒々とした流体が照り輝いていた。
『馬鹿な……!』
「属性を複数揃えル事ハ、強みト同時に弱サも内包すル。君ノ弱点ハ、互いが互いヲ殺し合ウ事ダ。まるデ蠱毒……いヤ、孤独だネ」
 斯くして、此処に証明は成った。ナハトが左腕を振るうや、虚空より触手が飛び出して帝竜を縛める。と同時に、絶対を誇るはずの三重障壁もまた消えてゆく。
「此処かラが本番ダ。猶予は百八十秒、終ワレば障壁ハまた復活すルだろウ」
「それが尽きる前に、全力で攻撃を叩き込むにゃんっ!」
 反撃の時を知らせる様に、戦場へ高らかに旋律が響き渡る。仲間が生み出した好機を逃す理由も無し、レフティは大きく跳躍すると頭の一つに狙いを定めた。
「窮鼠猫を噛むというけれど、今は猫が竜を打つ時だにゃん!」
 帝竜からすれば塵芥に等しい大きさである仔猫の肉球。だが、そこに籠められた威力はかつての勇者に勝るとも劣らぬ。肉球はプニリと相手の側面を捉えると……。
『オオオオォォォォォォッ!?』
 勢いよく相手の頭を弾き飛ばし、ヴァルギリオスをたじろがせることに成功するのであった。しかし、それと同時に触手もまたぶちぶちと千切れてゆく。即ち時間切れだ。
「一撃ハ与えましタ。此方モ無傷デはありまセンし、一度引いテ体制ヲ立て直スべきですネ」
「無茶は禁物だし、そうするにゃん!」
 攻撃は成功したものの、そこへ至るまでに払った労力も大きい。二人は引き際を見極めると、後続の仲間へと戦闘を引き継ぎながら撤退してゆく。それを見送りながら、ヴァルギリオスは目を細める。
『たかが一撃……されど一撃、か』
 その瞳からは獰猛な闘争心へ火が付く様子がありありと見て取れるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

須野元・参三
最終決戦に気品が降臨!!
フフーフ、どんな敵が相手になろうが私に傷を付けることは断じて出来ないぞ
なにせ『溢れる気品力(オーバーフロー・エレガンス)』を使っていて気品力溢れる無敵モード突入中だからな!
『絶対無敵的気品力』ということが伊達ではないことをお見せしよう!!
私の溢れ出る輝きによる【挑発】【パフォーマンス】【存在感】でヴァルギリオスの視線や攻撃を【おびき寄せ】【時間稼ぎ】で一挙に引き受けるぞ

でも~、撃破してくれるのならば早くやってくれると嬉しいぞ~。
怖いし……もしダメージくらっちゃったら……気品痛いの嫌だし……

(連携・アドリブお好み歓迎)


セルマ・エンフィールド
例えば、時代を象徴する悪党。
彼の思想に共感できる部分は一切ありませんが……意思と策のみでこれと同等の位置へ上り詰めた、そこだけは見習わせてもらいましょうか。

飛行能力があるようですし、鳥の形の「氷晶ゴーレム」に乗りフィンブルヴェトを手に空中戦を。
氷の鱗は相性が悪い、生半可な攻撃は通りそうにありませんね。氷の弾丸で炎の尾は和らげ、水の尾は凍てつかせ、雷の尾は複数のナイフの投擲で誘導することで防ぎ、代償までの時間稼ぎを。

代償が発生したらその機会を見逃さず【凍風一陣】を。氷の鱗以外の場所を狙う必要はありません。ただ一発撃つだけで代償を強いるこの弾丸……氷の鱗だろうと貫き、体内から凍てつかせてみせます。



●氷弾よ、光輝と共に穿て
 緒戦のぶつかり合いは痛み分けと言った所か。相手の闘争本能が燃え上がり始めているのを感じながら、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は最強という概念に思いを馳せる。
「最強の形、ですか。なら、例えば……時代を象徴する悪党」
 八つの頭部で周囲を睥睨する帝竜を前にして脳裏へ思い浮かぶのは、何よりも弱かったが故に最凶へと上り詰めた或るヴィランについて。
「彼の思想に共感できる部分は一切ありませんが……意思と策のみでこれと同等の位置へ上り詰めた執念、そこだけは見習わせてもらいましょうか」
 初めから最強で在ったもの。屈辱を経て最凶へと成ったもの。己の在り様としては後者の方が近しいだろうと、セルマは思う。少なくとも、今の彼女に眼前の強敵を一撃で屠り去るような手段はない。故に狩りと同じく、機を見定める必要があった。
『待ちで事足りぬことは分かった。では、今度はこちらから動くとしよう……』
 帝竜が打って出ると決めた途端、俄かに身体が膨張し始める。炎水雷の三尾が生え、巌と霜に覆われた毒鱗が全身を覆い、光輝と暗黒の翼が背より生じた。それこそ、普段は秘められしヴァルギリオスの真の姿。ただでさえ強大な戦闘力が更に跳ね上がってゆく……が。
「飛行能力も獲得しましたか……となれば、時間切れまで飛び回って逃げるほかありませんね」
 セルマがそれに動じる様子はなかった。彼女は氷晶ゴーレムを呼び出すと、形状を鳥型へと整形し始めてゆく。あれが真に強力な姿なのであれば、何故それを常に発動していないのか。狙撃手は膨大な狩猟経験から、その理由を既に見抜いていた。
「馬や狼とて、全力で走り続ければいつかは息切れを起こします。それと同じように、あの姿もそう長時間は維持できないのでしょう。恐らく本体も無理をしているはず」
 何らかの反動が生じる僅かな一瞬。セルマはそこへ勝機を見出していた。問題はそのタイミングまで如何にして攻撃を凌ぐか。氷鳥へ騎乗しての回避戦で時間を稼ごうとする少女へ、横合いから助け船が差し出される。
「どうやらお困りのようだね……いま、最終決戦の地に気品が降臨!!」
 芝居掛かった立ち振る舞いに良く通る美声。狙撃手が声の方を見やると、須野元・参三(気品の聖者・f04540)のやたらと眩しい立ち姿が視界に飛び込んで来た。
「詰まるところ、強化の反動が来るまで相手の注意を逸らし続ければ良いのだろう? であればその役目、私が引き受けようか! この溢れ出る気品ならば、如何な帝竜とて釘付けは間違いなしさ……!」
「気品かどうかは分かりませんが……確かに適任ではありそうですね。では、お任せしてもよろしいですか?」
 気品の自称は伊達ではなく、参三の纏う空気はどこかキラキラと輝いているように見える。もしかしなくても、ただそこに居るだけで非常に目立つだろう。敵の目を惹くという点ではこれ以上ないほどに相応しく、潜伏隠密を旨とする狙撃手とは好対照と言えた。
「勿論さ! ……でも~、撃破してくれるのならば早くやってくれると嬉しいぞ~。怖いし……もしダメージくらっちゃったら……気品痛いの嫌だし……」
「ええ、無論です。こちらもただ逃げるだけではありませんので」
 一転して声を潜めて囁いてくる参三に、セルマはクスリと微かに微笑みながら頷く。ともあれ、こうして留まっていてはじきに補足されるだろう。二人は地上と空へと別れ、それぞれの役目を果たすべく戦場へと飛び出してゆくのであった

『動いたか……何やらコソコソと相談をしていると思えば』
「おっと、最初から気付かれていたとは。私の気品は忍んでいても滲み出てしまうようだね!」
 行動開始と同時に、八つの頭部が姿を見せた参三へと視線を向けてくる。心の弱い者であれば目を合わせただけでも恐怖で死に掛ける状況だが、聖者が怯む様子はない。此処で退いてしまえば万に一つの勝機が潰える事、そして何よりも己の輝ける矜持が臆する事を許さなかった。
「しかーし、それは裏を返せば私の気品に気付くだけの慧眼を持っているという事。ならばとっくりとこの溢れ出る気品力に酔いしれて貰おうじゃないか!」
『我が眼前に身を晒すどころか、斯様な妄言を吐く度胸は面白い。その伊達振りが真の玉壁か単なる鍍金か、試してくれよう』
 ヴァルギリオスはぐるりと身を捩ると、その場で身体を半回転させる。無数の頭の代わりに迫り来るのは、灼熱と激流、雷光を帯びた三つの靭尾。大樹の如き太さとしなやかな柔軟性、そして必殺の属性を帯びた攻撃が三種同時に参三へと襲い掛かる。
「フフーフ、どんな属性だろうと私に傷を付けることは断じて出来ないぞ。なにせ『溢れる気品力(オーバーフロー・エレガンス)』によって、気品力溢れる無敵モードへ突入中だからな!」
 人間如き容易くすり潰せる三連重撃、だがそれを弾き返す様に煌めくオーラが参三の周囲へと展開、敵の攻撃を受け止めてゆく。その頑丈さに思わずほうと帝竜は目を細める。
『成程、多少は見るべきところがあるようだ』
「ふふん。『絶対無敵的気品力』ということが伊達ではないこと、分かって頂けたかな?」
『ああ。だから「いつまで耐えきれるか」試してみよう』
 誇らしげに胸を張る参三へ、帝竜は続けて攻撃を繰り出してゆく。二度、三度、四度……それが二桁を越えた頃、聖者は一抹の焦りを覚え始める。
(まさか……こちらが根負けするまで続けるつもりか!? これは少しまずいのでは!?)
 敵の体力は文字通り無尽蔵。対して此方も防げているとは言え、そう何度も尾が振り下ろされるのは気持ちの良いものではない。もし仮に参三の集中力が途切れれば、大打撃は免れないだろう。そんな激しくも精神をジリジリと削るような駆け引きの中へ。
「……流石にそれは見過ごせませんね」
 空中で機を伺っていたセルマが動いた。幸いにも仲間が攻撃を引き出してくれたお陰で、敵の特性を把握する時間は得られている。
(本体は氷の鱗を纏っていて相性が悪い……ならば、やはり狙うべきは攻撃に使用している尾ですか)
 氷に氷は同化されるだけ。セルマは炎尾へ氷弾を立て続けに叩き込み火力を和らげたと思うや、そのままの勢いで水尾も撃ち抜き凍結。更には投擲したナイフを避雷針替わりとして雷尾の電流を分散させ威力を減衰していった。しかし、流石にこうも派手に動けば敵も狙撃手の存在に気付く。
『羽虫が器用な真似を……だが、生まれながらに翼持つモノには敵うまい』
 帝竜は頭上を舞うセルマへと目標を定め、翼を打って飛翔せんと身を持ち上げる。だが、そうはいかぬとばかりに声を上げたのは参三だ。
「おおっと、何処を見ているのかね? 私の舞台はまだ絶賛オンステージ中だよ!」
『いつまでも見飽きた芸、を……むっ!?』
 彼女は思い切り跳躍したかと思うや、敵の視線を遮るようにより一層の輝きを放った。それを叩き落そうと帝竜は鎌首をもたげるも、ビキリと身体を不自然に停止させる。それは超強化の反動、全身の筋肉が硬直する前兆に他ならない。
 聖者が身を賭して稼いだ一瞬が、狙撃手へ最大の好機を繋いだのだ。
(……事此処に至れば、氷の鱗以外の場所を狙う必要はありません)
 氷の翼へ跨り、銃床をしっかりと肩へ当ててスコープを覗き込みながら、セルマは帝竜を射程圏内へ捉える。駆け抜ける思考は先ほどと相反する内容、しかし矛盾ではない。
(ただ一発撃つだけで代償を強いるこの弾丸……例え氷の鱗だろうと貫き、体内から凍てつかせてみせます)
 それは絶対なる自負。相性の有利不利など関係なく、己の弾丸は必ずや敵を穿つという確信がセルマを支えている。超集中の代償として瞳から一筋の紅が伝い落ちるも、それすら凍り付き微塵と化してゆく。そうとも、如何な巨体、どれだけ強大であろうと……。
「帝竜でもフォーミュラでもない……スコープの向こうにいるのは『獲物』だけです」
 この一射は全てを撃ち抜く。放たれた弾丸は帝竜の胴体へと吸い込まれ、鱗の尽くを食い破り、鮮血を噴き上げた。
 ――オオオォォォォォッ!
 忌々し気に帝竜は苦痛の咆哮を上げる。戦果の代償として血を滲ませ始める主を背に、氷の鳥は地上で待つ参三の元へと舞い降りてゆく。
「気品溢れる一撃、お見事。私も身体を張った甲斐が在ったというものさ」
「こちらこそ、お礼を。あの一瞬がなければ墜とされていたのはこちらでした」
 そうして気品の聖者と氷の狙撃手は地上で合流すると、互いの健闘を称え合うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
ついに来たわね…唯一初めから名前が判っていたフォーミュラ
さぁ、竜殺しと行きましょうか…!

下手な行動は危険なバリアね
なら近寄らずにドレスベースのホバー移動(【空中浮遊】)で滑る様に回避に専念
時頼様々な方向より複合兵装のミサイルを放ちバリアの【情報収集】
同僚さん達の攻撃も情報として様子見よ
近接も反射なら厳しいけれど…そこまで万能なら他のバリアは要らない筈
私の本命の攻撃はただ一度、体勢を崩した所へUCよ
超大型の杭打機の魔導蒸気機関を暴走レベルで回し無理やり押し込む
毒は効かず、氷もその熱量を持って対抗し、質量と馬力にて反射の炎をも突破して…
…撃ち貫きなさい、『貫くは…我が撃杭』ッ!

※アドリブ・絡み歓迎


御形・菘
全身に邪神オーラを纏い、ガードを行おう
と同時にダッシュを実行、更に邪神オーラを操り分裂させて切り離し、偽の標的で攪乱する
ブレスは首ごとに狙うのであろう、せめて直撃する数をできるだけ減らす!
痛みは我慢、耐えて凌ぐ!

右手を上げ、指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 元気かのう皆の衆よ!
このクライマックスで、あえて言うべきことは何もない!
何故なら! 皆は常に妾の望むモノを与えてくれるのであるからな!
さあ、共に行こうではないか!

はっはっは、実に嬉しいぞ、お主のような絶対強者とバトれるのは!
そして邪神たる妾はお主を凌駕してやろう
歓声を、喝采を背負う今の妾は最強無敵!
左腕の前に沈むがよい!



●万雷の喝采に轟け、穿突の炸裂
「ついに来たわね……唯一、初めから名前が判っていたフォーミュラ。伝承等で以前から情報は集まっていたけれど、百聞は一見に如かずとはこの事かしら」
 身体を貫く痛みに雄叫びを上げる帝竜ヴァルギリオス。その様を眺めながら、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は戦意を高める様に小さく息を吐く。如何な巨躯、どれほどの強敵であろうとも刃が届き得ることを先行した仲間たちは示してくれた。ならば、どうして臆する理由が在ろうか。
「さぁ、猟兵らしく竜殺しと行きましょうか……!」
「はっはっはっは! であれば妾もひとつ付き合うとしよう。神と竜の戦いなぞ、遍く世に伝えねば勿体ないにも程があろう!」
「ええ。よろしくお願いするわね、同僚さん?」
 エメラの隣に歩み出るモノが在る。続けて戦場へ姿を見せた御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)もまた、不敵に胸を張って帝竜へと対峙していた。仲間の参戦を皮切りに、エメラは背に負った移動補助装置の蒸気圧を上昇させ、菘は身に帯びる濃密な闘気を練り上げてゆく。そんな猟兵たちへ応ずるように、帝竜もまた膨大な魔力を収束させつつあった。
『障壁を破り、真の姿すらも掻い潜るか。ただ一つの技に頼るのが付け入る隙と言うならば、至高の矛と最硬の盾を以て蹂躙してくれよう』
 展開されるは三重の障壁。八つの顎より零れ落ちるは膨大な量の魔力。帝竜は己の防御を確固たるものとしつつ、最大最強の火力を以て一息に猟兵を粉砕するつもりなのだろう。
「さて、避け切れるかしらね……!」
「ブレスについてはこちらにも考えがある。今はとにかく走れ、足を止めるでないっ!」
 エメラと菘が散開した直後、八条の柱が戦場へと降り注いだ。炎、水、土、氷、雷、光、闇、毒。各頭部はそれぞれが目玉をぎょろつかせながら、猟兵を補足せんと小刻みに軌道を変えてゆく。
「本体をどうにかすれば手っ取り早いけれど、障壁のある状態ではまず無理ね。幸い、相手の攻撃は視界頼み……なら!」
 噴き出す蒸気によるホバー移動で滑るように地面を駆け抜けながら、エメラは追従させている二機一組の浮遊兵装からミサイルを発射する。多くは障壁やブレスに阻まれてあえなく爆散するものの、起爆時の爆煙によって徐々にではあるが敵の視界を奪いつつあった。
「なるほど、そういう手もあるか。ならば、妾の手妻も見せるとしよう!」
 仲間の一手を目にした菘は自身の纏う闘気を切り離し、戦場へとばら撒いてゆく。それらは本体と瓜二つの姿を形作ると、別の方向へと散っていった。デコイによる撹乱戦術だ。途端に八つの首はそれぞれがバラバラの目標を追い始め、攻撃の密度が薄まってゆく。
「ブレスは首ごとに狙うのであろう、せめて直撃する数をできるだけ減らす!」
『小賢しい……全て粉砕すれば良かろうが!』
 だが相手も最強の名を冠する存在、小手先の戦術を強引に踏み潰すだけの圧倒的な力が在った。帝竜は頸の一本を地面へ這わせるや、それまでの『点』の一撃から『線』の薙ぎ払いへと攻撃方法を変える。デコイは地面ごと吹き散らされ、菘本体もまた魔力の奔流に飲み込まれてゆく。
「そんな……!?」
『頭一つ分とは言え直撃したのだ。生きてはおるまい。さて、残るは一匹……』
 エメラは空中へと逃れる事によって辛うじて回避したものの、菘の姿は濛々と噴き上がる土煙に覆い隠されており窺い知ることが出来ない。帝竜は結果など見るまでもないと、次なる狙いを半機人へと定めんとし……。
「終わった? 何を言っている、此処からが本番だぞ。お誂え向きにスモークまで焚いてくれてご苦労。さぁ、スクリーン! カモンッ!」
 高らかな声が響いた。それと同時に土煙が内側から破られ、無数のディスプレイが空中を漂い始める。そこに映るのは様々な世界の生配信視聴者たち。彼らが待ち望む者はただ一人しかいない。
「はーっはっはっは! 元気かのう皆の衆よ! このクライマックスで、あえて言うべきことは何もない! 何故なら! 皆は常に妾の望むモノを与えてくれるのであるからな! 故に、ただ見届ければよい!」
 果たして、姿を見せたのは菘の傲岸不遜とした姿。無論、無傷ではない。闘気の護りで辛うじて耐えたとはいえ、その全身はズタボロだ。だが彼女は不敵に胸を張る。
「――さあ、共に行こうではないか!」
『戦士ではなく扇動者が本分か。弱きを束ねた所で意味など為さぬわ!』
 そう叫ぶと、菘は躊躇うことなく帝竜へと真っ向から挑み掛かった。相手が再びブレスを放つには暫しの溜めが要るだろう。しかし一方、三重の守りは変わることなく健在。これを攻略せぬ事には勝機はない。
「同僚さん、申し訳ないけれど攻撃をし続けて! あともう少しだけ情報さえ集まれば……!」
「はっ、こちらは元よりそのつもりよ!」
 エメラの求めに応じ、菘は障壁へと果敢に攻撃を叩き込んでゆく。だが一撃を繰り出す毎に毒水が、雷火が、凍土が彼女の体を蝕んでゆく。しかし、邪神の顔に浮かぶは凄絶なる笑みだ。
「はっはっは、実に嬉しいぞ、お主のような絶対強者とバトれるのは! そして邪神たる妾はお主を凌駕してやろう。例え彼奴等が弱くとも、この歓声を、喝采を背負う今の妾は最強無敵!」
『我を前に最強を囀るか……!』
 ディスプレイから溢れ出す歓声や応援、手に汗握る視聴者の想いが菘の背を後押し、攻撃の威力を爆発的に跳ね上げてゆく。そうして仲間の繰り広げる攻防を、エメラは瞬きすらも惜しいと注意深く観察していた。
(近接も反射するなら厳しいけれど……逆説的に言えば、そこまで万能なら他のバリアは要らない筈。つまり、あの三重障壁も絶対ではないわね)
 彼女が懸念していた最大の要素は雷火障壁による反射攻撃。だが菘の攻防を見る限り、押し込むような一撃で在れば比較的影響は少ないように見えた。であるならば、勝機は十分にあると半機人は判断する。故に、後は最適な瞬間を見計らうだけであり――。
「……いまっ!」
 徐々に攻撃の勢いを加速させていた菘によって帝竜が僅かに体勢を崩した瞬間、エメラは蒸気を噴き上げて一気に前へ踏み込んだ。瞬く間に眼前へと迫る三重障壁に対し、半機人が取り出したのは――身の丈もあろうかという巨大な杭打機。
『鉄杭だと。攻城兵器の類か!?』
「言い得て妙ね。でもこの一撃は城門どころか、玉座にまで届くわよ!」
 エメラはその先端を障壁へと叩きつけるや、内蔵する魔導蒸気機関の出力を暴走寸前レベルにまで上昇させてゆく。各部位からは高温の蒸気が漏れだし、甲高い音を響かせる。
(各部品はどれも入念にコーティングしているから、生半可な毒では錆付きもしない。全てを凍てつかせる冷気だって、蒸気の熱量で跳ね除けられる……あとは!)
 毒水の奔流を穿ち、凍土の風を貫き、鋭利なる鉄芯は帝竜目掛けて突き進む。残るは一番の問題である雷火の障壁。だが、ここまでくれば後はただ押し通るのみ。後に退くつもりなど毛頭なし。
「これで……最後っ!」
『この者もまた、自らの身を焼きながら突破して来たか!?』
 エメラは最後の障壁を打ち破るや、突破の勢いそのままに鉄杭の先端を帝竜の脇腹へと宛がい、そして。
「ここまで近づけば、もう逃げられないわよ……撃ち貫きなさい、『貫くは…我が撃杭』ッ!」
『ォォォォォオオオオオッ!?』
 蒸気の開放によって、一気に打ち出した。凄まじい衝撃と共に鋼鉄が鱗と肉を貫き、滂沱と血が溢れ出す。だが帝竜は苦悶の叫びを上げながらも、手傷を負わせた不届き者を弑さんと前腕を振り上げる。しかし、それに先んじる人影が在り。
「……ようやく攻撃を直接叩き込める好機ぞ、妾が見逃すはずも無かろうが。さぁ、左腕の前に沈むがよい!」
 それは鋭爪を備えし左腕を振り上げた、菘の姿。エメラが創り出した障壁の間隙を追従し、彼女もまた敵へと肉薄していたのだ。声援によって極限まで強化を重ねられた一撃は、鉄杭に勝るとも劣らず……。
『オノレェェェェェッ!?』
 相手の巨体へ深々と爪痕を刻み込んでゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

幻武・極
ヴァルギリオス、キミは8属性を司るのか。
いいね、やっぱりボスはこうでないとね。

さて、どう攻略したものかな。
ゲームだとこう多数の属性持ちの敵は所持してない属性が弱点だったりするけど、ヴァルギリオスは風がなさそうだね。

完全帝竜体は強力だけど代償が厄介だろうね。
圧倒的な強さの代わりに動きが鈍くなるからね。
その隙を見て攻撃を躱しながら体を温めていくよ。
ウォーミングアップができたら、魔鍵だけどランスチャージで高めた限界突破の一撃を光と闇の翼で飛び上がっても空中浮遊で追いつき属性攻撃:風で常在戦場を叩き込むよ。



●天性の強者、武を極めし者
 猟兵たちの攻撃により、着実にヴァルギリオスへダメージは蓄積してきている。しかし、それでも帝竜の命へ刃を届かせるにはまだまだ遠い。故に更なる一撃を加えるべく、苛立たし気に身を振るう帝竜を前へと姿を見せたのは幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)であった。
「ヴァルギリオス、キミは八属性を司るのか。いいね、やっぱりボスはこうでないとね。それに、ただ純粋に強いというのもお誂え向きだ」
『ほざくか、小娘。その言動、さては強者を求める求道者の類か。身の程知らずめ』
 牙を剥きながら、帝竜は完全形態へと姿を変じさせてゆく。先程は二人掛かりで時間を稼がれた結果、反動を受けた隙を突かれ後れを取った。しかし、此度の相手は一人。恐らく、早々に決着を付けられると判断したのだろう。
「そうでもないさ。武術とは、より格上を下すための術理なんだからね」
『ではその小手先の手妻、息絶えるまでに精々試してみるが良い!』
 巨体に似合わぬ猛烈なスピードで迫り来るヴァルギリオスを前に、極はさてどうしたものかと思案する。顔に浮かぶのは緊張ではなく、どこか期待を含んだ表情だ。
(さて、どう攻略したものかな。大抵、ゲームだとこう多数の属性持ちの敵は所持してない属性が弱点だったりするけど……ぱっと見、ヴァルギリオスは風がなさそうだね)
 風という属性で連想されるものと言えば、やはり敏捷さや身のこなしだろう。確かにヴァルギリオスは速い。しかし、それは飽くまでも最高速度の話だ。あの巨体で小回りや機敏さがあるとは到底思えない。それを補える属性を持ち合わせぬ以上、欠点を突くのが正攻法か。
「となれば、方針は決まったね。丁度いい、反動が出てくれば更に動きは鈍くなるだろうし、それまでこっちもウォーミングアップの時間と行こうか」
 極は軽くその場で跳躍するや、地面を蹴って勢いよく駆け出してゆく。刹那、紙一重の差で彼女がいた場所へと三尾の一撃が叩きつけられ、地面ごと打ち砕いていった。
「力は強く、守りも堅い……だけど、素早さだけは両立できなかったようだね」
『速き者の攻撃は得てして軽く、浅い。例え百を当てようと我が身は揺らがぬ。なれど、我が一撃を受ければ速き者の多くは二度と立ち上がれん。そもそも不要なのだ!』
 四肢を地面へ打ち付けるだけで大地は砕かれ、無数の礫が弾丸の如く周囲へと撒き散らされてゆく。素早さを必要としなかったのはどうやら嘘ではないらしい。身体を掠める石片によって細かな擦り傷を幾つも作りながら、極は小さく口笛を吹いた。
「こっちもエンジンを上げていかないと、これは危ないかな、っと!」
 致命打となる攻撃は躱し、砕かれた岩盤をも足場としながら、極は更に速度を上げてゆく。そのスピードは相手に超強化の揺り戻しが来たのも相まって、徐々に帝竜の八頭でも追いきれなくなりつつある。言い知れぬ危機感を覚えたヴァルギリオスは、忌々し気に翼を一打ちした。空へ飛び上がる気だ。
『ちょろちょろと煩わしい……点ではなく面を圧する攻撃を以て、一息に押し潰してくれる!』
 そうして凄まじい暴風と共に帝竜の巨体が浮き上がり、徐々に高度を上げてゆく。だが、指を咥えてそれを眺めているほど、武術少女もまた大人しくはない。
「さて、こっちもウォーミングアップは充分だよ。そっちがその気なら、ボクも決めてやるさ!」
 彼女は風の流れを見極めるや、思い切り飛び上がり帝竜へと追い縋る。そのまま相手の身体を足場にして駆け上がると、極は武骨な造りの魔鍵を両手に構えた。
『貴様、我を足蹴に……!?』
「武器を扱うのも、技を磨くのも、全てはより高みへと至るため。純粋な強さへどこまで通じるか、試させて貰うよ!」
 繰り出されるは魔鍵による垂直刺突。ウォーミングアップによって温められた全身の筋肉は限界を超えた威力を引き出し……。
『我が、墜とされるだと……!?』
 飛び立った帝竜を、極は今再び地面へと叩き落すことに成功するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
邪竜に挑むは勇敢なる騎士
ありふれた、されど永久に届かぬ御伽噺だと故郷では考えていました

高揚は不思議とありません
これまで出会ったA&Wの人々
その命運を背負っている自覚なのでしょうね

只一人の騎士として、討ち果たすのみ!

センサーでの●情報収集で光の屈折からバリア纏う範囲●見切り肉弾戦をスラスター●スライディング移動で回避

内側に潜り接近戦
炎と凍結?
真空の宇宙で活動出来る●環境耐性で突破
毒?
侵された表面装甲をUCと同時にパージ(●防具改造)し解除
向上した機動力で体躯取り付き

限界まで付き合ってもらいます!

自己●ハッキングで●限界突破
●怪力で振るう剣盾で只管に出血を強い首の一本の顎を裂き、口内から脳天串刺し



●悪竜穿て、真の騎士よ
「邪竜に挑むは勇敢なる騎士……ありふれた、されど永久に届かぬ御伽噺だと故郷では考えていました。幻想と空想を科学によって駆逐したあの星海では、文字の上にしか残らぬ概念だと」
 戦場に帝竜の落下する轟音が響き渡る。土煙の中より身を起こすその姿の何と強大な事か。轟く咆哮の何と重々しい事か。トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はレンズへ焼き付ける様に、その光景へ視線を注いでいる。かつてより夢想し続けてきた、叙事詩の一光景と言うべき状況。しかし、彼の思考は常の冷静さを維持し続けていた。
(高揚は不思議とありません。きっとこれまで出会ったA&Wの人々、その命運を背負っているという自覚なのでしょうね)
 紙上の文字を追っていた時は、雄々しき物語に心を躍らせたものだ。しかしこうして物語の英雄と同じ立場になったいま、鋼騎士の胸に宿るのは静かな使命感のみ。この世界に生きる人々を、そして彼らを襲う脅威を実感したが故に、彼は双肩に掛かる重さを噛み締めている。
 ――憧れた騎士たちもきっと同じ気持ちだったのだろうかと、トリテレイアは想う。
「銀河帝国軍量産型ウォーマシン、トリテレイア・ゼロナイン……いまは只一人の騎士として、悪しき竜を討ち果たすのみ!」
『英雄を望むか、木偶。往々にして、その様なものの最後は悲劇へ帰結するもの。勇者と同じ末路を辿るが良い!』
 トリテレイアの決然とした名乗りに、ヴァルギリオスは大音声を以て応ずる。大気が揺らぎ、まるで陽炎の如く帝竜の姿が覆い隠されてゆく。それは城壁が如き、三重の障壁。いや、相手もジッとはしていないのだ。機動要塞とでも評すべきか。
「まずは障壁の効果圏内を見極めます! 徒歩の戦であろうとも、速度は騎馬にも劣りません!」
 そのまま肉薄し八頭と四肢、尾による蹂躙を目論む帝竜に対し、トリテレイアはスラスターによる加速と姿勢制御を以て対抗する。振り下ろされる爪を、追い立てる牙を紙一重で避けながら、鋼騎士は敵戦力を分析してゆく。
(三種の障壁、その特性を解析完了。これならば……!)
 試算結果による成功率は決して高いとは言えなかった。だが、ゼロではない。彼にとってはそれで十分だ。スラスターの出力を最大まで上げるや、鋼騎士は敵の真正面から障壁へと吶喊する。
『無策で挑むとは愚かな。勇敢と蛮勇をはき違えたか』
「いいえ! その護りを打ち破る術は、初めからこの身へ宿っています!」
 灼熱が装甲表面を焦がし、瞬く間に赤熱化させてゆく。凍気が内部機構にまで入り込み、精緻な機械部品へ霜を張り付かせる。しかし、彼は過酷な宇宙環境下での活動を主眼に置いて製造された戦機。その中でも取り分け耐久性に長じている。この程度で活動を停止する事など在り得はしない。
『威勢は良いが、自慢の鎧は既に朽ちている。そこへ毒水が入り込めば終いよ』
 だが帝竜が嘲笑う様に、当然無傷とはいかない。装甲は急な加熱と冷却によって、本来の強度を失いつつある。一度でも毒水に浸食されれば、防ぎきることは困難だろう。にも関わらず、トリテレイアは躊躇うことなく第三の障壁へと飛び込み……。
「外部装甲全パージ、格納銃器強制排除! リミット解除、超過駆動開始……いま必要なのは鎧ではなくただ一振りの剣。これが私の騎士道ですッ!」
 突破完了と同時に、毒が内部へと至る前に全身の表面装甲を脱ぎ捨てたのだ。向上した機動力を存分に生かして敵へと取り付くや、騎士は剣と盾を両手に掲げる。
「……さぁ、限界まで付き合ってもらいます!」
『死に掛けの鉄人形如きがッ!』
 トリテレイアは更に己のシステムへと自己ハッキングを敢行。視界がエラーで赤く染まる中、大剣による斬撃と重盾による打撃を一心不乱に叩き込み始めた。鮮血が吹き上がり、鱗が引き剥がされてゆく。帝竜も頭を思い切り振り回し引き剥がそうとするも、騎士は両足で万力の様に敵を掴み、ビクともしなかった。
 トリテレイアは大盾をつっかえ棒の如く敵の口腔内へとねじ込むや、剣を脇に構える。
「全てなどと贅沢は言いません。ですが最低でも頭一つ……討ち取ります!」
『オ、ゴォ! ギ、ザマァァッ!?』
 そしてそのまま、上顎から敵の脳天目掛けて刃を繰り出した。骨を砕き、柔らかな肉を抉る感触が返ってくる。絶叫と共に頭が地面へ打ち据えられた事により、トリテレイアは振り落とされたものの手応えは十二分。
「いずれ再生は可能にしても、当面は戦力となりませんでしょう……!」
 騎士は竜の鮮血を全身に浴びながら、己が戦果に胸を張るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴桜・雪風
オブリビオンフォーミュラ…まさかこれほどの存在とは
まさに竜神、鱗持つカミですね

彼の竜を討伐するには、まずあの三重障壁を突破せねばならないということですが……なぜ三重なのでしょうか?
あの竜神の力なら、八種の力を同時に宿す唯一絶対の障壁を纏うことも
司る八属性に対応した八枚の障壁を扱うことも容易いはず
それをせぬのは即ち、そうできぬ事情があるから
各障壁にはそれぞれ隙間が御座いますね?それを三重展開で補っている
ならば『攻撃を反射するバリア』のみの箇所を走って突破し、障壁の内側から居合の斬撃を叩き込むのみでございます
刀も抜かぬ只の走りなら、攻撃とは判定されぬでしょう



●人ノ英知ハ神ナル神秘ヲ解明ス
 ――ォォォォォオオオオオアアアッ!?
 頭部の一つを貫かれ、苦悶の絶叫を上げる帝竜ヴァルギリオス。まだ七頭が無事とは言え、それでも痛手であることに変わりはないだろう。僅かばかりに生まれた戦況の猶予を活かすべく、姿を見せたのは鈴桜・雪風(回遊幻灯・f25900)であった。
「オブリビオン・フォーミュラ……まさかこれほどの存在とは。まさに伝承で伝え聞く竜神、鱗持つカミですね」
 サクラミラージュの影朧とはまた違う、圧倒的な強大さに雪風は目を細める。身を護るためだろうか、周囲に展開される障壁のなんと禍々しきこと。しかし、と。雪風はその理性を以て相手の在り様へと切り込みを入れる。
「彼の竜を討伐するには、まずあの三重障壁を突破せねばならないということですが……そもそも、なぜ三重なのでしょうか?」
 無意識に髪を梳きながら、雪風はそう呟く。それはある意味、当然の疑問だ。他と隔絶した絶対、圧倒的な護りを誇るのであれば、ただそれ一つが在りさえすればよい。なのに何故。小さな疑問は糸を手繰るが如く、敵の本質へと思考を導いてゆく。
「あの竜神の力なら、八種の力を同時に宿す唯一絶対の障壁を纏うことも、司る八属性に対応した八枚の障壁を扱うことも容易いはず。しかし、現実にはそうなっていません」
 ブレスは全ての属性を束ねて放つ。なぜ、障壁はそうでないのか。
 数が必要であれば、なぜ個別に障壁を展開しないのか。
「それをせぬのは即ち……『しない』のではなく、そう『できぬ』事情があるから。三という枚数は、その事実を隠蔽するための欺瞞でしょう」
 ぱちりとパズルのピースが嵌め合わさるが如く、一つの青写真が雪風の脳内で組み立てられてゆく。確かに、相手は最強なのだろう。しかし、絶対でも無敵でもない。そう見せかけているだけだ……あたかも、一見不可能に見える殺人を成した犯罪者の様に。
「恐らく、各障壁にはそれぞれ隙間が御座いますね? それを三重展開で補っている。然らば、それを突けば本体へは至れましょう」
 推論は像を結んだ。であれば、後はそれを証明するのみ。真相を明らかにするのは探偵の特権ならば、これだけは誰にも譲れはしない。雪風は思索を断ち切り戦場へと飛び出すや、体勢を立て直した帝竜の視線から逃れる様にぐるりと相手の周囲を旋回する。
『おのれ……我が八頭に一時とは言え、欠けを生じさせるなど……!』
(幸い、僅かとは言え相手の視界にも死角が生じている様子。この好機を逃す理由はございませんね)
 ぎょろぎょろと周囲を睥睨する目玉の横目に、雪風は障壁を手早く観察してゆく。帝竜が細かく身動ぎしているため、詳細を把握するのは容易なことではない。とは言え、それで証拠を見逃すようでは探偵を名乗れぬというもの。彼女は各障壁の継ぎ目とも言える箇所を見出すことに成功する。
(見つけた……ですが、完全に無いという訳でもない様子。ならばここからは、肉体労働の時間と参りましょう)
 雪風は得物を鞘に納めたまま、前傾姿勢で吶喊を開始した。シャボン玉の如く薄膜を張る毒水を潜り、手足をかじかませる冷気を振り払い、残るは最後の雷火障壁。ここだけは継ぎ目を狙おうとすれば敵の視界へと入り込んでしまう。
(刀も抜かぬ只の走りなら、攻撃とは判定されぬでしょう。残る問題は、この障壁を越えてまだ太刀合う気力が残っているかどうか)
 強烈な反射攻撃こそ誤魔化せるだろうが、障壁そのものが強力な電流と焔を帯びている。避けて通れぬ困難を前に、しかして雪風は薄く笑みを浮かべた。
(かの名探偵もライヘンバッハの滝に挑んだのです。ならば、どうして私が臆しましょうか!)
 果たして、探偵の姿は雷光の中へと消え果て――。
「……さぁ、犯人へと辿り着きました。この世界を滅ぼさんとする邪悪、帝竜『ヴァルギリオス』という元凶へ!」
『なんだと、いつの間に!? 我が三重障壁に反応など無かったぞ!』
 名探偵は犯人へと至る。桜色の着物は無残にも焼けこげ、雪風も火傷を負っているものの、それでも一刀を振るうには事足りる。彼女は仕込み傘の柄へと手を掛け、そして。
「快刀、乱麻を断つ。これも探偵の嗜みですよ?」
 剣閃は鮮やかな軌跡を描き、無防備な帝竜の巨体へと傷跡を刻み込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
雄邁にして勇壮
無骨な迄の圧倒的強さ
聳え立つ威容は
純粋に、

うつくしいですねぇ

大気を震わせる緊張の中でも
口調は穏やかなまま

周囲に素早く目を走らせ
竜の呼気にも耐え抜く岩場や足場など地形を確認
研ぎ澄ました第六感で
竜の身動ぎ、眼差しの先、ブレスのタイミングを見切り
障壁を利用し被害を軽減
符を扇状に広げ、凪いで生じさせる衝撃波で地を蹴り、躱す

森羅万象の彩りを放つ呼気は重く
然れどやはり美しくて
口元に湛える淡い笑み

反撃は竜が持たぬ属性の、風
花の嵐の花筐
高速で多重に詠唱を紡ぎ
花霞で視界を奪って
幾重にも幾重にも竜を切り刻もう

花弁を払う僅かな隙でも生み出せたなら
皆様がきっと討ってくださるでしょう
その一助になれたら幸い



●花散らす翼に色は纏い
 障壁を突破され、吐息を凌がれ、最強たる姿を破られる。帝竜『ヴァルギリオス』は己が誇りし武威の数々を踏みにじられ、怒りと共に雄叫びを上げていた。そんな荒れ狂う敵の姿を、都槻・綾(糸遊・f01786)は静かに目を細めて観察している。
「雄邁にして勇壮。荒々しくも無骨な迄の圧倒的強さ。嚇怒に飲まれ手傷と共に聳え立つ威容は、そう純粋に……」
 その瞳に映るのは恐怖か、闘争心か、それとも敬意か。答えは全て、否。
「……うつくしいですねぇ」
 それは惚れ惚れとするような感嘆の感情であった。生物としての極致、自然界に存在する圧倒的な完成度。小手先の技やお為ごかしのない、ただただ純粋な在り様を綾は良きと感じていたのである。
『我をそう評するとは、心がけは褒めてやろう。その上、伏して傅けばなお良いのだがな』
 綾の言葉を耳にして多少は気分を持ち直したのだろうか。帝竜は鎌首をもたげて愉快気にそう尋ねてくる。だが言葉の裏にはどこまでも残酷な牙が見え隠れしており、綾もまた首を振ってその申し出を断る。
「それも良いですが、些か以上に勿体なくも思ってしまいましてねぇ。八色の吐息など、それはそれは素晴らしい光景でしょうから」
『はははは、全く以て酔狂な男よ! 良かろう、ではお望み通りとくと見せてやろうか!』
 会話はそれきりで打ち切られ、両者はほぼ同時に行動を開始した。帝竜は狙いを定めながら各頭部の口腔内へ魔力を収束させ、一方の綾はそれから逃れ得るべく頑丈な地形を求めて疾駆してゆく。
『見るだけに在らず、威力もとくと味わってゆくが良いッ!』
 準備先んじて完了させたのは帝竜側で在った。八色の光条が地面を薙ぎ払う様に拡散し、駆け続ける綾の背後へと迫り来る。しかし彼もまたそれを迎え撃つに、或いは観察するに絶好の地場を見つけるや、瞬時に周囲へと霊符を扇状に展開し態勢を整えた。
「真正面から受け止めるのは流石に至難の技でしょうから……逸らし、躱すのが最上かつ最善ですか」
 戦闘によって地面に多少の凹凸が在り、死の壁として迫ってくる吐息を避けるだけの間隙が辛うじて見出せる。彼はその僅かな空間へと身をねじ込ませながら、霊符によって生み出した障壁で被害を最小限に抑え込んでゆく。
(なんと禍々しく、凶悪かつ無慈悲で……そしてやはり、美しい)
 次々と安全地帯を変え、紙一重で攻撃を掻い潜りながら、それでも綾の顔へ浮かぶのは満足げな薄い笑み。もし掠りでもすれば命など容易く消し飛ぶと理解はしている。それでも、森羅万象を内包した色彩は彼にとって何物にも代えがたい美であったのだ。
『……避けるか。全く、数寄者は容易く道理を捻じ曲げてくれるわ』
「死んでしまえば、もう見る事は出来ませんので。それでは十分に堪能させて頂きましたお礼に、今度はそちらが持ちえぬ彩をお見せしましょう」
 呆れと関心の入り混じった溜息を吐く帝竜へ、次は綾が返礼を紡ぎ出す。一陣の風が吹き抜けたかと思うや、彼の纏う霊具や物品が形を失い、ホロホロと舞い散ってゆく。
「葦原を吹き抜ける一陣の涼風に、それへ舞い上げられる細やかな花吹雪。どれも見た限り、あなたが持ちえぬ属性です」
 それらが形を結ぶのは数多の花弁。春の新緑、夏の生命、秋の豊穣、冬の静謐。そうした四季折々に咲き誇る草花の花びら。色とりどりの輝きは戦場全体へと広まり、帝竜の全身を包み込んでゆく。
『翼持つ者は生まれながらに風を、空を支配しておる。そして花など文字通り、吹けば舞い散る塵芥に等しい……しかし、だが』
 帝竜は悟っていた。美しい光景の中に秘められし、茨の如き棘の痛みを。刹那、花弁は一枚一枚が微細な刃と化して、鱗に覆われた全身を切り刻んでいった。
『はははははっ、なんとも我ららしい美しさという訳だ!』
 帝竜の全身は色の奔流に飲み込まれ、覆い尽くされている。身動きは愚か、外の様子すらも伺い知れまい。されど帝竜は心底愉快だという様に笑い声をあげていた。
「無論、これで強壮たる竜を屠れるとは思いません。ですが隙さえ生み出せれば、皆様がきっと討ってくださるでしょう。その一助になれたら幸いです」
 そうして、綾は踵を返す。見るべきものを見、為すべきことを果たした。であれば、後は次に繋がる者へと託すのみ。そうして彼は自身も風に散る花弁の如く、その場より姿を消すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

戦場外院・晶
生物としての強さを誇るなら、技と心で越えましょう
「戦場外院・晶と申します……よしなに」
必ず勝つという祈りをオーラとして纏って護り……踏破するは驚異のヴァルギリオス・ブレス
「……ぅ」
減じてなお、焼かれ……耐えながら前進
回復
凍り、前進
回復
雷光、前進
回復
「……八つ、地獄を……巡るが如し」
耐えがたきを耐えること……超重力の回廊にて経験済み
「……そこが、間隙です」
最後の攻撃、無敵の防御……しかし必ず隙はあり、骨の平原にてそこを突くこと修行済み

【手をつなぐ】

いざ、我が必勝法
帝竜とて手があり肉体と骨格があれば……
「せいぃ!」
グラップルをもって投げて崩し
「……破ぁ!」
怪力、破魔を全て込めて……会心の拳を見舞う



●手を繋ぎ、そして
 無数の花弁がバラリと解け、覆い隠されていたヴァルギリオスの姿が顕わになる。その全身には細かな傷が刻み込まれ、じわりと血が滲みだしていた。帝竜は不快そうにぶるりと身を振るわせるや、全身の治癒能力を高めてゆく。
『良い余興ではあったが、二度は要らぬ。煩わしいものなどこれ以上不要だが……?』
 と、八つの頭部がふと訝しげな声を上げる。八対十六の視線が注がれるのは、一人の猟兵の姿。身を隠すでもなく、駆け抜けるでもなく、静々と歩み出てくるのが紛う事なき尼僧であった。尼はゆるりと面を上げると、泰然自若とした振る舞いで名を名乗る。
「戦場外院晶と申します……どうそ、よしなに」
 尼僧、戦場外院・晶(燃えよドラゴン……この手を掴め・f09489)は敵の睨みに些かも臆することなく、そう普段通りにのたまった。これには帝竜も笑みを浮かべざるを得ない。
『数寄者の次は求道者か。なるほど、なるほど。こうして姿を見せたその度胸は認めてやろう』
「認めてくださったのならば、如何しましょう?」
『褒美をくれてやる。先の猟兵も『コレ』には大層喜んだからなッ!』
 会話は一瞬で断ち切られ、代わりに瞬いたのは八つの輝き。帝竜の頭部より放たれた、各属性の破壊力を内包した吐息である。一撃必殺を八つ重ねて絶対とするその猛攻を前に、しかして晶の胸中はどこまでも凪いでいた。
「それでは……堪能させて頂きましょうか」
 尤も、彼女に策らしい策などなかった。在るのはただ、必勝を秘めた輝きただそれのみ。故に膨大な魔力が何物にも遮られることなく、尼の全身を飲み込んでゆく。
(……っぅ!?)
 まず初めに襲ってきたのは灼熱。可能な限り霊力を防御へと回してはいるものの、それも嵐の前の障子紙に等しい。ジリジリと全身が焦がされ、思わず苦痛に表情が歪む。だが、晶は癒しの光によって強引に再生しつつ、前へと歩を進める。
 次いで襲い掛かってきたのは、凍てつく絶氷。体温が奪い尽くされ、瞬く間に霜が張り付くも、それでもなお停滞と再生を鬩ぎ合わせながら進む。第三に襲い来るは雷光。これも痛みに耐えながらも再生して進む。毒に蝕まれる。再生し進む。激流に流される。再生し進む。進む。進む……。
(……八つ、地獄を……巡るが如し)
 受けるダメージと拮抗するほどに体力を回復させてゆけばいい。文面にすればそれだけの事だ。だがそれだけの事を実行するのに、一体どれほどの困難が待ち受けると言うのか。それこそまさに己を責め苛む修行と言って良い。半ば自分自身との戦いともいえるだろう。だが晶は例え苦しくとも、負けるつもりなど無かった。
(耐えがたきを耐えること……それは既に超重力の回廊にて経験済み。如何な絶対、どれ程無敵であろうとも、完全無欠とはいかぬもの)
 土石を突破し、暗黒を踏破し。そうして、八つすべての吐息を晶は踏破した。勿論、無傷ではない。人の形を辛うじて保っているとはいえ、それでも満身創痍だ。だが無為無策で踏み越えてきた相手に感じ入るものがあったのだろう。帝竜は感心したように口を開きかけ……。
『ほう、中々にやる。これが信仰心というものか。我には理解出来ぬ概ね……』
「……そこが、間隙です」
 がしり、と。晶はヴァルギリオスの甲殻表面の隙間へ手を差し入れるや、まるで手を繋ぐようにがっちりと相手を掴む。何をするつもりだと眉根を顰める巨体に対し、晶は。
「せいぃぃぃッッッ!」
 裂帛の気合と共に相手を『投げ飛ばし』た。地面から浮いたのはほんの僅かではある。しかし確かに帝竜の巨躯が地面より完全に離れ、体勢を崩したまま地面へ強かに撃ち据えられたのだ。
『ガ、ゴホッ! なんだと、我が、あしらわれた……!?』
「これで終わりではございませんよ?」
 余りの出来事に、さしものフォーミュラも何が起こったのか理解が追いついていない。晶は相手が体勢を立て直す前に畳みかけるべく、繰り返し何度も鱗に覆われた肉体を地面へと叩きつけ、強固な護りへと罅を空けてゆく。そうして敵が完全に仰向けになったと見るや、その上へと飛び上がり。
「……破ぁ!」
 自らの筋力と破魔の呪力を籠めし拳を叩き込んだ。余りの威力に衝撃が地面へも浸透し、放射状に大地が砕けてゆく。ガハリと血混じりの唾液を吐き出しのたうち回る帝竜から飛び退りつつ、晶は僧服へついた土埃をぽんぽんと払った。
「驕り、高ぶり、邪念悪心……それらがある限り、真の強さにはまだほど遠いでしょう」
 そうして尼僧はそっと祈る様に、礼儀正しく深々と頭を下げるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

シキ・ジルモント
◆SPD
この強さ、流石は最強の帝竜と言ったところか
…諦めるつもりは毛頭ないがな

翼で飛行し上空からの奇襲、爪やブレスの他に尾による攻撃も警戒する
防戦一方で構わない、交戦時間を引き延ばし敵が強化に伴って受ける代償が隙となっていないか観察する
呪縛や毒なら一瞬でも動きが鈍るかもしれない、流血ならその部位が脆くなるかもしれない
そこを反撃の起点とする

銃にはエンチャントアタッチメントを装着
その上でユーベルコードを発動して、鱗を強化する氷属性へ有効打が期待できる炎の『属性攻撃』弾での狙撃を試みる(『スナイパー』)
敵の力への警戒も、自身の身の安全も、全て頭の外に追いやる
意識するのは、この一撃を成功させる事だけだ



●ただ、一撃に全てを賭して
 帝竜『ヴァルギリオス』との戦闘は佳境へと移行しつつあると言って良いだろう。度重なる交戦により、相手の全身には既に無数の傷が刻まれている。しかし一方で、まだまだその戦闘力は健在。寧ろ闘争本能はダメージと比例するかのように燃え上がっており、気を抜くことなど出来なかった。
「この強さ、流石は最強の帝竜と言ったところか……尤も、こちらも諦めるつもりは毛頭ないがな」
 そんな中、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は敵の強大さに目を細めながらも、臆するどころか決意を新たに固め直していた。帝竜は確かに最強と呼べるかもしれない。しかし、その強さは決して手の届かぬ高みでないことを彼は確信している。
「狩るか、狩られるか。さぁ、生存競争と行こうか」
『獣風情が、生物の頂点に立つ竜に敵うとでも? その傲慢を叩き潰してくれる!』
 シキの挑発的な物言いに激高し、帝竜は完全形態へと姿を変じてゆく。全身は強固な鱗に覆われ、尾は三又へと別れ、背には漆黒と純白の翼が広げられた。相手はそのまま両翼を一打ちするや、その巨体を宙へと浮かせる。
『地を這うものよ、己が矮小さを思い知るがよい!』
 そのまま身を翻すや、帝竜は地面すれすれを滑空しながらシキへと襲い掛かった。振るわれる八頭の牙、四肢の爪、そして尾の三連撃が立て続けに迫り来る。地面を全速力で駆け抜け攻撃を紙一重で躱すものの、膨大な風圧によって体勢を崩されてしまう。間髪入れず、ブレスが次々と放たれ人狼を飲み込んでゆく。
(っ!? 一挙手一投足、どれ一つ取っても凄まじい威力だな。辛うじて直撃は避けられたとはいえ、一発でも当たればその時点で終わり……だが)
 爆煙に紛れて身を隠しつつ、シキは相手の全身へと素早く視線を走らせる。完全形態は身体能力を跳ね上げる反面、その反動も大きい。今は怒りによってねじ伏せているとはいえ、何かしらの弱点を抱えているはずだ。勝機を狙うとすれば、その一点を突くより他に無い。
(毒や呪縛であれば、必ずどこかのタイミングで動きが鈍るはず。流血ならば傷口が開き、敵の守りに隙が生じる……いまは防戦に徹しても構わない。隙が生まれる前兆さえ見出すことが出来れば……!)
『どうした、流石に空を舞う相手には手が出せぬか!』
 旋廻した帝竜が再度頭上より強襲を仕掛け、シキもまた地面を転がって回避する。しかし今度は完全に避け切れず、背中を薄く切り裂かれてしまった。鮮血が舞い散り、思わず痛みに顔を顰める……が。
(これは……俺の血の匂い、ではない!)
 交錯の一瞬、シキは二種の血臭を嗅ぎ取った。一つは当然、己のもの。であればもう一つが一体誰が流したものかなど、今更確かめるべくもない。
(あそこか……!)
 帝竜の胴体部、丁度心臓に位置する辺り。鱗と鱗の間へ隙間が生じ、まるで滝の如く鮮血が流れ出している。だが相手は半ば怒りによって我を忘れているのだろうか、敢えて傷口を庇う様子はない。
(そう何度も傷口を狙えば、相手はこちらの意図に気付く。となればチャンスは一度きり……全く、毎度のことながら余裕が無いな)
 シキは静かに不敵な笑みを浮かべながら、愛銃へと手早くアタッチメントを取り付ける。弾丸へ付与されるは燃え盛る炎の魔力。胴体部分を覆うのは氷と土、毒の属性だ。相性差としては決して悪くはないはず。
(あとはただ……狙い撃つのみ)
 好機は訪れ、準備は整った。であれば、残るは弾丸を解き放つことだけだ。シキは足を止めると、頭上を旋回する帝竜へと向き直る。それは余りにも無防備と言って良い。だが、これで良いのだ。
(敵への警戒も、自身の身の安全も、今は関係ない。この一撃を成功させる……その一念だけあれば十分だ)
 シキは両腕でしっかりと銃を保持し、真っすぐ狙いを定める。人狼の姿を破れかぶれの行動と判断したのだろうか、帝竜は嘲りと共に強襲を仕掛けて来た。
『相討ち狙いとは苦肉の策だな。一撃の対価は己が命と知れ!』
 猛然と迫り来る帝竜の巨躯。しかし、人狼の心は何処までも静寂を保ち続けている。彼の視線はただ、敵の傷口のみを見据え続け……。
「……悪いが、どうやら墜ちるのはお前だけのようだ」
 発砲音と共に、灼熱の弾丸が体内へと吸い込まれた。それは肉を食い破り、骨を砕き、内臓を引き裂いてゆき、そして。
『バ、カな……!?』
 内部から焼き尽くされた帝竜は、成す術も無く地面へと落下してゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダビング・レコーズ
ターゲット確認
排除開始

【POW・アドリブ連携歓迎】

障壁を纏った突進や圧し掛かりによる先制攻撃を予測
防御及び迎撃は行わず当機の全機能を回避行動に偏重させます
ソリッドステートに変形し高高度へ退避
作戦領域の空間的余裕を利用し攻撃範囲から逃れる事で対処します

攻撃終了を待ち回避行動を取った際に開いた距離で加速し突撃
スクリュードライバーセット
アーマーブレイクスタンバイ
障壁の破壊を試みます
成功すれば本体への増強作用も消失するでしょう
まだ終わらない
そのまま外殻までUCを浸透させ装甲耐久性を破壊
通常兵器が有効となる状況を成立させます
この攻撃起点は頭部が望ましいでしょう
UCをカットし推力を乗せ穿孔開始
極限まで貫く



●地に座す帝竜、天翔ける鋼
『お、のれぇ……我が身が地面へ墜とされるなど、何たる屈辱か!』
 傷口を撃ち抜かれ、地面へと墜落した帝竜は怨嗟の声を上げながら身を起こす。体勢を立て直すつもりなのか、周囲へと三種の護りを展開。僅かでも傷を癒すべく、自己治癒へ余力を割いてゆく。とその時、或る機影が駆動音を響かせながら敵の眼前へと立ちはだかった。
「ターゲット、帝竜ヴァルギリオスを確認。三重障壁の展開、及び負傷の度合いを測定……戦闘に支障はないと判断。排除を開始します」
 それは装甲を白銀に輝かせるダビング・レコーズ(RS01・f12341)である。如何な彼の雄々しき姿とて、帝竜と比べれば遥かに小さい。しかし、戦機が動じる様子は一切なかった。ダビングは己が兵装を展開し戦闘態勢へ移行しつつ、センサーを全力稼働させ敵戦力の解析を開始し始めている。
『次から次へと全くもって鬱陶しい。良かろう、早々に片づけてくれるわ!』
 帝竜は煩わし気に敵手を見据えると、四肢で地を蹴って突進を仕掛けて来た。何も障壁は身を護る為だけのものではない。こうして身に纏う事により、触れたものを消滅させる矛にもなり得るのだ。
『耐えるか、逃げ惑うか。どちらでも良いぞ。何を選ぼうとも全ては無駄な事だ!』
 そうして迫り来る巨体に対し、しかしてダビングの選んだ選択肢はそのどちらでもなかった。
「防御は受ける被害が甚大と判断。平面上の回避も困難と予測されます……であれば、当機の選ぶ戦術は一つだけです」
 帝竜の大質量がダビングへと襲い掛かる。余りの衝撃に地面は砕け散り、濛々と土煙が立ち昇ってゆく。何を選ぼうと破壊は免れない、そう傲岸な笑みを浮かべるヴァルギリオスであったが、ふと違和感を覚えた。鋼鉄のひしゃげる手応えがどこにも感じられないのだ。
『なにッ! 馬鹿な、一体何処へ消えた!?』
「……ソリッドステート形態への移行を完了。損傷は皆無、戦闘続行に問題なし」
 冷徹な電子音声が聞こえてきたのは、地上ではなく上空。八つの頭部がはっと上を仰ぎ見るや、そこには鋼の翼へと変じたダビングの姿が在った。彼は直撃の寸前に飛び上がるや、紙一重の差で障壁による圧殺から逃れたのである。
『この帝竜たる我を見下すとは、余程の命知らずと見える!』
「頭上を取られるのが気に入りませんか。ならば心配は不要、すぐに地上へと舞い戻りますので」
 ダビングは一気に高度を上げたかと思うやすぐさま反転、ヴァルギリオスの直上へと陣取るやそのまま降下を開始する。それは単なる落下ではない。ブースターを全力稼働させた、破城槌の如き突貫だ。
「スクリュードライバーセット、アーマーブレイクスタンバイ。軌道修正完了……行きます!」
 機体下部へと展開されるは射突機構搭載対物穿孔機、とどのつまりは超大型のドリルである。大型工作機械を基に開発された、超硬度を誇る鋭き鉄杭。これに落下と加速の速度が加われば、如何な三重の障壁とて貫徹し得るだろう。着弾までの猶予は数秒。帝竜は冷静に威力を見極めると、防御ではなく回避を選び……。
「こちらとしては耐えるのでも、逃げ惑うのでも構いません。何を選ぼうと、外すつもりはありませんので」
『く、くは、ははははははっ! よくぞ吼えたな、猟兵ッ!』
 ダビングの感情回路が導き出した挑発の言葉。意趣返しとも言えるその内容は帝竜のプライドを大いに刺激し、土壇場で回避を取り止めさせる。そうして、最高速度へと至った戦機の穿孔機と待ち構える帝竜の障壁が接触し、そして。
「これ、ならば……っ!」
『オオオオォォォォォっ!』
 交錯は一瞬。猛毒を帯びる激流は衝撃によって吹き散らし、灼熱の雷火は内部へと損傷が至る前に突破。そして、凍てつきし巌は螺旋の一撃によって穿ち砕く。ダビングは三重障壁を一気に打ち破ることに成功するも、決して気を抜くことは無い。
(障壁を破ったことにより、相手の強化も解除されたはず。寧ろ、ここからどれだけ肉薄できるか……!)
 砕け散る障壁が、硝子の如く煌めきながら戦場へと降り注ぐ。加速する思考によって引き延ばされた時間の中、ゆっくりと帝竜の顎が開かれ、ダビングを飲み込まんとするのが見えた。噛み砕かれれば一溜まりも無いだろう。しかし、其処にこそ彼は勝機を見出す。
「事ここに至ってはもはや是非もありません……極限まで貫く、ただそれだけです!」
 戦機が選択した軌道、それは帝竜の顎内部への突撃であった。相手の牙が装甲に突き立てられるよりも早くダビングは敵の口腔内へと飛び込むや、勢いそのままに頭蓋骨を打ち破って外へと飛び出す。肉片が舞い散り、苦痛に悶える雄叫びが世界樹の内部へ響き渡ってゆく。
「これで討ち果たした頭部は二つ目……残り、六つ」
 ダビングは大きく弧を描くように旋廻しながら、自らの戦果をしっかりとセンサーに焼き付けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
ソラ(f05892)と

かつての勇者達は、ヴァルギリオスと相討った
彼らが成し得なかったこと……果たしましょう
勝って帰りましょう、ソラ!

ソラの盾を、私も一緒に【念動力オーラ防御】支える
【かばう】
【覚悟激痛耐性継戦能力】私は再生する。ですから、大丈夫

耐えた……反撃の。勝利する時、です!
ソラ!あのバリアは、私が!

聖剣に変身

私達が!破ります!!

光輝く。願う

勇者が帰れなかった故郷。形は変わっているかもしれない
それでも、今に続いている筈。そんな今も、守る為に

光を集める。勇気の光を、束ねて
重なるは――『龍星剣』

流星のように。行って、ソラ!

剣となった私は【鎧無視】の刃
【生命力吸収】する光を放ちながら、敵を滅す!


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

相討ちでは駄目
生きて帰らなければわたしたちの勝利ではありません
古の勇者たちの意思を継ぎ…全てを終わらせる為に!

全力で守りを固め、【盾受け・オーラ防御】
各種属性の【耐性】を全開
ナイくんの前に立ち、全属性のブレスを【見切り】受け流す!
古の勇者たちよ……わたしたちを勝たせて!【気合い・かばう】

彼の変身した聖剣を手に、一気に飛翔!
今まで縁を紡いだ彼らの声が聞こえます

帰る場所を守るために、命を賭した『龍星』の勇者よ
貴方の剣は天を裂き、山塊の如き竜を断つ!

剣に【属性攻撃】を纏わせバリアの属性を中和
【勇気】を胸に更に一歩!抜けた先で全力を叩き込む!!



●新たなる勇者よ、龍を以て竜を討たん
 帝竜『ヴァルギリオス』が八頭のうち、二つが猟兵の手によって破壊された。無理をすればブレスなども放てるだろうが、それでも戦闘力が低下していることに間違いはない。ジリジリと傾きつつある戦況を押し切るべく、戦場へ二つの人影が姿を見せる。
「かつての勇者達はヴァルギリオスと相討った。彼らが成し得なかったこと……果たしましょう。己が身を犠牲にしてでも敵を打ち倒すのではなく、勝った上で無事に帰りましょう、ソラ!」
「ええ、そうです! 相討ちでは駄目……生きて帰らなければ、わたしたちの勝利ではありません。古の勇者たちの意思を継ぎ、全てを終わらせる為に!」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)とソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は肩を並べて暴れ狂う帝竜の姿を見据えていた。かつての勇者たちはこの強大な敵へと挑み、封印と引き換えに己が命を落としている。その悲劇を再び演じぬためにも、二人は勝利と生還を強く心へと刻み込んでいた。
『笑止! 確かに我が頭部は既に二つ打ち破られている。だが裏を返せば、まだ六つは健在! 勝利どころか無事を夢想するなど、片腹痛いわ!』
 帝竜は猟兵たちの決意を切り捨てながら、周囲へと三重障壁を展開。邪魔が入らぬよう護りを万全にしながら、各頭部に魔力を収束させて解き放った。傷口を焼きながらも破壊された頭部よりブレスを放っており、その威力には些かの陰りも見えない。そんな凄絶なる破壊の奔流を前に、臆することなく前へと歩み出たのはソラスティベルだ。
「ブレスは絶対に私が耐え切ります。でももし、攻撃が及んでしまったら……ごめんなさい」
「気にしないでください。傷を負っても私は再生する。ですから……大丈夫。それにソラだけに任せるつもりもありませんからね?」
 漆黒の盾を構え、仲間を庇う様に仁王立つソラスティベル。ナイはその背へそっと寄り添い、清らかな輝きを少女へと注いでゆく。二人が出来る事は、ただ護りを固め耐え凌ぐことのみ。当然、無傷では済まないだろう。だが此処で決して終わらぬと、彼らは信じていた。
(古の勇者たちよ……どうか、わたしたちを勝たせて!)
 背を支えてくれる仲間の温もりを感じながら、勇者は祈りを捧ぐ。此度の戦いで相まみえた、数多の勇者たち。彼らの勇気をほんの少しでも分けて貰えるよう、そう願いながら――。
 ソラスティベルとナイ、二人の姿は八条もの光柱の中へと飲み込まれていった。
「……はは、はははは。ハハハハハハハハハッ!」
 攻撃は全て命中し、戦場全体を土煙が覆い尽くしてゆく。紛う事なき直撃、それも一撃ではなく八つの属性全てが叩き込まれたのだ。その威力は察するに余りある。ヴァルギリオスは呵々と大笑を上げるが、それも当然だろう。帝竜の誇る最大にして最強の攻撃なのだ、かつての勇者もこれにより為す術もなく命を散らしている。ようやく不愉快な連中を消し飛ばせたと、帝竜は心の底から笑みを浮かべ……。
「……まだ、終わっていません」
『…………なに?』
 それは微かな、されど芯の通った力強き声によって遮られた。ピタリと哄笑を止める帝竜の眼前で、ゆっくりと土煙が晴れてゆく。そこへ姿を見せたのは、未だその場へと立ち続けるソラスティベルとナイの姿であった。
『はっ……何かと思えば、既に死に体ではないか』
 しかし、その姿は満身創痍と言って良い。構えていた黒盾は罅割れ所々砕け散っており、勇者の全身は火傷や凍傷、毒の痕跡が見て取れる。ナイによって支えられ辛うじて立っているという有様であるが、その少年とて多少マシであるものの傷を負っていることには変わりはない……だが、それでも。
「耐えた……耐え切りました。いまこそ反撃の、勝利する時、です! ソラ! あのバリアは、私が! いえ……!」
 彼らはこうして立っている。ならば言葉通り、まだ決して終わりではないのだ。ナイが力強く地面を踏み締めると、全身に煌めきが満ちてゆく。百余年の年月を経た宿り神としての本領、それを示すべく少年の肉体は急速に形を変えてゆき。
「――私達が! 破ります!!」
 現れるは燦然たる一振りの聖剣。刃はそっとソラスティベルの掌へ収まると、自らの想いを担い手へと伝えてゆく。それは過去から現在へと繋がる、『勝利』を願う数多の祈りだ。
「勇者が帰れなかった故郷。既に途方もない年月が過ぎ去り、形は変わっているかもしれない。それでも、想いはきっと今に続いている筈。そんな今も、守る為に」
「ええ、そうです。託されましたから……この世界を、どうか救って欲しいと」
 聖剣と勇者を光が包み込んでゆく。それは勇気の輝きだ。過去、現在、未来へ連綿と繋がる、不滅の煌めき。死してなお帝竜を打破する為に足掻き続けた、先人たちの執念である。
 故に、二人は帝竜を討つに相応しき一刀を知っている。何をも穿つ、雄々しき武威を既に目の当たりにしている。その剣の名は――。
「束ね、重なるは――『龍星剣』。流星のように。行って、ソラ!」
「ええ、行きますッ!」
 大地を踏み砕き、天高く舞い上がるソラスティベル。ヴァルギリオスの頭上を取った彼女の姿は、もはや傷だらけの弱々しい姿ではない。橙色の髪は純白に染め上げられ、瞳は真紅に煌々と輝いている。眩き光を仰ぎ見て、思わず帝竜は目を瞬かせた。
『龍星剣、だと! 馬鹿な、それは当の昔に死に果てた、勇者の……!』
「確かに、既に命は尽き、肉体は消えてしまったのかもしれません。ですが、その魂はまだこの世界へ遺されています!」
 ソラスティベルは無二の親友たる聖剣を握り締めながら、帝竜へと挑み掛かる。羽ばたく龍の翼を後押しするは、どこか飄々としながらも清らかな風。偶然かもしれない。だがそれを何よりのエールだと確信しながら、勇者は障壁へと刃を振り降ろした。
「帰る場所を守るために、命を賭した『龍星』の勇者よ……!」
 万物を蝕む毒水の奔流が、清らかな輝きによって浄化される。
「貴方の剣は、天を裂き!」
 全てを焼き滅ぼす雷火の反射は、逆に刀身へと取り込み己が力と変換する。
「……山塊の如き、竜を断つッ!」
 そして、絶氷の領域は胸に抱く勇気の熱量によって溶かし尽くされた。
 三重の障壁は完全に打ち破られ、ソラスティベルとナイはついに敵の眼前へと到達することに成功する。その光景に、帝竜はただただ呆然と目を剥く他ない。
『在り、得ない……! 既に瀕死だったはずだ。にも拘らず障壁を破り、あまつえさえ勇者の剣技を再現するなど、在り得るはずがないッ!』
「ですが、こうして現実にはあり得ています。これこそ過去と現在、二つの勇気ある者が力を合わせて結果です! さぁ、ソラ!」
 ナイの言葉に力強く頷くと、ソラスティベルは全身全霊を籠めて斬撃を繰り出す。その技は、勿論。
「この手に有りしは一振りの光。先達より託されしは、強き意思! これが私のッ!」
 ――龍星剣ですっ!
 あらゆる邪悪、あらゆる護りを穿ち貫く武の極致。その一閃は頭部の一つを首元から呆気なく吹き飛ばしてゆき。
「「わたしたちが……勇者ですッッッ!」」
 ソラスティベルとナイの雄叫びが、高らかに戦場へと響き渡るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペイン・フィン
受け売り、だけど
完全、とか言う言葉は……
上回られるために、在るんだよ

情報収集、世界知識、戦闘知識をベースに
限界突破、継戦能力、ドーピング、リミッター解除で限界を超え
聞き耳、第六感、視力で感覚強化
残像、武器受け、見切りで回避する

タイミングを見て、コードを、使用
"クランツ"
炎ごとかみ砕く

"ニコラ・ライト"
水を浸透する雷撃

"黒曜牛頭鬼"
雷を弾く岩

"煉獄夜叉"
土を侵す毒

"ジョン・フット"
氷を蒸発させる熱

"キャット・バロニス"
毒を無視する鋼の鉤爪

"ペイン・フィン"
闇は親しき属性、喰らわず、むしろ食い破る

"インモラル"
混沌の前に光は秩序を失い、崩壊する

各属性に対し、兄姉を呼び出し、封じ、能力を相殺する



●輝く破壊、仄暗き同胞よ
『馬鹿な、我はかつて勇者と相打った。それは業腹だが、同時に決して敗北という訳でもない。勇者は既になく、我も過去として力を得て蘇ったのだ……最強であるはずだろう!』
 猟兵との交戦により、帝竜は決して浅くはない痛手を負った。それも自らを『勇者』と自称する者らに打ち負かされたのだ。かつての記憶を思い出したのか、忌々し気に慟哭の雄叫びを上げるヴァルギリオス。
「……受け売り、だけど」
 と、そんな相手へ静かに声が掛けられる。ぎろりと視線を向けた先、薄暗い陰の中から赤髪の青年が姿を見せた。仮面で表情を覆ったペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は、敵の凝視を真っ向から受け止めつつ言葉を続ける。
「完全、とか言う言葉は……常に、上回られるために、在るんだよ。過去の存在で、在れば……それは、なおさら」
『ほう、既に我は時代遅れだと。そう言いたい訳だな?』
 返ってくる言葉面だけ見れば単なる問い返し、だが相手の表情や声音には侮辱に対する明確な怒りが滲み出ていた。それに対し、ペインの反応は無言。しかし、それは恐れた訳でも射竦められた訳でもない。そんなことは最早、口に出すまでもない……そんな意志を言外に滲ませた沈黙であった。
『……良かろう。ならばその身で「最強」が既に偽りか否か、確かめるが良いッ!』
 八色の輝きは一見すれば神々しささえ感じられるだろう。だが、そこに内包されしは万物を破壊せし消滅の光。見た者を塵一つ残さぬ、絶対の一撃である。
 それは正しく最強と形容しても過分ではない。だが、ペインは『強さ』にはより多くの方向性があることを知っている。それは決して、ただ敵を打ち倒すだけに在らず。
「……負けられない、よ。生きて、帰られなきゃ、きっと、叱られてしまうから」
『貴様の還る場所など、冥府魔道以外にありはせんっ!』
 迫り来る八つの光条へ、ペインは真っ向から挑み掛かった。瞬間的に全身へと力を漲らせ、身体能力や感覚器官を鋭敏化させてゆく。しかし、この場で最も頼りとするべき存在は、常に己と共に在り続けてくれた兄姉たちだ。
(膝砕き“クランツ”。炎すらも、その顎は噛み砕く)
 一直線に迫り来る灼熱の業火。膝砕きはその光の柱を自らの内側へ飲み込むと、万力の如く締め上げてその軌道を逸らす。
(スタンガン“ニコラ・ライト”。如何な激流にも浸透し、吹き散らす)
 次いで襲い来る激流には、警棒型の電流機を振るう。逆に流れを伝って敵の顎へと手を掛けるや、電撃によって動きを封ずる。
(抱き石“黒曜牛頭鬼”。焼かれず、砕けず、雷光すらも拒み弾く)
 ならばと迸る電流に対抗するは、磨き上げられた黒き巌。どれだけの輝きを浴びせかけられようと、その漆黒が揺らぐことは無い。
(毒湯“煉獄夜叉”。草も、土も、岩も。この毒を防ぐことは叶わない)
 土石流そのものと言える濁流へ差し向けたのは、一本の竹筒。内部より溢れ出した猛毒が攻撃へ触れた瞬間、蒸気と共に穴が開き道を作る。
(焼き鏝“ジョン・フット”。その焔は、決して消えることは無い)
 万物を停止させる凍気に応じたのは、呪われし蒼炎。触れた氷が溶ける事すら許さずに、一切合切を蒸発させてゆく。道を阻ませなど、決してしない。
(猫鞭“キャット・バロニス”。鋼の爪を侵せるものなどこの世に無し)
 一滴でも触れれば肉どころか鉄をも溶かす毒液も、磨き抜かれた爪先へ染み入ることは能わず。触れた端から、児戯の如く粉々に千切られるのみ。
(多機能ナイフ“インモラル”。禍々しき輝きに、光すらも堕落する)
 眩いばかりの光を照り返し、振り抜かれしは小さき刃。極光を反射しながらも、裡に抱く闇が混沌を醸し出し、秩序の象徴を崩壊させてゆく。
(そして……指潰し"ペイン・フィン"。闇を拒まず、避けず、食い破る)
 無明の暗黒、彼がそれを振り払う事はない。寧ろそれこそが己の糧であると、全身で受け止め喰らい尽くしてゆく。敵の力すら奪い取り、叩き返さんとする凄絶なる意思がそこに在った。
『なんと、悍ましきかッ! 勇者どもめ、我を屠らんが為にこんなものまで持ち出してきたとはッ!』
「どう思おうと、勝手だけど、ね……。勝って欲しいと、託されて。そして生きて帰ってくれと、願われた。なら……」
 全ての吐息が打ち破られたこの瞬間だけは、ヴァルギリオスも無防備にならざるを得ない。その好機を逃さず、ペインはそれぞれの頭部へと各拷問器具を叩きつけ。
「……この在り方がこそが、自分だよ」
 決して逃れ得ぬ痛みを刻み込む事に、成功したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファン・ティンタン
【WIZ】獅子身中の虫
改変可

八首の竜
彼の国にはそんな化生を討つ話もあったかな

ブレスは人型で受ける
すべては後の【だまし討ち】の為に
っと、事前に諸々と器物は遠方に隠しておくけれどね
人型が消し飛ぶ攻撃を受けるのは相応の【覚悟】が必要だけれど……
私は、あなたに勝ちたいんだよ

【刃非木石】
八方から勝利に固執する妄執の影を召喚
“唯”、陽動の為の制御は任せるよ

敵は良くも悪くも巨大だ
【範囲攻撃】のブレスも所構わずが過ぎる
影の【挑発】の内に【天華】本体は【念動力】にて敵の懐へと迫る

万全のあなたなら、私は針程度の物かも知れない
けれど、今、そう言い捨てられるかな?

鱗の隙を縫い、下腹に【串刺し】て内部から【生命力吸収】



●願え、ただ勝利のために
『薄汚い、拷問道具、風情がぁ……!』
 痛みを最大かつ効率的に与える為に生み出された器具の数々。その集中攻撃を受けたせいだろう、ヴァルギリオスは耐えがたい激痛に牙を噛み砕かんばかりの怒りを示していた。そんな周囲への注意が散漫になっている相手を、紅の左瞳で見つめる者が一人。
「八首の竜、彼の国にはそんな化生を討つ話もあったかな。全く同じものだとは思わないけれど、少しばかり腕が鳴る。それに些か……イラっと来たしね?」
 それはファン・ティンタン(天津華・f07547)であった。彼女はそっと物陰に隠れて相手の姿を窺いながら、スッと瞳を細める。攻め掛かりたいところではあるが、八頭の蛇神に等しき相手であれば、到底一筋縄ではいかないだろう。相応の手が必要だ。
「気分は余り良くないけれど、四の五の言っていられないか。相応の覚悟が居るだろうけれど……」
 最期の呟きはか細く、風に溶けてゆく。そのままファンは身に帯びる霊具呪物を取り出だすと、静かに彼等へと視線を注ぐのであった。

「いつまで怒り狂っているつもりなのかな、ヴァルギリオス? 敵を前にして随分と余裕があるようだ」
『また新たな手合いか……我の機嫌はいま良くない。そんな時に姿を見せるなど、運が良いのか悪いのか』
 数分後、白き少女は帝竜の眼前へと姿を見せていた。新しき敵手を前に、相手は苛立ちと嗜虐の入り混じった視線を向けてくる。それは差し詰め、玩具を見つけた子供じみた眼光。
『敵などとは贅沢を言わん。せめて腹立ちまぎれの余興となれッ!』
 よほど怒り心頭であったのだろうか。収束の溜めすらも察知させぬまま、帝竜は最大火力を解き放つ。予兆すらも感じ取れぬ突発的な攻撃に、少女の姿は成す術も無く光の中へと飲み込まれ……それらが消え去った時には、地形ごと跡形もなく吹き飛ばれていた。
『ふん、なんとも呆気ない……猟兵と言っても、質は様々か』
 吐息の残滓を吐き出しながら、帝竜は詰まらなさそうに首を巡らせる。と、その時、視界の端に何かがちらつき始めた。目を凝らしてよくよく見れば、それは何らかの紙片。先の猟兵が残した装備か何かかと、一欠けらを爪先で摘まむや。
【――私は、あなたに勝ちたいんだよ】
『……!? おのれ、これは呪物に類するものか!』
 どろりとした意識が帝竜へと流れ込んだ。それはただひたすらに勝利を渇望する思念。しまったと思った時には既に遅い。帝竜の四方八方から、無数の影が溢れ出してきた。これこそ、ファンの奇策。己の肉体と引き換えに敵への感情を抱き、それに反応する漆黒の影たちによって目標を襲わせたのだ。
 それらの操作を代行する偶像も、戦闘前に安全な場所へと避難済み。故に、大本を攻撃して一網打尽を狙うのは不可能だ。帝竜はこの影を一体ずつ相手取らねばならない。
『陰湿な真似を……ッ! 小虫風情が鬱陶しいわっ!』
 影たちは数が多い上に、帝竜と比べればサイズは極めて小さく、かつ密度もそこまで濃いとは言えない。手足を振るった所で隙間から逃れられ、ブレスで薙ぎ払うのも労力に見合った戦果を望めぬ。受けるダメージこそ微々たるものだが、苛立ちを与えるという点では効果甚大と言えるだろう。
『ええい、邪魔くさい! あの小娘、これが狙いだとしたらとんだ食わせ者よ。武器でも呪文でもなく、苛立ちで我を討つつもりか!』
 小刻みに与えられる痛みへ不快感を漏らす帝竜。だがその言葉へと応える、在り得ざりき声が戦場に響く。
「それが本命ではないけれど、そう感じさせられたのであれば嬉しいよ? なんせ、こっちの目的は既に大半が達成できているんだから」
 声の主は先ほど消滅したはずのファン。帝竜はピクリと眉根を上げて油断なく周囲を見渡すも、白い少女の姿は見当たらない。
『また、なんぞ手妻でも見せるつもりか?』
「そちらから見ればそうかもね? ……万全のあなたなら、私は針程度の物かも知れない。けれど、今の有り様なら、そう言い捨てられるかな?」
『なにを……いや、貴様、まさか!?』
 帝竜の感覚器官はそこでようやく声の発生源を捉えた。それは己の身体の下。正確には、其処で蠢く一本の刀。種明かしをしてしまえば、ブレスを受けて肉体が消滅した後、ファンの本体は影たちに紛れ、敵の下方へと音も無く忍び寄っていたのである。
 ここまで接近してしまえば、避けることは愚かまともに防ぐ事すらままならない。
『己の消滅も、影の群れも! 全て、この瞬間の為の囮か!?』
「そういうことさ。であれば、次に何をするかは……分かるよね?」
『待て、やめっ……が、ご、ぉぉっ!?』
 ファンは自らを垂直に立てるや、そのまま切っ先を相手の下腹へと突き刺した。鱗の隙間を縫い、肉を裂き骨を断ち、遂には柔らか内蔵へと。相手の生命力を啜り上げながら、そのまま敵の後背へと突き進み……。
「古き蛇神も最後は尾を裂かれたようだし……それに倣うのも一興だろうさ」
 尾の根元を断ち切る様に、白き刀が敵の内部より勢いよく飛び出してゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・アルゲン
この世界には我が故郷もある
故に帝竜、貴様に滅ぼさせはしない!

属性のバリアはこちらも【彩紋の刻印】で各属性を操り、それぞれ対抗しよう
【オーラ防御】にその効果を付与して守る
それで足りなければ剣による【武器受け】で受け流す

防御をしながら全【属性攻撃】を【全力魔法】で【高速詠唱】し剣に力を溜める
ここぞという時を見極めたら剣をぶん投げる
まるでやけを起こしたように【演技】し竜の油断を誘う

剣がなければ攻撃ができない? いいや私は剣そのものだ
死角に投げた剣から【凶つ星】を竜に叩き込むとしよう
帝竜のバリアは【破魔・鍵開け】の力で抉じ開ける

御伽噺の竜らしく倒されるがいい!


勘解由小路・津雲
さて、力を貸してもらった勇者やこの世界出身の友人のためにも負けるわけにはいかない。竜退治といこうか。

【作戦】
まず本体の鏡を、道具【式神】に託して遠ざけておき、仮初の体で戦いを挑むとしよう。

「行くぞ、ヴァルギリオス!」
と呼びかけ、注目を集めたら錫杖から強烈な光を放ち【目潰し】を試みる。
あとは錫杖を投げ捨て(巻き込まないよう)、走りながら【オーラ防御】と【各種耐性】で結界をはりつつ、相手のブレスの直撃を避ける。

だがそれは首をそちらに向けさせるための囮。攻撃を受けたら仮初の体を消し、別の場所の本体のところにあらわれ、【歳刑神招来】を叩き込む。
「後で玄武を回収に行かねば。怒っていないとよいが……」



●己が帰る場所を護る為に
 度重なる交戦の果てに、強大さを誇った帝竜『ヴァルギリオス』の威容にも陰りが見えつつあった。全身には数多の傷が刻まれ、八頭のうち三つが無残にも刎ね飛ばされている。相手は既にそれまで保っていた余裕もかなぐり捨て、狂暴なる竜本来の闘争心を剥き出しにしていた。手負いとは言え、否、手負いだからこそ脅威はますます高まっていると言える。
「この世界には我が故郷もある。それに主の歩んだ思い出や、語り継がれる物語も……故に帝竜ヴァルギリオス、決して貴様に滅ぼさせなどはしない!」
 だが、なればこそとステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)は荒れ狂う暴虐へ敢然と立ち向かう。この世界は彼女の生まれた故郷で在り、数百年経とうとも決して色褪せぬ記憶が眠る地でもある。だからこそ、戦いへ掛ける心意気は並々ならぬものがあった。
 そんな銀星の騎士へ、肩を並べる者が在る。
「……そういう事であれば是非も無し、俺も助力させて貰おう。仲間の帰る場所が消えてしまうのは、こちらとしても見過ごせないからな。竜退治といこうか。」
 シャンと錫杖の甲高い音を響かせながら、姿を見せたのは勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)であった。お道化た様に小さく肩を竦める陰陽師へ、ステラは感謝と気恥ずかしさの入り混じった笑みを浮かべる。
「津雲殿……すみません。ですが、助太刀に感謝します。仲間が居てくれることほど、心強いことはありませんから」
「なに、気にするな。力を貸してもらった勇者に対する借りもある。龍星の村を覚えているか? あの村出身の勇者にも会えたぞ」
「なんと、それはそれは。であれば、ますます負けることが出来ませんね」
 交わされる言葉は気心の知れたもの。会話によって無意識に強張っていた体が解れ、緊張が適度に緩んでゆく。決意を固くするのは良いことだが、気負い過ぎてもそれはそれで宜しくないのだ。そうして心に余裕が生まれた所で、津雲は己が本体である金属鏡を手に取る。
「さて、敵は最強の矛と絶対の盾を備えている。ただ、前者はこちらでなんとかする手段がある。障壁の突破は任せられるか?」
「ええ、勿論です。如何な強固な護りで在ろうとも、無敵という訳ではありませんから」
 交わされた内容は最低限だが、お互いの手の内を十二分に把握し合った仲で在る。憂うことなど何もない。二人は手早く打ち合わせを終えるや否や、それぞれ行動を開始するのであった。

『おのれ、またしても……またしても我を阻むかァアアアア!』
 先の交戦における怒りを未だ引きずっているのだろう。地面を転げまわりながら、行き場のない激情を撒き散らすヴァルギリオス。ただでさえ威圧感を纏う帝竜だが、今は輪をかけて近寄りがたい。しかし、津雲は僅かばかりも躊躇することなく、その眼前へと身を晒した。
「随分と怒り心頭のようだな。頭を三つも失い、流石に追い詰められているといったころか。こちらもこの好機を逃すつもりはない。行くぞ、ヴァルギリオス!」
『囀るな、矮小なる人間風情がッ!』
 陰陽師の挑発的な物言いに、相手の反応はまた早かった。瞬時に各頭部へと魔力を掻き集めるや、怒りのままそれを一気に解き放とうとし……。
「おっと、そいつは流石に勘弁願おうか!」
 その直前、掲げられた錫杖から眩い輝きが溢れ出した。それは攻撃ではなく、視界を潰す為の目晦ましだ。ダメージを与える事こそないものの、瞳を白く染め上げられた結果、ブレスの狙いは大きくずれてんでバラバラの方向へと降り注いでゆく。
『ガァアアアッ! 小癪な小細工など弄しおってぇっ!』
「卑怯と言ってくれるな、これもまた立派な戦術だからな……さて、役目は終わりだ。巻き込まれないよう離れていてくれ」
 地面を抉り取ってゆく八条の輝きを、津雲は危なげなく躱してゆく。と同時に、何故か彼は手にしていた錫杖を玄武の姿へ戻すと、そっと戦場の端へと退避させる。己の武器を手放す意図とはいったい何なのか。だが、残念ながらそれが解き明かされることは無かった。
『そ、こ、だぁあああああああっ!』
「っ、しま……!?」
 視力を取り戻した五つの頭部が陰陽師を補足するや、瞬時に全ての攻撃を叩き込んだのである。念入りに、確実に、生き残る余地を許さぬように。ヴァルギリオスはたっぷり十数秒もの時間を掛けて、津雲を消し飛ばしてゆく。
 そうしてブレスを吐き出し終え、ぎょろりと着弾地点へ視線を注ぐも、其処には骸や装備は愚か塵芥すら残っていなかった。
『そうだ、これで良い。これが正しい。これこそ、本来あるべき結果である』
 ようやく満足のゆく結果を得られたのだろう。溜飲を下げた様に喉を唸らせるヴァルギリオス。そうして、帝竜はそのまま身を翻すと。
『それで、次の相手は貴様という訳か』
「っぅ!? まさか、気付かれていたとは!」
 三重障壁を展開し、死角より挑み掛かってきたステラを迎え撃った。騎士は蒼銀の剣を繰り出すも、反射障壁の放つ雷火によって逆に全身を飲み込まれ弾き飛ばされる。魔術刻印から引き出した冷気によって辛うじてダメージは受けなかったものの、奇襲を防がれたのは非常に痛かった。
「折角、仲間が身を挺して生み出してくれた好機だというのに……!」
『ハハハハハッ、残念だったな! まだ二人掛かりで挑んだ方が目はあったというものを。無論、それでもなお我が破れることは在り得ぬがなっ!』
 歯噛みするステラも続けて討ち滅ぼしてしまおうと、帝竜は障壁を纏ったまま襲い掛かってきた。振り下ろされる四肢が地面を打ち砕き、鋭き牙を備えた顎が騎士を飲み込まんと四方八方より迫り来る。彩紋から次々と汲み上げられる魔力に身へ帯びる護り、そして巧みな剣捌きによってステラは直撃を回避してゆくが、それも危うい均衡だ。
 そうして徐々に追い詰められ、進退窮まった騎士は半ば破れかぶれの一手を選択する。
「これなら、どうだっ!」
 それは渾身の魔力を籠めた得物の投擲。確かに威力は十分かつ、敵の意表を突く奇策とも言える。だが、余りにもそのタイミングは悪かった。何か仕掛けて来ると読んでいた帝竜は、ひょいと軽くそれを弾き返してしまう。これでもう、ステラの手に武器はない。
『ガ、ハ、ハハハッ! なんだ貴様ら、揃いも揃って我を笑い死にさせるつもりか! 騎士が剣を持たねば只の人、ただの凡人よ!』
 万策は尽きた。孤立無援の騎士が帝竜へ対抗する手段はない。これで終わりだと、ヴァルギリオスはトドメを刺さんと腕を振り上げる……が。
「剣がなければ攻撃ができない? いいや……私は剣そのものだ」
『ハッ、この期に及んで世迷いご、と……を?』
 次の瞬間、二つの事象が発生した。一つは、ステラの姿が忽然と掻き消えたこと。そしてもう一つは、意識外の方向より帝竜へ刃が突き立てられた事である。疑問と激痛に襲われる相手が見たものは、三重障壁を貫通して刺突を繰り出している騎士の姿。
 これこそが彼女の異能。投擲した本体のすぐ傍へ肉体を再召喚し攻撃する、奇襲の一撃である。
『貴様、なにを、した……!?』
「さぁ、なんだろうな。ただ一つ教えられるとすれば、貴様が此処で終わるという事だけだ!」
 更に深々と刀身が押し込まれ、耐え切れなくなった障壁が砕け散った。帝竜は激痛に悶えながらも、ステラを噛み砕かんと頭を巡らせる。だが、それを阻むモノがあった。相手の頭部目掛けて降り注ぐは、無数の鉾槍。
「やれやれ、危ない所だったな。障壁がもう少し持ちこたえられていたら、こちらも手が出せなかった」
『な、ぁ……何故、お前が生きて居る!』
 その主はなんと津雲である。殺したはずの敵が姿を見せ、さしもの帝竜も驚愕に慄く。種明かしをすれば、先に交戦した陰陽師は仮初の肉体であり、消滅後に隠しておいた本体を核に身体を再構築したのだが……それを教えてやる義理など無かった。
「さて、と。ちゃんと玄武を回収してやらねば、怒られてしまいそうだしな……そろそろ終わりにするとしよう」
「ああ、そうだ。悪竜よ、御伽噺の竜らしく大人しく倒されるがいいッ!」
 津雲は残りの鉾槍も雨あられと降り注がせ、ステラが渾身の斬撃を放つ。疑問と驚愕に囚われた帝竜に、その攻撃へまともに対処できるだけの冷静さなど無く……。
『これが猟兵、これが今代の勇者!? よもや、これほどとはッ!』
 刺突と剣閃、その二つを受け凄まじい絶叫を響かせるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

吉備・狐珀
どんな強敵であろうと勇者殿が守ろうとし、仲間や月代の故郷を崩壊させはしません。

(祈り)をこめ祝詞を唱え、ブレスに耐えるべく私が防げる(全耐性)の(オーラ防御)を身に纏い準備を整えたらUC【神使招来】使用
完全に防ぎきれなくても(高速詠唱)でウカとウケの中に眠る霊を呼び起こす間を作れれば問題ない。
ウカの神剣に眠る四神全ての力を解き放ちブレスの属性ダメージをさらに軽減。
ウケ、加減をして倒せる相手ではありません。(全力)で御神矢を(一斉発射)し矢の雨を止め処なく降らしなさい。
月代、貴方は誇り高き龍の子です。臆することはありません。私とウカの霊力で強化した(衝撃波)をヴァルギリオスに放っておやりなさい。


落浜・語
さぁて、どうするかな。
この世界が無くなると故郷を無くす知り合いも多いんだ。早急にお帰り願うことだけは決まりきっているんだが。
やれることはやりましょうかね

あちらの先制攻撃はこちらに向かなきゃいいんだよな。深相円環を【投擲】して【念動力】で操り首のかく乱を試みる。ついでに一番柔いであろう目を狙って【目潰し】しつつ【マヒ属性攻撃】で【時間稼ぎ】。
一応雷撃と毒には【耐性】はあるし、鎮魂疵に傷つけて【激痛耐性】を得つつ【オーラ防御】でも軽減を狙う。

合間合間に、【オーラ防御】で絡繰人形を守りつつ、爆破用の人形を展開。単体でも攪乱目くらましに使いもするが、数を出した時点で爆破【属性攻撃】で広【範囲攻撃】を。



●友の為に、己の為に
 既にヴァルギリオスの肉体は限界間際と言っても良い。八つの首のうち三つは無残にも引き千切られ、全身の傷という傷からは滂沱と血が溢れ出している。全身に突き立った無数の武器など、それこそ神話の怪物と評せるだろう。
「ならば、荒ぶる古き神々と同じく鎮めて見せましょう。どんな強敵であろうと勇者殿が守るために命を懸けた、仲間や月代の故郷を崩壊させはしません」
 だが、ある意味でそれは見知った姿と言える。吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は肩口に月色の仔龍を乗せながら、大いなる竜へと対峙した。彼女は己のみで立っているのではなく、数多の想いを背に抱いている。それは今なお勝利を望む勇者たちであり、友として出会った小さき者たちであり、そして……。
「さぁて、それじゃあ今度ばかりは肩を並べて挑むとしますかね。他にも、この世界が無くなると故郷を無くす知り合いが多いんだ。早急にお帰り願うことだけは決まりきっているんだが……ま、やれることはやりましょうかね」
 想い人もまた、然り。肩を竦めながら姿を見せる落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)に、狐像の少女は険しい表情を一時和らげ笑みを浮かべた。
「語さん……!」
「一緒に子供に成ったのも楽しかったけどな。ま、最後くらいは二枚目な姿も見せておきたいってことで」
 苦笑する語の襟元からも、鈍色の竜が顔を覗かせている。抱く想いは共に同じだ。二人は小さく目配せし合うと、眼前の大敵へと向き直った。相手もまた、新たな敵手を射殺さんばかりに睨みつけてくる。
『我は、最強……! この群竜大陸を治めし竜の中の帝竜ッ! それをここまで、よくもォォオオッ!』
 口腔と千切れた頚部より、凶悪なる魔力の輝きが溢れ始める。策も不要、小細工も不要。ただただ圧倒的な蹂躙こそが正義で在り、それ以外を取るという事は己の在り方を曲げることに他ならない。故に、強力だがこれしか選べぬというのは果たして幸か不幸なのか。
「あれの直撃を喰らうなんざ、ゾッとしないな……目算はこっちが誤らせるから、護りは頼めるか?」
「ええ、勿論です! こんなところで負けられませんから……っ」
 攻撃が放たれるまで猶予はない。だが、二人の間には最低限の言葉のみで十二分。以心伝心、互いが何をすべきかなど余すことなく分かち合っていた。
「――朝の御霧、夕の御霧を。朝風夕風の吹き掃ふ事の如く、大津辺に居る大船を、舳解き放ち」
 狐珀の祈りを籠めた祝詞と共に、清涼なる結界が二人を包み込んでゆく。だが護りが十全な耐久力を備えるまでには数瞬足りない。それを補うために、語は深相円環を指先で人回転させるや、ひょうとスナップを付けて投擲する。
『そのような小刃、我に効くと信じておるのか!』
「前提として、先制攻撃がこちらに向かなきゃいいんだよな? だったら、こいつで少しばかり引っ掻き回してやるさ。それに硬い鱗に覆われた体なら兎も角、こっちをまじまじと狙っている目玉なんかは……」
 良い的だよな? 円環は音も無く飛翔するやくるくると八首の間を飛び回り、すれ違い様に帝竜の視界を切り裂いていった。無論、それで全ての目を潰せるなどは思っていない。だが、首はどれも位置や角度がバラバラなのだ。他で補うにも、どうしたって誤差というものは生まれてくる。
『無駄な、足掻き、をォォォォォオオオオオッツ!』
 だが、多少の不利を無視してでも帝竜は極大の吐息を解き放った。圧力は多少減じているとはいえ、それでもその威力は凄まじい。だが、語が役目を果たしたのだ。自らも己の為すべき事を行うべく、狐珀はゆっくりと前へ歩み出ながら祝詞の最終節を結ぶ。
「大海原に押し放つ事の如く。彼方の繁木が本を、焼鎌の利鎌以て打ち掃ふ事の如く。遺る罪は在らじと、祓へ給ひ清め給ふ事を……!」
 結界は像を結び、確かな頑丈さで攻撃を受け止める。だが、足りぬ。帝竜が誇りし最大最強の攻撃なのだ。語も防御に助力していると言えど、それでもなお圧倒的。しかし、狐珀はそれすらも織り込み済みだった。
「ウカとウケ、お願いしますね! 今こそ、その裡に眠る力を……猛き者達よ、深き眠りから目覚め、我と共に闇を祓う力となれ!」
 結界は次へと繋げる為の時間を稼ぐ前準備に過ぎない。狐珀の呼びかけに応じ、足元で待機していた黒白の狐がくるりと身を翻す。その内部より呼び出されしは倉稲魂命と保食神、二柱の神に付き従いし武人たちである。
「ウカ、四神の力を解き放ち攻撃の相殺を! ウケ、加減をして倒せる相手ではありません。全力で御神矢を放ち、矢の雨を止め処なく降らしなさい!」
 倉稲魂命が剣を掲げるや、内包されし四聖獣の力が姿を見せた。火の朱雀、水の玄武、土の白虎、木の青龍。四つの属性が吐息を相殺するのと並行し、保食神は放物線を描く軌跡で応射を仕掛けてゆく。竜の吐息が尽きるのが先か、猟兵が耐え切れなくなるのが先か。ジリジリとしたダメージレースの結末は……。
『グ、ガ、ゴホッ!?』
 前者の敗北によって決する。全快状態であったなら兎も角、激戦を経た肉体は既に限界を迎えつつあったのだ。苦しげに身を捩る敵の姿に、猟兵は勝機を見出す。
「すまない、助かった。どこか怪我は無いか?」
「大丈夫です、少し疲れましたけど仔細は在りません。それよりも、今のうちに帝竜を!」
 自らの身を案じる語に問題ないと返しつつ、狐珀は敵を指し示す。鋭矢の雨で手傷を負わせたとは言え、まだ致命打には程遠い。咳き込み終えた帝竜は体勢を立て直すと、今度は肉弾戦によって猟兵を叩き潰さんと吼え猛る。
『我がブレスを凌いだだけで良い気になるな! 所詮貴様らは辛うじて命を拾ったにすぎん!』
「おっと、そいつはどうかな? 足元を見てみろよ」
『なんだと……?』
 怒りのままに迫らんとしたヴァルギリオスへ、語は小馬鹿にしたような笑みを浮かべて地面を指し示す。だがその時点で既に巨体は前足を振り上げており、下を見たのと同時にそれを踏み下ろしてしまい……。
「動きの遅い相手には効果覿面なんだよな、これが。山龍も引掛かったんだが、それをお前はどう思う?」
 地表へ接触した瞬間、凄まじい爆炎が噴き上がった。橙色の輝きの中で舞い散るは、文楽人形の破片。何も語とて、ただ狐珀の背後で護られていた訳ではない。繰り糸を操って人形群を遠隔操作し、気付かれぬよう相手の周囲へと展開させていたのである。
『馬鹿な、いつの間に……!?』
 種を明かされたところでもう遅い。帝竜の身体では人形の隙間へ足を下ろせるほどの器用さはなく、なまじ避けようとすればするほど連鎖爆発を引き起こす。次々と舞い上がった爆煙が、視界を覆い尽くしてゆく。
『ぐ、むぅ……! だが所詮、こんなものは一度きりの手妻。そう何度も使えまい!』
「ああ、そうだな。だけどもう忘れたのか。こっちは一人じゃないんだぜ」
 語の返答に変わって、立ち込める煙を突き破るモノが在る。小さくてか細い、しかして生命力に溢れた姿。それは先ほどまで狐珀の肩に載っていた、あの仔龍に他ならなかった。
「月代、貴方は誇り高き龍の子です。どれほど相手が強大であろうと、臆することはありません。その身には既に、帝竜にも劣らぬ想いが宿っているのですから」
 仔龍は勇ましげな唸りを上げ、帝竜の鼻先へと吶喊する。それは常より小さいと断じている人間よりもなお小柄で、帝竜の爪も牙もまともに掠りはすまい。しかし、その身に宿る力の大きさを感じ取り、ヴァルギリオスは鼻白んだ。
 質量差、実に数千倍。しかし、月の名を冠する幼子は確かに己が全身全霊を賭して王へと挑み掛かり……。
『我は竜の帝、全ての頂点に立つ者! それがこんな、齢も重ねておらぬ小童なぞにィィッ!』
 見る者が思わず喝采を上げるほど鮮やかに、その横面を強かに打ち飛ばすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メルト・プティング
ベアータ(f05212)さんと
おっかないけど…二人なら、がんばれますっ

毒バリアは触れずに対処、ベアータさんの切り札を確実に当てる為、【フェイント】【念動力】による衝撃波攻撃で援護するのです
反射バリアは物理でゴリ押し!念動鉄槌で一番おっきい瓦礫を持ち上げ叩きつけて、地形諸共バリアを砕いてやりますよ!
破片が反射されてめっちゃ痛そうですが、そこは【オーラ防御】で対処!

氷結バリアと本体への攻撃はベアータさんが主体ですが、ボクも援護するのです
ココからは自分の防御は後回し、【オーラ防御】をベアータさんに付与しつつ【念動力】で援護射撃っ
痛いのはヤですけど、ベアータさんがひどい目にあうのはもっとヤなので!


ベアータ・ベルトット
メルト(f00394)と

遂にここまで辿り着いたわね
さぁ、行くわよメルト!アンタと一緒なら負ける気がしないわ

毒液バリアに向けてVampwireを射出。ワイヤー内にBrutal Fluidを流し込み、毒液に混ぜてから再結晶化して破壊する
お次はメルト、頼むわよ!この間にArmord Fluidを展開して硬骨を捕食
砕かれて反射された破片は蝙翼機光を使って帝竜側に弾き返してやるわ

凍結バリアの一点を狙って、口腔内で生成したFoxphoric Flamerの炎弾を大量に連撃。穴が空いたら、そこから帝竜の体にワイヤー射出。メルトは絶対に傷つけさせない!速攻で肉薄してBEAの一撃を喰らわせてやるわ。餌食と為れ!



●一人で来して、二人で帰る
 ――ォォ、オオォ、ォォオオ……ッ!
 群竜大陸が世界樹の中心で、帝竜『ヴァルギリオス』の慟哭が響き渡る。その声音に混じるのは激しい怒りではなく、底知れぬ憎悪の感情。既に五つの頭の内、実に三つが無残にも破壊され、更には全身に夥しい量の傷が刻まれている。最強を誇る自分が、龍の頂点たる己が何故……答えの出ぬ問い掛けに苛立つ命の姿が、其処にはあった。
(遂にここまで辿り着いたわね……前は、一人だけだったけれど)
 その姿を前に、ベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)はかつての戦いを思い起こす。疑問を叫び続ける過去の王。あの大魔王と帝竜では在り方が大分違うけれど、口にする問いは同じこと。感傷だろうか、眼前の光景がだぶって見える。だが、決定的に違う点もまた在った。
「……さぁ、行くわよメルト! アンタと一緒なら負ける気がしないわ!」
「ちょっとおっかないけど……ベアータさんと二人なら、がんばれますっ!」
 ベアータの傍らには、メルト・プティング(夢見る電脳タール・f00394)の姿が在った。共に日常を駆け抜けてきた愛しき友。それは赤髪の少女のみが抱く気持ちではない。黒き乙女もまた、同様の想いを胸に秘めている。だからこそ、帝竜という恐ろしき敵手を前にしても臆することは無かった。
「怖くて、動けなくなってしまった時も助けてくれましたから。だから、きっと大丈夫だって信じてます!」
 黒き友の言葉に、ベアータは穏やかな笑みを浮かべながらそっと手を差し出す。かつて銀時計に触れた指先を、今は暖かな掌へと。邂逅は一瞬、されどそこに名残惜しさはない。すぐにまた、結ばれ合うと信じているが故に。
「それじゃあ……」
「作戦、開始ですっ!」
 二人は戦場へと飛び出してゆく。勝利のために、そして二人で帰るために。

『我が障壁は何者にも越えられぬ。なのに、なぜ、どやつもこやつもォオオオオッ!』
 接近してきた猟兵の姿を見やるや、ヴァルギリオスは三重障壁を展開して攻撃を阻まんと目論む。それは己の強固さを誇示する為なのだろうが、事ここに至ってはもはや砂上の楼閣にしか思えなかった。
「先に仕掛けるから、援護は任せた!」
「後ろは気にせず、思いっきりやっちゃってください!」
 ベアータは障壁へ、メルトは敵の視線の先へとそれぞれ別れる。黒き少女が衝撃波を当てて注意を逸らし、その間にもう一方がまず毒水障壁の攻略を狙うのだ。
「目には目を、液体には液体をってね。自分の中に混ぜられちゃ、排除することも出来ないでしょうよ!」
 先陣を切ったベアータが吸血機構を備えたワイヤーを射出するや、それを毒水の内部へと滑り込ませる。そのまま鋼糸を伝って流し込まれるは、流体金属状の刀鋼。それらは毒に侵されることなく混ざり合うや瞬時に硬質化、液体特有の柔軟性を奪い去ることによって破壊に成功した。
「毒の障壁は破壊完了、っと。お次はメルト、頼むわよ!」
「はーい! それじゃあ、ちょっと強引に行きますからね……!」
 第一関門を突破するや、二人は互いの役割を交代する。流体防具を骨の様に硬質化させたベアータは、それを噛み砕くことによって微細な刃と化し、背のレーザー機構で弾くことにより攻撃と撹乱を両立させてゆく。その間に、メルトは雷火渦巻く反射障壁へと向き直る。
「策らしい策って訳じゃありませんけど、これはいわば我慢比べですね。どっちが先に砕けるか、いざ尋常に勝負です!」
 メルトはこれまでの戦闘によって破壊された地形へと手を突っ込むや、ずるりと巨大な瓦礫を引っこ抜く。攻撃を反射し燃やし尽くすというのであれば、対抗手段は単純明快。簡単には破壊されぬ大質量で、ひたすら殴るのである。
「あいたたたたっ!? 流石にちょっとは跳ね返ってきますね……でも、この調子、ならっ!」
 反撃された瓦礫は砕け散り、礫となって少女へ襲い来る。オーラで防御していても痛いものは痛い。だが、幸いにも使える瓦礫はごまんとあった。一刻も早く第二障壁を破壊すべく、反射と攻撃の乱打を繰り返し……。
「これで……トドメなのです!」
 ついに雷火障壁は反射限界を迎え、第二の関門がこじ開けられた。余りにも早すぎる侵攻速度に、さしもの帝竜も座したままという訳にはいかなくなる。せめて、最後の凍結障壁だけは何としても死守せんと、身体を持ち上げ少女たちを圧し潰そうと襲い掛かってきた。
「させません! 痛いのはヤですけど、ベアータさんがひどい目にあうのはもっとヤなので!」
 前腕の超質量による圧し潰し。その直撃を真正面から受け止めたのはメルトで在った。彼女は自分の防御すら後へ回し、友へ勝機を繋ぐべく身を張ったのである。
『足掻くな、抗うな、逆らうな! 何をしても無駄なのだ、万物はただ過去へと降り逝く存在。ここで抗った所で何の意味がある!』
「意味なら……あります!」
 念動力を全て注ぎ込んで逆に相手の動きを封じ込めんとしながら、彼女は叫び返してゆく。
「確かに、いつかお別れするかもしれない。過去の記憶に、思い出になってしまうかもしれない……でも、いまだけは! 今この瞬間だけは、確かに一緒に居るのです! それを無為になんて、絶対にさせません!」
 ジリ、と。拮抗が崩れる。帝竜側ではない、想いを叫ぶ少女の側へと天秤が傾いたのだ。メルトはほんの僅かだが相手の圧力を跳ね除けると、親友へと叫ぶ。
「だから……行って、ベアータさん!」
「ええ。ありがとう、メルト……行ってくる!」
 ベアータは友の声を背に、最後の障壁へと吶喊する。放たれるは口腔内で生成されたリン化合物。立て続けに命中した炎弾は竜の吐息も斯くやという勢いで凍壁へ穴を穿つと、僅かばかりの空白を生み出す。ベアータは瞬時に再生を始めた穴へワイヤーを通すと、一気に内側へと己の身を引きずり込んだ。
「これ以上、メルトは絶対に傷つけさせない!」
『己、おのれ、オノレ! 勇者メ、亡霊メ……猟兵メェェェエエエエエエエッッ!』
 理性も保身もかなぐり捨てて、残った頭全てで襲い掛かってくるヴァルギリオス。それに対し、ベアータもまた右目を覆う眼帯を振り払い、己の異形を晒す。かつては誰かに見せることを恐れた。だが、今は違う。何故なら彼女は、既に自分が『人間』だと胸を張ることが出来るのだから。
「最強の竜? 食物連鎖の頂点? 知ったこっちゃないよ。アンタはただ……」
 右目の舌先が伸び、帝竜の隙間へと滑り込む。相手が如何なるものであろうとも、一切関係なし。其れが血肉を備えているのであれば、仮初とは言え命を抱いているのであれば。
「――餌食と為れ!」
 この一撃は、どんな敵をも食い破る。人の愛と獣の本能、その二つに後押しされた少女は遂にオブリビオン・フォーミュラへと終止符を打つ。
『ば、かな……我、は。さいきょ、う……の……』
 轟音を立てて、帝竜はその身を地面へと横たえる。最後の瞬間まで、紡ぎ続けたのは己が強さについて。だがその声も、もう聞こえない。
「だ、大丈夫ですか、ベアータさん! 怪我は在りませんか!?」
「うん、問題ないよ。メルトもお疲れ様」
 崩れた体より飛び退ったベアータへ、メルトが慌てて駆け寄ってくる。自分も敵の攻撃を受け止めてボロボロだと言うのに、まず真っ先に心配するのは友の身について。そんな親友の様子に、思わずベアータの口元から笑みが零れた。
「これで、終わりですか?」
「そう。正真正銘、これで決着。だから……」
 恐る恐る帝竜の骸を見下ろすメルトへ、ベアータは埃を払いながら立ち上がって手を差し出す。
「さ、帰ろっか」
「……はいっ!」
 ベアータの固く冷たい/暖かくも優しい手を、メルトはそっと取る。互いに歩調を揃え、無意識に気遣い合いながら、共に歩み始める。
(――餌でも、敵でもない。対等な『誰か』が側に居てくれたから)
 ふと、ベアータは横を歩く少女の横顔をちらりと見つめながら、改めてその尊さを己が心に刻みつけた。そうして二人はしっかりと互いの掌を握り締めながら、戦場を後にしてゆく。

 ――斯くして、此処にオブリビオン・フォーミュラ『帝竜ヴァルギリオス』は猟兵たちの活躍によって討ち果たされた。遥か高空を浮遊する群竜大陸の草原を、後はただ一陣の風が吹き抜けてゆくのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月24日


挿絵イラスト