#アルダワ魔法学園
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●アルダワ魔法学園
その迷宮は、一言で表現するなら書庫だった。
通路の両脇には天井まで高さのある棚がびっしりと立ち並び、曲がり角にも専用の、カーブに沿った棚が置かれている。
空気は暖かく乾いていて、棚に隙間なく収められた本の状態も良好だ。
所々にある部屋には、本棚以外にもベンチやソファーなどが置かれていた。
天井からの光は本を読むために最適な明るさが保たれており、何より全体が光っているため影ができにくい構造だ。読書をするのに申し分ない環境だろう。
そしてその部屋は、昼寝をするのにだって適していた。
ソファーに横になり、ヤギを抱いて安らかな寝息を立てていた幼い少女が目を覚ます。
「んん……、……。王子、さま……?」
少女は起き上がって、寝惚け眼をこすりながら部屋の中を見回すが、彼女と腕の中のヤギ以外は誰もいない。
また夢だったのかと、いつも通りにがっくりと肩を落として溜息を吐いた。
「道に、迷っちゃった……の、かなぁ……」
少女はヤギをぎゅっと抱きしめ、白い毛の中に顔を埋める。
「それとも……おねぼうさん、かなぁ……?」
少女の華奢な身体が、わずかに震えていた。
「会いたい、な……」
ヤギが、慰めるように小さく鳴く。
「……ん。あきらめない、もん……」
少女はヤギに励まされて大きく頷いた。
そう、諦めては駄目だ。
いつかきっと来てくれる王子様のために、歓迎の準備をしなくては。
少女はヤギを抱きしめたまま立ち上がって、抱えたものの重さにふらつきながらも本棚の前まで移動した。
「えっと。んー……」
あっちへよろよろ。
こっちへよたよた。
「……ん。これに、しよ……」
散々迷った末に、少女が手にしたカラフルな本のカバーには、“カレのハートを一撃☆必殺! ハイレベルイケメン王子をトリコにするちょーカンタン☆スイーツレシピ♪”などと、頭の悪そうな文字が踊っていた。
ヤギはなんかズレてると思いながらも深くは突っ込まない。
だってスイーツ食べたいし。楽しそうだし。
女の子がやるぞーって意気込んでるし。かわいいし。
とりあえず少女を応援しようと、ヤギはできるだけ力強くメェと鳴いた。
●グリモアベース
「諸君、仕事の時間だ」
どこか浮かれた様子のシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)が、集まった猟兵たちに向かって言った。
「場所はアルダワの地下迷宮。昔からあった迷宮なのだが……探索したパーティーの報告によると、内部の様子が一変しているらしい」
元々は明るい図書館といった風情の、書物に溢れかえった迷宮だったようだ。
罠がなくてモンスターも弱く、蔵書には娯楽作品が多かったため、普段こういった場所とは縁のない生徒でも、気軽に立ち寄って本を読んでいくような迷宮だったという。
「それが今や、お菓子で満ちているらしいぞ!」
甘党のシェーラはとても嬉しそうに笑った。
本棚はショーケースに変化し、本はミルフィーユやババロアやチーズケーキやティラミスや、他にも様々なお菓子に変わっていたのだとか。
図書館からスイーツビュッフェの店に鞍替えでもしたようだと、帰還した生徒の報告にはあった。甘すぎず、小さくカットされていたので何個でも食べられたとも言っていた。
話を聞いただけで期待に胸が膨らんだと、シェーラは陶酔した息を漏らす。
「すでに耳の早い連中が、スイーツ目当てに迷宮に潜っている。しかし突然変化したというのが気になってな。遅まきながら予知した所、以前にはなかったはずの罠が増設されていたのだ」
お菓子と同じように、難易度も甘くしてもらえれば楽だったのだが。
シェーラは大げさに肩をすくめた。
「生徒たちが罠に引っかかり、お菓子の像に変えられていく姿が見えた。今から向かっても罠にかかるのを止められないだろうが、元に戻すことはできそうだ」
罠はどうやら、魔力で人をお菓子に変えているようだ。ユーベルコードや技能をうまく使えば、助け出すことも可能だろう。
「諸君に頼みたいのは、生徒の救出だけではない。この罠を作り出したフロアボスも倒してもらいたいのだ。……とても……非常に……心から、残念だが……」
放置していては被害が増えるので倒すしかないが、そうするとスイーツビュッフェだって消えてしまう。
シェーラは未練がましく唸り声をあげるが、猟兵たちの白い目に気付くと、こほんと咳払いをして切り替えた。
「いや、僕だって自分の仕事は忘れていないさ。頼んだぞ、猟兵諸君!」
誤魔化すように笑って、シェーラは猟兵たちを送り出す。
嗚呼、まわりの視線が痛い。
志崎キザシ
皆様、こんにちは。志崎キザシと申します。
3本目のシナリオになります。オープニングはコメディしてますが、リプレイがどうなるかは皆様のプレイング次第です。こっからだってシリアスにできるのがPBWの良い所!
それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
第1章 冒険
『突破難攻?状態変化だらけのお菓子迷宮』
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POW : トラップをも力任せに突破する
SPD : トラップ発動前に走り抜ける
WIZ : トラップを発動させないように慎重に進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●迷宮内部
学園の手配によって、一般生徒の立ち入りが禁止された迷宮に踏み込んだ猟兵たちを、甘い香りが包み込む。立ち止まって見回せば、とても迷宮の中だとは思えなかった。
入口付近は広い部屋になっていて、メルヘンチックな内装だ。壁紙はハートの意匠をあしらった淡いピンク色、床は磨かれた白い石のタイル。天井にはシーリングファンが回っていて、室温も快適に保たれていた。
部屋の中には清潔なテーブルクロスを敷かれたテーブルと揃いの椅子が、歓談の邪魔にならないように間隔をあけて何卓も用意されている。食器やカトラリーもセット済みで、お客様を迎える準備は万端だった。
そして壁際に並んだショーケースには、色とりどりの可愛らしいお菓子が陳列されている。勿論、各種ドリンクだって完備だ。
店員はいないが、どこからどう見てもスイーツビュッフェだった。
ダンジョンってなんだっけ。
首を傾げる猟兵たちは、甘い誘惑に抗いながらも迷宮の奥へと向かう。
ステラ・アルゲン
甘いお菓子がいっぱい……マカロンはあるのでしょうか?あっいえ、なんでもありません。少々甘いものに目がなくて。今はそれよりも任務を優先しなくてはなりませんね。
さて、私は本体である剣の複製を生み出してそれを先行させながら進みましょうか。
罠があれば剣が通った時に発動するでしょうし、何もなかったら罠はないと思います。
心配に越したことはないので辺りを注意深く見て【情報収集】しながら進みます。
もしお菓子の像にされた生徒がいたら罠の有無を確認後、安全な場所に移動できそうならします。私では彼らを治すことはできませんが他の仲間が治してくれるかもしれませんからね。
テフラ・カルデラ
お菓子の迷宮…なんて素敵な迷宮でしょうか!
それにしてもお菓子に変えられるなんて羨まし…じゃなくて助けなくては!
内部は本当にお菓子一色ですね…ちょっとつまみ食いしてもいいですよね?
野性の勘でトラップの場所を探り当てながら回避して進みます!(ちょっと引っ掛かりたい気持ちもありますが…!)
あれ?女子生徒さんです?あっ!そっちはトラップが…!?
急いでトラップから離れさせようとしますが間に合いません…というか勢い余ってわたしまでも一緒にトラップに突っ込んで…助けるどころかボクまで…お菓子…に…
(この後、なんやかんやあって何とか戻りました)
チャド・アランデル
【SPD】
うあああ、甘い物に引かれる後ろ髪・・・!
それにも負けずに僕は一気に走り抜けるよー!
【行動】
「スイーツビュッフェだなんて・・・ここが僕の楽園だったのかなー。」
思わず誘惑されそうなスイーツの未練を断ち切る為にも、全力で駆け抜けるよー!
移動中は野生の勘1、逃げ足1が役に立つかな・・・?
【移動中】
「そこにあるのに食べれない・・・! ここは楽園では無く地獄だったのかー!?」
泣いてなんかないやい、眼が潤んでるのは気のせいだいー!
「帰ったらスイーツビュッフェに行ってやるんだからなー!?」
●ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)、テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)、チャド・アランデル(キマイラのシーフ・f12935)
凛々しい風貌の麗人であっても、スイーツの誘惑には抗いがたいものがあるようだ。
「甘いお菓子がいっぱい……マカロンはあるのでしょうか?」
思わず口にしてしまった言葉に気付いて、ステラは恥じらいながら、誰に言うでもなく何でもありませんと取り繕った。ショーケースに吸い寄せられていた視線を戻し、軽く咳払いをする。
今はマカロンよりも、任務を優先しなくては。
気合いを入れ直して進もうとするステラだったが、彼女が足を踏み出すよりも早く、人影がステラの横をすり抜けていった。
テフラとチャドだ。
驚くテスラを置き去りにして、目を輝かせた二人はどんどん奥へ進んでいく。
「お菓子の迷宮……なんて素敵な迷宮でしょうか!」
「スイーツビュッフェだなんて……ここが僕の楽園だったのかなー」
テフラとチャドはショーケースに挟まれた通路を走る。
チャドは未練を断ち切るために、視界の端を流れていくスイーツを極力見ないようにしながらも、勘を頼りに罠を避けていった。
しかし一瞬、好物が視界に入った気がして目を奪われ、足がもつれて転びそうになる。
なんとか体勢を立て直したが、今のは危なかった。気を付けないと。
でも、
「そこにあるのに食べられない……! ここは楽園では無く地獄だったのかー!?」
チャドの瞳が潤んでいる気がするが、きっと気のせいだ。
頬に光るものが流れている気がするのも、きっと幻だ。
泣いてなんかないやい……!
「帰ったらスイーツビュッフェに行ってやるんだからなー!?」
一方のテフラは、ちゃっかり細長いベイクドチーズケーキをつまみ食いしていた。走りながらでも食べやすいものを選んでいる辺り如才ない。
ケーキを味わいながらでも、隣を走るチャドと同じように罠を回避できているのは経験の差だろうか。テフラの足取りは軽かった。
ちょっと引っ掛かりたい気持ちもありますが……!
邪な欲望は口には出さない。思うだけだ。
それでも期待に胸が踊る。
息切れではなく呼吸が荒くなる。
頬が上気したように赤く染まる。
いつしかテフラの口からは、笑い声が漏れていた。
声が聞こえてしまったチャドはテフラから離れて壁際に寄った。
そんな風に、気をそらされてしまったからだろう。
チャドが罠を踏んでしまったのは。
「あッ!?」
チャドが足元が沈んだ感覚にそちらを見れば、濃いバニラの香りがする霧が床のタイルから噴き出している。咄嗟に踏み込んだ足を引いても霧は止まらない。
チャドの上げた声にテフラが振り返った。霧に気付くとすぐさま動く。
テフラはチャドに身体ごと突っ込み、罠から離れさせようとするが間に合わない。
チャドの顔が絶望に歪む。
テフラの身体は期待に振るえる。
魔力を帯びたバニラの霧が2人の全身を包み、効力を発揮しようとした──その時だ。
テフラとチャドがやってきた方角から、空を裂いて飛来する剣があった。
流星の如き輝きを秘めた隕鉄の剣が、勢いを乗せた側面でテフラとチャドを払いのける。二人は通路に転がったが、お菓子に変化してはいない。
チャドは身体に異常がないのを確認し、安堵して大きく息を吐いた。テフラの方は残念そうだ。
「危ない所でしたね」
そう言って姿を現したのはステラだった。
ステラは宙に浮かべた十数本の剣を侍らせ、テフラとチャドの後をつけていたのだった。飛んできた剣もステラのものだ。
ステラは飛ばした剣を労いながら回収し、他の剣と同じように宙に浮かばせて従える。
いつの間にか、霧の噴出は止まっていた。
「立てますか? よろしければ、手をお貸しします」
「あ、ありがとうございますぅ!」
紳士な態度で手を差し出すステラに、猫を被ってテフラが礼を言い立ち上がる。外見や身長差もあって、騎士が姫を救う物語の挿絵のようだった。でも騎士と姫の性別は見た目とは逆だ。
違和感を覚えたチャドだったが、そんなことよりも今のうちにスイーツ食べちゃダメかな、怒られるかなと別のことに気を取られている。
いまいち締まらない三人だった。
三人が探索した範囲には、お菓子に変えられてしまった生徒は見当たらなかった。
しかし、収穫もある。
内装が変わっているものの、構造自体は図書館だった頃と変わらないようだ。これなら以前の地図がそのまま使える。勿論、構造が変わっているところがあってもおかしくないが、それでも指針にはなるだろう。
一歩、前進した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
大豪傑・麗刃
わたしは自他ともに認める変態ではあるが、さすがにお菓子に変えられる体験はしたくはないのだ。お菓子に変わればある意味完全変態ではあるけど。でもやっぱりパスなのだ。
さてトラップをどうこうしようなんて頭はないのだ。
やるのは全力で走り抜けて、発動しちゃったらぶっ壊す。
これだけなのだ。
人をお菓子に変えるとは!わたしは怒ったのだー!!
はぁぁぁぁぁぁ(それっぽい気合)
スーパー変態人を発動。
あとは一気に抜ける。
なんか罠があやしそうなそぶりを見せたら全部破壊する!!
●大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)
迷宮の入口で、怒りに震える義侠心に溢れた男がいた。
「人をお菓子に変えるとは! わたしは怒ったのだー!!」
麗刃が息を吐き出すようなそれっぽい気合の声をあげると、彼の髪が逆立ち、全身が金色に光りはじめる。更に麗刃の身体からは、徐々に圧力を増す衝撃波らしきものまで放たれていた。
なぜかはわからないが、そういうものらしい。
気合い入れてみたら本当になんか出た。
「昔から言うではないか。英雄は、いざという時は金色に光る、と!」
運悪く麗刃のまわりにいた猟兵たちは、言わねーよとかどこの世界の話だとか口々に突っ込む。しかし麗刃は堪えた様子もない。
なにせ自他ともに認める変態だ。耐性があった。
麗刃はざわつく周囲を気にもせず、充分に力を溜めてからユーベルコードを発動する。気合いを入れていた時間に応じて、麗刃の戦闘力が増強されていく。
放たれていた光と圧力も一層高まり、麗刃の側にいた猟兵が気圧されて後退った。
「それじゃ、一気に抜けるのだ!」
最初からトラップをどうこうしようなんて頭はない。
全力で走り抜けて、発動しちゃったらぶっ壊す。
これだけだ。
飛ぶように駆ける麗刃は、引っ掛かってしまった罠を全て踏み抜きながら突き進む。
成功
🔵🔵🔴
星舞夜・ユエ
お菓子は気になりますが、食べません。
元が書物であれば、食べてしまっては失われてしまうかもしれません。
食べても無事な生徒がいると言う事は、このお菓子が罠とは限りませんが、
警戒しておくに越したことは無いはずです。
また、周囲の警戒も怠らないようにします。
まず魔力の効果で変えられてしまったと思われる生徒達を探し、
ユーベルコードで解除を試みます。
解除に成功した場合、お話しが聞けそうなら、
当時のお話を聞かせて貰います。
また、動けそうなら、図書室から避難する様促します。
引き続き図書館の奥を探索しながら、時々お菓子などの罠の解除も試みます。
数か所解除したら、本のタイトルを確認し、共通点などが無いかを調べます。
アオイ・フジミヤ
甘いものは好きです!
でも原材料が人なお菓子はちょっと……やだな。
スィーツビュッフェは惹かれるけど、原材料が……ひと(ry
あ、シェーラさんだ、こんにちは。
どこかにホントのお菓子があったら、シェーラさんの分もお土産持ってこれたらいいな。
【WIZ】本当は、脳筋なので力づくで突破したいところだけど、私、ケーキにはなりたくないなぁ。ケーキは食べる側で。
此処って誰かが誰かを招待するためのお部屋だよね……フロアボスは誰かを待っているのかな。
ショーケースのお菓子にドリンク。気合半端ないもの。
招かれてない私はお菓子には不用意に触らない様に。
罠に引っかかりそうならKuuで相殺できたらいいな。
ライヴァルト・ナトゥア
(ユーベルコードで数百匹の狼を召喚して)
いやぁ、どこをみてもお菓子かぁ。すごく心惹かれる光景ではあるけど、罠があるなら笑えないな
さぁ、お前達、存分に食らっていいよ
(狼達に命じて行先のお菓子を全て食らって貰う。なお、彼らの腹は骸の海に繋がっているので腹は全く膨れないがこれも一種の漢探知?)
全部が全部終わったなら、確かにスイーツバイキングにでも行きたいなぁ
(生徒を発見しても喰わないように注意しつつ、見つけたならば、その周囲をくり抜いて助けられそうな人に協力を要請する)
すまないがあとは任せた。治癒系はどうも苦手でね
でもまぁ、そこそこの数にはなったかな?やっぱり数は偉大だね。
●星舞夜・ユエ(天球儀の錬金術師・f06590)、アオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)、ライヴァルト・ナトゥア(巫女の護人・f00051)
「お菓子は気になりますが、食べません」
きっぱりと言い切ったのはユエだ。
この迷宮が図書館から変化したものだというのなら、ショーケースに並ぶお菓子も元は書物だったのだろう。食べてしまっては本が失われてしまうかもしれない。それに、この美味しそうなお菓子自体が件の罠かもしれないのだ。
食べても無事な生徒がいることは知っているが、警戒しておくに越したことはない。
「どこに罠があるかはわかりませんが、まずはお菓子の像に変えられてしまった生徒達を探しませんと」
ユエは分厚い眼鏡の奥の金の瞳を光らせて、けわしい表情で周辺の様子に気を配る。
そんな、張り詰めた雰囲気のユエの言葉に頷いたのはアオイだ。
「此処って、誰かが誰かを招待する為のお部屋だと思うの。招かれてないのにお菓子をいただいてしまうのは、ちょっと……」
マイペースにショーケースを物色していたアオイは、用意されているお菓子や飲み物が、とても丁寧に作られていることに気付いていた。甘いものは好きだが、客人ではないのだから不用意に触るのは気が引ける。
それに、原材料が人かもしれないと思うと……。
怖い想像をしてしまって、アオイは恐怖を誤魔化すように言った。
「うん、早く生徒さんを探そう!」
「だったら、俺のユーベルコードが役に立つんじゃないかな」
アオイの言葉に応えたのはライヴァルトだ。
ユエとアオイの顔に疑問が浮かんだのを見て、ライヴァルトは説明する。
「俺のユーベルコードなら数百匹の狼を召喚できる。狼達に命じて、生徒を見付けさせれば良い」
どこを見てもお菓子があるのはすごく心惹かれる光景ではあるけど、罠があるなら食べられないし笑えない。
手っ取り早く終わらせてスイーツバイキングにでも行きたいし、それなら数を頼んだ方が効率がいい。
ユエとアオイの了承を得て、ライヴァルトは詠唱を始める。
「──汝らは影の映し身、地に満ちたる狼の軍勢、意に従いて万里を駆けよ。《複製召喚・天地満たす狼の軍勢》」
ライヴァルトの左手から漏れ出た力を使い、現れたのは無数の狼だ。
呼び出された狼たちは瞬く間に部屋を満たし、溢れ、通路を疾走してすぐさまお菓子の像を見つけ出す。
戻ってきた狼の報告を受けて、ライヴァルトはユエとアオイを二体のお菓子の像の元まで案内した。あっという間の出来事に、連れてこられた二人は目を丸くしている。
「すまないがあとは任せた。治療系はどうも苦手でね」
エスコートを終えたライヴァルトは、皮肉気な口調とは裏腹な柔和な微笑みを浮かべると、手元の地図に狼たちが見つけたお菓子の像と罠の位置を書き込んでいく。
ユエとアオイはしばらく呆然としていたが、混乱から立ち直ると動き出すのは早かった。二体ある像を各々で調べていく。
ユエはお菓子の像を解析して得られた情報から、罠の術式と全く同じものを構築していた。像に向けて杖を構えると天球儀が回りだし、淡い光を発する。
「相殺します」
ユエの宣言と共に杖からミレナリオ・リフレクションが放たれ、片方の像に当たると罠の術式を解いていく。お菓子の像から光がほどけて空間に散る。
お菓子化の術式が解除されると、像にされていた女子生徒が解放されて足元から崩れ落ちた。ユエが慌てて確認するが、気を失っているだけのようだ。怪我はない。
これではお話しは聞けそうもありませんね、などと口にするユエだったが、その顔は女子生徒を助け出せた喜びでほころんでいた。
生徒にかけられた術式を無効化したいのだから、アオイがやろうとしていることも根本的にはユエと同じだ。
ただしアオイはユエよりも少しばかり脳筋だった。
像を調べても罠の術式の詳細がわからず、困り果てたアオイは肩のマリモに話しかける。
「やれそう? ……うん、じゃあお願いね。私の”海”、全部流そう」
アオイの言葉と共に、肩に乗ったマリモ──UDC、”海の鬼”が具現化した。
翡翠や瑠璃色の波となった”海の鬼”は、術式がわからないのなら力尽くで突破すればいいとばかりに通路一杯に広がり、お菓子の像に纏わりつく魔力を全て押し流す。
水飛沫が跳ねて、お菓子から人間の身体に戻った男子生徒の頬にかかった。男子生徒は呻き声を漏らすが起き出す気配はない。
マリモに戻った”海の鬼”を再び肩に乗せて、アオイは仲間を振り返った。
「やった、成功したよ!」
ずぶ濡れになったユエとライヴァルトと狼たちに無言で見つめられて、アオイはすぐさま謝罪した。
特殊な水だからか、乾くのが早かったのは不幸中の幸いだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
コイスル・スズリズム
【WIZ・アドリブ大歓迎】
すずね
甘いものはもうとにかく大好き
迷宮がなくなっちゃうのはもったいないね
だけど
学園の問題とあっては
生徒としてしっかり対応させて貰うよ
ツインテをおろしてお仕事モードを
残像をまず出す
これを囮として使う
残像が罠にひっかかった場所を避ける
情報収集でフロアを確認
ふむ、地図を使えるんだね
ならば話は簡単、
第六感と地図を頼りにトラップをじっくりとくぐりぬける
罠に引っかかった生徒がいたら
祈り優しさを込めた
シンフォニック・キュアで、戻らないか試す
罠にかかったら
袖口に物を隠すで隠してた一冊を取り出して
慌てて高速詠唱を範囲攻撃で
二回攻撃で罠を解除
この奥には
もっと素敵な甘いものがあるといいねー
●コイスル・スズリズム(人間のシンフォニア・f02317)
「すずね、甘いものはもうとにかく大好きっ!」
陳列されたお菓子に目を輝かせて、コイスルはショーケースに張り付いていた。
しかし、しばらくすると切なげな息を吐いてお菓子から離れる。
「甘いものがたくさんある迷宮がなくなっちゃうのはもったいないけど、学園の問題とあっては生徒としてしっかり対応しなきゃ! ……すごくもったいないけど……」
あちらを立てればこちらが立たない。難しい問題だった。
コイスルはもう一度深いため息を吐くと、ツインテールを解いてお仕事モードに切り替える。普段とは違った髪型に変えることで大人っぽい雰囲気を醸し出し、デキる女! な気分になってきた。なお気分だけで特殊な効果はない。
エア眼鏡をくいっと押し上げて、コイスルは先行した猟兵たちが得た情報を確認する。
「ふむ、地図を使えるんだね。罠の配置も罠に引っかかった生徒の位置もわかってて、あとは元に戻してくだけってこと? なんだ簡単!」
コイスルは手元の地図と通路を見比べ、機嫌良く鼻歌を歌いながら迷宮を進んでいく。
道中でお菓子の像に変えられた生徒を発見すればシンフォニック・キュアで癒し、罠にかかりそうになる度に袖口から魔導書を取り出して手早く解除する。鮮やかな手際だった。
さすがすず、デキる女! と浮かれて自画自賛するコイスルだったが、地図には描かれていないドアを見付けて足を止めた。
金属製の大きなスイングドアには窓も何もなく、何度確かめてみても地図には載っていない。以前の迷宮にはなかった物のようだ。
コイスルは不思議そうにドアを観察していたが、やがて、
「この奥には何があるのかなぁ。もっと素敵な甘いものがあるといいねー?」
なんて楽観的な言葉を口にすると、気軽な調子でドアを押し開けた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『蜜ぷに』
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POW : イザ、ボクラノラクエンヘ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【勇者ぷに 】と【戦士ぷに】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : ボクダッテヤレルプニ
【賢者ぷに 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : ミンナキテクレタプニ
レベル×1体の、【額 】に1と刻印された戦闘用【友情パワーぷに】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●厨房
ドアを開けると、そこは厨房だった。
何口も並んだコンロには火がつけられていて、上に乗せられた銅製の鍋からはベリー系の甘酸っぱい匂いが漂っている。時々勝手にヘラが鍋に突っ込んでいって、焦げ付かないようにかき混ぜていた。
壁際にあるオーブンも稼働中で、中ではシュー生地が膨らんでいくのが見える。生地が焼きあがるとひとりでに扉が開き、何故か宙に浮いた絞り袋がカスタードクリームを注入していった。
他にも様々な調理器具が、人の手を借りずにお菓子を作っていた。どうもスイーツビュッフェで供されていたお菓子はここで作られているらしい。完成した宝石のようなスイーツは、自力で皿に乗るとその場から姿を消していく。迷宮に並んでいたショーケースに転移したのだろうか、陳列まで全自動だった。UDCアース出身の猟兵なら、クレイアニメでも見ているようだと思ったかもしれない。
そして奥の調理台では、ピンク髪の幼い少女が、持て余すような大きさのハンドミキサーでクリームを泡立てていた。少女の隣にはヤギがいて、何かメェメェ鳴いている。どうやら少女を応援しているようだ。
少女は猟兵たちにも気付くこともなく、スイーツ作りに夢中だった。時折かたわらに置いたレシピを確認しては頷いて、おぼつかない手つきで調理を進めていく。なんだか微笑ましくて猟兵たちも和んだ。
しかし、少女は気にしなくてもヤギは見過ごさなかった。
厨房に入ってきた猟兵たちに気付くとメ、メ? と二度見した後、抗議するように激しく鳴く。何となく文句を言っているのはわかるのだが、意味はわからない。猟兵たちは困惑して顔を見合わせた。
そんな様子に苛立ったのか、ヤギはますます激しく鳴いた。そして、おもむろに前脚で冷蔵庫を開ける。
中から出てきたのは蜜ぷにだった。
それも一匹ではない。開けられた冷蔵庫からぞろぞろと、数えきれないほどの蜜ぷにが列をなして出てくる。
ヤギはメェメェ鳴いて蜜ぷにたちの注目を集めると、前脚で猟兵を指し示した。
メェメェ。
(ぷにぷに)
メェメェ!
(ぷにぷに!)
ヤギと蜜ぷにの間に熱い交流があったようだ。蜜ぷにたちは任せろとばかりにぽよんぽよんと大きく跳ねた。ヤギは目に熱いものを浮かべながらビシッと敬礼を返す。
ヤギに見守られながら、蜜ぷにたちは猟兵の方へ向き直った。蜜ぷにのそれぞれが熱い思いを胸に秘め、敵を目指して一目散に突き進む!
猟兵たちは戦意も露わに向かってくる蜜ぷにに、戦いが避けられないのだと悟って武器を構えた。なんでこの蜜ぷにたちすごくやる気なのなんて聞ける雰囲気ではなかった。
ともあれ。
食材として保管されていた蜜ぷにが、猟兵たちに牙(ない)を剥く──!
チャド・アランデル
「おー、なんておいしそ…じゃなくて危なそうなモンスターなんだー!」
僕は探索の時に罠に引っかかっちゃったから頑張るねー。
SPDを生かして遊撃隊を目指すよー!
行動
攻撃はユーベルコード【ガチキマイラ】を使用するよ。
「隙を見せたねー。イタダキマース!」
本体はお任せして、召喚された敵の排除に動くよ。【勇者ぷに】と【戦士ぷに】は本体に攻撃出来たら解除されるみたいだから、回避に専念するよー!【賢者ぷに】は隙待ちだね。攻撃出来るタイミングで一気に接近するよー。【友情パワーぷに】は多くなったら厄介そうだね。積極的に数減らすよー!
その他
「甘味は幸せの味ー!齧らせろー!」
行きは甘味食べてないから飢えてるのだー!
アオイ・フジミヤ
【真の姿】
大きな6枚の瑠璃色の翼を背負い
黒髪に翡翠色の眼の色に変わる
わ、いい匂い……夢の国だね、全自動で甘いもの作ってくれるなんて。
あの子がこのスイーツビュッフェの主かなぁ。
すごくかわいい、誰か待ってるのかな?
え、蜜ぷに可愛いんですけど……かわいいんですけど!(2回言った
この子達は食べられるのかな。(真顔)
ねえ、一匹つれて帰ってもいいかな?(マリモをみるとぷい、とそっぽを向かれた)
戦うしかなさそうだね、うん。
やる気の相手には真面目に立ち向かわないと……(でも顔は笑ってる)
鈴蘭の嵐で集団攻撃を中心に、Naluで自分の身を護る。
可愛いけどどんな攻撃してくるかはわからないから油断はしない様に。
星舞夜・ユエ
机上にあったお菓子は、こちらでちゃんと作られたものだったんですね。
ちょっと食べておけば良かったかもしれません。
女の子と、傍にいる仲良しのヤギさんは気になりますが、
とりあえず密ぷにさんを何とかしましょう。
かわいいので、とても悲しくはありますが……。
私は近距離戦が得意とする仲間の、邪魔にならない程度の後方から
ウィザードミサイルで援護します。
狙いは前衛の壁を抜けて来たぷにや、前衛の方の届かない位置にいるぷにです。
イレギュラーとして、友情パワーぷには、数字が大きくなる前に攻撃。
数が減ってきたら、弱ってそうなぷにを狙います。
回復は、よっぽどでなければ、私は後回しでかましません。
皆さん宜しくお願いします。
●アオイ・フジミヤ、チャド・アランデル、星舞夜・ユエ
蜜ぷにたちはふるふると透き通った身体を震わせながら、猟兵たちに迫る。
しかし蜜ぷにがやる気を見せるのとは反対に、猟兵たちの中には和んでしまう者も多かった。例えばアオイだ。
「え、蜜ぷに可愛いんですけど……かわいいんですけど!」
繰り返してしまうほどの衝撃だったのか、アオイは頬を紅潮させて蜜ぷにたちを見つめている。つれて帰ってもいいかな? などと漏らしてしまい、肩のマリモにそっぽを向かれたことにも気付かない。
チャドもチャドで、蜜ぷにから漂ってくる甘い香りに気を取られていた。
「おー、なんておいしそ……じゃなくてなんて危なそうなモンスターなんだー!」
蜜ぷにはモンスターだったと思い出して、チャドは慌てて口元を拭う。
なにせ道中ではたくさんの甘味を目にしたものの、何も食べていないのだ。飢えているのも当然だった。
一方でユエは、厨房で作られるスイーツを惜しむように見ていた。
「机上にあったお菓子は、こちらでちゃんと作られたものだったんですね。ちょっと食べておけば良かったかもしれません」
転送されていくスイーツを名残惜し気に見送ってから、ユエは蜜ぷにに向き直る。
お菓子や女の子やヤギも気になるが、今は蜜ぷにの対処が優先だ。
「かわいいので、とても悲しくはありますが……」
ユエは駆けだしとはいえ猟兵で、蜜ぷには愛らしい見た目をしていてもオブリビオンだ。両者の間には越えることのできない溝がある。
愛くるしい蜜ぷにの姿を直視しないよう、ユエは目を逸らしながらユーベルコードを構築していく。
甘い空気を焦がしながら生み出された魔法の矢は、照準が定まっていなくとも進軍する蜜ぷにたちの一角に着弾し、炎を撒く。キャラメルのような香りが厨房の匂いに混ざった。
攻撃を受けた蜜ぷにたちは狼狽えたように大きく震えると、自分たちのまわりにある食器棚の引き戸や冷凍庫の扉を開けだした。
出てきたのは額に1と刻印された友情パワーぷにだ。数を減らしてもおかわりが用意してあるらしく、続々と群れに加わっていく。圧倒的な物量だった。
しかし、どんどん増えていく蜜ぷに軍団を前にして、目をキラキラさせている者がいる。チャドだ。
「もう我慢できないー! イタダキマース!」
チャドは利き手をライオンの頭部に変形させると、蜜ぷにに踊りかかる。
ライオンの口を開かせて先頭にいた一匹を丸のみにすると、立ち止まって喜びに震えた。自前の口で叫ぶ。
「んー! 甘味は幸せの味ー!」
ライオンで食べても味覚はあるようだ。もしくは『食べた』という行動がチャドの脳を誤認させたのかもしれない。なんにせよ幸せそうな顔だった。
チャドが止まったのは叫んだ一瞬だけで、またすぐに動き出す。食べたりないようで、蜜ぷにを捕まえて自分の口で齧ったり、ライオンの頭部でそのまま飲み込んだりと暴れまわっている。
蜜ぷにたちも、新たに増えた賢者ぷにに指揮を任せて戦うが、食べられるのを嫌ってか妙に動きが散漫だ。もともとふるふるしていたが今はもっと小刻みに震えていて、怯えているようにも見える。
チャドの奮闘によって、行進していた蜜ぷにたちは行く手を阻まれていた。後ろからは友情パワーぷにや賢者ぷにが押し寄せていて戻れない。
「……戦うしかなさそうだね、うん。やる気の相手には真面目に立ち向かわないと……」
戦闘音に気付き、やっと衝撃から立ち直ったアオイが呟いた。が、やっぱり蜜ぷにを見る瞳には熱がこもっているし顔は笑ったままだ。よっぽど気に入ったらしい。
アオイは蜜ぷにと敵対することに抵抗を感じながらも、なんとか七節棍を構えた。アオイが念じると棍が煌いてほどけ、鈴蘭の花びらへと変わった。花弁は蜜ぷにの一群を襲い、纏わりつき、傷付けていく。
蜜ぷにが倒れるたびに、アオイは目を背けたいのをぐっと堪えた。チャドが抑えてくれているとはいえ、どんな攻撃をしてくるかわからないから油断はできない。
多少は減らせたとはいえ、蜜ぷにたちはまだまだ健在なのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
大豪傑・麗刃
いろんな色のゼリーっぽいのに顔っぽい線?
なんともわけのわからないやつなのだ!
わたしもよくわけがわからないと言われるが、ここまでではないのだ!
わけのわからないやつへの対処法は単純にいくことなのだ!
すなわち斬るに限るのだ!
右手に刀!左手に脇差(と呼ぶにはちょっと大きすぎる剣)を持ち、二刀流で斬って斬って斬りまくるだけなのだ!
剣刃一閃!二刀流で二閃!2回攻撃で四閃なのだ!
これを繰り返せば八閃、十二閃、十六閃……あとはたくさん!
こんだけ斬れば勇者や戦士や賢者とやらが出ようが友情パワーとやらが出ようが何も問題ないのだ!
7匹斬ったらばよえ~んなのだ!
わけわからないがどっかからそんな言葉が聞こえてきたのだ!
ステラ・アルゲン
甘い誘惑がそこかしこに……いえ、ダメです。この任務が終わるまでは手を出してはいけません。……帰ったら甘いものを食べに行きましょう。
奥にいるあの少女が気になりますが、まずはこの敵を倒さなくては。可愛い外見をしていてとても斬りづらいですが、敵であることは変わりないですからね。
剣を【なぎ払い】、【衝撃波】を起こして纏めて敵を倒せないか試してみます。合体するようであればそのまま合体させ、【流星雨】を撃ち込んで一網打尽に。
申し訳ありませんが、これも猟兵の務めです。倒したぷににそう語りかけながらも攻撃の手を緩めない。
「甘い誘惑がそこかしこに……いえ、ダメです。この任務が終わるまでは手を出してはいけません」
厨房で今も作り出されているお菓子も目の前の蜜ぷにも、ステラの目には全てが魅力的に映っていた。
しかし、そんな誘いに乗るわけにはいかない。ステラは迷いを振り払うべく剣を抜く。
落ち着こうとしているステラに構わず、騒いでいるのは麗刃だ。
「いろんな色のゼリーっぽいのに顔っぽい線? なんともわけのわからないやつなのだ! わたしもよくわけがわからないと言われるが、ここまでではないのだ!」
麗刃はなぁそこの人、とたまたま隣にいたステラに同意を求めたが、ステラは返答に窮して曖昧な笑みを浮かべる。
どちらがわけがわからないかというなら隣の彼の方なのだけれど、素直に伝えてしまうのは礼儀に欠けるだろう。
だって、敵とは言え蜜ぷには可愛い外見をしているし。
隣の彼は、その……表現に困るデザインの服を着ているし。
どうしよう。
「……それよりも今はこの敵を倒さなくては!」
結局勢いで誤魔化すことにして、ステラは剣を構えた。
ステラの言い分に納得して、麗刃も腰の刀と脇差(と呼ぶにはちょっと大きすぎる剣)を抜く。緊張感がなくなるような敵だが、そういえば今は戦闘中だったのだ。
気を取り直した麗刃は蜜ぷにたちを見据えると、高らかに言い放つ。
「わけのわからないやつへの対処法は単純に行くことなのだ!」
すなわち、切るに限るのだ。
麗刃は蜜ぷにの集団に突っ込み、両手に持った刀と剣で乱舞する。
剣刃一閃。
二刀流で二閃。
続けて四閃、八閃、十二閃、十六閃!
麗刃の剣は滑らかに振るわれ、見た目や普段の奇行とは裏腹な彼の名前を体現していて麗しい。大豪傑家に代々受け継がれてきたのだろう才覚の片鱗が見える。
閃く二刀に翻弄される蜜ぷには、刃に触れた途端に切断されて蜜をこぼした。濃厚な甘い香りが広がって麗刃の鼻をくすぐる。
「これだけ斬れば勇者や戦士や賢者とやらが出ようが友情パワーとやらが出ようが何も問題ないのだ!」
七匹斬ったら呪文のようなものが聞こえてくるようになったが、わけのわからないやつを斬っているのだからきっとそんなこともあるのだ。
麗刃だけでなく、ステラも蜜ぷにと対峙していた。
自身そのものである剣を水平に構えて大きく薙ぎ払い、起こした衝撃波で纏めて蜜ぷにたちを倒している。
しかし、どうしても打ち漏らしてしまうものもいた。友情パワーぷにだ。戦闘用と冠するだけのことはあり、耐久力が他のぷによりも高いらしい。
吹き飛ばされた友情パワーぷにはうごうごと一カ所に寄り集まり、互いにのしかかるようにして合体してしまう。額の数字が蠢いて二桁に変わり、それまで微塵もなかった気迫が、ひとつになった友情パワーぷにから放たれているのを感じる。
だが、合体することすらステラの思惑の内だ。
ステラは剣先を大きくなった友情パワーぷにへと向けると、口を開く。
「降り注げ、流星たちよ!」
ステラが唱えると同時、天から星が流れた。
それも一つではない。二つ、三つと次第に数を増していき、ついには数えるのが困難になるほどの星の豪雨だ。
ここが迷宮だなんてことを忘れさせるほどに降りしきる星は、美しい尾を引きながら次々と友情パワーぷにに着弾する!
ぷにのやわらかい身体でも、流星の雨は受け止めきれない。いくつもの星が友情パワーぷにを打ち、めり込み、更には突き抜けていく。
雨が止んだ後に残るのは、水たまりだ。蜜で出来たそれは合体した友情パワーぷにの大きさに比例して、広く床を侵食している。
「申し訳ありませんが、これも猟兵の務めです」
残った蜜には、後ろ髪が引かれる思いだったけど。ステラは振り切って次のぷにに向き直った。
帰ったら甘いものを食べに行きましょう、なんて決心は、胸中で呟くに留めておく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ライヴァルト・ナトゥア
いや、何というかどうにもやりづらい相手ではあるなぁ
(苦笑して)
ともあれ、人に害を及ぼすものを許容してはやれない。せめて苦しまぬよう、一息に消し飛ばそう
(左手の封印を限定解除、刻印が浮かび上がり、左手に巨大な青のオーラを纏う)
総てを消し去る天狼の爪撃をその身に受けよ
(爪を横薙ぎにふるい、自分から500m以内の範囲にいる蜜ぷにを纏めて消しとばす(可能なら調理器具もまとめて吹き飛ばす))
強いんだが相変わらず扱いが難しいな。未だ精進が足りない、か
(青いオーラを引っ込めて嘆息する)
加減が効かないからスイーツも纏めて吹き飛ばしちゃったなぁ。食えるわけじゃあないけどなんだか勿体無いことをしている気がするよ
●ライヴァルト・ナトゥア
「いや、何というかどうにもやりづらい相手ではあるなぁ」
幾分と数を減らしたものの未だ残っている蜜ぷにたちを見て、ライヴァルトは困ったように笑う。しかし、すぐに表情を引き締めた。
「ともあれ、人に害を及ぼすものを許容してはやれない。せめて苦しまぬよう、一息に消し飛ばそう」
言うと、ライヴァルトは左腕を掲げる。
「過去、未来、現在。その総てを斬り払おう。万象一切、塵すら残さぬ一閃にて──」
持ち上げた手に施された封印を限定解除。刻印が浮かび上がり、封印から溢れ出た青のオーラが左手に纏わりつき、手から伸びて緩やかに輪郭を形作る。
徐々に全貌を現すそれは、天にも届かんとするほどの狼の爪だ。
「──《限定解放・万象断裁せし蒼爪の一閃》」
厳かに宣告して、ライヴァルトは天狼の爪を横薙ぎに振るう。
巨大な蒼爪が厨房を横断し、残存していた蜜ぷにたちを纏めて薙ぎ払っていく。設えてあった棚やオーブンも例外ではなく、爪の軌道上にあったものは根こそぎだ。
残るのは、無残な爪痕だけだった。
「強いんだが、相変わらず扱いが難しいな。未だ精進が足りない、か」
再び左手を封印しなおして、ライヴァルトは嘆息する。
今の一撃で蜜ぷには一掃できたが、厨房の設備まで傷付けてしまっていた。迷宮だったから良かったが、これが例えば故郷の大岩だったら……と、そこまで考えて止める。
俺が、この力の手綱をしっかり握ればいいだけの話だ。
もう少し修練の時間を増やすべきか、などとまた考え込みそうになって、気付いた。
奥にいるピンク髪の少女からの、痛いほどの視線。
怒気をはらんだ眼差しが、猟兵たちを見据えている──!
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『ライブラリーマスター・シャルロット』
|
POW : おしおきディクショナリー
単純で重い【鋼で強化された分厚い辞典の角】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ふたりの夢の王子様
自身が戦闘で瀕死になると【白馬に乗った王子様】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ : やぎさんゆうびん
【大量の子ヤギ】の霊を召喚する。これは【噛みつき】や【タックル】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ミモザ・クルセイル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ライブラリーマスター・シャルロット
厨房に止めを刺したのは天狼の爪だったが、それ以外にも戦闘の余波で、部屋の中はあちこちが悲惨な状態だ。
冷蔵庫は焼け焦げ。
調理台には歯形が付き。
食材は切り刻まれ。
壁や床にも刀傷があり。
陶器や硝子の破片が散乱し。
そして、厨房全体を横一文字に薙ぎ払った痕がある。
無事だったのは、奥にいたピンク髪の少女とヤギ、少女が離さずに持っていたレシピぐらいのものだ。
少女は大きな瞳に涙を湛え、不機嫌そのものの表情で猟兵たちを睨みつけている。
「何、してるの……?」
少女のか細い声は、離れている猟兵たちにも不思議とはっきり聞こえた。
怒りに震える、悲鳴のような声だ。
「……せっかく、王子さまの……ために。がんばって……じゅんび、してたのに……!」
途切れがちだが、懸命に少女は主張する。
ヤギが気遣わしげに少女の足元に寄り添った。
「いじわる、しないで──!」
これだけは守ったレシピ本を抱きしめて、少女が悲壮に叫ぶ。
ライヴァルト・ナトゥア
不味いな。敵がこんな幼い少女ならば、もう少しやりようもあったかもしれない
(妹と同年代と思われる少女を見て、嘆息する)
とは言え、やってしまったものは仕方がない。後片付けまでやって一流だ。可哀想だが、これは過去の残滓、割り切ろう
(若干重い体を動かして、ユーベルコードを起動する。基本的には牽制と陽動をメインに、速さを生かして戦場を駆け巡る)
少女の夢を破砕するのは心が痛いな
(白馬の王子様と斬り結ぶ。本体と同じ攻撃手段、本か?)
なぜ白馬の王子が本で攻撃してくるんだ。なぜかすごく硬いし!
(意外に強い白馬の王子に苦戦しつつも、渾身の一撃を叩き込む)
お話には終わりがあるものだ。それを教えるのも大人の役目だろう
大豪傑・麗刃
よくわからないが、生徒たちをお菓子に変えたのはおまえなのだな!
王子とかわけわからないのだ!わたしも普段からわけわからない言われるが、ここまでではないのだ!
なんか怒っているみたいだけど!
わたしも怒ったのだー!
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(それっぽい気合)
(スーパー変態人再発動)
わたしは自他ともに認める変態だが、だからこそ相手の見た目が幼女だからといって全く容赦はしない!
変なコトすゆ子は麗ちゃんぶつじょ!
あとは右手に刀と脇差(と呼ぶには大きすぎる剣)を両方握り!左手には斧!んでもって真正面から突っ込んで辞典だろうが王子様だろうが子ヤギだろうが刀と脇差(と呼ぶには略)と斧で斬って斬って斬りまくるのみなのだ!
チャド・アランデル
【心情】
うう…なんとなく罪悪感感じるなー。
でも、被害も出てる訳だし止めないといけないよねー。
あのレシピ本って、守ったって事は大切な物なのかなー?
【行動】
【ガチキマイラ】を使用します。
攻撃を避けながらガチキマイラでの回復という戦い方です。
戦闘は野生の勘1、逃げ足1の技能を活用して回避します。
立ち位置としては遊撃の位置で、隙を見つけての攻撃や増えた敵の排除をします。
可能なら、盗み攻撃1を活用してレシピ本を奪う事を狙います。
【その他】
「うー、そのー、ごめんねー。王子さまの為だったんだねー。」
「王子さまの為ならどうして関係無い人をお菓子にしたのー?王子さま悲しまないー?」
(アドリブ歓迎です)
●ライヴァルト・ナトゥア、大豪傑・麗刃、チャド・アランデル
少女の視線を受けて、ライヴァルトは嘆息する。
「拙いな、敵がこんな幼い少女ならば、もう少しやりようもあったかもしれない」
自身の妹と同年代だろう少女を見返して、顔をしかめた。
とは言え、やってしまったものは仕方がない。後片付けまでやって一流だと考えているライヴァルトは、先程の一撃で若干重くなった身体をどうにか動かした。荒れた厨房を駆ける。
少女の夢を粉砕するのは心が痛いが、お話には終わりがあるものだ。それを教えるのも大人の役目だろう。
走りながらライヴァルトは、再び左手の封印を限定解除した。青のオーラが全身を包み、今度は身体全体に蒼狼の外装を纏う。
右手は鎌と一体化し、左手は狼の爪が伸びる異形となったライヴァルトは、寿命を支払いながら戦場を駆け巡る。
爪を振るって少女に斬撃を飛ばし牽制としながらも、動き回って反撃を許さない。
少女は迫る爪撃にその身を晒され、悲鳴を漏らしながら転がり回っている。
少女の危機に、ヤギが唸り声をあげた。ヤギの小さな身体からは想像もできないような低い獣の雄叫びが戦場の空気を揺らし、そして魔術を行使する。
魔術で召喚されたのは、白馬に乗った貴公子然とした風貌の少年だ。
まるで王子様のような少年は馬を巧みに駆り、ライヴァルトめがけて突撃してくる!
凄まじい勢いで突進してくる白馬を止めたのは、金色に輝く麗刃だった。
麗刃は、今にも激突しそうだった白馬とライヴァルトの間に飛び込んで白馬を受け止める。王子の表情が驚きに歪み、慌てた様子で手綱を引くが遅い。
白馬が後退するのを見逃さず麗刃が畳みかける。強化された握力で刀と脇差(と呼ぶには大きすぎる剣)を諸共に掴み、そのまま前のめりに抜き放つ!
一度に二閃を刻まれ、白馬が大きく嘶いて煙のように立ち消える。王子もいなくなっていた。
麗刃は苛立ちのままに口を開く。
「王子とかわけわからないのだ! わたしも普段からわけわからない言われるが、ここまでではないのだ!」
思えば、さっきのカラフルなのもわけわからなかった。
きっとそういうダンジョンなのだと思えば納得もできるが、だからって許せるかというと話が別だ。
「わたしは自他ともに認める変態だが、だからこそ相手の見た目が幼女だからといって全く容赦はしない! 変なコトすゆ子は麗ちゃんぶつじょ!」
麗刃は刀と脇差を握っているのとは逆の手で、無骨な斧を持って走り出す。その勢いを乗せて、、少女を頭からカチ割ろうと斧を大上段に振りかぶった。
少女は涙目になりながら手にしたレシピ本で受ける。カラフルな装丁で頭の悪そうなポップな文字が躍るレシピ本はしかし、なぜか鋼で強化されていて分厚く、傾いて振り下ろされる斧の刃を滑らせた。麗刃が勢いあまってたたらを踏む。
「へんじゃ、ないもん……っ。……ずっと、まってる……ん、だから……!」
斧の一撃を退けた少女が、麗刃を睨みつけて必死の形相で言い募る。
図書館のような迷宮で道に迷って、泣いて叫んで歩きまわって疲れ果てて眠って。
そうしていたらヤギさんに出会って。
わたしもヤギさんも絵本が大好きで、だから、わたしみたいなかわいそうな女の子は王子様が助けてくれるんだって笑いあったの。
だってどの絵本にだってそう描かれてる。
そりゃあちょっとは、最後までかわいそうなままのお話しもあるけど。でも。
──わたしだって、めでたしめでたしで終わりたい。
「……まってたら……王子さまが、むかえに……きて。くれる……ん、だもん……!」
だから、歓迎の準備をしていたのに。台無しだ。
少女の大きな瞳から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちる。
「うー、そのー、ごめんねー。王子さまの為だったんだねー。でも、王子さまの為ならどうして関係ない人をお菓子にしたのー? 王子さま悲しまないー?」
チャドが涙を流す少女にそっと寄り添って、宥めながら言う。しかし少女はきょとんとして首を傾げた。チャドも驚いて、同じように目を見開いて少女と見つめ合う。
沈黙が流れ、少女の様子を油断なく観察していたライヴァルトが疑問を抱く。
なんだ、少女の反応は。
まるで、何も知らないような。
……そういえば蜜ぷにに指示を出していたのは誰だった?
まさか──!
急いで目当てのものを探す。いた。
ヤギが、苦々しげな顔で少女を見ていた。
「ヤギがオブリビオンの本体だ! 気を付けろ!」
咄嗟に叫んだライヴァルトをひと睨みすると、ヤギはもう一度雄叫びを上げて白馬と王子を召喚する。そして、もう用はないとばかりに少女に向かって突撃させた!
警告と咆哮。そして蹄の音を耳にして、キマイラの血がチャドを動かした。反射的に少女を抱きかかえ、飛び込むようにして一回転。すぐさま少女を庇って振り返る。
同時、それまでチャドと少女がいた場所を王子を乗せた白馬が駆け抜けた。白馬はチャドの目の前を通り過ぎ、しばらく行ってから身をひるがえして再度少女を狙う。
「やらせるわけないだろー!」
構えるチャドの声には怒りが混じっていた。
だって、あんなに仲が良さそうに見えたのに、なんでこんなことができるんだー?
答えはでない。でも敵は待ってくれない。
白馬が迫る。
「なら、戦わなきゃなー!」
チャドは手をライオンの頭部へと変形させて白馬を迎え撃つ。身を屈めて白馬の視界から姿を消すと、一瞬後には飛び上がって白馬の首にライオンを噛み付かせた。そのまま力任せに引きちぎる。
速度の乗った身体を止められず、喉を抉られた白馬がチャドの横を抜けていく。そのまま白馬は空気と混じるようにして溶けて消えた。
白馬の消滅を見届けて、チャドは改めてヤギに向き直る。ヤギはそれまでの愛くるしい演技を完全に脱ぎ捨てて、見下すように少女と猟兵たちを眺めていた。
示し合わせるでもなく、わかる。
これが元凶だ。
猟兵たちは一斉に、ヤギに向かって武器を構える──!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
星舞夜・ユエ
こんな小さな子が、この騒動の犯人とは。
心苦しくはありますが、実害が出ている以上、このままにはしておけません。
いじわるしてごめんなさい。
でも、やめるわけにはいかないんです。
戦闘は基本的にサポートです。
ミレナリオ・リザレクリョンで相手の技、
とくにおしおきディクショナリーを優先的に相殺します。
辞書は鈍器ではありませんよ。
相変わらず、回復は私は後回しで構いません。
王子様、召喚出来るのなら、こんな風に必死になって待つ必要なんてなかったじゃないですか……
これも複雑な乙女心と言うものでしょうか。
●星舞夜・ユエ
「まさかヤギさんが、この騒動の犯人とは」
レンズの奥の目を細めてヤギを注視し、ユエが言う。
おそらく、迷宮で拾った少女を矢面に立ててヤギ自身は裏で動き、討伐されそうになったら少女を囮にして逃げる算段だったのだろう。策が暴かれ、これ以上余計なことを喋られる前に少女を始末したかったのかもしれない。……もしかしたら、こんなことをするのもこの迷宮が初めてではないのだろうか。手際が良すぎる。
それに、お菓子の罠。
消去法になってしまうが、少女が知らないのならやっぱりヤギが仕掛けたものなのだろう。少女が王子様に、人を素材にしたスイーツを出したがるとは思えない。
根拠はなかったが、この推理は間違っていない気がした。
あとで少女から話を聞こう。まずはヤギさんだ。
ユエは天球儀の杖をぎゅっと握りしめる。何が起きても対応できるよう、ヤギの一挙手一投足をつぶさに観察する。
ユエの視線を感じ取ったのか、ヤギが動いた。白馬を召喚する時とは違う甲高い鳴き声で配下を呼び出す。
現れたのは大量の子ヤギだ。
主であるヤギをそのまま小さくしたような無数の子ヤギは、猟兵たちに向かって一直線に駆け出した。押し寄せるように迫ってくる様はまるで雪崩だ。
部屋を埋め尽しながら襲いかかってくる子ヤギたちに虚を突かれ、猟兵たちが子ヤギの体当たりや噛み付きを受けてしまう。すぐに反応できたのは一人だけだ。
仲間をサポートするために、他の猟兵よりも後ろにいたユエが杖を両手で構えていた。口を開く。
落ち着いた声で紡がれる詠唱は不思議と戦場によく響き、そして効力を発揮する。
「相殺します」
ユエが告げ、杖の石突を床に打ち付けた。
途端に出現したのは無数の子ヤギだ。敵が呼び出したものと寸分違わぬ子ヤギたちが、猟兵と戦っている子ヤギに殺到してく!
猟兵と子ヤギの立ち合いに、ユエが召喚した子ヤギが突っ込んでいく。敵の子ヤギにぶつかると二匹が纏めて消えていった。対峙していた猟兵は目を見張っている。
子ヤギ同士が激突し、噛み付き、消える。そんなことが戦場のあちこちで起こる。
ユエは子ヤギの最後の一組が消えていくのを黙って見送った。
子ヤギを撫でられなかったことを残念に思いながらも、残った親玉のヤギに向き直る。
「あとはあなただけですよ」
オブリビオンが歯噛みする。
成功
🔵🔵🔴
アオイ・フジミヤ
王子様って、誰なのかなぁ?
【真の姿】
大きな6枚の瑠璃色の翼を背負い
黒髪に翡翠色の眼の色に変わる
Naluを使って衝撃波攻撃、ユーべるコード詠唱とかの邪魔が出来ればいい
周りの猟兵が傷つけば高速詠唱でLanikaiを使用
おしおきディクショナリーはこわすぎなので必死に避ける
(完全にシャルロットちゃんの見た目にやられている)
うぅっ、幼女虐めるみたいでめっちゃ心痛すぎる……
いやでも、人をお菓子にしちゃめっだよ、めっ。
王子様のためにお菓子作るならちゃんと小麦粉から!
そのレシピに書いてない?フツーのお菓子作りなら私手伝うよ?(真顔)
人が材料とか書いてあったらそのレシピ、ぶち破るから寄越しなさい(
●アオイ・フジミヤ
「もうっ、この子まで巻き込むつもり!?」
アオイは子ヤギの襲撃から少女を守り、片手で棍を持ったまま空いた手で少女を抱きしめていた。
事態が目まぐるしく移り変わって正直理解が追い付いていなかったが、身体は勝手に動く。気付いた時には少女を守っていた。
あれ、この子は敵なんだっけ。
思うが、思うだけだ。
だってこんなにかわいい子が私の腕の中で、裏切られたような顔をしてヤギを見てる。敵だろうと、幼い少女を慰めるのは大人の仕事だ。
アオイは少女を抱く腕に力を込める。服が涙で温く湿るが気にならなかった。
棍を置いて、そっと少女の頭を撫でる。
「王子様じゃなくてごめんね」
少女が力なく首を横に振るのが感じられた。……立ち直るには時間がかかりそうだ。
なら、せめてやれることをやろう。
アオイは周囲を見回して仲間の様子を確かめる。子ヤギに襲われ、撃退はしたものの傷を負っているものも多かった。士気は高いが万全ではない。
それならと、目を伏せて祈るように呟いた。
「私の“海”、命を護って」
マリモが再び“海の鬼”となった。猟兵の傷を癒すべく、アオイを中心に空を舞う。
戦場に慈愛の雨が降る。
雨に触れた猟兵の身体からは、時間を巻き戻すかのように傷が消えていった。タックルされた打撲も噛まれた痕も何も残っていない。
猟兵たちから驚きと喜びの声があがった。
「私たちだって、やられっぱなしじゃないんだから!」
疲労から肩で息をするアオイの視線の先には、自身の攻撃に完全に対応されてしまって狼狽えるヤギの姿があった。
疲れて眠ってしまった少女を静かに横たえて立ち上がる。
翡翠色に変わった瞳を剣呑に光らせて、アオイは根を構えた。
成功
🔵🔵🔴
大豪傑・麗刃
わたしは変態なので状況は全く理解できていないことにするが、ヤギの方が悪いということで良いのだな?
おのれ生意気なヤギめ!ヤギ入れてやるのだ!
ということで三刀流のままヤギに向かって突撃する!
んでいろんなことへの怒りとか、結局この幼女は本人言う通り迷い込んだだけの一般人で結果的にはそれに剣向けちゃったのかなー、いや本人言ってる事が本当に正しいのかわからんしまだ裏あるかもなー、そもわたしの全力を一撃受け止められたんだよなあ、いやこの場合受け止められて良かったのか?でもちょっと悔しいよねとか、そういったなんかいろいろを全部ヤギにぶつけてやる。
必殺!スーパー変態人状態で怪力捨て身グラウンドクラッシャー!
●大豪傑・麗刃
「結局、ヤギの方が悪いということで良いのだな? おのれ生意気なヤギめ! ヤギ入れてやるのだ!」
変態ゆえなのか、状況を理解していない麗刃が騒ぐ。金色に染まったままなのでとても目を引いた。
まわりにいる猟兵たちは空気を読んで誰も突っ込まない。ヤギ入れるってどうやるんだと首を傾げるものはいたが、気になっても口には出さずに目で麗刃を追うだけだ。
注目を浴びる麗刃は周囲の反応を気にも留めず、右手に刀と脇差(大)、左手に斧を持った三刀流のまま、ヤギに向かって突撃する。
今までのいろんなわけわかんないものへの怒りとか、結局この幼女は本人言う通り迷い込んだだけの一般人で結果的にはそれに剣向けちゃったのかなー、いや本人言ってる事が本当に正しいのかわからんしまだ裏あるかもなー、そもわたしの全力を一撃受け止められたんだよなあ、いやこの場合受け止められて良かったのか? でもちょっと悔しいよねとか、そういったなんかいろいろが、ヤギのもとへたどり着くまでの短い時間に麗刃の頭をよぎる。
途端、麗刃の身体を覆っている金色のオーラが輝きを増した。
「わたしは怒っているのだー!!」
だってわけわからないのだ。
黄金の光が麗刃の持つ武器までも覆い、太陽の如く眩く輝く。
ヤギが、思わずといった様子で目を背けた。
麗刃はチャンスを逃さず、三刀を大上段に振りかぶる!
「必殺! 怪力捨て身グラウンドクラッシャー!」
麗刃が鬱憤を晴らすように振り下ろした一発は、顔をかばうヤギの右腕を削り取って床を粉砕した。力任せに振るわれた刀と脇差と斧が床にめり込み、クレーターをつくる。
衝撃に粉塵が舞い、ヤギの悲鳴が部屋中に響き渡った。
ヤギは腕の断面から血を流しながら、よろよろと後退する。
大きな負傷を与えたものの、止めを刺すにはいたらなかったようだ。
麗刃も捨て身の一撃を放った反動で腕が痺れ、追撃する好機ではあったが一度下がる。
ヤギを真っ直ぐに見つめる麗刃の目は、普段のふざけた態度からは考えられないぐらい真剣味を帯びていた。
成功
🔵🔵🔴
ステラ・アルゲン
黒幕がヤギだったとは。ならばそのヤギを退治しに参りましょう。
真の姿を解放。我が主が着ていた白銀の鎧姿になる。
敵の攻撃は【武器受け】で流しながら徐々に近づいていきます。大技を出す時を【見切り】、【ダッシュ】で回避した後その隙をついて【流星一閃】。
……遅れて申し訳ありません、姫。あなたのお菓子を頂きに参りました。
私は王子ではありませんが、容姿的にそう見えそうなので少し演技して少女に話しかけてみましょうか。
●ステラ・アルゲン
下がった彼に代わりステラが前に出た。傷一つない白銀の鎧に身を包み、駆けだす。
纏う鎧はステラのかつての主のものだ。常に側を離れなかった騎士の鎧姿は、ステラの刀身に焼き付いている。主に憧れるヤドリガミの真の姿が主に近付くのだって道理だ。
迫る敵に焦ったヤギが残った手で、鋼で補強された本を呼び寄せてステラを迎え撃つ。
しかし片手では本の重さに振り回され、狙いが定まらないようだ。ステラは余裕をもって避け、的を外した本が床を叩く。鈍い音がして床が大きくひび割れ、本の勢いに引っ張られたヤギが体勢を崩した。
ステラの双眸が鋭く光る。
俊敏に踏み込んだ。
──願いさえ斬り捨てる、我が剣を受けてみよ!
断罪の意思を剣に込め、一閃。
ステラの振るった天駆ける一筋の流星の如き斬撃は、まるで断頭台に首を差し出す罪人のような姿勢のヤギの首を断ち斬り、跳ね飛ばす。溢れた血で本が赤く塗れた。
ごとり、と。遠くで頭が落ちる音がする。
ステラはヤギの身体がぴくりともしないことを確認すると、剣を軽く振ってから鞘へ収めた。踵を返す。
少女に、もう帰れるのだと伝えなければ。
緊張感に強張っていた表情をほぐし、ステラは安堵の息を吐いた。
少女のまわりには猟兵たちが集まっていた。皆、じっと少女を見つめている。
不安を覚えたステラが少女に駆け寄って目にしたのは、身体の端から光をこぼして消えかけている少女の姿だ。
本体であるヤギが倒され、オブリビオンの力で生かされていた少女もまた、消えようとしている。
彼女の願いまで、私が斬ってしまったんだろうか。
そんな考えが頭をよぎってしまって、ステラは振り払うように首を振った。
まだ、願いを叶えることはできるはず。
ステラは思い直して、少女の側に膝をつき、少女の身体をそっと抱きかかえる。
そして、可能な限りの甘い笑顔で優しく囁いた。
「……遅れて申し訳ありません、姫。あなたのお菓子を頂きに参りました」
少女が、薄く目を開く。
ぼんやりとステラを眺めていた瞳が像を結び、やがて夢を見るように輝きだした。ステラの腕の中にいるのを理解して、白かった頬が薔薇色に染まる。
「……やっと、来て……くれた、の……?」
おずおずと切り出した少女に、ステラはえぇと頷いて、それから申し訳ありませんと繰り返した。ステラの指が少女の頭を撫で、乱れた髪を整える。
少女はくすぐったがってくすくすと笑った。その笑顔が、だんだんと薄れていく。
「……ん。来てくれた、から……ゆるして、あげる……ね……」
少女が言って、まもなくステラの手の中から溶けるように重さが消えた。少女の髪を梳いていた指の隙間から、光の粒子が散っていく。
光がすべて消えるのを待って、ステラは立ち上がった。
少女の目には、ちゃんと王子として映っただろうか。
それとも、わかっていて騙されてくれたのだろうか。
ステラの疑問に答える声は失われてしまった。
けれど、許してあげると言ってくれたのだから、良いのだろう。
せめて少女にとっては、めでたしめでたしで終わったことを願う。
大成功
🔵🔵🔵