帝竜戦役㉓〜ハートフル・グリーンワーム
●七曜の緑龍
巨大脳髄蠢く狂気の湖を、その帝竜は睥睨していた。
『ムシュ~、もう来ちゃったか。相変わらず早いなぁ~』
子供のような声が帝竜の頭から響く。よく見れば、その竜の頭部から上半身を生やしている存在がいる。その存在の頭部、顔面が見えるべき場所に脳髄が見える。
『オロチ軍団が間に合わなかったのは残念だね~。もう少し時間があったらよかったのになあ。これ作るのに何万匹殺したのに勿体ないなあ……』
ぶつぶつとちょっとした失敗をやらかしたかのような語り口でおぞましい内容を一人で呟くそれは、けれど色々割り切ったかのようによし、と言った。
『今のボクは帝竜だから、猟兵達にオロチのパワーを見せつけてやるんだ! ……こんなシンプルな動機で戦おーっと、うん』
ムシュシュシュシュと嗤うそれは、かつての銀河帝国軍にて数多くの邪悪な研究を行っていたドクター・オロチとそっくりの姿であった。
「みんな、ちょっといいかな? 帝竜についての予知が引っ掛かったんだ」
グリモアベース、ヴィクトル・サリヴァンは(星見の術士・f06661)がシャチの白黒模様も鮮やかな表情を困らせながら猟兵達にそう告げる。
「今回見えたのは脳髄牧場、何ともインパクトがある名前だけれども、名前通り巨大な脳髄がそこかしこで蠢いている土地だ。地面は緑の謎の液体で薄っすらと覆われている……地獄かな?」
そして帝竜についてなんだけど、とヴィクトルは話を続ける。
「『帝竜ドクター・オロチ』、名前に聞き覚えがある人もいるかもしれないけれど、そのまさかだ。竜の頭の上にスペースシップワールドの銀河帝国軍にいたドクター・オロチっぽいのが上半身を生やしている」
喋り方も相変わらずで、どう見ても同一存在にしか見えないのだとシャチは言う。
「全体像としては全身緑の東洋の龍というのが正しいかな。あらゆる生命体を溶解し取り込む緑色の粘液体で構成された体で攻撃してくる。口から緑の粘液を吐き出して溶かそうとして来たり、水火闇光樹雷土の七属性について、その内のどれかの属性を有する竜を召喚してきたり、七属性のエネルギー塊を放ってくる」
ちなみにそれらすべてを先制攻撃でやってくるから対策は考えておいた方がいいと思う、と彼は言った。
「あの当時も相当強かったけども帝竜だけあってその力量はさらに高まっている。かつて一度倒した相手であっても注意は必要だろう」
そう言うヴィクトルはやれやれと首を振り、
「何故また現れる事ができたのかはわからないし、単なる他人の空似かもしれない」
だけれどもね、真剣な表情で彼は猟兵達を見る。
「どうあってもアレはこの世に居させてはならないのは間違いない。確実な撃破、宜しく頼んだよ」
そう締め括ったシャチは鍵型のグリモアを手にすると、転移の為に意識を集中させた。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
何度も平然と現れる事のできる面の皮の厚さは驚嘆に値しますね。
このシナリオは巨大脳髄がそこかしこに蠢く脳髄牧場で『帝竜ドクター・オロチ』と戦うシナリオとなります。
また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。
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プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
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それではご武運を。
皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『帝竜ドクター・オロチ』
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POW : グリーン・ディザスター
【口から放射される緑の粘液】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : オロチ分体
【水火闇光樹雷土のうち1つの属性を持つ竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : オロチミサイル
レベル×5本の【水火闇光樹雷土の7つの】属性の【エネルギー塊】を放つ。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
トリテレイア・ゼロナイン
トラウマを利用した防衛機構、オロチウィルス…
もしあの個体がSSWのドクター・オロチと同一存在ならば、この地で行った所業も相当に悼ましいものだったのかもしれません
多くの猟兵に故郷をあの狂科学者の魔手に救われた星海の騎士の一人として何としても討ち果たさなくては…
機械飛竜に●騎乗し空から接近、●空中戦
敵の頭部の動きから粘液発射を●見切り、飛竜を●ハッキングし●限界突破
急加速でほぼ垂直に上昇し回避しつつ太陽を背にして●目潰し
UCを起動し突撃
粘液は槍のバリアで●武器受け●盾受けで防御しながら突き破りオロチの身体ごと竜の頭を●串刺し、大地に縫い付け
幾度蘇ろうと同じ事
何度でも骸の海に送って差し上げましょう
月汰・呂拇
ウチの親分と姐御達はSSW出身でな
テメェの事は生きて返すなってお達しが出てるんだ
だからブチのめす。覚悟しろ毒トカゲ野郎!
飛翔し音より早く飛ぶ事で衝撃波を放ち粘液を吹き飛ばす
僅かな飛沫は気合いを入れてオーラ防御で逸らし
兎に角直撃を避ける様に縦横無尽に飛び回る
デカい図体だ、そう簡単に捕まってたまるかよ!
粘液が止まった瞬間が勝機だ
オープンメガリス! 巨大化して一気に空中から切り込む!
アックスとロッドを合体させリミッター解除
引き続き衝撃波とオーラ防御を纏って突撃だッ!
その隙を逃すものかよッ!
これがメガリスの力だ……震えて喚けッ!
アックスの一撃で強固な外皮ごとブチ砕いてやる
消えて無くなれオブリビオンッ!
●再殺の時
猟兵達が初めて経験したスペースシップワールドの戦争において、兵器開発者としてのドクター・オロチの名は不気味に残っている。 その姿は顔面が脳髄であるという異形、そして精神性は交戦した猟兵にとってそれ以上に邪悪に映る。
トラウマを利用した防衛機構に恐ろしい細菌兵器であるオロチウィルス、数え上げればキリがない邪悪な発明群を生み出したそれは、確かに猟兵によって撃破されたはずである。
なのにどうだろう。転移した猟兵達を囲む悍ましい脳髄蠢く景色、その中心に聳える緑竜の額辺りから生えている姿は紛れもなくあの邪悪なる異形なのだ。
(「もしあの個体がドクター・オロチと同一存在ならば――」)
周囲を見回すウォーマシンの騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は思う。どれほどの悍ましい所業がこの地で行われたのか、そしてこの蠢く脳髄達は邪悪の被害者なのだろうか。
「ウチの親分と姐御達はスペースシップワールドの出身でな。テメェの事は生きて返すなってお達しが出てるんだ」
グリードオーシャン育ちの熱き巨人の青年、月汰・呂拇(ブラックフレイム・f27113)がオロチの巨大な体を見上げ相対する。大柄なトリテレイアよりもさらに巨大な彼、その身に纏う戦闘服が彼の住処の島で見つけた機動兵器や宇宙船の装甲由来であるからか、見た目だけならウォーマシンのようにも見える。
『ムシュムシュ、死んでたら帰ってていいのかい? じゃあ関係ないねー』
帝竜はからかうように呂拇に返す。一度死した身なら生きていないとでも言うかのように。
「幾度蘇ろうと同じ事。何度でも骸の海に送って差し上げましょう」
この狂科学者の魔手から故郷たるスペースシップワールドを猟兵達に救われた星海の騎士は、この巨大な龍を何としても討ち果たさねば、と固く誓い、
「……だからブチのめす。覚悟しろ毒トカゲ野郎!」
『ムシュシュ、オロチのパワーを見せてあげるよ!』
そう叫んだ可変戦闘服を纏う呂拇が飛翔し、オロチが緑の粘液を吐き出し戦闘が開始された。
飛翔する呂拇の速度は通り過ぎた後に音が遅れてくる程、だがオロチの首は惑わされる事無く正確にその軌跡を捉えている。
狙い澄まして放たれた巨大な粘塊は衝撃波で吹き飛ばすにも困難な量、それを見切った呂拇は直角に軌道を変更。飛沫が飛び散ってくるが、この程度の量ならオーラで弾き飛ばせる。
「デカい図体だ、そう簡単に捕まってたまるかよ!」
さらに空に機械の飛行音が響く。トリテレイアが騎乗した機械飛竜が口部より単装砲の弾丸を放ち、オロチの頭部に命中させるが、粘液の体は弾性を持っているようで、その弾丸をつるんと飲み込み溶解させた。
『うっとおしいなー、それ!』
帝竜がトリテレイアへと標的を切り替え、緑の粘液を吐き出す。機械騎士は有線のハッキング端子を機械飛竜へと接続、制御を手動にして騎士としての経験で見切った粘液の軌道から逃れるよう飛竜を操縦する。セーフティを解除した急加速で垂直方向へと上昇、中天に輝く太陽へと真っ直ぐに加速していく。
そして、反転。
「暴れ馬ならぬ暴れ槍ですが……御してみせましょう」
太陽を背にトリテレイアは巨大な機械槍を構え、地へと重力の加速を加え機械飛竜と共に突進する。太陽に目が眩んだかオロチの反応が遅れる。それでも緑の粘液を上方に展開し防ごうとするが、それはほんの一瞬も機械騎士の突撃を止めること敵わず穂先の傘状バリアに弾かれた。
緑龍の体の中心付近に槍が突き刺さり、そして地へと叩きつけられ縫い止められる。
そして地に叩きつけられたオロチは粘液の放出を止める。その隙を呂拇は見逃さない。
「オープンメガリス!」
空中でポーズを決め叫べば、その身体は三倍に膨れ上がり、太陽の如く燃え盛る角が生える。全身に纏う鎧は軽鎧へと変形、さらに兵器や宇宙船のパーツを組み合わせて作られた無骨な手斧とロッドが合体する事で一つの巨大なポールアックスへと変形した。
「逃すものかよッ! これがメガリスの力だ……震えて喚けッ!」
さらに空を駆ける巨人が衝撃波を纏い地に縫い止められたオロチへと突進、その長大なアックスを帝竜の胴体に叩きつける。緑の粘液で形作られた弾力の強いその外皮、けれど彼の斧の前には障害にはなり得ない。
「消えて無くなれオブリビオンッ!」
裂帛の気合と共に振るわれたアックスの一撃は巨大な蛇の外皮を叩き切り、その体の下半分を切り落とした。びちびちと尾が跳ねるが、だんだん動きは弱まり周囲の緑の液体に溶け込むように形を崩れさせていく。
『ムシュー、再生させるのは疲れるんだけどねー』
それでも帝竜は堪えた様子もなく軽い口調で言う。見れば粘液の体は液体のように形を崩し、機械騎士の槍の拘束から逃れようとしている。そしてさらにオロチの周囲には反撃の無数のエネルギー塊が生じ始めている。
けれど、猟兵の攻撃は止まらない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィヴ・クロックロック
ドクターオロチ…。覚えてはいないだろうが、そもそも同じ人物かも知らん!だがその口調その姿その在り方その名前以前の借りはお前に返させてもらおう!何より個人的にお前のようなタイプの科学者は気に入らん!!
行動方針は単純、彼方よりの光で奴をぶん殴る。そのためにまずは奴の攻撃を凌がなくては。六文銭をばらまき電位差を作り雷撃を反らしおやつ精製装置で光を無力化、土は爆弾銃で打ち砕く。まだ半分も防げて居ないが弾幕に隙間ができればそれで充分!合間をすり抜けオーラ防御で防ぎ激痛耐性で我慢しつつ光の巨人を呼び出しヤツをぶん殴る!!!
貴様には見えまい!この光子の輝きの正体が!!!
(アドリブ連携歓迎です)
地に縫い止められているその隙に、猟兵達が走る。
「ドクターオロチ……覚えてはいないだろうが、そもそも同じ人物かも知らん!」
ドクター・オロチに縁のあるヴィヴ・クロックロック(世界を救う音(自称)・f04080)は頭を地につけた緑龍のマズルの上に生えた人型に叫ぶ。
「だがその口調その姿その在り方その名前以前の借りはお前に返させてもらおう!」
『あ、ゾンビ使ってた人だっけ? お久しぶりー、そこの人狼のキミとかも見た事あるねー』
緑の龍の体、その頭に生えたドクター・オロチのような体が手を振って猟兵達を挑発する。どこまで記憶があるのかは不明だが、何かしらの記憶はあるらしい。
どこまでも人を小馬鹿にしたような態度にヴィヴはキレる。
「何より個人的にお前のようなタイプの科学者は気に入らん!!」
『気に入らないからって排除するなんて暴力はんたーい、そんな人にはこれをプレゼント!』
そうドクター・オロチが言えば、無数の属性の弾丸が猟兵達に降り注ぐ。
ヴィヴを襲うのは光と土、そして雷の弾丸が多いようだがそれを見切る前に彼女は六文銭を周囲にばら撒き避雷針に、そしておやつ食べたいと強く念じ、光を取り込みおやつを精製する装置を起動させる。土の弾丸に対してはギースバッハ――爆弾銃で迎撃し、撃ち落としていく。
けれど、それらを凌いでもまだ半分以下、けれど隙間がこじ開けられれば十分。小柄なダンピールの女は被弾覚悟、オーラ防御で残りの弾幕を凌ぎながらユーベルコードを起動する。
「星空よりも輝け光の巨人よ!」
それはここで倒すと決意を向けた相手をその意志の力を以て召喚した光の巨人に攻撃させるユーベルコード、緑龍と同程度の大きさの巨人が出現し、そのオロチの頭部に拳を振り下ろす。
その間にもオーラを抜けた弾幕がヴィヴの体を痛めつけるが、彼女の討ち倒すという強い決意は揺るがない。
「貴様には見えまい! この光子の輝きの正体が!!!」
成功
🔵🔵🔴
大神・零児
倒しても
また何処かに現れるんだろ?
てめーはフォーミュラ達の技術とかを集めてんだろ
対策
鮮血の氣のオーラ防御を纏わせリミッター解除したC-BAに騎乗し各種センサー、戦闘知識、第六感、野性の勘で霊脈やわずかな事前動作等も情報収集
運転と操縦技術も駆使し残像を使い挙動や攻撃を見切り回避
集めた情報から龍脈を特定
武器改造済の誘導弾マルチグレネードをC-BAから一斉発射
内容
火:火炎耐性と極低温物質
水:氷結耐性と水で爆発する危険物
樹:ナパームや濃硫酸
土:岩石すら溶かす酸性溶液
闇:強力なフラッシュバン
光:光を分散させるスモーク
雷:電気伝導率の高い物質か絶縁体
で相殺
特定した龍脈の力を使いUCで範囲攻撃
アドリブ共闘可
そして彼女の突撃とは別に人狼の青年、大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)は鮮血の氣のオーラを纏い、機械獣を変形させたバイクに騎乗し、周囲の情報を収集していた。
脳髄蠢くこの地の霊脈を探るにはどうにも骨が折れる。けれど、オロチが地に落ち回復に集中しているからか、その霊脈の流れが分かりやすくなっている。
フォーミュラ達の技術等をドクター・オロチは集めているのだと零児は推測するが、緑髪のダンピールの女とのやりとりを聞く限りまともに答えが返ってくるとは思えない。また復活するのだろうから、正直に言う理由もないのだ。
飛来するエネルギー塊、横倒しすれすれにバイクを倒しながらそれらの初弾を零児は回避。だがエネルギー塊は次々に周囲を砕いていく。零児はそれらの属性に対応した物質を仕込んだ弾丸をバイクに装備したマルチグレネードから一斉に発射する。
火の属性には極低温の物質を、闇にはそれを払うフラッシュバン、光にはそれを散乱させるスモークに、樹には焼き払うナパーム弾。そして雷にはばら撒かれた六文銭を補助するように電気伝導率の高い銅線をネットのように編み込んだ捕獲用の特殊弾、土には爆弾銃で砕かれた岩を溶かす濃硫酸をぶち当て相殺する。
そして残る水の属性弾に弾丸が命中すれば、水との反応性が極めて高い危険物が爆発を引き起こし、残った周囲の属性弾へと干渉し、消失させる。
それだけやっても完全に無効する事はできないが、準備には十分だ。召喚された光の巨人が緑龍の首を左腕で抑えながら右腕でオロチを連続で殴りつけるその光景を見つつ零児がユーベルコードを起動すれば、七体の属性の異なる龍――オロチが龍脈よりその身体を持ち上げる。
それは夢の記憶と目の前の相手の真似事、龍脈の力を借りた力の具現存在の再現。
(「倒しても、また何処かに現れるんだろ?」)
眼前の存在を倒さねばならないという目的意識の底に、そんな風に冷たく思考する自分が存在する。
だが、逃げられようがどこまでも追いかけて死ぬまで殺し続ける。それだけの話なのだから。
帝竜より少し小さなオロチの群が喰らいつく。周囲に展開する属性弾を各々の属性で無効化させながら、七属性のオロチは光の巨人を援護するよう、帝竜の体を抑え込んでいく。
そこに更にかつて見た事のある顔の二人の猟兵が飛び込んでくる。帝竜は再びエネルギー塊を展開し始めたが、少しでも力を緩めればオロチや光の巨人を振り払い空へと飛翔すると第六感が囁く。
後続の為にこのまま抑え込む、そう決めた黒狼の青年は再現存在を維持する為にバイクを走らせながら術式の維持に意識を集中させていく。
成功
🔵🔵🔴
クリスティアーネ・アステローペ
何とも自由ね。嫌いじゃないわ?Dr.オロチ
以前貰い損ねたもの、この機会に頂いてしまいましょうか
・対策
エネルギー塊の属性を《見切り》、対になる属性の《属性攻撃》の《衝撃波》をマルツェラとカンパネラを用い《高速詠唱》《多重詠唱》《一斉発射》して相殺
直撃しない分は《オーラ防御》で凌ぐわ
・攻撃
【嵐と雷】の飛翔能力による攪乱と回避から威力を増したフランツィスカによる《鎧無視攻撃》の《なぎ払い》で粘液も外殻も諸共に叩き切るわ
翼に爪、牙と奪ってやりたいのは多いですけれど…一番はやっぱり血ね
交戦中に死角からの《吸血》を試みましょう
ずいぶん変わった味がしそうですけれど。たまには下手物も試してみたくなるわよね
忠海・雷火
地形(脳髄)の陰に身隠し接近。見つかった後は可能なら盾として利用
体勢崩し狙いなら尾等での通常攻撃後にUCが来ると推定
いつかの戦争で相見えた経験と対竜への戦闘知識で攻撃軌道を見切り回避、回避が難しければ武器受けがてら薙ぎ払うようにし受け流し
滞空すれば間違いなく次を避けられない為、多少の被弾は覚悟でそれだけは避ける
回避・受け流しの直後、UCを誘発させる為、地面の緑水に足を軽く取られた演技
UC自体は直線故に見切り易くはある。放たれた粘液を盾に敵の視線を遮られるよう、低姿勢のまま真っ直ぐオロチの方向へ回避
直後にUC使用で煙化。仕留めたと思わせた隙を突く騙し討ちを
頭上の水晶や鼻先の鋭角に転移し本体を斬る
「何とも自由ね。嫌いじゃないわ?」
クリスティアーネ・アステローペ(朧月の魔・f04288)はくすくすと笑いながら帝竜ドクター・オロチを見遣る。
緑の龍の上半身と下半身は泣き別れし、それでもなお動き続けるどころか体を液状にして拘束から逃れようとするフリーダムさ、生き汚さはかつて遭遇した時以上のようにも思える。
彼女とドクター・オロチとは銀河帝国攻略戦の時に交戦している。
「以前貰い損ねたもの、この機会に頂いてしまいましょうか」
そして彼女は魔杖短剣【空を仰ぐマルツェラ】と水晶の珠【流転せしカンパヌラ】を取り出すと、飛来するエネルギー塊の属性を見切り発生させた衝撃波で相殺していく。一つ一つに対し対になるよう魔杖短剣の鍔元に仕込んだ銃の機構を作動させる事で詠唱を高速で平行して行い、そして複数の術式を展開する水晶との合わせ技で無数のエネルギー塊に対応する。
そして一方で、蠢く巨大脳髄の数々にその身を隠しながら忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)は帝竜へと接近していた。
属性弾に対応する三人の猟兵――以前ドクター・オロチと交戦した時に見たような気がする彼らとは別方向から近づく彼女は、オロチの粘液塊を警戒していた。その頭、口の向いている方向へと放たれるなら、真後ろからならば攻撃を受け難いだろう。
光の巨人に七属性のオロチが押さえ込み、さらに空を舞う黒翼のヴァンパイア。其方に気を取られている今が奇襲の時。
『ムシュムシュ、そっちいるんでしょー?』
光の巨人に首を抑えられながら、オロチは真後ろにその顔を向ける。正確に言えば一度頭を構成している粘液を崩し、後ろ向きに作り直した。ドクター・オロチの人型の位置は変わっていない辺り制限はあるのかもしれないが、それはさておきその龍の口からは緑の粘液が今まさに放たれようとしていた。
しかし雷火は動じていない。その程度はやってきてもおかしくないと経験から推測していたからだ。
銘無き刀と短刀を構えつつ全力でその軌道を見切り横に飛び退き回避する。地面に命中し炸裂した緑の粘液塊が広がり、足元を覆う。
生命を喰らわれていくような痛みと虚無感が走る、だが下手に跳躍すれば次弾を避けきれない。だから雷火はその痛みを堪えつつ、それでもつい膝をついてしまう。
『ムシュムシュ、じゃあねー』
軽い声でオロチが言い、そして同時に再び特大の粘液塊が雷火へと発射される。
(「……かかった」)
だがこれは雷火の演技、今この瞬間、緑の粘液塊に隠れ向こうからは雷火の姿は見えない。
姿勢を低くし見切った軌道の下を潜り抜け、そして、
「我が身に融けし餓犬よ。我が意の下に此の身を食みて、其の躰、其の力の一端を顕せ」
静かに呟けば、彼女の体は青黒い煙へと変異し、緑の粘液塊が炸裂する直前に消失する。
直後、緑の帝竜の鼻先の鋭角から青黒い煙が噴き出し、再び雷火が姿を現すと同時にドクター・オロチの人型に一太刀を加えた
「力は此処に 私の翼は空を裂く」
その一撃を視認したクリスティアーネは今が好機とばかり、ユーベルコードを起動。真紅の瞳と巨大な黒翼を広げたヴァンパイアへと姿を変え、オロチに切り込む。その高速飛翔能力はオロチでも光の巨人と七曜のオロチ軍団に全身を抑え込まれた状態では捉えきれない。
そしてその間にも足元から伸びる緑の粘液を回避し続けていた雷火が再び接近、それに合わせるようにクリスティアーネがドクター・オロチの上半身に長槍戦斧を振るう。救済者の名を冠する斧が粘液や外殻による防御も無視、諸共にオロチの人型の腕を切り落とし、それに続く形で飛び込んできた雷火が斧の傷口に重ねる形で無銘の刃を叩き込んだ。
そして雷火へと注意が逸れた瞬間、くるりと体を入れ替えたクリスティアーネは、オロチが反応する間もなく首に一瞬だけその吸血鬼の牙を突き立てる。翼に爪、そして牙。龍の体から奪ってやりたいものは多いけれども、彼女が望んだものは吸血鬼らしくその血だった。
オロチの首筋から緑の体液が溢れ、クリスティアーネの口にその味が広がる。
『イヤン、エッチィ……のはダメー、ムシュムシュ!』
ムシュムシュ怒ったように言いながら、緑の粘液をロープのようにして周囲に向けてドクター・オロチが振り回す。その反撃を雷火は青黒い煙へと変化し転移で回避。クリスティアーネは黒翼を広げ空へと回避し、そして呟いた。
「…………やっぱり下手物ね」
たまにはそういうものを試してみたくなる時はあるが、少々変わった味と纏めるには厳しかったのか。彼女の表情には後悔の色が浮かんでいた。
本体のような人型部分へのダメージは堪えたのか、帝竜の動きが鈍くなる。
『相変わらずやるね。でも帝竜として負けるのも癪なんだよ、ムシュムシュ!』
そう言いながらドクター・オロチはその緑の粘液の体をのたうち回らせ、強引にオロチや光の巨人の拘束を振りほどき空へと浮上する。
既にダメージは重なっているが、もう一押し必要と思われた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィロメーラ・アステール
「毒々しいって言葉がピッタリの場所だな!」
前のオロチとは戦ってないけど!
趣味の悪さは一目でわかった!
東洋の龍型だと完全飛行型か、じゃ【空中戦】だな!
敵は全身粘液だけど、口からの一撃を披露したいみたい?
なら【空中浮遊】して【ダンス】するように華麗に回避~ってトコで、調子に乗って体勢を崩したっぽく【演技】する!
敵は必殺の機会を見逃さないはず!
そこで【念動力】で自分を【グラップル】して動かし、敵の想定外の機動で避ける!
この隙に【月の庇】だ!
魔力の幕を【全力魔法】で生成!
作ってしまえば応用自在!
【オーラ防御】を込めて攻撃を遮断したり、光【属性攻撃】を変性・収束するレンズにしたり、状況に応じ活用するぞ!
緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎
ドクターオロチ、まさかまた再会することになるとはねぇ。まぁ、見た目完全に変わっちゃってるけど。なんにせよ骸の海に送り返さないとね。
視力でオロチの口を注視しつつ戦闘経験・見切り・学習力・野生の勘・第六感で攻撃のタイミングを予測し、シールドビットとオーラ防御を展開して緑色の粘液を反らしつつダッシュで回避しカウンターに超巨大電磁砲を撃ち込む
気合い・力溜め・覇気・限界突破で威力を底上げし鎧無視攻撃・衝撃波・二回攻撃を付与した超巨大電磁砲を誘導弾でオロチの口めがけて撃ち込む
「二度とその汚い物を吐き出せなくしてあげるわ」
少しだけ時は遡り。
「毒々しいって言葉がピッタリの場所だな!」
この少々気味の悪い戦場の中、輝く星々のような明るい調子で言ったのはフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。
「ドクターオロチ、まさかまた再会することになるとはねぇ」
まぁ、見た目完全に変わっちゃってるけど、とその隣で蝶の仮面の少女、緋神・美麗(白翼極光砲・f01866)がぼやいた。
フェアリーの方はというと、前に出現したとされるスペースシップワールドでは戦っていないが、この領域を一目見ただけでその主である帝竜の趣味の悪さは分かるというものだ。
「なんにせよ骸の海に送り返さないとね」
「そうだな!」
そう言い合い、二人は一旦分かれる。彼女達が見ていたのは巨人やオロチに抑え込まれながら地上へと粘液の塊を放射する帝竜ドクター・オロチ。美麗は蠢く脳髄に隠れ、フィロメーラは星々の輝きを奇跡に残しながら空へ。
そして現在。巨人やオロチ達の拘束から逃れ、空へと飛翔する帝竜の前にはフィロメーラが待ち構えていた。
『ムシュシュ、邪魔をするならどいてて?』
そして帝竜はその緑の龍頭から緑の粘液塊を発射する。空で待ち構えるフェアリーはそれを踊るかのような華麗な動きで回避――けれどラスト、
「わわっ? あぶないなー!」
空に放たれた粘液の一部が飛び散り雨のように降ってきて、それを回避する為に少々無理な動きをとってしまう。その代償に体勢を崩した彼女、真下から空へ向かうオロチが攻撃するには絶好のタイミング。
だが。
(「……あれ? 引っ掛からない?」)
帝竜は体勢崩したフェアリーを無視して空へと向かう。
『二度も引っかからないよ! ムーシュッシュッシュ!』
つい直前に演技で粘液塊を回避されカウンターを喰らったオロチだ。星のフェアリーのその行動を演技と見たのだろう。
実際その通りなのだが。
グラップルと念動力による強制移動による対策、その想定とは多少異なっているが、それでもユーベルコードを発動する準備はできた。
「空を彩る星の装い……」
フィロメーラが呟けば。不可視の魔力の幕が天蓋を覆うように空へと伸び、オロチを追い越して網罠のように広がる。
空に広がる魔力の幕を念動力で操る彼女、そこを目掛け帝竜は粘液の塊を地上に向けて放つ。
(「二発ね」)
その光景を美麗は見上げ、緑龍の口元を注視していた。地上を見下ろすオロチの口元には既にこの戦闘で何度も放たれた粘液塊が装填され、その発射のタイミングは完全に見切っている。彼女はサイキックエナジーで稼働するシールドビットを展開した。
まず一方、それは不可視の魔力の幕に阻まれる。幕は風呂敷のように粘液の塊を受け止め空中で柔らかく包み込み、そして四隅同士を結びつけて地上への拡散を防ぎながら地上へと落下していく。
急に空中で動きを緩やかにした一つは放っておき、一直線に墜落してくる塊を美麗は見、シールドビットに更にオーラを纏わせる。塊のその軌道を逸らし、少し外れた所へ受け流そうとする。
衝突の瞬間、ビットが重量に軋む。だが圧縮したサイキックエナジーとオーラによる防御で何とか砕かれる事なく逸らす事に成功した。
そしてその間、オロチに展開された天の幕の一部が絡みつき、その動きを縛り付ける。同時、空に広がるの天の幕は緩やかなカーブ――レンズのように形を変え、オロチへと焦点を収束させていく。
「チャージ、セット、いっせーのっ」
そして粘液塊を凌いだ直後、美麗は巨大な鉄塊を放つ超電磁砲の準備を開始していた。空のオロチは何かに巻きつかれているような不自然な動きに暴れている、力を込める為の時間は十分。サイキックエナジーを増幅し雷に変換して巨大な鉄塊を加速する為の力へと変換し、限界まで込めた更に倍の力を注ぎ込んでいく。
フィロメーラの光の魔法が空より降りそそぐ。太陽の力を借りたそれはレンズによる集束でレーザー光線のように細く、熱量の高い魔力の光をオロチへと喰らわせる。緑の体液が蒸発、ただでさえ小さくなっていた帝竜の粘液の肉体がさらに半分に分割され、
「二度とその汚い物を吐き出せなくしてあげるわ」
それに合わせるように蝶の仮面の少女が地上からその力を解き放つ。電磁加速された鉄塊は垂直に打ち上げられ、空で体勢を崩しながら暴れているオロチの前方に伸びる口を吹き飛ばした。
成功
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ネージュ・ローラン
リムさん(f08099)と参加。
この場所も彼の言動も全てが不快ですね。
目的はわかりませんが今回も好きにはさせませんよ。
目を閉じてリムさんの目眩しを待ち、その手を取って走り出します。
そのまま移動するには足場が悪そうですので【空中】へと駆け上がりましょうか。
「空のダンスといきましょう。エスコートしますね。」
そしてオロチの口の動きから攻撃の狙いやタイミングを【見切り】【舞う】ように回避しようとします。
攻撃を凌いだなら【氷属性】の鴉を次々と作り出し、2人で力を合わせた【氷炎の乱舞】で攻撃でしましょう。
「わたし達の全力を重ねたこの技、受け切れますか!」
リミティア・スカイクラッド
ネージュさん(f01285)と参加
まさかこんな所で再び戦うことになるとは
今度も好きなようにはさせません
敵の先制攻撃がくるのを見計らって
ネージュさんに合図してゼルフォニア鉱の欠片を使用
閃光で敵の「目潰し」をして狙いを狂わせながら
ネージュさんに手を引かれて粘液の回避を試みます
リードよろしくお願いしますね、ネージュさん
舞踏会にしては悪趣味な場所ですが、あなたが居ると心強いです
彼女のステップに合わせて風神の靴で風を踏み「空中戦」
先制攻撃を凌いだら力を合わせて【氷炎の乱舞】を発動
氷の鴉に合わせて炎の蝶々を飛ばし敵を「焼却」します
あなたが倒れた後もリムたちは旅を続けてきました
その力、見せつけてやりましょう
「まさかこんな所で再び戦うことになるとは」
ふう、と無表情にリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)が息を吐く。
「この場所も彼の言動も全てが不快ですね、リムさん」
青瞳のエルフ、ネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)は強気な表情で傍らの魔女に同意を求める。
『ムシュムシュ、もう猟兵達ってば厄介なんだから!』
蠢く脳髄を圧し潰しながら墜落したオロチが不機嫌そうに叫ぶ。
世界を越えて現れているようなドクター・オロチの目的はわからない。けれどあの異形の好きにはさせるつもりは、ネージュにはない。
「前のように、今回も阻止しましょう」
「ええ、今度も好きなようにはさせません」
リミティアの返す言葉に首肯し、二人は暴れ狂うオロチへと駆け出した。
オロチの巨大な――最初と比べれば随分と嵩を減らしているのだが。
その瞳が接近する二人を見咎め、その口腔に緑の粘液塊が蓄えられる。体勢を崩させる動作の余裕もないのか、いきなりだ。
ごく自然な動作でリミティアが鉱石の欠片を取り出すと、それを合図にネージュが瞼を落とす。
魔女の娘が鉱石に念じれば、創世の天使の力を宿すとされるその鉱石はこの世全ての悪を全て焼き払うかのような強烈な閃光を放った。
『ムシュ!?』
反射的にドクター・オロチの人型は無事な方の腕を顔の前に翳し――顔面脳髄だから目があるのかは分からないが、その光を防ごうとする。
けれどその動作は龍体の方は不可能。閃光に視覚を潰され、二人の娘に定められていた照準が僅かに下へとブレる。
その閃光を至近で受けたリミティア、来ると分かっていて目を閉じてもその光は強烈で少しばかり目がちかちかとする彼女の手に、引かれる感触がある。
瞳を閉じ閃光が収まるのを待っていたネージュの視界はクリア、飛来してくる緑塊の軌跡もはっきりとわかる。
「空のダンスといきましょう。エスコートしますね」
手を取り合うネージュとリミティアは空へと走り出す。地上は幾分足場が悪いからだ。
「リードよろしくお願いしますね、ネージュさん」
青のエルフが誘う空へと魔女も踏み出し、そしてその直下を緑の粘液塊が通り過ぎていく風圧を足に感じる。
精霊の魔力を宿すシルクヴェールを靡かせ、ネージュがリミティアを引っ張り空を軽快に跳ねていく。
自棄になったような数の粘液の弾丸を見切り、ステップを踏むように軽やかに避けていく二人はダンスをしているよう。
空はネージュの得意領域、纏う舞台衣装は戦闘衣装。こんな帝竜ごときに後れを取るような鍛え方を彼女はしていないのだ。
そしてリードされるリミティアは大気を踏み、踊るように空を翔る。熟練のネージュのリードは確かで、それに合わせれば殺意の緑塊は向こうから避けていくかのように、二人には当たらない。
「舞踏会にしては悪趣味な場所ですが、あなたが居ると心強いです」
蠢く脳髄は少々、いやかなりグロテスク。蠢きを踊りと考えるのは少々ホラー、というか舞踏に対する侮辱のような気がする。
魔女の言葉に苦笑するネージュ、けれどその視線は油断なくオロチの口や頭の動きをしっかりと見ている。次は右、次は大きく飛んで――そして、休止。
緑の粘液塊の射出が途切れる。既に疲労の色濃いオロチにも限界が来たのだ。
氷の精霊――大狼の魔力を持つ銀雪の杖をネージュがその手に握り、そしてリミティアも彷徨う死者、悪霊を滅ぼす為の火葬杖を手に魔術を構築していく。
「氷よ舞え、灼炎と共に我らの敵を討て」
氷の鴉が次々にネージュの傍に生み出されて飛び立ち。
「炎よ舞え、氷雪と共に我らの敵を討て」
炎の魔力の蝶の群がリミティアの杖から緩やかに羽ばたく。
二種の創造物は氷を溶かさず、逆に炎も消されず。それはまるで、術者である二人のよう。
「――あなたが倒れた後もリムたちは旅を続けてきました」
オロチに向かい、リミティアが静かに言葉を紡ぐ。
だから、その力を見せつけてやりましょう、そうネージュの手を取り、術を攻撃へと移す。
「わたし達の全力を重ねたこの技、受け切れますか!」
エルフの娘の氷の鴉と人の魔女の蝶の群が群成して帝竜の頭部へと殺到する。
炎は氷の、氷は炎の助けをお互いに与え受けて。蝶と鴉の嵐を受けた帝竜の緑の肉体を熱し冷却し、そしてその温度差は爆発的な破壊力を生じさせ、帝竜ドクター・オロチの粘液の肉体は派手に炸裂する。
粘液は地に落ち広がる湖と同化するように消失し、少し遅れてドクター・オロチの人型部分がべしゃっと音を立て墜落する。
『ムシュシュ……巨大化はやっぱりボクの趣味じゃないかな~』
そう最後に呟くと、異形はその姿を崩れさせ跡形もなく消失した。
緑粘液の帝竜が消失し、脳髄蠢く泉に静寂が訪れる。
この場の悪意の存在が完全に消え去ったことを猟兵達は実感する。
そして猟兵達はこの一時の勝利を祝うべく、グリモアベースへと帰還したのであった。
大成功
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