帝竜戦役㉒〜絶対零度のスプリング・トラップ
猟兵達が集合場所に着くと、そこは視界一面真っ白な吹雪が起こっていた。
その中心で、ちりん、ちりん、と、澄んだ氷の音を鳴らしながら舞う、雪女の様な姿の妖精。
妖精は猟兵達を見ると、誘うように両手を広げ、グリモア転送の光を放……。
放とうとした所で止められた。
「ふぇあ?……ごめんなさい。とても素敵な所を予知したから、つい舞い上がっちゃった。こんにちは。あたしポーラ。皆を冬の地に誘うの。」
そう言ってポーラ…グリモア猟兵のポーラリア・ベル(冬告精・f06947)はグリモアの映像を見せる。そこはあらゆるものが凍りついている極寒の世界。
「絶対零度地帯。氷に耐性持っててもいずれ凍りつく、超低温の領域だよ。」
極寒どころではなかった。
「氷の妖精だってカチンコチンになっちゃうここにオブリビオンがいるの!……春を呼ぶ、春告精だよ!」
ふと映像を見ると、可愛らしい熊さんの毛皮をフード付きコートの様に羽織っている、美しい白い髪に桜色の衣装を着飾ったエルフの少女達が、凍った大地に桜の花咲き誇る木を魔法で生やし続けていた。
そしてその木は生えた所から瞬時に凍てつき氷漬けになっていた。
「このままじゃ真冬の世界が春に乗っ取られ……じゃないや、絶対零度地帯が木で埋め尽くされて、通りづらくなっちゃうわ!何とかやっつけて欲しいの!」
何だろう今私情が見えた気がする。
「春告精……春の妖精さんはね、不凍熊の毛皮っていうのをかぶってて、それで絶対零度の中で凍らずに済んでるみたい。この毛皮の熊さん、今は絶滅していてもう手に入らないの。」
その代わり、と、冬告精は映像のある部分の氷を見せる。中には傘が閉じ込められていた。
「ここを探検する冒険者さんの落とし物なのか、『太陽の傘』っていうマジックアイテムが沢山ある所を見つけたの!」
さしている間暖かい光が射しこみ、太陽の加護が身について、絶対零度の中でも凍らなくなるらしい。
「この傘をさせば凍らずに済むから、上手く解凍して使ったらいい感じに戦えると思うの!」
しかし気をつけなければならない。春告精はありとあらゆるユーベルコードを使って傘から手を離させようとしてくるのだ。
傘を手放したら最期。あっという間に冷凍保存の仲間入りだろう。
「それじゃあ。一通りの事は説明したから転送するね。」
微笑ましく、しかし残酷に、冬の妖精は再び舞い上がり、澄んだ氷の音と共に転送の光を放つ。
残酷。
絶対零度に花咲かせようとする春を―オブリビオンとはいえ、これからやっつけさせようとしているのだから。
「絶対零度の冬の世界に、ようこそ。」
古塔
古塔と申します。宜しくお願いします。
当方一人で舞い上がってました。絶対零度ですよ絶対零度!
もう色んなものが万年も氷漬けになってるに違いないわ!素敵!
●どういう話?
A&Wの戦争『帝竜戦役』における『㉒絶対零度地帯』の戦争シナリオです。
このシナリオは集団戦1章のみで完結します。
氷耐性があってもじわじわと、なければ数分で物言わぬ氷漬けになり、永遠にこの地で冷凍保存されてしまう、自然界には存在不可能なレベルの超低温の大地です。
(完全に氷漬けになった場合グリモア猟兵がグリモアベースに転送しますのでご安心ください)
敵は既に絶滅した『不凍熊』の毛皮を羽織る事で、この絶対零度に耐性をつけています。
つまり戦闘では毛皮をはぎ取ってもいいんだよ。でもお持ち帰りは何度が高いよ(後述)。
●プレイングボーナスと対策
敵が凍らない対策をしているならどう対策すればいいかですが、転送地点の近くに「氷に閉じ込められた傘」がございます。
この傘、『太陽の傘』と呼ばれるマジックアイテムにございまして、広げると太陽の光があらゆる寒さを跳ねのけてぽかぽかになります(このシナリオのみ使用可能なアイテムとなります。)
持っている者と、傘の下にいる者のみに効果を発揮しますので、手放すとえらい事になると思ってください。
氷は破壊すれば割と無事に傘を手に入れる事ができますので、【太陽の傘で凍らないようにしながら戦う】事が今回のプレイングボーナスとなります。
●敵
『『春告の妖精』スプリングエルフ』です。
この最高に寒い絶対零度の地に春を呼びに来ました。
放っておくと目覚めの鍵で桜の木を咲かせ、通行に邪魔なレベルの氷桜の大地にしてきます。
戦えばどうにかして傘から手を放させようとしてきたり、お花見に誘ってきたりします。
やっつけましょう。他意は無いですよ。
●お宝
オブリビオンの羽織っている「不凍熊の毛皮」そのものが今回のお宝です。
あらゆる寒さに耐性を持つ優れた毛皮ですが、絶対零度地帯以外の外気ではたちまち溶けてしまいます。
どれだけ厳重に保護を施し持ち帰っても、売る場合は切れ端程度しか残らないでしょう。
一枚金貨116枚(116万円)。
それでは、絶対零度で春を倒す戦い、もし宜しければお付き合いを。
第1章 集団戦
『『春告の妖精』スプリングエルフ』
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POW : 目覚めの春~目覚めを促す鍵~
【対象を眠れる力】に覚醒して【暴走した真の姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 春は恋の季節~心の高鳴りが爆発となって~
【対象二人の意思疎通】が命中した対象を爆破し、更に互いを【互いのレベルの合計の技能「手をつなぐ」】で繋ぐ。
WIZ : 春はお花見~花々の美しさに魅了され~
【お花見】を給仕している間、戦場にいるお花見を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
イラスト:CHINATSU
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セゲル・スヴェアボルグ
その太陽の傘とやらは複数持っていけるのなら予備も持っていこう。
コピーしたレプリカでも効果があるのなら、持ち運びの都合上そっちでもいいがな。
戦闘の際は手に持ったままでは流石に戦いにくいので、翼にでも括り付けておく。
背中側ならおいそれと手は出せないだろうしな。
短時間なら氷結耐性もあるので、鎧の効果で傘が使えなくなった奴の肩代わりぐらいするか。
多少ぐらいなら体が凍ったところで、気にする必要もない。
ダメージが多ければこちらの手数も増えるしな。
まぁ、予備の傘はささっと渡しちまうとしよう。
手が空いたら一気に斧で畳み掛ける。
眠れる力だか何だか知らんが、氷の中で永遠に眠っていてもらうぞ。
早乙女・龍破
・太陽の傘について
極寒の地に暖かな太陽の光は染み渡ります
片手が埋まってしまいますが風に煽られたりと離さないよう結び付けておきます
所で…冬の妖精さんは此方の品に含みはないのですよね?
・戦闘について
お花見ですか?花を愛でるのは吝かではありませんが…お花は何方に?
氷漬けの花では愛でる事も儘なりませんよ
それに片手に傘、片手に刀、既に両手が塞がっているので手を繋ぐ訳にはいきません
そりゃあこんな寒々しい所にわざわざ出向くのですから春より冬の方が好きなのです、通じ合う事は出来ませんね
そもそも春の妖精さんは何故こんな所に?
さぁさ、お帰りの時間ですよ
北風ならぬ気魂の刃で吹き散らしましょう
●その他
アレンジ歓迎
●
「……まいりましたね。」
頭に黒曜石の如き角を生やした漆黒の羅刹、早乙女・龍破(f00182)。
吹雪でたなびく和装は既に数センチの厚い氷に覆われ、寒さに凍え、動きを阻害していた。
「まさか傘が見つからないとは……。」
転送地近くにあるはずの、太陽の傘。
彼は戦闘を優先に考え転送に臨んだ。傘はすぐに手に入ると踏んだのだ。
だが…見つからない。
残酷な話である。あの妖精は、事前対策も用意させぬまま、
突入して数分で凍り付いてしまう世界に猟兵達を放り込んでしまったのだから。
「……このままでは……。」
徐々に動かなくなっていく、体。
まさかオブリビオンを倒す前から絶対零度の地に伏してしまうなど、考える筈も無く。
「……?あれは……。」
氷漬けになりながら、尚動く体で絶対零度の世界をぎしり、ぎしりと、身の氷の音を立てながら進んでいた時だ。
「………先んじて進んだ冒険者……いえ、騎士団、でしょうか。」
毛皮の混じる様々なジョブの衣服を着飾った、勇敢なる女性達が、氷の中に閉じ込められていた。
その眼には最早生気は無く、そんな氷像が龍破の視界いっぱいに広がって佇んでいた。
ある者は手を伸ばし、ある者は何かに向けて進撃を開始したまま、ある者は転んだ拍子に、ある者は弱り、膝を着いた姿で。
まるでこの絶対零度の地でかつて戦いがあったかの様に。
彼女らの進み行く先に……遂に見つけた!
風に飛ばされたまま氷に閉ざされたような、大量の傘が!しかし。
「……!?」
氷を破壊する、青いドラゴンがいた。
その氷の中からは向日葵色に輝く傘がぼろぼろと零れ落ちる。
それを全て小脇に抱え、広げては何かをしている。
「くっ…」
飛び込もうとした。せめて技を放とうとした。それが欲しいとも言おうとした。
「……ぁ……」
だが、それすらもうできなかった。
これまでの探索に時間を取られていたせいで、遂に龍破の全身は、行動不能になる程に凍り付いてしまっていたのだ。
「(それを、私に―)」
周囲にいる女騎士団の成れの果て。
その中の1体に加わるかのような、和装男子の氷に覆われた姿。
ただ吹雪だけがその体を撫で、完全に凍てついた絶対零度の彫像は、その色をただ純粋で、厳寒なる氷の色に染待っていく―。
「…………」
凍てつき、静止した、手の先。
視界さえも氷に覆われ、意識さえも凍り付く中、こちらを見るドラゴンの姿が、映った、気がした。
光が、差し込む。
これはもしかすると、グリモアの転送光?
……太陽のような、暖かな光である。
「…………はっ。から…だが…。」
動く。光に照らされた氷が、完全にではないが溶けていき、崩れ落ちる。
「大丈夫か?」
傘をさしていたのは先のドラゴン。
正確には鎧を纏う2足歩行の青い竜人(ドラゴニアン)。セゲル・スヴェアボルグ(f00533)だった。
「がっはっは、すまんなあ。俺に似合うサイズの傘を探していたら、結果的に独り占めになってしまったわ!」
「……っは……っ……」
「お?まだ十分喋れんか?肩を貸してやろう。」
春告精を倒しに、2体の影が氷の地を歩む。
次第に太陽の光で、未だ氷に覆われた和装の中、肌が暖かさを思い出し始める。
「…そん、な、状況で、傘を貸していただき、ありがとうございます。」
龍破は徐々に舌が回り始める。何時もの彼に、魂が氷塊していく。
「しかし、なぜそんなに傘を?」
「む?うむ。見てみろ俺を。どうだ?これだろう?」
ぐいっと親指で自身を指すセゲル。187センチにして横に広き巨体。
「太陽の傘とやら、サイズは色々あるようだが、俺に叶う丈のものは無くてな。故につなぎ合わせ、俺に似合う傘を作る必要があったのだよ。」
それは巨大な蝙蝠の翼か、もしくは雨合羽か。改造された巨大な太陽の傘がセゲルの翼に括り付けられ、陽光が体を覆っていた。
「はぁ…、巨人用の傘等があれば解決できたかもしれませんね。」
「無理は言えん。この傘は見た所先の騎士団のものだったようだしな。……解凍も試してみたが、無理だった。絶対零度に晒され過ぎたのか、炎でも溶けんかったよ。」
「……そこまで?」
「ああ。下手に砕いて中の者を壊すわけにもいかん。そして我らの目的はオブリビオンの退治だ。一応な。……暇があれば、もしくは治す力のある者なら、助けておきたくはあるが―」
太陽の傘は入手できても、その元の所持者は助ける事ができない。
そもそもこの太陽の傘があれば、その事態が解決できた気はしない。
何故なら太陽の傘自体もここで冷凍保存されていたからだ。いつこの陽光が切れ、再び氷に閉ざされるかは知る由もない。
少なくとも、今は。
昔起こった悲劇の産物にやや歯噛みしながらも、二人は進むしかなかった。
「あっ、いましたよ妖精さん。」
龍破は絶対零度の世界の果てに、みるみるうちに凍り付いていく桜の木を生やしながら進み続けている春告精を見つけた。
「よぉし。まずは一太刀―」「ちょっと待ってください。」「んむ?」
すると龍破は大声をあげる。目の前の春告精だけでなく、周囲にも聞こえる程の声で。
「おーい!私達も混ぜてくださーい!」
すると春告精が…気づいた者だけではない。他に散らばっていた春告精達も何処からともなく吹雪の中から現れる。
「(どうした?一体)」
「(あえて集めて一網打尽にするというわけですよ)」
「(成程。花見の隙を狙う訳か)」
「(…いえ?花見は始めませんよ。楽しむつもりも。)」
「(む?)」
二人に集まった春告精達。その姿は桜の衣装の上から暖かそうな白熊…不凍熊の毛皮コートを全身に着飾っているものだった。
その横で鍵らしきものを地面に刺し、桜の木を生やそうとしている春告精もいる。
「人間…人間さんだ」
「わぁい、人間さん!」
「春だよ。ここは今から春にするの」
「凍り続けているけれど、芽吹居ているから立派な春。」
「お花見、お花見する?」
「お花見ですか?」
龍破が語りかける。
「そうなの。お花見」
「花を愛でるのは吝かではありませんが…お花は何方に?」
「此方に!」
朗らかな笑顔を零した春告精の後ろで、天高く生えて来た美しき桜の木。
しかし絶対零度の寒気によってたちまち氷の桜に変わっていく。
「御冗談を。氷漬けの花では愛でる事も儘なりませんよ」
「うん。」
春告精は肯定した。
「それでも春を生やすの。こんな真冬の世界でも、世界は暖かいから、私達『春呼び隊』が、春を呼びに来たんだよ。」
「春呼び隊」
「春呼び隊!」
なんだか暖かなペースに飲まれそうだ。太陽の傘で暖かな外気となっているせいで、余計に。
「貴方もここでお花見しましょう!」
「氷の桜もいつかは溶けて、立派な花景色になるでしょう」
「だから」
「だから―」
春告精は太陽の傘を取り落とさんと、手を伸ばす。
自身は毛皮で何とかしているが、他の者達も大丈夫だと、よもや傘で寒気を何とかしているとは思ってもいないのだ。
「いいえ、お断りします」
しかし龍破は冷たく論じる。
「えっ…」
「見てください。私の手を。片手に傘、片手に刀、既に両手が塞がっているので手を繋ぐ訳にはいきません。」
「傘、私達がさすよ?」
「その刀もおろして―」
「―春の料理もいっぱい持ってきたし―」
「それに」
一刀。
龍破の刀が春告精の1体を切り裂いた。
「それに私は冬が好きなのです。そりゃあこんな寒々しい所にわざわざ出向くのですから。」
「わ、わ、」
「春告精さん、お帰りの―」
「「「宴会だわ!!」」」
「…は?」
決め台詞を言おうとした所で春告精達はむしろ歓喜した。
「暴れに来たんだね!」
「春は芽吹き、目覚めの季節!」
「春の嵐は暴れん坊。その力をもっと目覚めさせてあげるね」
「沢山沢山暴れましょう!」
グリモア猟兵の情報から最適な対策を試みたはずの龍破。
敵がのんびり花見をさせて来るなら、それを真っ向から否定すればいい。
しかし、この度の自身が最終的には―力押しの作戦で来ていた事を忘れていた。
「良く分かりませんがいやな予感がしてきましたよ。ユーベルコード発動。冽破――!?」
いつの間に!龍破の刀より早く、手をつなごうとしていた春告精は懐に。
春の、目覚め暴走させる鍵が、龍破の胸に差し込まれんと……!
「失礼する!」
「うぐっ!?」
セゲルが龍破を横から跳ね飛ばす!
代わりに鍵がセゲルに差し込まれ……!
「む、ぬうう……っ!」
「セゲルさん!?」
「すまんな、俺はむしろこいつが来ると思ってたのよ!退屈な話で欠伸が出そうにもなったが、分かっていれば…!」
むきむきとセゲルの肉体が膨れ上がる。
竜人から完全な青い龍へと変貌していくのを、己の筋肉で耐え続ける。
しかしその過程で翼に括り付けていた、太陽の傘が爆ぜる…!
「セゲルさん!」
「心配いらん!敵はあっちよ!」
「!取り乱しました。」
「もっと暴れま―」
再び鍵を差し込みに来る春告精を龍破は薙ぎ、切り裂いた!
「お帰りの時間ですよ。春告精さん。ここは冬のままでいいので…!」
「お、う。畳みかけさせてもらおうか!」
「きゃーっ!」
セゲルの斧による激しい一撃が衝撃波を伴って春告精を吹き飛ばす!
「この刃、今は北風の気魄となりて……荒れ狂え!『冽破裂空烈斬』!」
無数の真空の刃が絶対零度の風と合わさり、切り裂き、なぎ倒す!
「セゲルさん!傘を」
「心配いらん!これでも多少、氷には耐性があってな。」
ふと龍破が見上げると。その経過時間では瞬く間に自身が凍っていたであろう時間だが…。
一向に凍る気配がない竜人が斧を振るっていた。
「……た、多少……?」
「ふっ!手練れはユーベルコードでそれなりに増やしたりするのでな!この程度の差は針の穴程度よ。…さてその桜。見納めと行くか!」
「…!ええ。行きましょう!」
気魄を込めた斧の一撃、北風を交えた刃の一撃が合わさり、春告精に迫る!
「私達の、春、春が、ここに―!」
その一撃で春告精達は、舞い散り凍る桜と共に、なぎ倒される桜の木と共に、木っ端微塵に吹き飛ばされた。
「よっし!次の戦場に行くか。」
「セゲルさん、流石に翼が凍っています。ちょっと失礼……」
「んおっ?」
龍破は筋肉の膨張が収まったセゲルの背に回り、太陽の傘をさす。
「がっはっは!まあ二足で動くには物足りるやわな!…感謝する。」
「いえ、こちらも先程は。」
「よぉし、まあ前衛は任せとけ。遅れるなよ」
「解凍は任せてください。」
絶対零度の地を、冬に戻さんと2人の影が進行する。
「所で…グリモア猟兵の妖精さん、此方の品に含みはないのですよね?」
ぽつりと、それとは別に春を戻しそうなその傘を見上げ、龍破が呟きながら。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宮落・ライア
ひゃっはー!極寒の地だぁー!(なぜゆえか自棄気味テンション)
とりあえずかさ取りに行くぜひょっほー!
ぶち壊すのはなんか怖いから刀で氷を斬ろっか。
ばっさぁきゃっきゃ。
でー、この傘を手放させようとしてくる感じかー。
はっはっは!ここは寒いな真白い世界だなものすごく冷たくて止まった世界だなでもきっと暖かいなここは進化の世界だなきっと温かく成れるな
何回やり直せば適応できるまでに進化するかなそれまで何回止まる事になるのかな?
(ただただ意味のない言葉を羅列し続け意思疎通を拒否する)
そして片手で刀をスローイング
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ううう、さむーい!急いで太陽の傘を掘り起こすよ!
持ってきたピックで氷がガツガツ削っていくね♪
傘をゲットしたらさっそくさしてみるね!人間用だからボクがすっぽり入るね!
そのまま背中の翅を羽ばたいて空中から春妖精に近づくね♪
ふわふわ傘で漂うように春妖精を観察!
地上から一緒にお花見しましょうって誘われるけど・・・
氷漬けの桜の木も風情があるけどやっぱり桜は桜の花びらがヒラヒラしてないとね!
お花見を堪能しつつテンションが上がってきたら空中から【お姫様ビーム】でどっかんどっかん無差別攻撃だー
●太陽をも凍らせる世界
「う…ううう、さむーい!」
向日葵のようなオレンジの髪、爽やかな草木を思わせる衣装を纏い、元気いっぱいの笑顔を振りまく妖精、ティエル・ティエリエル(f01244)は、
転送されて一秒、瞬く間に全身が凍り付いていく感覚に凍えていた。
「急いで太陽の傘を掘り起こすよ!アイスピックももって来たんだから!」
幸いかすぐに見つけられた氷漬けの傘の転がりもの。
急いで、一生懸命にがつんがつんと、小さな妖精はアイスピックで氷を削っていく。
「はふ…ぶるぶるぶる。あ、あとちょっとなんだけどなー…!」
体が痛い。綺麗な手足がもう殆ど凍り付いている。
選んだ傘の氷の面積が、ティエルが氷を削り切るくらいの厚さをしていない。
その前に全身が凍ってしまいそうだ…!
「こ、このまま氷漬けになるなんてやだやだ!せめてお姫様っぽくかっこいいポーズで……じゃなくて!」
一瞬それっぽいポーズの妖精姫の氷像が出来上がりそうだったが、がんばって氷の掘削に従事しようとする。
「あ…だめ…やっぱり寒い…眠く…」
絶対零度に晒された体が、瞼を閉ざそうとしたその時。
すぱーん!と、飛んできた斬撃で一気に氷が削れた。
「わ、これ…なら!」
残る精一杯の力で、削り切った傘を持ち上げ。足が氷の大地に覆われ、吹雪で雪が体を凍り付かせ、もう手しか動かないけれど。
「(ん…んんん…!)」
表面がまだちょっと凍ってても、これならいける。ティエルは太陽の傘を…開いた!
「ふぁ、ふ。やった。傘ゲット!……あたたかーい……!」
太陽のような妖精が完全に閉ざされる直前、間一髪、太陽の傘の陽光はティエルの全身を満たし、絶対零度の氷を溶かしていく。
ティエルはあと一押しを助けてくれた、銀髪ポニーテールの少女に声をかけようと。
「ありがとー人間さ」
「ひゃっはー!傘ゲットー!」
「うわあ!?」
手にした刀をぶんぶん振るいながら、凄い希望とやる気に満ちた顔で手当たり次第に氷を斬りまくっている。彼女の名は宮落・ライア(f05053)。
「いやー極寒の地だなぁー冷たいなー寒いなーそれでこれが傘かーこれ持って戦わないといけないとか過酷だなーどんな気持ちでこんなので凍土超えようとしてたのかなー」
「あっあのっ」
「妖精はどこにいるのかなー氷は硬いなー壊すよりはやっぱり斬るだよなー彫刻はまた今度だなーどこまでこの傘あるのかなー!」
「す、すごいテンションだっ!?」
「もっともっと斬りたいなーそれでこの傘を手放させようとしてくる感じかーすごいなー手強いなーとにかく行くしかないなー!」
片手に傘、片手に刀をぶんぶん振り回し、きゃっきゃと楽し気に次々と傘を覆う氷を斬りながら、彼女は明後日の方向に全力で走っていった。
「ぽかーん……あっ、いけないいけない!きっとああいうテンションで寒さを克服してるんだ!ボクも見習……いやちょっとだけ。うん!」
他にやりたかった事もあるし、とティエルは傘を見上げる。
わざわざ妖精サイズでなく、人間サイズのものを用意した太陽の傘は、とっても大きな丈をしていた。
「せーの、びゅーん!」
傘を広げたまま絶対零度の大地を、真っ直ぐ上に飛び上がる、太陽の妖精姫がいた。
●お花見は言葉の嵐の中で
広げた傘で、ふわり。ふわり。
「へえ、こんなになっているんだ。グリモアの地図(全体マップ)で見た時よりも、ずっと広くてきれいだね♪」
凍り付く絶対零度の寒気は太陽の傘が和らいでくれる。
極冬の大地の空を、まさに妖精の如く、ふわふわと空中散歩を楽しむ、妖精。
「あっ、あれかな?桜色してるからすぐにわかったよ!」
人間でいえばキャンプをするかのように、花見の準備をしている春告精達が地表から見えた。
「あっ、あれ」
「お仲間だ」
「お友達だわ」
「おーい!おーい!」
春告精達が一斉に見上げて手を振る。
「「「一緒にお花見しましょー!」」」
「わ、誘われちゃった。」
ひらひら花咲く、氷の世界に一面だけの桜。
しかしそれは白く凍り付いていた。
「んー。ごめんね?氷漬けの桜の木も風情があるけど、やっぱり桜は桜の花びらがヒラヒラしてないと!」
朗らかに苦笑いしながら手を振るティエル。
しかしそこで急に周囲の空気が重く、ゆったりとし始めた。
「…あれ?」
「そんな事言わないで、一緒にお花見しましょう。」
「この場所のお花はすぐ凍っちゃうけど、きっといつか溶けると思うの」
「それはきっと、きっととても素敵なものになるよ…!」
「(あっ、しまった。楽しまなきゃ遅くなるんだっけ…!)」
妖精達が一斉にやってくる。その動きを止める事ができない。
「春はお花見。花々は見た人が美しさに魅了され……」
妖精達がティエルの周りをくるり、舞う。
「春はお花見。心奪われる時間は、皆ゆったり夢心地。絶対零度の世界にだって、朗らかな空気をお届けするの。」
「(この傘が無いと凍っちゃうんだけどなー…!)」
言葉が、紡げない。ゆっくりとした時間の中、口の動きも遅くなってしまう。
春告精には太陽の傘がどういうものなのか分からなかった。不凍熊の毛皮くらい貸して欲しいものだったが。
「ごめんね。毛皮はもう予備がないけれど」
「とりあえず、あなたにはもっとお洒落な傘を用意してあるの」
桜と太陽が混じった、春と夏の季節の代わり目を思わせるような傘に、ティエルの太陽の傘を交換しようと手を伸ばす……。
その時!
すこーんと、春告精の一人に刀が突き刺さる。
「きゃあ!」
きょろきょろと周囲を見回すと、花見会場に全速力で飛び掛かる一人の人間(キマイラ)!
「はっはっは!ここは寒いな真白い世界だなものすごく冷たくて止まった世界だなでもきっと暖かいなここは進化の世界だなきっと温かく成れるな!」
「!?」「!?」
先程のライアだ!
早口言葉でちょっと考えないとよく理解できそうにない言葉を全力で羅列しながら背中にマウントした多数の刀をポイポイと投げつける!
「きゃあ!」「えっ、何!?何!?」
「こ……れ……は……」
「何回やり直せば適応できるまでに進化するかなそれまで何回止まる事になるのかな繰り返し繰り返しやり直す行為に果たして意味はあるのかな試行錯誤の進化の果てはボク達と分かり合えるものなのかな」
二度助けてもらったティエル。自暴自棄とも言えるライアの言葉の洪水に、しかし一瞬何かを閃いた、いや理解した。
「……早口言葉だ!」
「あっ!」「!!」「もしかして私達に」「早口……」「早口!」
「そっか……理屈は良く分かんないけど、そうなんだ。お花見に、早口勝負!」
春は陽気の季節。浮足立った中にはお笑いやチャレンジ、一芸を輝かせる者がいるって人間さんが何か言ってた。
つまりあの人は春告精のお花見に早口言葉で対抗しようとしている!気がする!
「それじゃあボクも行くよ!かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこあわせてぴょこぴょこむぴょこぴょこ!」
絶対零度の春の誘いにティエルのテンションが上がる。お花見の時空が氷解していく…!
「なまむぎなまごめなまむうみゃみゃみゃ!」
「はしばのしばにししばかりしばかりししゅあっしゅふぇあっ」
「にわににわにたにわとりににわかににわかあめ!やった言えた!」
「しんしゅんしゃんしょんしょー!」
呼応して春告精達も早口言葉で対応する!
「文明が発展すればどんなのになるのかな隕石が落ちて始まるまでの間に創生されてできた地がなぜこんなになるのかななぜ風が吹きなぜ進みなぜ誰も切り開かないのかでもそれも些細な事なんだな滅んだ熊がかられたのは知恵のせいかな毛皮を借りた知恵は上手くいくのかなこれは着るものでなくより集めて住居を作り発展する方法もあり可能性は模索して試すまでの段階がまだ来てないのかもしれないな?」
回収した刀を拾いなおして広げた傘と共にぶんぶんと振るうライア!
あまりのハイテンションは体を凍らせ足り溶かしたり火照らせたり花びらを吹き飛ばしたりとにかく忙しい。
ただ一つ分かるのは、その眼にはすさまじくキラキラした光を灯している事だけだ!
「よーしテンション上がってきた!ボクもいくよ!」
ティエルもまた早口言葉の応酬に体が漲り、その気合が妖精姫のなんかすごいエネルギーとなる!
「お姫様…ビーム!」
「「「きゃーっ!」」」
「さんさんとしたさんみゃくのさんかきゃっぴゃ舌噛んじゃっきゃー!」
「ふわーっ!」
ドカン!ドカン!上空から、器用に片手で持ったお姫様のレイピアが、凍土にクレーターを残しながら春告精を吹き飛ばす!
「姫様ビーム!お姫様ビーム!お姫様…あっ!?」
「ひゃおおぉおぉぉああぁぁぁぁあ!!?」
調子に乗り過ぎたティエルのビームが、あろうことかライアに直撃する!
「おぉおお迸る稲妻はすごいな刺激的だな氷に雷は効くのかな水みたいに通すなら溜め放題ではないのかなすなわち氷は海でこの地は発電所でボクはなんだか今ならビームが撃てそうでそれは文明進化の魔法のような新たなる世代の礎でいやもうなんかかっこいいな体から迸るこのダメージは五臓六腑から先端で髪や指やリボンや刀からいやっほおおぉおぉおう!!!!」
ライアはそのビームのエネルギーを刀で受け止める。お姫様ビームが刀にエンチャントされていく……!
宮落・ライアも女の子。お姫様にお姫様がチャージインだ!
妖精姫ティエルの気合が入った刀から…稲妻の如きビームを伴う、横一閃が!
「ひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
「「「きゃああああーーー!!!」」」
「とうきょうのとっきょきょきょか…あっとうきょうってここでは凍狂って読きゃあああー!!!」
花見会場ごと巻き込むビーム斬撃が、春告精達を跡形もなくジェノサイドさせた!
●「対策だったんだ」
一仕事終えたライアがテンションを落ち着かせ、ティエルに語る。
「え、あ、うん。そうだったんだ。」
「ごめんちょっとその怪しい人見る目をやめてくれない!?いや本当なんだって!テンションあがっただけじゃないんだって!」
「早口言葉お姉さんなだけじゃないんだね?」
「あっだめだそういう目で見てる顔してる」
ライアはここまでのテンションのいきさつを話す。
グリモアベースで見た敵『『春告の妖精』スプリングエルフ』のユーベルコードには手をつながせるものがあった。
これで傘を跳ねのけられ手をつないだが最後、傘の力を失って凍らされてしまう。
発動条件は『対象2人の意思疎通』。つまり意思を通さない力が必要だったのだ。
「だから早口言葉合戦の時は正直ひやひやした。まさか早回しの台詞で意思合わせに来るとか思ってないじゃん。でもテンションでごり押しした。反省はしていない。だってもう敵目の前だったからね?」
「ライアって、素のままでも結構お喋りさんなんだね」
「おっと誤解か!?」
「くす。ちょっと面白かっただけ。それじゃあ次の戦場まで、ボク達だけで早口言葉勝負、してみる?」
「いやあれ厳密には早口言葉じゃないんだけどなー。いいよ。」
秒での承諾。このノリの良さ、この意思の力がライア最大の武器なのかもしれない。
二人は絶対零度の中で、太陽が輝くようにお喋の賑やかしを続けつつ、先へ進んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セルマ・エンフィールド
私は春も嫌いではありませんが……敵ならば撃つのみです。
片手が傘で塞がれていますし、フィンブルヴェトは撃つためには扱えなさそうですね。
お花見を楽しんでいない者の行動速度が遅くなる、ですか。先ほども言った通り春も嫌いではないので。
【吹雪と歩む者】を使用、吹雪で桜の花びらを飛ばし、吹雪と花吹雪を混ぜ合わせましょう。普通なら見られない光景です。こういうのもいいでしょう?
吹雪と花吹雪の景色を堪能しながら片手でフィンブルヴェトを扱い銃剣で直接串刺し、あるいは不凍熊の毛皮を斬り飛ばすことで春告精を凍てつかせます。片手での扱いは慣れませんが、【吹雪と歩む者】で戦闘力が向上していますし問題は無いでしょう。
御影・雪乃
私の【氷結耐性】でも厳しいのでしょうか
それとも、他の方よりは動きやすいのでしょうかね
とりあえず『護身用ナイフ』をぶっ刺したり炎属性の【属性攻撃】を【高速詠唱】してぱぱっとみんなに太陽の傘をゲットしましょう
複数あるならついでにぱぱっとみんなに配ったりも
雪に桜…綺麗ですね…
ここに氷像もあれば、もっと綺麗かもですね…?
(UCを使い、自分を中心に敵の集団を壁で分断するように迷路を作る)
…さてこれで数のデメリットは抑えられます
さあ、毛皮狩りとお花見を楽しみましょう♪
不凍熊の毛皮を【盗み攻撃】や【盗み】で盗んでまわれば、そこには氷像と桜と雪
表情や格好も色々で見飽きないですね
とても素敵なお花見…ふふふ
●ある雪の少女の探訪
ふっ と。
吐息を世界に向けて放つ。
その息は白くもならず、ただ彼女本来の冷気による雪結晶が、透き通ってきらきらと舞う。
体の中に、少し、氷で軋む感覚が伝わった。
「……それなりに長くは居られますか。」
落ち着いたままに、氷の如く青白がかった灰の髪をたなびかせ、少女は進む。
「しかし、いずれ凍ってしまう……いつかものにしたいですね。これも」
絶対零度の大地にて、人形の様なゴシックドレスに雪結晶が張り付いて。
短剣が氷に突き刺さる。
「…やや不得手ですが、炎よ。」
ルーンの如き呪の文字が走ると、その氷は一瞬で溶け、中から山吹色のさんさんとした傘が現れる。
「…さて」
その少女は、まだ見ぬ春の妖精を探しに、絶対零度の世界を歩み始めた。
広げた傘の表面に、美しい氷雪結晶の模様を装飾しながら。
●ある氷の少女の探訪
BLAM!
銃撃で氷が破壊され、中から傘が現れる。
やはり氷のように青白がかった髪を持つその少女の名はセルマ・エンフィールド(f06556)。絶対零度の射手の二つ名を持つ。
「私は春も嫌いではありませんが……」
その冷たく透き通る瞳が、虚空の先に居る敵を見据え、そして傘を取り、広げる。
「……片手で持つ以上、フィンブルヴェトは撃つためには扱えなさそうですね。」
恐らくは己の一番得意とする絶対零度の領域。
本当は傘などささず、絶対零度に身を任せて戦いたくもあったが、この過酷な外気に触れた瞬間察してしまった。
自身の氷の力でさえも、この絶対零度の中では凍り付いてしまうと。
戦い方を変えなければいけない。いつもの銃撃でなく、銃剣による斬撃。
「まあ支障はありません。敵と戦うのみならば」
即座に構え、絶対零度の中でも全力を振るう己の勘を慣らしていく。
「ただ斬り、撃つのみです。」
何もかもが凍てつき止まる、絶対零度の吹雪の中、せっせせっせと凍てつく花畑、そして桜の木を、咲かせては凍らせてしまう春告精達がいた。
そしてその吹雪の向こうから、セルマ・エンフィールドはやってきた。
「おねえさん、お花見?」
「私達、春呼び隊!」
「今は凍っているけれど、花を見る事はできるから」
「その傘を下ろして、私達と一緒にお花見しましょう。」
「ここは春」
「春なの」
「一緒にお花見…」
「ええ。致しましょう。春も嫌いではないので。」
「『も』…ううん。良いよ。こっちきて。桜団子もあるよ」
春告精達は凍った花びらで作ったカーペットにセルマを誘導しようとする。
「いえ、このままで結構です。」
セルマが傘で無い方の手をかざすと、春の陽気で守られていた花見の場所に、綺麗な吹雪が舞い起こる。
「きゃ!」「わ―」
雪結晶輝く吹雪の華と、薄桃に彩られる桜の吹雪の華。
それらが今この空間で舞い、幻想的な光景を生む。
「こういう花見もいいでしょう?」
「凄い」「春と冬が合わさってる…」「私達もやりたい」
「やってみるね?」「いいよね」
吹雪に対抗して、春告精達が一斉に桜吹雪を巻き起こす。
「ええどうぞ、ご自由に。しかし私は止まりませんので」
その言葉に首を傾げた春告精。直後に愛用の銃剣、フィンブルヴェトを持ち直す。
「え―」
刺され、斬られる。
その春告精は毛皮を切り取られ、元の桜の衣装に戻ったかと思うと、たちまち凍り付いてしまう。
「きゃあ!」「ご乱心!」「乱痴気騒ぎだわ!」
最後の言葉は合ってるかは分からないが、フィンブルヴェトにつけられし銃剣『アルマス』は、問答無用で春告精達の不凍熊の毛皮を狩っていく。
「切り倒されるよりは相応しい末路でしょう。私は絶対零度の射手。そこで凍り果ててなさい。」
無慈悲に、正確に、片手だけの銃剣で春告精を切り裂いては、絶対零度に晒し凍らせていく。
その時である。
「……」
もういなくなったと、一瞬思ってしまった。
周りに居るのは切られて氷像と化し、花見会場に転がった絶対零度の春告精。
しかし数が少ない…。
「上ね」
見上げた瞬間!
「っ…!」
大量の桜の花びらがセルマの視界を覆う!
「しまった、傘が―」
「おねえさんは太陽もいいけど、お花が似合うと思うの。」
花びらと共に落ちて来る大量の春告精に、耐え切れず手から傘を落としてしまう!
その傘に手を伸ばすも、絶対零度の吹雪が、春告精の悪戯のような桜吹雪が、明後日の方向に吹き飛ばしてしまう!
「―!」
何たる不運か。本当に許して欲しい。
作戦、力量、確実に成功するその努力は、可能性を極限まで成功に近づけるも、決して100%にはなりえない。
神の天運は時たまに恐るべき気まぐれを起こしてしまうのだ。
「…作戦変更。時が来るまでに狩り切ります。」
片手で持っていた改造マスケット銃・フィンブルヴェトを…両手で持ち直した!
「…………」
腕が氷に覆われる。
それでも冷静に春告精の毛皮の継ぎ目を撃ち抜き、凍らせる。
「…………」
足が凍り付き、氷塊に自由を奪われる。
それでも冷静に群がる春告精を銃剣で薙ぎ飛ばし、追撃に銃撃を撃ち放つ。
「……………………ここ、まで…………です、か…………」
最後の春告精の毛皮を爆ぜさせ、凍てつく花見会場が静まり返る。
花見の場に大量に存在し、どれも慌て、慄いた姿のまま絶対零度の吹雪に樹氷の如く凍てついた春告精。
その中心で、フィンブルヴェトを構えたまま、最早目と口以外が硬く冷たい絶対零度の氷で覆われた、セルマ。
「私は…絶対…零度の…」
ふと、思い出してしまう。サムライエンパイアでの戦いを。
強大な氷雪の力を持つ雪女のオブリビオンに、絶対零度の力をもって凍らせたあの戦いを。
氷使いが、凍りつき、止まる。
敵に放ったその経験を、今度は自身で、……『絶対零度』という名の大自然の猛威で、己が晒される事になるとは。
「……………………」
凛々しく、氷のような表情を最後まで保ち続けたセルマ。
美しきその氷像は、しかし中で力を蓄えている。
生きている。それもとても心地よき、冷気。
周囲の絶対零度の冷気が、今は動かぬ己の身体に集まり、力を高め続け、生き続けている。
だが、氷は彼女が動く事を許さない。
生きたまま氷漬けとなり、己の力と絶対零度の力による吹雪と、凍てついたまま散り続ける氷の桜が、ただ延々と、セルマの身体を撫でた。
「……………………」
「これは、見事な…」
その氷の世界に、傘をさして訪れた少女がいた。
「永遠に、見続けていたいですね。」
その少女は氷の桜が散る中で佇む氷像、そしてその中心にいる絶対零度の射手を見て、冷ややかに、三日月の如き口を釣り上げた。
「ええ、分かります。貴女も猟兵ですね?…ですがいけません。私みたいに、周りからやってきた春告精が、ほら。」
他所からやってきた『春呼び隊』が、この光景に見惚れながら、迫っていた。
その少女…御影・雪乃(f06012)は、氷のセルマに顔を近づけ、傘を差した。
「というわけで解凍しましょう。」
「……っ……は……」
吹雪が太陽の光で輝いて。
絶対零度の氷が朗らかな陽光にその硬さを緩めて。
セルマ・エンフィールドは吹雪と共に、氷を崩し、はっと目を見開いたまま…動きを再開した。
すぐに周りにマスケット銃を構え、オブリビオンの状況を察知する。
「……礼だけは言っておきます。」
「それで構いません。いつもの私なら貴女のような物は、このまま氷の景観として残したまま戦っていた事でしょうから。」
「そうですか。」
「いい目をしていますね。」
冷気が零れる。雪乃の口から。
その装いは氷の世界を訪れた、冷たき氷の淑女。西洋の雪女とも取れるようで。
「ふたつ。…ええ、貴女を助けたのは、ほんのふたつの理由です。」
雪乃はそっと一旦傘をたたみ、戦場に高らかに響くステップと、冷気の籠った手を……払いかざした。
「私と同じ氷の匂いがした事、そして。」
「…これは。」
セルマは目を見開いた。戦場に現れたのは、雪乃魔法で作られし氷の迷宮。
「―そして、獲物を『狩り足りない』という目をしていたからです。」
舞台は私が造りました。もうあの子達は小路に逃げた鼠。
再開しましょう?春告精狩り。
●絶対零度がふたり
「わ、わ…」
「逃げなきゃ、逃げなきゃ!」
氷の迷宮。
そのまま居ればたちまち体が凍り付き、最後には物言わぬ氷像と化してしまう、魔法の氷で出来た迷路。…本来ならばの話である。
しかし不凍熊の力で春告精達は凍る事は無い。迷路であるだけで、無害である。
だが―
「春が、春が…冬に…きゃあ!?」
吹雪が一度、吹いた。
その春告精のもこもこ熊さん毛皮は、一瞬にしてはぎ取られた。
「逃さない…」
雪女の如き凍てつく笑みを見せる、雪乃の力によって。
「あ、あ、…………」
返して、と言わんばかりに手を伸ばした春告精は、たちまち凍って、静かに倒れ伏した。
「は、春…春は、ここに―」
地に鍵を刺して大量の花の壁を生み出した春告精。
そこに吹雪が一度、吹いた。
「――………………」
その大量の華が、身に纏う毛皮が、一瞬で吹き飛ばされ、両手をあげた姿のままその春告精は凍てつく氷壁に閉じ込められ、動く事無く佇み続けた。
吹雪の中から現れたセルマが、春告精の背後から逃げ出していたもう1体の春告精に、ひねるような動きで銃剣を切り込む。
「い、いやっ!だめっ、凍っちゃ―」
驚いてこけるような姿で、空中で絶対零度に晒された春告精は、地に倒れて物言わぬまま壁まで滑り、音を立ててぶつかり……静止した。
「一人」
「またひとり…」
絶対零度の世界で出来た絶対零度の迷宮。
今やそこは春の狩場。溶ける事の無い永遠の冬に引き入れようとする絶対零度の雪女が、ふたり。
「あのかさがいけない」「乱気流あたっくで立ち向かいましょう」「みんな、こうなったら力をひとつに!」
残りは3人の春告精。それらが迷宮の直進通路で1列に並び…突撃を仕掛ける!
「あら」
狙いは雪乃だ!
「自棄になって飛び掛かりましたか。良いでしょう。全部受け止めて、素敵なオブジェにしてあげましょう。」
口を釣り上げ、春告精の1体の毛皮を通りざまに瞬時に奪い取り、凍らせる。
「今だよ、たっくる!」
「うっ…!?」
あまり宜しくない声をあげて、1体目の背後から飛んできた春告精のタックルを受ける!
雪乃は思わず傘を取りこぼしてしまった。
「…この…!」
雪乃は高い氷結耐性がある。すぐには凍らない。
「春は目覚め。目覚めを促す鍵を…!」
それを暴走させ、自爆させようとする3人目の春告精が、目覚めの鍵を付きつけに行く!
「伏せて」
「!」
雪乃はタックルを受けたその態勢を、足をわざと滑らせて強引に地に伏せさせる。
浮いた春告精が、ふたり。
雪乃の後ろから、傘を捨て、マスケット銃を構えたセルマの銃口が!
「スコープの向こうにいるのは獲物だけ。―フィンブルヴェト・炸裂氷弾―」
BLAM!
放たれた氷の銃弾が、2体の春告精達に貫通。
着弾した瞬間、内側で爆ぜ、衝撃で毛皮を爆散。
「きゃ……」「あ……」
最後の2体が氷結し、ただの氷となって地に落ちた。
●そこにはただ一人、雪乃だけが見上げる氷華の空。
「ここに残るのですか?」
「ええ」
氷の迷宮が解かれ、花見会場を中心に氷漬けとなった春告精達が転がる空間で。
「私、ここには花見を楽しみに来たのです。桜の花が咲き誇る、絶対零度の世界があると聞いて。」
「戦争も半ばに酔狂な事。」
セルマは氷の瞳を一瞥した後、踵を返してその場を去る。
「…借りは、あれで返したという事にして。」
去り際にそう呟きながら。
氷漬けの桜の木の下、悲痛にわめく春告精を人形の如く傍に置きながら。
雪乃はそっと腰を下ろした。
太陽の傘を畳み、傍に置く。
ふぅ、と、白くもならず、透明な絶対零度の雪結晶となって散る、自身の吐息。
そして己の身すらも凍らせる、絶対零度の世界を、その身で堪能する。
「…いいですね。絶対零度の、素敵なお花見…」
ふふふと、微笑みを零しながら、凍てつき動けなくなる体を、再び太陽の傘をさして、溶かす。
何度も、何度も繰り返しながら、氷すらも、春すらも、誰もが凍てつくその絶対零度の地で。
雪乃は飽きるまで、花見を堪能し続けた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ガルディエ・ワールレイド
言動だけ聞いてると、案内してくれたグリモア猟兵の方が非道なような……いや、なんでもない。
◆行動
(一応氷結耐性も有り)
最優先で武器攻撃や《念動力》を使って氷を砕き傘を入手するぜ
その後は片手で傘を差し、他方の手に魔剣レギア
【春はお花見~花々の美しさに魅了され~】対策
花見を楽しむ……良い言葉だ
今回は流儀に乗ってやろう
戦闘時は適時、自分の足元(つまり傘の下)へ【竜の棲家】を使用し、そこを花々が咲く緑豊かな場所に変える。
そして、《念動力》での妨害、【竜の棲家】による攻撃、敵が近づいてくれば魔剣で近接攻撃を仕掛けて交戦
花を咲かせながら戦うのも一興
これは癖になりそうだ
よう、テメェは花見を楽しんでるか?
●花と団子に喧嘩は春のせいで
「言動だけ聞いてると、案内してくれたグリモア猟兵の方が非道なような……。」
漆黒の髪を持つ騎士、ガルディエ・ワールレイド(f11085)は、絶対零度の空の中ごちた。
「いや、なんでもない。今回は乗ってやろう。花見は楽しいしな」
その場に転がる氷に手をかざすと、サイコキネシスの力が加わり、膨張。
砕かれた氷の中から太陽の傘が現れる。
「さってと。芸者だったか傾奇者だったかこの態勢。こいつで少々、春告精とやらにお邪魔してみるか。」
傘を広げ、剣を取る。色さえ合えば芸達者な澄まし男となりそうなそのスタイルで、ガルディエは氷の地を踏んだ。
「よう、花見を楽しんでるか?」
「わ」
「人間さん?」
「春だよ!ここは春!絶対零度だけど!」
「おう、良い感じに咲いてやがるな!俺も混ぜろ!」
春告精達の桜の木が生える、花見会場の一角。
辿り着いたガルディエは早速花見のもてなしを受けた。
「お団子あるよ」「おう!」「お酒もあるよ」「悪いがあと1年待ってくれ」「じゃあ、桜酢」「酢!?なんで!?」
「違った?」「お茶ー」「おうくれや!」
しかし舞い散る桜はいずれも凍った雪の結晶の様になっている。
「氷の桜か…風情があるが、凍ったまんまだな」
「そうなの」「でも春だから」「春はどこにでもあって、どこにでも訪れるの」
「そうだな。…俺の力なら助けになるかもしれねぇぜ?」
ガルディエはそう言うと、拳に光を集めた。生命エネルギーの光だ。
それを自身の足元に打ち付けると…!なんと地面が、花々咲く緑豊かなものへと変わった!
「わぁ!」「ふわぁ!」「すごいすごい!」「おにいさんも春の使い?」
「あ?違うぜ。ただの竜の力の応用だ。」
「竜?」「それはヴァルギリオス様?」
春告精から、慕う者の名が現れる。
「…あー…そいつはけったくそ悪い奴なんだわ。それとは別って事にしてくれ。」
「ふぅん?」「変なの」「あなざーヴァルギリオス様!」
「はっ!」
ガルディエは花見を楽しんでいると、ふと自身の周りに気づく。
「…俺の力でも凍るのかよ!ほんと、絶対零度だなここは」
太陽の傘の光が当たっていない場所。其処に咲いた草花はもう硬い氷と化していたのだ。
「おにいさんの春でもだめ?」
「絶対零度って手強いの」
「お前達にとってのヴァルギリオスって所だな。まあがんばれよ」
「…え?」
ガルディエは、もういいかと言わんばかりに腰を上げる。
「俺は、いや俺達は、ヴァルギリオスを倒しに来たんだ。その下についてるお前達もついでだ。」
魔剣を春告精に振りかざす。戦闘の合図だ。
「いいな?」
「…わ…」
「乱闘だ!」
「春の乱闘だわ!」
「がんばる」
「酒瓶使うよ!」
「私お皿ー」
「じゃ、じゃあ私、団子の串…」
「喉に刺さったら危ないよ」
「がんばる」
春告精達がそれに呼応して次々と武装蜂起し始めた!
「おうおう!花見だけが力じゃねえってか!んじゃいっちょやってやるか!」
ガルディエはステップを踏み、豪快に魔剣レギアを降り下ろす!
春告精の1体が叩きにきた皿ごと切り裂かれて消える!
「わーっ!」
そんな状況を一瞥もくれず次なる春告精!更に横からも団子の串が飛んでくる!
「おらっ!」
横に避けながら∞の字に切り裂いて、団子の串も払う!
ガルディエの進行先に合わせて足元にも植物が咲き誇り、進行後の植物はみるみるうちに凍っていく。
「っは、面白れぇ。こいつは癖になりそうだ」
「私達も」
「生命」
「エネルギー!」
春告精の命を使った草花達がガルディエを襲う!
「おう!花の勝負か!いいねえ!」
舞い散る花びら、桜、凍っては咲き続ける草花。地面では春と冬が、地上では妖精とダンピールの騎士が繰り広げる合戦!
「竜の棲家(ドラゴニック・ドゥエル)、力かしてくれよ…」
生命エネルギーを与えた大地から、今度はガルディエがエネルギーを貰う!大地と繋がり合う、戦闘増強システムが、魔剣を光り輝かせていく…!
「こいつで!」
赤い魔の斬撃!
「仕舞だ!」
氷の花を舞わして一瞬溶かす、赤いエネルギーの嵐が春告精を吹き飛ばした!
「(おにいさん、いっちゃうの?)」
春告精を全滅させた地で、去り際にそんな声が聞こえた気がした。
「…まあな。楽しかったぜ。…会えるのはここだけじゃねえ。また春が来たら、相手してくれよな。」
そう呟いて、次の戦場に進む。
ガルディエは、この地に冬を戻しに来たのでなく、最後まで、春の嵐を振り舞いていった。
成功
🔵🔵🔴
フェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ
んん、お花見。嫌いじゃあないのだわ。
氷花というのもたまにはオツなもの、とも思うし。
……あ、傘の心配はいらないのだわ。戦列歩兵(くるみ割り人形)が持ってるから。
彼ら結構な怪力だから突風でもなかなか傘を飛ばされることもないし人形だから食べ物もいらないのだわ?
…………
さて。
戦列歩兵。彼女を怪力で捕らえるのだわ。
妖精さん、お気の毒だけれど貴女にはこれからこの「くるみ」を食べてもらうのだわ。
大丈夫。今回のコレはアフロになるくらいで済むやつだから。
●絶対零度行軍記
「んん、お花見。嫌いじゃあないのだわ。」
銀の瞳に銀の髪。真っ白な雪娘を彷彿とさせる軍服姿の少女、フェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ(f19067)が絶対零度の地に降り立った。
「…その前に傘を用意するのだわ。ここは雪が降りそうな所なのだわ。」
これから訪れるであろう花見会場に思いを馳せながら、目当ての氷を探していく。
が、見つからない。
「…………くるみ割り人形さんたちは何をやっているのだわ?」
フェドーシヤはユーベルコードを操り、68体のくるみ割り人形に太陽の傘を捜索させている。
しかし、狩り尽くされたのか、運が悪いのか、未だ傘を見つけたものは本人含めていない。
「へくちっ、ま、まずいのだわ。このままだとお花見の前に凍ってしまうのだわ。早く探すのだわ!」
焦り、急ぎ、ただ氷が埋め尽くすだけの絶対零度の地で捜索を続ける。
「(…あ…だめ…眠くなってきた…のだ…わ…)」
その瞬間、白く染め上げる吹雪がフェドーシヤの全身を覆い吹き付けた。
…凍てつく。
その防寒に優れた体が、衣服が、氷結耐性をもってしても防げない、自然の領域を超えた絶対零度の環境によって。
「……………………」
フェドーシヤの身体は雪中行軍の姿で、物言わぬ美しき氷の像となって立ち尽くした。
…………………………………………
●氷の少女に春の訪れ
「お人形さんみたいな人形がいるわ。」
「本当。可愛くて冬に取り残されたみたい。」
いつしか、フェドーシヤの周囲に春告精達が群がっていた。
「私達、春呼び隊。せめて貴女に春を送らせて。」
春告精が地面に鍵をさすと、にょきにょき生えて来た可愛らしい花と蔦がフェドーシヤを覆い、たちまち凍り付く。
「頭の花飾り、私達とお揃いの色。」
「いつか絶対零度も溶けるわ。その時を待っててね。」
「そうだわ。一度ここで休憩して、お花見を開きましょう」
「そうしましょう」
「そうするのね」
全身が光の神の名残が如く、氷の世界に輝き続ける、花と雪に凍えたフェドーシヤ。
傍に桜の木が立って、開かれたお花見が時空をゆがめ、ゆっくりとした時間を過ごさせる。
絶対零度の地で、身も心も、魂も氷に封じられそうな―。
「あら?」
ふと妖精達が氷の春に彩られたフェドーシヤのオブジェを見やると、その傍にくるみ割り人形が立っていた。
彼らはしっかりとその手に傘を持っている。幾体かのくるみ割り人形が怪力と根性で行軍し、フェドーシヤと同じ氷結耐性によって確保した、太陽の傘の陽光がフェドーシヤに注がれる。
「…………」
ぱきり、ぱきり、光と共に氷に亀裂が入り、覆いかぶさっていた雪が、その身を飾っていた氷の華が、崩れ、落ちる。
「……ぁ……」
「溶けた!」
「溶けたの!?」
「私達の力では溶けなかった人間さんの氷が…!」
「大丈夫?ねえ大丈夫あなた?」
「触れると冷たいのに、近くはあったかいよ」
春告精達がフェドーシヤをゆさゆさと揺らす。
長い事凍っていた為か、まだ心が解凍しきっておらず、がたり、ごとり、ぎこちなく全身がそのままの姿勢で揺れる。
「…あ……あ……へくちっ。……ずず……。遅いのだわ!戦列歩兵!いつまでも待っていたら体が怠けて氷になっていたのだわ!」
解凍歓迎会の如き花見の用意を春告精が用意する中、ぷんすかと怒り立つフェドーシヤ。
「大丈夫って?ぐしっ…大丈夫だわ?この程度の絶対零度、-710℃まで下げれる様になってから私を恐れさせるがいいのだわ。ええ、ええ、実際凍って動けなかったのはただ眠っていた、眠っていただけなのだわ!」
一通りくるみ割り人形をゆさゆさ揺らして怒ったあと。
「…ふう。」
くるりと、春告精達に向き直った。
●爆発アフロ花見会、勃発。
「冬のお姉ちゃん。」
「冬のおねえさんだわ」
「溶けたという事は春よね。春だわ」
「雪解け祭りをしましょう。花見の季節を起こしましょう」
「んん、お花見。やっとお花見にありつけるのだわ」
その冬のような少女を歓迎するように朗らかに舞った春告精。
「そうよ。桜餅はいかが?」
「氷の華で悪いけど、桜も沢山用意したよ」
「いいのだわ。氷花というのもたまにはオツなもの、とも思うし。」
「ミートボールに」
「りんごキュールに」
「七草サラダに。」
「じゃあ私からは『くるみ』をあげるのだわ」
それは突如、フェドーシヤの方から取り出された、春の祝福品。
くるみ。
…見た目だけは、何の変哲もない、くるみである。
「わ」
「くるみをもらえるの!」
「お人形さん、割ってくれる?」
くるみ割人形は命令に従うままくるみを割り、中のおいしそうな実を春告精達に分け与える。
「わぁい。クルミの春だわ!」
「くるみをお口の中で包みー」
「それじゃあ、お言葉に甘えて、いただきま―」
口に咥えたその瞬間である。凄まじい爆発が起きたのは。
「っきゃー!?」
『くるみ』を食べた春告精が突如爆発!
体が焼け焦げ、その髪の毛はもさもさのアフロに。
そう、体が…不凍熊の毛皮が、ボロリと彼女から崩れ落ちた。
「けほっ、けほ……ふぁ!?さ、さむさむさむ…」
そして丸裸になったアフロ春告精は、絶対零度の世界によって瞬く間に氷漬けになった。
「え」
「ちょ、ちょっと」
「んむ?爆発するほどおいしかったのだわ?」
ニッコリ笑顔を絶えず崩さぬフェドーシヤにあとずさりしていく春告精達。
「えーっと…」
「ご、ごめんなさい、私達別の所で春を」
「戦列歩兵」
「「あ゛っ」」
春告精達はくるみ割り人形達に掴まった!
想像以上の怪力に、春告精達は抜け出せない!
「妖精さん、『お気の毒だけれど』…貴女達にはこれからこの『くるみ』を食べてもらうのだわ。」
「ぴえっ…!?」
「大丈夫。効果は見ての通り。ただアフロになって、ただ毛皮がなくなるだけなのだわ。」
「け、毛皮がなくなったら、私達、春が―」
「戦列歩兵」
くるみ割り人形達が一斉に春告精達にくるみを食べさせていく。
「あっ…あっ、あっ、あっ」
春告精達は爆発した。
この場にいて、彼女に見つかった者達は一人残らず『くるみ』を食べ、アフロになって氷像と化した。
まるで冬のサボテンフェアの様に、アフロ春告精達の涙目で爆発に晒された姿の氷像が、花見会場に乱立されたのであった。
「あら、別の華が咲いちゃったのだわ。こういうのも風情なのだわ?」
フェドーシヤはまるで絶対零度の地に立つ氷の魔女の様に、花見会場をアフロで彩り凍らせながら、その地を後にした。
成功
🔵🔵🔴
「わぁ、わぁ」
「くるみが怖いわ!」
「爆発からにげるの!」
フェドーシヤから逃れた春告精達が遠のいていく。しかし。
「あっ―!?」
1体が何か氷のようなものに撃ち抜かれ、倒れる。
「だ、大丈夫?」
「傷は浅い?」
「け、毛皮が今ので取れちゃった」
「私と一緒にくっついて」
「わ、ぽかぽか」
「頑張ろう」
励まし合っている春告精に、またしても銃弾が飛ばされる。
「きゃー!?」
一体だれが、どこから放つものなのか。
その正体ははるか遠方から、淡い日差しの光と共に。
チル・スケイル
…(ユーベルコードへの対策は簡単。何を言われても無視。集中するのは慣れている)
…(問題は…太陽の傘がある限り確実に発見され、狙撃は困難と言うこと)
…(リスクを負うしかない。氷結耐性はある。数分で凍りつくとしても、数秒なら戦える…!)
…(この環境…相手は私が『太陽の傘の下にいる』と思い込むハズ…)
…(太陽の傘から離れ、体が凍りつく前に毛皮のない箇所を狙撃)
…(結果がどうあれ、狙撃後は速やかに太陽の傘を手に取り逃走。体制を立て直し、上記の作戦を繰り返す)
…(失敗すれば、私は本当に氷像と化すだろう)
…報酬、期待していますよ。
●狙撃の主の名は
チル・スケイル(f27327)は竜人の狙撃手だった。
絶対零度の地に染まるような氷のように蒼いローブに身を包む、氷の竜にして、スナイパー。
カシュパフィロと呼ばれるスナイパーライフル風の魔法の杖で、太陽の傘の下、散らばる春告精を狙っていた。
「…(ユーベルコードへの対策は簡単。何を言われても無視。集中するのは慣れている)」
杖に弾となる冷気の魔力を流し込む。
「…(問題は…太陽の傘がある限り確実に発見され、狙撃は困難と言うこと)」
再度放つために狙いを定め、撃つ。
「あっっ!?」
既にやられた春告精を背負う春告精の、まずは熊さんフードが爆ぜ飛ぶ!
更に狙いを定め、撃つ。
「きゃっ、あっっ!」
「ふ、2人とも…!あっちから!?」
2発目の銃弾は質量を持った氷の塊の銃弾。
それが春告精の毛皮の継ぎ目に命中すると、爆ぜ、削り、背負っている春告精諸共その身をさらさせ、凍らせる…!
「…(来た!こっちに気づいたか。この策において私はリスクを負うしかない。)」
チルの狙撃戦場の周囲。
そこは前もって氷を破壊し、手に入れた太陽の傘が、開いたまま持ち手を氷の地面に埋め込ませた、太陽の傘の陽光スポットを各所に展開させていた!
狙撃地点の太陽の傘から離脱!離れた地点の、開き済な太陽の傘に向かって、スライディングで飛びつき移動する!
「…(氷結耐性はある。数分で凍りつくとしても、数秒なら戦える…!)」
一瞬絶対零度の寒気に晒される。
地に接触した肩が厚い氷で覆われ、硬く冷たくなっていく。
それでも何とか耐えて、次なる太陽の傘スポット、狙撃地点に身を置いた。
間に合えば、己の氷は溶ける…!
「さっきの撃ってきた人、ここ…?」
案の定、先程の太陽の傘スポットに現れた春告精。
「(一撃で)」
それに向かって、必殺の氷の銃弾を、放った!
「きゃああぁ!?」
「なんだなんだ!?」
「今の銃声はなあに!?」
撃ち貫き、爆散させた氷の魔法によって強引に毛皮を爆ぜさせ、瞬時に凍り付く春告精…に、集まる他の春告精。
「…(失敗すれば、私は本当に氷像と化すだろう)」
だが成功させねばなるまい。
太陽の傘から太陽の傘へ、順々に飛びついては、四方八方からの狙撃。
「わっわあぁ!」
「この傘、なぁに―きゃあっ!」
次々と撃たれては、凍る春告精!
「…ふう」
戦場に散らばるはボロボロの熊の毛皮。そしてあちこちで凍っては倒れ尽くす春告精。
一息ついたチルは、氷像と化した春告げ精の近くにある毛皮を拾う。
「一つにつき116万円。まだまだ、報酬は上乗せさせてもらいますよ。」
少し深呼吸をして、再び太陽の傘の下、春告精達に狙いを定めた。
成功
🔵🔵🔴
「ねえねえ、見て見て!」
まだ残っている春告精達の花見会場に、一人の春告精が傘を持ってきた。
「なあに、それ?」
「夏っぽい色の傘だわ」
それはチルが設置のために残していた太陽の傘の一本。
あの狙撃作戦の合間、こっそりと一つ、引き抜いていたのだ。
「この傘、さすととってもあたたかいの」
「すごい!」
「氷が見る見るうちに溶ける!」
その傘に春告精達は大騒ぎ。
しかし猟兵達には不穏の幕開けであった。
「これさえあれば、凍らないお花見が」
「できるかもしれない」
「もっともっとあれば」
「桜の木さんもいきいきするかも!」
「ねえこの傘、何て名前?」
「さあ」
「さんさんと輝く太陽みたいな傘だわ」
「さんさん傘」「アンブレラだから、サンブレラ」
「さんさんぶれら!!」
「サンフラワーみたい。開いたらお花が開くみたいよ」
「じゃあ…」
「サンサンフラワー!」
「「「「サンサンフラワー!サンサンフラワー!」」」」
かくして、春告精達もサンサンフラワー……もとい、太陽の傘の捜索を開始した。開始してしまった……!
テフラ・カルデラ
※絡み・アドリブ可
うぅ…長居していると氷像に変わり果ててしまいます…いやむしろそれも…じゃなくて!
『太陽の傘』…是非とも手に入れたいところですが、もう既に妨害を受けているのです…
しかし、タダで氷像に変わり果てるつもりはありません!少しもったいないですが、ウィザード・ミサイルで不凍熊の毛皮を溶かしてしまいましょう
そうすれば毛皮も効果が薄くなるはず!と言っている間にスプリングエルフ達が慌ててますね~
さらに追い撃ちに取得したての【全てを凍てつかせる小さな妖精】を発動!一体のスプリングエルフに抱き着いて「ボクと一緒に氷像になりましょう?」と一緒に巻き込まれ皆で絶対零度地帯を飾る氷像になりましょう♪
●キマイラうさぎのカチコチ大作戦
「はわぁ…」
乳白色の髪に褐色肌をした、白い兎のキマイラ、テフラ・カルデラ(f03212)。
「これもいいですね…絶対零度の世界…長居していると氷像に変わり果ててしまいます…」
自身の凍り付いた姿を、これから起こるであろう無慈悲な未来を、腕を抱き寄せて寒そうに震えながら、想像する。
誰もいない静かな絶対零度の空間で、一人音も無い吹雪に身を晒されながら、物言わぬ氷の像となってしまう、哀れな白兎…。
「っとそうじゃなくて!現実逃避ダメ絶対、です!…ですが…」
声が弱弱しくなる。目の前の、なぜこうなったか分からない現実に、ただ立ち尽くす。
「…『太陽の傘』、なんでもう既にオブリビオンが占領してるですか…!?」
今までやってきた猟兵達の足跡を辿って、太陽の傘を探してみると、案外近くに見つかった。
しかしあろうことか、その傘の置き場に桜の花木が立ち誇り、春告精達が宴会を開いていたのだ!
「あ、わわ、このままでは凍ってしまいます…!」
ぴしり、ぴしりと体に氷が張り付いていく。もう数分立てば全身が固まり、ご想像通りの冷凍うさぎが絶対零度の地に永久保存だ。
「あら?」
すると春告精の一人がテフラに気が付いた。
「凍ってるわ」
「凍っちゃってる」
「はわわ、もふもふで羨ましい毛皮です…一つ借りても」
「ごめんね」「これがなくなると私達が凍っちゃう」
無慈悲にそう言いのけた。
「じゃ、じゃああそこの傘だけでもわたしに頂けませんか…?」
「ごめんね」「これを使って今から本当のお花見を始めるの」
「ほ、本当の…?」
テフラの身体は凍えて震え、間もなく氷像になりかけていた。
「サンサンフラワーがあれば」
「この地に春を巻き起こせるの!」
春告精達は手を広げて壮大そうに言い放った。
「だから、ごめんなさい」
「そこで一旦凍っててね」
「本当の春が訪れれば、きっと貴方も溶けて目覚めるから…」
「は、はわわわ…!?」
無慈悲。
よもや春を呼ぶ存在から「凍って」等という言葉が出るだろうか。
このままテフラは花見の前で、氷となって立ち尽くす運命か…。
「い、いえ!わたしちゃんと倒すつもりで来ましたから!」
こりりと音を立てて氷の腕を何とか動かすと、魔法の杖【ラビット・ラビッツ】を春告精に向ける!
「ウィザード・ミサイル(ユーベルコードじゃない版)!」
「きゃあぁ!?あっ熱…やぁん、毛皮が溶けちゃう!……ぅ…… …………」
炎の魔法弾が春告精の1体に当たると、毛皮が溶けて吹き飛び、そのまま絶対零度に晒されて、全身が凍り付く!
「何?」「何?」「お客様だわ!」「でも今は新しいお花見の実験中なの。」「どうにかして追い出しましょう!」
「お皿!」「お団子!」「お茶の瓶!」「桜の枝!」
思い思いの武器を手に取り、テフラへと向かっていく春告精達!
「よしよしみんなやってきましたね。新しく覚えた、絶対零度に相応しい氷の魔法を用意して来たんです!」
テフラはこれ見よがしに両手を広げると、そこから冷たき氷の妖精が。
それはこの依頼に呼んだ、冬の妖精達よりも透き通る氷で出来た、冷たい色をした、氷の悪戯妖精。
それらが大量に現れ…春告精に、飛んだ!
『妖精さん…頼みましたよ?オブリビオンはみーんな凍らせてきてください♪【全てを凍てつかせる小さな妖精(アイシング・フリーズ・フェアリー)】!』
「冬とか、氷とか」
「もう私達、克服したもん!」
「そうだそうだ!」
飛び掛かる春告精達。不凍熊の毛皮で、触れるだけで凍り付く氷妖精などへっちゃら…かに見えたが。
氷妖精達は力技で、ダンスに誘うように妖精の手を取ると、くるりんと踊り始めた。
「ふわわ?」
「わー、わー、くるくるするっ」
「踊りが好きな妖精さんだったんだ。まるで春みたい。」
元気に、無邪気に、朗らかに。
踊り踊る氷と春の妖精。
しかし、その背後から春の妖精を、他の氷妖精が取っ組み付き…毛皮を脱がす!
「きゃ、きゃあぁ!?」
…春告精が凍てつきながら、手を取り合った丸腰のまま。
氷のダンスで宙に舞いながらテフラ・カルデラの元へと誘導されていく!
「…………………」
テフラ・カルデラは凍り付いていた。
絶対零度冷気に遂に耐えられず、しかしとてもうれしそう、幸せそうな顔で、誰でもウェルカムな感じに両手を広げたまま、体のあちこちに氷柱が垂れ下がり、きらきらと光る、見事な氷像と化していた。
そこに氷妖精達が、抱き着かせるように春告精の氷像を、飾る。
むしろ備えてる感じかもしれない。
次々と春告精を手に取り、剥ぎ、凍らせ、飾った。
テフラ・カルデラの氷像は、氷と春の妖精が無邪気にじゃれつく氷のオブジェと化していたのだった。
「…………………」
最早その場で動く事無く。
ただ目の前で、足止めにかからなかった春告精達の一部始終を氷の中で見届けながら。
遂にグリモア猟兵の転送光がかかった。
これより解凍されるまでの間、グリモアベースでは妖精に囲まれた、幸せうさぎの氷像が、絶対零度の冷気を漂わせて佇むことになる……。
苦戦
🔵🔴🔴
佐伯・晶
こんなところにいたら
冷凍マグロみたいになっちゃうな
まあ、邪神の涙で極低温の物質ばら撒く事も多いから
凍るのも慣れたんだけどね…
女神降臨を使用し傘を持って接近
花見を勧められたら素直に楽しむよ
傘を持ったままできるしね
その間に石から創った使い魔に
不凍熊の毛皮を石化させよう
使い魔の行動速度が落ちても
毛皮の石化速度は変わらないしね
給仕をやめて使い魔に対処するなら
UCの効果が切れるから
僕も攻撃に参加するけどどうする?
傘の下に入ろうとこちらに近づくだろうから
石化した毛皮が割れる頃を見計らい
花を見つつ傘を閉じ遠くへ投げよう
敵と一緒に凍るだろうけど
最初から固体の石の使い魔が傘を取って来るまで
花と氷像でも見てようか
カイム・クローバー
……寒いぃ!【オーラ防御】で何とか持つとは思うが、それでもこの環境は俺には地獄だ。傘、傘、傘…(鼻水凍る)
魔剣を活用し、傘の氷を溶かして広げる。はぁ…生き返ったぜ。(鼻水すする)
正直、こんな寒い地には俺も春が訪れた方が良いと思うが。ま、ヴァルギリオスに一太刀浴びせるまでは春の到来は少し遠慮してくれ。悪いな?
片手で傘を、魔剣を片手で所持しながら【残像】と【見切り】で躱しつつ。
近距離ならこっちのUCも射程内だ。傘は一瞬飛ばされても【オーラ防御】で耐える。両手で持ち直してUCを叩き込むならこの瞬間だろ?
凍ると思ったか?目論見が外れたな。切り札ってのは最後まで見せないモンだぜ?………ぶえっくしょい!!
●邪神の女と色男
「は、ぶぶ、さぶぶぶぶ………寒いぃ!」
銀髪で小麦色のような肌をした男、カイム・クローバー(f08018)は寒さに凍えていた。
「この環境は俺には地獄だ。傘、傘、傘…」
己の身体に気を起こして何とか凍らないようにしながら、しかし風邪をひいたかの様に鼻水や、思わず少し出た涙なんかが凍り付く。
「本当にね……こんなところにいたら、冷凍マグロみたいになっちゃうな。」
次いで現れたのは金髪の女、佐伯・晶(f19507)。
彼女はしかし、慣れたような動きで使い魔に指示を出し、氷を砕いて太陽の傘を手に入れる。
「はい。君の分。冷凍マグロになるのだけは避けれたね。」
「あ、ありがどー…こほん。」
カイムは傘を広げる。
太陽のような暖かい陽光が、己についた氷と冷気を溶かす。
そして凍って張り付いていた鼻水や涙も氷解していく。
「はぁ…生き返ったぜ。ずずっ…正直、こんな寒い地には俺も春が訪れた方が良いと思うぜ。」
「僕はどっちでもいいかな。戦闘スタイルの都合上、もう凍るのも慣れたし…。」
「えっ、何だいそれ。あんた氷使いなのかい?」
「ん?いや、まあ…色々だね。色々あるけど、主に使ってるのが極低温のそれってだけだよ。」
「そ、そうか…いやうん、夏には便利そうだね。って言っておくよ。」
「今回はそうだね、氷は効かなさそうだから、お預けして別のにするか。」
そうして傘の日に晒されながら進み、道中晶に纏いつく使い魔は色と属性を変えていく。
●謎の桜の木の下で
彼等は遂に花見会場に辿り着いた。
「…あれ?」
晶が何か違和感を覚える。
「確か映像では、桜の木は…」
この木は、凍っていない。
絶対零度の地にあっても、普通に桜の花びらが咲き誇り、散る。
「おまたせ」
「おまたせしたよ」
「やっぱりまたきたの人間さん」
春告精達の手厚い出迎えだ。
「えっ…へえぇ?春、到来したんだな。」
カイムが、己の戦闘より先に起こった春の出来事に感心する。
「そうなの」
「作戦とひんしゅかいりょーで、もう絶対零度にも負けない春が来たの」
「すごいでしょ」
「えっへん」
自慢げに語りかける春告精。よく見るとその桜の木の周りには淡い陽光がかかっている気がする。
「…まあ、悪いんだけど」
それでもカイムは片手に傘を、片手に魔剣を手にして。
「そこの春はそのまま、オブリビオンは倒させてもらうぜ。これも仕事なんで、悪いな?」
「わ、わ」
「乱痴気騒ぎだ」
「ネオ乱痴気騒ぎ!」
わーわーきゃっきゃと春告精が集まってくる。
戦闘、開始である。
●勃発!スプリング乱痴気騒ぎ
「お花見の季節を、楽しみましょう!」
晶はドレスアップのコードを起こし、可憐な宵闇のドレス姿になる。
戦闘に紛れて給仕していく春告精達を、晶はしたたかかつ華麗に回りながら受け止め、頂いていく。
「傘を持ったままでもこれくらいは。あむ…あたたかい饅頭だね。絶対零度で食べれるとは思ってなかったよ」
「でしょでしょ!」
「こんなのがお返しで悪いんだけど」
春告精の後ろから、石の色をした使い魔が現れる。
「え?」
「その毛皮、石化させてもらうよ。」
「え、わ…」
ぴしり。
使い魔が魔法を放ち、春告精が纏う毛皮が硬く重い石となり、ふらふらと落ちていく。
途中で勢いが増し、そのままごとりと落下して動かなくなる。春告精は毛皮は石、中は氷の、石と氷のオブジェと化した。
「もしかして」
「お花見、楽しんでない?」
ぐにゃりと、時空が歪み始める。
晶の動きがスローモーとなり、春告精からの攻撃に無防備となる!…だが。
「時空を歪めても、使い魔には効くかな?」
「え?」
ぴしり。
使い魔は魔法のビームを目から光らせて、春告精が纏う毛皮を硬く重い石と化す。ふらふらと落ちていき、凍る。
「給仕をやめて使い魔に対処するなら何とかなると思うけど…僕も普通に動かせてもらうよ。どうする?」
「そんなの―」
「そんなの、させる前に斬らせてもらうよ。」
「きゃ…!」
隙ができた所をカイムが次から次へと魔剣で切り裂いていく。
「春の目覚めの季節を、貴方に―」
「おっと、それは情報にあった奴か!悪いが既に見切っている。」
残像を伴って、恐ろしい暴走になるであろう鍵の攻撃を、避ける。避けては、毛皮ごと切り裂いていく。
「勿体ないね。毛皮だけ切れば本体はそのまま凍るのに。」
「ぶえっくしょい!そんな寒い事言わんでくれよ。力押しが得意なもんでな。」
切り裂き、石になり、氷と化し、ついでに晶のガトリングで撃ち貫かれる、妖精達。
「こうなったら、覚悟を決めるよ!」
「スプリング・乱気流・あたっく!」
「だわ!」
「わ!」
突如春告精達が直列に並んで、覚悟を決めた突進を晶にしかける!
「ああ、近づいてきたね。使い魔!」
使い魔の魔法が、戦闘の春告精を石に変える!
「まだだよ」
その妖精の石像を盾に、残り2体が突進を仕掛ける。
「うぐっ…!」
タックルをもろに受ける晶!
その衝撃で衣服が壊れ、凍り付いていく先頭の春告精!
「ま、まだ計算通…り、だよ。」
「えっ」
残り2体も気合で受け止めた晶は、背後からの使い魔の石化の光にやられる!
「うっ、あ…」
「う、うごけな…」
「ダメ押しだよ」
晶は突如、おもむろに持っていた傘を…投げ捨てた!
「ちょっ、おま、何をして―」
「余所見したね」
「うおっ!」
カイムの方にもスプリング・乱気流・あたっくが飛んでくる!一直線の春告精の突撃!
「ちっ…そんな無謀するなっての!」
カイムは…晶の方に、持っていた傘を投げた!
「いいんだよ。これで衣服の壊れた3体の春告精を纏めて凍―」
「いいから!」
「っ―」
その気迫に押されて、傘を手に取る晶。
3体の春告精は既に裸のまま石化し、凍り付いた状態だが、溶けかかっている。
「さてと。俺も傘がなくなっちまったな。」
勢いよく突撃してくる春告精に、魔剣を構えるカイム・クローバー。
「もう凍っちゃうね」「春が訪れなくなっちゃう」
「…いいや、今からさ!俺も凍らずに済む切り札ってのがあるぜ!『神殺しの魔剣』よ!」
カイムの身体に、その魔剣に、黒銀の炎のオーラが宿る!
「【終末の死神(エンド・オブ・ジョーカー)】」
カイムはそう唱え、3度、すれ違いざま、春告精に魔剣を振るった。
「…ぁ…」
「…あ、熱…」
「…はる、が…」
『聞こえるかい?これが、死神の嘲笑だ』
3人の春告精は、カイムを通り過ぎた所で衝撃を発起。
黒銀の炎に包まれ、塵になるようにして、消えた。
●勝利者の悲劇
「ぶっっくしょい!ちくしょい!このレベルのオーラで纏っても絶対零度はきついな!」
春告精をどうにか倒し終えたカムイは、傘を回収しに晶の元へ駆け寄りに行く。
「相傘になって悪いが、これ一度限りなんでな。新しい傘を見つけるまでしばらくお邪…魔…」
そこで精神が凍り付いた。晶の起こした光景を、止まり凍らずにはいられなかった。
「…ごめん、そっちの傘も飛んじゃった…」
晶は、顔の半分以外の全てが凍り付き。
その体には、3体どころか6体も9体も追加で飛び込んできた春告精が、衣服を石にされて砕かれ、ほぼ裸の身を晶に摺り寄せるような形で氷漬けになっている姿。
まるで女神と、女神を祝福しにまとわりつく天使の様だった。
「マ、マジか…」
傘が、もう無い。
この絶対零度の状況で。
「だ…いじょうぶ…使い魔…が…取ってきて…くれ…」
そう言い残して凛として柔らかな、女神のようなドレス姿の晶は、周りの春告精同様に凍っていき、完全な氷の像となってしまった。
「…………」
カイムは横目を見る。
晶の近くで、先んじて絶対零度に晒され、厚い氷に覆われて動かなくなっている石の使い魔の姿が見えた。
魔法でなく、絶対零度の環境のため、無機物でも関係なく氷に閉ざされてしまうのだ。
そうでなければ太陽の傘とかずっと凍らずに転がってたはずだものね。
「……や、やば……俺、追加の傘とかここからもって来れるか…あっだめだ!寒!気が緩んでオーラが!」
戦闘が終了した気分で魔剣の炎が消えた!その反動の冷気が、絶対零度が急速にカムイの身体を凍らせていく!
「グ、グリモア猟兵!転送!転送してくれ!敵はは、はぶしゅっ!ぅ……て、敵はたお、たおし……た……」
絶対零度の戦場に、2体の氷像が輝き佇む。
天使のような裸の妖精達に囲まれた女神な晶の氷像。
鼻水と涙を垂らしながら、全力で寒さに凍えた姿の、トレンチコートを着飾ったスタイリッシュな男、カイムの氷像。
降り注ぐ絶対零度の雪と共に、何故か凍らずに舞い散る桜の花びらが風流に2体の氷像を撫で、積もり、彩った。
間もなくして、グリモアの転送の光が二人を包み込んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
レパル・リオン
シエナちゃん(f04107)とー
シエナちゃんシエナちゃん、えっと……がんばろうね!(にこっ)
とりあえず傘はパンチで取り出してー(氷パリーン)すぐ開く!はぁ…ほんわか。
シエナちゃん、はい、傘!ってぎゃーっ!(シエナと意思疎通したため、敵UCにより爆破)でも傘は離さないわよ!魔法少女は我慢も大事!
で、シエナちゃんと手をつながなきゃいけなくなるのね!だったらこのまま戦うだけよ!
っていたたたた!シエナちゃんちゃん力強い強いいたたた!でも傘は離さない!ガマン!ガマン!
両手はふさがってるけど、あたしには足も尻尾もあるわ!くらえ神速キック!テイルアタック!人呼んで【瞬打(チーターヒット)】!
シエナ・リーレイ
■レパル・リオンと同行
■絡みアドリブ可
吹雪いてるのに桜が咲いてるよ!とシエナは驚きます。
お友達のレパルに誘われ極寒の世界に足を踏みいえたシエナ
レパルにお願いされて彫刻刀片手に傘が封入された氷を砕き始めます
あなた達が咲かせたの?とシエナは問い掛けます。
暖かい不思議な傘片手に突き進むシエナは花見を楽しむ妖精達に語り掛けます
ですが、語り掛けた直後爆発に包まれてしまい気が付くと傘を手放しレパルと手を繋いでいました
体を暖めないと!とシエナは踊り始めます。
このままでは凍ってしまうと焦ったシエナは踊り始めます
そして、シエナは妖精を蹴散らしレパルの手を握りつぶしている事に気が付かないまま踊り狂うのでした
●春との最終決戦へ
桃色の狼獣人、レパル・リオン(f15574)。
白に近い灰色の髪を持ち、人形のヤドリガミのシエナ・リーレイ(f04107)。
彼女らは仲良く絶対零度地帯についた。
「シエナちゃんシエナちゃん、えっと……がんばろうね!」
レパルが笑顔でシエナの手を握ると。
「がんばろう!とシエナは惜しみない協力を果たします。」
とシエナが応えた。
「ふわぁ、何これ!」
凍り震える体を進ませ、レパルが見たものは、毛皮の混じる様々なジョブの衣服を着飾った、勇敢なる女性冒険者達の冷凍保存された氷像群。
その眼には最早生気は無く、樹氷の様に絶対零度の吹雪を受け続ける。そんな氷像が二人の視界いっぱいに広がって佇んでいた。
「猟兵さん達にしては気配がおかしいし、大昔に冷凍保存されちゃった人なのかしら。ねえシエナちゃん?」
「…………」
「ひゃあぁ!?し、シエナちゃんー!?」
シエナはここまでの絶対零度の行軍に耐えかね、既に氷漬けになっていた。
「ま、まずいわまずいわ!早く傘を見つけないと…ってそう簡単に見つかるわけが―」
ごつん、足元の氷に躓くと。
「ぎゃうん!?…ってああ!これーっ!」
太陽の傘が氷に閉ざされたものだった。
「都合よくあったー!?なんだか氷が薄いし、これならいけるわ!せぇの、氷パリーン!」
勢いの乗った狼パンチ!だが力は加減して、傘を折らずに氷だけを砕く!
「はい開く!……はぁ…ほんわか……ってしてる場合じゃないわ!はいシエナちゃん!はい!傘!っちょわぁ冷たいぃ!」
崩した傘を開いて、レパルの凍りかかっていた体を溶かす!
そして勢い余ってくっついてしまったシエナの氷像!冷たい!でも負けるもんですか!
太陽の傘の陽光が、綺麗に凍った絶対冷凍の人形を解凍していく…。
「…はっ!?凍っていたよ!人形館で凍っていた時の事を思い出したよ!とシエナは走馬灯に近い何かを思い出しながら復活します。」
「何それ!?人形館!?よくわかんないけど溶けてよかった!!」
一息ついてきょろきょろと辺りを見回す二人。
「ここはすごいね!お友達の冷凍庫だよ!空間ごと持って帰りたい!とシエナは大はしゃぎします。」
「そんな無茶苦茶な!?でもなんで凍っているのかしらね。足元に転がってるこの傘からして…もともと持っていたのはこの人達で」
行軍中に、うっかり傘が飛んでって、凍った?
「…まさかねー」
「所で傘は一本しか見つからなかったけど、相合傘で進むの?とシエナは首を傾げます。」
「はっ!?そうなるのね、そうなるわね!ちょ、ちょっと緊張するけど…」
「?」
「それじゃあいっしょに行きましょう!はい、傘!」
「シエナはぎゅっと握ります。」
シエナとレパルが一緒に傘を握った、その瞬間!
KABOOOOON!!!
「ぎゃわー!?」
シエナとレパルの間から謎の爆発、吹き飛ぶ二人!
「か、傘は離さないぃ~っ!魔法少女は我慢も大事!」
「傘を持ったら爆発したよ、トラップ!?とシエナは驚き…あら?」
吹き飛んだシエナが見た光景。
冒険者達の氷像群のすぐ近くで、桜の木花が咲いていた。
「吹雪いてるのに桜が咲いてるよ!とシエナは驚きます。」
それも凍ってすらいない。よく見ると桜の木の上に、テントのような山吹色の物体。
あれは…太陽の傘だ!沢山集めて桜の木を照らしている!
「だだだ大丈夫シエナちゃんー!また凍らないでー!」
「お友達を見つけたよ。ちょっと遊びに行ってくる!とシエナは突撃します。」
「え?…ちょっちょっと早い!傘!忘れて、シエナちゃーん!」
全速力でレパルはシエナを追っていった。
●最初にあった、あの氷像群の真実
「じゅんび、かんりょー」
「これからいよいよ、春がやってくるの」
「がんばろー」
「芽吹きましょう」
それは残った春告精、最後のお花見会場。
そして…なんという事か。その場所は太陽の傘が無数に転がる原産地。
桜の木のふもとに、春告精達が解凍した、太陽の傘が集められていたのだ。
「こんにちは!あなた達が咲かせたの?とシエナは問い掛けます。」
そこにシエナが突撃してきた。
「そうなの」
「私達、春呼び隊。この地に春を告げに来たの。」
「春を告げれば、桜もやってくるの」
「でもすぐに凍っちゃう…」
「でもその桜、凍ってないよ?とシエナは疑問に思います。」
「凍らない方法を見つけたの。」
「この…『サンサンフラワー!』なら!」
ばっさり、毛皮の上から傘をさす春告精。無論その傘は太陽の傘である。
「傘だ!その傘持ってないから、わたしにもちょうだい!とシエナは懇願します。」
「いいよ」
案外素直に渡される太陽の傘。
「これはね、いまからそこの人達に使うの」
「?」
「冬に閉ざされた冒険者さん達が、今から春に解放されるの!」
すると春告精の一人が太陽の傘を女冒険者の氷像にさした。
「これだけだと溶けないけど…」
「私達の目覚めの鍵が、後押しするんだよ」
桜色のリボンで飾られた、美しい銀の鍵が、日に晒された氷像に差し込まれる。すると!
「う…ぐ?ウ…ウォアウォアウォアア゛ーーーッ!!!」
「わあ、凄い!お友達が復活したよ!と、シエナは早速遊びにかかります。」
はたから見ると冒険者救出の感動的な光景。だが違う。どう見ても違う。
今鍵を刺され溶けた冒険者は、そのまま目覚めの鍵の力で内なる力が暴走。
なぜそこまでの事になったかは一切不明だが、巨大な龍の化け物と化した!
「や、やっと追いついた。シエナちゃー…うおわぁああああ!!?」
驚くレパルをしり目に次々と傘と鍵を刺されては、氷像だった冒険者が、龍へと変ずる!
「え、え!?何これ!?この冒険者さん達ドラゴニアンン!?」
「フトウグマアァ!!!フトウグマハドコダアアァァ!!!」
「げっ」
話が、なんとなく見えて来た…。そんな気がレパルはした。
彼ら女性冒険者達はドラゴンだった。だがドラゴンは爬虫類で氷には弱い!
先んじて大昔に絶対零度地帯を、寒さにドラゴンより強い人の姿となって、そして太陽の傘というアイテムを使ってエレガントに…不凍熊を狩りに来た。
彼らは狩人だったのだ!エレガントな女ドラゴンの熊狩り集団!!いやそんな事信じられるか!
「あ、頭が混乱して来たけど…」
目の前で暴れ狂うドラゴン達。もう不凍熊は毛皮になっていないと知れば、このまま春に身を任せて、滅茶苦茶に暴れ回ってしまう…!
「止めなくちゃいけないのは分かったわ!その前に、シエナちゃーん!」
「あっ、レパル、どこに行ってたの!と他のお友達を見つけたシエナはちょっと怒ります。」
「こっちが探してたのよというかもう戦ってるぅ!?」
ドラゴンの一撃をシエナは持ち前の怪力でぐぎぎと受け止め、ひねるようにぶん投げる。
「舞踏会ごっこをしていたんだよ!とシエナはレパルにも遊びに誘います。」
「そんな物騒な遊びぃ!ってあら?」
「グオオォガアアァ!?ナ、ナゼ…モトノスガタ…カサ…ア、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
悶え、手を虚空に差し伸べた姿のまま、たちまちドラゴンは氷に閉ざされていった…。
頭に刺さっていた傘が折れていた。太陽の傘頼みでの一時的な解凍だったのだ!
「こ、これなら先に春告精を倒せば後は…!」
「させないよ」
春告精達は、レパルとシエナを囲っていた。
「わ、わ、春のお友達がいっぱい!とシエナは喚起します。」
妖精達は輪になって、皆で手をつないでいた。
「私達春告げ隊、絶対零度春化計画…」
「その目途がやっと立ったんだよ」
「すごいよ」
「でも、あなたたち猟兵さんは…じゃまするのよね?」
「舞踏会ごっこだよ!とシエナは」
「だから、ごめんね」
「おねえさんたちは、春が来るまで」
「「「「「ちょっと、眠ってて欲しいの」」」」」
手をつないだ春告精の輪がどんどんと小さくなっていき。
「春は恋の季節…心の高鳴りが爆発となって。」
「想いが通じた私とあなた。みんな仲良く手をつないで」
「「「「「…そして、爆発するの!」」」」」
「わ!」
「シエナは」
KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOONN!!!!!
春告精達の強大な大爆発が、シエナとレパルを吹き飛ばした!
●レパルは負けない子
「い、いたたたた!シエナちゃん力強い強いいたたた!でもガマン!ガマン!」
吹き飛んだレパルは、それでも根性で、その手に2つの物を握り、根性で事態を把握する。
そして飛んだ個所の桜の木に足を着け。
「傘は離さない!シエナちゃんも離さない!どっちも離さず、オブリビオンは倒しちゃうんだからぁー!」
そして…力の限り、蹴り跳んだ!
「お二人、お似合い!」
「かわいい」
「恋してる?」
「良く分からないけど、暖かいよ!とシエナは陽気に踊りたくなってます!」
それは空を跳びながらの、アイコンタクトにも似た作戦の決定。
「それじゃあ、踊ろっかシエナちゃん。私達の春、目に焼き付け、もとい凍り付かせていきましょ!【変身(レパル)・トランスフォーム!!】」
それは誰もが内に秘める生命誕生のパワー!
ピンクのキマイラの光がスーパーヒーローに目覚めた時!
その毛皮の髪はオスライオンのたてがみの如く!
その衣装は雄々しくも可愛いライオンモチーフのドレスとなり!
光の火の輪を潜り抜け、魔法少女【レパル・サンライズ・ライオン】が!ここに誕生した!
「いっくわよぉー!」
「楽しく踊るよ!とシエナも奮闘します。」
「春眠暁を!」
「覚えさせるー!」
飛び掛かる春告精!
「くらえ神速キック!」
レパルはキックで吹き飛ばし、手つなぎ春告精が飛んだ先で爆散!
「グアアアォォ!!」
飛びかかる太古のドラゴン!
「くらえテイルアタック!」
「フギャアァァ!?」
シエナと高速回転して鞭の如き力強い回転尻尾ビンタ!
「このまま投げるよ!ワン・ドゥ・トロア!とシエナは」
とどめにシエナの回転投げが!春告精達を巻き込んでドラゴンを投擲!
「「「きゃあああぁぁ!!」」」
衝撃で傘が壊れて凍り付くドラゴン、そして戦闘不能になる春告精達!
「両手はふさがってるけど、あたしには足も尻尾もあるわ!」
「そしてわたしもいるよ!絶対零度のスプリングステップ、とっても楽しい!とシエナは歓喜します。」
次から、次へと、手をつないだままのダンス武闘が、春告精と覚醒ドラゴンをなぎ倒し、爆散させていく…!
「春告精ちゃんはあなたで、最後ね!」
二人でステップを踏みながら、迫りくる、レパルとシエナ!
「わ、わ…わ…」
最後の春告精、その背後には太陽の傘で照らされた、桜の木!
「ひーっさつ!サンライズぅ!ライオンんっー!【瞬打】!!」
「あばばばばばばっ!!」
飛び掛かったレパルからの、超高速無限裂キック!
「人呼んで、【チーターヒット】よ!」
「ライオンなのにチーター!?おねえさん最初は狼さんだしいぃぃー!?」
「キマイラはね、なんでも!アリなのよ!さあシエナちゃん、呼吸を合わせてー!!!」
「フィニッシュだよ!とシエナは」
一瞬傘から手を放した、2人の合体パンチの一撃が、春告精を直撃した!
「きゃああぁぁーー!!!」
そのまま桜の木に直撃し、衝撃で春告精の毛皮が爆ぜ、木に大穴が開き、へし折れ…………轟音と共に、倒れた!
「わ…私たちの、春の…やぼ…う…」
「ごめんなさいね。それはまた次の春、戦争の無い時にしてちょうだい。」
レパルはぐっと決めポーズを取り。
「具体的にはサクラミラージュに行くといいよ。とシエナは提案します。」
ちょっと!?と何か突っ込みを受けながらもシエナも決めポーズを取り。
最後の春告精は涙を流しながら、うなだれるような表情で、絶対零度に飲まれ。
折れた桜の木と共に、永遠の氷に閉じ込められた。
●エピローグ
かくして、絶対零度地帯の壮絶なる春との戦いが幕を閉じた。
戦場には、無数の冷凍保存が新たに現れる。
絶対零度の極地でさえも、春を伝えに現れた春告精達は、冬告精の導きでやってきた猟兵達により……その存在がオブリビオンであったが故に、志半ばで倒れ、氷となった。
戦場には沢山の氷漬けとなった、折れた桜の木、妖精、醜く暴れるドラゴン達。
そして力と役目を終えた、太陽の色をした傘が、また静かに氷に閉ざされて。
絶対零度の戦場は、静かな風が吹くばかりとなった。
大成功
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