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帝竜戦役㉒〜サメないように、もふもふと

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●グリモアベースにて
「すごいね、群竜大陸の探索も大詰めに迫ってるねぇ」
 あともう少しかなと。影見・輪(玻璃鏡・f13299)は、にこにことした様子で皆を見渡す。
「今回、皆に対応をお願いしたい場所は『絶対零度地帯』になるよ」
 何でも、自然界には存在不可能なレベルの超低温で、あらゆるものが冷凍保存されている大地だという。
「皆も、この場所を攻略する際には、凍結を逃れるための工夫が必要になるんだ」
 唯一生息していた『不凍熊』は既に全て乱獲され、敵はその毛皮をまとう事で凍ること無く行動しているのだとか。そのため、この場所に居る敵と戦うには、敵と同じように凍結対策を行う必要がある。
「その工夫なんだけどね。 この場所に冷凍保存されているコレをうまく使えば、凍結に悩まされずに敵と戦うことができるんじゃないかな」
 にこにことした表情を崩さず、コレと。輪は、自分の傍に置いたあるものをぽん、と叩いて見せた。
 そこには、輪と同じくらいの高さの、それはそれは大きな白熊が置かれていた。
 抱き心地の良さそうな、もっふもふな毛並み。
「うん、『ぬいぐるみ』だね」
 かわいいよね?と。笑顔崩さずに言う輪さん。
 あんた、シリアス担当じゃなかったんだ?とか誰かの心の声が聞こえたような気もするが、そんな視線も気にせず。にこにこと輪は言葉を続ける。
「着ぐるみじゃなくて、ぬいぐるみってところがポイントかな。 冷凍保存されているぬいぐるみは、大きさも見た目も様々で選び放題だから、好みのものをうまく使って切り抜けて欲しいな」
 たとえば、小さなぬいぐるみを思いっきり寄せ集めてみるとか。
 大きなぬいぐるみを着ぐるみがよろしく着込んでみるとか。
 工夫の幅はそれなりにあるだろう。
「そして、敵だね。ここに出没するのはコイツになるよ」
 いつの間にぬいぐるみに持たせたのか、敵の写真の貼られたボードを示す輪。
 そこには、サメにカニの手が生えたかのようなぬいぐるみがあった。
「『ハッピー工房』。コイツは着ぐるみだね」
 かつて高名な着ぐるみ生産者たちが高みを目指し魔法で変異したと言われるその姿は、写真から見てもわかるほどにもふもふとしていた。
 乱獲した不凍熊を着ぐるみ加工したのだろうか。本当に温かそうに見える。
「敵は着ぐるみ愛にあふれているらしいよ。 なんとなく張り合ってみるもよし、着ぐるみ仲間としてもふもふ愛を語ってみるもよし……まぁ、最後は倒して欲しいんだけど、その辺いい感じにやってもらえればと思うよ」
 いい感じにと言っているが、今回わりとゆるい感じの輪さん。
 まぁ、適当に楽しんできてよ、とひらひら手を振って見せて。
「この戦場では、報酬として『不凍熊の毛皮』が手に入るよ。色々保護に手間がかかるみたいで、どれだけ厳重に保護を施しても、毛皮一枚につき金貨116枚(116万円)相当の切れ端にしかならないようだけど……でも、報酬だし、ないよりあった方がいいよね」
 そんなわけで、よろしくお願いするね、と。
 にこにことした表情は崩すことなく、輪はグリモアを展開させる。
「それじゃあ、気をつけて。 行ってらっしゃい」


咲楽むすび
 サメさんを敵にお迎えしたかったんです。

 初めましての方も、お世話になりました方もこんにちは。
 咲楽むすび(さくら・ー)と申します。
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。

 このシナリオは『帝竜戦役』の戦争シナリオです。
 第1章のみのシナリオとなり、【集団戦】です。

 また、このシナリオには、下記のプレイングボーナスがあります。

 「冷凍保存されている【ぬいぐるみ】を利用して、凍結を克服する。」

 そのままではもふもふできないのかも……ですが、大きさも見た目も様々あるので、うまく工夫してご対応いただけると幸いです。
 多分コミカル要素が多めだと思います。

 それでは、もしご縁いただけましたらよろしくお願いいたします!
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第1章 集団戦 『ハッピー工房』

POW   :    最後の大仕事
自身の【手取りと心臓】を代償に、【召喚した愛する部下達と流れの職人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【敵をも魅了する着ぐるみ】で戦う。
SPD   :    最低の仕事
全身を【部下を代償に作った最高傑作のサメ着ぐるみ】で覆い、自身の【工房への愛と研鑽に費やした年月】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    閉鎖する工房、ワンマン・オペレーション
非戦闘行為に没頭している間、自身の【雇用者および周囲】が【ストライキを起こし】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。

イラスト:まめのきなこ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロッテ・ヴェイロン
いや、話には聞いたんですが、実際行ってみるとこれは――(【凍結耐性】【環境耐性】でどうにか耐えてる)。
ていうか、液体窒素の川が普通に流れてるんですが(ぇ)。

とりあえず等身大のぬいぐるみ発見!「高熱」属性のプログラムで周囲の氷を溶かして、着ぐるみっぽく改造してから着装!さぁこれで準備はできました!

で、非戦闘行為にふけってる敵を【挑発】して、「炎」属性のプログラムで着ぐるみごと焼き払っちゃいましょう。【先制攻撃・一斉発射・制圧射撃・捨て身の一撃】

※アドリブ・連携歓迎


フェルト・フィルファーデン
寒い……寒いわ……!こんな寒さ本当に凌げるの……いえ、これも世界を救うため。頑張らないとね……!

ぬいぐるみは、そうね……この大きなカンガルーのぬいぐるみのお腹の袋にお邪魔させてもらいましょう。これで多少暖を取れるはず。それでも寒いけれど……
人形遣いの力でぬいぐるみを動かして、さあ出発よ!

敵の方が随分と暖かそうね……ねえ、アナタ。ちょっとその毛皮、少しでいいからいただけないかしら?……ダメ?そこをなんとか……絶対ダメ。そう……
じゃあいいわよ、こっちは別の方法で暖まるから……
UCで作った炎の壁、暖かいわ……えっ?アナタも暖を?本当に?仕方ないわね……(壁渡す)(燃える)……だから念押ししたのに……




 そこは、見渡す限り白銀の世界だった。
 なんとなくロマンチックな言葉で表現してみてから、シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)はほんの少しだけ遠い目をした。
「いや、話には聞いたんですが、」
 寒い。いや、痛いというのが正解か。とはいえ、言葉にすればそれこそ気持ちが引きずられてしまう。ここはどうにか耐えなくてはならない。何とはなしに目にしてしまった川に、水ではなく液体窒素が流れていたと知っても。
「実際行ってみるとこれは――」
 バナナで釘が打てたり、バラの花をつまんで粉々にできたりがうっかり体験できちゃったとしても。
「侮れませんね、絶対零度地帯……っ」
 緑の瞳がほんの少しキラキラとしていた。持ってきておいてよかった、バナナとバラ。……て、後半は寒さ忘れてちょっぴり楽しんでたっぽいシャルロッテさん。
 とはいえ。いくら持ち前の凍結耐性や環境耐性でねばってみても、限界は近くなるもので。いいかげん、ここはグリモア猟兵の言っていた例のものを探さなくてはならない。シャルロッテは注意深く辺りを見渡し――、
「意識すると意外にあっさり見つかるものなのですね」
 何もない白銀の世界だったと思っていたのだが、目を凝らせばそこかしこに凍りついたぬいぐるみが転がっていた。一体なぜ、などと考えてはいけない。そういうものなのだ。
「とりあえず、ですね」
 一つのぬいぐるみを手にし、口元をほころばせるシャルロッテ。まずはとばかりに、持参したゲーミングノートPCを開き、そのキーボード上で軽やかに指を動かす。実行させたのは「高熱」属性のプログラム。熱により、ぬいぐるみの氷を溶かし乾かしたところで、さらに手を加えていく。
「できました!」
 準備を終えたシャルロッテが、声とともに立ち上がる。
 そこにはもっふもふの白うさぎが居た。
 もっふりきゅぴんと揺れる左右のうさみみ。
 くりっとしたつぶらなおめめ。 
 耳と胸元にはキュートでクールなミントグリーンのリボンが、可愛らしく飾られていて。
「等身大のぬいぐるみを着ぐるみっぽく改造してから着装する。 完璧です」
 えへん、と胸をそらす白うさぎ……を着込んだシャルロッテ。
 その名も『着ぐるみがなければぬいぐるみで造ればいいじゃない』作戦。本物の着ぐるみよりはちょっと綿がごわつくところもあるけれど、ぬいぐるみの中に入ってしまえば、寒さは防げる。うん、完璧だ。
 ようやく寒さの心配がなくなったところで、シャルロッテは改めて辺りを見渡す。
 さぁ、ターゲットはいずこ。


 一方。
「寒い……寒いわ……!」
 凍える寒さに負けまいと。フェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)は、花びらのように繊細な翅を必死にはばたかせる。
 小さな身体にも襲ってくる寒さは、本当に容赦がなくて。どんな言葉でも声を発していなければ、それこそ寒さで声が出なくなってしまいそうだ。
「こんな寒さ本当に凌げるの……」
 思わずこぼれてしまった言葉に、フェルトははっとする。いけない。寒いからって気持ちまで弱くなってしまってはそれこそ敵の思うつぼではないか。
「……いえ、これも世界を救うため。 頑張らないとね……!」
 特別な耐性はなくともどうにか動けているのは、フェルトが猟兵という、世界を救う存在であるからこそ。自らの願いのために、どんな時でも笑顔を忘れずにと、フェルトは気持ちを奮い立たせる。
「ぬいぐるみは、そうね……」
 点在するいくつかのぬいぐるみを見て回っていたフェルトは、ようやく決めた様子で一つのぬいぐるみの前へ降り立った。
「この大きなカンガルーのぬいぐるみのお腹の袋にお邪魔させてもらいましょう。これで多少暖を取れるはず」
 解凍させた上で、よいしょ、とお腹の袋に入り込むフェルト。もこもこふかふかした感触は、思ったよりとても心地よい。気分はすっかり赤ちゃんカンガルーだ。
(「これで少しはマシかしらね……って、」)
 ともすれば眠ってしまいそうになるのをぐっとこらえて、フェルトはふるふると首を振れば、ぬいぐるみのお腹の袋から顔を出して、超低温の空気に触れる。その空気はやっぱり冷たいけれど、先ほどよりも暖かくなった分、ちょっぴり心地よい。
 気合を入れ直せば、フェルトはぬいぐるみを見上げて。
「それじゃあ、お願いね?」
 言葉ともにフェルトが使う人形遣いの力によって、ぬいぐるみはゆっくりと動き出す。
 もこもこぴょんぴょこ。白銀の中を飛び跳ねるフェルトinぬいぐるみは、傍目で誰かが見ていたとしたら、何とも和む光景だ。
「さあ出発よ!」


「……あら?」
 それを最初に見つけたのは、フェルトだった。
 白の世界に異様に目立つ、何だかわちゃわちゃと騒がしそうな様子の何か。
 ぴょんぴょことカンガルーぬいぐるみを操りながら、近づいたフェルトが見たもの、それは。
「……えーと……」
 唐突に置かれたコタツwithミカン。
『いやぁ、俺っちの冬はやっぱり着ぐるみでコタツでミカンだね』
 そのコタツに入り、「趣味の着ぐるみ」なる雑誌を読みながらぬくぬくしているサメ……の着ぐるみこと『ハッピー工房』。
 何と言うか、めちゃくちゃくつろいでた。
 そしてそのサメinコタツの周りで、プラカードを持ったり、横断幕持ったりしながらわちゃわちゃしているのはヒトデ。
「……あの、何をしているの?」
 いまいち何をやっているかわからなかったフェルトさん。思わずプラカードを持ったヒトデに声をかけてみる。
『見てわかんねーか? 抗議活動してんだよ!』
『そう、ストライキだ!』
「すとらいき……?」
 やっぱりきょとんとするフェルト。ハニーゴールド色の瞳に浮かぶのは「?」ばかり。
 かつての自分の国でも織物業が盛んだったけれど、そんな言葉は聞いたことなかったし、こんな様子も見たことがなかった……と思う。多分。
(「けれど、これ、何の効果があるのかしら?」)
 抗議活動の中央ですっかりコタツライフを楽しんでいる様子のサメに、フェルトがそんなことを思うのも無理はない。……ちなみにこの状況こそが、敵の術で作り出されたものだったりする。あと、ストライキって、こんな感じだったっけ……?とか思ってはいけない。例えこの光景が、本来のストライキからは、ずれていたとしても。外部からの攻撃を遮断するという意味では、術として十分な効果を発揮しているのだ!
「すとらいきの効果はわからないけれど……あの敵の入ってるこたつ?の方が随分と暖かそうね」
 あの、サメが言うこたつは、フェルトの目から見てもぬくぬくしてそうだ。あの中に一緒に入ることができたらさぞ快適だろう。
「……ねえ、アナタ。 ちょっとそのこたつの隙間に、少しでいいから入れていただけないかしら?」
 ヒトデたちのバリケードの間からお願いの声掛けをしてみるフェルト。両手を胸のところで合わせ、こう、目を潤ませてみちゃったりして。
『だめだねっ、俺っちのぬくぬくスペースはやらないんだぜっ』
 雑誌からちらと目線を向けたかと思えば、すげなく返すサメ。
 ぐ、と唇を噛むフェルト。いやここはもう一押しくらいはと頑張ってみるも。
「……ダメ? そこをなんとか……」
『絶対だめー』
 今度は目もくれやしなかった。愛らしい妖精のお姫様のお願い攻撃であるというのに、ちらとも揺らがないなんて。
「そう……じゃあいいわよ、こっちは別の方法で暖まるから……」
 むぅ、とほんの少し頬を膨らませて、コタツとストライキの輪から少しだけ距離を置くフェルト。そうして自らのユーベルコード【Firewall-protection(デンシノホノオヨカベトナリテワレラヲマモリタマエ)】で、炎の壁を発動させる。
「暖かいわ……」
 煌々と燃える炎に手をかざして、ほっと息をつくフェルト。やっぱり炎の力って偉大ね、などと思ったその時。
『お前のそれ、あったかそうだなー』
 炎の赤に魅入られたか、プラカードを持っていたヒトデが近づいてきた。
『俺らヒトデもあったまってもいいかー?』
「……えっ?」
 ヒトデの言葉に思わず驚くフェルト。
「アナタも暖を?」
『そうだよー、俺らだって寒いんだよ、あったまりたいんだよー』
 フェルトはうーんと考える仕草をする。姫として、誰かに何かを分け与えるのは好きだから、それ自体は構わないけれど。
「本当に?」
『なんだよー、ケチなのかよー』
 サメを囲んでいたストライキの輪が、いつの間にかフェルトを囲み始めれば、フェルトはこくりと頷いて。
「仕方ないわね……」
 目の前に置いた炎の壁を、フェルトはそっと掴んでヒトデに手渡し――、

 ごぉぉぉぉっ!

 フェルトの炎を受け取ったヒトデが一瞬で燃えた。
『わぁぁぁ、も、燃えた?! わ、わぁ、燃え移るー?!』
 それを見たフェルトは困ったように息を吐いて。
「……だから念押ししたのに……」
 フェルト自身が作り出した概念としての炎だからこそ、フェルトが触れても平気なのであって。他の者が手にしてどうなるかの保証ができないから忠告したのだけれど。
「でも、仕方ないわよね」
 わぁわぁと騒ぎ始めたヒトデたちを眺めて苦笑しながら、フェルトはサメを見やった。
 さすがの敵であっても、この状態では悠長に雑誌も読んでいられないだろう。


「あ、赤々と燃えていますね。 あの辺でしょうか」
 フェルトの炎の光を頼りにやってきたシャルロッテは、コタツに入ったままのサメを目にすれば、呆れた顔で腕組みをした。
「まったく、ろくに働きもせずコタツでミカンとはとんだ雇用人ですね」
 うちだったら確実にクビです、などと言ってのける。エンタテイメント企業の社長令嬢という顔を持ち、幼いながらも会社やビジネスが何たるかを熟知しているシャルロッテだからこそ言える言葉である。
『うっせーよ、俺っちの現場は俺っちが好きにしていいんだよ。 そして着ぐるみの頂点はサメなんだ。 偉そうなウサギの出る幕じゃねー』
 雑誌を閉じてぎろりと睨むサメ。ちなみにお忘れかもしれないが、シャルロッテは白うさぎのぬいぐるみを着ぐるみよろしく着込んだ、いわゆるうさ着ぐるみだ。その姿だと腕組みしてもかわいいよね!
「偉そうでしょうか? けれど現場を自分の天下だと思って動くのは感心しませんね。 そういう雇用人にはしっかりお仕置きですよ」
『そうかい。 それじゃあ、俺っちもアンタを叩きのめして悠々着ぐるみコタツライフを再開させてやるぜ』
 コタツから出てゆらりと立ち上がったサメが、両手のカニバサミを構える。だが、その構えよりも早く、シャルロッテは素早い手つきでゲーミングノートPCを開き、キーボードの上で指を躍らせる。
「攻撃プログラム展開。敵に直接コマンド入力といきますよ!」
 タッチタイプのリズミカルな音とともに発動されるは、ユーベルコード【ATTACK COMMAND(アタックコマンド)】!
 実体化したプログラムは、まるで炎をまとった生き物のようにうねりを帯びながら、いくつも生成されていく。
『うっせぇ! やられる前にやってやるぜ……!』
 攻撃主を先行して叩こうと、シャルロッテへと襲い掛からんと飛び上がったサメのカニバサミが迫る直前、
「させません!」
 タンッ、と、シャルロッテの指がエンターキーを叩く。その瞬間、実体化したプログラムたちは、敵へ向かって一気に襲いかかっていき。
『う、うわぁぁぁぁ!!』
 プログラムたちがサメを喰らい、燃やし尽くしていく。
 絶対零度の寒空の中を、サメことハッピー工房の悲鳴がこだまし、消えていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

あっ、ライオンくんのぬいぐるみがあるね!
それじゃあ、ボクはこのぬいぐるみを着ぐるみにしちゃうぞ☆
二足歩行のライオンくんになったところで【ライオンライド】で相棒のライオンくんを呼ぶね♪

ハッピー工房が近寄って来たら、ぬいぐるみのモフモフっぷりをアピールするよ!
ほらほら、本物のライオンくんと同じくらいモフモフだよ♪
そっちはサメさんなのに熊さんの毛皮なんて被ってるの?
せっかくのサメ肌が台無しだーと煽ってみたり!
ほらほら、もっとサメ肌アピールだーと煽って毛皮を脱がせて寒さで動きが鈍ったところをがぶっとライオンくんに噛んでもらうね♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ポーラリア・ベル
冬の雪の中にはね、
お祭り、遭難、遊びの忘れとか、色んな理由で埋もれたぬいぐるみがあるんだよ。
ここは凍ったぬいぐるみさんの…デパートだわ!
【常冬の招来】!(冬告精の)みんなー!ぬいぐるみであそぼー!

【氷結耐性】で凍(ねむ)らないようにしながら
【属性攻撃・地と氷】の魔法を当てて、氷を振動で超細かくして、シャリシャリにして柔らかく!
思い思いのぬいぐるみを、ぎゅーって抱いたり、中に入ったりして遊ぶよ!ポーラはぺんぎんさん!

わっ!サメさん!
えっ?もふもふ愛を語りたい?いいよー!
聖夜祭とか寒い日に、皆可愛くもこもこしてるのいいよね!サンタさんとか!
適当な所で、着ぐるみの内側から氷の【全力魔法】しておくよ!




 絶対零度地帯。
 あらゆるものが凍結してしまうこの場所は、すでに乱獲され絶滅した不凍熊以外には、生存することができない、言ってしまえば「死の大地」だ。
 だが。そんな冬よりも厳しいこの場所にも、心和むひとときが訪れようとしていた。
「冬の雪の中にはね、お祭り、遭難、遊びの忘れとか、色んな理由で埋もれたぬいぐるみがあるんだよ」
 鈴が鳴るような、かわいらしい声を歌うように響かせて。キラキラとした笑顔でそう言うのは、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)
「だからね、ここは凍ったぬいぐるみさんの……デパートだわ!」
 冬の妖精さんなポーラリアにとっては、超低温の寒さなんて何のその。むしろ大好きで、愛しくてたまらない。だからここは、ポーラリアにとっては、格好の遊び場だ。
「そうなんだ!」
 そんなポーラリアの言葉に、やっぱりキラキラと瞳を輝かせるのは、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。
 同じ妖精さんだけど、ティエルの故郷は常春の国だから、冬とはまったく縁がなかった。吟遊詩人が奏でる詠の中で知った冬のイメージも寒くて怖いものが多かったし、この場所の案内もちょっと怖そうだなと思っていたけれど。ポーラリアの話は、ティエルの持っていた怖いイメージを一気に吹き飛ばしてしまった。そして、確かにポーラリアの言う通り、この場所には、ぱっと見る限りでも凍ったぬいぐるみをあっちこっちに見つけることができている。
「それじゃあ、ぬいぐるみ選び放題だね!」
「うん、そうなの! だからね、ポーラと一緒にあそぼ!」
「うん! 遊ぼ♪」
 お互いに顔を見合わせれば、楽しそうに笑う、ティエルとポーラリア。
 せっかく遊ぶのなら、たくさんの方がきっと楽しい。そう思ったポーラリアは、やっぱり楽しそうに歌声を響かせる。

 ♪みんなでいっしょにあそびましょう あのこといっしょにあそびましょう

「【常冬の招来(ヒエムス・アミークス)】! みんなー! ぬいぐるみであそぼー!」
 ポーラリアの歌に応えるように現れたのは、ポーラリアと同じ冬の妖精さんたち。
 かわいらしくも楽しい遊び仲間たちの登場に、絶対零度の極寒の地は一気に賑やかさを増していく。
「ぬいぐるみはね、シャリシャリにして柔らかく!」
 ポーラリアと冬の妖精さんたちは、凍ったぬいぐるみの冷たさの感触を大切にして遊びたいから、魔法を使って丁寧に氷を柔らかくしていく。それから、思い思いのぬいぐるみを選ぶ。自分たちと同じくらいの子にはぎゅーっと抱きしめてみたり。逆にすごく大きな子は、その中に入って遊んでみたり。
「ポーラはぺんぎんさん! ティエルはー?」
「ボクはねー、」
 冬の妖精さんたちのぬいぐるみも素敵だけど、やっぱりあったかくして、もっふもふしたいなぁと思いながら、ティエルはわくわくと辺りを見渡す。
「あっ、ライオンくんのぬいぐるみがあるね!」
 ティエルと同じくらいの背丈のぬいぐるみを見つければ、花のような笑みを浮かべて。
「それじゃあ、ボクはこのぬいぐるみを着ぐるみにしちゃうぞ☆」
 宣言するやいなや、さっそく解凍して加工してみるティエル。着心地よくなるように細かいところはいい感じに調整しちゃえばいいんだよね♪ほら、グリモア猟兵もいい感じにって言ってたし!
「あれやこれやでー、がおー! 二足歩行のライオンくんだよ!」
 がおー、と口で言いながら、両手を上げてライオンっぽい仕草をするティエル。
 ああ、妖精さんの着ぐるみ姿ってなんて愛らしい。
「よーっし、ボクの準備はおっけーだから、仕上げはこれだよー♪ ライオンくーん!」
 もふもふライオンな着ぐるみな手を口元に持ってこれば、ティエルは【ライオンライド】で相棒くんを呼び出した。
『「がおーーー!」』
 子供ライオンな相棒くんとライオンぐるみなティエルが揃えば、もふもふ度もかわいらしさもダブルとなって。
「らいおんさんー! もこもこもふもふだね!」
 ペンギンぬいぐるみをぎゅーっとしながら、ポーラリアもにっこにこだ。
 妖精さんたちとぬいぐるみのコラボ。これだけを見れば、本当に心和む、穏やかなひとときにも感じられる。というかもうこれだけでいいんじゃないだろうかって気すらしてくる。
 だがしかし、忘れてはならない。
 ここは絶対零度地帯であり、戦場の一つなのだ。
 そして、戦場である以上、敵もしっかり存在するわけで。
『いえーいっ、遊びの時間は終わりだぜ!』
 寒空の中、どこからともなく高らかな声が響き渡った、かと思えば。
 
 どぉぉぉん!!

「「わぁぁぁぁ?!」」
 ポーラリアとティエル、そして冬の妖精さんたちが遊ぶ、ちょうど真ん中にあたる場所に、ものすごい音が響き、地煙ならぬ雪煙が舞った。
『俺っち参上だ!』
 ちゃきーんと、何やらカッコつけたポーズを決めながら現れたサメの着ぐるみこと『ハッピー工房』は、妖精さんたちな面々を見やれば、チンピラがごとくに絡みを入れ始めた。
『おうおうおう、このイケてる着ぐるみ見たか? その名も俺っちの部下を代償に作った、最高傑作のサメ着ぐるみだぜ!』
 部下を代償にって自ら言ってる時点でもういろいろアウトだと思うのだが、その辺にツッコミを入れる者はこの場には居なかった。
「わっ! サメさん!」
 青の瞳をぱちくりとさせて見つめるポーラリア。いきなり飛翔してやってきたかと思えば、何だかよくわからないことを言っているサメに、ついていけてない様子で、ぱちぱちと瞬きをさせている。
「……サメさんの言ってることはわかんないけど、ポーラたちの邪魔しに来たの?」
 こてん、と首を傾げて問いかけるポーラリア。
『……あ、』
 見つめるポーラリアの瞳は無邪気で純粋そのもので、それこそうっかり汚してはいけないようなオーラすら漂わせていて。
『……ち、ちげぇよ、邪魔じゃあねぇんだ』
 敵なので、実際は邪魔というか猟兵たちを倒しに来たと言うのが正解なのに、うっかり言葉を濁してしまうサメ。自らの汚れを隠さんばかりにわたわたしている。
『あ、アレだな、てめーらぬいぐるみで遊んでたろ? もふもふと。 てことはもふもふ愛もあるってぇことだよな? 俺っちは、そのもふもふをてめーらと語りたいってぇことなんだぜっ!』
 キリっと答えるサメ着ぐるみ。最初は取ってつけたかのようだったが、そう思い込んだらしく、最後はなんかそれらしくなっていた。実際着ぐるみ愛はあるから、俺っちがきた理由としては間違ってないって言えるぜ!ということらしい。
「えっと、それって、もふもふ愛を語りたい、ってことー?」
 再びぱちくりと瞬きをしながら、サメを見つめ、再度問いを投げかけるポーラリア。その青の瞳にはやはり一点の汚れもなくて。
『……あ、ああ、そ、そうだぜ!』
 思わずドモりながら応えるサメ。ああ純粋さって怖い。 
「いいよー」
 対するポーラリアはやっぱりというか当然というか、そんなサメの内心など知る由もなく。
 もふもふ愛を語りたいというサメの言葉を素直に受け取れば、にこぉ、と、満面の笑みを浮かべる。
「聖夜祭とか寒い日に、皆可愛くもこもこしてるのいいよね! サンタさんとか!」
 あ、本当にかわいい。話の内容もかわいかったが、それを話すポーラリアが本当にかわいらしかった。
 ほら、サメが何だかキュンキュンしてる。身悶えてる。
「サメさんはー、もこもこしたのでサメさん以外にも好きなのあるの?」
『……うぁ、えっと、だなぁ』
 何故か口ごもるサメ。どうやら純粋さに(以下略)。
 ポーラリアとそんなやりとりをするサメの後ろから、
「ハッピー工房! ほーら、ボクとライオンくんのもっふもふアタックを受けてみろー⭐︎」
 どーんと体当たりを仕掛けるティエル。
『う、うぉぉぉ?!』
 びっくりするほど不意を突かれ、思わず前につんのめるサメ。
 あ、ちなみにポーラリアは見切ってすんなり回避したのでダメージ受けてません、あしからず。
『ななな、後ろから突然何するんだこらぁ?!』
 あ、サメ、チンピラモードに戻った。
 それでもまったく気にしないティエルは、ライオンくんに乗った状態で、にっこにこと満面の笑みとともに、サメの前でくるりとターン。
「ほらほら、本物のライオンくんと同じくらいモフモフだよ♪」
 ダンスにパフォーマンスまで加わって、見て見てーとアピールするティエル。
『確かにもふもふだな。 だが俺っちの最高傑作のこの着ぐる――、』
「そっちはサメさんなのに熊さんの毛皮なんて被ってるの? せっかくのサメ肌が台無しだよー」
 サメが自らの着ぐるみアピールをする間を与えない勢いで、ずいずいと圧をかけていくティエル。見た目サメだけどどの辺に熊さん見えるかなぁ、などと言いながら、身軽な動きでサメの周りを飛び回り。
「あ、この辺にチャックがあるー♪」
『け、毛皮はしっかり加工……って、着ぐるみのチャックは触れてはならない禁断の領域だろうがてめぇぇぇ?!』
 チャックを外そうと試みるティエルの魔の手から逃れようと思いっきり身体を揺らすサメ。だが、妖精さんのすばしっこさを侮るなかれ。その逃れる動きも虚しく、チャックはだんだん下ろされていき。
「ほらほら、もっとサメ肌アピールだー」
『おま! やめろ、チャックの隙間から冷気入って寒いだろーが?!』
 ああ、フェアリーである以前に子供って無邪気で怖い。そんな無邪気な顔して思いっきりあんなことやこんなことするんだろ?!……などと思う暇があるのかは謎だが、とにかくチャックを下ろされるのは死守しなければとじったばったするサメ。
『やめろって言ってるのがわからんかぁぁぁ?!』
 この着ぐるみを作るために工房へどれだけの愛と研鑽を費やしたと思ってるんだぁ!……とか何とかの内心の叫びとともに、チャキーン⭐︎とカニバサミを振り上げ、ティエル目掛けてお見舞いしようとするサメ。
「きゃぁ?!」
 あわやカニバサミが直撃するかという直前、
『がうぅぅぅ!』
 サメの死角を狙って、ティエルの相棒、ライオンくんが思いっきり体当たりをくらわせる。
『ぎゃ?!』
 思いっきりくらって倒れ込むサメ。しまった、すっかり振り回されすぎて脇が甘くなってたぜ、だなどと思う隙などはなかった。
「ポーラも、サメさんのサメ肌見るんだよー!」
 ポーラリアの無邪気な声が聞こえた。……サメの背後から。
「氷の全力魔法、くらっちゃえー!」
 同時に、サメの身体の内側に、凍りつくような寒さが襲ってくる。
『ぎゃぁぁぁ?! 寒すぎるぅぅぅぅ?!』
 ポーラリアとティエルは、はたしてサメ着ぐるみの下のサメ肌を見ることができたのか。それは読者のご想像にお任せしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
どこの誰が作って冷凍保存したんでしょう、これ……?
使えるものならありがたく使わせてもらいましょうか。

ぬいぐるみの腕で抱きつくことができるタイプのぬいぐるみを選び、私の首や腕、足に抱き着かせていきます。元々寒さには強い方ですし、これで問題はないでしょう……が、せっかくですし両手で大き目のぬいぐるみも抱えて進みましょう。

この状態では銃を撃つこともできませんが、支障はありません。敵がやってきたら【冬の尖兵】、LXXXが刻まれた強力な兵士を1体召喚、敵の飛翔しての攻撃を受け止めさせ、そのまま剣で切り伏せさせます。

元々から氷でできた兵士、この環境で動きが悪くなることはありません。


シリン・カービン
【SPD】

「これは…カモシカ、ですね」
山岳を機敏に駆ける獣を、何回か仕留めたことがあります。
検分の後、精霊猟刀で解体するようにスパスパと。
「出来ました」
スラリとした脚線美(?)はそのままに、
超低温にも耐えるモフモフ感は完璧に。
カモシカの着ぐるみ完成です。

その着ぐるみは血に塗れている。
聞こえませんか。
あなたと同じように着ぐるみを愛した部下たちの声が。
材料として一方的に乱獲された不凍熊の嘆きが。
着ぐるみの為に犠牲を顧みなかったあなたの行為に、
その着ぐるみが泣いています。

【シャドウ・ステップ】を発動。
山林を駆けるカモシカのごとく残像を残しながら肉迫。
わずかなほつれを見出し、縫い目を切り裂きます。




「どこの誰が作って冷凍保存したんでしょう、これ……?」
 白銀の世界のあちらこちらに転がる冷凍ぬいぐるみを見つめながら、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は、ぽつりと言葉をこぼした。乏しいながらも、微かに感情が見えるようになってきたその表情には、ほんのり戸惑いの色が見えて。しかし、それも無理はない。それくらい多くのぬいぐるみがそこにあったのだから。
 とはいえ。前情報も何もなく唐突にであれば怪しむ必要だってあるのかもしれないが、今回に関しては、グリモア猟兵の話に基づくものであり、しかも自分たちを助けてくれるものなのだから、そんなに気にすることもない。
「使えるものならありがたく使わせてもらいましょうか」
 ふむ、と。頷きとともにセルマはかがみ込み、凍結されたぬいぐるみを手にする。
 手にしたのは、俗に言う抱きつきぬいぐるみだった。両手部分が長く、腕や足に巻き付けられるタイプのアレである。
 ぬいぐるみを解凍させて肌触りに支障がないようにしてから、自らの首や腕、足へと抱きつかせていくセルマ。
「元々寒さには強い方ですし、これで問題はないでしょう」
 自らの身体を見渡してから、納得した様子でセルマは頷くも。ふと視線をやれば、ちょっと大きめの部類にあたるくまのぬいぐるみがあった。
 ちゃんと乾かせばもふもふであろうことがわかる毛並みに、くりっとつぶらな瞳。
 うっかり目が合ってしまい。一瞬稲妻が走ったような気持ちになったセルマさん。
 ……。
 しばしの間の後。
「……せっかくですし、ぬいぐるみも抱えてみるのもよいかもしれませんね」
 この辺ちょっぴりお約束。こちらも丁寧に解凍・乾燥させて、しっかり抱きしめてみる。
 思った以上にもふもふでふかふかな毛並みに、表情にこそ出てないけれど、身にまとう雰囲気が心持ち和らいでいるような。
 ちなみに、傍目に見ると両腕にはウサギ、両足にはくま、首元には猫の抱きつきぐるみを巻き付け、大きめのくまを抱きしめたのが現在のセルマだったりする。
「この状態では銃を撃つこともできませんが……、」
 自分の状況を見てそう分析するも、支障はないと判断するセルマ。
 問題ない、策はある。歴戦兵たる過去を持つ身、これくらいで戦いに支障をきたすようではそれこそ問題なのだから。
 ……そんな本人の分析はさておき、なんともかわいらしい状況になっていることだけは、ここに付け加えておこう。


 さて、クールな美少女がファンシーな状態になりながら絶対零度の世界を進む一方で。
 もう一人のクールビューティーは、一つの冷凍ぬいぐるみと相対していた。
「これは……カモシカ、ですね」
 シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は、そのぬいぐるみが模した動物をそう分析する。
 カモシカ。
 山岳を機敏に駆ける獣で、シリンもかつて何回か仕留めたことがある。
 毛皮は質が良く、肉は食用となり、そして角もまた様々なアクセサリや実用品の材料となるなど、とにかくすべてを活用できるいい資源だ。……もちろん、これはぬいぐるみだから、そういう資源にはなりえないのだけれど。
 じっくり検分した後に、シリンは携えていた精霊猟刀を手にし、スパスパとぬいぐるみを切っていく。
 その手つきは、見る人によってはまるで本物を解体しているような錯覚を覚えてしまうほどの鮮やかなもので。
 そして。
「出来ました」
 はたしてそれは、カモシカの着ぐるみだった。
 完成したその着ぐるみを装着しながら、シリンは自身の身体へのフィット感を確認していく。
 どうやって計算したのだろう、シリンの体型にしっかり合ったそれは、着ぐるみのもふもふ感を有しながら、シリンの脚線美をもキープするという、常であれば両立しがたい部分までしっかりと押さえられていて。
「……問題ありませんね」
 クールな表情はそのままに。シリンは頷いて、辺りを見渡し、獲物を探す。
 さぁ、ここからが今回の狩りの始まりだ。


『俺っちの最高傑作をここに見やがれぇぇ!』
 その場所が絶対零度地帯の中心かどうかはわからないが、そのサメ着ぐるみは叫んでいた。
 正式名称は『ハッピー工房』。自身の身に着ぐるみに対するこだわりと愛情をぎゅうぎゅうに詰め込んだ、いわゆる「熱い」、うっかりすると「熱苦しい」存在である。
『どうよどうよ、この素晴らしき最高傑作のサメ着ぐるみを見たか! 高みを目指して早何年、この毛並み、フィット感、どれをとっても最高だぁぁぁ!』
 ハッピー工房は決めていた。この叫びとともに増強した戦闘力で、空を駆け、出会った猟兵をかたっぱしからなぎ倒していくのだと。
『よし、俺っち、気合十分だぜぇ! さぁ出発だ!』
 ハッピー工房は飛翔し。そうして、雪原を進む一体の影を見つけた。
 どんな生物も生きていけないその地に動く影があるとするなら、それは猟兵だと、ハッピー工房はそう判断する。それは工房職人たる長年のカンによるものというよりは、オブリビオンの本能によるものかもしれないけれど。
『何にせよ、猟兵は倒してなんぼだぜ! あの猟兵はここで俺っちの餌食だぜ!』
 声をあげ、上空から急接近を仕掛けてくるサメ。その姿を視界に捉えたセルマは、抱えたくまのぬいぐるみを抱きしめたまま、軽くまばたきをした。
 そう、先ほども確認した通り。両手がふさがっていようとも支障はない。
 セルマは両手に持ったくまのぬいぐるみを掲げながら、口を開く。
「ここからは剣の冬、ということで。行きなさい、兵士たち」
 ユーベルコード【冬の尖兵(ウィンター・ソルジャーズ)】により召喚されたのは、一体の氷の兵士だった。その胴体に刻まれた刻印は「LXXX」。すでに何体もの兵士を合体させた、強化仕様である。
 氷の兵士は、セルマを庇うように前へ踏み出す。そうして、構えた氷の剣を振り上げれば、急降下してくるサメのタイミングと合わせるように、振り下ろし、一気に斬りつける!
『ぐぅぅぅ?!』
 サメは攻撃せんと構えたカニバサミで受け止めようとするも、全てを受け切ることはできなかった。ざっくりと割られてしまったカニバサミを前に絶句するサメ。
 それでもセルマの氷の兵士からの攻撃を何とかかわす。飛翔で逃れ、何とか態勢を立て直そうと試みるも、
「――その着ぐるみは血に塗れている」
『……ひぃ?!』
 いつの間に忍び寄ったのだろう。セルマおよび氷の兵士とは異なる、いうなればサメの背後から、その声は唐突に聞こえてきた。
 聞こえてきた声にうっかり変な声を出しながらサメが飛び退り、そして振り返る。そこにはカモシカらしき姿をした女――シリンが居た。
「聞こえませんか」
 絶対零度の氷雪にも表情を変えることなく。言うなればこの氷雪がごとき冷たさを伴いながら、シリンはサメにこう続ける。
「あなたと同じように着ぐるみを愛した部下たちの声が。 材料として一方的に乱獲された不凍熊の嘆きが」
 すっとシリンの、緑色をした目が細まる。
「着ぐるみの為に犠牲を顧みなかったあなたの行為に、その着ぐるみが泣いています」
 泣いていると言われた自身の着ぐるみを、サメはちらと見やった。
『ほぅ、そうかい。 ……確かにその通りかもしれねぇな』
 先ほどセルマの氷の兵士によって割られてしまった、そして元々は裁断バサミだった両手を交差させながら、サメはじりとシリンから距離を離す。
 この女は侮れない。下手に気を抜けば一気に距離を詰めてくるに違いないと、サメの中のカンがそう告げている。
『だがよぅ、最高傑作ってぇのは、そういう犠牲の上に成り立つものなんだぜぇ?』
 ニヤリ、とちょっぴりニヒルに決めてみたつもりのサメだったが、シリンにはあまり通じなかったようだ。
「犠牲というのは、生きるための必要最小限にのみにとどめるものであり、しかも払われれる犠牲には敬意を表するものです。 ……そのどちらにも意識を向けないあなたは、その着ぐるみを着る資格など、ありません」
 シリンの声が一段と低くなる。細められた瞳の奥にはこの寒冷地と同等の、あるいはそれ以上の冷たさが宿ったと、サメが感じたその刹那。
 サメの目の前にあったはずの、シリンの姿が残像とともにかき消える。
『?!』
「追いつけますか、私の影に」
 さながら、山林を駆けるカモシカのごとく。ユーベルコード【シャドウ・ステップ】により時の精霊の加護を受けたシリンは、サメに肉迫する。呼吸する間すら与えずに、手にした精霊猟刀を操って、
「あなたは私の獲物。 逃げることはできません」
 サメ着ぐるみのほつれを見出し、その縫い目を切り裂いていく!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

早乙女・龍破
・ぬいぐるみについて
極寒の地すら乗り越えられるぬいぐるみとは……いえ、誰が作ったかも気になりますが有難く使わせて頂きましょう
大小のクマを体に括り付け……すみません、角だけは冷えてしまうので刺さざるを得ません……後で縫いますので暫しご容赦を

・戦闘について
一旦は様子見も含め少し話してみましょうか
どうやら普通のモノではなく一般に異形系と称されてもおかしくない造形を好むようなので一般受けはしなかったのでしょうねぇ
一部の熱烈な好事家達のために技術を磨いていたのでしょうねぇ
ああ、ですがやはり今の時代部下達を犠牲にするのはいけません、コンプライアンスは守っていただかないと
冽破裂空烈斬です

●その他
アレンジ歓迎


フェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ
あ、さめあった。
これを……こう、くりぬいて……
これで良しなのだわ。

…………(じり)
………………(じりじり)

しゃー。

今なのだわ戦列歩兵(くるみ割り人形)!非認可ストライキ検挙!




「極寒の地すら乗り越えられるぬいぐるみとは……」
 そこかしこに転がっているぬいぐるみの一つを手に、矯めつ眇めつしてみながら、早乙女・龍破(流れること川の如き・f00182)はひとりごちる。
 超低温により凍っていることを除けば、ごく普通のぬいぐるみに見えるというのに。
 長く伸びた前髪に隠されているため、瞳に宿る感情は知り得ないものの、こぼれた言葉とその口元からは、わずかながら驚きと戸惑いの色が見え隠れしていて。
「……いえ、誰が作ったかも気になりますが有難く使わせて頂きましょう」
 一つが気になれば付随して疑問は増えるもの。だが、今回大切なのはその疑問を追求することではない。浮かんだ疑問を思考の脇に置けば、龍破は手にしたぬいぐるみを軽く撫でた。
 少しの間だが、この場においてこの身を預ける仲間になるのだから、敬意を払わなくてはならない。
「さて……」
 どのようにぬいぐるみを使わせてもらおうか。龍破はしばらく思案してから、使えそうなぬいぐるみを集め始めた。
 龍破が居る場所には、自身と同じくらいのぬいぐるみは見当たらないようだった。であれば、それなりの大きさのもので工夫するしかない。
「こんな感じでしょうかねぇ」
 大小のくまを括り付けた自分の身体を見下ろして、龍破はふむ、と頷く。
 スラリとした長身も相まって、そういうファッションだと言われれば納得してしまうほどよく似合っていた。
 ちなみに、足首まである、龍破の長く美しい黒髪は、三つ編みにまとめて肩から流している。超低温の世界だからといって髪が凍ることはないのだが、ぬいぐるみを括り付ける都合、まとめていた方が扱いやすいと判断したためだ。その髪にもいくつか小さなくまが括り付けられていて、ちょっとかわいい感じになっている。
 そして。
「……と、すみません、くまさん、角だけは冷えてしまうので刺さざるを得ません……後で縫いますので暫しご容赦を」
 すみませんとか口にしておきながら、ためらいなく自分の角にくまをぶっ刺す龍破さん。
 ちょっと生贄っぽく見えちゃうくまポイントが追加。
 かわいらしさあふれる雰囲気から、一気になんか違う世界に行っちゃった気もするが、女性扱いを好まない龍破さんだから、まぁそれはそれでいいのかもしれない。多分。
 かくして、ちょっり怪しかわいい大小くまコーディネートに身を包み、敵を求めて龍破は白銀の世界を進んでいく。


 白銀の世界に立つ、ロココ調のフリルドレスに身を包んだ、真っ白な少女。
 実は最初からそこに存在していたのではないかと錯覚させてしまうほど、フェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ(光の娘・f19067)はこの白く冷たい世界に違和感なく馴染んでいた。
「……」
 美しい銀の髪に銀の瞳。陶器のように滑らかな、乳白色の肌。頬と唇に差すほのかな赤みは、まるで化粧をしているかのようで。黙っていれば人形にしか見えないその少女のぼんやりとした瞳は、白の世界のある一点を見つめていた。
「あ、」
 不意に、少女の銀の瞳が瞬いた。何かに気がついた様子で、わくわくとした興味の光を瞳に宿せば、フェドーシヤは走り出す。
 てってって。
「さめあった」
 声にちょっぴり嬉しそうな色をにじませ、フェドーシヤが手にしたのはサメのぬいぐるみだった。しかもおあつらえ向きにフェドーシヤと同じくらいの背丈だ。
 よしよしと言わんばかりの様子で頷いたフェドーシヤ。さっそくとばかりにサメぐるみに手を加え始める。
「これを……こう、くりぬいて……」
 お人形さんのようなおっとりとした雰囲気からは想像できないほどの結構な手際の良さで、作業を行うフェドーシヤ。
 そうして。ふう、と。かいてもいない汗をぬぐう仕草をするフェドーシヤ。
「これで良しなのだわ」
 フェドーシヤちゃん in さめぐるみ、爆誕。
 有名メーカーのお人形とぬいぐるみが意図的にコラボを結んで作り出したかのような完成度がここにあった。ちなみになんか神々しくもあるのは、フェドーシヤが神だからというのもあるかもしれない。
 フェドーシヤは満足そうに頷けば、改めてぐるーっと辺りを見渡す。
 気分はもうすっかりサメだ。
 ぴ・ぴ・ぴ・ぴ・ぴーんっ。
 第六感に何かを感知させたか、再びきゅぴーんと瞳を光らせる。
「あっちなのだわ!」
 びし、と一つの方向を指さしたフェドーシヤは再び白銀の中を走り出した。


 でもって。
「……こたつにミカン……ですか」
 龍破の前に、ハッピー工房と思しきサメぐるみが見えた。
 例によってというか、こたつにミカンでくつろいでいた。
 見るからに仕事してねぇ雰囲気だった。
「……で、なんか取り巻いてわぁわぁ抗議運動起こしてるのは……」
 これまた例によってヒトデがプラカード持ったり横断幕持ったりしてストライキを起こしていた。
 龍破はヒトデを分け入ってハッピー工房に近づこうとする。何だかよくわからないが、戦う前にとりあえず話をしなければ埒が明かないだろうと思ったのだ。
「ええと、とりあえずリーダーに話を……だめですかねぇ?」
『だめだだめだー、親方には近づかせねーぞ!』
「邪魔立てするなら強行になりますけれど、それでもいいのですか?」
『暴力反対ー! 断固抗議するー! だめだだめだー!』
 あ、今度はホントにストライキっぽい雰囲気。
「困りましたねぇ、少し話はしてみたいと思ったんですけど」
 最終は力づくでとなるのかもしれないが、まずは穏便なところから話をしておきたいところです……などと思いながら。龍破が右手を頬にあて、どうしましょうかねぇとかやっていると。
「……おや?」
 龍破の脇をするりと抜けたのは、一匹……もとい、一人のサメぐるみだった。
 じり、と。それは静かに、けれど確実に、ヒトデたちのバリケードをすり抜けて、サメへと近づいていき。

 …………(じり)。
 ………………(じりじり)。

 しゃー。

 あ、威嚇した。

『……うぉ?! なんだぁ?!』
 間近に見たサメぐるみ幼女の勢いにのまれ、ハッピー工房が怯んだその時。
「今なのだわ戦列歩兵!」
 サメぐるみならぬフェドーシヤが、高らかな呼び声とともに【くるみ割り人形(シュークンチュク)】を発動。瞬間、ずらぁぁぁっと召喚されたくるみ割り人形たちが、ヒトデたちを力づくで抑え込んでいく!
「非認可ストライキ検挙!」
 大将討ち取ったなり的なテンションで盛り上がるフェドーシヤとくるみ割り人形たちに、思わずパチパチと拍手する龍破。
「いやぁ、鮮やかな対処で助かりましたぁ」
『いや違うだろ、鮮やかじゃねぇだろ、俺っちの部下をどーしてくれやがるんだ!』
「おや、けれど彼女の対応は素晴らしかったと思いますよぉ?」
 思わず抗議するハッピー工房を改めて見やれば、穏やかな笑みを浮かべた口元はそのままに、龍破は話しかける。ついでにサメの入ってるこたつに自分も入っちゃったりして。
「ああでも、私、せっかくなのであなたと少しお話をしてみたかったんですよねぇ。 あなたの着るその着ぐるみはなかなか素晴らしいと思いますから」
 もぐもぐ。こたつの上のミカンも食べてみたり。
『ああそうかい、素晴らしいってぇのは俺っち職人にとってはなかなかの褒め言葉だからな!』
 龍破の言葉に、まんざらでもなさそうな様子のハッピー工房。がははと高笑いして、うんうんと頷いて見せる。ミカンもっとあるぜ食べろとか勧め始めた。
「……しかし、その着ぐるみの造形は、人を選ぶと思いますよぉ?」
『まぁな。 この造形の素晴らしさについてこれるやつぁ、そうそうはいないからな!』
 それはもっともだな、などと頷くサメ。茶も飲むか?とか龍破に勧めながら、自身はミカンを一つ、カニバサミな手にとって、器用に皮をむき始める。
「どうやら普通のモノではなく一般に異形系と称されてもおかしくない造形を好むようなので一般受けはしなかったのでしょうねぇ」
 勧められた茶を素直にもらう龍破。思ったより良いお茶使われてた。というか、これどうして凍ってないんだろうとか思ったが、とりあえずその辺は気にしないことにした。
『しかしよぉ、一般受けする必要ってあるか? この価値をわかるヤツだけに提供する、それがいいものってぇんじゃねーか?』
「なるほど、だから一部の熱烈な好事家達のために技術を磨いていたのでしょうねぇ」
『おうよ、その方が金になるし、価値もわかってもらえるからな!』
 お前心得てるじゃねぇか!的な目を(サメぐるみの中から)向けるハッピー工房。
 龍破にも、ハッピー工房の気持ち的なところはそれなりにわかる。何かしらにこだわりを持ち、技術を磨き、極めていく。それは、剣の道に通じるところでもあるから。
「ああ、ですがやはり今の時代部下達を犠牲にするのはいけません、コンプライアンスは守っていただかないと……」
『しらねーよ! 俺っちの前でこんぶだかふらいだかって難しい言葉使うんじゃねー!』
 あ、サメがキレた。先ほどまでの友好モードはどこへやら、いきなりちゃぶ台返しならぬ、こたつ返しをし始めて。
『仕事ってぇのは、犠牲の一つや二つなければ仕事ってぇ言わねぇんだぜ!』
 叫ぶやいなや、ハッピー工房は自身のカニバサミの手を、左胸に突き刺した。
『俺っちの手取りと心臓、くれてやらぁ! 部下に職人どもぉ、最上の着ぐるみで、このくまくましたねーちゃんをもてなしやがれ!』
 きしゃー、という雄叫びとともに、部下と職人たちを召喚する!
「そうですか……というか、誰がねーちゃんですか……」
 ゆらりと立ち上がる龍破。口元はいまだ笑みの形のままではあるが、発せられるオーラはもう穏やかなものではなくなっていて。
「コンプライアンスも知らないあなたの最後の大仕事、私がぶった切ってやりますよ……!」
 襲いかかってくるハッピー工房の部下たちの攻撃を、龍破は軽くいなして。
「空を裂き、竜巻の如く、暴飈の如く荒れ狂う冽い気魂の刃……受けてみなさい!」
 すらりと抜いた「奥州貞宗」を構えれば、龍破は大きく身体を回し、勢いよく宙へと斬り上げた。
「【冽破裂空烈斬(レッパレックウレツザン)】!」
 刹那。「奥州貞宗」から放たれた無数の竜巻が、ハッピー工房を、部下たちを、職人たちを勢いよく切り裂いていく!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
※選ぶのはデフォルメされた騎士のようなぬいぐるみ

魔法を使って着ぐるみに変異した敵か
それは良いアイデアだ
参考にさせて貰おう

◆行動
【竜威】使用
自分の全身を雷と念動力と複合体という超常現象に変換して近くのぬいぐるみに宿る
それを内側から念動力で操作して戦うぜ
今の俺はぬいぐるみと一体化した存在……!
さぁ、どっちがより着ぐるみと化したか勝負してやろう……いや、そういう趣旨じゃ無かったか

あ、雷でなんか焦げてきた……まぁ戦闘中くらいは持つだろう

武装は魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流(念動力でぬいぐるみの手に固定)
斬撃に雷を乗せて斬るぜ
敵の手下は着ぐるみの中身も焼いてやる
《武器受け/見切り》で受け流して防御




「魔法を使って着ぐるみに変異した敵か」
 ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は現れたサメ着ぐるみ――ハッピー工房――を前にして、グリモア猟兵の言葉を思い出していた。
 サメらしいリアル感を出しながら、けれど毛並みはもふもふと。あと、カニバサミ部分も結構リアル。なるほどそれは、写真で見る以上に質のよい着ぐるみに見えた。
『まぁな、俺っち自身の最高傑作、史上最高の気ぐるみだぜ! よくできているだろう?』
「そうだな、」
 自慢気に胸を張るハッピー工房を見据え、ニヤリと笑うガルディエ。
「それは良いアイデアだ。 参考にさせて貰おう」
 言うが早いか、ガルディエは自らの右手を天へとかざす。
「原初の自然と純粋な力の具現たる古き竜……その一端を少し見せてやるよ――【竜威(ドラゴニック・パワー)】!!」
 高らかな叫びとともに、白銀の世界に雷光が走り、雷鳴が轟く!
『な?! 雷かぁ?!』
 目の前に走った鋭い光から身を守らんと、ハッピー工房はカニバサミで自らの目を覆うも。
『……あっぶねぇ、何しやが……って、いない?!』
 一瞬のうちに目の前から猟兵が消えたことに気づけば、きょろきょろと辺りを見回す。
『まさか逃げやがったか?!』
「んなわきゃねーだろ! こっちだこっち!」
 ガルディエの声とともにサメの前に現れたのは、一体のぬいぐるみだった。
『ぬ、ぬいぐるみだと!』
「いいか、今の俺は、ただのぬいぐるみなんかじゃないんだぜぇ?」
 舐めてかかるんじゃねぇよと言わんばかりに、ちっちっち、とかやって見せる、ガルディエ声のぬいぐるみ。
「何をしたかと問われれば、答えてやるぜこの原理をな! これは、俺が自分の全身を雷と念動力と複合体という超常現象に変換して近くのぬいぐるみに宿ってやったのさ! さらにそれを内側から念動力で操作して戦う! お前のアイデアの更に上を行くこの作戦! まさに完璧だぜ!」
『すげぇな! そんな風に解説されるとすげーって思うのに見た目だけじゃ全然わからねーやつだなそれ!』
 思わず拍手してしまうハッピー工房。ホント、最初の演出といいめっちゃカッコよかったよね!今ぬいぐるみだけど!
 ちなみにガルディエが宿っているこのぬいぐるみ、全身黒の鎧を着た騎士……のデフォルメ版になっているのだ。基本的にめちゃくちゃかっこいい黒騎士なのにデフォルメなのである。だから、どんなカッコいい動きを行っても、ちょっぴりコミカルでかわいらしいね、とかなってしまったりするのである。……ネタ的にはすっごくおいしいよね!グッジョブ☆
「一言多いぞうっせーぞ、ハッピー工房と地の文!」
 思わず虚空に向かって叫ぶぬいぐるみなガルディエさん。こほんと咳払いすれば、気を取り直してハッピー工房に向き直り、びしぃっと指差すようにぬいぐるみの手を向ける。
「さぁ、どっちがより着ぐるみと化したか勝負してやろう……!」
 気を取り直したつもりなようだけど、趣旨が違ってるよ、ガルディエさん!
『よーっし、いいだろう、その心意気、俺っち受け取ったぜぇ!』
 趣旨違いもなんのそのでノリノリになっちゃったハッピー工房。ものすごい高笑いを決めたかと思えば、こちらもびしぃっとポーズを決めて。
「それじゃあよう、俺っちの最後の大仕事、受け取ってくれや!」
 自らの手取りと心臓を代償にし、ハッピー工房は、部下たちと職人を召喚する!
『親方の熱意、受け取ったぁ! おらおら見ろぉ、この素晴らしい着ぐるみをぉぉぉ!』
 超低温の世界なのに、なんだか一気に熱くなったような気がする場の状況に、ガルディエは心底楽しそうな笑みを浮かべた。
「いいじゃねぇの、まとめて相手してやるぜ!」
 ……ちなみに、ガルディエが宿っているぬいぐるみ本体も、雷で焦げてきているっぽいけれど。
「まぁ戦闘中くらいは持つだろっ、いくぜ!」
 念動力を操り、ガルディエは宿ったぬいぐるみの手に「魔槍斧ジレイザ」と「魔剣レギア」を固定させ、二刀流の構えを取った。
 そうして。漆黒に赤の装飾が施された、美しくも禍々しい二つの武具に雷光を乗せ、ガルディエは、ぬいぐるみの足で地を蹴り、勢いをつけて空へと跳び上がった。
「てめぇの熱意も手下どもの着ぐるみも、この雷の力で焼き尽くしてやるぜ!」
 そのまま勢いよく回転すれば、部下たちの中へ斬り込んで行く!

大成功 🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
キグルミではなく…ぬいぐるみ?
と、とりあえずでっかいぬいぐるみ探してその中に入ろうかな~?

王道にでっかい熊のキグルミ
綿が!綿が!!息しづらい!ちくちくする!視界がめっちゃ悪い!
動きづらい!
それほど寒く無いけれど辛い!
(外部出力される声もくぐもってなんやかんやで
モフモフという声に聞こえる。
そして外からの音もくぐもって聞こえない)

ハッピー工房…さん?
とりあえず聞きたいのだけれど、何で鮫に鋏みつけたの?
それ甲殻類だよ?

魅了するキグルミはー……ぬいぐるみ着てて見えないからわからない!
とりあえず野性の勘で動く者みんな【見えざる手】で殴ればいいよね!
猟兵がいたらマジごめん!




「キグルミではなく……ぬいぐるみ?」
 転送された白銀の地に立った宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、グリモア猟兵の言葉を思い返しながら、その広々とした白の世界を見渡した。
 どこがどうなってこの状況なのかは不明だが、なるほど確かに、その辺にごろごろと転がっているのは、凍結されたぬいぐるみだった。
 着ぐるみだったら見つけ次第着込めば楽だったものを、ぬいぐるみだとその辺ちょっと考えなきゃいけないじゃないか、なんてこったい。……などとライアが思ったかはさておき。
「と、とりあえずでっかいぬいぐるみ探してその中に入ろうかな~?」
 そう、ごちゃごちゃ考えて立ち止まっているのはヒーローとしてあるまじきこと。ヒーローを望む者として、ここは行動あるのみだ。寒さにちょっとどころじゃなく弱りそうになる心を奮い立たせながら、ライアはぬいぐるみを選び始める。
「ヒーローたるもの、王道を進むべし! ……なぁんて、あ、これなんていいかなっ。 まさに王道!」
 ぬいぐるみの王道……というと、様々意見は分かれるところではあるが。とりあえず誰もがパッと思いつくところなら、やはり熊だろう。
 とにかくテンションを上げて、選びだしたのは、ライアの背丈ほどもある、本当にでっかい熊だった。これぞ王道。
「よーっし、この熊をキグルミにして着ちゃうよ!」
 元気よく宣言して、ぬいぐるみを着ぐるみにすべくあれやこれやと頑張ってみるライア。
 よし、こんなもんだろー、とか頷けば、いざ、着ぐるみ☆イン!
「……こ、これは……っ!」
 なんとなく、ライアが想像する着ぐるみ内部は、もうちょっと快適な場所をイメージしていた。どっちかといえば掛け布団を頭から被ったくらい?息苦しかったりするかもだけど、それ以外は問題なく、あたたかくてそこそこ快適で……とかとか。
 だが、現実は非情だった。
「綿が! 綿が!! 息しづらい! ちくちくする! 視界がめっちゃ悪い!」
 同じように着ぐるみ加工していた猟兵たちは、持ち前の猟兵スキルでこの辺をいい感じに調整していて、うまく着こなしていたのだろうが。実際のところ、ぬいぐるみの中に特に加工もせずに入れば、だいたいライアの感想になるのではなかろうか。
「動きづらい!」
 これも着ぐるみあるある。ちなみに、ライアさんが使用するぬいぐるみだと、だいたい4kgくらいあるらしいぞ☆
 ……そんなわけで、ライアさんの総合的感想。
「それほど寒く無いけれど辛い!」
 ものすごく正直者だった。でも、この正直な感想、外にはもふもふってしか聞こえていない。なんだか悲劇の予感がひしひしである。
 ともあれ、視界は悪いが、それでもヒーローを望む者としては立ち止まってはいられない。
 とりあえず動け、宮落・ライア!


 そんなわけで、白銀の世界を、敵を求めて走ろうとしたライア。
 しかし、走ろうとして――その体勢のままでぴたっと立ち止まった。
「もふ、もふもふ?!(いや、走る必要ないよね?!)」
 しかも走ったら息苦しいのがさらに息苦しくなるし!この中熱くなろうものならますますちくちくするだろうし!
「もふー、もふもふもふも!(いやぁ、直前で気がついてよかった!)」
 あっはっは。頭をかく動作をする、着ぐるみぐまライア。
 着ぐるみ着てると動作がいちいち大きくなっちゃうよなぁ……とか思ったところで、ライアは気がついた。
 なんか居る。視界めっちゃ狭すぎてわからないけど何か居る!
「もふもふ、もふ?!(もしかして、敵?!)」
『もふもふってしてるけどわかんねーよ!』
 敵だった。サメぐるみな敵、ハッピー工房といつの間にかご対面していた。
『お前まさかもしかして、猟兵じゃねーだろーな?!』
「もふー? もふ? もふもふもふー!(えー? 何? 聞こえないー!)」
 ちなみにライアさんの視界、ほとんど見えてません。外部の声もくぐもっててほとんど聞こえていません。
 さて、ここで問題です。

 Q:この状況で、敵との会話および意思疎通は成立するのでしょうか?

『もふもふしか聞こえねーから何言ってるかわかんねーよ!』
 そりゃそうですよねー。
 けれども、会話的はままならなくても、意思疎通としてできることはこの状態でもあったりする。すなわち、
「もふ……、もふもふもふもふ!(でも……、とりあえず殴ればいいよね!)」
 そう、拳と拳で殴り合いだ!
 そうと決まればと、ライアはユーベルコード【受け継がれた見えざる手(ウケツガレタミエザルテ)】を発動させる。
『……なんだ?! いきなり巨大な手が現れたぞ! ……ごふ?!』
 慌てふためくハッピー工房。そんな慌てふためくままに、ライアのユーベルコードの左手によってガンガン殴られていく。
『うおぉぉぉぉ?!』
「もふもふ……、もふもふもふ、もふもふもふもふ!(ていうか……、この殴ってるの、猟兵だったらマジでごめんね!)」
 着ぐるみぐまの中で一応謝るライア。でも相手にはやっぱり聞こえていなかった。
 でも、実際のところ猟兵じゃないし、敵だからいいんじゃないかな☆
「もふもふもふ、もふもふもふもふもふ……もふ? もふもふ、もふ、もふもふもふもふもふもふもふ!(そういえばさ、今そこに居るのがハッピー工房……さん? だったら、ボク、聞きたいことあるんだけどさ!)」
『なんか一生懸命喋ってるけど、お前、何言ってるんだ?! なぁ、俺っちにもわかるように……がふ、ごふぅ?!』
「もふもふもふもふもふもふ、もふもふもふもふもふ? もふもふもふもふ?(とりあえず聞きたいのだけれど、何で鮫に鋏つけたの? それ甲殻類だよ?)」
 ライアが懸命に問いを投げかけるも、それは届くことはなく。
 互いの言葉は通じ合わないまま。どちらかが(おそらくハッピー工房が)倒れるまで白銀世界での殴り合いは続いたのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
とりあえず、ぬいぐるみはなんかこう大きめのもので、自分に覆いかぶせることができる程度のサイズのものを探すか。
先刻の白熊あたりなら特によさげだな。
毛皮のコートってわけにはいかんだろうが、面積は大きいに越したことはない。
解凍はまぁ、俺のブレスで溶かせばいいだろう。
勿論、乾燥までしっかりな。
あとはまぁ俺自身の凍結耐性との兼ね合いで何とかなるだろう。

さて、あれは着ぐるみ……なのか?
……なんだその視線は?
俺は別に着ぐるみではないからな。
そもそも俺が着られるような着ぐるみなんざ、そうそうないぞ。
とりあえず、サメはサメらしく水の中へ帰ってもらうとしよう。
手取りはなくとも、せめて定時退社ぐらいはするんだな。




 ずんずんと豪快に白銀の中を進むのは、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)。
「ぬいぐるみ、なぁ」
 口中でひとりごちれば、セゲルは金の瞳を凝らす。
 確かに目の前には結構な数のぬいぐるみがごろごろしていた。常であれば見えないのかもしれないが、あるという情報を事前に得ているためか、やたらと目についてしまう。
 自身の巨体をどうにかできるくらい、大きなぬいぐるみがあればいいのだが。
「先刻の白熊あたりなら特によさげだな」
 イメージとしては、グリモアベースで話のあった、熊のぬいぐるみだろうか。セゲルからすればあれも小さい部類には入るが、まぁだいたいあんな感じだろう。
 などとセゲルが考えていると。
「……お、岩と思ったら、ぬいぐるみか、あれは」
 ふと目についたのは、セゲルの背丈ほどもある氷の岩だった。よくよく見れば、それはぬいぐるみで。そしてなんとも都合よく、それは、セゲルの希望した白熊のようだった。ちなみに、ふかふかしてそうではあるが、その顔つきはどちらかといえばファンシー要素は少なめな、結構リアルな雰囲気の白熊である。
「毛皮のコートってわけにはいかんだろうが……」
 とはいえ、面積は大きいに越したことはない。背負えばそれなりに暖をとることもできるだろう。ふむ、と頷けば、セゲルは凍った白熊の肩に自身の青の手を置いて。
「お前さんよ、短い間だがここにいる間、世話になるぜぇ?」
 ぽんぽんと叩き、親しげに声をかけながら、セゲルは自身のブレスを利用し、ぬいぐるみの解凍と乾燥を行っていく。よく乾かしたところでよいせと背負って。
 ……青い竜が白熊(ちょっぴりリアル)を背負う姿は、なんというか、かわいらしさよりも迫力とワイルド感の方が際立っていた。超低温で、敵以外に現存する生き物はいないって話ではあったけれど。この地で暮らしていると言われてもあまり違和感はなさそうだ。何というかカッコいい。
「まぁ、こんな感じでいいだろ、それじゃ敵さんでも探すかね……と、お?」
 探す間もなく。遠くを見やったセゲルの目に止まったのは、一体のサメだった。いや、サメならぬ、正式名称『ハッピー工房』。オブリビオンである。
「あれは着ぐるみ……なのか?」
 互いに距離を保った状態のまま、セゲルはそのサメを見つめる。
 というか、相手もじぃっとセゲルの方を見ていた。……なぜだろう、何だか訝しげな様子だ。
「……なんだその視線は?」
 思わず言葉をこぼすも、そんなセゲルの声が相手に届いているわけもなかった。
 まさかあの敵、俺のことを着ぐるみだと思ってるんじゃなかろうか。
 同類と思っているのか。その割には興味というより驚異の目で見ているような気がするが。
 セゲルの中で様々な思いが過るも。
(「俺は別に着ぐるみではないからな。 そもそも俺が着られるような着ぐるみなんざ、そうそうないぞ」)
 攻撃がてら、近づいてそう言ってやろうかとも思い……そこまでこだわる必要もないだろうと思い直すセゲル。
 ……だが、考えてみて欲しい。先ほども述べたが、セゲルはドラゴニアンだ。竜なのだ。竜が着ぐるみを着ているのもなかなかな光景になるのだろうが、現状の「竜が白熊を背負っている」姿は、ある意味では着ぐるみを着る竜より相当なインパクトを持って相手の目に映ってしまうのではなかろうか。
「……しかし、この距離は近づくと敵に逃げられる恐れがあるか……」
 何かしら話しかけてみたい気もするが、悠長に動けば逃げられて割と面倒だ。
 かくなる上は、この場所から攻撃を仕掛けるとしよう。
 そう考えたセゲルは、サメことハッピー工房を見据えたまま、ユーベルコード【抉リ響ム大喊(ペフォレーラ・ストルトフルード)】を発動。
「待てば水滴石をも穿つ。さぁ、その場から動くなよ?」
 動くな、という声が、有無を言わさない力強さをもって白銀の世界に響き渡り。サメの身体が、びきり、と緊張で固まったようになる。それを見て取ったセゲルは、自身の手の中に槍を内包した鉄砲水を生み出した。
「とりあえず、サメはサメらしく水の中へ帰ってもらおうか……っ!」
 逃さないという気魄とともに。対象へと向かって勢いをつけ、セゲルは、鉄砲水を解き放つ!
『……っ!!!!』
 同時に、解き放った鉄砲水のスピードに劣らない速さでセゲルは走り出す。
 万一ユーベルコードが外れた場合は、この塞竜の爪であの工房のサメの着ぐるみごと切り裂いてやろう、などと考えながら。
「手取りはなくとも、せめて定時退社ぐらいはするんだな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

榎・うさみっち
熊を乱獲し尽くして毛皮にするだなんて
何て極悪非道なんだ…!
不凍熊よ、お前達の無念は俺が晴らしてやる!
そして責任持ってその毛皮を保護して
売り飛ばして儲けてやるからな!(強欲

まるで一体の巨大ぬいぐるみのように
沢山の小さいぬいぐるみをくっつけ積み上げる
内部は空洞にして俺はその中に入って凍結回避!
かまくらの原理だな!
念動力でそのぬいぐるみのかまくらごと動かして移動
巨大ロボットの中に入って操縦しているみたいなイメージ

中でUCでワルみっち軍団召喚!
ぬいぐるみの隙間から銃身を出して
パンパン撃っていくぜ!
翔んで逃げても容赦なく撃ち落とせ!
傍から見たらぬいぐるみの大群の中から
急に弾丸が飛び出てくる感じだろうな




 榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の小さな身体は震えていた。
 絶対零度地帯の超低温にさらされての、寒さからくる震えではない。
 確かに、フェアリーの小さな身体にこの寒さがキツイのは事実だ。
 だが、うさみっちが打ち震える理由はそうではなかった。
「熊を乱獲し尽くして毛皮にするだなんて、何て極悪非道なんだ……!」
 それは怒り。乱獲され、根絶やしにされたという不凍熊の運命と、その乱獲の主犯である敵に対する怒りだった。
「不凍熊よ、お前達の無念は俺が晴らしてやる!」
 うさみっちはわなわなと身体を震わせたまま、天を仰いで叫んだ。
 そう、これは決意だ。
 不遇な運命を迎えざるを得なかった不凍熊の仇を、俺が打ってやるのだと!
「そして!」
 うさみっちは右手の拳を勢いよく天に突き上げる。
「責任持ってその毛皮を保護して売り飛ばして儲けてやるからな!」
 最後は強欲なる決意の叫びが、寒空の中にこだました。
 ……。
「……とまぁ、いい感じにうさみっち劇場の名シーンを決めたところでだ」
 カメラワークの入りやすい演出だっただろ、などと。謎の言葉を口にしながら、ブーンと翅の音をさせて空を飛んだうさみっち。くるりと振り向き、びしぃっと指をさす。
「そんなわけで。 さぁ、サメ。 このうさみっち様に、毛皮をよこしやがれ!」
 なんと。そこにはすでにサメ――ハッピー工房が居た。
 サメは何だか呆然としていたが、はっと我に返り、
『……はっ、しまった、さすがの俺っちもどこからどう突っ込めばいいかわからなくなったぜ!』
 どうやらうっかりと、うさみっちペースに巻き込まれてしまっていたようだ。……なるほど、「うさみっちあるある」ですね、わかります!
『うっかりてめぇの勢いに飲まれちまうとこだったが、俺の着ぐるみ愛はまだ健在だ! 不滅だ! 俺のものは俺のものだ! したがって、てめぇの思う通りにはならねぇぜ!』
 なんかほえるサメ。でもすでに発言がよくわからなくなっているあたり、かなり巻き込まれている感だった。
『この地帯で着ぐるみ王となるのは俺っちよ! この、部下を代償に作った最高傑作のサメ着ぐるみでなぁ!』
 高笑いともに、サメは自身の術を発動させる。その名も「最低の仕事」!……どの辺が最低かというのは、賢明な読者であればすでにご存知のことと思うため、割愛させていただくことにする。
 その間にも、術を使ったサメは、代償と愛と研鑽を糧に自身を強化させ、空へと飛翔する!
「甘いな、サメぇ。 戦闘力アップと飛翔でこのうさみっち様に勝ったと思うんじゃねーぜ!」
 言うが早いか。うさみっちは、自らの周囲に転がっていた凍結ぬいぐるみたちを、念動力を使って一箇所に集め始めた。
 念動力により、まるで生きているかのようにぬいぐるみは動き、ドーム状に積み上がり、かまくらの形を作り出していく。
「よーっし、出来上がったな、ぬいぐるみかまくら! ……よっと」
 完成したぬいぐるみかまくらの空洞部分に入るうさみっち。凍結ぬいぐるみでいい感じに熱が遮断され、空洞内がほんのりと暖かさを帯びる。ここに「うさみっちぬいぐるみゆたんぽ。」を置けば、内部はほこほこ。これでもう凍結は怖くない。
「あったけぇ……って、おっと、くつろいでる場合じゃねーな」
 まったりモード突入になるところを自ら止めれば、うさみっちは改めて上空のサメを見やった。
「行っくぜぇ〜! ぬいぐるみかまくら始動だぜ!」
 言いながら、ぬいぐるみかまくらごと念動力で動かし始めるうさみっち。
 浮上したぬいぐるみかまくらは、スピードを上げ、ぐんぐんサメへと接近していく。
『?! な、なにぃ?!』
「うさみっち様から逃げられると思うなよ! そーら!」
 接近のチャンスを逃さずとばかりに、うさみっちは、すかさず【でんこうせっかのワルみっちスナイパー(ウサミノ・ガンガン・ショータイム)】を発動。
「うさみっち様の一撃からは逃げられないぜ! 喰らえー!」
 かまくら内部にずらぁぁと現れたのは、黒スーツ&真っ黒グラサンのマフィア風のうさみっち、通称「ワルみっち」である!
「行けー! ワルみっち軍団! あのサメを撃ち落としてしまえ〜っ!!」

 \\ぴゃああああーーー!//

 常よりワントーンほど低い鳴き声とともに。ワルみっちたちは、すちゃっ!と銃を構えた。
 様々な銃の中に混ざるのはかわいらしい水鉄砲から、ちょいと物騒なライフルに、ショットガンなどなど。
 それらの銃口がサメめがけて向けられ、一斉に発射される!

 プシャァァァァ! ドン、ドッ! ガガガガガガ、ガガガガガガッ!!

『う、うぁぁぁぁ?! ぬいぐるみの塊から、水が、弾丸が?!』
 銃撃から逃れようと飛び回るハッピー工房。
 だが、うさみっち&ワルみっち軍団の手から逃れることなどできない!
「おらおらおらー! 翔んで逃げても容赦なく撃ち落とせ!」

 \\ぴゃああああーーー!//

『ぎゃぁぁぁぁ?!』
 サメが完全に力尽き、撃ち落とされるまで。ワルみっちによる、ぬいぐるみかまくらからの銃撃は続くのであった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
きたねサメカニ
きぐるみ愛溢れる精神は実にいいね。気持ちはよくわかるよ
でもきぐるみの素材に不凍熊の毛皮を使いたいから倒すよ

着ぐるみには着ぐるみで対抗するんだよ!
という訳で、私のサメぐるみの中に小さな沢山のもふもふしたぬいぐるみを入れるよ
そうする事により私のサメぐるみはもふもふ感がいっぱい増えて寒さに強くなるはず
そして工房とお話して油断させるよ
そのサメいいねぇ…でもハサミは頂けない。蟹は天敵だからね。それはそれとして私のサメぐるみも見てほしい。このサメぐるみ、実に良い仕事してるよね…サメいい…
と和気藹々としたところで【芋煮アタック】!
そぉいと殴り倒して大勝利。報酬を頂くよ




 絶対零度地帯。
 超低温の白銀世界に、二体のサメ着ぐるみが相対していた。
 一体は、もはやおなじみとなった、この場に存在する敵こと、『ハッピー工房』。大きな二つのカニバサミが特徴的なサメ着ぐるみである。
 そしてもう一体。
「きたねサメカニ」
 青のリボンに白ネクタイがチャームポイントになった、愛用の「さめぐるみ」に身を包み。ルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)は、そのサファイアブルーの瞳に、強い意志の光を宿らせ、目の前の敵を見据える。
「きぐるみ愛溢れる精神は実にいいね。 気持ちはよくわかるよ」
 ルエリラも着ぐるみをたしなむ者。だからこそ、敵の着ぐるみを愛するその心も十分に理解はしている。
「でも――」
 だが。たとえ、同じものを愛する心を持った同士であったとしても。時として譲れないもののために戦うことだってあるのだ。そう、今回のように!
「きぐるみの素材に不凍熊の毛皮を使いたいから倒すよ」
 あっさり。身も蓋もなく言ってのけるルエリラ。
『……ってぇ、もったいぶって言った割にはえらく私欲にまみれてるじゃねぇか!』
「だって不凍熊だよ? 凍らない熊だよ? その毛皮だよ? それできぐるみ作ったら最高傑作確定だよ? 戦う理由としては十分だよね」
 しゅっしゅ、シャドウボクシングなんぞしてみるルエリラ。やる気満々さを身体で表してみた。ちなみに、さめぐるみ着たままなので一見物騒な行動でも全体的に愛らしい。
 さぁ戦おう、と言わんばかりのルエリラに、サメもじゃあ戦おうかなという気になってきて。ルエリラと同じくボクシング風味にハサミな両手を構え――、
「という訳で、着ぐるみには着ぐるみで対抗するんだよ!」
 さすが私、いい考え、とうんうんと頷くルエリラ。
『は?! 殴り合いするんじゃねーのかよ?!』
 戦う理由とか、さぁ戦おうとかあっただろ、とか、めちゃくちゃ抗議するサメ。
「しないよ? ほら、その前にあるでしょ、やる気満々を身体で表してみたって。やる気イコール物理戦とは限らないよ?」
『いやでもよ、ここまで来たら、ってノリで行くじゃね―か、普通!』
 したり顔で説明するルエリラに、負けじと食い下がるサメ。
「……まったくうるさいなぁ。 いくら工房職人だからって、そんな細かいこと気にしてたら、ハゲるよ?」
『……?!!』
 ぴしぃっと固まるハッピー工房。……うん、ほら、着ぐるみ着てるけどこのキーワードは実際がどうかに関わらず、気になっちゃうものだ。職人さんだとだいたいそんなお年頃だったりするしね。
「という訳で、私のサメぐるみなんだけどね、」
 固まったサメには目もくれず、マイペースに着ぐるみアピールを始めるルエリラ。
 その辺に転がる凍結ぬいぐるみたちの中から小さいものを選んで解凍させたかと思えば、自身のさめぐるみの中に、ぽいぽい放り込み始める。名付けて『小さなぬいぐるみでもふもふ感いっぱい増やして寒さに強くなろう』作戦。……そのまんまである。
「ほらほら、工房。 固まってないでさ、着ぐるみの話しようよ、サメぐるみ!」
 どこまでもマイペースにぐいぐい進めるルエリラ。サメが固まってしまった原因が、自分の発言にあったらしいことなど、もはや頭の隅にもない。
『……ああ、サメな。 サメ着ぐるみな。 いいぜいいぜ。 俺っちもその話するのは嫌いじゃないからな』
 気を取り直したサメ、ルエリラに話を合わせることにした。
「そうこなくっちゃ。 それにつけても、工房のそのサメいいね」
『お? そう思うか? このサメ肌部分には俺っちも結構気を使ってんだよな』
「うん、いいねぇ……でもハサミは頂けない。 蟹は天敵だからね」
『ああ、これか。 とはいえこれは色々事情があるんだよな、』
「それはそれとして私のサメぐるみも見てほしい」
『え。 こっちの話聞かないんか?! ……まぁいい、見てやろうじゃねぇか。 そうだな、いい素材使ってんじゃねぇか? サメらしさ出てるしな。 目元や口元もいい味出してると思うぜ』
「そうでしょうそうでしょう。 このサメぐるみ、実に良い仕事してるよね……」
『だな。 俺のサメ感も最高だと思うが、おめぇのサメも最高だな』
 ……そんなふうに。ルエリラとハッピー工房による、微妙に噛み合ってるのか噛み合ってないのかのサメ着ぐるみ談義は、この後しばらく続き。

『「サメいい……」』

 などと。和気あいあいになった二人が、同時にそんな息を漏らした、その時である!

 きゅぴーん☆とルエリラの目が光った。
「……そりゃ、今だ! サメもいいけど――芋煮だよ!」
 目にもとまらぬ早業で、ルエリラは【芋煮アタック(イモニアタック)】を発動。どこにそんな力があったのか。召喚した芋煮の入った鍋を両手で持ち上げたルエリラは、ハッピー工房の脳天めがけ、思いっきり叩きつける!
『うぁぁぁぁ?! 頭が、頭が?!』
「そらそらそらー、単純で重い芋煮の一撃だよ! 食べてもうまいが鍋もいい。 鍋ごとどんどん食べちゃってよ」
『それは食べるって言わね―だろ……がぁ?!』

 ごっ、ばきっ、ごすっ、がっ!!

 白銀の世界にものすごい鈍い音が響き渡り……。

「そぉい、うまくいったね。大勝利だ☆」
 サメを殴り倒したルエリラは、ひと仕事終えたと言わんばかりのめちゃくちゃ爽やかな笑顔で汗を拭った。
 このサメ、なんやかんやで技出す暇すらなかったが……まぁ、そんな運命だったということにしておこう。
 そんなわけで。
 ルエリラ・ルエラ、報酬ゲットだぜ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アスター・ファラデー
【文月探偵倶楽部】

寒いです、ね……ここまで寒いのは、故郷でも、経験したこと、ないです……
私達ケットシーは、身体が小さいから、余計に堪えます……

ということなので、「サモニング・ガイスト」で英霊さんを召喚、ぬいぐるみの中に入ってもらいます
「英霊さんなら、ぬいぐるみを操って、我が身のように動かせるはずです……やれば出来ます……」
【鼓舞】【優しさ】を以て激励します
私はぬいぐるみをかき集めて、後ろからルーンストーンを投げて援護します
「……え、ぬいぐるみに埋もれて楽をしていないか、ですか? ……気のせいです」

アドリブ歓迎


文月・統哉
【文月探偵倶楽部】

にゃふふ、アルもアスターもぬいぐるみに埋れてなんか可愛い

大丈夫だよアル
アルは小さくても態度はデカいってネコ吉が言ってた(責任転嫁

着ぐるみ愛なら負けないぞ
白猫ぬいぐるみ手にUC発動
白黒混ざって灰猫の着ぐるみに包まれ
ハイブリッド・クロネコレッド
略してハイネコレッド、見参!

敵味方関係なく着ぐるみ談議で盛り上がる
お茶とお菓子もあるよ

歪みのないフォルムに
毛流れを活かしたカッティング
丁寧な縫い目にも職人の拘りを感じるぜ
むむむ、敵ながら見事な着ぐるみだ

心臓まで代償に?…無茶しやがって
だが着ぐるみへの熱意と覚悟は受け取った
だからこそ俺達も全力で戦うよ
その熱意をその技術を
未来へと伝えていく為に


アルファ・オメガ
【文月探偵倶楽部】
統哉知ってる?
ボク、身長40cmくらいしかないんだ
むしろボクがぬいぐるみサイズなんだよ…!
おのれネコ吉、プリンまた食べてやる(八つ当たり)

というわけで
ボクはぬいぐるみの中に入りつつ
同じサイズの猫ぐるみ4匹と
ラインダンスするよ!
(注:しっぽの上辺りで長い棒で繋がってます)

もふもふと運動という隙の無い二段構えだよ!
え、まずお話?
仕方ないなあ(5匹揃って座ってずずーっとお茶を飲む)

ボクは本当は天然もふもふ派なんだ、猫だし
でもだからといって着ぐるみを否定しないよ
とってもすごい仕上がりだ
これに応えるにはこれしかない
『すーぱー・もふもふぱわー!』
そのもふもふ、ボクが上回ってみせるよ!




 真っ白な大地が、寒空の下どこまでも広がっている。
「寒いです、ね……」
 そんな景色を眺めながら。アスター・ファラデー(ルーンの繰り手・f02089)は、紺色の小さな手をすり合わせ、ほぅ、と小さく息を吹きかける。
「ここまで寒いのは、故郷でも、経験したこと、ないです……」
 吐息が白くならないことに不思議そうに金の瞳を瞬かせたが。それはそれとして寒いものは寒いといった様子で、ブルブルと身体を震わせる。
「私達ケットシーは、身体が小さいから、余計に堪えます……」
 一般的には、猫は寒さに弱いのだという。身体の大きさもさることながら、見た目から猫なケットシーは、そのまま猫的な特徴もあわせ持っているのかもしれない。
「暖かい場所をゲットするのです……」
 震えながらも、寒さに負けじと近くに転がる大小ぬいぐるみをうにゃうにゃかき集めるアスター。それらをおしくらまんじゅうの要領で近づけ積み重ねれば、その隙間ににょいんと入り込んだ。
「これで、暖かいのです……」
 アスターinぬいぐるみおしくらまんじゅう、完成。
 あ、アスターさんてば、なんかほっこり幸せそう。
 そんなアスターが集めたぬいぐるみの一つとにらめっこするのは、もう一人のにゃんこ……もとい、ケットシーなアルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)。
 にらめっこ相手となった猫ぬいぐるみの頭をぽふん、とやってから、おもむろに文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)の方を振り向いた。
「統哉知ってる? ボク、身長40cmくらいしかないんだ。 むしろボクがぬいぐるみサイズなんだよ……!」
 なんか訴えてるアルくん。少年の主張ばりの訴えだった。ケットシーなのだからそれは仕方がないとも言えるのだが、年頃の男の子のプライドとしてぬいぐるみと同列にされるのは、思うことがあるのかもしれない。多分。
「大丈夫だよアル」
 そんなアルファの訴えに、統哉はにゃふふと微笑んで。
「アルは小さくても態度はデカいってネコ吉が言ってた!」
 一応フォローしてるつもり。もろもろの苦言は相棒へどうぞ的な見事な責任転嫁をしながら、めっさ爽やかないい笑顔でサムズアップする。
 ちなみに、意外と知られていないかもしれないが、統哉くんとアルくんって実は同い年である。同い年の掛け合いってなんかいいよね!
「……おのれネコ吉、プリンまた食べてやる」
 ぼそり。この場には居ない、統哉の相棒ことアルファの盟友ネコ吉氏へ八つ当たりの炎をめらつかせながら、アルファはそっと決意をするも……それはさておき、今は現状への対応が必要かと思い直した様子で。
「がう、わかった。 それじゃあボクも、不本意ながらぬいぐるみの力を借りて凍結を乗り切るよ!」
 ぐぐっと猫の手を握り締め、やる気になったアルファは、先ほどアスターが集めていたぬいぐるみから、自身と同じサイズの猫ぬいぐるみを五体ほど選び出す。
 あれやこれやと、いい感じに加工を加えた後。
「がう! というわけで、ボクはラインダンスするよ!」
 アルファは自らの姿を披露する。じゃーん!
 自身の左に黒とシャム、右にミケ、白を配置し、その真ん中に立つ、茶トラなぬいぐるみを着たアルファ。
「がう♪」
 どこから用意したのか、それらしい音楽を流しながら、左右のぬいぐるみたちとテンポをあわせ、ダンスを踊り始める。
「もふもふと運動という隙の無い二段構えだよ!」
 どやぁ、なオーラを出しつつも、リズミカルに足を上げ下げする、ラインダンスにゃんこwithアルファ。
「なるほど、面白い、です……」
「にゃふー、アルってば、すごいや!」
 パチパチ拍手するアスターと統哉。
『おもしれーな、これ。 4匹分のぬいぐるみはどうやって動かしてんだ?』
「がう、それは、しっぽの上辺りで長い棒で……げふん、それは猫的企業秘密なんだよっ!……って、」
「……あ、」
「……にゃふ? アルもアスターもどうしたんだ? あ、」
 二人の視線に気がついた統哉が自身の傍らを見れば、いつの間にかそこにはサメ着ぐるみの姿があって。
『あ? 俺っちか? 俺っちは……』
「「「ハッピー工房!」」」
 三人の声が見事にハモった。そう、もう説明は不要の『ハッピー工房』、その人(?)である

「うわぁ、俺、会いたかったんだよね! 着ぐるみ愛してるんだよね? 俺も俺も! 同士同士!」
『うおおう?! 俺っちそんな有名人かぁ?!』
 もう目をきらっきらさせて、サメの両手ならぬ両カニバサミを掴み、ぶんぶんと握手する統哉。その熱意は一瞬サメも引き気味になるほどである。
「ねえねえ、俺の、俺の着ぐるみも見てよ! 今着替えるからさ!」
 パフォーマンス込みで見てよと言わんばかりにハイテンションの統哉。転がっていた冷凍白猫ぬいぐるみを手にすれば、天高く掲げ、ユーベルコードを発動させる!
「今こそ、着ぐるみの力をここに。 着ぐるみ召喚・着ぐるみの空!」
 説明しよう!【着ぐるみの空(キグルミノソラ)】とは、統哉のあふれるきぐるみ愛を炸裂させ、『クロネコ・レッド』の着ぐるみ姿に格好よく変身してパワーアップさせるユーベルコードなのであーる!
「しかーも! 今日のレッドは一味違うぜ!」
 現れたのは、いつもの黒猫着ぐるみ姿の統哉ではなかった。
 凍結白猫ぬいぐるみの力をあわせ、白黒混ざった灰猫の着ぐるみを着た、スペシャル版、
「その名も『ハイブリッド・クロネコレッド』、略してハイネコレッド、見参!」
 シャキーン☆(効果音)
 いつもノリノリではあるが、今日はいつにも増して着ぐるみ愛マシマシでノリノリな、統哉なのである!
『ほぉぉぉぉ、さっきのラインダンスといい、なんかおもしれーな、てめーら!』
 やったね、サメもものっそ興味津々だ!
「ねぇねぇ、せっかくこうやって会ったんだしさ、戦う前に、同士として、着ぐるみ愛について語らない?」
 そんなサメに、統哉はそう提案してみる。
 最初から戦う気満々の敵なら、取り付く島もないだろう。けれど、今目の前にいる敵は、少なくとも統哉たちに興味を持ってくれているように見えたから。
 猟兵とオブリビオンで、敵同士。だから戦わないといけない運命であるということはわかっている。けれど、たとえままならない世界であったとしても。今この瞬間くらい、気持ちを共有できたらいいと、そう思うから。
『……そーさなぁ、まぁ、たまにはそういうのもありだろうな。 わかった、てめぇのその心意気に、俺っちも乗っかってやるよ』
「やったね!」


「……これ、ストライキ、なんですよね……?」
 おしくらまんじゅうなぬいぐるみから動くことなく、器用にお茶をすするアスター。
「がう。 プラカード持ったヒトデって寒くないのかな?」
 ラインダンスしながらサメと戦う気満々だったアルファは、仕方ないなぁとか言いながら、やっぱり座ってお茶を飲んでいる。……ちなみに、ラインダンス猫五匹状態のままである。
「俺、お茶とお菓子持ってきたよ。 人形焼きならぬ着ぐるみ焼きだぜ!」
 統哉はあらかじめ持参したお茶とお菓子をこたつテーブルに置いた。菓子箱を開ければ、各種着ぐるみの形をしたあんこ入りカステラがずらりと並べられている。
「ところで、あのヒトデたちは休まないの?」
『まぁ、適当にくつろぐんじゃねーか? まぁ気にすんな。 ミカンやるよ。 こたつに入るんならあったまれ』
 ちなみに、猟兵たちの現状は、サメことハッピー工房の術であるワンマン・オペレーションにより、ストライキ決行(?)するヒトデに守られながら、こたつを囲み、ミカンとお茶で着ぐるみ談義に花を咲かせている(非戦闘状態に没頭している)という感じである。
「それにつけても――、」
 勧められたミカンを食べつつ、お茶をすすりながら。統哉は、目の前のサメ着ぐるみを見やった。歪みのないフォルムに、毛流れを活かしたカッティング、そして丁寧な縫い目。その一つひとつを見ても、職人として、一切の妥協を許さないという想いが感じられて。
「むむむ、敵ながら見事な着ぐるみだ」
 着ぐるみ好きで自身でも度々着ぐるみを製作している統哉の目から見ても、その職人のこだわりに、うならざるを得ない。
『そうか? いやぁ、そう言ってもらえると俺っちとしても嬉しい限りだぜぇ』
 統哉の絶賛に照れるサメ。今まで高みを目指し、技術を磨きに磨いて辿り着いたこのサメ着ぐるみを、ここまで褒めてくれるとは。
『……しかしそこまで褒められるとよぉ、職人魂として見せたくなるなぁ、俺っちの最高の着ぐるみをよぉ』
 着ぐるみごしに真剣な眼差しを統哉に向ければ、ハッピー工房はゆらりと立ち上がった。すると、先ほどまでわぁわぁとしていたストライキヒトデたちやこたつが、たちまちかき消える。
「……ハッピー工房?」
『おうよ。 見てくれるか、同士よ。 というか、おめぇに見せてぇんだよ、俺っちは。 俺っちの作った、最高に魅力的な着ぐるみをよぉ!』
 その言葉に、戦いの気配を感じ取って、統哉が、アルファが、アスターが身構えた……その時。
『いくぜぇ、猟兵たち。 見てくれよなぁ、俺っちの最後の大仕事を!』
 猟兵たちの目の前で、ハッピー工房は自らのカニバサミの手を、おもむろに自分の胸に突き立てた。
『最高に魅力的な着ぐるみのために! 俺っちの手取りと心臓、くれてやるぜぇ!』
 白銀の大地に叫びを響かせ、倒れ込むハッピー工房。
 同時に召喚された、着ぐるみを着たハッピー工房の愛する部下たちと流れの職人が、統哉たちを取り囲む……!
「心臓まで代償に?……無茶しやがって」
 倒れたサメの着ぐるみを改めて見やれば、統哉はぐっと唇を噛んだ。
「だが着ぐるみへの熱意と覚悟は受け取った!」
 敵ではあるが、決して悪いやつではなかった。何より敵は、統哉たちの着ぐるみ愛を認めたのだ。だからこそ、自らの犠牲を払って傑作の着ぐるみを披露したのだと言えよう。
 それならば、と。覚悟を決めた統哉は、大鎌「宵」を構え、駆け出した。召喚された敵たちの着る着ぐるみに込められたその熱意と技術を受け取るために!


 戦いが始まっても、アスターがおしくらまんじゅうなぬいぐるみから動くことはなかった。
 だって動いたら寒い。
 こういう時に大事なのは、自分が動くのではなく、誰かや何かを動かしてしまうことだ。
「……ということなので、英霊さん、」
 アスターは、ユーベルコード【サモニング・ガイスト】を発動させ、古代の戦士の霊を召喚する。
「ぬいぐるみの中に入ってくださいです……」
 現れた霊に無茶振りするアスターさん。
 あ。霊、ものすごく戸惑ってる。
「英霊さんなら、ぬいぐるみを操って、我が身のように動かせるはずです……やれば出来ます……」
 無表情ながらも、声にはめいっぱいの優しさの色をにじませて、鼓舞を決め込むアスターさん。
 しかし、やれば出来るってあなた。
「……私は後ろからルーンストーンを投げて援護しますから……ね?」
『……っ!』
 優しく激励するアスターの背後に何かを感じ取った英霊さん。気合を入れて紺色猫のぬいぐるみに憑依。その身体を動かしながら、襲いかかる敵の着ぐるみたちの攻撃をかわし、槍と炎で攻撃していく!
「やれば出来ましたね……え、ぬいぐるみに埋もれて楽をしていないか、ですか? ……気のせいです」
 そっと言い訳しつつ。英霊さんの猫ぬいぐるみが頑張るその背後で、ルーンストーン(投擲用)をぽいぽい投げて敵へ攻撃をし続けるアスターさんなのでした。


「ボクは本当は天然もふもふ派なんだ、猫だし」
 改めて、五匹猫としてラインダンスを踊り、敵の攻撃をかわしながら。アルファは、装備していた愛刀「ぶらっく・せいばー」を構える。
「でもだからといって着ぐるみを否定しないよ。 とってもすごい仕上がりだ」
 天然もふもふに劣ることのない魅力が、敵の着ている着ぐるみには宿っていると感じる。だからこそ、全力で迎え撃たなくてはならない――!
「これに応えるにはこれしかない……【すーぱー・もふもふぱわー!(モフモフハセントウリョク)】」
 アルファの叫びとともに。アルファの全身を不思議なもふもふぱわーが覆う!
 ちなみに、もふもふぱわーは概念のことで、これ使ってもいきなり毛並みがふっかふかになるとかそういうわけではないですよ……とは、ここに一言添えおくことにする。
 それはさておき。
「もふもふは正義、もふもふは力!」
 もふもふぱわーによって力をみなぎらせたアルファは、「ぶらっく・せいばー」を手に、空高くジャンプ。下降する勢いに乗って、振りかぶった「ぶらっく・せいばー」を一閃させれば、敵のもふもふ着ぐるみごと、その胴体を袈裟懸けに切り裂いた。
「もふもふだって戦えるんだ!」
 ラインダンス猫五匹で再び愛刀を構え直せば。次の敵へと向かい、斬りかかっていく!


 そんな風に、敵との攻防は繰り返されて――。

 統哉は、最後の一人になったハッピー工房の部下を見つめれば、笑みを向けた。
 その笑みは、敵へというよりは同じ気持ちを持った、同士への笑み。
「君の上司のハッピー工房へ、伝えておいてくれないか? 着ぐるみへの熱意も、技術も、確かに受け取ったよって」
 攻撃の構えを取るハッピー工房と同じサメの着ぐるみを着た部下が、統哉の言葉に頷いたのを見て取れば。
 統哉もその頷きに応えるように「宵」を構えた。
「今も、これからだって、俺達は全力で戦うよ。 その熱意をその技術を、未来へと伝えていく為に……!」
 だから、見ていて。
 想いとともに、統哉は「宵」を一閃させる。

 倒れたサメの着ぐるみの姿は、やがて薄らぎ影となり。
 絶対零度地帯の冷たい空気の中へ溶け、静かに消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月24日


挿絵イラスト