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帝竜戦役㉓〜再起せし黄泉返るモノ

作者：灰色幽霊

●グリモアベースにて
「……皆様、また新たな帝竜が発見されました」

　グリモアベースで猟兵たちを沈痛な面持ちで出迎えたのはアマータ・プリムス（人形遣いの人形・f03768）だった。

「今回の戦場である脳髄牧場。その名を聞いてお察しの方もいるかもしれませんが今回新たに現れた帝竜は『ドクター・オロチ』』。かつて銀河帝国攻略戦で倒したはずのオブリビオンと酷似したナニカがその頭部に生えております」

　不気味な『蠢く巨大脳髄』で構成された大地に暗躍する、邪悪なる帝竜ドクター・オロチ。その名の通りかつてはスペースシップワールドに現れた『ドクター・オロチ』と同一の存在かはわからない。しかし共通点は多い。このあらゆる生命体を溶解し取り込む、緑色の粘液体を持つ帝竜の存在は謎ばかりである。

「ドクター・オロチが如何なる存在なのかはわかりませんが強大な敵であり、倒さなければならない相手だということに変わりはありません。ここで倒さなければ恐らく予想をはるかに超える被害を出すことでしょう」

　予知にも不穏な発言はいくつか確認された。しかしその真偽はわからない。わからない以上は敵として処理するしかないだろう。かつての様に暗躍をしているかもしれないが倒してしまえばそれも終わり。一刻も早い討伐が望まれる。

「皆様ならばこの謎の多い敵も打ち倒せると当機は信じております。どうかご武運を」

　こうしてカーテシーと共に猟兵たちの転移が開始された。

第1章 ボス戦 『帝竜ドクター・オロチ』

POW   :    グリーン・ディザスター 【口から放射される緑の粘液】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。 SPD   :    オロチ分体 【水火闇光樹雷土のうち１つの属性を持つ竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。 WIZ   :    オロチミサイル レベル×5本の【水火闇光樹雷土の７つの】属性の【エネルギー塊】を放つ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●再びの対面

「えらく懐かしい名前が出てきたなオイ。宇宙で会った時にもボコってやったのに、まだボコられ足りねぇかコラ」
「ムシュ〜、ボクのことを知ってるみたいだね。久しぶり？　ムシュシュシュ」

　目の前のドクター・オロチは塩崎・曲人（正義の在り処・f00257）の記憶にある通りの笑い方をする。やはり宇宙で戦ったオブリビオンと無関係ではないのだろう。

「今のボクは帝竜。オロチのパワーを見るがいい！」

　ドクター・オロチの呼び声に応え現れたのは燃え盛る炎を纏う竜。オロチの分体であるその竜は曲人を狙い、迫りくる。
　ドクター・オロチとほぼ同じサイズの分体に襲われれば曲人とてひとたまりもない。それをわかっているからこそ曲人のとった行動は前進だった。

「オラァ！」

　迫る分体へ目晦ましも兼ね、水球を顔面にぶち当てる。ダメージはそこまでではないが怯んだ一瞬の隙に分体を抜き去り曲人は本体を狙う。そのまま長大な身体を駆け上がり、目指すのは頭部に鎮座する水晶。曲人が狙っているのはそんな無謀な賭けだった。

「ムシュシュシュシュ～、無理無理。ボクまでは届かないよ」
「無理？　だから可能なんだよ。オレにとってはな！」

　曲人の人生は常に【帳尻合わせの人生】。普段は懸賞もおまけも当たらないがここぞというときだけは異常なほどツキが回る。そんな歪なプラスマイナスゼロ。
　駆け上がる曲人を振り落とそうと暴れるドクター・オロチ。しかし不運にも曲人を追いかけていた分体とその身体が接触する。炎で焦げる本体と衝撃で吹き飛ぶ分体。

「ハッ！　ツイてるぜ！」

　障害もなくなり曲人はラストスパートをかけ、ついにドクター・オロチの頭部へ。

「あばよ」

　振り下ろされた鉄パイプが水晶を打ち砕く。曲人はそのまま痛みに悶えるドクター・オロチの頭部から飛び降り撤退する。

「これでしばらくは足元に気をつけねぇとなぁ」


　曲人の払った代償は軽くない。今後しばらくはどんな不運が待ち受けるのか……それは天のみぞ知る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●再びの墜落

「ムシュシュシュシュ～、分体がやられてもボクは痛くも痒くもないよー」

　頭部の水晶に罅が入り、分体が消滅したとしてもドクター・オロチに焦りはない。懲りずにまだその悪辣な頭脳で悪事を重ねる算段をつけていた。


「何度蘇って悪事を重ねれば気が済むのでしょうね？」
「何度生まれ変わっても変われないのでしょう」

　七那原・望（封印されし果実・f04836）と天星・零（零と夢幻、真実と虚構・f02413）はそんなドクター・オロチを呆れながら観察していた。分体がいなくなったとはいえ、本体の属性を操る能力は未だ健在。あれを越えなければ本体へ攻撃を届かせることも難しい。

「零さん、ねこさん、少し敵の注意を引いてくださいね」
「ええ、任せてください」

　望は『共達・アマービレ』を一振りすると、たくさんの魔法猫たちを呼び出した。猫たちは自身の魔法で宙を駆け、望と零の周囲を歩き回る。

「ムシュ～、何か企んでるようだけど無駄無駄。これを喰らえ！」

　ドクター・オロチを取り囲むように現れる水火闇光樹雷土、七つの属性それぞれが籠められたエネルギー塊。その標的はもちろん望と零の2人。視界を埋め尽くすほどの圧倒的物量が逃げ場を潰し、2人の元へ迫る。

「来てください」

　零の呼び声に応え、現れる十体の骸。それは自らの死に準じた攻撃を行う『十の死』と名付けられた骸たちだった。迫りくる属性弾に対応する死がそれを迎え撃つ。

　火の属性弾を受け止める溺死体。その身を濡らす水分が火の勢いを弱め威力を削ぐ。
　同様に水の弾丸は凍死体に止められ、樹の弾丸は病死体に病を移され腐敗して消える。

　零だけでなく猫たちも様々な魔法を乱れ撃ち、属性弾を防ぎ続ける。

　ここまでの攻防でドクター・オロチと2人はほぼ互角。属性弾を放つ側と防ぐ側で拮抗していた。零も【嘆きの秤】を発動し、時計の針を進め自らの強化を図るがそれでもまだドクター・オロチの攻勢を上回ることはできていなかった。

　しかし、今の状況で拮抗しているということはほんの少しの影響でこの均衡は崩れてしまう。

　望はこの攻防に紛れ一人さらなる上空へと移動していた。
　下を見ればまだ撃ち合いは続いている。そしてドクター・オロチは望の動きに気づいていない。

「わたしは望む……」

　望が発動するのは【鏡映変性・ウィッシーズミラー】。対象の姿かたち、能力に至るまでをコピーするユーベルコード。今回鏡に映すのはドクター・オロチ本体。
　そうしてこの場にはもう一体の帝竜が現れた。

「ムシュ！？」

　ドクター・オロチが異変に気づいたときはもう遅い。
　天より降り注ぐ水火闇光樹雷土の７つの属性を持つエネルギー塊がその身体を蹂躙する。防御をしようにもドクター・オロチの同じく攻撃の最中。属性弾を防ぐ術がドクター・オロチには存在しなかった。

『そのまま骸の海に墜ちたらどうです？　今度は永遠に』
「ム、ムシュ～！」

　なんとか降り注ぐ属性弾を耐えるドクター・オロチだったが注意の逸れた隙に一つの影が動いていたことには気づいていなかった。

「―――トドメです」

　死角から『Ø』と名付けられた剣を構えドクター・オロチへと迫る零。


　その刃が竜を貫き、降り注ぐ七色の光が空を舞う竜を地に墜とす。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●再び死すモノ

「ム、ムシュ～」

　ドクター・オロチは失墜し、その身は空から地上へと墜ちる。属性を操る能力も悉く無効化され、残されたのはその長大な身体だけだった。しかし、属性を操れなくともその身は帝竜に類するモノ。その肉体だけで周囲を滅ぼすために十分な脅威を宿していた。

「いけ！」

　そして竜の口から放たれる緑の粘液。猟兵たちに触れることはなかったが、外れたそれは周囲の脳髄へと降りかかり跡形もなく溶解させる。仕組みも成分もわからないが当たれば被害は免れないだろう。
　奇しくもこの場にいる3人の猟兵たちが選んだ選択肢は同じものだった。

「懲りんなこいつも……」

　シール・スカッドウィル（ディバイダー・f11249）は推進器を吹かし、ドクター・オロチの放つ粘液から逃げるように移動する。多少無理のある挙動をしても推進器が身体を無理やりにでも動かし移動する。急加速と停滞の組み合わせによる緩急で的を絞らせぬように動き続ける。

「もう一度滅ぼす機会があるとは有難い」

　アシェラ・ヘリオース（ダークフォースナイト・f13819）も同様に自らのフォースでその身を包み込むことで自由自在に空を舞う。飛び散る飛沫もフォースで創り上げた赤光の盾で受け流し、ドクター・オロチの周囲を飛びまわる。

「……何度も出てきて恥ずかしくないんでしょうか」

　フランチェスカ・ヴァレンタイン（九天華めき舞い穿つもの・f04189）も飛翔ビットを操り、その身体を粘液から防ぎながら空中戦起動でドクター・オロチを翻弄する。

　三者三葉に動き続ける猟兵たちをドクター・オロチは捉えられずにいた。粘液がいくら強力だとしても放つことができる口はただ一つ。放たれたあとの飛沫を操作もできない以上猟兵たちを狙い続けるのは至難の業だった。

　粘液のほとんどはアシェラのフォースで散らされ、フランチェスカの飛翔ビットで受けとめられる。飛び散った飛沫さえもシールの双銃に撃ち抜かれ飛散する。

「ムシュ～！」

　どれだけドクター・オロチが粘液をばら撒こうと猟兵たちに直撃することはない。それどころかフランチェスカの放った気化爆弾ミサイルで破壊されたビット諸共焼き祓われてしまう。
　ドクター・オロチの視界が爆炎で埋め尽くされ猟兵たちの姿を見失う。その隙に猟兵たちの行動は反撃へと移る。
　フランチェスカは爆炎の上昇気流を受けてさらに高く飛び上がり、アシェラとシールは左右に別れドクター・オロチのへと迫る。

「散れ！」
「邪魔だ」
「……いつぞやに過去を無遠慮に穿られた怨みは、ええ。忘れておりませんよ？」

　3方向から放たれるフォースと銃撃と砲撃が竜の纏う粘液を引き剥がす。最後の砦も奪われドクター・オロチの身体は無防備に晒される。おそらくこれが最後の隙。3人はここで残る全ての戦力を投入する。

　シールの左腕に集う光。それはシールの【果てに至る極光】により操る精霊群の持つ力が変換され、可視化されたもの。己の持つ総ての力を収束させたその光を宿し、シールはその左腕を振るう。

「頂くぞ、その薄汚い生命！！」

　アシェラも【絶・破天槍】により残存する全フォースを破天槍に籠め、臨界を超えて万象を刺し穿つ力を顕現させる。この一撃を外せば後はないがこの一撃を叩き込めるのも今しかない。

「全鎧装、パージ―――」

　フランチェスカもドクター・オロチの頭上で自らの鎧装を脱ぎ捨て斧槍と結合させる。そして出来上がるのは斧槍を核とする超大型主砲。その砲身が狙うのは眼下のドクター・オロチ。

「これで」
「終わりだ！！！」
「ソラの塵へと還りませ……！　オーバーレイジ―――バスタァァァァッッ！！」
「ムシュシュシュシュ、これで―――」


　極光の拳と真紅の槍がドクター・オロチの身体に突き刺さる。内包された膨大なエネルギーがその体内で暴れまわり、内部からその全てを蹂躙する。持てる力の総てをこの一撃に込め、最大火力を放ったシールとアシェラの2人はそのまま戦線を離脱する。
　その直後天から降り注ぐ【九天吼え裂き 灼き征くもの】による巨大な光の柱。それはドクター・オロチの身体を包み込み、その悉くを焼き尽くす。


　光が晴れた時、そこには塵一つ残っていなかった。

　己が持てる全てを使い、ドクター・オロチを再び骸の海へと送り還した猟兵たち。
　再起せし黄泉返るモノはここに再びの終焉を迎える。


　猟兵たちはこの戦争も終わらせるため、次なる戦いへその身を投じる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2020年05月20日