11
咲かせ咲かせよ花畑

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0




●荒れ果てど咲き誇るは夢の花
 最期が来る。
 定められた刻限を前に、捧げるべき蜜も花も枯れて。
 ああ、かの領主は人の心なき冷血なる者。氷の如く情なき者なれば、望まぬ調べたる我らが抗弁は意味なきもの。
 此処には命しかないならば、その残渣もすべて平げんと。きっと何もかもを奪い、明日にこの村は存在を失うだろう。ならば――!

「私たちの愛で、領主様の心を溶かすしかないと思うの、ジョニー!」
「そうだねキャシー! いくら領主様とはいえ……僕らの熱い愛を前に、どこまで氷でいられるかな!?」
「そしたら……領主様の館で結婚式とかできるかしら!」
「なんて最高なアイディアなんだキャシー! きっと今日は最高の日になるぞ!!」

 絶望に沈む村に鳴り響く、場違いな二重奏。
 されど、他に希望を知らぬなら、寄る辺なき民はその声に集い。やがて束ねた声は一団となり、荒廃した道に向かい愛をもって歩まんとする二人へと声援を送る。

 愛が全てを救うなら――いざ、咲かせ咲かせよ花畑!

●夢の花を守るは猟兵
「イエス、頭がお花畑というイントロです」
 導入は歌い終えたと、岩動・廻(うぃー・f03748)は顔を上げた。その表情にこれといった感情はなく、感想を待つようにギターのボディを叩きながらリズムをとっている。
「聞くも涙、語るもティアー」
 集った猟兵に応えるかのように、フレーズをつま弾けば先の話の続きを告げて。彼女の口から聞こえた情報を整理すれば、舞台となるのはダークセイヴァーのとある村。定期的に課せられた税をついに払えなくなった村が、最後の手段として陳情の為に領主の館へと赴くらしい。そして、村を代表して陳情するは一組の男女。自分たちの愛が領主の心に響くと信じて――!
「言わんとしたところはラブ&ピースです。とはいえオブリビオンにラブが通じたなら猟兵はプアー」
 ご愛読ありがとうございました、と顔色一つ変えずに彼女が歌う通り、まあそんな都合のいい展開はなく。むしろ逆鱗に触れた領主に二人の命はおろか村ごと存在を消滅させられる始末。

「まあ、それはうぃー達がこれを、悲劇として見た場合の話です」

 猟兵たちがこれを悲劇として見過ごすか。それとも、喜劇として後世に残すか。
 ゆーが乗るならば、と演奏を止め差し出されたピースサインに沿えば作戦は二段階。
 幸いにして当日は税を献上させるべく、領主の館への道は比較的開かれている。領主も、自らが謀反されるとは千にひとつも思っていない。それどころか、まさか目の前で熱愛宣言をされるとは。
「つまり、館に乗り込むのはイージーであり、かといって彼らだけではむーずぃーのです」
 まず一つ目の障害として立ちはだかるのは死霊の群れ。領主の手のものではないけれど、領主の手にかかった過去の被害者たちは通りがかるものへと見境なく襲い掛かるだろう。かの男女――ジョニーとキャシーに戦いの心得は期待しないほうが良いでしょうと廻。故に、彼らを警護しながらの道のりとなるのは自明の理。
「そして、ゆーもわかってるでしょうが、館にたどり着いたら当然に領主とのバトルです」
 血税を吸い、生き血を啜り、村民からの搾取により生きながらえている領主は、納税が無いと知れば無慈悲に殺しに来るだろうと。繰り返し言いますが、ジョシーに戦いの心得を期待するのはミステイクですよと廻。何か今名称が混ざったが、ここでもやはり彼らを守りながらの戦いとなる。
 これじゃあ子供のお守りじゃないかと呟く猟兵もいれば、ジョシーは戦闘中何をしてくれるのかと尋ねる猟兵。それらを全て聞き流したのち、廻からの回答はただ一つ。
「それは言うまでもなく。互いに互いの名前を叫んで、愛を確かめあってくれることでしょう」
 領主を倒して館でウェディングをあげるまでそれは続くでしょうねと返せば、冒頭の茶番は、演奏上の演出でもなんでもない事前の説明だと。理解と共に呆れる猟兵たちを前ににやりと笑えば――ここでようやく表情らしい表情を見せて、廻は微笑む。
「愛がすべてを救うとはチープで陳腐な話ですが……時に愛を叫ぶのもロック」
 たまにはこういうのも良いじゃないですか、とピック代わりのコインを弾けば再びギターを持ち直し。
「イントロはうぃーが請け負いました。メロディはゆーに任せましたよ?」
 自らが送り出す者たちへ向けて、ロックンローラーは高らかに歌い始めた。


メヒ子
 カニピラフー(挨拶)

 ダークセイヴァーでもこういうノリです。
 ジョニーとキャシー(以下ジョシー)は冒頭のノリでひたすらにお互いの名前を叫ぶだけなので、それとなく助けてあげつつ障害を排除してあげてください。邪魔にならないようジョシーを気絶させてもいいと思いますが、気絶させないほうが演出上盛り上がると思います。

 領主を倒すとその館で結婚式までやるらしいです。図太いですね。
 設営を手伝うもよし、ジョシーにお祝いの言葉を述べるもよし、村のお母さま方が作ったご馳走をいただくのもよし。式を壊さない範囲でいろいろと好き放題盛り上がってください。
 廻もお呼びいただければ参加します。
45




第1章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

終夜・嵐吾
愛が深い…つよい…(ジョシーの姿に何かが刺さってしまった24歳、お花畑伝染者)
なれらの姿に感動した、護衛させておくれ(目頭抑え)
無事に式を挙げられるようにわしも道中、尽力しよう。力の限り…!

向かってくる敵は退ける。
心配するな、あやつらは……なれらを、祝いにきたのだ!
ただちょっと祝いの気持ちが膨らみすぎて物騒な感じなだけで……
心の底から祝いたいのだが恥ずかしがっておるんじゃ。
つまり――愛を叫んでいればわかってくれよう! その心解けよう!
見つめあうんじゃ! 力の限り! はい! みせつけてー! 愛ふりまいてー!

祝いの演出の花弁も任せよ!
虚の主よ、今日は派手に赤い薔薇で頼む。
ジョシーを守る様に花散らせ


キトリ・フローエ
すごいわ…ダークセイヴァーなのにダークじゃない…(ふるえ)
ええと、二人を守りながら領主を倒してくればいいのね?そういうことなら任せて!大丈夫よ、…たぶん!

一緒にいる皆と協力しながら戦うわね
ジョシーには安全な所にいてもらえるとありがたいけど、難しそうね
とりあえずその辺で愛を表現しあってて!
あなた達の愛があれば、死霊もきっと浮かばれるわ!
二人の愛の力で、どうかあたし達を導いて!はいラブ&ピース!

ひとまず二人の動向にはらはらしつつ
エレメンタル・ファンタジアで炎の嵐を
それはもう全力で、出来るだけ多くの死霊を纏めて巻き込めるように
二人の愛の炎だと思って受け取りなさい!
反撃が来る前に焼き尽くしてあげる!



●意気投合にして意気揚々
 光当たらぬ森の道を、二人と猟兵たちが行く。それは、色を失って久しいこの地において、鮮烈な色彩をよみがえらせるかの如く。何を恐れるでもない、静寂を突き破らんばかりの二人の笑い声はこの世界における奇跡のように。
「こんなに賑やかなお出かけになるなんて、とっても楽しいわねジョニー!」
「そうだねキャシー! ああ、皆さんもありがとうございます!」
 革のドレスに花を添えて。くるりと回ってキャシーが笑えば、ジョニーは腰に手を回して支えるように。猟兵たちへの礼も忘れなければ、きらりと白い歯が輝いた。
「すごいわ……まったく暗さを感じさせない……」
 一方、キトリ・フローエ(星導・f02354)は、その圧倒的な存在感をいざ目の前にして、身を震わせる。この世界に限った話ではなく、果たして他の世界でもこれだけの輝きを放った星はあっただろうか。ちらりと横を見れば、終夜・嵐吾(灰青・f05366)は、目頭を抑えながら。
「愛が深い……つよい……」
 しんどい……無理……と続きそうなフレーズを出立の時から繰り返し続けている。
(ああ、ジョシーの姿が何かに刺さっちゃったのね……)
 心の中でジョニー&キャシーをまとめて呼称しながら、キトリは二人から嵐吾へと視線を移し、ここに至るまでの経緯を思い返す。村への到着までは事前の説明通りで、ここまでの進行も事前の進行通り。誤算としては、ひとつ。

「なれらの姿に感動した、護衛させておくれ!」

 実際のジョシーを目の当たりにして、嵐吾が感極まってしまったところだろうか。
「無事に式を挙げられるようにわしも道中、尽力しよう」
 力の限り、と意気込む24歳お花畑伝染者。いざやいざいざと二人の前に出れば、それは危機を察知してものか――木々の間より這い出るは昏き死霊の群れ。己の幽体を動かすものも知らぬまま、温かきものに飢えるかの如く。
『…………!』
 それら異質なるものが周囲を取り囲めば流石のジョシーも自らが直面したものへと意識を奪われて。共に握り合った手を強めれば、早口に言葉を紡ぎだす。
「まあ、ジョニー! 何かしらアレは!?」
「キャシー! あれは……聞いたことがあるよ!」
 初めて深刻な面持ちで、重大なことを思い返すように。
「そう、森には……迷い人を導く良い精霊さんが住んでいるって!」
 ああ、かの死霊が抱く無念は通じず、喜び合うは流石のジョシー。そう、恋は盲目ならば――愛は猛進。周囲はすべて味方であると、固い決意は揺るがずに。
 そして、それを肯定するように嵐吾。
「うむ、心配するな。あやつらは……なれらを、祝いにきたのだ!」
 故に、愛を叫んでいれば行先はわかってくれよう! そう強く叫べば、ジョシーに向き直り。
「そ、そうよ! あなた達の愛の力に比例して、彼らの導く力は強くなるから――」
 そうかなあ、と思わず呟きそうになる言葉を咄嗟に飲み込んで、キトリも賛同するように言葉をつなげる。
「だから、二人の愛の力で……どうか、あたし達を導いて!!」
 それは何より二人にとってわかりやすい言葉ならば、わかったわとジョシーは二人、猟兵に囲まれればダンスを踊るように、まずは互いの背に手を回し!
「いよーっし! そこで見つめあうんじゃ! 力の限り! はいー次そこでみせつけてー! いいねいいねー、そうそう愛ふりまいてー!」
 おーっと! 顔が近づけばすかさず嵐吾が監修に入る。不安そうに見つめるキトリを余所にこの24歳、ノリノリである。
「わかったわ狐の人! でも私達、口づけは式まで取っておきたいの……」
「おいおいキャシー! 愛情表現はそれだけじゃ――ないだろ?」
「やだ!? そうね私ったら!!」
 一方、はしゃぐ声の出所を、光を失って久しい目が見つめる。その瞳に燃えるのは怨恨の炎か。数多注がれる視線の中に、誰か猟兵によるものも含まれている気がするのはきっと気のせい気のせい。
『……ィィィィィ!!』
 ともあれ、この森にそぐわない喧噪を静寂に帰すべく、死霊が迫る。己の昏い姿を露にし、対象の憐憫を誘わんと。そこに明確な言葉はなくとも、鬼気迫る表情がその意図を伝える。――さあ、同化しろ!
「ジョニー!」
「キャシー!!」
 だが、憐憫は誘わせない。
「あの顔は心の底から祝いたいのだが恥ずかしがっておるんじゃな」
「そうそう、素直になれない感じなのよね!」
 その表情は伝えるわけにはいかぬと、嵐吾が咄嗟に間に入りカバー。加えて、キトリが二人の視線を引き付けるべく周囲を飛べば、かの霊の真実は告げずに。ただ、ジョシーが信じる幸福な姿こそ真実にせんと、返礼代わりにエレメンタル・ファンタジア――炎の嵐を死霊に贈る。
「これが、二人の愛の力だと思って受け取りなさい!」
 ラブ&ピース! 暗い森に灯されるは、単なる火ではなく希望であれと。それはキトリが戸惑いつつも、ジョシーに見た輝きならば!
「よいぞキトリ、祝いの演出は任せよ!」
 嵐吾の右眼が輝けばその洞にて眠る、『虚の主』が目を覚ます。花の香を止め、そのまなざしが死霊に向けば――ウインクと共に、周囲へ紅い薔薇が舞う。花に嵐の例えもあれば、其は紅き嵐。ジョシーを守るように放たれた二重の嵐は、死霊の一陣を絡めとり、絡みつかんとする傷だらけの手を振り払う。その願いは叶えてはならぬと。
「すごい、すごいわジョニー! 赤いお花よ!!」
「領主様のお屋敷にしか咲かない、あの花のようだねキャシー!!」
 ジョシーの歓声が上がる。
 キトリと嵐吾が視線を交わせば、続いて迫りくる死霊に向けて巻き起こる、再びの嵐。護らんとする二人の決意が戦端を開けば、それを開戦の合図として各自猟兵たちも応戦を始める。

 ――さあ、愛の力はまだまだこれからだ! 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
……元気なお二方ですね(苦笑)
ですがこの世界でこれだけの愛を叫べるというのはとても素敵なことだと思うのです。それがこの世界で数多くの任務とそこに付随する悲しみを見た私の考えです

機械馬に「騎乗」し、残影に襲われるジョシー様達を「かばい」お守りいたしましょう
「武器受け」「盾受け」で攻撃を受け止め、「怪力」で振るう馬上槍と大盾、馬の「踏みつけ」で敵を蹴散らします。
お二方を「手をつない」で引っ張り上げて馬に同乗させて近くに置いておくのもよさそうです
私の負担は増えますが、近くにいたほうが守りやすいですからね

紛い物ではありますが、お二方の愛の道行きを守護する騎士となりましょう


バラバ・バルディ
なるほど最っ高ではないか!!こーいうのじゃよ!こういうのを待っておったんじゃ、わしは!ダークセイヴァーはいつも何となしに陰気臭いからのう、頭に花を咲かせぶっ飛んどるくらいでちょうど良かろう!

【SPD】
これが子々孫々語り継ぐ物語ならば、わしらはこれを悲劇ではなく抱腹絶倒至福の喜劇にせねばならん!故に、この者らの道を阻むものあれば払うのがわしの役目よ。わしらと共に祝いの列に並ぶか、さもなければただ安らかに地に還るか。さあさあ二つに一つじゃ、疾く選べい!
(意気揚々とカップルの前に『かばう』ようにして立ち、『存在感』で注意を引きます。カップルの保護を最優先に、向かってきた敵には魔法等で応戦します。)


星羅・羽織
カニピラフー(挨拶)
アドリブ、絡み大歓迎。
好きに、動かしてOK。

護衛と、戦闘、意外と、オールマイティ。
私に、任せて(胸を張る)

二人を、カバー出来る、位置取りをして、進む。
もし、前衛の人がいたら、少し後ろを、行く。
二人が、巻き込まれないように、注意。

戦闘時は、錬成カミヤドリで、私の、分身を作って、板状に練り直す。
私の本体、魔力の塊だから、変幻自在。
二人を守る、盾にする。
そんな、よわよわで、私に傷は、付けれない(どやん)

空いてる分身で、敵の、行動妨害と攻撃もする。
分身を、練り直して、鞭状に。
魔力の鞭で、打ち付ける。
無念は、わかる。でも、私は負けれない。
せめて、綺麗に消えて、休んで。



●愛を守るも猟兵稼業
 数に任せて取り囲まんとする死霊を前に、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が立ちはだかる。
 愛馬たる機械白馬『ロシナンテⅡ』に跨りし姿は、まるでおとぎ話の白馬の騎士か。
「元気なお二人ですね」
「そうよ! ジョニーと私、元気なところも似ているの!」
「もちろん、僕とキャシーにはほかにも似てるところはあるんですよ? たとえば……」
 会話の途中にも、馬上槍にて接近する死霊を振り払えば、背後で寄り添うジョシーを見やり。その笑みに含むところこそあれ、この闇が跋扈する世界でこれだけの愛を叫べるというのは――とても素敵なことだと。この世界で数多くの任務をこなし、そこに付随する悲しみを見続けてきた騎士は、此度の守護の対象へと敬意を表すよう、大盾を構えなおす。
「なるほど最っ高ではないか!! こーいうのじゃよ、こういうの!」
 騎士と肩を並べる年老いたシャーマンズゴースト、バラバ・バルディ(奇妙で愉快な曲者爺さん・f12139)は高らかに笑えば共に防衛線を築かんと前に出る。この陰気臭い世界なら、頭に花が咲いてるぐらいでちょうどいい! 人形を並べ、もっとぶっ飛べと豪快に笑えば、その高身長の隣、同じくわははと笑う小柄な少女も側にいる。
「私に、任せて」
「おう、羽織嬢も良い笑いっぷりじゃのう!」
 胸を張って、上体を反らし笑うバラバに負けぬよう。笑いも、護衛も、戦闘だって大丈夫。オールマイティだから、と笑うのは星羅・羽織(星空に願いを・f00376)愛を守るべく騎士と翁の防衛線に少女が加われば――年齢で言えばバラバより年上だけれども、それはまあおいといて。だって、オールマイティだから。
「まあ、かわいい子! ねえねえ、あとでベールガールをやってくれない!?」
「おいおいキャシー気が早いよ! でも、僕もそれに賛成かな!!」
 ジョシーの誘いに微笑めば、羽織は返答代わりに身にまとう星空のローブへと力を注いで。錬成カミヤドリ――自身の分身たるそのローブを複製し、広げ、前方へ星空のタイルを盾として構築していく。それは、彼女が生まれた世界に輝く星海ならば、この世界の空しか知らぬジョシーを、死霊たちをも魅了するように。いや、かえって死霊の怨恨を掻き立てたならば、それが放つ炎は次々と偽りの銀河に吸い込まれていく。
「そんな、よわよわで、私に傷は、付けれない」
『――――ァァァァ!』
 死霊を前に、渾身のどや顔。
「お見事。かの輝きに負けぬよう、私も勤めを果たしましょう」
「それほどでも、あるかも」
 そして送られる騎士の称賛に、返されるは少女の首肯。
 星空を破る連撃があればトリテレイアが盾で受け、接近し、飛び掛からんとする死霊を槍で打ち払う。そう、数に任せた攻撃は脅威でこそあれ、味方の援護のあるこの状況。この両手に誇りある限り、受ける範囲を限定できるなら……致命打とは至らない――!
「ジョニー! 見て、私が夢見た王子様が、いまここに二人いるの!!」
「キャシー! 気持ちはわかるけど浮気は駄目だからね!?」
 死霊の絶叫と駆動音の中で、心配はありませんよという騎士の呟きは聞こえたかどうか。機械馬がいななき、周囲を踏み鳴らせば、蜘蛛の子を散らすように死霊は距離をとった。
『――――ィィァァ……』
 攻めれど攻めあぐね、死霊が周囲を漂うところ、ここぞとばかりにバラバが吠える。
「これが子々孫々語り継ぐ物語ならば、わしらはこれを悲劇ではなく抱腹絶倒至福の喜劇にせねばならん!」
「私も悲劇より喜劇が好き!」
「やっぱり、僕らのようにハッピーエンドがいいよね、キャシー」
 現在進行形で、その未来が猟兵たちの頑張りに託されているとは知らず。ジョシーが能天気に笑えば、それを見てトリテレイアと羽織も頷いて。そう、その主張を通すために自分たちはここにいるのだと、今の言葉にそれを確かめるようにして。
 ならばと、バラバは続ける。
「故に、この者らの道を阻むものあれば払うのがわしの――わしらの役目よ! わしらと共に祝いの列に並ぶか……さもなければただ安らかに地に還るか」
 自身と共に並んだ人形を操り、その指を揃えて死霊へと突きつければ、併せて伝えられるは最後通告。――さあさあ二つに一つじゃ、疾く選べい!
 ああ、圧倒的かなその存在感。かの叫びを死霊が果たして理解したかどうか。
『…………』
 だが確かに、数体の動きが止まる。バラバより迸った感情に、そのうちの一体が見つけたのは、自らに逆巻く衝動か。飛び掛からんとした姿勢のまま静止し、それから悩むように身を捩れば、追って届く声が響く。
「列に並んでくれるなら大歓迎よね、ジョニー!」
「そうだね、精霊さんたちなら賑やかになるし、村のみんなも大歓迎さ!!」
 とり殺さんとする対象が叫ぶ、どこまでも好意的な叫び。
「寂しいよりは、みんな一緒のほうが、いい?」
 近づく死霊を、鞭と化したローブで弾きながら、羽織も尋ねる。果たして、本当はどうしたいのかと。ただ、自らと同じ犠牲者を増やすことだけが本望ならば、もう消えてもらうしかないけれどと。
「無念は、わかる。でも、私は負けれない。だから――」
 せめて、綺麗に消えて、休んで。
 その願いを、それぞれの祈りを受けて、数体の死霊が姿を消す。戦う意味をなくしたと、本来の願いを思い出したと。それはきっと、祝いの列に並ぶための準備のためか。……いや、そうに違いないとバラバは笑う。
「ならば」
 残った死霊から守るべく、トリテレイアはジョニーへ手を伸ばす。二人が手をつないだままならば、二人ごと。一息に自らが跨る馬上へと引っ張り上げて。
「すごい! 私、こんな馬に乗ったのって実ははじめてなの!」
「ああキャシー! この視点を味わったら、村のロバ程度じゃもう……」
 興奮するジョシーを後目に、片手はつないだまま。自らの負担が増えようが、二人を守れるならこの程度。
「御伽噺に謳われる騎士たちよ。鋼のこの身――」
 其は、彼の信念。其は、彼の誓い。トリテレイアがユーベルコード、『機械人形は守護騎士たらんと希う(オース・オブ・マシンナイツ)』が今此処に燦然と。
「それなら、わしの身もそうじゃな!」
「星空を描く、私も」
 加えて、バラバと羽織。負担を負うのは、一人のみにあらずと決意を共にする。ならば、この誓いは三人分だと、トリテレイアは片手に掲げし大盾を天高く掲げ。

「災禍を防ぐ守護の盾とならんことを、我等! ここに誓わん!」

 紛い物かもしれませんがと、トリテレイアは笑う。しかし、それを肯定するものは此処になく。三人の盾が鉄壁となり、続く死霊を迎え撃つ。来るなら来い、並ぶならさっさと並べ!!

 ――そうとも! 我等、二人の愛を守る騎士ならば!!
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エーカ・ライスフェルト
知恵も知識も足りない愚か者ね
でも、この世界でこれほどの想いを抱けるなら、私が命をかける相手として最高よ
「これほど血が滾るのは何年ぶりかしら」

【WIZ】
『残影』がたくさんいる所へ、宇宙バイクに【騎乗】して突っ込んで【ウィザード・ミサイル】をぶっ放すわ
「結婚式を盛り上げるために集まってくれるなんて気が利いているじゃない。花嫁花婿の代わりに引き出物をあげる!」

反撃の【絶叫】を何発か浴びる気がするけど、テンションが上がりすぎて被弾に気付けないかも
「猟兵が使えるのはUCだけじゃないわよ。私の魔術もご馳走してあげる」

【属性攻撃】で炎の矢を飛ばすわ
これが最期の戦いでも満足しちゃいそう。罪なグリモア猟兵ね


ルヴィリア・ダナード
この二人の会話、半分以上よくわからないけど…
何でも上手くいきそうな勢いがあるよね。
これが俗に言う愛の力ってやつなのかな?
あ、愛の力ってスゴいのね!
二人の気持ちを届けるためにもお手伝いしないとね。

死霊の群れがお二人に襲いかかるようなのであれば全力でお守りするね。
私はいくら怪我したって構わないけどこの二人だけは私のカミサマに誓って傷つけさせないよ。
ミレナリオ・リフレクションを使ってその炎をそっくりそのまま返してあげる。
相殺なんてお手のものだよ。
余ったのは合体して炎を出したやつにドーンとプレゼントよ。
さぁさぁ、お次は何を真似しちゃおうかなー、なんてね!



●呪いと祝いは字が似てる
「ジョニー! 高いところはドキドキするわね!」
「おっと、ドキドキしているのは本当にそれだけかいキャシー?」
 飛び交う死霊あれど、愛語るジョシーの前にそれは善良な精霊さんに見えたまま。猟兵がその一切の攻撃からジョシーを守れば、愛の空想はより現実に近づき。
 さあ、守りが固まれば――猟兵がとる次の手は、反撃の一手!
「これほど血が滾るのは何年ぶりかしら」
 ジョシーの声を背中で聞けば、自身は宇宙バイクに跨って。その長い桃髪をかき上げながら、エーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)は一人微笑む。ああ全く、知恵も知識も足りない愚か者ねと。でも。
「この世界でこれほどの想いを抱けるなら――私が命をかける相手として最高よ」
「うんうん。この二人の会話、半分以上よくわからないけど……何でも上手くいきそうな勢いがあるよね」
 これが俗に言う愛の力ってやつなのかな? とルヴィリア・ダナード(嘘つきドール・f01782)もやや首を傾げつつ、それでも肯定するように続く。これが、あの愛の力だというのなら、こんなスゴい力をここで失わせるわけにはいかない。じゃあ、早速お手伝いしないとねと、緑の瞳は死霊を見つめその動きを予測する。それは、万一に備えるための前準備。
「でも、精霊さんたちはなかなか導いてくれないのねジョニー?」
「精霊さんたちも、実は道がわからなかったりするのかなあ?」
 一方、先程から前へ進めぬこの状況にようやくジョシーが気づいたならば、エーカは旧型宇宙バイクのエンジンを吹かし、二人に聞こえるようにと死霊へと語りかける。 
「あなたたち、結婚式を盛り上げるために集まってくれるなんて気が利いているじゃない!」
 言うが早いか、アクセルを開ければ愛機の駆ける先は、死霊の色がより濃き一団。これは花嫁花婿の代わりに引き出物だと、肉薄すれば放たれる炎の矢――ウィザード・ミサイル! それは花火のように炸裂すれば、祝砲のように。
『――――ィィァァ!』
 着弾と同時、煙立てば視界は一時覆われ。数多の絶叫の中で加速すれば、霧とも煙とも分からぬ曖昧な境界を飛び出して。次の一団へ向けて軌跡を描くよう、エーカが駆け抜けていく。
「まあ! わざわざ導く前に、精霊さんたちは盛り上げてくれようと!?」
「ああ、これだけの数……考えてみればご馳走は足りるかなあ?」
 死霊の悲鳴は火花の弾ける音にかき消され、エーカの声のみがジョシーに届けば疑問は解消したとばかりに二人は次の問題へと互いに頭を悩ませる。
 それでもと。上がる煙の向こうより、潰えた希望を伝えんと。顔を歪ませた死霊が口を開けば、悲しみに満ちた絶叫を浴びせんと姿を見せたところにルヴィリアが飛び出す。
「私は……リアはいくら怪我したって構わないけど――」
 この二人だけは私のカミサマに誓って傷つけさせない! その気持ちを言葉にすれば、悲しみをかき消す波動となって。その叫びこそ、一瞬の隙さえ見逃すまいと備えていた彼女のミレナリオ・リフレクション。果たして予測した通りに敵が動いたなら、あとはそれをなぞるだけ。
「さぁさぁ、お次は何を見せてくれるの?」
 絶叫を返した死霊へと微笑みを向けるルヴィリア。今度は何を真似しちゃおうかなーと冗談めかすも、そこに一切の油断はない。
「そうそう、それに猟兵が使えるのはユーベルコードだけじゃないわよ」
 ついでに私の魔術もご馳走してあげると、そこにエーカ。速度を落とさぬまま、動きを止めた死霊へと狙いを絞れば――その身に練られた魔力が火の属性を宿すと同時、数多の火の玉が愛機と並走するように死霊の群れへと到来する!
「ねえジョニー! 私たちもたくさんのかがり火が欲しいわ!」
「わかるよ、キャシー! だって、とても綺麗だもんね!!」
 それを見て息をのむようにジョシー。見入ればまたひとつ、館への道のりをパレードとするようなアイディアを思いつけば。
「じゃあ、真似しようか?」
 別方向より迫る、人魂に似た炎を模しながらルヴィリア。相殺すべくその手に炎を増やせば、灯りは次々瞬いて。
 死霊のうめき声をかき消すようにジョシーが歓声をあげると、煙の向こうにまた新たな閃光が生まれる。まるで、二人の門出を祝う光のセレモニー。灯りに照らされた新郎新婦の顔は、頬を染めたよう。
「ちょっと、これで満足しちゃうかも」
「うん。愛の力って、スゴい」
 死霊を蹴散らせば猟兵も二人、ジョシーの顔を見れば満足そうに伸びをして。けど、それも少しの間。新たに迫る一団に向けて、向きなおれば再び駆け出すが猟兵の仕事!

 ――やっぱり式が終わるまで、満足するには早すぎる!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

坂上・貞信
※アドリブ、共闘など歓迎です。

へえ、愛。いいねえ、とても素敵だ。
僕にはさっぱり解らないけれど、
そういうものこそ僕たちが守るべきものだ。

『我が愛しき部下よ来たれ』――
呼び出した死霊の部下達におもりをさせよう。

ああ、部下の手が空くようなら『援護射撃』も。
味方の猟兵を手伝っても良いし、
ジョシーたちの方にハプニングやピンチを演出しても良い。
折角だもの、ここでも存分に愛を深めて頂こう。

僕自身は……離れた位置で壁にもたれつつ
「やれやれ」とか呟いとこうかな。
画面内にハンサムが二人居てもしょうがないし。

それに。
死霊モノでカップルじゃない男なんか、
下手に絡んだら死んじゃいそうだしさ……


光・天生
まずは露払い。荒事なら大得意です。
集中して、呼吸を……呼吸……こ……。
……後ろのジョシーがうるさくて集中しづらいんですけど!!

とにかく。
集団戦で怖いのは背後からの不意打ちです。
ユーベルコードによって特に背部に重点的に氣を行き渡らせての「防御力重視」。

敵の中に飛び込み、【殺気】を放って意識をこっちに向けます。
戦い方は至極単純、【グラップル】による【捨て身の一撃】。
突進や冲捶……拳を用いて一撃必殺、各個撃破。
狙った敵以外にはあえて背中を晒し、防御を強化した背面で攻撃を受けます。

「ハイッ!」
「ぜあァッ!」
「ジョニーッ!」
「去你的!!」
「キャシー!!」

……ああくそっ、後ろがうるさくて掛け声が伝染る!!



●集中と掛け声とハンサム
 盛大に花火に似た光が打ちあがるなら、そのまた別の場所にて打ちあがるは死霊。
 呼吸を整えた一打は霊体をも捉えるなら、踏み込みと同時に吹き飛ばすも容易と、光・天生(鈍色の天蓋に神は座す・f05971)の背中がそれを語る。深く吸い、長く吐き出し。それを己に課したルーティーンのように。その集中は如何なる敵を前にしようと、決して失われない。
「すごい、精霊さんってあんなに高く飛べるのねジョニー!」
「いやいやキャシー! それだけじゃない、見てよあの子の背中を!」
「背中! 背中のどこを見れば……まさか、羽根が生えているのかしら!?」
 生えてません。思わず反応しそうになれば、集中が途切れ――そうになる。セーフ!
「キャシー! 羽根が生えていたら、まるで僕らの愛を祝福に来た天使様じゃないか!?」
「まあ! それは本当なの天使様!?」
 誰が天使だ。言葉を飲み込むも、咄嗟に向き直らんとすれば裏拳で死霊を巻き込む天生。流石にこれはアウトと、歯を食いしばり再度の集中を意識して。
「愛。いいねえ、とても素敵だ」
 意識してるのに、耳に入るのはすかした台詞と拍手。また何か増えたかと横を見やれば、木に寄り掛かるようにして男が一人。
「僕にはさっぱり解らないけれど、そういうものこそ僕たちが守るべきものだ」
 軍人然とした装いの坂上・貞信(バーチャル無能軍人・f00110)が柔和な表情を浮かべ、腕を組みながらジョシーを見つめていた。そして、天生の視線に気づけば、彼へと視線を移し。
「君も、そう思わないかい?」
「いやよくわかんないですね」
(こっちは、ただでさえ後ろのジョシーがうるさくて集中しづらいんですけど!!)
 見た瞬間に思い浮かぶ数々の疑問を捨て去るため、即答と共に視線を外せばさらに一歩と敵中へ進み。丹田に呼吸を溜め、それから一気に突進すれば――、
「ちなみに、僕がこうして離れたところにいるのは……画面映えを意識したから、かな」
 画面内にハンサムが二人いると、進行上よろしくないからと。聞いてもないのに貞信からあった回答は、バーチャルキャラクターらしい知識と経験に基づいた理由。それは、誰かに伝えたという体裁をとるためのものか。
「じゃあ……そんな場所で……一体……何してるんですか!」
 無視することもできず、天生は死霊へ掴みかかりつつ、たまらず他の疑問をぶつければ――おそらく不良軍人であろう彼はこともなげにこう続ける。
「勿論、愛を守り……そして演出するためかな」
 やれやれ。
 やれやれではない。柄じゃないけどと照れる姿は天生の視界には入らないものの、声だけで彼の表情は伝わるように。じゃあちゃんと守れと指摘したくなる気持ちが生まれたところ、天生の背後に向けて殺到するは他の死霊による炎の数々。死霊とて黙ってやられるわけでもなく、無防備な背を見つけたならばそれを見逃すほど愚かではない。
「そんなもの……!」
 それは天生も同様に。わかって隙を晒すほど甘く見たつもりもなく。元々、先の突進前の呼吸はそれを見越した背部強化。それは天生のユーベルコード『龍氣一極』によるものならば、果たして、鋼と化した背は如何なる攻撃だろうと受けられるだろう。だが――、
「お見通しだ」
 今声に出したのは果たして――自分か、彼か。
 被弾を覚悟したところに届いたのは、身を焦がす熱さではなく。むしろ背筋が凍えるような冷気。想定外の感覚に思わず天生が振り向けば、そこにあったのは死霊とは別の、色の異なる死霊の群れ。
「余計なお世話だったかもしれないけれど、僕はこう見えて無能だからね」
 だから、彼らに働いてもらっているんだと貞信の声が聞こえると、その声に統率されるように、水の色を思わせる死霊が天生の背後をカバーするべく飛び回る。其は貞信のユーベルコード『我が愛しき部下よ来たれ(コールマイネーム)』。死してなお、彼に忠義を尽くさんとする死霊の群れ――という設定ならば、呼び出された彼らは喜んで、上官の代わりに手足となって酷使され!
「いえ、助かりました……!」
 素直に礼を言えば、これで戦いやすくなったと天生は死霊に向き直る。背後の憂いを絶ったなら、一撃必殺の構えから地を鳴らし。右手を前に突き出せば、その次の踏み込みでは左手を。交互に放たれる冲捶が、掛け声と共に次々と死霊を打ち晴らす! 
 ハイッ!
 ぜあァッ!
 ――次はッ!?
「ジョニー! あの人、まるで精霊さんと知り合いみたいよ?」
 ジョニー!
 去你的!!
 ――最後はッ!!
「聞いたことがあるよキャシー! 世界には精霊さんと会話できる人がいるんだって!」
 よしっ! キャシー!! 終わりッ!!
「ああくそっ、後ろがうるさくて掛け声が伝染る!!」
 一団の死霊を片付けたものの、途中の掛け声絶対違いましたよねと自問自答すれば、頭を抱えるようにして苦しんで。ああ、さほど違和感はなかったけれど、それは若さゆえの自意識か。
「それにジョニー? 天使様の動き。まるで私たちの為に踊ってるみたいじゃなくて?」
「言われてみれば確かにそうだよキャシー!」
 ちがうちがう、と否定する声も二人重なり。どうせ否定しても聞きやしないとわかっていれば、軍人と少年、お互い視線を交わすとようやく可笑しそうに笑って。
「どうする? 僕も、援護射撃でもした方がいいかい?」
「結構です」
 なんか、当たりそうですしと断れば、腰に差した剣を指して飾りですかと天生。
 指摘されれば貞信、死霊の相手は死霊が一番だよと嘯きつつも、やりたくないんだと正直に回答し。付け加えるならば、そこそこはできるけどと。
「――それに」
「?」
 笑いあうジョシーを見やれば、その表情はやや曇って。
「死霊モノでカップルじゃない男なんか、下手に絡んだら死んじゃいそうだしさ……」
「いやよくわかんないですね」
 少しでも分かりあえると思った自らを恥じるよう、天生は再び視線をそらし、笑みを止め真顔に戻れば次の一団へと狙いを変えて突進する。一体でも多く打倒そう。愛はともかく、優しい世界を作るために、この拳が生きるならと。
 そして、その背と、引き続き働く部下の姿をまぶしそうに見つめながら、貞信は再び近くの木に寄り掛かれば、独り言ちるように。

「ああ、イケメンは死なない――といいなあ!」

 それは、自身に対する祈りか、それとも。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レムナント・ノア
まあ、結婚式!
素晴らしいですわね、そうですそうです愛は世界を救いますのよ。
ぜひとも同行させてくださいな。

あら、あら。わたくしだって敵を前に無辜の村人達を
見捨てて逃げ回るほど愚鈍ではなくてよ?
村人達のそばを離れないように致します。

猟兵のわたくしが村人を守り!
猟兵の貴方たちがか弱いわたくしを守る!
これぞ一枚岩ならぬ二枚岩ですわー! オホホホホ!

流れ弾には技能で【敵を盾にする】ように心掛けますわね。
良いかしら皆さん。行進には音楽が必要ですわ!
バイオリンを取り出し「お嬢様の手習い」に
【歌唱】を添えて、村人たちへの鼓舞も兼ねて
戦闘支援を致します!

春のひかり~愛し合うふたり~フンフフフ~ン♪
ンフフフフ~♪


リーヴァルディ・カーライル
吸血鬼や猟兵じゃない、この絶望の中に住む普通の人にも、
まだこんな希望を抱く、明るい人達が残っていたんだ…
…ん。私の故郷も、まだ捨てたものでは無い

※二人の事は大抵、好意的に受け取ります

事前に防具を改造。第六感を強化し
精霊の存在感を見切り制御を助ける呪詛を付与

…死してなお彷徨う残影
普段なら、あなた達を憐れまずにはいられないのに…
あまり昏い気持ちにならないのは、あの二人のおかげ、かな?

【限定解放・血の教義】を発動
吸血鬼化した生命力を吸収して魔力を溜め、
魂の慟哭を癒し呪いを消す“光の雨”を2回攻撃で広範囲に降らす

…もう誰も傷付ける必要はない。眠りなさい、安らかに…

※二人の事は大抵、好意的に受け取ります


リリー・ベネット
……。
…………。
村の人々を苦しめる領主、必ず倒しましょう。

フランス人形のアントワネットとフランソワーズと共に戦います。
アントワネットでフェイント攻撃を仕掛け、仕込んだ毒でマヒさせます。
“歌う人型機械人形”でフランソワーズに斧槍を装備し重い一撃を与えていきます。

……ジョニーさんとキャシーさんに被害が及ばないよう、彼らの道を作るように敵を倒していきましょう。
敵だらけのヴァージンロードなんて嫌でしょうが仕方ありませんね。



●音よ鳴れ、列よ踊れ
 道が開かれていく。猟兵の叫びに応えるように並ぶものもあれば、猟兵の技の前に消えるものも有り。死霊の群れは刻一刻と薄まれば、その中には単に――ジョシーの愛に感じ入ったものもあったかどうか。
「領主様もこの数で押しかけたら……きっと大喜びよね、ジョニー!」
「きっと大歓迎だよキャシー! 領主様も実はきっと寂しいはずだもの!!」
 どのような理屈によるものか。とても、自分たちにとってのみ都合のいいことを語り合えば、されどそれを咎めるものはなく。
 むしろ、ならば急ぎ館へ向かうため、ここで一気に終わらせんと。ジョシーの声を聴けば目を開き、目の前の死霊を見つめるはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
「ん。私の故郷も、まだ捨てたものでは無い」
 ああ、あの声の主は吸血鬼や猟兵でもなく。ジョシーとは、この絶望の中に住む普通の――一般的かどうかは別として、普通の力しか持たぬ人なれど。
(まだこんな希望を抱く、明るい人達が残っていたんだ……)
 その事実が、何より彼女を奮い立たせる。それだけで、私がここに立つ意味は十分だと。
「オホホ、そうですそうです愛は世界を救いますもの!」
 そして、ジョシーの姿に感じ入る者はリーヴァルディだけではなく。高笑いと共に、レムナント・ノア(おてんば・f07798)が立つ。
「あら、あら? わたくしだって、敵を前に無辜の村人達を見捨てて逃げ回るほど愚鈍ではなくてよ?」
 周囲の猟兵の不安そうな目に反応するように、『お嬢様』としての責務を果たしに来たと彼は言う。戦闘はご遠慮いただきますけどねと、長躯を反らし天高く手を叩きながら笑ったところ、その異様な風貌も合わさればすかさずジョシー。
「ねえジョニー? あの方は道化という方かしら?」
「物知りだねキャシー! きっとそうに違いないよ!!」
「わたくし見ての通りお嬢様でしてよ!!」
 見ての通り、とは。
 果たしてそういった思考が彼女に会ったかどうか、それまで沈黙を守っていたリリー・ベネット(人形技師・f00101)も、フランス人形――アントワネットとフランソワーズを並べて。
「……村の人々を苦しめる領主、必ず倒しましょう」
 その視線の先にあるものがジョシーならば、彼女が守らんとするも同じく愛か。リリーが答えを語らぬならば、アントワネットがお辞儀をし、フランソワーズがくるりと回る。まるで――お友達を欲しがるように。
「アントワネット」
 主の声を聴けば、名を呼ばれた人形は前を行くリーヴァルディの背を追って。瞬時に、死霊の不意を突くように跳躍。
「呪歌が、貴方たちには聞こえるでしょうか」
 仕込み毒。その一撃にて動きを縛り、他の死霊の気を引いたなら――呼吸を合わせるようフランソワーズ。横薙ぎに飛び掛かるはもう一体。明らかに不釣り合いであるだろう漆黒の斧槍が、本命を薙ぐ。それはまさに、人形同士の舞踏にして武闘会。そう、彼女たちこそリリーの作品であり、ユーベルコード――『歌う人型機械人形(ミレナリィドールレプリカ)』
 その光景を前に、ならばとレムナントも取り出したるはバイオリン。踊りにはこれが必要でしょうと、前を行く猟兵と人形たちへ伴奏を送らんと歌い始める。
「春のひかり~愛し合うふたり~フンフフフ~ン♪」
 ンフフフフ~♪ と歌詞がない部分が多い歌を口ずさむも、そのわずかな歌詞すら聞き取らせない、硝子か何かを爪で引っ掻いたようなバイオリンが――これ本当にバイオリンの音ですかね。
 悲しき絶叫をかき消すにとどまらず、死霊と並び顔を歪ませる猟兵たちがいるも、その曲が愛を歌うものと理解したのならジョシー。
「すごい、すごいわジョニー! こんな音聞いたことないけれど私、すごく元気が出てくるの!!」
「本当かいキャシー!? 言われてみれば僕も……ああ、こんな音があるんだね!!」
 それこそがレムナントのユーベルコード『お嬢様の手習い(クレイジー・ボーイング)』の効果なら、ただでさえ上昇を続けていたテンションが更にハイテンション。手の付けられないように体を揺すり、互いに名前を呼ぶペースがどんどんと上がっていく。
 同じように演奏すればするほど自分に酔うようにレムナントのテンションが上がり、やがて笑い出すは高らかにオホホホホ!
「猟兵のわたくしがジョシーを守り! 猟兵の貴方たちがか弱いわたくしを守る! これぞ一枚岩ならぬ二枚岩ですわー!」
「成程」
 それに応えるは、リーヴァルディ。彼女の目には既に、死霊の存在感を見切り。それもそのはず。この機を見越した、第六感の強化。重ねて、纏う防具には呪詛の付与を。それは、この世界で吸血鬼狩りを使命とする彼女にとって、手慣れた前準備。
「……死してなお、彷徨う残影」
 その、明確に浮かび上がる輪郭を捉える。今までに何度も見てきた姿であり、何度も消し去って来た姿。重ねれば、その度に覚えた悲哀を思い返すも、今は。
(あまり昏い気持ちにならないのは、あの二人のおかげ、かな?)
 おまけで聞こえる音楽もあるけど、その目的も同じなら。やはり、二人に対して報いたい。この森に漂う吸血鬼化した生命力もまた、ダンピールたる彼女にとっては望む望まぬと糧とできる以上――迷わずに吸収。体内で魔力と代えれば、その交差する両碗に生まれしは白光。
「……もう誰も傷付ける必要はない。眠りなさい、安らかに……」
 遥か上空へと掌を向けて。言の葉と共に手向けんとすれば、応えるは森か、空か。
「ジョニー、雨かしら?」
「本当かい!? でも、雨ってこんなにあたたかかったかなあ?」
 そう、ジョシーが錯覚するほどに細かに、広範囲に降り注ぐ輝き。それはリーヴァルディが、彼女のユーベルコード――『限定解放・血の教義(リミテッド・ブラッドドグマ)』により具現化した祈り。世界と自らと、二つに宿る力を一つにすればそれが生み出すはより大きな力。魂の慟哭を癒し呪いを消す“光の雨”が死霊を包み込むように覆えば、その苦悶の表情を和らげて。
「ああ、これこそが春の光ではありませんこと!!」
 ンフフフフ~とレムナントが歌いながら言うように、それは季節を忘れた世界に降る、あたたかな季節外れの春の雨。
「……ええ、とても、優しい」
 賛同するようにリリーがうなずけば、操る人形二人の顔共々、光に照らされて。その顔は普段と同じままに見えれば、わずかに口の端を上げて目の前の光景を見つめている。
「ジョニー……精霊さんたち、消えていくわ?」
「そうだねキャシー。きっと、用事があるんだよ」
 かくして奇怪な演奏をバックに人形は踊り、光の雨を浴びて死霊は徐々に光の粒へと姿を代え。なんて、奇妙な光景。されど、神秘的な光景と言えるかもしれない。
「……おやすみなさい」
 消えていく刹那、その内に逆巻く感情を思い出したのだろうか。霊たちに浮かぶ表情を見れば――確かに愛はすべてを救うものかと、リーヴァルディも二人も、ジョシーと共に見送って。

「ありがとう精霊さん! 私たち、幸せになるわ!!」
「時間があったらついてきてくださいね!!」

 その心からの言葉を確かなものにせんと、いざ一行は前に進む。霧が晴れたかのように、暗かった森の道が雨に照らされたならば、館はもうあと少し。
「敵だらけのヴァージンロードも、残すは領主のみですか」
「ンフフ~♪ このまま、盛り上がってまいりますわよー!」
 最後に残る障壁を確かめるようにリリーが言えば、レムナントの演奏もより苛烈に。
 そして、進む一行の後方を護るように立ちながらリーヴァルディは思う。
(なんて、幸せな見送りだっただろうか)
 ――どちらにとっても、と。そう言うとめずらしく。少しだけ、笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●冷静と情熱の館で
 広々とした館に、一切の生気はなく。
 ただ開け離れた道を進めばその先にあるのは広間と、玉座にも似た椅子がひとつ。
「随分と遅い到着だな」
 座したまま。呆れるように、嘲るようにして眼下の来客を見下ろす吸血鬼が一人。ああ、彼こそジョシーの村を支配する領主。氷の如きと例えられるその眼は、入り込んだ者共を選別するように動き――そして。
「……おい、税はどうした」
 見るからに荷物が少ないことに気づけば領主、広間の中央に立つジョシーに視線を戻す。そこに宿る殺気は、一般の感性であればすでに息もさせぬような重圧だろう。
 だが、相手はあのジョシーである。

「聞いてください領主様……私たち、結婚します!!」
「おいおいキャシー! 先にそっちから話しちゃうのかい!?」

 あちゃーと額に手を当てるジョニーと、キャーと恥ずかしそうに顔を手で覆うキャシー。
 そして、置いてけぼりの領主。

「は?」

 わかる。
 わかるけどと、そこで領主とジョシーの間に割って入るは猟兵たち。領主が立ち上がったなら、あとに残るのは戦いのみ。危険だから一度下がるよう二人に伝え……伝えてるけれどきっと効果はなく。
「そんな、領主様ならきっとわかってくださるわ!」
「待ってキャシー……これは、愛の試練だよ!!」
「! そう、そうなのね領主様!?」
 部屋を覆いつくさんばかりの殺気を前にしてなお、ジョシーはジョシー。
 彼らが決して臆さず愛を語るならば、それを守り切るのも猟兵の役目。

「己が立場を知らぬ愚か者どもめ……貴様らを呑んだらすぐに、村ごと呑みつくしてやろう!!」

 さあ、戦え猟兵たち!
 吸血鬼を倒し、愛を守る。その両方を果たす覚悟ができたなら――!
坂上・貞信
引き続きアドリブも共闘も是非に、
というとろこで。

いやーしかし、若さ故の一途さに愛し合う二人、
今日は良い物をたくさん見れる日だ。
この後メインイベントも控えていると
言うのだから豪華に過ぎるよ。

良い観客でありたい僕としては、
内容に見合った対価を払いたいところだねえ。
若い子にちょっと良いとこ見せたくなったし。

さてさて皆様御覧じろ。
ひとたび鍔をチキリと鳴らせば、
悪しき吸血鬼は切り裂かれ。

『早業』による剣の冴え、
この後の宴の前座として披露させて頂こう。

二人の愛のお代に足りるかは解らないけど……
もしもお釣りが出たならご祝儀って事で宜しく。

領主くんは、まあ、ご愁傷さま。
愛は勝つし、愛には勝てないんだろうねえ。


バラバ・バルディ
ほぉーっ!これだけ広い館であれば、村人達も猟兵らも呼び寄せ、盛大な結婚披露宴を催せような!じゃが、ちと色彩に欠けるかの?それに、美味い食事や式用の衣装も手配せねばならぬし……やれ忙しくなるのう!
【WIZ】
(同行した死霊たちに向かい)
さて、皆の衆!そういうわけじゃ、皆にもこれから式の準備のため忙しく働いてもらうことになろう。故に、ジョシーには早いとこ愛の試練を越えてもらわねば!
――愛し合う若人のため、希望のため、その力を貸してくれるかの?我らが友よ。

……おぉ、そうじゃ。ついでにあの面、一発殴ってやるがよいぞ!
(『呪詛』と『鼓舞』で支援。そして引き続きジョシーをからくり人形で『かばう』最優先です)


ルヴィリア・ダナード
あんなすっとんきょうな顔のヴァンパイア、貴重なんじゃない?
言いたいことはすごーく分かるよ!分かる分かる!
でもこれが素敵なヒトの力なのでツッコミは禁止です。
邪魔するなら容赦なく返り討ちよ!

状況を飲み込めてないうちに咎力封じでいろいろと縛り付けちゃおう。
ユーベルコードも封じれるようによーく狙って発射!ってね。
あらあら…手枷やら猿轡やら拘束ロープでぐるぐるなのもなかなかお似合いなのでは?

ちょいちょい熱々なお二人の無事を確かめホッと安心しつつ…
ジャッジメント・クルセイドなんていう名のここを照らす光なんてのも如何かな?
あちらさんの台詞によってはスポットライトみたいになっちゃうかもね。



●搬入(戦闘)開始!
「領主様! 私たちはあなたの心を溶かしに来たの!」
「そうです! 僕とキャシーを見て何か感じませんか!?」
 その問いに対し、無言のまま跳躍。有無を言わさず斬りつけんとする吸血鬼の周囲を、共に数多の刀剣が飛ぶ。
「散れ、それ以上は命じぬ」
 主の言葉と共に、ジョシーの姿をとらえたならば、紅き刃は館に再びの静寂を取り戻さんと舞う。狙うは、騒々しきその頭。その選択にはひとつの遊びもなく、命を終わらす一撃が首元を捉えんとしたその瞬間。
「分かる分かる!」
 突如として吸血鬼の視界に飛び出したアイアンメイデン――鋼鉄の拷問具『メリーさん』が身を挺すようにその剣閃を弾く。響く声は、ルヴィリア。言いたいことはすごーくわかるけど、それは野暮ってもんだよと。これこそ素敵なヒトの力なら、ツッコミは禁止です!
「邪魔するなら、容赦なく返り討ちよ!」
「貴様こそ……余計なことを!」
 こちらの台詞だと言わんばかりに、吸血鬼。その犬歯を剥き出しにしたままルヴィリアを見やれば、刃の対象を彼女へと変える。だが、
「ご愁傷様」
 その身にとって失って久しい感覚――殺気が彼を留めると共に、その一寸前を薙ぐ軍刀が視界に軌跡を残す。咄嗟に飛び退けば追うように斬撃。宙を斬りながらもそれは確かに、吸血鬼が居た場所を薙ぎながら徐々に追いつくようにして。
「知らないかな? 愛は勝つし、愛には勝てない」
 飄々とした言葉と共に、その手に九九式軍刀を鈍く輝かせながら貞信。これはまあ、イベントの参加費だと笑って。
「まあ、ジョニー? 私たち、いつのまにか勝っていたのね!?」
「キャシー! 僕にとっては人生で君と出会えたことが……勝利だよ!」
「……ジョニー!!」
 追いすがる太刀筋を振り払えないまま、やむを得ずその手に握りし剣で打ちあう吸血鬼。その、苦虫を噛み潰した表情とは対照的に、貞信は感じ入るようにジョシーの声に聞き入って。
「若さ故の一途さに愛し合う二人、今日は良い物をたくさん見れる日だ」
 感無量、といったように言葉を漏らせば、賛同するようにバラバ。
「そうじゃそうじゃ! こんな良い出し物、わしらも相応しき舞台を用意せねば面目が立たぬというもの!」
 これだけ広い館であれば、村人達も猟兵らも呼び寄せ、盛大な結婚披露宴を催せよう。ほぉーっ! と楽しそうに笑いながら、にこやかに立てる算段はすでに領主が消えた後の館のこと。規模に問題はないが、少々色彩に欠けるかどうか? それに食事と――あとは衣装も!
「やれ忙しくなるのう!」
「食料の分際で、勝手なことを!!」
 言葉とは裏腹に、多忙さを楽しむように語れば当然、現在の館の主は猛るように吠え。貞信の斬撃を力を込めて打ち払えば、片手に宿る昏き光に集うは蝙蝠。好きにさせんと呼び出したそれを、視界に入る全てのものへ向けて――!
「させないって、言ったよね!!」
 刹那、伸ばそうとした腕を手枷が捕らえる。伸びてきた方向を見れば、それが悪手。ルヴィリアによって放たれた咎力封じ――ロープが彼を絡めとり、叫ばんとした口に猿轡が飛び込む。
「見てジョニー! 領主様もああいう恰好をするのね?」
「笑っちゃだめだよキャシー!」
 唸る領主を前に、危ない危ないと額の汗を拭いつつ。聞こえてくるジョシーの声にいつのまにか安らぎを覚えるようにルヴィリア。言われてみればと、自分のしたことながら、吸血鬼の姿を見れば可笑しそうに笑って。
「いよーしっ! 今のうちじゃな皆の衆」
 めんどくさい相手の動きを封じたとなれば、この機を逃すまいとバルバは呼びかける。皆にもこれから式の準備のため忙しく働いてもらうことになろう、と。皆とは? それはもちろん――消えず、かの言葉に従いついてきてくれた霊たちに向けて懇々と! 少しでも早く、ジョシーに愛の試練を越えてもらうため!

「愛し合う若人のため、希望のため……その力を貸してくれるかの? 我らが『友』よ!」

 それは、すでに敵ではなく友となった相手への言葉。
「では、僕の部下たちにも手伝わせましょう」
 一度、軍刀を納めれば帽子をかぶり直し。頷くようにして貞信も部下に令を出す。死霊同士協力せよと伝えれば、あとは上官と部下の関係。粛々と動き出す数々の死霊を見送れば、若い子にちょっと良いとこ見せたくなったしと。
「さてさて皆様御覧じろ」
 先の少年を思うよう、縛られた吸血鬼を見やればゆっくりと前傾の姿勢をとって。ひとたび鍔をチキリと鳴らしたならば――!
「……ングゥッ!?」
 ああ、悪しき吸血鬼は切り裂かれ!
 其れは縮地か魔法か。自称そこそこできる貞信の、宴の前座代わりにと剣刃一閃。果たして技の冴えは『そこそこ』『前座』にとどまるものかどうか。
 その答えが、拘束ごと体を切り裂かれ、膝をつきそうになる吸血鬼の顔に浮かべば――その顔ついでに殴ってやるがいいぞと、バラバの号令。いざタコ殴りにせんと死霊が殺到し、広間の中央はまるでお祭りの如く大盛況。
「すごいわジョニー! 領主様ったらどういうトリックかしら!?」
「それにキャシー、領主様ったら精霊さんたちから大人気じゃないか!!」
 斬られちゃったのかと思ったと笑うキャシーに、死霊が押し寄せる光景を前に領主にカリスマを感じるジョニー。
 じゃあこれも如何かなとルヴィリア。吸血鬼に指先を向ければやがて放たれる、ジャッジメント・クルセイド――天からの光。かの光はいかなる暗中にあれど滅ぼすべき邪悪に降り注ぐ光なら、この世界でもそれは同様にかの吸血鬼の肌を焦がす。
「安心してジョニー。あなたは私から大人気よ!!」
 ただし。ただし今日、今だけは。天の光に意思があるかのように一部、吸血鬼が纏う鎧に反射して――単なる照明として、ジョシーの立つ場所を照らし出す。それは悪しきを焼く光ではなく、正しきを助く光。まるで、主役を映し出すスポットライト。
「き、貴様ら……!」
 拘束が解け、自らの傷を急速に修復しながらかの敵はお約束通りに吠える。調子に乗るな、と。
 されど、調子に乗らずして何が愛か。バラバは照らされた二人をかばうよう人形を並べながら思う。これは悲劇でなく喜劇。喜劇にすると我等が決めたなら、それはこっちの台詞だと。

「僕らの頑張りが、二人の愛のお代に足りるかは解らないけど……」

 もしもお釣りが出たならご祝儀って事で宜しく。不良軍人が言えば、猟兵たちはそうだそうだとその名案に乗るようにして、前へ。

 ――吸血鬼、何するものぞ!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エーカ・ライスフェルト
wiz
ジョシーにはこう言うわ
「これは専門用語でツンデレと言うの」
「最高の祝福を贈るため、心を鬼にして冷たい態度をとる、恥ずかしがり屋さんの態度よ」
「だから領主様がちょっと暴れても温かい目で見てあげてね」

【エレクトロレギオン】で呼び出した【機械兵器】に対し、左右から回り込んで領主を襲うよう命じる
領主に【機械兵器】の破壊に時間を割かせることで【時間稼ぎ】を狙うわ
「その調子。ジョシーより目立つのよ」(囮頑張って)
「これを凌いだ程度で勝ち誇られても…困惑しちゃうわ」(領主に対しゴミを見る目を向ける)

命じた後は、成否を確認する前に【属性攻撃】に専念
祝いの花火のつもりで派手な発光をさせながら火属性矢を放つ


トリテレイア・ゼロナイン
お二人の愛にあてられて思考回路がおかしくなったようです

とある世界にこのような言葉があります

「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて地獄へ落ちろ」

少々交通事故気味ではありますが、お二方の愛の邪魔をする領主様には骸の海へ帰って頂きましょう

ジョシー様達を「手をつないで」引っ張り上げ「騎乗」する馬の背に乗せて我が身で「かばい」ます
そのままお二人の愛の言葉と一緒に「怪力」を用いたランスチャージ&馬の「踏みつけ」!

蝙蝠?飛ぶ刀剣?誓約書? 全て「見切り」「武器受け」「盾受け」でお二人には傷一つ許しません
宣告されたルールなどすべて無視、お二人の愛の守護騎士となった私の誓い(UC)でねじ伏せて御覧に入れましょう


星羅・羽織
アドリブ、共闘、なんでも大歓迎!
自由に、いじりまわしてOK!

ジョシーも、キャシーも、クレイジー。
でも、それもまた、いい。
私の仕事は、二人を守ること。
大丈夫。守りきって、素敵な結婚式を、あげさせてあげる。

今回もまずは、二人を、邪魔にならない位置まで、下げるところから。
勢いがあるのは、いいけど、本当に殺されたら、意味がない。
後ろで、私たちを、応援してて。

そして、領主。
税が、払えない程度で、殺してたら、領民がいなくなる。
領民が、いなくなると、税収もなくなるということ、理解してる?

今回は、火力重視で、いく。
エレメンタル・ファンタジアを、活用。
刀剣でも、蝙蝠でも、焼き尽くす炎の渦を、ぶちこむ。


リリー・ベネット
アントワネット、フランソワーズ、行きますよ。
皆様この後のご予定もあるようですし、
早く倒してしまいましょう。
せっかくの晴れ舞台に邪魔者は要りませんからね。

ヴァンパイアの攻撃はアントワネットで誘導、
こちらからの攻撃はフランソワーズを中心に行います。
“空色の恋心”……フランソワーズの思いの丈をぶつけさせて頂きます。
どれ程の思いかは、威力を見ればわかりますよね。……存外、思いの強い子なので。
受け取って下さい。


……私にもいつか、あのお二人のような気持ちがわかる日がくるのでしょうか。



●怒り届かねば只の駄々なら
「でもジョニー……領主様、実は怒っているんじゃないかしら?」
「実はキャシー……僕も同じことを心配していたんだ」
 今更。
 今更だけれど、ここで二人の意気を削ぐわけにはいかない。
「あれは専門用語でツンデレと言うの」
 吸血鬼の叫ぶ言葉を遮るようにエーカ。本当はあなたたち二人を祝福したいけれど、それだと試練がうまくいかないから仕方なくと、息を吐くように幻想を伝えればジョシーの表情も幾分和らいだ。
 しかし実際のところ、かの敵の殺気は刻一刻と高まっている。吸血鬼とジョシーの距離が依然として近いと思える距離ならば、安全を確保すべくまずは距離をとらないとと、他の猟兵が吸血鬼を抑える隙に羽織がジョシーに近づく。
「試練は危険だから」
 ここまで来て、死んじゃったら意味がないと。
「素敵な結婚式の準備、頑張るから」
 だから、もう少し下がって。安全な場所で、自分たちを応援してほしいと伝える
「まあ、あなたたちはそこまで……!?」
「すると、さっきから領主様と君たちがやっているのは……出し物の練習かい!?」
 不思議な力で領主にロープやら光やらを浴びせる猟兵と、斬られど斬られど何事もなく立ち上がる領主の姿に、流石のジョシーも違和感を覚えていたものの――それが式で披露されるパフォーマンスのための予行演習だと解釈すればジョシー、ああ流石のジョシー。
「わかったよ! 領主様と、君たちの練習の邪魔はしない!」
「すごいわ領主様。私たちに試練を課しつつ、自らの鍛錬も行うなんて……!」
 ここまでくるともう才能なんじゃないかジョシー。でも、そのひたむきな前向きさこそが、この状況を、この世界を生きていく鍵になるならば。
「やはり……私は、その可能性を守らずにはいられない」
 いつもとはやや違った様子で、兜の奥――トリテレイアの目が光る。いつもの鋭い緑光は、二人に当てられたように、やや暖色を帯びて。有無を言わさずにジョシーの手を握り、共につながる鎖となれば、さあこの愛馬に騎乗せよご両名!
「我を見下ろすか、無礼者が!」
 悪逆を誇りとする己を、聖者のように例えられ。食料としか見ていない相手に見下ろされる立場となれば、最大の恥辱とばかりに吸血鬼は己の胸を爪で裂く。やがて、血の滴る指が宙に描くは紅き文字。
「汝、見下ろすことを禁ず……!」
 呪われし血の誓約を課さんと、かの者が口の端を釣り上げて笑みを浮かべれば、ジョシーをかばうようにトリテレイアの構えた大盾がそれを一身に受け止める。さあ、跪けというその命令を一笑に付すよう、気合と共に突き出された盾には彼の、この場に集う猟兵たちの誓いが宿っているならば――!
「そんなもの、我らの誓いでねじ伏せる……!」
 そう。今ここで、ジョシーがはしゃいでいられることこそ、あえて彼らが選択した困難なら――『機械人形は守護騎士たらんと希う(オース・オブ・マシンナイツ)』! トリテレイアの身体は、叫びに応えるよう瞬時にその強度を増して、かの誓約を退けた。
「貴様……ッ!?」
 盾が邪魔で良く見えないと騒ぐジョシーには触れず、己の令に従わぬ猟兵たちと対峙すれば、その顔に浮かぶは焦燥の入り混じる憤怒。その存在は決して認められぬと歯ぎしりを立てれば、疾く消えよと刃を構え。
「疾く……。ええ、早く済ませましょう」
 アントワネット、フランソワーズ。そう呼ぶ声が聞こえれば、そこに躍り出るフランス人形。くるりと回って剣を弾き、ふわりと跳んで床を砕く。
「皆様この後のご予定もあるようですし――」
 早く倒してしまいましょう?
 主の命ならそのように。友達探しはまた今度と、リリーの運指に合わせてアントワネットが吸血鬼の目を引くように動けば、必殺の一撃を繰り出すはフランソワーズ。
「こざかしく数に頼るか」
 だが、数ならこちらとて負けはせぬ。仕切り直しと間合いをとれば、今再びその手中に呼び出さんとするは闇の群れ。否、闇色を湛える影の蝙蝠。
「すごい! 今見たジョニー!? あれも領主様の出し物かしら!」
「見たよキャシー! 蝙蝠が消えちゃったね!!」
 放たれるが同時、部屋の色に溶けるように消えれば、その狙いは――!
「だったら……こっちに引き付けるわ!」
 その声はエーカ。指を鳴らせば虚空よりその姿を現す無数の機械兵器――レッツ、エレクトロレギオン! それらは彼女の指示を受けるより早く、左右から回り込んで吸血鬼に群れを成して襲い掛かる。
「ならば私たちも、アントワネット?」
 わかりましたね、と囁けば。頷くようにしてかの人形は踊る。相手が数に対して数なら、こちらはそれ以上の数。今ここでの役目は、あの厄介な蝙蝠を引き付けることと咄嗟に理解したのなら。リリーは吸血鬼に真正面から接近するよう、アントワネットを操って。
 かくして、五感を共有している以上、吸血鬼の身を守るようにして蝙蝠。左右から近づく機械兵器にぶつかり、短い悲鳴と爆発、そしてまた悲鳴に爆発。更に前方より接近する人形に翻弄されて、地面にぶつかりまた悲鳴が聞こえれば、蝙蝠は徐々にその姿を表しては消滅を繰り返すようにして。
「その調子。ジョシーより目立つのよ!」
「フランソワーズ、思いの丈を伝える準備はできていますか?」
 声音はそれぞれ違えど、狙いは共にひとつ。その通りに事が進めば、待ち構えるは必殺の一撃。
「原点にして、純粋な、破壊の力……」
 耐えられる? と呟く少女。その体躯に反比例するように強大な熱量が集えば、それは羽織の編み出した魔力の奔流――エレメンタル・ファンタジア。両手の間に高密度の火球を形成すれば、手毬のように放り投げられたそれは閃光と共に渦巻き、蝙蝠ごと吸血鬼を呑まんと疾走する。
「燃えちゃうよキャシー!」
「ジョニー? 大丈夫よ、あれもきっと出し物だもの」
 いやいやいや、あれは披露宴の前に修繕しないとダメだわと館の心配をするように他の猟兵が呟く。蝙蝠はおろか、衣服も、刀剣も。吸血鬼の全てを炎が包めば、かの命脈は食らいつくしたと嵐は消えて。後に残る燃えがらだけが視界に残れば、これには羽織も勝利を確信する。
「やった」
 やったか!?
「今のは、些か危機感を覚えたぞ」
 よし! やってない!!
「ほら見てジョニー! さすがは領主様だわ!!」
「見てるよキャシー!! やっぱり、領主様ってすごいや!!」
 燃えがらだったものが起き上がり、集う煤が足元から再び人型を形成すれば再び姿を現したのは吸血鬼。伝説にたがわぬ再生力を前に、ジョシーはどちらの味方か、その復活を祝うように声を上げて。
「……貴様ら、何故我の邪魔をする」
 いざ、他に邪魔する者もなく、再度広間の中央で向き合うは吸血鬼と猟兵たち。その体を治癒するまでの戯れか、吸血鬼が口を開けば飛び出してきたのは問いかけの言葉。
「税が、払えない程度で、殺してたら、領民がいなくなる。領民が、いなくなると、税収もなくなるということ、理解してる?」
 さっきのはまだ本気じゃないからと、口をへの字にしたまま羽織。
「そんなもの、他から攫ってくればいい。もっとマシなやつらをな」
 つまらなそうに答えれば、そんなことかと吸血鬼。所詮、彼にとって領民はただの道具でしかないと。世界のどこにでもあり、放っておけば増える者たちならば、替えのきく道具であると不機嫌そうに言葉を続けて。
「ねえジョニー? もしかして……やっぱり領主様、怒っているんじゃないかしら?」
「やっぱりそうかなキャシー? 僕もそんな気がしていて……」
「ノーノ―ノー。あれは最高の祝福を贈るため、心を鬼にして冷たい態度をとる、恥ずかしがり屋さんの態度よ」
 言っている言葉の意味はイマイチわからなくとも、険悪な雰囲気が伝わりかけたその瞬間、エーカのフォローが光る。
「だから領主様がちょっと暴れても温かい目で見てあげてね」
 あんな奴でも、この人たちにとっては領主だと思えば、この場限りはその夢を壊さぬようにと。
「もし、怒ったとしても私たちがいます」
 だから、ご心配なくとトリテレイア。繋いだ手はまだそのままに。それがジョシーと猟兵たちとの絆であると信じれば、改めて滅ぼすべき邪悪に向けて大盾を構え。
「それに、せっかくの晴れ舞台です」
 邪魔者のことは気にするだけ無駄です、とジョシーに聞こえないように呟けば、晴れ舞台には不要たる邪魔者をリリーの双眸が見つめ。手と足と、首とを見れど、材料とするにはあまりに不足。人形のお友達にも値しないなら、ただ片づけるのみ。
「貴様らに、一つでも勝機があると思っているのか?」
 だとすればおめでたいことだ。決意と共に並ぶ猟兵たちに向かって、戯れは終わったと吸血鬼が笑う。先の炎はなんだと。あれで殺せぬ以上、我を滅することはできぬと額を抑え高らかに笑ったなら――最期。

「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄へ落ちろ」

 ジョシーを乗せたまま、トリテレイアが手綱を握れば愛馬が跳ぶ。ロシナンテⅡの機械的な嘶きは、彼の魂を昂らせるように。その先に立つ吸血鬼へとぶつかるように騎士槍を突き出せば、愛馬の前脚はかの胴を叩き潰さんと主に息を合わせる。
「その程度!」
 一直線に伸びる攻撃は、かの身体能力であれば避けるのも用意であろう。しかし、相手は一人にあらず。
「彼らほどではありませんが、この子にも思いがありまして」
 初撃を避けた吸血鬼に視界の外から飛び込んだのは、フランソワーズ。光なき人形の瞳が開けば、そこに映り込むは思いを届ける相手の姿。しっかりと見つけたならば――もう逃がさない。鋭く、重い一撃が吸血鬼の脇腹に沈み込めばそのまま床に叩きつけるように。
「これは、フランソワーズのほんの気持ちです」
 存外思いの強い子なのでとリリーは言うが、果たしてどれほどの気持ちだったことか。フロアを割るように振動が伝われば、駆け付けたロシナンテⅡによるお替りが叩き込まれる。
「先程のは、とある世界の言葉です」
「……ガ、ハァッ!?」
 一瞬で痛覚を飽和する衝撃を受けたならば、常人であれば絶命するところ、腕を伸ばし上半身を起こしてくるあたりは流石に吸血鬼。
 だが、さしもの吸血鬼も、目に入って来た光景には呆れた。

「さっきは、本気じゃないって言った」
「遊びを凌いだ程度で勝ち誇られても……困惑しちゃうわ」

 今一度、羽織の手に練られし火球は、先ほどより規模と密度を上げて。まるで、煉獄をその手に再現したかのように。自らの表情を照らし上げれば、彼女はにやりと微笑みを浮かべる。今度こそ、耐えてみて? と。
 併せて、エーカ。周囲に浮かべる火球を天高く掲げれば、羽織の投球に合わせるようにして放つ。祝いの花火替わりだと笑えば、いっそ盛大にと次々と繰り出して。
「…………ッッッ!!」
 吸血鬼に被さるようにして、灼熱が通り過ぎる。羽織による、今度こそ正真正銘、全力全開のエレメンタル・ファンタジア! 領民は替えもきかなければ、領主の道具でもない。その怒りと、さっき馬鹿にされた怒りが高まれば、生み出される炎の嵐は吸血鬼の生命力を奪い取っていく。
「すごいすごい! ジョニー、まるで部屋の中が流れ星だらけよ!?」
「キャシー。地上にある星は……君だけだよ!!」
 ああ、愛が跳ねる。
「素敵な結婚式、約束したから」
「守ると、誓いましたから」
 だったら、守らなきゃと。その意思を共にする猟兵一同、決着に向けて動くは今!

 ――私にもいつか、あのお二人のような気持ちがわかる日がくるのでしょうか。

 その陣列にあってまだ不思議そうに、リリーは思う。村と命を守るため、それはわかるけれど、実のところ愛はよくわからないと。それでも。
(……楽しそうですね)
 ジョシーを見てそう思えれば不思議と。
 彼女の表情は、その『いつか』を待ち望むように見えた――気がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

キトリ・フローエ
……そう、これは愛の試練よ
あなた達の愛が真実のものであるか、今まさに試されているの
……、…うん、きっとそうよね?
――さあジョニー、キャシー!
あなた達の真実の愛を、これでもかというくらい、めいっぱい、領主様に見せてあげて!
ついでにあたし達のことも応援してくれたらとっても嬉しい!
二人の愛の力があれば、領主様の氷のような心もきっと、優しく溶けてゆくはずよ!

二人が戦闘に巻き込まれないかは常に気を配りつつ
あたしはタイミングを見計らって夢幻の花吹雪を放つわ
領主の目を眩ませるこの花びらも、二人の愛の力があればこそ
蝙蝠だって花弁で覆って祝福の光に変えてあげる
傷ついた仲間達にはシンフォニック・キュアを歌うわ!


終夜・嵐吾
領主、なれ、わかっとらん!
こういう時は笑顔で懐から祝儀じゃろ。いやそんな顔色のやつからもろてもなとも思うが。
じゃが空気が読めんのはいただけん、ここで倒させてもらおう!
ジョシー、さぁそこで語るが良い、紡ぐが良い!
なれらの愛はきっと届く――わしらが守ってみせようぞ。

物分かりの悪い領主は民に嫌われるぞ。まぁ、ここで倒すんじゃが。
狐火で燃え上がれ愛の焔!ここでキャンドルでもあればと思うがない。
しかしその変わりはある。ヴァンパイア、なれがそれになればよい。
ついでに蝙蝠も燃え上がれ。

今まで見守ってきてジョシーに妙な愛着が…
なんじゃろうなこの、生ぬるい、気持ち……
…はっ、もしや、もしや、これが……父性……!


リーヴァルディ・カーライル
…ん。私は吸血鬼を狩るだけ
何も変わらない。そのはずなんだけど…
今は少しだけ、あの二人のおかげで心が弾んでいる…
気を引き締めないといけないのに、悪い気がしないわ

…事前に改造した防具の呪詛を変更
敵の第六感に訴えて存在感を強化し誘惑する魔力を付与
前に出て二人に攻撃がいかないよう奴の目を引き付け
攻撃を【吸血鬼狩りの業】で見切り、回避に専念

…来なさい、吸血鬼。お前を狩る者はここにいる

敵が隙を晒したら、脚の怪力を瞬発力に変えて懐に潜り
生命力を吸収する大鎌を突き刺した後、
力を溜めた大鎌をなぎ払って傷口を抉る2回攻撃を行う

…失礼。結婚式前に不釣り合いな攻撃だった
まぁ、死ねば消えて無くなるから問題ない…かな?


レムナント・ノア
安心なさいジョシー!
領主でしたら皆さんが説得してくださいますわ!
わたくしたちはうしろで応援しますわよ。ンフフフ~♪

アッイヤッ! わたくしのバイオリンの音色が美しいばっかりに
目が合いました!!

アワ、アワワ……み、認めますわ。わたくしの力不足です。
ですから、どうか助けてくださいな――一分だけ“差し上げます”から。

人格変更。【先制攻撃】【串刺し】
ユーベルコード、「復讐代行者」

『一分とは、老人使いの荒いお嬢さんだ。では手短に自己紹介を』
『趣味はナンプレと道に落ちている片手袋の蒐集。
袋とじは開けずに取って置くタイプ。名乗るほどの名はありません』

『ああ、それからもう一つ』

『老いぼれの咎人殺しでございます』



●永き支配の果てに
 焼ける、焼ける。焦げた匂いが漂う。それは、百年より遥か昔に嗅いだ匂い。
「ふざけるな……」
 知っている。この匂いを知っている。これは、自らが焼かれる匂いだ。
「ふざけるなよこの血袋共……ッ!」
 この世に蘇るより前の記憶が鮮明に浮かび上がれば、吸血鬼の脳裏に再生されるのは、ただの一度の、敗北。
「許さん、何もかも許さん! 貴様も、貴様もッ!」
 幾度と繰り返す再生によりその治癒の速度は落ちている。火傷が消えきらぬその顔から、既に知性は消えて。湧き上がる怒りにすべてを委ねるかのように、目を見開いてかの敵が叫べば、広間に響くは憎悪の音。

 その音を聞いて、嵐吾は顔を曇らせる。それは恐怖によるものでもなければ、もちろん絶望によるものでもなく。ただただ、哀しいと。
「領主、なれ、わかっとらん!」
 何故祝えぬ。こういう時は笑顔で懐から祝儀じゃろ、と。おおよそ、吸血鬼の思考には存在しえない正解を諭しながら、彼はジョシーのそばに歩み寄り。二人に向けられた嵐吾の柔らかな笑みは、道中とやはりなんらかわらない。その笑顔こそ、言葉より先に雄弁に決意を語りだすならば、隣を飛ぶキトリも同じように。
「さあジョニー、キャシー!」
「二人とも! さぁそこで語るが良い、紡ぐが良い!」
「あなた達の真実の愛を、これでもかというくらい、めいっぱい、領主様に見せてあげて!」
 なれらの愛はきっと届く。わしらが――あたしたちが、守ってみせるから!!
「わかったわ! ジョニー!!」
「OKキャシー!! 僕らの愛の力で、領主様の心を溶かすんだ!!」
 二人が叫べば二人が応え。ああ、その愛の力があれば、領主様の氷のような心もきっと、優しく溶けてゆくはずとキトリは確信する。いや、正直まだ、愛の試練がこういうものかどうかはわからないけれど……それでも。それでも――なんだか、こういう試練もあっていいように思えて。
「ついでにあたし達のことも応援してくれたらとっても嬉しい!」
 だから、これは心からのお願い。
「わしも……なんじゃろうなこの、生ぬるい……」
 ジョシーへと沸いた愛着を確かめるように嵐吾も、心からの気持ちを。

「……はっ、もしや、もしや、これが……父性……!?」

「それ以上戯言をほざくなッ!!」
 黙れ、黙れ黙れ黙れ。ジョシーの声、それに共鳴する猟兵の声こそが吸血鬼にとってのノイズであるならば、何としても消そうと。かの音より大きい音を――かの音を潰す音を! 絶叫に等しい命令と共に、使命を果たさんと数多の刀剣が舞う。その乱暴な一振り一振りが、ジョシーにとって必殺の一撃であり愛の終わりを告げるもの。
「安心なさいジョシー!」
 だが、より甲高い叫びに、その刃は音狩る対象を見失う。
「わたくしたちはうしろで応援しますわよ。ンフフフ~♪」
 潰さねばならぬ音が増え、増幅し拡散する。それは、レムナントと彼によるバイオリン。演奏というより、聴覚の暴力とも思えるものを広間に叩きつけながら。されど、それが歌うものを理解しているジョシーと猟兵たちにとっては行進曲。
「キャー! みんな頑張ってー! 領主様も負けないでー!!」
「キャシー! 僕のことは応援してくれないのかい!?」
 吸血鬼にとっての雑音を増やし、かき混ぜるようにすれば刃の一団は――!
「悪い気がしないわ」
 ジョシーに近いものから、黒い旋風に巻き込まれるようにして地に落ち、消える。其は大鎌、グリムリーパー――過去を刻むもの。リーヴァルディが放った一閃が宙を覆う刀剣の雨を払えば、地を蹴って二人から距離をとるように跳躍。瞬間、輝いたのは彼女の黎明礼装に刻まれし呪式。
(私は吸血鬼を狩るだけ。何も変わらない)
 そう自身に言い聞かせるようにするも、閉じた口元はいつもより柔らかく。草原を行くように広間を駆ければ、その姿は敵に何をか魅せん。
 リーヴァルディの姿に惹かれるよう他の刀身の向きが変われば、その主も同様に彼女の姿を認め。
「――貴様、ダンピールか」
 果たして、その呟きにどれほどの含みがあったか。しかし、元より吸血鬼の言葉を理解しようなどとは考えてはおらず、吸血鬼との会話にさしたる意味もないと断じたならば。
「……来なさい、吸血鬼。お前を狩る者はここにいる」
 その血走った眼を引き付けるべく、紫の瞳が覗くは未来。垣間見た光景をなぞるように鎌を振るえば刃を弾き、転がるよう屈めば斬撃は頭上を通り抜け。其は、彼女の一族に代々伝わる秘奥――『吸血鬼狩りの業(カーライル)』。未来予知にも等しい予想に基づく動作であるなら、勝機を見出すため、二人のため、いかなる攻撃をも避け続けんと。
「キャシー! 僕たちもあのダンス、あとで練習してみないかい?」
「すごくむずかしそうよジョニー。でも、踊る相手のことをわかってるみたいで素敵ね!」
 ジョシーの歓声を浴びながら、怒気を孕む吸血鬼の猛攻をいなし、リーヴァルディは踊る。
 しかし。
「この……混ざり物めッ!!」
 攻撃を予想できれど、対応の可否は彼女の身体能力にゆだねられる。前に出て攻撃を集めんとすれば、その負担は蓄積しつつ、導かれ続ける予想は徐々に彼女に傷を負わせ。純血の力を誇示するように床を踏み込めば、吸血鬼の爪は喉笛を狙い伸びる!

「花よ、舞い踊れ!!」

 そこに咲くは、鮮血の花ならず祝福の花。
 そこに咲くは、キトリの誓い――『夢幻の花吹雪(フルール・ド・リュミエール)』!
 一撃を加えんとした吸血鬼の視界を光の花弁が覆えば、眩きものに目を焼かれたように苦悶の声を上げ。伸ばした手さえも顔を覆うために使われたなら、かの予想は妖精の導きにより覆された。
 この花弁の輝きこそ、二人の愛の力によるもの。その、二人の愛を祝う場で仲間の誰一人として、血を流させはしない!
「大丈夫!?」
 キトリが飛べば、紡がれる歌声は彼女の細かな傷を癒し。
「オホホ! ナイスでしてよ妖精さん!」
 祝辞と共に後方より繰り出されるレムナントの演奏が、今一度、応援歌のように響き渡る。
「……ありがとう」
 短い礼と共に、リーヴァルディ。飛び退いた先から、向かって返すように踏み込み。先の意趣返しと地を鳴らせば、脚の怪力を瞬発力に変えて。
(吸血鬼相手に、後れをとりそうになるなんて……)
 気を緩めすぎただろうか、と自省するもそれはすぐに中断。手に握りし大鎌を遠心力と共に振りぬけば、その伸びた切っ先は抵抗をおぼえず。吸血鬼の体を貫通すれば、そのままの勢いで彼方の壁へと放り投げ、叩きつける!
「……ッガアアァァ!!」
「悪い気はしないわ」
 その悲鳴にも、感情は動かず。されど自身が、二人のおかげで心弾んでいることを自覚すれば、自然と二度目の言葉が口から漏れ出して。
「悪いどころか、わしは上々じゃのう!」
 言葉をつなげるように嵐吾。いい気分であるならばその耳をぴょこぴょこと動かし、盛大に祝おうとフォックスファイア――狐火を漂わす。さあ、祭りであるなら灯せ灯せ! 祝いの席なら灯せ灯せ!
「キャンドルでもあればよいのじゃが……この広間のものではあまりに不足」
 されど、代わりは目の前に。ちょうどよくさっきも燃えていたならば、何度燃えても同じこと。灯すべく狐火が向かう先は、壁に倒れ掛かる吸血鬼。さあ、燃え上がれ愛の焔!
「ダンスは終わって、今度は何かしらジョニー?」
「僕もわからないけれど、あれは……」
「これは心の氷を溶かす儀式じゃな。領主にも、試練を乗り越えてもらわねばならぬ」
 口先三寸。なるほど、だから炎を使っているのね! というジョシーの好意的解釈を得られたなら、あとは繰り返し燃やすだけ。心が溶けるか体が燃えるか、さあどちらが早いか。
「や、優しく溶けていくはずよ!!」
 その、割かしショッキングな光景を前に、先ほどの確信が間違いではないとキトリは自身に言い聞かせるよう羽根をぱたぱたさせながらフォローを入れる。
 それからどれだけたっただろう。やがて、その様子を見つめていたレムナントが思い出したかのように、自らの演奏は止めることなく静止の合図。
「これ以上火をつけると、館が大火事になってしまいませんこと!?」
「まあ大変! ジョニー、私たちの愛の炎が強すぎたのかしら?」
「領主様の心を溶かすどころか……これじゃあ蒸発させちゃったかもしれないね!」
 能天気なジョシーの会話と、慌てるようにして演奏のテンポを早くするレムナントを後目に。かの炎の中心が、もう動かないことを確認すれば、嵐吾は炎を消して。
 もう安心と、されど気を付けないととレムナントがじりじり近づいて確かめれば、そこに残るは灰ばかり。
「皆さん知っていまして? こういった壁の煤汚れには、重曹なるものが……」
「上!」
 リーヴァルディの声。
 声に従い見上げれば、それは宙に浮いて。宙に舞った燃え滓が次々に集えば、吸血鬼の上半身を形成していく。その顔は苦悶の表情のままに、レムナントを見下ろして。
「血を……血を寄越せ……!!」
 再生するための源が付きかけているならば、そのリソースは上半身にのみ注がれ。今再び、元の姿を手に入れんとすれば不本意ながら――本当に不本意ながら、手近なレムナントへとその手は伸びる。
「アッイヤッ! わたくしのバイオリンの音色が美しいばっかりに!?」
「それは関係ないと思うの!」
 それよりもと、キトリが今一度夢幻の花吹雪を呼び出す。しかし、舞い上がった残りの燃え滓が全て蝙蝠と化せば、その光を阻むようにして周囲を取り囲み。
「しぶとい、しぶといのう領主よ」
 大体、血を吸うなら他に選択肢があるじゃろうと嵐吾も指摘しつつ。だが、かの群れが壁となりその狐火をも止めれば、レムナントへ伸びる手を阻むことはできず。
「アワ、アワワ……み、認めますわ。わたくしの力不足です」
 その眼前の手がもたらす未来に絶望を感じるように、腰を抜かしてへたり込んでしまったのならば――彼が漏らした言葉は、『彼自身』の降参宣言。

「ですから、どうか助けてくださいな――一分だけ“差し上げます”から」

 それだけを何とか、絞り出すようにして言い終われば、糸が切れたように彼は倒れる。まるで、恐怖に気を失ったか、全てをあきらめたかのように。
 だが果たして、その言葉の意味がどれだけの相手に伝わったことだろう? 間髪おかずに意識を取り戻したように立ち上がったなら、ヒントにはなっただろうか。
「……貴様、一体」
 いいや、わからない。わかるはずもない。その不気味さが、吸血鬼を躊躇わせる。
『一分とは、老人使いの荒いお嬢さんだ。では手短に自己紹介を』
 その、先ほどまでの甲高い叫び声とは一転した落ち着いた声と、老人を自称する口調。まるで別人のように振舞えば、その声は不気味なほど静かに広間へ木霊して。
『趣味はナンプレと道に落ちている片手袋の蒐集。袋とじは開けずに取って置くタイプ』
 一通り言いたいことを言えば、名乗るほどの名はありませんと、彼は結んだ。
 そう、自身は『レムナントではない』と彼は言った。
 ならば、ここにいる彼は――?
『ああ、それからもう一つ』

『老いぼれの咎人殺しでございます』

 会釈と同時に虚空より飛来するは鋭き槍。呆気にとられたような吸血鬼をいともたやすく貫けば、所要時間はちょうど一分! かの者は『復讐代行者(フラグメント・ペレグリン)』――レムナントの別人格ならば、限られた時間の中で依頼を果たさんと。
「……アッレェ!? 一分あげたのにまだ終わっていませんの!?」
 いつの間にか戻ったレムナントが怯えれば、キトリが励まし、嵐吾は笑い。光と炎――と化した蝙蝠の中をかき分けてリーヴァルディが疾走する。
「ん、十分」
 吸血鬼狩りにとって、それは慣れたもの。力と共に祈りを込めて、振るわれた大鎌はその傷口をえぐり――命脈を絶つ! 灰は灰に。塵は塵に!
「お……のれ……、お、の……」
 その最期は既に言葉にならず。幾度となく焼かれ、幾度となく破れ、ジョシーと猟兵を前にすべての力を失えば、眷属共々灰となり朽ちるが定め。それが、それこそが、愛を知らぬまま永き支配を続けた者の末路。その手が、その牙が啜り続けた命を解放するように一瞬、空気が震えれば――指輪が床に落ちる音と共に、かの支配者はこの世から姿を消した。
 
●かくて試練の幕は降り
「愛の試練は、これで合格ね!」
「うぅ……よかった、よかったのう……」
 おじいちゃん、おじいちゃんちょっと。喜びもつかの間、感じ入っている嵐吾を呼び戻さんと、せわしなくキトリが周囲を飛び回る。
「領主様、消えちゃったわ!?」
「すごい、すごいよキャシー! きっと式ではみんな大興奮だよ!!」
 かの死闘も、すべて試練と式の余興練習と捉えているならばジョシー、早く村のみんなにも見せてあげたいと無邪気に抱き合いながら。
「みなさーん! ほら! 本番はここからでしてよ!?」
「私は……どうしようかな」
 いよいよ結婚式ですわとレムナントが張り切れば、私の仕事は終わったけれどとリーヴァルディは呪式を解除し装備を仕舞い。

 村を苦しめる領主――吸血鬼との戦いが終わったならば、猟兵にとっての本来の仕事はここでおしまい。めでたしめでたし! ……だけれども。

「皆さん、本当にありがとう。キャシーと僕だけだったら今頃……」
「ジョニー! 私お話で聞いたあれをやってみたいわ! お花を投げるのよ!!」
「よしやろうよキャシー! 皆さんも、式には是非参加してくださいね!!」
 
 天真爛漫な笑顔で、猟兵たちはジョシーから式に誘われている。
 それに、これから式の準備を始めるならば、手伝いなどで人手は多いほうがいいかもしれない。
 ――さて、どうしたものか。
 猟兵たちは、幸せな悩みに頭を捻ることにした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『ささやかな華やぎ』

POW   :    料理をいただく

SPD   :    会場作りを手伝う

WIZ   :    様子に想いを馳せる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●花も集えば花畑
 村を脅かす領主は消えて。
 なんでも、披露宴の出し物らしいと噂が流れれば、いやいやジョシーの愛を目の当たりにして愛を探す旅に出たらしいと他の村人。

 その真実はどうであれ、主の消えた館へと、村人たちが次々に集まってくる。
 それは、二人の華々しい門出を祝うため。
 そして、まだ生きることができる喜びと、生きる楽しさを実感するため。
 会場は徐々に賑やかになると共に、かつての活気を思い出したかのように各所から笑い声があふれ出す。

 さて、猟兵の皆さんはどうするか――決まった?
 

 
エーカ・ライスフェルト
SPD
「例え一夜で消える夢だとしても、死してもなお忘れられない思い出、か」
糞ダサいジャージを着ているので格好がつかないわ。本心からの言動だけど
普段のドレスを着ていない理由? 花嫁より目立つ可能性が僅かでもある服は選ばないわよ

宇宙バイクで結婚式用の物資を運び込む
グリモア猟兵に跳ばされる前に、UDCアースのホームセンターで買い込むわ
「白いテーブルクロスやグラスや小麦粉ね。ダークセイヴァーでも時間とお金をかければ買える物だけを買ったわ」
「世界間交易をして他領主を刺激する気はないけれど……1日で準備するならこの程度しないと」
「お幸せに、キャシー、ジョニー」

ブーケを投げられたくないので早期にてったーい!


坂上・貞信
噛んじゃった。
最後もアドリブや共演歓迎です、
という『ところ』で。よし。

さて。
式も無事に執り行われるのかな。
準備が要るなら手伝おう。
あまり飾り付けとか向く方じゃないし、
死霊の部下でも呼んで清掃なりを。

悪趣味なゴミは塵に、貯め込んだ財は然るべきところに。

それが済んだら……
ああそうだ、岩動・廻くん来てないのかな。
別の依頼で少し聞いたけど、
あの子のギター好きなんだよねー。
響くって言うか何て言うか。

あの子のギターを聞きながらジョシー達を見たら、
僕にも少しくらい愛が解るのかしらん。

まあ、実際聞けたらやっぱり良いギターだと思うし。
やっぱりそれでも解んないな。って思うんだろうけど。

何にしても良い日だ。ほんと。


レムナント・ノア
殺風景ではいけませんし、会場をお花で飾りますわ!
ンフ~フンフン~ミッ……ンフフフ~♪

あら、あら。
岩動廻さんではありませんこと?
丁度貴方を探していましたのよと廻さんの周りをぐるぐる廻ります!
ぐーるぐーる!

オホホ、まずは転送ご苦労様でした。
ところで貴方、ロックの心得があるそうですわね?
音楽の力で猟兵たちを支えるヒロイン……
わたくしとキャラが丸かぶりでしてよ!

わたくしと即興ソングで勝負なさい!
心配には及びません、結婚式の余興です。
さあさ、貴方のロックをジェシーにも聴かせて差し上げて!
ぐーるぐーる、オホホホホ!!

【攻略のヒント】敵は会話中ずっとぐるぐるしているので
放っておけば勝手に目を回して倒れるぞ!


終夜・嵐吾
うっうっ、よかったのぅ…これでわしも安心してあの世に…
いや、いやだめじゃまだいかぬ!ひ孫の顔を見てないのでな!
手塩にかけた孫が…こうして婿と嫁に……婿……嫁……
いや、いやまてまて。
だめではないか、なぁ、きとりぃ!
嫉妬女子と吸血鬼おじさんは確かに怖かった。それを乗り越えたんは二人の愛の力じゃて……だがやはり男としては、これが必要じゃろ!

まてジョニー!最後の試練じゃ!
キャシーと結ばれたくば、このわしをたおしていくんじゃ!むすめはやらん!

(うぃーの嬢ちゃんかっこよく効果音たのむ(うぃんくばちこん)

と…まぁ最後は、キャシーを守る気持ちをもってもらいたいがための試練じゃ。
わしはやられてかっこよく退場…☆


キトリ・フローエ
色々……本当に色々あったけど、ついに大団円ね(しみじみ)
ジョシー……じゃなかった、ジョニー、キャシー、おめでとう!
あなた達の真実の愛の力が、あなた達だけじゃなく、村の人達や、あたし達のことも笑顔にしてくれたのよ
二人で歩んでいく道が、たくさんのきらきらした素敵なもので満ち溢れていくことを、あたし、願ってる!

いろいろな意味で感極まってる嵐吾(f05366)はそっと(なまあたたかく)(手塩にかけてはいないと思うの)(試練???)見守ることにして
…あっ、ごはんおいしい(もぐもぐ)

廻、一緒に歌いましょう!
二人の最高の日に、とっても明るくて元気になれるような、ハッピーな感じの歌を!


リーヴァルディ・カーライル
…ん。そうね。私の仕事は終わったけれど…
折角だから私も一つ、出し物でもしてみようかな?
ふふ、どちらかと言えば悪戯?
…他の猟兵には先に言っておくけど、ね

…式場に隠れて、機会を見切り【吸血鬼伝承】を応用発動
認識を阻害する呪詛の霧に変身して空に浮かび、
“領主の霊とか何かそれっぽいの”に変装
防具を改造して魔力を溜め、声を領主の物に変更しておく

『…ジョニー。並びにキャシーよ』
『汝らの愛、確かに見届けた…』
『我はこれより、真実の愛を探す旅に出る』

『それまでの間、領の事は汝ら人間に一任する』
『その証として、この指輪を汝らに授けよう』
『末永く、幸せにな』(『』内はエコー)

…ん。たまには羽目を外すのも悪くない


トリテレイア・ゼロナイン
村とお二人の新しい門出、私も謹んで披露宴に参加いたしましょう

「怪力」を用いて会場の設営に協力するもよし、領主の蔵から持ち出したワイン樽を持ち出すのもありかもしれません

「防具改造」で鎧を華やかに飾り、馬に「騎乗」して走り回りながら花びらを会場中に振りまいて盛り上げましょう

そしてご結婚なされるお二人への挨拶も忘れずに

お二人の道行きに同行し、お二人の明るさ、幸せに触れることで自分が御伽噺の騎士であるかのようなひと時を過ごすことができました。
今後もその花咲くような明るさを周りに振りまいてください

ご結婚おめでとうございます!


星羅・羽織
アドリブ、絡み、なんでもやって、よし!

無事、事が済んで、よかった。
悪い、領主も、もういない。
まだまだ、これからも、いろんなことが、ある。
だけど、今日は、祝いの日。
目一杯、楽しんで、生きる糧に、して。

会場の、雰囲気づくりは、私にお任せ。
魔法で、きらきら、華やかに。
落ち着く、ムードも、擬似宇宙を、天井に、投写して演出。
楽しんで、喜んで、貰えるように、頑張りたい。

合間で、私も料理を、いただく。
どんな味? 豪華、ではきっとない? 安心する、素朴な味付け?

結婚式、そういえば、参加するのは、初めて。
ブーケトス、あるなら、ちょっと狙ってみる。
取れたら、縁起物。どうせ、私に、いい人はいないから。


ルヴィリア・ダナード
ダークセイヴァーでもこんなに幸せな場面に出会えるのね!
きっと今日のことは一生忘れることは出来ないな、いろんな意味で。
ジョシーは末永くお幸せに、だね。きっと私のカミサマも祝福してくれるわ!
私のカミサマは寛大だからね。

折角なので料理を頂きます!
本命はお酒の方なのだけどあるかな!あるかなー!
ワインは必ず頂いてあとは綺麗に盛り付けられた料理に綺麗だなんだって胸が踊っちゃう。
っと、食べる前に…今日も美味しい恵みに感謝を。
こんな素敵な場を用意してくれた方々にももちろん感謝。
ジョシーの今後の幸せもしっかりお祈りして…
これだけやれば満足!それでは改めてかんぱーいの頂きます!


バラバ・バルディ
やれ嬉しや、ようやっと結婚式が開けるのう!さてさて早う式の準備に取り掛からねば!わしらとて、いつまでもここに居れるわけではないからの。
しかし、館は愛の試練で燃えに燃えたからのう。祝いの席に相応しき飾りつけに食事に衣装の準備と、新たな友(死霊)や村人達だけでは到底手が足りん。こうなれば、廻嬢ら猟兵を呼び寄せ手伝ってもらうかの!参列者として呼ぶ予定じゃったのが少しばかり早まっただけのこと。まあ、これも猟兵としての務めということじゃ!

「この先何があろうと、その笑顔だけは忘れるでないぞ!」
ジョシーをハグして『星彩の守』を祝いに渡します。

最後に死霊へ笑い
「どうじゃ、友よ!これがお主らの守った“希望”よ」


光・天生
【WIZ】
……あれが結婚式っていうものですか。
知識としは知ってましたけど、実際に見るのは初めてです。

正直、戦闘中は何ふざけてんだとかちょっと怒りそうにもなりましたけど。
……あんなに心から幸せそうな顔見てると、そういうのも失せますね。
あれだけ祝福されてるんだから、きっとあの人たちも、優しい人だったんだ。

ここは絶望ばっかりの世界と思ってたけど。
優しい人たちが武器を取らず、ああして幸せに笑ってられるようになるなら。
……こうして戦う道が間違ってなかったんだって思えます。

そんな風に、片隅で想いに耽ることにします。

……いや、正直あのジョニーキャシーコールが耳から離れないので作業とか集中できなくて。



●準備とて既に祭り
 人が通り過ぎれば、物も通り過ぎていく。
 館に運び込まれるものと、館より運び出されるものと。
 広間が派手に燃えたため、『もういっそ、式は外で』との判断のもとに館の探索が始まり、かくして過剰に徴収され続けてきた税がいざ貯蔵庫より姿を見せたなら、その量は宴に使ってなお余りあるほどで。
「やれ嬉しや、ようやっと結婚式が開けるのう!」
 バラバの言葉を借りるように、周囲を飛び交う死霊も張り切るように宙を飛び回る。その姿を前に村人たちも最初こそ驚けど、ことの経緯をジョシーが説明さえすれば理解は早く。祝い仲間と認識すれば、ジョシーが着替えに姿を消したとて、同志として迎え入れる懐の広さ。
「はいみんな、よろしくよろしく」
 同じように、貞信の部下たちも受け入れられたなら、上官の号令のもとに会場たる館周辺の清掃を始めている。当の上官には動く気配もなく、働く部下を監督するのが自分の勤めと言わんばかりであるけれど。
「ンフ~フンフン~ミッ……ンフフフ~♪」
 その死霊たちの後を追うように、会場を花で飾り付けんと鼻歌を歌いながらレムナント。全てが奇抜な彼の存在も受け入れられたなら、いよいよ懐が広すぎるこの村。
「オホホ! この会場をお花で飾りますわ!」
 村の子供たちが面白いものを見るようについていく様子は、どこかの笛吹き男のよう。
 とにもかくにも、祝いの席に相応しき飾りつけ、それと食事に衣装の準備とやることはまだまだ盛沢山ならば、使えるものは猫でも人形でもと、集まった猟兵たちに発破をかけるようバラバはてきぱきと指示を飛ばし。
「うぃーは非力なんですけれど」
「この程度であれば、まだ持てますよ」
 歌っているところを集められた廻は、口の先を尖らせるようにして椅子を運び出している。
 一方では、至極真面目に指示に応え、トリテレイアが設営の備品を愛馬と共に運び出し。幾重にも重ねられた燭台や椅子がその両肩に軽々と持ち上がれば、その怪力たるや――村人たちも作業の手を止めて讃えるように。はえー、騎士様っつーのは流石だなー。
「そうそう、適材適所があるからね」
 やはり壁に寄り掛かり。腕を組みながら貞信も、村人の感想を肯定して。
「力仕事はわしらに任せ、何か飾り付けに指示があれば教えてくれい」
 その肯定する肩を叩き、バラバがそういって指さした先にあるのは仮置きされた大きな机。
 僕も数の内ですか、とさしもの不良軍人は肩をすくめて。でも、今日ぐらいは仕方ないかとすぐにあきらめる。年老いたシャーマンズゴーストと二人、次々と机をしかるべき配置で並べていけば、周囲の装飾は死霊たちが請け負い。
 それを追うようにしてトリテレイアと廻は、その机ひとつひとつに椅子を並べていく。単純作業なれど、二人を祝うためならばと、村人たちの意気はみな高く、猟兵たちもそれは同様で。
「次はそちらですな」「これをそのようにじゃな!」「オホホホホ!」
「同時に話されるとつらいなあ」
 故に黙々と――というよりかは賑やかに。運び、並べ、運び、並べ……。

「椅子の数は、これで全部でしょうか」
 やがて徐々に形が見えてくる、式場の姿。トリテレイアが抱えた椅子もなくなり、ある程度、完成形が目に見えてきたならあともう少し。あとは細かな仕上げであるならば、さて。
「みんな、お待たせ!」
 そこへ颯爽と宇宙バイクで乗り付けるジャージ姿のエーカ。その手に握られし、スーパーのビニール袋から取り出されたるは――猟兵たちにとって見慣れたものだけど、村の人々にとっては特別な品々で。
「まあ、きれいな布!!」
「こいつぁ……なかなかお目にかかれねえ」
 その純白のテーブルクロスが村人の目を引く中で、他の猟兵が小声で彼女に尋ねる。あれは、いったいどうやって?
「買ってきたの、UDCで」
 こともなげに小声で、エーカ。そして、目くばせした先を見れば、遠くにはいつの間にか手伝いから消えた廻の姿。これもひとつの、グリモアの有効活用でしょと言わんばかりにウインクすれば、その手があったかと感心する者もある一方、不安そうな者もあり。
「大丈夫、この世界で買えないものではないから」
 最低限にとどめたつもりよ、と取り出したのは小麦粉。おいしい料理に期待しましょう? と笑う。
「よろしいのではなくて?」
「今日ぐらいはのう」
「めでたい日だからね」
「ええ。では私は、蔵より『あれ』を持ち出してきましょう」
 その善意を否定する者はなく、いざ、仕上げに向けて気合を入れなおす一同。

 幸せの時が近づくにつれ、皆の鼓動(駆動)は早くなり。
 そして――!

●祝え祝えよ花畑
「乾杯-!!」
 主役の登場を待たずして始まる宴会。結婚式とは、村にとって数少ない宴ならば、大いに騒ぎ歌うのがこの村のマナーであるからして。
 トリテレイアが館の蔵より持ち出したワイン樽がそこかしこに置かれ、意気揚々とした歓声と時々奇声、顔を赤くした村の大人たちが会するテーブルの間をすり抜けるように、子供たちは追いかけっこに興じている。
「ダークセイヴァーでもこんなに幸せな場面に出会えるのね!」
 その光景を前に、ルヴィリアは夢を見ているようだと感嘆を浮かべる。きっと今日のことは一生忘れることはできない、と。きっと、いろんな意味で。
「今日は、祝いの日。目一杯、楽しんで、生きる糧に、して」
 まだまだ、これからも……いろんなことがあるだろうけれど。まずは今日を祝わなきゃと羽織もうなずいたなら、その視線をテーブルの上に移して。
 そこにあるのは純白のテーブルクロス。そして、その上に並ぶのは並々とワインの注がれた器と、村のお母さま方が心を込めた特製シチューに焼き立てのパン、腸詰の炒め物にレバーのパテ――等々、手料理の数々。いったいどんな味付けだろう?
「今日も美味しい恵みに感謝を。こんな素敵な場を用意してくれた方々にももちろん感謝」
 せっかくの料理が冷めないうちにと。猟兵たちも遠慮なく手を伸ばしたところ、ルヴィリアが祈りの姿を見せたなら一同その手を止めて言葉の先を待つ。お祈りってどうやるんだっけ。確か、手と手をこうやって――。
「ジョシーの今後の幸せもしっかりお祈りして……これだけやれば満足!」
 満足したらしいので、それでは改めて。
「かんぱーいの頂きます!」
 いただきまーす!
 待ってましたと杯をとる者もいれば、早速料理へと手を伸ばす者もあり。
 スプーンで掬ったシチューに息を吹きかけて、少しだけ冷ましたそれを口に運べば、まずはトマトらしきものの酸味が広がって。その後からじわりと顔を出してくる塩気は共に煮込まれた干し肉による風味だろうか。一緒に口に入れた芋も、はふはふと空気を送り込みながら崩せば――口の中で甘みとなって一体となる。
「安心する、素朴な味付け?」
 やさしい味、と羽織が感想を呟けば、ルヴィリアも杯を空けて上機嫌な様子で。
「胸躍っちゃうよねー!」
 この場のノリによるものか、早くも出来上がり始めているかもしれない。

 その一方で、顔を覆い嗚咽を漏らす者が一人。

「うっうっ、よかったのぅ……これでわしも安心してあの世に……いや、いやだめじゃまだいかぬ!」
 ひ孫の顔を見てないのでな! とハッと顔を上げる嵐吾。
 ともすればひ孫の名付け親ともならんとする勢いに、キトリはすっかりと諦めたように。
「あっ、このパンもおいしい」
 妖精は導きを止め、料理に舌鼓を打っている。食器も特別なものを準備してもらえたならば、器にシチューを取り分けてもらい、小さなパンを抱きかかえ。
 一方で宙にろくろを回し、目を閉じてこの結末に感じ入るような嵐吾の耳は心なしか倒れ。後ろに垂らした尻尾にもどこか生気がない。
「手塩にかけた孫が……こうして婿と嫁に……婿……嫁……」
 手塩にかけてはいないと思うの、と思ったものの口にはせず。
「このパテをつけるといいのね」
 キトリは、なまあたたかく、みまもっている!
「いや、いやまてまて。だめではないか」
 キトリは、なまあたたかく、みまもっている!
「だめではないか、なぁ、きとりぃ!」
 キトリは、
「あたし!?」
 急に呼ばれたことに動揺すれば、抱えたパンをシチューに落とし。あ、でもこうして食べるのもおいしそう。
「嫉妬女子と吸血鬼おじさんは確かに怖かった。それを乗り越えたんは二人の愛の力じゃて……だが!」
 急に拳を握れば、先程の様子とは一転。力強く語りだし、間髪なく立ち上がればその目に燃えるのは祖父としての想いか。 
「やはり男としては、『これ』が必要じゃろ!」
 これって何。
 キトリが思わず指摘しそうになったその刹那――割れんばかりの拍手が会場に響く。そして、口笛と野次にも似た歓声と。
 それだけで猟兵たちにはわかってしまう。その、音の向く先、会場の視線を集める存在を。

「みんなー! 待たせちゃってごめんなさい!!」
「キャシーの着替えが長引いちゃって!」

 花婿衣装らしきマント姿のジョニーに抱きかかえられながら、花で彩られたドレス姿のキャシー。
 二人合わせてジョシーが館から姿を現せば、会場の熱気は一段と上がり。
 更に、お付きの騎士の如く登場したトリテレイアは騎乗した状態で。二人を祝福すべく、花びらを撒きながら会場を駆けまわったなら、それはまるで――絵本の中の世界。
 その光景を前にして、村の子供たちがきらきらと輝く瞳で、まっすぐな祝辞を口々に贈る。きれいー! おめでとー!
 一方で大人たちも出来上がりつつ、次々に祝辞を述べ。遅いぞー! キスしろー! と続いたならば、こちらもこちらである意味まっすぐな言葉の連呼。ああ、駄目な大人たち!
「もう、私のせいだっていうの!? ジョニー……いいえ、あなた!!」
「キャシー!?」
 結婚するなら、こういう呼び方もいいでしょと笑うキャシーを前に、早くも尻に敷かれる片鱗を見せ始めるジョニー。そういったあたりまえの、日常の延長にある幸せの光景すら、かつての村では考えられなかったことならば――その光景は、何より輝かしいものとして村人たちの目に映る。そしてそれは、猟兵たちも同様で。

「まてジョニー! 最後の試練じゃ!」

 おめでとう、と皆が立ち上がらんとするその先を制すように飛び出したのは、嵐吾。
 キトリは、なまあたたかく、みまもっている!
「キャシーと結ばれたくば、このわしをたおしていくんじゃ! むすめはやらん!」
 是はいかなる状況か、大きく腕を広げ立ちはだかるポーズをとった嵐吾を前に、流石のジョシーも迷った様子で。ただ一人、言わんとしたことを今理解したならば、キトリは嘆息して二人にヒントを飛ばす。
「ジョニー! 遠慮なくたたいていいから!」
 その言葉を受け取れば、そっとキャシーを下ろして。そして会場が固唾を飲み見守る中、何も言わずに嵐吾に近づけば拳を握り――ジョニーの一撃が放たれる。それは、人を殴ったこともなければ、速度も威力もない優しい一撃。されど、この場における試練を打倒すには十分に過ぎる!
「ぐあああああ!」
 かの拳が嵐吾に触れた瞬間、ウインクをぱちり。すると、会場に響き渡りしは鋭く鼓膜を鳴らす音。村人にとって聞きなれぬ音ならば、それは雷鳴と間違えられ――かの技についた名前はサンダージョニーパンチ! 果たして、その音が拳から出たのか、とある猟兵のギター(アンプ)が鳴らした音かはおいといて。
「すごい! すごいわジョニー……じゃなかったあなた! そんな力があったのね!」
 わっと、押し寄せるキャシーと村人、そして遅れちゃいられぬと猟兵たち。此処に試練が果たされたならば、その勇者を祝福すべく集い、もみくちゃにするようにジョニーを囲んで胴上げの準備を始めている。あそーれ! わっしょい! わっしょい!
「なら、こんなのも」
 羽織の呟きと共に、会場を星空が覆う。それは、彼女による魔術で、彼女によるご祝儀。ジョシーに楽しんでもらいたいと願えば、自らと同じ色である空を投影。すると会場は一瞬にして、宇宙に吸い込まれたように。
「何が起こっているかわからないけど、素敵ね! あなた!!」
 胴上げされながら、空中で抱き着くようにキャシー。
「僕はもう……君という星が近すぎて、ほかの星が目に入らないよ」
 てめえジョニー! その気障なセリフが村人の怒りに触れれば、落ちてきたジョニーは押し寄せる村の男どもに覆われ、その姿を消す。ただそれも、ちょっとした式の余興ならば、しばらくしてくたびれた衣装と共に無事復活。
「あ! 皆さん、皆さんもお揃いですね!」
「準備もお手伝いしてくれたって聞いたわ! 本当にありがとう!」
 村人による祝辞・胴上げも終われば、ようやくジョシーに訪れる自由な時間。ならばと、その一人ひとりの手をとり、言い渡されるは感謝の気持ち。正直、少しだけ不安だったのとキャシーが言えば、僕だって実は内心怖かったさとジョニーも笑う。だから――ここまでこれたのは、猟兵たちのおかげだと。
「それは、ちがう。二人の、愛の力と、笑顔」
 それがなかったら、そもそも自分たちはここに来なかっただろうと羽織。だからこれは、二人の力だと。
「この先何があろうと、その笑顔だけは忘れるでないぞ!」
 そうじゃそうじゃと、バラバも顔を綻ばせて。その両手を広げ二人を抱きしめたなら、祝辞と共に伝えられる二人へのアドバイス。
「ええ、決して笑顔だけは忘れません!」
 その、ジョニーの迷いない表情を見れば、満点だと。その誓いに対し、祝儀代わりにと手渡すは『星彩の守』――バラバによる手製のお守りにして、アクセサリ。
「これ、いただいてよろしいの? ありがとうおじいさん……大事にするわ!」
 早速身につけたなら、似合っているかしらとキャシー。
「似合ってる、素敵」
「ほほーっ、お似合いじゃなあ! 皆もそう言っておるわ!」
 羽織とバラバに他の猟兵、そして漂う死霊たち。皆が頷いたなら、キャシーもまたとびっきりの笑顔を見せて。ジョニーの誓いはキャシーの誓いと、二人の誓いを二人で守っていくように。それを見て、猟兵たちも笑う。村人も笑う。死霊だって――ここにいる全てのものが、笑顔を浮かべ。
「あなた達の真実の愛の力が、あなた達だけじゃなく、村の人達や、あたし達のことも笑顔にしてくれたのよ」
 感無量と倒れたままの嵐吾はあとで起こすとして、周囲を見渡すようにキトリが二人へと言葉を届ける。きっと、おそらく、たぶん、嵐吾の分の思いも少しぐらいは預かって。
 愛の力の程を確かめるようにジョシーも会場全体を見渡したなら、その光景は眩しいぐらいに華やかで、賑やかで――騒々しいったらありゃしない!
「もう、今お話し中なんだから、みんな静かにしてよ!」
 村人を窘めるようにキャシーが言えば、おどけた反省の言葉の後にどっと笑い声が起こり。
「みんな、聞いてるけど聞いてないんだね」
 でも、それは決して不快ではないと。嫌なことや辛いことに対して目をつむり、耳を塞ぐ生活は絶対嫌だけれども――こういうのなら大歓迎さとジョニーは苦笑して。
 その言葉を聞いて、キトリも頷く。その考えには大賛成。ただ、やっぱり話を聞いてくれた方が助かるけど、と。
「二人で歩んでいく道が、たくさんのきらきらした素敵なもので満ち溢れていくことを……あたし、願ってる!」
「私も――」
 そこに、花びらを撒き終え戻って来たトリテレイアが、王に跪くようにして二人の側で屈む。
「お二人の道行きに同行し、お二人の明るさ、幸せに触れることで……自分が御伽噺の騎士であるかのようなひと時を過ごすことができました」
 それは、騎士として振舞うことに一部苦悩を感じていた身にとって――どれだけ幸せなことか。
「待って、騎士様。お礼を言うのは私たちの方よ!」
「そうそう、馬にも乗せてもらって、なんというか……僕も、夢がかなったというか」
 絵本で読んだことしかない騎士。それが、目の前に来て、自分たちを守ってくれた。白馬にも乗せてくれた。その喜びの方が、自分たちのあげられたものより、ずっと大きいとジョシー。
 果たして、主と自身が褒められたとわかるのか、後方に控えるロシナンテⅡは嘶いて。
「これ以上ないお言葉……今後も、その花咲くような明るさを周りに振りまいてください」
「ええ、もちろんよ騎士様!」
「もしよかったら、また乗せてくださいね!」
 御意、と。胸に当てた騎士の手は固く。彼らが明るくある限り、自身の信ずる騎士道も不滅であらんと。
 そして、二人にカミサマの祝福をと、杯を片手にルヴィリア。
「末永くお幸せに、だね。きっと私のカミサマも祝福してくれるわ!」
「まあ、もしかして神様とお知り合いだったの!?」
「キャシー。流石にそれは、それは……そうなんですか!?」
 私のカミサマは寛大だからね、と胸を叩いて宣すればジョシーも驚いたように。
 その表情を見るとまたルヴィリアは可笑しそうに笑って杯を呷り――果たして真相は神のみぞ知る。
 と、

『……ジョニー。並びにキャシーよ』

 その、この喧しい空間において反響するように静かな声音――異質なる声に、凍り付いたのは村人たち。
 背後から聞こえし声へと振り返ればそこに立っていたのは、紛うことなき、領主の姿。
 ジョシーの話で聞いてこそあれ、果たして領主が式の余興を考えていたなど嘘かはたまた空想か。まだ信じ切れていないならば、その一挙手一動を己の命を脅かすもののように、村人は畏怖をもって見つめる。
「領主様! 消えたと思ったら、来てくださったのね!」
「いつの間にそこへ!? それも、さっき練習していた余興ですか!」
 ジョシーがはしゃいで手を振れば、自然と二人の前の人だかりは二つに分かれ道を作る。事情を前もって知っているならば、猟兵たちですらその道をかの領主に譲るようにして。
『汝らの愛、確かに見届けた……』
 一方ずつ近づきながら、その声色は確かに領主にほかならず。しかしかけられている言葉はどうだ? 果たして、これがあの領主の言葉だろうか? ならば本当に――愛の力とは!
『我はこれより、真実の愛を探す旅に出る』
 やっぱり愛ってすげー! 愛が、領主を変えたとでもいうのだろうか。村人たちはそれぞれ顔を見合わせて、今の言葉の意味を考える。いや、話では聞いていたけれど、ジョシーの二人が領主の心を溶かしたというのは本当だったんだ!
「領主様、そんな! 旅に出なくとも、愛はここにあるわ!」
「キャシー! 男には……旅に出たくなる時があるのさ」
 そうですよね、とジョニーが問えば領主は何も答えぬまま。ただ、紫の瞳が彼らを見つめていて。
 一方、ジョニーだけ旅に出るのは許さないからと、キャシーがジョニーの襟首をつかみにかかる。
 間を置くように、彼らのひと悶着が終わるのを待ってから、領主は告げた。
『それまでの間、領の事は汝ら人間に一任する』
 村人はざわつき、そしてその意味するところにたどり着く。そして次に行きあたるはこれからの暮らしのこと。今まで課せられていた重税に労役、それらが全て一任されるということは……楽な暮らしを、許されるということだろうか。
『その証として、この指輪を汝らに授けよう』
 ジョシーの前に差し出されたのは、静かな輝きを湛える金の指輪。
 それは、先ほど確かに広間に落ちたものと同一で。
「ありがとうございます……領主様!」
 その指輪を受け取ればジョニー。領主の目を見て頷き、それから――キャシーへと向きなおって。
 目と目を合わせれば、キャシーもその意図を理解する。そこに言葉はなく、ただ頷けば差し出される彼女の左手。

「絶対、幸せにするよ……キャシー」

 その言葉と共に、キャシーの薬指に嵌められる、指輪。
「私だって……私ばかりじゃなくて、あなたを幸せにするもの!!」
 感極まったように言葉を漏らせば、その目より流れ出すは喜びの涙。笑顔は忘れないと言ったのに、早速……嬉しくってつい、と。寄り掛かるようにジョニーを抱きしめれば、その胸に顔をうずめて泣き出す花嫁。
『末永く、幸せにな』
 そう言うと、見届けたとばかりに領主は背を向けて――村人たちが気づいた時には、霧となり姿を消していた。
「そうじゃそうじゃ、幸せにのうキャシー!」
「うん、泣いてもいい。幸せなら」
 かくして、領主が去れば、再び主役に声援は飛び。
「めでたい、かんぱーい!」
「じゃあ廻、いっしょに歌いましょう!」
 二人の最高の日に、とっても明るくて元気になれるような、ハッピーな感じの歌を!
「OK、そのリクエストは受理されました」
 ならばと廻はギターを構え、旋律が流れだせば会場は一体となって大合唱。
「どうじゃ、友よ!これがお主らの守った“希望”よ」
 バラバが問いかけるも、知らぬがうちに既に死霊は消えて。ああ、その事実こそ何よりの回答ならばと、彼は体を揺すって大笑い。
 一人ひとりの声は小さくとも、合わされば大音量。それは愛や希望も同じことと――その場に集う光を集めたならば、きっとこれ以上なく尊い輝き。かの愛を集めて、命はどこまでいけるだろうか? その答えのひとつを、今日ここで見出したなら猟兵たちの思いはひとつ。

「ご結婚、おめでとうございます!」

 トリテレイアの祝辞に合わせ、皆一斉に改めて――心からの祝辞が、会場を埋め尽くした。

●愛の行方
 宴は続いていく。
 当初の騒ぎは落ち着いて、ジョシーたちもようやく席へと座り、腰を落ち着けられているようならば。
「……ん。たまには羽目を外すのも悪くない」
 何事もなかったかのように、遠く離れた席で。リーヴァルディは手近なところに腰掛ける。
「名演技、でしたね」
 ねぎらいとも、感心ともとれる感想を言葉にして、天生は彼女を見やる。その顔には決しておかしなところはなく。道中で見たままの、彼女の姿。

 その彼女が先の領主だと――言われなければ、一体誰がわかるだろうか?

「折角だから私も一つ、出し物をね」
 悪戯に近いですよねと指摘されれば、みんなには先に言ったものと悪びれず。彼女のユーベルコード『吸血鬼伝承(ブラムス・トーカー)』は、大衆の抱く吸血のイメージどおりに――特定のものへと変身することを可能にする技ならば、吸血鬼然とした領主の姿をとることも不可能ではなく。
「まあまあ、ああしてくれた方がみんな都合がよかったわけだし?」
 席を共にする貞信も、その手並みに称賛を贈り。祝い事に余興は多いほうが面白いと笑う。
「……ああいうのが結婚式っていうものですか」
 知識としては知ってましたけど、と。実際に見るのは初めてだと天生がこぼせば、不良軍人はそれを聞き逃さずに。 
「じゃあどうだい? あれを見て君は何か感じたかい?」
「近い、近いです」
 急に距離を詰めてくる相手に警戒感を保ったまま、天生は今日の旅を思い返し、そして思ったままの感想を紡ぐ。
「正直、戦闘中は何ふざけてんだとかちょっと怒りそうにもなりましたけど……あんなに心から幸せそうな顔見てると、そういうのも失せますね」
 あれだけ祝福されてるんだから、きっとあの人たちも――優しい人だったんだ、と。
「うんうん、いい。そういうの、もっと欲しい」
 ぐいぐい来るなこの人。
 そっちこそ、どう思うんですかと聞き返す天生。どうせ、肯定の感情しかないだろうと思いつつも、自らがこれ以上語らせられるよりはマシだと判断して。

「んー、わかんないね」

「は?」
「いや、正直僕は『愛』というのがよくわからなくてね」
 君が言ったように、知識として知ってるだけさと貞信は答える。今、目の前で行われている光景は素晴らしいものと理解はしている。けれど、果たして自らにとって『愛』という感情が芽生える日はあるか――それすらわからないのだから、愛なんてわかんないと。
「本当にね、価値あるものだとはわかるんだ。だからこうやってついてきたわけだし」
 君は? この戦いは疲れるだけだったかい? と問われて思わず言葉に詰まる天生。
 想定していたよりも遥かに深い回答が返って来たならば、また寄せられた質問も深く。だからこそ、これは真剣に答えねばならない。わからなくても、わかる範囲で。自分が使える、わかる言葉で。
「ここは……絶望ばっかりの世界と思ってたけど。優しい人たちが武器を取らず、ああして幸せに笑ってられるようになるなら」
 こうして戦う道が間違ってなかったんだって思えます、と。
「なら、意味はあったんだろう」
 二人の会話を聞いていたリーヴァルディも、頬杖をつきながらそう肯定する。いつもと変わらぬ仕事だけれど、今日は少し浮かれすぎたと――その自省する言葉とは裏腹に、どこか楽しげな表情で。
「例え一夜で消える夢だとしても、死してもなお忘れられない思い出、か」
 愛って……そういうものかもしれないわね、とエーカが立ち上がれば、もう行くのかと他の猟兵。あとなんでジャージなんですか。
「それはほら。花嫁より目立つ可能性が僅かでもある服は選べないわよ」
 ブーケを投げられたくないので、早期にてったーい。それは、婚期を花束なんかにゆだねられてたまるかという鋼鉄の意思によるものか。帰り道帰り道ーと探す先に立つは、レムナントと共に廻。

「岩動・廻さんではありませんこと? 丁度貴方を探していましたのよ!」
「うぃーは探してないんですけど」
 オホホホホ! と廻の周囲を回るなら、レムナントの手に抱えられしはかのバイオリン。
「貴方、ロックの心得があるそうですわね? 音楽の力で猟兵たちを支えるヒロイン……わたくしとキャラが丸かぶりでしてよ!」
 す、すごい言いがかりだー!
 されど、確かに今日は彼のバイオリンに支えられたところも、少し、少しあるのなら見物する猟兵たちもその指摘を言葉には出さず。
「で・す・の・で! わたくしと即興ソングで勝負なさい!」
 にやりと、絶対の自信と共にバイオリンを顎と肩に挟み。西部劇の決闘よろしく、さあ構えろと視線が示すは廻のギター。
「心配には及びません、結婚式の余興です。さあさ、貴方のロックをジョシーにも聴かせて差し上げて!」
「アイシー。バット、これだけは伝えておきましょう」
 その誘いにのって、彼女の手にはギターが構えられる。その目に灯るは、同じ音楽家としての闘志か。
「……うぃーは、余興で演奏したことはありません」
「オホホホホ! ……面白いことを仰いますのね!」
 さあぐーるぐーる、と再びの公転を始めれば、演奏と共に加えられる自転。惑星と化したレムナントの鬼気迫る音色が周囲に響き渡れば、それに負けじと廻のギターも響き渡り――!

「この音を聞きながらジョシー達を見たら、僕にも少しくらい愛が解るのかしらん」
 その光景を見て、ぼんやりと貞信が呟く。あの子のギターの音、響くっていうかなんて言うか、好きなんだよね、と。
「実際に試せばいいじゃないですか」
 どっちも、今ここにあるんだからと天生。
「んー、多分わかんないだろうからなあ」
 そういってワインの杯を呷れば、村人に祝われるジョシーたちの方を見やって。――うん、やっぱりそれでもわかんないや。
「いつかそのうちわかるんじゃないの?」
 あの調子だと、しばらく帰れそうにないわねとエーカも伸びをして。その周囲を見渡した視線の先、女子が目に入れば――羽織が息を切らしながら駆けよってくる。
「みんな、これからブーケトス、するって」
 げ、と言葉をもらし。ちょっと、早く帰らなきゃと振り返れば、視線の先には廻と――倒れ伏すレムナント。どうしてこうなった。
「お、おほ……ほ……」
「重なるスピンにボディがオーバーワーク」
 つまり、酔って倒れたらしいです。自滅した強敵を悼むよう、そのギターの音は続き。

「みんなー! そこにいるなら、そこにも投げちゃうわよー!!」
「キャシー、一体いくつ投げるつもりなんだい!?」

 その音をBGMに、たくさんの花束を抱えたまま、向こうから駆け寄ってくるジョシーもいて。
 逃げ出すエーカと、さあこいと意気込む羽織。思わず耳を抑える天生に、その成り行きを腕を組んだまま見つめるリーヴァルディ。
 そして、満足そうに微笑む貞信。
「何にしても良い日だ。ほんと」

 ああ、掛け声と共に、花束が宙を舞う。
 それは幸せのおすそ分けと言われる行為。それが、これからもずっと、この世界であっても続けていくことができるように。
 共に舞う花びらは、そんな願いを乗せた――流れ星にも似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月02日


挿絵イラスト