帝竜戦役㉑〜ひとつにして全てのもの
●全てにしてひとつのもの
それは炎。
圧倒的な存在の前にあらゆる生命はひれ伏すほかない。生存の許しは同一であることのみ。
全にして一。一にして全。
燃え盛る死と炎の大地を闊歩する異形なる炎の獣達。
それらは元は一つの帝竜から生み出された者たち。群にして、全て統一されし獣たち。
「我等ガ偉大ナル垓王牙ヨ! 我等ハ全ニシテ一。一ニシテ全」
「対スル猟兵ハ 軍デモナケレバ群ニモアラズ」
帝竜、垓王牙―――ガイオウガ。
その巨怪たる姿の異様は、火山と同等である。
煮えたぎる溶岩の如き姿は、一歩踏み出すだけで、地割れを引き起こす。割れた大地の底より活性化したエネルギーが溢れるように溶岩が噴き出していた。
「我等ハ垓王牙! 我等ノ牙ハ垓王牙ノ牙! 我等ノ爪ハ垓王ノ爪!」
その咆哮に合わせるように炎の獣たちは一斉に駆け出す。
これより先は生命なき死の原野。個々における生命は存在せず、在るのは全たる垓王牙という生命のみ―――。
●帝竜戦役
グリモアベースに集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えたのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)である。
「お集まり頂きありがとうございます。帝竜ガイオウガの出現が確認されました。火山の如き巨大なる体、全身から溶岩と『炎の獣』を解き放つ、圧倒的なエネルギーを誇る帝竜です」
赤熱する火山地帯において、この帝竜の力は尋常ならざるものである。
これまでの帝竜も巨躯を誇ってきていたが、ガイオウガもまた尋常ではない大きさである。まさに歩く火山そのものである。
放たれた『炎の獣』は一つ一つが形の違う獣である。虎であったり、狼であったり、竜であったり……様々なのだ。
だが、形が違えど、全て帝竜ガイオウガそのものである。彼らは全にして一なる存在。
「はい、帝竜ガイオウガ。全身が火山の如きエネルギーの塊です。全身の火口から吹き出す火山弾は、『炎の獣』へと変じ、襲いかかってきます」
それだけではないのだとナイアルテが、生唾を飲み込む気配があった。
圧倒的なエネルギーの奔流は生命の巨大さを物語るものであったからだ。
「その火山の如き巨躯の一部を、大地を消滅させる程の超高熱溶岩流に変異させ、その溶岩たる特性を生かした様々な行動に出てきます。さらにガイオウガ自身に似た竜の姿の炎を放ち、個別に操作したり、複数合体で強化したりと様々なユーベルコードを放ってきます」
そして、全ての帝竜がそうであるように、ガイオウガもまた、猟兵たちに先んじた先制攻撃を放ってくる。
これに対する対処を考えなければならない。如何に防御し、如何に反撃するか。それができなければ、猟兵に勝利はない。
「そう断言できるほどに圧倒的な生命力……エネルギーを持つ帝竜です。恐ろしき敵……あれほどまでに生命力に溢れたオブリビオンを私は知りません」
それは恐れからだろうか。
揺らぐ瞳。けれど、ナイアルテは、顔を上げる。それでも、と言い続ける。そうでなければ、猟兵たちを送り出せない。
再び、彼女は声を発する。
「ですが、それでも。私は皆さんならばと言う他にありません。私が皆さんを送り出す以上、私が皆さんを信じないわけにはいきません。だから、それでも―――必ず帰ってきて下さい」
頭を下げるナイアルテは、猟兵たちを危険極まりない火山地帯へと送り出す。
それでも、と。
猟兵たちの無事を信じて―――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『帝竜戦役』の戦争シナリオとなります。
帝竜『ガイオウガ』を打倒しましょう。
※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
それでは、帝竜戦役を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『帝竜ガイオウガ』
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POW : 垓王牙炎弾
【全身の火口から吹き出す火山弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【『炎の獣』に変身する】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 垓王牙溶岩流
自身の身体部位ひとつを【大地を消滅させる程の超高熱溶岩流】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 垓王牙炎操
レベル×1個の【ガイオウガに似た竜の姿】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:阿賀之上
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
髪塚・鍬丸
任務了解、だ。御下命如何にしても果たすべし。
溶岩を操る相手と地に足を付けて戦う訳にはいかない。
空戦特化型忍装束「忍鎧・天戎」のスラスターを全開噴射し、【空中戦】【早業】で上空へと高速退避。
溶岩に追撃されたら、【視力】を駆使して【見切り】、回避する。
敵の初撃を凌いだら反撃開始だ。
とは言え、俺は物理破壊力に長けた猟兵じゃない。さて、どう攻めるか。
UC【幻術】使用。ガイオウガを睨みつけその精神に忍び込む。
幻覚を発動。地より噴き出した冷たい地下水の噴流が燃える巨体に降り注ぎ、急激な冷却で全身を砕く幻。
精神力が強い程、思い込む事による自身への精神ダメージも深刻になる。お前さん自身の強さで砕け散れ、帝竜。
帝竜ガイオウガ、その火山の如き巨体は緩やかなる動きで以て歩を進める。
たったそれだけで、踏みしめた大地がひび割れ、赤熱したエネルギーの奔流の如きマグマが溢れ出す
歩くだけで天変地異のような減少を引き起こす存在。
それが帝竜ガイオウガ。
「我ハ全ニシテ一ツ。我等ハ一ツニシテ全」
ただ近くにいるだけであるというのに空気が熱せられ、押し出される。熱波が皮膚を焼き、それでも飽きたらぬと燃やし尽くさんとする。
この地において、生命とはガイオウガだけである。生命の尽くを許さぬ圧倒的な大地の力は、猟兵を前にしても一切に怯みを見せない。
ガイオウガの尾が振り上げられ、大地へと叩きつけられると尾が超高熱の溶岩流へと姿を変える。
どろりとした赤熱するマグマが次々と大地を侵食し、破壊していく。
それは対峙する猟兵にとって、足場を無くすということと同義であった。あまりにも高熱へと達した溶岩流は、存在するだけでありとあらゆるものを飲み込んでいく。
それはある意味で害オウガの巨躯以上に恐怖を煽る光景であったのかもしれない。
だが、それでも髪塚・鍬丸(一介の猟兵・f10718)は臆することなどなかった。
その心に去来するのは恐怖ではなかったのだ。
「任務了解、だ。御下命如何にしても果たすべし」
その言葉は、ただの言葉だったかもしれない。
しかし、その言葉の裏にある思いを感じられるのであれば、それこそが力である。
溶岩流がどろどろと鍬丸へと迫るように流れ込んでくる。さらにはあの巨躯が鍬丸を押しつぶさんと迫ってくるのだ。
判断を誤る、遅れる……それだけ致命的な失敗になりかねない。
けれど、それでも鍬丸は冷静なままだった。大地を駆ける。しかし、地に足を付けて疾駆すれば溶岩流の餌食であろう。
故に彼は空戦特化型忍び装束「忍鎧・天戎」のスラスターを吹かせ、空へと舞う。元は宇宙服を改良したものであるから、熱波もものともしない。呼吸装置もまた備えられ、酸欠になることもないのだ。
「溶岩流を自在に操るというのなら……!」
彼の体が宙を舞う。
スラスターで姿勢を制御しながら、襲い来る溶岩流を躱し続ける。彼の瞳に映るのは、大気のゆらぎ。
赤熱するマグマの動きはランダムそのものであり、それを躱すのは至難の業だ。
けれど、彼の視力は大気のゆらぎを見逃さない。空気が揺らげば、そこから溶岩流が襲いかかってくる。
「いかに帝竜の溶岩流を御するユーベルコートと言えど、空気を震わせるゆらぎまでは制御できまい。この地が完全に平野であれば話は別であったろうが、火山ひしめくこの場では―――!」
ガイオウガから放たれる溶岩流の初撃は防いだ。だが、鍬丸は物理破壊力に長けた猟兵ではない。だが、どう攻める、と攻めあぐねるわけではない。
彼には彼の、彼にしかできぬ戦いというものがある。
ガイオウガの両眼を見据える。鍬丸の瞳が睨みつけられ、その瞳を介して彼のユーベルコード、幻術(ゲンジュツ)がガイオウガの精神へと忍び込む。
そこで彼が目にしたのはガイオウガの意識そのもの。
全にして一つ。一つにして全。
それはガイオウガが数多の生命体でありながらも、同一の存在であるという圧倒的な記憶量。その本流とも言うべき力は鍬丸の意識には残らなかったが、その圧倒的なまでの精神力を逆手に取る。
「我ヲ覗キコムカ猟兵―――」
いいや、と鍬丸は、その精神にイメージを刷り込む。
地より噴き出した冷たい地下水の噴流が燃える巨体へとふりそそぎ、急激な冷却が、その巨躯を尽く砕いていく。
その幻は、全にして一つであるガイオウガの精神に深く刻み込まれる。
強大なる意識であるが故に、押し付けられた幻術のイメージもまた強大なものになる。
「精神力が強いほど、思い込む事による自身への精神ダメージも深刻になる……」
それは自明の理であった。
一つにして全であるという特性。それは恐るべき力なのだろう。
だが、逆を返せば多様性のなさを物語っている。一度そうだと思いこめば、それを訂正する者もなく、ただただ、刻み込まれたイメージを体は反映し―――。
「お前さん自身の強さで砕け散れ、帝竜」
鍬丸の一言が決定打となって、ガイオウガの外殻に裂傷の如きひび割れが無数に走っていく。
それは赤熱するエネルギーの暴走を抑え込もうとするがゆえの自壊に近かった。
強すぎる力は、強すぎる痛みを引き起こす。
それは猟兵たる己もまた同じであると、自戒しながら桑丸は、帝竜ガイオウガのひび割れた姿を前に己の任務を完了させるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「生命力に満ちてるねぇ…。良いね、これもまた僕好みの敵さんだ。」
丁度良い具合に火があるから、煙草に火を点けてっと。
ふぅ、敵さんに近づくには先ずは炎を突破するのが必要と。
なら、深紅を伸ばし敵さんのどっかに固定、ついでに僕も一緒に敵さんまで運んでもらう事にしよう。炎は異空間収納のすゝめに収納し最低限のダメージに抑えられれば良いなぁ…。
敵さんの攻撃を凌げたらUCで吸血鬼化。その溢れんばかりの生命力を奪わせてもらおうか。
奪った生命力を強化に充てて二振りの大鎌でバラシにかかる。ダメージが酷くなりそうなら、再生の方にも生命力を回していこう。
「吸血したら燃えるかなぁ…。味は気になるけど…。」
全にして一。一にして全。
それは絶対的な生命体としての有り様であったのかもしれない。火山の如き巨躯を誇る帝竜ガイオウガ。
その身から溢れるのは圧倒的なまでの生命エネルギーの発露である。吹き荒れる火山や熱波は、その余波にすぎない。
ただそこに在る。
それだけで、この大地の生命は尽く燃やし尽くされた。生命とは一つ。ガイオウガたる、その身だけである。
だが、そんなガイオウガに対峙してもなお、燃やされぬ生命がある。
それは猟兵。
―――須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は見上げる。手にした煙草に火を付け、息を吸い込む。タバコの先が灰に成っていき、紫煙くゆる視界すらも熱波で歪む。
「生命力に満ちてるねぇ……。良いね、これまた僕好みの敵さんだ」
丁度いいからと煙草に火を付けたはいいが、咥え煙草をしている余裕はない。
一斉にガイオウガから放たれるガイオウガと同じ姿をした炎が殺到する。それは自身以外の生命体を一つも許さぬと言わんばかりの猛攻であった。
空を見上げれば、溢れる生命。
それをみてなお、莉亜は満天の星空を見上げたかのように煌めいた。
あまりの熱波に大気が歪んでいると言うに、彼にとってガイオウガは生命という星と同じであるのだ。
だからこそ、味わってみたい。
瞬時に紅い鎖、深紅がガイオウガ本体へと伸びる。それは、ガイオウガの拘束と同時に接近を狙う目的もあった。
だが、その目論見を打破せんと莉亜へと襲いかかるガイオウガの炎たち。
「―――敵さんに近づくには、まずは炎の突破、と」
莉亜の掌の上でバラバラと頁がはためく魔導書が現れる。放たれる炎は、魔導書『異空間収納のすゝめ』に吸い込まれていく。
それでも圧倒的な量の炎の前に捌ききれなくなる。肌を炎熱が灼き、焦がす。
「最低限―――……これで」
ガイオウガの巨躯へと取り付くが、本体の炎熱はさらに苛烈を極めた。ただ、そこに立つだけども莉亜の生命力は、まるで石臼にでもかけられたかのように削られていく。
これがガイオウガ。全にして一。一にして全と呼ばれる帝竜の力。
「我ノ存在ノ前ニハ、アラユル生命ハ尽ク燃エ尽キルノミ」
ガイオウガの咆哮じみた声が響く。それは一層、莉亜の生命力を削る熱波となって彼を襲う。
皮膚を焼き、じりじりと焦がす圧倒的生命。
それを前にして笑うのだ。
「気になっていたんだ……敵さんの味。炎だけれど、どんな味なんだろうって―――」
深々と突き刺さった深紅、鎖は未だガイオウガの外殻を貫いただけに過ぎない。
だからこそ、莉亜のユーベルコードが輝く。
大成功
🔵🔵🔵
不死者の血統(イモータル・ブラッド)。それは彼の体を吸血鬼化させるユーベルコードである。
その肌を焼く炎熱全てを弾き返すオーラが、触れたガイオウガの外殻から生命力を奪う。それは吸血行為と同じであるが、即座に彼の灼かれた皮膚を再生していく。
たった一瞬生命力を吸い取っただけでも、これほどの生命。
そして、彼は吸血するという行為に長けた猟兵である。
溢れんばかりの生命力を奪い、尚、それでも炎熱の効果を受けながらも生存し続ける。
奪い取った生命力は己の戦闘力を引き上げていく。
「吸血したら燃えるかなぁ……そう思っていたけれど、案外燃えないもんだねぇ!」
実際に莉亜の体を支配するは、ガイオウガの溢れんばかりの生命力。傷を癒やしても尚、その力は強化に当てても持て余す。
「さあ、バラさせてもらうよ―――」
手にした二対の大鎌。さらなる吸血を求めて、白と黒の大鎌が振るわれ、ガイオウガの外殻を破壊していく。
気分が高揚する。
これほどまでに生命力溢れたオブリビオンがあっただろうか。いたかもしれない。けれど、今、目の前に在るのは己にとっての御馳走に他ならない。
全にして一。その生命力は、まるで凝縮した生命のスープそのものだ。
莉亜は喜びの声を上げながら、ガイオウガの外殻をずたずたに引き裂いていくのだった―――。
村崎・ゆかり
これまた、とんだ化物ね。空に浮く群竜大陸に、これほどの溶岩がどこから供給されてるんだか。むしろ垓王牙が溶岩の供給源か。
火界咒もこれじゃ使えないか。
戦場へは飛鉢法を使って侵入。以後、その上で活動。
飛んでくる火山弾は「衝撃波」を帯びた薙刀で打ち返すか、鉄鉢の機動力で回避する。
近づくだけでも一苦労だわ、これ。「火炎耐性」があるからまだ何とかなってるけど。
それじゃ、やりましょうか。
飛鉢法で垓王牙の体表間近を飛び回り、神経に相当するものが通ってそうなところに、魂喰召喚で式を宿らせた薙刀で切り裂いていく。
とどめはもちろん首の付け根、人間で言えば延髄の部分。
物理的に手に負えない相手は、精神から攻めるに限る。
全身の火口が炎を吹き上げる。
猟兵たちの攻撃は、たしかに帝竜ガイオウガの外殻を傷つけ、その力を削ぎ始めていた。
だが、その身に内包した力は未だいささかの衰えも見えない。黒炎は吹き上がり、熱波は大気を歪ませる。
その強烈なる熱波を受けて、飛針法によって浮かぶ鉄の大鉢に乗る村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、帝竜ガイオウガの生命体としての凄まじさを実感していた。
「これまた、とんだ化け物ね。空に浮く群竜大陸に、これほどの溶岩がどこから供給されてるんだか」
彼女の乗った鉄の大鉢がや揺らぐ。ただ、そこに在る。それだけで大気を震わせ、踏みしめた大地からは溶岩が吹き出す。
大地は割れ、生命の生存する予知など、どこにないような惨憺たる現状を眼下に広げていた。
「むしろ垓王牙が溶岩の供給源か。火界咒もこれじゃ使えないか……」
彼女の持つユーベルコードもまた炎による攻撃のものがある。今回は灼熱の体たるガイオウガの前にしては、返って逆効果であるかもしれない。
ならば、とゆかりが思索した瞬間、彼女を襲うのはガイオウガの全身の火口から吹き出す火山弾。
火山の噴石を思わせる弾は彼女の乗った鉄の大鉢を狙って放たれている。
「くっ―――!」
接近しようにも、この火山弾をどうにかしなければ、ままならない。衝撃波を帯びた薙刀『紫揚羽』が火山弾を打ち返すが、炎の獣となって再び追いすがる。
火炎耐性があるゆかりの身でなければ、ここまで戦うこともできなかったかもしれない。
対策を講じてもなお、接近は難しい。だが、どんなに難しいことであっても、彼女はやり遂げなければならない。
このまま帝竜であるガイオウガを放置していては、アックス&ウィザーズにどのような被害を齎すかわからない。
「近づくだけでも一苦労だわ、これ」
最後の1体の炎の獣を薙刀でなぎ払い、ようやくゆかりの乗った大鉢がガイオウガの本体へと至る。
近づくだけでも一苦労であったというのに、近づけば今度は熱波が彼女の肌を焼く。火炎耐性があるのに、それでもなお彼女を襲う熱波は尋常ならざる熱量であるのだ。
「それじゃ、やりましょうか」
大鉢がガイオウガの体表間近を飛び回り、彼女はガイオウガそのものを観察する。
生命体、生物の形をとっている以上、神経に相当するものが通っているはずだ。それを彼女は探す。
脈動するマグマの胎動は、荒ぶる生命の輝きそのものだ。そして、龍脈と表現するのが良いのか……脈動するマグマを見つけ、そこに当たりをつける。
「急急如律令! 汝は我が敵の心を砕き、抵抗の牙をへし折るものなり!」
ユーベルコード、魂喰召喚(タマクイショウカン)。
彼女の手にした大薙刀『紫揚羽』に魂喰らいの式神が込められていく。その一撃は肉体を傷つけるものではない。
振るわれる大薙刀の一撃が、たしかにガイオウガの脈動するマグマを捉える。傷はつかない。けれど、ガイオウガの体が身じろぎするようにのたうつ。
それは魂喰らいの式神の力によって、このガイオウガたる戦闘意欲を支える魂魄のみを攻撃したのだ!
大鉢に乗りながら、突き立てた大薙刀を縦横無尽にガイオウガの体……否、体を形成する魂魄そのものに攻撃を咥えながら、最期には高く飛び上がり、ガイオウガの首の付根、人間で言えば延髄の部分へと突き立てる。
「物理的に手に負えない相手は、精神から攻めるに限る!」
そのユーベルコードの一撃は、硬い外殻に覆われたガイオウガの魂魄そのものを傷つけ、巨山の如き体をのたうち回らせるのだった―――。
大成功
🔵🔵🔵
グァーネッツォ・リトゥルスムィス
火山よりも熱い生命体って凄すぎだぞ
だが大好きな故郷の世界を脅かすなら引けないぜ!
鍛えた筋肉と活力とオーラ防御で火山とガイオウガに対する地形と火炎の耐性を上げながら
火口がある様には見えない腹部に目掛けてダッシュ&ジャンピングクライミングだ!
ガイオウガ自身を盾にして背中や顔の火口から出す火山弾の直撃を避けたり、
直撃を避けた分だけ時間を稼いで炎の獣と延焼に捕まる前に逃げ切ってやるぞ!
先制攻撃を防いでガイオウガまで肉薄出来たらUCの「共闘魅魔」に
オレの有りっ丈の精気を渡して
UDCアースの妖怪であり死と火の扱いが上手い火車の猫娘として
ガイオウガのたっぷりな生命力を奪って貰うぜ
オレが今戦えない分頼んだぞ!
群竜大陸の火山帯は、もはや生命が存在してよい場所ではなくなっていた。
帝竜ガイオウガが一歩を踏み出す度に、大地は割れる。その奥底から活性化されたマグマが噴出し、あちらこちらから黒炎が噴き上がり続けていた。
巨躯であり、さらに有り余る生命力は彼らの生命が、一にして全であることを如実に表していた。
「我ハ全。我ハ一。我等ノ進ム先ニハ、全テガアル」
全身の火口から吹き出す火山弾が、まさしく噴石のごとく大地へと穿たれていく。さらにその落ちた噴石の如き火山弾は炎の獣へと変じ、炎と死の大地を疾駆する。
彼ら炎の獣が目指す先にあるのは、たった一つである。
この大地において、生命と呼ばれるべきは帝竜ガイオウガのみ。故に、視線の先にて存在する生命は疾く滅ぼさねばならない。
その名を―――猟兵という。
世界に選ばれた戦士。あらゆる世界を渡り、あらゆるオブリビオンによる暴虐を防ぐ戦士。
その一人である、グァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)もまた鍛え上げた筋肉と活力……それに伴うオーラ防御にて、この環境に適応していたのだ。
「火山よりも熱い生命体って凄すぎだぞ。だが、大好きな故郷の世界を脅かすなら引けないぜ!」
彼女の覚悟は固い。きっと彼女は何を言われようとも退くことはないだろう。
アックス&ウィザーズは、彼女の故郷である世界である。このまま帝竜であるガイオウガを放置していては、滅ぶしかない。そんなことを許すわけにはいかないのだ。
炎の獣が迫る。だが、グァーネッツォは逃げるでもなく、回避するでもなく真っ向から駆ける!
「火口から弾を放つっていうんなら―――! そのどでっ腹になら!」
そう、あくまでも火口から弾を打ってくるのだ。火口があるのは背中や上面のみである。ならば、その腹部は火口が見当たらない。
一気に駆け出したグァーネッツォは炎の獣たちを飛び越え、ガイオウガの外殻へと取り付く。
この距離であるのなら、いかに火口弾が彼女を狙おうとも、腹部に取り付いた彼女を攻撃するすべはない。
だが、炎の獣へと変じた弾は、彼女を追い立ててくるのだ。
「おっと、あいつらのことは忘れかけて……るわけないんだぜ!」
直撃を避けたのならば、それだけ時間を稼いだということだ。炎の獣に捕まる前に、一気に逃げ切ってみせるのだ。
「ここまで来れば……腹は外殻が薄いよな!頼んだぜ!」
ここに来てグァーネッツォが発動したのは、共闘魅魔(ヘルパーサキュバス)と呼ばれるユーベルコードだった。
彼女の精気を代償に召喚される魅魔。それらはグァーネッツォが代償にした精気に比例したぶんだけの戦闘力を発揮する。
そして、グァーネッツォが明け渡した精気は……。
「オレのありったけを渡すんだ!頼んだぜ!」
グァーネッツォは、自身の精気が尽きる寸前まで魅魔に精気を代償として支払う。ぐらりと体が揺れる。
取り付いたはいいが、このままでは!というところで召喚した、かつてUDCアースで妖怪であり死と火の扱いに長けた火車の猫娘がグァーネッツォの体を抱える。
彼女が伸ばし手がガイオウガの腹部に触れ、『生きる』という快楽エネルギーを摂取しはじめる。
それはグァーネッツォが代償にした精気の量により、強力に強化された攻撃であった。
ガイオウガの体が震える。
それは、生命の塊であるガイオウガにとって外殻を傷つけられるよりも、強烈なる攻撃であったのだ。
「オレが……今、戦えないぶん、頼んだ……ぞ!」
極限まで精気を代償にしたグァーネッツォは、猫娘に抱えられながら散々にガイオウガから生命力を吸収して離脱していく。
目には見えない変化ではあるが、たしかにグァーネッツォの戦いによって、ガイオウガは、その生命力を減衰さられたのだだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
明石・真多子
あちち、流石にこの暑さは身体中が干上がりそう!
もたもたしてたらタコなのにスルメになっちゃうかも!?
そうと分かれば干しタコになる前に急いで勝ち星取りにいかなきゃね!
見るからに相手は火属性…だったらアタシ達の方が有利のはず!臆せず突っ込むよ!
キミが飛び道具で来るならこっちは【軟体忍法蛸引き包丁の術】で対抗だ!
背番号九番、マダコ!吸盤で墨刀(ぼくとう)をしっかり握って…火山弾を伸ばした墨刀でまとめて二つに割って打ち返した!まさに倍返し!
バットを投げ捨て、返す弾と共に走者は懐へ!
ピッチャー返しに怯んだ隙に、再び天高く振りかぶり…場外ホームランスイングでピッチャーへお礼参りだ!
やったー!ばんざーい!!
火山帯はもはや、帝竜ガイオウガの踏みしめる足によって、活性化させられ、マグマ吹き出す大地へと変貌していた。
もはや、この光景は天変地異と同じ様相であった。ありとあらゆる場所からマグマが噴き出し、生命を拒絶する。
この地において、生命とは帝竜ガイオウガであり、それ以外の生命は存在すら許されない。
「我等ハ、唯一ニシテ、絶対ノ生命―――我等ガイオウガ。全ニシテ一。遍ク全テハ我デアル―――!」
その咆哮は、圧倒的な生命力を持って齎される破壊であった。
大気が炎熱で歪み、あまりの熱波に対峙する者の肌を焼く。
「あちち、流石にこの暑さには体中が干上がりそう!もたもたしてたら、タコなのにスルメになっちゃうかも!?」
明石・真多子(軟体魔忍マダコ・f00079)の体が真っ赤に茹で上がりそうなほどに水分を奪われていた。
それもそうだろう。タコとは海洋の生物。軟体魔忍である真多子にとって、あらゆる水分を蒸発させるほどの高熱は天敵と言ってもいいかもしれなかった。
これは短期決戦で挑まねば、いずれジリ貧になって敗北を喫するは明白な事実っであった。
「そうと分かれば、干しタコになる前に急いで勝ち星取りに行かなきゃね!」
自身が見る見る間に干からびてしまう様子を想像して、一瞬青ざめたが、すぐに顔色を取り戻して戦場を駆ける。
だが、彼女を襲うのはガイオウガの火口から放たれれう火山弾。噴石の如き弾は、当たればただでは済まない。
それにたとえ躱したとしても、炎の獣へと変じて真多子へと襲い来るのだ。
ならば、と真多子のユーベルコードが輝く。
「軟体忍法、蛸引き包丁の術!8枚におろしてあげるから覚悟してね!」
そのユーベルコードの名は軟体忍法蛸引き包丁の術(オクトパスラッシュ)!どこまでも伸ばせる墨で生成した墨刀を構える真多子。
「キミが飛び道具で来るなら、この術で対抗だ!」
どこからか、ファンファーレが聞こえてきそうな構えを取る真多子。
足を止めた彼女を狙って火口から放たれる火山弾が放物線を描いて、彼女へと降り注ぐ。
受けても相当なダメージが来るだろう。避けたとしても、炎の獣となって彼女を襲う。
どちらにしても、彼女の足を止め、ジリ貧の状況へと導くのだ。だが、彼女が手にしたユーベルコードによって生み出された墨刀は、どこまで伸ばせるのだ!
「背番号九番、マダコ!」
蛸の副腕に備えられた吸盤でしっかりと墨刀を構える。
その打法はまさか―――!
火山弾が放物線を描く噴石であるというのなら、その球種はきっとチェンジアップ。引き伸ばされた墨刀は、バットである。
火山弾の真芯を捉える墨刀。インパクトの瞬間に、火山弾が2つに割れるも、気にもとめない。
そのままピッチャー返しの要領で火山弾をガイオウガへと跳ね返すのだ!まさに倍返しだ!
「走者、マダコ! いくよー!!」
見事なピッチャー返しの後、真多子は一気にガイオウガの懐へと駆け込む。
2つに割れた火山弾が炎の獣に変ずる間もなくガイオウガの顔面にぶち当たり、たたらを踏む巨体。
その隙に真多子は天高く墨刀を伸ばし、ぐわらきぃぃん!とガイオウガへとお礼参りの一撃を叩き込むのだ。
その一撃、まさにホームラン級!
「やったー! ばんざーい!!」
これが野球であったのなら、場外ホームランである。残念ながら、野球でなくて帝竜戦役なのが、惜しむべきことであったのかもしれない―――。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
大地を原始の時代に戻さんとする程のあの力
この大陸、いえ、この領域から出すわけにはいきません
私にとって竜退治は騎士の『誉れ』では無く『務め』なのですから
●防具改造で機械馬や自身の超高温●環境耐性を高め、機械馬に●騎乗し接近。センサーでの●情報収集で火山弾の飛来を●見切り機動力で回避
立ち塞がる炎の獣はランスの●なぎ払いや●踏みつけ、航空戦力は格納銃器での●スナイパー射撃で迎撃
距離を近づけたら銃器の弾種をUCに変更
尾や足に注意しながら片脚の一点に射撃
超高温から急速凍結、例え放つ熱で溶かされても幾度も繰り返せば強度劣化は必至
そこを●怪力●ロープワークで鉄球宜しく振り回す大盾で粉砕
敵の機動力を奪取
ただの一歩。
それだけでも帝竜ガイオウガの一歩は恐るべき力を持つ。踏みしめた大地はひび割れ、その奥から活性化された大地の力たるマグマが噴出する。
元より此処は群竜大陸の一角である火山帯である。そんな場所において帝竜ガイオウガが闊歩しようものなら、どれほどの被害が出るかわからない。
現にこの現状は凄まじい死と炎の大地へと変貌を遂げているに相応しい状況である。炎熱放つ体は、周囲に熱波を撒き散らし大気を歪めるほどの熱で満たされている。
「我、ガイオウガ故ニ、我等ハ全ニシテ一。我等以外ニ生命ハ要ラズ―――」
ガイオウガの体に生えた火口が蠢く。
それはその身に蓄えた強大なる生命エネルギーの奔流そのものであった。火口から吐き出されるようにして、噴石じみた火山弾が放たれる。
それらは大きく弧を描きながら大地へと激突すると、炎の獣へと姿を変ずるのだ。一斉に駆け出す炎の獣たち。彼らが見据えるは、この大地に進撃せし猟兵たち。
「大地を原始の時代に戻さんとする程のあの力……この大陸、いえ、この領域から出すわけにはいきません」
炎の獣が目指すは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。その機械の体はすでに超高温たる環境に対する耐性を備えている。
彼が騎乗する機械白馬「ロシナンテⅡ」もまた動揺である。ウォーマシンである彼らにとっても熱は大敵である。
高熱が機体に籠れば、それだけで熱暴走の危険をはらむ。故に、高熱に対する備えは完備していなければならないのだ。
「私にとって竜退治は騎士の『誉れ』ではなく『務め』なのですから―――いざ!」
機械の白馬であるロシナンテⅡが嘶くの如き駆動音と共にトリテレイアを火山の大地を疾駆する一騎へと変貌させる。
彼のセンサーで火山弾の飛来は予測可能である。機動力で勝るこちらに、放物線を描いて落ちてくる火山弾の回避など容易いことである。
だが、落ちた火山弾はすぐに炎の獣へと姿を変えるのだ。
「立ち塞がるというのなら―――!」
ロシナンテⅡの前足が跳ね上がり、追いすがる炎の獣を踏み潰す。後ろ足で蹴り上げ、吹き飛ばしながら、トリテレイアは進む。
空を舞う炎の獣には、肩部格納武器である銃器で以て迎撃し、尽く撃ち落としていくのだ。
疾駆する人馬……否、機馬一体となったトリテレイアは銃器に込められる断層を変える。
超低温化薬剤封入弾頭(フローズン・バレット)。それは炸裂する特殊弾等に封入された薬剤である。
それが帝竜ガイオウガの片足の一点へと放たれるのだ。
ガイオウガは巨躯故に軽快な動きはない。だからこそ、踏みしめるの足こそがウィークポイントになりえる。
「氷の剣や魔法ほど華はありませんが……武骨さはご容赦を」
放たれた弾丸がガイオウガの片足の一点を穿ち続ける。一発目は炸裂する前に炎熱で溶け落ちた。
だが、二射、三射と放つ弾丸は距離を詰めるほどに弾丸に封入された特殊薬剤が散布され、凍結させていく。
そして、装填された全ての弾丸が放たれ終わった時、分子運動を低下させる急速凍結弾はガイオウガの片足を氷結せしめる。
「コノヨウナ稚拙ナル技デ我等ヲ抑エラレルト思ウナ―――!」
凍結したガイオウガの片足が一気に高温によって温められ、凍結を解除していく。
だが、それこそがトリテレイアの狙いである。
急激に冷やされたものが急激に熱を帯びればどうなるか。そう、劣化が起こる。
それは火山の如き体躯を持つガイオウガも例外ではない。
「その奢りが、慢心を呼ぶと知るが良い、ガイオウガ―――!」
トリテレイアの大盾がワイヤーと接続され、鉄球のごとき勢いでガイオウガの片足……劣化された外殻毎打ち貫くのだ。
絶叫じみた咆哮が火山帯に鳴り響き、片足をもがれたガイオウガが大地に倒れ伏す。
その地響きはまさにトリテレイアにとって竜退治の……そう、『務め』を果たす一撃にふさわしかったのである―――!
大成功
🔵🔵🔵
天道・あや
レガリアスよし!サウンドウェポンよし!そして!あたしの声よし!……それじゃ、いっちょ火山を、帝竜を、魅力してみせる!
おっと!炎が帝竜そっくりに!?器用な事するなぁっと、危なっ!と、とりあえず回避!レガリアス!火山でもよろしくね!【ダッシュ、見切り、足場習熟】
……と、避けるのはいいけど、…避けてるばっかじゃ、勝てないよね。……よし!ここは、突っ込む!炎に耐えながら帝竜に接近する!……この炎なんかより、あたしの情熱の方が……熱い!ゆえに耐えられる!【激痛耐性、火炎耐性、限界突破】
そして、ある程度接近出来たら、サウンドウェポンを構えて、UC発動!【鎧砕き、属性攻撃、楽器演奏】
これが!あたしの!想い!
群竜大陸の一角である火山帯は、炎と死だけのが存在する生命拒絶する大地へと成り果てた。
存在できる生命は帝竜ガイオウガだけである。ここには、もはやなにもない。あるのは踏みしめられ、活性化した大地より噴出するマグマだけであった。
帝竜ガイオウガは数多の猟兵たちの攻撃により、ついに頓挫し自律的な行動をできなくなっていたが、ガイオウガ自身が存在するだけで高熱を放ち続ける圧倒的なエネルギーの塊である。
倒れ伏したとしても尚、その力は健在であった。動かなくても、敵である猟兵を殲滅戦とする力は放たれ続けているのだ。
それは炎の竜。ガイオウガと同じ姿をした炎が猟兵目掛けて飛びかかる。その圧倒的な数は、空を覆っても尚ありあまる。
その恐怖さえ感じる光景を前にしても怯まぬ者がいる。
天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)―――そう、偶像ではなく一番星であるスタァを目指す者!
そんな彼女にとって、目の前に広がる光景は足を止める理由になっていなかった。
「レガリアスよし! サウンドウェポンよし! そして! あたしの声よし!」
彼女の言葉は希望に満ち溢れていた。絶望広がる光景を前にしても、何一つ陰ること無く響く声は、彼女の心根を現すかのようだった。
大気を圧縮し、駆動力へと変ずるインラインスケートが彼女の体を前進させる。
「それじゃ、いっちょ火山を、帝竜を、魅了してみせる!」
駆け出す。それは炎熱放つ大地であっても変わることはない。
あまりの高熱にあやの額から汗が吹き出すが、気にしない。飛び散る汗ですら、キラキラ輝く星のように舞い散るのだ。
「おっと! 炎が帝竜そっくりに!? 器用なことするなぁっと、危なっ!」
レガリアスの駆動が、あやの体を空へと舞い上がらせる。それはまるでステージの上で踊るようだった。
この数瞬ですでに、あやはステージである火山たる足場を習熟しつくしていた。もはや、この地において、あやの進路を妨げることなどできない。
だが、炎の竜たちは依然、健在である。あやに襲いかからんと飛びかかり、数で持って圧しようというのだ。
だが、彼女は負けない。
「この炎なんかより、あたしの情熱のほうが……熱い! 故に耐えられる!」
その言葉通りに彼女は炎の龍たちへと突っ込んでいく。
それは最短ルートであるからだ。耐えて、耐えて、耐えて……その先に本体であるガイオウガがいる。
最速最短で彼女は、この世界を魅了する。彼女の歌が響く限り、あやの心が折れることはない。
一気に炎の竜たちの群れを突き抜けて、あやの体がガイオウガの眼前に躍り出る。サウンドウェポンは、すでに臨界状態だ。
あとは彼女の歌を打ち込むだけだ!
「これがあたしの!サウンド!ミュージック!想い!さあ、最後まで聴いていってね!」
彼女のユーベルコード、サウンド!ボンバー!が炸裂する。それは彼女の歌と楽器演奏から放たれる夢と未来を込めた音符。
その具現化された衝撃波、ガイオウガの外殻を震わせ、さらなる重圧でもって、その身を立ち上がらせない。
ここで、この帝竜は留める。押し止める。あやの歌は彼女が思い描くスタァの如き煌きを周囲に放ち続ける。
それは、彼女の自身がすでにもうスタァそのものである証であったのかもしれない。生命なき大地にあってもなお、彼女の放つ生命の輝きは鮮烈そのものであった。
まばゆいほどの生命の躍動。
声が、魂が、あらゆるものを、時間を、場所を越えて響き渡る。それこそが―――。
「これが! あたしの! 想い!」
大成功
🔵🔵🔵
ジャム・ジアム
アドリブ歓迎
猛き灼熱の竜……すごい熱ね。
精一杯やるだけよ
操作可能な炎の竜とは、面倒だわ
合体される前にできるだけ数を減らさなきゃ
まず攻撃に備えて『ガラス蜘蛛・護り現』で
自身の強化・回避を最優先に。
【見切り・野生の勘・環境耐性・火炎耐性・オーラ防御】で不意打ちに警戒
布で受け交わし、負傷を最小限にする
攻撃が少しでも止み、隙ができた瞬間
『落差の坩堝』を発動
敵と周囲から熱を吸収し、強化した念で
目についた個体から弱体化させたところを『しっぽの針』で【暗殺】
合体を試みるなら
攻撃の念に加え、防御に回した『護り現』を『サイコキャノン』で更に増幅し
全霊の力で破壊を試みるわ
熱い熱いあなたの炎、私の力にさせてもらうわ
目の前に広がる光景、それはまさに死と炎の大地であった。
何処を見ても、生命が存在しない。ただ生命として存在を許されるのは、帝竜ガイオウガたった一つのみ。そして、そのガイオウガそのものである炎の獣だけが、このマグマ溢れる大地を闊歩できるのである。
数多の猟兵たちの活躍によって、ガイオウガ体は横転し、この大地へと釘付けにされている。
だが、それだけの攻撃を受けても尚、ガイオウガは健在。その力は未だ大地を破壊せしめるには十分すぎるほどの余力があると言ってもよかった。
ジャム・ジアム(はりの子・f26053)が見上げる空に広がるのは、炎の竜の大群。ガイオウガより出る炎の化身。
それらは炎で持って空を焼き尽くさんばかりに覆い隠していた。
「猛き灼熱の竜……すごい熱ね」
圧倒されるほどの熱量。熱波は彼女の肌をジリジリと焼くほどである。いかに彼女が通常の人よりも丈夫であるとは言え、この熱は彼女の体力を容赦なく奪っていくだろう。
それにあの炎の竜は合体すればするほどに強力な個体へと変じていくのだ。
「それでも。精一杯やるだけよ」
そう、それしかないのだ。やるしかないと決めた以上、彼女には覚悟が備わる。後退はない。彼女の銀の薄布―――ガラス蜘蛛と呼ばれる空気の層でよって高熱の熱波を防ぎながら、護り現のオーラが、さらに防御を固める。
ひらりと手にした銀の薄布は、軽やかに宙に舞う。
炎の竜たちがジアム目掛けて殺到する。
「コノ地ニオイテ、生命トハ我等ノミ! ガイオウガタル我等ノミガ生命トシテノ生存ヲ許サレタモウ存在!」
ジアムという、猟兵という生命を許さぬとばかりに彼女に襲いかかる炎の竜たち。
だが、ジアムにとって、それはすでに見切った攻撃だった。
生命……生物の形を取っている以上、それは元になった生き物の可動域を持つ者たちである。
彼女はもうすでに、猛き灼熱の竜たるガイオウガの姿を見ていた。
どれだけ帝竜であるガイオウガが強力なオブリビオンであったとしても、生命として存在しているのであれば、彼女の青い瞳は、戸惑うことはない。
銀の薄布が華麗に舞い、炎の竜たちの攻撃を尽くいなす。
それは華麗なる舞であった。場違いなほどに流麗なる舞であった。銀の薄布が舞う度に、炎の龍たちはいなされ、大地へと激突していく。
「猛る力は、荒れ狂う波のよう。だから受け流せる。流れに逆らわず、むしろ、舞う方が難しいと感じるほど―――」
ジアムの瞳が炎の竜を捉える。
ユーベルコード、落差の坩堝(アジタート)が輝く。その覚悟を持った視線は、炎の竜を捉え、彼らと、その周囲にある熱を一気に吸収し奪い取る。
急激なる温度変化によって、炎の竜たちがたちまちに大地に臥す。それを見逃さずに強化されたジアムのしっぽの針にて、次々に討たれていく。
それはまさに蝶のように舞い、鉢のように刺すという言葉を体現するかのようだった。
「我等ハ全! 一ニシテ全!」
炎の竜たちが次々と合体し、強大なるガイオウガそのものへと変貌を遂げようとした瞬間、ジアムの護り現のオーラが攻勢に転ずる。
彼女の腕にはめられた増幅器、サイコキャノンへとオーラがまとわれ、その威力を底上げする。
彼女の瞳が炎の竜を捉える。一度彼女の瞳に捉えられれば、それらが熱を持つ以上、彼女に奪い取られるのが定めである。
奪い取った熱は即座に力へと転化され、念波動となってサイコキャノンから放たれる。
その一撃はまばゆいほどの光。
彼女が見た生命の眩き光そのもの。どれだけ強大なる生命であったとしても―――。
「熱い熱い貴方の炎、私の力とさせてもらうわ」
ジアムの前には奪い取られる力でしかない。
サイコキャノンの一撃は、合体した炎の竜を一撃のもとに粉砕し、死と炎の大地にその生命の輝きを眩く照らし出すのだった―――!
大成功
🔵🔵🔵
忠海・雷火
地形を利用、平地外縁の岩場を盾に火山弾の直撃を避けつつ身を隠し移動。正確な位置を掴ませず、狙いを絞らせない
着弾を凌いだ直後、弾が炎獣に変わり此方に来る迄に可能な限り盾となる死霊を召喚
炎獣の動きや関節可動域等は姿形に準ずると判断、対獣・竜型の戦闘知識を使い見切や武器受け
獣が押し寄せ過密となった場合、体の下をくぐる様に回避する事で獣を盾にする
任意消去で互いが邪魔にならない数に絞ってきた際は、獣の脚を薙ぎ払い、動きを鈍らせ切り抜ける
避けられぬダメージは火炎・激痛耐性で軽減
垓王牙の足指にUCの血針を投擲、内から破らせつつ外部からも斬撃し捥ぎ取る
体勢を崩したら更に頭部、可能なら目へ針を投擲する二回攻撃
その大地は死ほ炎に包まれていた。
帝竜ガイオウガが踏みしめた大地は、その地下奥底に眠るエネルギーを活性化させる。それはマグマの噴出という形で相成り、その噴き出したマグマによって、この地は生命を拒む煉獄の地へと変じていた。
この大地において、生命とはガイオウガだけである。だが、そのガイオウガもまた数多の猟兵たちによって片足や外殻を失い、その力を大きく減衰させていた。
それでも、まだなお、大地を疾駆する忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)を捉えんとする火口から放たれる火山弾は脅威そのものであった。
「我等ハ滅ビヌ! 我等ハ全デルガユエニ、一。一ガ残レバ、ソレハ、全デアルガユエニ、滅ビヌ!」
雷火は、死と炎の大地を駆け、本体たるガイオウガへと迫る。
しかし、火山弾をやり過ごしたとしても、着弾した火山弾は炎の獣へと姿を変ずるのだ。
「炎の獣……数は多いけど」
彼女の召喚陣の刻印が即座に死霊を召喚する。それは盾の代わりに使うための存在であった。
「関節可動域……それは、姿形に準ずる……なら」
炎の獣の形は様々だ。空を飛ぶ鳥のような形をしたもの、虎や狼など、四足の獣の姿をしたもの。様々である。
だが、その姿形が動物たちのものであるというのなら、その行動や稼働は全て元となったもの以上の行動を見せることはない。
だからこそ、彼女にとって炎の獣たちは恐れるに足らぬ存在なのだ。
雷火は戦場を駆け抜ける。
彼女の頭の中に在る対獣・対竜型への戦闘知識でもって対処すれば、何も恐れることはない。銘なき太刀、短刀で受け流し、いなす。
時に刃を交え、その体を切り裂き霧散させるのだ。だが、徐々に火山弾が地面へと弾着し続け、その獣たちの数は過密と言っていいほどの数へと増えていた。
「多勢……だけど、それでも、道はまだある」
雷火はそのまま、獣の足を太刀でなぎ払い、動きを鈍らせては立ち回り続ける。呼び出した死霊たちを盾にして、道を切り開くのだ。
眼前には動けぬガイオウガ。
強く踏み込む足。
「捉えた―――」
彼女のユーベルコード、連結召喚・餓犬之蝕(レンケツショウカン・ガケンノショク)が発動する。
刻印から放たれた術式誘導用の血針がガイオウガの足指へと吸い込まれるように突き刺さる。
それはまさに象が蜂に刺されたのと同じことであったことだろう。ガイオウガは、その一撃に身じろぎ一つしなかった。
―――だが、その一撃は。
「我が身に宿る餓犬よ。血道を辿り、内より喰い散らせ」
刻印内のUDCをガイオウガの体内へと転移させるためのマーカーにすぎなかったのだ。
転移したUDCがガイオウガの肉の内側から食い破る術式を展開し、強靭なる外殻の内側を散々に痛めつける。
痛みにのたうつガイオウガの体が暴れ、大地に激震が走る。
それでも雷火は戦いを止めない。足を止めない。頭部、目へと放たれる血針は、さらにガイオウガの内部の生命力を食い破らん限りの暴虐を引き起こす。
「―――過去は殺す。それが私という存在」
雷火の背後でガイオウガの生命が削れる絶叫が鳴り響いた―――。
大成功
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メンカル・プルモーサ
…冷却術式で対応してもこの熱さ…本当に全身が火山だねこれは…
…まずはあの竜の炎を迎撃から…合体されると厄介だからその前に…
…術式銃【アヌエヌエ】から氷結術式を込めた弾丸を発射…
…【アルゴスの眼】と連動した照準補正機能により正確に乱れ撃って迎撃するよ…
…そして、次の炎が来る前に【竜屠る英雄の詩】を発動…装備武器に竜殺しの概念を付与…
…素早くリロードしつつ再び氷結弾をガイオウガへと放つよ…
…例え火山であろうと……ガイオウガが竜であるならばこの竜殺しの弾丸からは逃れることが出来ない…
…弾丸を撃ち込みつつガイオウガのエネルギーの流れを読んで…その『核』に向けてトドメの一撃を撃ち込むよ…
その威容、その巨躯、どれをとっても脅威的な能力を有していることがひと目で分かる。それはどの帝竜であっても同様のものであったことだろう。
だが、この帝竜ガイオウガは圧倒的な生命としてのエネルギーに満ち溢れていた。
ただ一歩を踏み出すだけで、大地に眠るエネルギー……即ちマグマを活性化させ、大地を割っては噴出させるほどの力を持つ。
それはもはや人知を超えた存在であり、ただ圧倒されるばかりである。
「……冷却術式で対応しても、この熱さ……本当に全身が火山だね、これは……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、あまりの高温に額に噴き出した汗を拭う。火山帯であり、なおかつガイオウガの能力を考えた時に備えたはずの冷却術式。
それであってもなお、この高熱の大地の生命の生存を許さぬ環境に舌を巻く。
さらに数多の猟兵たちの活躍により、外殻や片足に損害を与えられているのが行幸であった。
これ以上大地を踏みしめられて活性化されては、そもそも戦うことすら困難になるところであったからだ。
しかし、動けぬガイオウガから放たれた炎の竜たちがメンカルを標的として飛んでくる。空を覆うほどの竜たちが、メンカルへと飛ぶ間に次々と合体を果たしていく。
「……まずは、あの竜の炎の迎撃から……合体されると厄介だから、その前に……」
そう、あの炎の竜たちは合体すればするほどに強大なる存在へと変貌を遂げる。手をこまねいている時間はない。
手にした術式銃であるアヌエヌエの銃口を炎の竜の大群へと向けうる。そこには氷結術式を込めた弾丸。
メンカルの眼鏡であるアルゴスの眼が情報収集し、あらゆる大気の乱れも即座に照準に補正を加えてロックする。これにより、どれだけ乱れ打とうが即座に演算を終えて、メンカルの射撃を百発百中の魔弾へと変えるのだ。
次々と氷結魔弾によって堕ちていく炎の竜たち。
第一波は無難に防ぐが、それでも空を覆う炎の竜の数は凄まじい。これが帝竜たる力であるのだろうか。
しかし、彼女は慌てない。彼女のユーベルコードは、竜に対しては絶対である。
何故なら、それは概念の戦い。
元は獣であったのかもしれない。竜という存在ではなかったのかもしれない。
だが、ここアックス&ウィザーズにおいて、帝竜として存在するのであれば―――。
「厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業」
彼女の術式銃アイエヌエに概念術式が搭載される。それはユーベルコード、竜屠る英雄の詩(ドラゴンスレイヤーズ・バラッド)。
「たとえ火山であろうと……ガイオウガが竜であるならば、この竜殺しの弾丸からは逃れることができない……」
アルゴスの眼が捉える。
ガイオウガは、その一撃を阻止せんと咆哮するも、もはや遅きに失する。彼女のゆーべるコードを発動させた時点で、この滅びは決定的であった。
そう、この戦いは概念の戦い。
すでに帝竜であると決定づけられたガイオウガにとって、この術式魔弾こそが破滅の一射。
アルゴスの眼が告げる。
ガイオウガの核たる腹部の高熱源体である核を。
「さようなら、ガイオウガ。汝は竜であるのなら、魔女の一撃は災厄断ち、穿つ魔弾の一射―――」
放たれた一撃は、ガイオウガの核を打ち貫き、その体を崩壊させる。
ぼろぼろと猟兵たちの与えた傷痕を綻びにして、巨体が崩れ去っていく。
―――竜屠る英雄の詩は、これにて終焉を迎えるのだった。
大成功
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