帝竜戦役㉑〜灼熱の王
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焼けた大地、岩肌からは炎と溶岩があふれ出て、あたりの景色は蜃気楼に揺らぐ。むせるような熱気と、硫黄の匂い。足音と共に大地が揺らいだ。
足音の主は巨大な一頭の竜であった。溶岩の如き全身から、炎を噴き上げ、生きるものとてない大地を我が物顔で歩んでいく。――不意に背中の炎がゆらぎ、うねり、一頭の狼の姿に変じて、大地へと駆け下りた。次いで一頭、また一頭と、炎の獣たちが竜より生まれ、竜と歩みを共にする。そうして、生れ出た狼が、虎が、獣たちが竜を見上げ、口々に声を放つ。
「オオ! 偉大ナル、垓王牙!!」
「全ニシテ壱! 壱ニシテ全!」
「備エメサレヨ! 備エメサレヨ!」
獣たちの言葉に同意するように、竜――ガイオウガはぶるりと身を震わせ全身の炎を強めていく。足元の大地がその熱に耐えきれず、赤熱化し泡立ち始めた。
炎の中から新たに生まれた獣。その姿は、ガイオウガによく似ていた。
「――奴ラ猟兵ハ、御身ニ届キ得ル”牙”デアル故ニ!」
ガイオウガが口を開き、吼える。その声が衝撃波となって焼けた大地に響き渡った。
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「さて。新たな帝竜への道が開いた。敵の名はガイオウガ。生きて歩き回る活火山とでも言おうか」
情報を伝えるのはディスターブ・オフィディアン(f00053)。
「強敵だ、間違いなく先手を打ってくるだろう。全身から生み出す炎の獣や、自らの分身。そして体を溶岩流に変えての超高熱の一撃。いずれの攻撃も速く、重い」
しかし、勝ち目はある、とディスターブはフードの下で笑った。
「火山の如き巨体だ、小回りは効かない。ガイオウガの攻撃の後、その隙を狙えば、有利に戦闘を進められるだろう」
言ってディスターブは手にしたグリモアを輝かせる。
「知らしめてやるがいい。大地を溶かし、すべての生命を焼き尽くす炎であっても。お前たちを相手にするには力不足であると」
雲鶴
竜殺し、求む! 雲鶴です。
今回は『帝竜戦役』帝竜ガイオウガとの戦闘シナリオとなります。
このシナリオでは『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』ことで、プレイングボーナスとなり、有利に戦闘を進めることができます。
とはいえ強敵でもありますので、ある程度の被弾や負傷などを生じる可能性が高いです。被弾時のリアクションや行動なども、要望があればご指定下さい。
戦場は火山地帯、岩肌が露出し溶岩が流れる、起伏の多い地形となっています。
それでは皆様の熱いプレイングお待ちしています。
第1章 ボス戦
『帝竜ガイオウガ』
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POW : 垓王牙炎弾
【全身の火口から吹き出す火山弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【『炎の獣』に変身する】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 垓王牙溶岩流
自身の身体部位ひとつを【大地を消滅させる程の超高熱溶岩流】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 垓王牙炎操
レベル×1個の【ガイオウガに似た竜の姿】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シル・ウィンディア
テラ(f04499)と一緒に
うぅ、暑いよぉ…
でも、相手は帝竜の一体だから
行くよ、テラっ!
テラとの連携だよ
姉妹の力思い知ってっ!
対敵UC
複製された竜の炎は…
【第六感】で感じて動きや挙動を【見切り】動くね
【空中戦】と【残像】で回避するけど
回避しきれなかったら
腰部の精霊電磁砲で【誘導弾】の【一斉発射】で薙ぎ払うね
【属性攻撃】で氷を付与して効果を増幅させるよ
被弾時は…腕部の光盾の【盾受け】で防ぐけど
あっつーいっ!!
でも、耐えないと…
連続で被弾時は氷の【オーラ防御】でも防ぐけど…
態勢崩しそうだね…
お返しは
【高速詠唱】で隙減らして【多重詠唱】で術式強化
【全力魔法】で限界突破のエレメンタル・ファランクス!
テラ・ウィンディア
同行
シル(f03964
大きいな
それに熱い
相手にとって不足なしだろシル
シルと攻撃を合わせる!
対POW
【属性攻撃】で全身と武器に炎付与
炎の影響を抑える為でもあるがおれの得意属性だからな
故に…炎の王におれは炎で挑む!
【戦闘知識】で火炎弾の軌道や動きの把握
【見切り・第六感・残像・空中戦】を駆使して可能な限り避け切る!
避け切れないのは槍で【串刺し】にして粉砕だ!
後は何が何でも致命だけは避け
反撃
上空を位置取り
これは古代の竜を滅ぼせし星の鉄槌
大地の化身
原初の星の竜よ
我が一撃を以て粉砕する!
槍を投げつけ【串刺し】
メテオブラスト!
【踏みつけ】で破壊力増強
突き刺した槍の石突に当て
極限の一撃を以て帝竜に捧げる!
カシム・ディーン
他の猟兵と共闘希望
こう…竜ってのはどうしてこうもみんな大きいのでしょうね
だが…いくしかないか
対UC
【属性攻撃】で全身に水属性を付与
ないよりはましでしょう
【迷彩】で存在を消し
【医術・情報収集・視力】でガイオウガの肉体構造を解析
そこから火炎弾の方向性を把握
当れば焦げ焦げですからね!逃げますよ!
そのまま巻き込まれたふりをして存在を隠し
他の猟兵の戦闘中の隙をついて静か接近
というか大きいですね
お前の目玉…頂きます
わたぬき発動!
ガイオウガの眼球を狙う!
一部で構わない
確実に奪う!
【溜め攻撃・盗み攻撃・盗み】で更に精度を強化!
だぁぁぁあちちちちち!だがちょいとばかり根性出しますよ!(帝竜の眼玉を狙う盗賊
佐伯・晶
文字通りとんでもない火力だね
油断せず皆と協力して打倒を目指すよ
火山弾の直撃を受けにくいよう
地形の起伏に隠れつつ接近
弾道や炎の獣が見えにくくなる分は
携帯ドローンを頭上に飛ばしたり
使い魔と分担して警戒したりして補おう
溶岩に遮られるなら空中浮遊で越えよう
熱気は火炎耐性で我慢できるかな
直撃しそうな攻撃は神気で時間を停め防御
これは僕なりのオーラ防御だよ
接近する途中に炎の獣が待ち構えているなら
ガトリングガンや使い魔の麻痺で排除しながら進もう
近づいたら邪神の抱擁を使用
注意して使うけど
この大きさなら外れる可能性は低いと思うよ
ガイオウガの時間を停めて隙を作り
大技狙う人をサポートするか
凍結魔法でダメージを与えよう
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ガイオウガが歩む大地では、すべての命が焼き尽くされ、炎と陽炎だけが揺らいでいた。その熱気は周囲の岩影まで届き、裏で様子をうかがう猟兵たちの額に珠のような汗をにじませた。
「うぅ、暑いよぉ……。でも、相手は帝竜の一体。放ってはおけないよね」
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)の言葉に、彼女の双子の妹、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)が不敵な笑みを浮かべる。
「ああ、大きくてそれに熱い。やっぱり竜はああでなくっちゃ。相手にとって不足なしだろ、シル」
闘志を燃やすテラと対照的に、げんなりとした様子を見せるのはカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)。
「こう……竜ってのはどうしてこうもみんな大きいのでしょうね。もうちょっとスケールの小さい帝竜はいないものでしょうか」
ぱたぱたと服の中へ風を送り込む彼の隣、岩の裏からガイオウガの様子をうかがうのは、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)。
「うわ、踏みつけた岩が溶岩になって溶けてる。岩肌に足跡が残っているのは、アレのせいか。……文字通りとんでもない火力だね」
不意に、ガイオウガが足を止め首をもたげた。燃え盛る瞳が彼らの潜む岩を見つめ、全身の炎が高く吹き上がる。
その炎が火の玉となって、空へ放たれるのを見て、晶は岩影を飛び出した。
「気付かれた! 火炎弾が来る!」
「行くよ、テラっ!」
「ああ、おれの炎、見せてやる!」
オーラを身に纏い、空中へと舞い上がるシルとテラ。一歩遅れてカシムが駆け出す。
「ええい、……行くしかないか」
四人がガイオウガへと駆け出した直後、彼らの背後に火炎弾が着弾し、先ほどまで隠れていた岩を一瞬にして爆ぜさせた。
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「当たれば焦げ焦げですね、これは! ――次、左肩から二発! 逃げますよっ!」
カシムの言葉に、晶は空へ使い魔を放ち、周囲の地形を探る。
「二つ先の岩陰、身を隠せるくぼみがある!」
走る二人、その足音をかき消すような砲音。ガイオウガに左肩から二つ火炎弾が放たれる。飛来する火炎弾を空中でひらりとかわし、テラが軽く口笛を吹く。
「撃ちだす場所どころか、弾数までドンピシャか、やるねぇ兄さん」
「竜の体を視る機会も多かったのでね、っと」
涼し気な返答、しかし彼の並外れた医療技術――生体への理解がなければ、ガイオウガの攻撃の予備動作を短時間で見切るのは不可能だっただろう。
着弾、命中した岩が爆ぜ、晶とカシムが隠れた岩が炎に焼かれ赤熱化する。
「コノ先ヘ、進マセハシナイ!」
着弾地点で燃え上がる炎、その姿が二頭の虎へと変じた。飛び掛かろうと身構えた所へ、シルが上空から精霊電磁砲を発砲、氷の砲弾が二頭の炎獣を薙ぎ払う。
その爆風が四人の視界を遮った瞬間、ガイオウガが大きく体を震わせた。
「――っ! 口、額、背中。三発同時!」
「早いっ。なら空中で……撃ち落とす!」
放たれる火炎弾。咄嗟に晶がガトリング砲を構え連射。放った無数の銃弾が火炎弾の一つを撃ち落とす。
シルは腕の光盾に魔力を通わせ防御フィールドを展開。そのまま空中で火炎弾を受け止める。
「ううう、あっつーいっ!!」
「シルッ!」
竜へと変じてシルの楯に牙を立てる炎へ向けて、テラが槍を構えて突撃。炎竜を穂先で仕留める。
残る一発、飛びのいたカシムの真上で、火炎弾が狼へと姿を変じ空中で軌道を変えた。カシムの頭上へと真紅の獣が跳びかかり、着弾。爆発音とともに炎と熱がまき散らされる。収まった後には焼けた地面に一匹の炎獣が佇むのみ。その足元でカシムの纏っていたマントが僅かに燃えのこっていた。
「マズ一人! 仕留タゾ!」
勝ち誇る炎獣を、ガトリングと精霊電磁砲が襲った。十字砲火に体を吹き飛ばされながらも炎獣はなお嗤う。
「クカカカッ! オ前タチトテ生キ残レハシナイ、偉大ナル……」
「もういい。喋るな!」
その頭部をテラの槍が貫いた。炎獣が空気に溶けるように消えていく。つかの間足を止め佇む三人。その間近で足音が響き大地が揺れた。むせかえるような炎の匂い。先ほどまでとは比にならない熱気が三人を包む。
三人の目と鼻の先にまでガイオウガが歩み寄ってきていた。その足元で牙を剥き威嚇する炎獣の大群。
その威容を見上げ、晶が、テラが、シルが、各々の全身に魔力をみなぎらせる。
「そっちから来てくれるならちょうどいい、的を外す心配がなくなるよ」
「ああ、行こうぜシル。弔い合戦だっ!」
「うん、今度はこっちの番だよ!」
言葉と同時、シルが電磁砲で炎獣を薙ぎ払い、その砲撃の中へテラが飛翔、手当たり次第に炎獣を仕留めていく。ガイオウガが新たな炎獣を生もうと胸の火口を輝かせ、晶のガトリングが命中、火炎弾を消し飛ばす。
そうして三人がガイオウガに正面から挑む傍ら、ガイオウガに気付かれないよう接近する影があった。マントを脱ぎ捨て迷彩フィールドを発生させたカシム。
「敵を欺くにはまず味方から。とはいえ、ちょっと心苦しいですね」
作戦の後にでも謝ろうか、と悩みながらカシムは炎獣に見つからぬようガイオウガの足元へ進んでいった。
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赤い軌跡を残してテラが宙を舞う、その手に握るは炎を纏う真紅の槍――紅龍槍『廣利王』。その加護でガイオウガの纏う炎を相殺し、テラはガイオウガの装甲へと肉薄する。
――付け焼刃で他の属性を使うより、一番の得意属性を使う。故に……。
「炎の王におれは炎で挑む!」
突進の勢いのままに繰り出した槍、その穂先がガイオウガの岩の如き装甲に突き刺さる。ガイオウガの呻き声が響き、割れた装甲の内側が赤く輝いた。第六感の命ずるままテラは身を翻し反転。直後、傷口から噴き出す炎がテラのいた場所を焼いた。
その傷口を狙う様に晶がガトリングガンの銃弾を叩き込む。放たれる銃弾がやむことはない。すべての銃弾は彼女に宿る邪神が生み出したものだ。あふれ出た薬莢を新品の弾帯に作り変えてリロード、晶はガイオウガの装甲へ銃弾を浴びせ続ける。銃声の中、彼女の背後に一頭の炎獣、真紅の虎が忍び寄る。大きく体をたわませた次の瞬間、晶へと飛び掛かってその爪を振りかざし――。
「喰らわないよ」
晶の言葉と同時に、虎の動きがぴたりと止まる。その身の炎が揺らぎさえしない、まるでまるで空中に固定されたかのように。
その間に悠々と晶は振り向き、空中の虎へガトリングを連射し消し飛ばす。
「お前の時は止まっていた。これが僕なりのオーラ防御だ」
再びガイオウガへ向き直る晶の頭から石化した髪の毛が一本落ちる。人の身で邪神の力を扱う事の、それが代償であった。
「エエイ、チョコマカト鬱陶シイ奴!」
ガイオウガを象った炎の竜が空中のシルへと向けて尻尾をふるう。その一撃をくるりと宙返しでかわしてシルは飛翔する。同時に腰部に取り付けた折り畳み式の電磁砲を展開、圧縮した氷の魔力を砲弾に変えて装填、炎竜の首、さらにその向こうにいるガイオウガへと狙いを定め――。
「エレメンタル・レールキャノン、発射っ!」
ゼロ距離射撃! 発射の衝撃波が炎竜を消し飛ばし、放った砲弾がガイオウガの胸部へ着弾、炸裂する冷気がガイオウガの装甲を凍てつかせ白い霜で染めた。ガイオウガが苦悶の声を上げる。
「垓王牙サマ! コノ命、オ返シシマス!」
直後、足元の炎獣が凍てついた装甲へと飛び込み、自らの炎をもってその氷を溶かしていく。
「なかなか、攻めきれないな」
「大技を一発、装甲以外に打ち込めれば……」
槍をふるい炎獣を切り払うテラの言葉に、シルは電磁砲を連射しながら声を上げる。
「それなら僕がアイツの動きを止める。ただそう長くはもたない。十秒、その間に仕留めてくれ」
晶の言葉に頷く二人。
「それじゃあ……私たち姉妹の力、思い知って!」
魔方陣を四重に展開し呪文を詠唱するシル。一方、テラは高く飛翔しガイオウガの上空へと舞い上がる。同時に響く二人の詠唱。
「闇夜を照らす炎よ」「これは古代の竜を滅ぼせし星の鉄槌」
注意を引き付けるように晶は、ガトリングガンを斉射。
「命育む水よ、悠久を舞う風よ」「大地の化身」
その銃火に晒されながら、ガイオウガがシルへと視線を向ける。
「母なる大地よ。我が手に集いて――」「原初の星の竜よ――」
大きく顎を開きシルへと食らいつこうとするガイオウガ、瞬間、晶が邪神の魔力を開放。ガイオウガの体が止まった。ちょうどシルの魔法陣の目の前に口内をさらけ出すように。
「全てを撃ち抜きし光となれっ!!」「我が一撃をもって粉砕する!」
二条の光が奔った。シルの魔方陣から放たれる光の奔流がガイオウガの口に命中! 同時にテラが投げ放った槍を追うように高速落下、星の魔力を身に纏い、流星となってガイオウガの背中に落下する。
衝撃波の如き咆哮、ガイオウガが止められた時の中で、すべての炎をもって二人の攻撃を受け止める。シルの放つ砲撃が、テラの流星の一撃がガイオウガの火力と拮抗し、留められる。守りを撃ち抜こうと魔力を高めるシルとテラ。焦るように晶が叫ぶ。
「頑張ってくれっ、止めていられるのは――あと五秒っ!」
「それだけあれば十分ですよ」
返答と共に響く跳躍音、拮抗状態のガイオウガの装甲を軽やかに登るのは身を潜めていたカシム。
「だぁぁぁあちちちちち! だがちょいとばかり根性出しますよっ! その眼に用があるんでねっ!」
引き抜いたダガーを片手にカシムはガイオウガの顔へと駆けあがると、そのまま燃え盛る眼窩へ飛び込む。
「さあ、帝竜ガイオウガ。お前の目玉……頂きます!」
カシムがダガーを振るい、ガイオウガの目を抉る。たまらず身をよじるガイオウガ。その一撃が拮抗を崩した。シル達の攻撃がガイオウガの守りを破る。
紅龍槍の穂先がガイオウガの背中にめり込み、その石突を踏みつけるようなテラの跳び蹴りがガイオウガの背中を踏み砕く。同時にシルの四大の力を借りた砲撃がガイオウガの頭部を撃ち抜く。
二つの光に貫かれ、流石のガイオウガが苦痛と、そして怒りの咆哮を上げた。
大成功
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ユーノ・エスメラルダ
【白百合の苑】の三人と、計四人で
このドラゴンさんも倒さなければフォーミュラには届かないのですよね
この世界から悲しみや苦しみが少しでも減るように、踏ん張りどころです
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【祈り】で光のヴェールの出力を上げて【オーラ防御】を強化
【祈り】による聖痕の回復で味方の援護
地形特有の溶岩や熱は【地形耐性】を
さらに電脳ヒヨコさんに【騎乗】して機動力を上げて、【時間稼ぎ】や味方の【救助活動】もやりやすく
一回でも耐えるか回避ができたら、あとはなんとか…
自分が受ける苦痛への【覚悟】は出来ています
最初の攻撃を一回分凌いだら、『護りの狐火』で味方を【かばう】ことで味方の防御力をアップ
どうか、無事に戦いが終わりますように…
村崎・ゆかり
【白百合の苑】
今回は旅団のみんなと一緒。心強いわ。これなら何が相手でも戦える。「集団戦術」も活かせそうね。
垓王牙への接近は、「地形耐性」「地形の利用」で安全そうな物陰に隠れながら「目立たない」ように。
垓王牙の攻撃の大部分は瑞穂が引き受けてくれるけど、こっちに来た分は「全力魔法」の「オーラ防御」と「火炎耐性」で耐えながら、「全力魔法」の「衝撃波」で爆風消火を狙う。
先制攻撃を耐えたら、あたしたちの番。
燃えないよう陶器で作った符を使い、「高速詠唱」して「破魔」効果がある「魔力溜め」した七星七縛符を垓王牙に投げる。このサイズだもの。外しはしない。
垓王牙のユーベルコードは封じたわ。後は頼むわね、みんな!
クリスティアーネ・アステローペ
【白百合の苑】
即興でならともかく予め人数揃えて挑むのは久しぶりね
まずは一撃を凌がないと、ね?
《高速詠唱》《多重詠唱》した氷の《属性攻撃》を囮を含む皆の周囲に《一斉発射》
垓王牙の攻撃の直撃を防ぐと同時に、その冷気で蜃気楼を発生させてデコイを作成
そのうえで炎と地形で生まれる影や《闇に紛れる》ことで姿を少しでも隠して
《見切り》に《オーラ防御》も重ねて射程距離まで接近するわ
凌ぎきれたら《全力魔法》による【咎を穿て、赫き杭】で《鎧無視攻撃》
《生命力吸収》の《呪詛》と《破魔》の《祈り》を乗せた杭で《串刺し》にしてやりましょう
その図体でも早々私の杭は砕けないでしょう?
――さあ。首を刎ねて終いとしましょう
秋津洲・瑞穂
【白百合の苑】
要するに火術使いなのね。わたしと同じく。
そして初撃を凌いで懐に入れと。では凌ぎましょう。
使う技が似すぎてる。手慣れた技を自分で防げないわけもない。
ならばわたしが全部引き受ければいい、それだけ仲間が楽になる。
ダッシュ+ジャンプで突撃するわ。
「さあ、炎弾を撃ってくださいな」
残像や見切り、短距離のダッシュを使って直撃を避け、
近過ぎるなら神獣刀で斬り落とす。
直撃さえなければオーラ防御と火炎耐性とで軽減できる。
野生の勘もあるから不意打ちもダメ。
剣豪の獣と、燃えているだけの獣とが勝負してもね。
「炎の獣に変身したのは悪手よね。斬るのが簡単になったわ」
本体は2回攻撃・鎧無視攻撃・なぎ払いでOK。
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ガイオウガの咆哮が轟く。耳を塞いでもなお鼓膜に届き、空気が震え衝撃波となって全身に響く。
ガイオウガとて、もはや無傷ではない。背中の装甲には穴が開き、口の半ばは吹き飛んでいる。だが燃え盛るような右目と、全身から放たれる生命を拒絶する炎は、健在であった。
「このドラゴンさんも倒さなければオブリビオンフォーミュラ、ヴァルギリオスには届かないのですよね。この世界から悲しみや苦しみが少しでも減るように、踏ん張りどころです」
岩陰から、ガイオウガの姿を見つめるのはユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)。彼女の言葉に、同行する三人の猟兵がうなずく。
「今回は、みんなと一緒。心強いわ。これなら何が相手でも戦える。帝竜だって私たちの連携があれば倒せるわよ」
「そういえば、いつもは即興で組んでばかりだけれど、予め人数揃えて挑むのは久しぶりね」
村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)が自信ありげに胸を張り、クリスティアーネ・アステローペ(朧月の魔・f04288)が嫣然と笑う。
「敵は要するに炎術使いなのね。私と同じ。ならば、その強さもその弱さも分かっているわ」
言って秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)はスラリと刀を抜いた。
「初撃を凌いで懐に入れと。では凌ぎましょう――攻撃は私が全部引き受けるわ」
瑞穂は岩の上に飛び出し、見せつけるように切っ先を突き付ける。対するは山の如き巨躯を持つ帝竜ガイオウガ。その瞳が岩の上の瑞穂の姿を捉え、全身の炎が燃え上がる。再度の咆哮が、戦いの合図となった。
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岩から岩へと飛び移り、ガイオウガへと距離を詰める瑞穂。手にした神獣刀がガイオウガの炎を映して赤く染まる。隠れはしない、瑞穂はあえてガイオウガの前に身を晒し、攻撃を引き付ける算段であった。その間にユーノは電脳ヒヨコを召喚して騎乗、クリスティアーネが闇に紛れ、ゆかりと共に岩陰に潜みながら移動していく。
「さあ、私へ炎弾を撃ってくださいな、それだけみんなが楽になるもの」
寄せじと瑞穂へ放たれる火炎弾、その一撃が瑞穂の頭上に降り注ぎ――すり抜けた。
火炎弾が瑞穂の立っていた岩を直撃して爆発。一瞬後、瑞穂は隣の岩の上に着地する。爆炎が獅子へと変じ、瑞穂を追うように跳躍。
「小癪ナッ! 残像トハ!」
「悪手よね、それは」
炎獣へ向けて踏み込む瑞穂。一瞬の交錯、すれ違いざま神獣刀と炎の爪が揮われる。
「獣の姿になってくれたおかげで切るのが簡単になったわ」
倒れ伏す炎獣を背に、瑞穂は再び跳躍、ガイオウガへ向けて進んでいく。
跳躍のタイミングを狙う様に続けて放たれる火炎弾。
「させないわよ、私たちも守られるばっかりじゃあないの」
クリスティアーネが高速詠唱。無数の氷の矢を放ち火炎弾を迎撃する。氷の矢もまた一瞬で蒸発し、立ち上る蒸気がさらなる大気のゆらぎを――蜃気楼を巻き起こす。
「これで少しは狙いもつけにくくなるでしょう」
「ナラバ直接、コノ牙ニテ喰ラウマデ!」
地をかける赤い獣。火炎の虎が音もなく駆け寄っていた。大きくむき出した牙がクリスティアーネの白い喉元へ食らいかかり――触れるより早くその頭が地に落ちた。
「無粋よね。処刑人としての名乗りくらい、聞いてからお死になさいな」
言い置いて、クリスティアーネを魔杖斬首剣を鞘に納める。
直後、彼女たちが歩もうとした先の大地が爆ぜた。行く手を阻むように連続で着弾する火炎弾、それらが大地を焼き、そしてガイオウガを模したかのような竜の炎へと姿を変えた。1歩2歩と助走をつけて3歩目に大きく跳躍、上空から叩き潰すようなボディプレスを仕掛ける。
「くっ――受け止めて、見せる!」
ゆかりが素早く耐火の印を切り、右手を頭上に突き出す。同時に生まれた淡い壁が、降りかかる炎竜を受け止めた。燃え盛る熱気が周囲を包む。ゆかりの額に汗が浮かぶ。
壁を破ろうと暴れまわる炎竜へゆかりは七星の記された護符を投擲。炎竜に触れた瞬間、トランプで作った護符は燃え始めるが、同時に炎竜の動きが止まった。その隙にゆかりは印を切り呪言を唱え、魔力を込めた符を放つ。それは吸い込まれるように、炎竜の頭に向かい、命中、爆散。
解き放たれた衝撃波が炎竜の頭を吹き飛ばし、周囲の炎をまとめて吹き散らした。
「オノレ! コレ以上ハ近ヅカセンゾ」
立ちはだかるもう一頭の炎竜、体をよじり薙ぎ払うように尻尾を振るう。
その一撃を瑞穂は跳躍して躱し、同時に炎竜がにやりと笑った。炎の尻尾は勢いのまま瑞穂の脇の岩山に直撃。岩が無数の瓦礫となって瑞穂の頭上に降り注いだ。
咄嗟に防御態勢をとる瑞穂。クリスティアーネが放った氷が瓦礫を食い止め、ゆかりの護符が飛ぶが間に合わない。落下する。そこへ、黄色い毛玉が飛び込んだ。
「ピヨーーーーーーーーーッ!」
ユーノが電脳ひよこを駆って疾走、空中の瑞穂に体当たりしながら、瓦礫の下を駆け抜ける。モッフモフの羽毛にうずもれる瑞穂と護符。ヒヨコはその勢いのまま、呆然とする炎竜に体当たり。同時に、我に返ったゆかりが護符を起動――至近距離で放たれた衝撃波が、炎竜の体を吹き飛ばした。
ヒヨコの羽毛をかき分けて頭を出す瑞穂。彼女の手をユーノが取って引っ張り出した。
「瑞穂さん、お怪我はありませんか?」
「え、ええ大丈夫よ。ユーノこそ平気?」
「はい! 少しくらい怪我をするかもって思いましたけど、ヒヨコさんが頑張ってくれました!」
心なしかドヤ顔を見せる電脳ヒヨコの背でユーノがにっこりと微笑んで見せた。
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「まあ、何はともあれ――懐に、入ったわよ。ガイオウガ」
山の如き巨体を見上げ刃を構える瑞穂。地上ではゆかりが新たな護符を構え、クリスティアーネが魔法刃を紡ぐ。彼らを睥睨し、火炎弾を放つ。
「もうこれ以上、みんなを傷つけさせはしません!」
ユーノが狐火を放った先は、彼女の仲間達。その炎は暖かく少女達を包む。命中した火炎弾の熱風はわずかな風となって彼女たちの髪の先を揺らすだけであった。
「さあ、今度はあたしたちの番、反撃開始よ!」
ゆかりの号令と同時に、無数の護符がガイオウガと炎獣へ向けて放たれ、その体を吹き飛ばす。クリスティアーネの放つ氷の刃がガイオウガの全身を貫くとともに陽炎となって、駆け寄る瑞穂の姿を隠し、一閃。駆け寄りざまの一撃がガイオウガの装甲を切り破り、内部の炎を溢れさせる。
うねり膨れ上がり竜へと変じようとする炎、そこへゆかりが護符を手にしながら印を切る。
「破軍、貪狼、廉貞、武曲、禄存、文曲、巨門――紫微七星の名において! 汝、その技揮う事、能わず! 急急如律令!」
呪文と共に投げ放ったゆかりの護符が、ガイオウガの体に触れた。瞬間、竜に変化しかけていた炎が、風に溶けて消えていく。無論ただの護符であればすぐに焼け落ちていただろう。だが。
「陶器で作った特別製よ。感謝しなさい、呪文を描き込むのに苦労したんだから」
ゆかりは本命の一枚分だけ、陶器の護符を持ち込んでいた。その工夫がガイオウガの動きを大きく制限することに成功していた。
「垓王牙のユーベルコードは封じたわ。後は頼むわね、みんな!」
ゆかりの言葉に、ここぞとばかりにクリスティアーネが呪を紡ぐ。
「この大地、きっと生命にあふれていたのでしょう。あなたは彼らを焼き滅ぼした。けれど、その魂までは――彼らの呪詛と祈りは、焼き尽くすことができないと知りなさい」
じわり、と大地が朱に染まった。溶岩ではない、真っ赤な血。これまでガイオウガが奪ってきた生命たちの血が、大地から滲みだしていた。その血だまりがクリスティアーネの命ずるままに無数の杭となって、ガイオウガの体に突き立っていく。
その光景にユーノの顔が曇る。この地がここまで荒れ果てるまでにどれだけの命が奪われたのか。一歩間違えれば彼女らもまた、この大地に果てることになっていただろう。
「どうか、このまま無事に戦いが終わりますように……」
――そして焼き尽くされた命たちに、救いがありますように。
ユーノはそう祈らずにはいられなかった。
今や、無数の杭がガイオウガの体を打ち貫き、護符の魔力がそのユーベルコードを封じている。
「その図体でも私の杭はそう簡単に砕けないでしょう? ――さあ。首を刎ねて終いとしましょう」
「そうね」
言って瑞穂がガイオウガの頭部へと駆け出す。一足一刀、瑞穂が間境を踏み越えた瞬間、ガパリとガイオウガが口を開けた。その喉の奥に赤熱化した火炎弾。
――逃げる? 間に合わない。ならば疾く、もっと疾く!
ガイオウガの大きく空いた口許へ飛び込む瑞穂、それを迎え撃つように炎が放たれ、彼女を飲み込んだ。炎を切り破る神獣刀、瑞穂の体を光のヴェールが覆っていた。ユーノの祈りが届いたのだ。飛び上がりざま、瑞穂の剣閃がガイオウガの首を半ばまで切り落とし、もう一振り。切り下す二閃目がガイオウガの首を両断した。
着地した瑞穂の背後でガイオウガの首が落ち、大地に触れるより早く、風に溶けて骸の海へと帰っていく。
思わず息をつくゆかりたち。周辺の大地を流れる溶岩が急速に光を失って固まり始め、涼しい風が彼女たちの頬を撫ぜた。
帝竜の消えたこの大地には、やがて生命が蘇るだろう。
わずかではあっても確実に、この世界は救われたのだ。
大成功
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