帝竜戦役㉑〜峨々たる猛炎
●赤熱の巨魁
熱風を背に浴び、竜は緑が枯れ果てた崖にいた。緑が群生していたところで、草熱れによりますます空気が熱されていたことだろう。
そこに座するのは、帝竜に相応しい巨躯で威を放つガイオウガだ。
かの者の足元では『炎の獣』たちが狂騒を生み出している。
「我等ハ、奴ラヲ滅スルノミ。慌テル必要ナドナイ」
竜を模した一体の炎が告げる。
しかし炎獣の輪の中には、間違いないのだと何事か繰り返す獣も多い。
「アノ者達ハ、全テヲ破壊スル『牙』! 侮リ難キ魂ノ持チ主!」
「ダガ、全ニシテ壱デアル垓王牙ニ、喰ライツケル筈ガナイ!」
頑固な竜の炎を前に、他の炎獣たちは尚も言葉を荒げていく。
闘志を、猟兵たちへの敵意を剥き出しにして滾るかれらを、帝竜ガイオウガは口を固く閉ざし、眺めるだけだ。
●グリモアベース
「帝竜ガイオウガの足元には、炎でできた獣たちがいるの」
ホーラ・フギト(ミレナリィドールの精霊術士・f02096)が状況を話し始める。
「獣たちはまだほんの数体よ。竜型が一体だけで、あとは虎や狼の姿をした炎なの」
まだ──とホーラが告げたのには、理由がある。
火山と同等の大きさを誇る帝竜ガイオウガは、新たな兵を生み出せる。かれの全身から噴き出した炎が獣を模り、襲いくる。腕力などの力を主として戦う場合は、敵の数が増えるという事実を念頭に動く必要があるだろう。
とはいえ、他の能力も決して油断ならないもの。
煮え滾る溶岩のごとき巨躯は、そのほんの一部を溶岩流に変異させることが叶う。それは踏み締めた大地を生かすも殺すも自由な、ガイオウガならではの力。
ただでさえ戦場は灼熱の大地だというのに、粘性が低く凄まじい速さで流れ出す溶岩流は、近づくだけでも焼け焦げてしまう。当然、流下するだけでなく、噴出させて皆の頭上めがけ飛沫を散らせてもくる。
もうひとつ、ガイオウガに酷似した竜の炎を無数に放ってくるのも厄介だ。それぞれが個別にガイオウガの意思に沿って動けるため、敵の数が増加するのと同義だ。
いずれにせよ、ユーベルコードなり攻撃なりに反応して先手を打ってくる。
ただでさえ強大な敵だ。しっかり策を練るか、状況や地形を利用して挑まねば、戦うのにも苦労するだろう。
幸いと呼ぶべきか、戦場となる大地は広い。広いが切り立った岩や転がる岩石も多く、足を取られやすい場でもある。
「それじゃ、用意ができた方から声をかけてね。転送します!」
ホーラは最後にそう微笑み、赤熱の巨魁が棲まう地へ転移するため準備を始めた。
棟方ろか
お世話になります。棟方ろかです。
このシナリオは一章ボス戦のみでございます。
●プレイングボーナスについて
『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』ことで、有利になりやすいです。
敵は必ず先制攻撃をしてきます。それにどう対処するかが重要になるでしょう。
そしてかなりの強敵です。苦戦する可能性もあることを、ご承知おき下さいませ。
参加の際は、第六猟兵の『説明書』にあるシナリオの判定ルールにも、目を通して頂ければ幸いです。
それでは、プレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『帝竜ガイオウガ』
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POW : 垓王牙炎弾
【全身の火口から吹き出す火山弾】が命中した対象を燃やす。放たれた【『炎の獣』に変身する】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 垓王牙溶岩流
自身の身体部位ひとつを【大地を消滅させる程の超高熱溶岩流】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 垓王牙炎操
レベル×1個の【ガイオウガに似た竜の姿】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:阿賀之上
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リュカ・エンキアンサス
セロお兄さんf06061と
たまにはおれが運ぼうか
と、いうわけで、アルビレオの荷物をどけて二人乗りにする
え、竜より…どうだろう
いい勝負してくれると思うよ…たぶん
で、俺は回避に専念
絶望の福音を利用して、敵の動きを読んで回避してく
第六感と地形の利用とかも使って、上手く逃げ切っていきたいところ
勿論消滅させられちゃ叶わないから、溶岩流は一番に対処するし、距離をとってなるべく近寄らないようにするよ
回避に全力する分、攻撃はお兄さんに任せた
ちょっといつもとは役割は違うけれども、それはそれでいいんじゃない
安心して、俺が運転してる限り、お兄さんは絶対死なないから
でも、助手席でうるさくするのはダメだよ
なんてね
セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と
へへ、コイツ乗ってみてーなと思ってたんです!
竜より速いですか?(愛し仔たる翼竜を想起しつつ)
回避は全部リュカに任せる
いつもと逆ですね
大丈夫、リュカに任せりゃ問題ねー
蒸気駆動人形の熱耐性ナメんなよ
おれはリュカと違って狙撃は苦手ですけど
威力や射程上げりゃイケるでしょ
って蜃気楼構えて【真空】
『今』の溶岩流はともかく、ガイオウガ、あんた自体は『過去』でしょう
周囲の炎の獣は無視
溶岩流の動きを学習して
リュカ、右!
え、煩い? ええー、良かれと思ったのに
ええ、安心します
だからおれも奪い尽くして
あんたを護んねーとですね、リュカ
あんたが全を伴にすんなら
おれは唯一を友にしますよ、
ガイオウガ
たまにはおれが運ぼうか。
長く使われていたのが見て取れるバイクを一瞥しながら、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)がそう提案する。彼からの思わぬ言葉は、セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)の眸を輝かせるのに充分だった。
「へへ、コイツ乗ってみてーなと思ってたんです!」
いつにも増して、嬉々として弾むセロの声。今にも歌い出しそうで、聞き届けたリュカも微かに眦を和らげる。
荷をどけるのに然して時間はかからず、手際よくタンデムの準備に入った。後部席に跨がったセロは、不意に気になっていたことを思い出し、何気なく持ち主に尋ねる。
「竜より速いですか?」
思いがけない質問に、リュカが目許で一驚した。しかし思考を巡らせてみるも答えは浮かばず、ただ思うがままを彼は口にする。
「いい勝負してくれると思うよ……たぶん」
いい勝負。心地好い音に、セロの内で期待が膨らんだ。
そこで発進の合図をリュカが告げ、二人を乗せたアルビレオは灼熱と岩石が蠢く戦場へ飛び込む。
瞬く間に熱気が風となり、二人を容赦なく撫でていった。ガイオウガを守護する溶岩により熱された空気は、猟兵でなければ途端に意識が眩み、遠退いてしまいそうなもので。疾駆する二人の前に切り立った岩が立ちはだかり、転がっていた石は次々と弾ける。
そして目指すガイオウガの麓に待ち構えるのは、炎の獣たち。
──あれが。
ガイオウガの生み出した配下。高温を注がれた両目で、リュカはしかとかれらの姿を捉える。
悠然と座するガイオウガにとって、やはり猟兵が居城を走ることは看過できないのだろう。かの竜はのそりと二人へ顔を向け、脚の一部を溶岩流へ変異させた。あらゆる生命を飲み込んだ脈打つ流れは、見た目こそ泥のように重たげながら、距離を縮めるまでが速い。流動する火砕物に愛騎が焼かれないよう、リュカはハンドルを捌く。
地獄への色彩が行く先を阻もうと移るたび、悪い予感を報せる音がリュカの頭の内で鳴る。総身の神経を集中させてリュカは炎獣の脇をすり抜け、溶岩と間合いを取る。
移動も回避も、すべてはリュカ任せ。その間セロは、リュカから手を放してしまわぬよう注意を払い、いつでも発砲できるよう骨董銃を構えた。
「いつもと逆ですね」
常と異なる状況に小さな笑いを零して、セロは頼もしい運転手に身を委ねる。
「これはこれでいいんじゃない」
リュカがそう返すのを耳にしたセロは、音を零さずに頷く。
──大丈夫、リュカに任せりゃ問題ねー。
流下する溶岩がどれだけ濃く、熱くても、リュカの運転技術と判断力には勝てない。そんな自信がセロにもあった。加えてセロ自身、耐久面に関しては胸を張れる。
「これでイケるでしょ」
セロは銃身に募る力を感じて、口端をあげた。あとは、世界の脅威となる過去を消し飛ばすのみだ。
直後、はっと気づいてセロが声を出す。
「リュカ、右!」
ガイオウガの元から流れ出た溶岩流が、二人乗りのバイクを飲み込もうと押し寄せる。導線を窮屈に狭められても尚、バイクも乗り手も焦らない。
「安心して」
ふとリュカが口にするのは、約束とも呼べる言の葉。
「俺が運転してる限り、お兄さんは絶対死なないから」
後ろからでは顔色すらよく見えないけれど。
きっと変わらぬ面差しで告げたのだろうと思い、セロは微笑む。
「ええ、安心します。だからおれも奪い尽くして、あんたを護んねーとですね、リュカ」
唇の先で模った名は、激闘の最中においても色褪せない。
「でも、うるさくするのはダメだよ」
「ええー、良かれと思ったのに」
煩いと称されて不服の声をあげたセロに、なんてね、とリュカが肩を竦める。
やがて彼らは標的ガイオウガへ、日常と変わらぬ様相のまま得物を向けた。セロの銃についた名は、蜃気楼。陽炎のごとく揺れ、映る景色を眩ませる。
ガイオウガ──過去の存在でしかない、火山のごとく巨魁。
「あんたが全を伴にすんなら」
東雲を連想させる瞳を揺らめかせて、セロがトリガーを引く。
「おれは唯一を友にしますよ、ガイオウガ」
過去を消し飛ばす波が、赤も黒も一緒に裂いて巨魁ガイオウガの岩肌を焦がしていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱酉・逢真
おお、こわぁ。地上にいたら蒸発しちまわぁ。鳥の方の姿ンなって空に行こうかィ。必要なら大気圏くんだりまで飛んだっていいしなァ。(先制対策)
溶岩流を避けたら上から太陽呑む蛇を喚ぶ。人型ン時は影の中の赤い星だが、この姿ン時は背中に負った黒い太陽から出るぜ。
太陽呑み込めンだから、炎の化身だって呑めらぁよ。そのまま全ての感覚と熱を奪う。《全にして壱》なんだろう。こいつの熱を奪えば、戦場自体の熱も奪えるってェわけだ。
冷たくなっちまえば他の猟兵も攻撃できるだろう。俺は《毒》でもぶっかけてやろうかねェ。
緋月・透乃
でかい帝竜は何体かいたけれど、今度のは火山みたいな奴かー。
バリエーション豊かだね。
そしてやっぱり強そう!火山より熱い戦いができそうで楽しみだね!
転送されたらすぐにガイオウガのもとへ突っ込んでいくよ!
その上で先制攻撃への対策は、直接私目掛けて飛んでくる火山弾も獣も、シンカーキャロットを鎖鉄球のように使って近づかれる前にぶっ壊し、多数が相手なら怪力で大きく振り回してまとめて攻撃するよ!
とにかく回避より破壊での対処をして、絶対に迂回などはしないで真っ直ぐガイオウガへ向かっていくよ!
ガイオウガへ攻撃がとどきそうなところまできたら他の敵は無視し、重戦斧【緋月】に持ち替えて緋迅滅墜衝を叩き込むよ!
レザリア・アドニス
垓王牙…うっ…骸の海の記憶が…
なんと、面倒なことを…
炎のゆべこを使えなくなるのは悔しい
垓王牙の竜炎たちが来ると、鈴蘭の嵐を呼び出す
風の壁を作って炎や溶岩を風圧で押し退け、そして嵐を竜巻に変換させて、炎を巻き込んで撲滅してみる
それが無理でも、攻撃させないように高く遠く巻き上げる
オーラ防御、環境耐性と火炎耐性で灼熱を耐え、全力魔法と鎧無視攻撃で強化した嵐で攻撃
狂風で熱を剥奪したり、嵐刃で巨体を削り取ったりしてみる
相性が悪いかもしれないけど、それでも一生懸命頭を働かせて、自分の手札を最大限に活用し、勝機を掴めようとする
まったく…ちょっと氷属性のユーベルコードが欲しくなっちゃうの…
月居・蒼汰
なるほど、確かに火山だ…
でも、俺達は皆で、ここまで来たんだ
行く手に聳えるのが山だったとしても、打ち砕いてみせる
水と氷のオーラを纏い空中戦を
少しでも熱を軽減できたらいいけど多少の怪我は厭わずに
自慢の尻尾や翼が焦げても気にしない…ちょっと、いやだいぶ熱いけど…!
竜の群れに正面からぶつかりそうになったらフェイントを入れて回避
野生の勘と第六感を駆使して猛攻を掻い潜り
溶岩に叩きつけられたりしないように気をつけて
ガイオウガ本体の射程圏内を目指す
攻撃の機は一瞬でも逃さずスナイパー
全力籠めた願い星の憧憬を範囲攻撃で
空から降る無数の星に氷と水の属性と破魔の力を絡めて
全てをガイオウガへ
少しでも刺さればいいけれど…
サフィー・アンタレス
伝う汗を拭いながら
敵の巨大さと、熱気に少しうんざりと
けれど、戦うべき時は分かっている
負傷は覚悟のうえ
致命傷にならない程度に見切り
オーラ防御を試みるが、完璧では無いだろう
ある程度の熱は大丈夫だ
先手が来ると分かっていれば、耐えられる
普段は俺も炎を使うが
今回は相手が悪いか
それならばこちらの有利に書き換えればいい
雷雨を降らせて、辺りを雷属性へ
これで少しは戦いやすくなるか?
トリニティ・エンハンスで防御を固めつつ
相手の動きを見つつ雷雨で辺りの炎も含め攻撃
致命的な攻撃はミレナリオ・リフレクションで相殺を狙う
敵意のある相手なら、むしろ戦いやすい
足元や頭上に注意を払いながら
無駄な動きはしないで遠距離から攻撃を
天道・あや
敵の数が増える。…成るの程、……成る程!つまり、短期決戦!電撃作戦がいいって事なんだ!ok!分かった!あたしそういうの得意!レガリアスよし!ガントレットよし!覚悟よし!それじゃ、スタート!
レガリアスを起動させてダッシュでガイオウへと、突っ込む!【ダッシュ、足場習熟】
ガイオウが放ってくる炎の獣達は……無理やり突破する!うおおおー!!その程度の炎じゃ、あたしの夢への情熱は…止められないっ!【激痛耐性、火炎耐性、情熱、限界突破】
そして!ガイオウの前まで来たら【ジャンプ】!からのUC発動!!
これがあたしの、未来と夢への想いの乗った、重い一撃だーー!!【鎧砕き、属性攻撃雷】
コノハ・ライゼ
ローストか蒸し焼きかってトコかしら、やぁね
モチロン黙って料理される気はナイけど
*オーラ防御纏い*激痛耐性も併せ熱気を軽減
*第六感働かせ炎弾の軌道読み*見切り致命傷避けてくわ
時折*残像置きながら炎に呑まれていない岩場を足場を*空中戦の要領で跳躍
*誘惑するよう炎弾誘いつつ懐へ踏み込んで隙見て*カウンター狙うヨ
その熱、利用しない手はないデショ
ばっちし協力してもらうねぇ
誘った炎や獣を【震呈】で召喚したフライパンへ当てて乗せ、勢いのまま殴打
続け様に*2回攻撃で*傷口えぐるようもう一撃
しっかり*捕食しときマショ
自分のお味は如何?
*生命力吸収で傷受けた分補ったなら
まだまだ*料理は続けさせてもらうわ
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と。
帝竜ガイオウガ。
昔、母ちゃんから聞いたコトのある炎の獣に似てるね?
先制されるなら、後の先を狙えって。
視線の通りにくい岩陰に隠れて、迷彩を纏って接近。
野生の勘で火山弾の予兆を感じたら、如意な棒を振り衝撃波を展開、直撃を避ける!
炎獣が次々と現れたら、ワクワクしながら疾走発動!
纏う白炎で、炎の干渉を防御。
囲まれないよう、高低ジグザグに高速で動き回る。
ウザい夏の虫みたいに!
炎獣の少ないところへ飛び込んで、体当たり込みの拳の一撃。
気を引いて陽動、仲間を援護する!
ラスト、ソニックブームで、帝竜の集中を一瞬でも乱し。
アンちゃんとタイミング合わせ、宙返りからのカウンターで拳を!
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
炎の、帝竜
ん、まつりん。
手を繋ぎ勇気を分け合い、幅広の大剣にした灯る陽光からのオーラもまつりんに分けてオーラ防御
垓王牙の動きを観察し情報収集
第六感を働かせ溶岩流のタイミングを見計らう
来る
溶岩流の方向の地面を大剣で叩き割り溝を作り
更に怪力で近場の巨石を防波堤代わりにそびえ立て
熱さは火炎耐性で耐え、逃げ足で飛沫や飛び岩を避ける
ん、【花魂鎮め】
帝竜の口に向けて衝撃波を放ち
巨石を持って高速で帝竜に迫り、投げつける
これが効くとは思わない
けど、割れた岩は、迫るまつりんの影を隠す目くらましにはなるはず
狙いは尾の付け根
尾を切り落とすように大剣で叩き斬る
おやすみなさい、炎の王
壥・灰色
『全力魔法』で魔力を全身に満たし、襲い来るであろうガイオウガの似姿たる火炎を『衝撃波』を放つ両拳にて迎撃
損害は覚悟の上で、致命のラインを『見切り』、致命傷に繋がる攻撃から優先して防戦
敵の先制攻撃自体をユーベルコードで相殺するのではなく、魔力と衝撃波を込めた拳により『蹂躙』し、突き進む
燃えるだろう、焼け焦げるだろう、爆ぜた焔が身を砕きに掛かるかも知れない
その全ての痛みを越えて進む
魔剣が竜殺しを頼んでばかりじゃあ、格好が付かない
持って行け、ガイオウガ。熾烈なる牙
――これが魔剣の一撃だ
壊鍵、『撃殺式』
起動
足裏に込めた『衝撃』を炸裂、弾丸めいて跳躍
ガイオウガの顔面目掛け
『衝撃』を込めた拳を叩き込む!!
忠海・雷火
地形を利用し、岩場に身を隠しつつ移動
それも完璧とはいかないだろうが。一先ず正確な位置を把握される前に、盾として使う死霊を可能な限り沢山喚んでおく
竜炎の大きさや攻撃方法は不明だが、直線的に飛来してくれば見切り易い。下をくぐる等で攻撃を避け、背後の岩場に衝突させる事を狙う
回避出来ない炎は死霊を盾に軽減しつつ武器受けがてら薙ぎ払い、或いは丁度良いサイズの岩を斬り上げ炎にぶつけ
僅かでも炎に揺らぎ・切れ目が生じればそこから突破
UCの発動条件もある為、被弾自体は覚悟の上。オーラ防御や火炎・激痛耐性で堪え、行動不能は避ける
程良い頃合いでUC発動。私に傷を負わせた炎の主たる垓王牙へ、雷型死霊を差し向けよう
●峨々たる猛炎
呼吸を奪い、肺を焼かんばかりの熱気。懸崖かと見紛う険しい巨躯。
「なるほど、確かに火山だ……」
月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)は頷きながらそう呟いた。
「今度は火山みたいな奴だなんて、バリエーション豊かだね」
同じく高嶺を仰ぎ見ていた緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)も、感心するように言う。
「それにやっぱり強そう!」
声音に含んだ興奮を包み隠さず、透乃は駆け出した。
帝竜ガイオウガ。覚えのあるかの物の名を木元・祭莉(とっとこまつさんぽ?・f16554)は唇で形作り、声に出してみる。
「昔、母ちゃんから聞いたコトのある炎の獣に似てるね?」
何故だか懐かしさを覚えたのは、きっと母の話をよく覚えていたからだろう。
「ん、まつりん」
こくりと頷いた木元・杏(食い倒れますたーあんさんぽ・f16565)から、彼へそっと手を重ねる。繋ぎ止めた手で分け合ったのは、立ち向かうための勇気。それだけではない。杏は白銀に煌めく陽光を手にすれば、杏の帯びた力が祭莉にも伝わる。
盛る暑さの真っ只中、伝う汗を拭ったサフィー・アンタレス(ミレナリィドールの電脳魔術士・f05362)は、ガイオウガの巨体も然ることながら、熱気に少しうんざりと溜め息を吐く。けれど。
──分かっている。
戦うべきは、今だ。
鬱陶しく絡み付く熱風も、放散する溶岩流も、全身から気力を奪いぐったりとした疲労を与えるものだが、それでもサフィーは姿勢を正す。
銘々動き出した仲間の動きも見届けて、敵陣の様子に僅かながら眉根を寄せたレザリア・アドニス(死者の花・f00096)が、やや尖った口でもどかしさを紡ぐ。
「なんと、面倒なことを……」
炎で編んだ矢を放つのは、少女の得意とする戦い方でもあった。しかしこの手の敵に火を注げばどうなるかは、試さなくてもわかる。込み上げた悔しさを頭を振って紛らせ、レザリアは敵の布陣へ意識を投げる。
多くの炎獣が闊歩する灼熱の大地。先ず為さねばと判断したのは、勝機を掴むため数を減らすことだろうと考えながら。
同じ頃。
やぁね、と微かに呟いてコノハ・ライゼ(空々・f03130)は暑さへ息を吐いていた。
「ローストか蒸し焼きかってトコかしら。モチロン黙って料理される気はナイけど」
長居すれば、文字通り料理されてしまいそうな場だ。満ちる熱を少しでも軽減しようと、コノハは気力を盾に変じ、無造作に放られた炎弾の軌道を目で辿る。弾道は撃ち出すごとに異なるが、しかし着弾までの動きが大きいゆえ、読めるものもある。だからコノハはもそのまま駆け出した。
猟兵たちの気配を疾うに感知していたガイオウガが、重たげにこうべを上げる。呼応して、ガイオウガの生み出した炎が獣に変わる瞬間を、天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)も目撃した。
「炎が出たら敵の数が増える。……成るの程……成る程!」
閃きに目を見開いて、あやはぽんと手を叩く。
「電撃作戦がいいって事なんだ!」
言いながらしゃがみ、指先で触れたのはインラインスケート型の武器、レガリアス。夢追う彼女の友でもあるそれを起動させ、感じた振動から絶好調だと頷く。
「レガリアスよし! ガントレットよし! 覚悟よし! それじゃ……スタート!」
準備を整えたあやは爛々として、響かせた合図と共に走り出す。
いくつもの靴音が戦地を巡り出すのを嬉々ながら、目を瞑り腰を据えれば、魔力が総身へ伝播していくのがよく解る。己が身に走る力の用途も、その行く末も壥・灰色(ゴーストノート・f00067)は熟知していた。だから瞼を押し上げてからは早い。
視覚で捉えた悪意の炎を、一回瞬く間に強打する。ガイオウガの似姿たる炎がいかな力を発揮しようと、灰色の両の拳が放つ衝撃波に打たれては、跡形もなかった。一体との戦いで先取した灰色は、すぐさま次なる火炎を迎え撃つ。
それでも無数の竜が、彼を喰らおうと押し迫る。しかし灰色は眉ひとつ動かさず、拳に集った魔力を練る。出力は最大限。敵を吹き飛ばす先は、過去。そして狙い過たず叩いては、次なる竜を狩っていく。
岩陰へ身を寄せながら、忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)もじりじりと焼きつける大地に顔をしかめる。難しげな顔つきだが、しかし思い浮かべているのは作戦をいかにして成功させるかについて。
──完璧とはいかないだろうが。
劣悪な環境下、酷暑と迫り来る炎に抗いながら、あの巨魁を倒すのは困難だ。息の乱れがないのを自身で確認し、雷火は死霊たちを召喚する。今のうちに、可能な限り。そう手早く招き寄せる間にも、敵陣めがけた仲間たちの勢いは緩まない。
一方、どんよりと圧しかかる上空では。
「おお、こわぁ」
鳥の姿になった朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)が、眼下の出来事を目にして一驚する。羽ばたく度に感じるのは、地上からむわっと昇りくる熱だ。大空を吹き渡る風に乗って、赤黒く隆起した大地が、その荒ぶりを噴火の破砕物や煙として逢真のところまで届ける。
「こりゃ地上にいたら蒸発しちまわぁ」
尤も、空も大して変わりはしないと辺りを見渡し、逢真は機を手繰り寄せていく。
●猛攻
ガイオウガの身から吐き出された炎弾が、透乃へ跳んだ。よしっ、と一声ののちに透乃は頑丈な人参を投擲する。手の平に包んだ鎖で飛距離と勢いを調整し、するすると突き進む人参を見届ける。
眸に光を宿した透乃の狙い通り、火山弾へと真っ向かた人参がぶつかる。衝突の勢いで人参は跳ね返るも、花火のように放散した炎弾が灼熱の大地に降り注ぐ。
直後、サフィーの動作を察知したガイオウガの巨躯から、新たな炎が沸く。数えきれないほどの焔はすぐに竜と化し、戦場を自在に駆け回る。個々に動かれては、攻め立ててくるタイミングも掴めない。機を逸すると、集中砲火を喰らうだろう。炎を得手とする者として、感じるものが彼にもあった。
冷静に物事の変化を予測し、術を定めたサフィーは雷雨を降らせる。蒼い雷が火竜を貫き、脇を次々とすり抜け、ガイオウガの独擅場となっていた大地へ雷の加護を宿す──そう、彼の目的は最初からこれだった。
「……これで少しは」
戦いやすくなったはず。ふ、と短い息を落としてサフィーは満目の岩場で戦いを繰り広げる仲間たちを見回す。
「地面の属性をこのまま換えていく。使えそうなら、使ってほしい」
彼の言に四方から、声や片手での応答が届いた。
彼の生んだ地へ踏み入った杏が、瞬き少なめにガイオウガの観察に勤しむ。激しい挙動は示さないガイオウガだが、猟兵たちをねめつける眼光は鋭い。火口から目映い赤を噴き出すときも、岩肌を部分的に溶岩流へと換えるときも、ガイオウガの眼差しは猟兵全体を眺め渡している。
精神を研ぎ澄ませていた杏は、ここでゆっくりとまなこを動かす。押し寄せる熱風にくるまれながらも、どうにか手繰り寄せたのは噴火により震える空気から滲む、滓かな違和感。
──来る。
徐に顔を上げてみれば、巨魁の肌がどろりと溶けた。流れゆく赤の濃淡が闇を連れて、杏のところまでやってくる。
杏はすかさず大剣を振りかぶり、地面を叩き割った。裂けた箇所をそのまま深く抉ると、更に深い溝ができる。すべてを飲み込む赤は、辿りつく先をすぐには変更できず、彼女の刻んだ大地の歪みに吸い込まれた。そして傷口でも受けきれなかった分の流れを、巨石を突き立てて凌ぐ。
その隙に、ぴょんぴょこ跳ねていた祭莉が、身体を縮こまらせて岩陰へ潜む。戦の気を敏感に察知したガイオウガが、火口から雨のごとく弾を放出した。戦場を震わせて生み出された獣が、獲物である祭莉へ照準を定める。
「先制されるなら、狙うのは後の先!」
宣言と同時、祭莉は捻って伸ばした棒で、巻き付く赤を払い退ける。
赤竜だ。世の終焉を描いたかのような赤き竜の群れが、煙に淀んだ空を支配している。
「いっておいで……」
竜の埋め尽くす空へ向けて、レザリアが愛らしい鈴蘭の花嵐を招く。
ガイオウガによって生み出された竜の炎は、思い思いに滑空し、あるいは花を避けて飛ぶ。レザリアは目を眇め、舞い踊る鈴蘭の花へ意識を集中させた。染み渡った彼女の魔力が花の竜巻を起こし、炎を押し退けるための壁にする。
そのとき、ガイオウガが溶岩流を生む。山のごとき巨躯ゆえに、ほんの一部をどろりと流下する熱に変えるのも、かの者にとっては容易いこと。流れる赤が岩石に衝突する度、窪みから上がる度、勢いよく溶岩が弾ける。
飛沫をあげる溶岩流と込み上げる熱気に煽られながらも、逢真は背に負った黒き太陽から蛇を喚ぶ。太陽を喰らう大蛇は、定命がさだめた顔のひとつ。
「さぁいこうかィ。太陽呑み込めンだから、炎の化身だって呑めらぁよ」
底のない混沌と深い闇の化身へ、逢真はそう呼びかけた。
全にして壱と、かの者は称されていた。ならばガイオウガから熱を奪えば、戦場でより動きやすくなる。そう判断して。
闇が抱える冷たさで、巨魁の絶え無き赤熱を押さえ込もうとする。けれどガイオウガは闇に怯えも染まりもせず、徐に顔をあげた。言葉を発するでもなく、喉奥から低い唸りを鳴り響かせる。火山が活動するときに似た地響きが、一帯を襲う。
逢真が鳥の舌に悔やみを噛みつつ、次なるタイミングへ意識を移した。
ふと竜が踊りだす。炎で模られた竜の軍勢が、猛攻の最中で姿勢を崩さぬ灰色を沈めようと、攻め入る。止まない赤で視界が覆われても尚、彼は腕を構えて防戦する。
──覚悟の上だ。
致命のラインも理解している。だからこそ、そこまでなら幾らでも身を粉にした。
けれど、ガイオウガから絶え間なく生み落とされていく炎の数々は、猟兵たちの攻めの一手を奪うばかり。だからこそ灰色は拳で敵を蹂躙し、先へ先へと突き進む。
燃えても、焼け焦げるても、彼の歩みは止まらない。爆ぜた焔で砕かれんばかりの激痛に見舞われようとも、彼は全ての痛みを越えて進んでいく。
道を切り開こうと身を差し出して挑むのは、雷火も同じだ。
随分大きい。そう敵の存在を痛感して、雷火は飛来する竜の火を撒こうと、群れの腹の下へと滑り込む。直後、轟音が立ち込め、雷火の元いた位置へ突進したかれらの余韻を浴びた。岩場に激突し、あるいは急降下が徒となり地面へ叩きつけられる様を目撃して、雷火は双眸を細める。
掠めただけでも、ひりつく痛みが抜け切らない。
ガイオウガを模した炎でこれなら、正真正銘の帝竜との対峙ではどうなるだろう──考えただけで、雷火の胸中がざわつく。猟兵として力を得てから、苦痛も、呼吸がままならなくなる程の熱も、雷火には遠い存在でなくなった。ぐっと拳をにぎりしめた雷火は、再び巨石の陰へ隠れ、機会を窺う。
その頃、凍てつく力を水流に乗せて纏った蒼汰は、意識せず首元の三日月に触れる。そうして一息入れて辺りを見回せば、仲間たちの絶え間ない動きが目に飛び込んできて。
──俺達は皆で、ここまで来たんだ。
自身に生まれた高ぶりを知る。だから炎と噴火により歪んだ大地ではなく、頂が望める山だけを見つめ、空中から仕掛けた。
迫ろうとすれば、ガイオウガから竜の炎たちが踊り出る。なんて数の多さだと僅かに眉をひそめるも、減速はしない。群れからしてみれば、正面から突撃してくる相手への対処は決まっている。軍勢も勢いを殺さず相対するのだが、しかし蒼汰はぶつかる直前に身を捻った。
竜が驚く暇もなく、一体一体の合間を翔け抜ける。元より掠れるのは承知の上。双翼やふかふかの尾が炎にあてられ、肌身が焼かれようと、蒼汰は突き進むのをやめない。
行く手に聳える山を睨みつけ、彼は炎竜による弾幕を切り裂いていく。
そこへ。
「わ、わわ!」
火口から次々と噴き出された炎が、戦場を走り続けるあやを襲う。逃げ惑う素振りこそ披露するものの、彼女は派手に立ち回る仲間たちを見つけて、策に乗っかるように跳ねた。
「ok! あたしもそういうの得意!」
つばくむ地面から跳ね、着地の勢いを乗せたあやが、レガリアスへ益々スピードを重ねる。平面でない足場を活かした疾走だ。付き纏う炎にも予測し辛い挙動で、追いすがるに至っていない。
振り向きざまにそんな炎獣たちへウインクを投げ、場を掻き回しつつ、ガイオウガの元へと駆け抜ける。
矢継ぎ早、落下してきた火山弾の直撃を免れ、コノハは次なる足場を踏んだ。
炎が掠めようと、破片を浴びようと、致命傷にならなければこっちのもの。
残像を置きながら走るコノハは、獣と化した炎の猛追に、しつこいと口の端へ笑みを刷いて告げた。そしてすぐさま切り立った岩を駆け上がる。そこかしこに岩石が転がり、隆起した地面や窪みがあるのだ。跳躍の材料にはしやすい。
そうして獣たちを誘った先、飛びかかってきた獣の──ほんの一瞬の無防備さを突く。
懐へ飛び込み、コノハが赤き身体へ喰らわせるのはフライパンだ。調理人ならば手慣れたもの。獣を殴打し、そのまま軽々とフライパンへ乗せていく。
「ばっちし協力してもらうねぇ」
不敵な微笑を目許へ寄せたコノハを前に、次第に獣たちが怯み始める。
やがて蒼汰は掻い潜った群れの先で一度停まり、仲間の位置、そして自分とガイオウガの距離を確かめた。振り返るも、蒼汰を打ちのめすこと叶わなかった炎の竜たちは遠く、旋回して戻ってくるまで多少の時間を要する。
「……来た」
機を自らへ知らせ、息を吸う。満ちる熱気は相変わらずだが、先刻より幾分か良い。だから心身を滅入らせる熱にも負けず、彼は指先を首魁ガイオウガへ向ける。静かに、そして真っ直ぐに。
──打ち砕いてみせる。
彼が表したのは戦いへの意志。それは彼方の空から降る願い星となって、帝竜の岩肌を突き破った。そして星に乗せた冷たき力が、容易に近づかせようとしない肌の焦熱を和らげる。
●灼熱地獄
杏は防波堤として立たせた巨石を足場に、身軽さを活かして安全な足場へ飛び移っていく。
「ん」
岩の上から見下ろすと、川のように流れを衰えさせず、地面を飲み込む溶岩を目の当たりにした。それでも戸惑いに暮れず、はらはらと舞い散らせた白銀の花弁を連れて、杏が剣を構える。すう、と深めに吸い込んだ息を胸に溜め、力へと転換する。
勢いよく振り払えば杏の斬撃から波動が生じた。
「どうぞ」
端的な一言と共に、衝撃波の後続を投げつけた岩で担う。波打った一打と巨石の連撃がガイオウガの視界を覆う。
その間に祭莉は、きらきらと目を輝かせて炎獣の姿を追い、燃え盛る白炎で対抗心の火花を散らす。高低差も問わない軌道で、飛び散る火や獣からの猛打をまともに受けぬよう駆け続ける。
「おいしょー! どうだっ!」
響き渡る掛け声と共に、祭莉が減速なしにジャンプして、炎獣の輪へダイブする。獣へ一打を加えた反動を利用して後退する。獣を織り成す火炎を風圧で掻き消して、にひひ、と勝ち誇ったように祭莉が笑ってみせれば、毛並みを荒らされた獣たちは怒りの矛先を祭莉へ刺し始めた。
そうして炎が揺らいだ。
生じた切れ目を、盾にした死霊越しに知って、雷火は思わず駆け出す。気付けば、誰に声をかけるでもなく突破していた。肌を焼く痛みは未だ拭えず、だからこそ好機は逃さない。
──熾烈な赤も、激しい痛みも。
呼び覚ました雷は、彼女の痛苦をかたちに換える。
──私に負わせたものは、炎の主たる垓王牙へ捧げよう。
怨敵をはらうべく追跡した死霊が、雷火の意志に沿って巨躯を灼く。
高く、そして遠く。無数の鈴蘭を狂嵐に換え、レザリアが酷熱の戦場へ行き渡らせていく。
──この灼熱地獄を……もっと削げれば……。
戦いやすくなる。仲間たちの一撃が、確実に入るようになる。そのためにレザリアは、鈴蘭の嵐で場の熱気を徐々に剥奪する。
仲間たちの猛攻を眺め、朱の羽で翔けていた逢真が目を細めた。
──どう調理してやろうかねェ。
暫し考えたのち、逢真は再び大蛇の力を寄せる。
次こそはと、淵も高さも拝めぬほどの深遠なる闇で巨体の熱を奪った。二人してガイオウガの周辺から熱さをそぎ取れば、幾分か喉が焼けるような感覚も薄れる。
それでも尚どっしりと構えたままの巨魁を遠目に、レザリアが息を吐く。
「……垓王牙……」
その存在を考えただけでちらつくものは、何なのだろう。
わからない熱の厄介さに加え、吐いた一息さえも暑くて滅入ったように睫毛を伏せる。
「氷属性のユーベルコードが……欲しくなっちゃうの……」
レザリアは眩みそうな炎暑の中、涼を欲して呟いた。
多少涼しくなった戦場で、透乃がシンカーキャロットを大きく振り回して、獣の群れを叩く。重量のある人参に叩かれ吹き飛んだ獣が次々と転がり、道は開けた。
火を映した髪が揺れ、結ぶ黒が烈風になびく。透乃の表情は常に楽しげだ。巨大な帝竜というだけでは、彼女はもう驚かない。
「楽しい!」
火山のごとく血肉が沸き踊る激戦。それこそ透乃の求めていた、最良の戦い。
ガイオウガという豪勢なメインディッシュを見つめて舌舐めずりし、彼女は獣に構わず特攻した。
そして、迫る一打を躱し、反撃でフライパンへ獣の残滓を積み上げていたコノハは、漸くガイオウガの足元へ着く。
「はい、出来上がり。たんと召し上がれ」
数多くの獣を材料にしたフライパンで、跳ねて仕掛けるのは強烈な一打。
「利用しない手はないデショ。その熱」
フライパンの力を顎の下に受けたガイオウガは、一瞬ぐらりと頭部をふらつかせた。
「まだまだ終わらないわ」
コノハがそう告げた直後。
「うおおおー!!」
一帯を震わせる叫びをあげたのは、あやだ。
「その程度の炎じゃ、あたしの夢への情熱は……止められないっ!」
既に限界に達しているはずの体力と気力を、滾る情熱で支えながらあやは走る。
駆けるあやたちの様子を視認し、蒼汰は再び願いの流星を映す。
少しでも刺さればと、魔を破り巨体を揺るがすため捧げた願い星は、彼の瞳と同じ色で赤黒くくすんだ空をゆく。
そんな彼の動きを一瞥したサフィーもまた、溶岩流や炎弾に掻き消されたはずの蒼を、諦めずに塗りたくっていく。
──ある程度の熱は大丈夫だ。耐えられる。
彼の気質を涵養した魔術が、悠然な動作を生む。すべてはサフィーの津々たる覚悟の証で、二粒のサファイアンブルーが揺れた。そこに映り込んだ赤はしかし、蒼く轟いた稲妻に打たれ、事切れる。
至福のひとときへ帰るため、サフィーは遠くから、疾走する仲間たちの道ゆきを蒼で照らす。
赤熱の地に蒼が増え、そこへ。
「アンちゃん!」
祭莉の声に、呼応した杏が肯う素振りを見せる。
二人して同時に踏み込み、宙からガイオウガの口と、そして尾の付け根へ叩き下ろすのは──拳と大剣だ。
異なる部位を痛め付けられた巨岩が、悲鳴代わりに火口から熱を噴き出す。
勢いの波が途切れぬよう、そこへ灰色が向かう。
「持って行け、ガイオウガ」
炎竜の軍が噛み付くまでの短い時間、灰色が壊鍵を通して起動したのは撃殺式。硬化した四肢に搭載するのは、一打限りの破壊力。
ぐっと踏み込んだ足裏その一点から、脈動する力を炸裂させて、跳んだ。
跳躍した灰色が矢継ぎ早に見舞うのは、迷いなき拳。彼こそが、魔剣と呼ばれる熾烈なる牙。ゆえに迸る赤が血迷ったように狂い、ガイオウガの抵抗も徒爾に終わる。
続けて獣の陣を抜けたあやが、岩石を踏み台に大きくジャンプした。
「これがあたしの……」
想いをバネに天高く跳んだあやの姿を、ガイオウガも見る。
かの竜に浮かぶ表情に変化はない。だが不思議と、猟兵たちには咥内の輝きが明滅したように映る。
「未来と夢への想いの乗った、重い一撃だーー!!」
下すのは、跳躍からの急降下パンチ。雷を帯びて赤を消し、代わりに五芒星が輝いた。巨魁に電波した雷の力が、耳をつんざく音で巨魁の動きを更に鈍らせる。
最後の抵抗とばかりに撃ち出された炎弾も、もはや透乃の眼中にはない。あんなのは、もう脅威にならない。
届く。本能でそう察して透乃が左で構えたのは、己と同じ響きを冠する大斧。
「必殺の左ー!」
汗にまみれた掛け声を轟かせ、渾身の力で重戦斧を振る。
「たっぷり味わって! 緋迅滅墜衝!!」
左から右へ、天地を分かつように薙いだ一撃が主峰を砕く。
鳴き喚く暇も、猟兵たちへ文句を告げる暇も与えられず、稜線から崩落しはじめた。猟兵たちの力が、想いが、燃え滾る帝竜ガイオウガの居城を焼尽したのだ。火山地帯特有の熱気は保たれたままだが、ガイオウガのもたらした忌まわしき赤熱は、次第に薄れていく。
「おやすみなさい、炎の王」
朽ちた火山へ、杏が別れを告げる。
やがて、形あることそのものを忘れたかのように帝竜ガイオウガは溶け、流れ着く先も知らずに消滅した。それが帝竜ガイオウガの、最期であった。
成功
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