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帝竜戦役⑱〜虚なる緑スライム

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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●無
 ある一つの感情を昂らせる温泉地帯『冷静と情熱の珊瑚礁』。
 喜び、怒り、哀しみ、憎しみ……其々異なる温泉によって昂る感情が変わってくるこの地で、名状し難い異様な光景が広がっていた。

「…………………………」
 ある広い温泉で、緑色のスライム達が密集しつつ湯に浸かっていた。
 眠たげな瞳に光はなく、身体は岩石の如くピクリとも動かない。

 何故なら、此の温泉で昂る感情は「虚無感」……それは活力を奪う負の感情。
 彼等は敬愛するヴァルギリオスを護る意思も、憎き猟兵を倒す闘志も失われた。
 今の彼等にできることは何も考えず、何も感じず、只無碍に立ち尽くすことのみ。

●心を満たせ
「何とも不条理な光景でな……」
 集まった猟兵達に、予知で目にした出来事を語る愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)。
 聞くと、いかにもやる気のなさそうな表情をしたスライムの集団が、温泉地を埋めつくすように密集していたのだという。
 更にスライム達は全く動かず、温泉もまるで殆ど波を打たなかったため一瞬ジオラマか何かと誤解してしまうほどだったそうな。

「これはね、一回くらいは見たほうがいいと思うぞ……そんなわけで作戦の説明に入るぞ。今回皆に向かって貰うのは、ある特定の感情が増大する“冷静と情熱の珊瑚礁”」
 清綱によると、此処で高まる感情は“虚無感”。
 如何に強い信念を持った者でも、入ると全て洗い流されてしまうという。
「この温泉にいるスライムの名は『ポポゥリン』という。いかにもヤル気のなさそうな顔をした、緑色のスライムだ。改めて言ってしまうが、あの顔は一回見たほうがいいぞ」
 彼等は大量に存在するが、温泉の影響を受けているため此方か襲ってはこない。
 しかし温泉の影響を受けてしまうと、そのまま彼等の仲間になってしまい戦いどころではなくなってしまうだろう。

「此処で肝となるのは、この温泉の効果に耐え忍ぶことだ」
 この方法を用いれば、戦闘能力を大いに増加させることができるという。
 此処で本題だが、「虚無感」に耐えるにはどんな方法があるだろうか?
「そうだな……やはり先ずは自分自身を見つめ直すことだと思うぞ。自分が戦う意義、自分が本当に護りたいものは何か……それを改めて思い返せば、自然と心は満ちると思う」
 戦う意義、護りたいもの……戦いに身を置く者ならば、誰しもが持つもの。
 それを忘れることがなければ、この温泉に敗れることはない筈だ。
 勿論それ以外にも術はあるだろうが、それは猟兵達に委ねられている。

「因みに此処の秘宝は「サウナ珊瑚」というのだが、これがかなりのシロモノでね」
 それは水を温泉化する効果を持つらしく、それを用いればクリーンな火力発電に利用できるという。更に売値は親指一つ程度でも金貨100枚相当とかなり高額。
 時間があれば、是非持ち帰りたいものだ。
「ああそうそう、云い忘れたがここの温泉は足湯程度の水位しかないから、水の対策はそこまで考えなくてもいいぞ。その分効果は高いが」
 また好都合な……とはいえ、何の対策も要らないのは丁度いい。
 温泉に耐えることさえできれば、あとは此方の物と言っても過言ではなさそうだ。

「それでは転送を開始する……兵に、幸あれ!」


甘辛カレー
 こんにちは。よく「細かい性格」と言われる甘辛カレーです。
 今回は、空虚なスライムとの戦いをお送りします。

●湯
「虚無感」が爆発的に増大する温泉です。入った瞬間心の中が空っぽになります。
 水位は低く、足湯程度の高さしかありませんが効果は高めです。
 この効果に耐え忍び、自身を奮い立たせることができれば戦闘能力を大いに高めることが可能になるでしょう。

 難易度は低めに設定したつもりですが、どうしても難しいと感じたらOP清綱で清綱が述べた方法(※自分を見つめ直し、戦う意義を思い返す)を用いても大丈夫です。

●敵
 大勢の『ポポゥリン』達が温泉地帯を埋め尽くすように密集しています。
 猟兵が現れても、心が支配されているため何もしてきません。

 温泉の効果を耐えることができれば、一瞬で蹴散すことが可能でしょう。

 其れでは「心」を満たし、スライム達を蹴散らしてやりましょう。
 また、プレイングは即日受付となります。

 兵に、幸あれ!
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第1章 集団戦 『ポポゥリン』

POW   :    笑顔
レベル分の1秒で【スマイル】を発射できる。
SPD   :    怒り
【怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    お前の顔は覚えたぞ
【体当たり】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【顔】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。

イラスト:透人

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

護堂・結城
よく虚無るとか言うけど、そんな酷い事にはならんだろ
(敵を見て)…これはひどい

【POW】
これはやばい、何も感じなくなる…これが虚無…

確かに全てが虚しいが、ここで何もしない、なんて選択肢はないな
ここで立ち止まって、帝竜どもの思うようにさせたらいろんな人が死ぬ…!

理不尽が!何の罪もない人々に涙を流させることになる!!
そんなことを…この外道狩りが許容できるわけあるかっ!!

【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた感情を喰らう【大食い・範囲攻撃】
味方と自分の虚無感を根こそぎ喰い尽くし、吸収した虚無感を基に指定UCを発動
【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を一斉に敵に降らせる【爆撃・衝撃波】だ



●虚無を喰らう
「これはやばい、何も感じなくなる……」
 外道を屠る戦士護堂・結城(雪見九尾・f00944)の顔が、みるみる強張っていく。
 温泉に入った瞬間感じられたのは、頭の中から何かが抜けるような感覚と、宿した力が喪われていくような感覚だ。
 油断していたわけではなかった……されど、此の地を覆う「虚無」の力というものは、己が予想していた以上に強かったのである。
 その周囲には表情一つ変えず、ピクリとも動かないポポゥリンの群れが、結城の行方を遮るように立ち尽くしている……この異様な光景も、結城を襲う「虚無」をより一層引き立てていた。

「全てが……空しくなっていくな……」
 意思のカケラがぽろりと剥げ落ち、強張っていた顔がみるみる虚ろになっていく。
 其の傍らでは心無きポポゥリンの群れが、新たな仲間を迎え入れるように此方を見つめている。
 俺はこのまま此処で全てを喪い、彼等のような抜け殻になるのを待つしかないのか?
「……いや、ここで立ち止まって、帝竜どもの思うようにさせたらいろんな人が死ぬ……」
 結城は消えかかる心を奮い立たせ、其の身に宿る力を高めていく。
 此処は帝竜の棲む地。此の地を訪れておいて、何もないという選択肢を取ることはできない。
 もし、此処で何もしなければ……理不尽が、罪なき人々に血と涙を流させることになるだろう。
 そのような惨たらしい結末を、結城は赦すのか?
 血塗られた世界が築かれるのを望むのか?

「そんなことを……この“外道狩り”が許容できるわけあるかっ!!」
 大いなる咆哮が放たれると同時に、此の地溢れた「虚無」の感情が結城に宿り喰らわれていく。
 自身を蝕んでいたものが風のように消え去り、それに耐え抜いたことで生み出された力が白き劫火の剣群となって、結城の身体に現れていく。
「今の俺は、手加減できそうな気がしないぜ……!!」
 虚無に耐え抜き、果てにはそれすら力の糧とした今の彼を止めることは誰にもできないだろう。
 静かに燃え盛る劫火の剣群が、今もなお立ち尽くすポポゥリンに剣先を向けていく。
『――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる』
 確かな死の宣告が、虚ろなる者達に告げられた。
 ポポゥリンに狙いを定めた白き剣群たちがおおいに燃え上がり、衝撃波を放ちつつその脳天目掛けて矢の如く飛び立っていった。
「……………………」
 彼等に反撃の意思はなく、只々目に現れたものが此方に来るのを待つのみ。
 燃え盛る剣たちが虚ろなるものたちの脳天を貫き通し、劫火が其の身を焼き尽くす。
 苦しみの声をあげることもなく、緑色の身体が塵と消えていき……遂には結城の目の前から一匹残らずいなくなった。
「俺は外道を討つために此処に来た……此処で立ち止まるわけにはいかない」
 此の世界を蝕む敵を討つため、此の世界の人々を惨劇から救うため。
 自分達にしか為しえない使命を果たすため、結城は再び前へ踏み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
同じ顔したスライムの群れとはこれまた面妖な
キミ達本当に虚無の彼方に意識飛んでるの?

気持ち良さそうな足湯に浸かっているうちに瞬く間に心が空っぽになってきているのがわかる
これが、無か……
だけどわたしは作家
息をするように妄想出来る民なのだった
無を耐え、有を生み出してみせよう

ふう、よし新しい物語のネタを考えよう
可愛いぽよぽよした生物が主人公の話がいいな
或いは主人公の相棒がぽよぽよ生物
一人と一匹(?)で冒険の旅に出るんだ
世界を廻って出会う人々の優しさに触れ、困難に立ち向かい、絆を深めていく物語だ
考えているうちにわくわくしてきた
よーし、帰ったらプロット組むわよー

スライムちゃん達は此処でおやすみなさい



●無を有に
「これまた面妖な……本当に虚無の彼方に意識飛んでるの?」
 桜の硝子ペンのヤドリガミ、セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)の眼前に異様な光景が広がっていた。目線の先には同じ顔をしたスライムの群れが、数を為して温泉地を占拠している。
 更に皆がその目に光はなく、魂が抜けてしまったようだ。
「そしてこれが、“無”か……」
 そして己自身も、広がる温泉に足を浸からせているうちに、瞬く間に心が空っぽになってきているのが感じられた。
 いや、それだけではない……考える力と、手の力も徐々に弱まっている。
 
 此処は自身が想像したよりも危険な場所だったことを、其の身で感じ取ったセレシェイラ。
 一刻も早く抜け出さなければ、めでたく彼等の仲間入りである。
 心が薄れていく中、セレシェイラが紡ぎ出した答えとは。
「(……よし、新しい物語のネタを考えよう)」
 そう、セレシェイラは“文豪”……息をするように、「妄想」をすることができる民の一。
 「綴る」ことこそが己の証明となる……故に“無”から“有”を生み出し、此の力を祓って見せよう。  
 さあ、先ずは題材だが……先ず、物語の中心となる『主人公』はどんな者がいいだろう?
 例えば、今セレシェイラの眼前にいる「ポポゥリン」のような『愛らしくぽよぽよした生物』が主人公の話というものはどうだろうか。
「(或いは……主人公の相棒がぽよぽよ生物。一人と一匹で冒険の旅に出る物)」
 一人の戦士とその相棒が、幾多の地を廻り其処で出会う人々の優しさに触れ、立ちふさがる困難に立ち向かっていく。厳しくも楽しい旅の末に、主人公と相棒は種族を超えた絆を育んでいく、そんな物語。
 無に支配された景色の中から、新たな世界が生み出されていった。
「考えていくうちに、わくわくしてきたわね」

 やがてセレシェイラの想像力は大きな活力を生みだし、虚無が振り払われていく。
 頭の中に思い浮かんだ物語を、綴ってみくなってきたのだ。
 高まった力は一際耀く星と舞い散る桜の花びらとなって戦場を覆い、ポポゥリン達を包み込む……『星の魔法』が、硝子のペンから綴られた。
「おやすみなさい、スライムちゃん達」
 輝きつつ散る桜の花びらが、ポポゥリンの身体と共に光のかけらとなる。
 光が湯に落ちるとそれは一瞬でかき消え、最後には何も残らなかった。
「よーし、帰ったらプロット組むわよー」
 頭の中に思い浮かんだ物語を、綴ってみたくなってきた。
 両腕を組んで伸ばしつつ、セレシェイラは温泉地を再び歩き出す……桜色のペンから、新たな物語を綴るために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(アドリブ・連携可)
■作戦
弟と手をつなぎ強く意識することで戦う意義を思い出し虚無感を抑えて戦う
■行動
お気に入りのフリル水着でフォルセティと[手をつない]で温泉地帯へ
温泉に触れると突然広がる無の境地。
全てのことがどうでもよい気分。
心に穴が空いたみたい。このまま空っぽになるのも悪くない
・・・
ふと自分の手に感じる違和感。
感じる温もりは弟の手
清綱さんの言葉を思い出す。自分の戦う意義は…
弟と、フォルセティと前へ進むために!
「フォルセティ、しっかりして。一気に仕掛けるわよ」
虚無感を上手く抑えながらをポポゥリン達をロックオン
[範囲攻撃]の【フィンブルの冬】でまとめて殲滅する


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】 (アドリブ/連携可)
【行動】
セーラー水着でフィオ姉ちゃんと温泉地帯へ。
今回は(手をつない)で歩くんだって。ちょっと恥ずかしいよね
「あ、あれ?」
温泉に触れると不思議な感じが広がるよ
戦わなきゃって思っていたのに何をする気にもなれないや
このままぼんやり立ち尽くすのも悪くない?

「え、うん。大丈夫だよ」
急にフィオ姉ちゃんに声かけられて手をギューッて握りしめてもらったよ
そうだ!ボクはフィオ姉ちゃんにずっとついていくって決めたんだ
大事なこと思い出したから虚無感も少し抑えられそう。
「あはは、変な顔してるー」
ポポゥリン達に狙いを定めて(全力魔法)でカラミダド・メテオーロだよ



●姉弟の絆
「ほら、こっちよ。フォルセティ」
「わわ、待って。フィオ姉ちゃん」
 お気に入りの水着を纏い、手をつないで温泉に足を踏み入れる魔法使いの姉弟。
 姉のフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)と、弟のフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)……二人は互いに、強力な力を持った魔法使いだ。
「……えっと、あれが例のスライム達?」
「あはは、変な顔してるー」
 異様な光景に言葉を失うフィオリナに対し、フォルセティはからかうように笑っていた。
 二人の目先に現れたのは、表情一つ変えず其の場で立ち尽くすポポゥリンの群れ。
 様子を見ていても彼方から仕掛けてくるような気配はなく、此方に気づいているかも怪しかった。 
 
 そして此処までは「普段通り」の光景だ。だが、そんな時間は突如として終わりを告げる。

「あ、あれ……?」
 温泉に入ってから少し時間が経つと、フォルセティが異様な気配を感じとった。
 頭の中が空になり、言葉が思い浮かばない。握った手に、力が入らない。
「どうしたの?フォル……セティ……」
 弟の異変を感じたフィオリナが声をかけるもその瞬間言の葉が千切れ、力が抜けていく。
 心の中が突然真っ白になり、全ての事がどうでもよくなっていく。
 これが、此の地を覆う「虚無」の力なのか。
「………………」
 『始まったようだな』。一匹のポポゥリンが、そう告げるように此方を向いてくる。
 無の世界の扉が、重苦しい音と共に開かれた。

 虚ろな目で立ち尽くす二人。その目に映る世界は、真っ白に染まっていた。
 二人は、これまでのことを振り返ってみる。
 代々宮廷魔術師を輩出してきた、『ソルレスティア家』の次期当主として生を受けたフィオリナ。  
 其の血と、其の力を有した意義とは、何だろうか。其の血を護るためだけか。

 若くして膨大なる魔力を持っていたフォルセティ。其の力が宿った意味は、何だったのだろうか。
 此の力を以て戦う本当の意義とは何か、本当に護るべきものとは何か。 
 そして抑々、自分達はこんな力を持つことを自分は望んでいただろうか。
 どんなに想い返してみても、言葉が思い浮かばずにいた。

 更に時が立ち、頭の中から何もかもが消え去っていくのを二人は感じ取る。
 このまま立ち尽くしているのも悪くない……否、そうするべきだ。そうすれば楽になれる。
 巡り出る虚無に身を任せ、頭の中からすべてを消し去ろうとしたその時だった。

「この……手は……?」
 ふと、握った手に違和感を感じたフィオリナ。
 そのぬくもりの先を振り返ってみると、一人の少年がいる……否、違う。私の弟・フォルセティ。
 幼い頃からいつもいっしょにいた、私の最愛の弟。
 フィオリナの曇っていた心が、晴天の如く晴れていく。
 今ならはっきり言えるだろう。私の戦う意義は……「弟と、フォルセティと前へ進むため」!
「フォルセティ、しっかりして!」
 ふと、声をかけられた。その先を振り返ってみると……一人の女性がいた。握られた手に、強い力を感じられる。
「フィオ……姉ちゃん?」
 此の手は……姉の、そうだ。フィオ姉ちゃんの手だ。
 空っぽになった頭が、再び満たされていくのを感じ取るフォルセティ。
 そうだ……僕は「フィオ姉ちゃんにずっとついていく」と決めたんだ!

「うん、大丈夫だよ!フィオ姉ちゃん。心配かけてごめんね」
「良かった……さあ、 一気に仕掛けるわよ!」
 二人の心が、再び一つになった。
 光り輝く白銀のドレス姿なったフィオリナの両手に氷の力が纏われていき、フォルセティの手にする『聖箒ソル・アトゥース』に膨大な魔力が流し込まれる。
 更に虚無の力に耐えた事で生じた力が、二人の魔力を更に暴走させていく!
「氷の檻に閉じ込めてあげる。氷結へ導け、黄昏の吹雪よ!」
「悠久に揺蕩う無限の星屑よ。星柩満ちて此へ集うは漆黒の紅炎」
 魔法使いの姉弟たちの手で奏でられる、吹雪と紅炎の二重奏。
 フィオリナによって放たれた氷雪の竜巻がピクリとも動かないポポゥリンの群れを吹き飛ばし、その緑色の丸い身体が宙に浮いていく。
 そんな彼等の眼の前に現れたのは、灼熱の巨大隕石……それらは宙を浮いていたポポゥリン達の身体を徐々に押し込んでいき……凄まじい音を立て、一匹残らず炎の内へ呑み込んでいった。
 最後に消えた一匹の顔は、どこか清々しく……虚無を討ち払った二人を祝福しているようにも見えた。
「厄介な所だったけど、倒せたわね。行きましょう、フォルセティ!」
「うんっ!フィオ姉ちゃん」
 虚無を振り払った姉弟が、再び手を繋いで温泉を後にする。
 たとえこの先如何なる艱難辛苦が待とうとも、二人は恐れることなく歩み続けるだろう。
 何故なら、二人は……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クシナ・イリオム
アドリブ歓迎

虚無感が来るというからどんな感じなのか身構えてみたけど…
案外大したこと無いね
…それもそうか。この感覚はきっと『暗殺教団時代、殺すことを強いられていたあの頃』に感じていた感覚
あの頃と違い、自らの意思で自分の行動を選べる今の私なら虚無感に押し負けることなんてありえない…!

【弘遠なる捕食者】を発動
広範囲を死の森へと変化させ、動かないスライム達を死の森の樹木の苗床へと変えるよ
…動きたくないなら永遠に動かなくていいようにしてあげる

領地を得て、A&W中に散っていった暗殺妖精残党の故郷を創る
それを成すために私には止まっている暇が無いんだ
さあ、次に行こう。今の私には戦いへの確固たる理由がある…!



●“虚無”を知る者
 小さな体を羽ばたかせ、温泉地を訪れた暗殺者の妖精クシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)。温泉に触れてみると、虚無が其の身を覆っていくことを感じた。
「虚無感が来るというからどんな感じなのか身構えてみたけど……案外大したこと無いね」
 頭の中から何かが消え去る感覚も、クシナにとっては痛くも痒くもなかった。
 何故ならクシナは、この場を支配する“虚無”の何たるかを知りつくしている……この温泉から生ずる虚無の感情は、教団にいた頃、『殺戮を強いられていた』時に感じていた感覚とまるで同じだったのだ。

 あれは暗殺教団に所属していた頃……教団に属していた頃の自分は、只々命じられるままに暗殺対象を無造作に殺めていた。
 己の意思も持たず、見えざる鋼糸に引かれる人形の如く其の身を血で染めてきた。
「あの頃と違い、自らの意思で自分の行動を選べる今の私なら虚無感に押し負けることなんてありえない……!」
 教団から解放され、猟兵となった今自我を手に入れ、自らの意思で戦うことができるようになった。
 今は、自分自身と教団にいた仲間達に対する恩赦を勝ち取り、名誉を取り戻す為に戦っている……今更、血塗られた過去に戻る必要などないだろう。
 クシナは所持する暗器に手をかけると、かつての己の如く心を失ったポポゥリンの群れに殺意を向ける。

「反するもの呑め死の呪い。森は生命の基盤にして生命の頂点なり」
 「弘遠なる捕食者」の囁き……クシナの詠唱と共に、虚無の温泉地に突如降り注いだ、鉛色の雲から降る雨。雨の降り注いだ温泉地が、霧のかかった“死の森”と化していく。
 其の中に連れ込まれたポポゥリン達が、死の森に生命を吸い取られていき、森の糧となっていく。
「……動きたくないなら、永遠に動かなくていいようにしてあげる」
 虚無に支配されたポポゥリン達に抵抗の意思はなく、寧ろそれを待っていたかのように身体が溶け消えていく。
 戦う意思のないものに、確かなる“死”の宿命が与えられていった。

「さあ、次に行こう。今の私には、戦いへの確固たる理由がある……!」
 群竜大陸の領地を得て、A&W中に散っていった暗殺妖精残党の故郷を創る。
 それを成すために、クシナに立ち止まる時間はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベール・ヌイ
虚無感と…怠惰は違う…
ヌイは怠惰にしたくて…ここは虚無感を与える…
ヌイが虚無感に陥れば…怠惰を
与えれなくなる…
ならば、虚無感なぞ不要…
という思考で感情を抑えます、ついでに真の姿の悪魔っぽい格好になります

【不死鳥召喚】起動、背中からフェニクスを召喚
ポポゥリン達を焼き払います
召喚の時の痛みは「激痛耐性」で耐え、癒しの炎で回復します
アドリブ協力等歓迎です



●無為を祓う
 心を虚無に支配されたポポゥリンの群れが占拠する温泉。
 その中に、姿は違えど周囲に全く違和感を与えず此の場に溶け込んだ者がいる。
「確かに……何もしたくなくなってくる……」
 それはベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)……1日の大半を寝て過ごす妖狐だ。
 言葉少なで、普段は滅多に動かない彼女と此の場の相性は良いというべきか、それとも悪いというべきか……何方が真実にせよ、此の場の雰囲気にはかなり合っているほうだ。
 
 やはり、この温泉の力は強烈だ。頭の中に入っていた何かが抜け去っていき、手に力が入らない。
 事実、ヌイの顔が此の場を占拠するポポゥリンの顔へ徐々に似始めてきているのだ。
 このままでは「一日の大半寝て暮らす」日々ではなく、「この温泉で永遠に立ちすくす」日々を送ることになってしまうことになるだろう。
 一刻も早く終わらせねばなるまい……ヌイは青い炎を羽のようにまとった真の姿を解放すると、悪魔を召喚するための召喚の儀式を始める。
「虚無感に陥れば……怠惰を与えられなくなる……」
 儀式の最中、ヌイは独自の方法で巡り出る虚無に耐え抜いていた。
 「怠惰」と「虚無」は、似ているようで「同じ」とは言い切れないもの。
 何故なら……怠けることは、「役目」がある者にしかできない行い。
 もし本当に役目を持たず何もしなくなったら、それはもう「怠惰」ではなく「無為」といえよう。

「なれば、虚無感など無用……」
 其れが彼女の導き出した答え。大いにとは言わないものの、少しずつヌイの心から虚無が晴れる。
 頭の中も、徐々にすっきりしていくのがわかる……今ならいけるはずだ。
『大罪の内、怠惰の悪魔ベルフェゴールの名を借りて命ず。我が肉を喰らいて現われろ。汝は死より再生せし不死たる悪魔なり』
 詠唱と共に、彼女の血肉から癒やしの炎と地獄の炎の術を操る悪魔「フェニクス」が姿を現す。
 身体を再生させ、生じた痛みを癒しの炎で縫うと、ヌイは現われたフェニクスを嗾ける……

“灼きはらえ”

 それに応えるかのように悪魔フェニクスが動かぬポポゥリンに向かっていき、地獄の業火で温泉地を包み込む。
 覆われた炎が、ポポゥリン達に罪を与えるように消し去っていく。
 その跡に残ったのは、傷一つなき美しい温泉地と見渡す限りのサンゴ礁のみだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寧宮・澪
うわー……空っぽな感じー……。体も重そう、ですねー……ポポゥリン、さん。
こんなふうになるんでしょか……。

入ってみましょ、か。
………………もう何もしたくない。
…………いやいや、だめですねー……これは。
何にもしたくないは、心地いいものではないですしー……ふわふわお布団も、美味しいものも、好きなものもないんですよー……。
それに、せめて手の届く範囲くらいは、助けたいって、猟兵として思うんですよ、ねー……。
そういうものがあるから、空っぽになんて、なってられません、ねー……。
よし、歌いましょー……。

温泉のポポゥリンへ、歌って生み出した【Absolute Hot】で熱い炎をプレゼントー……。



●虚無を払う炎
「うわー……空っぽな感じー……」
 此の地に再び、「此の場に合いそうな猟兵」が訪れた。
 名は寧宮・澪(澪標・f04690)。表情が少なく、ぼんやりとしているように見える女性。
 足を入れてみると、徐々に心の中から何かが抜けていくのを感じ取れる。
「体も重そう、ですねー……ポポゥリン、さん」
 澪の前に対峙するポポゥリン達も、一歩も動かず立ち止まっている。
 只動かないのか、本当に動けないのか……それすらわからぬままだ。

 沈黙が続いた。温泉に立ち尽くす澪の心の内が、みるみる真っ白になった。
 身体から力が抜けていくのが感じる。目線の先が、おぼろげになっていくことが分かる。
 その時……澪の口から力なき声がぽろりと紡がれる。
「………………もう何もしたくない」
 それが、今の彼女の心境だった。虚無の感情が心を覆いつくし、何もかもが空しくなっていく。
 このまま猟兵として戦い続けても、きっと意味などない。
 無駄な事をするよりも、此処で何も考えることもなく、そのまま立ち尽くしていたほうが自分の為……果てには世界の為にもなるかもしれない。
『そう。何もしなければ、みんな幸せになれる……だから僕等の仲間にならないか?』
 此方を見つめる一匹のポポゥリンが、そんなふうに問いかけているようにも見えた。

「…………いやいや、だめですねー……これは」
 澪はそれを拒んだ。何もしないことは心地いい物ではなく、忌むべきことだ。
 もし本当に何もしなくなったら……柔らかい布団で寝そべることも、美味しい物を食べることも、好きな事をやることも、何もかもができなくなってしまうのだ。
 其れに……澪には、猟兵として戦う理由が存在する。
「せめて手の届く範囲くらいは、助けたいって、猟兵として思うんですよ、ねー……」
 全てを救って見せよう、とは言わない。だが、救える存在は力を持つものとして救いたい。
 此処で心を死なせるわけには、いかない。
 虚無から逃れ力を高めた澪は軽く息継ぎをすると、ある一つの歌を口遊みはじめた。

『燃えろ燃えろ、ゆらゆらと』
 澪の歌によって生まれた73個の青白い炎。それは歌と共に強く燃え上がり、虚無に支配されたポポゥリン達のもとへ一つずつ向かっていった。
 炎が身体全体を包み込み、其の緑の身体が青に覆われていく。
「……………さよなら」
 全て燃やしてしまおう。灰や塵すら残さぬように。
 歌が終わると、青白い炎がポポゥリンの身体を焼き尽くし、何もかも残らぬよう溶かしていく。
 だがポポゥリン達は藻掻くことも、声をあげることもなく、それを受け入れた。
 それはまるで、こうなる結末を最初から受け入れていたかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

小宮・あき
じとっと集まっている姿も可愛い!

虚無感……、
それなりの家に生まれて。
おじいさまの事業を維持するだけで、一般人より何倍も贅沢な暮らしが出来ます。
すでに夫もいますし、人生の方向は決まって…。
わざわざ私が何かしなくても…。

私と夫は、常に衆人の目に晒されてきました。
何をしても「親の力」「金があるから」と言われ続け、ありもしない噂を流されたり。
気の強い私は、全てに噛みついてきましたけれど、夫は…。
あの人は、とてもやさしい人だから、私は、絶対に、この人だけは守る、と…。

しっかりしなさい、小宮あき。
オブリビオンは、倒さねばなりません。
UDCアースを、あの人を守るためにも、戦争は勝つのです。

UCで広範囲攻撃。



●愛雨霰
 此処に入ってから、どれくらい歩いただろうか?
 何も考えずに歩いていたら、忘れてしまった。
 廻り出る「虚無」に支配されるままに、温泉地を歩く小宮・あき(人間の聖者・f03848)。
 歩くたびにちゃぷんと水の音が鳴る。音が響くたびに、心の欠片が落ちる。
 後どれくらい歩けば辿り着くだろう。抑々、此処に来た意味は何だろう。

「あら。じとっと集まって……可愛い、ですね」
 歩いていると、緑色の球体が立ちふさがった。確か、名はポポゥリンだ。
 群れを成す彼等の眼に光はなく、動く気配もない。だが、そんな姿が何となくだが愛おしい。
 何も考えられない以上、彼等の仲間になってしまうのもいいかもなと、本気で思ってしまった。
 
 ふと空を見上げてみると、あきは此処までの人生を回想する。
 苦節十年の末に成り上がった祖父がはじめた「ホテル・ペントラゴン」……あきは猟兵として戦いに身を置きつつも、若くしてオーナーの座を引き継いだ。
 オブリビオンが現れれば猟兵。戦いから離れれば経営者……二足の草鞋を履く、多忙な日々。
 だがそれでも、一般人より何倍も裕福な暮らしができている。
 やがて夫も決まり、人生の方向は定められたといっても過言ではなかった。
「わざわざ、私が何かしなくても……」
 目を瞑ると、何かが見えた。そこには自分と……長身でふくよかな体形の男性。
 彼が誰なのかは、言うまでもない……あきの、最愛の夫だ。
 
 常に、衆人の目に晒されてきた二人。
 何をしようとも「親の力」、「金があるから」なおと心無い言葉を浴びせられた挙句、根も葉もない噂をも流された辛き日々。
 あきはそんな者達に対し、生来の勇気を以て臆することなく向かっていった。
 だが、夫は……夫は、とてもやさしい人だったのだ。其れ故に……。
「絶対に、この人だけは守る、と………!」
 あきの心の中の霧が晴れる。身体の内から、力が漲っていくのを感じ取る。
 最愛の人への思いが、身を蝕む虚無を振り払ったのだ!
「オブリビオンは、倒さねばなりません」
 鋭い眼差しでマスケット銃を手に取ると、同じ姿を持った銃が次々と生み出されていく。
 その数78丁……其々が陣を組むように散開していくと、あきは一体のポポゥリンに銃口を向け、引き金に手をかけた。
 その銃床には、愛する夫のイニシャルが刻まれている。

 ―――――――――――ズドンッ!!
 
 一斉射撃。あきが引き金を引いた瞬間、弾幕が動かざるポポゥリン達に降り注ぐ。
 弾丸が目と目の間を貫き、その身体に小さな風穴をあけ……命の灯火が消えたかの如く、その身体が、熱を受けた氷の如く、溶け消えた。
「私は、まだ立ち止まるわけにはいきません」
 この戦争に勝つため、自身の生まれ育った世界を護るため、
 そして何よりも、愛する人を護るため……あきは再び、歩み始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月20日


挿絵イラスト