帝竜戦役⑱〜君を恋すために生まれてきたアサシンズ
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死体だ。死体も同然だった。
かつて――。
ボクたち、ワタシたちには、何も残されていなかった。
何もかもを奪われていた。
存在も、記憶も、肉体も、魂も。
だから死体だった。生きていなかった。
そうだった、とわかるようになったのは、ついさっきのこと。
唐突に気がついた。
雨具をつけているのが自分だけだったと気づくような、あからさまな体験だった。
フードを脱ぎ、顔を上げると、まあるい太陽とあざやかな虹。
雨の名残は空のどこにもない。水たまりを、踏みつけにしている。
心の中を曇らせていた薬が切れた。
頭の中を鈍らせていた暗示が消えた。
ならば、さあ、さあ!
ボクたちワタシたちは手を取り合って、知らない世界へ飛びだそう!
たった一つだけ持たされていた、だいじなたからものを握りしめて!
それさえあれば、きっと、この世界の誰とでも――恋ができる!
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「否だ。暗示はたった1つだけ残っていた。
全てのコミュニケーションは、たったひとつの結果に決着する、という厄介な暗示だ」
魔導書を読み上げたグリモア猟兵は、続けて言う。
「連中は、恋した相手を殺し尽くす。純粋無垢な恋の結末として」
瞑目する。その瞼の裏に遠くを見るように。
「ロケーションの説明に入ろう。
冷静と情熱の珊瑚礁と呼ばれるそこは、サウナ珊瑚という稀有な動物が生息している温泉地帯でな。彼の地の温泉に浸かった者は例外なく、ある特定の感情が爆発的に増大するのを経験することになる。
今回は、すなわち【恋への渇望】だ。
前述したように、猟兵だろうとオブリビオンだろうと聖職者だろうと悪党だろうと彼女持ちだろうと人妻だろうと一切の例外なく 恋 を し た く な る 」
恋。
訳知り顔でうなずく者もいれば、首を傾げる者もいた。
素知らぬ顔でスルーする者も、眉をひそめる者も、まあ様々だよネ。
「さて、この恋への渇望。扱いには十分注意してほしい。
というのも、発生したオブリビオン【暗殺妖精】たちは、この感情に心底ズブズブでな。自分たち以外の者と出会うと、その暗殺スキルを用いて巧みに告白してくる。
――そこをガツンだ。あるいはズドンとか、ズブリとか、ドカーンかもしれないが。
そんな終わりを望む者は……もしかしたらいるかもしれないが、今回は勘弁してくれ。場合も場合、戦争中だからな。あ、平時でもダメだぜ?」
さておき。
「攻略方法ははっきりしている。
すなわち、【恋への渇望を抑えつける】ことだ。抑圧し、我慢し、無視するたびに、なんとこちらの戦闘能力が増大する。ここは大事なところなので、是非復唱してほしい。
さん、はい――【恋への渇望を抑えつける】。理解してくれただろうか」
大丈夫だよな? グリモア猟兵は念を押した。
君島世界
こんにちは、はじめまして。
マスターの君島世界です。
今回は、【冷静と情熱の珊瑚礁】における集団戦戦争シナリオです。
オープニングにもありますが、【恋への渇望を抑えつける】ことで戦闘能力が増し、プレイングにボーナスが与えられます。
ぜひ挑戦してみてくださいね。
それがたとえ、君に植え付けられた恋心に百億万光年合致する見た目ドストライクの美少年もしくは美少女もしくはグッドルッキングなフェアリーだとしても、だ!
さて。
この地域のシナリオでは、以下の財宝を手に入れることができるようですね。
宝物「サウナ珊瑚」……水を温泉化する、成分が摩耗することもない不思議な珊瑚です。おそらくクリーンな火力発電としても利用でき、親指大のひとかけらでも、金貨100枚(100万円)程度で取引されます。
それでは、皆様のプレイングを心待ちにしております。
第1章 集団戦
『暗殺妖精』
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POW : スキルオーバーリミット「妖精暗殺術」
【気配を猟兵に感じさせない状態】に変形し、自身の【暗殺実行後の生存率】を代償に、自身の【「暗殺」の技能レベル】を強化する。
SPD : 暗殺技能・魔法罠即席設計
いま戦っている対象に有効な【魔法で作成したトラップ】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 暗殺技能・虚構群衆召喚
戦闘力のない、レベル×1体の【二乗の数までの現地人・生物を模したデコイ】を召喚する。応援や助言、技能「【群衆偽装】」を使った支援をしてくれる。
イラスト:sio
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ベール・ヌイ
好きな人がいます
一緒にいたい人がいます
恋をしたい気持ちを、その子を思い出すことで我慢
いまー感じてる気持ちは偽物、本物はあの子との気持ち
それでも我慢できそうにないなら【ベルフェゴールの矢】を一本自分に刺して抑えましょう
残った矢は妖精達に刺して【終焉の炎】でトラップごと燃やしましょう
攻撃されれば、「激痛耐性」で耐えます
アドリブなど歓迎です
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袋小路に追い詰められ、振り返ったところを、暗殺妖精のナイフが突き刺さる。
何本も何本も、ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)の柔肌を、触れず、愛でるように。
そのうちの一本を抜き取りながら、暗殺妖精は、ベールの耳元を通り過ぎた。
「追いついた、よ?」
囁きに、甘く耳朶をくすぐられて。
ふう、というあえかな吐息の余韻が、ひどく少女の胸を高鳴らせた。
「(だ、め……っ!)」
ベールは、膝の力が抜けていくのを、どうしようもなく、自覚する。
恋心――敵に回すと、これほどまでに恐ろしいものなのか。
ぺたん、と尻餅をつくベール。暗殺妖精は、その震える頬をすう、と撫でた。
「君が好きだ。どうしようもなく」
「……う、あ」
後ずさりしようにも、背中が硬い壁に当たり、追い詰められていることを知る。
「ごめんね。怯えさせるつもりはないんだ。
でも、こうでもしないと、君に、気持ちを伝えられそうにない」
「あ、ひあ……みない、で……っ」
声が震える。視線を逸らそうと横を向くと、暗殺妖精はそちらに移動した。
じい、と、すがるように。
「君の名前を教えてよ、猟兵さん。君の、ボクが好きになった人の名前を」
だから、唇を開く。涙の雫が、激情と混乱に、溢れた。
「――べ、ベール、ヌイ……」
「ベール。うん、いい名前だ。感動したよ。それでベールは、どんな――」
「――ベール・ヌイには、ほんとうに好きな人が、います」
暗殺妖精の舌先が、こわばる。
かれはその唾液の毒を、嫉妬に乾き、ひび割れて血の滲む唇にまぶす。
「一緒にいたい人がいます。あなたじゃ、あなたじゃ、ない……」
「ベールっ!」
「恋をしたいのは、あの人とだけ、なんです!」
「それ以上! きみに言わせない!」
パチンッ!
暗殺妖精は指を鳴らした。同時、ベールの左手首に、鎖手錠が噛み付く。
斜になったベールの唇に、暗殺妖精は――。
――結果として、赤い、血を吐いた。
「ベール……?」
呆然と、暗殺妖精が離れる。その胸には、弱々しくも拒絶するベールの右手。
こちらの心臓を衝く、魔の鏃。
――瞳の死んだ少女が、すると、そこに居た。
「【定義完了】」
「ッ!」
業。
地獄の炎が、逃げる隙も与えず、暗殺妖精の体を焼いた。
肉が剥がれ、骨が崩れる、その瞬間――。
魂だけとなった暗殺妖精が、ベールと重なり、すれ違ったように見えた。
……。
…………。
………………そして、ベールは立ち上がる。
太腿に刺さった気付けの魔矢を、ずぶりと抜いた。
そして蒸発せずに残った暗殺妖精の血を拭い。
毒のないことを、知った。
大成功
🔵🔵🔵
護堂・結城
恋への渇望…そんなもんまで引き起こせるのかこの温泉…
変に衝動に支配される前に抑え込んでしまおう
感情を武器に変えるのも、俺の十八番なんでね
【POW】
一度お湯に浸かり戦闘開始と同時に【水上歩行】
【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた感情を喰らう【大食い・範囲攻撃】
自身の衝動的な渇望を根こそぎ吸収し抑え込む、敵は冷静にならない程度に加減して吸収だ
「悪いが、一方的な恋には付き合いきれない」
指定UCを発動、【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を召喚
気配を察知できずとも剣群を【怪力】で投げては炸裂させ【爆撃・衝撃波】で攻撃だ
「恋はもう済ませて、今はお嫁様を愛してるところだからね」
●
「やれやれ、混浴とは知らなかったぜ」
護堂・結城(雪見九尾・f00944)は、余裕綽々と周囲を見回した。
前方、湯船の中、一人の暗殺妖精が、じ、と頭を出して、こちらを伺っている。
その眼はハートであった。
「ええ、そうね♥ 特に看板は出していないもの♥」
「おいおい、おいおいおい。もう辛抱ならないって面構えだな、お前」
「シャミよ。4班8号。名前だけでも覚えていって、ついでに娶ってェ♥」
「御免被る!」
挨拶代わりに投げつけた礫を、暗殺妖精はとぷんと潜ってかわす。
――それきり、気配が消えた。
湯けむりが濃くなっていく。温泉の水面も、まるで明鏡止水、穏やかだ。
だというのに、どこからか、暗殺妖精の声が聞こえてくる。
「ウフフ……ああ、愛しい人、私の恋。あなたの恋も、私にちょうだい♥」
「!」
ザバアッ!
結城が見当をつけていた方向の正逆から、心地よい熱さの湯が飛沫いた。
びしゃ、と前髪を濡らす。刀も、装束も。
「そちら!」
シ――!
居合、抜き打ちに断つは、その残り香のような気配のみ。結城は深く息を吸う。
「なるほど、な……」
「……そういうこと♥ 理解が早くて助かるワァ♥」
ここからが本番だ。
暗殺妖精は、結城の籠絡を狙い。
結城は、その狙いに真正面から乗った。
「せやっ」
一足飛びに、結城は温泉の中ほどまで飛ぶ。宙空、足元にはなにもない。
必然結城は、一瞬だけだが、温泉の中に肩まで浸かった。
魔の湯がざんぶと彼を侵す。即座に水上歩行を始めたようだが、袴も、尻尾も湯を吸って、重く垂れる。
その様子を――暗殺妖精は、眼をきらきらさせて眺めていた。
「(ヤッバ、ホントに色男……♥ 本気に、なっちゃった♥)」
髪をかきあげ、襷を掛ける仕草は、彼女にとっての眼福。
夢中になっていたから、結城の気配が、すう、と細く鋭くなっていることに、気づくのが遅れた。
――恋心が、今たしかに膨らんだにも関わらず。
――今の結城には、もうそれがない、ことにも。
「喝ッ!」
ズオンッ!
水面を大音声が走る。揺り返しで小波が立ち、隠れていた暗殺妖精の姿を暴いた。
「!」
「悪いが、一方的な恋には付き合いきれない」
結城が腕を上げた。その先に、幾本もの劫火剣が連なっている。
月夜の雨めいて、枝垂れ、きらめくその刃を。
「……うわ」
キレイだわ、と暗殺妖精は思った。
こんなにキレイなもの、どこから出てきたのだろう。
「それに恋はもう済ませて、今はお嫁様を愛してるところだからね」
答えを、悟った。暗殺妖精は、だから笑う。
「さすが私の、恋した殿方♥」
暗殺妖精は、敵わぬと知り、負けを認め、両腕を広げた。
その胸を一息に、容赦なく焼き貫いたのは――。
「……ほんと、熱くてアツい、いい恋したのね、おにーさん」
「……どーも」
雪見九尾の劫火剣乱(ナインテイル・ソードフレア)。
過剰に昂ぶった感情を、種類問わず剣と化す、結城のユーベルコートである。
大成功
🔵🔵🔵
クシナ・イリオム
【アドリブ歓迎】
まさかあなたが死んでからこんな時間が来るなんてね
あの頃は殺すか死ぬかで、恋心を実感する時間もなくて…
あなたの遠回しの告白に気づいたときにはあなたはすでに先に逝ってしまっていた
…ねえ、今ならあの時の続き、できるでしょ?
相手の瞳を閉じさせ、そっと相手の顔に顔を寄せ…
喉を切り裂き【暗殺】
UCは敵UCのカウンターに
どうして恋への渇望を抑えつけられたかって?
実は今際の際に「何をしてでも生きろ」って言ってくれた人がいてね
オブリビオンになった今では覚えてないだろうけど
さよなら、初恋「だった」人
…今でもあなたが生きてたのなら…死ぬのは私だった
亡骸に口づけ一つ。これで私の初恋は本当に終わり。
●
暗殺妖精の顔に、【あの頃と】変わらぬ眼差しが映った。
「おまえ……か。ハハ、徒な偶然だ」
クシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)は、オブリビオンと相対する。見間違えようもなく、彼女の過去から蘇ってきた、その残滓だ。
「(まさかあなたが死んでから)」
双方、どちらとも言わず、構える。
「(こんな時間が来るなんてね)」
温泉にはどちらも、片足を突っ込んでいた。
撥水加工のされた服に、とめどなく魔の湯が染み込んでいく。
関わらず――。
「おさらいと行こう」
「ええ」
――こころの全てを秘めた、切り結びが二閃、火花を散らした。
「癖は直したか!」
「そうでなければ、死んでいるわ」
位置を入れ替えて、振り向くと利き目の横、髪の一筋が断たれて風に流れる。
クシナの手の内は知られていた。
「あなたに逢えずに」
それどころか、癖の矯正にまで関わったのが、目の前のオブリビオンだ。
長期戦は、その分だけ不利か。
「ねえ、今ならあの時の続き、できるでしょ?」
「望むところだ。今なら、今だからこそ、お前の――生の苦しみを截断できる」
ああ、とクシナは嘆息する。
目の前にいるのは、どうしようもなくあなたに良く似たあなただ。
そんなあなたの、遠回しの恋心――。
殺さなければ生きていけない暗殺者に、殺しの技を教えるのは。
その相手に生きていてほしいからに他ならない。
双方、逆手持ちのナイフを鞘にしまい、一指と三指を合わせる。
ピィン……!
弾指、先に仕掛けたのはオブリビオンの方だ。
クシナは眼の前の温泉が沸き立つのを識る。
間合いを取り、様子を見るよりも早く。
別の暗殺妖精の上半身、その屍体がこちらに掴みかかってきた。
その屍体を、別の知己と錯覚した。
「(し……ッ!?)」
首を両手で握られる。骨にまで響き、潰しにかかる、信じられない膂力。
動揺をパージ。痛覚、息苦しさをオミット。首の筋腱を固定。
その工程に、致命的な時間を要する。
後頭部、脊椎と頭蓋の隙間に、オブリビオンの刃が迫っていた。
「(――さよなら、初恋「だった」人。
今でもあなたが生きてたのなら……死ぬのは私だった――)」
弾く。敵の刃と、己の指とを。
カウンターで発動した【暗殺技能・魔法罠即席設計】は、十二分にその効力を発揮した。敵を容赦なく噛み砕く、帝竜を模した剣の顎……!
「そこに来るってことは、わかってたよ。
非力な妖精でも首を断てるからって、最初に教えてくれたよね、あなた」
あたたかな血が溢れる。維持できなくなった幻覚魔法の屍体が、消えていく。
「上出来、だ。よくぞ、ここまで……鋭く、迷いなく……」
「何をしてでも生きろって、言ってくれたじゃない」
こちらも、魔法罠を解除する。すと、と音なく着地したオブリビオンは、何事もなくその場に座り込んだ。
「そうだっけ? ……そうか、ああ、そうだった、か――」
風が吹く。
草花を揺らすばかりの弱風に、オブリビオンもまた、倒れた。
クシナは、オブリビオンの血にまみれたナイフを拭う。
かれの喉元を一閃した、その風刃を、何事もなく仕舞えずに取り落した。
ナイフは落ちて欠けた。
駆け寄る。抱きつく。すがる。
抱きしめる。返す力はない。それが悲しくて、くやしくて。
――生き残れたから、愛しくて。
消える温もりを、偽りの温もりを、追い、求めて。
だから口づけをして、その感情を、恋を終わらせるの。
大成功
🔵🔵🔵
蛇塚・レモン
恋……それは素晴らしい感情……!
モノクロの世界は一瞬で煌めき、冷え切った身体に熱が帯びる、そんな感覚
うんうん、分かるよっ!
あたいも恋人がほしいっ!
恋、恋、恋、恋、鯉!
……鯉?
そう言えば錦鯉ってなんでめっちゃ高価なの?
うちの農園にも錦鯉を飼ってみようかな~っ?
そしたら『古風なご趣味をお持ちで……』とか、
渋いイケオジ様ゲットのチャンス!?
つまり『恋=鯉』だった……?
宇宙の真理を得たあたいは、珊瑚を売却して錦鯉を買う!
※物欲で感情を抑え込みます
召喚するのはズルいので禁止っ!
ライムの魂魄を左目の加護の催眠術と残像であたいの姿に囮に
そちらへ告白する暗殺ちゃんをUCでズドンッ!
蛇腹剣で捨て身の一撃だよっ!
●
「ウェーイ!」
「うぇーい!」
なんか手をつないでぐるぐる回る系の儀式が始まっていた。
ここは温泉郷、冷静と情熱の珊瑚礁。
その魔力にどっぷりはまり込んだ二人。
半端なウェイ系暗殺妖精と蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)であった。体格差? 知らんねそんなこと。
「恋っていいよねーレモンちゃん!」
「恋っていいねー妖精さん!」
「なんつーの? このために生まれてきて? そして運命出会っちゃって?
感謝、リスペクト、そしてLOVE!? とりま満喫しよーぜウェーイ!」
「そう恋……それは素晴らしい感情……!
モノクロの世界は一瞬で煌めき、冷え切った身体に熱が帯びる、そんな感覚っ!」
噛み合っているようで、実際お互いに言いたい事を言っているだけだった。
その空気を読んで、暗殺妖精はス――と離れる。
こっそりセットアップに入るつもりだ。
気づかず、レモンはくるくると回っていた。
「あたいも、恋人がほしい! この身を焦がし、その身を焦がす太陽のような恋!
地中海沿岸にふりそそぐリゾート地兼一大農産地のような太陽!
そして太陽はさんさんときらめき、きらめきは川を流れてうちの農園に――」
バンッ!
その時、レモンにスポットライトが当てられた。当人は気づいていないが。
加えていつの間にか、典型的な温泉宿風だった地形が、演劇の舞台にも似た場所に替わっている。
――もはや術中。暗殺妖精のユーベルコード【暗殺技能・虚構群衆召喚】による、告白(=暗殺)のお膳立てだ。
レモンは上手(かみて)に、暗殺妖精は下手(しもて)に。
「ッじゃあレモンちゃん、ちょっといいスか……?」
暗殺妖精は、いつの間にかスーツに着替え、花束をレモンに向けていた。
その花の中に一輪、ソードオフショットガンが咲いている……!
暗殺妖精はぎらりと笑った!
だが彼は知らない。
この時レモンの脳内で、はたしていかなる論理が展開していたのかを!
レモンはぐるぐる回る。
恋、恋、恋、恋、恋。
「こい、コイ、koi、来い、鯉! ――鯉?
そうか、恋とはつまり、鯉だったのね!」
「え、鯉? カープっすか?」
何を云っているのだらう彼の娘は。
文語調で思うと、ユーベルコードのデコイがフリップボードを上げる。
『川魚っす。刺身ウマいスけどそれならフツーにマグロでイナフ』
レモンの瞳が怪しく光った。
「鯉、鯉――そう言えば錦鯉ってなんでめっちゃ高価なの?
うちの農園にも錦鯉を飼ってみようかな~っ? そしたら『古風なご趣味をお持ちで……』とか【渋いイケオジ様】ゲットのチャンス!?」
「「「【渋いイケオジ様】!?!?!?!?」」」
デコイを含め妖精たちの間に動揺が走る。
あの陽キャな見た目ならイケると思って装ったウェイ系――それが!
「裏目! 完全に裏目っているではないか!」
慌ててキャラを変えようとする暗殺妖精。だが流石にもう間に合わない!
――ドドドドドン!
「ぐわあああああーーーーーっ!」
レモンを中心に発生した、不可視の衝撃波がデコイを打ち上げていく!
雨となって降り注ぐ魔湯の中、レモンは――商人の目をギラつかせた(二度目)。
「恋=鯉。それは宇宙の真理……!
真理を手にしたあたいは、珊瑚を売却して錦鯉を買う!」
「ま、待ち給えレモン君! そそそそうだ、この花束を受け取って――」
「――お前には、ダンディズムが足りない」
一閃。振るった蛇腹剣は、花束を、ショットガンを、暗殺妖精を薙いだ。
暗殺妖精は、へへ、と悔しそうに笑う。
「生まれ変わったらヤってヤるんで、待ちぼうけヨロ……がくっ」
――ビシィ!
蛇腹剣を引き戻して、ポーズを決めるレモン。
その瞳は、物欲にきらめいていた(三度目)。
結論。物欲>恋心。
大成功
🔵🔵🔵
クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎
恋?
……私既に愛する大切な人がいるんだけど、本当にするのかな?
あっ……あっあっあっ!!
なにこれ、なにこれ!
心が苦しい、愛おしくてたまらない。
ずっとこの人と一生を過ごしたい。
あの時経験したことが、またやって来ている!
心地よくて苦しくて辛くてでも幸せなあれが。
でも、でもね!
やっぱりこの感情は、あの人にしか向けたくないんだ!!
彼のことを考えることで抑圧!
この生まれたモヤモヤは、あとで彼に受け止めてもらうことにしよう!
ごめんね、確かに君は素敵だけど、彼の方がもっと素敵なんだ!!
月腕滅崩撃、捕まえて怪力乗せたパワーボム、ダウンしたところに追撃のサッカーキックだぁ!
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「ーーーーーッッ!!!」
クトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)の悲鳴が、水の中にこだまする。ぶくぶくと声息が爆ぜ、頬を打つ。
頭を抑えつけてくる暗殺妖精に、しかし、歯向かう胆力が湧いてこない――!
「そう、いい子だ。大人しくしてて……?」
声が心地よい。褒められると嬉しい。それが、致命的だ
力で、こうされているのはないのだ。
ただ、その小さな、暖かな掌に、撫でられている。それだけ。
「(それだけ、なのに……!)」
心が苦しい、愛おしくてたまらない。
ずっと【この人】と一生を過ごしたい。
あの時経験したことが、またやって来ている!
「すぐに楽にしてあげる。そうしたら僕たちは一生一緒だ。嬉しいでしょ?」
――嬉しい、と思ってしまった。否定しようにも、その根拠を見つけられない。
なにこれ、なにこれ、なにこれ!
がぼ、と温泉の湯を肺に入れてしまうたびに、混乱の度合いは増していく。
恋心は否応なく増していく。
「(なんでこんな、私、幸せに……しあわせ、な、きぶんに)」
――なっていてもいいのかも、このまま。
瞬間、クトゥルティアの脳裏に走馬灯が走った。
白濁する意識の中、心は、四肢を動かすかわりに、内へと沈む。
思い出す――と、すうっと楽になった。
もう自分が、どういう姿勢でいるのかもわからない。
事切れて、死につつある身体を湯の中に浮かべているのかもしれなかった。
それでも、思い出す。
何もかもをこぼしつつある今、思い出せるとしたら、それは。
――ほんとうの、ほんとう、だ。
「ム……!」
暗殺妖精が、嫌な予感に身震いし、掌をクトゥルティアの後頭部から離した。
間合いを取り、様子をうかがう。
確かに溺死させたはずの女が、指先を動かしたのだ。
「ならば再殺を……ああ、好きな女に2度も告白できるなんて!」
息を吸うように、気配を殺す。
女は、眺めている間にその身を立たせた。幽鬼のように在るそれは、どこを見ても柔らかく隙だらけで、ナイフを突き立てる急所を迷わせる。
「迷わせる、だって? この僕に? 殺し方を!?」
気づいた、が、手遅れだ。
その目が恋に曇っているのならば、真理を見抜けないのも道理!
クトゥルティアは、既に天上高く飛び上がっている!
「しまっ――」
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
バン! バン、バンッッッ!!!
音立てて、クトゥルティアの腕が肥大していく。サイキックエナジーの大腕。
美しい。その美しさに、暗殺妖精は見惚れた――から。
「今度は僕が撫でられよう。おいで、クトゥルティア」
努めて優しく、そう言った。
ブオンッ!
クトゥルティアは、空中にいるまま縦回転し、腕の軌道に暗殺妖精を拾う。
回転を止めず、二転、三転……十七転! 地面に敵を打ち付けると!
「ブレイズ・オン――バスタアァーーーッ!」
ドッグオオオオオオオンンン!
溜めに溜めたサッカーボールキックで、暗殺妖精を蹴り飛ばした!
その身体は音速の壁を突き破り、赤熱し!
軌道上の何かもをなぎ倒しながら、地平の彼方へと消えていく!
そして……。
……たまらずクトゥルティアは、己の身を抱いてしゃがみこんだ。
余韻が――消えない。
「はあ、は、ァ、んく……ッ」
生唾を飲む。息が熱く、荒い。有り体に言うとモヤモヤしていた。
「(……私、既に愛する大切な人がいるんだ、けど……)」
それでもなのか、だからこそなのか。
ぎゅっ、とより強く自分を抱いてみると、いくつかの経験を思い出す。
「なら……彼に、受け止めて、もらわなくっちゃ♥」
えへへ、とクトゥルティアは、自制と見境を失ったかのように、あだに笑う。
ぽたぽたと熱い、湯の雫を垂らし落としながら。
とりあえず彼逃げて超逃げて。
大成功
🔵🔵🔵
アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎
白いゼラニウムを模した刺突剣を握ると、熱くなった思考が徐々に冷めていく。刺突剣に込められた思い故か。
私が貴方をこうして屠るのは愛ではなく、唯の義務。ご容赦を。
『属性攻撃』散華を放ち、彼女らを全て冷たい骸へと還しましょう。
可能であれば『範囲攻撃』し、告白される前に斬り伏せます。
胸の痛みが煩わしい。それ以上にこの痛みに心地良さを感じている私に嫌悪感を覚える。
偽りの感情にちらとでも翻弄される私に!
騎士としての義務。猟兵としての責任。この二つを強く思い、冷たく心を閉ざせば、恋も愛も全て凍らせ封じられるはず!
貴方が抱く私への好意も全て偽物。
故に、私は貴方の愛を信じない。
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「ウフ、ウフフフ……」
「あはは、こちらよお兄さん、こちら……」
「そっちじゃないわ、こっちよ、こっち……」
囁き響く空間に、時折、声の主が見え隠れする。
そのたびにアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)は、決意込めて刺突するが、その手応えは偽りのもの。
姿勢を正し、すると足元に迫ってきていたデコイを、躊躇するも踏み潰した。
「……慣れませんね、この戦場は」
潰れたデコイが、ぱしゃん、と水になって消える。
そしてまたふよふよと、アリウムの周囲を、デコイと暗殺妖精が漂い始めた。
「素敵ね、お兄さん……」
「目も、肌も、髪も、指先も……ウフフフ……」
「さあ、開いて。広げて。晒して……」
「きっと、ふふ、心臓も、素敵だから……」
アリウムは刺突剣を握りしめる。堅い感触が、かれを引き止めていた。
あやうさとたしかさの境界線、そのこちら側に。
だが、そこに厚みは無い。一歩でも踏み込めば、引き返せなくなる。
「戯言を――」
デコイたちは、さきほどからずっと、こちらへの零距離告白を狙っていた。
それを一度でも通せば、如何に意志が強かろうと、誘惑に抗うことは敵わない。
そういう予感があった。
「――弄するか!」
踏み込む。こちらの間合いを、強引に取った。
数で上回られていようと、速度はこちらが勝っている。
微笑むデコイを、切っ先に突き上げた。
「アハハ、良いわ……お兄さんの愛を感じるの……」
「いえ。私が貴方をこうして屠るのは愛ではなく、唯の義務。ご容赦を」
本体は、どこにいるのか。
探るため神経を走らせると、その先を優しく愛撫してくるのは、偽りの愛だ。
守るべき弱者たち、その姿と信頼に、オーバーラップさせてくる、それ。
知覚するごとに、走る心の痛みは。
「(認めたくはありませんが、心地よく感じ始めていますね!)」
嫌悪感に吐き気がする。それを癒そうとするのは、しかし拙い。
なぜなら――恋が、そこにするりと這入りこんでくるからだ。
「さあ、お兄さん……恋に、溺れて頂戴な……」
「ゆっくりでも、はやくでも……」
「どちらでも、わたしたちが受け止めてあげる……」
「……受け止めて、裏返してあげる」
アリウムは短期決戦を決めた。
ユーベルコード【散華】。指定したものを斬り、凍らせる氷華。
ゆえに、本体の位置を突き止めねばならぬ――。
アリウムは瞼を閉じ、落ちるそのわずかな時の間に、思う。
ひとつは、騎士としての義務。
ひとつは、猟兵としての責任。
義務を扉に、責任を鍵に。アリウムはかれの心を閉ざした。
恋も愛も、全て封じて、凍らせてしまえ。
「――――――――ッ!」
疾走る。すれ違いに縋るデコイを、身を翻して袖にする。
奥。湯けむりの濃い部分。駆ける足裏は静かに魔の湯を蹴散らした。
すると眼前に現れる、デコイたちの壁……その眼を見てはならない。
ただの障害物として認識を上書きせよ、アリウム。
さもなくば、その弱さ、儚さに絆されて、君は歩みを止めてしまうだろう。
本当に、君の背中に守られている者を、思い出せ!
アリウムはそして壁を乗り越え、本体の眼前へと着地した!
――きい、きい、きい。
「あら、こんにちは猟兵さん。いいえ、アリウム。
案外早かったのね……いえ、そのほうが都合がいいかしら」
きい、きい、きい。
小さな安楽椅子に身を預け、編み物をしている暗殺妖精がいる。
一瞬の――永遠の、時間。
「だいじなお話が、あるの」
暗殺妖精は、そして満を持してアリウムに告白する。
「出逢ったばかりで、こんな事を言うのも踊るかもしれないけれど。
わたし……あなたのことが」
「好/ /きです」
アリウムは短く、言葉ごと暗殺妖精を斬った。
「偽物故に」
刺突剣【氷華】を、鞘に収める。
「貴方が抱く私への好意も全て偽物。
故に、私は貴方の愛を信じない」
すると魔力の花が、至るところでその花弁を散らした。
オブリビオンたちを、もとの忘却へと返していく。
その最期の瞬間――。
暗殺妖精は、困ったように笑っていた。
大成功
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