1
帝竜戦役⑱〜劣等感エモーション

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
🔒
#戦争
🔒
#帝竜戦役
🔒
#群竜大陸


0




●温泉地帯にて
「ふわわぁ。んぅ、良く寝たぁ」
 小さな口を手で隠し、あくびをするのは春を纏ったかのような妖精のようなエルフだった。
「あら? 少し寝すぎちゃったかしら?」
 きょとん、と首を傾げて周りを見渡せど、春の装いは無く、広がるのは珊瑚の海のような温泉地帯。
 ふむ、と少し考えたそぶりを見せた後、ピンクのリボンが付いた大鍵をぶぅん、と振り回す。すると、珊瑚の先にぽぽぽん、と桜の花が咲きだす。
「うん、やっぱり春って素敵よね」
 満足げに微笑み、桜の咲いた珊瑚に寄り掛かってまた微睡み始めた。

●ヤドリガミ、かく語りき
「やぁやぁ、アックス&ウィザーズでのみんなの活躍は耳にしてるよ。てことで、りんふぁからもお願いだ」
 耳に提げたペンデュラムを弄びながら少女、戴・凜風(浄化を祈る・f23661)は言う。
「りんふぁが送るのは、『冷静と情熱の珊瑚礁』ってところ。見た目は綺麗だし、なんと温泉に入り放題!
 ……なんだけどねぇ。その温泉が厄介な効能を持ってるのさ」
 曰く、温泉に浸かった者の『感情』が爆発的に増加する、と。
 その温泉で増加する感情は『劣等感』だ、と。
「ヒトってやつは、誰だって何かしらの劣等感を抱いているんだ。厄介なことにね。
 それはどんなに小さくても、隠してても、自覚すらしていなくても。
 ここの温泉は、その『劣等感』をどっか~んと膨らませちゃうのさ。
 まぁ、曲がりなりにも温泉だ。マイナスだけじゃなくてプラスももちろんある」
 それは、膨れ上がった『劣等感』を露させた上で、抑え込むことで、戦闘力が一時的に上昇する、ということだ。
「敵さん。『『春告の妖精』スプリングエルフ』っていう子なんだけど、その子は感情をうまく抑え込めないようで。キミたちを見ればすぐに戦闘態勢に入る。
 そのままだと戦闘力は同程度だけど、冷静にキミたちが対処すれば温泉の効能でかなり有利に事を進められるよ」

 戦場だが、特に足場が悪いわけではない。珊瑚の先からミスト状に温泉が噴き出している。そのため、温泉に浸からずに戦闘する、ということはできない。

「さぁ諸君、アックス&ウィザーズの未来は諸君らの双肩にかかってるぞ!がんばって、いーってらーっしゃーい!」
 八卦盤の形をしたグリモアを広げ、一人ひとり転送していく。

「大きく膨れ上がった劣等感を抑え込むのって、きっとすごく大変だ。……みんな、信じてるよ」


涼村
 涼村と申します。A&W戦争です。よろしくお願いします。

 OP公開があり次第プレイングを送信いただいて大丈夫です。
 出来る限り採用しつつ、スピーディーに行きたいと思っております。
 涼村の予定上、5/15中のお届けになるかと思われます。
 よろしくお願いします。

 こちらは1フラグメントで完結し、『帝竜戦役』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●プレイングボーナス
 このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になるということを、オープニングでお客様に説明してください。そして、実際にプレイングボーナスを与えてください。
=============================
プレイングボーナス……「爆発的な感情」を発露させた上で、抑え込む。
=============================

 負の感情がどっかんとしちゃいますが、皆さんなら大丈夫でしょう!
 それではみなさま、バーンとぉ!行っちゃってください!
12




第1章 集団戦 『『春告の妖精』スプリングエルフ』

POW   :    目覚めの春~目覚めを促す鍵~
【対象を眠れる力】に覚醒して【暴走した真の姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    春は恋の季節~心の高鳴りが爆発となって~
【対象二人の意思疎通】が命中した対象を爆破し、更に互いを【互いのレベルの合計の技能「手をつなぐ」】で繋ぐ。
WIZ   :    春はお花見~花々の美しさに魅了され~
【お花見】を給仕している間、戦場にいるお花見を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

イラスト:CHINATSU

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

護堂・結城
劣等感…この眼が、普通だったらもっと平和に生きれたんだろうか…
いや、そんな感情ものみこんで人助けを、外道狩りをするって決めたんだ
だから、迷うな

【POW】
お湯に浸かったら戦闘開始と同時に【水上歩行】
氷牙を刀に変化させ【怪力・なぎ払い】で牽制
【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた感情を喰らう【大食い・範囲攻撃】
自身の劣等感を根こそぎ喰らい、敵は冷静にならない程度に加減して吸収だ

「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」

指定UCを発動、【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を召喚
剣群を投げ込んでは炸裂させて【爆撃・衝撃波】で攻撃だ

「例え劣っていようと戦いをやめる理由にはならん!」



●異形の双眼
 ぱしゃり。足元で撥ねたお湯が護堂・結城(雪見九尾・f00944)の足袋を濡らす。
 ミスト状の温泉が、結城の銀髪を、頬を、濡らしていく。
 彼の胸の裡に膨れ上がる劣等感。それは……。
「う、うぅ……!」
 苦し気な声を上げ、固く目を瞑る。無意識のうちに、その目を両手で強く押さえつけていた。
 この目が。右と左で彩の違う目が。白目と呼べぬ、この目が。
 他の人と同じであれば、どれほど良かっただろうか。
 もしそうであれば、きっと平和に生きることが出来ただろう。
 羨望、嫉妬、ままならぬ、この胸の内。

「あら? 貴方は猟兵さん?」
 不意に、春を告げるそよ風が吹く。
 その声にハッとし、声の方向へその眼を向ける。
「わたしね、他のみんなみたいに上手に春をお迎えできなかったの! だからね、猟兵さんたちをちゃんと倒して、認めてもらわなきゃいけないの!」
 そんな声と共に、大鍵を振り上げるスプリングエルフ。
 ――嗚呼、そうだった。
 俺は、そんな感情ものみこんで人助けを、外道狩りをするって決めたんだ。
「……だから、迷うな」
 刀に変化させた氷牙でその大鍵を受け止め、声にならぬ歌声を広げる。
「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」
 その言葉をきっかけに、白き劫火の剣群がスプリングエルフを取り囲む。
 氷牙を采配のように振り下ろすと、感情エネルギーを吸った剣群は一斉にスプリングエルフに突き刺さる。
「例え劣っていようと戦いをやめる理由にはならん!」
 迷いを振り切り、そう言い切る結城の。
 彩を違えた眸は、ただまっすぐと未来を見据えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クシナ・イリオム
アドリブ歓迎

猟兵の人ってさ例えば万人が振り向くような美貌を持っていたり、ユーベルコードにできるほどの知識を持ってたり、そうでなくても誇りある血統だったり…
なんというか、光が強すぎて時々私がここに存在していいのかって気分にさせられるんだよね

…でも、私には成り上がらなければならない理由がある
それを成すためには殺しの技術さえあればそれでいい…!
【死心にて穿つ者】で感情を封印しながら花に紛れて敵に接近
5分の1の速度のまま敵に気づかれないうちに【暗殺】するよ
このUC相手なら死心にて穿つ者の経過速度も5分の1になるはず

殺して、勝ち取って。
…私はその程度の妖精だけど…別に自分を全部否定したいわけじゃないから



●光と闇と
 はたはたと、半透明の翅を羽搏かせてクシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)は往く。
 ミスト状の温泉が、その翅をしっとりと濡らしていく。
 膨れ上がる、劣等感。
 暗殺教団から救い出され、猟兵になってから知り合った、他の猟兵たちの事を想う。
 彼らは、万人が振り向くような美貌を持っていた。
 ユーベルコードにできるほどの知識を持ってた。
 少し話を聞けば、誇りある血統だったりしていた。
 どれも、私には無いものだった。
 嫉妬する。羨望する。
 私は、ここに居ていいのだろうかと、時々考える。
 だって、彼らは、彼女らは、あんなにも眩く光っているのだから。
 今にだって叫びだしたくなるような感情を無理やり飲み込んで、珊瑚の花に紛れて微睡むスプリングエルフに近づく。
 竜の牙をグっと握りしめ、スプリングエルフの首へ突き刺した。
 接敵されていたことにも気づかなかったスプリングエルフは、注がれる魔力に体内を壊されながら、何が起きたのか分からないままにその意識を失った。

 殺して、勝ち取って。
 ……私はその程度の妖精だけど、別に自分を全部否定したいわけじゃない。
 光があれば、闇がある。
 闇がなければ、光は際立たない。
 そう。……だから、これでいい。
 身を隠せるような場所を求めて、クシナは翅を羽搏かせる。
 その翅は雫を映し、キラキラと輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベール・ヌイ
ヌイの劣等感はまず親に捨てられたこと
拾ってくれたおじいさんおばあさんが殺されたこと
…復讐の際に、自分だけではできなかったこと
腕力もない、武術もない、ないないづくしの狐
…でも、こんなボクでもそばにいてくれる人がいる
好きだって、いってくれた子がいる
だから大丈夫、溢れ出る劣等感を大切な子にもらった想いで隠して

相手に接近し「捨て身の一撃」で【不動明王・倶利伽羅】起動
1体に突き刺し、倶利伽羅竜王で複数に巻き付きます
ダメージを受けたら「激痛耐性」で耐えます

アドリブ協力など歓迎です



●無力という力
 吹き付けるミストが、足元を濡らすあたたかな液体が、ベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)の胸中を揺さぶる。
 親に捨てられたと言う事実。両親に愛され育てられたひとが羨ましい。
 今でもまざまざと思い出される、あの事。拾ってくれたおじいさんおばあさんが『鬼』に殺されたこと。
 ……その復讐だって、自分一人では成し得なかったこと。
 腕力もない、武術もない、ないないづくしの狐。
 力があれば。あの時、力さえあったなら。
 固く拳を握り、激情をグッと抑え込む。
 ……でも、だからこそ、こんなボクでもそばにいてくれる人がいる。
 好きだって、いってくれた子がいる。
 一緒に居たいと想い合った子がいる。
 ――だから大丈夫。溢れ出る劣等感を大切な子にもらった想いで隠して。

 珊瑚の根元で微睡むスプリングエルフに接敵する。
 ぱしゃん、足元のお湯を蹴って、肉薄する。
 ぱちりと覚醒したスプリングエルフが大鍵を構える前に、その体に妖刀を突き刺した。
 スプリングエルフが反撃に大鍵を突き刺すが、そんな事は些事だ。
 僅かに顔をしかめながら、口の中で真言を唱えると、妖刀が倶利伽羅竜王の姿をした炎に変化する。
 スプリングエルフが藻掻こうとも無駄だ。
 抜けることのない刀身に身を焼きながら、スプリングエルフは塵となって消えていく。
 血振りし、納刀を済ませてベールは高い空を仰ぐ。
 蒼い瞳は、青い空を映していた。
 きっと、無いからこそ、無力だからこそ。これから得るものがたくさんあるのだろう。
 からの器になみなみと貰ったものを仕舞えるのだと、そう確信し、ベールは前へ進んで往く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン
うわ……なんだか惨めな気分になってきた……
猟兵活動を始めて早数年
周囲もカップルが誕生してお祝いすることも多くなったけど
あたいはそんな気配が一切ないんだよね……
はぁ、ツラたん……あたいに魅力ないのかな……?

ふと、足元に転がっていた珊瑚を拾い上げる
そしてレモンは閃いた

独りを満喫するためにお金を稼ごうっ!
珊瑚を売却すれば独りでも心と財布が潤うよっ!
そのためにも、お邪魔なオブリビオン達の討伐だねっ!
よ~しっ! 悠悠自適な生活の為に頑張るよ~っ!
※物欲で抑え込む

あ、そのお花見は自粛だからねっ?
動きが遅くなるのは反則だよっ!(UC発動

ライムの魂魄を蛇腹剣に宿して
炎の衝撃波と共に敵をすてみので薙ぎ払うよっ!



●恋の季節
 蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)である。元気いっぱい、笑顔が眩しい19歳の女の子である。
 猟兵活動を始めて早数年、周りに居る友人や知り合いたちの想いが次々と成就していくのだ。
 もちろん、おめでとうと祝福し、よかったね、と笑いかける。
 しかし。しかし、だ。
 レモン自身にその気配が全くないのだ。
 ツラたん……。そんなに魅力がないのかな……。
 どよどよと気分が沈んでいく。
 そう、レモンは気づかぬうちにミスト状の温泉に体を濡らしていたのだ。
 劣等感に苛まれ、ケッ! と足元の珊瑚を蹴り上げた。
 キラキラと光り、ぱしゃんとお湯だまりに沈むそれを見てレモンはひらめいた。
 ――そうか! この珊瑚を売り払えばいいんだ!
 親指大のひとかけらでも、金貨100枚(100万円)程度で取引されると言っていた。それだけあれば、独りでも心と財布が潤う。
 そうと決まればやることはただ一つ。オブリビオンを討伐し、珊瑚の採取だ!

 珊瑚の根元で微睡むスプリングエルフに、ずびしと人差し指を突きつけてレモンは高らかに宣言する。
「そのお花見は自粛だからねっ!」
 その言葉と共に、嫉妬を司る蛇神が桜の咲いた珊瑚に破壊念動波を叩きつける。
「あっ! あ~! 折角咲かせたのに酷いわ! 上手に春をお迎えできなかったからがんばったのに!」
 スプリングエルフはぷぅ! と頬を膨らませてレモンに襲い掛かる。
「あたいだって、悠悠自適な生活の為にやらなきゃなんないの!」
 蛇腹剣クサナギにライムの魂魄を宿して振るう。炎の衝撃波を乗せたそれを一閃させると、スプリングエルフはあっさりと倒れた。
 物欲が劣等感に勝利した瞬間だった。

 熱いミストを出す珊瑚は流石に折れなかったので、目についた珊瑚の欠片を拾い集めてレモンは帰路に就くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
■作戦
弟と互いに素直な言葉をぶつけて劣等感を抑え込む
■行動
お気に入りの水着で温泉に浸かってみる
「うう…」
周囲を見回すとやはり自分の胸が気になる。
(なんでこんなに小さいのかしら)
水着だとより鮮明に他人と比較される気がして…
(フォルセティもきっと大きい方が好みなのよね)
ぶくぶくと温泉に沈み込みたくなる…
でも何気ないフォルセティの一言でふと気持ちが軽くなる
「あ、ありがとう。私もフォルセティのこと頼りにしているから」
顔が真っ赤になるのを抑えつつ、姉の威厳を保って劣等感を抑え込む
スプリングエルフには[高速詠唱]からの【ロンギヌスの槍】で撃退する


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】 (連携・アドリブ可)
フィオ姉ちゃんと一緒に温泉だよ!
【行動】()内は技能
水兵風の水着で温泉にダイブ!
「ボクなんで女の子と間違えられるんだろう」
急に沸いてくる不思議な気持ち
もっと男らしくなりたいよ。カッコよくなりたいのに…
こんなんじゃダメだよね。
劣等感に苛まれそうなるけど、ふとフィオ姉ちゃんと目があったから
思ったことを素直に口にするよ
「ボクは今のフィオ姉ちゃんが好きだよ」
えへへ。頼りにしているって言ってもらったよ。
なんだか(勇気)が湧いてきた。
フィオ姉ちゃんが見ているからボクも頑張らなきゃ。
スプリングエルフには(高速詠唱)からのロンギヌスの槍で撃退だね



●今のままの、そのままの
 フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)の2人はそれぞれ水着を身に纏い温泉を楽しんでいた。
 少しぬるめの心地よい温度のその温泉に浸かっていると、心の奥底にあった劣等感がむくむくとその身を苛んでいく。
 姉弟はそれぞれ、己の身体を見つめてそっとため息をついた。

 どうして、私の胸はこんなに小さいのかしら。
 赤いリボンのついたお気に入りの水着の下には、ささやかな胸。
 このリボンも、白いたっぷりのフレアも、ささやかな胸を目立たせなくするため。
 もちろん、デザインもとても気に入っているのだけれど……。
 きっと、フォルセティも大きいほうが好みなのよね。
 大事な弟はきっと体系なんかで好きや嫌いを言わないだろうけれど、温泉に浸かったフィオリナはその考えを劣等感で塗りつぶす。
 なんだか情けなくなって、膝を抱えて胸を隠し、鼻の下までお湯に浸かり、ぶくぶくとため息をついた。

 水兵風の水着を着たフォルセティも、どんよりとした目で自分を見つめる。
 どうして女の子と間違われるんだろう?
 水着から伸びる足は白くて華奢で、まるで女の子みたい。
 魔法を紡ぐこの手だって、弱っちくって頼りない。
 もっと男らしくなりたいよ。カッコよくなりたいのに……。
 はぁ……とため息をついたら、すぐそばからぶくぶくという音が聞こえて、そちらへ目をやる。

 ぱちり、2人の目が合う。
「……フィオ姉ちゃん、どうしたの?」
 どんよりとしたフィオリナへ、ぽつりと声をかける。少しの間の後、彼女は口を開いた。
「……私、自分の身体に自信がないの。周りにも、可愛い子とかいっぱいいるし……」
 そう言って、目を伏せるフィオリナに、フォルセティは思ったことを素直に口にする。
「ボクは今のフィオ姉ちゃんが好きだよ」
 何気なく紡がれた言葉に、フィオリナの心がスッと軽くなる。
「あ、ありがとう。私もフォルセティのこと頼りにしているから」
 頬が熱くなるのを抑えながら、彼女もまた、弟に素直な気持ちを伝える。
 頼られている事実に自信と勇気を貰ったフォルセティは、頬を緩ませながら立ち上がり、フィオリナへ手を伸ばす。
「行こう。ボク、今すっごく頑張れる気がするんだ」
 伸べられた手を取り、立ち上がったフィオリナは清々しい顔をしていた。

 珊瑚の根元で微睡むスプリングエルフに向け、術式を編み込む姉弟。
「フォルセティ、行くわよ。全てを貫け、ロンギヌスの槍よ!」
「フィオ姉ちゃん、任せて。全てを貫け、ロンギヌスの槍よ!」
 その声にハッとして目をぱちくりさせるスプリングエルフだったが、もう遅い。
 決して欠けることのない神を貫く閃槍は、スプリングエルフの左わき腹に深々と突き刺さった。
 スプリングエルフは散り逝く桜に手を伸ばして、そのまま骸の海へと還って逝く。

 儚く散る桜は、全てを肯定し、祝福するかのように淡く光って消えていく。
 キミたちは、いまのままでも充分に魅力的だよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月15日


挿絵イラスト