帝竜戦役⑱〜心配事の尽きない戦い
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「帝竜ヴァルギリオスの復活……。
彼が言う『界渡るもの』というのが、そのまま世界を渡る力なのだとしたら、その脅威はアックス&ウィザーズの世界のみに留まらないのかもしれません」
懸念を呟きながら嬉乃・抹茶子が猟兵達に向き直る。
「次に皆さんに向かって頂く場所は『冷静と情熱の珊瑚礁』です」
高熱を放つ「サウナ珊瑚」の生える温泉地帯。
一見して風光明媚な場所に思えるのだが、どうもそこには大きな罠が待ち受けているらしい。
「この温泉に浸かった者は、特定の感情……【心配事】が爆発的に増加してしまいます」
なんじゃそら、と思うものも多いだろう。
だが、戦闘と言う極限の状況の中においては、自身の感情が影響を及ぼす場面は思いの外大きいのだ。
ここに来る前に、ちゃんと家の鍵は閉めてきただろうか?
そもそもガスのスイッチは切ってきただろうか……?
こんなことが戦闘中に気になり始めたら命取りとなりかねない。
「ですが、この溢れ出す感情を抑え込み、我慢すれば我慢するほど、温泉の効能で戦闘力が一時的に上昇します。敵は爆発的な感情に支配されて殺到してくるので、冷静に対処できればかなり有利になるはずです」
キリッと真剣な表情で抹茶子。どんな泉質やねん。
そんなことを猟兵達が考えているうちに異世界への扉の準備を終える抹茶子。
この扉を潜れば、もう後戻りは出来ない。
「皆さん、家の鍵は閉めましたね。ガスのスイッチも大丈夫ですね?
……では行きましょう」
そう言って、抹茶子は猟兵達を珊瑚礁の温泉に転送するのだった。
河流まお
河流まおです。精一杯努めさせて頂きますので宜しくお願い致します。
プレイング受付は期間無しの随時です。いつでもバッチコイです。
●プレイングボーナス
このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
プレイングボーナスは「爆発的な心配事」を発露させた上で、抑え込む、です。
●この戦場で手に入れられる財宝
宝物「サウナ珊瑚」……水を温泉化する、成分が摩耗することもない不思議な珊瑚です。おそらくクリーンな火力発電としても利用でき、親指大のひとかけらでも、金貨100枚(100万円)程度で取引されます。
第1章 集団戦
『ドロゥプス』
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POW : ダンス
【ダンス】を給仕している間、戦場にいるダンスを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD : 留まらせる
【瞳】から【ウインク】を放ち、【「可愛い」と感じさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 眠らせる
【スマイル】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
イラスト:透人
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シリン・カービン
【SPD】
ここでは普段しないような心配が浮かんでしまうのですね。
(こめかみ押さえつつ湯に足を浸し)
銃の手入れは十分だっただろうか。
携帯用の乾燥果実はカビが生えていないだろうか。
精霊達に私の声は届いているだろうか。
「…くっ」
膨れ上がる不安を自覚。
大きく息を吸って、そのまま止めて数秒。
銃は手順通りに整備した。
果実は目安通りに選りすぐった。
精霊達はいつも通り声を返してくれた。
一つ一つ段取りを確認して不安を最小限に止め、
それでも湧き上がってくる衝動は押し込めます。
彼らを可愛らしいと思うのは理解できるのですが、
私にとってはただの獲物です。
一度そう定めたら後は狩るだけ。
ドロゥプスを次々速射で仕留めます。
●
異世界への扉を潜り抜けると、まるでサウナのような熱気が肌を撫でる。
色鮮やかな珊瑚礁が樹木のように立ち並ぶ、薄桃色の景観。
「ここが『冷静と情熱の珊瑚礁』……」
その珊瑚礁の森に住まう生き物たちもまた薄桃色――。
頭上を見上げると羽根の生えたタツノオトシゴがプカプカと空を飛んでいくのが見て取れた。
「……まるで豊かな海の底へと迷い込んだかのようですね」
周囲を見渡しながらシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が呟く。
息を飲むような幻想的な美しさの中を歩き始めると、やがて海岸線のような場所に辿り着く。
これより先に進むには、このお湯に足を踏み入れるしかないようだ。
「まぁ、そうなるわよね――」
小さく吐息をつくシリン。
「このお湯に触れると、普段しないような心配が浮かんでしまうのでしたっけ」
グリモア猟兵の言葉を思い出しながら、こめかみ押さえるシリン。
「って、悩んでも仕方ないですね。いざ――」
意を決して素足をお湯に浸すと、心地よい温さが伝わってくる。
なんてことはない、普通の温泉だ。
「なんだ、思っていたよりも平気ね」
少しホッとして、ジャブジャブと温泉の中を進みだすシリン。
水の深さは膝ぐらいか、とりあえず戦うのに支障は無さそうである。
「あ、戦うと言えば――」
ちょっと気になって背中に視線をやるシリン。
愛用の猟銃はしっかりとそこに背負われている。うん、忘れてはいない。来る時にちゃんと確認したんだから、当然ですよね――。
ん? いやちょっと待って。そういえば――。
「銃の手入れは十分だったかしら……」
と、ふと思うシリン。
そういえば、昨日の夜はやってない気がする。
「いやいやいや……でもそう簡単に故障するようなものでも、ないわよね……?」
自分に言い聞かせるように呟くシリン。
だがしかし、ここで思い出されるのは彼女に狩りを教えてくれた先達のありがたいお言葉である。
道具の手入れを怠る者は、肝心な時に道具に裏切られる――。
もし、万が一だけど――。戦いの最中に猟銃がジャムって排莢不良でも起こしたらどうしよう……。
なにそれすごく焦る。
今すぐにでも分解点検をしたいのだが、こんな温泉のど真ん中ではそれもままならない。
「そもそも、この湿気の中では分解なんて――」
あれ? そういえば湿気と言えば……。
「携帯用の乾燥果実にカビが生えているのでは……?」
食料が尽きれば戦いどころではない。
猛烈に気になってきて携帯袋に手を突っ込む。
恐る恐る乾燥イチゴを取り出し、鑑定士のように一個づつ確認してゆくシリン。
「ハッ、私は一体何を――」
ようやく食料の確認が終わり、我に返った時……。
「……え」
すでに敵に取り囲まれていた。
ポヨンポヨンとゼリー状の可愛い生物が此方を威嚇しているではないか。
「そんな……いつもなら精霊たちが危険を知らせてくれるはずなのに――」
驚愕して絶句するシリン。
ん、ちょっと待って、それってつまり――。
「精霊達の声が届いていない―――?」
軽く絶望するしかないシリン。
まぁ、彼女がイチゴを鑑定している間、精霊たちは一生懸命に危険を報せようとしていたのだが……ただ集中しすぎていて気が付かなかっただけである。
「…くっ」
膨れ上がる不安を自覚するシリン。
大きく息を吸って、そのまま止めて数秒。
心配事を打ち消すために、今朝からの出来事を思い返してゆく。
銃は手順通りに整備した。
果実は目安通りに選りすぐった。
精霊達はいつも通り声を返してくれた。
一つ一つ段取りを確認して不安を最小限に止め、それでも湧き上がってくる衝動は押し込めてゆく。
「自分自身を信じるのよ、シリン・カービン。
この銃は、あなたを決して裏切らない」
そう自分に言い聞かせて猟銃を構えるシリン。
「――!」
信じて引き金を引け絞れば、手応えのある反動と共に銃弾が放たれる。
ポプゥン! と心地よい音共に、銃撃を受けたゼリーが爆ぜる。
「撃てた……よし」
安堵の吐息をつくと同時、精霊がシリンの耳元で警告を発した。
「――!」
振り返らずに銃口を背後に向けて撃ち放つ。
ポプゥン! と背中側から二匹目の爆ぜる音。
「もう大丈夫です。だから心配しないで」
そう精霊たちに呼びかけて、シリンは猟銃の弾を込め直す。
「可愛らしいと思うのは理解できるのですが、私にとってはただの獲物です。
一度そう定めたら、後は狩るだけ」
狩人としての自分を思い出し、シリンは次々と速射で敵を仕留めてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
七詩野・兵衛(サポート)
『アルダワ魔法学園応援団『轟嵐会』団長 七詩野兵衛である!』
アドリブや他の猟兵との連携と絡みは歓迎だ。
多少の怪我は厭わず積極的に行動する。
よほどの事情でやらなければいけない時以外は、
他の猟兵に迷惑をかける行為や、公序良俗に反する行動はしないぞ。
戦闘は応援団としてバーバリアンの力強さと、
スカイダンサーの身のこなしを駆使して応援するのだ。
我輩の「ダンス」と「パフォーマンス」で皆を「鼓舞」するのだッ!
応援する相手がいなければ仕方ない、自分で戦闘する。
後はおまかせだ。よろしくおねがいしよう!
メイリン・コスモロード(サポート)
『一緒に頑張りましょうね。』
人間の竜騎士×黒騎士、13歳の女です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「対人恐怖症(ワタシ、アナタ、デス、マス、デショウ、デスカ?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
人と話すのに慣れていなくて
「えっと……」とか「あの……」とか多様します。
戦闘ではドラゴンランスを使う事が多い。
その他、キャラの台詞はアドリブ等も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
竜を連れた一人の少女が珊瑚礁の森の中を進んでいる。
「なんだか幻想的な場所ですね……」
水に触れると高温を発するという不思議な珊瑚。周囲はまるでサウナのような熱気に包まれて、歩くだけでも自然と汗ばんでくるほどである。
「この先に温泉があるんでしたっけ……」
グリモア猟兵の言葉を思い出しながらメイリン・コスモロード(飛竜の鉾・f13235)が呟くと、竜がそれに応じるように一鳴き。
珊瑚が作り出す薄桃色の景観を楽しみながら進むと、やがて海岸線のような場所に辿り着く。
対岸は大量の湯煙で見通せないが、かなり大きな湖のようである。
「……やっぱり、お湯に浸からないで進むことは出来ないようですね」
そういえば、と温泉についての説明を再び思い出してゆくメイリンだったが――。
まさにその時である!
「なんでもこの温泉には【心配事】を猛烈に増幅させる効能があるらしいな!!」
背後から響いてきたバカでかい声にメイリンの心臓が飛び跳ねる。
ハッと振り返れば、学ランに白いタスキを締めた怪しすぎる男が立っているではないか!
「アアアア、アナタは――?」
なんとか言葉を絞り出すと、男はフッと笑い。
「問われて名乗るもおこがましいが――。
我輩はアルダワ魔法学園応援団『轟嵐会』! 団長の七詩野兵衛である!」
ビリビリと空気を震わせるような大轟音にメイリンは再び竦み上がる。
って、自己紹介でそこまで気合入れる必要ある――!?
「ア、アナタも依頼を受けた猟兵さんデスネ……?
ワタ、ワタシはメイリン・コスモロード、デス……」
対人恐怖症、と言うほどではないが、人前ではどうにも緊張するタチのメイリンがぎこちない挨拶を返す。
「すまない。驚かせてしまったようだな」
メイリンの緊張を感じ取った兵衛は相手を慮るようにボリュームを抑えてゆく。
怪しさ全開のこの男であるが、どうやら悪いヤツではないらしい。
ホッと胸を撫で下ろして、メイリンは再び依頼の途中であったことを思い出す。
「えと、兵衛さん……? ここから先は魔物も出るらしいですし、せっかくですからご一緒しましょうか」
メイリンがそう提案すると、兵衛はそのいかつい顔を破顔させる。
「こちらこそ頼む。俺の『応援道』で力になろう」
応援道とかいう謎のパワーワードが気になるところだが――。
長くなりそうなので一先ず後回しにしてゆくメイリン。
心強い仲間も得たところだし、ぼちぼち冒険の続きを進めなくては――。
「それで、【心配事】を増幅する温泉、でしたか……」
「うむ。気を付けるのだ」
「一体どんな泉質ですかそれ~……」
と、愚痴ったところで水が干上がってくれるわけでもない。
進むためには意を決して温泉に踏み入れるしかないのだ。
「ごくり」
靴を脱いで、恐る恐る足の指先を浸す。
「あ……温い」
「適温だな」
心地よい適度な温もりを感じる二人。懸念された【心配事】も一先ずは影響が見られないようだ。
「心配しすぎちゃったかな」
くす、と小さく微笑むメイリンに兵衛も頷きを返す。
「恐れる事は無かったようだな。さぁ、進もう」
ジャブジャブと水を掻き分けて歩き出す二人。
水の深さは膝ぐらいまでだろうか、これぐらいならば戦うのに支障はないだろう。
●
進みだしてしばらくして、兵衛がポツリと呟く。
「それにしても立派な竜であるな。君の乗騎だろうか?」
上空を見上げながら兵衛。メイリンの竜は魔獣の接敵を監視するために空に放っていた。
「ええ、幼い頃からの友達なんです」
竜に手を振りながら優しく微笑むメイリンに、兵衛は「そうか」と短く答えてフッと微笑する。
過去の記憶が無い兵衛にとって、メイリンと竜の関係は少し眩しいものに映ったのかもしれない。
「対岸についたら、休憩がてら食事を取りましょう。食料ならちゃんと……」
ん? と思うメイリン。
食料は十分なほど持ってきたつもりだけど、もしこの温泉の湖が予想よりも広大なものであったらどうしよう?
なにしろ視界の先は湯気で霞んで、対岸まで確認することは叶わない。
対岸までどのくらいかかるのだろうか?
この食料で本当に充分だったのだろうか?
猛烈な不安感がメイリンを襲う。
「おい、大丈夫か? メイリン」
急に立ち止まったメイリンに兵衛が問いかける。
「ど、どうしましょう? 食料足りるでしょうか?
い、今ならまだ、引き返すことも可能なのでは?」
明らかなメイリンの異変に、兵衛も気が付く。
「む、これが温泉の効能なのか――?」
兵衛自身も直ぐに異変が出始める。
先程頭をよぎった自分の過去の事。なんだかそれが猛烈に気になり始めてゆく。
過去の自分は一体どんな人間だったのだろうか?
いつか、その記憶が戻る日は来るのだろうか?
なにより、記憶が戻るとしたら……『今の自分』は一体どうなるのだろうか?
記憶が統合されて一つの自分になる?
いや、もしかすると記憶が上書きされて今の七詩野・兵衛という人間は消えてしまうのではないか……?
まずい、と兵衛は自覚する。その場に屈みこんでしまいそうなほどの猛烈な不安感。
気が付けば周囲はゼリー状の魔獣に取り囲まれていた。
竜は幾度となく警告を発していたのだが、心配事に囚われた二人はそれに気が付くことが出来なかったのだ。
ジリジリと迫り来るゼリーの群れ。
このままでは……押し潰される。
そう感じた兵衛はスウッと息を吸って気合を入れ直す。
記憶が戻った時、どうなるかは解らない。
だが、今ここに七詩野・兵衛という人間は確固として存在する。
ならば示せ。世界に向けて。己の在り様を――。
「我輩は! 『アルダワ魔法学園『轟嵐会』団長・七詩野兵衛であるッッ!!』
ビリビリと痺れるような大轟音。
「不安に負けるんじゃあないメイリン! この俺が、君を応援しようッ!」
兵衛は『応援』の力を信じている。
人は誰しも不安に駆られる時がある。
だが――。
誰かに励まされたとき、応援されたとき――。
それは確かな熱量となって伝わり、その人を立ち上がらせる原動力となるのだ!
「メイリン嬢の健闘を祈ってぇぇええ!!! 三・三・七拍子ぃいいいいいいッ!!」
小気味よい軽快なリズムと共に、見ているものを勇気づけるキレの良いダンスを披露する兵衛。
思わず、クスッと微笑むメイリン。
「――もう、兵衛さん。なんですか戦闘中だというのに」
なんだか余りに突然の出来事に、些細な心配事など吹き飛んでしまっていた。
槍を支えにして立ち上がるメイリン。竜が心配するように傍らへと舞い降りてくる。
「心配させちゃったね。もう大丈夫だよ」
安心させるように顎元を一撫ですると、竜は満足そうに目を細める。
「さぁ、行きますよ! 兵衛さん!」
槍を構えて魔獣と相対してゆくメイリン。
「ああ! 応援は任せておけッ!! 行くぞォオオオ!!」
湯煙漂う温泉地のただ中で、二人の戦いが展開されてゆくのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
蛇塚・レモン
『心配事』の感情が増幅するんだね……っ?
あのオレンジのスライム、見かけに反して強敵だったらどうしよう?
数も多いし、あたい“たち”だけで戦えるかな……?
『レモンよ、余の声を聞くのだ……!』
蛇神様!?
『愛しい我が子よ、よく聞くのだ。あの軟体生物が強いと思えるか?』
だってあの笑顔を見ていると眠くなってくるし……
『起きよ、レモン! あれが帝竜よりも強いと思えるか!?』
……いや、全然?
『余の加護をもってしても勝てぬ相手と思うか?』
そんなことないよっ!
あたいと蛇神様、それにライムは最強だよっ!
『ならばそれを証明すれば良いだけであろう?』
……それもそうだねっ!
UCで敵を閉じ込めて、一網打尽にしちゃうよっ!
●
白い熱砂を踏みしめながら、薄桃色の珊瑚礁の森の中を歩く蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)の姿がある。
「ほんと、サウナみたいな暑さだね」
自然と噴き出してくる汗を拭い、服をパタパサさせてなんとか風を送り込む。
立ち昇ってくるかのようなこの熱気。しゃがんで白い砂を握ってみれば、この砂自体が熱を発していることに気が付く。
「うわ~、温かいよ。この砂」
『恐らく、この砂浜も古い珊瑚が崩れて形成されたものなのであろうな』
傍から見ればレモンが突然に独り言を始めたかのように見えるだろう。
レモンが語り掛けたのは、彼女の裏人格でもあるオロチヒメ。
その身に宿す蛇神様なのである。
「なるほど~、細かい珊瑚か! 蛇神様は博識だね!」
『ははは、こやつめ。褒めてもなにも出んぞ?』
傍から見ると自画自賛に見えるが以下略。
そんなやり取りをしながら進むと、やがて海岸線のような場所へと辿り着く。
立ち昇る湯気で対岸まで見通すことが出来ないほどの、湖のような大温泉だ。
『ふむ、避けては通れぬようじゃのう』
蛇神様の言葉に頷き、レモンは靴を脱いで裸足になる。
思い出されるのは出発前のグリモア猟兵の言葉である。
「このお湯に触れると『心配事』の感情が増幅するんだね……っ?」
恐る恐る、足の親指をお湯に浸すと、じんわりと温い感触が伝わってくる。
『お、なかなかいい湯加減ではないか』
と、呑気な感想の蛇神様に苦笑しながらも、レモンはジャブジャブとバタ足で泉質の安全を確認してゆく。
「うーん……」
なんてことはない、普通の温泉のように感じられる。
もしかしたら効果が出るのに少し時間が出るのかもしれないが……。
一先ずの所は安全だと判断して、レモンはお湯をジャブジャブかき分けながら進んでゆく。
水の深さは膝のあたりぐらいで、戦闘になってもそう支障は出無さそうである。
●
まるで深い霧の中に迷い込んだみたい、とレモンは思う。
珊瑚礁の立ち並ぶ大温泉。
対岸は湯気で見通すことは出来ないし、振り返ってみれば既にレモンたちが出発した海岸線も湯気の中に消えてしまっていた。
まるで、世界から取り残されてしまったかのような――。
そんなポツンとした孤独感が滲みだしてくる。
『大丈夫か? レモン』
突然立ち止まったレモンに異変を感じたのか、蛇神様が心配して声をかけてくる。
「あっ、うん……なんかちょっとだけ不安になっちゃってサ……。ちゃんと対岸へ辿り着けるかなって」
それは蛇塚レモンらしからぬ、弱気な発言であった。
『レモン……おぬし……』
温泉の効能が出てしまっているのでは? と蛇神様が言おうとした瞬間――。
周囲からザブザブと水を掻き分けて近づいてくる音が響いてきた。
「う……こんなときに魔獣?」
動揺を露わにするレモン。
四方八方を包囲されているところを見るに、既に敵の縄張りへと足を踏み入れていたらしい。
湯気の中からゆらりと現れたのはゼリー状の魔物の群れである。
動揺しながらも、なんとか蛇剣を構えるレモンであったが、その指先は僅かに震えている。
「あのオレンジのスライム、見かけに反して強敵だったらどうしよう?
数も多いし、あたい“たち”だけで戦えるかな……?」
温泉の効能に相当やられてしまっているようだ。
普段とは全然違う弱気な反応を示すレモンはある意味で新鮮であったが……。
ここはまぁ、手助けしてやるしかないだろう。
『レモンよ、余の声を聞くのだ……!』
まるでご神託を出すかのように、威厳を演出しながら蛇神様。
「蛇神様!?」
巫女としての本分を思い出したのか、レモンが反射的に姿勢を正す。
『愛しい我が子よ、よく聞くのだ。あの軟体生物が強いと思えるか?』
じっとスライムを見つめてみるレモン。
「だってあの笑顔を見ていると眠くなってくるし……」
それに、何事も見た目で判断するのはよくない気がする。
なんか八匹ぐらい合体してキングな形態になる可能性もある。
考え始めると、ドンドンと不安と眠気が襲ってくる――。
『起きよ、レモン! あれが帝竜よりも強いと思えるか!?』
「……いや、全然?」
さすがにキングになっても帝竜よりは強くないだろう。
『余の加護をもってしても勝てぬ相手と思うか?』
そう問いかける蛇神さまに、レモンはブンブンと首を振る。
「そんなことないよっ! あたいと蛇神様、それにライムは最強だよっ!」
『ならばそれを証明すれば良いだけであろう?』
「……それもそうだねっ!」
そうだ、とレモンは気が付く。
たとえ心配でも、不安でも、あたいは一人じゃない。
戦うのが怖い時も確かにあるけど――。
誰かと共にあるならば、あたいはきっと勇気を振り絞れる。
「いっくよ~、巨大化召喚っ! 蛇神様、その身体で迷路を作ってっ!!」
その瞳に戦う意思を宿し、レモン“たち”はユーベルコードを発動させる。
猛る白き蛇神が敵をその身体で閉じ込め、一網打尽にしてゆく!
「うん! あたい“たち”ってばやっぱり最強だねっ!」
心配を克服したレモンは、キラッとしたキメポーズで決めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ベール・ヌイ
「…御飯の材料…残ってたかな…?」
料理好きなので心配事は御飯の材料になるヌイです
冷蔵庫になにがあったか思わずイメージしてしまいます
だがまってほしい、そもそも買いにいけばよいのでは?
というかこの状況で料理を考える暇もない
【ベルフェゴールの矢】を起動、1本だけさして感情を0にすることで感情を抑え込みます
ついでに痛みで相手の【眠らせる】による睡眠を無理やり起きる
自分以外の刺した矢は全部ドロゥプスたちに放ちます
アドリブ協力など歓迎です
宮落・ライア
心配事………(もやもやもやーん
…………戻らなきゃ!戻れない!?
どうすれば……はっ!とっとと倒して帰ればいいじゃん!
つまり、つまり、
最速で帰るには、最短で撃破するルートを考えて、
最大効率で一撃必殺の心得をもって倒していかなければいけない。
早く心配事を確認する為に、今はそれを思考の後ろに押し込み押し込み。
心配事が気になるから目の前のお仕事を冷静に最大効率で潰そうとする
思考回路。
ウインクが可愛いかって?
今はそれどころじゃないんだよなー。どうでもいい。
●
異世界への扉を潜り抜けると、目の前に幻想的な光景が広がる。
薄桃色の珊瑚礁が樹林のように立ち並び、足元には白い細やかな砂が敷き詰められている。
「うわー、綺麗な場所だね!」
宮落・ライア(ノゾム者・f05053)が目を輝かせながら周囲を見渡して呟く。
「……ちょっと暑い」
続けて転送されてきたベール・ヌイ(桃から産まれぬ狐姫・f07989)が扉から顔を覗かせながら一言。
「たしかに。水着でも持ってくるべきだったかな~」
まるでサウナの中のような強烈な熱気が周囲を包み、薄靄のような湯気が漂っている。
パタパタとシャツを叩いて新鮮な空気を少しでも送り込むライア。
額に汗しながら先に進むと、やがて海岸線のような場所へと辿り着く。眼前に広がるのは広大な面積を持った温泉である。
「……まさに大温泉ですね」
対岸を確認しようと眼を細めてみるベールだったが、湯気が多いせいで見通すことは出来ない。
「……先に進むためには、この温泉を避けては通れないようですね」
「ま~、そうなっちゃうよね~」
苦笑しながら靴を脱いで裸足になってゆく二人。
「……気を付けて下さい。心配事が増幅される効能があるそうですから……」
グリモア猟兵の言葉を思い出しながらベール。
「大丈夫! ちゃんと家の鍵も、ガスのスイッチも切ってきたよ!」
そもそも心配事さえなければ恐れる事は無い! とばかりにドーンと胸を張るライア。
「……では、いっせーのせ、でいきましょうか……」
恐る恐る、二人でお湯に足を浸すと心地よい温もりが足先から伝わってくる。
「とくになにもおきないね?」
「……効能が伝わるまで時間がかかるのでしょうか……?」
しばらく水辺でジャブジャブして確認するものの、なんてことない普通の温泉と感じられる。
怪しさは拭いきれないものの、ここでノンビリとしていれば帝竜が復活してしまう。
「よし、それじゃいこっか!」
「……お~」
少し拍子抜けしながら、二人は大温泉の奥地へと踏み入れてゆく。
●
ジャブジャブとお湯を掻き分けて進む二人。
水の深さは膝と腰の間くらいだろうか? なんとか戦うのに支障は無さそうである。
「……けっこう進んだ気がしますが……」
周囲には濃霧のような湯気が漂い、まだ対岸は確認できない。
後ろをふと振り返ると、二人が出発した海岸線もすっかり見えなくなっていた。
このまま、あとどのくらい歩く必要があるのだろう?
「そういえば、ちょっとお腹空いてきたね~。
UDCアースのお菓子ならあるけど食べる?」
小腹満たしにと何気なくチョコレートをパキるライアだったが、その様子を見ていたベールが「……あっ」といって立ち止まる。
「……そういえば、御飯の材料……残ってたかな……?」
最後に食材を買い足したのはいつだっただろうか?
少なくとも昨日は一日中ほぼ寝ていたので外出をしていないはずである。
この依頼が無事に終わったとして、はたしてその時間に近所のスーパーは開いているだろうか?
家に帰って何も食べるものが無いというのは、ベールにとっては軽く絶望である。
「……冷蔵庫……なにがあったっけ……心配になってきた……」
眉間にしわを寄せながら、必死に自分の記憶を探ってゆくベール。
突然足を止めて唸り始めたベールにライアも困惑する――。
温泉の効能がライアにも表れ始めたのだ。
「え、まさか心配事……? あれ? 私の心配事……?」
一瞬でもそれを意識すれば、あとは怒涛の勢いで押し寄せてくる。
「…………戻らなきゃ! 戻れない!? ああ、どうしよう~!!」
一体何を思い出したというのか。ライアも盛大に取り乱してゆく。
「あっ!?」
狼狽しすぎたせいかポロッと手が滑って、お湯の中にチョコレートが沈んでゆく。
見る見ると溶けて、跡形も無く流れ去ってゆくチョコレート。
「ああ! 今後貴重になっていくかもしれない食料が!」
もしこの温泉が太平洋ぐらいの面積があるのだとしたら、このミスは相当大きい。
もはや冒険を諦めて一度引き返すしかないだろう。
「……どうしよう……どうしよう~」
と、二人であたふたしていると、まさにその気を図っていたかのようにゼリー状の魔物が湯気の先から現れる。
「……こんなときに魔物だなんて……」
ぐぬぬ、と奥歯を噛むベール。
既に敵の狩場に踏み入っていたようで、すっかりと周囲を取り囲まれている。
「ど、どうすれば……っ」
なんとか二刀を抜き放って構えたライアであるが、その剣は精彩を欠いていた。
「……おおおお落ち着きましょう……まずは深呼吸して、落ち着きましょう……」
おまいう状態で動揺しまくりのベール。
「……このままでは……あ、そうだ、この手がありました」
咄嗟に打開策を閃いたベール。
【ベルフェゴールの矢】を起動し、1本だけ自らに刺すことで感情を0にして心配事を抑え込んでゆく。
「……そう、確かに数日間寝過ぎていたせいで、家の冷蔵庫の中はカラかもしれません……」
そこはマメにしとこうよ、と思わなくもないライアであったが、ベールがキリッとした表情であったのでそこはツッコまない。
「……だがまってほしい。買いにいけばよいのでは?
……そう、たとえ近所のスーパーが閉まっていても、ボクたちにはコンビニがある……!」
たったひとつの冴えた解を導き出し、ベールが再び立ち上がる。
「……というかこの状況で料理を考える暇はない」
冷静さを取り戻したベールの言葉を受けて、ライアも気が付く。
「……はっ! そうだよ! とっとと倒して帰ればいいじゃん!」
よく見れば、取り囲まれているとはいえ敵はクッソ弱そうな軟体生物である。
「つまり、つまり――。
最速で帰るには、最短で撃破するルートを考えて――」
余計なことを考えないように、戦いに集中してゆくライア。
それを成すには、最大効率で一撃必殺の心得をもって倒していかなければいけない。
早く心配事を確認する為にも、今はその思考の後ろに押し込み押し込み。
「まずは、目の前のお仕事を片付けなくっちゃね!」
ようやく自分らしさが戻ってきたことを感じながら、ライアは大剣と刀の異色の二刀流を振るってゆく。
「……そういうことですね」
【ベルフェゴールの矢】で次々とドロゥプスを撃ち抜きながら、ベールも頷く。
迷いさえ振り切れば、大した相手ではない。
睡眠効果を持つ敵のスマイルや、一時的に動きを封じるウィンクに抵抗しながら、ライアは戦場を刃の風となって舞い踊る。
「ウインクが可愛いかって?
今はそれどころじゃないんだよなー。どうでもいい」
早くこの依頼を完了させて、心配事を解消させることが一番の心の安定なのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クシナ・イリオム
アドリブ歓迎
…そういえば、妖精用投げナイフ(装備欄参照)の在庫発注してたっけ?
うわ、あれ無いと地味に困るんだよなぁ…。
今回地元の戦争なうえに、領主狙いだから仕事多いし…鍛冶屋にあの数を頼むと納期長いんだよなぁ…
かといって、今から追加発注しても戦争終了後に過剰在庫が出るだけだし…
いや、考えるのはよそう。
投げナイフとスリングショットの在庫が心配なら今回はそれ無しで戦えばいい。
…というわけで【魔法罠即席設計】発動。
狙撃タレット(自律砲台)を召喚して敵を【暗殺】するよ。
終わってみると大したこと無い心配事だったね。
…でも、発注忘れはシャレにならないから帰ったら一応確認しとこ。
●
薄桃色の珊瑚礁が立ち並ぶ白い砂浜。
そこに住まう生き物も大体がピンクと白の色彩で――。
なんともファンシーで幻想的な光景。その珊瑚礁の森の間を縫うように飛ぶ、黒い妖精の姿がある。
「この場所だと黒は逆に目立ってしまうな」
薄桃色のシオマネキが砂の中に隠れていくのを見ながら、クシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)が吐息を一つ。
生き物の進化というのは不思議なものだ。ああやってその場に合わせて姿形を変えてゆくものが生き残り、適者生存の原理で命を繫いでゆく。
今この珊瑚礁の中では、自分自身がこそが『異邦』であることをクシナは強く感じとる。
「とはいえ、白とピンク色の迷彩服というのもな……」
用意したとしても、いくらなんでも用途が限られ過ぎる。
仕事に手を抜きたいわけでは無いが、今後使う機会が出てくるのかと言われれば微妙なところだ――。
と、そんなことを考えていると、やがて海岸線のような場所へと辿り着く。
「ここが『心配事』を増幅させるという温泉か……。一体どんな成分なんだろうね」
何らかの魔力が影響しているのかもしれないが、帝竜戦役の最中である今現在、それをノンビリと調べている時間も無い。
「このまま飛んでいけそうだけど……あの湯気を吸わずに行くのは流石に無理か」
大温泉の水面には膨大な湯気が立ち昇っており、対岸を見通すことを不可能にしているほどである。
フェアリーであることの利点を生かしたかったところだが、あの湯気を吸えばじきに温泉の成分は身体に沁み込んでくるはずだ。
「まあ、覚悟を決めるしかないか」
意を決して温泉地帯へと飛び込むクシナ。
「……?」
思っていたよりも心に影響は見られない。
むしろ思ったのは、硫黄臭くないんだな、とかそういうどうでもいい感想である。
「湯気だから影響が出るのに時間が掛かるのかもしれないな」
それならば、効能が出る前に急いでこの温泉地帯を抜けてしまうのが得策と言うものだろう。
そう考えたクシナは迅速に対岸を目指し、羽根を動かし始めるのだった。
●
視界が悪い。まるで濃霧の中にいるようだとクシナは思う。
かなり進んだ気がするが、未だに対岸は見えてこない。後ろを振り返ると出発した時の海岸線はすっかり湯気の中に消えてしまっていた。
サウナの中にいるかのような暑さに、自然と頬に汗が伝ってゆく。
「集中力が乱れかけているな……こんな時こそ気を付けないと」
過去の経験から自らの気を引き締め直すクシナ。
視界が頼りにならないなら、音を頼っていけばいい。
そう思った瞬間――。
遠くから水を掻き分ける音が響いてくるのを捉え、クシナは身構える。
「魔獣か……多いな」
こちらを取り囲む腹積もりらしい。四方八方から近付いてくるその音にクシナは内心で舌を打つ。
だが、敵が包囲を狙っているのなら、一点を打ち破り『穴』を作ればいい話だ。
そう思い直し、クシナは懐に忍ばせる妖精用投げナイフを取り出すのだが――。
「……そういえば、この投げナイフの在庫発注してたっけ?」
そんな疑念が頭を過る。
そして、一瞬でも意識すると、それはもう止まらない。
「うわ、あれ無いと地味に困るんだよなぁ……。
今回地元の戦争なうえに、領主狙いだから仕事多いし……。
鍛冶屋にあの数を頼むと納期長いんだよなぁ……」
確かに、納期って急がせると仕事が雑になったりするし、下手したら追加料金の発生や、店側との信頼関係が崩れたりするよね!
こまめな在庫管理と余裕を持ったリピート発注……みんなも忘れないようにね!
とまぁ、それはともかくとして――。今はピンチのクシナさんである。
「かといって、今から追加発注しても戦争終了後に過剰在庫が出るだけだし……」
あまり在庫を寝かせておくと、刃が錆びてしまうかもしれない。
大量に抱えた在庫ナイフ。錆びたナイフを研ぎ直している間に、また次のナイフが錆びてゆき……。
永遠に逃れられない無限ループの発生にクシナは一瞬崩れ落ちそうになる。
「いや、考えるのはよそう」
冷静になれと己に言い聞かせるクシナ。
仕事にトラブルはつきものだ。
ターゲットが毎回、こちらの目論見通りに動いてくれるわけではない。
重要なのは、あらゆる可能性を想定し、冷静に対処してゆくことだ。
ナイフを失ったときの想定もしっかりとしていたはずだろ?
「投げナイフとスリングショットの在庫が心配なら、今回はそれ無しで戦えばいい」
方針が決まったならあとは実行するだけだ。
ユーベルコード【魔法罠即席設計】を発動すると、クシナの目の前に狙撃タレット(自律砲台)が召喚されてゆく。
湯気の先に潜む敵を音で聞き分け、逆にこちらからの暗殺を仕掛けてゆく。
タタタタッと小気味よい連続音が響き渡り、まだ見ぬ敵を撃ち抜くクシナ。
敵は想定外のクシナの反撃に足並みを崩し、そのまま壊走してゆく。
「終わってみると大したこと無い心配事だったね。
……でも、発注忘れはシャレにならないから帰ったら一応確認しとこ」
魔獣の足音が遠ざかってゆくことを確認して、安堵の吐息をつくクシナだった。
大成功
🔵🔵🔵
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
「そんなに甘くなさそうよ」
弟と一緒に冷静と情熱の珊瑚礁へ
■作戦
心配事をする弟の姿を見て感情を抑え込む
■行動
水着のまま温泉に浸かってみる。
(やはり心配なことは…フォルセティのこと)
彼女がいるのでは
私のこと煩わしく思っているのかも
もしかして巨乳好き!
湧き上がる心配事。ドンドン膨れ上がるが…
ふとフォルセティの顔が目に入る
(ふふ、きっと私も今のフォルセティのような顔をしているのね)
弟の顔を見て自分を取り戻す。
「私がしっかりしないとダメよね」
心配な気持ちを抱きながらも冷静に務める
ドロゥプスを見据えて[全力魔法]からの【バベルの光】を撃ち落とす。
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】 (連携・アドリブ可)
「温泉旅行気分になっちゃうかも」
フィオ姉ちゃんと一緒にドロゥプス退治だー
【行動】()内は技能
さっそく水着に着替えて温泉に浸かるね
「あれ、お財布もってきたっけ」
なんだか急に心配になったよ
ルナ(バディペット)を置き去りにしてないかな
お揃いのペンダント、着替えと一緒に盗まれたりしないかな
「どうしよ。心配だよー」
ふと見上げるとフィオ姉ちゃんと目があっちゃった。
ちょっと照れ臭くて、えへへってなっちゃうよ
でも、フィオ姉ちゃんが傍にいると安心するよ。
(環境耐性)でなんとか感情を抑えつつ、ボクだって頑張るんだ。
カラミダド・メテオーロでやっつけちゃうよ!
●
薄桃色の珊瑚が立ち並ぶ白い砂浜。
まるでスパリゾートのようなその場所を、ゆっくりと進む二人の姉弟の姿がある。
「とっても綺麗な場所だね! フィオ姉ちゃん」
はしゃぐように前を行く弟のフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)。
「こら、走ると危ないわよ~」
姉のフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)がやれやれと吐息を一つ。
薄桃色の風景に溶け込むように、この珊瑚礁の森で生きる生物たちも薄桃色だ。
ピンクと白の縞々模様のヤドカリや、薄羽を広げて飛ぶタツノオトシゴのような生き物も見て取れる。
フォルセティは瞳を好奇心一杯にして、その生き物たちを追いかけている。
「うーん、楽しそうでなによりだけど……」
内心で小さな溜息をつくフィオリナ。
気合を入れて水着に着替えたものの、肝心のフォルセティは不思議な生き物たちに夢中であった。
「まぁ、そういうところが可愛くもあるのですけどねぇ……」
複雑な乙女心のフィオリナさんは、誰にも聞こえないように小さく呟く。
「フィオ姉ちゃん。これみてこれみて」
と、綺麗な貝殻や珊瑚のかけら、桃色シオマネキなど集めてくるフォルセティを見て、フィオリナは小さく微笑む。
せっかくだし、今は私もこの時間を楽しむとしよう。
さて、そんなこんなで進んでいるとやがて海岸線のような場所へと辿り着く。
とは言え、眼前に広がっているのは海ではない。
湯気を漂わせるその湖水は、この冷静と情熱の珊瑚礁が作り出した広大な大温泉なのである。
「なんて広さ……湯煙で対岸が見えないわね」
圧倒されるような景観に思わず息を飲むフィオリナ。
「温泉旅行気分になっちゃうかも」
さっそく水着に着替えてゆくフォルセティ。
「そんなに甘くなさそうよ。グリモア猟兵の話ではこの温泉に浸かると【心配事】が増幅されるそうだし」
油断は禁物であると、弟をたしなめるお姉さんであったが――。
「心配ないよっ! フィオ姉ちゃんにはボクが付いているからね!」
どーんと胸を張るフォルセティ。
いや、私が心配しているのはフォルセティのことだったんだけど……。
でもまぁ、こうして頼らせてくれると言うのは、少し嬉しくもある。
華奢で中性的な見た目のフォルセティであるが、こういうところで格好つけようとするのは年頃の男の子ということだろうか――。
ん? ちょっと待って、それはつまり……。
私は今、女の子扱いされているということなのでは――?
フィオリナの頬が薄桃色に染まってゆく。
おおおお、おち、落ち着つくのよ。フィオリナ・ソルレスティア。
結論を出すにはまだ早いわ――。
ここは慎重に、あらゆる可能性を考慮すべきで――。
「フィオ姉ちゃん、どうしたの? 早く行こ?」
そんなフィオリナの葛藤を知ってか知らずか、フォルセティが姉の顔を覗き込んでくる。
その顔が近すぎて、今のフィオリナには少々刺激が強い。
「そ、そうね! 急ぎましょう!」
そそくさー、と場を取り持ってしまうフィオリナさんなのであった。
●
さて、そんなラブコメ展開はともかくとして。
件の温泉である。
意を決してお湯に足を浸してみる二人。
「……?」
「なんともないね?」
とくに異変は見られず、思わず拍子抜けする二人。
「うーん、効能が出るのに時間がかかるのかな?」
「とは言え、進まないことにもね……」
あまりノンビリしていると帝竜が復活してしまうことになりかねない。
対岸を目指して進みだす二人。
水深は膝ぐらい。もし戦闘になっても影響は無さそうである。
「それにしてもすごい湯気だね。深い霧に迷い込んだみたいだよ」
対岸は未だに確認できない。ふと振り返ってみれば、二人が出発した海岸線は湯気の向こうに消えてしまっていた。
どのくらい歩けば辿り着くのだろうか、と一抹の不安が胸を過る。
「あれ、お財布もってきたっけ」
なんだか急に心配になってきてフォルセティが立ち止まる。
「ルナを置き去りにしてないかな?
お揃いのペンダント、温泉に落としちゃったりしないかな?」
一度心配事が噴き出すと、次々と色々なことが溢れ出してくる。
明らかに温泉の効能が見られてきたフォルセティであったが、それはフィオリナもまた同じであった。
「そ、そうね……なんだか私も、色々と心配になってきちゃったわ……」
どこか熱に浮かされた様な返事を返すフィオリナ。
先程のやり取りのせいだろうか。とにかく、先程からフォルセティの事を意識してしまって仕方がないのだ!
(やはり心配なことは……フォルセティのこと)
チラッとその横顔を盗み見る。
やっぱり可愛いな~。って、そうじゃなくて。
今重要なのは、そう――。
もしかして、フォルセティには彼女がいるのでは――?
という疑念である。
信じたくはないが、十分にあり得る話ではある。
胸がギュッと締め付けられるような苦しさがフィオリナを襲う。
今はこうして一緒に歩いてくれているものの、もしかしたらその内心では私のこと煩わしく思っているのかもしれない。
そんな悪い想い付きがグルグルと頭の中を巡って、ドンドン深みへと嵌ってゆく。
もしかして巨乳好き!
そうであれば時すでにジ・エンドである。
あとは全ての巨乳を駆逐して相対的巨乳を目指すしか、手は残っていないのでは――?
と、フィオリナが闇堕ちしかけたその時――。
ジャブジャブと湯気の先からゼリー状の魔物がこちらに向かって接近してくることに気が付く。
「こんなときに魔獣――!?」
すでに敵の縄張りに踏み入っていたらしく、四方八方を取り囲まれている!
「どうしよ。心配だよー」
フォルセティが潤んだ瞳でフィオリナを見つめていた。
不安に押し潰されようとしているその姿を見て、フィオリナは気が付く。
(ふふ、きっと私も今のフォルセティのような顔をしているのね)
弟の顔を見て自分を取り戻すフィオリナ。
「私がしっかりしないとダメよね」
心配な気持ちを抑え込んで冷静に務めるフィオリナ。
そして目が合ったことが照れ臭かったのか、フォルセティも、えへへっと小さく笑う。
「やっぱり、フィオ姉ちゃんが傍にいると安心するよ」
フォルセティもまた、自分を取り戻してゆく。
そう、先ほど姉に「ボクが付いている」と胸を張ったばかりではないか――。
「ボクだって頑張るんだ! くらえ! カラミダド・メテオーロ!」
詠唱と共に魔法陣が展開し、灼熱の巨大隕石が敵へと降り注ぐ。
「――ふふ」
弟の成長を感じて小さく微笑みながら、フィオリナも連携してバベルの光を撃ち降ろす。
見事な連携で敵を殲滅し、二人は互いに笑いあう。
そう。二人で居れば、どんな心配事も大丈夫なんだ、と――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
護堂・結城
…武器この程度で足りるかな…
集団戦だし、足りないかもって思うと心配で落ち着かねぇ
UC後
いや、十分あるわ、足りなくてもUCで用意できるし心配しなくていいじゃん
【POW】
戦闘開始と同時に【水上歩行】
氷牙を刀に変化させ【怪力・なぎ払い】で牽制
【歌唱・大声】に【生命力吸収】をのせて戦場に溢れた感情を喰らう【大食い・範囲攻撃】
自身の感情をメインに、敵は冷静にならない程度に加減して吸収だ
「――頭を垂れよ、死はお前の名を呼んでいる」
指定UCを発動、【焼却・属性攻撃】をのせた白き劫火の剣群を召喚
剣群を投げ込んでは炸裂させて【爆撃・衝撃波】で攻撃だ
「心配で武器はたくさん用意したからな、死ぬほど踊ってくれ」
●
薄桃色の珊瑚礁が立ち並ぶ砂浜を、草履で進む男の姿がある。
「いや~、流石に暑いな。サウナの中みてぇだ」
対外道を生業とする護堂・結城(雪見九尾・f00944)その人である。
呼気を吸い込めば咽返りそうなほどの熱気。なんでもこの珊瑚自体が水に触れると熱を発するそうだが……。
少ししゃがんで足元の白砂を握ってみると、これもまた僅かに暖かい。
もしかしたらこの砂も珊瑚が風化して形成されたものなのかもしれない。
長い年月を作って出来た、恐るべき大自然の景観だ。
しばらく進むと、やがて海岸線のような場所へと辿り着く。
波が無いところを見るに、海ではなく湖なのだろう。
膨大な湯気が昇り立ち、対岸が見えないほどの大温泉である。
「お~、こりゃまたスゲェ温泉だぜ」
外道狩りが本分の結城がこの依頼を受けたのも、実のところこの温泉が気になったからに他ならない。
温泉好きとしては一度浸かってみたかったのだ。たとえ効能が怪しすぎたとしても――。
「たしか『心配事』が増幅されるって話だったか……」
グリモア猟兵の言葉を思い出しながら結城。
こんな見事な大温泉で心配事なんてのも無粋な話だが――。
「こうしてやってきた以上は浸かってみねぇことにはな!」
警戒するというよりは、ワクワクした様子で一気に足をお湯につけてゆく結城。
「お、こいつは――」
まるで沁み込むような温かさ。計ったかのような心地よい湯加減が日々戦いに明け暮れる結城の身体をほぐしてゆく。
「あ~……いい湯じゃねぇか……」
来てよかった~って、心配事はどうしたよ?
「むむ、何てことはねぇ、普通のお湯みてぇだが……」
もしかしたら効能が出るまでは時間が掛かるのかもしれない。
「まぁ、ノンビリ効能を検証してぇところだが……そうも言ってられねぇのが辛いところだな」
今は帝竜戦役のただ中にある。戦争が終わったらもう一度ゆっくりと浸かりに来るとしよう、と結城は立ち上がる。
「さて、対岸目指して進むとするか」
準備を整え、大温泉地帯の深くへと結城は踏み込んでゆく。
●
水の深さは膝下ぐらいだろうか。ちと足が取られるものの戦いに影響が出るほどでは無さそうだ。
それよりも厄介なのは辺りを覆い尽くす大量の湯気である。これのせいで対岸は見えず、一体どのぐらい進めばよいのかが判らない。
「そういや、魔獣も出るって話だったよな」
と、噂をすればというところだろうか。
周囲からジャブジャブとお湯を掻き分けながらこちらに近づいてくる音を結城は感じ取る。
「来やがったか……まぁいい、刀の錆びにしてやるぜ――と」
ふと、普段なら気にも留めない疑念が結城の頭を過る。
「……そういや、武器この程度で足りるかな……。
集団戦だし、足りないかもって思うと心配で落ち着かねぇ」
湯気の先にいる敵の数は解らない。もし、これが万を超えるような大軍勢だったら――。
なんてこった、ちゃんと予備を用意しておくべきだった。
いや、でも刀って大体が一点ものだしなぁ……。
そんな感じで戸惑っていると、すっかりゼリー状の魔獣に取り囲まれてしまっていた。
「――チッ」
自身の油断に舌を打ちながら、刀を抜き放つ結城。
戦いの中で迷いは禁物だ。
そう思い出して結城は精神を集中させてゆく。
「ああ、そうだ。いつも通りやるだけだぜ」
戦闘と同時に【水上歩行】を発動させる結城。
敵陣を破るように突進し、氷牙を刀へと変化させて薙ぎ払う。
温泉との温度差で、剣線に残った細やかな氷が水へと変わり、綺羅と輝く。
両断されたゼリーが温泉の中へと沈んで水飛沫をあげた。
「弱ぇ……普通に弱ぇ……」
一刀を以て次々と敵を屠ってゆく結城。敵は見た目通りクソ雑魚であった。
「なんであんなに武器の心配してたんだかな……」
苦笑するしかない結城。
「いや、十分足りるわ。もし足りなくてもUCで用意できるし心配しなくていいじゃん」
白き劫火の剣群を召喚し、そのまま敵陣へと叩き込む。
「心配で武器はたくさん用意してあるが……まぁお前らには一本で十分かもな。
まぁ死ぬほど踊ってくれ」
犬歯を剥きながら笑い、次々と魔獣を屠ってゆく結城だった。
大成功
🔵🔵🔵
城島・侑士
アドリブ・共闘◎
家には妻がいるし鍵やガスの心配も無用だ
しかしこの敵、色が娘の髪色に似ていてなんだか戦い辛いな
…そういえば娘は今日
友達と出かけると言っていた
…本当に?
実は友達じゃなくて男なんじゃないのか?
いやいや、そんなまさか
でも最近は俺にだけやたらと素っ気ない…気がする
俺が今こうして戦ってる間にどこの馬の骨ともしれん男とイチャイチャしてたらどうしよう
お父さんはそんなの許しません!!
ショットガンを握りしめ目の前のドロゥプスを睨みつける
こいつらをさっさと倒して家に戻らねば!
先ずは気持ちを落ち着け深呼吸
咎力封じで動きを封じたら乱れ撃ちで追撃する
彼氏なんてまだまだ早い!!
あ、サウナ珊瑚は有り難く貰おう
●
異世界の扉を潜ると、そこは温泉地だった――。
次の小説のネタに使えないだろうかと考えながら、薄桃色の珊瑚礁の森を進む城島・侑士(怪談文士・f18993)の姿がある。
「心配事を増幅する温泉か……まさに小説よりも奇なりってやつだな」
グリモア猟兵の言葉を思い出しながら侑士。
だがしかし、彼の表情は自信に満ち溢れたそれであった。
「家には妻がいるし、鍵やガスの心配も無用だ」
まさに万全である自信があった。
心配事など、しいて言うなら次の小説の締め切りぐらいだろうが……まぁ、それはあとで考えるとしよう。
「そう、こうして気晴らしに各地を巡ればこそ、良いネタが閃くというものだ――」
風光明媚な景色を楽しみながら、砂浜を進んでゆく。
「あ、サウナ珊瑚は有り難く貰おう」
手頃な珊瑚を手折りながら侑士。
やがて視界の先に海岸線のような場所が見えてくる。
波が少ないところを見るに、海ではなく巨大湖のようだ。
「ほう、これはまた――」
圧倒的な大景観に思わず息を飲む侑士。
水面には大量の湯気が立ち昇り、対岸が見通せぬほどである。
「ここが件の温泉か。避けて進むことは出来なさそうだな」
仕方がない、と靴を脱ぎ、ゆっくりと足を浸してみる侑士。
「……いいお湯だ」
思わず素直な感想が漏れる。
懸案事項であった効能も今のところは見られない。
「なんてことはない、普通の温泉のように思えるな――。
効能が出るのに時間が掛かるのだろうか?」
チャプチャプとお湯を弄んでみるが、あまりここでノンビリとしているわけにも行かないことを思い出す。
世はまさに帝竜戦役の真っただ中にあるのだ。
「大丈夫。今の私に心配事などないさ――」
美しく優しい妻。そして可愛い子供達。
満ち足りた今現在に頷いて、侑士は大温泉の奥へと足を踏み入れてゆく。
●
進みだして30分ほど経過したころだろうか。
湯気の先からゼリー状の魔物が現れて侑士は身構える。
数は多いものの、そう恐れるような相手ではないはず、と敵の力量を推測する侑士。
ピョンピョン、ジャブジャブとお湯の上を跳ね回るオレンジ色のスライム達。
試しに一発ショットガンをお見舞いすると、ポウゥンと小気味よい音を立てて呆気なく一匹撃破することが出来た。よ、弱い……。
「しかしこの敵、色が娘の髪色に似ていてなんだか戦い辛いな」
そう苦笑しながら侑士は愛する娘の笑顔を思い浮かべる。
まさに目に入れても痛くない、自慢の娘である。
「……そういえば娘は今日――。
友達と出かけると言っていたな」
ふとしたことが頭を過る。
年頃の可愛い娘――。親バカだと言われるかもしれないが、あの娘ならきっとモテるに違いない。
そう、飢えた野獣共があんな可愛い娘を放っておくはずが無かった。
「友達と出かける? ……本当に?」
恐ろしい推察が頭に浮かんだ。
実は友達じゃなくて男なんじゃないのか?
いやいや、そんなまさか。
ハハッ、そんなことあり得るはずが――。
でも最近は俺にだけやたらと素っ気ない……気がする。
疑念はやがて形を成してゆく。
可愛い娘に近づくチャラ男の姿が脳内に勝手に浮かび上がってくる――!
「ゼーハーッ! ゼーハーッ!」
過呼吸に陥る侑士。
俺が今こうして戦ってる間に、どこの馬の骨ともしれん男とイチャイチャしてたらどうしよう!
ヘーイ、そよっちぃ。カラオケいこーぜ! チョリーッス!
「あ、ああ……あ……」
ガクガクと震えながら侑士。もう完全に温泉の効能がキマッていた。
「お父さんはそんなの許しません!!」
叫んでショットガンを握りしめる侑士。
目の前のドロゥプスを、鬼神の如き表情で睨みつける。
「こいつらをさっさと倒して家に戻らねば!」
そうだ、おおお、おち落ち着け――。
こんな時こそ落ち着いて冷静にことを運ばなくては……!
そうっすよ! 落ち着いてくださいって! お義父さん!
心の中のチャラ男が侑士の耳元でそう囁き、血管がブチ切れる。
「彼氏なんてまだまだ早い!! 俺は貴様のお義父さんではないッッ!!」
ショットガンをぶっ放しながら物凄い勢いで敵陣を破ってゆく侑士。
子を想う親の気持ちと言うのは何よりも強く、有難いものであるのだが――。
それが子供に伝わるのって、その子がしっかりと親離れしたあとだったりしますよね~。
大成功
🔵🔵🔵
小宮・あき
こんにちは、可愛いドロゥプス。
ふふ、茹ってなぁい?(くすくす)
私に心配事なんて……、はっ、今月の源泉徴収税って納めましたっけ!?
UDCアースで、ホテルなど複数の法人の代表をしております。
小さな法人は、殆ど個人との業務委託契約で回していて。
源泉はうちが納めなきゃいけないんですよね~、翌月10日までに!
業種的に特例に含まれないから毎月毎月支払いしなきゃいけないけど…、あれ、預金口座振替依頼書送付したのが先月だったので、今月の支払いってぺいじーだったような……!?
ま、支払いできてなければ税務署から電話来ますし、いっか。
今はドロゥプスを眺めて和みましょう。
遠くから様子を見て、サクッと(暗殺+UC)
●
白い砂浜に、薄桃色の珊瑚礁が立ち並ぶ華やかな景観の中。
弾むような足取りで歩く小宮・あき(人間の聖者・f03848)の姿がある。
「うーん、いい場所ね!」
ノビノビと両手を広げ太陽の恵みを受けるあき。
青空を見上げれば薄羽を広げたタツノオトシゴのような生物がプカプカと頭上を横切ってゆく。
砂浜へと視線を下ろせば、白と薄桃色の縞々模様をしたカニが両手を広げて、まるであきのポーズを真似ているかのようである。
「まさにリゾート向きの場所だわ。ドロゥプスも居るらしいし文句なしね!」
UDCアースで、ホテルなど複数の法人の代表をしているあき。
これを機会に、次のリゾート施設を異世界で出店してみるのも面白いかもしれないと、やってきた次第である。
「でも、そういえば――」
指先を顎にやって考え込む仕草を見せるあき。
確か、グリモア猟兵の話ではこの先にある温泉は『心配事』を増幅させる効能があるのだとか。
「心配事温泉か~……どんなものか一度見ておかないとですね」
果たしてこの地が新しいスパリゾートになり得るかを見極めるために、あきは砂浜を進んでゆく。
やがて辿り着いたのは海岸線のような場所である。
「お~、三保の松原」
立ち並んでいるのは松じゃなくて珊瑚であるが、なんかちょっと雰囲気が似ていなくもない。
風光明媚を絵に描いた様な光景に、あきは思わず息を飲む。
眼前に広がるのは大温泉のパノラマ。対岸を見通せぬほどの湯気が立ち昇り、周囲はまるでサウナのような暑さである。
「さて、効能を調べないとですね」
靴を脱いで、恐る恐るお湯に足を浸してみるあき。
ゆっくりと身体に沁み込むような、ほどよい湯加減が足先に伝わってくる。
「なんだか、普通の温泉のように思えるけど……」
素足でしばらくパシャパシャしてみるものの、とくに影響は見られない。
効能が出るのにしばらく時間が掛かるのだろうか?
「まいっか、あまりノンビリもしてられないしね」
世はまさに帝竜戦役のただ中。リゾート候補の下見を兼ねているとはいえ、あまりノンビリしすぎると世界自体が無くなりかねない。
よし、と気合を入れ直し、あきは温泉の奥地へと進んでゆく。
●
ジャブジャブとお湯を掻き分けて進んでゆく。
水深は膝ぐらいだろうか。温泉としてはこれまた丁度いい深さでポイントが高い。
やがて、湯気の向こうに揺らめく姿が見える。まんまるプルプルのそのフォルムは、あきのとって馴染み深いものである。
「あ、来た来た」
パァと顔を輝かせるあき。
現れたのはゼリー状の生き物。オレンジ色したドロゥプスである。
「こんにちは、可愛いドロゥプス。
ふふ、茹ってなぁい?」
くすくすと笑いかけるあきに、ドロゥプスはプルプルと身体を振るわせて応える。
威嚇なのかもしれないが、とにかく迫力に欠けている。
余り知れ渡っていないが、実のところこのドロゥプスの攻撃方法はほぼ無害。
上手くプロデュース出来れば新リゾートのマスコットとして推せるかもしれない。
「ふふ、これは行けるかも」
いよいよもってホテル・ペンドラゴンの異世界支店が現実味を帯びてきた、まさにその時であった――!
ん、そういえば……。
と、あきの頭を過る一つの心配事。
「はっ、今月の源泉徴収税って納めましたっけ!?」
あれ? あれれ? と軽いパニックを起こすあき。
小さな法人は、殆ど個人との業務委託契約で回していて、源泉はうちが納めなきゃいけなかったはず。
「えーと、確か……翌月10日までに!
み、未納の場合ってどうなるんだっけ?」
なんだか気が焦ってくるあき。完全に温泉の効能がキマッていた。
更に追撃としてドロゥプス達が怒涛の勢いでダンスを踊ったり、可愛くウインクしてきたりしてあきの思考を揺さぶってくる。
「ちょ、今は――。ストップ! ストーップ!」
お、落ち着くのよ……小宮・あき。
ホテルのオーナーを引き継いだ時にその辺りの事はちゃんと勉強したはず――!
「業種的に特例に含まれないから毎月毎月支払いしなきゃいけないけど……。
あれ、預金口座振替依頼書送付したのが先月だったので、今月の支払いって何を使ったっけ……!?」
必死に記憶力をフル回転させてゆくが、焦っていてどうにも上手くいかない。
頭に浮かんでくるのは最悪のシナリオである。
え、まさか脱税……? 差し押さえ!? そ、そんな、まさか!?
ひいい、と悲鳴をあげそうになったあきだったが、その時、あきの携帯電話に着信があった。
こんな時に、と思いながらも画面を確認してみれば、それは税務署からの留守電であった。
あ~、小宮・あきさん? 今月の源泉徴収まだなので早めにお願いしますね~。
あ、はい――。スミマセン――。
よくよく考えたら催促の電話はあれど、いきなり差し押さえだなんてあろうはずも無かった。
そのことを思い出し、は~、と安堵の息をつくあき。
なんだかドッと疲れた気分だった。
「今はドロゥプスを眺めて和みましょうか」
疲れた心を癒すため、ドロゥプスを眺めるあき。
そうそう、このスマイルが可愛いのよね……。
なんか、こう、眠く……なるような……笑顔で……。ホント癒され……。
って! 寝てたら今度こそ未納になるじゃない!
危うく寝落ちしかけたあきはヨダレを拭い去り、泣く泣くドロゥプスを倒してゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
(念の為。男の子です)
心配事……帝竜ヴァルギリオスに、私達は余裕をもって、迫れています
その筈、ですが
何か、あるかもしれない。アルダワ魔王戦争での、宝石災魔のような
確認できていない、倒さなければいけない敵が、いるかもしれない
心配、不安、心配……だから
速く、もっと速く。確認しないと、いけません
その為に
はやく倒して、先に進まなければ、いけない!
心配、不安、焦りから、しなければいけないことを明確に、心に決める
【覚悟】決めて、けれど不注意はしないよう、確り集団敵を、見据えて
心配の感情、抑え込み
私の、最速で……殲滅します!
『瞬断撃』電磁加速砲から放たれる弾丸のような速度で駆け抜け、殲滅!
●
珊瑚礁の立ち並ぶ白い砂浜を、駆け抜けながら進む少年の姿がある。
「急がないと――」
帝竜ヴァルギリオスの出現。そして、奴が口にした『界渡るもの』という言葉――。
この災厄は恐らく、アックス&ウィザーズの世界のみに留まらない――。
そんな確信がナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)にはあった。
「壊させません……絶対に――」
これまで様々な世界を巡ってきたナイ。
それはまるで地獄のような流転の日々ではあったが――。
その旅の中で、忘れられない大切な出会いがあったこともまた確かである。
何も無かった自分に『ナイ』という名前をくれた、あの少女に報いるためにも――。
世界を失わせるためにはいかなかった。
珊瑚の森を縫いながら走り抜けると、やがて視界が開ける。
目の前に広がるのは海岸線のような場所。
いや、水面に波があまり立っていないところを見るに、どうやら巨大湖らしい。
もうもうと立ち昇る湯気のせいで、対岸を確認することは出来ない。
呆れるほど大きな温泉地帯である。
「ここが『心配事』を増幅させるという温泉ですね」
眉根をひそめながらも、ナイは迷う時間が惜しいと水面に足を踏み入れてゆく。
自分自身が抱く心配事は、すでに自覚している。
「心配事……。帝竜ヴァルギリオスに、私達は余裕をもって、迫れています。
その筈、ですが――」
脚に纏わりついてくるお湯を煩わしく感じながらも、ナイは進む。
「何か、あるかもしれない。
アルダワ魔王戦争での、宝石災魔のような
確認できていない、倒さなければいけない敵が、いるかもしれない――」
心配、不安、心配……。
心の中に渦巻く感情が、よりハッキリと感じられてくる。
喉をギュッと掴まれるかのような、息苦しさと焦燥感。
「……だから。
速く、もっと速く。確認しないと、いけません」
迷いを振り払うように、前を見るナイ。
その視界の先に、揺らめく複数の影があった。
「……魔獣、ですか」
淡い光を纏いながらナイは構える。
きっと、温泉の効能が身体を蝕んでいるのだろう。
心配、不安、焦りがどんどんと募ってゆき、足を重くしてゆく。
だが――。
ナイはしなければいけないことを明確に、心に決める。
「【覚悟】を決めて、けれど不注意はしないよう――」
壁のように迫ってくる敵軍の一点に集中するナイ。
見据えて、心配の感情、抑え込み――。
「私の、最速で……殲滅します!」
眩いばかりの閃光が奔る。
ナイのユーベルコード【瞬断撃(シュンダンゲキ)】が解放される。
まるで電磁加速砲から放たれる弾丸のような速度で駆け抜け、敵陣を一気に撃ち抜くナイ。
「すみませんが、あなた達の相手にしている時間は、ないのです――」
閃光の軌跡を残しながら、ナイはそのまま敵を置き去りにしてゆく。
その速度についてこれる敵は、もちろん一匹としていなかった。
大成功
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