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帝竜戦役⑮~鍛錬は、裏切らない!?

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸

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 荒涼とした大地に、乾いた風が吹く。
 この地の名は、『岩石回廊』。重力異常の発生した、狭く入り組んだ峡谷である。

 ──フゴッ、フゴッ……。

 そんな地に、何やら荒い鼻息が響く。
 大きさは人間種の成人男性程だろうか? 逞しい四足で地をしっかりと踏みしめ、固い毛皮と針のような体毛が特徴的。
 中々に立派なイノシシが、群れを成してそこにいた。

 ──フゴッ!
 ──フゴゴ!

 だがその群れは、とあるイノシシの嘶きを聞き即座に分散。
 次の瞬間ん、彼らが今まで居た地を……巨大な岩塊が、転がり抜ける。
 ……間一髪。イノシシ達は回避する。もし轢かれてしまったら、確実にペシャンコだ。

 ──フゴォ……。

 安堵の息を吐くかの様な、その仕草。
 その仕草に、揺れる体毛に引っ掛かった植物らしき物も同時に揺れた。

 もう一度、言おう。
 この地の名は、『岩石回廊』。重力異常の発生した、狭く入り組んだ峡谷である。
 そしてこの地こそ、これから猟兵達が挑む地なのであった。



「お集まり頂きまして、ありがとうございます」

 グリモアベースに集まる猟兵達を、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)の銀の髪が迎え入れる。
 ここ最近張り詰めていたその表情はやや和らぎ、優しげな笑み。順調な群竜大陸の踏破行の状況に、肩の力が少し抜けたのだろうか。
 ……今回の依頼は、そんなヴィクトリアの心境とリンクしたような和やかな物である。

「今回皆さんに赴いて頂く地は、こちら……」

 いつもの群竜大陸の地図を広げ、ヴィクトリアの指が指し示したのは……大陸の東側。
 荒涼とした峡谷の地、『岩石回廊』と呼ばれる地であった。
 ……だが、この地。ただの峡谷地帯という訳では無いらしい。

「実はこの『岩石回廊』。なんでも強力な重力異常が発生している地であるそうで」

 重力。それは物体が他の物体を引き寄せる力の事。ヒトが地に立てるのもこの力のお陰であり、その力が働かぬ空間ではヒトの身体は宙を漂う。
 ざっくりな説明であるが、重力とはそんな力である。その力が、異常を来しているとはどの様な……?

「えぇ、と。物凄くざっくりとした説明になりますが。普段の数十倍の力で地に引き寄せられ、歩く事も儘ならぬ程であるのだとか……」

 数十倍の重力。つまり、一歩脚を動かすだけで普段歩く数十倍の力が必要という事である。
 成程、歩いて抜けるには中々に難儀な地であるらしい。では空を飛べば良いかと言うと、そうでも無い。
 どれだけ飛ぶ力が強かろうと、便利な道具を使おうと。この地に踏み入れたその瞬間。空を飛ぶ事が出来ぬ程強い力に捉われるのだとか。
 ……ユーベルコードを使おうとも、その力に抗う事は出来ないらしい。大人しく地を行けという何者かの強い意志を感じざるを得ない。

「……しかもそんな状況で、度々巨大な岩石が転がるような事もあるそうでして」

 飛ぶことも出来ず、歩くことも厳しい。そんな中で、巨岩を避けろと?
 ……いや、流石にコレは無茶ではないか? そんな声が、猟兵達から出るのは当然の事。

「えぇ、その言葉は最もです。ですが……」

 ──そんな地を軽々と攻略出来る力を身に着ければ、帝竜攻略の力になるとは思いませんか?
 微笑むヴィクトリアのその言葉に、猟兵達が考えを巡らす。
 ……これからの大陸の探索。そして帝竜との闘い。その旅路は、ありとあらゆる困難が待ち受ける厳しい物だろう。
 そんな障害を乗り越える為に必要なのは、知恵と勇気……そして何より、鍛え上げた身体能力であるのだ。
 ……受けて立ってやろうじゃないか。猟兵達の、腹が決まる。

「……とは言え、いきなり現地で活動というのは幾ら何でも厳しいでしょうから」

 皆さんには重力異常に耐えるトレーニングを積んで頂いてから、現地に赴いて頂きます。と、ヴィクトリアは語る。
 実行するトレーニングは、何だって構わない。必要な物も、ヴィクトリアが取り揃えてくれるそうだ。
 違う世界でトレーニングを積みたい? それも良いだろう。ヴィクトリアが転移を駆使して送り迎えを頑張ってくれるだろう。
 無論、いきなり現地に飛び込んで環境に順応してみるのも良いだろう。最も慣れるまで身体が耐えられるかの保証は出来かねるが。

「トレーニングを終えた方から、そのまま峡谷に挑戦して頂きます」

 身体を蝕む数十倍の超重力。いつ転がってくるか分からぬ巨大岩石。そして現地に適応したらしい、縄張りに踏み入れた者を追いかけ回すイノシシの群れ。
 襲い来る様々な妨害を見事に突破して、トレーニングの成果を示す事。それが今回の依頼の成功条件だ。
 ……ちなみに、この地のどこかには「へしつぶの種籾」と頑丈な種籾が存在するらしい。
 生育に尋常では無い時間が掛かるが、育てた米は一粒で成人男性が10日は過ごせる栄養価を持つのだとか。
 持ち込む所に持ち込めば一粒で金貨88枚(88万円)で取引される希少な品であるそうだ。
 探してみるのも、良いかもしれない。

「これからの戦いは、厳しさを増すのは明白。激しい戦いに立ち向かう地力を養う為にも……」

 皆さんの奮闘を、期待しています。
 いつもの丁寧な礼をして、ヴィクトリアは転送の準備を進めるのだった。


月城祐一
 帝竜戦争は、ほぼ折返しでしょうか。
 どうも、月城祐一です。パワーアップイベント! 男の子の味だな!(浪漫感)

 今回も帝竜戦争関連シナリオ。月城からの六本目の挑戦状です。
 以下、補足となります。

 このシナリオは、『⑮岩石回廊』の攻略シナリオとなります。
 OPで触れられています通り、この地は通常の数十倍の重力に襲われる重力異常地帯。
 猟兵であっても何の備えも無く望めば歩行することも難しく、空を飛ぶことは『どんな手段であっても絶対に出来ません』。
 ユーベルコードとか、道具の補助とかも無理です。そーいうモンだと諦めて下さい。

 その為、『重力異常に耐えられるようなトレーニングを実行してから、回廊に挑戦する』事になります。
 トレーニングの手段は、OPで語られている通り各々の自由。
 有効そうなトレーニングを実行した方には、プレイングボーナスが加算されますので、色々考えてみると良いでしょう。
(なお、このトレーニングでデータ的な強化とかが有る訳ではありませんのでご了承下さい)

 トレーニングを終えれば、回廊探索のスタートです。
 超重力。唐突に転がってくる巨大岩塊。そしてこの重力に適応した巨大イノシシ。
 そんな障害を上手く躱して、回廊を上手く散策する事が目的となります。
 フラグメントの内容に囚われず、気の向くままに挑戦下さい。

 要約しますと、今回のプレイングに必要な内容は、
 ・対重力異常トレーニングに関わる内容(有効な物にはボーナス)
 ・実際の回廊チャレンジに関わる内容(描写的にはこちらがメインです)
 この2点が必要となります。
 プレイングの字数が厳しくなるかと思いますが、ご了承下さいませ。

 また、『岩石回廊』のどこかには『へしつぶの種籾』と呼ばれる物があるそうです。
 その特徴はOPの通り。気になった方は探して見ては如何でしょうか。
 ……一体どこにあるんでしょうね?(すっとぼけ)

 激しさを増す戦いに備え、鍛錬を積む猟兵達。その成果は、果たして。
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 冒険 『いのししパニック!』

POW   :    弱肉強食! 実力を見せつけ、力尽くで追い払う。

SPD   :    電光石火! 素早く正確に急所を狙い、ノックアウトする。

WIZ   :    果報は寝て待て!? 罠を仕掛けて持久戦。

👑3
🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ノイシュ・ユコスティア
修行しないと歩けない!?
ああ…不安だなぁ~。

●トレーニング
重いもの(全身鎧、岩など?)を身に着けて長距離走、ダッシュしたり近接攻撃をする練習。
慣れるために限界まで繰り返す。
「…死ぬかと思った。」

休憩してから意を決して挑む。

●散策
長時間いると体力が持たない気がする。
なるべく短時間で通り抜けるように、60%くらいの力で走って進む。
感覚を研ぎ澄ませ、何かが近づいてきたら避けられるようにしておく。
イノシシはユーベルコードで強化したダガーで斬るか退ける。
一度止まったら重力に負けそうだから、できるだけ止まらない。

へしつぶの種籾は、たまたま目に入ったら入手するくらいで、自分から取りに行かない。

ソロ希望。





「ハッ、ハッ、ハッ……」

 乾いた風吹き荒ぶ、重力異常地帯。群竜大陸の東部、『岩石回廊』。
 その地にノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)の規則正しい駆足の音と呼気が響く。

(修行しないと歩けないなんて、不安だったけど……)

 体の感覚を研ぎ澄ませながら思うのは、この地に足を踏み入れるまでの事。
 通常の数十倍と言われるこの地を進むために積み上げた、修業の日々だ。

 ──鉄塊の如き全身鎧を纏っての長距離走。
 ──巨大な荷物や岩塊を背負い、抱えての短距離走。
 ──そしてそれらの装備のままの、近接戦闘訓練。

「……死ぬかと思った、っと」

 思わず口から溢れる溜息混じりのその言葉と共に、身体は軽やかに動く。直後、ノイシュが居た場所を巨岩が転がっていく。
 ……そう。ノイシュの積み上げた修行は、人体の限界を軽やかに突破するような物。言葉通りに死を覚悟させるような物であった。
 だがその修業の甲斐もあって、今の様に軽やかに転がる巨岩を回避も出来たのだ。成果は十分、と言えるだろう。

(……でも、長時間いると体力が持たない気がするな)

 しかしそんな修行を超えたノイシュであっても、この地の環境は中々に酷だった。
 なるべく短時間で、かつ体力を温存しつつの探索であるのだが……重力はノイシュの身体を蝕み、疲労を加速度的に蓄積させていく。
 もしこの疲労に心身が負け足を止めてしまったなら、もう二度と動けないだろう。
 ……『まだ行けるは、もう危ない』。そんな言葉がノイシュの頭を過ぎる。

(限界が来る前に戻った方がいいか……ん?)

 その言葉に従い踵を返そうとした、その時。ノイシュの感覚が、何かを捉えた。
 足の裏から伝わる振動。この感覚は、四足の動物か。聴こえる鼻息、漂う獣臭……いる場所は、そこの岩陰か!

 ──ブモッ!!

 飛び出してきたのは、大柄な成人男性程の体長を持つ立派なイノシシ。口元に生えた牙を見れば、オスであることが分かるだろう。
 ……イノシシは、随分と気が立っているようである。どうやら先程の巨岩の振動で興奮状態に陥っているらしい。
 幸いな事に、後に続く個体はいない。どうやら群れからはぐれた個体であるらしいが、油断は禁物だ。
 何故ならイノシシのその突進力は、ヒトの身体など軽々と吹き飛ばせる程の力を秘めているのだから。

「──フッ!」

 だが、しかし。そんな相手に対してノイシュは、腰に佩いていたダガーを引き抜き躍り掛る。
 ……ノイシュは、現在では猟兵だ。だが元を正せば彼は猟師。こういった森の獣の相手は、お手の物である。
 それに今回は、こういった場合を想定に入れた訓練を積んで来たのだ。
 その勝敗の行方は、火を見るよりも明らかというものだ。

 ──ブモーッ!

 突っ込んでくるイノシシ。その突撃を空いた左手でいなしながら、振り上げた右の短刀を首へ向けて振り下ろす。
 ユーベルコードで強化された短刀は、針のような体毛と鋼のような皮膚の鎧を軽々と破り、肉を切り裂き骨を断つ。
 首の骨は、脳と身体を繋ぐ重要部位だ。そこを断たれれば、いかに立派なイノシシだろうとひとたまりも無い。
 突撃の勢いのままに一歩二歩と脚を進め、止まり……そのまま横倒しにズシンと倒れ伏し、動かなくなる。

「……ふーっ、上手く行ったかぁ」

 動かぬイノシシのその姿に、肩の力を解くノイシュ。
 そのまま無造作にイノシシに近づけば……その体毛に絡まる、小さな粒に気付くだろう。

「これは……何かの種、かな?」

 掌にとって見れば、感じる異常なまでの生気。まさかこれが、例の『へしつぶの種籾』なのだろうか?
 戻ったら確認してみよう。そう思いつつ、ノイシュは立ち上がり、この地を駆け抜けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

戦場外院・晶
「よございます。当代随一の呪術師、暗黒術士、そういった人材を派遣して下さいませ」
今回の件には相応しきサポーターでしょう
重圧や拘束の術を十重二十重にかけて頂き、耐え、歩き、駆ける修行
「かくあれかし……かくあれかし……」
祈りは心を平らかに
心は身体を十全に
さあ……そろそろ、慣れてきましたね?

「岩石回廊……実にいい」
素晴らしい修行地、私の握手も滾るというもの
……岩が転がってくる
「……ふむ」
真正面から、この両の掌で受け止める……握力だけには些かの自身がありますもので
「おや……牡丹が落ちていますね……これは重畳」

是非とも美味しい稲も手にいれて、今夜は牡丹鍋と致しましょう……きっと精がつくはずですとも





「岩石回廊……実にいい」

 ほう、と息を吐きながら。戦場外院・晶(強く握れば、彼女は笑う・f09489)の顔に、笑みが浮かぶ。
 常の数十倍もの負荷が身体を侵すこの地。その環境は、晶にとっては素晴らしい修行地である。両の腕も滾ろうと言うものだ。
 ……とは言え、流石の晶であっても直接この地に降り立てば身体が持たない。故に彼女も、事前の鍛錬を積んでこの地に臨んでいた。

(当代随一の呪術師、暗黒術士。彼らの術は、実に良い鍛錬でした)

 思い起こすのは、身体を十重二十重に蝕んだあの感触。重圧や拘束と言った身体の自由を奪う術に、耐え、歩き、駆ける修行であった。
 グリモア猟兵が手配した術者達の実力は、一線の冒険者に並ぶ物。猟兵には一歩劣るかもしれないが、それでもその筋では十分な実力者達だ。
 そんな実力者達の術である。常人であれば発狂してもおかしくはないはずである。

 ──かくあれかし。

 だが、晶はその力……抗い、打ち破るのではなく。受け入れて、順応してみせた
 『かくあれかし』と、晶は微笑む。その祈りは心を平らかにし、心は身体を十全に導いていく。
 晶は全ての術を受け入れて。この地に降り立ったのだ。
 ……今も身体の芯に残る修行の痕を思う晶。だがそんな物思いを打ち消すような、無粋な物音が晶を現実へ引き戻す。

「……ふむ」

 視線を向ければ、転がってくるのは一つの岩。人の身体の数十倍もある、巨大な大岩だ。
 成程、あれほどの巨岩に轢かれてしまえば、大抵の生き物は圧し潰されてしまうだろう。猟兵であっても、例外ではないはずだ。
 ……だが、しかし。晶はその場を、動かない。避けて危機を躱す素振りなど、欠片も見せず。迫る大岩に向けて、構えを取る。
 脚を肩幅へ。右の脚を一足分だけ後ろへ。
 両の掌を上げ、構える。纏う尼僧服の裾が風に靡く。
 表情は、変わらない。柔和な笑顔のまま、迫りくる大岩を待ち構え……。

 ──ガッ!!!

 響く、重い衝撃音。地が揺れ、空気が震え、峡谷地帯を突き抜ける。
 その衝撃の中心点で……晶は、笑っていた。その両の掌で巨岩を受け止め、支え……。

 ──バキッ。バキ……バキバキバキ!!

 その掌を、グッと握り締めれば。岩の全面に罅が走り、たちまちの内に砕け散り。無数の小石へと、その姿を変えて崩れ落ちる。
 立ち昇る土煙。その粉塵を押し流す様に乾いた風が吹けば……その場に立つのは、晶一人である。
 嫋やかに微笑む晶。その佇まいは、穏やかな尼僧以外の何者でもない。
 だが、しかし……。

「……握力だけには、些かの自身がありますもので」

 その言葉の通り、彼女の握力は凄まじい。晶の握撃は、ユーベルコードの域にまで昇華しているのだ。
 その力があれば、人を圧する様な巨岩を砕く事も決して不可能な事では無いのだ。

「……おや。牡丹が落ちていますね」

 そんな彼女の目に、偶然その場を通りかかった牡丹……イノシシの群れが映る。その内の一頭の体毛に絡まる乾いた稲穂の様なものも、見えるだろう。
 厳しい修行。そして重力異常により蓄積された、身体の疲労。それを癒やすには、美味な食事は欠かせない。

「……これは重畳。今夜は牡丹鍋と致しましょうか」

 掌の調子を確かめる様に握り締めれば、まだまだ握力に陰りは見えない。この調子ならイノシシの突撃を受ける事など造作も無いだろう。
 今夜の食事は、きっと精の付くものになるはずだ。その予感に、晶の笑みは一層深まるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルザ・メレディウス
ア〇 連携〇

◆訓練:ヴィクトリア様に10倍以上の重力の設定が可能な宇宙飛行士訓練用の施設がある場所へ転移して頂き、使用させて頂けるように【取引】。交換条件は「へしつぶの種籾」を

徐々に重力負荷を増やしていきながら、【環境耐性】を得られるまで訓練強度を増やしていきます
高重力下でも落石を十分回避できると判断したら現地へ

◆探索
【集団戦術】を使い、チームでの連携時は効率↑
影の追跡者の召喚で、イノシシを追跡して危険地点を確認
【地形の活用】を活かし、なるべく危険な地点を避けて安全なルートを進みます

★イノシシと遭遇時は【残像】などを活かし、相手をそちらへ【誘惑】。私は【忍び足】などを使用してなわばりの外へ


山梨・玄信
ちょっと待て。何十倍もの重力…数10tもの重さに、魔法とか無しで人の体が耐えられる訳なかろう!

【POWを使用】
とは言え、やらない訳にもいくまい。
例の宇宙服を着て、SSWにある重力が数十倍ある惑星に送ってもらうぞ。
同じ条件で鍛えなければ意味がないからな。
死ぬ程大変じゃろうが、鍛え抜き、普通に動けるようになったら、呼び戻してもらうぞ。

先ずは褌一丁になってUCを発動し更に身体能力を上げるのじゃ。
岩石は第六感で出現を察知し、転がる軌道は見切りで読み躱して行くぞ。

イノシシは気の放出(範囲攻撃)で群を纏めて吹き飛ばしてやるわ!超重力惑星での修行の成果じゃ!寄って来る奴は容赦せんぞ。

種籾を見つけたら拾うぞい


鬼柳・雄
重力異常に対抗するトレーニング?そりゃ耐性つけるしかねえだろ。

つーわけでヴィクトリアさんよ、「少しづつ重力が増す空間のある世界」に連れてってくれ。高地トレーニングってあるじゃん、人間の環境への適応能力を活かし、運動能力向上につなげるっつーやつ。あんな感じで重力の強い所で暫く筋トレしてくるわ。オイッチニィサンシッ!おらシア俺に乗って負荷かけろ!お前も慣れねーといけねえんだからな!
飯食って筋トレして寝るッ!男の鍛錬は、そいつで十分よッ!(巻き込まれる少女悪魔)

巨岩は極大消滅波で吹っ飛ばし、猪は「戦闘知識」「グラップル」「吹き飛ばし」ですくい上げる様に投げ飛ばしていきます。種籾?まぁ飯代が浮くか。





 乾いた風吹き荒ぶ、『岩石回廊』。その地を、三人の男女が征く。
 そんな三人の前に現れた分かれ道を前に、先頭を歩む女が瞳を閉じる。

「……左、ですね」

 目を見開いた女、エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)のその声に迷いは無い。後に続く二人の男もまた、その声に異論は無いようだ。
 エルザは、感覚を共有する影の追跡者を先行させていた。その目的は、峡谷内に縄張りを持つイノシシの群れの監視にある。
 この地に縄張りを持つ彼らであれば、危険地帯もまた熟知していよう。そう考えての行動であり、そしてその行動は上手くいっていた。
 実際に、一行は今に至るまで一度足りとも巨岩に襲われる事も無ければイノシシと遭遇もしていない。
 まさに完璧な探索行であると言えるだろう。

「もう少し行けば、水場があるわ。そこで一旦休憩としましょう」

 そう言い振り返るエルザの表情が、僅かに歪む。その表情は、なんというか……理解し難い物を見た、という感じの表情である。
 同行者の一人、鬼柳・雄(チンピラサマナー・f22507)には問題は無い。重力下にもしっかり適応しているようで、その表情には余裕の色を感じられる。彼に背負われている獣耳の少女(契約している大悪魔であるらしい)の目に光が無いのが少々気掛かりではあるが。
 そう、雄に関しては大きな問題はない。問題は……。

「……その。何故、そんな格好を……?」

 もう一人の同行者、山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)のその格好にある。
 玄信のその格好は、まさかの褌一丁。ほぼ全裸と言っていい状態である。
 見苦しくは無いのだが……何というか、色んな意味で心配になるような格好であった。

「し、しょうがなかろう! この状態が一番身体能力を発揮出来るんじゃから!」

 とは言え、その格好にも理由がある。玄信のその言葉の通り、この状態こそが玄信の身体能力が最も発揮される状態なのだ。
 【ヌギカル☆玄信(ヌギカルゲンシン)】。自身の露出度と脱ぎ力(ヌギチカラ)に比例した戦闘力を増強させるユーベルコードである。修行で得た力にユーベルコードも加える事で、玄信は巨岩の襲撃に備えているのだ。
 いくら警戒していても、巨岩はいつ襲い来るかは分からない。常に備えるその姿勢、その心構えは賞賛されて然るべきである。
 あるのだが……どうしても、その格好では締まるものも締まらぬという物だ。

(まぁ、俺はもう大分慣れたけどなぁ)

 自棄っぱちになって笑う玄信。その姿にエルザはどことなく痛ましい者を見る視線を送っているが……雄の玄信を見る目には、特に何かの意思は込められては居ない。
 その理由は、雄の内心の通り、慣れであった。雄と玄信は、共に同じ修行場で修行に臨み、この地に降り立ったのだ。

(いやぁ、厳しかったな。『重力が数十倍の惑星』は……)

 二人が修行の場として選んだのは、スペースシップワールド世界にあるとある惑星。重力が数十倍の、非居住惑星であった。
 厳しい重力、生命体の生じない厳しい環境……そんな環境に降り立って、二人はその身体を鍛え上げたのだ。
 スペースシップワールド脅威の技術力で作られた『例の宇宙服』があったとは言え、その星での暮らしは過酷を極めた。何度も血反吐を吐き、死線を彷徨いもした。
 ……だがその甲斐もあって、雄と玄信はこの環境に完全に順応することに成功したのだ。

「そう言えば、お二人はどこで訓練を?」

 そんな事とは露も知らないエルザからの問いかけに、走馬灯の様に厳しかったあの日々が脳裏を過ぎったか。雄と玄信の口からは、乾いた笑いが上がる。
 ……その様子に、宇宙飛行士の訓練施設で対重力訓練を受けてきたエルザよりも、二人は更に過酷な環境に身を置いてきた事を、彼女は察する。

「こ、細けぇ事は良いんだよ! 飯食って、筋トレして、寝るッ! 男の鍛錬は、そいつで十分よッ!」

 笑いながら言い切る雄。どこぞのOTONAもビックリのセリフである。
 だがエルザは見逃さない。雄の頬に、冷や汗が浮かんでいる事を。そしてその背に背負われた少女悪魔の瞳から、更にハイライトが逃げ出している事を。
 ……下手に突くとトラウマを刺激しかねない。ここは何も問わず、優しく見守るのが吉であろう。



 そんなこんなで一行は峡谷を進み、特に大きな問題も無く水場へと辿り着く。
 その場にいたのは……大小様々なイノシシの集まる、大きな群れ。その総数は、両の手足の指でも数え切れぬだろうか。

 ──ブモッ? ブモッ!!

 三人の接近に気付いた、群れでも一際大きなイノシシが嘶く。
 恐らくは、この群れのボスなのだろう。立派な牙を持つ彼の嘶きに従う様に、水浴びに興じていたイノシシ達もまた嘶き猟兵達へ向き直り……。

 ──ブモーッ!!

 激しい敵意と荒々しい鼻息のままに、突撃を敢行する。その狙いは、三人の先頭に立っていたエルザだ。
 巨大なイノシシの集団突撃。そんな物を目の当たりにすれば、大抵は怯えて脚は竦み動けなくなるだろう。
 だが、エルザは歴戦の猟兵だ。そしてこの高重力下でも素早く動ける様に、身体をしっかりと慣らしてきているのだ。

「──ハッ!」

 迫るイノシシを引きつける様に、しかしその足取りは決して目立たずに。だが動き自体はまるで残像を作るかのように。
 矛盾するその動きで、舞い踊るかのように猪突を躱す。攻撃を躱されたイノシシ達のその脚は止まらず、突き進み……。

「纏めて吹き飛ばしてくれるわ!」

 後方に控えていた玄信が放出した闘気に射竦められ、その戦意を片っ端から折られていく。
 ただ生きるだけでも難儀なあの超重力惑星での修行は、身体能力以外にも結びついていたらしい。放出された気は、正しく覇気となって戦場を覆っていく。

 ──ブモモォォォッ!

 しかしその中でもmその戦意を折られぬ個体が居た。一番立派な、群れのボスイノシシである。
 脚で地を削り、駆ける。荒い鼻息、血走る目。迫り来るその勢いは、ダンプカーもかくやという迫力だ。
 だが、そんな物に雄は怯まない。もっと恐ろしい敵を、彼は数多く相手にしてきていた。そんな連中と比べれば……!

「こんっ──」

 正面から、受け止める。体の芯を貫くような激しい衝撃。だがこの程度ならば!
 下半身、腰、上半身……全身の力を込めて、イノシシの巨体を持ち上げる。そうしてそのまま……。

「──のおぉぉッ!!」

 裏投げ、と呼ばれる投げ技。その変形の様な形でイノシシの巨体を放り投げる。
 放り投げられたイノシシは、天地を逆にし頭から地に落下。脳を揺さぶられ、その意識を落とす。
 ……これもまた、あの厳しい環境での修行の成果である。修行前の状態なら投げる事は出来てもここまでの技のキレは出せなかった事だろう。

「……はっー、終わったか? ……ん?」

 荒れた域を整える様に、深く息を吸う雄。そんな彼が視界を上げれば、連れの少女悪魔が気を失ったイノシシに近寄ってその体毛に触れている。
 ……一体何をしてるんだか。声を掛けようかと思った瞬間、戻ってくる少女悪魔。その掌の内には……。

「あん? 米粒……か?」

 そう、そこにあったのは小さな穀物の粒。じっと見れば、その粒からは何やら不思議な力を感じるような。

「あら。もしかしたらそれが例の『へしつぶの種籾』なのでは?」
「あぁ、コイツが……?」

 同じ様に少女悪魔の掌を覗き込んだエルザの声に、雄もその存在を思い出す。
 生育に時間は掛かるが、凄まじい栄養価を持つ奇跡の穀物。一粒売ればかなりの音が付く稀少品。
 その粒が、少女悪魔の手にあったのだ。

「成程、イノシシ共の毛に絡まっておったか。他の奴の毛にも絡まっておるかも知れぬな」

 玄信のその考察に、三人の視線が絡み合い……それぞれ一つ大きく頷き、倒れ戦意を喪ったイノシシ達のボディチェックの時間となる。
 結果として三人は、それなりの数の種籾をその手に得て、この地を後にする事になるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アテナ・アイリス
『桃蝶』連れが来ない場合ソロOK

重力に耐える訓練だったら、専門家にお願いするのが一番いいわよね。
宇宙飛行士の訓練所に連れて行ってもらって、そこで訓練して対G訓練を受けて、トレーニングする。

現地に着いたら、UC『ノルンの悪戯』を使って、18歳の運動能力と重力に対する状態異常力を強化する。
これに加え、【怪力】で重力に逆らい、「メギンギョルド」で力を増強し、「ブーツ・オヴ・エルヴンカインド」で機敏に移動できるようにするわ。

これで、巨大イノシシだろうが、大岩だろうがわたしの相手じゃないわよ。

よし、これで心置きなく、「種籾」を探し回れるわ。さあ、一儲け、一儲け。

アドリブ・連携大好物です。


雨音・玲
『桃蝶』
流石に3度目となると重力異常にも慣れる訳で…

涼しい顔で「リミッター解除」&「限界突破」
更にUC【月落】の応用、内なる魔力を限界まで高め解放することで
魔力操作を行い重力を緩和させます

妙な魔力溜まりも無ければグラビティゴリラも居ないのか
今回はイージーモードだな

うーん…そうだ試しに自分に枷を追加するか?
自身に「月落」を使用して更に負荷を加算―ズンッ!?
慣れたら更に加算―ズンッ!?!?
納得するまでエンドレス
頭のおかしい無茶な特訓を自身に課します

後、偶然岩塊に圧し潰されそうな「ウリボウ」を見つけ
「月落」で気まぐれに助けてみよう
折角だ「動物と話す」で安心させた後に
親のイノシシに返して親睦を深めます


ミフェット・マザーグース
『桃蝶』一緒に参加!
みんなの特訓についていって「歌唱」でみんなを「鼓舞」するよ

UC【田園を照らす暖かな陽の光の歌】
いっぱいの特訓ですっごく疲れて動けなくなっても、ミフェットの歌で疲労を癒やせばまだまだ頑張れるよ!
短い時間でいっぱい訓練したら、すごい重力でも大丈夫だね!


目を閉じて 思い出して
カラダをささえる力のみなもと手足、うで、かた、ぜんぶの中で
筋肉たちがわらってる まだまだいけると燃えている
さぁ立ち上がろう 特訓は まだまだこれから あとひゃっかい!

WIZ判定
ミフェットは触手の「罠使い・ロープワーク・怪力」でイノシシの足を引っ掛けて転ばせちゃうよ。重力がすごいところで転ぶと大変なんだから!


ティエル・ティエリエル
『桃蝶』に参加だよ!

ようし、ボクは【ライオンライド】で呼び出した体長40cmほどの子ライオンくんと一緒に特訓だよ!
重力……リンゴが落っこちる力のことだね!
ライオンくんとリンゴの詰まった段ボールを抱えて移動して重力に強くなる特訓だ☆

現地に移動したら、さっそくライオンくんに「騎乗」して探索開始だよ!
むむむ、いつもより重いって!?重力異常のせいだね!リンゴをつまみ食いしたせいじゃないよ♪

転がってくる岩塊は聞き耳による「情報収集」でいち早く察知してわきに避けちゃうね!
襲い掛かってくる大猪は、突進を「見切り」で紙一重で回避してもらって、「カウンター」でレイピアをぐさっとしちゃうよ!

※アドリブ連携も大歓迎





「やっぱり重力に耐える訓練だったら、専門家にお願いするのが一番だったわね」

 『岩石回廊』に降り立った【花蝶】の面々。その先頭で自身の考えを自賛するかのように、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)がうんうんと大きく頷いていた。
 アテナの姿は、常の才色兼備の姿ではない。今のアテナの姿はユーベルコード【ノルンの悪戯】の力で、常の彼女を5歳ほど若くした思春期の頃の形に変わっていた。
 常のアテナには盛りを迎えた華やかさがあるが、今の彼女には溌剌とした瑞々しさがある。その溌剌とした若さがアテナの運動能力を高め重力に対する耐性を高めるのだ。

「重力……リンゴが落っこちる力のことだよね!」

 そんなアテナの膝下で、ふふーん! とドヤ顔なのはティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。相棒のライオンくんもティエルと同じく鼻高々と言った表情だ。
 【花蝶】の面々は、重力の専門家である宇宙飛行士の訓練設備を借り受けて重力異常地帯に備えた訓練をこなしていた。
 その訓練の最中、リンゴの詰まった箱を抱えてトレーニングに励むティエルの姿は【花蝶】の面々のみならず施設のスタッフ達をほっこりとした気分にさせたりもしたのだが……まぁ、それは置いておくとして。

「いっぱいの特訓ですっごく疲れたけど、これで大丈夫だね!」

 ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)の言うように、一行は厳しい環境で行動出来るだけの特訓を積み上げてきた。
 そんな積み上げてきた鍛錬は、きっと裏切らないと。ミフェットは信じて、疑わない。
 輝く笑顔で「がんばろうね!」と拳を握るミフェットに、アテナとティエルも「おー!」と応じる。

(……まぁ俺は三度目だし。流石に重力異常にも慣れたけど)

 そんな和やかな仲良し三人組を横目に見つつ、雨音・玲(路地裏のカラス・f16697)の目が『岩石地帯』の風景を眺める。
 玲のその内心の通り、彼がこの地に挑むのは既に三度目。この身体にズンっと響く重力異常にも慣れ始めた感じである。
 そんな玲にしてみれば、妙な魔力溜まりも無ければグラビティゴリラも居ないこの地域など、特に問題なく突破できそうな環境だ。
 ……まぁ念の為、この地で掛かる重力よりも厳しい環境に身体を慣らしもしてきたので。

(今回は、イージーモードだな)

 とは言え、同行者達の事もある。油断せずに行こうと、玲は一歩脚を進めるのだった。
 ……なお、玲の積んだ特訓は常人基準で考えると『頭のおかしいレベル』である事をここに書き添えておこう。



 重力地帯の行軍は、鍛錬を積んできた一行であっても中々に難儀な物だった。動かす手足は常以上に重く、蓄積された乳酸をしっかり感じてしまう程だ。
 だがその動きが止まる前に響いたのは、ミフェットの歌だった。

 ──目を閉じて 思い出して
 ──カラダをささえる力のみなもと手足、うで、かた、ぜんぶの中で
 ──筋肉たちがわらってる まだまだいけると燃えている
 ──さぁ立ち上がろう 特訓は まだまだこれから あとひゃっかい!

 その歌は、いつもとは少し違う。普段は透き通る透明感のあるミフェットのソプラノボイスが、今日はお腹の底からどーんっと響く溌剌とした物に変わっていた。
 ……普段は共感を得た対象を癒やす風景を想起させるその歌。だが今回必要なのは、単純な癒やしではない。この重力に負けない、強い心と体を想起させるべきである。
 だから、ミフェットは歌う。力強く、厳しかったあの特訓を思い起こさせるように。
 そしてその特訓を乗り越えた自分たちなら、大丈夫と。仲間たちを励ますように、歌うのだ。

「あーとひゃっかーい♪ ……ん?」

 そんなミフェットに合わせるように、楽しげに歌って手拍子をするティエルが何かに気づく。
 ……空気の振動。何かが転がっている様な振動……身体の五感、そしてライオンくんの野生の勘を総動員して『迫りくる何か』を感じ取り……。

「……岩が来るよっ!」

 叫ぶティエル。指差すその方向は……一行の真上!
 次の瞬間、切り立つ崖の上から落ちてくるのは巨大な岩塊。自然発生したものか? それとも何者かの工作なのか?
 その事実を確かめる術は、一行には無い。今出来る事は、この岩塊から己の身を護る事のみ!

「──任せて!」

 ティエルの叫びに真っ先に動いたのは、アテナだった。岩の落下点、その中心に軽やかに位置を取り、腰を落として両の手を構える。
 巨岩は迫る。あと5秒、4秒、3秒……。

 ──ズシンッ!

 響く衝撃。アテナの腕が巨岩を受け止め、肩が、背が、腰が、脚が……激烈な重みに悲鳴を上げる。
 だが、この程度の負荷。積み上げた特訓を思えば……何という事は無い!

「この程度! 私の相手じゃ、ないわよっ!」

 鍛えてきた身体能力。腰に巻くベルトの魔力。そして生来の負けん気の強さ。その全ての力を咆哮と共に発揮して、投げ飛ばす!
 投げ飛ばした大岩を見て、どうよっ、と言わんばかりに自慢げな表情を浮かべるアテナ。
 だがそのドヤ顔は、長くは続かなかった。その原因は……。

「あっ、イノシシさんっ! 逃げてー!?」

 何かに気付いて慌てる、ティエルの声にあった。視線を向けたその先にいたのは……群れから逸れたらしいイノシシの子供、ウリボウだ。
 どうやらまだそれ程成長しておらず、度胸も強く無いらしい。突如の大岩の襲来に怯えて竦み、ウリボウはその場を動けない。
 ……このまま、大岩に圧し潰されてしまうのか。ミフェットが、ティエルが、そしてアテナが。何とか助けようと動き出そうとした……その瞬間だった。

「取り敢えず。お前ら、動くな──」

 響いたのは、玲の言葉。その目が輝き大岩を捉えれば……突如として、大岩の軌道が変わる。
 何かに上から叩き落されたかのように地に落ちて、そのまま受けからビキリと罅割れ、圧し潰されて。

 ──バキッ、バキバキッ! ガラガラ……!

 小高い小石の山へとその姿を変えるまで、掛かった時間はほんの僅かであった。
 これは、玲のユーベルコードの力によるものだ。【月落(ルナフォール)】というその業は、視認した対象を下方向へ強制的に押し潰す魔力操作の術である。
 ……つまりその術は、重力制御の術である。この地の異常な重力の力も相まって玲の業の効果は常より遥かに強く発揮され、巨大な岩をたちまちのうちに潰して崩したのだ。
(なお、玲が修行の際に利用したのもこの業である。『頭のおかしいレベル』と書き添えたその理由を、ご理解頂けただろうか?)

「おい、もう大丈夫だぞ」

 唖然としたままのウリボウを安心させるかのように声を掛ける玲。そんな玲の顔をキョトンと見上げたウリボウが、ブモッ、と嘶きトコトコと歩き出す。
 そのまま数歩脚を動かし、振り返り。再びブモーッ、と一声。
 ……着いてこい、とでも言いたいのだろうか?

「……どうするよ?」
「うーん、着いていってみても良いんじゃないかしら?」

 仲間に振り向き問う玲に、答えたのはアテナ。
 ついでに種籾も探しましょ? と言うアテナのその目に光るのは……この地で手に入る稀少な品への期待。
 ……実に即物的と言うか、何というか。いや実に冒険者らしいといえば、そうなのだが。

「うっし、それじゃあ行くぞ」
「えぇ。ミフェット、ティエル、行きましょ?」

 こちらを見つめて待つウリボウを追い掛ける様に、ゆっくりと脚を進める玲。ちびっこ二人に声を掛けながら、その後を追うアテナ。
 そんな先を行く二人に元気よく返事を返しながら、ティエルが跨るライオンくんとミフェットも歩みを進める。

 ──目を閉じて 思い出して
 ──カラダをささえる力のみなもと手足、うで、かた、ぜんぶの中で
 ──筋肉たちがわらってる まだまだいけると燃えている
 ──さぁ立ち上がろう 特訓は まだまだこれから あとひゃっかい!

 そうして再び響き始める、元気いっぱいの行進曲。ティエルの合いの手にウリボウの嘶きも加わり、その行進は増々賑やかになっていく。
 ……ウリボウの案内の下、【花蝶】の四人は進む。やがて四人はウリボウが属する群れへと辿り着き……彼らが餌場としていた『へしつぶの種籾』を幾らか譲り受ける事に成功するのだった。

 重力異常地帯、『岩石回廊』。
 その地における猟兵達の冒険は、上々の結果となって終わりと迎えた。
 この地の探索の為に積み上げたその鍛錬は、きっとこれからの戦いに大きく役立つ事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月17日


挿絵イラスト