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帝竜戦役⑯〜鋼に自由を、さもなくば死を

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #帝竜 #プラチナ #群竜大陸

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●六鋼帝竜、かく語り

 ───金属、とは。
 硬く、重く、故に強い。

「ふーう! 私けっこう頑張ったし、このくらいでダメならしょうがないよなー!」

 群竜大陸・フルメタルバトルフィールド。
 かつてはあらゆる生物が闊歩していたこの地に、残る命はただひとつ。
 覇者たる帝竜プラチナは見目にそぐわぬ甲高い声で楽しげに笑う。
 その身を覆う装甲は六種の魔鉱物(レアメタル)で出来ている。
 超硬、故に堅牢。
 鈍重の裏返しと笑おうにも、攻撃を通せなければただの戯言でしかない。

「まあ、でも……」

 竜の咆声に傲慢が滲む。
 装甲を転化した重く鋭い飛翔剣が舞う。
 ほんの少し嗅いだだけで意識を飛ばしかねない悪臭が漂う。
 今は装甲の裡に隠された本体──白金拳を従えた少女と同じ姿が並ぶ。

「そもそも、私に近づける訳がないんですけどねっ」

 だから己は無敵だと、六鋼帝竜はきゃらきゃら笑う。
 だからもう何にも支配されないと、か弱い少女が堅牢な城塞の内でくるくる踊る。

「それじゃ! ヴァルギリオス様にもらった自由分くらいは働きましょうか!」

 この自由を、永遠に己の手の中にするために。


●ファイアオパールが見送る

「これが無害な少女だったら気楽に見ていられたんですけどねぇ……」

 予知の光景を映したスクリーンを前に、穂結・神楽耶(舞貴刃・f15297)が薄く苦笑する。
 たしかに態度は軽いだろう。油断が過ぎると見えるだろう。
 だがこの帝竜はこの地に生くるあらゆる命を鏖殺せしめた後にも関わらず大した手傷を追った様子もない。
 決して油断できる相手ではないと分かるはずだ。

「十分身に染みているとは思いますが、転送直後に攻撃を受けることは想定してください。決して油断されぬよう」

 真面目に釘を刺す調子だが、それこそ釈迦に説法というものだろう。
 そも、この帝竜の攻略なくして群竜大陸の制覇は叶わない。
 ならばこそ、踏み越えるのが猟兵の使命というもの。

「たかだか六種のレアメタルくらい、あっさり砕いてきちゃってください! 無事の御帰還、お待ちしておりますね」

 りん、と涼やかな響きに幻焔と桜の香が舞い。
 踏んだ地面すら鋼で成る死闘の舞台が開かれる。


只野花壇
 十二度目まして! 暴力幼女が可愛くて仕方のない花壇です。
 今回はアックス&ウィザーズより、六鋼帝竜との決戦へご案内いたします。

●章構成
 一章/ボス戦『帝竜プラチナ』

●プレイングボーナス
 『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
 帝竜は必ず先制攻撃を行います。いかに防御し反撃するか、皆さまの知恵を絞って挑んでください。

●プレイングについて
 アドリブ・連携がデフォルトです。
 ですのでプレイングに「アドリブ歓迎」等の文言は必要ありません。
 単独描写を希望の方は「×」を、負傷歓迎の方は「※」をプレイング冒頭にどうぞ。
 尚、今回はボス戦のため希望がなくても負傷する可能性があります。

 合わせプレイングの場合は【合わせ相手の呼び方】及び【目印となる合言葉】を入れてください。
 詳しくはMSページをご覧下さいませ。

●受付期間
 【5月14日(木)08:31 ~ 5月16日(土)13:00】
 システム上送信可能な間は受け付ておりますので、参加中人数を気にせずお越しください。
 出来るだけ多くの作戦を採用するつもりですが、全採用とはいかない可能性があります。悪しからずご了承ください。

 それでは、ようこそ堅き鋼の支配する戦場へ。
 皆様のプレイング、心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『帝竜プラチナ』

POW   :    ジルコニア、プラス、バナジウム『絶対超硬剣』
自身の【本体(少女)を守る超硬装甲】を代償に、【剥離した装甲を飛翔剣化し、膨大なエナジー】を籠めた一撃を放つ。自分にとって本体(少女)を守る超硬装甲を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD   :    テルル、プラス、ニオブ『悪臭毒ガス粘液塊』
自身に【本体(少女)を守る粘液状の毒煙】をまとい、高速移動と【悪臭の毒ガスを放つ粘液弾丸】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    プラチナ、プラス、バナジウム『命令電波プラチナ』
自身が装備する【本体(少女)】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
おっきくて強そうなトカゲだね……でも負けないよ

オーラ防御と念動力で身を守りながら、チャンスを待つね。
あのトカゲも念動力を使うなら、クリスタリアンでサイキッカーのマリアなら同じ種類の力をどんな風に操作して来るかも感じ取って避けられるかも。

こっちの攻める番になったら、もう何もさせないよ。周りの無機物、土も岩も鉄も全部、『海』に変えてぶつけちゃえば、小さい女の子の複製ならいくらあっても押し流せるし、鮫や鯨の歯が立たない硬さだって、海水で錆びたり、全身に貝や海藻が纏わりつけば大変でしょ?
動けなくなれば、そのまま沈めて、おしまい、だよ!


勇者甲冑・エスセブン
超破壊力の権化たる恐るべき竜、か。
私が熟練の勇者であったならば、華麗に翻弄することもできたのだろうが――生憎この身はまだ未熟!
ならば、正面から挑むのみ!先制攻撃は甘んじて受け止めよう、戦闘不能にならなければそれでいい!

君も知っているだろう――金属の体は!堅牢にして強固!ゆえに揺るぎはしない!

“勇者らしさ”というものに固執するあまり忌避していたが――このコスモメタルの体と同じく、この力も我が力!

トリガーオン、最終武装モード!
相手が強大なればこそ、この過剰なまでの破壊力も、耐久力も、全てを引き出して不足なし!

“ワタシ”の全力は君の暴力に敵うのか――見るがいい、帝竜プラチナ!



●隕鉄に飛沫輝いて

「おっきくて強そうなトカゲだね……」
「ああ。超破壊力の権化たる、恐るべき竜と聞いている」

 アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(涯てに輝く・f13378)の可憐な唇から零れた呟きに、勇者甲冑・エスセブン(+チック・f20435)は生真面目に頷いた。
 小柄な少女を二人分重ねてなお足りない高さを持つ青い甲冑姿は、許されるなら跪いて少女と目線を合わせたろうか。
 戦場でそのような隙を晒すわけにはいかないからと、腰を落としかけたエスセブンに断りを入れたのはアヴァロマリアの方だった。

「私が熟練の勇者であったならば、華麗に翻弄することもできたのだろうが……」
「でも、マリアも手伝うから。きっと負けないよ」
「うむ、存分に頼りにさせてもらおう!」
「──へぇ。なんだかおもしろそうな話をしてるじゃないですか」

 声は、遥かに頭上から。
 帝竜プラチナは矮小な猟兵の不遜な言い分に声色だけで不愉快を示す。

「その分だとボッコボコにされる準備は万端だってことですか?」
「いいや。だが、未熟ながら全力を尽くす準備は出来ているとも」

 エスセブンが無手のまま一歩前へ。アヴァロマリアは体から溢れる光を強めながら一歩後ろへ。
 その動作の意図は明白。
 立ち向かうと言うのだ。
 この地の命全てを滅ぼし、悪びれもしない六鋼帝竜に!

「……セット。ジルコニア+バナジウム──」

 パキパキパキ、と音を立てて装甲が剥離していく。
 それが象るのは一振りの大剣。
 風圧だけで地面に薄い罅が入る。
 極光のエナジーはすべてを消し飛ばさんと圧を放つそれを───

「この絶対超硬剣を喰らって同じことを言ってみてください!」

 振り下ろすッ!!
 その巨大さに似つかわしくない速度が墜ちてくる。己の力で飛翔する大剣の風圧のみですら吹き飛ばされそうになる。
 二人の猟兵を串刺し圧し潰さんと唸りを上げるそれを目前に、しかしエスセブンは静かに告げた。

「君も知っているだろう。金属の体は堅牢にして強固」
「だから?」
「そして、背後に守るべき者がいるのであれば────」

 だからこれは順当な結果。
 勇者甲冑は、絶対超硬剣を受け止める。

「 勇 者 は 揺 る ぎ は し な い ! ! ! 」
「ふっ……ざけんじゃないですよッ!!!」

 地面が陥没する。膝が落ちる。風圧は緋色のマントを荒々しく引き千切る。受け止めたマニピュレーターに罅が走り膝が悲鳴を上げ肘のボルトが我先に砕ける。
 己を守る最低限の装甲のみを残して放たれた一撃が決して弱いものであるはずがない。
 だがしかし。
 遠き星の彼方、勇者の理想を込められたエスセブンが為さなければならぬ故に。
 この程度の攻撃を受け止められずして、魔王と相対することは出来ぬ故に。
 ちっぽけな勇気を握り締めて、エスセブンは絶対の一撃を受け止める!

「大丈夫。マリアはここにいるわ───」

 その背を支えるもう一人。
 アヴァロマリアは、ただ勇者に守られるか弱い少女ではない。
 少女の全身から放たれるのは聖なる光。
 道標。足跡。──故に“誰か”の救い足り得る輝きが、軋み上げる勇者の甲冑を補修する。
 その端からまだ生きている剣のエナジーが甲冑を砕いていく。
 癒す。
 砕く。
 癒す。
 砕く。
 癒す砕く癒す砕く癒す砕く癒す砕く癒す砕く癒す砕く癒す砕く────。
 繰り返される激痛も、弾けた端から元の箇所に戻っていく装甲も未知の経験なれど。
 始まりがあればいつか終わるのが世の定め。

「つかまえ……たっ!!」
「ちょ……!?」

 アヴァロマリアのサイコキネシスがついに剣を捉える。プラチナの意志が介在する攻撃ならば同質のそれで感知できるという少女の読み通り。
 それを回避には使わない。
 勇者甲冑を貫こうとするエネルギーを押しやる。ベクトルを曲げる。ほんの少し、致命を避けさせる。
 弱められたからこそ、少女の意志の力が押し通る。

「はああああああああああッッ!!」

 同時にエスセブンが拳をカチ上げた。
 アヴァロマリアが切っ先を向けた方向へ、叩き込めば剣は押されてそちらへ進む。進みたがりの大剣は一度進路が曲がってしまえば止まれない。
 轟音。
 剣は地面に突き刺さり、役割を果たして砕け散る。

「そ、そんな……嘘でしょう……」
「……無論、見ての……通り、だ……」

 膨大な代償を込めた一撃は立ち上がりまでに時間がかかる。精神面もまた然り。
 だがそれを受け止めていたエスセブンも条件は同じ。内部機構に溜まった熱が蒸気として吐き出される。
 ただ一人。
 アヴァロマリアだけは、そうではない。

「さようなら、骸の海まで送ってあげる」

 宙を舞う破片が飛沫へと転じた。
 潮と命の匂いは、総魔鉱物の領域に在り得ざるそれ。

「──【『海たる水に満ちよ(オン・ヤム・スヴァーハ)』】──」

 本当の《海》を知らない。そこに命が満ち満ちているなんて、データでしか見たことがない。
 宇宙生まれのアヴァロマリアが描く幻想の大海は、本物のそれより命に満ちている。

「ちょ、ちょっとやめてください! 気持ち悪い!」

 鮫や鯨が身を寄せる。病斑めいて貝やフジツボが生え、揺らめく海藻が絡み付く。
 遠目からだと前衛的な彫刻にも見えるそれは、己が滅ぼした生命に纏わりつかれたプラチナの姿だ。

「やめないよ。あなたにはもう何もさせてあげない!」

 さらに鋼になっていた地面が透明な水流となって吹き上がる。
 それらすべてがプラチナに殺到すれば水圧が檻と化して帝竜を封じ込める。
 装甲のほとんどを失い、動けなくなった巨体などただの的でしかない。

「トリガーオン、最終武装モード展開」

 だからエスセブンは勇者らしくないと忌避していた力に意志を通す。
 変形、全武装展開。
 ひび割れ砕け欠けた装甲をものともせず、幾つもの砲塔を一か所へ傾ける姿。なるほど魔王軍の幹部とでも言う方がしっくりくるだろう。
 相手にとって不足なし。
 いざ。

「“ワタシ”の全力は君の暴力に敵うのか――見るがいい、帝竜プラチナ!」
「嫌です帰ってください!!」
 
 問答無用。
 幻想の大海を染め上げて、幾条もの閃光がプラチナを貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アヴァ・ラングフォード

うひゃあ、ぴかぴかのドラゴンさんだ!
鱗もぜんぶ鋼なのかな、すっごい堅そう
あの護りをどうにか崩さないと、だよね

先手を取られるって聞いてたし
まずは、全力で逃げることに集中するよ

あたしは身軽さを活かして
跳ねて駆けての【空中戦】

【視力】には自信があるんだ!
飛翔してくる攻撃を【見切り】躱して
それでも逃げきれなかったら
掌からたくさん羽を出して【武器受け】の盾にするね
だいぶ疲れるけど、四の五の言ってられないもん!

剥離した装甲箇所を見付けたら
やっと反撃のチャンスだ!

他の皆がもう攻撃を加えた後なら
狙い定めて【傷口をえぐる】よ

羽を固めた籠手の先端で
無事に【串刺し】に出来たなら

【ソラへ向かう翼】を、キミへあげる!


緋翠・華乃音
得られた自由を失うのは辛いだろうな。
だが、これは戦争――殺し合いの定めだ。


先制攻撃が前提であるなら対処法も立てられる。
下手な防御など考えない。
凄まじい威力を内包しようが回避してしまえば無意味だ。

見切らせて貰おう。
優れた五感と直感が一挙手一投足を捉える。

物理法則に拘束された行動を読めない道理は無い。
剣の軌道を見切るには切っ先ではなく支点を視れば良い。

用いるべきは研ぎ澄まされた合理性。
即ち数理と条理と方程式。
加えて最善を瞬時に選択する判断力。

回避が成功すれば反撃開始。
鎧通しという技術があるように、この銃弾はそれと同じもの。
故に衝撃は内部へ伝わり、確実にダメージを蓄積させる。



●セレスタイトに手を伸ばす

「うひゃあ、ぴかぴかのドラゴンさんだ! すっごい堅そう!」

 こんな時でも空は広くて、世界はきらきら輝いている。
 アヴァ・ラングフォード(Avis・f17324)の好奇心はこんな鉄火場だって変わらない。太陽色の瞳を煌かせてあっちこっち、前から後ろから帝竜プラチナを観察する。
 輝く自慢の装甲は先行の猟兵に砕かれたが、地面にあるレアメタルを用いて修復済。つけ入るような綻びは、今のところ見当たらない。

「ふふーん、そうでしょう、そうでしょうとも! もっと褒めてくれていいんですよ!」
「……この護りをどうにか崩さないといけないんだよね……」
「ぴっ!?」
「その通り」

 砂埃ひとつ立たない鋼の地面に、音もなく。
 緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は、かしましい少女達のやり取りなど意に介さず透徹とした視線で帝竜を観察する。
 鈍重、すなわち堅牢。不動の鋼を穿つ選択肢はざっと七つ、それらを精査・統合、さらに昇華。
 敵は強大、けれど勝利へ至る道はある。ならばか細くとも通すだけ。

「得られた自由を失うのは辛いだろう。だがこれは戦争───殺し合いとあれば、どちらかの意志は通らない」
「うっわーーーーめちゃくちゃ偉そう。だったら通るのは私の方に決まってるじゃあないですか!」

 プラチナの意志を通されて、ジルコニアとバナジウムが重さを感じさせない動きで剥離していく。
 形作るは七連絶対超硬剣。
 絶死を誘う切っ先が破壊のエナジーを纏い、二人目掛けて迷いなく飛翔する。

「きゃあっ!?」

 速い。
 超硬を誇る装甲を剥がすリスクがそのまま攻撃力に転化されるのだ。
 アヴァが盾と出した羽があっさり散らされる。空を蹴って身を捩って、その上から叩きつけるような風圧に翻弄される。
 痛みに立ち止まる訳にはいかないから、歯を食いしばって耐えて。
 大きな帽子が飛ばないように慌てて押さえながら、アヴァは声を張り上げた。

「──おにーさん! おにーさんはどうやって避けてるの!?」

 おにーさん……もとい、華乃音は余裕を持って飛翔剣を回避している。
 黒い衣装の裾こそ引き千切れているが、それは内包魔力が生み出す破壊の余波が凄まじすぎるせい。次弾発射前に位置を移動、次は余波すら己に触れさせない。
 その絶技を誇ることなく、蝶は羽を散らして息を切らす少女に静かな声で答えを返す。

「剣の軌道を見切るには、切っ先ではなく支点を視れば良い」
「し……てん?」
「……発射地点、と言った方が分かるか」
「! うんっ!」
「意志の下に統御されていようと、物理法則に拘束された行動を読めない道理は無い」
「わかった、やってみるね!」
「なーにをごちゃごちゃごちゃごちゃ───うるっさいですよ!!」

 残り四本、何するものぞ。
 華乃音はあくまで合理的に地面を蹴って間合いを広げる。
 先天的な異能が与える冴えた五感と直感で情報を収集。経験に裏打ちされた条理が回避の方程式を描き出し、即興の判断で最善を選び続けられれば、この程度出来て当然と。
 【異理の血統(アルター・リネージュ)】───
 終焉与える蝶は、それを避ける手際も心得ているのだと態度が示す。 

「ええっと……こう!」

 飛び出したばかりの雛鳥は先達の背中を追い駆けて、それを空翔ける己の翼に反映させる。
 視力も、動くものを見る目も、良い方だ。
 よく見て、飛んで、避けて、ダメなら羽を咲かせて受け止める。
 息が弾む。世界が踊る。滴り落ちているのは汗なのか、それとも違うものなのか。
 だけどこんなに楽しいから、立ち止まってなんていられない!
 七本目を避けた瞬間、逃げ続けていた体を反転、直進。

「───いっくよー!」
「そんなバカ正直……避けるに決まって、」

 重い装甲を代償にしたということはその分身軽になったということ。
 だからプラチナが残る竜の巨体を揺らす直前、 引き裂くような銃声ひとつ。

「あ痛ぁ!?」
「やはり。この銃弾なら効くようだな」
「ほーーーらなんか特別なことやってる! そうやって私を傷つけようとしたって無駄であ痛っ!?」

 プラチナの戯言は無視。ふたつ、みっつと刻んでいく。
 マズルフラッシュが瞬いて鋼の地面に薬莢落ちる。
 回避の時間が終われば反撃と心得ていたのは華乃音も同じ。必中と攻撃の最適解を果たすべくよっつ目の引き金を静かに引く。

「鎧通しという技術があってな。理屈はそれと同じだ」

 超硬の装甲が残っていようと関係ない。
 内部へ伝わる衝撃は負傷に至らねど、帝竜の動きを封じ意識を向けさせるには十二分。
 どちらを優先するか迷ってしまった一瞬で、さあ、しんのぞうまでひとっとぴ。
 剥がれ落ちた装甲の隙間へ、翼を固めたハネノテを突っ込んで。

「────ひ、」
「【ソラへ向かう翼】を、キミへあげる!」
「ひゃああああああああああああ!!?」

 超硬の装甲を内側から貫いて、ソラへ伸びるはハリボテの翼。
 動かすための筋肉が付随していないソレはただの重りにしかなり得ない。
 ならば装甲を外そうにも、断続的に襲い来る銃弾が許さない。
 さあ、どうすればいい?

「終わりだ」

 迷うのならば届かない。
 飛べないのなら、墜ちるだけ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天御鏡・百々
其方のような強大なオブリビオンを野放しにはできぬ
自由は終わりだ。骸の海へ帰るがよい

敵が操る分身体の少女の攻撃は
本体の神鏡より放つ光での目潰し10による牽制で時間を稼ぎ
神通力(武器)による障壁(オーラ防御94)と
真朱神楽(武器:薙刀)による武器受け10にて対処

初撃を受けきったら反撃だ

魔鉱と言えど、金属の一種――無機物なれば
『神は万物に宿る』にて神通力を与え
プラチナの纏う装甲を我に従う付喪神に変換してやろう
そして、付喪神にプラチナ本体を攻撃するように指示するぞ

プラチナよ、その装甲に喰らわれ滅びるがよい!
(破魔79、鎧無視攻撃8)

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ連携歓迎
●本体の神鏡へのダメージ描写NG


百鳥・円
あーら中身は可愛らしいこと
……は?なんですかこの人数
ええ、本気で言ってる?
こんなに複数を一度に相手するんですか

……ん?
すこーし待ってください
こんなに、たくさん?
あは、夢を集め放題じゃあないですか!

嬉しー偶然に感謝感激ですん
ああ、愉悦に満ち満ちるようです
攻撃を躱すのは野生の勘
時には空へと飛んで翻弄ですん
ついでに心を読ませて貰いましょ
どれを叩けば効率が良いか情報収集です

さーてそれでは参りましょーか
とりあえず宝石糖になってくれます?
全力魔法、キメますよ

属性攻撃の風を付与し蝶たちをサポート
逃げないと捕まえちゃいますよーっと
見ているだけなのもアレなので
双翼と爪を使って衝撃波

複数は蝶にお任せ
頭を叩きましょ



●コーディエライトは夢を見る

「自由を欲した、その心をは分からんでもない」

 告げる、言葉はどこか労りとやさしさに満ちて。
 小柄で幼げな十歳程度の童女とは思えない深みはあった。
 それもそうだろう、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は古くより御神体と崇められた神鏡のヤドリガミ。
 年に一度の儀式の折にしか外を見られなかったかつての境遇を思い返せば、その願いには共感できる。
 だが、百々は猟兵だった。断固としたものに切り替わった口調に込められるのは明白な拒絶。

「だが其方のような強大なオブリビオンを野放しにはできぬ。自由は終わりだ、骸の海へ還るがよい」
「ふーん。そんな一方的で居丈高な要求、聞くとでも思います?」
「思わんな。だが」
「そーいうの、頭にくるんですよね」

 セット、プラチナ+バナジウム。
 突如地面が沸騰するように湧き上がり、無機の少女と付き従う双腕を形作る。
 プラチナへ向かう進路を阻むかのように複製されていくソレに、百鳥・円(華回帰・f10932)が思い切り表情を苦らせた。

「……は? なんですかこの人数」
「それだけ強大なオブリビオンということであろう。さすがに帝竜の一角を担うだけはある」
「ええー……こんなにたくさんを一度に相手するの…………ん?」

 自分で言った言葉がなぜか引っかかって思考を巡らせる。
 逆に考えよう。
 こんなにたくさんいるのだ。意思を感じぬ無機であろうと、それならば。

「あは、あはははははは!」

 獲りたい放題だ。
 愉悦と悦楽に自然と喉が震えて哄笑を生み出す。まさかこんな偶然が起こり得るだろうか。
 巡り合わせというものに感謝するしかない。
 そんな円を百々は横目で見る。心配だとありありと書かれたそこに円はひらりと片手を振って応じるだけ。

「……どうした?」
「んーん、なんでもありませんよぉ。ただ分身はわたしに任せてもらって大丈夫です」
「ふむ? ……信じるぞ、その言葉」
「もっちろん」
「でも残念ながらそうは私が許しません!」

 本体の意志に統御された同じ顔が一斉に動く。
 鋼色の拳が一斉に握り締められる。
 一種の生理的嫌悪を催す光景に、二人の猟兵は気を取られることなく迅速に。

「少し静かにしておれ!」
「きゃあっ!?」

 百々が抱えた本体───真実と未来を映す神鏡が光を放つ。
 それ自体に破壊力はない。むしろそれは癒しと浄化を齎すものであるが故。
 ごく単純な目潰しで稼げる時間はほんの数秒。その数秒で、十分だ。

「惑え、惑え。廻り還って、わたしのものになるまで」

 円の指先から零れる光は菫青色。空をなぞれば、蝶と結ばれひらり舞う。
 光より出でた五十四匹の蝶が、ゆらり踊って空を行く。

「ふ、ふんっ。驚きましたけどその程度で私が臆するとでも!?」
「うんうん、分かってますよ。あなたが結構びっくりしたってことくらい。これからもっと驚かせてあげますからね」

 震える帝竜の声を聞きながら、返すは蠱惑の微笑みひとつ。
 蝶に触れられたプラチナの少女が突如ぽろりと崩れた。

「は?」
「あ、よかった。効いたみたいですね」

 【獄帰葬(アイオライト)】は、ただ蝶を生み出すユーベルコードではない。
 快感を与えた対象を追跡し、夢を吸い上げ、宝石菓子に変じさせてしまう収奪のコードだ。
 だからそこに残るのは、帝竜プラチナの複製を象った透き通るような白い菓子。
 触れれば壊れる脆いそれは猟兵の路を塞ぐだけ。その進撃を阻むほどの邪魔にはなり得ない。
 そして、蝶はまだまだ飛んでいるとあれば。

「さぁさ、逃げないと捕まえて宝石にしちゃいますよーっと」
「いや逃げちゃダメですよ!? 私を守ってもらわないと!」
「あはは、それならそれで都合がいいです」

 風が吹く。円の手による蝶への後押しだ。
 追い風を受けた蝶達は次々複製少女たちに群がって、夢を吸って宝石菓子を生み出していく。
 期待通りの戦果に円は笑み溢すのをやめられない。

「いやー、今日はいい夢が見られそうですね!」
「ちょっとちょっと!? 何私の複製を美味しく食べようとしてくれちゃってますか! 怒りますよ」
「ほう」

 複製が無力化された今、本体の相手は百々の役割だ。
 承知しているが故に、ちいさな掌が憤慨する竜へと向けられる。

「では、我が同胞にも怒ってもらおうか」

 【神は万物に宿る】───であるならば、帝竜の装甲を成す魔鉱物たちもまた然り。
 プラチナの魔力によって強化されているがゆえに全てを変化させられないが、内側から攻撃するのなら多くは必要ない。

「プラチナよ。その装甲に喰らわれ滅びるがよい!」

 百々の同胞と化した魔鉱装甲は、己の身を内側へ圧搾。
 内側にある本体を圧し潰そうとするものの、プラチナとて黙って見ているわけではない。

「ぜーーーーーったい嫌です!」

 最低限、自分の意思を無理矢理通して付喪神と化していた装甲を剥離させる。
 そこまでが、百々の読み通りだ。

「ではその性根ごと、浄化させてもらうとしよう」
「……え?」
 
 天之浄魔弓はすでに引かれ、神聖を内包する矢がつがえられている。
 手を放す。
 複製の少女たちも、堅牢を誇る装甲も、帝竜を守る盾はもうない。
 故に矢は一直線、救いようのない竜の体へ吸い込まれる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
おお怖ぇ。俺の《宿》ぁ脆いんだ。そんなん喰らったら砕けちまうよ。だからしっかり影に沈んで避ける。沈んだってバレねぇように、眷属たちを盾にするぜ。

装甲剣の一撃を避けたら、影からひょっこり上半身出して。いま本体露出してんだろ? んで本体は生き物だ。生き物の中にゃ、たっぷり細菌が住んでるもんさ。そいつら全員、有害にしてやろう。
内臓は鍛えられねぇかンなぁ。毒にならすとかはあるが、さて。この嬢ちゃんはなかなか「まあそんなことありえないですよね!」で済ませてそうな気がするねえ。どうだい?


トリテレイア・ゼロナイン

この地の生命の全滅
如何に邪気がなかろうと、彼女を自由にさせるわけには行きません
A&Wの安寧の為、討たねばなりません

飛来する飛翔剣をセンサーでの●情報収集で●見切り格納銃器で●スナイパー●武器落とし
砕けるとは思いません、コースを少しでも曲げ回避や●怪力での●武器受け●盾受けで凌ぐ補助となれば十分です

接近しつつ事前●防具改造で盾裏に忍ばせたUCの充填開始
自己●ハッキングによる出力●限界突破で充填速度向上

十二分に接近しUCを解放し●だまし討ち
巨大擬似フォースセイバーの●なぎ払いで飛翔剣を消し飛ばし、露出した本体を●串刺しに

竜退治というには些か趣がありませんが…この地の惨状を繰り返させはしません



●アメジストを蕩かす先に

 踏み締めた地面に、命の気配は存在しない。
 金属同士が触れ合った時特有の音が足下でするから、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は若葉色の眼光を真っ直ぐ帝竜へ向ける。

「如何に邪気がなかろうと、貴女を自由にさせるわけには行きません」
「……だから?」
「アックス&ウィザーズ。この世界の安寧の為、帝竜プラチナ。貴女を討たせていただきます」
「そうやって、“誰かを守る”ってお題目で私の自由を奪うんでしょう? だから私の答えは変わりません」
「そう、ですか」

 ───分かっていたことだ。
 これが騎士物語であったなら、間違った姫を倒して救い、手を取り合うハッピーエンドにも出来ただろうか。
 猟兵とオブリビオンの間に、未来と過去に、護る者と滅ぼす者に、そんな優しい結末は存在しない。

「セット。ジルコニア+バナジウム───」

 装甲を剥がして形成、向けられる大剣は一本きり。
 それを笑える訳がないとは、ソレが纏う極光のエナジーで明白だ。
 全環境適応型マルチセンサーが最大級の警戒を発している。

「絶対超硬剣をプレゼントします、いいから吹っ飛んでおいてください!」
「申し訳ありませんが、そういう訳にも参りません」

 騎士甲冑の頭部が、肩が、腕が割れて鈍い金の銃器が姿を見せる。そして迷うことなく一斉発射。大剣をに向けて殺到する。
 小揺るぎもしないのは承知の上だ、少しでも威力を落とすことができればいい。
 そんなトリテレイアの思惑を嘲笑うかのように、大剣は真っ直ぐ墜ちてくる。

「よぉ、騎士様。ちっと邪魔するぜ」

 笑うような声が割って入った、直後。
 羽撃きの音。

「な……!?」

 それはこの地にもう存在しないはずの生命体だ。
 蛇がいた。イヌがいた。ネズミがいてコウモリがいて他にも多種多様な鳥が我先にと大剣へ突っ込んで、消滅しながらその切っ先を逸らす。

「く……!」

 想定とは違うが、結果としてはトリテレイアが考えていたのと同じ状況だ。
 銃器を格納、代わりに展開するのは身の丈ほどの大型シールド。真正面からは受け止めなず、いなしながら逸らしていく。

「ぐ、あああああああ……!!」

 それでもなお、予想以上の衝撃と圧に関節が軋む。膝が折れそうになる。それより早く周囲の地面に罅が走って、盾が砕ける。
 だが止め切った。
 全身が放熱する。白い甲冑が陽炎を纏う。
 帝竜プラチナも、これだけの攻撃をすればすぐには動けまい。
 息つくトリテレイアの影からひょっこりと、飛び出てくるのは男のカタチをした上半身だ。
 気安いジェスチャーで手を振るのは、戦場より街中の雑踏が似合うだろうか。

「おーおー、お疲れさん。あとの時間は稼いでやるよ」
「ありがとうございます……ですが、あなたは……」
「何。しがないカミサマってやつよ」
「うっわあ隠れてるとか反則ですね!」
「お前さんがそれを言うかよ」

 朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は、揶揄うようにプラチナに返して口ずさむ。
 どこの世界のものとも分からない、素朴な旋律はカミのミコトバ。
 病と汚濁の神による祝福は、無害を致命へ変貌させる。

「『《目醒めろ、取るに足りぬ子ら》』」

 ソレは言葉ではなかった。
 ソレに猟兵に備わる自動翻訳の加護は働かなかった。
 にも関わらず、その意味ばかりがはっきりと脳を焼く。

 ───【蒼白の権威(ペイルライダー)】。

 第四の騎士の権能から、いかな生物も逃れること能わず。
 それは帝竜ですら例外なく領域に捕らえ、病と滅びを齎していく。

「な……んか、気持ち悪……おえっ」
「おーおー、そんなナリでもちゃあんと生物だったか。『そんなことありえないですよね!』で済まされるかと思ったが杞憂だったな」
「い、ったい……何を!」
「いや、俺は何もしねぇよ。竜退治なんてのは英雄サマのお仕事だ」

 そして、騎士はここにいる。
 純白の装甲は割れ砕け、傷ついてこそいても。その威風は英雄譚の立ち姿を奉じる。
 疑似だと、偽りだと、届かないと焦れていても。
 彼が抱き続ける願いと憧憬は本物だ。

「充填七十八パーセントで中断、刀身解放」

 それは、柄しかない剣だった。 
 胴体と有線接続したことで充填した余剰エネルギーが白い粒子となって舞う。
 それは遺失技術で作られたコアユニットからエネルギーを引き出し、巨大剣と解放する必殺コード。
 隙が大きくなりすぎるために当てにくいことが欠点だが、体内の細菌すべてを有害物に置き換えられた今のプラチナに避ける余力などありはしない。

    ダイレクトコネクトセイバー・イミテイト
「【コアユニット直結式極大出力擬似フォースセイバー】ッッッ!!」
「きゃああああああああっ!!?」

 振り下ろされた白光が、逢真の視界ごとプラチナを焼き裂いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルナスル・アミューレンス
レアメタルねぇ。
是非とも、持ち帰って材料にしたいところだけど……。
オブリビオンの素材って、耐えるのかなぁ?

でもまぁ、先ずは凌がないとねぇ。
第六感と戦闘知識を生かして動きを見切り、
クイックドロウからのスナイパーで、粘液弾丸を相殺しましょうか。
徹甲焼夷榴弾で、貫いて爆炎で毒を焼き尽くさないと。
まあ、僕は毒効かないけどねぇ。

でも、ずっと好き勝手されても困るし。
仕方ないけど、そろそろお『怒涛(ワカレ)』しようか。

――拘束制御術式、開放

我が身より溢れ出すは黒き不定形の異形。
それは天災の様に全てを飲み込む奔流であり、大嵐である。

悪臭の毒ガスもその弾丸も
粘液上の毒霧も
堅牢不壊なる装甲も

全て、捕食し蹂躙する。


ティオレンシア・シーディア


なぁんか、ドラゴンっぽくないっていうか…随分ノリ軽いわねぇ?
まあ出てきた以上ブッ潰さなきゃいけないし、油断できる要素なんてありゃしないんだけど。

まずはラグ(浄化)とエオロー(結界)で○毒耐性の○オーラ防御を展開して毒ガスに対処。…そう長くは持たないでしょうけど、気休め程度でもないよりマシでしょ。
高速移動の軌道を〇見切ってグレネードの〇投擲で牽制、スモークの〇目潰しや○爆撃で弾丸を散らしつつ本命の●射殺を叩き込むわぁ。
刻むルーンはラグ・ウル・ティール。
障壁を「浄化」し「突破」する「勝利の剣」――毒煙も装甲も、〇スナイパーの○鎧無視攻撃で纏めてブチ貫いてやるわよぉ。



●黒曜が果てを示すなら

「なぁんか、ドラゴンっていうには随分とノリが軽くなぁい?」
「あー! そういうのドラゴン差別ですよ! 差別はんたーい!」
「そういうところが原因だと思うんだけどねぇ……」

 ぷすぷすと怒ってみせる帝竜プラチナに、「ドラゴン」という名から連想される畏怖も威厳もありはしない。
 竜種の存在に複雑なものを抱えるティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はいっそ溜息を落とすしかない。
 とはいえ油断できるものではないことも、打倒せねばならないことも分かっている。

「しかし……レアメタルねぇ。是非とも、持ち帰って材料にしたいところだけど」

 アルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)は「奪還者」だ。
 文明のほとんどが滅びつくされたアポカリプスヘルにおいて、金属類は貴重な資源である。ゴーグル越しの瞳にちろりと欲望の火が灯るのも致し方ないことと言えよう。

「だ、ダメですよ!? 私の玉肌をなんか酷いことに使う気でしょう!」
「まあまあいいじゃん、ちょっとだけちょっとだけ」
「ぜーーーーったいゴメンです! セット、テルルプラスニオブ!」

 ぶわ、と猛烈な悪臭が沸き上がる。
 それだけで常人ならば気絶しかねないそれの発生源は本体を、六鋼装甲を、包んで蠢く粘液状の毒煙。
 『悪臭毒ガス粘液塊』とはなんとも頭の悪い名称だが、油断できるようなものではないのは明々白々。

「来たねぇ」
「ひとまず、凌ぎましょ」

 グリモアベースで予知を聞いた時から準備はしておいた。
 ティオレンシアは袖口に仕込んでおいたルーンの紙片を振り落とす。とうの昔から身に沁みついた、一切の無駄のない所作。
 そこに刻んだのはラグとエオロー、展開するのは浄化を担う結界だ。

「く……っ、さい!!」

 ……無論、彼女とてそれで完全防御が可能だとは露ほども思っていない。
 一時しのぎ、気休めになれば御の字。次へ繋ぐための時間が稼げれば十二分だと承知している。
 悲鳴めいた不満の叫びくらいは許されるべきだろう。
 竜を討つのに、いくら用意も用心もしたって足りるということはない。
 
「じゃあ、さっそくあれから焼こうか」

 一方のアルナスルは悠々と、大口径機関銃G.R.V5を肩に担ぐ。
 ティオレンシアの結界があり、拠点とする世界でも様々な塵や毒を防いできてくれた大型ガスマスクがあり。
 そもそも、彼の体は毒程度で駄目になってくれるるものではない。

「何を使うのぉ?」
「そうさねえ、徹甲焼夷榴弾がいいかなと」
「貫通と爆炎ね。結界は強化しておくわぁ」
「了解、助かるよ」

 エオローを刻んだ紙片をもう一枚、物理攻撃に対する耐性も強めてやれば準備は完了。
 結界の外側に銃口だけを出して、二秒も待たずに引き金を引いた。
 銃声は重く、そして連続して文字通りの火を噴く。
 結界を叩き潰そうとしていた粘液弾丸を真っ向から迎撃して焼き尽くす。

「うわっ、野蛮! そういうのよくないと思うんですよ!」
「うん、まあ。ずっと君らに好き勝手されても困るし」

 拘束制御術式、開放。
 さあ、迅速に【怒涛(ワカレ)】を刻もう。

 ドロリと落ちる、黒泥の雫。

「え……?」

 ソレは不定形の異形。
 悉くを飲み込む奔流であり、大嵐であり、天災を具現したモノ。
 アルナスルの体に埋め込まれた偽神細胞は、肉体をこれだけの兵器へ至らしめる。
 びちゃりと音を立てて、触腕が滑るように立ち上がる。

「いやああああああああ! 気持ち悪い! ちょっと離れてて、いや近づかないでください!!」
「───無意味だ」
「いーやーあー! 助けてヴァルギリオス様ぁー!!」

 プラチナがいくら錯乱して粘液弾丸を放とうと関係ない。
 悉くを喰らって飲み干す特性を持つカラダは喰らった端からソレを取り込んで己のものと成す。
 悪臭の毒ガスも同じ。粘液状の毒煙も、また。
 男の前ではすべてが餌でしかない。
 故に、捕食者と被捕食者は逆転した。
 狩る者と狩られる者の差は明白。
 逃げ惑うのが悪臭を撒き散らす帝竜で、追いかけるのがオブリビオン喰らいの怪物。

「───あは。逃がすわけないでしょう?」

 だが、狩人は一人ではない。
 “撃つ”技術ならだれにも負けないと誇る銃手は、虎視眈々と機会を狙い続けてきた。
 それが今。
 逃げる獲物がいて、追う仲間がいて、手の中には万全の愛銃。
 外す要素がどこにもない。
 そして更なるダメ押しに刻んだルーンは三種。
   ラグ    ウル              ティール
 「浄化」、「突破」、そして切り札───「勝利の剣」!

「さあ──、ブチ貫かれて斃れなさい」

 祈るまでもない、願うまでもない。
 引き金を引けば必ず中る。

     coup de grace
 故の、【  射 殺  】。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード

自由を求める、ね
協力してやりたいくらいだが、生存競争みたいなもんだし仕方ない
ああいう調子乗ったやつの鼻っ柱折るのは好きだしな

一撃に力を込める攻撃なら、ダッシュや残像を駆使して攻撃を避けてく。岩とか隠れられるものがあればそれを利用して影にしていく

しばらくは攻めの姿勢は回避に専念していく。

まともにくらえば死ぬ、良くてもただじゃ済まないだろう。こういうスリルを味わっているとワクワクしてくる、楽しいね


敵はガキっぽいし油断してるし、すぐにイライラしてくると思う。それで特大の一撃を放ってくるところを、こっちもユーベルコードを発動して、飛翔能力を利用して、刀で本体を狙う


安喰・八束
粘る毒霧、鋼の鎧
何人も近づけねえと傲るのも御立派な護りっぷりだな。
……恐れを知らねえ獣程、狩り易いモンもねえんだぜ。

馬鹿正直に姿を晒す射手はいねえよ。
高速移動の軌道を読み、毒の弾丸からは身を隠しながら(見切り、目立たない)
他の猟兵に注意が向いた隙でも突いて「狼殺し・九連」全弾だ。
狙いは鎧の間、貫けずともせめて関節に弾丸を挟み込む。(スナイパー、鎧無視攻撃)
一時でも動きが鈍りゃ、充分活かせる猟兵が居るだろう。大物狩りは独りでやるもんじゃねえからな。(援護射撃)

ところでその御大層な鎧の裡、己の放つ悪臭も判んねえんじゃねえかい。
罅でも入りゃあ、毒ごと浴びせかけてやれんかね。



●ジャスパーよ、穿ち給え

「お前がオブリビオンじゃなかったら、協力してやっても良かったんだがな」
「えっ、マジで言ってます?」
「おう、マジマジ」

 揺らめく炎を従えて、ゼイル・パックルード(囚焔・f02162)は軽やかに笑ってみせた。
 自由を欲し、得られたそれに喜ぶ。そんな無邪気な頃が己にもあったろうか。
 懐古は一瞬。少しの感傷を沈めてしまえば、あとは高揚する心が残るばかりだ。

「それよか俺は、お前みたく調子乗ったやつの鼻っ柱を折りたい気分でね」
「奇遇ですね! 私も、そんなことを考えている輩を叩き潰すのは大好きですよ!」

 セット、ジルコニア+バナジウム。
 宣言は堂々。真っ向から押し潰して通るとばかりに装甲が剥離。瞬く間に極光のエナジーを纏う飛翔剣を形作る。

「この『絶対超硬剣』を喰らって大人しくなりなさーい!」
「イヤだね!」

 走り出す。
 ゼイルは、肉体的には脆弱なただの人間にすぎない。 
 当然あんな大剣をまともに喰らえば死ぬ。破壊のエナジーが掠める程度でも腕が持っていかれるか、あるいは内臓がごっそり抉れるか。
 巡らせる想像に血液が沸き立つ。
 ギリギリのスリルに唇の端が吊り上がるのがやめられない。

「───ああ、愉しいな」

 さあどうやって死を避けようか。
 残像で撹乱するか。岩(といってもレアメタルだろうが)の影に隠れるのもいい。相手の足元に滑り込んでやるのはどうだろう。
 選択肢は無数、正解はひとつきりではない。
 これが、ゼイルが生を感じられる世界だ。

「うーん、ちょこまかちょこまか頑張りますね。もう一発いっときます?」
「おいおい、そんな気軽に言うなっての。これでも結構ギリギリだっつーの」
「ということは二発目があれば仕留められますね! プラチナちゃんの勝利───」

 そう、帝竜プラチナはこの段に至ってなお侮っていた。
 敵が一人なら己が勝つものだと油断していた。
 だからこそ。
 帝竜に不意打ちを叩き込む、規格外は成立する。

「───そこだな」

 【狼殺し・九連】。
 剥離した装甲の隙間をごく精確に、本体狙いで一直線。
 狼ならば一発で死ぬ弾丸を迷うことなく九連続。
 男の命を喰らいながら、帝竜の命を刈り取るために疾駆する。
 快音。
 飛沫上げるモノはなくとも、これで仕損じるということの方が在り得ない。

「~~~~~~ったぁい! 何をするんですか! 不意打ちなんて卑怯ですよ!」
「何言ってんだ。狙撃をまともに喰らう方が悪いだろ」
「くっ……どこに居やがりますか! 出てきなさい!」

 当然、言われたところで馬鹿正直に姿を晒す射手がいるはずない。
 古女房に頬寄せて、安喰・八束(銃声は遠く・f18885)は次の弾を込め始める。

「ご立派な護りばっか固めちゃあ分からないだろうなぁ、ドラゴンよ」

 ───恐れを知らねえ獣程、狩り易いモンもねえんだぜ。

 粛々と嘯いて、狼兵の牙は容赦なく。
 貫くにはコードの加護が必要だが、邪魔をするだけなら通常弾でも事足りる。
 装甲の隙間、あるいは関節。巨体であるということはそれだけ間も多いということ。
 噛ませ、挟み、動きを鈍らせるにはそれだけで十分だと八束は知っている。

「ッ、この、邪魔ばっかり!」
「助かるぜ、オッサン!」
「ああ。行ってこい、若いの」

 こればかりは。
 猟兵にならなければ味わうこともなかったろう。
 自分と領域が違う雄がいる。
 己を活かすための攻撃がある。
 それに背を守られ、これだけ強大な敵を喰らうなんて。
 嗚呼、本当に満たされる。

「さあ──戦ろうぜ、帝竜プラチナ。お綺麗な戦い方じゃなくて悪ィけどな!」

 弾けろ、【バーンアウト・ノヴァ】!
 空を踏めば、足から生まれる炎が推進となって背を押しやる。
 翔けるは一直線。最も危険なはずのルートは、今だけはがら空きの最短距離としてゼイルを導く。

「ぶっ飛べプラチナ!」
「ふっざけんじゃないですよ! この卑怯者共ー!!」
「卑怯も何も、勝った方が正義ってモンだろうがよ」

 プラチナの悲鳴に、八束が溜息を落とすが最後。
 銀弧が描くは死の月光。
 冥夜の裡に鎖されて、無明へと沈んでいけ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リア・ファル
シャーロットさん(f26268)と
(まだ「ちゃん」呼びの気安さはない)

WIZ

サメール・ネットワーキングとの協業第一弾だ、頑張ろう!

「プロトコル解析。妨害開始」

相手の命令電波を解析! 妨害電波(念波?)を生成しよう
(偵察、情報集取、学習力、ハッキング、マヒ攻撃)

シャーロットさんとタンデムし、
戦場を攪乱、駆け抜ける

「さっすがの鮫魔術、シャーロットさんのお陰で射線が通ってる!
……じゃあいくよ、ヌァザ!」

虚数空間より、戦艦の主砲を顕現、
『セブンカラーズ』の照準を合わせて撃つ!

「宇宙(うみ)と深海(うみ)の連係攻撃だ、
その魔鉱ごと、海色(みいろ)に煌めき散っていけ!」

UC【未来を拓く光芒一閃】!
(砲撃)


シャーロット・クリームアイス
リアさんと
f04685

自由ついでに、いっそ転職などいかがでしょう?
あるいは無職という選択肢もあり得ますよ? 完全なる自由では?

やれやれです、取引で終わるなら話が早かったのですけど……

やはりビジネスパートナーは話の通じる方でないと、ですね

そこのあなた、知っていますか⁉
►サメ1体に含まれるセンサーの数は、サメ60頭分なんです!
サメは血に敏感
絶滅を体現したあなたなど、増えても捕捉しきれます!
(敵の挙動をつぶさに検出しリアさんに共有)

初動対策後
◈UC:サメを分解した花をチェーンソー的に個別操作しつつ敵分身を攻撃or追い払う
幽海の梅は気が荒いのです!

海とは、死と生の両方を担うモノ
つまり絶滅の二倍つよい!



●アクアマリンが咲う明日

「ヘイヘイそこの帝竜さん! 自由が欲しいと仰せでしたが!」
「おお? なんか話が出来そうな雰囲気ですか?」
「はい! 自由ついでに、いっそ転職などいかがでしょう?」

 にこにこと、それこそ商取引に来たかのような無害な笑顔。
 シャーロット・クリームアイス(Gleam Eyes・f26268)は、可能であるならオブリビオンですら取引相手とする根っからの商人である。
 だが彼女の立場が猟兵であるだから、相手方がまっとうに汲み取ってくれる訳ではない。

「……はい?」
「あるいは無職という選択肢もあり得ますよ? それこそ完全なる自由では?」
「……いやいや騙されませんよ!? そうやって私とヴァルギリオス様を引きはがすおつもりでしょう!?」
「それで戦争しなくていいなら明確にメリットだと思うんですケドー」
「そんな甘言になんか騙されるもんですかー! セット、プラチナ+バナジウム!」

 沸騰するように地面が波打つ。
 浮かび上がった泡のひとつひとつから鋼色の少女の姿が次々出てくるのを見やりながら、シャーロットは肩をすくめた。

「やれやれです」

 取引で通じれば話は早かったのに。
 交渉が決裂したとあらば、あとは拳で……もとい、鮫で語るしかない。

「やはりビジネスパートナーは話の通じる方でないと、ですね」
「おや、それはボクへの褒め言葉かな? シャーロットさん」

 待機していた空から、イルダーナに跨ったリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が下りてきて小さく笑う。
 事前に打ち合わせていた通り、宇宙バイクの後部座席に横座りしながら「ご想像にお任せします」などと嘯いて。
 エンジンフルスロットル。

「『Dag's@Cauldron』と『サメール・ネットワーキング』の協業第一弾だ、頑張ろう!」
「ええ、──鮫はドラゴンより強いことを証明します!」
「やっぱり野蛮じゃないですかーーー!!」

 本体の悲鳴に応えるように、同じ顔をした少女たちが一斉に動く。
 複製たる少女たちは己を使い潰されようと一切顔色を変えない。空にいる二人に手を届かせるべく、ある個体は踏み台になり、ある個体は踏み台からジャンプ。

「おおっと! 危ないなっ」

 振りかぶられた白銀拳を急加速で回避、した先にもいる少女を空間から跳ねたイルカが押し留める。
 地上を行くよりは速いが、やはり妨害は絶えない。

「あーはっはっは! 手も足も出ないでしょう!」
「ふむ、やはり正面突破ですと時間がかかりそうですね」
「予定通りここは電脳魔術士らしく行こう! プロトコル解析、妨害開始!」
「あのー、ちょっともしもー……!?」

 ぎし、と軋むような幻聴を聞いたろうか。命令電波を阻害する妨害電波は音ではない領域での闘争。
 だから帝竜のレスポンスも迅速だ。思念波を組み替えて妨害電波をすり抜けて命令を出す。ぎこちなく少女たちが動き出す。 

「無駄無駄無駄! ですよ! そんなに簡単に介入できるほど私達の繋がりは弱くありませんからね」
「じゃあ、こうしましょう」
「……は?」

 シャーロットの傍らに浮いていた、頭部が六十個ある鮫がばらばらになった。
 さすがにあっけにとられるプラチナ。そうなれば次の妨害電波の餌食になるだけ。
 そして当然、シャーロットに立て直しの隙を与えるつもりがあるはずない。

「ご存知ですか? サメ一体に含まれるセンサーの数はサメ六十頭分なんです!」
「計算おかしくないですか!?」
「どこがですか? ちゃんとサメの勉強しましたか?」

 代わりに総魔鉱物領域に咲いたのは、梅の花びら。
 チェーンソーめいて回転するそれらは、サメから分たれたこともありざらついた表面を晒して舞い踊る。
 【さくら色に死を謡え(クリスタライズド・プラム)】。
 血の代わりに削り落とされたプラチナの粉末が梅と共に舞う光景は、いっそ幻想的な美しさすらあった。

「今宵も幽海の梅は血に飢えています……」
「うわああああか弱い私の分身に何をするんですかあーーーーー!!」
「さっすが、シャーロットさんの鮫魔術! これはボクも負けていられないな」

 分身たちの人数さえ減れば、リアの射線を遮るものはもうない。
 機敏には動けないとはいえ、六種のレアメタルを装甲と纏った体は生半可な攻撃など弾いてしまうだろう。
 ならばシンプルに、装甲ごと貫くだけ。

「電影召喚、ターゲットスコープ。照準セット、誤差修正……ターゲット・ロック!」

 虚数空間より、人二人は余裕で飲み込める砲塔が姿を見せる。
 それはリアの本体、機動戦艦ティル・ナ・ノーグが誇る重力波動砲。
 通常空間には大きすぎるそれも、頑健を誇る帝竜を倒すには十分以上の火力となる。

「あなたが絶滅を体現するとて、海は生と死双方を担うモノです。つまりあなたの二倍、それを担う者が二人いるならさらに二倍!」
「宇宙と深海、双海連係攻撃だ。その魔鉱ごと、海色に煌めき散っていけ!」
「私を煌かせるのはヴァルギリオス様とレアメタルで十分ですー!」

 この段に至ってようやく身を翻そうとするプラチナだが、どう考えてももう遅い。
 レティクルの中央から抜け出す前に、リアは迷いなく引き金を絞った。

   グラビティ・バスター・カノン
「【未来を拓く光芒一閃】……発射!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
如何に堅牢で在ろうが“継ぎ目”は存在するもの
破られぬ城塞なぞ無い事を教えてやろう

戦闘知識に拠る先読みと集中した第六感で攻撃の起点を見極め
衝撃波で威力を削り、致命と成る部分へはオーラ防御を重ね
見切り躱して攻撃を凌ぐ
そう迄代償を伴う攻撃だ、即時の連射は叶うまい
其の隙を狙い接敵し、失った装甲の狭間を狙い
怪力に鎧砕きを乗せた斬撃を叩き込む
――穿裂蛮創、斬鉄の刃を篤と味わえ
“内”に在るならば……引き裂かれるのは「お前」だ

自由を求める心其の物は解らんでも無いが
オブリビオンに其れを許す事なぞ到底出来ん
況してや既に多くの命を奪ったものならば尚更に
疾く潰えろ、硬いだけの鉱物なんぞに此の刃は止められん


ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
やァ、レディ
随分と楽しそうだなァ
気持ちは大いに分かるぞ。世界というのは広くて良いものよな
自由もまた良き物よな

――故に貴様には死んでもらわねばならん

呪詛の防御幕へ氷を織り交ぜ、攻撃を軽減
足りない分は槍で応戦、多少の傷は覚悟のうえだ
しかしこうも同じ顔が並ぶと不気味だな
幻想展開、【冀求】
我が身を守るのは四頭ばかりで充分
残りの七十頭は全てばら撒かれた娘の姿を食い破れ

飛来するものは護衛と防御幕に任せ
その間に前進しようか
蛇竜を黒槍と変え、呪詛と氷の属性攻撃を乗せて重量攻撃と行こう
この身は案外と重くてな
叩きつければ金属も割れるやも分からんぞ

自由にしてやるわけにはいかんのだよ
悪く思うな
私は世界の味方なんだ



●囁くモリオン

「あーもう! 酷い目に逢った! 私が何をしたっていうんですかー!」
「強いて言うなら『自由を満喫しようとしたこと』だろうな、レディ」

 自慢の装甲も次第に欠け割れ、輝かしかった表面も次第にくすみ始めている。
 嘆く帝竜の悲鳴を聞きながら、鋼の地面を重々しく踏んでニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は少女の声へと頷いて見せる。 

「気持ちは大いに分かるぞ。世界というのは明るく、広くて良いものに見えるよな」
「そう、そうなんですよ! 私にだって世界を楽しむ権利はあると思います!」
「うんうん、そうだろうなァ」

 頷く顔はひどく優しく、共感を多分に乗せて。
 その表情のまま、手の中に蛇竜を握り込む。 

「――故に。貴様には死んでもらわねばならん」

 瞬時に空気が冷える。
 地に凝った怨念が満ち満ちる。
 それらが己に害をなすものだと理解して、帝竜プラチナは大音声を張り上げた。

「騙し討ちとかサイテー!!」
「ふはははは、悪く思うなよレディ。世界の味方からすれば貴様を自由にしてやる訳にはいかんのだからなァ!」
「私に自由を満喫させてくださいよ! セット、プラチナ+バナジウム!」

 地面が沸き上がる。魔鉱物で出来た地面から、滲み出てくるのは無機質な印象を与える少女達。
 それぞれが体の両脇に従えた白銀の拳を振りかぶり、殴りつける!

「おおっと」

 快音。
 金属同士がぶつかるのにも似る甲高い音が複数回。
 その正体はニルズヘッグの眼前に展開された呪詛防壁。内に氷壁をも織り込んで形成された盾は物理的な攻撃すら阻む、が。

(長くは持たんな)

 冷静な思考が判断を下す。
 殴りつけているのは近距離まで接近した少女だけでない。遠距離にいる少女たちも空気を殴り、衝撃波を発生させることで同時に防壁を殴りつけている。
 壊れるまで、あと十数発──三秒と少し。
 予定を早める。世界最悪の竜が、その咆哮を以て世界へ呼びかける。

「頼むぞ、同朋よ」

 幻想展開、【冀求(ランドヴェッティル)】───
 命などとうに絶えたはずの鋼の世界に、竜の咆哮が複数回に渡って響く。
 空から降りてきた彼らの背には氷翼。その羽搏きに乗せてブレスを放つ!

「な───なんですか気味の悪い!」
「世界には美しい生命が満ちている。それを好かんで自由を満喫しようなど、なァ?」
 
 防壁が砕ける。同時に踏み出す。
 手の中でランスと化した蛇竜に呪詛と魔氷を纏わせる。
 衝撃波が飛んでくるのを身を屈めて躱し、代わりに飛び立った護衛竜が受けるのを横目に前へ。
 踏み出せば、帝竜プラチナの巨体はもう目前。

「そして、この身は案外重くてな。───叩きつければ砕けるやもしれんぞ?」
「そういうの解釈違いなんでやめてもらっていいですか!」
「問答無用!」

 この竜に滅ぼされた命すべてがニルズヘッグの槍に加速を乗せて、砕き割る。

「ひ、ひっどーーーーい!! 何してくれるんですか!」

 輝く破片が目前を過って。
 思わず舌を打ったのは、予定より浅かったと判断できたからだ。
 こんな喧しい悲鳴を上げさせる予定などなかったのだが……構わない。
 後方から追ってくる複製少女たちから逃れるべく、帝竜の真横をすり抜けた。

 今入れた罅を致命に変える、練達の剣豪を知っている。





●天眼石が応う

 余計な言葉は必要ない。
 喧しくお喋りをしたがる竜に付き合う心算を鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は持ち合わせていない。
 だから目指すのは前だけ。
 懐へ潜り込めば攻撃の手が弱まるかという目算も少なからずあったのは事実だが。

「くっ、あとからあとからうじゃうじゃうじゃうじゃと……しつこいですよ!」

 セット、ジルコニア+バナジウム。
 身を守る装甲を武器と転化させ、身を晒す代償と引き換えた大技『絶対超硬剣』。
 だが、嵯泉の胸中にあるのは決して戦慄などではない。
 冷静に、静謐に、柘榴の隻眼がその軌跡を見切る。

「っ、ぐ」

 喧しくても、曲がりなりにも“帝竜”を冠したオブリビオンのユーベルコード。
 風圧ですら地面に罅を刻む。直撃すればひとたまりもないだろう。
 本能が鳴らす警鐘を意地と覚悟でねじ伏せる。前へ征く。
 
「そんな、吹けば壊れるような命の癖に。どうして私の邪魔をするんですか?」
「……決まっている」

 その剣を操りながら、本当に不思議そうに問うものだから。
 衝撃波を斬り捨てる。身を低くして駆け、剣の下を過ぎていく。
 背骨が軋む。関節が悲鳴を上げる。致命でないなら無視していい。

「多くの命を奪ったものに自由を許せば、其れ以上の災禍が起きる」

 今、嵯泉の足下にある地面ですら。
 本来は多くの命に溢れていたのだろう。群竜大陸の大陸の一部ではあれ、独自の生態系が回っていたのだろう。
 それを叩き潰して何の痛痒も感じない、斯様なオブリビオンを解き放てば。
 起きるのは、かつて故郷を滅ぼした以上の災禍だろう。
 故に。

「斬鉄の刃、篤と味わえ」

 装甲が存在しない部分がある。
 ただ攻撃に用いて剥離したというだけではない。
 それは先行した盟友が付けた傷だ。
 ジルコニアとバナジウムの継ぎ目、呆れるほどに頑健な装甲の中でも僅かに脆い部分に走ったそれは、野生の勘が見抜いた弱点だったろう。
 僅か、口元が緩む。
 いかに堅牢な城壁も、破られないということは在り得ぬのなら。
 嵯泉自身が罅を広げて砕き割る破城剣となるだけだ。

「───内から砕けろ」

 達人の見切りが、その意を叶える禍断の刃が、精確に。
 刻まれた罅を穿って斬り拓く。

「ぎ、あああああああああああ!!?」

 【穿裂蛮創】。
 それはあらゆる防御を貫通し、内から敵を切り刻むためのユーベルコード。
 いかな堅牢な装甲を誇ろうと、その内側に本体が守られているならば餌食でしかない。

「お前が奪った命に詫びながら───疾く、潰えろ」

 ただ硬いだけの鉱物を。
 滅ぼし引きずり落とさんとしたものが何か、もう知っているだろう?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【鋼機撲突】

オイオイ、人間があっさりウィズワームなんかになるなよな
しかも見るからに硬そうだ…ネグル、お前に任せるぜ
『貫通力』に関して言えば、そいつは一級品だ

…手勢を増やしたか。こっちは俺でどうにかしよう
いくら駒を増やしたとて、操作してんのは本体だ
つまり本体の知覚、本体の思考が全てになる
まず1、【目潰し】として閃光弾──フラッシュ・ボルトをクロスボウから撃ち込む
どうせ群がってくるなら、足元でいいな?ネグル、食らうなよ

そして2、閃光で出来た隙にニューロン【ハッキング】
思考にウィルスを送る

ラストの3──『Robbery』を起動
増えた駒を『強奪』し、俺の物にする
あとは殺到、ホールドさせて…ネグルで〆だ


ネグル・ギュネス
【鋼機撲突】
純粋無垢かつ自信過剰と言うわけだ
それじゃ、子供に現実を見せるが大人の役割ってものだ

仔細承知
では、お相手仕ろう

【スターダスト・トリガー】──変身
飛翔形態となり、群がる敵をギリギリまで引き付け、飛翔
相方が仕込みをする間は、邪魔な敵を抑え込む

銃で牽制し、迷彩で欺き、動きを見切りながら撹乱
衝撃波もダメージにはならんだろうが、足止めにはなるだろう

そして策が為ったならば、飛翔ブースターリミット解除
真っ直ぐ、突き抜けるように敵に向かい、流星の如く突貫
削り、貫き、穴だらけにしてやろうか
新しい剣の威力、御自慢の装甲で味わってみるが良い!

成る程、貴様は無敵だったのかも知れないが、賢くは無かったようだ



●ラピスラズリを掴み取れ

「オイオイ、人間があっさりウィズワームなんかになるなよな」

 呆れて物も言えん、とばかりにヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)は大仰に肩をすくめる。
 そのジェスチャーをどう解釈したか、煤けた帝竜は居丈高だ。

「お? お? なんですかようやく私に恐れを為してくれますか! いいぞー! 帰れー!」
「おいおい、誰がそんなことを言ったよ」
「……え?」
「だが、ストリートじゃ『ドラゴンに手を出すな』ってのは常識だ。お前に任せるぜ、ネグル」
「委細承知」

 本日のバディたる白い機人──ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)も、ヴィクティムの飄々と頷いてみせる。
 プラチナが期待した恐れは欠片たりとも浮かばないから、少女のメンタリティしかない帝竜は不満げな声で叫ぶのだ。

「ちょっとちょっと、おちょくるのやめてもらっていいですか!? あなたがたなんて私がドーンってやったら粉々になるんですからね!」
「なるほど、純粋無垢かつ自信過剰──子供みたいなものか」

 一歩、前へ。
 先の誕生日、それこそ今日の相方がくれた一対の機工刀を両手に。ネグルはそれこそ子供に向ける優しい笑顔を作って見せた。

「そういう子供に現実を見せるが大人の役割ってものだ。相手、してもらうよ?」
「そういう輩が私の自由を奪うんだから騙されません! セット、プラチナ+バナジウム!」

 ぼこ、と音を立ててレアメタルの地面が沸騰する。
 ぼこぼこぼこ、と沸き立つ泡が無機質な少女を模る。複製の少女たちがそれぞれに従えたプラチナの拳を握るのを見やりながらネグルは『鍵』を回した。
 本日の天気は流星、ところにより硝子片。

『Max power on! 光差す思いの流れ星──【Stardust trigger】!!』

 ネグルの体を取り巻くのは青白く輝く星の装甲。
 煌めく星雲の尾を曳きながら、あろうことか少女たちの只中へ飛び込んでいく。

「ふん、自分から来てくれるなら圧し潰すだけです! 行きなさいプラチナちゃん達!」
「One」

 閃光。

「きゃあああああああああああっ!!?」
「おうおう、『電波』って話だったから本体の知覚依存だと睨んじゃいたが……その通りだったか」

 任せると言ったが、手を出さないとは一言も言っていない。
 故にヴィクティムは右腕のクロスボウを素早く展開、つがえたフラッシュボルトを帝竜の足元へ叩き込んだのだ。
 発生した閃光はプラチナの目を焼いて、複製達へ通していた意志を途切れさせる。
 そう来ることを知っていたネグルは少女達の頭上に星屑を振りまきながら一直線。輝きに付随した衝撃波が少女たちの隊列を乱し、あるいはチャフとなって混乱を振りまき、ネグルを捉えさせない。

「そ、そんな子供騙しなやり口でっ」
「Two」
「ああああ! こら! そういうのやめなさい!」

 視界が戻ったところで、指示系統にウィルスを流し込まれては堪ったものではない。
 ウィルスの除去を優先すれば複製達は動けない。
 少女達への指示を優先すればこちらを蝕むウィルスを処理できない。
 優先順位に迷う数秒、その混乱さえあればもうこちらのペースも同然だ。

「Three!」

 >Ignition, 【Forbidden Code『Robbery』】!

 突如、地面が割れた。
 否。それは硝子と化したが故に重さを支えきれなくなって起こった現象だ。
 ガラス片達は重みなどないかのように舞い上がり、プラチナの少女たちを浅く傷つける。
 ほんの少しのかすり傷。だがその瞬間、帝竜の中で何かが切れた。

「え……ちょっと、プラチナちゃん達っ!?」
「無駄だぜ、帝竜。そいつらはもう俺の手駒だ」

 支配権の強制奪取───否、少年の起源に倣って『強奪』と言うべきだろう。
 奪い取り喰らい付いたら離さない牙に喰われたが最後、それはヴィクティムの物になる。
 最初から目論んでいた策は此処に成立した。

「お前でシメだ。行け、ネグル!」
「ああ! ───飛翔ブースター、リミットリリース!」

 星が勢いを増す。
 撹乱と誘引のためにわざと抑えていた速度を解き放てば、ネグルの飛翔速度は375km/h──新幹線を追い越す領域にある。
 そんなもの、いかな帝竜とて目で追うことなど出来ようもない。

「あああああプラチナちゃん達邪魔です! お願いだからちょっとどいて!」
「そう言うなって。お前自身のホールドだぜ? 優しく受け止めてやれよ」

 さらにヴィクティムの指揮下に移った少女たちが帝竜に群がってその体をがっちりとホールド。これでは逃げようもない。
 だからネグルは、飛翔しながら二振りの機工刀を合体させる。
 今こそ刃は完全に、貫き穿つ意を示す。

「黒天・輝花───コイツの威力、ご自慢の装甲で味わってみるがいい!」
「嫌ですけど!? あっちょっとこっちこないでください離れて、離れろって言ってるじゃないですか!」
「させねぇって。言ってるだろ?」

 流星が突貫の直線を描く。
 命の気配すらもない鋼野を青白い星が進んでいく。
 輝きくすんだ装甲を削り穿つ流星は、「成程な」と薄く笑って。

「貴様は木偶の坊ではなく、賢い仲間を作るべきだったな」

 強襲。
 その意に、貫き通せぬ盾などない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ

連携希望

何にも支配されない、と。
それは…
場を、思惑を、実に支配したくなる。

先ずは数。
剣の位置、陣、展開。
多数なら同時、又は連続で来るか。
飛来する、速度、狙い。
サイズが小なら目立たず狙撃、大なら一気に払う?
エナジー発揮は着弾の有無に拠るのか…。
最後に生きて立っていればそれで、と。
急所、駆ける為の脚、得物振るう為の腕だけ保てばと、
見切り得た全てを以て、躱し、
飛翔剣を斬り落とし、
エナジーの余波が来る様なら鋼糸で絡め逸らして。
『近づけない』為に、存分に――その装甲、お使い頂こうかと。

駆け、肉薄し、狙うは最も薄い一点。
一人で成せる事では無い…
けど、成らぬとは思いません。
故に一助でも。放つは全力
――肆式


花剣・耀子

お仕事なのは、お互い様ね。

初動を止める術はない、……けれど。
どれだけ速く、膨大でも、それは剣だわ。
必ずあたしを斬りに来る。

致命傷になりうる軌道だけを咄嗟に斬り払って、前へ。
いま足が止まらなければ其れで良い。
守りを捨てているのだってお互い様。
捨てておまえが斬れるなら、行けるところまで行きましょう。
引いて競り負ける気なんて更々ないのよ。

見える限りのはがねを斬って、散らして、道を付けましょう。
おまえが硬く、堅く、固くて、強くとも、其処にあるなら斬ってみせるわ。

……そうね、これはお互い様ではないことよ。
あたしは独りで来たわけではないのだもの。
あたしでも、誰でも良いの。
おまえに届くなら、それで良い。



●破片のサファイア、鋭く

「どれだけ速く、膨大でも」

 帝竜プラチナが己の装甲を剥離させて作成した剣。
 はるか高みの位置にあるそれを冷えた眼差しで見据えながら花剣・耀子(Tempest・f12822)が言う。
 その呟きを耳に掠めて「ん?」と首を傾げたクロト・ラトキエ(TTX・f00472)へ、耀子は静かに、けれど確かな意志を込めて頷いた。

「剣だわ」

 斬る為の武器だ。
 殺す為の刃だ。
 ならば、獲りに来るものは決まっている。
 己らの命だ。

「道理です。最後に生きて、立っていればそれでいい」

 二回りも年下の少女と同じ結論に辿り着いた傭兵は薄く笑う。
 そこに常の人懐こさはない。仮面の下の獣が覗く。
 突破の方法はごく単純。

「押して───」
「───通るわ」

 守るのは致命の急所。駆ける足に、武器を握る手。
 それだけがあれば殺せる。
 それだけを守れば勝てる。
 ならば実行するだけと、偶然に一致した思考が並ぶ二人の足を押す。

「ふん、命知らずが考えそうな戦術ですね!」

 囀るような声が響いた瞬間、堕ちる剣が分裂する。
 ジルコニアとバナジウムを重ねて形作った剣であるならば、分けての運用も想定内ということだろう。
 だからクロトと耀子も分かれる。
 アイコンタクトのひとつもない。ただそう動くだろうと。信じるまでもなく“知っている”。

「お互い様よ」

 守りを捨てて、殺すつもりだなんて。
 それで敵を殺せるならば最適解になるのだと嘯いて。
 引いて競り負けるつもりはないから、ただ前へ。
 花は散らす。草は薙ぐ。天すら斬り捨て全てを平らぐ。それが鋼とて、また然り。
 それが剣を冠した少女の生き様。
 まつろわぬ者であろうとも、終わりの時に終わらぬよう。

「散りなさい」

 薙ぎ払う、刃の名は【《花剣(Tempest)》】。
 少女と同じ名を冠した、生き様そのものとも呼べる剣の名が鋼の刃と交錯する。
 当然、超硬を誇る装甲をそのまま転化した剣はひたすらに硬い。
 それが纏う破壊のエナジーもが容赦なく華奢な少女の身を打ち据える。
 致命ではない。
 ならば剣は振れる。
 だから二度、三度、四度五度六度七度───

「おまえが、いくら硬く、堅く、固くて、強くとも」

 切る。斬る。ひたすた切って斬って切って斬って、ぎゃりぎゃりとエンジンと刃金を鳴らしながら、押して圧して押して圧して押して圧して───切り捨てるッ!!

「其処に在るなら斬れるのよ。あたしが斬ってみせる」

 だから、嵐が通過した後に残るモノなど何もなく。
 エンジン音の残響と共に、超硬を誇った剣は断面を晒して転がった。

「っ、そんな偶然をよく誇れますね! もう息も絶え絶えでしょうに!」
「……そうね」

 血が出ていないだけで、破壊のエナジーに晒された身体はズタズタだ。痛いという感覚すら麻痺してただ寒い。 
 剣を重く、冷たく思うのも久しぶりで、だけど。
 この戦場に来たのが独りでないことを耀子は知っている。
 独りで為せぬとて、届かないものではないとクロトは知っている。

「それは偶然ではないと、あなたが一番理解できるはずでしょうに」

 大剣の残骸を踏んで、破断の糸刃が舞い上がる。

「───っ、女の子に守られて恥ずかしくないんですか!?」
「ええ、まったく。勝つためですから」

 耀子と大剣が競り合っている間に陣の敷設は完了した。
 微笑み敷いて、嘯いて、クロトは空すら自由に征く。

「それに、『何にも支配されない』と吼える輩ほど支配したくなるんですよ」
「あ、え、いつの間に!?」
「あちらと競り合っている間に」

 引いた糸は、プラチナが己の守りにと残した僅かな装甲に引っ掛けられたモノ。
 それをアンカーにしてクロトは駆ける。
 競り合いで疲弊したのは帝竜の方も同じだ。だから通る。通してみせる。

「~~~~~っ、気味の悪い……!」
「褒め言葉をどうも、威厳の無い帝竜さん」
「で、でも! あっちのなんかヤバい気配のする機械剣ならともかく、そんな糸で残った装甲を抜くなんて無謀もいいところです!」
「ほう」
 
 そう思うだろう。
 そう思ってもらうまで、クロトの策の中ならば。
 その侮りが、竜を殺す驕りだ。

「では、その鋼糸で一芸仕りましょう」
「え、」

 言い置いて、まず投擲したのはナイフ。
 黒染めの刃は闇の中のための暗器であり、白昼の堂々真っ向では見せ札でしかない。
 むろん帝竜は動くことなく、その装甲で刃を弾く。

「毒ですか? こーんな弱いのじゃ装甲が痛むまでもありませんケド───」

 気付く。
 あらぬ方向へ弾かれたナイフ、その柄にも糸が繋がれている。
 視認すら困難を極める細さのそれは、見目通りに切れやすく。
 装甲に引っかかってぷつりと切れて、
 炸裂。

「きゃあああっ!?」

 糸が切れるのと同時に炸裂したのは閃光弾だ。
 こんな初歩の初歩たるブービートラップ、戦場に暮らしていれば十六の少年兵でも見抜けるだろうに。
 心中嘆息をひとつ落として、風の魔力と共に加速。
 死角を潰された帝竜へ肉薄する。
 装甲が最も薄い位置はもう見えている。
 ならば為す。
 勝利のためには為さねばならぬ。
 故に、クロトが宣告するのはあと一つ。
 死の字を冠す鏖殺襲撃。

「飛燕───」

 刻も道理も、捩れ潰えろ。


「────【肆式】」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

陽向・理玖
匡兄さんf01612と

俺の役目は装甲を突破して本体に一撃喰らわす事
大丈夫だ
匡兄さんなら
覚悟決め

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
残像纏いダッシュ
動き見切り装甲は匡兄さんに任せ一気に本体へ
振り返らない惑わない
信じてんだ
あの人ならやってくれるって
前だけ見て限界突破し死角から肉薄しグラップル
さすがに丸裸がすぎんぜ
女子が無防備過ぎね?
…好都合だけどな!!
暗殺用い戦闘知識も使い
間合い詰め急所狙ってUC
使えるもんは全部使い
致命的な一打狙う
部位破壊に拳の乱れ撃ちも重ね
一気に決める

あんたにこれ以上の自由は与えねぇ
還れ、骸の海へ

…信じて貰ったんだ
ここで決めなきゃ
俺にヒーローを名乗る資格はない


鳴宮・匡
◆理玖(f22773)と


任せろ、なんて大口叩いたんだ
やり遂げなきゃ立つ瀬がないな

装甲が剥がれて剣を模るのを見て取り
手中に握り込んでいた影の弾丸を足下へ落とす

こちらを狙う剣の切っ先を見据え
軌道を見切り、狙撃で逸らし、直撃を避ける
追撃が来る前にはこっちの準備も整う

――さあ、行こうノーチェ

伴の黒竜と共に飛翔
同時に黒霧の衣を周囲一帯へ展開し相手の視界を遮る

空中機動と本体を狙った狙撃で相手の目を引く
相手の攻撃は完全回避を狙わず
辛うじて対応できている“ようにみせかける”

優位は慢心を呼ぶし
執拗に狙うほど視野は狭くなる

自由ってのは“責任を自分で取らなきゃならない”ってことだ
余所見の代償は重いぜ

さ、決めてくれよ



 任せろと言った。
 任せると言われた。

 ならば、そのように征こう。

 約束は違えない。
 そうあろうと決めたから。


●そして落ちたるダイアモンド


「あ、ア────アアアアアアア!!!!」
「……なんか、怒ってるっぽい?」
「ここに来るまでに結構な攻撃叩き込まれてたみたいだからな」

 帝竜プラチナが上げる甲高い咆哮に眉根を寄せる陽向・理玖(夏疾風・f22773)。その一歩前で鳴宮・匡(凪の海・f01612)は「沈黙」の名を冠した狙撃銃を組み終える。
 無造作にやったようにも見える視線はその実、帝竜に数えられる巨大な敵をずっと視ている。

「あれだけ見境なしってことは、向こうももう後がないってことだろ」
「ただ、その分ヤバいってことだよな。……匡兄さん、大丈夫か?」
「ああ」

 予定通りに進まない作戦など、これまでにいくらでもあった。
 傭兵も、ヒーローも、猟兵も、その点においては同じだ。
 何事も、「いつも通り」に出来る者が強い。

「手筈通りにいこう」
「了解。───変身ッ!」

 龍の横顔に虹色の珠をセット。慣れた感覚に身を任せ、全身装甲へ転身する。
 その輝きに気づいたのか、のっそりとプラチナが動いた。

「ア、ア、アガウギウギッギャアアアアアアアアアア!!」

 ベキベキボキ、といっそ破滅的な音と共に装甲が罅割れ剥がれ落ちる。
 金属同士が擦れ合う耳障りな音を立てながら合体、一振りの巨大な剣が形作られるのはグリモアベースで聞いた情報通り。
 それが落ちてくる前に予め準備しておいた影の弾丸を地面に落とす。 

「――さあ、行こうノーチェ」

 応えて、影が羽撃いた。
 次いで体が持ち上がる。相反して体を支える感触はしっかりしている。
 彼女も絶好調らしい。
 【夜凪の翼(レディ・オブ・サイレンス)】。
 友人に贈られた彼女を、しばらくは「レディ」と呼んでいたものだったが。
 今は親友の知恵を借りながら贈った「夜」の名にふさわしく、影を従えて空を行く。
 世界が一段暗くなったのは気のせいではない。
 彼女が纏う黒霧の衣が光を、反射を遮って帝竜の周りに「夜」を作り出す。

「ちょっと気が早いぜ」

 だから匡は無造作に狙いを定めて引き金を引いた。
 着弾。快音。
 矛先に迷っていた剣が、銃弾に気付いて撃ち出される。
 風圧とそれが纏う破滅的なエナジーが匡の前髪をなぶる。
 だが、視界を頼みに出来ない射撃攻撃は射角がズレるのが常。ゆるくノーチェの頭部を撫でて意を伝えれば、応えて体が持ち上がるのを感じる。
 同時に身を包んだ柔らかな影は落下しないようにという配慮だろう。あとで肉、と脳内にメモを残しながら角度を調整し直した引き金を引く。
 すぐ右を大剣が通り過ぎていった。

「っ───」

 意図してのこととは言え、体を煽る暴風に吹き飛ばされそうになるのを堪える。
 それでいい。
 もう少しで当たりそうなのに当たらない───苛立ちは視野を狭め、本命に気付かせない。
 だから今しばらくはこちらを見ていろ。

「余所見の代償は重いぜ」

 決めてくれよ、理久。



「───っし、今だ!」

 あらぬ方向へとそれていく大剣を確かめて、理久は静かに地面を蹴る。
 迷いはいらない。だから振り返らないし上は仰がない。
 自分の役目を果たすだけだ。

 だって信じている。
 出来ると言った、自分と似た道を先に行く彼を。

 信じてもらった。
 まだ独りになったばかりの、未熟な自分を。
 だからこそ。

「ここでやりきらなきゃ、ヒーローなんて名乗れねぇよ、」

 銃弾の音に紛れて接近完了、拳の届く距離に来てもまだ上を見ているのはそれだけ引きつけが巧いのか。
 ……あるいは、空を征く自由に焦がれているのか。

「なッ!」

 【 灰 燼 拳 】!!! 
 龍の拳が強かに帝竜の本体へ叩きつけられる。くの字に曲がった少女の目が信じられないと見開かれるのが奇妙にゆっくりと視界に映る。
 本体の一部たる白金の拳が握られて向けられる前に、さらに一歩。

「さすがに丸裸がすぎんぜ、こっちには好都合だけどな!」

 ラッシュ、ラッシュ、ひたすらラッシュ!!
 たとえ竜に変じていても、それが人の形をしているなら急所がどこにあるかは知っている。
 ……伝わる手応えは、鋼を担う竜らしくひとのそれより遥かに硬い。だが逃げ出そうと身を捩るということはダメージが入っているということ。だったらこれで正解だ。

「あんたにこれ以上の自由は与えねぇ」

 ……もしかしたら。
 この自由を希っていた竜も理不尽の被害者だったのかもしれない。
 何かを奪われて、隷属させられて、そしてようやく得られた自由に無邪気に喜んでいたのかもしれない。
 ふと、そんなことを思って。

「悪いな」

 握り直す。
 からっぽになってしまった“陽向・理玖”が、掌に少しだけ乗せることのできた“大切”の為に。
 “ヒーロー”を遂行する。

「還れ、骸の海へ!!」

 ラスト一発、【灰燼拳】!!
 果たして龍の力を纏う拳は、帝竜を名乗る少女を貫いた。
 強く見開かれた目が、やがてゆっくりと色と力を失っていく。

「や…………ぁ……………………」
「……おやすみ」

 直後。
 少女の体が、幾千の破片と散らばった。
 絶滅を齎す竜としては、あまりに静かな最期。
 自由を、さもなくば死を。
 滅びによってようやく、彼女も自由になれただろうか。

「お疲れ」
「匡兄さんも!」

 竜が飛ぶ空は、今日も広く明るい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月20日


挿絵イラスト